JP2010214363A - リポソーム製造方法及びリポソーム製造装置 - Google Patents

リポソーム製造方法及びリポソーム製造装置 Download PDF

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健一 山下
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真佐也 宮崎
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浩之 中村
Masahito Uehara
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Abstract

【課題】
人体に投与した場合に有害な有機系溶媒を溶媒中に残留することなく、得られるリポソームの粒径の均一性が高く再現性がありかつ量産可能であるリポソーム製造方法及び上記リポソームの製造装置を提供する。
【解決手段】
本発明は低レイノルズ数状態における流れ場である層流の物質の秩序性の調整機能を、脂質分子の集合体であるリポソーム粒径の均一化に応用する。脂質を水溶媒でハイドレーションさせる。この液を流路に層流状態で流通させたところに超音波を照射させることで、再現性があり、粒径のバラツキの少なく量産可能なリポソームを提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、粒子径の均一性が高いリポソームが得られるリポソーム製造方法及びリポソーム製造装置に関する。
リポソームは、主にリン脂質やその誘導体から構成される脂質二重膜から成る球体の小胞二重膜である。リポソームは、その脂質二重膜の内側に、物質を内包する能力を有する。この能力を利用することにより、リポソームは「ドラッグ・デリバリー・システム(以下、「DDS」とも称される。)」における「キャリア」として近年注目されている。すなわち、リポソームは薬理作用を有する物質を脂質二重膜の内側に内包した状態で、その物質を生体内において作用させるべき部位に送達することができる。DDSは、体内の薬物分布を量的、空間的、時間的に制御して薬物を伝達するシステムであり、このDDSにおいて、キャリアによって生体内の細胞や組織が識別されつつ、キャリアに内包された物質が目的部位へ送達される。
リポソームによる薬剤送達は、まずリポソームと細胞の融合が行われてから、細胞と融合したリポソームから細胞内へ薬剤が放出されると推定されている。このようなリポソームによる薬剤の伝達は「トランスフェクション法」とも称される。
一般に、リポソームによる薬剤送達においては、「キャリア」であるリポソームが生体内の細胞や組織が識別するサイズより大きすぎる場合は、肝臓により代謝されて体外へ排出される。一方、生体内の細胞や組織が識別するサイズより小さすぎる場合は、リポソームは腎臓により捕捉されて体外へ排出される。また、リポソームによって抗ガン剤を目的とするガン細胞へ送達する場合には、そのガン細胞が識別して吸収しやすいリポソームの粒径があると考えられている。同様に、遺伝子治療で、リポソームが核酸断片を内包してその核酸断片を必要とする細胞へ送達する場合おいても、細胞が識別して吸収しやすいリポソームの粒径があると考えられている。
このような背景から、粒径が正確かつ均一なリポソームを製造することは、ガン治療や遺伝子治療などにおいて、目的とする細胞が「キャリア」であるリポソームを識別する精度を高めることになる。このことは、DDSの性能向上に直結するので、粒径が正確かつ均一なリポソームを製造する研究が盛んに行われている。
前述されたように、粒径が正確かつ均一なリポソームを製造する方法として、特許文献1には、リポソームを含む溶液にアルコールを添加する方法が開示されている。また、特許文献2及び特許文献3には、微細毛細管を使用してサイズを調整した水滴を油性液体中に導入して得られるW/Oエマルションをテンプレートとして使用する方法が開示されている。特許文献4には、リポソームの原料液に異なる複数の周波数の超音波を照射する方法が開示されている。特許文献5には、容器の壁面に調製された脂質フィルムを、球形塊に剥ぎ取る方法が開示されている。さらに、非特許文献1には、細い流路壁面に形成された脂質フィルムを、溶液の流れの応力によって剥ぎ取る方法が開示されている。また、非特許文献2には、水溶媒と脂質を溶かした有機溶媒を細い流路に流して多層流を形成させ、水と有機溶媒の層流間で起こる脂質の自己集合の特性を利用する方法が開示されている
特開2008−127279号公報 特開2007−204382号公報 特開2006−272196号公報 特開2007−7625号公報 特開平02−139029号公報
Journal of Chemical Engineeringof Japan,Vol.41,739−743,2008 Langmuir,Vol.23,6289−6293,2007
前述された従来の各種方法は、水溶媒以外に有機系溶媒を用いる方法と、微細毛細管によって形成される水滴をテンプレートとして使用する方法と、超音波を照射する方法とに大別される。有機系溶媒を用いる方法では、得られたリポソーム製剤から水以外の有機溶媒を除去しなければ、薬剤として生体に投与し難いという問題がある。また、微細毛細管を用いる方法では、リポソーム一個を調製する毎に、テンプレートとなる水滴を一個ずつ調製しなければならないため、量産化が難しいという問題点がある。また、脂質を水溶媒でハイドロレーションさせた液をバッチ反応器に入れたものに超音波を照射する方法は、簡易ではあるが、得られたリポソームの粒径がバッチ毎にばらついて、バッチ間の再現性が得難いといった問題点がある。
