以下、本発明の好ましい実施形態の一例につき図面を参照して説明する。本例は、ステップ・アンド・スキャン方式よりなる走査露光型の投影露光装置(スキャニング・ステッパー)で露光を行う場合に本発明を適用したものである。
図1は、本例の照明光学装置を含む本例の投影露光装置の概略構成を示す一部を切り欠いた図であり、この図1において、本例の投影露光装置は、光源1、照明光学系ILSと投影光学系25とを備えている。このうち光源1と照明光学系ILSは、照明光学装置を構成し、これは本発明の照明光学装置の好ましい実施形態の一例となっている。
照明光学系ILSは、光源1(光源)以降のリレーレンズ2からコンデンサーレンズ20までの、光軸(照明系光軸)AX1,AX2,AX3に沿って配置される複数の光学部材を備え(詳細後述)、光源1からの露光ビームとしての露光用の照明光(露光光)ILでマスクとしてのレチクルRのパターン面(レチクル面)の照明視野を均一な照度分布で照明する。すなわち、光源1及び照明光学系ILSは、本例の照明光学装置を構成するものである。後者の投影光学系25は、その照明光のもとで、レチクルRの照明視野内のパターンを投影倍率M(Mは例えば1/4,1/5等の縮小倍率)で縮小した像を、被露光基板(基板)又は感光体としてのフォトレジストが塗布されたウエハW上の一つのショット領域上の露光領域に投影する。レチクルR及びウエハWはそれぞれ第1物体及び第2物体ともみなすことができる。ウエハWは、例えば半導体(シリコン等)又はSOI(silicon on insulator)等の直径が200〜300mm程度の円板状の基板である。本例の投影光学系25は、例えば屈折光学系であるが、反射屈折系なども使用できる。
以下、図1において、投影光学系25、レチクルR、及びウエハWに関しては、投影光学系25の光軸AX4に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面(XY平面)内で走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向(図1の紙面に平行な方向)に沿ってY軸を取り、非走査方向(図1の紙面に垂直な方向)に沿ってX軸を取って説明する。この場合、レチクルRの照明視野は、非走査方向であるX方向に細長い領域であり、ウエハW上の露光領域は、その照明視野と共役な細長い領域である。また、投影光学系25の光軸AX4は、レチクルR上で照明系光軸AX3と合致している。
先ず、露光転写すべきパターンの形成されたレチクルRはレチクルステージ21上に吸着保持され、レチクルステージ21はレチクルベース22上でY方向に一定速度で移動するとともに、同期誤差を補正するようにX方向、Y方向、Z軸の回りの回転方向に微動して、レチクルRの走査を行う。レチクルステージ21のX方向、Y方向の位置、及び回転角は、この上に設けられた移動鏡23及びレーザ干渉計24によって計測されている。この計測値及び主制御系34からの制御情報に基づいて、レチクルステージ駆動系32はリニアモータ等の駆動機構(不図示)を介してレチクルステージ21の位置及び速度を制御する。レチクルRの周辺部の上方には、レチクルアライメント用のレチクルアライメント顕微鏡(不図示)が配置されている。
一方、ウエハWは、ウエハホルダ(不図示)を介してウエハステージ27上に吸着保持され、ウエハステージ27は、ウエハベース30上にY方向に一定速度で移動できるとともに、X方向、Y方向にステップ移動できるように載置されている。また、ウエハステージ27には、不図示のオートフォーカスセンサの計測値に基づいて、ウエハWの表面を投影光学系25の像面に合わせ込むためのZレベリング機構も組み込まれている。ウエハステージ27のX方向、Y方向の位置、及び回転角は、この上に設けられた移動鏡28及びレーザ干渉計29によって計測されている。この計測値及び主制御系34からの制御情報に基づいて、ウエハステージ駆動系33はリニアモータ等の駆動機構(不図示)を介してウエハステージ27の位置及び速度を制御する。また、投影光学系25の近傍には、ウエハアライメントのために、ウエハW上の位置合わせ用マークの位置を検出するオフ・アクシス方式で例えばFIA(Fie1d Image A1ignment )方式のアライメントセンサ31が配置されている。
本例の投影露光装置による露光に先立って、上記のレチクルアライメント顕微鏡によってレチクルRのアライメントが行われ、ウエハW上に以前の露光工程で回路パターンとともに形成された位置合わせ用マークの位置をアライメントセンサ31で検出することによって、ウエハWのアライメントが行われる。その後、レチクルR上の照明視野に照明光ILを照射した状態で、レチクルステージ21及びウエハステージ27を駆動して、レチクルRとウエハW上の一つのショット領域とをY方向に同期走査する動作と、照明光ILの発光を停止して、ウエハステージ27を駆動してウエハWをX方向、Y方向にステップ移動する動作とが繰り返される。その同期走査時のレチクルステージ21とウエハステージ27との走査速度の比は、投影光学系25を介してのレチクルRとウエハWとの結像関係を保つために、投影光学系25の投影倍率Mと等しい。これらの動作によって、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の全部のショット領域にレチクルRのパターン像が露光転写される。
