JP2011036831A - 溶媒抽出装置 - Google Patents

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徹哉 石井
Yoji Fujimori
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Abstract

【課題】膜蒸留法における溶媒の抽出効率を高める。
【解決手段】海水等の溶液を、第1の通路11に通し、熱源2にて加熱し、第2の通路12に通す。第2通路12の溶液中の溶媒が蒸留膜15を透過して蒸発し、溶媒抽出室13に入り、不透過膜14上で凝縮する。溶液を第1の通路11に導入する前に昇温部4にて昇温し、第1の通路11の上流端での溶液温度を初期温度より高くする。熱源2の供給熱量及び第2の通路12の上流端での溶液温度に基づいて、上記昇温度を調節する。
【選択図】図3

Description

この発明は、海水等の溶液から溶媒を抽出する装置及び方法に関し、特に膜蒸留法(MD(Memblen Distillation)法)による溶媒抽出装置及び方法に関する。
膜蒸留法は、海水等の溶液から淡水等の溶媒を抽出する方法として公知である(例えば特許文献1等参照)。膜蒸留法を実施する装置は、蒸留器を備えている。蒸留器の内部には2つの膜により3つの通路が形成されている。2つの膜のうち1つは、気体も液体も通さない不透過膜(伝熱隔壁)であり、もう1つは、気体は通すが液体は通さない蒸留膜である。不透過膜により第1の通路が画成されている。蒸留膜により第2の通路が画成されている。不透過膜と蒸留膜との間に第3の通路として溶媒抽出室が画成されている。
海水(溶液)を先ず第1の通路に通す。海水の初期温度は、通常、常温である。海水は常温のまま第1通路に導入される。この海水が、後述する水蒸気の凝縮潜熱を不透過膜を介して受け取り、昇温する。第1の通路を通過後の海水を太陽熱集熱器等の熱源で加熱して更に高温にする。熱源として太陽熱集熱器を用いる場合、海水の加熱量は日照条件等に依存する。熱源からの高温海水を第2の通路に通す。この高温海水中の水蒸気が蒸留膜を透過して溶媒抽出室に入る。この水蒸気が、不透過膜を介して第1の通路の海水と接触して冷却され、凝縮する。これにより、溶媒抽出室から淡水を取り出すことができる。
特許文献1では、熱源としての太陽熱集熱器と第2の通路との間に流量制御弁を設け、太陽熱集熱器の下流端での海水温度に応じて海水流量を調節している。これにより、日射量が変動しても、淡水の製造量が大きく変動しないようにしている。
実開昭63−016802号公報
一般に、膜蒸留法による溶媒抽出装置では、第2の通路内の溶液から第1の通路内の溶液への熱移動が上述したように潜熱移動により行われるものとして設計されている。熱移動がすべて潜熱の形で行われる場合、蒸留器の第1の通路の上流端と下流端での溶液温度差及び第2通路の上流端と下流端での溶液温度差がなるべく大きいほうが、溶液の単位流量あたりの溶媒の抽出流量が大きくなる。したがって、特許文献1の制御方法によって第2の通路の上流端での溶液温度を一定に維持したとすると、溶液の第1の通路への供給温度が低ければ低いほど、溶媒抽出室の水蒸気を凝縮させやすく、より多量の溶媒を抽出でき、溶液の必要流量を小さくできると言える。
しかし、溶液温度が低くなると溶媒の蒸気圧が低くなる。そのため、実際には、第1の通路内の上流側部分及び第2の通路内の下流側部分では、顕熱による熱移動が潜熱による熱移動より優勢になる。顕熱が優勢である場合、溶液の第1の通路への供給温度が低くなると、溶液の単位流量あたりの溶媒の抽出流量が小さくなる。したがって、所望量の溶媒を抽出するのに要する溶液の使用量が増える。溶液が海水の場合には、海水の輸送コストが嵩む。また、蒸留膜は比較的高価であるにも拘わらず、顕熱による熱移動では蒸留膜の機能が活用されない。
