JP2010138351A - 多層型発光粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 発光効率の向上した発光粒子が求められていた。
【解決手段】 そこで、本発明は、多層型発光粒子であって、第1色素を含有する第1層と第2色素を含有する第2層を有し、前記第1色素と前記第2色素とが、共鳴エネルギー移動を起す位置に配し、固体NMR測定により求められるシリコン原子のQ値とT値の比、T/Qが9以上である多層型発光粒子を提供するものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、医療用、生化学領域等の研究、または臨床用に、発光マーカーとして利用可能な発光粒子に関するものある。特に、複数の色素間でエネルギー移動を起こすことを可能にする発光粒子に関するものである。
タンパク質は一部の有色タンパク質などの特殊な例を除くと、溶液中では透明であるため目視することはできない。また、多くの物質が混在している状態で特定のタンパク質のみを検出することも困難である。このため、タンパク質に特異的な光特性を持った色素分子を結合する放射性同位元素で標識する、あるいは他の酵素などを結合するといった解決手段が開発され、混合物中の目的タンパク質の検出、定量がなされている。これらの解決手段はタンパク質のみならず、DNAやRNA、糖類などが混在する溶液系や生体内部環境などにおける目的物質の同定、検出、定量を目的として多用されている。
これら標識された分子が特異的な分子構造を認識するような抗原や抗体タンパク質、糖類、受容体、リガンド、ヌクレオチドなどである場合、これらの物質は特定の分子構造を同定、検出、定量、可視化するためにも利用される。特に標識物質を分光学的に検出、定量する場合は、以前は放射性同位元素による標識が盛んに行われていたが、近年では有機蛍光色素が多用されている(蛍光色素標識法)。
しかしながら有機蛍光色素の励起極大波長と発光極大波長の差(ストークスシフト)は数十nmで、励起、発光スペクトル間には大きな重なりがある。そのため、細胞や生体組織等のイメージングでは、励起光自身による散乱(散乱光)や自家蛍光等が問題となるため、光学フィルターや時間分解によって励起光と色素の発光を分離しているが、高い輝度・感度が得られなかった。また、有機蛍光色素分子は励起/発光波長が分子構造によってほぼ決定するため、有機色素ごとに適切な励起波長を適宜選定しなければならない。他にもこれら有機蛍光色素は溶媒等による環境の変化に非常に敏感で、溶媒の選択により輝度が著しく低下したり、蛍光灯などの一般的な可視光によって分解(光退色)されたりする課題もあった。
これらの課題を解決する最近の傾向として、微小な粒子を用いた標識法が注目されている。これは微小な粒子を用いることで、色素などの標識化合物を粒子に高濃度で蓄積させ高輝度発光を達成し、マトリックス中に分散させることで、環境安定性も向上させることが可能となるからである。また、ナノサイズの粒子による蛍光材料は、高感度、低コスト、自動化が容易等の標識材料として優れた特性を有しており、これらの粒子蛍光材料を標識材料として用いることにより生体内の特定部位、血漿中の物質等を高感度で高速に検出することが可能である。
非特許文献1および2には有機蛍光色素を内部に共有結合で固定化したナノサイズのシリカ粒子が提案されている。これらのシリカ粒子の製法として、次のようなものがある。まず、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)に直接フルオロセインイソチオシアネート(FITC)やカルボキシフルオロセインサクシンイミジルエステル(FAM)を結合させた反応物を得る。そして、アンモニアを含むエタノール溶液中でテトラエトキシシラン(TEOS)と反応させる方法が提案されている。
こうしたシリカ粒子は、内部にシリカ担体と共有結合した有機色素分子を含み、該有機色素分子がシリカで囲われた形態を備えている。その結果、外部因子による消光(例えば酸素や、生化学的高分子等による励起エネルギーの吸収)を抑制できるため、例えば高感度な検出試薬として期待されている。
