JP2010213089A - 信号処理装置およびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】高精度な音源分離が可能な分離行列を生成する。
【解決手段】係数列wA(fk)を適用したフィルタ処理で、方向LAから到来する音SVAが強調されるとともに音SVBの到来の方向LBに収音の死角が形成されるように、係数列生成部44は係数列wA(fk)を生成する。方向特定部52は、係数列wA(fk)から方向LB(角度θB)を特定する。行列決定分54は、既知の方向LA(角度θA)と方向特定部52が特定した方向LB(角度θB)とから分離行列W0(f1)〜W0(fK)を生成する。
【選択図】図4

Description

本発明は、複数音のうちの特定音を強調または抑圧する技術に関する。
複数の音源からの放射音を複数の収音機器で採取した複数の音響信号に対してフィルタ処理を実行することで、各音源からの音を個別に強調または抑制(すなわち音源分離)することが可能である。音響信号のフィルタ処理に使用される分離行列の推定には、主成分分析や二次統計量ICA(independent component analysis)などの部分空間法(例えば非特許文献1)や、目的音の方向にビームを形成する適応ビームフォーマ(例えば特許文献1)が利用される。以上の方法で推定された分離行列を初期値として例えば独立成分分析の学習を実行することで、実際に利用される分離行列が生成される。
特許第3949074号公報
K. Tachibana, et. al., "Efficient Blind Source Separation Combining Closed-Form Second Order ICA and Nonclosed-Form Higher-Order ICA," International Conference on Acoustics, Speech, and Signal Processing (ICASSP), Vol. 1, pp. 45-48, Apr. 2007. H. Saruwatari, et. al., "Blind Source Separation Combining Independent Component Analysis and Beamforming", EURASIP Journal on Applied Signal Processing Vol.2003, No.11, pp.1135-1146, 2003
しかし、非特許文献1の方法では、第1主成分を強調する係数列(分離行列)と第2主成分を強調する係数列とが直交するという制約のもとで分離行列が特定されるから、各音源の方向(位置)によっては分離行列の高精度な推定が困難となる場合がある。また、特許文献1の方法は、分離行列のうち目的音を強調するための係数列の推定に適応ビームフォーマが利用されるに過ぎず、目的音の係数列と非目的音の係数列とが直交する必要があるという制約は非特許文献1と同様である。以上の事情を背景として、本発明は、高精度な音源分離が可能な分離行列を生成することを目的とする。
以上の課題を解決するために、本発明に係る信号処理装置は、相異なる方向から到来する複数音(音声や雑音(非音声)などの音響)を複数の収音機器で収音した複数の音響信号に対するフィルタ処理に適用したときに、複数音のうち第1方向から到来する第1音が強調され、かつ、第2音が到来する第2方向に収音の死角が形成されるように、フィルタ処理の係数列を生成する係数列生成手段と、係数列から第2方向を特定する方向特定手段(例えば図4の方向特定部52)と、第1音を強調するための分離行列を第1方向と方向特定手段が特定した第2方向とに応じて生成する行列決定手段とを具備する。以上の態様においては、第1方向からの第1音が強調されるとともに第2方向に死角が形成される(すなわち、第2方向からの到来音が抑圧される)ように生成された係数列から第2方向が特定されるから、第1音の分離行列と第2音の分離行列とが直行するという条件は不要である。したがって、各音の分離行列が直交するという条件に制約されずに分離行列を推定できるという利点がある。
本発明の好適な態様において、係数列生成手段は、係数列の転置行列と、第1方向から到来する音が複数の収音機器の各々に到達する時間差を示す方向ベクトルとの乗算値が1に近づくように、係数列を生成する。以上の態様においては、第1方向からの第1音を強調するという条件(例えば後掲の各実施形態における条件1)を簡易かつ確実に係数列に反映させることが可能である。
本発明の好適な態様において、係数列生成手段は、係数列の転置行列と、複数の音響信号の強度の共分散行列と、係数列との乗算値が小さくなるように、係数列を生成する。以上の態様においては、第2方向に死角を形成するという条件(例えば後掲の各実施形態における条件2)を簡易かつ確実に係数列に反映させることが可能である。
本発明の好適な態様に係る信号処理装置は、行列決定手段が決定した分離行列を初期値として学習を実行する学習処理手段を具備する。以上の態様においては分離行列の学習が実行されるから、第1音と第2音との分離の精度を高めることが可能である。また、本発明においては第1音の分離行列と第2音の分離行列とが直交するという制約が不要であるから、行列決定手段が決定した分離行列と所期の特性の分離行列との乖離が低減される。したがって、学習処理手段による学習のための演算量が削減されるという利点もある。
行列決定手段および学習処理手段を具備する信号処理装置の具体的な態様において、行列決定手段は、分離行列を順次に生成し、学習処理手段による学習後の分離行列から複数音の各々の到来方向を推定する方向特定手段と、行列決定手段が生成した分離行列に対応した各音の到来方向と方向特定手段が各音について推定した到来方向との相違に応じて各音の到来方向の変化の有無を判定する変化検出手段とを具備し、学習処理手段は、各音の到来方向が変化したと変化検出手段が判定した場合に、行列決定手段が生成した分離行列を初期値として学習を実行し、各音の到来方向が変化していないと変化検出手段が判定した場合に、分離行列の学習を停止し、または、分離行列を初期化せずに学習を継続する。以上の態様においては、音源が移動した場合であっても高精度な音源分離を維持することが可能である。
