JP2011066360A - ヘテロエピウエーハのエピタキシャル層の結晶性評価法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性を、赤外光のLOフォノンバンド波数の値によって簡易に評価する方法を提供する。
【解決手段】 化合物半導体結晶層に赤外反射法または赤外透過法で赤外光を照射してLOフォノンバンド波数を測定し、前記複数の試料のそれぞれについてX線回折の成長表面に垂直な方向の歪により半導体化合物結晶層の残留応力を測定し、AFM像を用いて前記複数の試料のそれぞれの半導体化合物結晶層の結晶性を評価し、前記評価において結晶性が良好と判断された前記試料のうち前記LOフォノンバンド波数が最も低いものを基準値とし、評価対象の化合物半導体結晶層に赤外反射法または赤外透過法で赤外光を照射して得られたLOフォノンバンド波数が前記基準値超の場合に、評価対象の化合物半導体結晶層が良好な結晶性に達していると判断することを特徴とする化合物半導体結晶層の結晶性評価方法が提供される。
【選択図】 図28
【解決手段】 化合物半導体結晶層に赤外反射法または赤外透過法で赤外光を照射してLOフォノンバンド波数を測定し、前記複数の試料のそれぞれについてX線回折の成長表面に垂直な方向の歪により半導体化合物結晶層の残留応力を測定し、AFM像を用いて前記複数の試料のそれぞれの半導体化合物結晶層の結晶性を評価し、前記評価において結晶性が良好と判断された前記試料のうち前記LOフォノンバンド波数が最も低いものを基準値とし、評価対象の化合物半導体結晶層に赤外反射法または赤外透過法で赤外光を照射して得られたLOフォノンバンド波数が前記基準値超の場合に、評価対象の化合物半導体結晶層が良好な結晶性に達していると判断することを特徴とする化合物半導体結晶層の結晶性評価方法が提供される。
【選択図】 図28
Description
本発明は、パワーデバイス等に用いられる化合物エピタキシャルウエーハ基板の結晶層の評価方法に関する。
Siウエーハ等のウエーハ表面に、例えばAlN等のIII族窒化物結晶層をエピタキシャル成長させて形成したヘテロエピタキシャルウエーハは、Siウエーハ表面にAlN結晶膜を高温で形成する。しかし、AlNエピタキシャル膜の熱膨張係数が基板であるSiの熱膨張係数よりも大きいため(900℃におけるAlNの熱膨張係数6.0×10-6/K、Siの熱膨張係数4.0×10-6/K)、室温に降下後に、エピタキシャル膜とSi基板の境界面に残留応力が生じ、Siウエーハがエピタキシャル膜側に反ってしまう。また、エピタキシャル層とSiウエーハ基板の格子定数の相違も反りに影響すると考えられる。このような、残留応力による基板の反りは、例えばSiC層等の他の化合物半導体層をエピタキシャル成長させたヘテロエピウエーハについても同様である。このような反りの在るウエーハ基板は、パワーデバイスに用いることはでない。そこで従来は、主にラマン散乱によりエピシャキタル層のフォノンバンド波数シフトを測定することで、残留応力を測定していた(特許文献1参照)。
また、ヘテロエピタキシャルウエーハをパワーデバイスに用いるためには、エピタキシャル層が層状(layer−by−layer)に成長していることが必要であり、このようなエピタキシャル層の結晶の状態(即ち、結晶性)は、TEM(Transmission_Electron_Microscope:透過電子顕微鏡。以下TEMと記す)の電子顕微鏡写真によって結晶状態を判断するか、又はXRD(X−ray_diffraction:X線回折)ロッキングカーブ測定によってフォノンバンド波数のシフトを基に判断していた(特許文献2参照)。
TEMは、nm単位での微小領域の局所的な情報を得るには非常に適しているが、全体像を把握するうえでは難点がある。XRDは表面直下の情報を得ることができるが、使用できる波長が限られ、また、波長の進入長が材料によって一義的に決まってしまう。更に、X線を使用するため使用上の自由度が低い。また、エピタキシャル層が薄い場合には、ラマン散乱によるフォノンバンド波数シフトを測定することは困難である。
これに対し、光はX線に比して使用上の自由度が高く、光の反射によって表面直下の情報が得られ、かつ、光の透過によって断面方向の平均的な情報が得られる。従って、ヘテロエピタキシャルウエーハの結晶性を、光を使用して簡易に判断できれば、検査時間を大幅に短縮することができ、製品コストの圧縮を図ることが可能となる。
T.Prokofyeva, M.Seon, J.Vanbuskirk and M.Holtz, Phys. Rev. 63巻, 125313ページ (2001).
T.Metzger, R.Hopler, E.Born, O.Ambacher, M.Stutzmann, R.Stommer, M.Schuster, H.Gobel, S.Christiansen, M.Albrecht, and H.P.Strunk, Philosophical Magazine A 77巻, 1031ページ (1998).
本発明は、基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性を、赤外光のLOフォノンバンド波数の値によって簡易に評価する方法を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態によれば、基板表面に化合物半導体結晶層をヘテロエピタキシャル成長させた複数の試料を用意し、前記複数の試料のそれぞれについて化合物半導体結晶層に赤外反射法または赤外透過法で赤外光を照射してLOフォノンバンド波数を測定し、前記複数の試料のそれぞれについてX線回折の成長表面に垂直な方向の歪により化合物半導体結晶層の残留応力を測定し、AFM像を用いて前記複数の試料のそれぞれの化合物半導体結晶層の結晶性を評価し、前記評価において結晶性が良好と判断された前記試料のうち前記LOフォノンバンド波数が最も低いものを基準値とし、評価対象の化合物半導体結晶層に赤外反射法または赤外透過法で赤外光を照射して得られたLOフォノンバンド波数が前記基準値超の場合に、評価対象の化合物半導体結晶層が良好な結晶性に達していると判断することを特徴とする化合物半導体結晶層の結晶性評価方法が提供される。
前記化合物半導体結晶層は、III族窒化物結晶層またはIV族結晶層であってもよい。
前記所定の基準値は、前記III族窒化物結晶層がAlN結晶層の場合にLOフォノンバンド波数880cm−1であってもよい。
前記AMF像を用いた結晶性の評価において、化合物半導体結晶層が層状(layer−by−layer)に形成されているものを結晶性が良好であると判断するものであってもよい。
本発明によって、基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性を、赤外光のLOフォノンバンド波数の値によって簡易に評価する方法が提供される。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態に係る基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性評価方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明の都合上、実施の形態においてはIII族窒化物結晶層としてAlN層を例にとり、また、IV族結晶層としてSiC層を例にとって、本発明の一実施の形態に係る基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性評価方法について説明するが、本発明は、それら実施の形態に限定されるわけではない。また、III族窒化物結晶層は、AlN層に限定されるわけではなく、本発明に係る結晶性評価方法は、例えば、GaN層等の結晶性評価にも適用できる。IV族結晶層もSiC層に限定されるわけではない。
以下、本発明の一実施の形態に係る基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性評価方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明の都合上、実施の形態においてはIII族窒化物結晶層としてAlN層を例にとり、また、IV族結晶層としてSiC層を例にとって、本発明の一実施の形態に係る基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性評価方法について説明するが、本発明は、それら実施の形態に限定されるわけではない。また、III族窒化物結晶層は、AlN層に限定されるわけではなく、本発明に係る結晶性評価方法は、例えば、GaN層等の結晶性評価にも適用できる。IV族結晶層もSiC層に限定されるわけではない。
[結晶性評価方法]
