JP2011004119A - 減結合回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力線搬送通信の信号のスループットの劣化防止が可能な減結合回路を提供する。
【解決手段】電力線搬送通信の信号を通過させるコモンモードチョークコイルのボビンに巻かれる平衡ケーブル900は、絶縁材9aを被覆した2本の電線W1、W2を対撚り合わせた1条の対撚り電線90上に絶縁材900aを同心円状に被覆して構成されている。
【選択図】図3
【解決手段】電力線搬送通信の信号を通過させるコモンモードチョークコイルのボビンに巻かれる平衡ケーブル900は、絶縁材9aを被覆した2本の電線W1、W2を対撚り合わせた1条の対撚り電線90上に絶縁材900aを同心円状に被覆して構成されている。
【選択図】図3
Description
本発明は、屋内配線された商用電源線を用いて、商用電源周波数と異なる周波数の信号を前記商用電源周波数に重畳して通信を行う電力線搬送通信の伝送路に接続されているICT(Information and Communication Technology)機器に雷サージが印加された際に、ICT機器が有する通信状態における過電圧耐力特性を評価するための雷サージ耐力試験回路に用いられる減結合回路に関する。
ネットワークのブロードバンド化に伴うインターネット利用が広く普及しているもとで、商用電源線を利用してホームネットワークを構成する電力線搬送通信も一般家庭への普及が進展しており、そこに接続されているICT機器は常時接続された状態で使用されている。
常時接続通信の普及とともに電力線搬送通信用のICT機器の雷サージ過電圧に対する信頼性が求められている。これらのICT機器は通信速度の高速化、広帯域化に伴い使用する電子デバイスが低電圧で駆動され、かつ高密度実装されたために、雷サージ過電圧に対する耐力の低下傾向にあったが、これに加えて常時接続通信状態で使用するため、雷に暴露される確率が高くなったことも一時的な通信異常の発生の恐れを生んでいる。
これを予め防ぐためにはICT機器の雷サージ過電圧に対する耐力特性の評価が必要となる。電力線搬送通信用のICT機器の雷サージ耐力試験にあたっては、国際電気通信連合電気通信標準化部門の過電圧試験法に関する勧告(これ以降では、ITU−T K.44、と記す)の試験条件に述べられているように、ICT機器を動作状態で実施する必要がある。
しかし、雷サージ耐力試験を行う際には印加した雷サージ過電圧から対向装置を防護するための減結合回路が必要であり、ITU−T K.44においても減結合回路を原則使用することとしている。
上記動作状態における試験の実施、および減結合回路の原則使用については、非特許文献1に示されている。また、減結合回路に関しては特許文献1〜2に示されている。
特許文献1に関連して同一出願人が出願した特許出願の回路においては、雷サージ耐力試験におけるxDSLのような高速デジタル通信信号を良好に伝送することのできる減結合回路が開示されている。その回路要素であるコモンモードチョークコイルは、ボビンに巻線電線であるネオン電線を2並列、または4並列に多層巻きした空心コイルを4個直列に接続した分割型コイル構成を採用していた。このため、分割コイル間でネオン電線をつなぐ際に、つなぎ部分のネオン電線周囲の誘電体媒質が塩化ビニール主体から空気に変わり、さらには塩化ビニール主体にと変化することによって特性インピーダンスも変化し、その結果、反射が生じていた。すなわちxDSL用ICT機器の伝送信号におけるスループット特性の劣化を生じさせていた。
さらに、特許文献2に関連して同一出願人が出願した特許出願の回路においては、コモンモードチョークコイルの巻線電線に複対の捻り電線を有する平衡ケーブルを使用し、かつつなぎ目のない巻線構造にすることによって、前述のような反射の影響を除去した。この結果、xDSL用ICT機器の伝送信号におけるスループット特性を大幅に向上させることが可能となった。