本発明は、上記事情に鑑み、海水等の溶液から淡水等の溶媒を膜蒸留法にて抽出する効率を高め、蒸留膜の単位面積あたりの溶媒抽出量を増大させ、蒸留膜の機能を十分に活用することを目的とする。
上記問題点を解決するために、本発明装置は、溶液から溶媒を抽出する装置であって、
上記溶液の供給源に連なる供給路と、
上記供給路に連なる第1の通路と、
上記第1の通路から出た上記溶液を加熱する熱源と、
上記加熱後の溶液を通す第2の通路と、
上記第1の通路と第2の通路の間に設けられた溶媒抽出室と、
上記第1の通路と上記溶媒抽出室とを熱交換可能に仕切る伝熱隔壁と、
上記第2の通路と上記溶媒抽出室とを仕切り、気体の透過を許容し、液体の透過を阻止する蒸留膜と、
上記第1の通路の上流端での上記溶液の温度(以下「第1入力温度」と称す)を上記供給路での上記溶液の初期温度より高くする昇温部と、
上記熱源が上記溶液に与える熱量及び上記第2の通路の上流端での上記溶液の温度(以下「第2入力温度」と称す)に基づいて、上記昇温部による上記溶液の昇温度を調節する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
また、本発明方法は、溶液から溶媒を抽出する方法であって、
伝熱隔壁を介して溶媒抽出室と熱交換可能に仕切られた第1の通路に、上記溶液を通す第1工程と、
上記第1の通路から出た上記溶液を熱源により加熱する加熱工程と、
気体の透過を許容し液体の透過を阻止する蒸留膜を介して上記溶媒抽出室と仕切られた第2の通路に、上記加熱後の上記溶液を通す第2工程と、
上記第1工程の前に上記溶液の温度を高くする昇温工程と、
を備え、上記昇温工程において、上記熱源が上記溶液に与える熱量及び上記第2の通路の上流端での上記溶液の温度に基づいて、上記昇温工程における上記溶液の昇温度を調節することを特徴とする。
溶液を第1の通路に通すと(第1工程)、溶媒抽出室の溶媒蒸気の凝縮潜熱が伝熱隔壁を介して第1の通路の溶液に伝わり、第1の通路の溶液の温度が上昇する。第1の通路を通過後の溶液が熱源で加熱され(加熱工程)、更に高温になる。熱源から出た高温の溶液を第2の通路に通すと(第2工程)、溶液中の溶媒が蒸発して蒸留膜を透過して溶媒抽出室に入る。この溶媒蒸気が、伝熱隔壁を介して第1の通路の溶液にて冷却されて凝縮する。これにより、溶媒抽出室から凝縮溶媒を取り出すことができる。併行して、昇温部にて第1の通路の上流端での溶液温度(第1入力温度)を初期温度より高くする(昇温工程)。このとき、熱源の供給熱量及び第2の通路の上流端での溶液温度(第2入力温度)に基づいて上記昇温度を調節することで、第2の通路内の溶液から溶媒が溶媒抽出室へ十分に蒸発でき、かつ溶媒抽出室内の蒸発溶媒が十分に凝縮できるよう、第1入力温度を好適な大きさに設定できる。この結果、蒸留膜の単位面積あたりの溶媒抽出量を確保でき、蒸留膜の機能を十分に活用することができる。ひいては、溶媒の抽出効率を高くすることができ、所望流量の溶媒を得るのに必要な溶液の流量を低減できる。
上記昇温部が、上記第2の通路から出た上記溶液の一部又は全部を上記供給路に戻す還流路を含み、上記制御部が、上記還流路の上記溶液の流量を操作することが好ましい。
上記第2の通路から出た上記溶液の一部又は全部を、上記第1工程に供される新たな溶液に混合し、この混合の流量比を調節することで上記昇温度を調節することが好ましい。
還流ないしは混合によって、溶液の第1入力温度を初期温度より高くでき、還流量ないしは混合流量比の調節によって、第1入力温度を好適化して溶媒抽出効率を確保できる。更には、系へ新たに供給する溶液の流量を還流ないしは混合の分だけ小さくできる。よって、所望流量の溶媒を得るのに必要な溶液の流量を一層低減できる。
上記制御部が、上記熱量及び上記第2入力温度に対して、上記溶媒抽出室からの上記溶媒の抽出流量が最大又は最大近傍になる上記第1入力温度の値を示すデータを記憶した記憶部を含むことが好ましい。
