以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
まず、本発明の第1態様に係る装飾ディスプレイ装置について説明する。
図1は、本発明の第1態様に係る装飾ディスプレイ装置を示す概略図である。図2は、図1に示す装飾ディスプレイ装置に含まれている光学系を示す概略図である。図2において、X方向は光学素子400の主面に平行な方向であり、Y方向は光学素子400の主面に平行であり且つX方向に対して垂直な方向であり、Z方向はX方向及びY方向に対して垂直な方向である。
図1に示す装飾ディスプレイ装置10は、ケース100と、光源200と、第1偏光子300Aと、光学素子400と、第2偏光子300Bとを含んでいる。また、この装飾ディスプレイ装置10中には、展示物品Aが配置されている。
ケース100は、展示台110と側壁120と蓋130とを含んでいる。
展示台110は、円柱形状を有している。
側壁120は、円筒形状を有している。側壁120の一端は、展示台110の上面の周縁と接している。
側壁120は、透光部120Aと遮光部120Bとを含んでいる。
透光部120Aは、典型的には、透明なガラス又はプラスチックからなる。透光部120Aは、ケース100の内部を視認可能とする。
透光部120Aの少なくとも一部には、第2偏光子300Bが支持されている。例えば、第2偏光子300Bは、透光部120Aの少なくとも一部に貼り付けられている。
第2偏光子300Bは、特定方向の偏光面を有した光成分を透過させる役割を担っている。この偏光子300Bとしては、例えば、直線偏光子又は楕円偏光子を使用する。典型的には、この偏光子300Bとして、直線偏光子を使用する。
遮光部120Bは、遮光性の材料からなる。遮光部120Bは、省略してもよい。
蓋130は、側壁120の開口部に嵌め込まれている。展示台110と側壁120と蓋130とは、中空構造を形成している。
この中空構造中には、展示物品Aと、光学素子400と、光源200と、第1偏光子300Aとが収納されている。
展示物品Aは、展示台110上に配置されている。展示物品Aの種類に制限はない。例えば、展示物品Aは、販売すべき商品である。或いは、展示物品Aは、宣伝広告用のオブジェであってもよい。或いは、展示物品Aは、学術展示物であってもよい。
光学素子400は、展示台110上に設置されている。光学素子400については、後で詳しく説明する。
光源200及び第1偏光子300Aは、光学素子400及び第2偏光子300Bと、図2に示すような光学系を構成するように配置されている。
図2に示すように、光源200は、照明光L1を射出する。この照明光L1は、典型的には、白色光である。
第1偏光子300Aは、特定方向の偏光面を有した光成分を透過させる役割を担っている。この偏光子300Aとしては、例えば、直線偏光子又は楕円偏光子を使用する。典型的には、この偏光子300Aとして、直線偏光子を使用する。
この偏光子300Aには、光源200から射出された照明光L1が入射する。そして、この照明光L1は、偏光子300Aを通過することにより、第1偏光L2へと変化する。即ち、第1偏光子300Aは、第1偏光L2を射出する。
図3は、図1及び図2に示す装飾ディスプレイ装置が備えた光学素子の一例を概略的に示す平面図である。図4は、図3に示す光学素子のIV−IV線に沿った断面図である。
光学素子400は、基材401と反射層402と中間層403と位相差層404とを備えている。この光学素子400では、反射層402に対して位相差層404側を前面側とする。
基材401は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの樹脂フィルム又はシートである。基材401は、光透過性を有していてもよく、光透過性を有していなくてもよい。また、基材401は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材401は、省略してもよい。
反射層402は、基材401の一方の主面上に設ける。反射層402は、上記主面の全体を被覆していてもよく、その一部のみを被覆していてもよい。
