JP2011019474A - 花成制御遺伝子および花成制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な花成制御遺伝子およびこの花成制御遺伝子を利用した花成制御方法を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列を含むDNA。前記DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ花成制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。特定のアミノ酸配列を含むタンパク質。前記アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ花成制御活性を有するタンパク質。上記のDNAの発現を植物体内において制御する花成制御方法。
【選択図】図1
【解決手段】特定の塩基配列を含むDNA。前記DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ花成制御活性を有するタンパク質をコードするDNA。特定のアミノ酸配列を含むタンパク質。前記アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ花成制御活性を有するタンパク質。上記のDNAの発現を植物体内において制御する花成制御方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、新規な花成制御遺伝子およびこの花成制御遺伝子を利用した花成制御方法に関する。
シロイヌナズナは、高等植物のモデル植物として各種の研究が古くから行われてきていることは周知の通りであり、その花成を制御する経路の一つとして知られる光周性経路は、GIGANTEA(GI)、CONSTANS(CO)、FLOWERING LOCUS T(FT)からなる遺伝子カスケードによって制御され、日長感受的な開花促進に寄与することが明らかにされている。また、本カスケードにおいて、FT遺伝子の発現はCO遺伝子により、CO遺伝子の発現はGI遺伝子により、それぞれ誘導されるが、これらの遺伝子やそのタンパク質は、PhyBを介した赤色光シグナル経路やCRY2を介した青色光シグナル経路などの種々の機構によって遺伝子レベルやタンパク質レベルで調節を受けることが判明している。植物の花成を掌握し、花成を自在に制御するシステムは、農業の発展に大きく貢献することが期待されることから、これまでにも盛んに研究が行われており、今日、本カスケードを介して花成を制御する種々の因子が単離・同定されるに至っている(例えば特許文献1)。しかしながら、その全容は未だ明らかではなく、本カスケードに関与する数多くの未同定因子が存在することは想像に難くない。
そこで本発明は、新規な花成制御遺伝子およびこの花成制御遺伝子を利用した花成制御方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、シロイヌナズナの伴細胞で特異的に発現する遺伝子の中から、FT遺伝子の発現を介して花成を促進する新規な遺伝子を見出した。
上記の知見に基づいてなされた本発明は、請求項1記載の通り、以下の(a)〜(d)のいずれかのDNAである。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を含むDNA
(b)配列番号3に記載の塩基配列を含むDNA
(c)配列番号5に記載の塩基配列を含むDNA
(d)配列番号1,3,5のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ花成制御活性を有するタンパク質をコードするDNA
また、本発明は、請求項2記載の通り、以下の(a)〜(d)のいずれかのタンパク質をコードするDNAである。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(c)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)配列番号2,4,6のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ花成制御活性を有するタンパク質
また、本発明は、請求項3記載の通り、以下の(a)〜(d)のいずれかのタンパク質である。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(c)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)配列番号2,4,6のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ花成制御活性を有するタンパク質
