JP2011006637A - 熱可塑性樹脂含有回収材からの添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】成形対象の樹脂部品に必要な物性の項目の決定;各項目の目標物性値の決定;成形対象の樹脂部品中の熱可塑性樹脂成分と添加材成分の含有量の変動と物性値との変動との相関関係を示すデータの作成、あるいは予め作成した当該データの入手;回収材粉砕物の入手;該粉砕物の成分組成の分析;該粉砕物からの成形体試料の作成;該成形体試料の物性値の測定;物性測定値と目標物性値との比較による物性値不足項目の摘出;物性不足値、粉砕物の成分分析値、そして相関関係データとからの、目標物性値達成のために必要な熱可塑性樹脂成分及び/又は添加材成分の推定添加量の算出。
【選択図】図1
Description
(1)製造対象の添加材含有熱可塑性成形材料を用いて成形する樹脂部品に必要な二以上の物性の項目を決定する工程;
(2)上記各項目における目標物性値を決定する工程;
(3)成形対象の樹脂部品中の熱可塑性樹脂成分と所定の添加材成分のそれぞれの成分の含有量と、それらの含有量の変動に応じて変動する物性値との相関関係を示すデータを各項目について作成するか、あるいは予め作成した成形対象の樹脂部品中の熱可塑性樹脂成分と所定の添加材成分のそれぞれの成分の含有量と、それらの含有量の変動に応じて変動する物性値との相関関係を示す各項目のデータを入手する工程;
(4)成形対象の樹脂部品に含有させる熱可塑性樹脂を主樹脂成分として含有する回収材の粉砕物を入手する工程;
(5)粉砕物の成分組成を分析する工程;
(6)粉砕物から成形体試料を作成する工程;
(7)成形体試料について、工程(1)で決定した項目についての物性値を測定する工程;
(8)工程(7)で測定された物性値と工程(2)で決定された目標物性値とを各項目毎に比較して、前者の物性値が目標物性値を満足していない項目を摘出する工程;そして、
(9)工程(8)で摘出された項目における測定物性値、工程(5)で得た粉砕物の成分分析値、そして工程(3)で得た相関関係を示すデータとから、前記各項目における目標物性値を示す成形体を得るために前記粉砕物に添加することが必要な熱可塑性樹脂成分及び/又は添加材成分の量を算出する工程。
1.さらに下記の工程を含む:
(10)前記粉砕物に工程(9)で算出した量の熱可塑性樹脂成分及び/又は添加材成分を添加して成形体試料を作成する工程;
(11)工程(10)で作成した成形体試料について前記各項目の物性値を測定し、その測定値と目標物性値とを比較する工程;そして、
(12)工程(11)で成形体試料が所定の項目の目標物性値を満足していることが確認された場合には、工程(9)で算出した添加量に基づいて、目的の添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料の製造のために必要な添加成分の添加量を決定し、その決定に基づく量の添加成分を工程(4)で入手した回収材の粉砕物と同一成分の粉砕物に添加して添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料を製造する工程;あるいは
(13)工程(11)で成形体試料が所定の項目の目標物性値を満足していないことが確認された場合には、当該成形体試料について工程(8)〜(11)を繰り返すことにより、最終的に、目的の添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料の製造のために必要な添加成分の添加量を決定し、その決定に基づく量の添加成分を工程(4)で入手した回収材の粉砕物と同一成分の粉砕物に添加して添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料を製造する工程。
3.熱可塑性樹脂がポリプロピレンである。
4.利用される熱可塑性樹脂含有回収材が自動車の樹脂成形品からの回収材であって、製造される添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料が自動車の添加材含有熱可塑性樹脂成形部品の製造用である。
この工程は、製造対象の添加材含有熱可塑性成形材料を用いて成形する樹脂部品に必要な二以上の物性の項目を決定する工程である。
乗用車のピラートリムについては、たとえば、MFR(メルトフローインデックス、単位:g/10分)、比重、引張降伏強さ(単位:MPa)、曲げ弾性率(単位:MPa)、シャルピ衝撃強さ(23℃、単位:KJ/m2)、熱変形温度(℃)、成形収縮率(表示:1/1000)などの、成形工程において必要な物性および成形品に必要とされる物性を挙げることができる。本発明の実施に際しては、これらの全ての項目の物性を考慮してもよく、あるいは特に重要な二以上の項目の物性を選んで、考慮項目とすることもできる。
