JP2010275847A - 揺動免震構法建築物 - Google Patents
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Abstract
【課題】地震力を受けた免震建築物を建築物自体の揺動により制震し、地震エネルギーが建築物の内部に流入を抑止し、かつ、地震力を減衰させることを可能とする。
【解決手段】 建築物100を吊る架構体200を設け、この架構体200を構成する梁部220から建築物100を吊部材300により両側から吊り、変位拡大作用により吊部材300のバネ定数を増大させ、かつ地震力による建築物100自体の揺動が免震作用、動吸振作用、変位拡大作用等の多重作用により地震力を減衰させる。
建築物100を両側から吊る吊部材300は、揺動に伴い、一方に引張り力が働くと、他方には圧縮力が働く。このとき、鉛直方向に対するバネ定数は増大し建築物100の上下動が制震され、建築物内部への地震エネルギーの流入が軽減されて建築物100の加速度変位が抑えられ、居住者への安全性向上が図られ、学校等の公共建築物等への耐震対策を可能とする。
【選択図】図23
【解決手段】 建築物100を吊る架構体200を設け、この架構体200を構成する梁部220から建築物100を吊部材300により両側から吊り、変位拡大作用により吊部材300のバネ定数を増大させ、かつ地震力による建築物100自体の揺動が免震作用、動吸振作用、変位拡大作用等の多重作用により地震力を減衰させる。
建築物100を両側から吊る吊部材300は、揺動に伴い、一方に引張り力が働くと、他方には圧縮力が働く。このとき、鉛直方向に対するバネ定数は増大し建築物100の上下動が制震され、建築物内部への地震エネルギーの流入が軽減されて建築物100の加速度変位が抑えられ、居住者への安全性向上が図られ、学校等の公共建築物等への耐震対策を可能とする。
【選択図】図23
Description
この発明は、免震技術に関し、特に、地震力による建物の加速度変位を抑えた揺動免震構法建築物に関する。
(ここで、揺動免震構法とは、建物を両側から吊って、地震時に揺りかごのように建物に加わる地震力を減衰させる免震構法をいうものとする。)
(ここで、揺動免震構法とは、建物を両側から吊って、地震時に揺りかごのように建物に加わる地震力を減衰させる免震構法をいうものとする。)
耐震は建物の剛性を上げ、地震の力に抵抗しようとする構法で、建物の構造自体は保護されるが、建物内部にある家具類の転倒や、仕上材の損傷などによる二次災害発生の可能性がある。
これに対し免震は、建物と地面を切り離し、地震の揺れを建物に伝わらないようにし建物を安全に保とうとする構法である。地震力を減衰し、ゆっくりした周期の長い揺れに変え建物自体だけでなく、建物内部も保護される。
このため、免震構法は低層階の建築物から高層階の建築物まで広く適用されている。また、免震構法は、新築だけでなく既存建築物の地震対策としても採用されている。
これに対し免震は、建物と地面を切り離し、地震の揺れを建物に伝わらないようにし建物を安全に保とうとする構法である。地震力を減衰し、ゆっくりした周期の長い揺れに変え建物自体だけでなく、建物内部も保護される。
このため、免震構法は低層階の建築物から高層階の建築物まで広く適用されている。また、免震構法は、新築だけでなく既存建築物の地震対策としても採用されている。
地震の振動を吸収する免震構法としては、震動エネルギーを吸収するダンパー、震動エネルギーを吸収する粘性流体を用いたオイルダンパー等がある。これらは、施工が容易ではないので施工に工夫を要する。
これに対し、比較的、施工が容易な免震構法の一つに、吊下げ免震構法がある。吊下げ免震構法は、振子の原理を利用し、構造物の固有振動周期を長周期化するもので比較的容易に施工ができる。
すなわち、吊下げ免震構法は、振子の原理を利用し地震力を振子の原理を利用して、建物の固有周期を長周期化し、地震力を、建物に振り子運動させることで減衰させ建物の被害を回避する(特許文献1.2)。
すなわち、吊下げ免震構法は、振子の原理を利用し地震力を振子の原理を利用して、建物の固有周期を長周期化し、地震力を、建物に振り子運動させることで減衰させ建物の被害を回避する(特許文献1.2)。
学校等の公共建築物の地震対策は喫緊の課題であり、自治体等では限られた予算で、かつ施工期間の短縮化が求められる。また、教室を使用している状態での安全な施工が求められる。特に、地震力による水平振動に対し、学校等の公共建築物では児童、生徒の不安を避ける観点からも建築物の耐性が求められる。
また、揺動の語を用いた例(特許文献4)があるが、同文献の図8に揺動支持構体が開示されているが、建築物を両側から支持部材で吊る構成ではないので、地震力の弱い段階でも建物が揺れて特に公共建築物には適さず、高層建築物における免震の例を示したものである。
また、鋼材の変位拡大作用によりブレースの座屈を単に防ぐ例を示したにすぎない(特許文献5)。
また、揺動の語を用いた例(特許文献4)があるが、同文献の図8に揺動支持構体が開示されているが、建築物を両側から支持部材で吊る構成ではないので、地震力の弱い段階でも建物が揺れて特に公共建築物には適さず、高層建築物における免震の例を示したものである。
また、鋼材の変位拡大作用によりブレースの座屈を単に防ぐ例を示したにすぎない(特許文献5)。
吊り免震構法の一つである吊下げ免震構法では、振子の原理をそのまま用いるので、地震力により水平の揺れを生じ易い難点があり、特に学校、病院等の公共建築物の耐震化には適さないという問題点がある。
吊下げ免震構法の上記の例(特許文献1、2)では、振子の原理を利用した免震を示したに過ぎず、既存建築物の免震化を示唆するものではなく、V字の吊り材の例示したに留まる。また、他に吊下げ免震構法の例(特許文献3)もあるが、吊りの形態がV字ではないことから振子の原理を十分応用し得ない。
振子の原理を利用した吊下げ免震構法では、建築物を吊下振子の原理を適用して、建物の固有周期を長周期化し、建物に加わった地震力を振子振動により緩やかに減衰させるという利点がある反面、振子そのものであるが故、建物の横揺が生じ易いとう難点がある。
このため、建築物の用途によっては、振子の原理を利用した吊下げ免震構法による耐震化が適さない場合もある。
このため、建築物の用途によっては、振子の原理を利用した吊下げ免震構法による耐震化が適さない場合もある。
そこで、振子の原理を利用した吊下げ免震構法の横揺れによる建物への地震エネルギーの流入の問題を解消し、吊下げ免震構法の利点を活かすことが求められる。
この発明の目的は、振子の原理を利用した吊下げ免震構法の横揺れに伴う建物への地震エネルギーの流入の問題を解消した揺動免震構法建築物を提供することにある。
すなわち、耐震対策の対象となる建築物に対する加速度変位を抑えた揺動免震構法建築物を提供することを目的とする
すなわち、耐震対策の対象となる建築物に対する加速度変位を抑えた揺動免震構法建築物を提供することを目的とする
上記目的を達成するため、建築物の両側を架構体の梁部から吊部材によって吊り、上記架構体の柱部底部に受けた地震力を、架構体の持つ弾性力で先ず減衰させる構成とする。
また、地震による水平方向の揺れは、建築物の両側を吊る一方側吊部材には引張り力、他方側吊部材には圧縮力が偏倚(バイアス)力として及ぶ。この変位力は、両側一対の吊部材の鉛直方向バネ定数が増大させる。
建築物自体の水平振動時には、一対の吊部材に相反する方向の偏倚力を受け、上記一対の弾性を有する吊部材で構成するバネの鉛直方向バネ定数を増大させ、建築物の上下方向の揺れに対し制震動作をする構成とする。
上記吊部材は、耐力以下で弾性範囲内の荷重となるよう、吊部材本数、架構体の構造設計を行い、所定の地震力に対しては、上記吊部材の弾性力で建築物の揺れを阻止する。
また、所定の地震力を超える地震力に対しては、建築物自体の揺動が、免震力、乃至動吸振的な制震力に、建築部の揺側に吊るした吊部材が寄与する構成とする。
また、地震による水平方向の揺れは、建築物の両側を吊る一方側吊部材には引張り力、他方側吊部材には圧縮力が偏倚(バイアス)力として及ぶ。この変位力は、両側一対の吊部材の鉛直方向バネ定数が増大させる。
建築物自体の水平振動時には、一対の吊部材に相反する方向の偏倚力を受け、上記一対の弾性を有する吊部材で構成するバネの鉛直方向バネ定数を増大させ、建築物の上下方向の揺れに対し制震動作をする構成とする。
上記吊部材は、耐力以下で弾性範囲内の荷重となるよう、吊部材本数、架構体の構造設計を行い、所定の地震力に対しては、上記吊部材の弾性力で建築物の揺れを阻止する。
また、所定の地震力を超える地震力に対しては、建築物自体の揺動が、免震力、乃至動吸振的な制震力に、建築部の揺側に吊るした吊部材が寄与する構成とする。
この発明では、建築鋼材の機械的性質の弾性を積極的に用い、地震力がある程度までは鋼材の弾性範囲で建物を静止状態とし、更に大きな地震力に対しては、建築物の両側に設けた支持部材によるブランコ運動を利用したゆり籠揺動により地震力を減衰させ、揺動による建築物の固有周期を長周期化が図れる。
これにより地震時に、建築物の損壊および人的被害を回避し得る
これにより地震時に、建築物の損壊および人的被害を回避し得る
また、吊部材の弾性範囲を超えるような地震力の場合は、上記吊部材を交互に軸とし建築物が揺動し、実質的に建築物の固有周期が長周期化され、地震波との共振を回避することができる。
地震力が強くなり、建築物が揺動を開始すると、吊部材は交互に振子運動をすることになるが、建築物の両側に設けた吊部材の一方には圧縮力、他方には、引張り力を受け、鉛直方向の吊部材のバネ定数は増大して鉛直方向の制震が働く。
このとき、上記吊部材の各々は、振子の最上位点でバネ等の制震手段を講じているので最大振幅から転移するときでも、弾性範囲内に保つことができ座屈による材料の破損を回避できる。
地震力が強くなり、建築物が揺動を開始すると、吊部材は交互に振子運動をすることになるが、建築物の両側に設けた吊部材の一方には圧縮力、他方には、引張り力を受け、鉛直方向の吊部材のバネ定数は増大して鉛直方向の制震が働く。