上記の記憶データを用いて、第1入力温度を、溶媒の抽出流量が最大又は最大近傍になるよう調節することにより、蒸留膜の単位面積あたりの溶媒抽出量を確実に大きくでき、溶媒抽出効率を十分に高くすることができる。
上記溶液は、例えば海水、塩水(かん水)、又は汚水である。
これにより、海水、塩水から淡水を製造できる。或いは、汚水から浄水を得ることができる。
本発明によれば、溶媒の抽出効率を高めることができ、蒸留膜の単位面積あたりの溶媒抽出量を大きくでき、蒸留膜の機能を十分に活用することができる。
本発明の第1実施形態に係る溶媒抽出装置の概略構成を示す回路図である。 (a)〜(f)は、海水の第1の通路の上流端での温度と、熱源が海水に与える熱量と、海水の第2の通路の上流端での温度とからなる3つの物理量に対する溶媒抽出室からの淡水の抽出流量の相互関係をシミュレーションして作成したグラフである。 本発明の第2実施形態に係る溶媒抽出装置の概略構成を示す回路図である。
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示したものである。第1実施形態の溶媒抽出装置1は、熱源2と、蒸留器10を備えている。熱源2は、例えば太陽熱集熱器にて構成されているが、これに限定されず、各種工場の設備機械やエンジン等から出る排熱の回収部でもよく、電熱ヒーターでもよく、熱交換器でもよい。
蒸留器10は、3つの路11,12,13と、2つの膜14,15を備えている。第1の通路11の一部又は全体が、不透過膜14(伝熱隔壁)によって画成されている。第2の通路12の一部又は全体が、蒸留膜15によって画成されている。溶媒抽出室13が、不透過膜14と蒸留膜15の間に画成されている。不透過膜14が、第1の通路11と溶媒抽出室13を仕切っている。蒸留膜15が、第2の通路12と溶媒抽出室13を仕切っている。
不透過膜14は、気体も液体も透過させることがなく、かつ良伝熱性の膜で構成されている。不透過膜14として、例えばアルミニウムの薄膜が挙げられる。不透過膜14の材質はアルミニウムに限られず、ステンレス等の他の金属でもよく、金属に限られず、PET等の樹脂であってもよい。
蒸留膜15は、例えば多孔質の膜で構成され、気体の透過を許容し、液体の透過を阻止する。
第1の通路11の一端(上流端)に供給路21が連なっている。供給路21は、海水(溶液)の供給源9から延びている。海水供給源9は、海そのものでもよく、海水を貯めたタンクでもよい。供給源9の海水の温度(初期温度T)は通常、常温(数℃〜20数℃)である。供給路21には、送液ポンプ3が設けられている。送液ポンプ3の駆動によって、海水が供給路21を通り第1の通路11に導入される。海水中の水分が、抽出対象の溶媒を構成する。供給路21の第1の通路11との連通部の近くには第1温度測定器31が設けられている。第1温度測定器31は、第1の通路11内の上流端付近に設けてもよい。さらに、図示は省略するが、供給路21には海水中の不純物を除去するフィルターが設けられている。フィルターは、送液ポンプ3と第1の通路11との間の供給路21に設けてもよく、送液ポンプ3より上流側の供給路21に設けてもよい。
第1の通路11の他端(下流端)から第1連絡路22が延びている。連絡路22には、第2温度測定器32及び流量計35が設けられている。第2温度測定器32は、太陽熱集熱器2内の入口ポート付近に設けてもよい。連絡路22の先端が太陽熱集熱器2の入口ポートに接続されている。
太陽熱集熱器2の出口ポートから第2連絡路23が延びている。連絡路23には、第3温度測定器33及び流量制御弁43が設けられている。第3温度測定器33は、太陽熱集熱器2内の出口ポート付近に設けてもよく、第2の通路12内の上流端付近に設けてもよい。連絡路23の先端が第2の通路12の上流端に連なっている。第2の通路12の下流端から排出路24が延びている。