この工程は、上記各項目における目標物性値を決定する工程である。
すなわち、工程(1)で選択した項目については、成形対象の添加材含有熱可塑性樹脂製品についての規格により目標物性値(要求物性値として規定される場合も有る)が定められているか、あるいは当該技術者にとって、経験的に目標物性値の決定を行なうことができる。従って、所定の各項目の目標物性値を、それぞれについて定めた基準物性値に基づき、基準物性値以下、基準物性値以上、あるいは基準物性値を含む範囲などとして決定することができる。
この工程は、(イ)成形対象の樹脂部品中の熱可塑性樹脂成分と所定の添加材成分のそれぞれの成分の含有量と、それらの含有量の変動に応じて変動する物性値との相関関係を示すデータを各項目について作成するか、あるいは(ロ)予め作成した成形対象の樹脂部品中の熱可塑性樹脂成分と所定の添加材成分のそれぞれの成分の含有量と、それらの含有量の変動に応じて変動する物性値との相関関係を示す各項目のデータを入手する工程である。
本願発明者の研究によると、添加材含有熱可塑性樹脂組成物において、ポリプロピレン(ホモ)、ゴム成分、そしてタルクの含有量を変動させた場合、その組成物およびその組成物から成形された成形体の上記各項目の物性について下記の相関関係があることが確認された。
PPの含有量 少 → 多
MFR 上昇
引張降伏強さ 上昇
熱変形温度 上昇
ゴム成分の含有量 少 → 多
MFR 下降
引張降伏強さ 下降
曲げ弾性率 下降
シャルピ衝撃強さ 上昇
熱変形温度 下降
成形収縮率(MD) 下降
タルクの含有量 少 → 多
比 重 上昇
曲げ弾性率 上昇
熱変形温度 上昇
成形収縮率(MD) 下降
この工程は、成形対象の樹脂部品に含有させる熱可塑性樹脂を主樹脂成分として含有する回収材の粉砕物を入手する工程である。
使用済の自動車用品は一般に特定の業者により解体され、その部品は特定のルートを介して回収されることが多いため、同一種類の部品をまとめて回収することが容易である。従って、そのようにして回収した多数の同一種類の部品について公知の任意の手段で粉砕することにより、成形対象の樹脂部品に含有させる熱可塑性樹脂を主樹脂成分として含有する回収材の粉砕物をまとめて入手することができる。
この工程は、上記粉砕物の成分組成を分析する工程である。
すなわち、工程(4)で入手した回収材の粉砕物の構成成分(通常は、熱可塑性樹脂成分、ゴム成分、そして充填材)に区分し、それぞれの種類と含有量を分析する。なお、熱可塑性樹脂を主成分とする自動車部品には、通常、その熱可塑性樹脂成分の表示(例、PP、PE)が刻印されているため、その刻印も分析の手掛かりとなる。
この工程は、粉砕物から成形体試料を作成する工程である。
すなわち、工程(4)で入手した回収材の粉砕物から成形体試料を作成する工程である。通常は、実際の加熱成形工程における成形条件を模した成形条件を利用して、シート状の成形体試料を作成する。
この工程は、成形体試料について、工程(1)で決定した項目についての物性値を測定する工程である。
すなわち、工程(6)で作成した成形体試料について、工程(1)で決定した各項目についての物性値を測定する。測定条件は通常、工程(3)で採用された測定条件に準じて選ばれる。
この工程は、工程(7)で測定された物性値と工程(2)で決定された目標物性値とを各項目毎に比較して、前者の物性値が目標物性値を満足していない項目を摘出する工程である。
すなわち、以後の工程において、目標物性値が所定の項目の全てについて満足する物性値となるように、添加する熱可塑性樹脂及び/又は添加材の種類と添加量を決定する作業を行なうため、まず、回収材の粉砕物(再生材料)から得た成形体試料の物性値について、不充分な物性値を摘出する。再生材料の成形材料から得た成形体試料が満足すべき物性値を示す項目については、とりあえず、検討項目(改良項目)から除外する。
この工程は、工程(8)で摘出された項目における測定物性値、工程(5)で得た粉砕物の成分分析値、そして工程(3)で得た相関関係を示すデータとから、前記各項目における目標物性値を示す成形体を得るために前記粉砕物に添加することが必要な熱可塑性樹脂成分及び/又は添加材成分の量を算出する工程である。
この工程において、粉砕物に添加することが必要な熱可塑性樹脂成分及び/又は添加材成分の量を算出するためには、工程(3)において、たとえば、関数あるいはグラフとして得られた相関関係に、工程(8)で摘出された項目における測定物性値を代入すれば、構成成分の必要な含有量が判明し、この必要含有量と、工程(5)で得た粉砕物の成分分析値から不足する含有量、すなわち、必要な構成成分とその添加量の推定値が算出できる。
この工程は、前記粉砕物に工程(9)で算出した量の熱可塑性樹脂成分及び/又は添加材成分を添加して成形体試料を作成する工程である。
この成形体試料の作成は、上記工程(6)で採用した成形条件と同一あるいはそれに準じた成形条件で行なわれる。