また、以上の各態様に係る信号処理装置は、音響信号の処理に専用されるDSP(Digital Signal Processor)などのハードウェア(電子回路)によって実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)などの汎用の演算処理装置とプログラムとの協働によっても実現される。本発明に係るプログラムは、相異なる方向から到来する複数音を複数の収音機器で収音した複数の音響信号に対するフィルタ処理に適用したときに、複数音のうち第1方向から到来する第1音が強調され、かつ、第2音が到来する第2方向に収音の死角が形成されるように、フィルタ処理の係数列を生成する係数列生成処理と、係数列から第2方向を特定する方向特定処理と、第1音を強調するための分離行列を第1方向と方向特定処理で特定した第2方向とに応じて生成する行列決定処理とをコンピュータに実行させる。以上のプログラムによれば、本発明に係る信号処理装置と同様の作用および効果が奏される。本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で利用者に提供されてコンピュータにインストールされるほか、通信網を介した配信の形態でサーバ装置から提供されてコンピュータにインストールされる。
本発明の第1実施形態に係る信号処理装置のブロック図である。 周波数スペクトルと観測ベクトルとの関係を示す概念図である。 信号処理部のブロック図である。 初期値決定部のブロック図である。 適応ビームフォーマによるビームの方向と死角とを説明するための概念図である。 係数列生成部による処理の原理を説明するための概念図である。 第1実施形態の効果を説明するための図表である。 第2実施形態に係る信号処理装置のブロック図である。 第2実施形態の効果を説明するための図表である。
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る信号処理装置100のブロック図である。相互に間隔をあけて平面PL内に配置された収音機器M1および収音機器M2が信号処理装置100に接続される。収音機器M1および収音機器M2の周囲には音源SAおよび音源SBが存在する。音源SAは、基準点p(例えば収音機器M1と収音機器M2との中点)から平面PLに垂直に延在する法線Lnに対して角度θAをなす方向LAに位置し、音源SBは、法線Lnに対して角度θB(θB≠θA)をなす方向LBに存在する。したがって、音源SAが放射する音SVAは方向LAから収音機器M1および収音機器M2に到達し、音源SBが放射する音SVBは方向LBから収音機器M1および収音機器M2に到達する。収音機器M1および収音機器M2の各々は、周囲の音を収音するマイクロホンである。収音機器M1は音響信号V1(t)を生成し、収音機器M2は音響信号V2(t)を生成する。音響信号V1(t)および音響信号V2(t)は、音SVAと音SVBとの混合音の波形を表す時間領域(時間t)の音響信号である。
音源SAの方向LA(角度θA)は既知の方向に確定している。例えば、信号処理装置100が自動車の車内に設置された場合を想定すると、運転席に着席する運転者の頭部の方向が音源(すなわち運転者)SAの方向LAに相当する。また、利用者の発声音を入力する電子機器(例えば携帯電話機)に信号処理装置100が搭載された場合を想定すると、電子機器の本体に対して正面の方向が音源(すなわち発声者)SAの方向LAに相当する。他方、音源SBの方向LB(角度θB)は未確定(未知)である。すなわち、音源SAは既知の方向LAに固定的に設置されるのに対して音源SBは可変の方向LBに設置される。
信号処理装置100は、音響信号V1(t)および音響信号V2(t)にフィルタ処理(音源分離)を実行することで分離信号U1(t)および分離信号U2(t)を生成する。分離信号U1(t)は、音源SAからの音SVAを強調した音響信号(音源SBからの音SVBを抑制した音響信号)であり、分離信号U2(t)は、音SVBを強調した音響信号(音SVAを抑制した音響信号)である。すなわち、音源SAからの音SVAと音源SBからの音SVBとが分離(音源分離)される。分離信号U1(t)や分離信号U2(t)は、スピーカやヘッドホンなどの放音機器(図示略)に供給されることで音響として再生される。分離信号U1(t)および分離信号U2(t)の一方のみを生成する構成(例えば分離信号U2(t)を雑音として破棄する構成)も採用される。なお、音響信号V1(t)および音響信号V2(t)をデジタル信号に変換するA/D変換器や、分離信号U1(t)および分離信号U2(t)をアナログ信号に変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略されている。
図1に示すように、信号処理装置100は、周波数分析部12と信号処理部14と分離行列生成部16と信号合成部18とを含んで構成される。信号処理装置100の各要素は、例えば、記録媒体に記録されたプログラムを実行する演算処理装置(CPU)や特定の信号処理に専用される電子回路(DSP)で実現される。また、信号処理装置100の各要素が複数の集積回路に分散して搭載された構成も採用される。
周波数分析部12は、音響信号V1(t)の周波数スペクトルQ1(m)と音響信号V2(t)の周波数スペクトルQ2(m)とを時間軸上のフレーム毎に順次に算定する。添字mはフレームの番号を示す。図2に示すように、第m番目のフレームの周波数スペクトルQ1(m)は、周波数軸上に設定されたK個の周波数(周波数帯域)f1〜fKの各々における強度x1(m,f1)〜x1(m,fK)の系列である。同様に、周波数スペクトルQ2(m)は、K個の強度x2(m,f1)〜x2(m,fK)で構成される。