本発明は、前述された問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、DDSの性能向上に直結するように、有機系溶媒を用いることなく、粒径の均一性が高いリポソームを、量産に適した手法で製造できる手段を提供することにある。
本発明に係るリポソーム製造方法は、脂質を水溶液でハイドロレーションを行った第一液を、流路で層流を形成する状態で送液する第一工程と、流路に流通している第一液に対して超音波を照射して、流路の出口から第二液を得る第二工程と、を含む。
前述されたリポソームが構成される脂質は、リン脂質、スフィンゴリピド、糖脂質、ステロール、コレステロール、スフィンゴミエリン、ステアリン酸、ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より少なくとも一つである。
前述されたリポソーム調製のハイドロレーションに用いる水溶液は、人体へ投与する場合を考慮し、生体内で害のないpHと浸透圧を有するものが用いられる。このような水溶液として、例えば、HEPESやPBS等の緩衝液が挙げられる。
前述されたハイドロレーションにおいて、脂質から成るフィルムが、水溶液に浸透されることにより、フィルムに含まれる脂質は、水溶媒中に分散される。すなわち、第一液は、水溶媒中において脂質が自己集合されることにより粒径のバラツキのあるリポソームを含む。この操作によって、フィルムを構成している脂質が水溶液中に分散された第一液が得られる。
前述の第一液には、リポソームに内包させる薬剤が含まれてもよい。
前述された第一工程において、送液部によって、第一液が流路へ流出される。送液部は、第一液の流出速度が制御される機能を具備することによって、第一液が等速で流路に流通される。これにより、流路内において第一液の層流が形成される。この層流については以下に詳しく説明される。上記流路はマイクロキャピラリのような細長い管に第一液が流通されることにより形成される。
前述された第二工程において、流路は、例えば、温度可変な温調式超音波槽中に配置されることによって、流路において層流を成して流通する第一液に、超音波が照射される。この第二工程を経た後、流路から流出された第二液が得られる。なお、温調式超音波槽の温度は、前述の脂質の種類に応じて適宜設定される。
本発明において、リポソーム粒子の粒径分布及び分布曲線は、動的光散乱計で測定した散乱強度の時間変化から直接求められる二次の自己相関関数が、ヒストグラム法で解析されことによって得られる。また、リポソームの平均粒子径や、粒子径分布の多分散度を示す多分散度指数は、測定された散乱強度の時間変化から直接求められる二次の自己相関関数が、キュムラント法で解析されることによって得られる。こうして得られたリポソーム粒子の粒径分布の分布曲線のなだらかさや多分散度指数は、リポソーム粒径の均一さの判断となる。上記分布曲線は、得られたグラフを重ねて比較されることにより、なだらかな曲線である方がリポソーム粒子の粒径のバラツキが大きいと判断される。多分散度指数は、数値が大きくなる程、バラツキが大きいと判断される。
前述されたリポソーム製造方法により、動的光散乱計で測定された第二液に含まれるリポソーム粒子の多分散度指数A1が、バッチ反応器に貯留された第一液に超音波を照射して得られた第三液に含まれるリポソーム粒子の多分散度指数A2より小さい(A1<A2)数値が得られる。
さらに、前述されたリポソーム製造方法により 動的光散乱計で測定した第二液に含まれるリポソーム粒子の粒径分布が、上記第三液に含まれるリポソーム粒子の粒径分布よりも分布のバラツキが小さい。
本発明に係るリポソーム製造装置は、脂質が水溶液によってハイドロレーションされた第一液が、層流として流通される流路部と、上記流路部に対して超音波を照射する超音波照射部と、を具備する。
前述されたリポソーム製造装置において、上記流路部は、例えば、マイクロキャピラリやマイクロ流路プレートによって実現され得る。マイクロキャピラリやマイクロ流路プレートの素材としては、例えばテフロン(登録商標)及びPEEK樹脂等の脂質が吸着し難いものや超音波を吸収され難いものが採用され得る。また、ガラスは、ある程度脂質が吸着する可能性があるが、キャピラリーの壁を薄く形成することができ、超音波が透過され易いので好適である。
上記流路部は、第一液が流通される方向に垂直な断面における最も大きな幅寸法が、例えば1ミリメートル以下である流路が採用され、好ましくは、0.5ミリメートル以下で、さらに好ましくは、0.1ミリメートル以上0.2ミリメートル以下である。
上記流路部におけるマイクロキャピラリのような細い管である流路では、層流が形成される。一般に、管径が小さく、流速が小さく、密度が小さく、粘度が大きいほど層流になりやすいとされている。管内の流れにおける層流は、流体の流線が管の壁面で形成される軸に対して全て平行である。また、管の壁面に近くなる程、流体は管の壁面の抵抗を受けるため流れの早さが小さくなる。仮にバッチ反応器内において第一液を想定すれば、溶媒分子が等方的に衝突する乱流や静置条件が考えられる。一方、層流環境の下では、幅広い種類の分子の変形や配向状態の変化が生じると考えられている。さらに本発明者らは、この層流環境の下における現象は、分子の種類ではなく、分子の大きさや形状や流れの条件に依存するという物理化学的な作用を突きとめた。加えて、層流がもたらす分子の変形や配向状態の変化は、そのような場において調製や化学反応を行う際の反応エントロピーの調節効果をもたらすことを突きとめた。
また、この層流と乱流の判断する基準として用いられるレイノルズ数は、流体の粘度、速度、密度及びその液体の流通する長さから算出される。そして、管内の流れにおいては、このレイノルズ数が、約2000から4000より大きければ乱流と判断され、この範囲よりも小さければ層流であると判断とされる。