また、非特許文献3には、3種類の色素を同時に添加し、TEOSを加えることによって、各色素の間で蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を起こし、一波長の励起光で、複数の波長の発光を得られるシリカ粒子が提案されている。
FRET及び関連する共鳴エネルギー移動(RET)は、蛍光を発光することができるドナーから近接したアクセプターへの励起エネルギーの転移に基づいている。この手法によって、例えば、生物学的系における適当な蛍光ラベルによって約1〜10nmの範囲内の分子レベルの距離を測定したり、発光波長を制御したりすることが理論的には可能となる。アクセプターに移動されたエネルギーは、放射せずに内部変換によって軽減することができ、この場合には、ドナー蛍光のクエンチングのみを生じる。或いは、アクセプターは受容したエネルギーを蛍光の形態でも放射する。これらの現象は、充分に理解されており、ドナーとアクセプターとの間の双極子−双極子相互作用の場合には、Forsterの理論によって説明することができる。例えば、J.R.Lakowicz、Principles Of Fluorescence Spectroscopy、Kluwer Academic Press、New York、1990、368頁にある。エネルギー移動は、ドナー蛍光の強度とその寿命を減少させ、同時に、アクセプター蛍光を開始させ、感作し、又は増強する。エネルギー転移の効率は、分子間分離の逆6乗に依存し、R06/(R06+R6)に比例して低下する。R0、いわゆるForster半径は、エネルギー移動の効率が50%であるような、ドナーとアクセプターとの間の距離を特徴付ける。
J.Phys.Chem.B.,Vol.103,(1999)1408−1415. Nano Lett.,Vol.5,(2005)113−117. Nano Lett.,Vol.6(2006)84−88.
非特許文献3では、このようなFRETによる一波長励起による多色発光シリカ粒子を達成したものであり、25nmの小さな粒子ができることが示唆されている。
しかし、開示されている多層構造シリカ粒子では、層間にスペーサー層が形成されているために、効率が低下していることが述べられている。
このように、種々の有機蛍光色素を固定化したシリカ粒子が報告されているが、上記のようなエネルギー移動の課題があるのが実情である。
本発明は、このような背景技術に鑑みてなされたものであり、エネルギー移動効率を向上させることにより、発光効率を向上させた多層型発光粒子を提供することを目的とする。
本発明は、複数の層から構成される多層型発光粒子であって、第1色素を含有する第1層と第2色素を含有する第2層を有し、前記第1色素と前記第2色素とが、共鳴エネルギー移動を起す位置に配し、固体NMR測定により求められるシリコン原子のQ値とT値の比、T/Qが9以上である多層型発光粒子である。
本発明の多層型発光粒子は、色素間の共鳴エネルギー移動が効率的に行われることにより、発光効率が向上している。
以下、本発明を詳細に説明する。
(本発明の一実施形態)
図1は、本発明の多層型発光粒子の一実施形態の模式図である。図示したようにコア11及びコア上に第1層12があり、さらにその第1層12上に第2層13がある。コア11と第1層12と第2層13は、それぞれ第1色素、第2色素、第3色素を含み、第1色素、第2色素、第3色素はそれぞれ異なる色素である。さらに、第1色素と第2色素の間又は第2色素と第3色素の間では、共鳴エネルギーの移動が起こるものであり、本発明の多層型発光素子では、共鳴エネルギー移動が起こる位置に配置されている。図1では3種類の色素を用いた3層構造を示しているが、本発明においては、色素は少なくとも2種類あればよい。
なお、コア11と第1層の間又は第1層12と第2層13の間には、スペーサ−層がない。これは、固体NMR測定により求められるシリコン原子のQ値とT値の比、T/Qが9以上であることにより確認できる。Q値が高くなると結合の種類からスペーサ−層が形成していることになるためである。