同時に、巻線電線として、電線導体径1.2mm、ポリエチレン被覆厚0.5mm、ポリエチレンシース厚1.5mmの平衡ケーブルを使用したコモンモードチョークコイルは、平成15年1月31日に制定された日本電信電話会社の通信装置の過電圧耐力に関するテクニカルリクワイヤメントTR189001に定められている雷サージ耐力試験において適用可能となった。
しかし、電力線搬送通信においては電路と伝送路とが同一であるので、前記テクニカルリクワイヤメントTR189001を満足することと同時に、電路としての商用電源電圧に対する耐電圧及び許容電流を満足することが必要である。
まず耐電圧について述べる。平衡ケーブルとしては通信用ケーブルと移動用電気機器の電源回路用のキャブタイヤケーブルとがあるが、コモンモードチョークコイルの巻線用として用いる場合においては高周波伝送特性を第一に考慮せねばならないため、通信用の平衡ケーブルが適当である。なお、これ以降では通信用の平衡ケーブルを、平衡ケーブル、と呼ぶことにする。
しかも平衡ケーブルは高周波伝送特性と同時に商用電源電圧に対する耐電圧特性を満たす必要がある。平衡ケーブルは導体の絶縁体として主にポリエチレンが使用されており、ポリエチレンは比誘電率特性や耐電圧特性がビニールに比べて優れている。ポリエチレンの耐電圧は35〜50kV/mmである。市販品の10対以下の通信用平衡ケーブルにおいては、導体を被覆するためのポリエチレン絶縁体の厚さは0.5mmが使用されているものがある。この厚さのポリエチレンを平行平板で挟んだ場合の耐電圧を求めると17.5kV以上が得られる。さらに平衡ケーブル製造会社のカタログにおいてもノーマルモード、すなわち導体間の耐電圧は商用電源電圧に対して1kVを保障しているので、商用電源電圧100Vあるいは200Vを通電している電路に適用しても問題はない。
次に許容電流について述べる。平衡ケーブルは電気設備技術基準においては小勢力回路の適用を受けるため、最大使用電流は使用電圧に応じて定められている。しかし最大使用電圧は60V以下でしか定められていない。よって商用電源電圧100Vにおける最大通電電流、すなわち許容電流を把握する必要がある。まず、電力線搬送通信用のICT機器の定格電流について述べる。例えば代表的なICT機器であるモデムの消費電力は4W程度であるが、雷サージ耐力試験では被試験装置と対向装置の2台のモデムが使用されるので、合計の消費電力は2倍の8W、すなわち消費電流値としては0.08Aが必要になる。またネットワークステレオの消費電流は0.5A(被試験機器である本体は0.2A、対向装置であるネットワークスピーカが0.3A)が必要となり、この電流が電路に通電される。
一方、平衡ケーブルの許容電流に関しては絶縁体の耐熱性を考慮せねばならない。耐熱性についてもポリエチレンはビニールより優れている。ポリエチレンの最高許容温度は75℃であり、ビニールの最高許容温度60℃よりも高いので、許容電流を大きくすることが出来る。例えば、導体径1.2mmの平衡ケーブルを周囲温度30℃以下で使用する場合での許容電流を、電気設備技術基準をもとに求めると次のようになる。なお、周囲温度を30℃以下としたのは、雷サージ耐力試験の測定室内が空調によって30℃以下に温度管理されていると仮定した場合の値である。
I30=I0×C30 (A)
=19.0×1.22
=23.1(A)
≒23(A)
ここで、I30:導体径1.2mmの軟銅の単線の周囲温度30℃における許容電流(A)、I0:導体径1.2mmの軟銅の単線の許容電流(A)、C30:周囲温度30℃以下でのポリエチレン絶縁体の許容電流補正係数である。
=19.0×1.22
=23.1(A)
≒23(A)
ここで、I30:導体径1.2mmの軟銅の単線の周囲温度30℃における許容電流(A)、I0:導体径1.2mmの軟銅の単線の許容電流(A)、C30:周囲温度30℃以下でのポリエチレン絶縁体の許容電流補正係数である。
