JP2010513863A - スプリアス信号成分の抑制を伴う磁気センサ装置 - Google Patents

スプリアス信号成分の抑制を伴う磁気センサ装置 Download PDF

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Abstract

本発明は、磁化粒子3を検出する磁気センサ装置であって、第1周波数fの励起電流Iにより駆動される磁界発生器1,1′(例えば、導線)と、測定信号UGMRを発生させる第2周波数fのセンサ電流Iにより駆動される磁気センサ要素2(例えば、GMR抵抗)とを有する装置に関する。所定周波数Δfを有する前処理信号uが測定信号から生成され、評価ユニット10は、この前処理信号から、サンプルチェンバでの磁化粒子の存在に依存しないスプリアス成分Uを分離する。スプリアス成分は、特に、寄生(誘導性又は容量性)クロストークとともに磁気センサ要素の自己磁化Hによって生ずる。更に、前処理信号での未知の可変位相シフトφSPは、スプリアス成分と粒子依存の目標成分との間の比を変化させることによって決定され得る。この変化は、例えば、最適化段階OSで励起電流がバイパス抵抗R,R′を通る場合及び/又は負荷キャパシタが磁界発生器と磁気センサ要素との間に挿入される場合に達成され得る。決定される位相シフトは、スプリアス成分が抑制されるように復調信号udemの位相を調整するために使用され得る。

Description

本発明は、磁化した粒子をサンプルチェンバで検出する方法及び磁気センサ装置に関する。更に、本発明は、かかる装置の使用に関する。
国際公開第2005/010543(A1)号パンフレット(特許文献1)及び国際公開第2005/010542(A2)号パンフレット(特許文献2)から、磁気センサ装置が知られる。この装置は、例えば、磁気ビーズによりラベルを付された(生体)分子の検出のためのマイクロ流体バイオセンサで使用される。マイクロセンサ装置は、磁界の発生のためのワイヤーと、磁化ビーズによって発生する漂遊磁界の検出のための巨大磁気抵抗デバイス(GMR)とを有するセンサユニットの配列を設けられている。その場合に、GMRの抵抗は、センサユニットの近くにあるビーズの数を示す。
国際公開第2005/010543(A1)号パンフレット 国際公開第2005/010542(A2)号パンフレット
上記のようなバイオセンサに伴う問題は、測定信号が、磁化粒子の存在とは無関係であるために測定結果の精度を悪化させる成分を有することである。
この状況に基づいて、本発明は、磁気センサ装置による測定の精度を改善する手段を提供することを目的とする。
上記目的は、請求項1に記載の磁気センサ装置、請求項2に記載の方法、及び請求項12に記載の使用によって達成される。好ましい実施形態は従属請求項で開示される。
本発明に従う磁気センサ装置は、磁化された粒子、例えば、サンプル中の対象分子にラベルを付す磁気ビーズの検出に役立つ。当該磁気センサ装置は下記の構成要素を有する。
− 検出されるべき粒子が供給され得るサンプルチェンバ。このサンプルチェンバは、通常、サンプルを吸収することができるゲルのような何らかの物質により満たされたキャビティ、又は空のキャビティである。それは、オープンキャビティ、クローズドキャビティ、又は流体接続経路によって他のキャビティへ接続されているキャビティであってよい。
− 前記サンプルチェンバにおいて(少なくともどこかで)磁気励起場を発生させる第1周波数を有する励起電流により駆動される少なくとも1つの磁界発生器。それは、「信号が或る周波数を有する」ことをここでは意味し、以下で、その信号のフーリエスペクトルはその周波数について非零であるという事実を端的に表す。磁界発生器は、特に、マイクロ電子センサの基板上の少なくとも1つの導線によって実現されてよい。
