JP2010502985A - インスリン感受性の制御におけるリポカリン2の使用 - Google Patents

インスリン感受性の制御におけるリポカリン2の使用 Download PDF

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Abstract

リポカリン2活性または発現を調節する化合物の同定方法が記載され、同様にリポカリン2発現を調節する化合物を投与することによるインスリン抵抗性の減少またはインスリン感受性の増加の方法が記載される。リポカリン2活性を測定することによるインスリン抵抗性または関連する症状の診断方法も記載される。

Description

(関連出願)
本出願は2006年9月5日に出願された米国特許仮出願第60/842,587号の利益を主張する。上記出願の全教示は参照によって本明細書に援用される。
(政府支援)
本発明は、国立衛生研究所からの認可第DK63906号および第DK43051号によって全体的または部分的に支援された。政府は本発明の特定の権利を有する。
(発明の背景)
世界的な肥満および2型糖尿病の流行では、脂肪細胞生物学および全身代謝の統合における脂肪組織の役割に対して注目が当てられている(Kahn, B. B.,およびFlier, J.S.(2000)J Clin Invest 106(4),473-481)。10年より昔のレプチンの発見によって、脂肪細胞から分泌されるタンパク質がエネルギーバランスおよびグルコースホメオスタシスを調節する図式が確立された。(Halaas, J.L., ら, (1995) Science 269(5223), 543-546)。最初の発見以来、脂肪細胞由来のシグナル伝達分子の数が非常に大きく増え、用語「アディポカイン(adipokine)」が、これらの多くの分子が炎症に対して正の作用または負の作用を示すという事実を反映するように作り出された。レプチン(Halaas, J. L.,ら,(1995)Science 269(5223), 543-546)、アディポネクチン(Scherer, P. E.,ら,(1995)J Biol Chem 270(45),26746-26749)、およびビスファチン(Fukuhara, A.,ら,(2005)Science 307(5708), 426-430)などのいくつかのアディポカインはインスリン感受性を促進するが、レジスチン(Steppan C. M.,ら, (2001) Nature 409(6818), 307-312);およびレチノール結合タンパク質4(RBP4)(Yang, Q.,ら, (2005) Nature 436(7049),356-362)などの他のものはインスリン抵抗性を誘導する。
筋肉および脂肪のような末梢組織におけるインスリン抵抗性は、膵臓β細胞によるインスリンの分泌の増大と関連する。分泌されたインスリンは、グルコース利用を促進し、肝臓によるグルコースの産生を阻害する。しかし、膵臓β細胞はしばしばインスリンの増大した産生を維持することができず、インスリン産生の全体的な減少およびグルコース耐性をもたらす。
インスリン抵抗性は、例えば、血中のグルコース濃度の増大、血中のインスリン濃度の増大、インスリンに応答するグルコース代謝能の減少、または上記のいずれかの組み合わせを特徴とする。インスリン抵抗性は2型糖尿病のような糖尿病の生じ得る後期発症を予測すると考えられる。しかし、糖尿病が存在しなくても、インスリン抵抗性は心臓血管病の主要なリスク因子である(Despres,ら, N. Engl. J Med 334;952-957(1996))。インスリン抵抗性および糖尿病におけるインスリン産生の欠損は、血液グルコースの増大または高血糖症をもたらす。次に高血糖症は腎障害、神経障害、および網膜障害などの長期の病気に寄与し得る。
また、インスリン抵抗性は、グルコースおよび脂質代謝の異常、肥満、腎臓病、高血圧および心臓血管病のリスク増大と関連する。インスリン抵抗性とこれらの他の異常との関連は、「インスリン抵抗性症候群」、または「メタボリックシンドローム」または「症候群X」と呼ばれる。特に、メタボリックシンドロームは、肥満(特に主要肥満)、異常脂肪血症(特に高レベルのトリグリセリドおよび低レベルの高密度リポタンパク質コレステロール)、高血糖および高血圧の同時発生として特徴付けられる。メタボリックシンドロームを有する人々は症候のない人々に対して糖尿病または心臓血管病のリスクが高い(Meigs, J.B., BMJ:327, 61-62,(2003))。
インスリン抵抗性と糖尿病の後期発症および心臓血管病との関連ならびにインスリン抵抗性の世界規模での罹患率のために、インスリン抵抗性と関連する疾患を軽減または緩和する治療の開発のためのさらなる代謝または内分泌標的が必要である。生活様式の変化および/または薬物による最も早い可能な介入を可能にするようなインスリン抵抗性、メタボリックシンドロームおよび2型糖尿病のさらなる検出/診断法も必要である。
(発明の概要)
本発明は、インスリン抵抗性と関連する症状および疾患を軽減または緩和する治療および医薬の開発に使用され得る重要な標的ならびに分子または化合物の同定のためのスクリーニング法を提供する。本明細書に記載されるように、本発明は、Lcn2活性または発現を調節する化合物を同定する方法に関する。該方法は、Lcn2を含む試験試料(例えば、細胞を含む試験試料)と試験化合物とを接触させる工程、および試験化合物の非存在下でのLcn2活性または発現のレベルに対する試験化合物の存在下でのLcn2活性または発現のレベルを比較してLcn2活性の調節を決定する工程を含み、Lcn2活性の変化はLcn2活性または発現を調節する化合物を示す。
また、本発明は、哺乳動物におけるインスリン抵抗性を減少する方法またはインスリン感受性を増大する方法に関する。該方法はLcn2の活性または発現を減少する化合物を哺乳動物に投与する工程を含む。哺乳動物から得られた生物試料中のLcn2活性を測定することによって哺乳動物におけるインスリン抵抗性または関連症状を診断する方法に関し、Lcn2活性の増大がインスリン抵抗性または関連症状を示す。本発明は、インスリン抵抗性の減少またはインスリン感受性の増大のための医薬の製造のためのLcn2の活性または発現を減少する化合物の使用にさらに関する。
患者が絶食または任意の特別な調製物を必要としないのでインスリン抵抗性または関連症状のためのマーカーとしてのLcn2の使用は有利であり、Lcn2は通常の回収条件下で安定な化合物であり、Lcn2は皮膚刺し傷からの血液滴または尿中で検出され得る。また、インスリン抵抗性または関連症状のためのマーカーとしてのLcn2の使用は、2型糖尿病を有する個体の肥満および非肥満血縁者、高血圧などのメタボリックシンドロームの他の基準を有する患者、ならびに高脂血症および多嚢胞性卵巣症候群にかかる前の患者を含む多くのリスクがある集団で有用であり得る。
前記は、本発明の実施態様のより具体的な以下の記載から明らかであり、同様の参照特徴は種々の観点を通じて同じ部分のことを示す添付の図面で例示される。図面は必ずしも同じスケールではないが、本発明の態様を例示する際に強調される。
図1は、Lcn2が脂肪細胞で発現され、DexおよびTNFによって制御されることを示す。ロシグリタゾン(Rosi;1μM)の存在または非存在下で成熟3T3-L1脂肪細胞をDex(1μM)またはTNF(4ng/μL)で処理し、Lcn2 mRNAレベルをQ-PCRで測定した。データは平均±SDとして示され、Rosiなしに対して*p<0.05、***p=0.005。 図2は、3T3-L1脂肪生成中のLcn2 mRNA発現の時間経過を表す。データは平均±SDとして表す、n=3。図2A:Dex(D)、MIX(M)、インスリン(I)、またはそれらの組み合わせで処理されたコンフルエントな3T3-L1プレ脂肪細胞におけるLcn2 mRNA発現。データは平均±SDとして表される、n=3。図1E:DMIの非存在で、ロシグリタゾンで誘導された3T3-L1分化中のLcn2発現。データは平均±SDとして表される、n=3。図2Bおよび2Cについて、挿入図は分化の程度を記すFabp4 mRNAの相当量を示す。 図3は、脂肪細胞のLcn2発現がC/EBP依存的であることを示す。図3A:PPARγ-/-細胞にC/EBP発現レトロウイルスを感染させ、空のベクターを導入した細胞に対するLcn2の内因性レベルをQ-PCRによって測定した。データは平均±SDとして表す、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。図3B:マウス(配列番号19)、ラット(配列番号20)およびヒト(配列番号21)Lcn2プロモーター配列の整列によって推定C/EBP結合部位が明らかにされる。四角で囲んだ文字はC/EBP結合に不可欠なコアヌクレオチドである。図3C:同時トランスフェクションC/EBPδの存在(灰色バー)または非存在(白色バー)での、一過的にトランスフェクトされたNIH-3H3細胞中のマウスLcn2プロモーター断片の欠失解析。