反射層402の材料としては、例えば、金属細片が分散された樹脂を使用する。
この金属細片としては、例えば、アルミニウム、銀又はステンレス鋼の細片を使用する。典型的には、金属の細片として、アルミニウム細片を使用する。このアルミニウム細片としては、例えば、アルミニウムをフレーク状に加工したアルミペーストを使用する。このアルミペーストは、アルミフレークが塗膜表面において略平行に配列し、鏡面反射に近い光沢面が得られるリーフィングタイプであってもよく、アルミフレークが塗膜中において一様に分散し、光散乱性を有した反射面が得られるノンリーフィングタイプであってもよい。但し、光学素子400が表示する像のより優れた視認性を達成すべく、ノンリーフィングタイプのアルミペーストを使用することが望ましい。
金属細片を分散させる樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用する。この熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂又はこれらの混合物を使用する。
基材401及び反射層402として、以下のような構成を採用してもよい。即ち、基材401の一方の主面に無秩序なレリーフ構造を形成し、その上に反射層402を設けてもよい。こうすると、光散乱性を有した反射層402が得られる。
この場合、反射層402の材料としては、例えば、金属材料を使用する。この金属材料としては、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム又はこれらの合金を使用する。この場合、反射層402は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成する。
反射層402として、単層又は多層の誘電体層を使用してもよい。この場合、反射層402の材料として金属材料を使用した場合とは対照的に、反射層402の背面に存在する物を視認可能とすることができる。よって、この場合、より複雑な視覚効果を達成しうる。
中間層403は、反射層402と位相差層404との間に設けられている。この中間層403は、反射層402と位相差層404との密着性を向上させる役割を担っている。中間層403の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用する。この熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂又はこれらの混合物を使用する。中間層403は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。中間層403は、省略してもよい。
位相差層404は、典型的には中間層403を間に挟んで、反射層402と向き合っている。位相差層404は、パターニングされていてもよい。即ち、位相差層404は、反射層402の一部のみと向き合っていてもよい。
位相差層404は、液晶物質又はその重合体若しくは架橋体を含み、メソゲンが固定化されている。即ち、位相差層404では、メソゲンが所定の方向に配向している。従って、位相差層404は、複屈折性を有している。位相差層404に含まれる液晶物質としては、例えば、ネマチック液晶を使用する。
位相差層404は、メソゲンの配向方向が互いに異なる複数の領域を備えていてもよい。図3及び図4には、一例として、位相差層404が、メソゲンの配向方向がX方向に略平行である第1の領域A1と、メソゲンの配向方向がY方向に略平行である第2の領域A2と、メソゲンの配向方向がX方向に対して45°の角度を為している第3の領域A3とからなる場合を描いている。
これら領域A1乃至A3は、潜像を形成している。この潜像は、例えば、商品の名称、商標、宣伝文句及び展示物の説明等の情報を含んでいる。図3及び図4には、一例として、これら領域A1乃至A3が文字情報「TP」を示す潜像を形成している場合を描いている。
この光学素子400には、上述した第1偏光L2が入射する。この第1偏光L2は、位相差層404を通過し、反射層402において反射され、その後、再び位相差層404を通過して射出される。即ち、光学素子400は、図2に示す再生光L3を反射光として射出する。