次に、本例の照明光学系ILSの構成につき詳細に説明する。図1において、本例の光源1としては、ArF(アルゴンフッ素)エキシマーレーザ(波長193nm)が使用されている。なお、光源1としては、その他にKrF(クリプトンフッ素)エキシマーレーザ(波長248nm)、F2(フッ素分子)レーザ(波長157nm)、又はKr2(クリプトン分子)レーザ(波長146nm)等のレーザ光源なども使用できる。これらのレーザ光源(光源1を含む)は、狭帯化されたレーザ又は波長選択されたレーザであり、光源1から射出される照明光ILは、上記狭帯化又は波長選択により直線偏光光を主成分とする偏光状態となっている。以下、図1において、光源1から射出された直後の照明光ILは、偏光方向(電場の方向)が図1中のX方向と一致する直線偏光光を主成分とするものとして説明する。
光源1を発した照明光ILは、照明系光軸AX1に沿ってリレーレンズ2,3を介して偏光制御機構としての偏光制御部材4(詳細後述)に入射する。偏光制御部材4を発した照明光ILは、凹レンズ5と凸レンズ6との組み合わせからなるズーム光学系(5,6)を経て、光路折り曲げ用のミラー7で反射されて、照明系光軸AX2に沿って回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element) 9aに入射する。回折光学素子9aは位相型の回折格子からなり、入射した照明光ILは、所定の方向に回折されて進む。
後述する通り、光束制限部材としての回折光学素子9aからの各回折光の回折角及び方向は、照明光学系ILSの瞳面15上での照明光ILの位置や、照明光ILのレチクルRへの入射角度及び方向に対応する。また、回折光学素子9a及びそれと異なる回折作用を有する別の回折光学素子9b等がターレット状の部材8上に複数配列されている。そして、例えば主制御系34の制御のもとで交換機構10により部材8を駆動して、部材8上の任意の位置の回折光学素子9a等を照明系光軸AX2上の位置に装填することで、レチクルRのパターンに応じて、レチクルRへの照明光の入射角度範囲及び方向(又は瞳面15での照明光の位置)を、所望の範囲に設定できるように構成されている。また、その入射角度範囲は、上述のズーム光学系(5,6)を構成する凹レンズ5及び凸レンズ6を、照明系光軸AX1の方向にそれぞれ移動することによって、補助的に微調整することができる。
回折光学素子9aを射出した照明光(回折光)ILは、照明系光軸AX2に沿ってリレーレンズ11を経て、本発明の偏光変換部材12a,12bに入射する。ただし後述する通り、偏光変換部材12a,12bは、光軸AX2を中心とする所定の輪帯領域上のそれぞれ異なる位置に、複数の分離した偏光変換部材が配置されたものである。そして、光軸AX2の近傍には、偏光変換部材が配置されている必要はないため、照明光束の全てが偏光変換部材12a,12bに入射する必要はない。
偏光変換部材12a,12bよりレチクルR側には、レチクルR上での照明光ILの照度分布を均一化するためのフライアイレンズ14が配置される。フライアイレンズ14を射出した照明光ILは、リレーレンズ16、視野絞り17、及びコンデンサーレンズ18を経て光路折り曲げ用のミラー19に至り、ここで反射された照明光ILは、照明系光軸AX3に沿ってコンデンサーレンズ20を経てレチクルRを照明する。このように照明されたレチクルR上のパターンは、上述のように投影光学系25によりウエハW上に投影され転写される。
なお、必要に応じて視野絞り17を走査型とし、レチクルステージ21及びウエハステージ27の走査に同期して走査することもできる。この場合、その視野絞りを固定視野絞りと可動視野絞りとに分けて構成してもよい。
この構成において、フライアイレンズ14の射出側の面は照明光学系ILSの瞳面15の近傍に位置している。瞳面15は、瞳面15からレチクルRに至るまでの照明光学系ILS中の光学部材(リレーレンズ16、視野絞り17、コンデンサーレンズ18,20、及びミラー19)を介して、レチクルRのパターン面(レチクル面)に対する光学的フーリエ変換面として作用する。即ち、瞳面15上の1点を射出した照明光は、概ね平行光束となって所定の入射角度及び入射方向でレチクルRを照射する。その入射角度及び入射方向は、その光束の瞳面15上での位置に応じて定まる。
なお、光路折り曲げ用のミラー7,19は、光学性能的に必須のものではないが、照明光学系ILSを一直線上に配置すると露光装置の全高(Z方向の高さ)が増大するために、省スペース化を目的として照明光学系ILS内の適所に配置したものである。照明系光軸AX1は、ミラー7の反射により照明系光軸AX2と一致し、更に照明系光軸AX2は、ミラー19の反射により照明系光軸AX3と一致する。
以下、図2を参照して、図1中の偏光変換部材12a,12bの第1実施例について説明する。
本第1の実施例における偏光変換部材は、一軸結晶等の複屈折材料からなる1/2波長板12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12hであり、これらは図2(A)に示す如く、照明光学系光軸AX2を中心として、その周囲にそれぞれ隣接して配置される。これらの1/2波長板12a〜hは、その外周であって、照明光束の光路外である部分において、それぞれ保持部材13a,13b,13c,13d,13e,13f,13g,13hにより保持される。またその保持は、例えば1/2波長板12cについては押えネジ13c1,13c2,13c3の3本のネジにより行なわれ、例えば1/2波長板12dについては押えネジ13d1,13d2,13d3の3本のネジにより行なわれる。
図2(B)は、図2(A)中のA−A’線上での1/2波長板12a〜h及び保持部材13a〜h等の断面図を表わす。1/2波長板12a〜hは、その有効部分が、照明光学系光軸AX2を中心とする内半径riから外半径roまでの輪帯領域(以下「特定輪帯領域」と呼ぶ)をカバーする様に配置される。また、その各形状は、特定輪帯領域内に隙間無く配置可能なように、中心部を欠いた扇形を基本とし、光軸AX2から上記外半径ro以上離れた位置において、上記押えネジ13c1,13c2,13c等により保持部材13a〜h等により固定され保持される。