この工程は、工程(10)で作成した成形体試料について前記各項目の物性値を測定し、その測定値と目標物性値とを比較する工程である。
回収材粉砕物に対して工程(9)で算出した添加量にて添加成分を添加して成形することにより各項目について所望の物性値を示す成形体試料が得られるはずであるが、先の工程(9)の算出は、工程(3)で作成あるいは入手した、成形対象の樹脂部品中の熱可塑性樹脂成分と添加材成分の含有量の変動と各項目毎の物性値の変動との相関関係を示すデータに基づくものであり、その相関関係を示すデータは、おおよその加法性は示すものの、複数の成分の含有量と得られる成形体の物性との関係においては厳密な意味での加法性は成立しないため、必ずしも、予測通りの物性を示すとは言えない。従って、得られた成形体試料について、所定の項目についての物性値の測定による、添加した成分の適否と添加量の適否について検証が必要となる。
この工程は、工程(11)で成形体試料が所定の項目の目標物性値を満足していることが確認された場合には、工程(9)で算出した添加量に基づいて、目的の添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料の製造のために必要な添加成分の添加量を決定し、その決定に基づく量の添加成分を工程(4)で入手した回収材の粉砕物と同一成分の粉砕物に添加して添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料を製造する工程である。
仮に、回収材からの粉砕物が示す物性値が殆どの項目について所定の物性値を満足していれば、これまでの工程により決定した添加量による成分の添加(通常は少量)により、不充分であった項目についても容易に、所定の物性値を満たす成形体試料が得られる。従って、成形体試料が目標物性値を満足している場合には、前記推定添加量を、あるいはその推定添加量に経験的な補正を加えた上で、各成分の添加量を決定することができる。そして、それに基づく量の成分が添加された前記回収材粉砕物と同一成分の粉砕物から目的の成形材料を製造することができる。
この工程は、工程(11)で成形体試料が所定の項目の目標物性値を満足していないことが確認された場合には、当該成形体試料について工程(8)〜(11)を繰り返すことにより、最終的に、目的の添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料の製造のために必要な添加成分の添加量を決定し、その決定に基づく量の添加成分を工程(4)で入手した回収材の粉砕物と同一成分の粉砕物に添加して添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料を製造する工程である。
前述のように、回収材粉砕物に対して工程(9)で算出した添加量にて添加成分を添加して成形することにより各項目について所望の物性値を示す成形体試料が得られるはずであるが、実際には、得られた成形体試料について、所定の項目の全てについての目標物性値を示す成形体試料が得られるとは限らない。このため、特に回収材の粉砕物の成形体試料が一もしくはそれ以上の項目について目標物性値から大きく外れている場合には、上記の添加成分(追加成分)の推定添加量の算出と、その算出量の追加成分を添加しての成形体試料の作成を試行錯誤的に繰り返すことにより、各項目について目的物性値を示す成形体を得るために必要な添加成分とその添加量を決定することが必要な場合もある。そして、その場合には、上記の試行錯誤的な工程を繰り返すことにより、最終的に、それに基づく量の成分が添加された前記回収材粉砕物と同一成分の粉砕物から目的の成形材料を製造することができる。
(2)乗用車のピラートリムの製造のために必要な物性の項目と目標物性値を下記のように、決定した。
項目 MFR 比重 引張降伏強さ 曲げ弾性率 熱変形温度 成形収縮率
(g/10分) (MPa) (MPa) (℃) MD(1/1000)
────────────────────────────────────
目標 10 1 10 1800 109 8〜14
物性値 以上 以下 以上 以上 以上
────────────────────────────────────
注:物性の測定方法
MFR:JIS K7210(流れ性試験方法)準拠
比重:JIS K7112(密度試験方法)準拠
引張降伏強さ:JIS K7161(引張試験方法)準拠
曲げ弾性率:JIS K7171(曲げ試験方法)準拠
熱変形温度:JIS K7191−1、2(荷重たわみ温度試験方法)準拠
成形収縮率(MD):JIS K7152−4(成形収縮率試験方法)準拠
(4)再生材料:92質量%、添加成分(ゴム成分:0質量%、タルク:5質量%、PP:0質量%、補助添加剤(酸化防止剤、分散剤、光安定剤等):3質量%)
(5)上記(4)の再生材料と添加成分の混合物をスクリュウ回転300rpm、押出量60kg/時の条件にて押出成形して成形体試料を作成した。