この再生光L3は、第2偏光子300Bに入射する。そして、この再生光L3は、偏光子300Bを通過することにより、第2偏光L4へと変化する。即ち、第2偏光子300Bは、第2偏光L4を射出する。
この第2偏光L4は、観察者OBにより観察される。即ち、光学素子400は、第1偏光子300Aを介して照明し且つ第2偏光子300Bを介して観察すると、第2偏光L2に対応した色の物体として視認される。
次に、図2に示す光学系により達成可能な視覚効果について説明する。
上述した通り、位相差層404は、複屈折性を有している。例えば、位相差層404を構成している領域A1では、メソゲンはX方向に平行な方向に配向している。それゆえ、そのX方向についての屈折率は異常光線屈折率neであり、Y方向についての屈折率は常光線屈折率noである。そして、領域A1の屈折率をnとすると、no<n<neの関係が成り立つ。即ち、領域A1の遅相軸はX方向と平行であり、領域A1の進相軸はY方向と平行である。同様に、位相差層404を構成している領域A2の遅相軸はY方向と平行であり、領域A2の進相軸はX方向と平行である。また、位相差層404を構成している領域A3の遅相軸は、前面側から見てX方向に対して反時計回りに45゜の角度を為す方向に平行であり、領域A3の進相軸は、前面側から見てX方向に対して反時計回りに135゜の角度を為す方向に平行である。
上述したように、光学素子400には、第1偏光子300Aが射出した第1偏光L2が入射する。以下では、一例として、偏光子300Aが直線偏光子であり、その透過軸のXY平面への正射影が光学素子400の前面側から見てX方向に対して反時計回りに45゜の角度を為す方向と平行である場合について説明する。この場合、第1偏光L2の偏光面は、光学素子400の前面側から見てX方向に対して反時計回りに45゜の角度を為している。
領域A1の遅相軸は、X方向に平行である。従って、領域A1に入射する第1偏光L2の偏光面は、領域A1の遅相軸に対して、光学素子400の前面側から見て反時計回りに45゜の角度を為している。以下、領域A1のリターデイションは、可視光領域内の或る設計波長λ0の4分の1であるとする。即ち、領域A1は、この設計波長λ0の入射光に対して、4分の1波長板として機能するとする。この場合、波長λ0を有した光成分は、領域A1を通過することにより、左円偏光へと変換される。また、入射する直線偏光のうち上記波長λ0とは異なった波長を有した光成分は、領域A1を通過することにより、左楕円偏光へと変換される。
これら左円偏光及び左楕円偏光は、中間層403を透過して、反射層402に入射する。そして、これら偏光は、反射層402において反射されて、それぞれ、右円偏光及び右楕円偏光となる。なお、反射層402が光散乱性を有している場合、これら右円偏光及び右楕円偏光は、散乱反射光として射出される。
これら右円偏光及び右楕円偏光は、中間層403を透過して、再び領域A1に入射する。領域A1の主面に垂直な方向に進行する偏光のうち、波長がλ0である右円偏光は、領域A1を通過することにより、偏光面が光学素子400の前面側から見てX方向に対して反時計回りに135゜の角度を為している直線偏光へと変換される。他方、それ以外の光成分は、領域A1を通過することにより、円偏光又は楕円偏光へと変換される。即ち、再生光L3は、波長がλ0であり且つ偏光面が光学素子400の前面側から見てX方向に対して反時計回りに135゜の角度を為している直線偏光と、波長がλ0とは異なった円偏光又は楕円偏光とを含んでいる。
再生光L3は、上述したように、第2偏光子300Bへと入射する。以下では、一例として、偏光子300Bが直線偏光子であり、その透過軸のXY平面への正射影が光学素子400の前面側から見てX方向に対して反時計回りに45゜の角度を為す方向と平行である場合について説明する。この場合、再生光L3のうち波長がλ0である直線偏光の偏光面と、偏光子300Bの透過軸とは、互いに垂直である。従って、再生光L3のうち波長がλ0である光成分は、偏光子300Bを透過できない。他方、再生光L3のうち波長がλ0とは異なった光成分の一部は、偏光子300Bを通過して、第2偏光L4となる。