また、本発明は、請求項4記載の通り、請求項1または2記載のDNAの発現を植物体内において制御することによる花成制御方法である。
また、本発明は、請求項5記載の通り、請求項1または2記載のDNAを含む組換えベクターである。
また、本発明は、請求項6記載の通り、請求項5記載の組換えベクターにより形質転換された形質転換植物である。
また、本発明は、請求項7記載の通り、請求項1または2記載のDNAを含む組換えベクターにより形質転換を行うことによる形質転換植物の作出方法である。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を含むDNA
(b)配列番号3に記載の塩基配列を含むDNA
(c)配列番号5に記載の塩基配列を含むDNA
(d)配列番号1,3,5のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ花成制御活性を有するタンパク質をコードするDNA
また、本発明は、請求項2記載の通り、以下の(a)〜(d)のいずれかのタンパク質をコードするDNAである。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(c)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)配列番号2,4,6のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ花成制御活性を有するタンパク質
また、本発明は、請求項3記載の通り、以下の(a)〜(d)のいずれかのタンパク質である。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(c)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)配列番号2,4,6のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ花成制御活性を有するタンパク質
また、本発明は、請求項4記載の通り、請求項1または2記載のDNAの発現を植物体内において制御することによる花成制御方法である。
また、本発明は、請求項5記載の通り、請求項1または2記載のDNAを含む組換えベクターである。
また、本発明は、請求項6記載の通り、請求項5記載の組換えベクターにより形質転換された形質転換植物である。
また、本発明は、請求項7記載の通り、請求項1または2記載のDNAを含む組換えベクターにより形質転換を行うことによる形質転換植物の作出方法である。
本発明によれば、新規な花成制御遺伝子およびこの花成制御遺伝子を利用した花成制御方法を提供することができる。
本発明者らによって単離・同定されたシロイヌナズナ由来の新規な花成制御遺伝子(TRT1:TRAVELING TINTER 1)は、FT遺伝子の発現を介して花成を促進するものであって、そのコード領域のcDNAの塩基配列は配列番号1に記載の通りであり、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる91個のアミノ酸残基で構成されるタンパク質をコードしている。また、TRT1遺伝子の相同遺伝子であるTRT2遺伝子も、TRT1遺伝子と同様の花成促進機能を有する遺伝子である。そのコード領域のcDNAの塩基配列は配列番号3に記載の通りであり、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる88個のアミノ酸残基で構成されるタンパク質をコードしている。さらに、TRT1遺伝子の相同遺伝子であるTRT3遺伝子も、TRT1遺伝子と同様の花成促進機能を有する遺伝子である。そのコード領域のcDNAの塩基配列は配列番号5に記載の通りであり、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなる95個のアミノ酸残基で構成されるタンパク質をコードしている。本発明には、以上のTRT1遺伝子、TRT2遺伝子、TRT3遺伝子のそれぞれのコード領域のcDNAを含むDNAの他、それぞれの遺伝子のコード領域のcDNAからなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ花成制御活性を有するタンパク質をコードするDNA、それぞれの遺伝子がコードするタンパク質をコードするDNA、それぞれの遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ花成制御活性を有するタンパク質をコードするDNA、これらのDNAによってコードされるタンパク質が包含される。なお、ここで、ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件、例えば、相同性が高いDNA同士(例えば50%以上の相同性を有するDNA同士)がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件を意味し、具体的には、60℃、1×SSC,0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