図1の信号処理部14は、強度x1(m,f1)〜x1(m,fK)および強度x2(m,f1)〜x2(m,fK)に対するフィルタ処理(音源分離)で強度u1(m,f1)〜u1(m,fK)および強度u2(m,f1)〜u2(m,fK)をフレーム毎に順次に生成する。信号合成部18は、信号処理部14が生成した強度u1(m,f1)〜u1(m,fK)を時間領域の信号に変換して相互に連結することで分離信号U1(t)を生成する。また、信号合成部18は、信号処理部14が生成した強度u2(m,f1)〜u2(m,fK)から時間領域の分離信号U2(t)を生成する。
図3は、信号処理部14のブロック図である。図3に示すように、信号処理部14は、K個の周波数f1〜fKの各々に対応するK個の処理部P1〜PKで構成される。周波数fk(k=1〜K)に対応する処理部Pkは、強度x1(m,fk)および強度x2(m,fk)から強度u1(m,fk)を生成するフィルタ部32と、強度x1(m,fk)および強度x2(m,fk)から強度u2(m,fk)を生成するフィルタ部34とを含んで構成される。
フィルタ部32およびフィルタ部34は、遅延加算型(DS(delay-sum)型)のビームフォーマである。すなわち、処理部Pkのフィルタ部32は、数式(1a)で定義されるように、係数w11(fk)に応じた遅延を強度x1(m,fk)の時系列に付加する遅延素子321と、係数w12(fk)に応じた遅延を強度x2(m,fk)の時系列に付加する遅延素子323と、遅延素子321の出力と遅延素子323の出力との加算で強度u1(m,fk)を生成する加算部325とを含んで構成される。
u1(m,fk)=w11(fk)・x1(m,fk)+w21(fk)・x2(m,fk) ……(1a)
同様に、フィルタ部34は、数式(1b)で定義されるように、強度x1(m,fk)の時系列を係数w21(fk)に応じて遅延させる遅延素子341と、強度x2(m,fk)の時系列を係数w22(fk)に応じて遅延させる遅延素子343と、遅延素子341の出力と遅延素子343の出力との加算で強度u2(m,fk)を生成する加算部345とを含む。
u2(m,fk)=w12(fk)・x1(m,fk)+w22(fk)・x2(m,fk) ……(1b)
分離行列生成部16は、信号処理部14による処理に使用される分離行列W(f1)〜W(fK)を生成する。分離行列W(fk)は、係数列w1(fk)と係数列w2(fk)とで構成される2行2列の行列である。係数列w1(fk)は、音源SAからの音SVAを強調するための行列(音源SAの分離行列)であり、フィルタ部32の係数w11(fk)および係数w12(fk)で構成される。同様に、係数列w2(fk)は、音源SBからの音SVBを強調するための行列(音源SBの分離行列)であり、フィルタ部34の係数w21(fk)および係数w22(fk)で構成される。
図1に示すように、分離行列生成部16は、初期値決定部22と学習処理部24とを含んで構成される。初期値決定部22は、初期的な分離行列W0(f1)〜W0(fK)を生成する。学習処理部24は、分離行列W0(fk)を初期値とした逐次的な学習で分離行列W(fk)を生成する。分離行列W(fk)の学習には公知の技術が任意に採用される。例えば、分離信号U1(t)と分離信号U2(t)とが統計的に相互に独立となるように分離行列W(fk)を逐次的に更新する独立成分分析(例えば高次ICA)が分離行列W(fk)の生成に好適に採用される。なお、信号処理装置100の起動の直後に生成された分離行列W(f1)〜W(fK)が信号処理部14に継続的に適用される構成(すなわち、信号処理装置100の起動の直後に分離行列生成部16が動作する構成)を以下では便宜的に例示するが、例えば、信号処理装置100の動作中に分離行列W(f1)〜W(fK)(分離行列W0(f1)〜W0(fK))が順次に生成および更新される構成(例えば後述の第2実施形態)も好適である。
図4は、初期値決定部22のブロック図である。図4に示すように、初期値決定部22は、行列算定部42と係数列生成部44と方向特定部46と方向特定部52と行列決定部54とを含んで構成される。行列算定部42は、音響信号V1(t)の強度x1(m,fk)および音響信号V2(t)の強度x2(m,fk)の共分散行列RXX(fk)を周波数f1〜fKの各々について算定する。
図2に示すように、第m番目のフレームの周波数スペクトルQ1(m)のうち周波数fkにおける強度x1(m,fk)と当該フレームの周波数スペクトルQ2(m)のうち同じ周波数fkの強度x2(m,fk)とを要素とする観測ベクトルX(m,fk)(X(m,fk)=[x1(m,fk) x2(m,fk)])を導入すると(符号Tは行列の転置を意味する)、共分散行列RXX(fk)は、観測ベクトルX(m,fk)の共分散を要素とする行列として以下の数式(2)で定義される。符号Hは行列の転置(エルミート転置)を意味する。
RXX(fk)=E[X(m,fk)X(m,fk)] ……(2)
数式(2)の記号E[ ]は、所定個のフレームにわたる平均値(期待値)または加算値を意味する。図4の行列算定部42は、周波数分析部12から順次に供給される強度x1(m,fk)と強度x2(m,fk)とについて数式(2)の演算を実行することで共分散行列RXX(fk)を算定する。
係数列生成部44は、周波数f1〜fKについて係数列wA(f1)〜wA(fK)を生成する。具体的には、係数列生成部44は、係数列wA(fk)を係数列w1(fk)としてフィルタ部32に適用したときのフィルタ処理が、既知の角度θA(方向LA)から到来する音源SAの音SVAのうち周波数fkの成分を強調する適応ビームフォーマ(すなわち、方向LAに向かうビームの形成)となるように、係数列wA(fk)を設定する。
