発明の詳細な説明
本発明は、日常的な実験及び最適化に従って変化してもよく、本明細書に記載される具体的な方法論及びプロトコールに制限されないと理解されるべきである。本記載で用いられる専門用語は、特定の見解又は態様を説明する目的のためのみのものであり、添付された特許請求の範囲によってのみ制限される本発明の範囲を制限する意図はないことも理解されるべきである。本明細書及び添付された特許請求の範囲において使用されるように、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という単語は、他に特記しない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「細胞」は、当業者に公知の2つ以上の細胞及びその同等物などを言う。
別途定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同様の意味を有する。しかし、矛盾する場合は定義を含めて、本明細書が優先するであろう。あるいは、本発明の文脈において、以下の定義が適用される。
本発明の文脈において、「対照レベル」という用語は、対照試料において検出されたmRNA又はタンパク質発現レベルを指し、(a)正常対照レベル(b)肺癌特異的対照レベル(c)食道癌特異的対照レベルのいずれをも含み得る。対照レベルは、単一の参照集団に由来する単一の発現パターン、又は複数の発現パターンに由来する単一の発現パターンであり得る。例えば、本発明の文脈において、対照レベルは以前に試験された細胞由来の発現パターンのデータベースであり得る。「正常対照レベル」という用語は、正常で健康な個体、あるいは肺癌又は食道癌のような癌を罹患していないことが既知の個体の集団において検出された遺伝子発現のレベルを指す。正常個体とは、肺癌又は食道癌のいずれかの癌の臨床症状のない個体である。これに対して、「LC対照レベル」又は「EC対照レベル」とは、それぞれ、肺癌又は食道癌を罹患している集団に見出される遺伝子発現レベルを指す。
あるいは、試験試料とLC又はEC対照の間のLY6K発現レベルの類似性は、(試験試料を得た)それぞれ、対象がLC又はECを罹患しているか又は発症するリスクを有することを示す。
本発明によれば、特定の遺伝子の発現レベルは、対照レベルと比較して少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍又はそれ以上増加した場合に、「増加した」と見なされる。LY6K遺伝子発現は、例えばRT-PCR、ノザンブロット解析によって、患者由来の組織試料におけるLY6KのmRNAを検出することで、あるいは患者由来の組織試料の免疫組織化学的解析によってLY6Kにコードされるタンパク質を判定することで検出することができる。
本発明の文脈において、患者由来の組織試料は、試験対象から、例えば癌、より具体的にはLC又はECを有することが判明しているかその疑いがある患者から得られる任意の組織であり得る。例えば、組織には上皮細胞が含まれる。より具体的には、組織は非小細胞肺癌又は食道扁平上皮癌由来の上皮細胞であり得る。
付加的な定義は、後の文章に組み入れられ、適用される。
概要
癌、具体的には肺癌及び食道癌に対する、新規バイオマーカーと治療標的を同定するため、非小細胞肺癌(NSCLC)と食道扁平上皮癌(ESCC)の大多数で非常に転写活性化されている遺伝子が、27,648遺伝子からなるcDNAマイクロアレイを用いてスクリーニングされた。低分子量の、GPIアンカー型分子様タンパク質のメンバーである、リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K(LY6K)が候補として選択された。腫瘍組織マイクロアレイが、413例のNSCLCと271例のESCC患者由来の保存記録された癌試料において、LY6Kタンパク質の発現を調べるために適用された。112例の肺癌患者、81例のESCC患者、74例の健常対照の血清LY6KレベルがELISAによって測定された。癌細胞増殖及び/又は生存度におけるLY6Kの役割は、次に低分子干渉RNA(siRNA)実験によって検討された。
LY6Kは肺癌及び食道癌の大多数において多量に発現しているが、その発現は正常組織の中では精巣でしか検出されない。高レベルのLY6K発現はまた、ESCC(P=0.0455)と同じくNSCLC(P=0.0026)を有する患者の予後不良と関連しており、多変量解析はNSCLCの独立な予後値を裏付けた(P=0.0201)。実際、健常ボランティアの4.1%のみ誤って陽性と診断されたが、血清LY6K陽性症例の集団は、NSCLCで33.9%、ESCCで32.1%であった。さらに、LY6Kと癌胎児抗原(CEA)の両方を用いた複合アッセイ法は、健常ボランティアの9.5%を誤って診断したが、肺腺癌患者の64.7%を陽性と判定した。
CEAは細胞接着に関連する糖タンパク質である。通常、胎児の成長の間産生されるが、CEAの産生は誕生前に停止する。そのため、ヘビースモーカーではレベルが上昇するが、健常成人の血中では通常は検出されない。さらに、結腸直腸癌、胃癌、膵臓癌、肺癌、乳癌を有する個体由来の血清は、健常個体より高いCEAレベルを有することが示されている。しかし、CEAの結果は悪性疾患の存在又は非存在を確認するための、確実な証拠にはなりえず、他の試験手順及び試験される患者の臨床評価由来の情報と併せて使用しなければならない。CEAレベルが喫煙者;感染症、炎症性腸疾患、及び膵炎を含む炎症を有する患者;甲状腺機能低下を有する患者の一部;肝硬変;特に胃、膵臓、乳、卵巣などの非結腸直腸性腫瘍を有する患者の一部で上昇しているが、潜伏癌の適切なスクリーニング試験とは見なされない。多くの陰性が、初期癌及び転移性結腸直腸癌及び他の腫瘍を有する患者の一部にでさえ生じている。したがって、特に食道癌を診断することに関連するアッセイ法の検出感度を改善するマーカーに大きな需要がある。本明細書に開示されているように、LY6Kはそのような検出感度を改善するマーカーの一例である。
本明細書に示されているように、LY6Kとサイトケラチン19断片(CYFRA21-1)の両方の使用は、肺扁平上皮癌の検出においてアッセイ感度を70.4%まで増大し、擬陽性率はたった6.8%であった。CYFRA21-1は血清中の可溶性サイトケラチン19断片を測定し、肺癌、特に扁平上皮癌の有用なマーカーである。さらに、NSCLC細胞のLY6Kに対するsiRNAでの処理は、その発現をノックダウンし、癌細胞の増殖を抑制した。このデータは、癌-精巣抗原LY6Kが肺癌及び食道癌の診断/予後予測バイオマーカーとして、並びにおそらく治療標的として有効であることを示唆している。
要約すると、本発明はリンパ球抗原6複合体、遺伝子座K(LY6K)(アクセッション番号AJ001348;AB105187;SEQ ID NO: 1にコードされるSEQ ID NO: 2)は、肺癌及び食道癌などを有する患者を評価及びモニタリングするため、並びに、それら癌の診断のためのバイオマーカーとしての可能性を有する癌-精巣抗原である。LY6Kの血清レベルは患者の大多数の血清で上昇していることが本明細書で示されているため、他の腫瘍マーカーと組み合わせたLY6Kは、癌の診断の検出感度を有意に改善することができる。初期の全身治療の恩恵を受ける見込みのある患者を同定する初期診断としても、有用性が見出されるかもしれない。さらに、増殖促進経路及びNSCLCとESCCの攻撃的な特徴に寄与する要因であるLY6Kは、分子標的薬及びこの分子を過剰発現する癌の任意のタイプに対する免疫治療法など、治療アプローチの開発にとって有望な標的である。
肺癌及び食道癌の診断
LY6K遺伝子の発現は、肺癌又は食道癌を有する患者において特異的に上昇していることが見出された。そのため、本明細書において同定された遺伝子は、その転写産物及び翻訳産物とともに、癌のマーカーとして診断上有用であることが見出された。より具体的には、細胞試料におけるLY6K遺伝子の発現を測定することによって、肺癌又は食道癌を診断することができる。したがって、本発明は、対象においてLY6K遺伝子の発現レベルを決定することにより、対象において、肺癌又は食道癌を診断する方法あるいは肺癌又は食道癌が発症する素因を診断する方法を提供する。
本発明によると、対象の状態を調べるための中間結果を提供することができる。そのような中間結果をさらなる情報と組み合わせて、対象が肺癌又は食道癌に罹患していると医師、看護師、又はその他の医療従事者が判定することを補助することができる。あるいは、本発明を用いて対象由来の組織中の癌性細胞を検出し、対象が肺癌又は食道癌に罹患していると判定するのに有用な情報を医師に提供することもできる。
本発明の診断方法は、LY6K遺伝子の発現を判定する(例えば測定する)段階を含む。公知配列を登録しているGenBank(商標)データベースによって提供される配列情報を用いて、LY6K遺伝子は通常の当業者に周知の従来技術を用いて検出及び測定することができる。例えば、登録された配列データベースの範囲内でLY6K遺伝子に相当する配列は、LY6K遺伝子に相当するRNA配列を検出するプローブの構築のために、例えばノザンブロットハイブリダイゼーション解析において使用することができる。ハイブリダイゼーションプローブは典型的には、LY6K配列における、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも200個の連続したヌクレオチドを含む。別の例としては、その配列はLY6K核酸を特異的に複製するプライマーを構築するために、複製ベースの検出方法、例えば逆転写ポリメラーゼ連鎖反応において使用することができる。別の例としては、LY6Kに対する抗体、例えば抗LY6Kポリクローナル抗体又は抗LY6Kモノクローナル抗体を、免疫組織化学的解析、ウエスタンブロット解析、ELISAなどの免疫測定法のために用いることができる。
続いて、試験細胞集団、例えば患者由来の組織試料におけるLY6K遺伝子発現レベルを、参照細胞集団における発現レベルと比較することができる。参照細胞集団は、比較されるパラメータが既知である1つ又は複数の細胞、すなわち非小肺癌細胞(例えばLC細胞)、食道扁平上皮癌細胞(例えばEC細胞)、正常肺上皮細胞(例えば非LC細胞)又は正常食道上皮細胞(例えば非EC細胞)を含む。
試験細胞集団における遺伝子発現のレベルが、参照細胞集団と比較してLC、EC又はそれに対する素因の存在を示すか否かは、参照細胞集団の組成に依存する。例えば、参照細胞集団が非LC細胞又は非EC細胞から構成される場合には、試験細胞集団と参照細胞集団との間で遺伝子発現レベルに類似性があることにより、試験細胞集団が非LC又は非ECであると示される。その反対に、参照細胞集団がLC細胞又はEC細胞から構成される場合には、試験細胞集団と参照細胞集団との間で遺伝子発現に類似性があることにより、試験細胞集団がLC細胞又はEC細胞を含むと示される。
参照細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現レベルから1.1倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上、5.0倍以上、10.0倍以上又はそれ以上変化している場合、試験細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現のレベルは、「変化している」と考えられる、あるいは「異なる」と見なされる。
試験細胞集団と参照細胞集団との間の差次的な遺伝子発現は、対照核酸、例えばハウスキーピング遺伝子に対して標準化することができる。例えば、対照核酸は、細胞が癌状態にあるいか非癌状態にあるかによっての差がないことが判明している核酸である。対照核酸の発現レベルは、試験細胞集団及び参照細胞集団におけるシグナルレベルを標準化するのに用いることができる。対照遺伝子の例には、例えば、β-アクチン、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、リボソームタンパク質P1が非制限的に含まれる。
試験細胞集団は複数の参照細胞集団と比較することができる。多数の参照細胞集団のそれぞれは既知のパラメータに関して差があり得る。したがって、試験細胞集団は、例えばLC細胞又はEC細胞を含むことが判明している第1の参照細胞集団、並びに例えば非LC細胞又は非EC細胞(正常細胞)を含むことが判明している第2の参照細胞集団と比較することができる。試験細胞集団は、LC細胞又はEC細胞を含むことが判明しているか、又はLC細胞又はEC細胞を含むことが疑われる対象からの組織試料又は細胞試料中に含まれ得る。
試験細胞集団は、体組織又は体液、例えば、生体液(例えば血液、痰、唾液)から得ることができる。例えば、試験細胞集団を肺組織又は食道組織から精製することができる。好ましくは、試験細胞集団は上皮細胞を含む。上皮細胞は、好ましくは非小細胞肺癌又は食道扁平上皮癌であることが既知であるか、それらが疑われる組織由来のものである。
参照細胞集団中の細胞は、好ましくは試験細胞集団の組織型と類似した組織型に由来する。任意には、参照細胞集団は細胞株、例えば、LC細胞株又はEC細胞株(すなわち、陽性対照)又は正常な非LC細胞株又は非EC細胞株(すなわち、陰性対照)である。又は、対照細胞集団は、アッセイされるパラメータ又は条件に関して既知である細胞から得られた分子情報のデータベースに由来し得る。
対象は、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物の例には、例えば、ヒト、非ヒト霊長動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又はウシが非制限的に含まれる。
本明細書に開示したLY6K遺伝子の発現は、当技術分野で公知の方法を用いて、タンパク質レベル又は核酸レベルで決定することができる。例えば、遺伝子発現を決定するには、これらの核酸配列の1つ又は複数を特異的に認識するプローブを用いたノーザンハイブリダイゼーション分析を用いてもよい。又は、遺伝子発現は、例えばLY6K遺伝子配列、SEQ ID NO: 1及び2に特異的なプライマーを用いて逆転写に基づくPCRアッセイにより測定することもできる。発現はまた、タンパク質レベル、すなわちLY6K遺伝子によってコードされるポリペプチドのレベル又はその生物学的活性を測定することによって決定することもできる。そのような方法は当技術分野で周知であり、例えば遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体、例えば、これに限定されないが、実施例1に記載される、SEQ ID NO: 18又は19を含むアミノ酸配列を認識する抗LY6Kポリクローナル抗体を利用した免疫測定法が非限定的に含まれる。遺伝子によってコードされるタンパク質の生物学的活性は一般に周知であり、例えば細胞増殖活性を含む。 Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, 1987-2006, John Wiley and Sons; Harlow and Lane, Using Antibodies: A Laboratory Manual, 1998, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
本発明の文脈において、EC又はLCは試験細胞集団(すなわち患者由来の生物学的試料)におけるLY6K核酸の発現レベルを測定することによって診断される。好ましくは試験細胞集団は、上皮細胞、例えば肺組織又は食道組織から得られた細胞を含む。遺伝子発現を、血液又は他の体液、例えば唾液又は痰から測定することもできる。他の生物学的試料をタンパク質レベルの測定のために用いることもできる。例えば、診断しようとする対象から得た血液又は血清中のタンパク質レベルを、免疫測定法又は従来の生物学的アッセイによって測定することができる。
LY6K遺伝子の発現は、最初に試験細胞集団又は生物学的試料において決定し、その後LY6K遺伝子の正常対照発現レベルと比較する。正常対照レベルとは、LC又はECに罹患していないことが判明している対象由来の細胞集団で一般に認められるLY6K遺伝子の発現に相当する。正常対照試料における発現と比較した、患者由来の組織試料におけるLY6K遺伝子の発現レベルの変化又は相違(例えば増加)は、対象がLC又はECに罹患しているか、その発症のリスクを有することを示す。例えば、試験細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現が正常対照細胞集団における発現と比較して増加していることにより、その対照がLC又はECに罹患しているか、その発症のリスクを有することが示される。
正常対照発現レベルと比較した試験細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現レベルにおける増加は、対象がLC又はECに罹患しているか、その発症のリスクを有することを示す。例えば、LY6K遺伝子のレベルにおける、少なくとも1%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又はそれ以上の発現レベルの増加は、対象がLC又はECに罹患しているか、その発症のリスクを有することを示す。
スクリーニングアッセイ
LY6K遺伝子発現を阻害する作用物質の同定:
LY6K遺伝子の発現又はその遺伝子産物の活性を阻害する作用物質は、LY6K遺伝子を発現する試験細胞集団を試験作用物質と接触させた後に、遺伝子発現レベル又はその遺伝子産物の活性を決定することによって同定することができる。作用物質存在下での、遺伝子発現レベル又はその遺伝子産物の活性レベルが、試験作用物質の非存在下でのその発現又は活性レベルと比較して低下していることは、その作用物質がLY6K遺伝子の阻害因子であって、LC及びECを阻害するのに有効であることを示す。
試験細胞集団はLY6K遺伝子を発現する任意の細胞を含み得る。例えば、試験細胞集団は上皮細胞、例えば肺組織又は食道組織由来の細胞を含み得る。さらに、試験細胞集団は非小細胞肺癌細胞又は食道扁平上皮癌細胞由来の不死化細胞株であってもよい。又は、試験細胞集団はLY6K遺伝子をトランスフェクトされた細胞、又はレポーター遺伝子と機能的に結合したLY6K遺伝子由来の調節配列(例えば、プロモーター配列)をトランスフェクトされた細胞で構成され得る。
作用物質は、例えば、阻害性オリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、リボザイム)、抗体、ポリペプチド、有機低分子であり得る。マルチウェルプレート(例えば、96ウェル、192ウェル、384ウェル、768ウェル、1536ウェル)を用いて複数の作用物質を同時にスクリーニングすることによる、ハイスループット法を用いて、適切な阻害性作用物質のスクリーニングを実行することができる。ハイスループットスクリーニング用の自動化システムは、例えば、Caliper Life Sciences, Hopkinton, MAから市販されている。スクリーニングに利用可能な有機低分子ライブラリは、例えば、Reaction Biology Corp., Malvern, PA; TimTec, Newark, DEから購入することができる。
治療作用物質の同定:
本明細書に開示した、差次的に発現されるLY6K遺伝子を、LC及びECを治療するための候補治療作用物質を同定するのに用いることもできる。本発明の方法は、試験作用物質が、LC状態又はEC状態に特徴的なLY6K遺伝子の発現レベルを、非LC状態又は非EC状態に特徴的な遺伝子発現レベルへ変換させ得るか否かを判定することを目的に、候補治療作用物質をスクリーニングすることを含む。
本方法では、試験細胞集団を1つの試験作用物質又は複数の試験作用物質(逐次的に又は組み合わせで)に対して曝露し、細胞におけるLY6K遺伝子の発現を測定する。試験細胞集団でアッセイした遺伝子の発現レベルを、試験作用物質に曝露されていない参照細胞集団における同じ遺伝子の発現レベルと比較する。
LY6K遺伝子の発現を抑制し得る作用物質は、臨床的に有益である。このような作用物質はさらに、動物又は試験対象における肺癌又は食道癌増殖を防止又は予防する能力に関して試験することができる。
さらなる態様において、本発明はLC及び/又はECの治療における標的となる候補作用物質をスクリーニングする方法を提供する。以上に詳述したように、LY6K遺伝子の発現レベル又はその遺伝子産物の活性レベルを制御することにより、LC及び/又はECの発症及び進行を制御することができる。このため、LC及び/又はECの治療における標的となる候補作用物質を、このような発現レベル及び活性を癌状態又は非癌状態の指標として用いるスクリーニング方法によって同定することができる。本発明の文脈おいて、このようなスクリーニングは、例えば、以下の段階を含み得る:
(a) 試験化合物をLY6Kポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに接触させる段階;
(b) ポリペプチドと試験化合物との結合活性を検出する段階;及び
(c) ポリペプチドと結合する試験化合物を選択する段階。
又は、本発明のスクリーニング方法は、以下の段階を含み得る:
(a)候補化合物をLY6K遺伝子を発現する細胞に接触させる段階;及び
(b)候補化合物の非存在下で検出される発現レベルと比較して、LY6K遺伝子の発現レ
ベルを低下させる候補化合物を選択する段階。
LY6K遺伝子を発現する細胞には、これに限定されないが、例えばLC又はECから樹立された細胞株が含まれる;このような細胞は本発明の上記のスクリーニングに用いることができる。
又は、本発明のスクリーニング方法は、以下の段階を含み得る:
(a) 試験化合物をLY6Kポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに接触させる段階;
(b) 段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階;及び
(c) 試験化合物の非存在下で検出される生物学的活性と比較して、LY6Kポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの生物学的活性を抑制する化合物を選択する段階。
本発明のスクリーニング方法に用いるためのタンパク質は、LY6K遺伝子の既知のヌクレオチド配列を用いて組換えタンパク質として得ることができる。LY6K遺伝子及びそれによってコードされるタンパク質に関する情報に基づき、当業者は、タンパク質の任意の生物学的活性を、スクリーニングのための指標として選択し、選択した生物学的活性に関するアッセイのために適した任意の測定方法を選択することができる。具体的には、LY6Kタンパク質は細胞増殖活性を有することが公知である。したがって、生物学的活性は、そのような細胞増殖活性を用いて判定することができる。
又は、本発明のスクリーニング方法は、以下の段階を含み得る:
(a) 候補化合物を、LY6K遺伝子の転写調節領域と、その転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入された細胞に接触させる段階;
(b) 該レポーター遺伝子の発現又は活性を測定する段階;並びに
(c) 候補化合物の非存在下で検出される発現レベル又は活性レベルと比較して、該レポーター遺伝子の発現又は活性レベルを減少させる候補化合物を選択する段階。
適したレポーター遺伝子及び宿主細胞は当技術分野で周知である。本発明のスクリーニング方法に適したレポーター構築物は、LY6K遺伝子の転写調節領域を用いることによって調製し得る。転写調節領域を含むヌクレオチドセグメントを、LY6K遺伝子のヌクレオチド配列情報に基づいてゲノムライブラリから単離することができる。
LC及び/又はECを治療するための治療作用物質の選択:
個体の遺伝子構成の相違は、様々な薬物を代謝する相対的能力の相違を結果的にもたらし得る。対象において代謝されて抗LC及び/又はEC剤として作用する物質は、癌状態に特徴的な遺伝子発現パターンから非癌状態に特徴的な遺伝子発現パターンへの、対象の細胞における遺伝子発現パターンの変化を誘導することによって、その存在を明示することができる。したがって、差次的に発現されるLY6K遺伝子によって予想される、LC及び/又はECの治療的又は予防的阻害剤が、作用物質が対象におけるLC及び/又はECの好適な阻害剤であるかどうかを決定するために選択された対象由来の試験細胞集団の中で試験されることが可能となる。
特定の対象に適切であるLC及び/又はECの阻害剤を同定するために、対象由来の試験細胞集団を治療作用物質に曝露させ、LY6K遺伝子の発現を判定する。