データは平均±SDを表す、n=3。図3D:コアC/EBP結合モチーフの変異解析。同時トランスフェクトしたC/EBPδの存在(灰色バー)または非存在(白色バー)のNIH-3T3細胞に、野生型-222断片ルシフェラーゼ構築物またはコアTTGCの変異後の同じ断片をトランスフェクトした。データは平均±SDを表す、n=6、♯p=3.3e-10 図4は、Lcn2が肥満で上昇することを示す。図4A:ob/+(n=5)およびob/ob(n=7)マウス由来の白色脂肪組織溶解物中のLcn2タンパク質レベル。平均±SD、*p<0.05。図4B:固形飼料(chow)マクロファージの発現に対する、固形飼料(n=7)または高脂肪食餌(n=7)を与えた雄C57BLマウス由来の分画された白色脂肪組織中のLcn2 mRNA発現。SVF=ストロマ微小管分画、Ads=脂肪細胞、Macs=マクロファージ。平均±SD、*p<0.05、***p<0.001。図4C:ウェスタンブロットによって測定され、ob/+対照の平均に対する倍数として表された食餌投与されたob/+(n=6)およびob/obマウス(n=10)由来の血清中のLcn2タンパク質レベル。図4D:db/+対照の平均に対する倍数として表される、食餌投与されたdb/+(n=8)およびdb/dbマウス(n=8)由来の血清中Lcn2タンパク質発現。図4E:固形飼料投与された対照の平均に対する倍数として表される、固形飼料(n=15)および高脂肪食餌マウス(n=18)由来の血清中のLcn2タンパク質発現。4C、4D、および4Eのデータは、各群の平均として示される。 図5は、Lcn2のshRNA媒介ノックダウンがインスリン作用を改善することを示す。図5A:対照shRNAまたはshLcn2のいずれかを発現する成熟3T3-L1脂肪細胞中のLcn2およびマーカーのmRNA発現。図5B:対照shRNAまたはshLcn2のいずれかを発現する成熟3T3-L1細胞中の基底(白色バー)およびインスリン-刺激(黒色バー)グルコース取り込み。n=12、平均±SD、対照shRNAインスリンなしに対する*p<1e-5;対照shRNA、+インスリンに対する♯p=5e-5。図5C:インスリン存在下の取り込み−インスリン非存在下の取り込みに相当するインスリンによるグリコース取り込みの構成要素。n=12、平均±SD、*p<1e-4 図6は、H4IIe肝細胞において外因性組み換えLcn2がインスリン抵抗性を誘導することを示す。図6A:左、インスリン(100nM)の存在または非存在でのリガンドLcn2(10nM)またはDex(250nM)によって誘導されるグルコース産生。右、インスリン(100nM)の存在または非存在でのグルコース-6-ホスファターゼmRNA発現に対するリガンドLcn2(10nM)またはDex(250nM)の効果。図6B:グルコース-6-ホスファターゼ発現に対するリガンドLcn2の用量応答。図6C:グルコース-6-ホスファターゼ発現に対するapo-Lcn2の効果。全てのパネルについて、平均±SD、*p<0.05、**p<0.01、n=3。
(発明の詳細な説明)
本発明の例示的態様の説明は以下の通りである。
発明者は、3T3-L1脂肪細胞中でデキサメタゾンおよびTNF-αによって劇的に誘導される因子としてリポカリン(Lcn2)を同定した。以下に詳細に記載するように、発明者は、マウスにおいて脂肪組織がLcn2発現の優性部位であること、およびLcn2発現が肥満によって調節されることを示した。また、Lcn2は脂肪細胞でのインスリン抵抗性を促進することを示す。
LCN2活性または発現を調節する化合物のスクリーニング法
本明細書に記載されるように、本発明は、インビトロまたはインビボいずれかで(例えば、哺乳動物で)Lcn2の活性または発現を調節する化合物を同定する方法に関し、Lcn2活性または発現を調節する化合物の能力は以前に不明であった。同定方法にはインビトロまたはインビボ法が含まれ、Lcn2活性もしくは発現を減少する化合物を同定するためまたはLcn2活性もしくは発現を増大する化合物を同定するために使用され得る。
Lcn2活性を調節する化合物の同定の一態様において、Lcn2を含む試験試料が1つ以上の試験化合物と接触される。本明細書で使用される場合、用語「試験試料」は、Lcn2を含むおよび/またはLcn2をコードする核酸を含む試料のことをいう;代表的な試験試料としては、例えば、生物試料、例えば、適切な細胞、組織、血清、血漿、または尿が挙げられる;あるいは試験試料は無細胞試料、例えば、細胞溶解物、またはLcn2を含むバッファであり得る。
該方法において、試験化合物の存在下での試験試料中のLcn2活性のレベルが試験化合物の非存在でのLcn2活性のレベルと比較され、Lcn2活性のレベルの差異がLcn2活性を調節する化合物を示す。本明細書に記載されるように、Lcn2活性としては、例えば、Lcn2が鉄を送達する能力、Lcn2がシデロフォアまたはシデロフォア-鉄複合体に結合する能力、組織または循環中のLcn2の安定性(例えば、構造または半減期)、Lcn2がインスリン抵抗性を誘導する能力が挙げられる。別の態様において、Lcn2の活性を調節する化合物は哺乳動物におけるインスリン抵抗性のレベルを減少する。インスリン抵抗性の症状としては、例えば、グルコース耐性障害、インスリン刺激グルコース移送障害、インスリンシグナル伝達障害、血清グルコースのレベルの増大、および/または血清インスリンのレベルの増大が挙げられる。これらのインスリン抵抗性の指標は、本明細書に記載される方法を含む当該技術分野で標準の方法を使用して測定され得る。
別の態様において、Lcn2発現を調節する化合物が同定される。「発現」は、本明細書で使用される場合、Lcn2 mRNA1またはタンパク質の発現のことをいう。Lcn2発現は細胞または組織中のLcn2 mRNAレベルを検出することによって測定され得る。RNAレベルを検出する技術は当該技術分野で周知であり、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、ノーザンブロット、およびRNAse保護アッセイが挙げられる。また、Lcn2 mRNAが転写される速度はLcn2プロモーターレポーターアッセイまたは核ランオフアッセイを用いて決定され得る。「Current Protocols in Molecular Biology」第1巻、第4章、John Wiley & Sons, Inc.(1997)を参照。定量的リアルタイムRT-PCRがLcn2 mRNA安定性を評価するために使用され得る。Howeら, Clin Chem.(2003); Bustin SA, L Mol Endocrinol.29(1):23-29(2002)を参照。また、例えば、教示が参照によって援用される米国特許第6,544,790号を参照。また、Lcn2発現は、Lcn2タンパク質またはその生物学的活性断片のレベルまたは濃度を検出することによって測定され得る。例えば、組織または細胞中のタンパク質/ペプチドレベルを検出するために適切な任意の方法、例えば、Lcn2レベルを検出する特異的抗体結合(免疫学的または免疫反応法、例えば、ELISA、RIA、ネフロメトリー(nephlometry)またはウェスタンブロット)、またはその生物学的活性断片、またはその特徴的断片(即ち、完全Lcn2タンパク質の全ての生物学的活性を有し得ないが、生物学的活性タンパク質を特異的に同定するために使用され得る断片)が使用され得る。
本明細書に記載されるLcn2活性または発現を調節する化合物のためのアッセイに使用される適切な細胞または組織としては、例えば、脂肪細胞、肝臓、および筋肉が挙げられる。あるいは、例えば、本明細書に記載の方法では、試験化合物の投与前および投与後の個体(ヒトまたは他の哺乳動物)の血液中のLcn2レベルが比較され得る。血液試料としては、例えば、全血、血漿、または血清が挙げられる。尿、便、および他の体液も使用され得る。また、アッセイとしては、Lcn2プロモーターレポーターアッセイ、インビトロmRNA翻訳および安定性アッセイ、一次肝細胞を用いるLcn2分泌アッセイ、または細胞培養条件(エクスビボ)またはインビトロでのLcn2安定性の半減期試験が挙げられる。本明細書に記載される全てのアッセイには、ハイスループットアッセイが含まれる。