− 測定信号を発生させる第2周波数を有するセンサ電流により駆動される少なくとも1つの関連する磁気センサ要素。磁気センサ要素は、それが、前記磁界発生器の前記磁気励起場によって引き起こされる効果が届く範囲にあるという点で、前記磁界発生器と関連する。磁気センサ要素は、特に、コイル、ホールセンサ、平面ホールセンサ、フラックスゲートセンサ、SQUID(超電導量子干渉素子)、磁気共鳴センサ、磁気制限センサ、又は特許文献1若しくは2に記載されるような磁気抵抗センサ、特に、GMR、AMR(Anisotropic Magneto Resistance)若しくはTMR(Tunnel Magneto Resistance)を有してよい。
励起電流及びセンサ電流は、通常、何らかの電源ユニット、例えば定電流源、によって供給される。
− 少なくとも1つの所定周波数を有する前処理された信号を前記測定信号から発生させる信号処理回路。信号処理回路は、前記測定信号の全スペクトルから特定の周波数を選択する機能を実施する1又はそれ以上の帯域通過フィルタ若しくは復調手段を有する。この選択された周波数は、前記第1周波数及び前記第2周波数に関連する。かかる周波数フィルタリングによって、磁気粒子の存在とは無関係である多数の外乱が解消され得る。更に、信号処理回路は、通常、増幅器を有する。
− 定義により前記サンプルチェンバでの磁化した粒子の存在に依存しない少なくとも1つの“スプリアス成分”を前記前処理された信号から分離する評価ユニット。評価ユニットは、適切なソフトウェアとともに専用のハードウェアによって及び/又は何らかのマイクロコンピュータシステムによって実現されてよい。それは、望ましくは、測定信号を受信するために、有線で前記磁気センサ要素へ結合される。前記測定信号からのスプリアス成分の“分離”は、特に、スプリアス成分が前記評価ユニットによって抑制されることを意味する。これにより、前記評価ユニットの出力は、前記スプリアス成分を伴わない測定信号である。なお、分離は、また、前記スプリアス成分が分離又は決定されて、更なる処理に使用されることも意味する。
記載される磁気センサ装置は、(i)励起電流及びセンサ電流について夫々第1周波数及び第2周波数を用いること、(ii)所定周波数を有する前処理信号を測定信号のスペクトルから選択すること、及び(iii)磁化された粒子の存在とは無関係であるスプリアス成分を前処理信号で分離することによって、その出力についてサンプルチェンバ中の磁化された粒子の量、すなわち、関心のある値との高い相関性を達成する。具体的に、最後の処理ステップは精度の更なる改善を提供する。これは、ある周波数帯域の選択が、測定信号のうち粒子に関係する成分を粒子に無関係の外乱から分離するには十分でないという事実に対処することによる。
本発明は、更に、磁気センサ装置(特に、前記磁気センサ装置)によるサンプルチェンバでの粒子の決定のための方法を有する。当該方法は、下記のステップを有する。
− 第1周波数を有する励起電流により駆動される磁界発生器により前記サンプルチェンバで磁気励起場を発生させる段階。
− 第2周波数を有するセンサ電流により駆動される磁気センサ要素により測定信号を発生させる段階。
− 少なくとも1つの所定周波数を有する前処理された信号を信号処理回路により前記測定信号から発生させる段階。
− 前記サンプルチェンバでの磁化した粒子の存在に依存しないスプリアス成分を評価ユニットにより前記前処理された信号から分離する段階。
当該方法は、一般的な形で、上述されたような磁気センサ装置により実行され得るステップを有する。従って、当該方法の詳細、利点及び改善に関する更なる情報については、上記記載が参照される。
以下、本発明の好ましい実施形態を、提案される磁気センサ装置及び方法の両方に関して記載する。
従って、前記前処理された信号に含まれる前記所定周波数は、特に、前記励起電流の前記第1周波数と前記センサ電流の前記第2周波数との間の差分であってよい(励起電流及びセンサ電流が複数のこのような第1及び第2の周波数を有する場合に、対応する数の周波数差分が所定周波数として使用されてよい。)。解析が示すように、前記第1周波数と前記第2周波数との間の差分は、前記サンプルチェンバでの磁化した粒子の存在を反映する前記測定信号の成分に関連する。