本発明の方法の文脈において、試験細胞集団はLY6K遺伝子を発現するLC及び/又はEC細胞を含む。好ましくは、試験細胞集団は上皮細胞を含む。例えば、試験細胞集団を候補作用物質の存在下でインキュベートすることができ、試験細胞集団の遺伝子発現のパターンを測定し、1つ又は複数の参照発現プロファイル、例えばLC参照発現プロファイル、EC参照発現プロファイル又は正常参照発現プロファイル、例えば非LC及び非EC参照発現プロファイルと比較することができる。
LC及び/又はECを含む参照細胞集団と比較した試験細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現の減少は、作用物質が治療用途を有することを示す。また、試験細胞集団と参照細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現の類似性は、作用物質が別の治療用途を有することを示す。
本発明の文脈において、試験作用物質は任意の化合物又は組成物であり得る。例示的な試験作用物質には、免疫調節物質(例えば抗体)、阻害性オリゴヌクレオチド(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、短い阻害性オリゴヌクレオチド、リボザイム)並びに低分子有機化合物が含まれるが、これらに限定されない。
候補化合物:
本発明のスクリーニングアッセイによって単離された化合物は、LY6K遺伝子の発現又はLY6K遺伝子にコードされるタンパク質の活性を阻害し、肺癌及び/又は食道癌の治療あるいは予防のために適用され得る薬剤の開発のための候補として役立つ可能性がある。
その上、LY6K遺伝子にコードされるタンパク質の活性を阻害する化合物の構造の一部が、付加、欠失、及び/又は置換によって変換されている化合物も同様に、本発明のスクリーニング方法によって得ることができる化合物として含まれる。
本発明に係る方法により単離された化合物をヒト及び他の哺乳動物、例えば、これらに限定されないものも含むが、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ及びチンパンジーの医薬として投与する場合、単離された化合物は直接投与してもよく、或いは公知の医薬品調製方法を用いて投薬形態へ製剤化されてもよい。例えば、患者の必要性により、薬剤は、糖衣タブレット、カプセル、エリキシル剤及びマイクロカプセルとして経口で、或いは滅菌溶液又は懸濁液を水又は他の薬学的に許容可能な液体とともに注射する形態で非経口で与えられてもよい。例えば、化合物は薬学的に許容可能な担体又は媒体、特に、滅菌水、生理食塩水、植物オイル、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、着香剤、賦形剤、ビヒクル、保存料、結合剤などとともに混合し、一般的に許容された投薬実施に必要とされる単位用量形態とすることができる。これらの調合剤中の活性成分の量は、取得できる指示範囲内の適量な投与量となる。
タブレット及びカプセルに混合されうる添加剤の例としては、非限定的に、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントゴム及びアラビアゴムなどの結合剤;結晶セルロースなどの賦形剤;コーンスターチ、ゼラチン、アルギニン酸などの膨張剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、ラクトース又はサッカリンなどの甘味剤;及び、ペパーミント、アカモノ(Gaultheria adenothrix)油及びチェリーなどの着香剤が挙げられる。単位用量形態がカプセルである場合、オイルなどの液体担体も上記成分にさらに含まれうる。注射用滅菌組成物は、注射に適した滅菌水又は生理食塩水などのビヒクルを用いる通常の投薬実施に従って製剤化することができる。
生理食塩水、グルコース及びD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール及び食塩などのアジュバントを含む他の等張液を注射用水性液として用いることができる。これらはアルコール、特にエタノールなどの適切な溶解剤、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどのポリアルコール、Polysorbate80(商標)及びHCO-50などの界面活性剤と組み合わせて用いることができる。
ゴマ油又は大豆油は油性液体として使用でき、溶解剤としての安息香酸ベンジル又はベンジルアルコールと併せて使用でき、リン酸バッファー及び酢酸ナトリウムバッファーなどの緩衝液;塩酸プロカインなどの鎮痛剤;ベンジルアルコール及びフェノールなどの安定剤;及び抗酸化剤とともに製剤化されてもよい。調製した注射は、適切なアンプルに充填されてもよい。
当業者に公知の方法で、例えば動脈、静脈又は経皮注射として、あるいは、鼻腔内、経気管支、筋肉内又は経口投与として、本発明に係る医薬組成物を患者に投与するために用いることができる。当該化合物がDNAによりコード可能である場合、DNAを遺伝子治療のためのベクターに挿入することができ、該ベクターを治療を行うための患者に投与することができる。いずれの場合も、用量及び投与方法は患者の体重、年齢及び症状によって変わるが、当業者は適した投与方法を選択することができる。
例えば、本発明のタンパク質に結合し、そのタンパク質の活性を調節する化合物の用量は症状に依存するが、用量は正常なヒト成人(体重約60 kg)に経口投与する場合、通常、1日当たり約0.1mg〜約100mg、好ましくは1日当たり約1.0mg〜約50mg、さらに好ましくは1日当たり約1.0mg〜約20gである。
正常なヒト成人(体重約60kg)に注射の形態で非経口的に化合物を投与する場合、患者、標的器官、症状及び投与方法によっていくらか違いはあるものの、1日当たり約0.01mg〜約30mg、好ましくは1日当たり約0.1〜約20mg、さらに好ましくは1日当たり約0.1mg〜約10mgの用量を静脈内注射することが好都合である。他の動物の場合には、適切な用量は体重60kgに換算して、慣例どおりに算出してもよい。
肺癌及び/又は食道癌のモニタリング及び予後診断
治療の有効性の評価
本明細書において同定された差次的に発現されるLY6K遺伝子によって、LC及び/又はECの治療の経過をモニターし、評価することも可能になる。あるいは、本発明によれば、LC及び/又はECの治療の経過のモニタリングの中間結果を提供することもできる。そのような中間結果は、さらなる情報を組み合わせて、対象が肺癌又は食道癌に罹患していると医師、看護師、又はその他の医療従事者が判定することを補助することができる。したがって、LY6K遺伝子又はそれにコードされるタンパク質は、LC及び/又はECの臨床転帰をモニタリングするための有用な予後マーカーである。あるいは、本発明を用いて対象由来の組織中の癌細胞を検出し、LC及び/又はECの治療経過を評価するのに有用な情報を医師に提供することもできる。この方法において、試験細胞集団はLC及び/又はECの治療中である対象から提供される。必要であれば、治療前、治療中、及び/又は治療後の様々な時点で、対象から試験細胞集団を得る。次に、試験細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現を決定し、LC状態及び/又はEC状態であることが既知の細胞を含む参照細胞集団における同遺伝子の発現と比較する。本発明の文脈において、参照細胞は関心対象の治療にさらすべきではない。
LC及び/又はECの治療の特定の経過をモニタリング及び評価する中で、生体試料は非小細胞肺癌及び/又は食道扁平上皮癌の治療中の対象由来であるべきである。複数の試験生体試料は治療前、治療中又は治療後の様々な時点で対象から得ることが好ましい。
参照細胞集団がLC細胞及びEC細胞を含まない場合、試験細胞集団及び参照細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現の類似性は、関心対象の治療が有効であることを示す。しかしながら、試験細胞集団及び正常対照参照細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現の相違は、臨床転帰又は予後がそれほど好ましくないことを示す。同様に、参照細胞集団がLC細胞及び/又はEC細胞を含む場合、試験細胞集団及び参照細胞集団の間におけるLY6K遺伝子の発現の相違は、関心対象の治療が有効であることを示すが、試験集団及びLC対照参照細胞集団及び/又はEC対照参照細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現の類似性は、臨床転帰又は予後がそれほど好ましくないことを示す。
さらに、治療開始前に得られる対象由来の生物学的試料において決定されるLY6K遺伝子の発現レベル(すなわち治療前レベル)と、治療後に得られる対象由来の生物学的試料において決定されるLY6K遺伝子の発現レベル(すなわち治療後レベル)を比較することができる。治療後試料における発現レベルの減少は、関心対象の治療が有効であることを示すが、治療後試料における発現レベルの増加又は維持は臨床転帰又は予後がそれほど好ましくないことを示す。
本明細書において使用される場合、「有効である」という用語は、治療によってLY6K遺伝子の発現の低下、対象におけるLC及び/又はECのサイズ、有病率、もしくは転移能の減少がもたらされるということを示す。関心対象の治療が予防的に適用される場合、「有効である」と言う用語は、治療によって肺癌及び/又は食道腫瘍の形成が遅延もしくは予防されるか、又は臨床的LC及び/又はECの症状が遅延、予防もしくは緩和されるということを意味する。標準的な臨床プロトコルを用いて、肺又は食道の腫瘍の評価を行うことができる。
さらに、有効性を、LC及び/又はECを診断あるいは治療するための任意の公知方法と関連して決定することができる。LC及び/又はECは、例えば病理組織学的に、あるいは症候性の異常、例えば体重減少、食欲低下、腹痛、背痛、食欲不振、吐き気、嘔吐、全身倦怠、衰弱、並びに黄疸を同定することによって診断することができる。
肺癌及び/又は食道癌を有する対象の予後の評価
本発明はまた、LC又はECを有する対象の予後を評価する方法であって、試験細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現と、全疾患病期にわたる患者から得られた参照細胞集団におけるLY6K遺伝子の発現とを比較する段階を含む方法も提供する。試験細胞集団及び参照細胞集団におけるLY6K遺伝子の遺伝子発現を比較することにより、又は対象から得られた試験細胞集団の遺伝子発現パターンを経時的に比較することにより、対象の予後を評価することができる。
また、本発明によると、LC又はECを有する対象の予後を評価するための中間結果が提供される。そのような中間結果は、さらなる情報を組み合わせて、対象が肺癌又は食道癌に罹患していると医師、看護師、又はその他の医療従事者が診断することを補助することができる。あるいは、本発明を用いて対象由来の組織中の癌細胞を検出し、LC又はECを有する対象の予後を評価するのに有用な情報を医師に提供することもできる。
例えば、LY6K遺伝子の発現が、試験試料において正常対照試料と比較して増加していることは、予後がそれほど好ましくないことを意味する。その反対に、LY6K遺伝子の発現が、試験試料において正常対照試料と比較して類似していることは、対象の予後がより好ましいことを意味する。
肺癌及び/又は食道癌の治療及び予防
肺癌及び/又は食道癌を阻害する方法
本発明はさらに、LY6K遺伝子の発現(又はその遺伝子産物の活性)を低下させることによって、対象におけるLC及び/又はECの1つ又は複数の症状を予防、治療及び/又は軽減するための方法を提供する。適した治療用化合物を、LC及び/又はECに罹患している対象又はその発症のリスク(もしくはそれに対する感受性)を有する対象に対して、予防的又は治療的に投与することができる。予防的投与は、疾患又は障害が予防されるか又はその進行が遅延するように、疾患の明らかな臨床症状が現れる前に行う。このような対象は、標準的な臨床的方法を用いて、又はLY6K遺伝子の異常な発現レベルもしくはその遺伝子産物の異常な活性を検出することにより、同定することができる。本発明の文脈において、適した治療薬剤には、例えば細胞周期調節、細胞増殖の阻害物質が含まれる。
本発明の治療方法は、肺細胞及び/又は食道細胞においてその発現が異常に増加している(「上方制御された」又は「過剰発現された」)LY6K遺伝子の遺伝子産物の発現、機能、又はその両方を減少させる段階を含むことができる。発現は当技術分野で公知の幾つかの方法のうち任意のものによって阻害することができる。例えば、化合物、例えばLY6K遺伝子の発現を阻害する又はそれに拮抗する核酸、例えばLY6K遺伝子の発現を妨げるアンチセンスオリゴヌクレオチド又は低分子干渉RNAを対象に投与することによって発現を阻害することができる。
阻害性核酸
上述のように、LY6K遺伝子のヌクレオチド配列に相補的な阻害性核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、リボザイム)を用いて遺伝子の発現レベルを低下させることができる。例えば、肺癌又は食道癌で上方制御されているLY6K遺伝子の相補的な阻害核酸は、肺癌又は食道癌の治療に有用である。具体的には、本発明の阻害性核酸は、LY6K遺伝子又はそれに対応するmRNAに結合し、それによって遺伝子の転写又は翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、並びに/又はLY6K遺伝子にコードされるタンパク質の発現を阻害し、それによってタンパク質の機能を阻害することによって作用することができる。
本明細書において用いられる「阻害性核酸」という用語は、標的配列に完全に相補的であるヌクレオチド及び阻害性核酸が標的配列に特異的にハイブリダイズすることができる限り、1つ又は複数のヌクレオチドのミスマッチを有するヌクレオチドの両方を包含する。本発明の阻害性核酸には、少なくとも15個の連続するヌクレオチドの範囲にわたって少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれよりも高い配列同一性を有するポリヌクレオチドが含まれる。当技術分野において公知のアルゴリズムを用いて配列同一性を決定することができる。
1つの有用なアルゴリズムはAltschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10に最初に記載されたBLAST2.0である。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公に入手可能である(ncbi.nlm.nih.govのワールドワイドウェブ上で入手可能)。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列された場合、一致するか又は幾つかの正の値の閾値スコアTを満たすかいずれかのクエリー配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高スコアリング配列対(HSP)を最初に同定することを伴う。Tは近隣ワードスコア閾値と称される(Altschulら、前記)。これらの最初の近隣ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして働く。その後、このワードヒットは累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各々の配列に沿って両方向に伸長される。ヌクレオチド配列については、パラメータM(1対の一致残基に対する報酬スコア;常に>0)及びN(不一致残基に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて累積スコアを計算する。アミノ酸については、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下した場合;1つもしくは複数の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積によって、累積スコアがゼロもしくはそれ未満に進んだ場合、又はいずれかの配列の末端に達した場合、各々の方向におけるワードヒットの伸長は停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、Xは、アラインメントの感度及び速度を決定する。(ヌクレオチド配列についての)BLASTNプログラムは、11のワード長(W)、10の期待値(E)、100のカットオフ、M=5、N=4、及び両方の鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、3のワード長(W)、10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスをデフォルトとして用いる(Henikoff & Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-9を参照されたい)。
有用なアラインメントアルゴリズムのさらなる例は、PILEUPである。PILEUPは進行性の、対を成すアラインメントを用いて関連配列の群から多重配列アラインメントを作製する。それはまた、アラインメントを作製するために用いられるクラスタリング関係性を示す樹状図をプロットすることができる。PILEUPは、Feng & Doolittle, (1987) J. Mol. Evol. 35: 351-60の進行性アラインメント法を単純化したものを用いる。用いられる方法は、Higgins & Sharp, (1989) CABIOS 5:151-3によって記載された方法に類似している。本プログラムは、例えば5,000文字の最大長の300配列まで整列されることができる。多重アラインメント手順は、2つの最も類似する配列の対を成すアラインメントで始まり、2つの整列させた配列のクラスターを生成する。その後、このクラスターは次に最も関連した配列又は整列させた配列のクラスターに対して整列させることができる。配列の2つのクラスターは、2つの個々の配列の対を成すアラインメントの単純な伸長によって整列させることができる。最終的なアラインメントは、一連の進行性の、対を成すアラインメントによって達成される。本プログラムを用いて、クラスタリング関係性の系統樹又は樹状の図表示を作製することもできる。配列比較の領域に関する特定の配列及びそれらのアミノ酸又はヌクレオチド座標を指定することによって、本プログラムは実行される。例えば、単量体ドメインファミリーにおける保存されたアミノ酸を決定するか、又はファミリーにおける単量体ドメインの配列を比較するために、本発明の配列又はコード核酸を整列させ、構造-機能情報を提供する。
本発明のアンチセンス核酸は、ECに関連したマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質を産生する細胞に対して、これらのタンパク質をコードするDNA又はmRNAと結合することによって作用し、その転写又は翻訳を阻害して、mRNAの分解を促進し、タンパク質の発現を阻害して、その結果タンパク質の機能を阻害する。
本発明のアンチセンス核酸は、核酸に対して不活性の適切な基剤と混合することにより、外用製剤、例えばリニメント剤又は湿布剤の形にすることができる。
同じく、必要に応じて、賦形剤、等張剤、溶解補助剤、安定剤、保存料、鎮痛薬などを添加することにより、本発明のアンチセンス核酸を錠剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、液剤、点鼻薬、及び凍結乾燥製剤として製剤化することもできる。これらは公知の方法に従って調製可能である。
本発明のアンチセンス核酸は、罹患部位に直接適用することにより、又はそれが罹患部位に到達するように血管内に注射することにより、患者に投与することができる。持続性及び膜透過性を高めるためにアンチセンス封入用媒質を用いることもできる。その例には、リポソーム、ポリ-L-リジン、脂質、コレステロール、リポフェクチン又はこれらの誘導体が非制限的に含まれる。
本発明の阻害性核酸の投与量は、患者の状態に従って適切に調整でき、所望の量を用いることができる。例えば、0.1〜100 mg/kg、好ましくは0.1〜50 mg/kgの範囲の用量を投与することができる。
本発明のアンチセンス核酸は、本発明のタンパク質の発現を阻害し、そのため、本発明のタンパク質の生物学的活性を抑制するのに有用である。さらに、本発明のアンチセンス核酸を含む発現阻害物質も、本発明のタンパク質の生物学的活性を阻害し得るため、有用である。
本発明の方法は、細胞におけるLY6K発現を変化させるために用いることができる。アンチセンス核酸の、標的細胞におけるLY6K遺伝子に相補的な転写物との結合は、細胞によるタンパク質産生の低下を引き起こす。オリゴヌクレオチドの長さは少なくとも10ヌクレオチドであり、天然の転写物の長さでもあり得る。好ましくは、オリゴヌクレオチドは75、50、25ヌクレオチド長未満である。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは19〜25ヌクレオチド長である。
本発明のアンチセンス核酸には、修飾オリゴヌクレオチドが含まれる。例えば、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ抵抗性を付与するためにチオエート化オリゴヌクレオチドを用いることができる。
本明細書において「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」という用語は、特に示されていない限り互換的に用いられ、一般に認められている一文字コードによって表記される。これらの用語は、1つ又は複数の核酸がエステル結合によって連結されている核酸(ヌクレオチド)ポリマーに適用される。ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、DNA、RNA又はそれらの組み合わせから構成され得る。
本明細書で用いる「二本鎖分子」という用語は、例えば低分子干渉RNA(siRNA;例えば二本鎖リボ核酸(dsRNA)又は短いヘアピンRNA(shRNA))及び低分子干渉DNA/RNA(siD/R-NA;例えばDNA及びRNAの二本鎖キメラ(dsD/R-NA)又はDNA及びRNAの短いヘアピンキメラ(shD/R-NA))を含む、標的遺伝子の発現を阻害する核酸分子を指す。
また、LY6K遺伝子に対するsiRNAを、LY6K遺伝子の発現レベルを低下させるために用いることもできる。本明細書において「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を妨げる二本鎖RNA分子を指す。DNAが転写されてRNAを生じる鋳型である手法を含め、siRNAを細胞に導入するための標準的な手法を用いることができる。本発明の文脈において、siRNAはLY6K遺伝子に対するセンス核酸配列及びアンチセンス核酸配列から構成される。siRNAは、例えばヘアピンのように、単一の転写物が標的遺伝子由来のセンス配列及び相補的アンチセンス配列の両方を有するように構築される。siRNAはdsRNA又はshRNAのいずれかであってもよい。
本明細書で用いる「dsRNA」という用語は、互いに相補的な配列を有し、相補配列を介して共にアニーリングして二本鎖RNA分子を形成する、2つのRNA分子の構築物を指す。ヌクレオチド配列の二本の鎖は、標的遺伝子配列のタンパク質コード配列から選択される「センス」又は「アンチセンス」RNAだけでなく、標的遺伝子の非コード領域から選択されるヌクレオチド配列を有するRNA分子も含みうる。
本明細書で用いる「shRNA」という用語は、互いに相補的な第一領域と第二領域(すなわちセンス鎖とアンチセンス鎖)を含む、ステムループ構造を有するsiRNAを指す。相補性の程度及び領域の配向性は、領域間で塩基対形成が起こるのに十分であり、第一領域と第二領域はループ領域で連結され、該ループは、ループ領域内のヌクレオチド(又はヌクレオチドアナログ)間の塩基対形成の欠如に起因する。shRNAのループ領域とは、センス鎖とアンチセンス鎖の間に介在する一本鎖領域であり、「介在性一本鎖」とも称される。