このとき、上記吊部材の各々は、振子の最上位点でバネ等の制震手段を講じているので最大振幅から転移するときでも、弾性範囲内に保つことができ座屈による材料の破損を回避できる。
このため、建築物の揺動にともない、上記吊部材は振子運動に応じ伸縮し、一対の吊部材が交互にブランコを漕ぐのと逆に、揺れ方向とは逆方向に建物の重心を移動させる力で地震力を減衰させることができる。
この様に揺動免震構法は、緩やかに地震力を減衰させるので、建築物にかかる加速度負荷を少なくすることができるので、耐震対策を要する建築物に対する耐震対策手段として好適である。
なお、この発明では、地震力を受ける架構体の柱部を変断面とし、建築物を両側から吊る弾性範囲内の吊部材対を複数設けているので、建築物の重心と剛心との位置がずれることによる「ねじれ力」をも減衰分散させる効果があるので、建築物に対する有効な地震対策となる。
建築物100を両側から吊る吊部材300は、揺動に伴い、一方に圧縮力が働くと、他方には引張り力が働く。このとき、鉛直方向に対するバネ定数は増大し建築物100の上下動が制震され、建築物内部への地震エネルギーの流入が軽減されて建築物100の加速度変位が抑えられ、居住者への安全性の向上が図られ、公共建築物等の耐震対策を可能とする。
また、本発明によれば、複数本の梁で構成される堅固な架構体に揺動免震構法を施工するので、比較的容易で、かつ、安価に施工出来、不要に揺れの不安を与えることなく耐震対策を既存公共建築物に施すことが可能である。
なお、本発明に係る揺動免震構法建築物は、既存建築物に係る耐震対策のみならず、新築の建築物にも適用し得るものである。
また、本発明によれば、複数本の梁で構成される堅固な架構体に揺動免震構法を施工するので、比較的容易で、かつ、安価に施工出来、不要に揺れの不安を与えることなく耐震対策を既存公共建築物に施すことが可能である。
なお、本発明に係る揺動免震構法建築物は、既存建築物に係る耐震対策のみならず、新築の建築物にも適用し得るものである。
耐震対策を施す建築物の両側を支持部材で吊り、支持部材の弾性を利用し、ある程度の地震力に対し鋼材の弾性力で建築物の水平振動を抑止する。
更に、地震力が大きくなったときは、上記吊部材の弾性力による伸縮を伴う上記建築物の揺動により、地震力を減衰させることで免震、乃至制震を行う。
更に、地震力が大きくなったときは、上記吊部材の弾性力による伸縮を伴う上記建築物の揺動により、地震力を減衰させることで免震、乃至制震を行う。
図1は、この発明に係る揺動免震構法建築物の一実施例を示す。同図で地震対策が施される建築物100は、例えば、学校校舎である。この建築物100の上部を覆うように強固な架構体200を設けている。
上記校舎である建築物100は、地面より極わずかジャッキアップされており、架構体200は、一対の柱部で構成される門型を複数個梁で連接した構成となっている。この架構体200は、複数の柱部で地盤に対して強固に支えられており、架構体200から吊部材300によって建築物100の両側を抱えるように吊る。
そして、吊下げられた建築物100は、振子作用を用いた揺動により建築物100の固有周期の長周期化が図られ、地震波との共振を防ぐことで被害が抑えられる。
また、建築物100を揺動させることで地震力を減衰させる。
そして、吊下げられた建築物100は、振子作用を用いた揺動により建築物100の固有周期の長周期化が図られ、地震波との共振を防ぐことで被害が抑えられる。
また、建築物100を揺動させることで地震力を減衰させる。
この発明における鋼材は、構造物の挙動を解析する場合の基本となる応力−ひずみ関係に着目する。建築構造部材、特に吊部材300については、長期的に過重に晒されるなかで機械的特性の把握は重要である。
鋼材の応力ひずみ関係において、載荷初期段階では応力とひずみが直線的に増加する。ある応力に至ると、応力の増加が止まり、ひずみのみが増加する状態になる。
これは、ある応力に達した時点で、冶金学的に金属結晶内にすべりが生じ、荷重の増加に耐えられなくなることによる。これが、降伏現象である。
これは、ある応力に達した時点で、冶金学的に金属結晶内にすべりが生じ、荷重の増加に耐えられなくなることによる。これが、降伏現象である。
この降伏現象は、建築で多用されるSN材、SS材、SM材等の炭素量の少ない金属材料の場合にのみ生じるもので、その他多くの金属の場合には降伏現象を伴わない。
高張力鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などでは降伏棚は現れずラウンドハウス形の応力−ひずみ関係となる。
(『鋼構造出版「新しい建築構造用鋼材」129頁 第6章 建築構造用途に関わる鋼材の性質』参照)
高張力鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などでは降伏棚は現れずラウンドハウス形の応力−ひずみ関係となる。
(『鋼構造出版「新しい建築構造用鋼材」129頁 第6章 建築構造用途に関わる鋼材の性質』参照)
引張り強さ、伸びなどの諸特性のほかに、構造物の挙動を解析する場合に応力−ひずみ関係が基本となる
上記のように、建築鋼材によっては、降伏現象を伴うものと伴わないものとがある。
建築構造材では、降伏現象の有無にかかわらず、応力−ひずみ関係を把握できるよう耐力という指標を用いる。
上記のように、建築鋼材によっては、降伏現象を伴うものと伴わないものとがある。
建築構造材では、降伏現象の有無にかかわらず、応力−ひずみ関係を把握できるよう耐力という指標を用いる。
上記のように、降伏現象を伴わない鋼材もあるので、これらの材料の降伏応力の代用として耐力を定義されている。
降伏現象を伴わないと、応力がどの位で弾性変形範囲にあるかという限界が他の鋼では分りにくい。
そこで、永久ひずみが0.2%残るまでの応力を近似的に弾性限度とみなす0.2%耐力を定義している。
降伏現象を伴わないと、応力がどの位で弾性変形範囲にあるかという限界が他の鋼では分りにくい。
そこで、永久ひずみが0.2%残るまでの応力を近似的に弾性限度とみなす0.2%耐力を定義している。
図2に、0.2%耐力の求め方を示す。
縦軸に荷重Pe,横軸に変位Eを取り、伸び計を用いて変位を計測し、荷重−応力特性線図を求め、規定の永久伸びの2%に相当する伸び軸上の点から、試験初期の直線部分(弾性変形部分)に平行線を引き、これが荷重を表す縦軸と交わる点の示す荷重が0.2%耐力の荷重Peである。この0.2%耐力の求め方はJISに定められているところであり、上記吊部材300にかかる加重を定めるのに用いる。
縦軸に荷重Pe,横軸に変位Eを取り、伸び計を用いて変位を計測し、荷重−応力特性線図を求め、規定の永久伸びの2%に相当する伸び軸上の点から、試験初期の直線部分(弾性変形部分)に平行線を引き、これが荷重を表す縦軸と交わる点の示す荷重が0.2%耐力の荷重Peである。この0.2%耐力の求め方はJISに定められているところであり、上記吊部材300にかかる加重を定めるのに用いる。
設置後、吊部材300には、建築物100を常時吊下げるための荷重がかかるので、吊部材300の1本あたりに係る荷重は、例えば、0.2%耐力の60〜70%以下とし、鋼材の変位−荷重特製曲線の直線部分、すなわち弾性範囲内で地震力を受けるようにしている。
ここで、図1のように建築物100を両側から抱きかかえるように、吊部材300で懸持した建築物100が地震力を受けたときの地震力レベルに応じた揺動特性を図3に示す。
地震力が比較的弱いときは、吊部材300は弾性限度範囲内で、伸びかつ復元するのみで(図3 O−A)、建築部100自体の揺れは殆ど無く、居住者に不安を与えない。
単なる振子免震であれば、比較的地震力が弱くても、建物自体が揺れよく加速度変位が大きいので、居住者に不安を与え易い。
単なる振子免震であれば、比較的地震力が弱くても、建物自体が揺れよく加速度変位が大きいので、居住者に不安を与え易い。
これに対し、この発明では、地面に強固に設けられた架構体200で地震力をある程度減衰させるので、上記吊部材300に伝播する地震力は弱められ吊部材300のもつ弾性で地震力を減衰させる。
このため、微動レベルの地震に対し居住者を不感とすることが出来、学校等の公共建築物に適する。
このため、微動レベルの地震に対し居住者を不感とすることが出来、学校等の公共建築物に適する。
更に、地震力が強くなると、上記吊部材300は、建築物100の慣性モーメントにより揺動を開始する(図3 A−B)。建築物100が揺動を開始する条件は、建築物の質量、吊部材300の長さ等が関係する。建築物100が地震力による揺動状態(図3 A−B)にあっても、吊部材300には弾性限界範囲内の荷重になるよう吊部材の材質、形状を設定している。
地震力により吊部材300は、伸び、復原をしながら建築物100を揺動させる。すなわち、吊部材300が伸縮しながら建築物100が円弧上をブランコの様に振子揺動運動し、建築物の固有周期を長周期化するとともに地震力を減衰する。
吊部材300が伸縮し部材長を変化させながら、上記建築物100が円弧運動をするので、建築物100の重心の位置は部材長に応じて変化していく。円弧運動で重心が吊部材300の長さの変化に応じ移動するのは、ブランコの原理と同様である。
円弧運動の最頂部で上記吊部材300は最短となり、円弧の最下部に相当する位置で最長となるように弾性限界範囲ないで変化する。
このため、建築物100のブランコ運動を減速する働きを上記吊部材300は担い、地震力の減衰を行う免震作用を行う。
このため、建築物100のブランコ運動を減速する働きを上記吊部材300は担い、地震力の減衰を行う免震作用を行う。
地震力が更に強まったとき(図3 B−C)には、上記吊部材300の振れ振幅は大きくなる。
この吊部材300の振幅が所定レベルを超えると、後述する制震手段が働く。
この吊部材300の振幅が所定レベルを超えると、後述する制震手段が働く。
制震手段390としては、上記架構体200に上記吊部材300を枢着する部分にバネを設けるか、或いは、吊部材300を貫通させる方法などがある。これら、いずれの方法の場合にあっても地震エネルギーを吸収する制震作用をする。