磁気センサ装置の特定の具体的設計について、前記前処理された信号の組成は、解析されて、特定の物理的効果によるものと考えられ得る。1つのこのような場合に、前記前処理された信号は、前記磁気励起場によって励起される前記サンプルチェンバ中の粒子の磁気反応場による“目標成分”を有する。更に、前記前処理された信号は、前記目標成分と同じ周波数であるが、該目標成分に対して明確な位相シフトを有するスプリアス成分を有する。通常、かかる位相シフトは、特定の物理的効果によって又は当該磁気センサ装置での特定の電気的成分の存在によって導入される。位相シフトは、特に、約90度の値を有し、目標成分と同相である復調信号により前記測定信号を復調することによって前記スプリアス成分を相殺することを可能にする。
望ましくは上記実施例と組み合わせて実現される本発明の他の特定の実施例で、前記スプリアス成分は、前記磁界発生器と前記磁気センサ要素との間の容量性及び/又は誘導性のクロストークとともに前記磁気センサ要素の自己磁化によって発生する。この自己磁化は(前記センサ電流の)前記第2周波数に関連し、寄生クロストークは(前記励起電流の)前記第1周波数に関連する場合に、これら2つの効果は、磁気反応場(第1周波数)及びセンサ電流(第2周波数)を組み合わせて生成される粒子依存の目標成分と同じ周波数を有する前記測定信号のスプリアス成分を発生させる。従って、かかるスプリアス成分は、簡単な周波数フィルタリングによっては抑制され得ず、前記評価ユニットでの複雑な処理を必要とする。図面を参照してより詳細に説明されるように、この処理は、前記スプリアス成分と前記目標成分との間に存在する(一定の)位相シフトに基づいてよい。
前記スプリアス成分の分離/抑制は、当該スプリアス成分と関心が持たれている目標成分との間に一定の位相差がある場合に、適切な復調信号によって容易に達成され得ることは既に述べられた。しかし、実際には、この簡単なアプローチは、前記前処理された信号が(前記所定周波数を有する成分で)可変な未知の位相シフトを有するという事実によって妨げられる。かかる可変位相シフトは、例えば、温度の影響、エージング、電子部品の製造ばらつき等に起因する。それは、どのくらいの比率で復調信号が目標信号及びスプリアス成分を夫々有するのかが知られていないために、一定の位相を有する単純な復調信号の使用を事実上役に立たなくする。
上記の状況を扱うために、前記評価ユニットは、随意的に、前記前処理された信号に存在する前記可変な位相シフトを決定する位相推定器を有してよい。次いで、前記可変な位相シフトの実際の値の認識は、例えば、復調信号を然るべく調整するために使用されてよい。
本発明の更なる発展において、当該磁気センサ装置は、前記スプリアス成分の相対的な大きさを変化させるよう前記評価ユニットによって選択的にアクティブにされ得る基準回路を有する。前記前処理された信号の前記スプリアス成分及び目標成分の間の比において結果として得られる変化は、これらの成分をそれらの重ね合わせから、すなわち、前記前処理された信号から個別に決定するよう前記評価ユニットによって利用され得る。更に、このアプローチは、信号処理回路によって導入される可能な位相シフトに関する情報を暗に提供する。
上記アプローチの1つの特定の実施例で、前記基準回路はバイパス抵抗を有し、前記基準回路がアクティブにされる場合に、前記バイパス抵抗を介して前記励起電流は前記磁界発生器をバイパスすることができる。前記磁界発生器からの前記励起電流の結果として得られる除去は、磁気励起場の発生を中止し、従って、前記前処理された信号の粒子依存の目標成分を零にする。このことは、明らかに、前記スプリアス成分を決定することを可能にする。
他の実施例で、前記基準回路は、前記磁界発生器及び前記磁気センサ要素を結合するキャパシタを有する。従って、前記キャパシタは、人為的な容量結合を導入し、かかる容量結合に起因する又はこれと同じようであるスプリアス成分を増幅する。
更なる他の実施例で、前記基準回路は、前記磁気センサ要素によって検出され得る磁気クロストーク場を発生させる少なくとも1つの付加的な磁界発生器を有する。かかる磁気クロストーク場が存在する場合に、対応する目標成分と同相である人為的な磁気クロストーク成分が導入されて、関連するスプリアス成分の相対的な大きさを小さくする。