他の多層型発光粒子の形態としては、さらに複数の層を供える粒子もある。また、最後の層に色素を含有しない層で被覆しているものでもよい。この場合は、粒子を分散させる溶液に耐性が強い層を選択できる。
(色素)
色素は、多種の適切な蛍光色素が用いることができる。例えば、蛍光芳香族化合物、又は蛍光複素環式芳香族化合物などであり、例えばフルオレセイン系の色素分子、ローダミン系の色素分子、テキサスレッド系の色素分子、及びシアニン系の色素分子などのイオン性蛍光色素を使用することができる。これらイオン性蛍光色素として、例えばInvitrogen社のAlexa系色素やCy系等の市販のイオン性蛍光色素を使用することもできる。末端の活性基としては、サクシンイミジル基やマレイミド基が挙げられる。
(層形成材料)
層を形成する材料は、シリコンを含有するものであればよい。さらに、透過度が高ければなおよい。
具体的には、オルガノシラン化合物を用いて形成されたシリカで層を形成していることが好ましい。
(固体NMR)
Siの固体NMRを測定することで、多層型発光粒子の結合状態を測定でき、粒子のT/Q値を定量することが可能である。始めに固体29Si−NMRによって得られる情報について述べる。29Si−NMRではSiの結合する相手により化学シフトが異なるため、それぞれのピークの大きさを調べることで、固体中の結合様式が分かる。慣用的に4官能のSiをQ、3官能はTと表す。また、O原子を介していくつのSiと結合するかについて上付き数字で表す。構造式と対応する表記例を以下の式に示す。
Figure 2010138351
上記式中、RはSiと直接結合する元素がOでない置換基を表し、X、X、XはOと直接結合する元素がSi原子でない置換基を表す。
粒子を評価する場合には、溶媒を25℃で減圧して溶媒を蒸発させて粉体を得て、それを測定に用いた。測定したNMRシグナルのピーク面積を用いて以下の値を算出決定する。
T/Qは以下の様に定義され、三官能のオルガノシラン化合物が化学結合している割合の目安となる。このT/Qが大きいほど表面の処理量が大きいことを示す。
T/Q=(T+T+T)/(Q+Q+Q+Q
本発明においては、上記NMRシグナルより求めたT/Qの特性値は、9以上である。この特性値を示す粒子は、多層間にスペーサ−層ができず、エネルギー移動が効率的にできる。特に、9.7以上で100以下であることが好ましい。
(光強度の測定)
本発明においては、色素が粒子マトリックス中に固定されているため、遊離の色素と比較して光退色しない。この光退色を測定するために、一定時間可視光を試料に照射し、その後蛍光強度を測定する。照射時間が0の時の蛍光強度を100とした時の相対強度を算出することで、光退色を評価した。
多層型発光粒子は、共鳴エンルギー移動型の発光に特徴がある。このようなエネルギー移動は1組の分子だけで起こるのではなく、複数の分子の間を伝播するため、これらの分子間でのエネルギー移動の様子は、蛍光強度の時間減衰曲線のパラメータに現れてくる。例えば、蛍光強度I(t)は、
I(t)=exp{−t/τ−γ(t/τ)d/6
と表され、ここで、tは時間、τは蛍光寿命、γはエネルギー移動の効率、dは次元を表す。
よって、微小な点における蛍光強度の時間減衰特性を求め、この特性を解析することにより、共鳴エネルギー移動型の発光かどうかを判断することが可能となる。
また合成した粒子は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、蛍光分光法、蛍光相関分光法(FCS)を行い、粒子径や発光特性を評価した。
(多層型発光素子の製造方法)
ここでは、多層型発光素子の製造方法について、オルガノシラン化合物を使って具体的に説明する。
オルガノシラン化合物は、一般的にR−Si−X3の化学式で表される化合物で、分子中に2個以上の異なった官能基を持っている。上記Xはオルガノシラン化合物間で反応することができる部位である。例えば、Xがアルコキシ基である場合は、Sol−Gel Science誌1989年第662頁に記述されている。ここには、加水分解によって生成したシラノール基の水素が有機ケイ素基によって置換され、Si−O−Si−R結合を形成し、シリカのネットワークを形成する。