図4は、地震力のレベルに応じた地震対策をした建築物100の動きを示す概念図である。図4(a)は地震力が比較的小さいときを示す。吊部材300は、弾性限度範囲内での伸び、復原を繰り返し建築物100の居住者は殆ど揺れを感じない。地震力だけでなく、強風に対しても吊部材300の弾性により建築物100の揺れは抑えることができる。これは、建築物100の重心より高い位置で、架構体200から建築物100の両側を吊部材300で吊り上げ、吊部材の弾性限度範囲内の弾性力で伴って建築物100の両側より挟持することによる。
図4(b)は、地震力のレベルが増し、なおも吊部材300の弾性限度範囲内で吊部材300が揺動し始めた状態を示す。建築物100を両側から抱き抱えるように吊下げた吊部材300は、交互に揺動し剛体振子に近い挙動をするが、地震面に対し強固に設置された架構体200から上記吊部材300が建築物100を吊下げるので居住者の感じる揺れは少ない。
なお、図4(b)の状態で、吊部材300の1本あたりにかかる荷重は、図2で求めた耐力の60〜70%程度となるように、建築物100の重量に対し架構体200の柱の本数、揺動による加重負荷等を配慮している。
なお、図4(b)の状態で、吊部材300の1本あたりにかかる荷重は、図2で求めた耐力の60〜70%程度となるように、建築物100の重量に対し架構体200の柱の本数、揺動による加重負荷等を配慮している。
図4(c)は、地震力が更に増し、吊部材300の円弧状の動きが大きくなった場合の状態を示す。
この程度にまで地震力が増すと、上記吊部材300は、引張力に耐えても圧縮力が働いたときに座屈破損を回避する必要がある。また、建築物100の揺動も激しくなり居住者の安全も確保する必要がある。
この程度にまで地震力が増すと、上記吊部材300は、引張力に耐えても圧縮力が働いたときに座屈破損を回避する必要がある。また、建築物100の揺動も激しくなり居住者の安全も確保する必要がある。
この程度にまで地震力のレベルが高まると、吊り部材300の材料特性面(座屈回避)、並びに、建築物100の揺動抑止の両面から制震機能が求められる。
このため上記架構体200と吊部材300との接合部に制震手段390を設ける。
このため上記架構体200と吊部材300との接合部に制震手段390を設ける。
この制震手段390は、例えば、上記吊部材300に板バネ、又は螺旋バネを介在させることにより吊部材300の動きを抑え地震エネルギーを吸収し、建築物100の揺れを抑止する。
また、制震手段390の他の手段としては、上記吊部材300の一方端を自由端として、地震力が所定レベルを越えたときに上記吊部材300が架構体200の梁部220を貫通するようにしてもよい。
また、制震手段390の他の手段としては、上記吊部材300の一方端を自由端として、地震力が所定レベルを越えたときに上記吊部材300が架構体200の梁部220を貫通するようにしてもよい。
次に、本実施例の細部につき述べる。
図5は、本実施例に係る揺動免震構法建築物に揺動免震構法が施され地震対策の対象となる建築物100の外観図を示す。例えば、学校の校舎であり、地震対策が必要な程度の経年変化があるものとする。
図5は、本実施例に係る揺動免震構法建築物に揺動免震構法が施され地震対策の対象となる建築物100の外観図を示す。例えば、学校の校舎であり、地震対策が必要な程度の経年変化があるものとする。
図6は、上記建築物100に揺動免震構法を施した揺動免震構法建築物の例を示す。
架構体200は、建築物100を覆うように設置する。
梁部220からは柱部210を延在させ地面に強固に固定している。
架構体200は、建築物100を覆うように設置する。
梁部220からは柱部210を延在させ地面に強固に固定している。
建築物100の壁面は、脆弱化している可能性もある。このため、建築物100を吊部材300で吊ったときの荷重を分散させるため壁面に垂直方向に縦長の吊部材取付部400を設ける。
図7は、上記吊部材取付部400に、架構体200の梁部220から吊部材300を取りつけた状態を示す。
吊部材取付部400には、建築物100の壁面に圧接する押補強板425、更に吊部材300を建築物100の柱部110の下方で支持する吊部材支持部420を設けてある。
この吊部材支持部420に、吊部材300をWナット310で取り付ける。
吊部材取付部400には、建築物100の壁面に圧接する押補強板425、更に吊部材300を建築物100の柱部110の下方で支持する吊部材支持部420を設けてある。
この吊部材支持部420に、吊部材300をWナット310で取り付ける。
また、吊部材支持部420には、上記建築物100による荷重がかかることで建築物の壁面を損傷しないよう補強部425を延在させ荷重を分散させている。
上記梁部220の上部に吊部材300を挿通し、Wナット320で吊部材300を取付ける。このとき、上記Wナットと梁部220との間にはテーパ座金330と板バネ340を介在させて上記吊部材300を枢着する。
上記梁部220の上部に吊部材300を挿通し、Wナット320で吊部材300を取付ける。このとき、上記Wナットと梁部220との間にはテーパ座金330と板バネ340を介在させて上記吊部材300を枢着する。
この吊下部材300の取付け状態の詳細を図8に示す。
上記吊部材300は、地震対策を要する建築物100(図5)の鉄骨の入った比較的強度が保たれている柱110に吊部材取付部400を設けることにより取付ける。
上記柱110の耐震性を高めるため、例えば鋼材の添補強板120を当てた上を鉄製の緊締金具130を吊部材取付部400にWナット430で緊締する。
この柱110の耐震強度を上げるには、上記添補強板120による他、強化炭素材を柱に巻いてもよい
上記吊部材300は、地震対策を要する建築物100(図5)の鉄骨の入った比較的強度が保たれている柱110に吊部材取付部400を設けることにより取付ける。
上記柱110の耐震性を高めるため、例えば鋼材の添補強板120を当てた上を鉄製の緊締金具130を吊部材取付部400にWナット430で緊締する。
この柱110の耐震強度を上げるには、上記添補強板120による他、強化炭素材を柱に巻いてもよい
図9は、吊部材300の変断面形状の上部を梁部220に取り付けた状態を示す。
板バネ340は、所定レベルの地震力により上記吊下部材300の揺動時に制震作用をするためのものである。上記吊部材300が地震力により建築物100の揺動により振子状の運動を呈し、その程度が高まろうとすると上記板バネ340の弾性力による制震で地震エネルギーを減衰させる。
制震手段390の板バネ340の強さは、建築物100の重量や柱部を梁部200に何本設けるか等による。
上記吊部材300は、梁部220の挿通孔に枢着され上下方向には自由運動し得、地震力レベルが過大となったときは、上記板バネ340を超えて突出することもありうる。
すなわち、敢えて上記吊部材300を梁部220から突出させて、建築物100を揺動させる(図3 B−C)ことで地震のエネルギーを減衰させる。この状態は耐震というより免震的な動作と言える。
この免震状態への移行は、上記架構体200自体が免震機能をもっており、上記吊部材300が梁部220を超えて突出する事は殆どない。
地震力のレベルが高くなり、吊部材300が梁部220を超えて突出するよう自由にしたのは、寧ろ吊部材300自体の座屈による損傷を回避する意味合いが強い。
また、吊部材300は、建築物100側の断面積を大きくした変断面形状とすることで、建築物100に流入する地震エネルギーを少なくし、建築物並びに居住者の安全を保つことができる。
板バネ340は、所定レベルの地震力により上記吊下部材300の揺動時に制震作用をするためのものである。上記吊部材300が地震力により建築物100の揺動により振子状の運動を呈し、その程度が高まろうとすると上記板バネ340の弾性力による制震で地震エネルギーを減衰させる。
制震手段390の板バネ340の強さは、建築物100の重量や柱部を梁部200に何本設けるか等による。
上記吊部材300は、梁部220の挿通孔に枢着され上下方向には自由運動し得、地震力レベルが過大となったときは、上記板バネ340を超えて突出することもありうる。
すなわち、敢えて上記吊部材300を梁部220から突出させて、建築物100を揺動させる(図3 B−C)ことで地震のエネルギーを減衰させる。この状態は耐震というより免震的な動作と言える。
この免震状態への移行は、上記架構体200自体が免震機能をもっており、上記吊部材300が梁部220を超えて突出する事は殆どない。
地震力のレベルが高くなり、吊部材300が梁部220を超えて突出するよう自由にしたのは、寧ろ吊部材300自体の座屈による損傷を回避する意味合いが強い。
また、吊部材300は、建築物100側の断面積を大きくした変断面形状とすることで、建築物100に流入する地震エネルギーを少なくし、建築物並びに居住者の安全を保つことができる。
次に、架構体200の上面図を図10に示す。
図10(a)において、梁部200から柱部210は、長手方向の(1,1)、(1,2)、(1,3)、(1,4)の位置、及び(1,3)、(2,3)、(3,3)、(4,3)の位置から下に延在する。また、これら梁部200の8か所に吊部材300(図示せず)が設置される。
図10(a)において、梁部200から柱部210は、長手方向の(1,1)、(1,2)、(1,3)、(1,4)の位置、及び(1,3)、(2,3)、(3,3)、(4,3)の位置から下に延在する。また、これら梁部200の8か所に吊部材300(図示せず)が設置される。
また、架構体200の梁部220に対し耐震補強をするため、梁で構成される四角形の四隅にガセットプレート230を配置する。
そして、上記梁220で構成される夫々の上記四角形の対角線上に配置されたガセットプレート230間に夫々ブレース240を設ける。
このようなガセットプレート230及びブレース240の配置は、上記架構体の水平方向の耐力を増し、強度抵抗部材の配置で靱性が改善され補強構面が形成され耐震機能が得られる。