図5は、適応ビームフォーマで設定されるビームの模式図である。図5においては、収音の感度が所定値を上回る領域(ビームが形成された領域)αが図示されている。図5に示すように、ビームは音源SAの方向LAに指向する。さらに、適応ビームフォーマでは、ビームが指向する方向LA以外の音源SBの方向LBに収音の死角(収音の感度が低い領域)が形成される。すなわち、係数列生成部44は、角度θAの方向LAから到来する周波数fkの成分が強調されるとともに角度θBの方向LBに収音の死角が形成されるように係数列wA(fk)を特定する。したがって、係数列wA(f1)〜wA(fK)に反映される死角の方向を音源SBの角度θBとして特定することが可能である。係数列生成部44による係数列wA(fk)の特定について以下に詳述する。
図6に示すように、フィルタ部32の遅延素子321による処理後の強度y1(m,fk)は強度x1(m,fk)と係数w11(fk)との乗算値に相当し、遅延素子323による処理後の強度y2(m,fk)は強度x2(m,fk)と係数w12(fk)との乗算値に相当する。そして、加算部325による処理後の強度u1(m,fk)は、以下の数式(3)で表現されるように、強度y1(m,fk)と強度y2(m,fk)との加算に相当する。
u1(m,fk)=y1(m,fk)+y2(m,fk)
=w11(fk)x1(m,fk)+w12(fk)x2(m,fk) ……(3)
強度x1(m,fk)および強度x2(m,fk)で構成される観測ベクトルX(m,fk)と、係数w11(fk)および係数w12(fk)で構成される係数列wA(fk)(wA(fk)=[w11(fk) w12(fk)])とを導入すると、数式(3)は以下の数式(3A)に変形される。すなわち、強度u1(m,fk)は、係数列wA(fk)の転置行列と観測ベクトルX(m,fk)との乗算(内積)に相当する。
u1(m,fk)=wA(fk)X(m,fk) ……(3A)
ここで、収音機器M1が生成する音響信号V1(t)の強度x1(m,fk)は、図6および以下の数式(4A)に示すように、音源SAから到来した音SVAの強度a1(m,fk)と音源SBから到来した音SVBの強度b1(m,fk)との加算として表現される。同様に、音響信号V2(t)の強度x2(m,fk)は、図6および数式(4B)に示すように、音源SAから到来した音SVAの強度a2(m,fk)と音源SBから到来した音SVBの強度b2(m,fk)との加算に相当する。したがって、観測ベクトルX(m,fk)は、以下の数式(5)のように表現される。
x1(m,fk)=a1(m,fk)+b1(m,fk) ……(4A)
x2(m,fk)=a2(m,fk)+b2(m,fk) ……(4B)
X(m,fk)=A(m,fk)+B(m,fk) ……(5)
数式(5)の記号A(m,fk)は、数式(4A)の強度a1(m,fk)と数式(4B)の強度a2(m,fk)とを要素とするベクトル(すなわち、音源SAからの音SVAに対応したベクトル)を意味する。同様に、数式(5)の記号B(m,fk)は、数式(4A)の強度b1(m,fk)と数式(4B)の強度b2(m,fk)とを要素とするベクトル(すなわち、音源SBからの音SVBに対応したベクトル)を意味する。数式(5)を数式(3A)に代入することで以下の数式(6)が導出される。
u1(m,fk)=wA(fk)A(m,fk)+wA(fk)B(m,fk) ……(6)
ここで、音源SAからの音SVAが収音機器M1に到達する時点と収音機器M2に到達する時点との時間差は角度θAに応じた時間(遅延量)e−jθAであるから、ベクトルA(m,fk)は、以下の数式(7)のように表現される。数式(7)のベクトルdA(θA(fk))は、角度θAの方向LAから到来する周波数fkの音が収音機器M1および収音機器M2の各々に到達する時間差(e−jθA(fk))を示す方向ベクトル(ステアリングベクトル)である。
Figure 2010213089
数式(7)の代入で数式(6)は以下の数式(6A)に変形される。
u1(m,fk)=wA(fk)dA(θA(fk))a1(m,fk)+wA(fk)B(m,fk) ……(6A)
数式(6A)の第1項は、音源SAからの音SVAのうち強度u1(m,fk)に残存する成分を意味し、数式(6A)の第2項は、音源SBからの音SVBのうち強度u1(m,fk)に残存する成分を意味する。したがって、係数列wA(fk)を適用したフィルタ処理で音源SAからの音SVAが強調される(音源SBからの音SVBが抑圧される)ためには、数式(6A)の第1項を音SVAの強度a1(m,fk)に接近させるという条件(以下「条件1」という)と、数式(6A)の第2項をゼロに接近させるという条件(以下「条件2」という)とが必要である。条件1は以下の数式(8)で表現される。ただし、条件1は、数式(8)の左辺を最大化する(音SVAの強調を最大化する)という処理に変更され得る。
wA(fk)dA(θA(fk))=1 ……(8)
条件2を検討するために、数式(6A)の第2項の絶対値の自乗(|wA(fk)B(m,fk)|)を所定個のフレームにわたって平均化した強度P(fk)を検討する。強度P(fk)は、音源SBからの音SVBのうち強度u1(m,fk)に残存する成分のパワーに相当する。強度P(fk)は以下の数式(9)に変形される。数式(9)の記号E[ ]は、数式(2)と同様に、所定個のフレームにわたる平均(期待値)を意味する。数式(9)の導出においては、係数列wA(fk)が経時的に変化しない(E[wA(fk)]=wA(fk),E[wA(fk)]=wA(fk))という性質を利用した。
P(fk)=E[|wA(fk)B(m,fk)|
=E[wA(fk)B(m,fk)B(m,fk)wA(fk)]
=wA(fk)E[B(m,fk)B(m,fk)]wA(fk)
=wA(fk)RBB(fk)wA(fk) ……(9)