本発明におけるXとしては、クロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アミノ基等、限定なく利用できるが、アルコキシ基を用いることがより好ましい。また、オルガノシラン化合物間で反応し、シリカ構造を形成することができれば、Xが三官能基のものでなくても、二官能基や一官能基のオルガノシラン化合物を用いても良い。
一方上記Rは有機基であり、アミノ基やカルボキシル基、マレイミド基、サクシンイミジル基等が好ましく用いられるが、上記有機基に限定されるものではない。
シリカ粒子は、オルガノシラン化合物のみでシリカのマトリックスを形成している点に特徴がある。一般にシリカ粒子の製造は、金属アルコキシドの加水分解法、共沈法、無水塩加水分解法、噴霧乾燥法、プラズマ法、レーザー法等の方法が知られている。例えば、100nm以下のナノサイズのシリカ粒子はシリカゾル、コロイダルシリカとして知られ、テトラアルコキシシランを加水分解し、縮重合することにより製造される。しかしながら、テトラアルコキシシランの替わりにオルガノシラン化合物を用いると、粒子の凝集等により粒子径が大きくなることが知られている。例えば、Langmuir,Vol.22,(2006)4357−4362ではシリカの表面修飾としてよく用いられる3−アミノプロピルトリエトキシシランを使用している。この場合、シラノール基とアミノ基の間で水素結合を形成することにより凝集して、マイクロサイズの粒子を形成することが指摘されている。
以下、ゾル−ゲル法を用いた多層型発光素子の一例である多層化シリカ粒子の合成方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
反応溶液は、反応性蛍光化合物とオルガノシラン化合物の反応生成物である蛍光シラン化合物と、そして加水分解反応触媒としてアミノ酸を含む水溶液である。
第一の工程として反応性蛍光化合物とオルガノシラン化合物とを反応させた溶液を調製する。このとき反応性蛍光化合物のスクシンイミジル基やマレイミド基等の活性基に応じて、3−アミノプロピルトリエトキシシランやメルカプトプロピルトリエトキシシラン等のオルガノシラン化合物が好ましく用いられる。また、これら以外のオルガノシラン化合物でも本発明には適用可能である。例えば、選択された蛍光化合物の活性基がサクシンイミジル基であれば、アミノ基を有したオルガノシラン化合物を有機溶媒に溶解させ、窒素雰囲気下において24時間常温で反応させることにより、アミド結合(―NHCO−)を形成させる。
このとき使用する有機溶媒は、エタノールやジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等一般的なものを使用することが可能である。
反応に使用する反応性蛍光化合物とオルガノシラン化合物の割合は特に制限されないが、オルガノシラン化合物/反応性蛍光化合物のモル比が10〜1000の範囲が好ましい。
第二の工程として、上記反応溶液をアミノ酸の水溶液に添加し、加水分解と縮重合を起こさせ、コアとなる粒子を合成する。
多層型シリカ粒子において、加水分解および縮重合反応速度と、粒子の分散性は、触媒として添加するアミノ酸の種類およびその添加量によって制御され、例えば、リシンを添加することによって、多層化したシリカ粒子が合成される。しかし、本発明に適用できるアミノ酸は上記リシンのような塩基性アミノ酸のみに限定されず、本発明にかかる多層化構造を達成できるものであれば特に制限はなく、グリシンのような酸性アミノ酸を用いても良く、その添加量は適宜最適化される。リシンを用いる粒形の揃ったシリカ粒子の作成方法に関しては、例えば、特開2006−248845号公報に記載されている。
適宜調製されたアミノ酸水溶液は、蛍光シラン化合物と温度制御下で反応させることにより、多層型シリカ粒子のコアとなるナノサイズの粒子を形成する。合成させる際の温度は、30℃から100℃程度の温度領域において選択される。色素が分解されない高温で合成することで、より微小なシリカ粒子を合成することが可能となる。反応時間は数時間から数日程度で、反応温度や反応時間は適宜最適化される。
