JP2011033476A - シミュレーション装置、方法及びプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】パルスレーザによる物質の分解の可否をシミュレーションによって高速に判定できるようすること。
【解決手段】シミュレーション装置は、物質の凝集エネルギーを計算する凝集エネルギー計算部と、物質に所定の波形と強度を有するパルスレーザを照射する前後における物質の内部エネルギーの差を計算する内部エネルギー差計算部と、内部エネルギーの差と凝集エネルギーに基づいて、パルスレーザの照射による物質の分解の可否を判定する判定部と、を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、シミュレーション装置、方法及びプログラムに関し、特に、パルスレーザにより物質改変を行うためにパルスレーザの強度と波形を求めるシミュレーション装置、方法及びプログラムに関する。
フェムト秒レーザは、通常の定常的な発振をするレーザと異なり、時間幅100fs以下のパルスレーザである。フェムト秒レーザは、従来のレーザよりも桁違いに大きな強度を持つことから、近年物質の加工に応用されつつある。
フェムト秒レーザを用いた材料加工の一例が、非特許文献1に記載されている。非特許文献1に記載されたタングステン蒸着システムは、タングステンヘキサカボニル(W(CO)6)ガスを導入する反応チャンバーと、W蒸着基板(シリカとサファイア)と、基板に照射するパルスレーザを発生する装置(フェムト秒レーザ装置)を含む。
非特許文献1によると、タングステン蒸着は次のようにして行われる。反応チャンバー内に基板を設置し、チャンバー内を0.03m Torrの圧力とする。W(CO)6ガスと、その導入ガスである窒素(N2)ガスを導入する。反応チャンバー内に置かれた基板上の決められた位置にスポット状のレーザビームを照射する。照射されたスポット上においてのみ、W(CO)6ガス分子の分解が促進される。これによって発生したタングステン(W)原子が基板に蒸着し、金属上の微粒子を狙った位置に作成することができる。レーザ波長は400nmとし、レーザ波形は時間幅にして100fsに設定する。非特許文献1では、これらの設定に加えて、レーザ強度を34mWに設定したときの結果が報告されている。
M. Tang, H. Zhang, J. McCoy, and T. Her, "Deposition of Tungsten Induced by Femtosecond Lasers," in Conference on Lasers and Electro-Optics/Quantum Electronics and Laser Science Conference and Photonic Applications Systems Technologies, Technical Digest (CD) (Optical Society of America, 2006), paper CMHH5. Patrick Ilg, Hans Christian Oettinger, and Martin Kroeger, "Systematic time-scale-bridging molecular dynamics applied to flowing polymer melts," Phys. Rev. E79, 011802 (2009). J. Ihm, Alex Zunger and Marvin L Cohen, "Momentum-space formalism for the total energy of solids," J. Phys. C: Solid State Phys., Vol. 12, 4409 (1979) Yoshiyuki Miyamoto and Hong Zhang, "Testing the numerical stability of time-dependent density functional simulations using the Suzuki-Trotter formula," Phys. Rev. B77, 165123 (2008).