これより、絶縁体としてポリエチレンを用いた導体径1.2mmの平衡ケーブルは電流容量23Aを有している。
さらに雷サージ耐力試験時の電路には、前述の電力線搬送通信用のICT機器がネットワークステレオの場合には、その動作電流0.5Aが3分間程度、通電する。この通電時間中に雷サージ電流が重畳されるので、この時の電路の通電電流は動作電流と雷サージ電流とを合計した値となる。故に雷サージ電流によって発生する平衡ケーブルの温度上昇も考慮せねばならない。雷サージ耐力試験における波形として、例えばITU−T K.44で規定されている波形10/700μs(波頭長/波尾長、で表される)を用い、最大充電電圧15kVにてコモンモードで印加した場合、雷サージ電流としてはピーク値360A、10/350μsの波形をもつ電流が流れる。この時、雷サージ電流の継続時間、すなわち波尾長は350μsである。この時の両者の通電時間を比較すると、ネットワークステレオの動作電流継続時間が3分、雷サージ電流継続時間は350μsであり、雷サージ電流継続時間の方が圧倒的に短い(約50万分の1)。この結果、雷サージ電流によって発生する平衡ケーブルの温度上昇も非常に小さくなり、無視することができる。
最後に最大商用電源電流が流れる条件は、電力線搬送通信用のモデム内の電源回路のショート時、あるいは平衡ケーブルでのショートの発生した場合である。この場合には、商用電源電圧用の分電盤内の分岐回路に取り付けられている定格電流20Aの配線用ブレーカが動作することによって、20Aを超える商用電源電流が電路に流れることはなくなる。例えば、この20Aが平衡ケーブルに流れたとしても、前述のように平衡ケーブルの電流容量は23Aなので、問題はない。
以上に述べた理由から、電力線搬送通信用のICT機器の雷サージ耐力試験に必要なコモンモードチョークコイルは、巻線電線として平衡ケーブルを用いた場合において、商用電源電圧に対する耐電圧及び電流容量に対して十分なマージンを有している。
よって、巻線電線のポリエチレン被覆の厚さが0.5mm以上を有する平衡ケーブルは、減結合回路用コモンモードチョークコイルの巻線電線として適用できる可能性がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的としては、電力線搬送通信用のICT機器の雷サージ耐力試験において、被試験装置と対向装置間を伝送される電力線搬送通信の信号のスループットの劣化防止が可能な減結合回路を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、商用電源周波数と異なる周波数の信号を前記商用電源周波数に重畳して通信を行う電力線搬送通信の伝送路に接続されるICT機器の雷サージ耐力試験回路における前記ICT機器である被試験装置と該被試験装置でないICT機器である対向装置との間の、前記被試験装置と前記対向装置とを動作させるための所定の商用電源電圧が通電している伝送路に設置され、前記電力線搬送通信の信号を通過させる、空心コイルで構成されたコモンモードチョークコイルを有する減結合回路であって、絶縁材を被覆した2本の電線を対撚り合わせた1個の対撚り電線上に絶縁材を同心円状に被覆して構成された平衡ケーブルを1条有し、前記平衡ケーブルが前記コモンモードチョークコイルのボビンの外周に巻かれていることを特徴とする減結合回路をもって解決手段とする。
請求項2の本発明は、前記平衡ケーブルは、所定の商用電源電圧における耐電圧及び許容電流を有し、さらに前記雷サージ耐力試験回路のノーマルモードにおける試験電圧及びコモンモードにおける試験電圧に対する耐電圧を有し、かつ前記電力線搬送通信の通信信号を良好に伝送可能な伝送線路特性を有することを特徴とする請求項1に記載の減結合回路をもって解決手段とする。