第2の通路12の上流端は、蒸留器10の長手方向に沿って第1の通路11の下流端と同じ側の端部に配置されている。第2の通路12の下流端は、蒸留器10の長手方向に沿って第1の通路11の上流端と同じ側の端部に配置されている。したがって、第1の通路11と第2の通路12は、溶媒抽出室13を挟んで対向流を構成している。
溶媒抽出室13の一端から出力路25が延びている。出力路25は、第1の通路11の上流端及び第2の通路12の下流端と同じ側から延びているが、第1の通路11の下流端及び第2の通路12の上流端と同じ側から延びていてもよい。
更に、溶媒抽出装置1は、昇温部4と、制御部5を備えている。昇温部4は、供給路21に介在されている。昇温部4は、例えば電熱ヒーターで構成されているが、熱交換器、太陽熱集熱器、排熱回収部等にて構成されていてもよい。熱源2を供給路21に熱的に接続し、熱源2が昇温部4を兼ねるようにしてもよい。
制御部5は、マイクロコンピュータや、送液ポンプ3及び昇温部4等の駆動回路を含む。図示は省略するが、温度測定器31,32,33及び流量計35からの検出信号線が制御部5に接続されている。制御部5からの制御信号線が、送液ポンプ3及び昇温部4に接続されている(昇温部4への制御信号線のみ図示)。制御部5のマイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM等を含み、溶媒抽出装置1の動作を統括する。上記ROMは、各種プログラムが格納されたプログラムROMの他、各種データが記憶されたデータROM(記憶部5m)を含む。記憶部5mの記憶データには、第1の通路11の上流端での海水温度(第1入力温度T31)と、熱源2から海水への供給熱量Qと、第2の通路12の上流端での海水温度(第2入力温度T33)とからなる3つの物理量に対する、溶媒抽出室13からの淡水(溶媒)の抽出流量Wの相互関係データが含まれている。この相互関係データは、上記供給熱量Q及び第2入力温度T33に対して、溶媒抽出室13からの淡水の抽出流量Wが最大(又は最大近傍)になるような第1入力温度のデータを含む。
図2(a)〜(f)は、上記相互関係データの一例をグラフ化したものである。このグラフは、蒸留器10の各部の寸法を以下に設定してシミュレーションしたものである。
路11〜13及び膜14,15の幅(図1の紙面直交方向の寸法)300mm
路11〜13及び膜14,15の長さ(図1の上下方向の寸法) 10m
第1の通路11の厚さ(図1の左右方向の寸法) 1mm
第2の通路12の厚さ(図1の左右方向の寸法) 1mm
溶媒抽出室13の厚さ(図1の左右方向の寸法) 0.5mm
さらに、シミュレーションでは、海水の流量U=13cc/secとした。なお、第2の通路12では下流に向かうにしたがって溶媒抽出室13への蒸発により海水流量が厳密には減少するが、その減少量は僅かであるため無視した。熱源2からの供給熱量Q[W]は、下式(1)で表わされる。
Q=c×U×(T33−T32) …式(1)
ここで、cは、海水の体積比熱(4.18J/cc)である。T32は、海水の連絡路22での温度ひいては海水の熱源2への導入時の温度である。
図2(a)〜(f)に示すように、熱源2からの供給熱量Qが大きいほど、淡水の抽出流量Wが大きい。第1入力温度T31が比較的低い領域では、供給熱量Q及び第2入力温度T33が一定の場合、第1入力温度T31が低いほど淡水の抽出流量Wが小さい。これは、水の蒸発及び凝縮を伴わない顕熱移動が顕著になるためである。一方、第1入力温度T31が比較的高い領域では、供給熱量Q及び第2入力温度T33が一定の場合、第1入力温度T31が高いほど淡水の抽出流量Wが小さい。そして、第1入力温度T31が第2入力温度T33に近づくにしたがって淡水の抽出流量Wがゼロに収束する。これは、第1の通路11の温度が高過ぎると、溶媒抽出室13内の水蒸気が不透過膜14上で凝縮しにくくなるためである。