数式(9)の記号RBB(fk)は、強度x1(m,fk)のうち音SVBに由来する強度b1(m,f)と強度x2(m,fk)のうち音SVBに由来する強度b2(m,f)との共分散行列(所定個のフレームにわたるベクトルB(m,fk)の共分散行列)を意味する。しかし、音響信号V1(t)や音響信号V2(t)からベクトルB(m,fk)のみを抽出して共分散行列RBB(fk)を算定することは困難であるから、本実施形態においては、音響信号V1(t)の強度x1(m,fk)と音響信号V2(t)の強度x2(m,fk)との共分散行列RXX(fk)(数式(2))で共分散行列RBB(fk)を代用する。すなわち、数式(9)は以下の数式(9A)で近似される。したがって、条件2は、数式(9A)で表現される強度P(fk)を最小化するという条件に相当する。
P(fk)=wA(fk)RBB(fk)wA(fk)
≒wA(fk)RXX(fk)wA(fk) ……(9A)
図4の係数列生成部44は、行列算定部42が算定した共分散行列RXX(fk)を数式(9A)に代入したときの強度P(fk)が、数式(8)の条件1が成立する範囲内で最小となるように、係数列wA(fk)を算定する。以上の手順で算定された係数列wA(fk)は、角度θAの方向LAのビームと角度θBの方向LBの死角とを形成する適応ビームフォーマとしてフィルタ部32を動作させたときの係数列w1(fk)に相当する。
図4の方向特定部46は、音源SAの方向LAが既知の角度θAに確定していることを利用して、K個の周波数f1〜fKについて角度θA(f1)〜θA(fK)を特定するとともに、各角度θA(fk)から数式(8)の方向ベクトルdA(θA(fk))を算定する。角度θA(f1)〜θA(fK)の算定には公知の技術が任意に採用される。
具体的には、方向特定部46は、既知の角度θAに応じた係数列w1(f1)〜w1(fK)を特定したうえで各係数列w1(fk)に対応した角度θA(fk)を算定する。例えば、方向LAの音源SAにてインパルス音を発生させたときに収音機器M1および収音機器M2が収音したインパルス応答を解析することで、音源SAからの音SVAのうち周波数fkの成分が強調されるように係数列w1(fk)を算定する方法が採用される。また、方向LAから到来する音SVAのうち周波数fkの成分がフィルタ部32によるフィルタ処理で強調される(すなわち、フィルタ部32が方向LAにビームを形成する)ように角度θAから係数列w1(f1)〜w1(fK)を算定する方法も好適である。方向特定部46は、周波数fkの係数列w1(fk)から角度θA(fk)を算定する。係数列w1(fk)から角度θA(fk)を算定する処理には公知の技術が任意に採用される。例えば、非特許文献2に開示された方法が好適である。
そして、方向特定部46は、角度θA(f1)〜θA(fK)の各々について遅延量e−jθA(fk)を算定することで数式(7)の方向ベクトルdA(θA(fk))をK個の周波数f1〜fKの各々について算定する。係数列生成部44は、方向特定部46が算定した方向ベクトルdA(θA(fk))を数式(8)に適用することで係数列wA(fk)を算定する。
図4の方向特定部52は、係数列wA(fk)の算定時に死角を想定した角度θB(fk)(すなわち、音源SBの方向LB)を係数列wA(fk)から特定する。周波数f1〜fKに対応するK個の角度θB(f1)〜θB(fK)が算定される。係数列wA(fk)から角度θB(fk)を特定する方法は任意であるが、以下に例示する方法が好適に採用される。
例えば、方向特定部52は、角度θB(fk)の候補値ΘB(fk)に対応する方向ベクトルdB(Θ(fk))と系数列wA(fk)との内積を当該候補値ΘB(fk)の角度での収音の感度として算定し、複数の候補値ΘB(fk)のうち感度が最小となる(すなわち収音の死角となる)候補値ΘB(fk)を確定的な角度θB(fk)として選択する。あるいは、方向特定部52は、角度θB(fk)の候補値ΘB(fk)を含む所定の範囲内の複数の角度φ(fk)の各々の方向ベクトルd(φ(fk))と係数列wA(fk)との内積を複数の角度φ(fk)について加算した数値を当該候補値ΘB(fk)の角度での感度として算定し、複数の候補値ΘB(fk)のうち感度が最小となる候補値ΘB(fk)を確定的な角度θB(fk)として選択する。また、非特許文献2に開示された方法も角度θB(fk)の特定に採用される。
方向特定部52は、係数列wA(f1)〜wA(fK)から以上の方法で特定したK個の角度θB(f1)〜θB(fK)から音源SBの角度θBを特定する。例えば、方向特定部52は、K個の角度θB(f1)〜θB(fK)の中央値(最大値と最小値との平均値)や平均値を角度θBとして算定する。また、低域側の周波数(f1付近)と高域側の周波数(fK付近)を除外した各周波数fkにおける角度θB(fk)から角度θBを算定する方法も好適である。
図4の行列決定部54は、既知の角度θA(方向LA)と方向特定部52が特定した角度θB(方向LB)とに応じて分離行列(初期値)W0(f1)〜W0(fK)を生成する。具体的には、行列決定部54は、周波数fkのビーム(周波数fkの音に対する感度が高い領域)が角度θAに形成されるように係数w11(fk)および係数w12(fk)(係数列w1(fk))を設定し、方向特定部52が特定した角度θBに周波数fkのビームが形成されるように係数w21(fk)および係数w22(fk)を設定する。そして、行列決定部54は、角度θAおよび角度θBから決定した各係数(w11(fk),w12(fk),w21(fk),w22(fk))を要素とする2行2列の分離行列W0(fk)を生成する。行列決定部54が生成した分離行列W0(f1)〜W0(fK)を初期値として学習処理部24が学習を実行することで、信号処理部14が実際に使用する分離行列W(f1)〜W(fK)が生成される。