また、Lcn2活性を調節する化合物の同定方法には、インビボ法が含まれる。例えば、本明細書に記載されるインスリン抵抗性のための動物モデルが使用され得る。Lcn2活性および/またはインスリン抵抗性を試験するインビボ法としては、例えば、AG4KOマウスのようなインスリン抵抗性を有するマウスが試験化合物の有り無しで処理され、次にグルコース負荷試験またはインスリン負荷試験に供され、改善されたグルコース耐性またはインスリン耐性がLcn2活性を調節する化合物を示す方法が挙げられる。別の態様において、血清中のLcn2レベルが2つのグループのマウス間で比較され得、血液中のLcn2レベルの減少はLcn2活性を調節する化合物を示す。さらに、血液グルコースおよび血漿インスリンレベルがマウスで測定され得、未処理のマウスと比較して処理マウスの低レベルの血液グルコースおよび/または低血漿インスリンレベルがLcn2活性を調節する化合物を示す。別の態様において、野生型マウスは高脂肪食餌を投与され得、試験化合物で処理され得るか、またはこれらを行わない。Lcn2レベルは処理マウスと未処理マウスとの間で比較され得、Lcn2レベルの減少はLcn2活性を調節する化合物を示す。さらに、高脂肪食餌の処理マウスおよび未処理マウスにグルコース負荷試験またはインスリン負荷試験が与えられ得、血液中のグルコースレベルまたは血漿インスリンレベルの減少はLcn2活性を調節する化合物を示し、それによってインスリン抵抗性を調節する。本明細書で使用される場合、調節には活性における阻害および増大の両方が含まれ、阻害は減少した活性の任意の測定可能なレベルであり、増大は活性の任意の測定可能なレベルである。
医薬組成物
また、本明細書に記載されるように、Lcn2活性を調節する化合物は、インスリン抵抗性に関連する状態を軽減するための治療処置およびインスリン抵抗性に関連する状態を軽減するための治療に使用するための医薬の製造に有用であり得る。例えば、化合物はインスリン抵抗性の減少またはインスリン感受性の増大に使用され得る。
Lcn2活性を調節する分子(例えば、Lcn2活性に干渉する分子)の例としては、Lcn2の天然リガンドを構造的に模倣する分子、例えば、シデロフォアが挙げられる。Lcn2に特異的に結合する抗体、ポリクローナル、モノクローナルまたは抗体断片のいずれかを使用してLcn2活性に干渉し得る。かかる特異的抗体の製造は当業者に周知である。
また、開示された化合物の薬学的に許容され得る塩が本発明に含まれる。例えば、アミンまたは他の塩基性基を含む化合物の酸性塩が、塩化水素、臭化水素、酢酸、過塩素酸等のような適切な有機酸または無機酸と化合物を反応することによって得られ得る。4級アンモニウム基を有する化合物はまた、塩素、臭素、ヨウ素、酢酸、過塩素酸等のような対アニオンを含む。かかる塩の他の例としては、塩酸、臭化水素、硫酸、メタンスルホン酸、硝酸、マレイン酸、酢酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸[例えば、(+)酒石酸、(-)酒石酸またはラセミ混合物を含むその混合物]、コハク酸、安息香酸およびグルタミン酸などのアミノ酸との塩が挙げられる。
カルボン酸または他の酸性官能基を含む化合物の塩は、適切な塩基との反応によって調製され得る。かかる薬学的に許容され得る塩は、薬学的に許容され得るカチオンを付与する塩基を用いて作製され得、アルカリ金属塩(特にナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属塩(特にカルシウムおよびマグネシウム)、アルミニウム塩およびアンモニウム塩、ならびにトリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、トリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン、プロカイン、ジベンジルピペリジン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、デヒドロアビエチルアミン、N,N'-ビスデヒドロアビエチルアミン、グルカミン、N-メチルグルカミン、コリジン、キニン、キノリン、ならびにリジンおよびアルギニンのような塩基性アミノ酸等の生理学的に許容され得る有機塩基から作製された塩が挙げられる。
本発明には本明細書に記載される化合物の医薬製剤が含まれる。医薬製剤は、任意の適切な経路、例えば、経口(口腔または舌下を含む)、直腸、鼻腔、局所(口腔、舌下または転移(transferal)を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)経路による投与に適合され得る。かかる製剤は医薬の技術分野で公知の任意の方法、例えば、活性成分と(1つ以上の)担体、(1つ以上の)希釈剤、または(1つ以上の)賦形剤を合わせることによって調製され得る。
医薬製剤は、単位用量当たり所定量の活性成分を含む単位用量形態で存在し得る。かかる単位は、治療される症状、投与経路、ならびに患者の年齢、体重および状態に依存して、例えば約1μg〜10μg、約0.01mg〜1000mg、または約0.1mg〜250mgの活性成分を含み得る。一態様において、レチナミド、レチニルまたはその模倣物は、約10〜約100mg/日、または約100〜約500mg/日または約500〜約1000mg/日の用量で経口投与される。
経口投与に適合した医薬製剤は、カプセルもしくは錠剤;粉末もしくは顆粒;水溶液もしくは非水溶液中の溶液もしくは懸濁液;食用フォームもしくはホイップ;または水中油液体エマルションもしくは油中水液体エマルションのような別々の単位として存在し得る。
転移投与に適合した医薬製剤は、長期間レシピエントの表皮と直に接触したままであることを意図する別々のパッチとして存在し得る。例えば、活性成分は、一般的にPharmaceutical Research, 3(6),318(1986)に記載されるイオン導入によってパッチから送達され得る。
非経口投与に適合した医薬製剤としては、抗酸化剤、およびバッファ、細菌静止剤および対象のレシピエントの血液を用いて製剤を等張にする溶質を含み得る水性および非水性滅菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増量剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、用量単位または複数用量容器、例えば密閉アンプルおよびバイアルで提供され得、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを要する凍結乾燥(凍結乾燥)条件で保存され得る。即席の注射溶液および懸濁液は滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
適切な医薬担体または希釈剤は典型的に、医薬組成物の活性成分と有意に相互反応しない不活性成分である。担体または希釈剤は、生体適合性、即ち、非毒性、非炎症性、非免疫原であり、投与部位で他の望ましくない反応がないであるべきである。当業者は、特定の投与方法または特定の種類の医薬組成物(例えば、レチナミドまたはレチニルエステルを含む)に適切な担体または希釈剤を容易に選択し得る。薬学的に許容され得る担体および希釈剤の例としては、例えば、滅菌水、生理食塩水、細菌静止食塩水(約0.9mg/mlベンジルアルコールを含む食塩水)、リン酸緩衝食塩水、ハンクス溶液、リンガー乳酸、市販不活性ゲル、またはアルブミン、メチルセルロースもしくはコラーゲンマトリックスを添加した液体が挙げられる。さらなる担体および希釈剤としては、糖、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。所望される場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩のような崩壊剤が(例えば、錠剤またはカプセルに)添加され得る。他の担体および希釈剤は、その内容が参照によって援用されるRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAに記載されている。
本発明の医薬組成物は、例えば本明細書に開示されるレチナミドまたはレチニルエステルおよび薬学的に許容され得る活性剤を混合すること、ならびに任意に上記の1つの担体または希釈剤を含むことによって調製され得る。
また、開示された化合物の薬学的に許容され得る塩が本発明に含まれる。化合物の電荷に依存して、塩には対イオンとしてプラスイオンまたはマイナスイオンが含まれる。リン酸基およびアミン基の両方を有する化合物は過剰の電荷を有さないとみなされる。この場合、リン酸基およびアミン基は互いの対イオンとして働き得るかまたは各基は外因性対イオンを有し得る。適切なカチオンとしては、アルカリ土類金属イオン、例えば、ナトリウムおよびカリウムイオン、アルカリ土類イオン、例えばカルシウムおよびマグネシウムイオン、非置換または置換(一級、二級、三級、および四級)アンモニウムイオンが挙げられる。薬学的に許容され得る対アニオンとしては、塩素、臭素、酢酸、蟻酸、クエン酸、アスコルビン酸、硫酸およびリン酸が挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」は望ましい治療または診断の効果または効能を達成するために必要な量を意味する。化合物の実際の有効量は、使用される特定の化合物の生物学的活性;使用される特定の薬物またはその組み合わせ;製剤化される特定の組成物;投与様式;患者の年齢、体重、および状態;治療される症状または状態の性質および重篤度;治療頻度;他の治療薬の投与;ならびに所望される効果に従って変化し得る。特定の患者の用量は、従来の考慮(例えば、適切な従来の薬理学的プロトコールによる)を用いる当業者によって決定され得る。