非特許文献1においては、レーザ強度を34mW以上とすると、W(CO)6分子のみならず、金属タングステンまでもが分解し、それ以下のレーザ強度とすると、W(CO)6分子の分解が起きなかったことから、非特許文献1(Fig.2)のような蒸着模様を作成するために、試行錯誤の結果として、レーザ強度が34mWに設定されたと考えられる。
このように試行錯誤を要するパルスレーザ照射を、コンピューターシミュレーションによって予想することもできる。レーザ照射によって引き起こされた局所的温度上昇に伴う物質の構造変化を予測するには、原子一個一個の運動を時間とともに追跡する分子動力学計算が有効である。しかし、非特許文献2のように、分子動力学計算は、長い時間にわたってシミュレーションを行うとともに、熱統計力学的な解析を行う必要があるため、長い計算時間を要する。さらに、計算精度を向上させるために原子間力を第一原理的に決定した場合には、実用に適さないほどの計算時間を要する。
以上のことから、シミュレーションを行うことなく、フェムト秒レーザの波形と強度を最適化する場合には、非特許文献1のように多くの実験を繰り返す必要があるという問題がある。
また、既存のシミュレーション方法によると、好適なフェムト秒レーザの波形と強度を決定するのに長い時間を要するという問題がある。既存のシミュレーション方法によると、実際に実験を行うよりも長い計算時間をかけて、長時間にわたる分子動力学計算を行い、物質の構造変化を予測する必要があるからである。
そこで、パルスレーザによる物質の分解の可否をシミュレーションによって高速に判定することができるようすることが課題となる。本発明の目的は、かかる課題を解決するシミュレーション装置、方法及びプログラムを提供することにある。
本発明の第1の視点に係るシミュレーション装置は、
物質の凝集エネルギーを計算する凝集エネルギー計算部と、
前記物質に所定の波形と強度を有するパルスレーザを照射する前後における前記物質の内部エネルギーの差を計算する内部エネルギー差計算部と、
前記内部エネルギーの差と前記凝集エネルギーに基づいて、前記パルスレーザの照射による前記物質の分解の可否を判定する判定部と、を備えている。
本発明の第2の視点に係るシミュレーション方法は、
コンピュータが、物質の凝集エネルギーを計算する工程と、
前記物質に所定の波形と強度を有するパルスレーザを照射する前後における前記物質の内部エネルギーの差を計算する工程と、
前記内部エネルギーの差と前記凝集エネルギーに基づいて、前記パルスレーザの照射による前記物質の分解の可否を判定する判定工程と、を含む。
本発明の第3の視点に係るプログラムは、
物質の凝集エネルギーを計算する処理と、
前記物質に所定の波形と強度を有するパルスレーザを照射する前後における前記物質の内部エネルギーの差を計算する処理と、
前記内部エネルギーの差と前記凝集エネルギーに基づいて、前記パルスレーザの照射による前記物質の分解の可否を判定する判定処理と、をコンピュータに実行させる。
本発明に係るシミュレーション装置、方法及びプログラムによると、パルスレーザによる物質の分解の可否をシミュレーションによって高速に判定することができる。
本発明の実施形態に係るシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施形態に係るシミュレーション装置によって凝集エネルギーを算出する方法を説明するため図である。 物質に照射されたパルス強度・波形と、照射によって増加した内部エネルギーを計算した結果を示す図である。 パルスレーザ照射後の材料の内部エネルギー増加分を計算する際、波形をさまざまに変化させて、計算機実験を行った場合を示す。ここでは、波長は共通の値(800nm)とし、パルス幅を異なる幅とした場合の波形を示す。 本発明の実施形態に係るシミュレーション装置の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係るシミュレーション装置の動作を示すフローチャートである。 実施例におけるパルスレーザの波形を示す図である。 実施例における物質(カーボンナノチューブ)の構造と電場の分極方向を示す図である。 実施例における内部エネルギーの差の計算例を示す図である。 パルス波形の最大時の電場強度が9V/Åである場合の分子動力学計算結果を示す図である。 パルス波形の最大時の電場強度が13.6V/Åである場合の分子動力学計算結果を示す図である。
第1の展開形態のシミュレーション装置は、上記第1の視点に係るシミュレーション装置であることが好ましい。
第2の展開形態のシミュレーション装置は、判定部が、前記内部エネルギーの差が前記凝集エネルギーよりも大きい場合には、前記パルスレーザの照射によって前記物質が分解するものと判定するようにしてもよい。