まず、基板上にエピタキシャル成長させたIII族窒化物結晶層の結晶性評価方法について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料の特性及び赤外測定結果とX線回折測定結果を示す図である。図1に示すとおり、本発明の一実施形態に係る基板上にエピタキシャル成長させたIII族窒化物結晶層の結晶性評価方法は、15枚の測定試料の測定結果を基礎になされたものである。15の測定試料は、いずれもAlN(アルミナナイトライド)を基板上にエピタキシャル成長させて形成した、AlN(0001)へテロエピタキシャルウエーハである。
まず、基板上にエピタキシャル成長させたIII族窒化物結晶層の結晶性評価方法について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料の特性及び赤外測定結果とX線回折測定結果を示す図である。図1に示すとおり、本発明の一実施形態に係る基板上にエピタキシャル成長させたIII族窒化物結晶層の結晶性評価方法は、15枚の測定試料の測定結果を基礎になされたものである。15の測定試料は、いずれもAlN(アルミナナイトライド)を基板上にエピタキシャル成長させて形成した、AlN(0001)へテロエピタキシャルウエーハである。
上記15枚のエピタキシャルウエーハの内訳は、AlN/FZSi及びAlN/CZSiが13枚、AlN/6H−SiCが1枚、AlN/3C−SiC/FZSiが1枚である。FZSiは、FZ(Floating_Zone)法によって形成したSi基板を表し、CZSiは、CZ(Czochralski)法によって形成したSi基板を表す。AlN層の厚さは、30nm〜150nmである。
FZSi基板は、直径3インチ、面方位(111)、厚さ約754μm、比抵抗約1kΩcmのリンドープ片面鏡面研磨ウエーハであり、CZSi基板は、直径3インチ、面方位(111)、厚さ約760μm、比抵抗約16.6mΩcmのアンチモンドープ片面鏡面研磨ウエーハである。また、6H−SiC基板は、直径2インチ、面方位(0001)、厚さ約250μmの片面鏡面研磨ウエーハである。
まず、上記15枚の測定試料について、X線回折ロッキングカーブ(rocking_curve)の半値幅(full_width_at_half_maximum:FWHM)を測定し、続いてP偏光赤外反射法によりA1(LO)フォノンバンド波数(以下、LOフォノンバンド波数と記す)及びE1(TO)フォノンバンド波数(以下、TOフォノンバンド波数と記す)を測定した。測定方法の詳細については後述する。
測定結果を表す図が、図2及び図3である。図2は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料のうち代表的な5試料のP偏光15°入射赤外反射スペクトルを示す図であり、図2(A)はspl21、spl32、spl41、spl42の赤外反射スペクトルを示し、図2(B)は、spl36の赤外反射スペクトルを示す。また、図3は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料のロッキングカーブ半値幅と赤外反射法により測定したフォノンバンド波数との相関を示す図であり、図3(A)は、LOフォノンバンド波数との相関を示し、図3(B)は、TOフォノンバンド波数との相関を示す。
図3(A)において、各試料を示すマークは、ロッキングカーブ半値幅が最も小さくかつLOフォノンバンド波数が最も大きい試料spl36から、ロッキングカーブ半値幅が最も大きくかつLOフォノンバンド波数が最も小さいspl21に向かって、ほぼ直線状に表示されている。このことから、LOフォノンバンド波数とロッキングカーブ半値幅との間には、ロッキングカーブ半値幅が大きくなるとLOフォノンバンド波数が小さくなるという、一次の負の相関があることが見出される。なお、LOフォノンバンド波数の変化の幅は、20cm-1に及んでいる。
一方、図3(B)において、ロッキングカーブ半値幅が小さくなるとTOフォノンバンド波数は若干大きくなり、TOフォノンバンド波数とロッキングカーブ半値幅との間にも相関が見出されるが、変化の幅は5cm-1程度であり、図3(A)に比して小さい。
以上の結果から、特にLOフォノンバンド波数の変化の幅が大きいため、LOフォノンバンド波数を基準にして結晶性を評価できることを見出した。
ここで、ロッキングカーブ半値幅には、エピタキシャル層を構成する微結晶のエピタキシャル面に平行なサイズLPと、微結晶のc軸の傾きαが反映される。そこで、両者の寄与を分離して考察するために、8枚の測定試料について、非特許文献2に記載されたMetzgerらの解析法によるプロット(以下、Metzgerプロットという)を行った。8枚の試料は、spl21,spl23,spl24,spl30,spl32,spl33,spl36及びspl41である。このMetzgerプロットで得られた微結晶のサイズLP(以下、サイズLPと記す)とLO及びTOフォノンバンド波数の関係、及び微結晶のc軸の傾きαとLO及びTOフォノンバンド波数の関係を図示したのが、図4及び図5である。図4は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した8個の測定試料のエピタキシャル層を形成する微結晶のサイズLPと赤外反射法により測定したフォノンバンド波数との相関を示す図であり、(A)は、LOフォノンバンド波数との相関を示し、(B)は、TOフォノンバンド波数との相関を示す。図5は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した8個の測定試料のエピタキシャル層を形成する微結晶のc軸の傾きαと赤外反射法により測定したフォノンバンド波数との相関を示す図であり、(A)は、LOフォノンバンド波数との相関を示し、(B)は、TOフォノンバンド波数との相関を示す。
図4(A),図4(B)のいずれにおいても、サイズLPとフォノンバンド波数との間には明確な相関が見出されない。図3(A),図3(B)と比較しても全体的なマークの分布は相似しているとはいえない。一方、図5(A),図5(B)においては、c軸の傾きαとフォノンバンド波数との間に相関関係が見出され、図3(A),図3(B)と比較するとマークの分布状況が同様の状態を示している。特に、図5(A)に示すc軸の傾きαとLOフォノンバンド波数との間には、c軸の傾きαが大きくなるほどLOフォノンバンド波数が小さくなるという、明確な一次の負の相関が見出された。
以上述べた測定結果の検討から、LO及びTOフォノンバンド波数とロッキングカーブ半値幅との相関関係は、LO及びTOフォノンバンド波数とエピタキシャル層を構成する微結晶のc軸の傾きαとの相関に読み替えることができる。即ち、赤外反射法によってエピタキシャル層のLO及びTOフォノンバンド波数を測定することで、エピタキシャル層を構成する微結晶の結晶性を評価することができることが見出された。
更に、XRDのロッキングカーブ半値幅には、結晶の成長状態も影響していると考えられる。そこで、AlNエピタキシャル層の微結晶のc軸の傾きαをラセン転位密度Nに読み替え、ラセン転位密度NとLO及びTOフォノンバンド波数との関係をグラフ化して検証した。なお、読み替えは、エピタキシャル層の微結晶のc軸の傾きαとエピタキシャル層のラセン転位密度Nとの関係を示す式N=α2/4.35bc 2によって読み替えた。ここで、bcはc軸方向のラセン転位のバーガーズベクトルの大きさを表し、材料によって異なるが、AlNの場合はbc=0.4982nmである。
図6は、図5で示した微結晶のc軸の傾きαと赤外反射法により測定したフォノンバンド波数との相関を、微結晶のラセン転位密度とフォノンバンド波数との相関に読み替えた図であり、(A)は、LOフォノンバンド波数との相関を示し、(B)は、TOフォノンバンド波数との相関を示す。図6(A),図6(B)から、エピタキシャル層のラセン転位密度Nが増えるとLO及びTOフォノンバンド波数が減少することを確認した。
また、XRDのロッキングカーブ半値幅とエピタキシャル層を構成する微結晶の成長状態との関連を考察するために、図1のうち8枚の試料(spl21,spl23,spl24,spl25,spl30,spl32,spl41,spl42)のAFM(atomic_force_microscope:原子間力顕微鏡)測定を行った。詳細な測定方法については後述するが、図7〜図14は、8枚の試料のAFM像である。図7〜図14に示すAFM像から、エピタキシャル層がAlNの微結晶から構成されている場合、ロッキングカーブ半値幅が0.57°以下の試料(図13のspl41及び図14のspl42)では、AlNエピタキシャル層が層状(layer−by−layer)成長の段階にあることが確認された。一方、ロッキングカーブ半値幅が0.57°超の6枚の試料(図7〜図12の、spl21,spl23,spl24,spl25,spl30,spl32)は、米粒状の微結晶が撒き散らされたような状態であり、AlNエピタキシャル層が島状(island)成長の段階にあることが確認された。