製剤に関する一般的情報について、例えば、Gilman,ら(編), 1990, Goodman and Gilman's: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第8版, Pergamon Press;およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 第17版,1990, Mack Publishing Co., Easton, PA; Avisら(編),1993, Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications, Dekker, New York; Liebermanら(編),1990, Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Dekker, New Yorkを参照。本発明の化合物は、従来の医薬投与形態、例えば、非コートまたは(フィルム)コート錠剤、カプセル、粉末、顆粒、坐薬、懸濁液または溶液で投与され得る。これらは従来の方法で製造される。この目的のための活性物質は、従来の医薬補助剤、例えば、錠剤結合剤、充填剤、保存剤、錠剤崩壊剤、フロー調整剤、可塑剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、溶媒、徐放組成物、および/または抗酸化剤と共に処理され得る(H. Sucker,ら, :Pharmazeutische Technologie, Thieme-Verlag, Stuttgart, 1978参照)。この方法で得られる投与形態は典型的に約1〜約90重量%の活性物質を含む。
個体のインスリン抵抗性の減少方法
また、Lcn2活性または発現を減少する化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、ヒトを含む哺乳動物におけるインスリン抵抗性の減少方法またはインスリン感受性の増大方法が本明細書に包含される。一態様において、哺乳動物はインスリン抵抗性の少なくとも1つの臨床症状を有する。特定の態様において、十分量で個体に投与する場合に、化合物は循環Lcn2の減少を生じる。Lcn2レベルの減少は、Lcn2レベルの任意の統計学的に有意なパーセンテージ減少であり、例えば個体の年齢、性別、および民族性を適合した場合のインスリン抵抗性状態で見られるレベルと非インスリン状態と関連するレベルとの間の差が少なくとも約20%であり得る。より特定の態様において、Lcn2レベルは、個体の年齢、性別および民族性を適合した場合のインスリン抵抗性状態に見られるレベルと非インスリン状態と関連するレベルとの間で少なくとも約30、または40、または50、または60、または70%減少する。特に、公知のインスリン抵抗性または関連する症状を有する個体のLcn2レベルは、年齢性別および民族性を適合した場合に、組織または循環におけるLcn2免疫反応性(ELISA、RIA、ネフロメトリー、ウェスタンブロット)に基づいて、通常非インスリン抵抗性状態と関連するレベルより高く、例えば、個体のレベルと非インスリン抵抗性状態と関連するレベルとの間で約40〜60%、または約50%減少する。本明細書に記載される分子/方法を用いて、インスリン抵抗性と関連するLcn2の活性レベルは、非インスリン抵抗性状態と関連する活性レベルに戻される。
個体のインスリン抵抗性を減少するまたはインスリン感受性を増大するこれらの方法は、Lcn2の活性または発現を減少または阻害またはアンタゴナイズする化合物を個体に投与する工程を含む。特に、一態様において、Lcn2の血漿レベルは、例えば、Lcn2結合活性またはLcn2安定性に干渉することによって低減される。別の態様において、Lcn2の血漿レベルはLcn2遺伝子発現を減少することによって低減される。かかる方法は、RNAi、shRNA(実施例に記載される)、またはアンチセンスポリヌクレオチド等を用いてLcn2 mRNAの発現またはLcn2遺伝子の活性Lcn2タンパク質への翻訳を減少または阻害する方法を包含する。該方法は、Lcn2に特異的に結合し、タンパク質の活性を妨げる抗体(完全またはその断片)の使用を含み得る。また、本明細書に記載されるスクリーニング方法によって同定される他の分子、例えばLcn2の生物学的活性を阻害/減少する低分子は、インスリン抵抗性の減少に適切であり得る。
本明細書に記載される化合物および医薬組成物は適切な経路によって投与され得る。適切な投与経路としては、限定されないが、経口、腹腔、皮下、筋肉内、経皮、直腸、舌下、静脈内、口腔または吸入が挙げられる。好ましくは、本発明の化合物および医薬組成物は経口投与される。例えば、レチナミドおよびレチニルエステルは経口で摂取する場合にバイオアベイラビリティであることが予想される。経口投与される化合物のバイオアベイラビリティを向上することが公知である医薬賦形剤が、化合物に添加され得る。
診断方法
Lcn2タンパク質またはその断片である(例えば、生物学的活性断片または特徴的断片)、特異的なインスリン抵抗性/メタボリックシンドロームの代理マーカーを使用した、哺乳動物(例えばヒト)におけるメタボリックシンドロームなどのインスリン抵抗性または関連する症状の診断方法も本発明に包含される。一態様において、スクリーニングのための標的集団には、肥満、メタボリックシンドローム、異常脂質血症、妊娠性糖尿病の病歴、空腹時グルコース障害、グルコース耐性障害および2型糖尿病を有するヒトが含まれる。これは、肥満および2型糖尿病を有する急成長小児集団を含む。
特定の態様において、個体におけるインスリン抵抗性または関連する症状の診断方法は、個体から得られた試験試料(例えば、生物試料)におけるLcn2の量を測定する工程を含み、年齢、性別、民族および(可能な限り)ボディーマスインデックスについて標準化された対照試料と比較した試料中のLcn2の高いレベルは、インスリン抵抗性を示す。生物試料は任意の適切な試料であり得るが、特に、血清試料または組織試料(例えば、筋肉または脂肪)である。生物試料における、標準レベルのLcn2に対して高いレベルのLcn2の検出は、インスリン抵抗性または関連する症状を示す。任意の統計学的に有意なLcn2レベルの上昇が本発明の方法に含まれる。例えば、非インスリン抵抗性個体に見られるよりも少なくとも約1.3倍〜約1.5倍、または2倍以上のLcn2レベルの測定値が高いレベルである。
マーカーとして高いLcn2タンパク質レベルを使用して、インスリン抵抗性について個体をスクリーニングおよび診断することができる。Lcn2レベルは、一滴の血液を一片のろ紙上に落としてLcn2の量を検出および定量する抗Lcn2抗体を使用して、試験試料(例えば、生物試料、好ましくは血液試料)からアッセイすることができる。ろ紙は室温で保存することができ、アッセイについてLcn2レベルは安定なままである。Craft, J. Nutr. 131:1626S-1630S (2001)を参照。このような方法は、特にマススクリーニングに適切である。このような診断方法またはLcn2 RNAもしくはDNAの検出方法では、Lcn2に特異的に結合する抗体またはその断片を利用することができる。
Lcn2タンパク質発現レベルは、本明細書に記載されるインビトロ技術によっても測定することができる。タンパク質の翻訳と代謝回転の速度は、パルス追跡アッセイを実行して、およびタンパク質翻訳を阻害するシクロヘキシミドなどの薬物を使用して、細胞中で測定することができる。インビボでは、標識された(すなわち、放射性)抗Lcn2抗体を被検体中に導入し、標準的な画像化技術を使用して標識を可視化することにより、タンパク質検出を行うことができる。Lcn2活性の検出によるインスリン抵抗性の診断についてのその他の適切なアッセイは上述される。
本発明は、以下の実施例においてより具体的に記載されるが、いかなる方法においても限定されることを意図しない。