よって、上記流路部は、第一液が低レイノルズ数状態における流れ場である層流として流通される。流路部は、レイノルズ数が1500以下であることが好ましい。レイノルズ数が1500より大きければ、流路部における第一液の流れが乱流になると想定されるからである。
また、上記超音波照射部が、照射する超音波の出力を制御する出力制御部を備えることが望ましい。超音波の出力を変えることにより、リポソームの粒子径分布を調整することができるからである。
本発明は、脂質を水溶媒でハイドロレーションさせた第一液を原料として用いるので、有機溶媒が混入しないリポソーム製剤が得られる。また、第一液を層流として超音波を照射することにより、粒径の均一性の高いリポソームが得られる。さらに、流路に第一液を流通させながら超音波を照射することが容易なので、バッチ処理のような再現性のバラツキ無く、リポソームを量産することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るリポソーム製造装置10の模式図である。 図2は、流路部13の内部の本発明の実施形態である層流の概念を模式的に現した図である。 図3は、このリポソーム製造方法を示したフローチャートである。 図4は、実施例1−1のバッチ反応器に貯留された上記第一液に超音波を照射して得た液に含まれるリポソーム粒子及び層流下で上記第一液に超音波照射して得られた液に含まれるリポソームの粒子径分布のグラフである。 図5は、実施例1−2の層流下で上記第一液に超音波照射して得られた液に含まれるリポソームの粒子径分布のグラフである。 図6は、実施例1−4の層流下で上記第一液に超音波照射して得られた液に含まれるリポソームの粒子径分布のグラフである。 図7は、実施例1−4のバッチ反応器に貯留された上記第一液に超音波を照射して得た液に含まれるリポソーム粒子の粒径分布のグラフである。 図8は、実施例1−5の層流下で上記第一液に超音波照射して得られた液に含まれるリポソームの粒子径分布のグラフである。 図9は、実施例1−5のバッチ反応器に貯留された上記第一液に超音波を照射して得た液に含まれるリポソーム粒子の粒径分布のグラフである。 図10は、実施例1−6の層流下で上記第一液に超音波照射して得られた液に含まれるリポソームの粒子径分布のグラフである。 図11は、実施例1−6のバッチ反応器に貯留された上記第一液に超音波を照射して得た液に含まれるリポソーム粒子の粒径分布のグラフである。 図12(A)は第一液におけるリポソームの粒子径分布を示すグラフであり、(B)は層流を形成しないリポソームの溶液に超音波を照射して得られるリポソームの粒径分布を示すグラフであり、(C)は実施例2−1で得られたリポソームの粒径分布を示すグラフである。 図13は、実施例2−3の実験で得られたリポソームの粒径分布を示すグラフである。 図14は、実施例2−4の実験で得られたリポソームの粒径分布を示すグラフである。 図15は、実施例2−5の実験で得られたリポソームの粒径分布を示すグラフである。 図16は、実施例2−6の実験で得られたリポソームの粒径分布を示すグラフである。 図17は、実験例2−7の実験で得られたリポソームの粒径分布のグラフである。 図18は、実施例2−2におけるリポソームの平均粒径と多分散度指数を示す表である。
以下に、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に説明される各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
[リポソーム製造装置10の概略]
図1は、本発明の一実施形態であるリポソーム製造装置10の模式図である。リポソーム製造装置10は、主として、送液機構20、流路48、超音波照射機構15、溶液回収機構49に大別される。流路48の一端17が送液機構20と接続され、流路48の他端18が溶液回収機構49内部に挿入されている。各構成の詳細については、以下に説明される。
[送液機構20]
図1に示されるように、リポソーム製造装置10は、送液機構20としてシリンジポンプ21を有する。シリンジ11は、液体が充填されうる円筒形状のものであり、その先端に送液口19が形成されている。シリンジ11の内部空間にはガスケット34が設けられている。ガスケット34によって、シリンジ11の内部空間における送液口19側と反対側とが液密に封止されている。このガスケット34には、プランジャ31が接続され、かつ、プランジャ31がシリンジ11から突出されている。したがって、シリンジ11の外側においてプランジャ31を操作すると、シリンジ11内においてガスケット34がスライド移動する。
シリンジ11とガスケット34及びプランジャ31からなる注射器36は、シリンジポンプ21の可動機構16に対して着脱可能である。シリンジ11内に第一液が充填される際には、注射器36が可動機構16から外される。また、シリンジ11内に充填された第一液が流路48に送液される際には、注射器36が可動機構16に装着される。可動機構16は、装着された注射器36のプランジャ31を送液口19側へ等速で動作させ得る。この可動機構16の動作によって、シリンジ11に充填された第一液が送液口19から流路48へ流出される。
このときの送液速度は、マイクロキャピラリ13の長さや内径を勘案し、少なくとも十分な超音波照射時間、すなわち、滞留時間が確保される範囲内でなければならない。速すぎると、十分な滞留時間が確保されない。一方、遅すぎる流速では、十分なせん断力をリポソームへ提供できないために、避けなければならない。滞留時間、照射する超音波の周波数や強度は、得られるリポソームの粒子径分布に影響を与える。この滞留時間は、1分以上、さらに好ましくは2分以上確保されることが好適であり、上限は、好ましくは30分以内、さらに好ましくは5分以内であることが望ましい。