そして、上記梁220で構成される夫々の上記四角形の対角線上に配置されたガセットプレート230間に夫々ブレース240を設ける。
このようなガセットプレート230及びブレース240の配置は、上記架構体の水平方向の耐力を増し、強度抵抗部材の配置で靱性が改善され補強構面が形成され耐震機能が得られる。
また、図10(b)は、同図(a)に示した架構体200における柱部210の位置と、建築物100の柱110に設けた吊部材取付部400配置位置との相対位置関係を示したものである。
図10では、4対の吊部材300で建築物100を側面から吊る例を示す。
対向する上記吊部材300を並行配置にはしていない。
一般に建築物では、重心の位置と剛心の位置とは一致しないため、建築物100を吊上げ揺動免震を行うと、「ねじれ」が発生する事が予想される。この「ねじれ」によるモーメントで建築物の破損を防止することを意図し、対向する吊部材300を並行して配置していない。
また、それぞれの吊部材300による揺動が共振するのを防止する意味もある。
図10では、4対の吊部材300で建築物100を側面から吊る例を示す。
対向する上記吊部材300を並行配置にはしていない。
一般に建築物では、重心の位置と剛心の位置とは一致しないため、建築物100を吊上げ揺動免震を行うと、「ねじれ」が発生する事が予想される。この「ねじれ」によるモーメントで建築物の破損を防止することを意図し、対向する吊部材300を並行して配置していない。
また、それぞれの吊部材300による揺動が共振するのを防止する意味もある。
しかし、上記の「ねじれ」や共振現象は、建築物100の持つ構造的特性に左右され、建築物に対する耐震設計強度等で、「ねじれ」等が上記吊部材300を並行配置することに問題ないときは、並行配置し施工を効率よく行う。
図11は建築物100を吊部材300で吊り上げる吊り上げ方の他の例を示す正面図である。
図11(a)は、揺動する建築物100の下部に安定礎150を設けたことを示す。
建築物100は、後述するように少なくとも5mm程度、ジャッキアップし、以後、上記吊部材300により梁部200から懸下する。
また、図11(b)は、前述のように、「ねじれ」を考慮し吊部材300を非並行に配置する例である。「ねじれ」を考慮し、中央部の安定礎155を他の安定礎150より大きくしている。
図11(a)は、揺動する建築物100の下部に安定礎150を設けたことを示す。
建築物100は、後述するように少なくとも5mm程度、ジャッキアップし、以後、上記吊部材300により梁部200から懸下する。
また、図11(b)は、前述のように、「ねじれ」を考慮し吊部材300を非並行に配置する例である。「ねじれ」を考慮し、中央部の安定礎155を他の安定礎150より大きくしている。
図11(c)では、梁部200を2層構造とし、層間には、ブレース250を配置しガセットプレート(図示せず)を用いて固着し耐震性を高めている。この2層構造の梁部200を吊部材300は挿通配置し、建築物100の鉄骨構造の柱部の上部に相当する夫々の箇所で、吊部材300により建築物100を吊下げる。
すなわち、建築物100の上部で梁部200を柱の数に応じ吊部材300により吊り上げるので、居住者が吊部材を目にすることもない。また、揺動免震構法を施工しても外観意匠を損なう程ではない。
すなわち、建築物100の上部で梁部200を柱の数に応じ吊部材300により吊り上げるので、居住者が吊部材を目にすることもない。また、揺動免震構法を施工しても外観意匠を損なう程ではない。
(建築物100のジャッキアップ)
次に、揺動免震を行うため、建築物100を梁部200に吊部材300で吊上げるジャッキアップの例について図12を用いて説明する。
図12に示すように、先ず最初に、梁部220に下方端が建築物100に固定された吊部材300を挿通し、テーパ座金330に板バネ340を載置してWナット320を吊部材300に締めつける。
次に、揺動免震を行うため、建築物100を梁部200に吊部材300で吊上げるジャッキアップの例について図12を用いて説明する。
図12に示すように、先ず最初に、梁部220に下方端が建築物100に固定された吊部材300を挿通し、テーパ座金330に板バネ340を載置してWナット320を吊部材300に締めつける。
この状態でテコ部材550を上記吊部材300に挿通させ、梁部220の上に載置する。この後、Wナット350でテコ部材550を梁部220に固着する。そして、固着されたテコ部材550の端部にオイルジャッキ500を配置する。
この作業は、配置された全ての吊部材300に対して行う。
全ての吊部材300に対するオイルジャッキ500の配設を終えると、一斉にオイルジャッキ500の油圧によって、建築物100を持ち上げる。このジャッキアップ距離は、建築物100の重量等にもよるが、5mm〜数cmである。
全ての吊部材300に対するオイルジャッキ500の配設を終えると、一斉にオイルジャッキ500の油圧によって、建築物100を持ち上げる。このジャッキアップ距離は、建築物100の重量等にもよるが、5mm〜数cmである。
上記オイルジャッキ500によって建築物100をジャッキアップした状態で、Wナット320を締め直し、その後にWナット350を外し、テコ部材550及びオイルジャッキ500を撤去して、ジャッキアップ作業を完了し揺動免震構法の施工を完了する。
この実施例によれば、免震乃至制震対象となる建築物を揺り籠の如く、両側から吊部材で吊り揺動免震構法を採用する。この吊部材の弾性範囲内の地震力に対しては、両側から吊部材で吊られた建築物は横揺れを防ぐことができる。
すなわち、建築鋼材の機械的性質の弾性を積極的に用い、地震力がある程度までは鋼材の弾性の範囲で建物を静止状態とし、次の段階の地震力に対しては、建築物の両側に設けた支持部材によるブランコ運動を利用したゆり籠揺動により地震力を減衰させ、揺動による建築物の固有周期を長周期化が図れる。
これにより地震時に、建築物の損壊および人的被害を回避し得る。
すなわち、建築鋼材の機械的性質の弾性を積極的に用い、地震力がある程度までは鋼材の弾性の範囲で建物を静止状態とし、次の段階の地震力に対しては、建築物の両側に設けた支持部材によるブランコ運動を利用したゆり籠揺動により地震力を減衰させ、揺動による建築物の固有周期を長周期化が図れる。
これにより地震時に、建築物の損壊および人的被害を回避し得る。
また、吊部材の弾性範囲を超えるような地震力の場合は、吊部材が交互に揺動し実質的に建築物の固有周期が長周期化され、地震波との共振を回避することができる。
地震力が強くなり、建築物が揺動を開始すると吊部材は交互に振子運動をすることになる。
このとき、上記吊部材の各々は、振子の最上位点でバネ等の緩衝手段を講じているので最大振幅から転移するときでも、座屈による材料の破損はなく、まお、弾性範囲内にある。
地震力が強くなり、建築物が揺動を開始すると吊部材は交互に振子運動をすることになる。
このとき、上記吊部材の各々は、振子の最上位点でバネ等の緩衝手段を講じているので最大振幅から転移するときでも、座屈による材料の破損はなく、まお、弾性範囲内にある。
このため、建築物の揺動にともない上記吊部材は振子運動に応じ伸縮し、振子振動時に揺動する建築物の重心がブランコの様に変位する。
すなわち、揺動時において、地震力に対し、ブランコを漕ぐような形で地震力を減衰させることができる。
すなわち、揺動時において、地震力に対し、ブランコを漕ぐような形で地震力を減衰させることができる。
この様に揺動免震構法は、緩やかに地震力を減衰させるので、建築物にかかる加速度負荷を少なくすることができるので、耐震対策を要する建築物に対する耐震対策手段としては好適である。
なお、この発明では、架構体により建築物を両側から吊る吊部材対を複数設けているので、建築物の重心と剛心との位置がずれることによるねじれ力に対しても分散させる効果があるので、建築物に対する有効な地震対策となる。
また、本発明によれば、複数本の梁で構成される堅固な架構体に揺動免震構法を施工するので、比較的容易で、かつ、安価に施工出来、不要に鉾揺れの不安を与えることなく耐震対策を既存公共建築物に施すことが可能である。
なお、この実施例に示す揺動免震構法建築物は、既存建築物に係る耐震対策のみならず、新築の建築物にも適用し得るものである。
(他の実施例)
(他の実施例)
図13は、この発明に係る揺動免震構法建築物の他の実施例を示す
この実施例では、建築物100の梁部200の下部の梁支持部260と免震部材基礎部600の間に免震部材700を敷設する。
揺動免震による免震効果が更に高まり、建築物100に対する地震対策の実効が図られる。
この実施例では、建築物100の梁部200の下部の梁支持部260と免震部材基礎部600の間に免震部材700を敷設する。
揺動免震による免震効果が更に高まり、建築物100に対する地震対策の実効が図られる。
上記実施例で、建築物100を吊部材300で両側から吊り、鋼材の弾性力を利用してある程度の地震力による揺れを回避するとともに、建築物100の固有周期を実質的に長周期化する例を開示した。
この実施例では、免震部材700による免震作用により、更に、建築物100の系全体の固有周期が長周期化され、また、地震力自体も免震部材700により減衰でき、建築物100の地震対策がより確実なものとなる。
この実施例では、免震部材700による免震作用により、更に、建築物100の系全体の固有周期が長周期化され、また、地震力自体も免震部材700により減衰でき、建築物100の地震対策がより確実なものとなる。
図14は、図13に示した実施例の詳細を示す図である。
免震部材基礎部600に加わった地震力は、免震部材700によりかなりの割合で減衰される。
免震部材700は、例えば、積層ゴム系アイソレータで、積層ゴム系アイソレータは鋼板とゴムを交互に重ね合わせた部材である。鉛直方向に剛性が高く、大きな荷重を負担でき、水平方向には、ゴムのせん断変形により柔らかく大きな変形能力を持つ。
プラグを入れて減衰機能を持たせた鉛プラグ入り積層ゴム、天然ゴム系積層ゴムのフランジ部に鋼材ダンパーを取り付けた履歴型ダンパー付き積層ゴムがある。