リポカリン2(Lcn2)は、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、シデロカリン、および24p3としても公知であり、RBP4を含むタンパク質の大きなスーパーファミリーの一員である。リポカリンは、疎水性リガンド結合ポケットを有する、小さくて一般的に分泌されるタンパク質である(Flower, D. R. (1996) Biochem J 318 (Pt1), 1-14)。リポカリンについての公知のリガンドとしては、レチノール、ステロイド、臭気物質、フェロモンが挙げられ、Lcn2の場合にはシデロフォアが挙げられる(Goetz, D. H., et al., (2002) Mol Cell 10(5), 1033-1043)。シデロフォアは、細菌が宿主から鉄を得るために使用する低分子であり、いくつかの病原体の増殖に必要な補因子である。Lcn2は、哺乳動物の先天性免疫系がシデロフォアを隔離するために使用され、細菌から鉄を奪う。Lcn2を欠損するマウスは正常に見えるが、野生型マウスでは容易に除去される量の細菌のシデロフォア要求株に曝露されると死ぬ(Flo, T. H., et al.,. (2004) Nature 432 (7019), 917-921)(Berger, T., et al., (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103(6), 1834-1839)。従って、Lcn2は鉄輸送タンパク質であると考えられ得、プロB細胞のアポトーシス誘導(Devireddy, L. R., et al., (2001) Science 293(5531), 829-834)、ならびに発生因子としておよび腎臓虚血の防御機構として、尿生殖器系の生物学的性質に関連する(Mori, K., et al., (2005) J Clin Invest 115(3), 610-621)。
Lcn2とインスリン抵抗性および肥満の関係を調査するために実験を行った。
実験手順
細胞培養および分化
3T3-L1細胞を、10%BCSを含むDMEM中で、5%CO2で培養した。コンフルエントに達したところで、細胞を、デキサメタゾン(1μM)、インスリン(5μg/mL)、およびイソブチルメチルキサンチン(0.5mM)を含む前分化カクテルを含む10%FBSのDMEMに曝露した。2日後、7日目の回収の準備まで、インスリンを含むメディウム中に細胞を維持した。NIH-3T3細胞を同一条件下で維持した。いくつかの実験において、3T3-L1細胞は、10%FBSを添加した5μMのロシグリタゾンを2日ごとに変えるだけ分化した。H4IIEラット肝臓癌細胞を、10%FBSを補充したαMEMメディウム(Invitrogen)中、37℃、5%CO2で培養した。細胞を50%コンフルエントで24ウェルプレートに播種した。処理前に、細胞を0.2%FBSを含むαMEMで2回洗浄し、リコンビナントLcn2(10nM)を含むかまたは含まないメディウム中で、陽性対照として平行してDex処理(250nM)を行い一晩(18時間)培養した。翌日、細胞を100nMのインスリンで30分間処理し、その後乳酸およびピルビン酸を添加したKRHバッファ(10mM HEPES、pH7.4、96mM NaCl、4.7mM KCl、1.25mM CaCl2、1.2mM MgSO4、1.2mM KH2PO4、25mM NaHCO3、20mM乳酸、2mMピルビン酸)で2回洗浄した。細胞を、Lcn2、Dexまたは担体溶液を添加したKRHバッファで、37℃でさらに6時間インキュベートした。グルコースオキシダーゼアッセイのために上清を回収して、RNA解析のために細胞をTRIzol(Invitrogen)で回収した。リコンビナントLcn2は記載されるように生成した(Mori, K. et al., J Clin Invest 115:610-621 (2005))。カブトガニ遊走細胞溶解物ゲル凝血塊アッセイにより100μlの1nMリコンビナントLcn2溶液中でエンドトキシンをアッセイし(0.125EU/ml感受性、Cambrex/Lonza, Inc., Allendale, NJ)、該アッセイについて検出限界より低いことを見出した。
動物
全ての動物研究は、実験動物の世話および使用のための国立衛生研究所指針に概説される原理および手順に従って行った。高脂肪食研究について、Taconicから3〜4週齢のFVB雄マウスを得た。マウスに標準的な固形飼料(Formulab 5008)または高脂肪食(55%脂肪カロリー、Harlan-Teklad 93075)を与えた。4〜5週齢で動物を食餌処理に供し、食餌の12週目(無制限食餌状態)で血漿Lcn2レベルを測定した。9週齢のdb/db雌および痩せた同腹子対照(+/+またはdb/+)をCharles Riverから得た(それぞれn=8)。マウスに標準的な固形飼料(Formulab 5008)を与え、無制限食餌状態で血漿Lcn2レベルを測定した。雄ob/obまたはob/+マウスをJackson Labsから購入し、10ヶ月齢で研究した。
ノーザンブロット
Trizol(登録商標)に細胞を溶解し、製造業者の指示に従って処理した。野生型C57BL/6Jマウスからマウス組織を回収した。それぞれの試料について、10μgの全RNAをホルムアルデヒドアガロースゲルに供し、ナイロン膜に転写してUltrahyb(登録商標)(Ambion)の適切な32P-標識プローブとハイブリダイズした。
定量的PCR
定量的PCRのために、RETROscript(登録商標)(Ambion)を使用して第一鎖cDNA合成を行った。キットに記載されるようにオリゴdTプライマーを使用して、全RNA(1.5mg)を第一鎖cDNAに転換した。cDNAを増幅して、Brilliant(登録商標)SYBR(登録商標)Green QPCRマスターミックス(Stratagene)により製造業者の指示に従って検出した。Mx3000P(登録商標)サーモサイクラー(Stratagene)でリアルタイムPCRを行って、そのソフトウェアを使用してそれぞれの反応のサイクル閾値を計算した。確認実験を行って標的Lcn2および内部対照(組織について18S rRNAまたは3T3-L1細胞についてシクロフィリン)の同等有効性を示した。比較Ct法を用いて未処理対照の発現レベルを1としてLcn2転写産物の相対量を決定した。プライマー配列は以下の通りである:
m18S-F, AGTCCCTGCCCTTTGTACACA (配列番号:1);
m18S-R, GATCCGAGGGCCTCACTAAAC (配列番号:2);
mシクロフィリン-F, GGTGGAGAGCACCAAGACAG (配列番号:3);
mシクロフィリン-R, GCCGGAAGTCGACAATGATG (配列番号:4);
mLcn2-F, ACTTCCGGAGCGATCAGTT (配列番号:5);
mLcn2-R, CAGCTCCTTGGTTCTTCCAT (配列番号:6);
mFabp4-F, TGGAAGCTTGTCTCCAGTGA (配列番号:7);
mFabp4-R, CTTGTGGAAGTCACGCCTTT (配列番号:8);
mPparg-F, GCATGGTGCCTTCGCTGA (配列番号:9);
mPparg-R,; TGGCATCTCTGTGTCAACCATG (配列番号:10);
mレプチン-F, AGAAGATCCCAGGGAGGAAA (配列番号:11);
mレプチン-R, TCATTGGCTATCTGCAGCAC (配列番号:12);
mGlut1-F, TTGGAGAGAGAGCGTCCAAT (配列番号:13);
mGlut1-R, CTCAAAGAAGGCCACAAAGC (配列番号:14);
rG6Pase-F, ACCCTGGTAGCCCTGTCTTT (配列番号:15);
rG6Pase-R, ACTCATTACACGGGCTGGTC (配列番号:16)。
血漿Lcn2測定
血漿(1μl)を1x Laemmliバッファに30倍希釈して、15%ゲルのSDS-PAGEでタンパク質を分離し、ニトロセルロース膜に転写した。抗マウスリポカリン2特異的ヤギIgG(カタログ#AF1857, R&D Systems)を使用してLcn2タンパク質についての一本バンドが約23kDaで検出された。膜間の標準を示すそれぞれの膜上の3対照試料を用いて、光度計によりバンドを定量した。濃度は、対照を1とした血漿1μL当たりの任意の単位である。
生殖腺辺縁脂肪組織からの脂肪細胞、マクロファージおよび非マクロファージストロマ微小管細胞(SVC)の単離
5週齢の雄C57BL/6JマウスをJackson Labs(Bar Harbor, ME)から得て、6週齢から開始して固形飼料または高脂肪食(Research Diets D12331)を与えた(それぞれの集団についてn=7)。26〜34週齢で、食餌を与えたマウスをCO2吸入により殺して、精巣上体脂肪組織(約0.5g)を回収して、10mg/mL脂肪酸欠乏BSAを含むKrebs Ringer HEPESバッファ(Sigma-Aldrich, St. Louis, MI)に入れた。組織を細かな断片に切り分け、1000gで10分間遠心分離して赤血球およびその他の血液細胞を除去した。次いで、振盪ウォーターバス(80Hz)中で45分間、細かく切り分けた組織を0.12単位/mLの低エンドトキシンコラゲナーゼ(Liberase 3; Roche Applied Science, Indianapolis, IN)に37℃で消化した。次いで、試料を滅菌300μmナイロンメッシュ(Spectrum Laboratories Inc., Rancho Dominguez, CA)でろ過して未消化断片を除去した。得られた懸濁物を500gで10分間遠心分離して脂肪細胞からSVCを分離した。脂肪細胞を除去してKrebs Ringer HEPESバッファで洗浄し、次いでRNA単離のためにTrizol(登録商標)に懸濁した。