また、保持部材13a〜hは、保持部材13cが押えネジ13c1,13c2、保持部材13dが押えネジ13d1,13d2により保持枠13oに個設される如く、それぞれが所定の押えネジにより保持枠13oに個設される。保持部材13a〜h、保持枠13o、押えネジ13c1,13c2,13c等、及び押えネジ13c1,13c2等は、一体として、図1中の保持機構13を構成する。
照明光束の径は、いわゆる照明σの変更や、輪帯照明、2極照明、4極照明等の変更により変更されるため固定されたものではないが、最大でも図2(B)中の外半径r0は越えない。すなわち、保持部材13a〜hは、偏光変換部材である各1/2波長板12a〜hを前記照明光の光路外で保持する構成としている。そして、照明光の光路内となる可能性のある光軸AX2を中心とする半径r0の範囲内では、1/2波長板12a〜hは、それぞれの隣接部に実質的に隙間が生じない様に、かつ、遮光部材となる保持機構を有することなく配置されている。
これらの複数の1/2波長板12a〜hは、その方向に平行な直線偏光光の位相を、その方向に垂直な直線偏光光の位相の対して半波長ずらしめる方向(以下「基準方向」という)が、それぞれに対応する白抜き矢印で示した如くに、図2(A)の紙面内でそれぞれ異なる方向を向くように配置される。
すなわち、1/2波長板12a,12bについては、その基準方向をZ軸に平行に設定する。波長板12a〜hを透過する照明光が、前述の如くX方向の偏光方向(X偏光)を有する場合には、上記基準方向を有する波長板12a,12bは、照明光の偏光状態を変換することがないため、波長板12a,12bを透過した照明光は、そのままX偏光を保って射出される。
また、1/2波長板12c,12dについては、その基準方向を上記1/2波長板12a,12bの基準方向に対して、45度ずれた方向に設定する。このとき、1/2波長板12c,12dに入射したX偏光光は、偏光状態が変換されてY方向に偏光方向を有する直線偏光光(Y偏光)となって射出する。ここで、Y方向は1/2波長板12c,12dの位置においては、光軸AXを中心として1/2波長板12c,12dを通る円の円周方向に一致している。
さらに、1/2波長板12f,12gについては、その基準方向を上記1/2波長板12a,12bの基準方向に対して、右に22.5度回転した方向に設定する。このとき、1/2波長板12f,12gに入射したX偏光光は、図2中の座標系でZ=−Xで表わされる直線と平行な直線偏光に変換される。そして、1/2波長板12e,12hについては、その基準方向を上記1/2波長板12e,12hの基準方向に対して、左に22.5度回転した方向に設定する。このとき、1/2波長板12e,12hに入射したX偏光光は、図2中の座標系でZ=Xで表わされる直線と平行な直線偏光に変換される。
なお、これらの各偏光方向は1/2波長板12f,12g,12e,12hの各位置において、光軸AXを中心として各1/2波長板12f,12g,12e,12hを通る円の円周方向に一致している。これにより、各1/2波長板12a〜hの配置される面内に入射したX方向への直線偏光光のうち、光軸AX2を中心とする内半径riから外半径roの範囲の輪帯領域に分布する照明光は、その偏光方向が光軸AX2を中心とする円の円周方向に実質的に平行な直線偏光光に変換されることになる。
ここで、上記内半径riおよび外半径roの実際の長さは、照明すべきレチクルR上の照明視野の大きさ、照明光の必要な開口数、照明光学系ILSの設計方針等によって選択されるべきものであり一概には決まらない。しかし、本発明の照明装置を投影露光装置の照明光学系として使用する場合には、投影露光装置が備える投影光学系25の開口数を勘案して決定するべきである。
すなわち、外半径roは、投影光学系25の開口数(NA)に対する照明光の開口数の比であるコヒーレンスファクターσ値が、少なくとも0.8程度以上に相当する照明光束を包含する大きさに設定することが好ましく、内半径riは、上記σ値が0.4程度の光束を包含する大きさに設定することが好ましい。
なお、上記の1/2波長板12a〜hのうち1/2波長板12a,12cについては、上述の通り、照明光の偏光状態を変換する作用を有する必要はないので、1/2波長板でなく、それと同等な厚さを有する石英ガラス等で置き換えることもでき、さらに場合によっては、配置を省略することもできる。
ところで、これらの複数の1/2波長板12a〜hは、フライアイレンズ14よりも光源1側(入射側)に配置されるため、1/2波長板12a〜hの各境界部分において照明光の減光(遮光)が生じると、それに伴う照明光の光量分布の低下は、フライアイレンズ14の入射面上の照明光の光量分布の均一性(照度均一性)を悪化させることになる。そして、この照度均一性の悪化は、照明する対象である第1物体としてのレチクルR上での照度均一性にも悪影響を与えることになる。
しかし、本発明においては、上記の如く1/2波長板12a〜hの各境界部分に実質的に隙間が生じない様に、かつ遮光部材となる保持機構を有することの無い構成としたため、フライアイレンズ14の入射面上においても、照明光の照度均一性の悪化を概ね防止することが可能である。その結果、レチクルR上での照明光の照度均一性の悪化も、概ね防止することが可能となる。
従って、1/2波長板12a〜hを各境界部分に実質的に隙間が生じない様に、かつ遮光部材となる保持機構を有することの無い構成とし、すなわち複数の波長板をその照明光の光路外で保持する保持機構13a〜hを、偏光変換部材(1/2波長板12a〜h)により生じる、第1物体(レチクルR)上の照明光の照度不均一性を解消するための、照度不均一解消手段の少なくとも一部を構成すると見ることができる。