本発明は、更に、分子診断、生体サンプル解析、及び/又は化学サンプル解析、特に、小分子の検出のための前記磁気センサ装置の使用に関する。分子診断は、例えば、対象分子に直接的に又は間接的に付着した磁気ビーズを用いて達成されてよい。
本発明のこれら及び他の様相は、以下で記載される実施形態から明らかであり、これらを参照して説明される。これらの実施形態は、一例として、添付の図面を用いて記載される。
本発明の第1実施例に従ってバイパス抵抗を有する磁気センサ装置の回路図を示す。 本発明の信号処理アプローチに関連する数式をまとめる。 複素平面においてΔfでの前処理測定信号の成分について最適化段階の前の状況を示す。 複素平面においてΔfでの前処理測定信号の成分について目標成分が零である最適化段階の間の位相シフトの決定を示す。 複素平面においてΔfでの前処理測定信号の成分について復調信号が適応された後の次なる測定段階を示す。 本発明の第2実施例に従って付加的なキャパシタを有する磁気センサ装置の回路図を示す。 本発明の第3実施例に従ってクロストーク発生ワイヤーを有する磁気センサ装置の断面を示す。
図中同じ参照番号は、同一の又は対応する構成要素を参照する。
図1は、サンプルチェンバでの磁気的に相互に作用する粒子(例えば、超常磁性ビーズ3)の検出のためのバイオセンサとして特定用途での本発明に従うマイクロ電子磁気センサ装置を表す。磁気抵抗バイオチップ又はバイオセンサは、感度、選択性(specificity)、一体化、使用の容易性、及び費用に関して、生体分子診断のための有望な特性を有する。かかるバイオチップの例は、国際公開第2003/054566号、国際公開第2003/054523号、国際公開第2005/010542(A2)号、国際公開第2005/010543(A1)号、及び国際公開第2005/038911(A1)号に記載されている。これらの文献は、参照により本願に援用される。
図1に示される磁気センサ装置は、少なくとも1つの磁界発生器を有する。この磁界発生器は、基板(図示せず。)上の導線1として実現されても、あるいは、センサチップの外に配置されてもよい。磁界発生器1は、電流源4によって、隣接するサンプルチェンバで交流外部磁界Hを発生させるよう第1周波数fの正弦波励起電流Iにより駆動される。励起電流Iは、複素表現及び(一定の実数)振幅Iexを用いて図2の式(1)で表現される。図1は、更に、設計がマルチワイヤー状態へ容易に拡張され得ることを表すよう、第2の電流源4′によって駆動される第2の磁気励起ワイヤー1′を示す。
発生した磁気励起場Hは、サンプルチェンバ内のビーズ3を磁化する。ここで、かかるビーズ3は、例えば、関心のある(生体)分子のラベルとして使用されてよい(更なる詳細については、先行技術文献を参照されたし。)。次いで、ビーズ3によって生成される磁気反応場Hは、直ぐ近くの巨大磁気抵抗(GMR)センサ要素2の電気的抵抗に(励起場Hとともに)作用する。
磁気反応場Hを測定するために、周波数fの正弦波センサ電流Iが更なる電流源5によって生成され、GMRセンサ要素2を通って導かれる。このセンサ電流Iは、複素表現で(一定の実数)振幅Iにより式(2)において表現される。
次いで、GMRセンサ2の両端で測定され得る電圧uGMRは、GMRセンサ2の抵抗、ひいては、それが受ける磁界を示すセンサ信号を提供する。
図1は、更に、励起ワイヤー1及び1′とGMRセンサ2との間の寄生容量結合をキャパシタCpar及び破線によって示す。励起ワイヤー1及び1′とGMRセンサ2との間のこの容量結合及び/又は付加的な誘導結合は、測定電圧uGMRのクロストーク成分uと、GMRセンサ2を通る関連する付加的なクロストーク電流Iとを引き起こす。クロストーク電流Iは励起電流Iに比例するが、90度だけ位相がずれている。クロストーク電流I及びセンサ電流Iはともに、GMRセンサ2を通る総電流IGMRを生ずる。これらの電流の対応する数学的記述は、式(3)及び(4)で与えられる。ここで、αは定数である。