SVC画分を、赤血球溶解バッファ(0.154mM NH4Cl、10mM KHCO3、0.1mM EDTA)中で2分間インキュベートした。次いで細胞を500gで5分間遠心分離し、100μLのFACSバッファ(5mM EDTAおよび0.2%脂肪酸欠乏BSAを含むPBS)に再懸濁した。細胞を両方向振盪器上で、FcBlock(20μg/mL;BD Pharmingen, San Jose, CA)と共に暗所で、30分間4℃でインキュベートした。その後、それらをF4/80に対するAPCコンジュゲート一次抗体(5μg/mL; Caltag Laboratories Inc., Burlingame, CA)およびCD11bに対するPEコンジュゲート抗体(Mac-1; 2μg/mL)と共に50分間インキュベートした。SCVの対照アリコートをAPC標識(2μg/mL)およびPE標識(5μg/mL)アイソタイプ対照抗体(Caltag Laboratories Inc., Burlingame, CA)とインキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄してFACSバッファに懸濁した。F4/80+/CD11b+マクロファージおよびF4/80-/CD11b-非マクロファージSVCをMoFlo(DakoCytomation, Fort Collins, CO)蛍光活性フローソーターで単離した。分取後、RNA単離のためにF4/80+/CD11b+およびF4/80-/CD11b-細胞をTrizol(登録商標)に懸濁した。
レトロウイルス感染
ピューロマイシンまたはハイグロマイシン選択マーカーを使用してpMSCV(Clontech)中にレトロウイルスを構築した。CellPhect(登録商標)トランスフェクションキット(GE Healthcare)を使用して、gag-polおよびVSV-Gタンパク質を発現するプラスミドと共に、ウイルス構築物を293T細胞にトランスフェクトした。48時間後に上清を回収した。ろ過して細胞残渣を除去した後に、上清を70%コンフルエントの3T3-L1またはNIH 3T3細胞のいずれかに添加し、48時間後にピューロマイシン(4μg/mL)またはハイグロマイシン(175μg/mL)による選択を開始した。細胞を選択し、即座に研究したかまたは後の使用のために凍結した。
プロモーター構築物、同時トランスフェクションおよびルシフェラーゼアッセイ
マウスLcn2プロモーターの5'非翻訳領域に特異的な1742、731、320、222および131塩基対の断片を増幅するためおよびpA3-lucレポーターベクターへのクローニングを容易にするための制限酵素切断部位を含ませるためにオリゴヌクレオチドを選択した。全ての構築物を配列決定により確認した。フォワードプライマーが所望の変異を含む以外は同じ手順を使用して、突然変異222プラスミドを構築した。Lipofectamine(登録商標)でNIH-3T3細胞にレポーター:β-gal:C/EBP発現プラスミドを1:0.1:2の割合で同時トランスフェクションした。細胞を48時間インキュベート、溶解し、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイキット(Roche)を使用してアッセイした。β-gal活性に対してルシフェラーゼ活性を標準化した。
クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ
3T3-L1細胞を、1%ホルムアルデヒドで、15分間室温で処理し、DNAとDNA結合タンパク質複合体を結合させた。Upstateのキットを使用してChIPアッセイを行った。2mgの以下の抗体:Santa Cruz Biotechnology のC/EBPα(sc-61)、C/EBPβ(sc-150)、およびC/EBPδ(sc-636)を使用して免疫沈降を行った。免疫沈降前に得られた細胞から調製されたクロマチンDNAのアリコートをインプットDNAとして使用した。免疫沈降されたインプットDNAをプライマーペア5'-CTGCTGACCCACAAGCAGT-3' (配列番号:17)および5'-GGCAAGATTTCTGTCCCTCTC-3' (配列番号:18)を使用して、Lcn2遺伝子プロモーター領域でPCRによりアッセイした。増幅されたPCR産物を2%アガロース電気泳動ゲルで可視化した。
shRNA仲介Lcn2ノックダウン
マウスLcn2を標的とする4種類の独立したヘアピンをClontechのソフトウェアを使用して開発した。これらのヘアピンを合成して、レトロウイルス送達ベクター(pSIREN-RetroQ; Clontech)にクローニングし、Phoenix細胞にトランスフェクトした。ウイルス上清を使用して、記載のように3T3-L1前脂肪細胞に形質導入して(Rosen, E. D., et al., (2002) Genes Dev 16(1), 22-26)、感染の48時間後に感染した細胞を4μg/mlピューロマイシンで選択した。Lcn2発現の阻害はQ-PCRおよびウェスタンブロットで測定した。
グルコースオキシダーゼアッセイ
グルコースオキシダーゼ比色定量法について、発明者はAmplex(登録商標)Redグルコース/グルコースオキシダーゼアッセイキットを使用し、製造業者の指示に従った。571nmでの吸光を、PowerWaveTM XSマイクロプレート分光光度計(BioTek)で測定した。この実験は3回行った(各条件について3ウェル)。
グルコース取り込みアッセイ
細胞を分化試薬(DMI)に3日間曝露した以外は上記のようにして3T3-L1細胞を分化させた。3日目に、細胞に2%FBSを含むDMEMを与えた。アッセイの24時間前に新鮮なメディウムに取り換えた。アッセイ前に、無血清DMEM中で細胞を3時間飢餓状態に置いた。グルコース取り込みは以前報告されたように測定した(Houstis, N., et al., (2006) Nature 440 (7086), 944-948)。
統計学的解析
痩せたマウスと肥満のマウスの血清Lcn2レベルを比較する以外は、一般的に、データまたはスモールnの非正規分布のためにノンパラメトリックMann-Whitney検定を使用したT検定により統計学的解析を行った。
結果
3T3-L1脂肪細胞中のLcn2発現はデキサメタゾンおよびTNF-αにより誘導される。ゲノムスクリーニングを行って、モデル系として3T3-L1脂肪細胞のDexおよびTNF処理を使用し、インスリン抵抗性の共通の機構を同定した。この試験の主要な結果は、反応性酸素種(ROS)に関連する遺伝子がこれら2つの全く異なる処理によって協調して影響を受けたということであった(Houstis, N., et al, (2006) Nature 440 (7086), 944-948)。マイクロアレイ実験においては、Lcn2はTNFおよびDexの両方により強く誘導されるもう1つの遺伝子であった。この結果をQ-PCRで確認し、Dexによりおよそ80倍およびTNFにより30倍のLcn2 mRNAの誘導が示された(図1)。インスリン感受性増加剤ロシグリタゾンは、いずれかの薬剤によるLcn2 mRNA発現を大きく減少させた。
インビトロおよびインビボにおいてLcn2は脂肪細胞で高度に発現される
他の研究により、脂肪中のLcn2発現(Lin, Y., et al., (2001) J Biol Chem 276(45), 42077-42083;(Soukas, A., et al., (2000) Genes Dev 14(8), 963-980;Baudry A, et al., (2006). J Cell Sci 119:889-897;Kratchmarova, I. et al., (2002) Mol Cell Proteomics 1:213-222)が報告されているが、他の部位について脂肪の発現を比較する試みはなされていない。雄C57B1/6マウスの心臓、脳、脾臓、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、精巣、褐色脂肪組織および白色脂肪組織を含むマウス組織のノーザン解析により、白色脂肪組織は野生型雄マウスにおけるLcn2発現の明らかなドミナント部位であることが示された(データは示さず)。肺および精巣/精巣上体においても有意な量のLcn2 mRNAが見られ、両方、主要な発現部位であると報告された(Friedl, A., et al., (1999) Histochem J 31(7), 433-441)。