積層ゴム変形性能は、積層ゴムの変形性能等を、積層ゴムの総ゴム厚さ(H)に対する水平変形量(δ)の比で表す。例えば総ゴム厚さの2倍の水平変形を生じた場合には、200%歪みの状態という。免震部材700に、高減衰ゴムを用いると、高い復元性と信頼性を併せ持ち、特段、ダンパーを必要としない
免震部材700に、高減衰ゴムを用いない場合は、U字形状の金属を設けて減衰機能をもたせてもよい。
免震部材基礎部600に加わった地震力は、免震部材700によりかなりの割合で減衰される。
免震部材700は、例えば、積層ゴム系アイソレータで、積層ゴム系アイソレータは鋼板とゴムを交互に重ね合わせた部材である。鉛直方向に剛性が高く、大きな荷重を負担でき、水平方向には、ゴムのせん断変形により柔らかく大きな変形能力を持つ。
プラグを入れて減衰機能を持たせた鉛プラグ入り積層ゴム、天然ゴム系積層ゴムのフランジ部に鋼材ダンパーを取り付けた履歴型ダンパー付き積層ゴムがある。
積層ゴム変形性能は、積層ゴムの変形性能等を、積層ゴムの総ゴム厚さ(H)に対する水平変形量(δ)の比で表す。例えば総ゴム厚さの2倍の水平変形を生じた場合には、200%歪みの状態という。免震部材700に、高減衰ゴムを用いると、高い復元性と信頼性を併せ持ち、特段、ダンパーを必要としない
免震部材700に、高減衰ゴムを用いない場合は、U字形状の金属を設けて減衰機能をもたせてもよい。
建築物100を保護するため、吊部材取付部400を建築物100の壁面に延在させている。この吊部材取付部400を上記壁面に係る負荷を分散させるため、所定長の長さで延在させる。
また、建築物100を吊上げる箇所は、建築物の重心より高い位置が望ましい。
更に、建築物100の頂部における強度が十分確保できるのであれば、上記吊部材取付部400を建築物の頂部に設けてもよい。この場合、吊部材300を建築物100の頂部に設け、鉛直に両側で吊上げる。
(振動解析)
また、建築物100を吊上げる箇所は、建築物の重心より高い位置が望ましい。
更に、建築物100の頂部における強度が十分確保できるのであれば、上記吊部材取付部400を建築物の頂部に設けてもよい。この場合、吊部材300を建築物100の頂部に設け、鉛直に両側で吊上げる。
(振動解析)
地震時における建築物100の振動は、支点が変位するために起こる震動と考えられる。
そこで、図15に示すように、地震でよる地動で変位する支点変位をug、支点からの相対変位をu、絶対変位zを
そこで、図15に示すように、地震でよる地動で変位する支点変位をug、支点からの相対変位をu、絶対変位zを
(変位による強制振動の解)
質点の慣性力は絶対加速度
質点の慣性力は絶対加速度
減衰力やバネ力は相対変数uに関連すると考えられる。これを考慮すると次式が成り立つ。
この微分方程式の解は、右辺を0とした同次方程式の一搬解と上式の特殊解の和で与えられる。
一搬解は、減衰自由振動の解であり、特殊解は、
一搬解は、減衰自由振動の解であり、特殊解は、
ここで、L2は建築物100の相対変位uと支点変位ugの倍率を表すが、この特性は強制振動における加速度の共振と一致する。
と減衰定数hの関数である。
地動加速度に対する建築物100を1質点系モデルとしたときの加速度応答倍率を表すL2′とξの関係を、hをパラメータとして、図16(c)に示す。
h(=ε/ω)の値を大きくするほど、地動に対する建築物100の加速度応答倍率を低くすることができる。
地動加速度に対する建築物100を1質点系モデルとしたときの加速度応答倍率を表すL2′とξの関係を、hをパラメータとして、図16(c)に示す。
h(=ε/ω)の値を大きくするほど、地動に対する建築物100の加速度応答倍率を低くすることができる。
(減衰自由振動)
ここで、減衰自由振動につき、減衰のない系の固有周期と、減衰を伴うときの固有周期との関係につき、検討する。
ここで、減衰自由振動につき、減衰のない系の固有周期と、減衰を伴うときの固有周期との関係につき、検討する。
おくと、
減衰自由振動の微分方程式は
減衰自由振動の微分方程式は
Cは、振幅で、質点の平衡位置からの最大変位を表す。
ω′は、減衰振動時の固有円振動であり、
ω′は、減衰振動時の固有円振動であり、
h(=ε/ω)は、減衰定数でh<1である。]
減衰自由振動で振動ピーク値は、減衰によって刻々減少するが、隣接するピーク値の比は振動回数によらず一定である。減衰比η、対数減衰率λは次のように定義される。
減衰自由振動で振動ピーク値は、減衰によって刻々減少するが、隣接するピーク値の比は振動回数によらず一定である。減衰比η、対数減衰率λは次のように定義される。
h≧1では振動しない。(過減衰、臨界減衰)
(力による強制振動)
次に外力による強制振動につき、検討する。
系に正弦波外力
次に外力による強制振動につき、検討する。
系に正弦波外力
一搬解は、ここでは省略するが、特殊解は、質点系が外力の振動(ωf)に対応して振動することから
地震の振動開始から十分時間が経過すると、自由振動は消滅し、特殊解の強制振動のみ残る。
その解は次のように示される。
その解は次のように示される。
図16は、共振特性を示す特性図であり、同図(a)は、
応答倍率
応答倍率
とで表わされる変位の共振特性を示す。
減衰定数
減衰定数
をパラメータとしている(cは、速度に比例する減衰力としてバネとダッシュポットとの並列接続でモデル化したときの粘性減衰の係数を表す。εは、cを2mで除したもの)。減衰定数hが小さいときは、ζ≒1で共振する。
また、同図(b)は、加速度と振動数比との共振特性を示す。
更に、同図(c)は、地震等に基づく地動による加速度応答の倍率を示す。
L2′は、地動変位u0に対する建築物100の絶対変位(ug+u)の応答倍率でもあり、L2「2」は、(ug+u)を2回微分したことを示す。
L2′は、地動変位u0に対する建築物100の絶対変位(ug+u)の応答倍率でもあり、L2「2」は、(ug+u)を2回微分したことを示す。
この図で明らかなように、建築物100の加速度は、振動数比ζが0に近いと、支点に対応する地動の加速度と同一になる。
逆に、振動数比ζが大きくなると、建築物100の加速度は小さくなる。
すなわち、建築物100の固有振動数ωが地震による地動振動数ω0より遙かに小さければ、建築物100は殆ど振動しない。
すなわち、建築物100の固有振動数ωが地震による地動振動数ω0より遙かに小さければ、建築物100は殆ど振動しない。
これを、周期でみると、建築物100の固有周期Tが、地震による地動の周期T0より遙かに大きければ、免震効果を得ることができる。
このことを図示したのが、図17である。
図17は、周期に対する加速度応答を示す特性図である。建築物100の系全体の振動数比ζ、
減衰定数
図17は、周期に対する加速度応答を示す特性図である。建築物100の系全体の振動数比ζ、
減衰定数
減衰定数hを大きくするには、hの分母である系の弾性係数kの値を小さくすることが考えられる。
図6、図14に示すように、支点である地震振動が伝わる地面か見て、梁部200の柱部210と吊部材300は、建築物100に対し直列的に直結している。
図6、図14に示すように、支点である地震振動が伝わる地面か見て、梁部200の柱部210と吊部材300は、建築物100に対し直列的に直結している。
上記柱部210と吊部材300それぞれの鋼材のもつ弾性力をバネと考えると、 建築物100に対して、2つのバネを直列接続した形になり、系全体としてのバネ定数kの値は小さくなる。
この結果、上記した実施例、及びこの実施例においても、kの値が小さくなり、減衰定数hを大きくすることができ、建築物100に居る者に地震振動による不安を与えることを抑えることができる。
この結果、上記した実施例、及びこの実施例においても、kの値が小さくなり、減衰定数hを大きくすることができ、建築物100に居る者に地震振動による不安を与えることを抑えることができる。
減衰定数hを大きくするは、第12式に示す減衰比を大きくすることにもなり、系全体で受けた地震エネルギーを早く減衰させることにもなる。
また、図16(c)に示されるように、減衰定数hが大きいと、地震力による加速度応答の倍率を低く抑えることができ、建築物100内部の破損を防ぐことができる。
また、図16(c)に示されるように、減衰定数hが大きいと、地震力による加速度応答の倍率を低く抑えることができ、建築物100内部の破損を防ぐことができる。
(架構体200の柱部210)
図18に示すように、架構体200の柱部210の上部面積(一辺がa)は、その下部の面積(一辺がb)に比べ大きくしてある(a>b)。このように、柱部210に編断面軸力材を用いるのは、地震力による座屈を回避するためである。
図18に示すように、架構体200の柱部210の上部面積(一辺がa)は、その下部の面積(一辺がb)に比べ大きくしてある(a>b)。このように、柱部210に編断面軸力材を用いるのは、地震力による座屈を回避するためである。
柱部210に変断面軸力材を用いると、軸方向応力度σ、軸方向ひずみ度εは。何れも断面積が大きい上部ほど、小さくなる。このため、地震力を柱部210に受けると、断面積が小さい下部で、地震力によるエネルギーを軸方向応力度σ、及び軸方向ひずみ度εを相対的に大きくして吸収し、上部においては軸方向応力度σ、及び軸方向ひずみ度ε何れをも小さくする。
そして、柱部210の鋼材を弾性範囲内での荷重で用いるとするならば、柱部210の下部においてバネ定数を小さくし、上部においてはバネ定数を大きくすることに相当する。
そして、柱部210の鋼材を弾性範囲内での荷重で用いるとするならば、柱部210の下部においてバネ定数を小さくし、上部においてはバネ定数を大きくすることに相当する。
すなわち、柱部210の鋼材の下部は、バネ定数が小さく、地震力による変位が大きいが、上部に行くほどバネ定数が大きくなり地震力による変位が下部に比べ相対的に小さい。このため、梁部200での振動を小さく抑えることができ、梁部200から吊部材300で両側を吊下げられた建築物100の地震による振動を抑止することができる。