請求項3の本発明は、前記コモンモードチョークコイルは、1個の前記ボビンに前記平衡ケーブルを多層巻にして構成する場合、及び複数個の前記ボビンに前記平衡ケーブルを多層巻にして構成する場合において、前記平衡ケーブルは巻き始めから巻き終わりまでつなぎのない巻線構成にすることによって、つなぎ目で発生する虞のある絶縁耐力の劣化あるいは反射による伝送信号の劣化を防ぐことを特徴とする請求項1又は2記載の減結合回路をもって解決手段とする。
請求項4の本発明は、商用電源周波数と異なる周波数の信号を前記商用電源周波数に重畳して通信を行う電力線搬送通信の伝送路に接続されるICT機器の雷サージ耐力試験回路における前記ICT機器である被試験装置と該被試験装置でないICT機器である対向装置との間の、前記被試験装置と前記対向装置とを動作させるための所定の商用電源電圧が通電している伝送路に設置され、前記電力線搬送通信の信号を通過させる、空心コイルで構成されたコモンモードチョークコイルを有する減結合回路であって、前記伝送路は単相3線式配線の伝送路であり、絶縁材を被覆した3本の電線を対撚り合わせた1個の対撚り電線上に絶縁材を同心円状に被覆して構成された平衡ケーブルを1条有し、前記平衡ケーブルが前記コモンモードチョークコイルのボビンの外周に巻かれていることを特徴とする減結合回路をもって解決手段とする。
本発明によれば、電力線搬送通信用のICT機器の雷サージ耐力試験において、被試験装置と対向装置間を伝送される電力線搬送通信の信号のスループットの劣化防止が可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態における減結合回路を適用した雷サージ耐力試験回路の構成を示す回路図である。なお、図1に示す雷サージ耐力試験回路は、商用電源線を用いた高速デジタル伝送方式である電力線搬送通信用のICT機器用の商用電源線(通信線、と同等である)―アース間の雷サージ耐力試験に適用した例を示している。
図1に示すように、本実施形態の雷サージ耐力試験回路において、雷サージ発生器1は2つの結合回路3a、3bを介して印加点T1、T2に接続されている。これらの印加点T1,T2は、被試験装置5の商用電源ポートにそれぞれ接続されている。
また、印加点T1,T2は、減結合回路9の被試験装置側端子に接続され、減結合回路9の対向装置側端子は、対向装置11の各商用電源ポートに接続されている。被試験装置5のアースポートは、アース13に接続されている。なお、対向装置11はアースポートを有している場合でも、アースには接続せずに電位的にフローティングさせている。
減結合回路9は対向装置11と被試験装置5との間で伝送路を形成し、電力線搬送通信の信号を遮断することなく通過させるための空心コイルのみで構成された後述するコモンモードチョークコイルを有している。
したがって、雷サージ発生器1で発生させた雷サージ過電圧は、2つの結合回路3a、3bを通って印加点T1、T2に印加される。この時、減結合回路9は試験対象ではないICT機器である対向装置11の商用電源ポートに雷サージ過電圧が流入するのを防止している。
商用電源15は、商用電源用減結合回路7に接続されており、その出力側端子は被試験装置5に接続される。この時、商用電源用減結合回路7は商用電源15に流入してきた伝導ノイズが被試験装置5及び対向装置11に伝導することを防止するために設置している。
なお、以下、単に「減結合回路」というときは、商用電源用減結合回路7でなく、減結合回路9をいうものとする。
図2は、減結合回路9の構成を示す回路図である。図2に示すように、減結合回路9は、絶縁体樹脂からなる筐体17と、この筐体17内に設けられた空心コイルC11〜C24と、被試験装置側端子21と、対向装置側端子23とを備えている。減結合回路9の筐体17の形状は円筒構造からなり、多層巻コイルのボビンに使用される。なお、図2において、空心コイルC11〜C24の巻き始め側は、黒丸印が付されており、空心コイルC11〜C24の巻き終わり側は上記黒丸印が付されていない側である。