次いで、Lcn2発現は脂肪生成の間に調節されるかどうかを決定することが考えられた。Dex、メチルイソブチルキサンチン(Mix)、およびインスリンを含む標準的なカクテルを使用して3T3-L1前脂肪細胞を分化させ、種々の時点でQ-PCRによりLcn2発現を評価した。迅速かつ甚大なLcn2 mRNAの誘導が分化の1日目に報告され(図2A)、レベルは少なくとも7日間高いままであった。誘導カクテルのそれぞれの構成要素の寄与を試験して(図2B)、予想されたようにDexがLcn2誘導のドミナントな一因であることがわかった。Mixはまた、Lcn2レベルに大きな効果を有したが、DexおよびMixの組合せはインスリンからの大きな影響を受けることなく最大限の効果を有した。3T3-L1細胞におけるLcn2発現が特異的な誘導カクテルに依存するかどうか、またはそれ自体が脂肪生成に関係するかどうかを試験するために、さらなる実験を行った。これは、Dex、Mixまたはインスリンの非存在下、ロシグリタゾンのみを使用して、分化中の3T3-L1細胞によって扱われた(address)。Lcn2発現は、Dex/Mixが存在する場合よりも緩やかに上昇した(図2C)が、分化の後期では同様のレベルに達した。図1と図2A〜Cのロシグリタゾンの効果の間の明らかな矛盾は、細胞の発生状態を考慮することで解決され、未分化の細胞ではロシグリタゾンが脂肪生成を促進するのでLcn2発現が間接的に促進される。しかしながら成熟した細胞では、ロシグリタゾンの直接的な効果はLcn2発現の抑制である。
脂肪細胞におけるLcn2の発現はC/EBP依存的である
多くの脂肪細胞遺伝子がPPARγおよび/またはbZIPタンパク質のC/EBPファミリーの一員により転写制御される(Rosen, E. D., et al., (2000) Genes Dev 14(11), 1293-1307;Baudry A, et al., (2006). J Cell Sci 119:889-897)。Lcn2を抑制するロシグリタゾンの能力(図1)により、PPARγがLcn2発現の直接的な誘導体である可能性は低いことが示唆された。従って、C/EBPアイソフォームがこの目的で機能し得るかどうかを試験した。レトロウイルス形質導入により送達されたC/EBPα、βおよびδは全て、PPARγ-/-繊維芽細胞における内因性Lcn2発現の誘導に効果的であった(図3A)。これらの細胞を選択して同時に生じる脂肪生成の複雑な影響を回避した;C/EBPはPPARγの非存在下では分化を誘導できない(Rosen, E. D., et al., (2002) Genes Dev 16(1), 22-26)。Lcn2プロモーター中のC/EBP結合部位を同定するために、コンピューター検索を行った(図3B)。これにより、マウス、ラットおよびヒトの間で高度に保存されたマウスプロモーターの-218での潜在的C/EBP部位が明らかになった。NIH-3T3細胞におけるトランス活性化アッセイにより、この部位を削除する欠損が作製された場合に、この構築物の発現を誘導するC/EBPδの能力が極端に低減したことが示された(図3C)。C/EBPαおよびβで同様の効果がみられた(データは示さず)。この部位のコア配列のTTGCからGGGAへの変異によりC/EBPδがレポーターをトランス活性化する能力が大きく減少した(図3D)。最終的に、分化後の異なる時点における3T3-L1細胞の近位Lcn2プロモーターのクロマチン免疫沈降(ChIP)を使用して、生細胞における特異的なC/EBPアイソフォームのこの因子への結合が説明された(データは示さず)。分化の前に、C/EBPアイソフォームはこの部位に結合していなかったが、C/EBPβおよびδは誘導の1日後には強く結合していた。4日目までに、C/EBPαがこの部位に同様に結合し、3T3-L1脂肪生成の間のこの因子の遅い出現と一致し(Rosen, E. D., et al., (2006) Nat Rev Mol Cell Biol 7 :885-896)、その後低い発現を反映するC/EBPβおよびδ結合の減少が続く。
肥満ではLcn2レベルは高い
次に、Lcn2発現が肥満により影響を受けるかどうかを試験した。肥満(ob/ob)マウスの脂肪組織由来の溶解物のウェスタンブロットにより、痩せた対照と比較してLcn2の有意な増加が明らかとなった(図4A)。標準的な食餌または高脂肪食を与えられたマウス由来の脂肪組織を、成熟脂肪細胞、ストロマ微小管細胞およびマクロファージに画分した後に試験した(図4B)。痩せた動物(30.3±0.4g;n=9)は、脂肪細胞およびストロマ微小管画分において同等のLcn2 mRNA発現を有したが、肥満動物(53.0±01.0g;n=8)は、ストロマ微小管画分から離れて成熟脂肪細胞に近づくLcn2 mRNA発現のシフトを有した。痩せまたは肥満状態のいずれにも脂肪組織マクロファージのLcn2の有意な発現はなかった。やせた動物のSVFにおいて有意なLcn2発現を発見し、培養前脂肪細胞においては低いレベルが見られたことは幾分か驚くべきことであった。このことについて、2つの妥当な説明がある。一つ目は、SVFから脂肪細胞を分離するための使用した低速遠心分離法は、分化過程の初期(つまり、有意な脂質の蓄積の前)にある細胞を分離し得ない。Lcn2は分化の初期に誘導されると思われるために、これはSVFにおいて予想されるLcn2の量よりも高いことの原因であり得る。あるいは、SVFの他の細胞型(例えば、内皮細胞または繊維芽細胞)において有意なLcn2発現が存在し得る。ob/obマウスからのデータに一致して、Lcn2タンパク質発現は高脂肪食動物のWATで高かった(データは示さず)。
脂肪組織において高い発現があったので、次にLcn2の高い血清レベルが脂肪過多と関係するかどうかを評価した。実際に、3種類の異なるマウス肥満モデルにおいて高い血清Lcn2レベルが見出された。痩せた対照と比べて、ob/obマウス(1.5倍±0.40、p=0.02;図4C)、db/db(3.3倍±1.80、p=0.01;図4D)マウス、および高脂肪食(3.6倍±5.6、p=0.03;図4E)におけるLcn2は高かった。これらの試料の全ては、Lcn2レベルについての可能性のある栄養学的影響のための複雑性を減少するために、食餌状態で回収した。しかしながら、絶食状態においてもLcn2レベルは肥満db/dbマウスにおいて依然として高い(13.6倍±4.2、p=0.01)。これらのマウスの体重は以下の通りであった:31.6±0.8g(標準)対39.9±0.7g(HFD);21.0±0.45g(db/+)対41.3±0.85g(db/db);26.0±0.51g(ob/+)対47.7±3.51g(ob/ob)。
Lcn2は培養脂肪細胞においてインスリン抵抗性を促進する
Lcn2がインスリン抵抗性を促進することを示すように、肥満における血清の上昇、TNFおよびDexによる誘導、TZDによる抑制、およびRBP4との構造類似性を含むいくつかの要因が集中している。このことを直接的に試験するために、精製Lcn2を成熟3T3-L1脂肪細胞に添加し、次いでインスリン刺激性グルコース取り込みを測定したが、アポLcn2としてまたはタンパク質をシデロフォア-鉄複合体とインキュベートした後のいずれかで、Lcn2存在下でグルコース取り込みの一貫した変化は見られなかった(データは示さず)。このことは、大量のタンパク質を生成および分泌する3T3-L1脂肪細胞の培養メディウム中ではLcn2は制限されないという事実を反映し得ると考えられた。条件付けメディウムにおけるLcn2の量は肥満マウスの血清において見られる量と同等である(データは示さず)。次いでこの問題は、Lcn2レベルの減少により改善されたインスリン作用が生じるかどうかを問うことによって別の方向からアプローチされた。これは、Lcn2に対するshRNAのレトロウイルス送達によって達成された。Q-PCR(図5A)またはウェスタンブロット(データは示さず)で測定した場合にLcn2の発現を>90%減少したヘアピンを同定した。重要なことに、このshRNAを発現する細胞は、脂質蓄積のオイルレッドO染色(データは示さず)およびマーカー発現(図5A)により測定した場合に、対照ヘアピンを発現する細胞と同程度に分化した。しかしながら、Lcn2 shRNAを発現する細胞は、基底状態およびインスリン刺激状態(図5B)の両方で高いグルコース取り込みを示した。重要なことに、インスリン作用を反映するグルコース取り込みの構成要素(つまり、インスリン刺激性グルコース取り込みおよび基底グルコース取り込みの差)は、Lcn2 shRNAを発現する細胞で有意に上昇した(図5C)。
次に、外因性Lcn2が培養H4IIe肝細胞のインスリン感受性に影響し得るかどうかを試験した。シデロフォアおよび鉄と複合体化したLcn2自身は、グルコース生成(図6A)またはグルコース-6-ホスファターゼ発現(図6B、6C)のいずれにも識別可能な効果を有さなかった。しかしながら、リガンド化されたLcn2は、インスリンがこれらのパラメーターを抑制する能力を低減し得る。インスリンの存在下または非存在下のいずれにおいても、PEPCK mRNAレベルでLcn2の効果は見られなかった(データは示さず)。重要なことに、これらの細胞においてLcn2により誘導されるインスリン抵抗性の規模は、Dexにより達成されるものと同等であった。興味深いことに、アポLcn2(つまり、シデロフォアおよび鉄と複合化していない)は、培養肝細胞においてインスリン抵抗性を誘導できなかった(図5D)。
議論