本明細書で用いる「siD/R-NA」という用語は、RNA及びDNAの両方から構成され、RNAとDNAのハイブリッド及びキメラを含み、かつ標的mRNAの翻訳を妨害する、二本鎖ポリヌクレオチド分子を指す。本明細書において、ハイブリッドとは、DNAから構成されるポリヌクレオチドとRNAから構成されるポリヌクレオチドが互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成している分子を指し;キメラとは、二本鎖分子を構成する鎖の一方又は両方がRNA及びDNAを含み得ることを示す。siD/R-NAを細胞に導入する標準的な技術が用いられる。siD/R-NAは、LY6Kセンス核酸配列(「センス鎖」とも称される)、LY6Kアンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」とも称される)、又は両方を含む。siD/R-NAは、標的遺伝子に由来するセンス核酸配列及び相補的アンチセンス核酸配列の両方を単一の転写物が有するように、構築されてもよい(例えば、ヘアピン)。siD/R-NAは、dsD/R-NA又はshD/R-NAのいずれかであってもよい。
本明細書で用いられる「dsD/R-NA」という用語は、互いに相補的な配列を含み、相補的な配列を介して共にアニールして二本鎖ポリヌクレオチド分子を形成している二分子の構築物を意味する。二本鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質コード配列から選択される「センス」又は「アンチセンス」ポリヌクレオチド配列のみでなく、標的遺伝子配列の非コード領域から選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含んでもよい。dsD/R-NAを構成する二分子の一方又は両方は、RNAとDNAの両方から構成されるか(キメラ分子)、或いは一方の分子がRNAで構成され、他方がDNAで構成される(ハイブリッド二本鎖)。
本願明細書で用いられる「shD/R-NA」という用語は、ステムループ構造を有するsiD/R-NAを意味し、互いに相補的な第1及び第2の領域、例えばセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む。。相補性の程度及び領域の配向性は、領域間で塩基対形成が起こるのに十分であり、第一領域と第二領域はループ領域で連結され、該ループは、ループ領域内のヌクレオチド(又はヌクレオチドアナログ)間の塩基対形成の欠如に起因する。shD/R-NAのループ領域は、センス鎖とアンチセンス鎖との間に介在する一本鎖領域であり、「介在一本鎖」とも表記され得る。
本発明の二本鎖分子は、一以上の修飾ヌクレオチド及び/又は非リン酸ジエステル結合を含んでもよい。当技術分野で周知の化学修飾は、二本鎖分子の安定性、有効性及び/又は細胞への取り込みを向上させることができる。当業者は、本分子に組み込むことができる他のタイプの化学修飾を理解するであろう(WO03/070744; WO2005/045037)。一実施態様では、修飾は、分解に対する耐性又は取り込みの向上を提供するのに利用することができる。修飾の例としては、ホスホロチオエート結合、2’-O-メチル-4’結合リボヌクレオチド、2’-O-メチル-リボヌクレオチド(特に二本鎖分子のセンス鎖におけるもの)、2’-デオキシ-フルオロ-リボヌクレオチド、2’-デオキシリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5’−C-メチルヌクレオチド、及び逆位デオキシ脱塩基残基の組み込みを含む(US20060122137)。
他の実施態様では、修飾は二本鎖分子の安定性の向上又はターゲティング効率を向上させるために用いることができる。修飾は、二本鎖分子の二本の相補鎖間の化学的架橋結合、二本鎖分子鎖の3’又は5’末端の化学修飾、糖修飾、核酸塩基修飾及び/又は骨格修飾、2-フルオロ修飾リボヌクレオチド及び2’-デオキシリボヌクレオチドを含む(WO2004/029212)。他の実施態様では、修飾は標的mRNA及び/又は相補的な二本鎖分子鎖において、相補的なヌクレオチドに対する親和性を増大又は減少するのに用いることができる(WO2005/044976)。例えば、非修飾ピリミジンヌクレオチドは2-チオ、5-アルキニル、5-メチル又は5-プロピニルピリミジンと置換され得る。さらに、非修飾プリンは7-デアザ、7-アルキル又は7-アルケニルプリンに置換され得る。他の実施態様では、二本鎖分子が3’オーバーハングを有する二本鎖である場合、3’末端ヌクレオチドオーバーハングヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドにより置換され得る(Elbashir SM et al., Genes Dev 2001 Jan 15, 15(2): 188-200)。更なる詳細については、US20060234970のような公開文献が利用可能である。本発明は、これらの例に限定されず、結果として生じる分子が標的遺伝子の発現を阻害する能力を保持する限り、本発明の二本鎖分子に対して、如何なる公知の化学修飾も行い得る。
さらに、本発明の二本鎖分子は、DNA及びRNAの双方を含んでもよい。例えば、dsD/R-NA又はshD/R-NAである。特に、DNA鎖とRNA鎖のハイブリッドヌクレオチド又はDNA-RNAキメラポリヌクレオチドは、増大した安定性を示す。DNAとRNAとの混合、すなわち、DNA鎖(ポリヌクレオチド)とRNA鎖(ポリヌクレオチド)からなるハイブリッド型二本鎖分子、いずれか又は両方の一本鎖(ポリヌクレオチド)においてDNA及びRNAの両方を含むキメラ型二本鎖分子などが、二本鎖分子の安定性を向上させるために形成されてもよい。DNA鎖とRNA鎖のハイブリッドは、標的遺伝子を発現する細胞に導入されたときに該遺伝子の発現を阻害する活性を有する限り、センス鎖がDNAでありアンチセンス鎖がRNAであるか、又はその逆のハイブリッドかのいずれであってもよい。好ましくは、センス鎖ポリヌクレオチドがDNAであり、アンチセンス鎖ポリヌクレオチドがRNAである。同様に、標的遺伝子を発現する細胞に導入されたときに該遺伝子の発現を阻害する活性を有する限り、キメラ型二本鎖分子は、センス鎖とアンチセンス鎖の双方がDNAとRNAから構成されるか、又はセンス鎖とアンチセンス鎖のいずれか一方がDNAとRNAから構成されるか、いずれであってもよい。
二本鎖分子の安定性を向上させるために、分子はできるだけ多くのDNAを含むことが好ましく、一方、標的遺伝子の発現阻害を誘導するためには、分子は十分な発現阻害を誘導する範囲内のRNAであることを要求される。キメラ型二本鎖の好ましい例は、二本鎖の上流部分領域(すなわち、センス鎖又はアンチセンス鎖内の標的配列又はその相補配列に隣接する領域)がRNAである。好ましくは、上流部分領域はセンス鎖の5’側(5’末端)とアンチセンス鎖の3’側(3’末端)を指す。上流部分領域は、二本鎖分子のセンス鎖又はアンチセンス鎖内の標的配列又はその相補配列の末端から数えて9〜13ヌクレオチドからなるドメインであることが好ましい。さらに、該キメラ型二本鎖分子の好ましい例は、ポリヌクレオチドの少なくとも上流側半分の領域(センス鎖の5’側領域とアンチセンス鎖の3’側領域)がRNAであって、他の半分がDNAである19〜21ヌクレオチドの鎖長を有する二本鎖分子を含む。該キメラ型二本鎖分子において、標的遺伝子の発現阻害効果は、アンチセンス鎖全体がRNAである場合と比較してはるかに高い(US20050004064)。
本発明において、二本鎖分子はヘアピンを形成してもよい。例えば、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、及びDNAとRNAからなる低分子ヘアピン型(shD/R-NA)である。shRNA 又は shD/R-NAは、タイトなヘアピンカーブを形成するRNA配列又はRNAとDNAとの混合配列であり、それは、RNA干渉を介して遺伝子発現を停止させるために用いることができる。shRNA 又は shD/R-NAは、一本鎖上にセンス標的配列とアンチセンス標的配列とを含み、それらの配列はループ配列によって分離されている。通常、ヘアピン構造は、dsRNA又はdsD/R-NAへと細胞機構により切断され、その後、RNA誘導サイレシング複合体(RISC)に結合する。この複合体は、dsRNA又はdsD/R-NAの標的配列とマッチするmRNAと結合し、かつ該mRNAを切断する。
別の態様において、ハロゲン化RNA、DNAと部分的に置換されたRNA、又はメチル化RNAは、siRNAにRNAアーゼ抵抗性を与えるために用いることができる。RNAアーゼ抵抗性を与えるそのような核酸誘導体はまた、二本鎖RNAに含まれる。本発明において、二本鎖分子は、リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド又はリボヌクレオチド誘導体から構成される二本鎖RNAを含んでもよい。
LY6K遺伝子のsiRNAは、標的mRNAとハイブリダイズし、正常な一本鎖mRNA転写物と結合し、これにより翻訳、及び、したがって該タンパク質の発現を妨げ、このことにより、LY6K遺伝子にコードされるポリペプチドの産生を低下させるか阻害する。本発明の文脈において、siRNAは好ましくは、500、200、100、50、又は25ヌクレオチド長未満である。より好ましくは、siRNAは19〜25ヌクレオチド長である。LY6K siRNAの産生のための例示的な核酸配列には、標的配列としてSEQ ID NO: 11のヌクレオチド配列が含まれる。siRNAの阻害活性を増大するため、1つ又は複数のウリジン(「u」)ヌクレオチドを標的配列のアンチセンス鎖の3’末端に付加できる。付加される「u」の数は、少なくとも2個、通常は2〜10個、好ましくは2〜5個である。付加される「u」はsiRNAのアンチセンス鎖の3’末端で一本鎖を形成する。
LY6KのsiRNAは、mRNA転写物に結合できる形態で、細胞に直接導入することができる。あるいは、siRNAをコードするDNAはベクターに保持させることができる。
ベクターは、例えば、LY6K遺伝子標的配列を、両方の鎖の(DNA分子の転写による)発現を可能にする様式で該配列に隣接する機能的に連結された調節配列を有する発現ベクター中にクローニングすることによって作製できる(Lee NS et al., Nature Biotechnology 2002, 20: 500-5)。LY6K遺伝子のmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子が第1のプロモーター(例えば、クローン化したDNAの3'側のプロモーター配列)によって転写され、LY6K遺伝子のmRNAに対してセンス鎖であるRNA分子が第2のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5'側のプロモーター配列)によって転写される。センス鎖及びアンチセンス鎖はインビボにおいてハイブリダイズし、LY6K遺伝子の発現をサイレンシングするためのsiRNA構築物を生じる。又は、2つの構築物を利用して、siRNA構築物のセンス鎖及びアンチセンス鎖を作製することもできる。クローン化したLY6K遺伝子は二次構造、例えばヘアピンを有する構築物を、標的遺伝子由来のセンス配列と相補的アンチセンス配列の両方を有する単一の転写物としてコードすることができる。
ヘアピンループ構造を形成するために、任意のヌクレオチド配列からなるループ配列が、センス配列とアンチセンス配列との間に配置され得る。それゆえ、本発明は一般式5’-[A]-[B]-[A’]-3’を有するsiRNAもまた提供する。式中[A]はLY6K遺伝子の配列に相当するリボヌクレオチド配列であり、[B]は3〜23ヌクレオチドから構成されるリボヌクレオチド配列であり、[A’]は[A]の相補配列を有するリボヌクレオチド配列である。領域[A]は[A’]にハイブリダイズし、領域[B]から構成されるループが形成される。ループ配列は3〜23ヌクレオチド長であり得る。ループ配列は、例えば、以下の配列から選択され得る(http://www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.html)。さらに、23ヌクレオチドから成るループ配列はまた、活性siRNAを提供する(Jacque, J. M., et al., (2002) Nature 418 : 435-8.)。
CCC, CCACC 又は CCACACC: Jacque, J. M, et al., (2002) Nature, Vol. 418: 435-8.
UUCG: Lee, N.S., et al., (2002) Nature Biotechnology 20: 500-5.; Fruscoloni, P., et al., (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(4): 1639-44.
UUCAAGAGA: Dykxhoorn, D. M., et al., (2003) Nature Reviews Molecular Cell Biology 4: 457-67.
したがって、幾つかの態様において、ループ配列をCCC、UUCG、CCACC、CCACACC、及びUUCAAGAGAから成る群より選択することができる。好ましいループ配列はUUCAAGAGA(DNAでは「ttcaagaga」)である。本発明の文脈における使用に適したヘアピンsiRNAの例には以下が含まれる:
LY6K-siRNAに対して
AAGGAGGUGCAAAUGGACAGA-[b]- UCUGUCCAUUUGCACCUCCUU(SEQ ID NO: 11の標的配列に対して)。
適切なsiRNAのヌクレオチド配列は、ワールドワイドウェブ上Ambionのウェブサイトambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.htmlで入手可能なsiRNA設計コンピュータプログラムを用いて設計することができる。コンピュータプログラムは、以下のプロトコールに基づいてsiRNA合成のためのヌクレオチド配列を選択する。
siRNA標的部位の選択:
1. 目的転写物のAUG開始コドンから始めて、AAジヌクレオチド配列を下流にスキャンする。各AAの出現及びその3’側に隣接する19ヌクレオチドを標的部位候補として記録する。Tuschl, et al. Genes Dev 13(24):3191-7(1999)は、5’及び3’非翻訳領域(UTRs)及び開始コドン近傍領域(75塩基以内)に対して標的配列を設計することを推奨していない。これらの領域は調節タンパク質結合部位をより多く含むからである。UTR結合タンパク質及び/又は翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げる可能性がある。
2. 標的部位候補とヒトゲノムデータベースとを比較して、他のコード配列と有意な相同性を有する如何なる標的配列も検討から除外する。相同性検索は、NCBIサーバー上ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/にあるBLAST2.0を用いて行うことができる(Altschul SF, et al., Nucleic Acids Res. 1997;25(17):3389-402; Altschul SF, J Mol Biol. 1990;215(3):403-10.)。
3. 合成のために適格な標的配列を選択する。Ambionアルゴリズムを用いて、好ましくは評価すべき遺伝子の全長に沿って、幾つかの標的配列を選択することができる。
LY6K遺伝子配列に隣接する調節配列は、それらの発現を独立に、又は時間的もしくは空間的に調節し得るように、同一でもよく、又は異なっていてもよい。siRNAは、LY6K遺伝子鋳型のそれぞれを、例えば核内低分子RNA(snRNA)U6由来のRNAポリメラーゼIII転写単位又はヒトH1RNAプロモーターを含むベクター中にクローニングすることにより、細胞内で転写される。ベクターを細胞内へ導入するために、トランスフェクション促進物質を用いることができる。FuGENE(Roche diagnostics)、Lipofectamine2000(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)及びNucleofector(和光純薬工業)はトランスフェクション促進物質として有用である。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAは、本発明のポリペプチドの発現を阻害するので、本発明のポリペプチドの生物学的活性を抑制するのに有用である。同様に、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAを含む発現阻害物質は、それらが本発明のポリペプチドの生物学的活性を阻害できるという点において有用である。したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAの1つ又は複数により構成される組成物は、食道癌を治療するのに有用である。あるいは、本発明は、アンチセンス核酸もしくはsiRNAを含む阻害性核酸、又は該核酸を発現するベクターの、細胞増殖性疾患、例えば癌、特にLC及び/又はECを治療又は予防するための医薬組成物の製造における使用を提供する。さらに、本発明は、細胞増殖性疾患、例えば癌、特にLC及び/又はECを治療又は予防するための、アンチセンス核酸もしくはsiRNAを含む上述の阻害性核酸、又は該核酸を発現するベクターをも提供する。
抗体及び免疫療法:
また、LC及びECにおいて過剰発現されたLY6K遺伝子の遺伝子産物の機能は、その遺伝子産物に結合する化合物、又は遺伝子産物の機能を阻害する化合物を投与することによって阻害され得る。例えば、化合物は1つ又は複数のLY6K遺伝子産物に結合する抗体であり得る。
本発明では、抗体、特にLY6K遺伝子によってコードされるタンパク質に対する抗体、又はそのような抗体の断片の使用に言及する。本明細書において用いられるように、「抗体」という用語は、抗体を合成するために用いられた抗原(すなわち上方制御されるマーカー遺伝子の遺伝子産物)又はそれに近縁の抗原のみと相互作用する(すなわち結合する)、特異的構造を有する免疫グロブリン分子を指す。さらに、抗体はそれがマーカー遺伝子にコードされるタンパク質の1つ又は複数に結合する限り、抗体断片又は修飾抗体であり得る。例えば、抗体断片はFab、 F(ab’)2、 Fv、又はH及びL鎖由来のFv断片が適当なリンカーによって連結されている一本鎖Fv(scFv)であり得る(Huston J. S. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879-83 (1988))。より具体的には、抗体断片は抗体をパパイン又はペプシンを含む酵素によって処理することによって産生することができる。又は、抗体断片をコードする遺伝子を構築して、発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞において発現させることができる(例えばCo M. S. et al. J. Immunol. 152:2968-76 (1994); Better M. and Horwitz A. H. Methods Enzymol. 178:476-96 (1989); Pluckthun A. and Skerra A. Methods Enzymol. 178:497-515 (1989); Lamoyi E. Methods Enzymol. 121:652-63 (1986); Rousseaux J. et al. Methods Enzymol. 121:663-9 (1986); Bird R. E. and Walker B. W. Trends Biotechnol. 9:132-7 (1991)を参照されたい)。
抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む多様な分子に結合させることによって修飾することができる。本発明は、そのような修飾抗体を提供する。修飾抗体は、抗体を化学修飾することによって得ることができる。これらの修飾法は、当技術分野で慣例的である。
本発明の抗体は、癌細胞に特異的であり、薬学的作用物質に結合することができる。薬学的作用物質は癌細胞に対して集中的に作用し、そのため、副作用の強い作用物質であっても副作用が少ない状態で使用することができ、薬学的作用物質に加えて、薬学的作用物質の前駆体、前駆体を代謝して活性型とする酵素などを抗体に結合するアプローチも報告されている。別の態様において、本発明の抗体は放射性複合体を形成させるために、放射性同位体に融合され、結合され、あるいは機能的に連結させてもよい。種々の放射性同位体は、放射性複合体である抗体の産生に利用できる。例としては、At211, I131 , I125, Y90, Re186, Re188, Sm153, Bi212, P32及びLuの放射性同位体が挙げられるが、これらに限定されない。
また、抗体にはヒト以外の抗体に由来する可変領域とヒト抗体に由来する定常領域とを有するキメラ抗体、又はヒト以外の抗体に由来する相補性決定領域(CDR)、ヒト抗体に由来するフレームワーク領域(FR)及び定常領域を含むヒト化抗体が含まれ得る。そのような抗体は、既知の技術を用いて調製することができる。さらに、本発明において、抗体はヒト抗体であってよい。例えば、ヒト抗体はファージディスプレイライブラリのスクリーニングによって選択してもよい。ファージディスプレイライブラリを構築する方法及びそのような抗体のスクリーニング手順はまた、周知である。
さらに、ADCC又はCDC活性を有し、かつ特に癌細胞に結合する抗体は、癌の治療のために使用することができる。抗原依存性細胞媒介性細胞障害と「ADCC」は、Fc受容体(FcyRs)を発現する非特異的細胞障害性細胞(ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、マクロファージなど)が、標的細胞上の結合している抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を起こす、細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介する初代細胞、NK細胞はFcyRIIIのみを発現しており、一方単球はFcyRI、FcyRII、FcyRIIIを発現している。関心対象の分子のADCC活性を評価するため、米国特許第5,500,362号又は第5,821,337号などに記載されているインビトロADCCアッセイを実施してもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)とナチュラルキラー(NK)細胞を含む。又は、あるいは付加的に、関心対象の分子のADCC活性は、Clynes et al. PNAS (USA) 95: 652-656 (1998)に開示されている動物モデルなど、インビボで評価してもよい。ヒトエフェクター細胞は、1つ又は複数のFcyRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。細胞は少なくともFcyRI〜IIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが好ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞、好中球が含まれ、PBMCとNK細胞が好ましい。補体依存性細胞障害(CDC)とは、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を指す。補体活性化経路は、同種抗原と複合体を形成した分子(抗体など)と補体系第1成分(C1q)の結合によって開始される。補体活性化を評価するため、Gazzano-Santoro et al. J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)に記載されているような、CDCアッセイを実施してもよい。
抗体と類似した方法で、標的に向けられ標的に結合する他の化合物が開発されてきた。これらの「抗体模倣体」の幾つかは、抗体の可変領域に関する代替的タンパク質フレームワークとして、非免疫グロブリンタンパク質骨格を使用する。したがって、以下でより詳細に考察するように、「抗体模倣体」という用語は、アドネクチン(adnectin)、アビマー(avimer)、一本鎖ポリペプチド結合分子、及び抗体様結合ペプチド模倣体を含む非免疫グロブリンタンパク質骨格を用いる、非抗体結合タンパク質を指す。当業者は、本出願に記載された抗体を用いる任意の方法が、抗体模倣体を用いても実施可能であることを認識するであろう。