以上の8枚の試料のAFM像の検討から、AlNエピタキシャル層については、ロッキングカーブ半値幅0.57°を基準として結晶性の評価を行うことが可能であることが見出された。従って、赤外反射法によってエピタキシャル層のLO及びTOフォノンバンド波数を測定することで、エピタキシャル層を構成する微結晶の結晶性を評価する場合、ロッキングカーブ半値幅0.57°に対応するLO及びTOフォノンバンド波数を判断基準値(閾値)として結晶性を評価することが可能となる。
更に、LO及びTOフォノンバンド波数には、残留応力(面内引張り応力)が影響すると考えられる。そこで、この影響を考察するために、15枚の試料のXRDによるAlNエピタキシャル層のc軸歪から求めた残留応力σと、LO及びTOフォノンバンド波数との関係をグラフ化して検証した。図15は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料についてXRDのc軸歪から求めた残留応力σとフォノンバンド波数との相関を示す図であり、(A)は、LOフォノンバンド波数との相関を示し、(B)は、TOフォノンバンド波数との相関を示す。
図15(A),図15(B)において、黒色の四角マークで示すロッキングカーブ半値幅0.57°以下の試料は、面内応力σが小さくなるとLOフォノンバンド波数が増加する。図15(A)において、面内応力σを0GPaに外挿した値(即ち、0GPa地点のLOフォノンバンド波数)は、約890cm−1である。図15(B)において、TOフォノンバンド波数も同様の関係が考察され、面内応力σを0GPaに外挿した値は、約670cm−1である。非特許文献1のT.Prokofyevaらの報告によると、面内応力が緩和した場合のAlNエピタキシャル層のLOフォノンバンド波数は、A1(LO)=890.0cm−1であり、一方、TOフォノンバンド波数E1(TO)=670.8cm−1である。この値は、図15(A),(B)において、面内応力σを0GPaに外挿した値とほとんど一致する。なお、上記非特許文献1の報告では、厚さ800μmで、引張り面内応力0.6GPaの場合は、A1(LO)=884.5cm−1、E1(TO)=666.5cm−1であるので、引張り面内応力σが大きくなるとLO及びTOフォノンバンド波数が小さくなるといえる。この点も図15(A),(B)の黒色の四角マークで示すロッキングカーブ半値幅0.57°以下の試料の挙動と一致している。
以上の測定結果は、図15(A),(B)において黒色の四角マークで示すロッキングカーブ半値幅0.57°以下の試料が、エピタキシャル層が層状の結晶成長段階に達していることを反映しており、これらの試料のエピタキシャル膜質が弾性論で議論できるレベルに達していると考えられる。図13及び図14のAFM像の結果とも一致する。
そこで、より変化の幅の大きいLOフォノンバンド波数について、図15(A)からLO値と残留応力σとの間に一次の相関関係があるとしてその相関係数を求めると、約−5.6cm−1/GPaとなる。非特許文献1においては、この値は−6.3±1.3cm−1/GPaと報告されている。
一方、図15(A),(B)において、黒色のひし形マーク又は白色のひし形マークで示すロッキングカーブ半値幅0.57°超の試料については、引張り面内応力σとLOフォノンバンド波数との間の相関関係は明確には把握できない。
以上の考察により、上述した図3のLOフォノンバンド波数とロッキングカーブ半値幅との相関関係は、図5(A)に示したように、一見エピタキシャル層を構成する微結晶のc軸の傾きαにのみ基づくと考えられたが、実は、ロッキングカーブ半値幅の小さい領域においては、LOフォノンバンド波数の変化には、面内応力σの低下による効果の寄与も含まれることが見出された。一方、ロッキングカーブ半値幅の大きい領域においては、エピタキシャル層と面内応力σとの関係が明確でなく、LOフォノンバンド波数の変化は専らc軸の傾きαとの相関に依存すると考えるのが妥当である。
以上の考察により、ロッキングカーブ半値幅0.57°以下の領域においては、エピタキシャル層に掛かる引っ張り応力σとエピタキシャル層の微結晶のc軸の傾きαの寄与によってLOフォノンバンド波数の変化が決まり、一方、ロッキングカーブ半値幅0.57°超の領域においては、エピタキシャル層の微結晶のc軸の傾きαの寄与のみによってLOフォノンバンド波数の変化が決まることが見出された。従って、いずれの領域においても、LOフォノンバンド波数に残留応力が影響していることを考慮して結晶性の評価を行えば、エピタキシャル層がパワーデバイスに適する層状(layer‐by‐layer)成長状態に達したか否かをLOフォノンバンド波数のみによって判断することが可能となる。言い換えれば、XRDロッキングカーブ測定をしなくても、エピタキシャル層の結晶性の評価を簡易に行うことが可能となる。
そこで、評価の基準となるLOフォノンバンド波数の判断基準値(閾値)を設定する。上述したように、面内応力σを0GPaに外挿した値がLOフォノンバンド波数は890cm−1であり、また、LO値と残留応力σとの間の相関係数は約−5.6cm−1/GPaである。更に15枚の測定試料において、AlNエピタキシャル層の半値幅が0.57°である試料42の面内応力σは2.01376GPaであり約2GPaである。また、この試料42のLOフォノンバンド波数は879.84cm−1であり、約880cm−1である。そこで、本発明の一実施の形態に係る基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性評価方法においては、エピタキシャル層がAlN微結晶から構成される場合、上記の判断基準値(閾値)をLOフォノンバンド波数880cm−1と設定した。LO値が判断基準値(閾値)超であれば、赤外反射法の測定精度を考慮しても、必ず結晶性が良好な状態に達しているといえる。なお、III族窒化物結晶がAlN微結晶層以外の場合、結晶層の材質に応じて上述した手順で評価基準を定めれば、該結晶層の結晶性をLOフォノンバンド波数によって正しく判断することができる。
[IV族結晶層の結晶性評価]
次に、上述した化合物半導体層の結晶性評価方法を、基板上にエピタキシャル成長させたIV族結晶層に適用することが可能か検証した。ここでは、基板上にエピタキシャル成長させたSiC層の評価に適用できるかを検証した。
次に、上述した化合物半導体層の結晶性評価方法を、基板上にエピタキシャル成長させたIV族結晶層に適用することが可能か検証した。ここでは、基板上にエピタキシャル成長させたSiC層の評価に適用できるかを検証した。
まず、図16に示すように、6枚の3C−SiC(111)/FZSi(111)エピタキシャルウエーハを作製し、うち5枚を測定用試料として用いた。5枚の試料は、リンドープ片面鏡面研磨FZSi基板(3インチφ、面方位(111)、比抵抗約1kΩcm)の表面をプロパンで炭化したspl6(炭化FZSi(111)、SiC層の厚さ15nm)と、FZSi基板表面を炭化後シランとプロパンで3C−SiCエピタキシャル層を成長させたヘテロエピウエーハ試料spl3(SiC層の厚さ445nm)、spl7(SiC層の厚さ437nm)、spl46(SiC層の厚さ290nm)、spl47(SiC層の厚さ300nm)である。
これらの5枚のエピタキシャルウエーハについて、室温でP偏光73.7°入射赤外透過測定を行い、さらにspl3,spl6,spl7の3枚については、赤外測定との比較のために偏光ラマン散乱測定も行った。また、5枚の試料(spl6,spl3,spl7,spl46,spl47)について、SiC表面の観察のためにAFM観察、SiC層の結晶性評価のためにX線回折ロッキングカーブ(ω−scan)測定、SiC層の(111)方向歪測定のためにX線回折ω−2θscan測定とウエーハの反り測定を行った。
赤外透過スペクトルを図17、図18に示し、偏光ラマンスペクトルを図19に示す。また、赤外透過法とラマン散乱によるSiC膜層のT2フォノンの測定結果を図16にまとめて示す。
測定結果から、SiC層が薄い場合と厚い場合ではTOフォノン波数はほとんど変わらないのに対し、LOフォノン波数は厚い場合のほうが7〜8cm−1程高いことがわかった。
次に、XRDのロッキングカーブ半値幅から、結晶性はエピタキシャル層の厚い試料の方が明らかに高いことが把握された。そして、これら5枚の試料のうち、3枚の試料(spl6,spl3,spl46)のAFM像を検証した。図20は、試料spl6のAFM像である。図21は、試料spl3のAFM像である。また図22は、試料spl46のAFM像である。これらのAFM像によれば、結晶性が低い試料slp6では、10〜20μmの島状成長段階にあるのに対し、結晶性が高い試料spl3,spl46では、layer−by−layer成長段階である。特に試料spl3の膜質はよい。