第三の工程は、コア粒子とは異なる色素を含んだ蛍光シラン化合物を調製し、徐々に滴下することでコア粒子表面において不均一核形成を起こさせ、コアとは異なる蛍光層を形成させる。
第一工程で用いた反応性蛍光化合物とは異なる、FRETが起こり得る反応性蛍光化合物を別途選択し、第一工程と同様に有機溶媒中でオルガノシラン化合物とを反応させ、第二の蛍光シラン化合物を得る。この溶液は、粒子径が20nm以上増加しない(一層が10nmを超えない)ように、微小量ずつ添加する。マイクロシリンジ等を用いても良い。このときTEOSのような四官能アルコキシドを使用すると、オルガノシラン化合物との反応速度の違いのために、先にTEOS層をシリカ粒子表面に形成する。つまり、蛍光層間にスペーサー層を形成してしまうため、FRET効率が悪くなってしまうので、オルガノシラン化合物のみを使用することが好ましい。溶液を添加し、第二工程における反応条件で撹拌した後に、走査型電子顕微鏡(SEM)や動的光散乱(DLS)で粒子径を都度観察することにより、一層の厚さを制御する。第四工程以降も、前層とは異なる反応性蛍光色素を利用し、同様の工程を繰り返すことにより、蛍光色素のみが異なるシリカ層をコア粒子上に積層させる。このような多層化シリカにおいては、層間でエネルギー移動が起きている限りは、特に積層数は限定されない。
この様にして合成された蛍光シリカ粒子は、適切なMWCOを有した限外濾過フィルターを利用することで分離・濃縮させ、多層型蛍光シリカ粒子が得られる。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
(多層型発光粒子の製造方法)
本実施例は、粒子内の第一層としてエネルギーのドナーとなるFluorosceinisothiocyanate(FITC,励起波長496nm、発光波長516nm)の蛍光色素のコア粒子を合成した。そして、第二層として隣接する層にエネルギーのアクセプターとなる5−Carboxyrhodamine 6G,succinimidyl ester(5CR−6G,励起波長525nm、発光波長555nm)を形成した。さらに、第三層に5−Carboxytetramethylrhodamine,succinimyl ester(5−TAMRA,励起波長555nm、発光波長580nm)を含んだ蛍光色素層を形成した。最内層に発光波長の一番小さい蛍光色素を含む構成になっている。各蛍光色素層の厚さが10nm以下でコア粒子上に形成させた多層型シリカ粒子の例である。この3種類の蛍光色素の励起波長と発光波長のスペクトルを図2に示す。破線が励起波長で、実線が発光波長を示している。各蛍光色素の励起、発光波長がオーバーラップしており、効率よいFRETが期待できる。
まずイソチオシアネート化合物であるFITCと、アミノ基を持つ3−aminopropyltriethoxysilane(APTES)をN,N−dimethylformamide(DMF)溶媒中で反応させた。そして、チオウレア結合を介したFITC−APTES複合体を形成させた。この時のFITC:APTESは1:300となるように調製した。具体的には、窒素置換したグローブボックス内において、67.4μLのDMFにFITCを379μg溶解させ、APTESを68μL添加し、窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。DMFに溶解直後のFITCは黄色の蛍光色であるが、APTESを添加することで橙色を呈した。
一方、塩基性アミノ酸であるL−リジンを0.0427g秤量し、純水50mLに添加し、60℃で撹拌した。このL−リジン水溶液に、グローブボックスから取り出した反応後のFITC−APTES混合溶液を添加し、さらに60℃で48時間撹拌した。この時の混合溶液の組成比(モル比)は、APTES:FITC:L−Lys:HO:DMF=1:0.003:1:9500:3となるようにした。
合成したコア粒子の特性化はSEMとFCSを用いて行った。
図3にSEM像を示す。分散性の良い直径5nm程度のシリカ粒子が観察された。画像解析による粒径分布解析からも、分布がシャープであり、均一性の高い粒子であることが確認された。