TRT1遺伝子のコード領域のcDNAのクローニングは、例えば、シロイヌナズナのゲノム情報から公知の配列番号7に記載の塩基配列からなるTRT1遺伝子のコード領域を含むcDNA(コード領域は塩基配列の114番目〜389番目)から設計されるプライマーを用いて、シロイヌナズナの組織(例えば高い発現量を示す花蕾など)由来のmRNAから行うことができる。プライマーの具体例としては、フォワードプライマーとしてTCTAGAACACAAACTACTCTTTAATAAG(配列番号8)、リバースプライマーとしてGAGCTCTAAGTAAAAGTAGGTGTCATGAT(配列番号9)が挙げられる。TRT2遺伝子とTRT3遺伝子のコード領域のcDNAのクローニングも同様の方法で行うことができる。
植物内でのTRT1遺伝子、TRT2遺伝子、TRT3遺伝子の発現量を人為的に制御することで、花成時期の制御を行うことができる。具体的には、これらの遺伝子の発現量を過剰にすることで花成を早くすることができ、発現量を抑制することで花成を遅くすることができる。これらの遺伝子の発現量を過剰にする方法としては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモータ(CaMV35Sプロモータ)などの植物細胞内で転写機能を有するプロモータとこれらの遺伝子のコード領域のcDNAを含む発現カセット(必要に応じてターミネータなどをさらに含んでいてもよい)をクローニングしたバイナリーベクター(組換えベクター)をアグロバクテリウム属菌に導入した後、これを植物に感染させることにより植物の形質転換を行う方法が挙げられる。これらの遺伝子の発現量を抑制する方法としては、例えば、これらの遺伝子に対するアンチセンスDNAやアンチセンスRNA、RNAiが植物内で発現するように植物の形質転換を行う方法が挙げられる。
上記の方法によって形質転換が行われる植物(形質転換植物)には、植物体そのものや種子の他、植物を構成する細胞、組織、器官、また、カルスやプロトプラストなどが包含される。形質転換の対象となる植物としては、ライムギ、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、イネなどの穀類、オレンジ、ブドウ、モモ、ナシ、リンゴ、ウメなどの果実類、トマト、ハクサイ、キャベツ、ダイコンニンジン、カボチャ、ジャガイモ、キュウリ、メロン、パセリなどの野菜類、ラン、キク、ユリ、サフランなどの観賞植物の他、タバコ、サトウダイコン、サトウキビ、ナタネ、ダイズ、ヒマワリ、ワタ、ユーカリ、アカシヤ、ポプラ、スギ、ヒノキ、マツ、トウヒ、タケ、イチイなどが挙げられる。
なお、本発明の花成制御遺伝子は、シロイヌナズナ以外の植物由来であってもよい。他の植物由来のTRT1遺伝子、TRT2遺伝子、TRT3遺伝子に対する相同遺伝子は、例えば、ゲノム情報が公知の場合にはデータベースを用いた相同性検索により、そうでない場合には公知の方法で調製されるDNAライブラリーを用いたスクリーニングによりクローニングすることができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:TRT1遺伝子の単離・同定
NASC(Nottingham Arabidopsis Stock Centre)から分譲されているmGFP−ER遺伝子をマーカーとしたシロイヌナズナのエンハンサートラップ系統N9187(篩部組織特異的なGFPシグナルを示す系統:J Exp Bot.2005 Sep;56(419):2433−42)のマーカー遺伝子のゲノム上における挿入位置をTAIL−PCR法により確認したところ、機能未知の遺伝子であるAt5g02580遺伝子(AGI code,シロイヌナズナの全遺伝子に付けられた記号)の下流500bpに存在していた。このAt5g02580遺伝子のプロモータ解析をGUS遺伝子を用いて行ったところ、GUS遺伝子はマーカー遺伝子と同様に伴細胞に特異的な発現を示した。そこで、At5g02580遺伝子の機能解析を行った結果、この遺伝子は植物の緑色化や花成を制御することが判明したことから、この遺伝子を花成制御遺伝子としてTRT1(TRAVELING TINTER 1)と命名した。そのコード領域のcDNAの塩基配列を配列番号1に、この遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。