以上の説明から分かるように、照明光L1の強度と第2偏光L4の強度との比は、照明光L1の波長に依存する。それゆえ、上記の場合、第2偏光L4は、波長ごとに異なった強度を有している。従って、光学素子400のうち領域A1に対応した部分は、第1偏光子300Aを介して照明し且つ第2偏光子300Bを介して観察すると、着色して見える。
領域A2の遅相軸は、Y方向に平行である。即ち、領域A2は、メソゲンの配向方向が90゜異なっていること以外は、領域A1と同様の構造を有している。従って、第1偏光L1の偏光面は、領域A2の遅相軸に対して、光学素子400の前面側から見て時計回りに45゜の角度を為している。それゆえ、上記の場合、光学素子400のうち領域A2に対応した部分は、光学素子400のうち領域A1に対応した部分と同様の視覚効果を示す。
領域A3の遅相軸は、X方向と45゜の角度を為す方向に平行である。即ち、第1偏光子300Aの透過軸のXY平面への正射影と、領域A3の遅相軸の方向とは、互いに平行である。それゆえ、領域A3は、第1偏光L2に対して、光学的に影響を与えない。また、領域A3の遅相軸の方向と、第2偏光子300Bの透過軸のXY平面への正射影とは、互いに平行である。それゆえ、第2偏光子300Bは、再生光L3に対して、光学的に影響を与えない。
従って、光学素子400のうち領域A3に対応した部分は、第1偏光子300Aを介して照明し且つ第2偏光子300Bを介して観察しても、着色して見えない。具体的には、この部分は、反射層402に対応した色を表示する。従って、この部分は、典型的には白色又は銀白色に見える。
以上の通り、偏光子300A及び300Bの透過軸と領域A1乃至A3の遅相軸とが上記のような配置となっている場合には、光学素子400のうち領域A1及びA2に対応した部分は着色した部分として視認され、光学素子400のうち領域A3に対応した部分は着色していない部分として視認される。例えば、光学素子400のうち領域A1及びA2に対応した部分は紫色に見え、光学素子400のうち領域A3に対応した部分は白色又は銀白色に見える。よって、この場合、観察者に、これら領域A1乃至A3に対応したパターンを視認させることができる。即ち、この場合、領域A1乃至A3により形成された潜像を可視化することができる。
装飾ディスプレイ装置10は、第1偏光子300A、光学素子400及び第2偏光子300Bの少なくとも1つを、所定の方向に移動させる機構を更に備えていてもよい。
例えば、装飾ディスプレイ装置10は、第1偏光子300Aを、第1偏光子300Aに入射する照明光L1の光路に対して交差する方向に移動可能とする機構を更に備えていてもよい。
例えば、装飾ディスプレイ装置10は、第1偏光子300Aを、第1偏光子300Aに入射する照明光L1の光路に平行な回転軸を中心として回転させる回転機構を備えていてもよい。この場合、第1偏光子300Aの透過軸と領域A1乃至A3の遅相軸との為す角度は経時的に変化する。従って、以下に説明するように、光学素子400のうち領域A1乃至A3に対応した部分に表示される色が、経時的に変化する。
例えば、上記の回転により、偏光子300Aの透過軸のXY平面への正射影がX方向と平行となった場合、領域A1は、第1偏光L2に対して、光学的に影響を与えない。即ち、光学素子400のうち領域A1に対応した部分から射出される再生光L3の偏光面は、X方向に平行である。従って、この場合、再生光L3の偏光面は、第2偏光子300Bの透過軸のXY平面への正射影に対して、光学素子400の前面側から見て時計回りに45゜の角度を為している。よって、この場合、光学素子400のうち領域A1に対応した部分は、第1偏光子300Aを介して照明し且つ第2偏光子300Bを介して観察しても、着色して見えない。即ち、この部分は、典型的には、白色又は銀白色に見える。
そして、この場合、第1偏光子300Aの透過軸のXY平面への正射影と領域A2の遅相軸とは互いに垂直である。この場合、領域A2は、偏光子300Aを透過した偏光に対して、光学的に影響を与えない。よって、光学素子400のうち領域A2に対応した部分も着色せず、典型的には白色又は銀白色に見える。