ここで、上記の実質的に隙間が生じないとは、例えば1/2波長板12a〜hの各境界部分に生じる隙間が、上記外半径r0の3%程度以下であることをいう。この条件を満たすことにより、上記隙間に伴う遮光作用や、隙間から漏れる好ましい偏光方向ではない照明光が結像特性に与える悪影響を、事実上問題のない程度に低減することが可能となるからである。
なお、偏光変換部材の境界部分に起因するレチクルR上の照明光の照度分布の不均一性を解消する手段は、上記の方法に限られる訳ではなく、例えば図3(A),図3(B)に示す如く、複数の1/2波長板120a,120b,120c,120d,120e,120f,120g,120hを、石英ガラス等の照明光に対して透明な透明基板120oによって保持する構成としても良い。
図3(A)は、このような透明基板120o上に貼付けられた複数の1/2波長板120a〜hを表わす上面図であり、図3(B)は、図3(A)のA−A’部分での断面を表わす断面図である。この貼付けは、例えば、いわゆるオプチカルコンタクト等の手法を用いるが、必要に応じて露光光に対して透明な接着剤等を使用して貼付けることもできる。
図3(A)中の1/2波長板120a〜hの各部中に示した白抜き矢印で示したそれぞれの上記基準方向の向きは、図2(A)に示した1/2波長板12a〜hのうち対応する位置にあるものの基準方向の向きと一致する。従って本例においても、X偏光光である照明光が、基板120oに保持された1/2波長板120a〜hに入射すると、その照明光は、その偏光方向が実施的に光軸AX2を中心とする円の円周方向に一致する直線偏光光に変換されて射出されることになる。
また、図3(B)中に示した1/2波長板120a〜hの内半径ri2,外半径ro2が満たすべき条件は、図2(B)に示した上記例における内半径ri,外半径roが満たすべき条件と同様である。
なお、本例においても、1/2波長板120a,120bを1/2波長板ではなく石英ガラスで構成しても良く、あるいは省略しても良いことは、上記実施例の場合と同様である。また、本例の場合には、光軸AX2近傍、すなわち光軸AX2を中心とする半径ri2の領域内にも、1/2波長板120a〜hと同様な厚さの石英ガラス等を貼合せることができる。
本例のような構成としても、各1/2波長板120a〜hの境界部の遮光性や境界部から漏れる好ましい偏光方向ではない照明光が結像特性に与える悪影響を、事実上問題のない程度に低減することが可能となり、本例の上記構成も、第1物体(レチクルR)上の照明光の照度不均一性を解消するための、照度不均一解消手段の少なくとも一部を構成すると見ることができる。
ところで、上記各例の1/2波長板は、例えば一軸結晶である水晶により構成することができる。水晶の屈折率は、波長193nmのArFエキシマーレーザ光において常光線の屈折率は1.6638、異常光線の屈折率は1.6774である。水晶中での常光線,異常光線の波長は、真空中波長(193nm)をそれぞれの屈折率で割ったものであるから、それぞれ116.001nm、115.056nmであり、水晶中を1波長分進行する毎に、両光束間に0.945nmの光路差が形成される。従って、1/2波長板を構成するには、水晶の厚さを、61.4(=116.001/2/0.945)波長分進行する厚さに相当する、7.12μmにすればよい。また、この厚さの奇数倍である(2n+1)×7.12μm(nは自然数)の厚さの水晶を使用しても、1/2波長板を構成することができる。
1/2波長板を、図2(A),図2(B)に示した如く保持するには、ある程度の厚さが必要であるため、この場合には、1/2波長板12a〜hは上記厚さの奇数倍の厚さとして、その厚さ及び強度を増大させることが好ましい。一方、図3(A),図3(B)に示した保持方法を採用する場合には、上記いずれの厚さの水晶を使用することもできる。
また、図2(A),図2(B)に示した方法を採用する場合においても、石英ガラス等の上に水晶を貼合せた構成の1/2波長板を採用することもできる。
さらに、1/2波長板の構成は、上記水晶に限定されるものではなく、他の複屈折材料を使用してもよく、蛍石の真性複屈折(Intrinsic Birefringnce)を利用して形成することもできる。また、本来複屈折のない合成石英等の材料に応力を加える等して複屈折性を持たせたものを、使用することもできる。その場合においても、1/2波長板を形成するための厚さは、その材料の常光線及び異常光線に対する屈折率から、上記方法を用いて算出することができる。
なお、レチクルR上に形成されたパターンが極めて微細である場合や、ウエハW上に露光転写されるパターンのパターン寸法に要求される規格等が極めて厳しい場合には、上記の如く1/2波長板12a〜hの各境界部分に実質的に遮光が生じない様な対策を施しただけでは、レチクルR上の照明光の照度均一性を十分に達成できない場合も生じる。
そこで、このような場合には、フライアイレンズ14の射出面14bに、フライアイレンズ14を構成する各レンズエレメントのうち、上記1/2波長板12a〜hの各境界部分に起因する照度分布の不均一性の生じているレンズエレメントから射出する照明光を遮光するための遮光部材を設け、上記1/2波長板12a〜hの境界部分により生じるレチクルR上の照明光量の照度不均一性を、完全に防止する構成とすることも可能である。
以下、この構成について、図4、図5、図6を用いて説明する。図4(A)は、1/2波長板12a〜hの構成を示す図であるが、その詳細は、図2(A)または図3(A)に示した上述の1/2波長板12a〜h等の構成と同様である。そして、このとき、各1/2波長板12a〜hの境界部分には、僅かではあるが遮光性が生じる。