以上の形態においては、音源SAの方向LAにビームを形成(適応ビームフォーマ)したときの死角の方向が音源SBの方向LB(角度θB)として特定されるから、係数列w1(fk)と係数列w2(fk)とが直交するという条件は不要である。したがって、係数列w1(fk)と係数列w2(fk)とが直交するという制約のもとで分離行列の初期値を設定する従来の技術(以下「対比例」という)と比較すると、音SVAと音SVBとを高精度に分離できる特性に近い分離行列W0(fk)を初期値の段階から生成することが可能である。すなわち、初期的な分離行列W0(fk)と学習後の分離行列W(fk)との乖離が低減されるから、学習に必要な時間(すなわち、音SVAと音SVBとを所期の精度で分離できる特性に分離行列Wが収束するまでの時間)が短縮されるという利点や、分離行列W(fk)が学習の過程で不適切な特性に収束する可能性が低減されるという利点がある。
図7は、分離行列W(fk)の学習の回数(横軸)と雑音抑圧率(縦軸)との相関を第1実施形態と対比例とについて示すグラフである。雑音抑圧率(NRR:noise reduction rate)は、分離信号U1(t)における音SVBの強度に対する音SVAの強度の比率(すなわち、音SVAを目的音として音SVBを雑音としたときのSN比)SNR_OUTと、音響信号V1(t)における音SVBの強度に対する音SVAの強度の比率(すなわち、処理前のSN比)SNR_INとの差分である(NRR=SNR_OUT−SNR_IN)。したがって、雑音抑圧率が高いほど音SVAと音SVBとの分離の精度(音SVAの強調の度合および音SVBの抑制の度合)が高い。
図7に示すように、第1実施形態および対比例の何れにおいても、学習の回数が増加するほど雑音抑圧率は上昇するが、第1実施形態の雑音抑圧率は、学習の回数に拘わらず対比例の雑音抑圧率を上回る。すなわち、分離信号U1(t)において音SVAが音SVBに対して充分に強調されていることが理解される。また、第1実施形態における雑音抑圧率は、対比例と比較して学習の回数が少ない段階で飽和していることから、所期の分離性能を実現するために必要な学習の回数(処理量や時間)が対比例と比較して削減されることが理解される。
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図8は、本発明の第2実施形態に係る信号処理装置100Aのブロック図である。図8に示すように、第2実施形態の信号処理装置100Aの分離行列生成部16Aは、第1実施形態の分離行列生成部16に方向特定部82と変化検出部84とを追加した構成である。図8の初期値決定部22(行列決定部54)は、初期的な分離行列W0(f1)〜W0(fK)を複数回にわたって順次に生成する。例えば、所定個のフレームで構成される期間(以下「単位期間」という)毎に順次に分離行列W0(f1)〜W0(fK)が生成される。すなわち、単位期間内の所定個のフレームの各々の観測ベクトルX(m,fk)を利用して、行列算定部42による共分散行列RXX(fk)の算定と、係数列生成部44による係数列wA(f1)〜wA(fK)の算定と、方向特定部52による角度θBの特定と、行列決定部54による分離行列W0(f1)〜W0(fK)の決定とが、第1実施形態と同様の方法で単位期間毎に順次に実行される。
方向特定部82は、学習処理部24による学習後の分離行列W(fk)から音源SAの角度θA(方向LA)と音源SBの角度θB(方向LB)とを推定する。なお、初期値決定部22(行列決定部54)にて使用される角度θAや角度θBと区別するために、方向特定部82が学習後の分離行列W(fk)から推定する方向に以下では添字“_W”を付加する(音源SAの角度θA_W,音源SBの角度θB_W)。
具体的には、方向特定部82は、分離行列W(f1)〜W(fK)の係数列w1(f1)〜w1(fK)から音源SAの角度θA_Wを特定し、分離行列W(f1)〜W(fK)の係数列w2(f1)〜w2(fK)から音源SBの角度θB_Wを特定する。例えば、方向特定部82は、係数列w1(fk)の適用でフィルタ部32が形成するビームの角度θA_W(fk)を特定し、K個の角度θA_W(f1)〜θA_W(fK)から角度θA_W(例えば角度θA_W(f1)〜θA_W(fK)の中央値や平均値)を算定する。角度θB_Wも同様の方法で特定される。
図8の変化検出部84は、各音源S(SA,SB)の移動の有無(すなわち、音SVAが到来する方向LAや音SVBが到来する方向LBの変化の有無)を判定する。具体的には、変化検出部84は、方向特定部82が推定する角度θA_Wおよび角度θB_Wと、初期値決定部22(行列決定部54)にて使用される角度θAおよび角度θBとを比較する。変化検出部84は、角度θA_Wと角度θAとの相違に応じて音源SAの移動の有無を判定するとともに、角度θB_Wと角度θBとの相違に応じて音源SBの移動の有無を判定する。変化検出部84による判定は、例えば方向特定部52(図4)が音源SBの角度θBを推定するたびに(すなわち単位期間毎に)順次に実行される。
図8の変化検出部84は、角度θi_W(i=A,B)と角度θiとの差分の絶対値Δiを算定する(Δi=|θi_W−θi|)。そして、変化検出部84は、差分Δiが閾値τを上回る場合には音源Siが移動したと判定し、差分Δiが閾値τを下回る場合には音源Siが移動していない(あるいは移動量が少ないので実質的には移動していないとみなせる)と判定する。なお、音源SAが固定された状況(音源SAが移動しない状況)を前提とすれば、音源SBの移動の有無のみを差分ΔBから判定する構成も好適に採用される。また、音源SAおよび音源SBの双方が移動し得る状況を前提とすると、差分ΔAおよび差分ΔBの少なくとも一方が閾値τを上回る場合(すなわち、音源SAおよび音源SBの少なくとも一方が移動した場合)に、変化検出部84は音源Sが移動したと判定する。