これに対し、この場合、第1偏光子300Aの透過軸のXY平面への正射影は、領域A3の遅相軸に対して、光学素子400の前面側から見て時計回りに45゜の角度を為す。従って、光学素子400のうち領域A3に対応した部分は、着色して見える。
以上のように、上述したような回転機構の存在により、光学素子400に表示される像の色彩を経時的に変化させることができる。この変化は、観察者が観察方向を変化させることなしに、視認可能である。従って、光学素子400は、一定の方向から観察した場合においても、多彩な視覚効果を示す。即ち、装飾ディスプレイ装置10は、極めて優れた装飾性を発揮し得る。
或いは、装飾ディスプレイ装置10は、第1偏光子300Aを、第1偏光子300Aに入射する照明光L1の光路に交差する向きに並進させる機構を備えていてもよい。
この場合、例えば、第1偏光子300Aを照明光L1が入射しない位置に移動させることにより、光学素子400に表示されていた像を消滅させることができる。また、第1偏光子300Aを照明光L1が入射する位置に戻すことにより、当該像を再び表示させることができる。即ち、これら移動により、潜像の表示及び非表示を自在に切り替えることが可能となる。
装飾ディスプレイ装置10は、光学素子400を、光学素子400に入射する第1偏光L2の光路に対して交差する方向に移動可能とする機構を備えていてもよい。
例えば、装飾ディスプレイ装置10は、光学素子400を、光学素子400に入射する第1偏光L2の光路に平行な回転軸を中心として回転させる回転機構を備えていてもよい。この場合、領域A1乃至A3の遅相軸と第1偏光子300Aの透過軸との為す角度が経時的に変化する。従って、第1偏光子300Aを回転させる場合と同様に、光学素子400のうち領域A1乃至A3に対応した部分に表示される色を、経時的に変化させることができる。
或いは、装飾ディスプレイ装置10は、光学素子400を、光学素子400に入射する第1偏光L2の光路に交差する向きに並進させる機構を備えていてもよい。
この場合、例えば、光学素子400を第1偏光L2が入射しない位置に移動させることにより、光学素子400に表示されていた像を消滅させることができる。また、光学素子400を第1偏光L2が入射する位置に戻すことにより、当該像を再び表示させることができる。即ち、これら移動により、潜像の表示及び非表示を自在に切り替えることが可能となる。
なお、この移動は、例えば、光学素子400が設置された展示台110の少なくとも一部を、その主面の法線の周りに回転させることによって達成可能である。
装飾ディスプレイ装置10は、第2偏光子300Bを、第2偏光子300Bに入射する再生光L3の光路に交差する向きに移動させる機構を備えていてもよい。
例えば、装飾ディスプレイ装置10は、第2偏光子300Bを、第2偏光子300Bに入射する再生光L3の光路に平行な回転軸を中心として回転させる回転機構を備えていてもよい。この場合、第2偏光子300Bの透過軸と領域A1乃至A3の遅相軸との為す角度が経時的に変化する。従って、第1偏光子300Aを回転させる場合と同様に、光学素子400のうち領域A1乃至A3に対応した部分に表示される色を、経時的に変化させることができる。
或いは、装飾ディスプレイ装置10は、第2偏光子300Bを、第2偏光子300Bに入射する再生光L3の光路に交差する向きに並進させる機構を備えていてもよい。
この場合、例えば、第2偏光子300Bを、第2偏光子300Bに再生光L3が入射しない位置又は第2偏光L4が観察者OBに入射しない位置に移動させることにより、光学素子400に表示されていた像を消滅させることができる。また、第2偏光子300Bを、第2偏光子300Bに再生光L3が入射する位置又は第2偏光L4が観察者OBに入射する位置に戻すことにより、当該像を再び表示させることができる。即ち、これら移動により、潜像の表示及び非表示を自在に切り替えることが可能となる。
なお、第2偏光子300Bが側壁120の一部分のみに支持されている場合には、この移動は、側壁120のうち少なくとも第2偏光子300Bを支持した部分を、展示台110の主面の法線の周りに回転させることによって達成可能である。