したがって、淡水の抽出流量Wは、第1入力温度T31に対してピークを持つ。言い換えると、第1入力温度T31には、淡水の抽出流量Wを最大(又は最大近傍)にする最適値が存在する。記憶部5mには、供給熱量Q及び第2入力温度T33に対する第1入力温度T31の最適値がテーブル化されて記憶されている。第1入力温度T31の最適値は、供給熱量Q及び第2入力温度T33の関数になるから、この関数の式を記憶部5mに記憶させてもよい。第1入力温度T31の最適値は、シミュレーションに限られず、実機を用いて実験することで算出してもよい。第1入力温度T31の最適値は、通常、初期温度T(常温)より高温である。
上記構成の溶媒抽出装置1の動作を説明する。
送液ポンプ3を駆動し、海水を供給源9から汲み上げ、この海水を、供給路21を経て、蒸留器10の第1の通路11に通す(第1工程)。第1の通路11内の海水は、溶媒抽出室13における後述する水蒸気の凝縮潜熱を不透過膜14を介して受け取る。これにより、第1の通路11の下流に向かうにしたがって海水の温度が上昇する。第1の通路11から出た海水を、連絡路22を経て太陽熱集熱器2に導入する。太陽熱集熱器2は、太陽熱を集熱して海水に与える。これにより、海水が加熱されて更に高温になる(加熱工程)。太陽熱集熱器2から海水に与えられる熱量は、日照条件等によって変動する。
太陽熱集熱器2から出た高温の海水を、連絡路23を経て第2の通路12に通す(第2工程)。第2の通路12内において、高温海水中の水蒸気が蒸留膜15を透過して溶媒抽出室13に入る。この水蒸気が不透過膜14を介して第1の通路11の海水により冷却され凝縮する。これにより、淡水が得られる。淡水は、溶媒抽出室13から出され、出力路25を経て、種々の利用に供される。
上記の海水流通と併行して、温度測定器31にて供給路21での海水温度T31を測定し、温度測定器32にて連絡路22での海水温度T32を測定し、温度測定器33にて連絡路23での海水温度T33を測定する。温度測定器31の測定温度T31は、第1の通路11の上流端での海水温度(第1入力温度)に相当する。温度測定器32の測定温度T32は、熱源2への導入時の海水温度に相当する。温度測定器33の測定温度T33は、熱源2から導出時の海水温度、ひいては第2の通路12の上流端での海水温度(第2入力温度)に相当する。さらに、流量計35にて海水の流量Uを測定する。これら測定器31,32,33,35の測定データT31,T32,T33,Uを制御部5に入力する。制御部5は、入力データT32,T33,Uを式(1)に代入して熱源2の供給熱量Qを算出する。続いて、制御部5は、供給熱量Qの上記算出値と第2入力温度T33の入力データを記憶部5mの相互関係データテーブルに当てはめ、第1入力温度T31の最適値すなわち淡水の抽出流量Wを最大(又は最大近傍)にする第1入力温度T31の値を求める。
さらに、制御部5は、昇温部4の駆動回路(図示省略)を介して昇温部4を操作する。昇温部4の稼働によって供給路21の海水の温度が初期温度Tより高くなる(昇温工程)。海水は、初期温度Tより高温の状態で第1の通路11に導入され、上記第1工程に供される。すなわち、第1入力温度T31が初期温度Tより高くなる。制御部5は、温度測定器31からのフィードバックデータに基づいて、第1入力温度T31が上記の最適値になるよう、昇温部4の出力ひいては海水の昇温度を調節する。これによって、第2の通路12を通る海水から水蒸気を蒸留膜15を介して溶媒抽出室13内に確実に蒸発させることができ、かつ、その水蒸気を不透過膜14上で確実に凝縮させることがきる。これにより、蒸留膜15の単位面積あたりの淡水抽出量を十分に大きくして、蒸留膜15の機能をフル活用でき、出力路25から出力される淡水の抽出流量Wを最大(又は最大近傍)にすることができる。さらには、所望量の淡水を得るための海水の必要流量を減らすことができる。