ロッキングカーブ半値幅は、エピタキシャル層を構成する結晶粒のエピ面に平行なサイズLPと、結晶粒の(111)方向の傾き角αに依存する。そこで、Metzgerらの解析法に従ってLPとαを求め、その結果を図16に併せて示す。試料spl6では高次(111)回折を測定できずLPとαを求めることはできないが、他の試料(spl3,spl7,spl46,spl47)については、αが大きくなるとLPは小さくなる逆相関の関係にある。αとロッキングカーブ半値幅とを比較すると、ロッキングカーブ半値幅の多くの部分はαからの寄与に基づくことがわかる。AFM像では、上述したように、エピタキシャル層の薄い試料は島状成長段階にあり、エピタキシャル層の厚い試料はlayer−by−layer成長段階にある。これはロッキングカーブ測定に基づく解析結果とよく一致する。
更に、XRDのロッキングカーブ半値幅には、結晶の成長状態も影響していると考えられるので、III族窒化物結晶層の場合と同様に3C−SiCエピタキシャル層の微結晶の(111)方向の傾きαをラセン転位密度Nに読み替え、ラセン転位密度NとLO及びTOフォノンバンド波数との関係を検証した。詳細は後述するが、検証の結果、貫通ラセン転位密度Nとエピ面に平行な結晶粒サイズLpは逆相関関係にあることは検証された。これは、III族窒化物結晶層の場合と同様である。
さらに、エピタキシャル層の歪(反り)が、LO,TOフォノンバンド波数の波数シフトに与える影響についても検証した。5枚の試料のX線回折ω−2θscan測定とウエーハの反り測定の結果は図16に示すとおりである。エピタキシャル層が薄い試料spl6の(111)方向歪は格子定数測定不可であった。エピタキシャル層が厚い4枚の試料(spl3,spl7,spl46,spl47)はエピタキシャル層が薄い試料spl6よりも明らかに反っている。4枚の試料(spl3,spl7,spl46,spl47)は面内引張り応力を受けるので、試料spl6に比してTO,LOともに低波数側にシフトするはずである。ところが、測定結果では、これらの試料のTO,LO波数は、LO波数が試料spl6に比して高波数側に大きくシフトし、一方TO波数はほとんど変化していない。このことから、波数シフトとエピタキシャル層の歪(反り)との関連は考えられない。なお、エピタキシャル層の厚い4枚の試料(spl3,spl7,spl46,spl47)間においては、反りが大きい(歪の絶対値が大きい)試料spl3,spl46,spl47は、反りの小さい試料spl7にくらべてLO,TOともに1cm−1程度低波数側にシフトしている。このシフト波数は残留歪に基づくものと考えられる。
以上の検証から、エピタキシャル層のロッキングカーブ半値幅が広い試料spl6は、エピタキシャル層を構成する結晶粒のサイズは小さく島状成長段階にあるのに対し、ロッキングカーブ半値幅が狭い試料(spl3,spl7,spl46,spl47)は、layer−by−layer成長段階にあると言える。そして、これらの試料間においては、TOフォノン波数はほとんど同じであるのに対し、LOフォノン波数は高結晶性試料(spl3,spl7,spl46,spl47)の方が低結晶性試料(spl6)よりも7〜8cm−1程高い。このことから、島状成長段階の低結晶性のSiC層のLO波数は、高結晶性のlayer−by−layer成長段階にあるエピタキシャル層よりも低く、エピタキシャル層の結晶性を反映して変化すると言える。よって、フォノンバンド波数(特に、LOフォノンバンド波数)を測定することで、IV族結晶層のエピタキシャル層の結晶性の評価を容易に行うことができる。本発明の一実施の形態に係る化合物半導体結晶層の結晶性評価方法は、IV族結晶層の結晶性にも適用できる。
以上説明した検証結果から導き出された評価基準を図28に示す。図28は、結晶層がAlNエピタキシャル層である場合の、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法の評価基準である。
[結晶性評価装置]
上述した本発明の一実施の形態に係る基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性評価方法を、結晶性評価装置に適用した例について、以下に説明する。なお、以下の説明は一例であり、本発明の一実施の形態に係る化合物半導体層の結晶性評価方法を適用した装置は、これに限定されるものではない。
上述した本発明の一実施の形態に係る基板上にエピタキシャル成長させた化合物半導体層の結晶性評価方法を、結晶性評価装置に適用した例について、以下に説明する。なお、以下の説明は一例であり、本発明の一実施の形態に係る化合物半導体層の結晶性評価方法を適用した装置は、これに限定されるものではない。
本結晶性評価装置は、結晶層に赤外光を照射する赤外光照射部、結晶層から反射された赤外光を受光してLOフォノンバンド波数を検出する検出部及び検出部に接続され検出部から転送されたLOフォノンバンド波数の値に基づいて結晶層の結晶性の合否を判断する判断部を備える。更に、測定対象物を載置する回転試料台、回転試料台を駆動する駆動部、赤外光照射部及び駆動部等の動作を制御する制御部を有する。なお、赤外光照射部は、赤外光を斜め照射する。また、検出部を赤外光照射部に対向する位置に配置して、結晶層を透過した赤外光を受光してLOフォノンバンド波数を検出する検出部であってもよい。更に、結晶層から反射された反射光を受光してLOフォノンバンド波数を検出する第1検出部と、結晶層を透過した赤外光を受光してLOフォノンバンド波数を検出する第2検出部の双方を備えてもよい。
特徴的には、判断部は、検出部から転送されたLOフォノンバンド波数と、予め入力された結晶層の材質によって、LOフォノンバンド波数が所定値超の場合に、結晶層の結晶性を評価する点である。具体的には、結晶層がAlN微結晶層の場合、LOフォノンバンド波数880cm−1超のときに結晶層の結晶性を合格と判断し、880cm−1以下のときに結晶性を不良と判断して製造工程から除外するように指示する。
(実施例1)
以下に、上記の結晶性評価方法見出すに至った検証のための実施例の内容を、検証順に具体的に記す。実施例1は、LO、TOフォノンバンド波数の測定に、赤外反射法を用いた実施例である。本実施例においては、P偏光15°入射赤外反射法を用いたが、これに限定されるわけではない。
以下に、上記の結晶性評価方法見出すに至った検証のための実施例の内容を、検証順に具体的に記す。実施例1は、LO、TOフォノンバンド波数の測定に、赤外反射法を用いた実施例である。本実施例においては、P偏光15°入射赤外反射法を用いたが、これに限定されるわけではない。
[X線回折ロッキングカーブ半値幅とフォノンバンド波数との関係]
図1に示した、基板上にIII族窒化物結晶層(本実施例においては、AlN結晶層)をエピタキシャル成長させたヘテロエピタキシャルウエーハ(AlN(0001)エピタキシャルウエーハ)試料を15枚用意し、各試料のX線回折ロッキングカーブ半値幅、c軸方向歪並びにLO及びTOフォノンバンド波数を測定した。各試料の詳細は上述したとおりであるので、説明を省略する。
図1に示した、基板上にIII族窒化物結晶層(本実施例においては、AlN結晶層)をエピタキシャル成長させたヘテロエピタキシャルウエーハ(AlN(0001)エピタキシャルウエーハ)試料を15枚用意し、各試料のX線回折ロッキングカーブ半値幅、c軸方向歪並びにLO及びTOフォノンバンド波数を測定した。各試料の詳細は上述したとおりであるので、説明を省略する。
ロッキングカーブ半値幅の測定(ω測定)及びc軸方向(垂直方向)歪の測定(ω−2θ測定)には、AlNの(0002)X線回折を用いた。測定は、パナリティカル社製Spectris_X’Pert_MRD_PRO_ディフラクトメーター(diffractometer)を用いた。
XRDω−2θ法によりc軸方向歪の測定後、c軸方向歪から面内歪、面内歪から面内応力の順に弾性論によりエピタキシャル層の面内応力を算出した。算出法は、非特許文献1に従った。
c軸方向歪、LO及びTOフォノンバンド波数の測定には赤外反射法を用いた。具体的には、P偏光15°入射正反射法により赤外光を室温で照射して測定した。測定には、ブルカー社製IFS113V_フーリエ変換型赤外分光光度計(Fourier_transform_infrared_spectrophotometer:FTIR)を用いた。光源はGlobar光源を用い、Ge/KBrビームスプリッター及びdeuterated_triglycine_sulfate(DTGS)検出器を使用した。試料に入射直前の光路上にワイヤー偏光子を挿入して、分解能は4cm-1(但し、試料36(AlN/6H−SiC)についてのみ、分解能1cm−1)、積算回数100回で行った。可動鏡のscan_velocityは12.5kHzとし、電気フィルターとしてHPF(high_pass_filter 17.86kHz)とLPF(low_pass_filter open又は17Hz)を設定した。また、バンド波数の読み取りはピーク位置で行った。以上の測定結果を表したものが、上述した図1である。