図4に反応前の遊離FITCと、反応後のFITC含有コア粒子のFCS解析結果を示す。FCS曲線のフィットは水溶液中での単分散を示すものである。また、FCS曲線はさらに2つの独立パラメーターである拡散係数と濃度も提供する。拡散係数は流体半径に直接関連し、濃度は粒子輝度の定量を可能にする。拡散係数を用いることで、以下のストークス・アインシュタインの式より、流体半径を知ることができる。rは流体半径、kはボルツマン定数、Tは温度、ηは溶媒の粘度、Dは拡散係数である。
Figure 2010138351
FCSの解析結果を表1に示す。各試料の拡散速度から拡散係数を算出し、それぞれの流体半径を上記式により決定した。遊離FITCの拡散時間は0.0417msとなり、流体半径は0.65nm、FITC含有コア粒子の拡散時間は0.3494msとなり、流体半径は5.49nmと算出したされた。
Figure 2010138351
上記の特性化により、FITCコア粒子の合成が確認されたので、以下のプロセスにより、FITCコア粒子上に第二層として5CR−6G、第三層に5−TAMRAを含んだ蛍光色素層を各層の厚さが10nm以下となるように形成させた。
まずコア粒子合成の時と同様に、スクシンイミド化合物である5CR−6Gと、アミノ基を持つAPTESを、DMF溶媒中で反応させ、アミド結合を介した5CR−6G−APTES複合体を形成させた。同様に第三層目となる5−TAMRAとAPTESの複合体も合成した。この時の5CR−6G:APTES、および5−TAMRA:APTESはそれぞれ1:300となるように調製した。具体的には、窒素置換したグローブボックス内において、67.4μLのDMFに5CR−6Gを541μg溶解させ、APTESを68μL添加し、窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。5−TAMRAにおいても、別の容器を用いて513μg秤量し、24時間撹拌した。
先に合成したコア粒子が分散しているL−リジン水溶液に、グローブボックスから取り出した反応後の5CR−6G−APTES混合溶液を10回に分けて12時間おきに添加し、60℃で撹拌した。5CR−6G−APTESの添加後は、5−TAMRA−APTESについても、同様に添加した。
(多層型発光粒子のSEM観察)
図5にコア粒子、第一層コーティング、第二層コーティングのSEM像と粒径分布図を示す。コア粒子が9から12nm、第一層が12から15nm、第二層が15から18nmの粒径であることが分かる。この粒子の発光強度が強かったことから3nm以下の厚さがより効果的であると考察される。
また、図5の3層構造の場合に最小の粒子は、5nmになっていることがわかる。よって、1層が1nmである場合も実現可能であると推測される。この場合は、10層構造であっても10nmの大きさで実現できる。
他方、図5の3層構造の場合での最大の粒子は、26nmになっていることがわかる。
(添加量と粒径の考察)
図6に添加したAPTESの量と、粒子径の関係を示す。粒子径はSEM観察の画像解析によって算出した。このように添加量と粒子の大きさは比例しており、また添加量を制御することにより1〜2nm程度の粒径制御も可能となる。また、粒径分布がシャープなまま粒子が成長していることからシリカ粒子は層構造になっていると推察した。
(固体NMR測定)
合成したシリカ粒子の結合状態を調べるため、29Si核の固体NMRを測定した。上記で得られたシリカ粒子は水溶液中に単分散したものであるため、0℃で24時間、凍結真空乾燥した粉末のシリカ粒子を使用して、目的のNMRスペクトルを得た。ここで横軸の単位は、テトラメチルシラン(TMS)の29Siの共鳴周波数を基準にして、それからのずれをppm単位で表したものである。−80ppm〜―110ppm付近のQ〜Qに起因するピークはほとんど確認されなかったが、−60ppm〜―70ppmにT、Tに起因するピークが観察された。これらは相対値でT1:T2:T3:Q1:Q2:Q3:Q4=18:8:3:0:0:2:1となり、上記式によりT/Qを算出すると、T/Q=(18+8+3)+(0+0+2+1)=29/3=9.7となり、T/Q値は9以上となる。