図4(B)は、フライアイレンズ入射面14aに、当該1/2波長板の境界部分に起因する減光部分が生じている状態を、−Y方向(照明光の上流側)から見た図である。各1/2波長板12a〜hの境界部であるE1,E2,E3,E4,E5,E6,E7,E8は、それぞれ照明光を減光するため、フライアイレンズ入射面14aに、それぞれ減光領域S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8が形成される。また、同面14aには、各1/2波長板12a〜hの内側(光軸AX2の近傍側)の境界部に相当する減光領域Scも形成される。
図5(A)は、図4(A)及び図4(B)中に示した、B−B’線分位置での各1/2波長板12a〜hおよびフライアイレンズ14の断面図を表わす図である。境界部E4,E5による減光部S5,S4は、B−B’線分位置において、それぞれフライアイレンズ14を構成するレンズエレメントであるエレメント144,145上に形成される。従って、エレメント144,145の入射面の照明光は、その照度分布が不均一となる。
ここで、フライアイレンズ14の作用について、図6(A),図6(B)を用いて簡単に説明する。これらの図は、フライアイレンズ14の入射面14aでの照度均一性が、上記の如く所定のエレメント内において著しく不均一である場合の、レチクルR上の照度分布への影響を説明する図である。
図6(A)に示す如く、フライアイレンズ入射面14aに照射される照明光は、各レンズエレメントの集光作用(レンズ作用)により、その射出面14b側に集光される。そして、各エレメントから発散光束として射出され、それらは、レチクルR1等の被照射物体(第1物体)上に、重畳して照射される。すなわち、フライアイレンズ14の各レンズエレメントの入射面とレチクルR1とはそれぞれ結像関係となっており、レチクルR1の照明視野ILa上の照明光量分布は、上記重畳作用によりなされる平均化効果により均一化されることになる。
しかしながら、図6(B)に示す如く、レンズエレメント145上に形成される減光部S5が比較的急峻で、かつ光量低下の大きな遮光部である場合には、フライアイレンズ14による平均化効果をもってしても、レチクルR1上の照明視野ILa上の照明光量分布ILR1には、上記減光部S5により生じる減光部S5Rが生じ、その照度を完全には均一化できない場合が生じることになる。
そこで、図5(B)に示す如く、フライアイレンズ射出面14bの近傍に、遮光部材B4,B5等を設け、レチクルR1上の照明の照度均一性を悪化させるレンズエレメント144,145等からの照明光を、遮光する構成とすることもできる。
遮光部材B4,B5等は、上述の減光部S1〜8及び減光部Scに対応する各フライアイレンズエレメントの射出面14bの近傍に配置することが望ましい。従って、遮光部材B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7,B8,Bcは、図5(B)に示す如く配置することが望ましい。なお、図5(B)は、遮光部材S1〜8及び遮光部材Scとフライアイレンズ射出面14bを、+Y方向(照明光の下流側)から見た図である。
遮光部材S1〜8及び遮光部材Scは、偏光変換部材に起因してレチクルR1上の照明光の照度均一性を悪化させるレンズエレメントからの照明光を遮光し、レチクルR1上の照明光の照度均一性の向上に寄与するため、照度不均一解消手段の少なくとも一部を構成すると見ることができる。
ところで、遮光部材S1〜8,Scを設けることにより、偏光変換部材に起因するレチクルR1上の照明光の照度不均一性は完全に防止できるため、偏光変換部材(1/2波長板12a〜h)の保持方法等は、前述の構成に限定されず、さまざまな構成とすることもできる。しかし、フライアイレンズ入射面14aに生じる減光部E1〜8,Ecの幅を最小に押さえ、遮光するフライアイレンズエレメントの数を最小に抑え、照明光量の損失を最小限に押さえるためには、偏光変換部材の保持方法として、前述の方法を採用することが好ましい。
なお、遮光部材S1〜8,Scの配置位置は、上記の如きフライアイレンズ14の射出面14bの近傍に限るわけではなく、照明光学系ILS中のフライアイレンズ14からレチクルRの間に、射出面14bの(すなわち瞳面15)の共役面が存在する場合には、その共役面に配置するものとしても良い。
なお、図6(B)に示した如き、レチクルR1上の照度均一性の悪化は、フライアイレンズ14の1個のレンズエレメント内の照明光の照度分布が急峻に変化するために発生するものである。すなわち、1個のレンズエレメント145等の入射面14a上での照明光量分布が、レチクルR1において他のレンズエレメントからの照明光によっても平均化できないほどに急峻である場合に、レチクルR1上の照度均一性の悪化が無視できなくなる。
そこで、照明光学系ILSの構成を、フライアイレンズの14の入射面14aにおいて、その光量分布が急峻に変化しないような構成にすることによっても、レチクルR1上の照明光の照度均一化することも可能となる。
具体的には、照明光学系ILSの構成、特に図1中のズーム光学系5,6、回折光学素子9a、リレーレンズ11、偏光変換部材12a〜hおよびフライアイレンズ14の構成を最適化し、偏光変換部材12a〜hの位置における照明光束ILに、ある程度の発散性を持たせると良い。これにより、偏光変換部材(1/2波長板)12a〜hの境界部(減光部)は、上記の光束の発散作用と偏光変換部材12a〜hからフライアイレンズ入射面14aまでの距離との相互作用により、ある程度ボケてフライアイレンズ入射面14aに投影されることになる。
そして、図6(B)に示した如く減光部S55のボケ幅を、フライアイレンズ14を構成する各レンズエレメント145等の幅と同程度以上に設定すると、減光部S55の光量分布(減光の程度)の急峻性を十分に低下させることができ、従って、レチクルR1上での照明光の照度均一性を良好に保つことが可能となる。ここで減光部S55のボケ幅とは例えば半値幅をいい、フライアイレンズ14の入射面14aにおける平均的な照明光量Ilin1と減光部S55の最暗部の光量との平均値に基づいて、減光部S55をスライスした際のスライス幅である。