装飾ディスプレイ装置10は、上述した移動の2以上の組み合わせを可能とする機構を備えていてもよい。この場合、より優れた視覚効果を発揮させることが可能となる。特には、この装飾ディスプレイ装置10では、第1偏光子300Aと第2偏光子300Bとを独立して移動させることができる。従って、この装飾ディスプレイ装置10は、単一の偏光子を含んだディスプレイ装置と比較してより複雑な視覚効果を達成し得る。
次に、本発明の第2態様に係る装飾ディスプレイ装置について説明する。
図5は、本発明の第2態様に係る装飾ディスプレイ装置を示す概略図である。図6は、図5に示す装飾ディスプレイ装置に含まれている光学系を示す概略図である。図6において、X方向は光学素子400の主面に平行な方向であり、Y方向は光学素子400の主面に平行であり且つX方向に対して垂直であり、Z方向はX方向及びY方向に対して垂直な方向である。
図5に示す装飾ディスプレイ装置10は、以下の点を除いては、図1に示す装飾ディスプレイ装置10と同様の構成を有している。即ち、この装飾ディスプレイ装置10では、反射層402を含まない透過型の光学素子400を使用している。また、この装飾ディスプレイ装置10では、光源200と第1偏光子300Aと光学素子400と第2偏光子300Bとが図6に示すような光学系を構成するように配置されている。
なお、図5には、光源200と第1偏光子300Aとが一体化されている場合を描いている。また、図5では、展示物品Aを省略している。
図6に示すように、光源200は、照明光L1を射出する。そして、この照明光L1は第1偏光子300Aに入射し、第1偏光子300Aは第1偏光L2を射出する。
図7は、図5及び図6に示す装飾ディスプレイ装置が備えた光学素子の一例を概略的に示す平面図である。図8は、図7に示す光学素子のVIII−VIII線に沿った断面図である。
光学素子400は、光透過性基材401と中間層403と位相差層404とを備えている。この光学素子400では、光透過性基材401に対して位相差層404側を前面側とし、その反対側を背面側とする。図5及び図6には、一例として、光学素子400の背面側から第1偏光L2が入射し、光学素子400の前面側へと再生光L3が射出される構成を描いている。
光透過性基材401としては、例えば、光透過性を有した樹脂フィルム又はシートを使用する。この光透過性基材401として、ポリカーボネートフィルム及びトリアセチルセルロースフィルムなどの光学的に等方的であるか又は低複屈折性を有した樹脂フィルム又はシートを使用する。典型的には、この光透過性基材401として、光学的に等方的であるか又は低複屈折性を有し且つ密着性に優れたポリカーボネートフィルムを使用する。光透過性基材401が光学的に等方的であるか又は低複屈折性を有している場合、光透過性基材401は、位相差層404と偏光子300A及び300Bとの組み合わせに基づいた視覚特性に影響を与え難い。即ち、この場合、装飾ディスプレイ装置10の光学設計がより容易となる。なお、光透過性基材401は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。また、光透過性基材401は、省略してもよい。
中間層403は、この光透過性基材401と位相差層404との間に設けられている。中間層403は、第1態様について説明したのと同様の構成を有している。
位相差層404は、中間層403を間に挟んで、光透過性基材401と向き合っている。位相差層404は、パターニングされていてもよい。即ち、位相差層404は、光透過性基材401の一部のみと向き合っていてもよい。
位相差層404としては、第1態様について説明したのと同様のものを使用する。以下では、一例として、位相差層404が、配向方向がX方向に略平行である第1の領域A1と、配向方向がY方向に略平行である第2の領域A2と、配向方向が前面側から見てX方向に対して反時計回りに45°の角度を為している第3の領域A3とを含んでいるとする。
光学素子400は、上述したように、光透過性を有している。従って、この光学素子400は、図6に示すように、再生光L3を透過光として射出する。