NASC(Nottingham Arabidopsis Stock Centre)から分譲されているmGFP−ER遺伝子をマーカーとしたシロイヌナズナのエンハンサートラップ系統N9187(篩部組織特異的なGFPシグナルを示す系統:J Exp Bot.2005 Sep;56(419):2433−42)のマーカー遺伝子のゲノム上における挿入位置をTAIL−PCR法により確認したところ、機能未知の遺伝子であるAt5g02580遺伝子(AGI code,シロイヌナズナの全遺伝子に付けられた記号)の下流500bpに存在していた。このAt5g02580遺伝子のプロモータ解析をGUS遺伝子を用いて行ったところ、GUS遺伝子はマーカー遺伝子と同様に伴細胞に特異的な発現を示した。そこで、At5g02580遺伝子の機能解析を行った結果、この遺伝子は植物の緑色化や花成を制御することが判明したことから、この遺伝子を花成制御遺伝子としてTRT1(TRAVELING TINTER 1)と命名した。そのコード領域のcDNAの塩基配列を配列番号1に、この遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。
実施例2:TRT2遺伝子およびTRT3遺伝子のクローニング
TRT1遺伝子に対するblast x プログラムによる相同性検索により、最も相同性が高い遺伝子(79%)としてTRT2遺伝子を、次に相同性が高い遺伝子(78%)としてTRT3遺伝子を特定し、クローニングした。TRT2遺伝子のコード領域のcDNAの塩基配列を配列番号3に、この遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列(TRT1遺伝子によってコードされるタンパク質との相同性:60%)を配列番号4に示す。また、TRT3遺伝子のコード領域のcDNAの塩基配列を配列番号5に、この遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列(TRT1遺伝子によってコードされるタンパク質との相同性:58%)を配列番号6に示す。
TRT1遺伝子に対するblast x プログラムによる相同性検索により、最も相同性が高い遺伝子(79%)としてTRT2遺伝子を、次に相同性が高い遺伝子(78%)としてTRT3遺伝子を特定し、クローニングした。TRT2遺伝子のコード領域のcDNAの塩基配列を配列番号3に、この遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列(TRT1遺伝子によってコードされるタンパク質との相同性:60%)を配列番号4に示す。また、TRT3遺伝子のコード領域のcDNAの塩基配列を配列番号5に、この遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列(TRT1遺伝子によってコードされるタンパク質との相同性:58%)を配列番号6に示す。
実施例3:TRT1遺伝子のコード領域のcDNAのシロイヌナズナへの導入によるTRT1遺伝子の過剰発現系統の作出
シロイヌナズナの花蕾からmRNAを抽出し、RT−PCRによりTRT1遺伝子のコード領域のcDNAを増幅した。プライマーは、フォワードプライマーとしてTCTAGAACACAAACTACTCTTTAATAAG(配列番号8)、リバースプライマーとしてGAGCTCTAAGTAAAAGTAGGTGTCATGAT(配列番号9)を用いた。次に、TRT1遺伝子のコード領域のcDNAをpT7Blueベクターにクローニングし、クローニング断片を制限酵素処理によって切り出し、pIG121Hm(CaMV35SプロモータにGUS遺伝子が結合されたバイナリーベクター)のGUS遺伝子と置換した。こうして作製した組換えベクターをエレクトロポレーション法によってアグロバクテリウム株EHA105に導入し、フローラルディップ法によってシロイヌナズナの形質転換を行った。形質転換個体から得られた種子はカナマイシンを50mg/L含んだMS培地上で選抜し、選抜個体の自殖次代をTRT1遺伝子の機能解析実験に供した。
シロイヌナズナの花蕾からmRNAを抽出し、RT−PCRによりTRT1遺伝子のコード領域のcDNAを増幅した。プライマーは、フォワードプライマーとしてTCTAGAACACAAACTACTCTTTAATAAG(配列番号8)、リバースプライマーとしてGAGCTCTAAGTAAAAGTAGGTGTCATGAT(配列番号9)を用いた。次に、TRT1遺伝子のコード領域のcDNAをpT7Blueベクターにクローニングし、クローニング断片を制限酵素処理によって切り出し、pIG121Hm(CaMV35SプロモータにGUS遺伝子が結合されたバイナリーベクター)のGUS遺伝子と置換した。こうして作製した組換えベクターをエレクトロポレーション法によってアグロバクテリウム株EHA105に導入し、フローラルディップ法によってシロイヌナズナの形質転換を行った。形質転換個体から得られた種子はカナマイシンを50mg/L含んだMS培地上で選抜し、選抜個体の自殖次代をTRT1遺伝子の機能解析実験に供した。