第3の展開形態のシミュレーション装置は、複数の物質のうちの一部のものを選択的に分解するためのパルスレーザの波形と強度を決定する波形・強度決定部をさらに備えていることが好ましい。
第4の展開形態のシミュレーション装置は、前記凝集エネルギー計算部が、第一原理電子状態計算に基づいて前記凝集エネルギーを計算することが好ましい。
第5の展開形態のシミュレーション装置は、前記内部エネルギー差計算部が、第一原理分子動力学計算に基づいて、前記内部エネルギーの差を計算することが好ましい。
第6の展開形態のシミュレーション方法は、上記第2の視点に係るシミュレーション方法であることが好ましい。
第7の展開形態のシミュレーション方法は、前記判定工程において、コンピュータが、前記内部エネルギーの差が前記凝集エネルギーよりも大きい場合には、前記パルスレーザの照射によって前記物質が分解するものと判定する工程をさらに含むことが好ましい。
第8の展開形態のシミュレーション方法は、コンピュータが、複数の物質のうちの一部のものを選択的に分解するためのパルスレーザの波形と強度を決定する工程をさらに含むことが好ましい。
第9の展開形態のプログラムは、上記第3の視点に係るプログラムであることが好ましい。
第10の展開形態のプログラムは、前記判定処理において、前記内部エネルギーの差が前記凝集エネルギーよりも大きい場合には、前記パルスレーザの照射によって前記物質が分解するものと判定することが好ましい。
第11の展開形態のプログラムは、複数の物質のうちの一部のものを選択的に分解するためのパルスレーザの波形と強度を決定する処理をさらにコンピュータに実行させることが好ましい。
(実施形態)
次に、本発明の実施形態に係るシミュレーション装置について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るシミュレーション装置10の構成を示すブロック図である。図1を参照すると、シミュレーション装置10は、少なくとも、凝集エネルギー計算部11と、内部エネルギー差計算部12を備えている。
凝集エネルギー計算部11は、物質の凝集エネルギーを計算する。内部エネルギー差計算部12は、当該物質に所定の波形と強度を有するパルスレーザを照射する前後における当該物質の内部エネルギーの差を計算する。判定部14は、内部エネルギーの差と凝集エネルギーに基づいて、パルスレーザの照射による物質の分解の可否を判定する。
判定部14は、前記内部エネルギーの差が前記凝集エネルギーよりも大きい場合には、前記パルスレーザの照射によって前記物質が分解するものと判定するようにしてもよい。
シミュレーション装置10は、波形・強度決定部15をさらに備えていることが好ましい。波形・強度決定部15は、複数の物質のうちの一部のものを選択的に分解するためのパルスレーザの波形と強度を決定する。
凝集エネルギー計算部11は、第一原理電子状態計算に基づいて凝集エネルギーを計算することが好ましい。また、内部エネルギー差計算部12は、第一原理分子動力学計算に基づいて、内部エネルギーの差を計算することが好ましい。このとき、物質の凝集エネルギー、及び、パルスレーザ照射前後における内部エネルギー差を精度良く求めることができるからである。
本実施形態においては、第一原理計算を基礎とした方法で計算された物質の凝集エネルギーを用い、レーザ照射時の内部エネルギーの上昇が、材料の凝集エネルギーを越えるか否かに基づいて、レーザ照射による物質の分解の可否を判定する。ここで、材料の内部エネルギーは、一例として、非特許文献3の公式によって計算することができる。
図2は、本実施形態に係るシミュレーション装置によって凝集エネルギーを算出する方法を説明するため図である。図2を参照すると、原子レベルまで分解された状態と、凝集した状態との間における、物質内部エネルギーの差が示されている。この差を、物質の凝集エネルギーという。
一方、レーザ照射時における内部エネルギーの上昇量は、一例として、非特許文献4の公式によって計算することができる。図3は、物質に照射されたパルス強度・波形と、照射によって増加した内部エネルギーを計算した結果を示す図である。図3は、レーザ照射を開始してからレーザ光が完全に減衰するまでのシミュレーション時間(百fs以下の時間スケール)における、内部エネルギーの上昇を計算した結果を示す。
図3を参照すると、与えたパルスレーザの波形と物質の内部エネルギーの変化とが、同じ時間軸で示されている。ここでは、グラファイト薄膜に、波長800nm、パルス幅100fsのパルスレーザを照射した場合を示す。図3の上段は、パルスレーザの波形を示し、図3の下段は、物質の内部エネルギーの時間変化を計算した結果を示す。図3の下段の点線は、パルスレーザのなす仕事を内部エネルギー変化から差し引いた値が保存する様子を示す(非特許文献4参照)。なお、図3における計算対象物質は、一例として、グラファイト薄膜としたが、どのような物質においても内部エネルギー上昇は生じる。