図8の学習処理部24は、変化検出部84が音源Sの移動を検出した場合に、初期値決定部22が決定した分離行列W0(f1)〜W0(fK)を初期値とした学習を実行することで分離行列W(f1)〜W(fK)を単位期間毎に順次に生成する。他方、変化検出部84が音源Sの移動を検出しない場合、学習処理部24は、分離行列W(f1)〜W(fK)の学習(分離行列W(f1)〜W(fK)の更新)を停止する。したがって、学習処理部24が過去の学習で特定した分離行列W(f1)〜W(fK)が継続的に信号処理部14に適用される。方向特定部82は、分離行列W(fk)が更新されるたびに(すなわち音源Sが移動するたびに)、更新後の分離行列W(fk)から角度θA_Wおよび角度θB_Wを推定する。
第2実施形態においては、音源Sが移動しない場合には学習処理部24による学習が停止するから、音源Sの移動の有無に拘わらず学習処理部24が学習を継続する構成と比較して、学習処理部24による処理の負荷が軽減されるという利点がある。他方、音源Sが移動した場合には、分離行列W(f1)〜W(fK)が更新されるから、各音源Sからの音SV(SVA,SVB)を移動の前後にわたって高精度に分離することが可能である。
図9は、音源SAや音源SBの移動を検出しない構成(例えば第1実施形態)のもとで音源SBを移動した場合の移動後の雑音抑圧率を示す図表である。音源SAの角度θAを0°(正面)に固定した場合が想定されている。図9の縦方向の項目は移動前の音源SBの角度θBを意味し、図9の横方向の項目は移動後の音源SBの角度θBを意味する。例えば、音源SBの角度θBが−90°から−45°に変化した場合における移動後の雑音抑圧率は11.1である。図9に下線を付して示すように、音源SBの移動を検出しない構成では、音源SBが音源SAの角度θA(0°)を跨いで移動した場合に雑音抑圧率が顕著に低下するという傾向が図9から把握される。
他方、図9の「第2実施形態」という行部分の各数値は、第2実施形態のもとで音源SBが横方向の項目の各角度に移動した各場合の雑音抑圧率を意味する。第2実施形態においては、音源SBが移動するたびに移動後の角度θBに応じた分離行列W(fk)の学習(分離行列W0(fk)の初期化)が実行されるから、図9から把握されるように、音源SBの移動の前後の角度θBに拘わらず、移動後の雑音抑圧率は高い数値に維持される。すなわち、第2実施形態によれば、音源SBが随時に移動する環境においても音SVAと音SVBとを高精度に分離することが可能である。
また、分離行列W(f1)〜W(fK)から推定される角度θi_Wと分離行列W0(f1)〜W0(fK)の生成に使用される角度θiとを比較することで音源Siの移動の有無が判定されるから、音源Siの角度θiを検出するための特別な仕組(例えば、特開2007-318373号公報に開示された構成におけるジャイロセンサ)は不要である。したがって、信号処理装置100Aの構成の簡素化や製造コストの低減が実現される。
なお、以上の説明では、音源Sが移動しない場合に分離行列W(f1)〜W(fK)の学習を停止する構成を例示したが、音源Sが移動しない場合に分離行列W(f1)〜W(fK)を初期化しない構成(すなわち、過去の初期化から係属中の学習は継続するが、初期値決定部22が新規に決定した分離行列W0(f1)〜W0(fK)を学習に適用しない構成)も適用される。分離行列W(f1)〜W(fK)の初期化を停止する構成によれば、例えば初期的な分離行列W0(f1)〜W0(fK)が定期的に更新される構成と比較して、学習後の分離行列W(f1)〜W(fK)が、各音源Sの位置に応じた適切な特性(すなわち高精度な音源分離が可能な特性)に安定的に維持されるという利点がある。
<C:変形例>
以上に例示した各形態は様々に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
(1)変形例1
以上の各形態においては、所定の方向の音を強調する遅延加算型ビームフォーマをフィルタ部32およびフィルタ部34として利用したが、所定の方向の音を抑圧する(すなわち所定の方向に死角を形成する)死角制御型(null)ビームフォーマをフィルタ部32およびフィルタ部34として利用した構成も好適である。例えば、図3のフィルタ部32の加算部325およびフィルタ部34の加算部345を減算部に変更することで死角制御型ビームフォーマが実現される。死角制御型ビームフォーマを採用した場合、行列決定部54は、既知の角度θAに死角が形成されるようにフィルタ部32の係数列w1(fk)(w11(fk),w12(fk))を決定し、方向特定部52が特定した角度θBに死角が形成されるようにフィルタ部34の係数列w2(fk)(w21(fk),w22(fk))を決定する。したがって、分離信号U1(t)においては音源SAからの音SVAが抑制され(音SVBが強調され)、分離信号U2(t)においては音源SBからの音SVBが抑制される(音SVAが強調される)。
以上の説明から理解されるように、信号処理部14に適用されるビームフォーマの種類と、係数列生成部44が係数列wA(fk)を生成する原理において前提となるビームフォーマ(適応ビームフォーマ)の種類とは相違し得る。すなわち、係数列生成部44の動作の前提となるビームフォーマは音源SBの角度θB(方向LB)の特定を目的とし、実際の音源分離(信号処理部14の動作)に利用されるビームフォーマとは無関係に選定され得る。
(2)変形例2