図1は、更に、総電流IGMRが、GMRセンサ2に作用する磁界Hを伴う自己磁化を引き起こすことを示す。式(5)は、GMRセンサ2が受ける総磁界HGMRを表す。ここで、β、γ及びεは定数であり、Bは、(表面でビーズは一様に分布すると仮定して、)期待されるセンサ表面のビーズ密度である。
式(6)は、GMRセンサ2の全体抵抗RGMRを、GMR要素2に広がる総磁界HGMRに対してセンサ利得sを介して依存する、定数(オーム)項R及び変数項ΔRの和として表す。
式(7)は、GMRセンサ2によって生成され、信号処理回路20(図1)によって処理される測定信号uGMRを与える。ここで、μ、a、a、a、a、a、aは定数である。この測定信号uGMRは、GMRセンサ2の両端での(オームの)電圧降下と、上記の付加的なクロストーク電圧uとから成る。式(7)から明らかなように、測定信号uGMRは、励起電流I、センサ電流I及び式(3)で定義される“直交電流”Iに比例する幾つかの成分を有する。式(1)乃至(3)及び三角恒等式を用いて、これらの成分が特定の周波数に対応することが示され得る。具体的に、積I・I及びI・Iは、差分周波数Δf=(f−f)にある周波数成分と、他の積では現れない(f+f)にある周波数成分とを有する。信号処理回路20での測定信号uGMRの適切な処理によって、例えば、(増幅器での増幅後に)差分周波数Δfに中心がある帯域通過フィルタにそれを通すことによって、式(8)に従う、前処理又はフィルタ処理をされた信号uが得られる。差分周波数Δfは、増幅によって導入される1/f雑音をGMRセンサ2の熱雑音が決定づけるように選択される。関心のある量、すなわち、センサでのビーズの量の指標である、Δfでの信号uの振幅変動を作り出すために、信号uは、情報信号と同相である差分周波数Δfの復調信号udem(φ=0)を用いて評価ユニット10の復調器11で復調される。復調後、評価ユニット10の出力信号uoutは、例えば、低域通過フィルタをかけられ、随意的に更に処理されてよい。
図3は、典型的な前処理信号uが或る時点tで評価ユニット10へ供給される場合に、その信号uを複素平面(Re,Im)で表す。式(8)に従って、この前処理信号uは下記の成分を有する。
1.スプリアス又は“直交成分”又は簡単に“Q成分”u:先に説明されたように、(センサジオメトリに固有の)容量性又は誘導性クロストークは、励起周波数fに等しい周波数を有してGMRセンサを通るクロストーク電流Iを生じさせる。更に、印加されるセンサ電流Iは、第2周波数fでGMRセンサ(自己バイアス)において内部磁界Hを生じさせる。それらの積は、差分周波数ΔfでのQ成分uをもたらす。Q成分uの位相は、情報搬送信号に対して90度シフトされている。式(8)に従って、このQ成分uの振幅は、|u|=2πfαβsIexである。ここで、αは、クロストーク電流(I)及び印加される励起電流(I)の商I/Iであり、βは、自己バイアス係数H/IGMR、すなわち、GMRを通る電流IGMRによって引き起こされるGMRセンサの感応層での磁界強度Hであり、s=ΔR/ΔHはGMRセンサの感度である。
2.磁気クロストークベクトルu:励起ワイヤー1及び1′並びにGMRセンサワイヤー2の(固有の)不均衡は、励起電流Iによって引き起こされる磁界HへのGMR応答uをもたらす。式(9)に従って、|u|=γsIexである。ここで、γ=H/Iは、励起ワイヤーを通る電流によって引き起こされるGMRの感応層での磁界強度とその電流との間の比例定数である。
3.ビーズによって引き起こされ、従って、情報搬送信号(“目標信号”)に相当する“ビーズベクトル”u:uは式(9)及び(11)で与えられる。ここで、ε=H/(BIex)は、センサ表面で磁化ビーズによって引き起こされるGMRの感応層での磁界強度と、センサの表面でのビーズ密度であるBとの間の比例定数である。
4.上記の磁気クロストークu及びビーズベクトルuを有する総磁気ベクトル又は“I成分”u=u+u