次に、上述した15枚の試料についてP偏光15°入射赤外反射法により求めたAlNエピタキシャル層のLO及びTOフォノンバンド波数と、ロッキングカーブ半値幅とを基に、図3(A),(B)に示したグラフを作成した。LO又はTOフォノンバンド波数を縦軸、ロッキングカーブ半値幅を横軸として表示した。この2つのグラフから、上述したように、LO及びTOフォノンバンド波数とロッキングカーブ半値幅との間に一次の負の相関があることが見出された。特にLOフォノンバンド波数の変化幅が20cm−1と大きく相関が把握しやすいことから、LOフォノンバンド波数に注目するべきであるという方向性が見出された。
[ロッキングカーブ半値幅とエピタキシャル層の微結晶のc軸の傾きαとの関係]
上述したように、ロッキングカーブ半値幅とLO及びTOフォノンバンド波数との間には相関が見出された。ところで、ロッキングカーブ半値幅には、エピタキシャル層を構成する微結晶のエピタキシャル面に平行なサイズLPと、微結晶のc軸の傾きα(以下、c軸の傾きαと記す)が反映される。そこで次に、LO及びTOフォノンバンド波数と、サイズLP及びc軸の傾きαとの関係を検証した。
上述したように、ロッキングカーブ半値幅とLO及びTOフォノンバンド波数との間には相関が見出された。ところで、ロッキングカーブ半値幅には、エピタキシャル層を構成する微結晶のエピタキシャル面に平行なサイズLPと、微結晶のc軸の傾きα(以下、c軸の傾きαと記す)が反映される。そこで次に、LO及びTOフォノンバンド波数と、サイズLP及びc軸の傾きαとの関係を検証した。
検証は、ロッキングカーブ半値幅に対するサイズLP及びc軸の傾きαの寄与を分離して、LO及びTOフォノンバンド波数とサイズLPとの関係、並びにLO及びTOフォノンバンド波数とc軸の傾きαとの関係に置き換えることで行った。まず、8つの試料(spl21,spl23,spl24,spl30,spl32,spl33,spl36及びspl41)についてMetzgerプロットを行った。その上で、サイズLPとLO及びTOフォノンバンド波数との関係、並びにc軸の傾きαとLO及びTOフォノンバンド波数との関係に分離し、その結果を図4及び図5に表示した。いずれの図においても、LO又はTOフォノンバンド波数を縦軸、サイズLP又はc軸の傾きαを横軸として表示した。
図4(A),(B)及び図5(A),(B)から、c軸の傾きαはLO及びTOフォノンバンド波数との間に、図3と同様な相関を有するのに対し、サイズLPはLO及びTOフォノンバンド波数との間に明確な相関を示さないことが見出された。以上の考察から、図3に示したロッキングカーブ半値幅とLO及びTOフォノンバンド波数との相関は、c軸の傾きαとLO及びTOフォノンバンド波数との相関に読み替えができることが見出された。なお、上記のMetzgerプロットにおいて、ロッキングカーブ半値幅が0.5°以下の試料について、サイズLPが負の値となる。これは、ロッキングカーブ半値幅測定における分解能不足によると考えられる。
[ロッキングカーブ半値幅と結晶の成長状態との関係]
ロッキングカーブ半値幅と結晶の成長状態との関係を考察するために、上記8試料のAlNエピタキシャル層のc軸の傾きαをラセン転位密度Nに読み替え、ラセン転位密度NとLO及びTOフォノンバンド波数との関係を考察した。c軸の傾きαとラセン転位密度Nとは、N=α2/4.35bc 2で表される。そこで、図5のc軸の傾きαとLO及びTOフォノンバンド波数との関係を、ラセン転位密度NとLO及びTOフォノンバンド波数との関係に読み替えて、結果を図6に示したグラフに表示した。上記の式において、bcはc軸方向のバーガーズベクトルの大きさを表し、AlNの場合0.4982nmである。
ロッキングカーブ半値幅と結晶の成長状態との関係を考察するために、上記8試料のAlNエピタキシャル層のc軸の傾きαをラセン転位密度Nに読み替え、ラセン転位密度NとLO及びTOフォノンバンド波数との関係を考察した。c軸の傾きαとラセン転位密度Nとは、N=α2/4.35bc 2で表される。そこで、図5のc軸の傾きαとLO及びTOフォノンバンド波数との関係を、ラセン転位密度NとLO及びTOフォノンバンド波数との関係に読み替えて、結果を図6に示したグラフに表示した。上記の式において、bcはc軸方向のバーガーズベクトルの大きさを表し、AlNの場合0.4982nmである。
図6(A),(B)から、特にエピタキシャル層のラセン転位密度Nが増加するとLOフォノンバンド波数が減少することが明確に見出された。
一方、図1の15枚の試料のうち8枚の試料(spl21,spl23,spl24,spl25,spl30,spl32,spl41,spl42)のエピ層の結晶状態を調べるために、AFM測定を行った。測定は周期接触モードを用い1μm×1μmの領域で行った。AFMには、デジタルインスツルメンツ社(現ビーコ社)製NANOSCOPEIIIA、ステージユニットには同じくデジタルインスツルメンツ社(現ビーコ社)製DIMENSION5000を用いた。8枚の試料のAFM像を図7〜図14に示した。8枚の試料の結晶状態を考察し、ロッキングカーブ半値幅が0.57°以下の領域では、AlNエピタキシャル層が層状(layer−by−layer)成長の段階にあり、一方、ロッキングカーブ半値幅0.57°超の領域においては、AlNエピタキシャル層が島状(island)成長の段階にあることが把握された。パワーデバイス等に使用するためには、エピタキシャル層が層状に形成されていることが必要である。従って、以上の考察から、AlNエピタキシャル層の結晶性を評価するには、ロッキングカーブ半値幅0.57°に対応するLOフォノンバンド波数を評価基準値として設定すればよいことが見出された。
[残留応力のフォノンバンド波数への影響]
次に、LO及びTOフォノンバンド波数には、残留応力(面内引張り応力)が影響すると考えられるので、図1に示したXRDによるAlNエピタキシャル層のc軸歪から求めた残留応力σと、LO及びTOフォノンバンド波数の測定結果とを、図15(A),(B)に示すようにグラフ化して考察した。
次に、LO及びTOフォノンバンド波数には、残留応力(面内引張り応力)が影響すると考えられるので、図1に示したXRDによるAlNエピタキシャル層のc軸歪から求めた残留応力σと、LO及びTOフォノンバンド波数の測定結果とを、図15(A),(B)に示すようにグラフ化して考察した。
図15(A),(B)において、15の試料のうち、黒色の四角マークで示すロッキングカーブ半値幅0.57°以下の試料と、黒色のひし形又は白色のひし形マークで示すロッキングカーブ半値幅0.57°超の試料とで、挙動が明らかに相違することが見出された。即ち、ロッキングカーブ半値幅0.57°以下の試料は、引張り面内応力σが小さくなるとLO及びTOフォノンバンド波数が大きくなるのに対し、ロッキングカーブ半値幅0.57°超の他の試料は、このような関係が見出せない。
なお、図15(A)において、ロッキングカーブ半値幅0.57°以下の試料について、面内応力を0GPaに外挿したLOフォノンバンド波数の値は約890cm−1であり、TOフォノンバンド波数の値は約670cm−1である。上述したようにこれらの値は、非特許文献2のテキサス工科大のT.Prokofyevaらの報告とほぼ一致する。また、この文献によれば、厚さ800μmで引張り面内応力0.6GPaの場合、LOが884.5cm-1、TOが666.5cm-1であるので、引張り面内応力σが大きくなるとフォノンバンド波数が小さくなる相関があることが把握される。この相関は、図15(A),(B)の黒色の四角マークの相関関係と一致する。この測定結果は、図15(A),(B)に黒色の四角マークで示したロッキングカーブ半値幅0.57°以下の試料は、エピタキシャル層の結晶の成長が層状成長の段階に達していることを反映し、膜質が弾性論で議論できるレベルに達していることを示すと考えられる。なお、特に相関関係が明確に把握できるLOフォノンバンド波数と残留応力σとの間に一次の相関関係が在るとして相関係数を求めると約−5.6cm−1/GPaとなり、この値も非特許文献2で報告された-6.3±1.3cm−1/GPaの範囲にある。