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図3は、本発明の第2実施形態を示したものである。この実施形態では、第1実施形態の昇温部4に代えて、還流路26が排出路24から分岐されている。還流路26は、供給路21上の合流部27において供給路21と合流している。還流路26の分岐部より下流の排出路24に流量制御弁44が設けられている。この流量制御弁44に制御部5の制御信号線が接続されている。流量制御弁44を還流路26に設けてもよい。
還流路26、合流部27、流量制御弁44が「昇温部」を構成している。
更に、排出路24には第4温度測定器34が設けられている。第4温度測定器34によって、排出路24の海水温度T34を測定できる。第4温度測定器34は、還流路26が分岐する部分より上流の排出路24に設けられているが、分岐部より上流の排出路24に設けてもよく、還流路26に設けてもよく、第2の通路12内の下流端付近に設けてもよい。
第2実施形態では、昇温工程において、排出路24の海水の一部(又は全部)を還流路26に分流させる。この還流路26の海水を、合流部27において供給源9からの新たな海水と混合する。供給源9からの海水供給量を、還流路26からの合流分だけ少なくする。排出路24の海水温度T34は、初期温度Tより高温である。したがって、第1入力温度T31を初期温度Tより高くできる。第1入力温度T31は、還流路26からの海水と供給源9からの新たな海水との混合流量比に依存する。
制御部5は、温度測定器31,34等の測定データに基づいて、第1入力温度T31が最適値になるよう、流量制御弁44を操作して還流路26の海水流量を調節し、ひいては上記の混合流量比を調節する。具体的には、温度測定器31の検出温度が最適値より低いときは、流量制御弁44の開度を小さくする。これにより、流量制御弁44を経て排出される海水流量が減り、それだけ還流路26へ分流する海水流量が増える。したがって、合流部27における還流路26からの海水の混合割合が増大し、供給源9からの新たな海水の混合割合が減少する。よって、第1入力温度T31が上昇する。反対に、温度測定器31の検出温度が最適値より高いときは、流量制御弁44の開度を大きくする。これにより、流量制御弁44を経て排出される海水流量が増え、それだけ還流路26へ分流する海水流量が減る。したがって、合流部27における還流路26からの海水の混合割合が減少し、供給源9からの新たな海水の混合割合が増大する。よって、第1入力温度T31が低下する。これにより、第1入力温度T31を最適値にすることができる。よって、第2の通路12を通る海水から水蒸気を蒸留膜15を介して溶媒抽出室13内に確実に蒸発させることができ、かつ、その水蒸気を不透過膜14上で確実に凝縮させることがきる。これにより、蒸留膜15の単位面積あたりの淡水抽出量を十分に大きくして、蒸留膜15の機能をフル活用でき、出力路25から出力される淡水の抽出流量Wを最大(又は最大近傍)にすることができる。さらには、排出路24の排海水の一部(又は全部)を還流路26を経て供給路21に戻すことで、新たな海水の供給流量を減らすことができ、所望量の淡水を得るための海水の必要流量を一層減らすことができる。
本発明は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変をなすことができる。
例えば、処理対象の溶液は、海水に限られず、塩水でもよく、汚水でもよい。
溶液は水溶液に限られず、例えばアルコール溶液でもよい。抽出対象の溶媒は、水に限られず、例えばアルコールでもよい。
海水(溶液)の流量Uを流量計35にて直接測定するのに代えて、送液ポンプ3の出力や流量制御弁43の開度を流量に相当するデータとして熱量算出に用いてもよい。