Kuら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(14):6552-6556 (1995)は、シトクロームb562に基づく抗体の代替物を開示している。Kuら(1995)は、シトクロームb562のループの2つがランダム化され、ウシ血清アルブミンに対する結合性で選択されるライブラリーを作成した。個々の変異体は、抗BSA抗体と同様にBSAに選択的に結合することが分かった。
Lipovsekら(米国特許第6,818,418号及び同第7,115,396号)は、フィブロネクチン又はフィブロネクチン様タンパク質骨格と少なくとも1つの可変ループを特徴とする抗体模倣体を開示している。アドネクチンとして知られるように、これらのフィブロネクチンに基づく抗体模倣体は、天然又は組換え抗体と同じ性質を多く示し、そのような性質には、任意の標的リガンドに対する高親和性及び特異性が含まれる。新規の又は改良された結合タンパク質を進化させるための如何なる技術も、これらの抗体模倣体に用いることができる。
これらフィブロネクチンに基づく抗体模倣体の構造は、IgG重鎖の可変領域構造に類似している。それゆえ、これらの模倣体は、性質及び親和性の点で、天然抗体のものに類似した抗原結合特性を示す。さらに、これらのフィブロネクチンに基づく抗体模倣体は、抗体及び抗体フラグメントよりも幾つかの点で優れている。例えば、これらの抗体模倣体は、自然の折り畳み安定性をジスルフィド結合に依存しないため、通常は抗体を破壊するような条件下でも安定である。さらに、これらのフィブロネクチンに基づく抗体模倣体の構造は、IgG重鎖のものと類似しているため、ループのランダム化及びシャッフリングのプロセスは、インビボでの抗体の親和性成熟化のプロセスと同様のことを、インビトロで行うことができる。
Besteら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96(5):1898-1903 (1999))は、リポカイン骨格に基づく抗体模倣体(Anticalin(登録商標))を開示している。リポカインは、タンパク質の末端に4つの超可変ループを備えたβ-バレルから構成される。Beste (1999)は、ループにランダム突然変異を誘発させて、例えばフルオロセインとの結合性で選択した。3つの変異体は、フルオレセインとの特異的結合性を示し、そのうちの1つの変異体は、抗フルオレセイン抗体のものと同様の結合性を示した。さらなる解析結果は、ランダム化された位置の全てが可変的であることを明らかにし、Anticalin(登録商標)が抗体の代替物として用いるのに適していることを示した。
Anticalin(登録商標)は、典型的には160〜180残基の低分子の単鎖ペプチドであり、抗体と比較して、生産コストの低減化、貯蔵時の安定性向上及び免疫反応の低減化を含む幾つかの利点を有している。
Hamiltonら(米国特許第5,770,380号)はカリックスアレーンの強固な非ペプチド有機骨格を使用し、結合部位として用いられる複数の可変ペプチドループを結合した合成抗体模倣体を開示している。ペプチドループは全て、互いにカリックスアレーンから幾何学的に同じ側から突出する。この幾何学的な確証のため、全てのループが結合に利用可能であり、リガンドに対する結合親和性が増大する。しかしながら、他の抗体模倣体と比較して、カリックスアレーンに基づく抗体模倣体は、ペプチドのみから構成されているわけではないため、プロテアーゼ酵素による攻撃を受けにくい。ペプチド、DNA又はRNAから純粋に構成される骨格のいずれでもないことは、この抗体模倣体が、極限環境条件下で比較的安定であり、長寿命を有することを意味する。さらに、カリックスアレーンに基づく抗体模倣体は、比較的小さいため、免疫反応が生じる可能性が低い。
Muraliら(Cell. Mol. Biol. 49(2):209-216 (2003))は、抗体を低分子のペプチド模倣体に還元する方法論を論じており、「抗体様結合ペプチド模倣体」(ABiP)と呼んでいる。それは抗体の代替物として利用することもできる。
Silvermanら(Nat. Biotechnol. (2005), 23: 1556-1561)は、「アビマー(avimer)」と呼ばれる複数のドメインから構成される単鎖ポリペプチドである融合タンパク質を開示している。アビマーは、インビトロのエクソンシャッフリングとファージディスプレイによってヒト細胞外受容体ドメインから開発されたものであり、様々な標的分子に対する親和性及び特異性という点で、抗体と幾分類似した結合タンパク質の1クラスである。結果として生じるマルチドメインタンパク質は、複数の独立した結合ドメインを含むことができ、それらのドメインは、単独エピトープ結合タンパク質と比較して、改善された親和性(時としてサブナノモル)と特異性を示し得る。アビマーの作成及び使用方法に関するさらなる詳細は、例えば、米国特許公開公報第20040175756号、同20050048512号、 同20050053973号、同20050089932号及び同20050221384号に開示されている。
非免疫グロブリンタンパク質のフレームワークに加えて、抗体特性は、RNA分子及び非天然オリゴマー(例えばプロテアーゼ阻害剤、ペンゾジアゼピン、プリン誘導体及びβ-ターン模倣体)から構成される化合物においても模倣される。それらの全ては本明細書での使用に適している。
癌細胞において起こる特異的な分子変化に対する癌治療は、進行性乳癌を治療するためのトラスツズマブ(ハーセプチン)、慢性骨髄性白血病のためのイマチニブメチレート(グリベック)、非小細胞肺癌(NSCLC)のためのゲフィチニブ(イレッサ)並びにB細胞リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫のためのリツキシマブ(抗CD20 mAb)を含む抗癌剤の臨床開発及び規制認可によって確認されている(Ciardiello F and Tortora G. Clin Cancer Res. 2001;7(10):2958-70. Review.; Slamon DJ, et al., N Engl J Med. 2001;344(11):783-92.; Rehwald U, et al., Blood. 2003;101(2):420-4.; Fang G, et al., (2000). Blood, 96, 2246-53.)。これらの薬物は、形質転換した細胞のみを標的とすることから、臨床的に有効であり、従来の抗癌剤より許容性が良好である。したがって、そのような薬物は癌患者の生存及び生活の質を改善するのみならず、分子標的癌治療の考え方が正当であることを証明している。さらに、標的薬物は標準的な化学療法と併用して用いた場合に、その有効性を増強させることができる(Gianni L. (2002). Oncology, 63 Suppl 1, 47-56.; Klejman A, et al., (2002). Oncogene, 21, 5868-76.)。したがって、将来の癌治療は、従来の薬物を、腫瘍細胞の異なる特徴、例えば血管新生及び浸潤性をねらった標的特異的薬物と併用することを含むであろう。
これらの調節方法は、エクスビボもしくはインビトロで行うこともでき(例えば、細胞を作用物質と共に培養することにより)、又はインビボで行うこともできる(例えば、作用物質を対象に投与することにより)。本方法は、タンパク質もしくはタンパク質の組み合わせ、又は核酸分子もしくは核酸分子の組み合わせを、差次的に発現される遺伝子の異常な発現又はそれらの遺伝子産物の異常な活性を相殺する治療法として投与することを含む。
遺伝子及び遺伝子産物の発現レベル又は生物学的活性が(疾患又は障害に罹患していない対象と比較して)増加していることによって特徴付けられる疾患及び障害は、過剰発現される1つ又は複数の遺伝子の活性に拮抗する(すなわち、それを低下させる又は阻害する)治療薬によって治療され得る。活性に拮抗する治療薬剤は、治療的又は予防的に投与することができる。
したがって、本発明の文脈において利用しうる治療剤には、例えば以下のものが含まれる:(i)LY6K遺伝子のポリペプチド又はその類似体、誘導体、断片もしくは相同体;(ii)LY6K遺伝子又は遺伝子産物に対する抗体;(iii)LY6K遺伝子をコードする核酸(iv)アンチセンス核酸又は「機能欠損」した核酸(すなわちLY6K遺伝子の核酸内部への非相同的挿入による);(v)低分子干渉RNA(siRNA);又は(vi)調節物質(すなわち、LY6Kポリペプチドとその結合パートナーとの間の相互作用を変化させる阻害物質、アゴニスト及びアンタゴニスト)。機能欠損アンチセンス分子は、相同組換えによってポリペプチドの内因性機能を「ノックアウト」するために用いられる(例えば、Capecchi, Science 244: 1288-92 1989を参照)。
レベルの増加又は低下は、患者の組織試料を得て(例えば生検組織から)、LY6KのRNA又はペプチドレベル、LY6Kペプチドの構造及び/又は活性に関してインビトロでアッセイすることにより、LY6Kのペプチド及び/又はRNAを定量することによって、容易に検出することができる。当技術分野において周知である方法には、免疫測定法(例えばウエスタンブロット解析、免疫沈降後のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞化学等)、及び/又はmRNAの発現を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(例えばノーザンアッセイ、ドットブロット、インサイチューハイブリダイゼーション等)が含まれるが、これらに限定されない。
予防的投与は、疾患もしくは障害が予防されるように、又はその進行が遅れるように、疾患又は障害の明白な臨床的症状が発現する前に行われる。
本発明の治療方法は、LY6K遺伝子の遺伝子産物の活性の1つ又は複数を調節する作用物質と細胞を接触させる段階を含み得る。タンパク質活性を調節する作用物質の例には、核酸、タンパク質、その天然の同属リガンド、ペプチド、ペプチド模倣物及びその他の低分子が含まれるが、これらに限定されない。
肺癌及び食道癌に対するワクチン接種:
本発明はまた、LY6K核酸にコードされる1つ又は複数のポリペプチド、該ポリペプチドの免疫学的活性断片(すなわちエピトープ)、又はポリペプチド又はその断片をコードするヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与する段階を含む、対象における肺癌及び食道癌を治療又は予防する方法にも関する。癌を治療するためのLY6K(URLC10)に由来するペプチドワクチンの例は、国際公開公報WO2006/90810に記載されており、その全体の内容は参照として本明細書に組み入れられる。
ポリペプチドの投与は、対象において抗腫瘍免疫を誘導する。抗腫瘍免疫を誘導するために、LY6K核酸にコードされる1つ又は複数のポリペプチド、該ポリペプチドの免疫学的活性断片、又は該ポリペプチド若しくはその断片をコードするポリヌクレオチドを、それらが必要な対象に投与する。さらに、LY6K核酸にコードされる1つ又は複数のポリペプチドは、転移性及び再発性の、肺癌又は食道癌に対してそれぞれ抗腫瘍免疫を誘導し得る。ポリペプチド又はその免疫学的活性断片はLC又はECに対するワクチンとして有用である。場合によっては、タンパク質又はその断片は、T細胞受容体(TCR)に結合した形態で投与してもよく、又はマクロファージ、樹状細胞(DC)、もしくはB細胞を含む抗原提示細胞によって提示された形態で投与することができる。DCの強い抗原提示能のため、APCの中では、DCを用いることが最も好ましい。
免疫学的活性断片(すなわち、エピトープ)は当技術分野において周知である。B細胞エピトープは、連続的なアミノ酸又はタンパク質の三次元折り畳みによって近接した非連続的なアミノ酸の両方から形成することができる。連続的なアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には変性溶媒への曝露において保持されるが、三次元折り畳みによって形成される(すなわち、立体構造的に決定される)エピトープは、典型的には変性溶媒による処理で失われる。エピトープは、典型的には特有の空間的立体構造中に、少なくとも3つ、及びより一般的には、少なくとも5つ又は8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的立体構造を決定する方法には、例えば、X線結晶学及び2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, 編. (1996)を参照されたい。同じエピトープを認識する抗体は、ある抗体が別の抗体の標的抗原への結合をブロックする能力を示す簡単なイムノアッセイ(例えば、競合的ELISA又は固相ラジオイムノアッセイ(SPRIA))で同定することができる。T細胞は、CD8細胞については約9アミノ酸、又はCD4細胞については約13〜15アミノ酸の連続的なエピトープを認識する。エピトープを認識するT細胞は、エピトープに応答して初回抗原刺激を受けたT細胞による3H-チミジン取り込みによって決定されるような、抗原依存性増殖を測定するインビトロアッセイによって(Burke et al., J. Inf. Dis. 170, 1110-19 (1994))、抗原依存性殺傷によって(細胞障害性Tリンパ球アッセイ、Tigges et al., J. Immunol. (1996) 156:3901-10)、又はサイトカイン分泌によって同定することができる。免疫原性エピトープを決定するための方法は、例えば、Reineke, et al., Curr Top Microbiol Immunol (1999) 243:23-36; Mahler, et al., Clin Immunol (2003) 107:65-79; Anthony and Lehmann, Methods (2003) 29:260-9; Parker and Tomer, Methods Mol Biol (2000) 146:185-201; DeLisser, Methods Mol Biol (1999) 96:11-20; Van de Water, et al., Clin Immunol Immunopathol (1997) 85:229-35; Carter, Methods Mol Biol (1994) 36:207-23; 及び Pettersson, Mol Biol Rep (1992) 16:149-53.に記載されている。
本発明において、LC及び/又はECに対するワクチンとは、動物に摂取すると抗腫瘍免疫を誘導する能力を有する物質を指す。本発明によると、LY6K遺伝子にコードされるポリペプチド又はその断片は、LY6K遺伝子を発現するLC及び/又はEC細胞に対して強力かつ特異的な免疫応答を誘導するHLA-A24又はHLA-A*0201拘束性エピトープである。このように、本発明はまた、ポリペプチドを用いて抗腫瘍免疫を誘導する方法も含む。一般的に、抗腫瘍免疫には、以下を含む免疫応答が含まれる:
‐腫瘍に対する細胞障害性リンパ球の誘導、
‐腫瘍を認識する抗体の誘導、及び
‐抗腫瘍サイトカイン産生の誘導。
したがって、あるタンパク質が動物への接種時にこれらの免疫応答のいずれか1つを誘導する場合、そのタンパク質は抗腫瘍免疫誘導効果を有すると決定される。タンパク質による抗腫瘍免疫の誘導は、宿主におけるタンパク質に対する免疫系の反応をインビボ又はインビトロで観察することによって検出することができる。
例えば、細胞障害性Tリンパ球の誘導を検出する方法は周知である。特に、生体内に入る外来物質は、抗原提示細胞(APC)の作用によってT細胞及びB細胞に提示される。APCによって提示された抗原に対して抗原特異的に応答するT細胞は、抗原による刺激によって細胞障害性T細胞(又は細胞障害性Tリンパ球;CTL)に分化した後増殖する(これはT細胞の活性化と呼ばれる)。したがって、あるペプチドによるCTL誘導は、APCによりT細胞へペプチドを提示させCTLの誘導を検出することによって評価することができる。さらに、APCは、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球、及びNK細胞を活性化する効果を有する。CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞も同様に抗腫瘍免疫において重要であることから、ペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価することができる。Coligan, Current Protocols in Immunology(前記)を参照されたい。
APCとして樹状細胞(DC)を用いてCTLの誘導作用を評価する方法は、当技術分野で周知である。DCは、APCの中でも最も強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。
この方法では、試験ポリペプチドをまずDCに接触させて、このDCをT細胞に接触させる。DCに接触させた後に、被検体細胞に対して細胞障害作用を有するT細胞が検出されれば、試験ポリペプチドが細胞障害性T細胞の誘導活性を有することを示している。腫瘍に対するCTLの活性は、例えば51Cr標識腫瘍細胞の溶解を指標として用いて検出することができる。又は、3H-チミジン取り込み活性又はLDH(乳糖デヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞の損傷の程度を評価する方法も同様に周知である。
DCとは別に、末梢血単核球(PBMC)も同様にAPCとして用いることができる。CTLの誘導は、GM-CSF及びIL-4の存在下でPBMCを培養することによって増強されることが報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びIL-7の存在下でPBMCを培養することによって誘導されることが示されている。
これらの方法によってCTL誘導活性を有することが確認された試験ポリペプチドは、DC活性化効果及びその後のCTL誘導活性を有するポリペプチドであるとみなされる。したがって、腫瘍細胞に対してCTLを誘導するポリペプチドは、腫瘍に対するワクチンとして有用である。さらに、ポリペプチドに接触させることによって腫瘍に対するCTLの誘導能を獲得したAPCは、腫瘍に対するワクチンとしても有用である。さらに、APCによるポリペプチド抗原の提示により細胞障害性を獲得したCTLも同様に、腫瘍に対するワクチンとして用いることができる。APC及びCTLによる抗腫瘍免疫を用いるそのような腫瘍の治療法は、細胞免疫療法と呼ばれる。
一般的に、細胞免疫療法のためにポリペプチドを用いる場合、CTL誘導効率は、異なる構造を有する複数のポリペプチドを組み合わせて、それらをDCに接触させることによって増加することが知られている。したがって、DCをタンパク質断片によって刺激する場合、複数のタイプの断片の混合物を用いることが有利である。
また、ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することによって確認することができる。例えば、ポリペプチドに対する抗体が、そのポリペプチドで免疫した実験動物において誘導される場合、そして腫瘍細胞の増殖がそれらの抗体によって抑制される場合、ポリペプチドは、抗腫瘍免疫の誘導能を有するとみなすことができる。
抗腫瘍免疫は本発明のワクチンを投与することによって誘導され、抗腫瘍免疫の誘導によって、LC及び/又はECを治療及び予防することができる。癌の治療又は癌の発症の予防には、癌性細胞の増殖の阻害、癌の退縮、及び癌の発生抑制を含む段階のいずれかが含まれる。癌を有する個体の死亡率及び疾病率の低下、血液中の腫瘍マーカーのレベルの減少、癌に伴う検出可能な症状の軽減等も同様に、癌の治療又は予防に含まれる。そのような治療及び予防効果は好ましくは統計学的に有意である。例えば、細胞増殖疾患に対するワクチンの治療又は予防効果を、ワクチン投与を行わない対照と比較する観察において、5%又はそれ未満は有意水準である。例えば、スチューデントのt-検定、マン-ホイットニーのU検定、又はANOVAを統計解析に用いることができる。
免疫学的活性を有する上記のタンパク質又はそのタンパク質をコードするベクターをアジュバントと併用することができる。アジュバントは、免疫学的活性を有するタンパク質と共に(又は連続して)投与した場合にタンパク質に対する免疫応答を増強させる化合物を指す。アジュバントの例には、コレラ毒素、サルモネラ毒素、ミョウバン等が含まれるがこれらに限定されない。さらに、本発明のワクチンは、薬学的に許容される担体と適当に組み合わせることができる。そのような担体の例には、滅菌水、生理食塩液、リン酸緩衝液、培養液等が含まれる。さらに、ワクチンは必要に応じて、安定化剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤等を含み得る。ワクチンは、例えば、皮内経路、筋肉内経路、皮下経路、経皮的経路、頬側経路、又は鼻腔内経路を通じて、全身又は局所投与され得る。ワクチン投与は、単回投与によって行ってもよく、又は複数回投与によって追加免疫してもよい。用量は以下に記載する通りである。
本発明のワクチンとしてAPC又はCTLを用いる場合、腫瘍を例えばエクスビボ法によって治療又は予防することができる。より具体的には、治療又は予防を受ける対象のPBMCを採取して、細胞をエクスビボでポリペプチドに接触させて、APC又はCTLの誘導後、細胞を対象に投与することができる。APCはまた、ポリペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMCに導入することによって誘導することができる。インビトロで誘導されたAPC又はCTLは、投与前にクローニングすることができる。標的細胞を障害する高い活性を有する細胞をクローニングして増殖させることによって、細胞免疫療法をより効率よく行うことができる。さらに、このようにして単離されたAPC及びCTLを、細胞が由来する個体に対してのみならず、他の個体由来の類似のタイプの腫瘍に対する細胞免疫療法のために用いることができる。
ワクチンを開発するための一般的な方法は、例えば、Vaccine Protocols, Robinson and Cranage, Eds., 2003, Humana Press; Marshall, Vaccine Handbook: A Practical Guide for Clinicians, 2003, Lippincott Williams & Wilkins; and Vaccine Delivery Strategies, Dietrich, et al., Eds., 2003, Springer Verlagに記載されている。
薬学的組成物:
さらに、本発明のポリペプチドの薬学的有効量を含む、細胞増殖疾患、例えば癌、特にLC及び/又はECを治療又は予防するための薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、抗腫瘍免疫を惹起するために用いることができる。また、本発明は、細胞増殖疾患、例えば癌、特にLC及び/又はECを治療又は予防するための薬学的組成物を製造するための、LY6Kタンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子の使用を提供する。さらに、本発明はまた、細胞増殖疾患、例えば癌、特にLC及び/又はECを治療又は予防するための、LY6Kタンパク質又は該タンパク質をコードする遺伝子を提供する。
本発明の文脈において、適切な薬学的製剤には、経口、直腸内、鼻腔内、局所(口腔内及び舌下を含む)、膣内、もしくは非経口(筋肉内、皮下、及び静脈内を含む)投与に適した製剤、又は吸入もしくは吹入による投与に適した製剤が含まれる。好ましくは、投与は静脈内である。製剤は任意で用量単位ごとに個別に包装される。