一方、上述したように、ロッキングカーブ半値幅0.57°超の試料のLO及びTOフォノンバンド波数と残留応力σとの間には、明確な相関が見られない。従って、この領域のロッキングカーブ半値幅を有する結晶層については、LO及びTOフォノンバンド波数の変化は、専らc軸の傾きαとの相関によって決まる。
そこで、LO及びTOフォノンバンド波数、特に変化の幅が大きいLOフォノンバンド波数の測定によってエピタキシャル層を構成する結晶の結晶性を評価するためには、残留応力σの寄与分を考慮して判断すればよい。即ち、測定したLOフォノンバンド波数値には残留応力σの寄与分が含まれる。
以上の考察をまとめると、ロッキングカーブ半値幅とLO及びTOフォノンバンド波数との間に一次の負の相関があり、この相関は、エピタキシャル層のc軸の傾きαとLO及びTOフォノンバンド波数との相関に読み替えることができる。特にLOフォノンバンド波数の変化の幅が大きいので、エピタキシャル層を構成する結晶層について赤外反射法によりLOフォノンバンド波数を測定することで、結晶性の合否を判断することができる。
(実施例2)
実施例2は、LO及びTOフォノンバンド波数の測定に、赤外透過法を用いた実施例である。本実施例においては、P偏光73.7°入射赤外透過法を用いたが、これに限定されるわけではない。また、実施例2においては、測定のために用いた試料は、実施例1で用いた試料と同一であり詳細の説明は省略する。但し、試料28及び試料36は、赤外光が透過しないため測定対象から除外し、他の13枚の試料について測定した。更に、測定機器並びに可動鏡のscan_velocity及び電気フィルターの設定についても同様であるため、詳細説明は省略する。
実施例2は、LO及びTOフォノンバンド波数の測定に、赤外透過法を用いた実施例である。本実施例においては、P偏光73.7°入射赤外透過法を用いたが、これに限定されるわけではない。また、実施例2においては、測定のために用いた試料は、実施例1で用いた試料と同一であり詳細の説明は省略する。但し、試料28及び試料36は、赤外光が透過しないため測定対象から除外し、他の13枚の試料について測定した。更に、測定機器並びに可動鏡のscan_velocity及び電気フィルターの設定についても同様であるため、詳細説明は省略する。
上述したように、赤外透過法によるLO及びTOフォノンバンド波数の測定方法は、ライトドープの基板について高分解能測定が可能であるという利点がある。従って、赤外透過法によって測定したLO及びTOフォノンバンド波数を用いてエピタキシャル層の結晶性の評価を行うことができれば、ヘビードープ基板については赤外反射法を用い、ライトドープ基板については赤外透過法を用いることで、基板の種類に拘わらずLO及びTOフォノンバンド波数によってエピタキシャル層の結晶性を評価できることになる。
[X線回折ロッキングカーブ半値幅とフォノンバンド波数との関係]
そこで、実施例1と同様に、赤外透過法で測定したAlN層のフォノンバンドのピーク波数、半値幅とエピタキシャル層の結晶性が反映されるX線回折ロッキングカーブの半値幅との相関、ピーク波数とエピタキシャル層の面内応力との相関を調べた。使用した試料は実施例1と同様であるので、詳細の説明は省略するが、試料28及び試料36については赤外光が透過しないため測定対象から除外した。なお、測定機器並びに可動鏡のscan_velocity及び電気フィルターの設定についても実施例1と同様であるが、測定にあたっては、試料に入射直前の光路上にワイヤーグリッド偏光子を挿入し、分解能1cm−1、積算回数100回で測定した。また、AlN/FZSiエピタキシャルウエーハのAlN層のみの透過スペクトルを得るために、試料とほぼ同じ厚さの両面鏡面研磨FZSiウエーハをレファレンスとして測定した。更に、各バンドの波数の読み取りはピーク位置で行い、吸収度表示の各透過スペクトル上で半値幅(full_width_at_half_maximum FWHM)を求めた。測定結果を実施例1の赤外反射法による測定結果と合わせて図1に示す。
そこで、実施例1と同様に、赤外透過法で測定したAlN層のフォノンバンドのピーク波数、半値幅とエピタキシャル層の結晶性が反映されるX線回折ロッキングカーブの半値幅との相関、ピーク波数とエピタキシャル層の面内応力との相関を調べた。使用した試料は実施例1と同様であるので、詳細の説明は省略するが、試料28及び試料36については赤外光が透過しないため測定対象から除外した。なお、測定機器並びに可動鏡のscan_velocity及び電気フィルターの設定についても実施例1と同様であるが、測定にあたっては、試料に入射直前の光路上にワイヤーグリッド偏光子を挿入し、分解能1cm−1、積算回数100回で測定した。また、AlN/FZSiエピタキシャルウエーハのAlN層のみの透過スペクトルを得るために、試料とほぼ同じ厚さの両面鏡面研磨FZSiウエーハをレファレンスとして測定した。更に、各バンドの波数の読み取りはピーク位置で行い、吸収度表示の各透過スペクトル上で半値幅(full_width_at_half_maximum FWHM)を求めた。測定結果を実施例1の赤外反射法による測定結果と合わせて図1に示す。
図23は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料のうち代表的な4試料(spl21,spl32,spl41,spl42)のP偏光73.7°入射赤外透過スペクトルを示す図である。また、図24は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料の測定方法によるLOフォノンバンド波数値及びTOフォノンバンド波数値の相関を示す図であり、(A)は、LOフォノンバンド波数値の相関を示し、(B)は、TOフォノンバンド波数値の相関を示す。図24に示すように、赤外反射法、赤外透過法の両測定方法間において、LOフォノンバンド波数の違いは1cm−1程度でR2相関も0.9924であり、両測定方法による測定結果は、かなり一致している。一方TOフォノンバンド波数のR2相関は、0.8177でLOフォノンバンド波数に比して悪い。
図25は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料のロッキングカーブ半値幅と赤外透過法により測定したフォノンバンド波数との相関を示す図であり、(A)は、LOフォノンバンド波数との相関を示し、(B)は、TOフォノンバンド波数との相関を示す。図25に示すように、赤外反射法による測定結果と同様に、赤外透過法による測定結果からもLOフォノンバンド波数とロッキングカーブ半値幅との間には一次の負の相関があることがはっきりと把握される。LOフォンバンド波数の変化の幅は20cm−1に及ぶ。一方、TOフォノンバンド波数もロッキングカーブ半値幅に対して負の相関を示すが、変化の幅は10cm−1程度で、LOフォノンバンド波数の変化の幅に比して小さい。
図26は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料のロッキングカーブ半値幅と赤外透過法により測定したフォノンバンドの半値幅との相関を示す図であり、(A)は、LO半値幅との相関を示し、(B)は、TO半値幅との相関を示す。LO半値幅、TO半値幅とロッキングカーブ半値幅との間には一次の正の相関があり、LO半値幅の傾きが大きい。なお、実施例2の赤外透過法による測定においては、吸光度スペクトル上のフォノンバンドの半値幅を読み取ったのに対し、実施例1の赤外反射法による測定においては、振動子解析により減数定数を求めている。
ここで、赤外反射法による測定結果と赤外透過法による測定結果とを図1も援用して比較すると、LOフォノンバンド波数については、調査したロッキングカーブ半値幅域全域に渡って、両測定方法による測定結果の乖離は1cm−1程度であり、LOフォノンバンド波数の相関はよい。一方、TOフォノンバンド波数については、ロッキングカーブ半値幅が小さいと乖離は1cm−1程度で小さいが、ロッキングカーブ半値幅が大きくなると乖離は5cm−1弱になり大きくなる。これを反映して、ロッキングカーブ半値幅に対するLOフォノンバンド波数の変化の幅は、両測定法ともに約20cm−1程度であるが、TOフォノンバンド波数の変化の幅は、赤外反射法では約5cm−1、赤外透過法では約10cm−1となる。
図27は、本発明の一実施の形態に係る結晶性評価方法を見出すために使用した測定試料についてXRDのc軸歪から求めた残留応力σと赤外透過法により測定したフォノンバンド波数との相関を示す図であり、(A)は、LOフォノンバンド波数との相関を示し、(B)は、TOフォノンバンド波数との相関を示す。図27の結果は、図15に示した赤外反射法の結果とよく一致している。