実施例4:TRT1遺伝子の機能解析実験
以下の系統の個体を用いて実験を行った。
・ シロイヌナズナ野生型(WT:Col−0)
・ trt1(At5g02580遺伝子即ちTRT1遺伝子にT−DNAが挿入された系統。NASCから入手。登録名:SAIL 574 H03)
・ trt3(TRT3遺伝子にT−DNAが挿入された系統。NASCから入手。登録名:GABI 760 E09)
・ TRT1ox−2〜TRT1ox−4(実施例3において作出された3種類のTRT1遺伝子の過剰発現系統)
それぞれの系統の個体の種子を、バーミキュライトを詰めたプラスチックポットに播種した後、4℃で4日間の発芽促進処理を施した。その後、22℃、16/8時間日長(明期/暗期)の環境制御室にて育成した。
発芽処理終了から40日目のTRT1ox−2、WT、trt1、trt3のそれぞれの系統の個体の外観を図1に示す。図1から明らかなように、TRT1ox−2ではWTに比較して著しい花成の促進が認められた(花芽が抽だいした時点で花成開始とみなす。以下同じ)。一方、trt3ではWTに比較して著しい花成の遅延が認められた。
また、WT、trt1、trt3、TRT1ox−2〜TRT1ox−4のそれぞれの系統の10個体を用い、花成開始時の本葉の枚数を調べた結果を図2に示す。図2から明らかなように、WTでは花成開始時の本葉の枚数は15枚程度であるのに対し、TRT1ox−2〜TRT1ox−4では10枚程度である一方、trt3では23枚程度であり、この実験によってもTRT1遺伝子の過剰発現系統の花成促進とtrt3の花成遅延が確認できた。
さらに、WT、TRT1ox−2、trt3のそれぞれの系統について、発芽処理終了から5〜6週間の個体より本葉を4時間おきに6回採集し、Micro−Fasttrack kit(Invitrogen社)を用いてmRNAを回収し、Superscript VILO(Invitrogen社)を用いてcDNAを合成し、得られたcDNAをテンプレートにしてFT遺伝子とCO遺伝子の定量的RT−PCR解析を実施した。解析は、テンプレートよりACTIN遺伝子を増幅して定量することでcDNA間の濃度差を補正し、ACTIN遺伝子の発現量に対するFT遺伝子とCO遺伝子のそれぞれの発現量を比較することで行った。解析にはChromo4検出システムを搭載したDNA engine(Bio−Rad社)とiQ SYBR Green Supermix(Bio−Rad社)を利用した。なお、各サンプルの定量は3反復実施し、その平均値をデータとして採用した。FT遺伝子の解析結果とCO遺伝子の解析結果をそれぞれ図3と図4に示す(グラフ上部の白色部分は明期を意味し黒色部分は暗期を意味する)。図3と図4から明らかなように、FT遺伝子は日長周期的な発現変動を示し、明期から暗期への転換期に発現極大となるが、その発現量はtrt3ではWTに比較して減少するのに対し、TRT1ox−2ではWTに比較してほぼ2倍に増加することがわかった。一方、CO遺伝子はWTとTRT1ox−2では明期から暗期への転換期の4時間前に発現極大となり、その発現量は両者で同等であったが、trt3ではこれらとは全く異なる発現変動と発現量を示すことがわかった。
以上の結果から、TRT1遺伝子は、CO遺伝子によるFT遺伝子の発現誘導とは異なるカスケードによってFT遺伝子の発現誘導に関与し、花成の促進をもたらすことが推測された。
以下の系統の個体を用いて実験を行った。
・ シロイヌナズナ野生型(WT:Col−0)
・ trt1(At5g02580遺伝子即ちTRT1遺伝子にT−DNAが挿入された系統。NASCから入手。登録名:SAIL 574 H03)
・ trt3(TRT3遺伝子にT−DNAが挿入された系統。NASCから入手。登録名:GABI 760 E09)
・ TRT1ox−2〜TRT1ox−4(実施例3において作出された3種類のTRT1遺伝子の過剰発現系統)
それぞれの系統の個体の種子を、バーミキュライトを詰めたプラスチックポットに播種した後、4℃で4日間の発芽促進処理を施した。その後、22℃、16/8時間日長(明期/暗期)の環境制御室にて育成した。
発芽処理終了から40日目のTRT1ox−2、WT、trt1、trt3のそれぞれの系統の個体の外観を図1に示す。図1から明らかなように、TRT1ox−2ではWTに比較して著しい花成の促進が認められた(花芽が抽だいした時点で花成開始とみなす。以下同じ)。一方、trt3ではWTに比較して著しい花成の遅延が認められた。
また、WT、trt1、trt3、TRT1ox−2〜TRT1ox−4のそれぞれの系統の10個体を用い、花成開始時の本葉の枚数を調べた結果を図2に示す。図2から明らかなように、WTでは花成開始時の本葉の枚数は15枚程度であるのに対し、TRT1ox−2〜TRT1ox−4では10枚程度である一方、trt3では23枚程度であり、この実験によってもTRT1遺伝子の過剰発現系統の花成促進とtrt3の花成遅延が確認できた。