経口投与に適した薬学的製剤には、それぞれが活性成分の規定量を含むカプセル剤、カシェ剤、又は錠剤が含まれるが、これらに限定されない。適切な製剤にはまた、粉剤、顆粒剤、溶液、懸濁液、及び乳液が含まれるが、これらに限定されない。活性成分は、任意でボーラス舐剤又はペーストとして投与される。経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、及び/又は湿潤剤を含む通常の賦形剤を含み得るが、これらに限定されない。錠剤は、任意で1つ又は複数の製剤成分との圧縮又は成形によって作製することができる。圧縮錠は、流動状の活性成分、例えば粉剤又は顆粒剤を、任意で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑剤、表面活性剤、及び/又は分散剤と混合して、適した装置において圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤によって湿らせた粉末化合物の混合物を適した機械において成形することによって作製することができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法に従ってコーティングすることができる。経口液体調製物は、例えば、水性もしくは油性懸濁液、溶液、乳液、シロップ剤、もしくはエリキシル剤の形であり得、又は使用前に水もしくは他の適した溶剤によって構成するための乾燥製品として提供することもできる。そのような液体調製物は、通常の添加剤、例えば懸濁剤、乳化剤、非水性溶剤(食用油が含まれ得る)、及び/又は保存剤を含むことができる。錠剤は任意で、その中の活性成分の徐放又は制御放出を提供するように調製することができる。錠剤の包装は、毎月服用される錠剤1錠を含むことができる。
非経口投与用の適切な製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、制菌剤及び対象とするレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含んでいてもよい水性及び非水性滅菌注射剤、並びに懸濁剤及び/又は濃化剤を含む水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量又は複数回用量で容器、例えば密封アンプル及びバイアルに入れることができ、滅菌液体担体、例えば生理食塩液、注射用水を使用直前に加えるだけでよい凍結乾燥状態で保存することができる。又は、製剤は、連続注入用であり得る。即時調合注射溶液及び懸濁液は、既に記述した種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。
直腸投与用の適切な製剤には、標準的な担体、例えばカカオバター又はポリエチレングリコールを含む坐剤が含まれる。口内への、例えば口腔内又は舌下への局所投与用の適切な製剤には、着香基剤、例えばショ糖及びアカシア又はトラガカントに活性成分を含むトローチ剤、並びに基剤、例えばゼラチンとグリセリン又はショ糖とアカシアに活性成分を含む香錠が含まれる。鼻腔内投与の場合、本発明の化合物を液体スプレー、もしくは分散性の粉末として、又は滴剤の形態で用いることができる。滴剤は、1つ又は複数の分散剤、溶解剤、及び/又は懸濁剤も含む水性又は非水性基剤によって調製することができる。
吸入による投与の場合、吸入器、ネブライザー、加圧パック又はエアロゾルスプレーを送達するための他の都合のよい手段によって化合物を都合よく送達することができる。加圧パックは、適した噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適したガスを含み得る。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、一定量を送達するための弁を提供することによって決定できる。
また、吸入又は吹入による投与の場合、化合物は、乾燥粉末組成物、例えば化合物と、適した粉末基剤、例えば乳糖又はデンプンとの粉末混合物の形状をとることができる。粉末組成物は、単位投与剤形、例えば、粉末が吸入器又は吹入器を利用して投与され得る、カプセル剤、カートリッジ、ゼラチン又はブリスターパックの形で提供され得る。
他の製剤には、治療剤を放出する埋め込み可能な装置及び接着パッチが含まれる。
必要に応じて、活性成分を持続的に放出するように適合された上記の製剤を用いることができる。薬学的組成物はまた、抗菌剤、免疫抑制剤、及び/又は保存剤を含む他の活性成分を含み得る。
上記で特に言及した成分の他に、本発明の製剤には、当該製剤のタイプに関して当技術分野において通常の他の物質が含まれ得ると理解すべきである。例えば経口投与に適した製剤は着香料を含み得る。
好ましい単位投与製剤は、下記に記載するように、有効量の、活性成分又はその適当な分画を含む。
上記の条件のそれぞれに関して、組成物、例えばポリペプチド及び有機化合物は、約0.1〜約250 mg/kg/日の用量範囲で経口又は注射によって投与され得る。成人ヒトの用量範囲は一般的に、約5 mg〜約17.5 g/日、好ましくは約5 mg〜約10 g/日、及び最も好ましくは約100 mg〜約3 g/日である。錠剤又は個別の単位で提供される他の単位投与剤形は、便宜上、該用量もしくは例えば同一単位量を複数回投与した量で有効性を示すような量、例えば約5 mg〜約500 mg、通常約100 mg〜約500 mgを含み得る。
用いられる用量は、対象の年齢及び性別、治療しようとする障害の詳細及びその重症度を含む、様々な要因に依存すると考えられる。また、投与の経路も状態及びその重症度に依存して変化し得る。いずれにしても、適切で最適な投与量は、当業者により、上述した要因を考慮した上で慣行的に計算され得る。
癌の診断:
対象由来の生体試料におけるLY6Kのレベルを測定することにより、対象における癌の発生又は癌を発症する素因を判定することができる。好ましくは、癌は食道癌及び肺癌のいずれか、あるいは両方である。したがって、本発明は生体試料におけるLY6Kのレベルを決定する(例えば測定する)ことを含む。
対象由来の血液試料におけるLY6Kレベルを測定することによって、対象における肺癌又は食道癌の発生、あるいは肺癌又は食道癌発症の素因を判定することができる。あるいは、本発明によると、対象の状態を調べるための中間結果を提供することができる。そのような中間結果をさらなる情報と組み合わせて、対象が肺癌又は食道癌に罹患していると医師、看護師、又はその他の医療従事者が判定することを補助することができる。さらに、本発明は肺癌又は食道癌のさらなる診断が要求される人をスクリーニングする方法に関連する。スクリーニング後、陽性の結果を示した人は、肺癌又は食道癌に本当に罹患しているか確認するため、さらなるスクリーニング試験を受けること、あるいは医学的治療を勧められる。したがって、本発明はまた、食道癌及び肺癌のいずれか一方、又は両方の診断又はスクリーニングのための、血液腫瘍マーカーとしてのLY6Kタンパク質を提供する。
あるいは、本発明を用いて対象由来組織の癌性細胞を検出し、対象が肺癌又は食道癌に罹患していると判定するのに有用な情報を医師に提供することもできる。したがって、本発明は血液試料などの対象由来の試料におけるLY6Kのレベルを決定すること(例えば、測定すること)を含む。本発明において、肺癌又は食道癌の診断方法は、肺癌又は食道癌の検査又は検出のための方法も含む。また、本発明において、肺癌又は食道癌の診断とは、対象における肺癌又は食道癌の疑い、リスク、可能性を示すことを指す。
LY6K遺伝子又はLY6Kタンパク質のいずれかを試料中で検出することができる限り、任意の血液試料をLY6Kのレベルを決定するのに用いることができる。好ましくは、血液試料は全血、血清及び血漿を含む。
本発明において、「血液試料中でのLY6Kのレベル」とは、全血における血球体積を修正した後、血液中に存在するLY6Kの濃度を指す。当業者は血液中の血球体積の割合が個体間で大きく変化することを認識するだろう。例えば、全血における赤血球の割合は男女間で非常に異なる。さらに、個体間の差は無視できない。したがって、血球成分を含む全血中の物質の見かけの濃度は、血球体積の割合に大きく依存する。例えば、たとえ血清中の濃度が同じ場合でも、大量の血球成分を有する試料の測定値は、少量の血球成分を有する試料の測定値より低いだろう。したがって、血液中の成分の測定値を比較するための、血球体積に関して補正された値が、通常用いられる。
例えば、全血由来の血液細胞を分離することによって得た血清又は血漿などを試料として用いた血中の成分の測定によって、血球体積由来の効果を除去した測定値を得ることができる。従って、本発明におけるLY6Kのレベルは、通常、血清又は血漿中の濃度として決定できる。又は、最初に全血中の濃度として測定してもよく、その後血球体積由来の効果を補正してもよい。全血試料中の血球体積の測定方法は公知である。
本方法により肺癌又は食道癌と診断される対象は、哺乳類であることが好ましく、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ及びウシを含む。本発明の好ましい対象はヒトである。本発明において、対象は健常者、又は、肺癌又は食道癌のいずれか、或いは両方の疑いがある患者であってもよい。患者は臨床的判断を容易にするため本発明により診断されてもよい。別の態様において、本発明は肺癌又は食道癌のいずれか、或いは両方のスクリーニングのため、健常者に適用されてもよい。
本発明のある態様において、LY6Kのレベルは血液試料中のLY6Kタンパク質の質量又は濃度を測定することによって決定される。血液試料中のLY6Kタンパク質の量を決定する方法には、免疫測定方法が含まれる。
本発明の診断方法において、肺癌及び/又は食道癌を検出するために、LY6Kの血中濃度に加え、CEA又はCYFRA21-1、或いは両方の血中濃度が決定されてもよい。したがって、本発明は、LY6Kの血中濃度又はCYFRA21-1の血中濃度のいずれか又は両方が健常者と比較して高かった場合に癌が検出される、肺癌及び食道癌のいずれか又は両方を診断する方法を提供する。同様に、本発明は、LY6Kの血中濃度又はCEAの血中濃度のいずれか又は両方が健常者と比較して高かった場合に癌が検出される、肺癌又は食道癌のいずれか又は両方を診断する方法を提供する。あるいは、LY6K、CYFRA21-1、CEAの血中濃度の少なくとも一つが健常者と比較して高い場合、肺癌及び食道癌のいずれか又は両方が検出される。
CEAは腫瘍と発育中の胎児に関連する。CEAは結腸癌において最初に同定されたが、CEAレベルの増大は、肺癌、膵癌、胃癌、及び乳癌を含む、結腸癌以外の種々の癌において見出されている。CEAの最良の使用は消化管の癌の腫瘍マーカーとしてである。CYFRA21-1は血清中の可溶性サイトケラチン19断片を測定し、肺癌、特に扁平上皮癌の有効なマーカーである。CYFRA21-1は、サイトケラチン19断片のドメイン2のN末端領域又はC末端領域における、異なるエピトープをそれぞれ認識する2つの異なるモノクローナル抗体を使用する、独自の腫瘍マーカーである。
本発明において、肺癌又は食道癌の新規血清学的マーカーであるLY6Kを提供する。本発明により、肺癌又は食道癌の診断方法又は検出方法の感度の向上が達成され得る。すなわち、本発明は、
(a) 診断されるべき対象から血液試料を採取する段階;
(b) 血液試料中のLY6Kレベルを決定する段階;
(c) 段階(b)で決定したLY6Kレベルを正常対照のレベルと比較し、正常対照と比較して血液試料中のLY6Kレベルが高いことによって、対象が肺癌又は食道癌に罹患していることが示される、段階;
を含む、対象における肺癌又は食道癌を診断するための方法を提供する。
好ましい態様において、本発明の診断又は検出の方法は以下の段階をさらに含みうる。
(e) 血液試料中のCEAとCYFRA21-1のいずれか又は両方のレベルを決定する段階;
(f)段階(e)で決定したCEAとCYFRA21-1のいずれか又は両方のレベルを正常対照のレベルと比較する段階;及び
(g)正常対照と比較して、血液試料中のLY6Kのレベルと、CEA及びCYFRA21-1のいずれか又は両方のレベルが高いことによって、対象が肺癌及び/又は食道癌に罹患していることが示されると判断する段階。
さらに、標的を測定する方法は、対象由来の生物試料におけるLY6Kと、CEA及びCYFRA21-1などの他の癌関連タンパク質との組み合わせを含む。高レベルのLY6K発現は、ESCCを有する患者(P=0.0455)とともに、NSCLCを有する患者(P=0.0026)の予後不良とも関連しており、多変量解析はNSCLCの独立した予後予測値を証明した(P=0.0201)。血清LY6K陽性症例の割合は、NSCLCで33.9%、ESCCで32.1%であり、健常者ボランティアの4.1%のみが誤って陽性と診断された。血清CEA陽性症例の割合は、NSCLCで39.8%であり、血清CYFRA21-1陽性症例の割合はNSCLCで39.8であった。一方、LY6Kと癌胎児抗原(CEA)の両方を用いて組み合わせたアッセイは、肺腺癌患者の64.7%を陽性として検出し、健常者ボランティアの9.5%が誤って診断された。LY6KとCYFRA21-1の両方の使用は、肺扁平上皮癌の検出感度を70.4%まで増大させ、偽陽性率はたった6.8%であった。肺癌又は食道癌の検出感度は、CEA及び/又はCYFRA21-1とLY6Kとの組み合わせにより有意に向上し得る。 好ましい態様において、CEA及び/又はCYFRA21-1とLY6Kの結果が陽性である患者は、肺癌又は食道癌のリスクが高いと判断できる。肺癌及び食道癌に対する血清学的マーカーとしてのLY6KとCEA及び/又はCYFRA21-1との組み合わせの使用は新規である。
したがって、本発明により、CEA又はCYFRA21-1のみの測定結果に基づく判定と比較して、患者における肺癌又は食道癌の検出のためのアッセイの感度を大きく向上させる。理論に束縛されることを望まないが、この向上の背景には、CEA陽性又はCYFRA21-1陽性患者群とLY6K陽性患者群が完全に一致するわけではないという事実が存在するものと確信する。この事実について、さらに具体的に以下に記載する。
第一に、CEA又はCYFRA21-1の測定結果として基準値よりも低い値を有する(すなわち、肺癌又は食道癌を有さない)と判定された患者の中には、肺癌又は食道癌を有する患者が実際にはある程度の割合で存在する。そのような患者は、CEA偽陰性又はCYFRA21-1偽陰性の患者と称される。CEA又はCYFRA21-1に基づく判定とLY6Kに基づく判定を組み合わせることにより、基準値よりも高いLY6K値を有する患者を、CEA偽陰性又はCYFRA21-1偽陰性の患者の中から見つけることができる。すなわち、本発明は、CEA又はCYFRA21-1の血中濃度が低いために「陰性」であると誤って判定された患者の中から、実際には肺癌又は食道癌を有する患者を見つけ出す手段を提供する。したがって、肺癌又は食道癌患者の検出感度が本発明によって向上した。一般に、複数のマーカーを使用した判定の結果を単に組み合わせることによって検出感度は増大され得るが、その一方で特異度が減少する場合が多い。しかし、本発明は、感度と特異度の間の最良のバランスを決定することによって、特異度を損なうことなく検出感度を増加させ得る特徴的な組み合わせを決定した。
本発明の文脈おいては、CEA又はCYFRA21-1の測定結果を同時に考慮するために、例えば、上記のLY6Kの測定値と基準値との比較と同様の様式で、CEA又はCYFRA21-1の血中濃度を測定して、これを基準値と比較できる。例えば、CEA又はCYFRA21-1の血中濃度を測定しそれを基準値と比較する方法は、公知である。さらにまた、CEA及びCYFRA21-1に関するELISAキットも市販されている。 公知の報告に記載されているこれらの方法を、肺癌又は食道癌を診断又は検出するための本発明の方法において用いることができる。
本発明の文脈において、LY6Kの血中濃度の基準値を統計学的に決定することができる。
例えば、健常個体におけるLY6Kの血中濃度を測定して、LY6Kの標準的な血中濃度を統計学的に決定することができる。統計学的に十分な集団を集めることができる場合、平均値から標準偏差(S.D.)の2倍又は3倍の範囲内にある値を基準値として用いる場合が多い。したがって、平均値 + 2 x S.D.又は平均値 + 3 x S.D.に対応する値を基準値として使用することができる。記載したように設定された基準値は理論的に、それぞれ健常個体の90%及び99.7%を含む。
又は、肺癌又は食道癌患者におけるLY6Kの実際の血中濃度に基づいて、基準値を設定することもできる。一般に、このように設定した基準値は、偽陽性の割合を最小化し、かつ、検出感度を最大にし得る条件を満たす値の範囲から選択される。本明細書において、偽陽性の割合とは、健常個体の中で、LY6Kの血中濃度が基準値よりも高いと判断される患者の割合を指す。一方、健常個体の中で、LY6Kの血中濃度が基準値よりも低いと判断される患者の割合とは、特異度を示す。すなわち、偽陽性の割合と特異度の合計は常に1である。検出感度とは、肺癌又は食道癌が存在すると判定されている個体集団における肺癌又は食道癌の全患者の中で、LY6Kの血中濃度が基準値よりも高いと判断される患者の割合を指す。
さらに、本発明の文脈において、LY6K濃度が基準値よりも高いと判断された患者の中の肺癌又は食道癌患者の割合は、陽性予測値を表す。一方、LY6K濃度が基準値よりも低いと判断された患者の中の健常個体の割合は、陰性予測値を表す。これらの値の間の関係を以下の表1に要約する。以下に示した関係から示されるように、肺癌又は食道癌診断の精度を評価するための指標である感度、特異度、陽性予測値、及び陰性予測値の値はそれぞれ、LY6Kの血中濃度レベルを判断するための基準値に応じて変動する。
既に言及した通り、基準値は通常、偽陽性率が低くかつ感度が高くなるように設定される。しかし、上で示した関係からも明らかなように、偽陽性率と感度とは二律背反する関係である。すなわち、基準値を低下させると検出感度が増大する。しかし、偽陽性率もまた増大するため、「低い偽陽性率」を有するための条件を満たすことは困難である。この状況を考慮して、例えば、以下の予測結果を与える値を、本発明における好ましい基準値として選択することができる:
偽陽性率が50%以下である基準値(すなわち、特異度が50%以上である基準値);
感度が20%以上である基準値。
本発明において、基準値は受信者動作特性(ROC)曲線を用いて設定することができる。ROC曲線とは、縦軸に検出感度を示し、横軸に偽陽性率(すなわち、「1−特異度」)を示すグラフである。本発明において、LY6Kの血中濃度の程度の高さ/低さを判定するための基準値を連続して変動させた後に感度及び偽陽性率の変化をプロットすることによってROC曲線を得ることができる。
ROC曲線を得るための「基準値」とは、統計解析のため一時的に用いられる値である。ROC曲線を得るための「基準値」は一般に、選択可能な全基準値を網羅し得る範囲内で連続的に変動させることができる。例えば、基準値を、解析集団内の最小及び最大のLY6K測定値の間で変動させることができる。
得られたROC曲線に基づいて、本発明において使用するべき好ましい基準値を、上記の条件を満たす範囲から選択することができる。あるいは、基準値を、基準値を変動させることによって作成されたROC曲線に基づいて、LY6K測定値の大部分を含む範囲から選択することができる。
血液中のLY6Kは、タンパク質を定量するのに適した任意の従来の方法により測定することができる。例えば、免疫測定法、液体クロマトグラフィー、表面プラズモン共鳴(SPR)、質量分析などが本発明の文脈において使用され得る。質量分析では、適切な内部標準を使用することによりタンパク質を定量できる。例えば、同位体標識したLY6Kを内部標準として使用することができる。血液中のLY6Kの濃度は、血液中のLY6Kのピーク強度及び内部標準のピーク強度から定量することができる。一般に、タンパク質の質量分析のために、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)法が用いられる。質量分析又は液体クロマトグラフィーを使用する解析法により、LY6Kを他の腫瘍マーカー(例えば、CEA又はCYFRA21-1)と同時に解析することも可能である。
本発明の文脈において好ましいLY6K測定法は免疫測定法である。LY6Kのアミノ酸配列は公知である(GenBankアクセッション番号HSJ001348、NM_017527)。LY6Kのアミノ酸配列をSEQ ID NO: 2に示し、これをコードするcDNAのヌクレオチド配列をSEQ ID NO: 1に示す。したがって、当業者は、LY6Kのアミノ酸配列に基づいて必要な免疫原を合成することによって抗体を調製することができる。免疫原として用いるペプチドは、ペプチド合成装置を使用して容易に合成可能である。合成ペプチドを担体タンパク質に連結することによって、免疫原として使用することができる。
キーホールリンペットヘモシアニン、ミオグロビン、アルブミンなどを担体タンパク質として使用することができる。好ましい担体タンパク質は、KLH、ウシ血清アルブミンなどである。合成ペプチドを担体タンパク質に連結するためには、マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル法(以下、MBS法と略称する)などが一般に用いられる。
具体的には、システインを合成ペプチド中に導入し、システインのSH基を用いてMBSにより該ペプチドをKLHに架橋させる。システイン残基は、合成ペプチドのN末端又はC末端に導入されうる。
あるいは、LY6Kは、LY6Kのヌクレオチド配列(GenBankアクセッション番号HSJ001348、NM_017527)又はその一部分を用いて調製することができる。必要なヌクレオチド配列を有するDNAは、LY6K発現組織から調製されたmRNAを用いてクローニングすることができる。又は、市販のcDNAライブラリーをクローニング源として使用することができる。得られたLY6Kの遺伝子組換え体又はその断片もまた、免疫原として使用することができる。このように発現されたLY6K組換え体は、本発明において使用される抗体を得るための免疫原として好ましい。
このようにして得られた免疫原を適切なアジュバントと混合して、動物を免疫するために用いる。公知のアジュバントには、フロイントの完全アジュバント(FCA)及び不完全アジュバントが含まれる。 抗体価の上昇が確認されるまで、免疫手順を適切な間隔で繰り返す。本発明において、免疫する動物は特に制限されない。 具体的には、マウス、ラット、又はウサギなど、免疫化のために通常用いられる動物を使用することができる。
モノクローナル抗体として抗体を入手する場合には、その産生に有利な動物を使用できる。例えばマウスでは、細胞融合のための多くの骨髄腫細胞系が公知であり、高い確率でハイブリドーマを樹立する技法が既に周知である。したがって、マウスは、モノクローナル抗体を得るための望ましい免疫動物である。
さらに、免疫処理はインビトロ処理に限定されない。培養した免疫担当細胞をインビトロで免疫学的に感作するための方法もまた使用できる。これらの方法によって得られた抗体産生細胞を形質転換し、クローニングする。モノクローナル抗体を得るために抗体産生細胞を形質転換するための方法は、細胞融合に限定されない。例えば、ウイルス感染によりクローニング可能な形質転換体を得るための方法が知られている。
本発明において使用されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、LY6Kに対するその反応性に基づいてスクリーニングすることができる。具体的には、まず、免疫原として使用したLY6K又はそのドメインペプチドに対する結合活性を指標として用いて、抗体産生細胞を選択する。このスクリーニングにより選択された陽性クローンを、必要に応じてサブクローニングする。
樹立されたハイブリドーマを適切な条件下で培養し、産生された抗体を回収することによって、本発明において使用するモノクローナル抗体を得ることができる。ハイブリドーマがホモハイブリドーマである場合には、これを同種同系動物に腹腔内接種することによってインビボで培養することができる。この場合、モノクローナル抗体は腹水として回収される。ヘテロハイブリドーマを使用する場合には、宿主としてヌードマウスを用いて、これらをインビボで培養することができる。
インビボ培養に加えて、ハイブリドーマはまた一般に、適切な培養環境においてエクスビボでも培養される。例えば、RPMI 1640及びDMEMなどの基本培地が、ハイブリドーマの培地として通常用いられる。抗体産生能を高レベルに維持するために、動物血清などの添加剤をこれらの培地に添加することができる。 ハイブリドーマをエクスビボで培養する場合、モノクローナル抗体は培養上清として回収することができる。培養後に細胞から分離することによって、又は、中空糸を使用する培養装置を用いて培養しながら連続的に回収することによって、培養上清を回収することができる。
本発明の文脈おいて使用するモノクローナル抗体は、飽和硫安沈殿により免疫グロブリン画分を分離し、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーなどによってさらに精製することにより、腹水又は培養上清として回収したモノクローナル抗体から調製することができる。加えて、モノクローナル抗体がIgGである場合には、プロテインA又はプロテインGカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーに基づく精製法が有効である。