図3及び式(8)は、前処理されフィルタリングされた信号uが、粒子に依存しないスプリアス成分uを有することを示す。このスプリアス成分は、関心が持たれている同相成分uに直交するので、理論上、所望の情報搬送信号u(又はu)と同相である変調信号udemを用いることによって抑制され得る。しかし、問題は、前処理電子部20が未知の時間変化する位相シフトφSPを導入することである。これは、情報信号と同相である一定の変調信号udemを単純に選択することを不可能にする。例えば、図3に示される位相が不一致である復調信号udem(0)を使用することは、スプリアス成分uから未知のサイズの外乱を有する測定結果をもたらしうる。位相シフトφSPは、例えば、製造ばらつき、エージング効果又は温度変動に起因して変動しうる。更に、φSPは、デジタル処理(サンプリング)での遅延又はアナログフィルタリングに起因して周波数に依存しうる。
上記の検討を考慮して、スプリアス成分uを抑制するためには、復調信号udemの復調位相φdemを最適化することが望ましい。これは、複雑な信号処理要求を伴うことなく復調位相φdemのためのロバストで且つ正確な適応アルゴリズムで達成され、また、アナログ及びデジタル復調実施で適応性を有するべきである。位相シフトφSPが時間変化する場合に、繰り返し適応が必要とされる。
上記の状況に対する一般的な解決法で、GMRセンサ2での磁気励起場と寄生クロストークとの間の振幅関係は、最適化段階OSの間に変更される。これは実際の位相シフトφSPを明らかにし、次いで、復調位相φdemは、スプリアス成分uの最大抑制へ向けて然るべく最適化され得る。最適化段階OSの間の周波数が測定段階MSの間と同じである場合、(信号処理電子部での)周波数依存の位相シフトは回避されるので、高い精度が達成される。
上記の一般的な解決法の第1の特定の具体化に従って、励起電流は最適化段階OSの間は零にされる。図1の実施例で、具体的に、励起電流Iは、電流源4及び4′のインピーダンスレベルを一定に保つために、励起ワイヤー1及び1′から取り除かれ、励起ワイヤー1及び1′の抵抗値に等しい抵抗値(例えば、10Ω)のダミー抵抗R及びR′へ経路を切り替えられる。これは、特に、インピーダンスレベルに敏感な応答性を有するアナログフィルタ部(図示せず。)が電流源4及び4′の後に続く場合に、必要とされる。結果として、GMR信号uGMR、ひいては前処理信号uは、望まれていないスプリアス成分uしか有さない。次いで、復調位相φdemは、スプリアス成分uが、復調された出力信号uoutで最大限に抑制されるように、値φdem=φSPへと適応され得る。図1に従って、これは、最適化段階の間、uout=0であるまで、プログラム可能な位相シフタ13をフィードバックループ12を介して制御することによって達成され得る。
図4は、復調位相が調整された後の最適化段階OSに対応するベクトル図を示す。
図5は、続く測定段階MSを示す。測定段階MSで、励起ワイヤーは再び励起電流Iを供給される。この場合に復調信号udemの位相は調整されているので、スプリアス成分uは最適に抑制される。
留意すべきは、記載される最適化は、抵抗R及びR′が励起ワイヤー1及び1′の近くに配置されない場合に(誘導結合ではなく)容量結合に基づく点である。なお、これは、容量性及び誘導性クロストーク電流の位相がいずれも所望の磁気信号に直交する場合に、最終結果に影響を及ぼさない。従って、見つけられた復調位相φdemも、誘導クロストークによりスプリアス成分を最適に抑制する。
(ダミー励起ワイヤーとして働く)抵抗R及びR′の目的は、最適化段階及び測定段階で励起電流Iの位相を保つことである。これは、特に、その励起電流Iが複素インピーダンス、例えば、励起電流の位相を負荷インピーダンスの変化に極めて敏感なものとする高次(低域通過)フィルタを介して生成される場合に、重要である。
図6に示される磁気センサ装置の第2実施例で、寄生(容量性、誘導性)結合は、磁気信号に対して大きくなり、望ましくは、極めて支配的にされる。これは、最適化段階OSの間特別の結合要素を付加することによって、例えば、励起ワイヤー1とGMRセンサ2との間にキャパシタCaddを付加することによって、達成される。図1の実施例と同様に、復調位相φdemは、最適化段階OSの間、uout=0の状況へ向けて最適化される。これにより、直交成分uは最大限に抑制される。続く測定段階MSの間、この復調位相は、次いで、磁気信号を検出するために使用される。