また、減結合回路9に使用されている素子である空心コイルC11〜C24からなる4個の分割コイルD1〜D4が、コモンモードで動作するコモンモードチョークコイルを構成する。インダクタンス値は、前述の国際電気標準会議の電磁適合性におけるサージイミュニティ試験規格IEC61000−4−5において20mHと示されている。
分割コイルD1〜D4(空心コイルC11〜C24)は、雷サージ過電圧の流入を抑制するためのものであり、その巻き始め側は、筐体17に配置された対向装置11とのインターフェースである対向装置側端子23に接続されている。
対向装置側端子23には、空心コイルC11〜C14を構成する電線W1用の端子23aと、空心コイルC21〜C24を構成する電線W2用の端子23bとが設けられている。
また、空心コイルC11〜C24の巻き終わり側は、筐体17に設置された被試験装置5とのインターフェースである被試験装置側端子21に接続されている。
被試験装置側端子21には、電線W1用の端子21aと、電線W2用の端子21bとが設けられている。
図3は、減結合回路9のコモンモードチョークコイルの巻線電線に使用する平衡ケーブル900の断面の概念図である。
平衡ケーブル900は、絶縁材9aを被覆した2本の電線W1、W2を対撚り合わせた1条の対撚り電線90上に絶縁材900aを同心円状に被覆して構成されている。この対撚り電線上の同心円状の絶縁材900aはシースと呼ばれる。
各々の巻線電線の被覆及びシースの絶縁材は、絶縁耐力が高く、かつ比誘電率の低いことが必要である。このため一般に通信用ケーブルには、絶縁材としてポリエチレンが使用されている。ポリエチレンは比誘電率2.3、絶縁耐力35〜50kV/mmである。
巻線電線の導体径は、直流抵抗及び伝送損失を考慮すると大きいことが望ましい。10対以下の平衡ケーブルとしては、導体径1.2mmが市販されている。この場合、巻線電線の被覆の厚さは0.5mm、シースの厚さは1.5mmである。
特許文献2に関連して同一出願人が出願した特許出願の明細書の段落に述べられている平衡ケーブルを巻線電線として使用したコモンモードチョークコイルは、平成15年1月31日に制定された日本電信電話会社の通信装置の過電圧耐力に関するテクニカルリクワイヤメントTR189001に定められている雷サージ耐力試験に適用可能となっている。
しかも、電力線搬送通信においては電路と伝送路とが同一であるので、前記テクニカルリクワイヤメントTR189001を満足することと同時に、電路としての商用電源電圧に対する耐電圧及び許容電流を満足することが要求される。一般に10対以下の平衡ケーブルではノーマルモード、すなわち導体間の耐電圧は商用電源電圧に対して1kVを保障しているので、商用電源電圧100Vあるいは200Vを通電している電路に適用することが可能である。
許容電流に関しては、平衡ケーブルの被覆は耐熱性が優れているポリエチレンを用いているため、周囲温度30℃以下で使用する場合の許容電流は約23Aの特性を有している。よって商用電源電圧用の分電盤内の分岐回路用配線ブレーカは定格電流20Aなので、平衡ケーブルの許容電流についても問題は無い。
雷サージ耐力試験の際には、まず電力線搬送通信用のICT機器(被試験装置5と対向装置11)に商用電源電圧を通電し、3分間程動作させる。この3分間において、1)被試験装置5と対向装置11間で通信状態を設定し、所望のスループット値が得られているかを確認する。2)雷サージ試験電圧を印加する。この時に雷サージ試験波形が10/700μsを使用した場合には、その雷サージ電流波形は10/350μsとなる。この時の電路の通電電流は動作電流と雷サージ電流とを合計した値となる。3)商用電源電圧をオフにして被試験装置5と対向装置11の動作を停止させることで、3分間の商用電源電圧の通電が終了する。前記2)において雷サージ電流の継続時間(波尾長に等しい)は商用電源電流の通電時間に比べて約50万分の1であり、非常に短い時間しか流れない。このため雷サージ電流によって平衡ケーブルに発生する温度上昇は無視できる。