また、図18に示すように変断面軸力材を用いると、最小断面部で降伏軸力と最大軸力が決まり、最小断面部で破断するが、最小断面部である上記柱部210の鋼材の下部は、梁支持部260に取り付ける構成とする。
このように、梁支持部260に、変断面軸力材である柱部210の下部の最小面積部を取りつけ、柱部210の下部にかかる荷重を軽減している。
このように、梁支持部260に、変断面軸力材である柱部210の下部の最小面積部を取りつけ、柱部210の下部にかかる荷重を軽減している。
先ず、梁支持部260が地震力を受け、柱部210の下部への地震力による荷重を減らし、更に、柱部210を変断面軸力材とすることで、地震力による柱部210の座屈を回避している。
なお、柱部210は、変断面軸力材とするが、上記梁支持部260は必ずしも連接しなくてもよい。この場合、各梁支持部260の面積は、少なくとも変断面軸力材である柱部210の最小面積よりも広い面積とする。
なお、柱部210は、変断面軸力材とするが、上記梁支持部260は必ずしも連接しなくてもよい。この場合、各梁支持部260の面積は、少なくとも変断面軸力材である柱部210の最小面積よりも広い面積とする。
(幾何剛性、変位拡大)
一搬に、部材に張力を与えておくと、荷重を与えたときの変形が小さくなり、剛性が増す。この剛性は、構造物が本来持っている剛性とは違うので、「みかけの剛性」とか「幾何剛性」などと呼ばれる。
図14に示したように、建築物100を架構体200から吊部材300により、所定の角度で両側から吊っているので、吊部材300には張力が与えられ幾何剛性が増す。幾何剛性が増す結果、上記吊部材300のもつ見かけ上のバネ弾性係数が増す。
つまり、所定角度で吊られ張力が与えられた2本の吊部材300の1本あたりのバネ弾性係数は、垂直に吊った場合に比べて大きくなる。
この場合、幾何剛性に加え、変位拡大という作用が働き、動吸振器作用を呈する。
一搬に、部材に張力を与えておくと、荷重を与えたときの変形が小さくなり、剛性が増す。この剛性は、構造物が本来持っている剛性とは違うので、「みかけの剛性」とか「幾何剛性」などと呼ばれる。
図14に示したように、建築物100を架構体200から吊部材300により、所定の角度で両側から吊っているので、吊部材300には張力が与えられ幾何剛性が増す。幾何剛性が増す結果、上記吊部材300のもつ見かけ上のバネ弾性係数が増す。
つまり、所定角度で吊られ張力が与えられた2本の吊部材300の1本あたりのバネ弾性係数は、垂直に吊った場合に比べて大きくなる。
この場合、幾何剛性に加え、変位拡大という作用が働き、動吸振器作用を呈する。
動吸振器とは、減衰をもつ質量で主系との間に相対変位を生じ、主系の振動エネルギーを吸収するものをいう。
動吸振器は,振動を抑制する方法として広く用いられている。動吸振器には,質量,バネ,減衰により構成されるパッシブなのものがある。
パッシブな動吸振器は主系が振動した場合に,動吸振器系が大きく振動し,そこでエネルギーを消散し,系全体の減衰特性を向上させるために用いる場合と,周波数応答のピーク値の低減のために用いられる場合が多い。
動吸振器は,振動を抑制する方法として広く用いられている。動吸振器には,質量,バネ,減衰により構成されるパッシブなのものがある。
パッシブな動吸振器は主系が振動した場合に,動吸振器系が大きく振動し,そこでエネルギーを消散し,系全体の減衰特性を向上させるために用いる場合と,周波数応答のピーク値の低減のために用いられる場合が多い。
一般的に,大型構造物は固有振動数が低いため,動吸振器においても,それに近い固有振動数に設定する必要がある。水平方向の振動の場合には,重力による復元力を利用した振り子を利用すれば,低い固有振動数を実現すること自体は,難しいことではない。
建築構造物の場合、水平方向の振動が問題になる場合が多く,振り子型の動吸振器が広く用いられ、復元力としては、金属ばねを用いる。
しかし、上下方向の振動に対し、単なる振子型の動吸振器や免震では、地震力に十分対応することはできない。
建築構造物の場合、水平方向の振動が問題になる場合が多く,振り子型の動吸振器が広く用いられ、復元力としては、金属ばねを用いる。
しかし、上下方向の振動に対し、単なる振子型の動吸振器や免震では、地震力に十分対応することはできない。
図14に示したように、建築物100の両側を所定の長さの吊部材300で吊ることで、バネをなす吊部材300の変位と質点としての建築物100の変位の割合を拡大する変位拡大機能を系として有する構成としている。
地震力が加わったとき、吊部材300には弾性範囲内の荷重となるように、吊部材300の本数、長さ、建築物100を吊るときの吊角度を決める。
吊部材300の座屈を回避するのに、棒状ではなく、建築物100側の断面積を広くした変断面軸力材を用いてもよい。
吊部材300の座屈を回避するのに、棒状ではなく、建築物100側の断面積を広くした変断面軸力材を用いてもよい。
図19は、図14のように建築物100を吊部材300により、両側から所定角度で吊った場合における、吊部材300の吊角度と等値的なバネ定数との関係を示す特性図である。なお、上記吊部材300の鋼材長をパラメータとしている。
図19から分かるように、梁部200に対する吊部材300の吊角度θを大きくすれば、建築物100の両側を吊部材300で吊ったときのバネ定数は大きくなる。
図19から分かるように、梁部200に対する吊部材300の吊角度θを大きくすれば、建築物100の両側を吊部材300で吊ったときのバネ定数は大きくなる。
このように、上記の角度θが大きければ、吊部材300で建築物100を吊ったとき、系のバネ定数自体は大きくなり、上下方向の地震力に対する減衰効果を得ることができるが、吊部材300の張力が大きくなる。
吊部材300の張力が大きくなると、吊部材300の耐力の範囲を超えるので、このことを考慮して、上記の吊下げ角度θを決める必要がある。
吊部材300の張力が大きくなると、吊部材300の耐力の範囲を超えるので、このことを考慮して、上記の吊下げ角度θを決める必要がある。
また、建築物100を両側から所定角度θで吊下げた系については、上記のように系としてのバネ定数を大きくし地震の上下震動に対しての制震作用を為すとともに、系の固有周期を長くでき、共振現象による振動から建築物100を保護する機能をももつことになる。
建築物100を両側から所定角度θで吊下げ、幾何剛性をもつ状態の吊部材300自体の弾性範囲内でのバネの変位に対する建築物100の質点変位の割合を拡大する変位拡大によりバネ定数を大きし、地震の上下動に対する制震作用が得られる。
前述したように、地震の上下動に対しては、梁部200の柱部分の上部断面積を下部断面積に比べ大きくすることで、地震の上下動振動を梁部200の上部に伝搬しにくくしている。
建築物100に対する地震振動の伝搬を少しでも減少させるには、吊下部材300を変断面軸力材としてもよい。
前述したように、地震の上下動に対しては、梁部200の柱部分の上部断面積を下部断面積に比べ大きくすることで、地震の上下動振動を梁部200の上部に伝搬しにくくしている。
建築物100に対する地震振動の伝搬を少しでも減少させるには、吊下部材300を変断面軸力材としてもよい。
吊下部材300の建築物100側の断面積を梁部200側の断面積に比べ、相対的に大きした変断面軸力材を用いることで、建築物100への地震振動の伝搬を抑えることができる。
吊下部材300を、変断面軸力材を用いたものにするか、否かは吊下部材300の鋼材の物理特性の性質にもよる。
吊下部材300が、耐力との関係で座屈を発生する可能性の仕様であれば、変断面軸力材を用いるのが望ましい。
吊下部材300を、変断面軸力材を用いたものにするか、否かは吊下部材300の鋼材の物理特性の性質にもよる。
吊下部材300が、耐力との関係で座屈を発生する可能性の仕様であれば、変断面軸力材を用いるのが望ましい。
(揺動免震)
前述したように、免震の本質は、(1)建物の固有周期を長くする事、(2)減衰定数hを大きくすることの二点にある。
建物の固有周期を長くすることについては、建築物100を吊部材300により吊り揺動させること自体でも固有周期を長くすることができる。
免震部材700としてアイソレータを用いれば、更に顕著に系の長周期化をすることができる。
前述したように、免震の本質は、(1)建物の固有周期を長くする事、(2)減衰定数hを大きくすることの二点にある。
建物の固有周期を長くすることについては、建築物100を吊部材300により吊り揺動させること自体でも固有周期を長くすることができる。
免震部材700としてアイソレータを用いれば、更に顕著に系の長周期化をすることができる。
図20に示すようにモデル化した例を示す。
免震部材700として、例えばアイソレータを用いた例を示す。吊部材300の長さがL、Lcosθ=9m、地面から梁部までの距離H=18m、建築物100の側面から柱部210との距離4m、建築物100の床から天井までの距離14m、幅10mとする。
また、免震部材700としてアイソレータとして免震ゴムを用いる。なお、建築物推定重量は、500Tとする。
免震部材700として、例えばアイソレータを用いた例を示す。吊部材300の長さがL、Lcosθ=9m、地面から梁部までの距離H=18m、建築物100の側面から柱部210との距離4m、建築物100の床から天井までの距離14m、幅10mとする。
また、免震部材700としてアイソレータとして免震ゴムを用いる。なお、建築物推定重量は、500Tとする。
そして、免震ゴムのバネ定数Kは、K=2.72×103kN/m、減衰比=0.22、高減衰免震ゴム自体の固有周期Tは、T=2.76とする。
この条件下、免震ゴムがない場合の固有周期Tは、T=5.31秒程度である。
また、免震ゴムを用いた場合の固有周期Tは、T=6.02秒程度となる。
この条件下、免震ゴムがない場合の固有周期Tは、T=5.31秒程度である。
また、免震ゴムを用いた場合の固有周期Tは、T=6.02秒程度となる。
この場合、建築物の振動は、1秒後に約60%に、5秒後には8%以下になる。