以上説明したように、AlN層等のエピタキシャル層について、赤外透過法によってフォノンバンドのピーク波数、半値幅とX線回折のロッキングカーブ半値幅(FWHM)との相関、及びフォノンバンドのピーク波数と残留応力との相関を確認することができた。従って、赤外反射法と同様に、赤外透過法による測定によっても、フォノン波数とX線回折ロッキングカーブ半値幅(FWHM)及び/又は残留応力との相関を確認することができ、エピタキシャル層の結晶性の評価を測定の容易なフォノンバンド波数によって行うことができる。特に、LOフォノンバンド波数は、X線回折ロッキングカーブ半値幅との間に変化が大きくかつ明確な相関があり、LOフォノンバンド波数を測定することで、容易にエピタキシャル層の結晶性を評価することができる。
(実施例3)
実施例3は、フォノンバンド波数を測定することで、IV族結晶層の結晶性を評価する例である。IV族結晶層として、基板上にエピタキシャル成長させたSiC層について、X線回折(ロッキングカーブ(ω−scan)と歪測定(ω−2θscan))、反り測定、原子間力顕微鏡(AMF)観察に基づいて検証した。
実施例3は、フォノンバンド波数を測定することで、IV族結晶層の結晶性を評価する例である。IV族結晶層として、基板上にエピタキシャル成長させたSiC層について、X線回折(ロッキングカーブ(ω−scan)と歪測定(ω−2θscan))、反り測定、原子間力顕微鏡(AMF)観察に基づいて検証した。
6枚の試料を作製し、うち5枚の3C‐SiC(111)/FZSi(111)エピタキシャルウウエーハを測定試料に用いた。5枚の試料は、リンドープ片面鏡面研磨FZSi基板(3インチφ、面方位(111)、比抵抗約1kΩcm)の表面をプロパンで炭化したspl6(炭化FZSi(111)、SiC層の厚さ15nm)と、FZSi基板表面を炭化後シランとプロパンで3C−SiCエピタキシャル層を成長させたヘテロエピウエーハ試料spl3(SiC層の厚さ445nm)、spl7(SiC層の厚さ437nm)、spl46(SiC層の厚さ290nm)、spl47(SiC層の厚さ300nm)である。なお、slp3,7,46,47の薄膜層は、X線で面方向(111)の3C−SiCであることを確認している。また、SiC層の測定は、spl6,3,7については、He/Neレーザー光(波長6328Å)を用いたエリプソメーターを用いた。3C−SiC層の屈折率は2.63に固定した。また、spl46,47については光干渉法を用いた。作製した6枚の試料(うち測定試料は5枚)の特性を図16に示す。
次に、5枚の試料について、室温でP偏光73.7°入射赤外透過測定を行い、さらにspl3,6,7の3枚については、赤外測定との比較のために偏光ラマン散乱測定も行った。また、5枚の試料(spl6,spl3,spl7,spl46,spl47)について、SiC表面の観察のためにAFM観察、SiC層の結晶性評価のためにX線回折ロッキングカーブ(ω−scan)測定、SiC層の(111)方向歪測定のためにX線回折ω−2θscan測定とウエーハの反り測定を行った。測定にはBruker社製IFS113Vフーリエ変換型赤外分光光度計を用いた。また、Globar光源、Ge/KBrビームスプリッター、deuterated triglycine sulfate(DTGS)検出器を用いた。試料に入射直前の光路上にワイヤーグリッド偏光子を挿入し、分解能は0.25cm−1、積算回数は、spl6が300回、spl3,7が200回、spl46,47が100回である。また、可動鏡のscan velocityは12.5KHzとした。測定した透過スペクトルを図17、図18に示す。図17は、図16に示した3C−SiC/FZSiエピタキシャルウエーハ試料のうち3枚の試料(spl3,spl6,spl7)のP偏光73.7°入射赤外透過測定結果を示す図である。また、図18は、図16に示した3C−SiC/FZSiエピタキシャルウエーハ試料のうち2枚の試料(spl46,sp47)のP偏光73.7°入射赤外透過測定結果を示す図である。各バンドの波数の読み取りはピーク位置で行った。高波数側のバンドがT2(LO)バンド、低波数側のバンドがT2(TO)バンドであり、以後T2(LO)をLO、T2(TO)をTOと呼ぶ。
次に、赤外測定との比較のために、3枚の試料(spl3,spl6,spl7)についてラマン散乱でT2フォノンのTOモードとLOモードの測定を行った。測定結果を図19に示す。図19は、赤外測定との比較のための使用した図16の示した試料のうち3枚の試料(spl3,spl6,spl7)のラマン散乱測定結果を示す図である。測定配置は、ウエーハ面に垂直な方向をZ、ウエーハ面内でオリエンテーションフラットに平行な方向をX、垂直な方向をYとして、 ̄Z(XX)Z(TOとLO測定可)と ̄Z(XY)Z(TO測定可)の後方散乱偏光ラマン測定配置を用いた。測定には堀場−Jobin‐Yvon製HR800型顕微ラマン分光装置を用いた。励起光はArイオンレーザーの488nm発振線を200mWに設定しバンドパスフィルター(干渉フィルター)無しで用いた。回折格子は2400本/nm、検出器はCCD(charge coupled device)、対物レンズは50倍(長作動距離型 オリンパスSLMPL)、holeは100μmである。ラマン散乱で測定したTO波数とLO波数の校正には、ラマン測定と同時に測定したArレーザーのプラズマ線(自然放出線)847.7cm−1と982.8cm−1をそれぞれ用いた(プラズマ線の波数は、励起レーザー波数を0cm−1として表示した)。積算時間は480秒(ND filterなし)である。また、ピーク波数は波数解析により求め、プラズマ線のフィティングにはGauss関数、フォノンバンドのフィティングにはLorentz関数を用い、解析ソフトOriginで解析した。
X線回折法によるエピタキシャル層のロッキングカーブの半値幅の測定(ω測定)と、垂直方向(c軸方向)歪の測定(ω−2θ測定)には、(111)X線回折を用いた。測定には、Spectris X’Pert MRD PRO ディフラクトメーター(diffractometer)を用い、XRDω−2θ法により(111)方向歪を測定後、(111)方向歪から面内歪、面内歪から面内応力の順に弾性論によりエピタキシャル層の面内応力を算出した。
AFM観察は周期接触モードを用い、1μm×1μmの領域で行った。AFM観察にはAFMユニットNANOSCOPEIIIA、ステージユニットにはデジタルインスツルメンツ(現ビーコ)製DIMENSION5000を用いた。
赤外透過法とラマン散乱によるSiC膜層のT2フォノンの測定結果を図16にまとめて示す。
エピタキシャル層が薄い試料(spl6:15nmt SiC/FZSi)のLOフォノンバンド波数=961.5cm−1,TOフォノンバンド波数=791.5cm−1である。一方、エピタキシャル層が厚い試料は、spl3(445nmt SiC/FZSi)のLO=968.5cm−1,TO=789.5cm−1(ラマン)、spl7(437nmt SiC/FZSi)のLO=969.9cm−1(赤外)または969.5cm−1(ラマン),TO=791.6cm−1または791.8cm−1(いずれもラマン)、spl46(290nmt SiC/FZSi)のLO=968.4cm−1(赤外),TO=〜792cm−1(赤外)、spl47(300nmt SiC/FZSi)のLO=968.8cm−1(赤外),TO=〜792cm−1(赤外)である。SiC層が薄い場合と厚い場合ではTOフォノン波数はほとんど変わらないのに対し、LOフォノン波数は厚い場合のほうが7〜8cm−1程高い。
同様にXRDのロッキングカーブの半値幅を図16に示す。エピタキシャル層が薄いspl6が3.44deg、その他の試料は、spl3が0.616deg、spl7が0.545deg、spl46が0.710deg、spl47が0.833degである。結晶性はエピタキシャル層の厚い試料の方が明らかに高い。さらに、3つの試料(slp6,3,46)のAFM像を、それぞれ図20,図21,図22に示す。図20は、試料spl6のAFM像である。図21は、試料spl3のAFM像である。また図22は、試料spl46のAFM像である。図20〜図22からも把握されるように、結晶性が低い試料slp6では、10〜20μmの島状成長段階にあるのに対し、結晶性が高い試料spl3,spl46では、layer−by−layer成長段階である。特に試料spl3の膜質はよい。
ロッキングカーブ半値幅は、エピタキシャル層を構成する結晶粒のエピ面に平行なサイズLPと、結晶粒の(111)方向の傾き角αに依存する。そこで、Metzgerらの解析法に従ってLPとαを求め、その結果を図16に併せて示す。試料spl6では高次(111)回折を測定できずLPとαを求めることはできないが、他の試料(spl3,spl7,spl46,spl47)については、αが大きくなるとLPは小さくなる逆相関の関係にある。αとロッキングカーブ半値幅とを比較すると、ロッキングカーブ半値幅の多くの部分はαからの寄与に基づくことがわかる。このことからα値が得られていない薄いエピタキシャル層の試料spl6のLPは小さいと考えられる。AFM像では、上述したように、エピタキシャル層の薄い試料は島状成長段階にあり、エピタキシャル層の厚い試料はlayer−by−layer成長段階にある。これはロッキングカーブ測定に基づく解析結果とよく一致する。