図3の上段と下段を参照すると、パルスレーザが十分に減衰したときの内部エネルギー
とパルスレーザが照射されていない初期状態における内部エネルギーとの差が、パルスレーザ照射による内部エネルギーの上昇分に相当する。
図2の凝集エネルギーと、図3に示した特定の波形・強度のパルスレーザを照射した際の内部エネルギー上昇量は、物質ごとに異なる固有の値となる。図3に示した内部エネルギーの上昇分が、図2に示した凝集エネルギーよりも大きい場合には、パルスレーザ照射によって、物質が分解するものと判定することができる。したがって、図3に示した、パルスレーザが十分に減衰した時刻(図3の上段参照)よりも長時間のシミュレーションを行う必要はない。
図4は、パルスレーザ照射後の材料の内部エネルギー増加分を計算する際、波形をさまざまに変化させた場合を示す。図4を参照すると、波長は共通の値(800nm)とし、パルス幅を異なる幅とした場合の波形が示されている。本実施形態のシミュレーション装置によると、図4のようにパルスの波長は800nmのままとしてパルス波形を変化させるか、又は、同じ波形のままパルス強度を変化させた場合の物質の内部エネルギーの上昇を計算することもできる。このようなシミュレーションによると、特定の物資だけを分解するのに適したパルス波形を実験を行うことなく求めることができる。
本実施形態のシミュレーション装置の動作について図面を参照して説明する。図5は、本実施形態に係るシミュレーション装置の動作を示すフローチャートである。
図5を参照すると、凝集エネルギー計算部11は、図2に示した凝集エネルギーEcを計算する(ステップS1)。一方、内部エネルギー差計算部12は、図3に示した内部エネルギーの上昇量Epを計算する(ステップS2)。判定部14は、凝集エネルギーEcと内部エネルギーの上昇量Epを比較する(ステップS3)。判定部14は、Ec<Epである場合には、パルスレーザを照射した物質が融解するものと判定し、それ以外の場合には、当該物質が融解しないものと判定する(ステップS3)。以上の動作により、シミュレーション装置10は、最終的に、物質を分解させるためのパルスレーザの波形と強度を決定する。
シミュレーション装置10の動作について、さらに詳細に説明する。まず、凝集エネルギー計算部11は、例えば非特許文献3の方法に基づいて、特定材料の凝集エネルギーを計算する(ステップS1)。次に、内部エネルギー差計算部12は、実験的に発生可能な範囲で照射パルスレーザの波形と強度を設定し、材料に照射した際の内部エネルギー上昇を計算する(ステップS2)。
判定部14は、パルスレーザによって上昇した内部エネルギーと凝集エネルギーとを比較して、凝集エネルギーの方が大きい場合には物質は分解せず、上昇した内部エネルギーのほうが大きい場合には物質は分解するものと判定する(ステップS3)。
さらに、本実施形態のシミュレーション装置10によって、様々な物質のうちの狙った物質だけを選択的に分解・除去するためのパルスレーザの強度と波形を決定する方法について説明する。図6は、本実施形態に係るシミュレーション装置の動作を示すフローチャートである。特に、図6は、さまざまな物質について、分解に必要なパルスレーザの強度と波形を選定するためのフローチャートを示している。
図6を参照すると、波形・強度決定部15は、所定の強度と波形のレーザパルスの強度と波形を設計し、複数の物質のそれぞれに設計したレーザパルスを照射した場合の内部エネルギーの上昇量を求める(ステップS11)。ここでは、一例として、レーザパルスを照射する物質を物質A及び物質Bとする。
波形・強度決定部15は、物質Aにおける内部エネルギーの上昇量が、物質Aの凝集エネルギーよりも大きい場合には物質Aは融解し、それ以外の場合には融解しないものと判定する(ステップS12)。同様に、波形・強度決定部15は、物質Bにおける内部エネルギーの上昇量が、物質Bの凝集エネルギーよりも大きい場合には物質Bは融解し、それ以外の場合には融解しないものと判定する(ステップS13)。
波形・強度決定部15は、上記のステップS12、S13において、一部の物質のみが選択的に融解したか否かを判定する(ステップS14)。一例として、波形・強度決定部15によって、物質Aのみが融解し、物質Bは融解しないものと判定された場合には(ステップS14のYes)、シミュレーションにおいて用いられたレーザパルスの強度と波形に基づいて、実験を行うようにしてもよい。