よって導体径1.2mmで、被覆の厚さ0.5mm、シースの厚さ1.5mmの平衡ケーブルは、耐電圧及び許容電流の観点からも、電力線搬送通信用のICT機器の雷サージ耐力試験用の減結合回路のコモンモードチョークコイルの巻線電線に適用可能である。
図4は、減結合回路のコモンモードに対するインダクタンスの周波数特性を示す図である。横軸はHzで表した周波数であり、縦軸はmHで表したコモンモードに対するインダクタンスである。周波数について述べると、雷サージ試験波形の一波形である10/700μs波形においては、その周波数スペクトラムの上限は数百MHzまで考慮すれば良い。
図4でコモンモードに対するインダクタンスは100KHz付近までは所望値の20mHであるが、それ以降の周波数では増大し、最大値は約60mHを示している。そして210kHzで最初の共振が発生し、それ以降の周波数ではキャパシタンスに変わる特性傾向を示している。よって本インダクタンスの周波数特性は十分とは言えないまでも、減結合回路として必要なコモンモードに対するインダクタンスの周波数特性を有している。
図5は、減結合回路9の伝送損失の周波数特性を示す図である。横軸はHzで表した周波数であり、縦軸はdBで表した伝送損失である。なお、図5では便宜上、伝送損失が増える方向を−(マイナス)で表しているが、真値は+の値である。この減結合回路用コモンモードチョークコイルは所望のインダクタンス値20mHを得るために、つなぎ目のない一条の平衡ケーブルを500m弱巻線している。つなぎ目を作らないことによって伝送線路でもある電路上に極力、反射を生じさせないこと、及びつなぎ目の接続処理に起因する耐電圧劣化の恐れをなくした。
この結果、2〜30MHzの電力線搬送通信の周波数帯域において、伝送損失は5〜22dBで、かつ周波数に対して滑らかな特性傾向を有している。伝送損失特性が滑らかであることは、伝送線路の特性インピーダンスの不連続によって生じる反射がほとんど発生していないことを示している。
次に、雷サージ耐力試験測定系に減結合回路9用のコモンモードチョークコイルを設置した時、被試験装置5と対向装置11間で電力線搬送通信の信号が正常に伝送可能なことについて述べる。なお、対象とする被試験装置5及び対向装置11をモデムとする。
被試験装置5の送信電力をPo、減結合回路9用のコモンモードチョークコイルの最大伝送損失をLmとすれば、対向装置11の受信電力Prは次式で表される。
Pr=Po―Lm(dBm/Hz)
Po=−60dBm/Hz、Lm=22dBを代入すると、Pr=−82.5dBm
/Hzが求まる。求めた受信電力値を評価すると、この受信電力において対向装置11(モデム)は問題なく動作するレベルである。よって、減結合回路9用のコモンモードチョークコイルは伝送損失の観点からも、コモンモードチョークコイルの巻線電線に適用可能である。
以上に述べたように巻線電線として電線の導体径1.2mm、ポリエチレン被覆厚0.5mm、ポリエチレンシース厚1.5mmの対捻りからなる平衡ケーブルを使用することによって、テクニカルリクワイヤメントTR189001に定められている雷サージ試験電圧を満足する、多層巻きでかつ分割巻を用いたコモンモードインダクタンス20mHのコモンモードチョークコイルを有する電力線搬送通信用の減結合回路を実現することが出来る。
なお、これまでは、2線の伝送路について述べたが、電力線搬送通信は単相3線式配線の伝送路でも可能である。その場合は、絶縁材を被覆した3本の電線を対撚り合わせた1個の対撚り電線上に絶縁材を同心円状に被覆して構成された平衡ケーブルをボビンの外周に巻き、こうして減結合回路のコモンモードチョークコイルを構成すればよい。
1 雷サージ発生器
3a、3b 結合回路
5 被試験装置
7 商用電源用減結合回路
9 減結合回路
11 対向装置
15 商用電源
21 被試験装置側端子
23 対向装置側端子
9a、900a 絶縁材(被覆、シース)
90 対撚り線
900 平衡ケーブル