熱源2が太陽熱集熱器の場合、式(1)から熱量Qを算出するのに代えて、照度計で太陽の照度を測定し、その測定値を熱量に対応するデータとしてもよい。
熱源2が電熱ヒーターの場合、熱量として電熱ヒーターへの供給電力(電流×電圧)を用いてもよい。
第1の通路11の流れと第2の通路12の流れが互いに並行流を形成していてもよい。
本発明は、例えば海水から淡水を取り出す淡水化装置に適用可能である。
1 溶媒抽出装置
2 太陽熱集熱器(熱源)
3 送液ポンプ
4 昇温部)
5 制御部
5m 記憶部
9 供給源
10 蒸留器
11 第1の通路
12 第2の通路
13 溶媒抽出室
14 不透過膜(伝熱隔壁)
15 蒸留膜
21 供給路
22 第1連絡路
23 第2連絡路
24 排出路
25 出力路
26 還流路(昇温部)
27 合流部(昇温部)
31 第1温度測定器
32 第2温度測定器
33 第3温度測定器
34 第4温度測定器
35 流量計
43 流量制御弁
44 流量制御弁

Claims (7)

  1. 溶液から溶媒を抽出する溶媒抽出装置であって、
    上記溶液の供給源に連なる供給路と、
    上記供給路に連なる第1の通路と、
    上記第1の通路から出た上記溶液を加熱する熱源と、
    上記加熱後の溶液を通す第2の通路と、
    上記第1の通路と第2の通路の間に設けられた溶媒抽出室と、
    上記第1の通路と上記溶媒抽出室とを熱交換可能に仕切る伝熱隔壁と、
    上記第2の通路と上記溶媒抽出室とを仕切り、気体の透過を許容し、液体の透過を阻止する蒸留膜と、
    上記第1の通路の上流端での上記溶液の温度(以下「第1入力温度」と称す)を上記供給路での上記溶液の初期温度より高くする昇温部と、
    上記熱源が上記溶液に与える熱量及び上記第2の通路の上流端での上記溶液の温度(以下「第2入力温度」と称す)に基づいて、上記昇温部による上記溶液の昇温度を調節する制御部と、
    を備えたことを特徴とする溶媒抽出装置。
  2. 上記昇温部が、上記第2の通路から出た上記溶液の一部又は全部を上記供給路に戻す還流路を含み、上記制御部が、上記還流路の上記溶液の流量を操作することを特徴とする請求項1に記載の溶媒抽出装置。
  3. 上記制御部が、上記熱量及び上記第2入力温度に対して、上記溶媒抽出室からの上記溶媒の抽出流量が最大又は最大近傍になる上記第1入力温度の値を示すデータを記憶した記憶部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶媒抽出装置。
  4. 上記溶液が、海水、塩水、又は汚水であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の溶媒抽出装置。
  5. 溶液から溶媒を抽出する溶媒抽出方法であって、
    伝熱隔壁を介して溶媒抽出室と熱交換可能に仕切られた第1の通路に、上記溶液を通す第1工程と、
    上記第1の通路から出た上記溶液を熱源により加熱する加熱工程と、
    気体の透過を許容し液体の透過を阻止する蒸留膜を介して上記溶媒抽出室と仕切られた第2の通路に、上記加熱後の上記溶液を通す第2工程と、
    上記第1工程の前に上記溶液の温度を高くする昇温工程と、
    を備え、上記昇温工程において、上記熱源が上記溶液に与える熱量及び上記第2の通路の上流端での上記溶液の温度に基づいて、上記昇温工程における上記溶液の昇温度を調節することを特徴とする溶媒抽出方法。
  6. 上記第2の通路から出た上記溶液の一部又は全部を、上記第1工程に供される新たな溶液に混合し、この混合の流量比を調節することで上記昇温度を調節することを特徴とする請求項5に記載の溶媒抽出方法。
  7. 上記溶液が、海水、塩水、又は汚水であることを特徴とする請求項5又は6に記載の溶媒抽出方法。
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