本実施形態のシミュレーション装置10によると、実験を行う以前に、レーザ照射による物質の分解の可否を予測することができる。内部エネルギー差計算部12によって、所定のパルスレーザを照射した場合における、物質の内部エネルギーの上昇量を算出することができるからである。
また、本実施形態のシミュレーション装置10によると、特定の物質のみを分解するための、レーザの強度と波形を決定することができる。物質ごとに異なるレーザ照射による内部エネルギー上昇量を、シミュレーションによって予測することができるからである。
さらに、本実施形態のシミュレーション装置10によると、分子動力学計算のような長時間の計算(例えば、数10ps(1psは10のマイナス12乗秒)に及ぶシミュレーション時間)を要しない。内部エネルギーの上昇分を求めるには、レーザ照射時間と同程度の時間スケール(例えば、数100fs(1fsは10のマイナス15乗秒)のシミュレーションで十分であり、その後の原子の運動によって物質の分解が生じるか否かは、エネルギー保存の法則によって即座に判定することができるからである。
次に、具体的な実施例に基づいて、本発明の説明を行う。
図7は、本実施例におけるパルスレーザの波形を示す図である。本実施例では、図7に示した波形、すなわち、波長800nmの超短パルスレーザを照射して、カーボンナノチューブを分解させるのに必要なパルス強度を決定した場合について説明する。
図8は、本実施例における物質(カーボンナノチューブ)の構造と電場の分極方向を示す図である。図8を参照すると、パルスレーザの電場の分極方向と、カーボンナノチューブ(図8においては、(8、0)チューブ)の軸方向の関係が示されている。図8を参照すると、カーボンナノチューブ軸に垂直な方向に分極した電場が印加されている。
図9は、本実施例における内部エネルギーの差の計算例を示す図である。図9は、図7に示した波形の電場の強度が最大となった瞬間の電場強度が9V/Åの場合と、13.6V/Åの場合について計算されたナノチューブ内部エネルギーを示す(この場合、炭素原子64個分に相当するサイズの内部エネルギーである)。ここでは、非特許文献4の方法に基づいてパルスが減衰するまでに、内部エネルギーがどれだけ増大するかを計算した結果を示す。
内部エネルギーの変化は、非特許文献4の式(10)、すなわち、

Figure 2011033476
を時刻tについて数値積分することによって、求めることができる。ここで、外部電場

Figure 2011033476


Figure 2011033476
によって表したときの外部電荷密度を

Figure 2011033476
とした。一方、

Figure 2011033476
は電子の電荷密度を表し、

Figure 2011033476
及び

Figure 2011033476
は、それぞれ、電子及びI番目のイオンの座標を表す。また、ZはI番目のイオンの原子価電荷(valence charge)を表す。なお、これらの物理量を計算する手順の詳細については、非特許文献4を参照されたい。
図9に示した数値計算は、非常に短い時間しか行っていない。しかしながら、本発明のシミュレーション装置によると、このような短い時間のシミュレーション結果に基づいて、ナノチューブの分解の可否を判定することができる。
図9を参照すると、電場の強度が最大となった瞬間の電場強度が9V/Åの場合には、内部エネルギーの増大量は400eV/64炭素原子にすぎない。このような内部エネルギーの増大量は、ナノチューブの凝集エネルギーによると、ナノチューブを分解させるには不十分であることが計算上知られている(図8に示した、CNT((8、0)チューブ)では、原子1個当たり7〜8eV程度である。)。
一方、電場の居度が最大となった瞬間の電場強度が13.6V/Åの場合には、内部エネルギーの増大量は600eV/64炭素原子となり、これは、ナノチューブの凝集エネルギーを上回るものである。
図10及び図11は、このことを確かめるために、長時間の分子動力学計算を行った計算結果を示す。図10は、長時間の分子動力学計算により、パルス波形の最大時の電場強度が9V/Åである場合に、ナノチューブが分解しないことを確認した結果を示す。一方、図11は、長時間の分子動力学計算により、パルス波形の最大時の電場強度が13.6V/Åである場合にナノチューブが分解することを確認した結果を示す。
図10を参照すると、パルスレーザの照射によってナノチューブは大きく変形するものの、円筒形を保持している。一方、図11を参照すると、90fsにおいて、ナノチューブが分解する様子が分子動力学によって確認されている。なお、本発明によると、図10及び図11に示したような長時間にわたって分子動力学計算を実行する必要はない。