W1、W2 電線
C11〜C24 空芯コイル
D1〜D4 分割コイル
3a、3b 結合回路
5 被試験装置
7 商用電源用減結合回路
9 減結合回路
11 対向装置
15 商用電源
21 被試験装置側端子
23 対向装置側端子
9a、900a 絶縁材(被覆、シース)
90 対撚り線
900 平衡ケーブル
W1、W2 電線
C11〜C24 空芯コイル
D1〜D4 分割コイル
Claims (4)
- 商用電源周波数と異なる周波数の信号を前記商用電源周波数に重畳して通信を行う電力線搬送通信の伝送路に接続されるICT機器の雷サージ耐力試験回路における前記ICT機器である被試験装置と該被試験装置でないICT機器である対向装置との間の、前記被試験装置と前記対向装置とを動作させるための所定の商用電源電圧が通電している伝送路に設置され、前記電力線搬送通信の信号を通過させる、空心コイルで構成されたコモンモードチョークコイルを有する減結合回路であって、
絶縁材を被覆した2本の電線を対撚り合わせた1個の対撚り電線上に絶縁材を同心円状に被覆して構成された平衡ケーブルを1条有し、前記平衡ケーブルが前記コモンモードチョークコイルのボビンの外周に巻かれていることを特徴とする減結合回路。 - 前記平衡ケーブルは、所定の商用電源電圧における耐電圧及び許容電流を有し、さらに前記雷サージ耐力試験回路のノーマルモードにおける試験電圧及びコモンモードにおける試験電圧に対する耐電圧を有し、かつ前記電力線搬送通信の通信信号を良好に伝送可能な伝送線路特性を有することを特徴とする請求項1に記載の減結合回路。
- 前記コモンモードチョークコイルは、
1個の前記ボビンに前記平衡ケーブルを多層巻にして構成する場合、及び複数個の前記ボビンに前記平衡ケーブルを多層巻にして構成する場合において、前記平衡ケーブルは巻き始めから巻き終わりまでつなぎのない巻線構成にすることによって、つなぎ目で発生する虞のある絶縁耐力の劣化あるいは反射による伝送信号の劣化を防ぐことを特徴とする請求項1又は2記載の減結合回路。 - 商用電源周波数と異なる周波数の信号を前記商用電源周波数に重畳して通信を行う電力線搬送通信の伝送路に接続されるICT機器の雷サージ耐力試験回路における前記ICT機器である被試験装置と該被試験装置でないICT機器である対向装置との間の、前記被試験装置と前記対向装置とを動作させるための所定の商用電源電圧が通電している伝送路に設置され、前記電力線搬送通信の信号を通過させる、空心コイルで構成されたコモンモードチョークコイルを有する減結合回路であって、
前記伝送路は単相3線式配線の伝送路であり、
絶縁材を被覆した3本の電線を対撚り合わせた1個の対撚り電線上に絶縁材を同心円状に被覆して構成された平衡ケーブルを1条有し、前記平衡ケーブルが前記コモンモードチョークコイルのボビンの外周に巻かれていることを特徴とする減結合回路。
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JP2017211243A (ja) * | 2016-05-24 | 2017-11-30 | 日本電信電話株式会社 | 雷サージ試験装置とその同軸ポート用回路 |
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-
2009
- 2009-06-18 JP JP2009145076A patent/JP2011004119A/ja active Pending
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JP2013247578A (ja) * | 2012-05-28 | 2013-12-09 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 減結合回路 |
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