免震ゴムがない場合の固有周期T=5.31秒程度の1周期内に、振動は殆ど減衰し、免震ゴムを用いた場合の固有周期T=6.02秒程度内にも建築物100の振動は減衰し、建築物100の内部の居住者に対し地震振動による不安を和らげることができる。
免震ゴムがない場合の固有周期T=5.31秒程度の1周期内に、振動は殆ど減衰し、免震ゴムを用いた場合の固有周期T=6.02秒程度内にも建築物100の振動は減衰し、建築物100の内部の居住者に対し地震振動による不安を和らげることができる。
このように、この実施例で揺動免震による系の長周期化が図れる。
次に、減衰定数hを大きくすることに相当する振子型の動吸振器の性格をも持つ揺動免震による減衰作用について説明する。
次に、減衰定数hを大きくすることに相当する振子型の動吸振器の性格をも持つ揺動免震による減衰作用について説明する。
(揺動免震による減衰作用)
建築物100に対し所定の角度で吊部材300を用いて両側より吊ることで、バネの変位と質点としての建築物100の変位の比率を拡大する変位拡大作用により、地震の上下震動に対し減衰効果があることは、前述の通りである。
ここでは、水平振動について検討する。
建築物100に対し所定の角度で吊部材300を用いて両側より吊ることで、バネの変位と質点としての建築物100の変位の比率を拡大する変位拡大作用により、地震の上下震動に対し減衰効果があることは、前述の通りである。
ここでは、水平振動について検討する。
免震部材700として免震ゴムを用いた場合、水平方向の振動に対し固有周期を長周期化する働きにより、地震波との共振を避けることができ、建築物100自体の振動は長周期の緩慢な振動となる。
この一方で、水平方向の地震による振動エネルギーを減衰させていく必要がある。
この発明に係る揺動免震では、施工効率やメンテナンスの観点から、いわゆるダンパーを使用せず、系のもつ機械的な性質を利用し地震振動の水平方向振動エネルギー減衰を減衰させる。
この一方で、水平方向の地震による振動エネルギーを減衰させていく必要がある。
この発明に係る揺動免震では、施工効率やメンテナンスの観点から、いわゆるダンパーを使用せず、系のもつ機械的な性質を利用し地震振動の水平方向振動エネルギー減衰を減衰させる。
吊下部材300の取付部における摩擦や鋼材の内部摩擦で、ある程度の減衰は確保されるが、この発明に係る揺動免震では、建築物100を揺動させることでも地震エネルギーを減衰させる。
揺動免震では、吊下部材300の鋼材の弾性力が大きく関係してくる。地震がない静止時においては、吊下部材300を所定角度で建築物100の両側から吊ることで、バネ定数が大きくなり、かつ剛性も増し風による振動に対し振動を抑える働きをする。
揺動免震では、吊下部材300の鋼材の弾性力が大きく関係してくる。地震がない静止時においては、吊下部材300を所定角度で建築物100の両側から吊ることで、バネ定数が大きくなり、かつ剛性も増し風による振動に対し振動を抑える働きをする。
地震のない平時においては、吊下部材300を所定角度で建築物100の両側から吊られた吊下部材300の見かけ上のバネ対数は大きくなり、上下振動だけでなく水平方向に対しても建築物100を静止状態に保つ(図3)。
地震力が加わり、地震よる荷重がある程度超えると(図3 A−B)、建築物100の両側に設けた吊下部材300の何れか一方を中心に振子運動を行う。このとき、吊下部材300は、鋼材が有するバネ定数が変化し鋼材長を変えながら振子運動をする。
従って、吊下部材300によって両側を吊られた建築物100は、吊下部材300の伸縮に呼応した重心位置の変化を伴いながらブランコのように振子運動をすることになる。このとき、建築物100の重心位置の変化は、ブランコを漕ぐのとは逆に移動させることで、地震による振動を減衰させる。
従って、吊下部材300によって両側を吊られた建築物100は、吊下部材300の伸縮に呼応した重心位置の変化を伴いながらブランコのように振子運動をすることになる。このとき、建築物100の重心位置の変化は、ブランコを漕ぐのとは逆に移動させることで、地震による振動を減衰させる。
図21は、揺動免震の動吸振的な動作部分を模式的に表した動作図である。
同図(a)では、ある程度の地震力により、それぞれの吊下部材300は交互に梁部200を突き抜け、建築物100を振子運動させることを示す。
また、同図(b)は、建築物100の中心に重心があるとして、重心の軌跡を模式的に表す。
ブランコを漕ぐとき重心は8の字型に移動するが、地震力を受け建築物100が振子運動するとき、丁度ブランコを漕ぐのと逆向きに重心を移動させれば、地震力による振動を減衰させる効果を得る。
なお、減衰効果を得るには、吊下部材300の半径方向の伸縮変位が必要となるが、この変位は吊下部材300自体の鋼材の弾性力による。鋼材は耐力の範囲内で用いる。
耐力を超えないよう、所定の荷重が吊下部材300にかかると、吊下部材300は梁部200を突き抜け、座屈を回避するとともに振子運動をする。
同図(a)では、ある程度の地震力により、それぞれの吊下部材300は交互に梁部200を突き抜け、建築物100を振子運動させることを示す。
また、同図(b)は、建築物100の中心に重心があるとして、重心の軌跡を模式的に表す。
ブランコを漕ぐとき重心は8の字型に移動するが、地震力を受け建築物100が振子運動するとき、丁度ブランコを漕ぐのと逆向きに重心を移動させれば、地震力による振動を減衰させる効果を得る。
なお、減衰効果を得るには、吊下部材300の半径方向の伸縮変位が必要となるが、この変位は吊下部材300自体の鋼材の弾性力による。鋼材は耐力の範囲内で用いる。
耐力を超えないよう、所定の荷重が吊下部材300にかかると、吊下部材300は梁部200を突き抜け、座屈を回避するとともに振子運動をする。
上記図21では、振子運動に例え、建築物100の重心の移動を説明した。
本発明に係る揺動免震では、地震力がある程度に達するまでは、建築物100を揺れないように制震し、建築物内部の者に不安を与えないようにしている。
建築物100を両側から吊下部材300で吊下げることによる変位拡大作用を利用すると、吊下部材300の見かけ上のバネ定数が増大することは前述の通りである。
吊下部材300は、建築物100の重心の位置より高い位置で両側から吊下部材300で梁部200から吊下げているので、振子型吸振、動吸振の制振効果で地震による振動減衰効果が得られる。
本発明に係る揺動免震では、地震力がある程度に達するまでは、建築物100を揺れないように制震し、建築物内部の者に不安を与えないようにしている。
建築物100を両側から吊下部材300で吊下げることによる変位拡大作用を利用すると、吊下部材300の見かけ上のバネ定数が増大することは前述の通りである。
吊下部材300は、建築物100の重心の位置より高い位置で両側から吊下部材300で梁部200から吊下げているので、振子型吸振、動吸振の制振効果で地震による振動減衰効果が得られる。
図22は、本発明に係る揺動免震作用における、建築物100に加えられる力と変位との関係を示す特性図である。
図21では、建築物100に、梁部200から吊下げた吊部材300を経て加わる地震振動に対する建築物100自体の8の字状の重心移動による制震作用を、変位拡大作用に触れずに説明した。それは、吊部材300が交互に振子面の中心方向で伸縮しながら運動をすることで、制震加速度が発生するのを模式的に説明し、変位拡大作用につては説明を省いた。
図21では、建築物100に、梁部200から吊下げた吊部材300を経て加わる地震振動に対する建築物100自体の8の字状の重心移動による制震作用を、変位拡大作用に触れずに説明した。それは、吊部材300が交互に振子面の中心方向で伸縮しながら運動をすることで、制震加速度が発生するのを模式的に説明し、変位拡大作用につては説明を省いた。
(図22 0−A)において、建築物100を両側面から吊る吊部材300のバネ定数は、バネの変位と質点の変位との比率を拡大する変位拡大作用を利用することで増大する(図19)。
このときのバネ定数は、図19に示したように、吊部材300の長さ、梁部200に対する吊下げ角度θが関係する。
吊部材300の長さが長い程、変位拡大作用によるバネ定数の増加が顕著となる。しかし、揺動時に吊部材300加わるモーメントや耐力の範囲での鋼材の使用等の観点、並びに梁の高さ、吊部材300の取付位置が少なくとも建築物100の重心より高い位置とする取付位置の制約等から、吊部材300の長さを長くすることには限度がある。
このときのバネ定数は、図19に示したように、吊部材300の長さ、梁部200に対する吊下げ角度θが関係する。
吊部材300の長さが長い程、変位拡大作用によるバネ定数の増加が顕著となる。しかし、揺動時に吊部材300加わるモーメントや耐力の範囲での鋼材の使用等の観点、並びに梁の高さ、吊部材300の取付位置が少なくとも建築物100の重心より高い位置とする取付位置の制約等から、吊部材300の長さを長くすることには限度がある。
また、取付角度θについては、吊部材300により建築物100を吊るした時の張力を考慮すると、梁部200と吊部材300とがなす角度θをあまり小さくはできない。図19で示すθ≒80付近が望ましい。
地震力が弱くあるレベル以下のときは、図22(a)0−A、0−A´に示すように、吊部材300の鋼材としての弾性力、並びに変位拡大作用によるバネ定数の拡大作用により建築物100を支え、その変位は殆ど見られない。
地震力がある程度のレベルを超えると、建築物100は、吊部材300を交互に軸とする揺動を開始する(図22 A−B)。
そして、更に、地震力レベルが高まると、吊部材300は、梁部200を突き貫け、座屈を避けながら建築物100を振子運動の最大振幅位置まで到達させる(図22(b))。
地震力がある程度のレベルを超えると、建築物100は、吊部材300を交互に軸とする揺動を開始する(図22 A−B)。
そして、更に、地震力レベルが高まると、吊部材300は、梁部200を突き貫け、座屈を避けながら建築物100を振子運動の最大振幅位置まで到達させる(図22(b))。
最大振幅位置まで到達した建築物100は、位置エネルギーが最大となるとともに、静止状態となる。この後、逆方向への移動を開始するが、空気抵抗を受けることや摩擦力が発生するので減衰定数hは大きい状態となる。