(6)得られた成形体試料について、前記の各項目の物性値を測定した。
(7)前記(1)で得た回収材粉砕物の成分組成の分析結果、上記(6)の成形体試料の物性値の測定値、そして目標物性値の到達についての判定結果を下記の表に示す。
項目 MFR 比重 引張降伏強さ 曲げ弾性率 熱変形温度 成形収縮率
(g/10分) (MPa) (MPa) (℃) MD(1/1000)
────────────────────────────────────
再生材料 27.0 0.9 25.0 1620.0 104.0 12.1
判定結果 合格 合格 合格 不合格 不合格 合格
────────────────────────────────────
成形体 27.3 1.0 24.5 2107.3 109.4 10.2
判定結果 合格 合格 合格 合格 合格 合格
────────────────────────────────────
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂含有回収材の粉砕物を主原料とする熱可塑性樹脂部品成形材料を製造するための下記の工程を含む方法:
(1)製造対象の添加材含有熱可塑性成形材料を用いて成形する樹脂部品に必要な二以上の物性の項目を決定する工程;
(2)上記各項目における目標物性値を決定する工程;
(3)成形対象の樹脂部品中の熱可塑性樹脂成分と所定の添加材成分のそれぞれの成分の含有量と、それらの含有量の変動に応じて変動する物性値との相関関係を示すデータを各項目について作成するか、あるいは予め作成した成形対象の樹脂部品中の熱可塑性樹脂成分と所定の添加材成分のそれぞれの成分の含有量と、それらの含有量の変動に応じて変動する物性値との相関関係を示す各項目のデータを入手する工程;
(4)成形対象の樹脂部品に含有させる熱可塑性樹脂を主樹脂成分として含有する回収材の粉砕物を入手する工程;
(5)粉砕物の成分組成を分析する工程;
(6)粉砕物から成形体試料を作成する工程;
(7)成形体試料について、工程(1)で決定した項目についての物性値を測定する工程;
(8)工程(7)で測定された物性値と工程(2)で決定された目標物性値とを各項目毎に比較して、前者の物性値が目標物性値を満足していない項目を摘出する工程;そして、
(9)工程(8)で摘出された項目における測定物性値、工程(5)で得た粉砕物の成分分析値、そして工程(3)で得た相関関係を示すデータとから、前記各項目における目標物性値を示す成形体を得るために前記粉砕物に添加することが必要な熱可塑性樹脂成分及び/又は添加材成分の量を算出する工程。 - さらに下記の工程を含む請求項1に記載の熱可塑性樹脂部品成形材料の製造方法:
(10)前記粉砕物に工程(9)で算出した量の熱可塑性樹脂成分及び/又は添加材成分を添加して成形体試料を作成する工程;
(11)工程(10)で作成した成形体試料について前記各項目の物性値を測定し、その測定値と目標物性値とを比較する工程;そして、
(12)工程(11)で成形体試料が所定の項目の目標物性値を満足していることが確認された場合には、工程(9)で算出した添加量に基づいて、目的の添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料の製造のために必要な添加成分の添加量を決定し、その決定に基づく量の添加成分を工程(4)で入手した回収材の粉砕物と同一成分の粉砕物に添加して添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料を製造する工程;あるいは
(13)工程(11)で成形体試料が所定の項目の目標物性値を満足していないことが確認された場合には、当該成形体試料について工程(8)〜(11)を繰り返すことにより、最終的に、目的の添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料の製造のために必要な添加成分の添加量を決定し、その決定に基づく量の添加成分を工程(4)で入手した回収材の粉砕物と同一成分の粉砕物に添加して添加材含有熱可塑性樹脂部品成形材料を製造する工程。 - 熱可塑性樹脂がポリオレフィンである請求項1もしくは2に記載の熱可塑性樹脂部品成形材料の製造方法。
- ポリオレフィンがポリプロピレンである請求項3に記載の熱可塑性樹脂部品成形材料の製造方法。
- 利用される熱可塑性樹脂含有回収材が自動車の樹脂成形品からの回収材であって、製造される熱可塑性樹脂部品成形材料が自動車の添加材含有熱可塑性樹脂成形部品の製造用である請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載の熱可塑性樹脂部品成形材料の製造方法。
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