ここで、脂肪細胞が、全身の代謝に影響を及ぼす種々のタンパク質を分泌することが理解されよう。これらには、インスリン感受性を促進する因子およびインスリン抵抗性を誘導するその他の因子が含まれる(Halaas, J. L. et al., (1995) Science 269(5223), 543-546;Scherer, P. E., et al., (1995) J Biol Chem 270(45), 26746-26749;Fukuhara, A., et al., (2005) Science 307(5708), 426-430; Steppan, C. M., et al., (2001) Nature 409(6818), 307-312;Yang, Q.,et al., (2005) Nature 436(7049), 356-362)。本明細書の結果により、Lcn2は脂肪細胞で高度に発現されること、その発現は肥満により制御されることおよびLcn2はインスリン抵抗性を誘導することが示される。この意味において、Lcn2は、リポカリンスーパーファミリーの別の一員であり、Lcn2と近い相関を有するRBP4と非常に類似した様式でふるまう。本明細書中のデータは、まず、脂肪細胞はLcn2発現のドミナントな供給源であり得ることを示す。さらに発明者は、脂肪細胞特異的な発現は、Lcn2プロモーターの規定の因子であるC/EBP依存的なトランス活性化により大部分が決定されることを示す。BATにおけるLcn2の欠失は興味深いものであり、C/EBPの他に白色脂肪特異的な因子が必要であること、またはBATはLcn2合成の特異的なリプレッサーを含むことが示唆される。
Lcn2は、アポトーシスから尿生殖器発生に関連する子宮の発生まで、多くの機能を果たすと提唱されている(Devireddy, L. R., et al., (2001) Science 293(5531), 829-834;Ryon, J., et al., (2002) Biochem J 367(Pt1), 271-277;Yang, J., et al., (2002) Mol Cell 10(5), 1045-1056)。しかしながら、ノックアウトマウスから得られたデータによると、Lcn2は、微生物に対する非特異的防御として使用される先天性免疫系の一部として機能することが示唆される(Flo, T. H., et al., (2004) Nature 432(7019), 917-921;Berger, T., et al., (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103(6), 1834-1839)。この能力において、Lcn2発現は、呼吸器系上皮および小腸上皮などの潜在的病原体と直接接触する炎症性上皮組織において生じる(Cowland, J. B., and Borregaard, N. (1997) Genomics 45(1), 17-23)。脂肪組織は、通常、侵入性の病原体とは直接接触するとは考えられないが、一連のデータの蓄積により、脂肪が免疫活性および急性期反応に密接に関連していることが示唆される。さらに、肥満は、複数の炎症マーカーの増加を伴う前炎症性状態であると考えられ(Shoelson, S. E., Lee, J., and Yuan, M. (2003) Int J Obes Relat Metab Disord 21 増刊号3, S49-52)、肥満動物において見られる高いLcn2がこの考えに一致する。
ここで提示した研究に基づいて、Lcn2が脂肪細胞由来のインスリン抵抗性のメディエーターとして機能することが明らかである。この主張は、直接的および間接的の両方のいくつかの証拠のつながりに基づく。第一に、インスリン抵抗性を促進するグルココルチコイドおよびTNF-αなどの薬剤は、Lcn2の発現を誘導する。同様に、脂肪細胞においてインスリン感受性の減少も生じる高血糖症は、脂肪細胞のLcn2の高い発現を生じる(Lin, Y.. et al., (2001) J Biol Chem 276(45), 42077-42083)。第二に、インスリン感受性増加TZD化合物は、脂肪細胞におけるLcn2の発現を減少する(図3およびWang, Y. et al. (2007) Clin Chem. 53:34-41)。第三に、Lcn2は、複数の肥満マウスモデルにおいて高い。最終的に、培養脂肪細胞におけるLcn2の減少によりインスリン感受性が改善され、この分泌された分子と細胞のグルコースホメオスタシスの直接的な関係が示された。外因性Lcn2が3T3-L1脂肪細胞のグルコース取り込みに影響を及ぼさなかった(データは示さず)という事実は興味深いことであり、培養脂肪細胞による条件付けメディウム中のLcn2レベルは非常に高いためこれ以上の増加効果を有さないことが示唆される。興味深いことに、db/dbマウスのデータ(Lin, Y. et al., (2001) J Biol Chem 276:42077-42083, 2001;Wang, Y. et al., (2007). Clin Chem 53:34-41)は、この肥満モデルの肝臓中のLcn2発現が高いことを示し、発明者のデータは肝臓Lcn2発現が高脂肪食マウスにおいて低い傾向にあることを示唆する(データは示さず)。従って、脂肪細胞供給源以外のLcn2の血清への寄与は不明であり、肥満モデル間で異なり得る。
本発明は、その例示的態様に関して具体的に示され記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本明細書中になされ得ることを当業者は理解しよう。

Claims (20)

  1. Lcn2を含む試験試料と試験化合物を接触させる工程、および試験化合物の存在下のLcn2活性のレベルと試験化合物の非存在下のLcn2活性のレベルを比較してLcn2活性の調節を決定する工程を含み、Lcn2活性の変化がLcn2活性を調節する化合物を示す、Lcn2活性を調節する化合物の同定方法。
  2. 試験化合物の存在下のLcn2活性のレベルが、試験化合物の非存在下のLcn2活性のレベルと比較して低い、請求項1記載の方法。
  3. 試験試料が細胞を含む、請求項1記載の方法。
  4. Lcn2を発現する細胞を含む試験試料と試験化合物を接触させる工程、および試験化合物の存在下のLcn2発現のレベルと試験化合物の非存在下のLcn2発現のレベルを比較してLcn2発現の調節を決定する工程を含み、Lcn2発現の変化がLcn2発現を調節する化合物を示す、Lcn2発現を調節する化合物の同定方法。
  5. 試験化合物の存在下のLcn2発現のレベルが、試験化合物の非存在下のLcn2発現のレベルと比較して低い、請求項4記載の方法。
  6. Lcn2発現がLcn2 mRNAの発現である、請求項5記載の方法。
  7. Lcn2活性を減少する化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物におけるインスリン抵抗性の減少方法。
  8. Lcn2発現を減少する化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物におけるインスリン抵抗性の減少方法。
  9. Lcn2の発現がLcn2 mRNAの発現である、請求項8記載の方法。
  10. Lcn2活性を減少する化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物におけるインスリン感受性の増加方法。
  11. Lcn2発現を減少する化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物におけるインスリン感受性の増加方法。
  12. Lcn2発現がLcn2 mRNAの発現である、請求項11記載の方法。
  13. 哺乳動物から得られた生物試料のLcn2活性を測定する工程を含み、Lcn2活性の増加がインスリン抵抗性または関連する症状を示す、哺乳動物におけるインスリン抵抗性または関連する症状の診断方法。
  14. 生物試料が、組織、全血、血清、血漿または尿からなる群より選択される、請求項13記載の方法。
  15. Lcn2タンパク質またはその断片の量が測定される、請求項14記載の方法。
  16. Lcn2タンパク質またはその断片の量が免疫アッセイにより測定される、請求項15記載の方法。
  17. 哺乳動物におけるインスリン抵抗性を減少するための医薬の製造のための、Lcn2活性を減少する化合物の使用。
  18. 哺乳動物におけるインスリン抵抗性を減少するための医薬の製造のための、Lcn2発現を減少する化合物の使用。
  19. 哺乳動物におけるインスリン感受性を増加するための医薬の製造のための、Lcn2活性を減少する化合物の使用。
  20. 哺乳動物におけるインスリン感受性を増加するための医薬の製造のための、Lcn2発現を減少する化合物の使用。
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