このアプローチは、磁気信号が小さい場合、例えば、励起ワイヤー及びGMRセンサを縦に並べることによって磁気クロストークが抑制される場合に、極めて有用である。
代替の実施例で、寄生結合(容量性、誘導性)は、最適化段階の間に大きくなるが、必ずしも支配的にされるわけではない。結果として、2つの応答が現れる。これらから、最適な復調位相が得られる。
磁気センサ装置の第3実施例は、最適化段階OSの間の断面図として図7に示される。この実施例は、GMRセンサ2の感応面の外を通る付加的な“クロストークワイヤー”6(例えば、GMRセンサ2の上に平行に示される。)を有する。このクロストークワイヤー6が最適化段階OSの間に励起電流Iを供給される場合に発生する磁気“クロストーク場”Hは、その場合に、GMRセンサ2で強い磁気クロストーク信号を発生させる。このようにして、磁気クロストークは、実質的に直交成分uに対して大きくなり、望ましくは、極めて支配的にされる。直交成分uは、GMRセンサ2と電流ワイヤー1、1′及び6との間の容量(及び誘導)クロストークがほんの僅かに変化する場合に、実質的に一定に保たれ得る。これは、例えば、付加的なクロストークワイヤー6がGMRセンサ2から励起ワイヤー1及び1′と同じ距離を有する場合及び励起電流が最適化段階OSの間は励起ワイヤー1及び1′へ供給されない場合に達成される。復調位相φdemは、最適化段階OSの間、“uout=最大”の状況へ向けて最適化され得る。これより、直交成分uは、その後の測定段階MSの間、最大限に抑制されうる。
本発明は特定の実施形態を参照して上述されたが、種々の変形及び拡張が可能である。例えば:
− 分子分析(assays)に加えて、例えば、細胞、ウィルス、細胞若しくはウィルスの一部分、組織抽出液等、より大きい部分が、また、本発明に従う磁気センサ装置により検出され得る。
− 検出は、バイオセンサ表面に対するセンサ要素の走査により又はそれによらずに起こりうる。
− 測定データは、信号を動力学的に又は断続的に記録することによってのみならず、エンドポイント測定としても得られる。
− ラベルとして働く磁気粒子は、検知方法によって直接的に検出され得る。同様に、粒子は、更に、検出の前に処理されてよい。更なる処理の例は、物質が付加されること、又はラベルの(生)化学的な若しくは物理的な特性が検出を容易にするよう変更されることである。
− 装置及び方法は、例えば、結合/非結合分析、サンドイッチ分析、コンペティション分析、置換分析、酵素測定等、幾つかの生化学分析タイプを有して使用され得る。
− 装置及び方法は、センサ多重化(すなわち、異なるセンサ及びセンサ表面の並列使用)、ラベル多重化(すなわち、異なるタイプのラベルの並列使用)及びチェンバ多重化(すなわち、異なる反応チェンバの並列使用)に適する。
− 装置及び方法は、小さなサンプル容量のためのポイント・オブ・ケア(point-of-care)バイオセンサを使用するのに高速で、ロバストで且つ容易であるとして使用され得る。反応チェンバは、1又はそれ以上の磁界発生手段及び1又はそれ以上の検出手段を有する小型の読取器とともに使用される使い捨ての物であってよい。また、本発明の装置、方法及びシステムは、自動高スループット試験で使用され得る。この場合に、反応チェンバは、自動機器に適合する、例えば、ウェルプレート(well plate)又はキュベットである。
最後に、本願で、語“有する(comprising)”は他の要素又はステップを除かないこと、“1つの(a、an)”は複数個を除かないこと、及び単一のプロセッサ又は他のユニットが幾つかの手段の機能を満足してよいことが指摘される。本発明は、ありとあらゆる新規の特徴的事項及び特徴的事項のありとあらゆる組合せにある。更に、特許請求の範囲に記載される参照符号は、本願の適用範囲を限定するよう解釈されるべきではない。

Claims (13)

  1. 磁化した粒子を検出する磁気センサ装置であって,