[流路48]
図1に示されるように、流路48はマイクロキャピラリ13によって構成されている。マイクロキャピラリ13の断面形状は、理論上特に定める必要はない。超音波の透過性を考慮して、星形のような複雑な形状とすることが好適であるが、安価に入射可能な円形で十分である。このマイクロキャピラリ13の材質は、できるだけ超音波を透過しやすいものが望ましい。例えば、音響インピーダンス値が水に比して極端に高いガラスよりも、テフロン(登録商標)のような合成樹脂材料の方が好適である。マイクロキャピラリ13は、その内径が1ミリメートル未満の円管である。マイクロキャピラリ13の一端17は、ジョイント35を介して、シリンジ11の送液口19と接続されている。マイクロキャピラリ13の他端18は、溶液回収機構49に挿入されている。マイクロキャピラリ13の中央部分の殆どは、温調式超音波槽12の貯留槽32に貯留された水中に配置されている。
[超音波照射機構15]
図1に示されるように、温調式超音波槽12は、水などの液体を貯留可能な貯留槽32を有する。この貯留槽32の底付近には、水などの液体を加熱又は冷却可能な温度制御機構33が設けられている。各図には詳細に示されていないが、この温度制御機構33は、温度センサ、ヒータ及び制御板から構成されており、貯留槽32に貯留された液体の温度を温度センサによって検知して、その液体の温度が制御板に設定された温度を含む一定の温度範囲となるように、ヒータの動作を制御するものである。温調式超音波槽12の内部には貯留槽32に貯留された液体に対して超音波を照射する超音波発生機構15が設けられている。この超音波発生機構15は、公知の機構を採用することができるので、詳細な説明が省略されるが、超音波発生機構15は、所定の超音波を貯留槽32に貯留された液体に対して照射し得るものであり、且つ、照射する超音波の出力を調整する出力調整部を備えたものである。超音波の加速度は、その周波数の2乗と出力の1乗とにそれぞれ比例する。超音波の出力は強いほど好適であるが、50W以上さらに好ましくは200W以上であることが望まれる。超音波の周波数は、高いほど好適であると推察されるが、20kHzの低周波超音波でも十分に目的を達成できる。
[溶液回収機構49]
溶液回収機構49は、マイクロキャピラリ13の他端18から流出される第二液を貯留可能な大きさの容器によって構成されている。このような容器としては、例えば、広口ビン14などが用いられる。
[リポソーム製造方法]
以下に、前述されたリポソーム製造装置10を用いたリポソーム製造方法が説明される。なお、本発明にかかるリポソーム製造方法において、リポソーム製造装置10が用いられることは一実施形態に過ぎず、本発明に係るリポソーム製造方法が、リポソーム製造装置10が用いられる態様に限定されないことは言うまでもない。
以下に詳述されるリポソーム製造方法は、図3のフローチャートに示されるように、主として次の構成に大別される。
(1)脂質を水溶液でハイドロレーションを行った第一液を、層流を形成するように流路へ送液する第一工程。
(2)記流路に流通している第一液に対して超音波を照射し、上記流路から流出された第二液を得る第二工程。
[第一液の調製]
リン脂質を、茄子型フラスコ中でクロロホルムに溶解させる。ロータリーエバポレーター及び真空ポンプを用いて、クロロホルムをゆっくり蒸発除去し、茄子型フラスコ壁面にリン脂質のフィルムを得る。更に、デシケーター内で茄子型フラスコ中に得られたリン脂質のフィルムを真空ポンプを用いて減圧乾燥させることにより、完全にフィルム内に含まれるクロロホルムを除去する。壁面にリン脂質のフィルムが形成された茄子型フラスコにHEPES緩衝液を加えてゆっくりリン脂質のフィルムを水溶液に浸透させてハイドロレーションを行う。HEPES緩衝液に浸透されることにより、フィルムに含まれるリン脂質は、HEPES緩衝液中に分散され、HEPES緩衝液中においてリン脂質が自己集合されることにより粒径のバラツキのあるリポソームが形成される。すなわち、この操作によって得られる第一液は、フィルムを構成しているリン脂質から成るリポソームがHEPES緩衝液中に分散された液となる。
[第一工程]
第一工程において、図1に示される注射器36が、可動機構16から外される。外された注射器36のシリンジ11内に前述された第一液が充填される。注射器36が可動機構16に装着され、可動機構16がプランジャ31を送液口19側へ等速で動作させることによって、ガスケット34が送液口19側へ移動される。また、ガスケット34が移動されることによって、シリンジ11の内部空間に充填された第一液に圧力が付与されて、シリンジ11内の第一液が送液口19から等速でマイクロキャピラリ13へ流出される。第一液は、マイクロキャピラリ13の一端17から他端18へ向かう過程において、層流として流通される。層流については、以下に詳細に説明される。なお、後述する実施例1−1〜1−6及び比較例1−1〜1−5においては、シリカ製のマイクロキャピラリ13が使用され、実施例2−1〜2−6及び比較例2−1、2−2においては、テフロン(登録商標)製のマイクロキャピラリ13が使用され、実施例2−7においてはガラス製のマイクロキャピラリが使用される。
図2に示されるように、マイクロキャピラリ13内において、第一液は、流通向き29へ層流として流通される。なお、図2において、矢印45の向きにマイクロキャピラリ13の一端17があり、矢印46の向きにマイクロキャピラリ13の他端18がある。また、図2において、流速23から流速26によって、マイクロキャピラリ13内の層流における速度の流線が示されている。流速23から流速27は、マイクロキャピラリ13の軸に対して全て平行であり、流通向き29と同じ向きである。マイクロキャピラリ13の壁面に近くなる程、壁面の抵抗を受けることによって、第一液の流速が小さくなる。したがって、図2に示された破線40及び破線41で挟まれたマイクロキャピラリ13の中央側の空間を流される流速25から流速27は、破線40とマイクロキャピラリ37の壁面42との間に挟まれた空間を流される流速24、及び破線41とマイクロキャピラリ38の壁面43との間に挟まれた空間を流される流速23に比べて大きい。