最大振幅位置まで到達した建築物100が、位置エネルギーを運動エネルギーに変換し逆方向に戻ろうとするとき、建築物の両側に設けた吊部材300の両方に張力が加わった状態で建築物100を支える領域に到達する。
この領域に達すると、両方の吊部材300で建築物100を支えることによる変位拡大作用により吊部材300のバネ定数は大きくなり、建築物100の移動に対する制止力が働く。
また、建築物100が戻ろうとするとき、遠心力により最下点で振子運動による加速度が最大になろうとするが、両方の吊部材300で建築物100を支える領域でバネ定数が大きくなることにより、遠心力自体を減衰させる。
このため、振子運動での最下点で最大となる運動エネルギーは、両方の吊部材300で建築物100を支える領域ではバネエネルギーに変換され減衰する。
この領域に達すると、両方の吊部材300で建築物100を支えることによる変位拡大作用により吊部材300のバネ定数は大きくなり、建築物100の移動に対する制止力が働く。
また、建築物100が戻ろうとするとき、遠心力により最下点で振子運動による加速度が最大になろうとするが、両方の吊部材300で建築物100を支える領域でバネ定数が大きくなることにより、遠心力自体を減衰させる。
このため、振子運動での最下点で最大となる運動エネルギーは、両方の吊部材300で建築物100を支える領域ではバネエネルギーに変換され減衰する。
従って、両方の吊部材300で建築物100を支える領域を、建築物100が通過する揺動運動の度に、建築物100に対する振動は減衰する。
また、図21に示したように、建築物100の重心が8の字に移動することによる免震効果に、変位拡大効果を併せた概念的な揺動免震作用を図22(b)、(c)に示す。
また、図21に示したように、建築物100の重心が8の字に移動することによる免震効果に、変位拡大効果を併せた概念的な揺動免震作用を図22(b)、(c)に示す。
図21では、揺動免震の動吸振的な動作部分を吊部材300の伸縮に伴い建物100の重心の建築物100の振子運動が揺れを妨げる向きの加速度を発生し免震作用をすることを説明した。
また、図22では、建築物100は、地震力を受けても、あるレベルまでの地震力に対しては、揺れないことを示した。
これは、吊部材300で建築物100の両側を吊部材300により所定角度で吊り鋼材の弾性力に起因してバネ定数が実質的に変位拡大作用により大きくなり、制震作用が得られることによる。
また、図22では、建築物100は、地震力を受けても、あるレベルまでの地震力に対しては、揺れないことを示した。
これは、吊部材300で建築物100の両側を吊部材300により所定角度で吊り鋼材の弾性力に起因してバネ定数が実質的に変位拡大作用により大きくなり、制震作用が得られることによる。
図23は、地震力を柱部210の底部に受け、建築物100に至るまでに、この発明に係る揺動免震の免震乃至制震動作を示す動作概略図である。
図23において、柱部210の底部に受けた地震力は、柱部210が変断面鋼材であることから、柱部210の上部、すなわち、梁部200に至るまでにかなり減衰する。これは、断面積が小さい部分ほどバネ定数が小さく、逆に断面積が大きい部分ほどバネ定数は大きいので、柱部210の底部に受けた地震力による振動は、バネ定数の大きい上部には伝えにくい。
図23において、柱部210の底部に受けた地震力は、柱部210が変断面鋼材であることから、柱部210の上部、すなわち、梁部200に至るまでにかなり減衰する。これは、断面積が小さい部分ほどバネ定数が小さく、逆に断面積が大きい部分ほどバネ定数は大きいので、柱部210の底部に受けた地震力による振動は、バネ定数の大きい上部には伝えにくい。
このように、柱部210を変断面とするのは、地震力を減衰させる意味と、地震力による座屈を避ける意味がある。すなわち、座屈を避けながら、地震力を減衰させることから、梁部200の柱部を変断面とする。
建築物100を吊るための梁部200の柱部210を変断面とすることで、梁部200での地震力はかなり減衰する。
建築物100を吊るための梁部200の柱部210を変断面とすることで、梁部200での地震力はかなり減衰する。
また、柱部210に連接した梁部200から吊部材300で建築物100を吊ることで、変位拡大作用により地震力の上下震動は制震され、建築物100自体の揺動によって水平方向の制震作用をなす。
図23中で建築物100を吊部材300により所定角度θで吊ることで得られる変位拡大作用により、バネ定数が大きくなり上下方向の制震作用が得られることについて説明する。
変位拡大は、地震力により、建築物100が揺動しようとすると、吊部材300の一方には圧縮力が働き、他方には引張り力が働くことによる。
変位拡大は、地震力により、建築物100が揺動しようとすると、吊部材300の一方には圧縮力が働き、他方には引張り力が働くことによる。
これは、バネが2本並列に連結しているとき、一方に+Fの圧縮力が働き、他方に−Fの圧縮力(引張り力)が働いたとしたときの2本のバネ全体の挙動として考えることができる。
+Fの圧縮力を受けたバネを−Fの圧縮力(引張り力)受けたバネの変位に揃えるには3Fの力が要る。−Fの圧縮力(引張り力)受けたバネの変位には、Fの力が働く。
従って、二つのバネの変位を揃えるには、4Fの力が要ることになる。これは、上下方向に考えると、バネ定数が4倍になったことを意味し、質点の変位とバネの変位の割合が4倍になる。このように、バネの変位と質点の変位の割合が拡大されるのが、変位拡大作用(バネ定数の増加)である。
+Fの圧縮力を受けたバネを−Fの圧縮力(引張り力)受けたバネの変位に揃えるには3Fの力が要る。−Fの圧縮力(引張り力)受けたバネの変位には、Fの力が働く。
従って、二つのバネの変位を揃えるには、4Fの力が要ることになる。これは、上下方向に考えると、バネ定数が4倍になったことを意味し、質点の変位とバネの変位の割合が4倍になる。このように、バネの変位と質点の変位の割合が拡大されるのが、変位拡大作用(バネ定数の増加)である。
この変位拡大作用は、水平方向に対して建築物100の吊角度θ、吊部材300の長さL、及び軸方向応力度σ、重力加速度g等のパラメータの関数となる。角度θとバネ定数、吊下部材300との関係は、図19に示した通りである。
図23で示す、地震力により吊部材300の何れか一方に引張り力を受け、他方に圧縮力を受ける区間O−A、A−B、B−Cでは、変位拡大作用によりバネ定数が増大し上下方向の建築物100に対し制震作用が働く。
なお、建築物100が静止している場合でも、吊部材300を角度θで吊っているので、鋼材1本あたりのバネ定数をKとすると、バネ定数は2Ksinθに増大された状態で上下方向の制震作用を呈する。
次に、地震力による建築物100の揺動時についてみると、単なる振子運動ではなく、吊部材300の双方が、圧縮力、引張り力を交互に受けながら揺動する。
そして、最大振幅の個所で変位拡大作用によりバネ定数が最大になる。建築物100自体の揺動が変位拡大作用の原因となる、吊部材300に対する偏倚、バイアス力を与えながら揺動する。
そして、最大振幅の個所で変位拡大作用によりバネ定数が最大になる。建築物100自体の揺動が変位拡大作用の原因となる、吊部材300に対する偏倚、バイアス力を与えながら揺動する。
すなわち、建築物100の揺動そのものがバネ定数を増大する偏倚、バイアス力となり制震に寄与し、更に、バネ定数の変化により吊部材300の長さの変化はブランコを漕ぐのと逆向きの力による動吸振的な作用で制震作用をもたらす。
この結果、地震力による建築物100が受ける加速度は、極めて小さくなる。
この結果、地震力による建築物100が受ける加速度は、極めて小さくなる。
このように、地震力は変断面の柱部材210を用いることによる減衰、建築物100を両側から吊部材300によって吊る変位拡大作用、並びに動吸振作用等による減衰と、多段に減衰手段を設けているので、公共建築物の耐震化対策に好適である。
上記、柱部210の下にアイソレータを設けた場合は、更に、建築物100に居る者に対する安全度は高まる。
上記、柱部210の下にアイソレータを設けた場合は、更に、建築物100に居る者に対する安全度は高まる。
地震力による建築物100の免震による揺動自体を制震に応用する。新築だけでなく既存建築物の耐震化にも適する。
なお、上記架構体200の柱部210、並びに梁部220は、鋼材を弾性限度範囲内で用いることから、複数バネの連成運動が地震力を減衰させると捉えることもできる。
100 建築物
110 柱
200 架構体
210 柱部
220 梁部
260 梁支持部
300 吊部材
390 制震手段
400 吊部材取付部
420 吊部材支持部
600 免震部材基礎部
700 免震部材
110 柱
200 架構体
210 柱部
220 梁部
260 梁支持部
300 吊部材
390 制震手段
400 吊部材取付部
420 吊部材支持部
600 免震部材基礎部
700 免震部材
Claims (3)
- 建築物を鉛直方向に支持しつつ、水平方向に柔軟に変位可能とし、建築物の固有周期を長周期化する地震対策構法建築物において、
底部に地震力を受ける柱部(210)と、この柱部上部に連接された梁部(220)を有し、建築物(100)を懸吊支持する架構体(200)と、
この架構体の前記梁部(220)から延在し、前記建築物(100)を吊るための吊部材(300)と、
この吊部材で前記建築物(100)を懸吊支持するため、前記建築物(100)の両側に設けた吊部材取付部(400)とを少なくとも具備した揺動免震構法建築物。 - 前記架構体の下部に免震部材(700)を配置し、前記建築物の固有周期を更に長周期化したことを特徴とする請求鴻第1項記載の揺動免震構法建築物。
- 免震構法において、
底部に地震力を受け上部が梁で連接された架構体から、建築物の両側を吊部材により懸吊支持することを特徴とする揺動免震構法。
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