さらに、WT、TRT1ox−2、trt3のそれぞれの系統について、発芽処理終了から5〜6週間の個体より本葉を4時間おきに6回採集し、Micro−Fasttrack kit(Invitrogen社)を用いてmRNAを回収し、Superscript VILO(Invitrogen社)を用いてcDNAを合成し、得られたcDNAをテンプレートにしてFT遺伝子とCO遺伝子の定量的RT−PCR解析を実施した。解析は、テンプレートよりACTIN遺伝子を増幅して定量することでcDNA間の濃度差を補正し、ACTIN遺伝子の発現量に対するFT遺伝子とCO遺伝子のそれぞれの発現量を比較することで行った。解析にはChromo4検出システムを搭載したDNA engine(Bio−Rad社)とiQ SYBR Green Supermix(Bio−Rad社)を利用した。なお、各サンプルの定量は3反復実施し、その平均値をデータとして採用した。FT遺伝子の解析結果とCO遺伝子の解析結果をそれぞれ図3と図4に示す(グラフ上部の白色部分は明期を意味し黒色部分は暗期を意味する)。図3と図4から明らかなように、FT遺伝子は日長周期的な発現変動を示し、明期から暗期への転換期に発現極大となるが、その発現量はtrt3ではWTに比較して減少するのに対し、TRT1ox−2ではWTに比較してほぼ2倍に増加することがわかった。一方、CO遺伝子はWTとTRT1ox−2では明期から暗期への転換期の4時間前に発現極大となり、その発現量は両者で同等であったが、trt3ではこれらとは全く異なる発現変動と発現量を示すことがわかった。
以上の結果から、TRT1遺伝子は、CO遺伝子によるFT遺伝子の発現誘導とは異なるカスケードによってFT遺伝子の発現誘導に関与し、花成の促進をもたらすことが推測された。
実施例5:TRT2遺伝子およびTRT3遺伝子の機能
別途の実験により、これらの遺伝子はTRT1遺伝子と同様の花成誘導機能を保有することが確認もしくは推測され、TRT3遺伝子についてはT−DNA挿入によって遺伝子破壊されたtrt3が花成の遅延をもたらすことから(実施例4)、これらの遺伝子もまた花成制御遺伝子であることがわかった。
別途の実験により、これらの遺伝子はTRT1遺伝子と同様の花成誘導機能を保有することが確認もしくは推測され、TRT3遺伝子についてはT−DNA挿入によって遺伝子破壊されたtrt3が花成の遅延をもたらすことから(実施例4)、これらの遺伝子もまた花成制御遺伝子であることがわかった。
本発明は、新規な花成制御遺伝子およびこの花成制御遺伝子を利用した花成制御方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
Claims (7)
- 以下の(a)〜(d)のいずれかのDNA。
(a)配列番号1に記載の塩基配列を含むDNA
(b)配列番号3に記載の塩基配列を含むDNA
(c)配列番号5に記載の塩基配列を含むDNA
(d)配列番号1,3,5のいずれかに記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ花成制御活性を有するタンパク質をコードするDNA - 以下の(a)〜(d)のいずれかのタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(c)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)配列番号2,4,6のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ花成制御活性を有するタンパク質 - 以下の(a)〜(d)のいずれかのタンパク質。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(c)配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(d)配列番号2,4,6のいずれかに記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ花成制御活性を有するタンパク質 - 請求項1または2記載のDNAの発現を植物体内において制御することによる花成制御方法。
- 請求項1または2記載のDNAを含む組換えベクター。
- 請求項5記載の組換えベクターにより形質転換された形質転換植物。
- 請求項1または2記載のDNAを含む組換えベクターにより形質転換を行うことによる形質転換植物の作出方法。
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JP (1) | JP2011019474A (ja) |
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