この再生光L3は、第2偏光子300Bに入射する。そして、第2偏光子300Bは、第2偏光L4を射出する。
以下、図6に示す光学系により達成可能な視覚効果について説明する。なお、以下では、第1偏光子300Aは、透過軸の向きが前面側から見てX方向に対して反時計回りに45゜の角度を為す方向に平行な直線偏光子であるとする。また、以下では、第2偏光子300Bは、透過軸の向きが前面側から見てX方向に対して反時計回りに45゜の角度を為す方向に平行な直線偏光子であるとする。
この場合、光学素子400に入射する第1偏光L2は、第1偏光子300Aの透過軸に平行な偏光面を有した直線偏光である。即ち、この場合、第1偏光L2は、前面側から見てX方向に対して反時計回りに45゜の角度を為す方向に平行な偏光面を有した直線偏光である。
領域A1の遅相軸は、X方向に平行である。従って、入射する第1偏光L2の偏光面は、領域A1の遅相軸に対して、前面側から見て反時計回りに45゜の角度を為している。以下、領域A1のリターデイションは、可視光領域内の或る設計波長λ0の2分の1であるとする。即ち、領域A1は、この設計波長λ0の入射光に対して、2分の1波長板として機能するとする。
この場合において、領域A1に波長λ0の第1偏光L2が入射すると、領域A1を透過した再生光L3は、前面側から見てX方向に対して時計回りに45゜の角度を為す方向に平行な偏光面を有した直線偏光となる。この直線偏光の偏光面と第2偏光子300Bの透過軸とは、互いに直交している。従って、波長λ0の光は、第2偏光子300Bにおいて吸収され、光学素子400の前面側に射出されない。
これに対し、領域A1に波長λ0以外の波長の直線偏光が入射すると、領域A1を透過した再生光L3は、楕円偏光又は円偏光となる。従って、波長λ0以外の波長の光の少なくとも一部は、第2偏光子300Bを透過することができる。
それゆえ、領域A1を照明した場合、領域A1から射出された再生光L3に基づく第2偏光L4の強度は、波長ごとに異なる。従って、第1偏光子300Aを介して照明し且つ第2偏光子300Bを介して観察すると、光学素子400のうち領域A1に対応した部分は、着色して見える。
領域A2の遅相軸は、Y方向に平行である。即ち、領域A2は、メソゲンの配向方向が90゜異なっていること以外は、領域A1と同様の構造を有している。従って、偏光子300Aを介して領域A2に入射する直線偏光の偏光面は、領域A2の遅相軸に対して、光学素子400の前面側から見て時計回りに45゜の角度を為している。それゆえ、上記の場合、光学素子400のうち領域A2に対応した部分は、光学素子400のうち領域A1に対応した部分と同様の視覚効果を示す。即ち、光学素子400のうち領域A2に対応した部分は、第1偏光子300Aを介して照明し且つ第2偏光子300Bを介して観察すると、着色して見える。
領域A3の遅相軸は、前面側から見てX方向に対して反時計回りに45゜の角度を為す方向に平行である。即ち、第2偏光L2の偏光面と、領域A3の遅相軸とは、互いに平行である。即ち、領域A3を透過した再生光L3は、前面側から見てX方向に対して反時計回りに45゜の角度を為す方向に平行な偏光面を有した直線偏光である。そして、この直線偏光の偏光面と第2偏光子300Bの透過軸とは、互いに平行である。従って、光学素子400のうち領域A3に対応した部分は、偏光子300Aを介して照明し且つ第2偏光子300Bを介して観察しても、着色して見えない。例えば、照明光L1として白色光を用いた場合、この部分は、白色に見える。
以上の通り、偏光子300A及び300Bの透過軸と領域A1乃至A3の遅相軸とが上記のような配置となっている場合には、光学素子400のうち領域A1及びA2に対応した部分は着色した部分として視認され、光学素子400のうち領域A3に対応した部分は着色していない部分として視認される。例えば、光学素子400のうち領域A1及びA2に対応した部分は紫色に見え、光学素子400のうち領域A3に対応した部分は白色に見える。よって、この場合、観察者に、これら領域A1乃至A3に対応したパターンを視認させることができる。即ち、この場合、領域A1乃至A3により形成された潜像を可視化することができる。