一方、本発明で有用な抗体を、SEQ ID NO: 18又は19を含むアミノ酸配列を認識するポリクローナル抗体として得るために、免疫後に抗体価が上昇した動物から血液を採取し、血清を分離して抗血清を得る。本発明において使用する抗体を調製するために、公知の方法により抗血清から免疫グロブリンを精製する。LY6Kをリガンドとして使用するイムノアフィニティークロマトグラフィーを免疫グロブリン精製と組み合わせることにより、LY6K特異的抗体を調製することができる。
LY6Kに対する抗体をLY6Kと接触させると、抗体は、抗原-抗体反応を介して抗体が認識する抗原決定基(エピトープ)に結合する。特に、エピトープはSEQ ID NO: 18又は19を含む。抗原に対する抗体の結合は、種々の免疫測定原理により検出することができる。免疫測定法は、異種解析法と同種解析法に大別され得る。免疫測定法の感度及び特異性を高レベルに維持するためには、モノクローナル抗体が望ましい。種々の免疫測定形式によりLY6Kを測定するための本発明の方法に関し、以下にさらなる詳細を説明する。
最初に、異種免疫測定法を使用してLY6Kを測定する方法について記載する。異種免疫測定法では、LY6Kに結合した抗体を、LY6Kに結合しなかった抗体から分離した後に検出するための機構が必要である。
分離を促進にするため、固定化試薬が一般に用いられる。例えば、LY6Kを認識する抗体が固定化されている固相を、最初に調製する(固定化抗体)。LY6Kをこれに結合させ、二次抗体をさらにそれと反応させる。
固相を液相から分離して、必要に応じてさらに洗浄すると、二次抗体はLY6Kの濃度に比例して固相上に残存する。二次抗体を標識することによって、標識に由来するシグナルの測定によりLY6Kを定量することができる。
抗体を固相に結合させるために、任意の方法を用いることができる。例えば、抗体を、ポリスチレンなどの疎水性材料に物理的に吸着させることができる。又は、抗体を、その表面上に官能基を有する種々の材料に対して化学的に結合させることができる。さらに、結合リガンドで標識した抗体を、リガンドの結合パートナーを用いて捕捉することによって固相に結合させることもできる。結合リガンドとその結合パートナーの組み合わせには、アビジン-ビオチンなどが含まれる。一次抗体とLY6Kの反応と同時に、又はその前に、固相と抗体を結合させることができる。
同様に、二次抗体を直接標識する必要もない。すなわち、二次抗体を、抗体に対する抗体を用いて、又はアビジン-ビオチンなどの結合反応を用いて、間接的に標識することができる。
試料中のLY6Kの濃度は、既知のLY6K濃度を有する標準試料を用いて得られたシグナル強度に基づいて決定される。
LY6Kを認識する抗体又はその抗原結合部位を含む断片である限り、任意の抗体を、上記の異種免疫測定法用の固定化抗体及び二次抗体として使用することができる。したがって、これはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又は両者の混合物もしくは組み合わせであってよい。例えば、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の組み合わせは、本発明における好ましい組み合わせである。又は、両抗体がモノクローナル抗体である場合には、異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体を組み合わせることが好ましい。
本発明において、例えば、コドン23〜109(SEQ ID NO: 18)及び71〜204(SEQ ID NO: 19)においてLY6Kを認識する抗体の組み合わせは、高い特異性を有し、LY6Kを検出するのに好ましい。
測定される抗原を抗体によって挟み込むため、このような異種免疫測定法はサンドイッチ法と称される。サンドイッチ法は測定感度及び再現性に優れているため、本発明において好ましい測定原理である。
競合阻害反応の原理を、異種免疫測定法に適用することもできる。具体的には、これは、試料中のLY6Kが既知濃度のLY6Kと抗体の結合を競合的に阻害する現象に基づく免疫測定法である。既知濃度のLY6Kを標識し、抗体と反応した(又は反応しなかった)LY6Kの量を測定することにより、試料中のLY6Kの濃度を決定することができる。
既知濃度の抗原と試料中の抗原とを同時に抗体と反応させる場合に、競合反応系が確立される。さらに、抗体を試料中の抗原と反応させ、その後既知濃度の抗原を反応させる場合に、阻害反応系による解析が可能である。いずれの種類の反応系においても、試薬成分として用いられる既知濃度の抗原、又は抗体のいずれかを標識成分として設定し、他方を固定化試薬として設定することにより、操作性に優れた反応系を構築することができる。
放射性同位体、蛍光物質、発光物質、酵素活性を有する物質、肉眼で観察可能な物質、磁気的に観察可能な物質などが、これらの異種免疫測定法において用いられる。これらの標識物質の具体例を以下に示す。
酵素活性を有する物質:
ペルオキシダーゼ、
アルカリホスファターゼ、
ウレアーゼ、カタラーゼ
グルコースオキシダーゼ、
乳酸デヒドロゲナーゼ、又は
アミラーゼなど
蛍光物質:
フルオレセインイソチオシアネート、
テトラメチルローダミンイソチオシアネート、
置換ローダミンイソチオシアネート、又は
ジクロロトリアジンイソチオシアネートなど
放射性同位体:
トリチウム、
125I、又は
131Iなど
これらのうち、酵素などの非放射性標識は、安全性、操作性、感度などの点で有利な標識である。酵素標識は、過ヨウ素酸法又はマレイミド法などの公知の方法によって、抗体又はLY6Kに連結することができる。
固相としては、ビーズ、容器の内壁、微粒子、多孔質担体、磁性粒子などが用いられる。ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリル酸、ラテックス、ゼラチン、アガロース、ガラス、金属、セラミックなどの材料を用いて形成された固相を使用することができる。上記固体材料の表面上に、抗体などを化学的に結合させるための官能基が導入された固体材料もまた公知である。ポリ-L-リジン又はグルタルアルデヒド処理などの化学的結合、及び物理的吸着を含む公知の結合法を、固相及び抗体(又は抗原)に適用することができる。
本明細書において例示するすべての異種免疫測定法において、液相から固相を分離する段階及び洗浄段階が必要であるが、これらの段階は、サンドイッチ法の変形である免疫クロマトグラフィー法を用いて容易に実施可能である。
具体的には、固定化されるべき抗体を、毛管現象によって試料溶液の移送が可能な多孔質担体上に固定化し、次に、LY6Kを含む試料と標識抗体との混合物をこの毛管現象により内部に展開させる。展開中に、LY6K は標識抗体と反応し、また、これがさらに固定化抗体と接触した場合その位置で捕捉される。LY6K と反応しなかった標識抗体は、固定化抗体に捕捉されることなく通過する。
結果として、固定化抗体の位置に残存する標識抗体のシグナルを指標として用いて、LY6Kの存在を検出することができる。標識抗体が多孔質担体内の上流で予め維持されている場合、試料溶液の滴下だけによってすべての反応を開始し完了することができ、よって極めて簡便な反応系が構築され得る。免疫クロマトグラフィー法では、着色粒子のような肉眼で識別できる標識成分を組み合わせて、特殊な読取装置さえ不要な分析装置を構築することができる。
さらに、免疫クロマトグラフィー法において、LY6Kの検出感度を調整することができる。例えば、後述するカットオフ値の近傍に検出感度を調整することによって、上記の標識成分は、カットオフ値を超えた場合に検出され得る。このような装置を使用することで、対象が陽性であるか陰性であるかを非常に簡便に判断することができる。肉眼による標識の識別を可能にする構成を採用することにより、単に血液試料を免疫クロマトグラフィーの装置に添加するだけで、必要な試験結果を得ることができる。
免疫クロマトグラフィーの検出感度を調整するための種々の方法が知られている。例えば、検出感度を調整するための第2固定化抗体を、試料を加える位置と固定化抗体の間に配置することができる(日本国特許出願公開公報 特開平6-341989(未審査、公開日本国特許出願))。試料中のLY6Kは、試料が添加された位置から標識検出のための第1固定化抗体の位置へと展開しながら、第2固定化抗体に捕捉される。 第2固定化抗体が飽和した後、LY6K は、下流に位置する第1固定化抗体の位置へと到達できる。結果として、試料中に含まれるLY6K の濃度が所定の濃度を超える場合、標識抗体に結合したLY6K が、第1固定化抗体の位置で検出される。
次に、同種免疫測定法について説明する。上記のように反応液の分離を必要とする異種免疫学的アッセイ法とは対照的に、同種解析法を用いてLY6Kを測定することもできる。同種解析法では、抗原-抗体反応産物を反応液から分離することなく検出することができる。
代表的な同種解析法は、抗原-抗体反応後に生成された沈殿物を調べることにより抗原性物質を定量的に解析する、免疫沈降反応である。免疫沈降反応には一般的に、ポリクローナル抗体が用いられる。モノクローナル抗体を適用する場合には、LY6Kの様々なエピトープに結合する複数種のモノクローナル抗体を使用することが好ましい。免疫反応後の沈降反応の産物は、肉眼で観察することができるか、又は、数値データへの変換のために光学的に測定することができる。
抗体を感作した微粒子の抗原による凝集を指標として用いる免疫学的粒子凝集反応は、一般的な同種解析法である。この方法においても、上記の免疫沈降反応と同様に、ポリクローナル抗体又は複数種のモノクローナル抗体の組み合わせを使用することができる。微粒子を、抗体混合物による感作により抗体を用いて感作することができ、又は、各抗体で個別に感作された粒子を混合することによって調製することができる。このようにして得られた微粒子は、LY6Kとの接触に際してマトリクス様の反応産物を生じる。反応産物は、粒子の凝集として検出することができる。粒子の凝集は、肉眼で観察してもよく、又は、数値データへの変換のために光学的に測定することができる。
同種免疫測定法として、エネルギー移動及び酵素チャネリング(enzyme channeling)に基づく免疫学的解析法が知られている。エネルギー移動を利用する方法では、ドナー/アクセプター関係を持つ様々な光学標識を、抗原上の隣接したエピトープを認識する複数の抗体に結合させる。免疫反応が起こると、2つの部分が接近してエネルギー移動現象が起こり、これによって、クエンチング又は蛍光波長の変化といったシグナルが生じる。一方、酵素チャネリングでは、隣接したエピトープに結合する複数の抗体に対する標識を利用するが、該標識は、ある酵素の反応産物が別の酵素の基質となるような関係にある酵素の組み合わせである。免疫反応により2つの部分が接近すると、酵素反応が促進され、よって、酵素反応速度の変化としてそれらの結合を検出することができる。
本発明において、LY6Kを測定するための血液は、患者から採取した血液から調製できる。好ましい血液試料は血清又は血漿である。血清又は血漿試料は、測定前に希釈することができる。又は、全血を試料として測定してもよく、得られた測定値を補正して血清濃度を決定することができる。例えば、同じ血液試料中の血球体積の割合を決定することにより、全血中の濃度を血清濃度へと補正することができる。
好ましい態様において、免疫測定法はELISAである。本発明はさらに、肺癌又は食道癌を有する患者における血清LY6Kを検出するためのサンドイッチELISA提供する。
次に、血液試料中のLY6Kレベルを、正常対照試料などの参照試料に関連するLY6Kレベルと比較する。「正常対照レベル」という用語は、肺癌又は食道癌に罹患していない集団の血液試料において典型的に認められるLY6Kレベルを指す。参照試料は、試験試料と同様の性質であることが好ましい。例えば、試験試料が患者血清から構成される場合、参照試料もまた血清であるべきである。 対照及び試験対象に由来する血液試料中のLY6Kレベルを同時に決定してもよく、あるいは、予め対照群から回収された試料中のLY6Kレベルを解析することによって得られた結果に基づき、統計法により正常対照レベルを決定してもよい。
またLY6Kレベルは、肺癌又は食道癌の治療経過をモニターするために使用することもできる。この方法において、試験血液試料は、肺癌又は食道癌の治療中の対象から提供される。治療前、治療中、又は治療後の様々な時点で、対象から複数の試験血液試料を得ることが好ましい。次に、治療後試料のLY6Kレベルを、治療前試料のLY6Kレベル又は参照試料(例えば、正常対照レベル)と比較できる。例えば、治療後LY6Kレベルが治療前LY6Kレベルよりも低ければ、治療が有効であったと結論づけることができる。同様に、治療後LY6Kレベルが正常対照LY6Kレベルと同様であれば、やはり治療が有効であったと結論づけることができる。
「有効な」治療とは、対象において、LY6Kレベルの低下、又は、肺癌又は食道癌のサイズ、有病率、もしくは転移能の減少をもたらす治療である。治療が予防的に適用される場合、「有効」とは、治療によって、肺癌又は食道癌の発症が遅延されるかもしくは妨げられる、又は肺癌又は食道癌の臨床症状が軽減されることを意味する。肺癌又は食道癌の評価は、標準的な臨床手順を用いて行うことができる。さらに、肺癌又は食道癌を診断又は治療するための任意の公知の方法に関連して治療の有効性を判定することができる。例えば、肺癌又は食道癌は、病理組織学的に、又は症候性異常を同定することによって、日常的に診断される。したがって、LY6K、あるいはLY6KとCEA及び/又はCYFRA21-1の組み合わせに基づいて、患者が肺癌又は食道癌を有すると判断される可能性は容易に除外され得る。
本発明に従って肺癌又は食道癌などの癌の診断を行うために使用する成分を予め組み合わせて、試験キットとして提供することができる。したがって、本発明は、以下を含む、肺癌又は食道癌を検出するためのキットを提供する:
(i) 血液試料中のLY6Kレベルを定量するための免疫測定試薬;及び
(ii) LY6Kの陽性対照試料。
好ましい態様において、本発明のキットは、以下をさらに含み得る:
(iii) 血液試料中のCEAとCYFRA21-1のいずれか又は両方のレベルを決定するための免疫測定試薬;及び
(iv) CEA及び/又はCYFRA21-1の陽性対照試料。
本発明のキットを構成する免疫測定法のための試薬は、上記の種々の免疫測定法に必要な試薬を含み得る。具体的には、免疫測定法のための試薬は、測定されるべき物質を認識する抗体を含む。特に、抗体は、SEQ ID NO:18又は19を含むアミノ酸配列を認識する。抗体は、免疫測定法のアッセイ形式に応じて修飾することができる。本発明の好ましいアッセイ形式として、ELISAを用いることができる。ELISAでは、例えば、固相上に固定化された一次抗体及び標識を有する二次抗体が一般に用いられる。
したがって、ELISA用の免疫測定試薬は、固相担体上に固定化された一次抗体を含み得る。微粒子又は反応容器の内壁を固相担体として用いることができる。磁性粒子を微粒子として使用することができる。又は、96ウェルマイクロプレートなどのマルチウェルプレートを反応容器として用いることが多い。96ウェルマイクロプレートよりも容量の小さなウェルを高密度で備えた、多数の試料を処理するための容器もまた知られている。本発明では、これらの反応容器の内壁を固相担体として使用できる。
ELISA用の免疫測定試薬は、標識を有する二次抗体をさらに含み得る。ELISA用の二次抗体は、酵素が直接又は間接的に連結している抗体であってよい。酵素を抗体に化学的に連結する方法は公知である。例えば、免疫グロブリンを酵素的に切断して、可変領域を含む断片を得ることができる。 これらの断片中に含まれる-SS-結合を-SH基に還元して、二官能性リンカーを結合させることができる。酵素を予め二官能性リンカーに連結しておくことにより、酵素を抗体断片に連結することができる。
また、酵素を間接的に連結するために、例えばアビジン-ビオチン結合を使用することができる。すなわち、ビオチン化抗体と、アビジンが結合している酵素とを接触させることにより、酵素を抗体へと間接的に連結することができる。加えて、二次抗体を認識する酵素標識抗体である三次抗体を用いて、酵素を二次抗体へと間接的に連結することができる。例えば、上記で例示したような酵素を、抗体を標識するための酵素として使用することができる。
本発明のキットはLY6Kの陽性対照を含む。LY6Kの陽性対照は、濃度が予め決定されたLY6Kを含む。 例えば、LY6Kの濃度がカットオフ値よりも高い対照試料は、陽性対照として用いられ得る。又は、好ましい濃度は、例えば本発明の試験方法における基準値として設定される濃度である。さらに、より高い濃度を有する陽性対照を組み合わせることもできる。本発明におけるLY6Kの陽性対照は、濃度が予め決定されたCEA及び/又はCYFRA21-1をさらに含み得る。CEAとCYFRA21-1のいずれか又は両方、及びLY6Kを含む陽性対照は、本発明の陽性対照として好ましい。
したがって、本発明は、正常値よりも高い濃度のCEA及び/又はCYFRA21-1並びにLY6Kを含む、肺癌及び食道癌検出のための陽性対照を提供する。 また、本発明は、肺癌又は食道癌検出のための陽性対照の作製における、正常値よりも高い濃度のCEA及び/又はCYFRA21-1並びにLY6Kを含む血液試料の使用に関する。CEA又はCYFRA21-1が肺癌又は食道癌の指標として役立ち得ることは知られているが、LY6Kが肺癌又は食道癌の指標として役立ち得ることは、本発明によって得られた新規知見である。したがって、CEA及び/又はCYFRA21-1に加えてLY6Kを含む陽性対照は新規である。 本発明の陽性対照は、基準値よりも高い濃度のCEA及び/又はCYFRA21-1並びにLY6Kを血液試料に添加することによって調製できる。例えば、基準値よりも高い濃度のCEA及び/又はCYFRA21-1並びにLY6Kを含む血清は、本発明の陽性対照として好ましい。
本発明における陽性対照は、好ましくは液体形態である。本発明において、試料として血液試料が用いられる。したがって、対照として使用される試料もまた液体形態である必要がある。また、使用時に乾燥陽性対照を所定量の液体で溶解することにより、試験濃度を付与する対照を調製することができる。乾燥陽性対照と共に、それを溶解するのに必要な一定量の液体を封入することによって、使用者はそれらを混合するだけで必要な陽性対照を得ることができる。陽性対照として用いるLY6Kは天然由来のタンパク質であってよく、又は組換えタンパク質であってもよい。陽性対照だけでなく、陰性対照も本発明のキットに含むことができる。陽性対照又は陰性対照は、免疫測定によって示された結果が正しいことを実証するために用いられる。
癌の予後を評価するための方法
本発明により、LY6Kの発現が患者の予後不良と有意に関連することが新規に発見された(図3BとD参照)。したがって本発明は、患者の生体試料におけるLY6K遺伝子の発現レベルを検出し、検出された発現レベルと対照レベルを比較し、予後不良(低い生存率)の指標として、対照レベルに対する発現レベル増加を予後不良(低い生存率)と関連づけるすることによって、癌、特に肺癌及び/又は食道癌の患者の予後を判定又は評価するための方法を提供する。あるいは、本発明によると、対象の予後を判定又は評価するための中間結果を提供することもできる。そのような中間結果物をさらなる情報と組み合わせて、医師、看護師、又はその他の医療従事者が癌を有する患者の予後を判定又は評価することを補助することができる。あるいは、本発明を用いて対象由来の組織中の癌性細胞を検出し、癌を有する患者の予後を判定又は評価するのに有用な情報を医師に提供することもできる。
本明細書において「予後」という用語は、症例の性質及び症状によって示される、疾患の推定される転帰及び該疾患からの回復見込みに関しての予測を指す。したがって、あまり好ましくない、ネガティブな、不良な予後とは、短い治療後生存期間又は低い生存率によって定義される。 逆に、ポジティブな、好ましい、又は良好な予後とは、長い治療後生存期間又は高い生存率によって定義される。
「予後の評価」という用語は、患者の癌の将来の転帰(例えば、悪性度、癌治癒の可能性、生存率など)を予想できる、予測できる、又は所与の検出又は測定と関連づけることができる能力を指す。例えば、経時的なLY6Kの発現レベルの決定により、患者の転帰(例えば、悪性度の増大又は低下、癌のグレードの増大又は低下、癌治癒の可能性、生存率など)の予測が可能になる。
本発明の文脈において、「予後を評価(又は判定)する」という句は、癌、進行、特に癌再発、転移拡散、及び疾患再発の予測及び尤度解析を包含することが意図される。予後を評価するための本方法は、治療的介入を含む治療様式、疾患進行度分類などの診断基準、並びに新生物疾患の転移又は再発に対する疾患モニタリング及び監視に関して決定を行う際に、臨床的に使用されることを意図している。
本方法で使用する患者由来の生体試料は、LY6K遺伝子が試料中で検出可能である限り、評価されるべき対象に由来する任意の試料であってよい。生体試料は食道及び肺細胞(食道及び肺から得られた細胞)を含むことが好ましい。さらに、生体試料には、痰、血液、血清、又は血漿などの体液が含まれる。さらに試料は、組織から精製された細胞であってもよい。 生体試料は、治療前、治療中、及び/又は治療後を含む様々な時点で患者から得ることができる。
本発明によると、患者由来の生体試料中で測定されたLY6K遺伝子の発現レベルが高ければ高いほど、治療後寛解、回復、及び/又は生存に関する予後が不良であり、かつ臨床転帰が不良となる可能性が高いことが示された。したがって本方法によると、比較のために使用される「対照レベル」とは、例えば、何らかの治療後に癌の良好な又はポジティブな予後を示した個体又は個体群において該治療の前に検出された、LY6K遺伝子の発現レベルであり、本明細書においてこれを「予後良好の対照レベル」と称する。あるいは、「対照レベル」とは、例えば、何らかの治療後に癌の不良な又はネガティブな予後を示した個体又は個体群において該治療の前に検出されたLY6K遺伝子の発現レベルであり、本明細書においてこれを「予後不良の対照レベル」と称する。「対照レベル」とは、単一の参照集団に、又は複数の発現パターンに由来する単一の発現パターンである。したがって対照レベルは、疾患状態(予後良好又は予後不良)が分かっている癌の患者又は患者群において何らかの治療の前に検出されたLY6K遺伝子の発現レベルに基づいて決定されうる。好ましくは、癌は食道又は肺癌である。 疾患状態が分かっている患者群におけるLY6K遺伝子の発現レベルの基準値を用いることが好ましい。 基準値は、当技術分野で公知の任意の方法によって得ることができる。例えば、平均値±2 S.D.又は平均値±3 S.D.の範囲を、基準値として使用することができる。
疾患状態(予後良好又は予後不良)が分かっている癌患者(対照又は対照群)から以前に採取し何らかの治療を行うまで保存した試料を用いることによって、試験生体試料と同時に対照レベルを決定することができる。
あるいは、対照群から以前に採取して保存した試料中のLY6K遺伝子の発現レベルの解析により得られた結果に基づく統計学的方法によって、対照レベルを決定することができる。さらに、対照レベルは、以前に試験された細胞由来の発現パターンのデータベースであってもよい。さらに、本発明の一局面により、生体試料中のLY6K遺伝子の発現レベルを、複数の参照試料より決定された複数の対照レベルと比較することができる。 患者由来の生体試料の組織型と類似した組織型に由来する参照試料より決定された対照レベルを使用することが好ましい。
本発明によると、LY6K遺伝子の発現レベルと予後良好の対照レベルとが類似していることは、患者のより良い予後を示し、かつ予後良好の対照レベルよりも発現レベルが高いことは、治療後寛解、回復、生存、及び/又は臨床転帰に関して、より好ましくない、より不良な予後を示す。一方、予後不良の対照レベルよりもLY6K遺伝子の発現レベルが低いことは、患者のより良い予後を示し、予後不良の対照レベルと発現レベルとが類似していることは、治療後寛解、回復、生存、及び/又は臨床転帰に関して、より好ましくない、より不良な予後を示す。
生体試料におけるLY6K遺伝子の発現レベルが、1.0倍、1.5倍、2.0倍、5.0倍、10.0倍、又はそれ以上を上回る倍率で対照レベルと異なる場合、該発現レベルが変化したと見なすことができる。あるいは、発現レベルが少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、80%、90%、又はそれ以上増大又は減少した場合、生体試料におけるLY6K遺伝子の発現レベルが変化したと見なすことができる。