[第二工程]
第二工程において、マイクロキャピラリ13内を層流として流通する第一液は、温調式超音波槽12の貯留槽32に貯留された水を介して、温度制御機構33で調整された温度に調整される。また、超音波発生機構15が貯留槽32に貯留された水に対して超音波を照射ことにより、マイクロキャピラリ13内を流通する第一液に超音波が照射される。図2において、超音波発生機構15から発生された貯留槽32中の超音波が、模式的に矢印47として示される。
第一液に含まれるリポソーム22に超音波47が照射されると、リポソーム22は、分解や自己集合を繰り返す。この分解や自己集合は、層流において、リポソーム22の変形や配向状態の変化となり、リポソーム22の粒径や形状が層流の物理化学的な作用により変化される。すなわち、層流がもたらすリポソーム22の変形や配向状態の変化が、反応エントロピーにより調節されると推定される。この反応エントロピーの調節効果により、リポソーム22の粒径の均一性が高められ、リポソーム22に比べて粒径が均一なリポソーム28が形成される。
また、別の角度からリポソーム22に超音波が照射されたときの現象を説明すると、リポソームのような柔軟性のある巨大分子集合体は、層流中においてはそのせん断力により球形から球形以外の形状に変形する。しかしながら、本来球形の方が表面エネルギーが最小となって安定する。このような状況下で超音波が照射されると、リポソームは分裂する。リポソームの分裂は、層流によってもたらされるせん断力の影響が無くなる粒子径になるまで繰り返され、結果、粒子径の小さい特定の粒子径のリポソームが生成される。
上述のように、第一液に含まれるリポソーム22に超音波47が照射されると、分裂や融合を繰り返すリポソーム22において、分裂が優位に生じ、リポソーム22の粒径の均一性が高められ、リポソーム22に比べて粒子径が均一なリポソーム28が生成される。その結果、マイクロキャピラリ13の他端18付近では、粒子径の均一性が高いリポソーム28が存在する。このリポソーム28を含む液が、本発明において第二液と称される。第二液は、マイクロキャピラリ13の他端18から流出されて、広口瓶14で回収される。
[本実施形態の作用効果]
前述されたように、本実施形態によれば、有機系溶媒が用いられることなく、リン脂質がHEPES緩衝液でハイドロレーションされた第一液を、マイクロキャピラリ13内で層流として超音波が照射されることにより、リポソーム22の変形や配向状態の変化が生じて、粒径の均一性が高いリポソーム28が形成される。また、前述されたリポソーム製造方法は、バッチ処理ではないので、粒径分布の再現性が高く、量産に適している。
なお、本実施形態では、本発明に係る送液機構としてシリンジポンプ21が例示されているが、シリンジポンプ21に代えて、送液ポンプなどの公知の装置等が採用されてもよい。
以下に、本発明の実施例が説明される。実施例は、本発明の一実施形態であり、本発明が実施例に記載されたものに限定されないことは言うまでもない
[実施例1−1]
[第一液の調製]
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン(53.5nmol)と3−sn−ホスファチジン酸ナトリウム塩(15.3nmol)を含有するクロロホルム(10ml)溶液を茄子型フラスコに入れロータリーエバポレーターで回転させながら真空ポンプ(PTFEダイヤフラム真空ポンプV-700 ECO,柴田化学)を用い、約一時間かけてクロロホルムを突沸しないように監視の下、ゆっくりと減圧蒸留しながら除去した。さらにデシケーター内に上記茄子型フラスコを入れたものを3時間真空ポンプ(PTFEダイヤフラム真空ポンプV-700 ECO,柴田化学)を用いて減圧乾燥させてクロロホルムを完全に除去することにより上記2種類の脂質混合物のフィルムを得た。上記フラスコにHEPES緩衝液(0.250ml)を加え、このフラスコを傾けた状態でゆっくり回転させてハイドロレーション操作を行うことによって、上記2種類の脂質の混合物を緩衝液中に分散させた第一液を得た。
[リポソームの調製]
第一液を注射器36に充填した。送液機構20を作動させることによって、シリンジ11に充填された第一液をマイクロキャピラリ13に流通させた。マイクロキャピラリ13として、流通向き29に垂直な断面における最大寸法が200μmであって、流通向き29に沿った長さが80cmのものを用いた。また、第一液は、マイクロキャピラリ13に対して流速12.5μl/minで流通させた。このとき、第一液がマイクロキャピラリ13中に滞留される時間は約2分であった。マイクロキャピラリ13を貯留槽32(60℃)に貯蓄された水に浸して超音波(200W)を照射した。これにより、マイクロキャピラリ13の他端18から流出する第二液を得た。
[実施例1−2]
第一液をマイクロキャピラリ13に流通させる速度を25μ/min(速度1)、12.5μ/min(速度2)、6.25μ/min(速度3)、と変化させた他は、前述された実施例1−1と同様にして第二液を得た。流速が変化することによって、マイクロキャピラリ13内に滞留する時間が変化し、その結果、第一液に対して超音波が照射される時間が変化する。
[実施例1−3]
[第一液の調製]