従って、照明光学系ILSの構成を最適化し、偏光変換部材12a〜hの位置における照明光束ILに、ある程度の発散性を持たせることにより、フライアイレンズの入射面14a上において、減光部S55のボケ幅を増大させる構成も、偏光変換部材により生じる第1物体(レチクルR)上の照明光の照度不均一性を解消するための、照度不均一解消手段の少なくとも一部を構成すると見ることができる。
また、本構成を、上述の他の照度不均一解消手段と組み合わせて採用することができることは言うまでもない。
以上の様に、本発明によれば、照明光学系ILS中のフライアイレンズ14aの入射面に分布する照明光のうち、所定の内半径から所定の外半径の間の特定輪帯領域に分布する照明光の偏光状態を、その偏光方向が実質的に照明光学系ILSの光軸AX2を中心とする円の円周方向に一致した直線偏光光とすることができる。
そして、これらの偏光状態は、フライアイレンズ14を射出した光束においても保存されるため、フライアイレンズ14の射出面14bが配置される照明光学系瞳面15においても、そこに分布する照明光のうち、所定の内半径から所定の外半径の間の特定輪帯領域に分布する照明光の偏光状態を、その偏光方向が実質的に照明光学系ILSの光軸AX2を中心とする円の円周方向に一致した直線偏光光とすることができる。
また、照明光学系瞳面15において照明光学系光軸AX2から所定距離離れた位置に分納する照明光は、所定の入射角度を持ってレチクルRに照射されることになる。これを図7(A),図7(B),図7(C)を用いて説明する。
図7(A)は、図1中の照明光学系ILSの瞳面15とレチクルRとの関係を簡易的に示した斜視図であり、図1中のリレーレンズ16、コンデンサーレンズ18,20等は省略している。レチクルR上には、その長手方向がY方向に平行でありX方向に周期性を有する微細パターンPXと、その長手方向がX方向に平行でありY方向に周期性を有する微細パターンPYとが形成されている。
図7(B)は、図7(A)に示した略図の、ZX面における断面図の一部を示す。図7(A)中の、瞳面15上の特定輪帯領域IL0のうち、図中左端のILL部に分布する照明光は、図7(B)中の照明光ILL1として入射角φを中心とする所定の角度範囲だけ傾いてレチクルRに入射する。この入射角φの正弦の値は、照明系光軸AX41からの輪帯領域IL0の中心位置の距離に比例する。
前述の如く、本発明の照明光学系(照明光学装置)では、瞳面15上で特定輪帯領域IL0に分布する照明光は、特定輪帯領域IL0の円周方向に概平行な直線偏光光であるので、照明光ILL1の偏光状態EF1は、いわゆるS偏光となる。ここでS偏光とは、光学一般で定義されるS偏光と同義であり、照明光ILL1の進行方向と、被照射物体であるレチクルRに対する法線(すなわち照明光学系光軸AX41)とを含む面、すなわちZX面に対して偏光方向が垂直である偏光である。
このような照明光ILL1の入射方位、入射角φ及び偏光状態EF1で、Y方向に長手を有しX方向に周期性を有するパターンPXを照明することにより、投影光学系25を介して投影されるパターンPXの像のコントラスト等を向上するができる。ただし、その理由については特許文献1等で説明されているため、ここでは説明は省略する。
なお、説明の便宜上図示を省略しているが、図7(B)では、レチクルRに対して右上方からも輪帯領域ILRを射出した照明光が照射されることは言うまでもない。そして、その偏光状態もS偏光である。
図7(C)は、図7(A)に示した略図の、YZ面における断面図の一部を示す。図7(A)中の、瞳面15上の輪帯領域IL0のうち、図中下端のILD部に分布する照明光は、図7(C)中の照明光ILD1として上記入射角φを中心とする所定の角度範囲だけ傾いてレチクルRに入射する。
瞳面15上の特定輪帯領域IL0中の図中下端部ILDに分布する照明光も、特定輪帯領域IL0の円周方向に概平行な直線偏光光であるので、照明光ILD1の偏光状態EF2も上記と同様にS偏光となる。そして、照明光ILL1の入射方位、入射角φ及び偏光状態EF2は、X方向に長手を有しY方向に周期性を有するパターンPYに対して好適であり、投影光学系25を介して投影されるパターンPYの像のコントラスト等を向上することができる。
なお、以上の説明で想定した図7(A)中の瞳面15上の特定輪帯領域IL0中の左端部(−X方向端部)ILL、右端部(+X方向端部)ILR、下端部(−Y方向端部)ILD等は、図2(A)等に示した偏光変換部材(1/2波長板)12a〜h等のうち、図2(A)等中のX方向の両端及びY方向の両端に配置された、偏光変換部材12a,12b,12c,12dに対応する部材を透過した照明光に対応するものである。
一方、レチクルR上には、図7(A)に示した如く、その長手方向がX方向またはY方向に一致するパターンのみではなく、その長手方向がX方向及びY方向から概ね45度回転したようなパターンも存在する場合がある。そして、そのようなパターンに対しては、図2(A)等の中に示した偏光変換部材12e,12f,12g,12hが特に有効となる。
ただし、レチクルR上に存在するパターンのうち、特に重要なパターン、例えば最も微細なパターンが、X方向またはY方向に長手を有するパターンに限定されるのであれば、これらのパターンに対してより有効である偏光変換部材12a,12b,12c,12dからの照明光を、他の偏光変換部材12e,12f,12g,12hからの照明光に対して相対的に増大させるために、図2(A)等における偏光変換部材12a〜hの面積比を変更することもできる。