(多層型発光粒子の発光強度測定)
FRETによる発光波長の変化は、各蛍光色素から発光する蛍光スペクトルの強度を相対的に評価することによって測定した。具体的には、合成したシリカ粒子の分散水溶液にFITCの励起波長である496nmの光を照射し、FITC、5CR−6G、5−TAMRAそれぞれの発光波長である516nm、550nm、580nmの蛍光強度を測定した。FRETが全く起こらない場合、FITCの発光のみが観測されるが、FRETが起こると徐々にFITCの発光強度が減少し、5CR−6Gや5−TAMRAの発光が観測される。その結果、FITC:5CR−6G:5−TAMRAの発光強度比は1:2:10となり、効率よいFRETが起きていることが示唆された。
(多層型発光粒子の光退色測定)
また、合成した多層型シリカ粒子を用いて、光退色を測定した。各1mLLの試料に、5W、488nmのアルゴンレーザーを適宜照射し、その後496nm励起による、516nmと580nmの発光強度を測定した。
多層型シリカ粒子によるFRET発光では、70%以上の蛍光強度を維持していた。
(比較例1)
比較例として、0.0427gのL−リジンを50mLの純水に溶解し、本実施例1と同じ量のFITC、5CR−6G、5−TAMRAを添加した蛍光水溶液を作製した。この試料に対する496nm励起の蛍光スペクトルを測定したが、それぞれの蛍光強度比、FITC:5CR−6G:5−TAMRAは10:3:0となり、多層型発光粒子の蛍光強度比とは全く異なるものであった。このことから、多層型発光粒子内部においてFRETによるエネルギー移動がおこり、496nm励起で580nmの発光という、大きなストークスシフトが達成されたと推察される。
また、上述の遊離蛍光色素を用いて、光退色を測定した。各1mLの試料に、5W、488nmのアルゴンレーザーを適宜照射し、その後496nm励起による、516nmと580nmの発光強度を測定した。遊離した色素溶液は、照射後すぐに光退色してしまい、ほとんど蛍光強度が確認されなくなった。
これについても、蛍光寿命を測定することで解析した。この実施例においては、一般に市販されている蛍光寿命測定器を用いて、コントロールとなる遊離5−TAMRAと、L−リジン水溶液に分散させた多層型蛍光シリカ粒子について、5−TAMRAの発光波長である580nmの蛍光寿命を測定した。遊離した5−TAMRAの平均蛍光寿命は水中での文献値とよく一致していた。その結果、遊離したFITCよりも多層型蛍光シリカ粒子の発光寿命は遅くなっており、FRETによるエネルギー移動が起こっていることを示唆した。
(比較例2)
本比較例では、多層型シリカ粒子を合成する際に、各色素を含んだシリカ層間に厚さ数nmの色素を含まないシリカ層をスペーサーとして加えた粒子を合成した。
イソチオシアネート化合物であるFITCとAPTESをDMF溶媒中で反応させ、チオウレア結合を介したFITC−APTES複合体を形成させた。この時のFITC:APTESは1:300となるように調製した。具体的には、窒素置換したグローブボックス内において、67.4μLのDMFにFITCを379μg溶解させ、APTESを68μL添加し、窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。DMFに溶解直後のFITCは黄色の蛍光色であるが、APTESを添加することで橙色を呈した。
一方、塩基性アミノ酸であるL−リジンを0.00427g秤量し、純水50mLに添加し、60℃で撹拌した。このL−リジン水溶液に、グローブボックスから取り出した反応後のFITC−APTES混合溶液を添加し、さらに60℃で48時間撹拌した。この時の混合溶液の組成比(モル比)は、APTES:FITC:L−Lys:H2O:DMF=1:0.003:1:9500:3となるようにした。
次にスペーサー層として、コア粒子にシリカ層を形成させた。具体的には、先に合成したコア粒子が分散しているL−リジン水溶液に、TEOS200μLをマイクロシリンジポンプを用いて24時間で全量添加し、窒素雰囲気下で撹拌した。