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン(112.5nmol)とヘミコハク酸コレステロール(25.0nmol)を含有するクロロホルム(10ml)溶液を茄子型フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターで回転させながら真空ポンプを用い、約一時間かけてクロロホルムをゆっくりと減圧蒸留し除去した。さらにデシケーター内に上記茄子型フラスコを入れたものを3時間減圧乾燥させてクロロホルムを上記フィルムから完全に除去することにより、上記2種類の脂質混合物のフィルムを得た。上記フラスコにHEPES緩衝液(0.250ml)を加え、このフラスコを傾けた状態でゆっくり回転させてハイドロレーション操作を行い、上記2種類の脂質混合物を緩衝液中に分散させた第一液を得た。
[リポソームの調製]
前述されたようにして得られた第一液を使用した他は、前述された実施例1−1と同様の手法を三回行って第二液を得た。
[実施例1−4]
マイクロキャピラリ13の長さを160cmとした他は、前述された実施例1−3と同様の手法を二回行って第二液を得た。
[実施例1−5]
マイクロキャピラリ13の長さを160cmとした他は、前述された実施例1−1と同様の手法を二回行って第二液を得た。
[実施例1−6]
実施例1と同様の手法を二回行って、第二液を得た。
[比較例1−1]
実施例1−1と共通の第一液を、エッペンドルフチューブに入れた。そのエッペンドルフチューブを温調式超音波槽12の貯留槽32(60℃)に貯蓄された水に浮かせた状態で、2分間に渡って超音波(200W)を照射して比較対照液を得た。
[比較例1−2]
実施例1−3と共通の第一液を使用した他は、前述された比較例1−1と同様の手法を三回行って比較対照液を得た。
[比較例1−3]
実施例1−4と共通の第一液を使用し、第一液に超音波を照射する時間を4分間とした他は、実施例1−3と同様の手法を二回行って比較対照液を得た。
[比較例1−4]
実施例1−5と共通の第一液を使用し、第一液に超音波を照射する時間を4分間とした他は、実施例1−3と同様の手法を二回行って比較対照液を得た。
[比較例1−5]
比較例1−1と同様の手法を二回行って比較対照液を得た。
[リポソームの粒度分布]
各実施例で得られた第二液及び各比較例で得られた比較対照液を動的光散乱計(英国Malvern Instruments Ltd.製 Nano-ZS)で測定を行い、液中に含まれるリポソームの粒度分布を得た。リポソーム粒子の粒径分布及び分布曲線は、動的光散乱計で測定した散乱強度の時間変化から直接求められる二次の自己相関関数を、ヒストグラム法で解析して得た。また、得られた分布が単一の標準正規分布とみなせる場合においては、リポソームの平均粒子径や、粒子径分布の多分散度を示す多分散度指数は、測定された散乱強度の時間変化から直接求められる二次の自己相関関数を、キュムラント法で解析して得た。
実施例1−1及び比較例1−1の結果を図4に示す。実施例1−2においては、各速度1,2,3で得られた第二液に含まれるリポソームの粒度分布を得た。その結果を図5に示す。実施例1−4の結果を図6に示し、比較例1−3の結果を図7に示す。実施例1−5の結果を図8に示し、比較例1−4の結果を図9に記す。実施例1−6の結果を図10に示し、比較例1−5の結果を図11に示す。
また、実施例1−3及び比較例1−2について、得られたリポソームの粒度分布からキュムラント法を用いて、それぞれの液に含まれるリポソームの平均粒径と多分散度指数(Pdi)を算出した。その結果を表1に示す。
Figure 2010214363
各図に示されるように、脂質の種類やマイクロキャピラリ13の長さによって多少のリポソームの粒径分布の差はあるものの、いずれの実施例においても対応する各比較例よりリポソームの粒径分布のバラツキが少なく、かつ再現性が高いことが確認された。また、図5に示されるように、第一液がマイクロキャピラリ13内を流通する流速に、第一液に含まれるリポソームの平均粒子径が依存することが確認された。また、表1に示されるように、比較例1−2に比べて実施例1−3が多分散度指数が明らかに小さいことが確認された。
[実施例2−1]
[第一液の調製]
Dioleoyl phosphatidyl ethanolamine(1.75mg)と、L−3−phosphatidic acid sodium salt from egg yolk lecithin(2.5mg)を含有するクロロホルム(5ml)溶液を茄子型フラスコに入れロータリーエバポレーターで回転させながら真空ポンプ(PTFEダイヤフラム真空ポンプV−700 ECO,柴田化学)を用い、約1時間かけてクロロホルムを突沸しないように監視の下、ゆっくりと減圧蒸留しながら除去した。さらにデシケーター内に上記茄子型フラスコを入れたものを3時間、上記真空ポンプを用いて減圧乾燥させてクロロホルムを完全に除去することにより上記2種類の脂質の混合物のフィルムを得た。上記フラスコにHEPES緩衝液(1.25ml)を加え、このフラスコを傾けた状態でゆっくり回転させてハイドロレーション操作を行うことによって、上記2種類の脂質混合物が緩衝液中に分散した第一液を得た。
[第二液の調製]
得られた第一液を注射器36に充填した。送液機構20を作動させることによって、シリンジ11に充填された第一液をマイクロキャピラリ13に流通させた。マイクロキャピラリ13として、流通向き29に垂直な断面における最大寸法が330μmであって、流通向き29に沿った長さが92cmのものを用いた。また、第一液は、マイクロキャピラリ13に対して流速39μl/minで流通させた。このとき、第一液がマイクロキャピラリ13中に滞留される時間は約2分であった。マイクロキャピラリ13を貯留槽32(60℃)に貯蓄された水に浸して超音波(3.7kHz、600W)を照射した。これにより、マイクロキャピラリ13の他端18から流出する第二液を得た。