以上の各形態において方向特定部46が方向ベクトルdA(θA(fk))を特定する方法は任意である。具体的には、第1実施形態に例示したように既知の角度θAに応じた係数列w1(f1)〜w1(fK)から角度θA(f1)〜θA(fK)を算定したうえで方向ベクトルdA(θA(f1))〜dA(θA(fK))を特定する構成において、係数列w1(f1)〜w1(fK)を生成する方法は適宜に変更される。例えば、第1実施形態においては、音源SAから採取したインパルス応答が強調されるように遅延加算型ビームフォーマ(フィルタ部32)の係数列w1(fk)を決定したが、遅延加算型ビームフォーマに代えて、死角制御型ビームフォーマや適応ビームフォーマを利用して係数列w1(fk)を決定する構成も採用される。また、MUSIC(multiple signal classification)法や最小分散法で推定した音源SAの角度θAから各種のビームフォーマ(例えば適応型ビームフォーマ)を利用して係数列w1(fk)を特定する方法、あるいは、因子分析で特定した因子ベクトルや正準相関分析で特定した正準ベクトルを係数列w1(f)として特定する方法も採用される。また、音源SAの方向LA(角度θA)が既知であることは必須ではない。例えば、音源SAの方向LAを所定の方法で推定したうえで方向ベクトルdA(θA(fk))を特定する構成も採用される。
(3)変形例3
以上の各形態においては、信号処理部14や学習処理部24を具備する信号処理装置100を例示したが、信号処理部14や学習処理部24は信号処理装置100(または第2実施形態の信号処理装置100A)から省略され得る。信号処理装置100の行列決定部54が生成した初期的な分離行列W0(f1)〜W0(fK)を信号処理装置100とは別体の装置の学習処理部24に提供することで分離行列W(f1)〜W(fK)が生成される。また、学習処理部24による学習は本発明において必須ではない。すなわち、行列決定部54が生成した分離行列W0(f1)〜W0(fK)を分離行列W(f1)〜W(fK)として信号処理部14が使用する構成(学習処理部24を省略した構成)も採用される。
また、周波数分析部12や信号合成部18も信号処理装置100(または第2実施形態の信号処理装置100A)から省略され得る。例えば、記憶装置に格納された観測ベクトルX(m,f1)〜X(m,fK)の時系列から分離行列生成部16が分離行列W(f1)〜W(fK)を生成する信号処理装置としても本発明は実現される。分離行列生成部16が生成した分離行列W(f1)〜W(fK)を信号処理装置とは別体の装置の信号処理部14に提供することで分離信号U1(t)や分離信号U2(t)が生成される。
(4)変形例4
係数列生成部44が係数列wA(fk)を生成する方法は以上の例示に限定されない。すなわち、係数列生成部44は、方向LAからの到来音が強調されるとともに方向LBに死角が形成されるように係数列wA(fk)を生成する要素として包括される。また、係数列生成部44が生成した係数列wA(fk)から方向特定部52が角度θBを特定する方法も適宜に変更される。
(5)変形例5
以上の各形態においては音源S(SA,SB)が2個である場合を例示したが、3個以上の音源Sからの音を分離する場合にも本発明は当然に適用される。ただし、音源分離の対象となる音源の個数以上の収音機器が必要である。
100,100A……信号処理装置、12……周波数分析部、14……信号処理部、16……分離行列生成部、18……信号合成部、22……初期値決定部、24……学習処理部、32……フィルタ部、34……フィルタ部、42……行列算定部、44……係数列生成部、46……方向特定部、52……方向特定部、54……行列決定部、82……方向特定部、84……変化検出部。

Claims (6)

  1. 相異なる方向から到来する複数音を複数の収音機器で収音した複数の音響信号に対するフィルタ処理に適用したときに、前記複数音のうち第1方向から到来する第1音が強調され、かつ、第2音が到来する第2方向に収音の死角が形成されるように、前記フィルタ処理の係数列を生成する係数列生成手段と、
    前記係数列から前記第2方向を特定する方向特定手段と、
    前記第1音を強調するための分離行列を前記第1方向と前記方向特定手段が特定した第2方向とに応じて生成する行列決定手段と
    を具備する信号処理装置。
  2. 前記係数列生成手段は、係数列の転置行列と、前記第1方向から到来する音が前記複数の収音機器の各々に到達する時間差を示す方向ベクトルとの乗算値が1に近づくように、前記係数列を生成する
    請求項1の信号処理装置。
  3. 前記係数列生成手段は、係数列の転置行列と、前記複数の音響信号の強度の共分散行列と、前記係数列との乗算値が小さくなるように、前記係数列を生成する
    請求項1または請求項2の信号処理装置。
  4. 前記行列決定手段が決定した分離行列を初期値として学習を実行する学習処理手段
    を具備する請求項1から請求項3の何れかの信号処理装置。
  5. 前記行列決定手段は、前記分離行列を順次に生成し、
    前記学習処理手段による学習後の分離行列から前記複数音の各々の到来方向を推定する方向特定手段と、
    前記行列決定手段が生成した分離行列に対応した各音の到来方向と前記方向特定手段が各音について推定した到来方向との相違に応じて各音の到来方向の変化の有無を判定する変化検出手段とを具備し、
    前記学習処理手段は、各音の到来方向が変化したと前記変化検出手段が判定した場合に、前記行列決定手段が生成した分離行列を初期値として学習を実行し、前記各音の到来方向が変化していないと前記変化検出手段が判定した場合に、分離行列の学習を停止し、または、分離行列を初期化せずに学習を継続する
    請求項4の信号処理装置。
  6. 相異なる方向から到来する複数音を複数の収音機器で収音した複数の音響信号に対するフィルタ処理に適用したときに、前記複数音のうち第1方向から到来する第1音が強調され、かつ、第2音が到来する第2方向に収音の死角が形成されるように、前記フィルタ処理の係数列を生成する係数列生成処理と、
    前記係数列から前記第2方向を特定する方向特定処理と、
    前記第1音を強調するための分離行列を前記第1方向と前記方向特定処理で特定した第2方向とに応じて生成する行列決定処理と
    をコンピュータに実行させるプログラム。
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