すなわち、図2(A)等に示した光軸AX2を中心に均等角度毎に配置された偏光変換部材12a〜hではなく、偏光変換部材12a,12b,12c,12dについてはその中心角を増大させることにより面積を増大させ、偏光変換部材12e,12f,12g,12hについてはその中心角を減少させることにより面積を減少させるように、その配置を変更すると良い。
なお、偏光変換部材12a〜hの数、すなわち特定輪帯領域に対する光軸AX2を中心とする分割の数も、上記の8分割に限るわけではなく、より多くの領域に分割し、より多くの偏光変換部材を並べて配置するようにしても良いことは言うまでもない。
ところで、以上の実施形態においては、図1の照明光学系ILSの瞳面15に形成する照明光量分布が上述の特定輪帯領域であること、即ち輪帯照明へ適用することを前提に説明したが、本発明の照明光学装置及び投影露光装置により実現できる照明条件は、必ずしも輪帯照明に限定されるものではない。即ち、偏光変換部材12a〜hは、照明光学系の瞳面15内の特定輪帯領域内に分布する照明光の偏光状態を上記所望の偏光状態に設定するものであるから、照明光の分布をその特定輪帯領域内の更に特定の部分領域内に限る場合であっても、その特定輪帯領域の円周方向に平行な偏光方向を有する直線偏光光を主成分とした照明光に変換できることは言うまでもない。
このように、照明光を特定輪帯領域内の更に特定の領域内にのみ集光するには、図1中の回折光学素子9aを交換し、別の回折光学素子から発生する回折光(照明光)を、偏光変換部材12a〜h上の特定の離散的な領域に集中させるようにすれば良い。照明光を集中させる箇所は、例えば図2(A)中の偏光変換部材12c及び12d内の2箇所であるが、もちろん任意の偏光変換部材の任意の箇所に集中させてよく、また、偏光変換部材a〜hを跨ぐ位置に集光させても構わない。
また、集光位置の個数も4個であっても構わない。そして、その位置及び個数の選定は、レチクルR上の露光対象とするパターンの形状に応じて決定すれば良い。
ところで、上記の集光位置以外に分布する照明光は、上記の露光対象とするパターンの露光には適さないので、その光量分布を実質的に0にした方が好ましい場合もある。一方、回折光学素子9a等の製造誤差などによっては、回折光学素子9a等からは所望の方向以外にも回折光(以下「誤差光」という。)が発生し、上記の集光位置以外にも照明光が分布してしまう可能性もある。そこで、例えば図1のフライアイレンズ14の射出面側に、さらに絞りを設けて、この誤差光を遮光する構成とすることもできる。これにより上記の複数の集光領域以外の照明光量分布を完全に0とすることができる。
ただし、レチクルR上には上記露光対象とするパターン以外のパターンも存在し、上記誤差光が、これらの対象外のパターンの結像に有効である場合もあるので、必ずしも集光領域以外の照明光量分布を0にする必要がない場合もある。
ところで、上記の実施形態においては、レチクルR1に照射する照明光を、輪帯照明または変形照明であってレチクルRに対してS偏光とすることだけを想定して説明したが、実際の照明光学装置や投影露光装置では、レチクルR等の被照射物体(第1物体)への照明条件や偏光状態は、ある程度自由に可変できることが必要とされる。
ここで、照明条件の変更は上述の回折光学素子9a,9b等の交換配置や、ズーム光学系5,6により、照明σ値の変更や輪帯照明、2極照明、4極照明への変更が可能である。これにより、例えば照明光束のσ値を0.4程度以下の小σ照明とすることができる。
このような小σの照明光は、図2(A)に示した如き偏光変換部材12a〜hを透過することなく、図2(A)中の光軸AX2近傍を透過するため、偏光変換部材による偏光変換作用を受けない。従って、照明光ILはレーザ等の光源1から射出した際の偏光状態をほぼそのまま保ってレチクルRに入射することになるが、レチクルR1のパターンの種類や方向性によっては、Y方向の直線偏光光が好ましい場合もありランダム偏光光が好ましい場合もある。
そこで、本発明の照明光学装置・投影露光装置では、照明光学系ILS中に偏光制御部材4を設け、これにより、レチクルR1に照射される照明光の偏光状態を変更可能としている。
偏光制御部材4は、例えば照明光学系光軸AX1を中心に回転可能な1/2波長板であり、その配置角度の変更により、透過する照明光をX偏光光またはY偏光光に切り替え可能とする。これにより、上記小σ照明光のレチクルR1上での偏光状態をX偏光光及びY偏光光に切り替えることが可能となる。
あるいは、偏光制御部材4として、さらに照明光の偏光性を解消する素子を、照明系光束ILに対して装脱可能に配置することもできる。これにより、本発明の照明光学装置・投影露光装置においても、レチクルR1を照明するに際しランダム偏光照明が必要となる場合にも対応する事ができる。なお、偏光性を解消する素子としては、例えば、その厚さが面内の位置に応じて異なる波長板や旋光性部材を用いることができる。また、その代替として1/4波長板等を用いて照明光を円偏光にすることで、ウエハW上へのパターンの結像特性的にはランダム偏光と実質的に等価な照明光としても良い。
このように、照明光をランダム偏光とした場合においても、本発明の偏光変換部材が1/2波長板12a〜hからなる場合には、その実質的にランダムな照明光の偏光状態を、ランダム以外の状態に変換することは無い。ただし、偏光変換部材に起因して発生し、かつ僅かに残存するレチクルR上の照明光の照度不均一性をさらに改善するため等の理由により、大σ照明使用時には偏光変換部材12a〜hを、照明構想の光路外に退避させることもできる。
これは、例えば図1中の偏光変換部材12a,12bを保持する保持機構13を、さらに不図示の交換機構により保持し、この交換機構の駆動により、偏光変換部材12a,12bを保持機構13ごと、照明光学系の光路外に退避させる装脱機構により実現できる。