結晶粒の(111)方向の傾き角αと(111)方向の貫通ラセン転位密度Nとは、N=α2/(4.35・bc 2)の関係を持つ。ここで、bcは(111)方向の3C−SiCエピタキシャル層の貫通ラセン転位のバーガーズベクトルである。この関係から、傾きαが大きくなれば転位密度Nも増大し、結果的に結晶粒サイズが小さくなると考えられる。即ち、貫通ラセン転位密度Nとエピ面に平行な結晶粒サイズLpは逆相関関係にあり、これはIII族窒化物結晶層の場合と同様である。
次に、LO及びTOフォノンバンド波数には、残留応力(面内引張り応力)について検証した。図16の示すように、エピタキシャル層の歪(反り)について、X線回折ω−2θscan測定とウエーハの反り測定を行った。エピタキシャル層が薄い試料spl6のXRDによる(111)方向歪は格子定数測定不能、反りは、ウエーハのオリエンテーションフラット([110]方向)に対して水平方向の値をx、垂直方向の値をyとしたときに、x=2.5,y=1.8μmでほとんど反っていないのに対して、エピタキシャル層の厚い方の試料spl3の(111)方向歪は−0.000461、反りはx=35,y=35μm(表面側が凹)、試料spl7は、(111)方向歪は−0.000119、反りはx=17,y=15μm(表面側が凹)である。試料spl46,spl47も試料spl3に近い歪と反りの値を示す。エピタキシャル層が厚い4枚の試料(spl3,spl7,spl46,spl47)は、試料spl6よりも明らかに反っている(表面側が凹)ので、これら4枚の試料のエピタキシャル層は面内引張り応力を受ける。一方、試料spl6はほとんど反っておらずエピタキシャル層に歪はない。このため、4枚の試料は試料spl6に比べてTO、LOともに低波数側にシフトするはずである。ところが、これら4枚の試料のエピタキシャル層のLO波数は、実際には試料spl6に比して高波数側にシフトし、一方、TOはほとんど変化しない。このことから、波数シフトと歪との関連は考えられない。
なお、4枚の試料間においては、反りが大きい(歪の絶対値が大きい)試料spl3,spl46,spl47では、反りが小さい試料spl7に比してLO,TOともに1cm−1程度低波数側にシフトしている。この波数シフトは、残留歪に基づくと考えられる。
以上説明した実施例3のX線ロッキングカーブ測定とAFM観察から、エピタキシャル層のロッキングカーブ半値幅が広い試料spl6は、エピタキシャル層を構成する結晶粒のサイズは小さく島状成長段階にあるのに対し、ロッキングカーブ半値幅が狭い試料(spl3,spl7,spl46,spl47)は、layer−by−layer成長段階にあると言える。そして、これらの試料間においては、TOフォノン波数はほとんど同じであるのに対し、LOフォノン波数は高結晶性試料(spl3,spl7,spl46,spl47)の方が低結晶性試料(spl6)よりも7〜8cm−1程高い。LO振動数のTO振動数からの分裂は、LO振動自体が誘起する巨視的電場(反分極場)に由来するので、LO波数は結晶の空間的な広がりの様子の影響を受ける。一方、TO波数は主に短距離ポテンシャルに支配され結晶性の影響は受けにくい。即ち、島状成長段階の低結晶性のSiC層のLO波数は、高結晶性のlayer−by−layer成長段階にあるエピタキシャル層よりも低く、エピタキシャル層の結晶性を反映して変化する。従って、LOフォノンバンド波数を測定することで、IV族結晶層のエピタキシャル層の結晶性の評価を容易に行うことができる。
(効果)
上述した実施例1及び実施例2の結果から、赤外反射法、赤外透過法の測定方法を問わず、また、ヘビードープ基板、ライトドープ基板等の基板の種類を問わず、フォノンバンド波数を測定することで、エピタキシャル層の結晶性の評価を容易に行うことが可能となる。特に、X線回折ロッキングカーブ半値幅との間に、変化が大きく明確な相関があるLOフォノンバンド波数に注目することで、より評価の精度を向上させることができる。評価基準値は、結晶層がAlN微結晶層の場合LOフォノンバンド波数880cm−1超である。以上のLOフォノンバンド波数基準超の場合に、エピタキシャル成長させた結晶層の結晶性が良好であると、XRDロッキングカーブ測定をしなくても、容易に判断することができる。また、この結晶性の評価方法は、IV族結晶層についても適用することができる。結晶性は通常フォノンバンドの半値幅が関連すると考えられるが、本発明は、測定が容易なLOフォノンのピーク一の波長をプローグとして用いることを特徴としている。
上述した実施例1及び実施例2の結果から、赤外反射法、赤外透過法の測定方法を問わず、また、ヘビードープ基板、ライトドープ基板等の基板の種類を問わず、フォノンバンド波数を測定することで、エピタキシャル層の結晶性の評価を容易に行うことが可能となる。特に、X線回折ロッキングカーブ半値幅との間に、変化が大きく明確な相関があるLOフォノンバンド波数に注目することで、より評価の精度を向上させることができる。評価基準値は、結晶層がAlN微結晶層の場合LOフォノンバンド波数880cm−1超である。以上のLOフォノンバンド波数基準超の場合に、エピタキシャル成長させた結晶層の結晶性が良好であると、XRDロッキングカーブ測定をしなくても、容易に判断することができる。また、この結晶性の評価方法は、IV族結晶層についても適用することができる。結晶性は通常フォノンバンドの半値幅が関連すると考えられるが、本発明は、測定が容易なLOフォノンのピーク一の波長をプローグとして用いることを特徴としている。
Claims (4)
- 基板表面に化合物半導体結晶層をヘテロエピタキシャル成長させた複数の試料を用意し、
前記複数の試料のそれぞれについて化合物半導体結晶層に赤外反射法または赤外透過法で赤外光を照射してLOフォノンバンド波数を測定し、
前記複数の試料のそれぞれについてX線回折の成長表面に垂直な方向の歪により化合物半導体結晶層の残留応力を測定し、
AFM像を用いて前記複数の試料のそれぞれの化合物半導体結晶層の結晶性を評価し、
前記評価において結晶性が良好と判断された前記試料のうち前記LOフォノンバンド波数が最も低いものを基準値とし、
評価対象の化合物半導体結晶層に赤外反射法または赤外透過法で赤外光を照射して得られたLOフォノンバンド波数が前記基準値超の場合に、評価対象の化合物半導体結晶層が良好な結晶性に達していると判断することを特徴とする化合物半導体結晶層の結晶性評価方法。 - 前記化合物半導体結晶層は、III族窒化物結晶層またはIV族結晶層であることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体結晶層の結晶性評価方法。
- 前記所定の基準値は、前記III族窒化物結晶層がAlN結晶層の場合にLOフォノンバンド波数880cm−1であることを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体結晶層の結晶性評価方法。
- 前記AFM像を用いた結晶性の評価において、化合物半導体結晶層が層状(layer−by−layer)に形成されているものを結晶性が良好であると判断することを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体結晶層の結晶性評価方法。
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JP2009218090A JP2011066360A (ja) | 2009-09-18 | 2009-09-18 | ヘテロエピウエーハのエピタキシャル層の結晶性評価法 |
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CN108760783A (zh) * | 2018-05-28 | 2018-11-06 | 厦门大学 | 一种铯钨青铜粉体结晶度的评价方法 |
WO2023002854A1 (ja) * | 2021-07-21 | 2023-01-26 | 東京エレクトロン株式会社 | 基板処理方法及び基板処理装置 |
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2009
- 2009-09-18 JP JP2009218090A patent/JP2011066360A/ja active Pending
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