本発明のシミュレーション装置、方法及びプログラムは、フェムト秒レーザを用いて特定の物質だけを分解するためのレーザ強度と波形を、計算機によって予測するのに用いることができる。
本発明のシミュレーション装置、方法及びプログラムによると、例えば、パルスレーザを用いて溶接又は切削を行う際に、材料に適したレーザ強度と波形をシミュレーションで予測することができる。したがって、実際に試行錯誤を行って、好適なパルスレーザの強度と波形を決定する作業を大幅に軽減することができる。
また、微細構造を有する複合材料から成るデバイスを製造する場合に、材料を選択的に取り除くプロセスにおいて、本発明のシミュレーション装置、方法及びプログラムによって予測された好適な強度と波形を有するパルスレーザの照射を行うこともできる。なお、パルスレーザを用いた加工技術は、エッチング材料などの環境負荷材料を削減する効果ももたらす。
1 分解された物質
2 凝集状態の物質
3 分解された物質の内部エネルギー
4 凝集状態の物質の内部エネルギー
5 内部エネルギー上昇量
6 カーボンナノチューブ
7 分極方向
10 シミュレーション装置
11 凝集エネルギー計算部
12 内部エネルギー差計算部
14 判定部
15 波形・強度決定部

Claims (11)

  1. 物質の凝集エネルギーを計算する凝集エネルギー計算部と、
    前記物質に所定の波形と強度を有するパルスレーザを照射する前後における前記物質の内部エネルギーの差を計算する内部エネルギー差計算部と、
    前記内部エネルギーの差と前記凝集エネルギーに基づいて、前記パルスレーザの照射による前記物質の分解の可否を判定する判定部と、を備えていることを特徴とするシミュレーション装置。
  2. 前記判定部は、前記内部エネルギーの差が前記凝集エネルギーよりも大きい場合には、前記パルスレーザの照射によって前記物質が分解するものと判定することを特徴とする、請求項1に記載のシミュレーション装置。
  3. 複数の物質のうちの一部のものを選択的に分解するためのパルスレーザの波形と強度を決定する波形・強度決定部をさらに備えていることを特徴とする、請求項2に記載のシミュレーション装置。
  4. 前記凝集エネルギー計算部は、第一原理電子状態計算に基づいて前記凝集エネルギーを計算することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
  5. 前記内部エネルギー差計算部は、第一原理分子動力学計算に基づいて、前記内部エネルギーの差を計算することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
  6. コンピュータが、物質の凝集エネルギーを計算する工程と、
    前記物質に所定の波形と強度を有するパルスレーザを照射する前後における前記物質の内部エネルギーの差を計算する工程と、
    前記内部エネルギーの差と前記凝集エネルギーに基づいて、前記パルスレーザの照射による前記物質の分解の可否を判定する判定工程と、を含むことを特徴とするシミュレーション方法。
  7. 前記判定工程において、コンピュータが、前記内部エネルギーの差が前記凝集エネルギーよりも大きい場合には、前記パルスレーザの照射によって前記物質が分解するものと判定することを特徴とする、請求項6に記載のシミュレーション方法。
  8. コンピュータが、複数の物質のうちの一部のものを選択的に分解するためのパルスレーザの波形と強度を決定する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載のシミュレーション方法。
  9. 物質の凝集エネルギーを計算する処理と、
    前記物質に所定の波形と強度を有するパルスレーザを照射する前後における前記物質の内部エネルギーの差を計算する処理と、
    前記内部エネルギーの差と前記凝集エネルギーに基づいて、前記パルスレーザの照射による前記物質の分解の可否を判定する判定処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
  10. 前記判定処理において、前記内部エネルギーの差が前記凝集エネルギーよりも大きい場合には、前記パルスレーザの照射によって前記物質が分解するものと判定することを特徴とする、請求項9に記載のプログラム。
  11. 複数の物質のうちの一部のものを選択的に分解するためのパルスレーザの波形と強度を決定する処理をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする、請求項10に記載のプログラム。
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