次に5CR−6G−APTES複合体を形成させ、同様に第三層目となる5−TAMRAとAPTESの複合体も合成した。この時の5CR−6G:APTES、および5−TAMRA:APTESはそれぞれ1:300となるように調製した。具体的には、窒素置換したグローブボックス内において、67.4μLのDMFに5CR−6Gを541μg溶解させ、APTESを68μL添加し、窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。5−TAMRAにおいても、別の容器を用いて513μg秤量し、24時間撹拌した。
シリカ層を被覆したコア粒子が分散しているL−リジン水溶液に、グローブボックスから取り出した反応後の5CR−6G−APTES混合溶液を10回に分けて12時間おきに添加し、60℃で撹拌した。5CR−6G−APTESの添加後は、同様にシリカ層、5−TAMRA−APTESについても添加した。
各試料をSEM観察した結果、コア粒子のみ、シリカ層被覆、5CR−6G層追加、シリカ層被覆、5−TAMRA層追加した試料の平均粒子径がそれぞれ、13nm、20nm、22nm、26nm、28nmと算出された。
0℃で24時間、凍結真空乾燥した粉末のシリカ粒子を29Si核の固体NMRを測定した。−80ppm〜―110ppm付近のQ1〜Q4に起因するピークが観測され、シリカスペーサー層の形成が示唆された。また、−60ppm〜―70ppmにT3、T2に起因するピークも観察された。これらは相対値でT1:T2:T3:Q1:Q2:Q3:Q4=15:8:2:0:1:5:9となり、T/Q=1.7となり、シリカ層の形成が観察された。
次に実施例1と同様に、496nmの光を照射し、FITC、5CR−6G、5−TAMRAそれぞれの発光波長である516nm、550nm、580nmの蛍光強度を測定した。その結果、FITC:5CR−6G:5−TAMRAの発光強度比は1:1.2:1.8となった。FRETが起こっていることは示唆されたが、実施例1のような強度比にはなっておらず、シリカ層によるスペーサーの形成により各色素間のFRET効率が落ちたと推察される。
本発明の一実施形態である多層型発光粒子を説明するための模式図である。 本発明に利用された色素の蛍光スペクトル図である。 本発明の一実施形態である多層型発光粒子のコアのみの観察した走査型電子顕微鏡のイメージである。 本発明の一実施形態である多層型発光粒子におけるFITC蛍光色素を含有したコア粒子と、遊離したFITC蛍光色素のFCS曲線である。 本発明の一実施形態である多層型発光粒子のそれぞれの層の厚さを示した図である。 本発明の一実施形態である多層型発光粒子の合成における、APTESの添加量と粒子径の関係図である。
符号の説明
11 エネルギー移動のドナーとなるコア粒子
12 エネルギー移動のアクセプターとなる色素を含んだ第1層目のシリカ層
13 エネルギー移動のアクセプターとなる色素を含んだ第2層目のシリカ層

Claims (3)

  1. 多層型発光粒子であって、
    第1色素を含有する第1層と第2色素を含有する第2層を有し、
    前記第1色素と前記第2色素とが、共鳴エネルギー移動を起す位置に配し、
    固体NMR測定により求められるシリコン原子のQ値とT値の比、T/Qが9以上であることを特徴とする多層型発光粒子。
  2. 前記多層型発光粒子であって、
    3層構造で構成され、前記多層型発光粒子が含有する色素のうち発光波長の一番小さい色素を最内層であるコアが含有することを特徴とする請求項1記載の多層型発光粒子。
  3. 前記多層型発光粒子の大きさが、5nmから26nmであることを特徴とする請求項1記載の多層型発光粒子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018002569A (ja) * 2016-07-07 2018-01-11 学校法人神奈川大学 シリカナノ粒子の製造方法、シリカナノ粒子、及び蛍光発光剤

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