試験生体試料と対照レベルとのあいだの発現レベルの違いは、対照遺伝子、例えばハウスキーピング遺伝子に対して標準化することができる。例えば、癌性細胞と非癌性細胞の間で発現レベルが異ならないことが分かっているポリヌクレオチド(βアクチン、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ、及びリボソームタンパク質P1をコードするポリヌクレオチドを含む)を用いて、LY6K遺伝子の発現レベルを標準化することができる。
当技術分野で周知の技術を用いて患者由来の生体試料中の遺伝子転写物を検出することによって、発現レベルを決定することができる。本方法によって検出される遺伝子転写物には、mRNA及びタンパク質などの転写産物及び翻訳産物の両方が含まれる。
例えば、LY6K遺伝子の転写産物は、該遺伝子転写物に対するLY6K遺伝子のプローブを用いるハイブリダイゼーション、例えばノーザンブロットハイブリダイゼーション解析によって検出することができる。検出は、チップ又はアレイ上で実施可能である。LY6K遺伝子を含む複数の遺伝子の発現レベルの検出に関しては、アレイの使用が好ましい。別の例として、LY6K遺伝子に特異的なプライマーを用いる、逆転写に基づくポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)などの、増幅に基づく検出法を検出のために使用してもよい(実施例を参照されたい)。LY6K遺伝子の配列(SEQ ID NO: 1)全体を参照することにより、従来技術を用いて、LY6K遺伝子に特異的なプローブ又はプライマーを設計及び調製することができる。例えば実施例において使用したプライマーセット(SEQ ID NO: 3及び4、7及び4)はRT-PCRによる検出用に使用可能であるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
具体的には、本発明の方法に使用されるプローブ又はプライマーは、ストリンジェントな、中程度にストリンジェントな、又は低ストリンジェントな条件下でLY6K遺伝子のmRNAにハイブリダイズする。本明細書で用いる「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」という語句は、プローブ又はプライマーがその標的配列とはハイブリダイズするが他の配列とはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、異なる環境下では異なると考えられる。長い配列の特異的ハイブリダイゼーションは、短い配列よりも高い温度で観察される。一般に、ストリンジェントな条件の温度は、規定のイオン強度及びpHでの特定配列の融解温度(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度の下で)標的配列に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度である。標的配列は通常、過剰に存在するため、Tmにおいては、プローブの50%が平衡状態で占められている。典型的には、ストリンジェントな条件とは、pH 7.0〜8.3において塩濃度がナトリウムイオンで約1.0 M未満、典型的にはナトリウムイオン(又は他の塩)で約0.01〜1.0 Mであり、かつ温度が、短いプローブ又はプライマー(例えば、10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃であり、より長いプローブ又はプライマーについては少なくとも約60℃である条件である。また、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によってストリンジェントな条件を達成することもできる。
あるいは、本発明の評価のために翻訳産物を検出することができる。例えば、LY6Kタンパク質の量を決定してもよい。翻訳産物としてのタンパク質の量を決定するための方法には、LY6Kタンパク質を特異的に認識する抗体を使用する免疫測定法が含まれる。抗体はモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。特に、その抗体は、SEQ ID NO: 18又は19を含むアミノ酸配列を認識する。さらに、断片がLY6Kタンパク質への結合能を保持している限り、検出のために抗体の任意の断片又は修飾体(例えばキメラ抗体、scFv、Fab、F(ab’)2、Fvなど)を使用することができる。タンパク質検出用のこれらの種類の抗体を調製する方法は当技術分野で周知であり、そのような抗体及びその同等物を調製するために、本発明において任意の方法を使用することができる。
LY6K遺伝子の発現レベルをその翻訳産物に基づいて検出するための別の方法として、LY6Kタンパク質に対する抗体を使用した免疫組織化学解析により染色強度を観察することができる。すなわち、強力な染色が観察されることはLY6Kタンパク質の存在量増加を示し、同時に、LY6K遺伝子の高い発現レベルも示す。
さらにLY6Kタンパク質は、細胞増殖活性を有することが知られている。したがって、そのような細胞増殖活性を指標として用いて、LY6K遺伝子の発現レベルを決定することができる。例えば、生体試料由来の細胞を調製して培養し、次に、増殖速度を検出することによって又は細胞周期もしくはコロニー形成能力を測定することによって、LY6K遺伝子の発現レベルを決定することができる。
さらに、評価の正確性を向上させるために、LY6K遺伝子の発現レベルに加え、その他の食道及び肺細胞関連遺伝子、例えば食道癌及び肺癌中で差次的に発現されることが知られている遺伝子の発現レベルを決定してもよい。そのような他の肺細胞関連遺伝子には、これに限定されないが、国際公開公報第2004/031413号に記載のものが含まれ、その全体は参照により本明細書において引用される。この公報において、LY6KはURLC10と呼ばれる。
本方法により癌の予後について評価される患者は哺乳類であることが好ましく、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、及びウシを含む。
癌を診断するため、及び癌の予後を評価するためのキット
キット
本発明は、癌を診断するため、又は癌の予後を評価するためのキットを提供する。好ましくは、癌は食道癌又は肺癌である。具体的には、本キットは、患者由来の生体試料中のLY6K遺伝子の発現を検出するための少なくとも1種類の試薬を含み、該試薬は以下の群より選択されうる:
(a) LY6K遺伝子のmRNAを検出するための試薬;
(b) LY6Kタンパク質を検出するための試薬;及び
(c) LY6Kタンパク質の生物学的活性を検出するための試薬。
LY6K遺伝子のmRNAを検出するための適切な試薬には、LY6K mRNAの一部に対する相補配列を有するオリゴヌクレオチドなどの、LY6K mRNAに特異的に結合するか、それを同定する核酸が含まれる。これらの種類のオリゴヌクレオチドは、LY6K mRNAに特異的なプライマー及びプローブによって例示される。これらの種類のオリゴヌクレオチドは、当技術分野で周知の方法に基づいて調製されうる。必要ならば、LY6K mRNAを検出するための試薬を固体マトリクス上に固定化してもよい。さらに、LY6K mRNAを検出するための2種類以上の試薬を本キットに含めてもよい。
一方、LY6Kタンパク質を検出するための適切な試薬は、LY6Kタンパク質に対する抗体を含む。抗体は、例えばそれぞれコドン23〜109(SEQ ID NO: 18)及び71〜204(SEQ ID NO: 19)でLY6Kを認識するTM38及びMB44などのモノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。これら2つの高度にLY6K特異的な抗体は、LY6Kタンパク質の異なるエピトープを認識し、本発明におけるサンドイッチELISAアッセイの一次及び二次抗体として適切に使用することができる。 さらに、断片がLY6Kタンパク質への結合能を保持している限り、抗体の任意の断片又は修飾体(例えばキメラ抗体、scFv、Fab、F(ab’)2、Fvなど)を試薬として使用することができる。タンパク質検出用のこれらの種類の抗体を調製する方法は当技術分野で周知であり、そのような抗体及びその同等物を調製するために、本発明において任意の方法を使用することができる。さらに、直接結合又は間接的標識技術によって、シグナル産生分子を用いて抗体を標識してもよい。標識並びに、抗体を標識する方法及びその標的に対する抗体の結合を検出する方法は当技術分野で周知であり、本発明のために任意の標識及び方法を使用することができる。さらに、LY6Kタンパク質を検出するための2種類以上の試薬を本キットに含めてもよい。
さらに、LY6Kを発現する細胞の場合、例えば、発現されたLY6Kタンパク質による細胞増殖活性を測定することによって、生物学的活性を決定することができる。例えば、患者由来の生体試料の存在下で細胞を培養し、次に、増殖速度を検出することによって又は細胞周期もしくはコロニー形成能力を測定することによって、生体試料の細胞増殖活性を決定することができる。必要ならば、LY6K mRNAを検出するための試薬を固体マトリクス上に固定化してもよい。さらに、LY6Kタンパク質の生物学的活性を検出するための2種類以上の試薬を本キットに含めてもよい。
本キットは、前述の試薬を2種類以上含んでもよい。さらに本キットは、LY6K遺伝子に対するプローブ又はLY6Kタンパク質に対する抗体を結合させるための固体マトリクス及び試薬、細胞を培養するための培地及び容器、陽性対照試薬及び陰性対照試薬、並びにLY6Kタンパク質に対する抗体を検出するための二次抗体を含んでもよい。 例えば、予後良好又は予後不良の患者より得られる組織試料は、有用な対照試薬となりうる。本発明のキットは、使用説明書と共に、緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及びパッケージ挿入物(例えば、書面、テープ、CD-ROMなど)を含む、商業的な及びユーザーの観点から望ましいその他の物質をさらに含みうる。これらの試薬などを、ラベル付けした容器中に含めてもよい。適切な容器には、ボトル、バイアル、及び試験管が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。
該キットのアッセイ型は、ノザンハイブリダイゼーション又はサンドイッチELISAでもよく、両方とも当技術分野では公知である。例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press; 及び Using Antibodies(前記) を参照されたい。
例えば、LY6Kを検出する試薬は、少なくとも1つのLY6K検出部位を形成するために、多孔性ストリップなどの固体マトリクス上に固定化してもよい。 多孔性ストリップの測定領域又は検出領域は、それぞれが1つの核酸を含む複数の部位を含んでもよい。試験ストリップは、陰性対照及び/又は陽性対照に対する部位も含みうる。 あるいは、対照部位を試験ストリップとは分離されたストリップ上に配置してもよい。 任意で、異なる検出部位は異なる量の、すなわち第1の検出部位ではより多い量の、以降の部位ではより少ない量の固定化された核酸を含んでもよい。試験試料添加の際に検出可能なシグナルを示す部位の数が、試料中に存在するLY6Kの量の定量的指標を提供する。検出部位は、適切に検出可能な任意の形状で構成することができ、典型的には試験ストリップの幅全体にわたる棒状又はドット状の形状である。
本発明の一態様として、試薬がLY6K mRNAに対するプローブである場合、少なくとも1つの検出部位を形成するために、多孔性ストリップなどの固体マトリクス上に該試薬を固定化してもよい。多孔性ストリップの測定領域又は検出領域は、それぞれが1つの核酸(プローブ)を含む複数の部位を含んでもよい。試験ストリップは、陰性対照及び/又は陽性対照に対する部位も含みうる。あるいは、対照部位を試験ストリップとは分離されたストリップ上に配置してもよい。 任意で、異なる検出部位は異なる量の、すなわち第1の検出部位ではより多い量の、以降の部位ではより少ない量の固定化された核酸を含んでもよい。試験試料添加の際に検出可能なシグナルを示す部位の数が、試料中に存在するLY6K mRNAの量の定量的指標を提供する。検出部位は、適切に検出可能な任意の形状で構成することができ、典型的には試験ストリップの幅全体にわたる棒状又はドット状の形状である。
本発明のキットは、陽性対照試料又は、LY6K の標準試料をさらに含みうる。本発明の陽性対照試料は、LY6K 陽性の血液試料を採取することによって調製することができ、その後LY6K のレベルをアッセイする。あるいは、精製したLY6K のタンパク質又はポリヌクレオチドを、LY6K を含まない血清に添加して、陽性試料あるいは、LY6K 標準を形成する。本発明において、精製LY6K は組換えタンパク質であってもよい。陽性対照試料のLY6K のレベルは、例えばカットオフ値を上回る。
さらに、本発明は、LY6K遺伝子の発現を検出するための少なくとも1種類の試薬及び、患者由来の生体試料における他の癌関連タンパク質の発現を検出するための1種類以上の試薬を含むキットを提供する。他の癌関連タンパク質を検出するために適した試薬は、ELISAなど、他の癌関連タンパク質に対する抗体を含む。例えば、血清中のCEAのレベルは、提供元の推奨に従って市販の酵素試験キット(HOPE Laboratories, Belmont, CA)でELISAにより測定され、血清中のCYFRA21-1のレベルは市販のキット(DRG, Marburg, Germany)でELISAにより測定された。
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、以下の材料、方法、及び実施例は、本発明の局面を単に例示するものであって、本発明の範囲を限定する意図は全くない。このように、本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実践又は試験において用いることができる。
実施例
実施例1:
材料と方法
細胞株:
この試験で用いた5つのヒトNSCLC細胞株は、3つの腺癌細胞株(ADC;A427、LC319、NCI-H1373)、2つの扁平上皮癌細胞株(SCC;RERF-LC-AI、NCI-H226)(Hammarstrom S. Semin Cancer Biol. 1999 Apr;9(2):67-81.)である。細胞は全て、10%ウシ胎児血清(FCS)を加えた適切な培地中で単層で増殖させ、37℃、5%CO2の加湿空気雰囲気下で維持した。ヒト小気道上皮細胞(SAEC)を、Cambrex Bio Science Inc.から購入した最適培地(SAGM)で生育させた。先にインフォームドコンセントを得て原発性NSCLC及びESCC組織試料を入手した(Taniwaki M, et al, Int J Oncol. 2006 Sep;29(3):567-75.; Yamabuki T, et al, Int J Oncol. 2006 Jun;28(6):1375-84.; Ishikawa N, et al. Cancer Sci. 2006 Aug;97(8):737-45.)。
原発性NSCLC(ADC259例、SCC113例、LCC28 例、ASC13例;男性患者129例、女性患者284例;年齢の中央値64.5、26〜84歳)及び隣接する正常肺組織の合計413例のホルマリン固定試料を、根治目的の手術を受けた患者から臨床病理学的データとともに、先に入手した。
原発性ESCC(女性患者26例、男性患者245例;年齢の中央値61.4±8.1SD、38〜77歳)及び隣接する正常食道組織試料の合計271例のホルマリン固定試料もまた、根治目的の手術を受けた患者から入手した。剖検材料(SCC患者2例)からのNSCLC検体及び5種の組織(心臓、肝臓、肺、腎臓及び精巣)も入手した。
病理学的分類は、国際対癌連合(the Union Internationale Controle Cancer)の分類に基づいて決定した(Travis WD, et al., World Health Organization International Histological classification of tumours 1999.)。全ての臨床材料の試験及び使用は、個別の機関内倫理委員会により承認を受けた。
血清試料:
対照として健常者74例(男性60例、女性14例;年齢の中央値48.0 ± 7.47 SD、33−60 歳)、オーダーメイド医療日本プロジェクト(バイオバンクジャパン)に登録されている、又は広島大学病院に入院している慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する非腫瘍性肺疾患患者65例(女性8例、男性57例;年齢の中央値66.0 ± 5.92 SD、54‐73歳)から、インフォームドコンセントを得て血清試料を入手した。これらの患者は全て、現在及び/又はかつて喫煙者であった(pack-year index (PYI)の中央値[±1SD]55.6±50.1 SD;PYIは1日に消費した煙草の箱数(20本)×年数として定義されている)。
血清試料はまた、NSCLC患者112例(女性40例、男性72例;年齢の中央値66.0 ± 12.0 SD、30‐84歳)及び食道癌患者81例(女性12例、男性69例;年齢の中央値65.0 ± 5.1 SD、37‐74歳)からも入手した。これらNSCLC症例112例はADC85 例とSCC27例を含む。試料は以下の基準に基づいて、試験のために選択された。
(1)患者は最近診断され、治療前であること、及び
(2)それらの腫瘍は肺癌又は食道癌(ステージI‐IV)と病理学的に診断されていること。
血清は診断時に入手され、-150度で保管された。
半定量的RT-PCR:
製造元のプロトコールにしたがってTrizol試薬(Life Technologies, Inc. Gaithersburg, MD)を用い、総RNAを培養細胞と臨床組織から抽出した。抽出したRNAと正常ヒト組織ポリ(A)RNAをDNase I(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)で処理し、オリゴ(dT)12−18プライマー及びSuperScript II逆転写酵素(Life Technologies, Inc.)を用いて逆転写した。半定量的RT-PCR実験のプライマーのヌクレオチド配列は、以下の通りである:
LY6K遺伝子特異的プライマー
5’-ATTCGCTACTGCAATTTAGAGG-3’ (SEQ ID NO: 3) 及び
5’-GTTTAATGCAACAGGTGACAACG-3’ (SEQ ID NO: 4)、
βアクチン(ACTB)特異的プライマー
5’-GAGGTGATAGCATTGCTTTCG-3’ (SEQ ID NO: 5) 及び
5’-CAAGTCAGTGTACAGGTAAGC-3’ (SEQ ID NO: 6)。
全てのPCR反応は、GeneAmp PCR system 9700 (Applied Biosystems, Foster City, CA)で、最初の変性を94℃で2分、94℃で30秒間22サイクル(ACTB)又は30サイクル(LY6K)、58℃で30秒間、72℃で60秒間で行った。
ノーザンブロット解析:
ヒトマルチティッシュブロット(BD Biosciences, Palo Alto, CA)を32P標識PCR産物とハイブリダイズさせた。LY6KのPCR産物はプライマー
5’-AGGGTGACAATAGAGTGTGGTGT-3’ (SEQ ID NO: 7)及び
5’-GTTTAATGCAACAGGTGACAACG-3’ (SEQ ID NO: 4)を用いたRT-PCRによりプローブとして調製した。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション及び洗浄は供給元の推奨に従って行った。ブロットのオートラジオグラフィーは増感スクリーンで‐80度で一週間行った。
RNA干渉アッセイ法:
哺乳類細胞中でsiRNAを合成するように設計された、ベクターに基づくRNA干渉(RNAi)系、psiH1BX3.0は以前に確立された(Suzuki C, et al. Cancer Res. 2003 Nov 1;63(21):7038-41.; Kato T, et al. Cancer Res. 2005 Jul 1;65(13):5638-46.)。
Lipofectamine 2000 (Invitrogen, Carlsbad, CA)30μlを用いて、siRNA発現ベクター10μgを、LY6Kを過剰発現している肺癌細胞株にトランスフェクションした。
トランスフェクションした細胞を適切な濃度のジェネティシン(G418)の存在下で5日間培養し、細胞数及び生存率をギムザ染色及び三連のMTTアッセイ法によって測定した。RNAiの合成オリゴヌクレオチドの標的配列は以下の通りである:
対照1(EGFP:高感度緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、オワンクラゲ(Aequorea victoria)GFPの変異体)、5’-GAAGCAGCACGACTTCTTC-3’ (SEQ ID NO: 8);対照2(スクランブル(SCR):5S及び16S rRNAをコードするユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)葉緑体遺伝子)、5’-GCGCGCTTTGTAGGATTCG-3’ (SEQ ID NO: 9); LY6K siRNA-1(si-LY6K-1)、5’-AACCTGACTGCGAGACAACGA-3’ (SEQ ID NO: 10)( SEQ ID NO: 1の473-493);siRNA-2(si-LY6K-2) 5’-AAGGAGGTGCAAATGGACAGA-3’ (SEQ ID NO: 11) (SEQ ID NO: 1の586‐606)。有効なsiRNA(si-LY6K-2)によるLY6Kタンパク質の下方制御は、2つの対照又はsi-LY6K-1では起こらず、このアッセイ法に用いた細胞株でのウエスタンブロッティングで確認した。
抗LY6Kポリクローナル抗体の調製:
LY6Kに特異的な2つのタイプのウサギ抗体TM38とMB44は、6連ヒスチジン融合ヒトLY6Kタンパク質(それぞれコドン23−109(SEQ ID NO: 18)及び71−204(SEQ ID NO: 19))でウサギを免疫することによって作製し、6連ヒスチジン融合融合タンパク質を結合させたアフィニティーカラム(Affi-gel 10; Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いる標準的なプロトコールにより精製した。ウエスタンブロットにて、NSCLCの組織及び細胞株並びに正常肺組織に由来する溶解物を用い、抗体がLY6Kに特異的であることを確認した。
ウエスタンブロッティング
ECLウエスタンブロッティング分析システム(GE Healthcare Bio-sciences, Piscataway, NJ)を用いた。SDS-PAGEは7.5%ポリアクリルアミドゲルで行った。PAGEで分離されたタンパク質はニトロセルロース膜(GE Healthcare Bio-sciences)へ転写され、ウサギポリクローナル抗ヒトLY6K抗体とともにインキュベートした。ヤギ抗ウサギIgG-HRP抗体(GE Healthcare Bio-sciences)をこれらの実験用の二次抗体とした。
免疫組織化学及び組織マイクロアレイ
腫瘍組織マイクロアレイは、以前に公開されたように、ホルマリン固定されたNSCLC413例、ESCC271例で構築した(Chin SF, et al. Mol Pathol. 2003 Oct;56(5):275-9.; Callagy G, et al. Diagn Mol Pathol. 2003 Mar;12(1):27-34.; Callagy G, et al. J Pathol. 2005 Feb;205(3):388-96.)。簡潔には、サンプリングのための組織領域は、スライドガラス上の対応するHE染色切片との視覚的な整合に基づいて選択した。ドナーの腫瘍塊から採取した3つ、4つ又は5つの組織コア(直径0.6 mm;高さ3-4 mm)を、組織マイクロアレイヤ(Beecher Instruments, Sun Prairie, WI)を用いてレシピエントパラフィンブロック中に配置した。正常組織のコアを各症例から打ち抜き、得られたマイクロアレイブロックの5μm切片を免疫組織化学的分析に用いた。