[実施例2−2]
実施例2−1と同一方法で得た第一液を様々な径、長さ、材質を持つマイクロキャピラリ13に、様々な流速で流通させる実験を行った。操作は、前述された実施例2−1と同様にして第二液を得た。各条件において得られた第二液に含まれるリポソームの平均粒径と多分散度指数をまとめた表が図18に示される。
[実施例2−3]
[第一液の調製]
Dioleoyl phosphatidyl ethanolamineと、L−3−phosphatidic acid sodium salt from egg yolk lecithinをモル比7:5で含有するクロロホルム(5ml)溶液を茄子型フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターで回転させながら上記真空ポンプを用い、約1時間かけてクロロホルムをゆっくりと減圧蒸留し除去した。さらにデシケーター内に上記茄子型フラスコを入れたものを3時間減圧乾燥させてクロロホルムを上記フィルムから完全に除去することにより、上記2種類の脂質混合物のフィルムを得た。上記フラスコにHEPES緩衝液(1.25ml)を加え、このフラスコを傾けた状態でゆっくり回転させてハイドロレーション操作を行い、上記2種類の脂質の混合物を緩衝液中に分散させた第一液を得た。この第一液の最終脂質濃度は2.4mg/mlであった。
[第二液の調製]
前述されたようにして得られた第一液を使用し、テフロン(登録商標)より成るマイクロキャピラリ13の内径が250μm、長さが160cm、とした他は、前述された実施例2−1と同様の手法を三回行って第二液を得た。なお、この条件では、超音波照射時間の積算値は2分である。
[実施例2−4]
Dioleoyl phosphatidyl ethanolamineと、L−3−phosphatidic acid sodium salt from egg yolk lecithinとのモル比7:10とし、第一液に最終脂質濃度が5.4mg/mlのものを使用した他は、前述された実施例2−3と同様の手法を行って第二液を得た。
[実施例2−5]
non−hydrogenated egg phosphatidylcholineと、cholesterolとのモル比を7:3とし、第一液に最終脂質濃度が1.8mg/mlのものを使用した他は、前述された実施例2−3と同様の手法を行って第二液を得た。
[実施例2−6]
Dioleoyl phosphatidyl ethanolamineと、cholesteryl hemisuccinateとのモル比を9:2とし、第一液に最終脂質濃度が4.0mg/mlのものを使用した他は、前述された実施例2−3と同様の手法を行って第二液を得た。
[実施例2−7]
実施例2−1に同じ第一液をマイクロキャピラリ13に流通させた。マイクロキャピラリ13として、ガラスより成り、流通向き29に垂直な断面における最大寸法が200μmであって、流通向き29に沿った長さが160cmのものが用いられる。また、第一液は、マイクロキャピラリ13に対して流速6.25μl/minで流通される。このとき、第一液が貯留槽32の水の中にある正味の時間は8分であった。他の操作を前述された実施例2−1と同様にして、第二液が得られた。
[比較例2−1]
実施例2−1と共通の第一液が、そのまま比較対照とされる。
[比較例2−2]
実施例2−1と共通の第一液を、エッペンドルフチューブに入れた。そのエッペンドルフチューブを温調式超音波槽12の貯留槽32(60℃)に貯蓄された水に浮かせた状態で、2分間に渡って超音波(37kHz、600W)を照射して比較対照液を得た。
[リポソームの粒度分布]
各実施例で得られた第二液及び各比較例で得られた比較対照液を動的光散乱計(英国Malvern Instruments Ltd.製 Nano−ZS)で測定を行い、液中に含まれるリポソームの粒度分布を得た。リポソーム粒子の粒径分布及び分布曲線は、前述されたヒストグラム法で解析して得た。また、得られた分布が単一の標準正規分布とみなせる場合においては、リポソームの平均粒子径や、粒子径分布の多分散度を示す多分散度指数を前述されたキュムラント法で解析して得た。
比較例2−1の結果が図12(A)に、比較例2−2の結果が図12(B)に、実施例2−1の結果が図12(C)に、実施例2−3〜2−7の結果が図13〜17に示される。これらの粒度分布曲線が複数得られているのは、複数回の実験を行った結果を示すものである。本発明で得られたリポソーム(図12(C)、図13〜16参照)は、第一液(図12(A)参照)に含まれるリポソーム、第一液に対してバッチ状態で超音波照射して得られたリポソーム(図12(B)参照)と比較して、多分散度指数が小さく(すなわち、均一性が良い)、且つ、再現性が高いことが分かる。
実施例2−2の結果が示された図18からは、本発明手法における条件設定の影響が読み取られる。本発明手法によるリポソームの均一化では、得られるリポソームの粒子径の大きさは、層流のせん断力、つまり、流速分布の急峻さに影響される。レイノルズ数は、この急峻さを示す指標ではないため、レイノルズ数から、得られるリポソームの大きさを整理することはできない。また、同じ内表面積(内径×π×長さ)、内径、超音波照射時間の下、異なる流速にて、せん断力の影響だけを試験することは不可能である。図18の表の1と2(内径330μm)、3と4(内径250μm)、5と6(内径170μm)の組み合わせのように、マイクロキャピラリ13の内径が同じ組み合わせ(1と2、3と4、5と6の3つの組み合わせ)では、得られたリポソームの平均粒径は、1と2とでは129nmと133nm、3と4とでは157nmと148nm、5と6とでは182nmと193nmと、各組みで互いに近い値になっている。また、図18の表の1、4、6のようにほぼ同じ内表面積(内径×π×長さ)を有する組み合わせ(1では0.09533cm、4では0.1256cm、6では0.18469cm)、2、4、5のようにほぼ同じ線速(流速/断面積)を有する組み合わせ(2では795、4では795、5では793(いずれも単位省略))の両方において、最も厚い流路壁を有する内径170μmのもの(5と6)が、他(1〜4)と比べて粒径が大きく、分散度が大きい結果になっている。これは、流路壁が厚いためにリポソームへの超音波の照射強度が他と比較して小さかったためであると考えられる。