    − 前記磁化した粒子が供給され得るサンプルチェンバと;
    − 前記サンプルチェンバで磁気励起場を発生させる第1周波数を有する励起電流により駆動される少なくとも1つの磁界発生器と;
    − 測定信号を発生させる第2周波数を有するセンサ電流により駆動される少なくとも1つの関連する磁気センサ要素と;
    − 所定周波数を有する前処理された信号を前記測定信号から発生させる信号処理回路と;
    − 前記サンプルチェンバでの磁化した粒子の存在に依存しないスプリアス成分を前記前処理された信号から分離する評価ユニットと;
    を有する磁気センサ装置。
  2. 磁気センサ装置によるサンプルチェンバでの磁化した粒子の決定のための方法であって:
    − 第1周波数を有する励起電流により駆動される磁界発生器により前記サンプルチェンバで磁気励起場を発生させる段階と;
    − 第2周波数を有するセンサ電流により駆動される磁気センサ要素により測定信号を発生させる段階と;
    − 所定周波数を有する前処理された信号を信号処理回路により前記測定信号から発生させる段階と;
    − 前記サンプルチェンバでの磁化した粒子の存在に依存しないスプリアス成分を評価ユニットにより前記前処理された信号から分離する段階と;
    を有する方法。
  3. 前記所定周波数は前記第1周波数と前記第2周波数との間の差分である、ことを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置又は請求項2記載の方法。
  4. 前記前処理された信号は、前記磁気励起場によって磁化された前記サンプルチェンバ内の粒子の磁気反応場によって発生する目標成分を有し、
    前記スプリアス成分は、前記目標成分に対して周波数が同じで且つ特に90度の位相シフトを有する、ことを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置又は請求項2記載の方法。
  5. 前記スプリアス成分は、前記磁界発生器と前記磁気センサ要素との間の容量性及び/又は誘導性のクロストークとともに前記磁気センサ要素の自己磁化によって発生する、ことを特徴とする、請求項1記載の磁気センサ装置又は請求項2記載の方法。
  6. 前記前処理された信号は可変な位相シフトを有する、ことを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置又は請求項2記載の方法。
  7. 前記評価ユニットは前記可変な位相シフトを決定する位相推定器を有する、ことを特徴とする請求項6記載の磁気センサ装置又は方法。
  8. 前記磁気センサ装置は、前記スプリアス成分の相対的な大きさを変化させるよう前記評価ユニットによって選択的にアクティブにされ得る基準回路を有する、ことを特徴とする請求項1記載の磁気センサ装置又は請求項2記載の方法。
  9. 前記基準回路はバイパス抵抗を有し、該バイパス抵抗を介して前記励起電流は前記磁界発生器をバイパスすることができる、ことを特徴とする請求項8記載の磁気センサ装置又は方法。
  10. 前記基準回路は、前記磁界発生器及び前記磁気センサ要素を結合するキャパシタを有する、ことを特徴とする請求項8記載の磁気センサ装置又は方法。
  11. 前記基準回路は、前記磁気センサ要素によって検出され得る磁気クロストーク場を発生させる少なくとも1つの付加的な磁界発生器を有する、ことを特徴とする請求項8記載の磁気センサ装置又は方法。
  12. 前記磁気センサ要素は、コイル、ホールセンサ、平面ホールセンサ、フラックスゲートセンサ、SQUID、磁気共鳴センサ、磁気制限センサ、又はGMR、AMR若しくはTMR素子を含む磁気抵抗センサを有する、請求項1記載の磁気センサ装置又は請求項2記載の方法。
  13. 分子診断、生体サンプル解析、及び/又は化学サンプル解析、特に、小分子の検出のための請求項1記載の磁気センサ装置の使用。
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