パラフィンブロック中に埋め込まれた臨床肺癌試料におけるLY6Kタンパク質の状態を調べるため、切片を以下の方法で染色した。簡潔には、内因性のペルオキシダーゼ及びタンパク質のブロッキング後、ウサギポリクローナル抗ヒトLY6K抗体(TM38)を加えた。切片を二次抗体としてのHRP標識抗ウサギIgGとともにインキュベーションした。基質-色素原を加え、検体をヘマトキシリンで対比染色した。
臨床経過観察データに関する予備知識のない独立の研究者3名によってLY6K陽性を半定量的に評価した。LY6K染色の強度は以下の基準によって評価した:強陽性(2+)、腫瘍細胞の50%超における、細胞膜及び細胞質を完全に覆い隠す暗褐色の染色;弱陽性(1+)、腫瘍細胞の細胞膜及び細胞質において感知できる、より弱い程度の褐色;なし(スコア0)、腫瘍細胞における染色が感知できない。検査者が別々に強陽性と定義した場合にのみ、症例を強陽性と確定した。
統計学的解析:
分割表を用いてNSCLC又はESCC患者におけるLY6K発現レベルと臨床病理学的変数の関係を解析した。腫瘍特異的生存曲線は、手術の実施日からNSCLC又はESCCに関連した死亡時まで、又は最後の追跡観察時まで算出した。カプラン・マイヤー曲線を、それぞれの関連変数及びLY6Kの発現について算出した。患者サブグループ内での生存期間の差を、対数順位検定を用いて解析した。
Coxの比例ハザード回帰モデルを用いて単変量解析及び多変量解析を実施し、臨床病理学的変数と癌関連死亡率との関連性を判定した。まず、死亡と、年齢、性別、組織型、pT分類、及びpN分類などの考えられる予後因子との関連性を、一度に一因子を考慮して解析した。次に、後退(段階)法に多変量Cox解析を適用し、P値0.05未満のエントリレベル(entry level)を満たした任意かつ全ての変数と一緒に、LY6Kの発現を常にモデルに強制投入した。モデルに因子を追加し続けため、独立因子はP < 0.05のイグジットレベル(exit level)を超えなかった。
ELISA:
LY6Kの血清レベルは独自に構築したサンドイッチ型ELISAによって測定した。簡潔にいうと、血清中の可溶性LY6K検出のため、96ウェルフレキシブルマイクロタイタープレート(96-well flexible microtiter plate)(439454; NALGE NUNC International, Rochester, NY)を2ng/mlのLY6Kに対する捕捉ポリクローナル抗体(TM38)で一晩コーティングした。ウェルは200μlの1%BSA、5%スクロース、0.05%NaN3を含むPBS(pH7.4)で2時間ブロッキングし、その後1%BSAを含むPBS(pH7.4)中で3倍に希釈した血清試料とともに2時間インキュベートした。0.05%Tween20含むPBS(pH7.4)で洗浄後、ウェルを200ng/mlのビオチン結合ポリクローナル抗LY6K抗体(MB44)とともに2時間インキュベートし、その後にアビジン結合ペルオキシダーゼ(P347; Dako Cytomation, Glostrup, Denmark)とともに基質試薬(R&D Systems)を用いて30分間反応させた。
LY6Kに対するビオチン化標識ウサギポリクローナル抗体(MB44)を調製するため、ビオチン標識用キットNH2(LK03)を提供元のプロトコール(DOJINDO LABORATORIES, Kumamoto, Japan)に従って使用した。着色反応は2N硫酸100μlを加えることによって停止させた。波長450 nmの光度計により、参照波長570 nmとして着色強度を決定した。各プレートの標準曲線は組換えLY6Kタンパク質を参照として用いて作成した。血清中のCEAレベルは、市販の酵素試験キット(HOPE Laboratories, Belmont, CA)で、供給元の推奨に従い、ELISAによって測定した。血清中のCYFRA21-1レベルは、市販のキット(DRG, Marburg, Germany)でELISAによって測定した。
腫瘍群と健常対照群との間のLY6K、CEA及びCYFRA21-1のレベルの違いを、マン・ホイットニーU検定により解析した。LY6K、CEA及びCYFRA21-1のレベルは、受信者動作特性(ROC)曲線解析によりさらに評価して、最適な診断精度及び尤度比のカットオフレベルを判定した。LY6K及びCEA/CYFRA21-1の相関係数はスペルマンの順位相関係数により算出した。有意性はP < 0.05と定義した。
実施例2:
肺及び食道の腫瘍、細胞株並びに正常組織におけるLY6K発現
肺癌及び食道癌の診断バイオマーカー及び/又は治療剤開発の標的として、新規分子を探索するために、大部分のNSCLCでトランス活性化されている候補遺伝子を探索するcDNAマイクロアレイ解析を用いた。スクリーニングされた27,648遺伝子のうち、試験した肺癌及び食道癌試料の大部分で高度に発現していたLY6K転写物が同定された。そのトランス活性化は、さらに半定量的RT-PCR実験により、NSCLC組織10例中9例、ESCC組織8例中8例において確認された(図1Aと1B)。
その後、ヒトLY6Kに対して特異的なウサギポリクローナル抗体を産生し、NSCLC組織の4つの典型的な対と4種の肺癌細胞株(2種のLY6K陽性細胞株と2種のLY6K陰性細胞株)におけるNSCLC試料のLY6Kタンパク質の発現をウエスタンブロット解析により確認するために用いた(図1C)。4種の肺癌細胞株(LC319、NCI-H1373、NCI-H226及びA427)における内在LY6Kの細胞内局在を調べるため、免疫蛍光分析を実施し、LY6Kが粒状で腫瘍細胞の細胞質に局在することを見出した(図1D左パネル)。
LY6KはGPIアンカー型細胞表面タンパク質をコードし、いくつかのGPIアンカー型タンパク質は細胞外間隙に分泌されることが既知であるため(Nakatsura T, et al. Biochem Biophys Res Commun. 2003 Jun 20;306(1):16-25.)、肺癌細胞株の培養液中のその存在はELISAによって測定された。培養液中で検出可能なLY6Kの量は、半定量的RT-PCRとウエスタンブロット解析で検出されたLY6Kの発現レベルと一致していた(図1D、右パネル)。
プローブとしてLY6KcDNA断片を用いたノザンブロット解析は、分析を行った23
例の正常ヒト組織の中で精巣でのみに高度に発現する約1.8 kbの転写物を同定した(
図2A)。次に、抗LY6K抗体を用いて、LY6Kタンパク質の発現を、肺癌とともに、5種の正常組織(心臓、肝臓、肺、腎臓、精巣)で調べ、陽性LY6K染色が精巣及び肺腫瘍組織で認められる一方、前述の4種の組織ではほとんど検出されないことを見出した(図2B)。
実施例3
NSCLC及びESCC患者におけるLY6K過剰発現と臨床転帰不良との関連
LY6Kの生物学的及び臨床病理学的意義を検証するため、LY6Kタンパク質の発現を、根治的切除手術を受けたNSCLC413例及びESCC271例を含む組織マイクロアレイによって調べた。LY6K染色は腫瘍細胞の細胞膜及び細胞質で主に観察されたが、周囲の正常組織ではほとんど検出されなかった(図3A、C)。
LY6Kの発現パターンは、なし/弱(スコア0〜1+)から強(2+)の範囲で組織アレイ上で分類した。陽性染色は肺ADC259例中224例(86.5%)、肺SCC113例中104例(92.0%)、肺LCC28例中24例(85.7%)、肺ASC13例中13例(100%)で認められ、一方同じ組織の任意の正常部分では染色は認められなかった。分析されたNSCLC413例のうち、LY6Kは136例(32.9%、スコア2+)で強く染色され、229例(55.5%、スコア1+)で弱く染色され、48例(11.6%、スコア0)では染色が認められなかった(詳細は表2Aに示す)。腫瘍が強いLY6K発現を示したNSCLC患者は、LY6K発現が「なし/弱」の患者と比較して短い腫瘍特異的生存を示した(対数順位検定P=0.0026、図3B)。
また、単変量解析を用いて、患者の予後と、年齢(<65 vs 65≧)、性別(女性vs男性)、組織学的型(ADC vs 非ADC)、pT分類(T1、T2 vs T3、4)、pN分類(N0 vs N1、N2)、及びLY6Kの状態(0, 1+ vs 2+)を含む他の因子との関連性を評価した。それらのパラメータの中では、LY6Kの状態(P=0.0028)、年長であること(P=0.0081)、男性であること(P=0.0022)、非ADC組織学的分類(P=0.0090)、進行したpTステージ(P<0.0001)、進行したpNステージ(P<0.0001)は、予後不良に有意に関連していた(表2B)。予後因子の多変量解析では、LY6Kの強発現、年長であること、男性であること、高いpTステージ、高いpNステージが独立した予後因子であった(P=0.0201、<0.0001、0.0166、0.0002、<0.0001、それぞれ表2B)。
陽性染色は食道癌271例中257例(94.8%)で認められ、同組織のいかなる正常部分でも染色は認められなかった。LY6Kは176例(649%、スコア2+)で強く染色され、81例(29.9%、スコア1+)で弱く染色され、14例(5.2%、スコア0)で染色されなかった(詳細は表3Aに示す)。ESCC患者の生存期間中央値は、LY6Kの高い発現レベルと一致して有意に短かった(対数順位検定P=0.0455、図3D)。
また、単変量解析を用いて、ESCC患者の予後と、年齢(<65 vs 65≧)、性別(男性 vs 女性)、pTステージ(腫瘍の深さ;T1+T2 vsT3+T4)、pNステージ(節の状態;N0 vs N1)及びLY6Kの状態(スコア0, 1+ vs 2+)を含む幾つかの因子との関連性を評価した。それらのパラメータの中で、LY6Kの状態(P=0.0467)、男性であること(P=0.031)、進行したpTステージ(P<0.0001)及び進行したpNステージ(P<0.0001)は予後不良と有意に関連していた(表3B)。
多変量解析では、LY6Kの状態は、この試験に登録した、手術を受けたESCC患者に関する独立した予後因子として、統計学的に有意なレベルには届かなかったが(P=0.4479)、性別とともにpT及びpNステージは、食道癌におけるこれらの臨床病理学的因子に対するLY6K発現の関連性を示唆した(それぞれP=0.0138、0.002、<0.0001、表3B)。
(表2A)NSCLC組織におけるLY6K陽性と患者の特徴との関連性(n=413)
(表2B)NSCLC患者における予後因子のCox比例ハザードモデル解析
(表3A)食道癌組織におけるLY6K陽性と患者の特徴との関連性(n=271)
(表3B)食道癌患者における予後因子のCox比例ハザードモデル解析
実施例4:
NSCLC又はESCC患者におけるLY6Kの血清中レベル
インビトロでの知見からLY6Kが細胞外間隙へ分泌されることが示唆されていたので(図1D右パネル)、新規血清バイオマーカーとして実現可能かどうか評価するため、NSCLC又はESCCを有する患者の血清中にLY6Kが分泌されているかどうかを調べた。ELISA実験によって、肺癌又は食道癌患者193例の大多数の血清学的試料中でLY6Kが検出された。
肺癌患者112例の血清LY6K平均(±1SD)は331.3±739.3 pg/ml及びESCC患者81例の血清LY6K平均は209.3±427.4 pg/mlであった。対照的に、健常者74例の血清LY6Kレベル平均(±1SD)は34.2±65.3 pg/ml、現在及び/又はかつて喫煙者であったCOPD患者65例は54.4±233.8 pg/mlであった。
血清中LY6Kタンパク質レベルは、健常者よりも肺癌又は食道癌患者において有意に高く(肺ADC患者と健常者間、P<0.0001;肺SCCと健常者間、P=0.0145;ESCCと健常者間、P<0.0001;マン・ホイットニーU検定)、健常者とCOPD患者の差異は有意でなかった(P=0.5325;図4A)。
肺癌の組織型にしたがうと、LY6Kの血清レベル平均(±1SD)はADC患者85例で324.1±737.4 pg/ml、SCC患者27例で354.1±758.8 pg.mlであり;2つの組織型の間の差異は有意でなかった。初期段階の腫瘍を有する患者でさえ、血清LY6Kが高レベルで検出された(図4B)。肺癌又は食道癌患者193例及び健常ドナー74例のデータを受信者動作特性(ROC)曲線を用いて表し(図5A、B)、このアッセイにおけるカットオフレベルは、LY6Kに対する最適な診断精度及び尤度比(最小の偽陰性と偽陽性の結果)を提供するように設定され、感度33.2%(64/193)、特異度4.1%(3/74)で157.0 pg/mlであった。
腫瘍組織学にしたがうと、血清LY6K陽性症例の割合は、ADCに対して31.8%(85例中27例)、SCCに対して40.7%(27例中11例)、及びESCCに対して32.1%(81例中26例)であった。血清LY6K陽性症例の割合は、COPDに対して9.2%(65例中6例)であった。次に、術前及び術後(手術後二ヶ月)の対の肺癌及びESCC患者由来の血清試料を用いて、同一患者の血清LY6KレベルをモニターするためにELISA実験を行った。血清LY6K濃度は原発性腫瘍の外科的切除後、有意に減少した(図8A)。血清LY6K値をさらに、血清が手術前に回収されたNSCLC症例16例の同セットの原発性腫瘍におけるLY6K発現レベルと比較した(LY6K陽性腫瘍患者8例とLY6K陰性腫瘍8例)。血清LY6Kレベルは原発性腫瘍におけるLY6Kの発現レベルと良い相関を示した(図8B)。この結果は、独立して、初期ステージの癌の検出と疾患の再発のモニタリングのためのバイオマーカーとしての、血清LY6Kの高い特異性と大きな可能性を支持する。
実施例5
腫瘍マーカーとしてのCEA及びCYFRA21-1とLY6Kとの比較
血清中LY6Kレベルを腫瘍検出バイオマーカーとして用いることが実現可能かどうかを評価するために、2種類の従来型の腫瘍マーカー(NSCLC患者ではCEAとNYFRA21-1)の血清中レベルを、癌患者と対照の血清試料の同一のセットを用いて、ELISAにより測定した。ROC解析により、NSCLC検出のためのCEAカットオフ値は2.5 ng/ml(感度39.8%、特異度94.6%;図5A)に決定した。
図5Aに示すように、血清LY6KとCEA値の間の相関係数は有意ではなく(スペルマンの順位相関:rho=0.029、P=0.7583)、血清中の両マーカーの測定はNSCLCの全体的な検出感度を61.6%まで改善することができることを示している。健常ボランティア(対照群)の中での2種類の腫瘍マーカーのいずれかに対する偽陽性結果は9.5%を占め、一方同じ対照群におけるCEAとLY6Kの偽陽性率はそれぞれ4.1%と5.4%であった。腫瘍組織学によると、腫瘍検出マーカーとしての血清LY6KとCEAの組み合わせの感度はADCに対して64.7%、SCCに対して51.6%であり、ADC検出にこの組み合わせが有効であることが示唆された。
NSCLC患者のROC解析はCYFRA21-1のカットオフ値を、感度39.8%、特異度97.2%で2.0 pg/mlと決定した(図5B)。また、血清中LY6K値とCYFRA21-1値の相関係数は有意ではなく(スペルマン順位相関:rho=0.115、P=0.2165)、両マーカーの血清レベルの測定は、NSCLCの検出の感度全体を59.8%まで改善することができることを示した;NSCLC診断のためのCYFRA21-1のみの感度は39.8%であった。健常ボランティア(対照群)の間の2種類の腫瘍マーカーのいずれかに対する偽陽性例は6.8%であり、同対照群におけるCYFRA21-1の偽陽性率は2.7%であった。腫瘍組織学によると、腫瘍検出のための血清中LY6KとCYFRA21-1の組み合わせの感度は、ADCに対して56.5%、SCCに対して70.4%であり、SCC検出に対するこの組み合わせの有用性を示した。
図6A(左及び中央パネル)に示すように、血清中CEAとCYFRA21-1値の間の相関係数は有意であり(スペルマン順位相関:rho=0.355、P=0.0002)、一方、血清中LY6KとCEA値の間の相関は有意でなく(スペルマン順位相関:rho=0.021、P=0.8275)、血清中の両マーカーの測定はNSCLCの検出の感度全体を61.6%まで改善できることを示した。健常ボランティア(対照群)の間の2種類の腫瘍マーカーのいずれかに対する偽陽性は9.5%であり、同対照群におけるCEAとLY6Kの偽陽性率はそれぞれ4.1%と5.4%であった。腫瘍組織学によると、腫瘍検出マーカーとしての血清中LY6KとCEAの組み合わせの感度は、ADCに対して64.7%、SCCに対して51.6%であり、ADC検出に対するこの組み合わせの有用性を示唆した。
NSCLC患者に対する血清中LY6KとCYFRA21-1値の間の相関係数は有意ではなく(スペルマン順位相関:rho=0.119、P=0.2114;補足図6A、右パネル)、両マーカーの血清レベルの測定はまた、NSCLCの検出の感度全体を59.8%に改善することを示した;NSCLCの診断に対してCYFRA21-1単独の感度は33.9%であった。健常ボランティア(対照群)の間の2種類の腫瘍マーカーの偽陽性例は6.8%であり、同対照群におけるCYFRA21-1に対する偽陽性率は2.7%であった。腫瘍組織学によると、腫瘍検出に対する血清LY6KとCYFRA21-1の組み合わせの感度は、ADCに対して56.5%、SCCに対して70.4%であり、SCC検出に対してこの組み合わせの有用性を示した。CEAとCYFRA21-1の両方とLY6Kの組み合わせは、CEAとCYFRA21-1の両方が陰性であるNSCLC患者54例中21例(38.9%)がLY6K陽性として診断されたことを示した(図6B)。
CEAとCYFRA21-1の血清レベルは、ESCC患者由来の血清試料の同じセットで、ELISAによってさらに測定された(図7A)。ESCC患者に対する血清中LY6KとCEA値の間の相関係数は有意ではなく(スペルマン順位相関:rho=0.153、P=0.0781;図7A中央パネル)、CEA単独の感度が18.0%である一方、血清における両マーカーの測定はESCCの検出の感度全体を44.3%まで改善することを示した。ESCC患者に対する血清LY6KとCYFRA21-1値の間の係数もまた有意ではなかった(スペルマン順位相関:rho=0.034、P=0.6989;図7A右パネル)。LY6KとCYFRA21-1の両方を組み合わせたアッセイはESCC患者の52.5%を陽性として分類したが、CYFRA21-1単独の感度は23.0%であった。LY6KとCEA及びCYFRA21-1の両方の組み合わせは、CEAとCYFRA21-1の両方に対して陰性であったESCC患者40例のうち16例(40.0%)がLY6K陽性として診断されることを示した(図7B)。これらのデータは、血清LY6Kレベルはまた、CEAとCYFRA21-1の組み合わせによって診断できない癌患者の一定割合において高いことを明らかに示唆している。
実施例6
NSCLC細胞及び食道癌細胞の増殖におけるLY6K低分子干渉RNAの効果
LY6Kが肺癌細胞の増殖又は生存において役割を果たしているかどうかを評価するために、2種類の異なる対照プラスミド(EGFR及びSCRに対するsiRNA)とともに、LY6Kに対するsiRNA(si-LY6K-1及び-2)を発現するプラスミドを設計、構築し、肺癌細胞(RERF-LC-AI及びLC319)と食道癌細胞(TE8)へトランスフェクションして、内在性LY6Kの発現を抑制した(RERF-LC-AI及びTE8の代表的データを図9に示す)。si-LY6K-2をトランスフェクションした細胞におけるLY6Kタンパク質の量は、2種類の対照siRNAのいずれか又はsi-LY6K-1をトランスフェクションした細胞と比較して有意に低下した(図9A及びD)。LY6Kのタンパク質レベルに対するその抑制効果と一致して、トランスフェクションしたsi-LY6K-2は、コロニー形成アッセイ(図9B)及びMTTアッセイ(図9C及びE)によって測定されたコロニー数、細胞生存数の有意な減少をもたらした。
考察
本明細書で示されているように、LY6Kは検討した正常組織の中で精巣にのみ発現しており、NSCLC患者由来の外科的切除試料の88.2%、ESCC患者由来の外科的切除試料の95.1%で高度に発現している。LY6K過剰発現は、短い癌特異的生存期間と関連している。siRNAによるLY6K発現の抑制は、LY6Kを発現する肺癌細胞及び食道癌細胞の増殖を効果的に抑制する。これら結果を組み合わせると、LY6Kがこれら腫瘍の高度に悪性の表現型と関連している可能性が高いことを強く示唆する。LY6Kは癌-精巣抗原であると考えられるため、LY6Kは癌免疫療法に適した標的であると考えられる。
LY6Kタンパク質はまた、LY6Kを強く発現している肺癌又は食道癌患者由来の血清中に分泌されることが見出された。血清LY6Kの濃度は原発性腫瘍の外科的切除後に劇的に減少し、血清LY6Kのレベルは同患者の原発性腫瘍組織におけるLY6Kの発現レベルとよい相関を示したという事実により、血清LY6Kが陽性であることは、原発性腫瘍の存在と非常に相関するようにみえる。興味深いことに、血清LY6KとCEA又はCYFRA21-1の値の相関係数は有意ではなく、一方血清CEAとCYFRA21-1の値の相関係数は有意であった。実際、CEA及びCYFRA21-1の両方に対して陰性であったNSCLC及びESCC患者の38.9-40.0%は、LY6Kに対して陽性であると診断された(図6B及び7B)。LY6KとCEA/CYFRA21-1の両方を組み合わせたアッセイは感度が増大しており、健常ボランティアの6.8-9.5%が陽性として誤って診断されたが、NSCLC患者の64.7-70.4%、ESCC患者の52.5%を陽性と診断した。一方、従来の血清腫瘍マーカーであるCEAとCYFRA21-1の組み合わせの、同一セットの血清試料における感度は、NSCLCに対して51.8%(ADCに対して53.0%、SCCに対して48.1%)及びESCCに対して34.4%であり、健常ボランティア(対照群)の2種類の腫瘍マーカーのいずれかに対する偽陽性例は6.8%であった(図6B及び7B)。 種々の臨床段階にわたる血清試料のより大量なセットに関するさらなる検証が必要であるが、本明細書に提供されたデータは、肺癌及び食道癌の血清学的/組織化学的バイオマーカーとしてのLY6K自体の臨床適用の有望性を十分に示している。また、LY6Kの活性化が、頚部癌などの一連の他の型の癌の半分以上で観察されたことに注目すべきであり(データ示さず)、広範囲の腫瘍に対するその診断及び治療適用を示唆している。
産業上の利用可能性
レーザーキャプチャー・ダイセクションとゲノム全体にわたるcDNAマイクロアレイとの組み合わせを通して得られた、本明細書記載の肺癌及び/又は食道癌の遺伝子発現解析により、癌の予防と治療の標的としてのLY6K遺伝子が同定された。LY6Kの発現に基づいて、本発明は、癌、特に肺癌及び/又は食道癌を同定及び検出するための分子診断マーカーを提供する。
本明細書記載の方法はまた、肺癌及び/又は食道癌などの癌の予防、診断及び治療のためのさらなる分子標的の同定にも有用である。本明細書において報告したデータは、肺癌及び/又は食道癌の包括的な理解を高め、新規診断戦略の開発を促進し、かつ治療薬及び予防剤の分子標的の同定のための手がかりを提供する。そのような情報は、肺及び/又は食道腫瘍形成のより深い理解に寄与し、かつ肺癌及び/又は食道癌を診断、治療する、並びに究極的には予防するための新規戦略を開発するための指標を提供する。
さらに、本明細書に記載の方法は、肺癌及び食道癌を含む癌の診断においても、並びにそれらの疾患を有する患者の予後予測においても有用である。また、本明細書において報告したデータは肺癌及び食道癌を含む癌に対する治療的アプローチを開発するための有用な候補も提供する。
本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、その全文が参照により組み入れられる。しかしながら、本明細書において、本発明は先願発明による開示が先行するために権利を与えられないと解釈されるべきではない。本発明は詳細に、その特定の実施態様に関して記載されているが、前述の記載は事実上例示的及び説明的なものであって、本発明及びその好ましい態様を例示することを意図するものと理解されるべきである。日常的な実験を通して、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正がそこでなされ得るということが当業者には明らかであると考えられる。当業者により理解されるように、さらなる利点と特徴が、合理的な等価物により決定されるべき特許請求の範囲とともに、以下に提出した特許請求の範囲から明白となるであろう。従って、本発明は上記の記載によって規定されるのではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって規定されることが意図される。