装飾ディスプレイ装置10は、第1偏光子300A、光学素子400及び第2偏光子300Bの少なくとも1つを、所定の方向に移動させる機構を更に備えていてもよい。
例えば、装飾ディスプレイ装置10は、第1偏光子300Aを、第1偏光子300Aに入射する照明光L1の光路に対して交差する方向に移動可能とする機構を更に備えていてもよい。
例えば、装飾ディスプレイ装置10は、第1偏光子300Aを、第1偏光子300Aに入射する照明光L1の光路に平行な回転軸を中心として回転させる回転機構を備えていてもよい。この場合、第1偏光子300Aの透過軸と領域A1乃至A3の遅相軸との為す角度は経時的に変化する。従って、以下に説明するように、光学素子400のうち領域A1乃至A3に対応した部分に表示される色が、経時的に変化する。
例えば、上記の回転により、偏光子300Aの透過軸が領域A1の遅相軸と平行となった場合、領域A1は、第1偏光L2に対して光学的に影響を与えない。よって、領域A1から射出される再生光L3は、X方向に平行な偏光面を有した直線偏光である。従って、再生光L3の偏光面は、第2偏光子300Bの透過軸に対して、前面側から見てX方向に対して時計回りに45゜の角度を為している。それゆえ、光学素子400のうち領域A1に対応した部分は、より暗いこと以外は照明光L1の色と同じ色の部分として視認される。例えば、照明光L1として白色光を用いた場合、この部分は、白色に見える。
また、この場合、偏光子300Aの透過軸と領域A2の遅相軸とは互いに垂直である。よって、この場合、光学素子400のうち領域A2に対応した部分も、より暗いこと以外は照明光L1の色と同じ色の部分として視認される。例えば、照明光L1として白色光を用いた場合、この部分は、白色に見える。
これに対し、偏光子300Aの透過軸と領域A3の遅相軸とは45゜の角度を為している。従って、この場合、領域A3を透過した再生光L3には、その波長に応じた位相差が生じる。よって、この場合、第2偏光子300Bを通過した第2偏光L4の強度は、照明光L1の強度とは異なった波長依存性を示す。それゆえ、光学素子400のうち領域A3に対応した部分は、着色して見える。
以上のように、上記の機構の存在により、光学素子400に表示される像の色彩が経時的に変化する。具体的には、この変化は、観察者が観察方向を変化させることなしに視認可能である。従って、光学素子400は、一定の方向から観察した場合においても、多彩な視覚効果を示す。即ち、装飾ディスプレイ装置10は、極めて優れた装飾性を発揮し得る。
或いは、第1態様について説明したのと同様に、装飾ディスプレイ装置10は、第1偏光子300Aを、第1偏光子300Aに入射する照明光L1の光路に交差する向きに並進させる機構を備えていてもよい。或いは、装飾ディスプレイ装置10は、光学素子400を、光学素子400に入射する第1偏光L2の光路に対して交差する方向に移動可能とする機構を備えていてもよい。或いは、装飾ディスプレイ装置10は、第2偏光子300Bを、第2偏光子300Bに入射する再生光L3の光路に交差する向きに移動させる機構を備えていてもよい。或いは、装飾ディスプレイ装置10は、上述した移動の2以上の組み合わせを可能とする機構を備えていてもよい。これらの場合も、装飾ディスプレイ装置10は、極めて優れた装飾性を発揮し得る。
なお、この第2態様では、第1偏光子300A及び第2偏光子300Bの少なくとも一方は、光学素子400と一体化されていてもよい。即ち、第1偏光子300A及び第2偏光子300Bの少なくとも一方と光学素子400とは、積層体を構成していてもよい。この場合、装飾ディスプレイ装置10の構成をより簡略化することが可能となる。
また、上記の第1及び第2態様では、光源200と第1偏光子300Aと光学素子400とがケース100の中空構造中に含まれ、第2偏光子300Bが側壁120の透光部120Aの少なくとも一部に支持されている場合について説明した。しかしながら、装飾ディスプレイ装置10の構成は、これらに限られない。例えば、光源200及び/又は第1偏光子300Aは、上記中空構造の外部に設けられていてもよい。また、第2偏光子300Bは、上記中空構造中に含まれていてもよい。