また、実施例2−7(ガラス製のマイクロキャピラリ13を使用)は、他の実施例と比べて粒子径が大きいリポソームとなっている。ガラスは、水やプラスチック材料に比べ、極端に大きな音響インピーダンスを有し、超音波の透過率が低い。
また、実施例1−3では、前述されたように内径200μmのシリカ製のマイクロキャピラリ13を使用し、超音波の出力を200Wとし、流速を12.5μl/minとして、粒子径650nmのリポソームを得た。一方、実施例2−2の8では、シリカよりも超音波の透過率の良いテフロン(登録商標)製の内径200μmのマイクロキャピラリ13を使用し、超音波の出力を600Wとし、流速を12.5μl/minとして、実施例1−3よりも粒子径の小さい粒子径533nmのリポソームを得た。実施例1−3と実施例2−2の8とでは内径及び流速が同じであるので線速が同じである。一方、テフロン(登録商標)製のマイクロキャピラリ13を用いて出力600Wで超音波を照射した実施例2−2の8の方が、シリカ製のマイクロキャピラリ13を用いて出力200Wで超音波を照射した実施例1−3よりも、リポソームに照射される超音波の強度が大きい。つまり、超音波の照射強度の大きい実施例2−2の8の方が粒子径が小さいという結果が得られた。
上述の実施例2−2と2−7と実施例1−3の結果は、照射する超音波の出力を制御することにより、リポソームの粒子径の均一性を保ったままで粒子径を制御できることを示している。
図13から図16は、それぞれ、実施例2−3から2−6で得られた第二液に含まれるリポソームの粒度分布を示したものである。いずれの図においても、粒度分布曲線が複数得られているのは、複数回の実験を行った結果を示すものである。いずれの結果も、均一性の高いリポソームを再現性よく得られていることが示されている。これらはいずれも、リポソームを構成する脂質の割合や種類が違うものであり、本発明手法の一般性を示すものである。
[本実施形態の作用効果]
前述されたように、本実施形態によれば、有機系溶媒が用いられることなく、リン脂質がHEPES緩衝液でハイドロレーションされた第一液を、マイクロキャピラリ13内で層流として超音波が照射されることにより、リポソーム22の変形や配向状態の変化が生じて、粒径の均一性が高いリポソーム28が形成される。また、前述されたリポソーム製造方法は、バッチ処理ではないので、粒径分布の再現性が高く、量産に適している。さらに、照射する超音波の出力を変えることにより粒子径の均一性を保ったままでリポソームの粒子径を調整することができる。
10・・・リポソーム製造装置
11・・・シリンジ
12・・・温調式超音波槽
13・・・マイクロキャピラリ
14・・・広口ビン
15・・・超音波照射機構
16・・・プランジャ可動機構
17・・・シリカキャピラリーチューブの一端(流路入口側)
18・・・シリカキャピラリーチューブの他端(流路出口側)
19・・・シリンジ11の送液口
21・・・シリンジポンプ
31・・・プランジャ
32・・・貯留槽
33・・・温度制御機構
34・・・ガスケット
35・・・ジョイント
37、38・・・マイクロキャピラリ
42、43・・・マイクロキャピラリの壁面

Claims (7)

  1. 脂質を水溶液でハイドロレーションを行った第一液を、層流を形成するように流路へ送液する第1工程と、
    上記流路に流通している第一液に対して超音波を照射し、上記流路から流出された第二液を得る第2工程と、を含むリポソーム製造方法。
  2. 動的光散乱計で測定した上記第二液に含まれるリポソーム粒子の多分散度指数A1 が、バッチ反応器に貯留された上記第一液に超音波を照射して得た第三液に含まれるリポソーム粒子の多分散度指数A2より小さい請求項1に記載のリポソーム製造方法。
  3. 動的光散乱計で測定した上記第二液に含まれるリポソーム粒子の粒径分布が、バッチ反応器に貯留された上記第一液に超音波を照射して得た第三液に含まれるリポソーム粒子の粒径分布より分布のばらつきが小さい請求項1に記載のリポソーム製造方法。
  4. 脂質が水溶液によってハイドロレーションされた第一液が、層流として流通される流路部と、
    上記流路にに対して超音波を照射する超音波照射部と、を具備するリポソーム製造装置。
  5. 上記流路部のレイノルズ数が1500以下である請求項4に記載のリポソーム製造装置。
  6. 上記流路部において第一液が流通される方向に垂直な断面における最も大きな幅寸法が1ミリメートル以下である請求項4又は5に記載のリポソーム製造装置。
  7. 上記超音波照射部が、照射する超音波の出力を制御する出力制御部を備える請求項4乃至6のいずれか1項に記載のリポソーム製造装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5904555B2 (ja) * 2011-01-21 2016-04-13 国立大学法人神戸大学 リポソームの製造方法

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