あるいは、装脱機構として図2(A)及び図2(B)に示した偏光変化部材12a〜hを保持する保持13a〜hに、偏光変化部材12a〜hを例えば光軸AX2に対して放射方向に移動可能となるような可動機構を持たせ、偏光変化部材12a〜hを照明光路外に退避可能な構成とすることもできる。
以上の実施形態においては、光源1としてのレーザ光源は、X方向に偏光した直線偏光光を射出するものとしたが、光源から射出される照明光束ILの偏光状態はこれに限られるものではない。例えば、Y方向に偏光した直線偏光光を射出する光源であれば1/2波長板等により、これをX方向に偏光した直線偏光光に変換して使用することも可能であり、円偏光を射出する光源であれば1/4波長板等により、これをX方向に偏光した直線偏光光に変換して使用することも可能である。ただし、光源1から射出される照明光は、このように波長板等により直線偏光に変換できる照明光、すなわち単一の偏光状態の照明光であることが望ましい。
ただし、完全に単一の偏光状態である必要は無く、例えば偏光比が80%以上程度の直線偏光を射出する光源であれば十分である。これより偏光比の悪い光源では、直線偏光を使用して微細パターンの投影像のコントラスト等を改善するという本発明の効果が、十分に得られなくなる。
なお、例えば光源1が円偏光である照明光を発するものである様な場合には、その円偏光の偏光状態を、ほぼそのまま保って照明光を図1中の偏光変換部材12a等に導く構成とすることもできる。その際には、偏光変換部材12a〜hとして1/4波長板を使用することにより、各偏光変換部材12a〜hを透過した照明光を、上記所望の偏光状態とすることができる。
このように、本発明の偏光変換部材12a〜hは、1/2波長板に限定されることなく、照明光の偏光状態に応じて他の条件の波長板を使用することも可能であり、さらに、波長板以外にも、水晶等の旋光性を有する材料を使用することもできる。この場合には、複数の偏光変換部材のそれぞれについて、右旋性または左旋性の旋光性の異なる材料や厚さの異なる材料を使用して、各偏光変換部材を透過する照明光が、光軸AX2を中心とした円の円周方向に平行な偏光方向を有する直線偏光光に変換されるようにすれば良い。
従って、本発明の偏光変換部材12a〜hは、波長板に限定されることなく各種の光学部材を用いることができる。
次に、上記の実施の形態の投影露光装置を使用した半導体デバイスの製造工程の一例につき図8を参照して説明する。
図8は、半導体デバイスの製造工程の一例を示し、この図8において、まずシリコン半導体等からウエハWが製造されている。その後、ウエハW上にフォトレジストを塗布し(ステップS10)、次のステップS12において、上記の実施形態(図1)の投影露光装置のレチクルステージ上にレチクル(仮にR1とする)をロードし、ウエハステージ上にウエハWをロードして、走査露光方式でレチクルR1のパターン(符号Aで表わす)をウエハW上の全部のショット領域SEに転写(露光)する。この際に必要に応じて二重露光が行われる。
なお、ウエハWは例えば直径300mmのウエハ(12インチウエハ)であり、ショット領域SEの大きさは一例として非走査方向の幅が25mmで走査方向の幅が33mmの矩形領域である。次に、ステップS14において、現像及びエッチングやイオン注入等を行うことにより、ウエハWの各ショット領域SEに所定のパターンが形成される。
次に、ステップS16において、ウエハW上にフォトレジストを塗布し、その後ステップS18において、上記の実施の形態(図1)の投影露光装置のレチクルステージ上にレチクル(仮にR2とする)をロードし、ウエハステージ上にウエハWをロードして、走査露光方式でレチクルR2のパターン(符号Bで表わす)をウエハW上の各ショット領域SEに転写(露光)する。そして、ステップS20において、ウエハWの現像及びエッチングやイオン注入等を行うことにより、ウエハWの各ショット領域に所定のパターンが形成される。
以上の露光工程〜パターン形成工程(ステップS16〜ステップS20)は所望の半導体デバイスを製造するのに必要な回数だけ繰り返される。そして、ウエハW上の各チップCPを1つ1つ切り離すダイシング工程(ステップS22)や、ボンディング工程、及びパッケージング工程等(ステップS24)を経ることによって、製品としての半導体デバイスSPが製造される。
本例のデバイス製造方法によれば、上記の実施形態の投影露光装置で露光を行っているため、露光工程において、照明光(露光ビーム)の利用効率を高めた状態で所定の偏光状態でレチクルを照明できる。従って、微細ピッチの周期的なパターン等の解像度等が向上しているため、より高集積で高性能な半導体集積回路を、高いスループットで安価に製造することが可能となる。
また、上記の実施形態の投影露光装置は、複数のレンズから構成される照明光学系、投影光学系を露光装置本体に組み込み光学調整をして、多数の機械部品からなるレチクルステージやウエハステージを露光装置本体に取り付けて配線や配管を接続し、更に総合調整(電気調整、動作確認等)をすることにより製造することができる。なお、その投影露光装置の製造は温度及びクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
また、本発明は、走査露光型の投影露光装置のみならず、ステッパー等の一括露光型の投影露光装置にも適用することができる。また、使用される投影光学系の倍率は、縮小倍率のみならず、等倍や拡大倍率であってもよい。更に、本発明は、例えば国際公開(WO)第99/49504号などに開示される液浸型露光装置にも適用することができる。
また、本発明の投影露光装置の用途としては半導体デバイス製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(X線マスクを含むフォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。