JP2010133688A - 過冷却解放方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】蓄熱材中に配設された部材の温度変化に伴う形状の変化を利用して物理的刺激を作り出すことにより蓄熱材の過冷却状態を解放又は解除する技術であって、当該部材の設計又は選択がより容易なものを提供すること。
【解決手段】蓄熱材の過冷却状態を解放する過冷却解放装置1であって、第1の部材4と、第1の部材4と熱膨張係数が異なる第2の部材5と、第1の部材4の少なくとも一部と第2の部材5の少なくとも一部とが常時互いに接合することなく接触している接触部分とを蓄熱材中に備え、第1の部材4と第2の部材5との間の熱膨張係数の違いに起因する、前記接触部分における両部材間の相対的な摺動を契機として、前記蓄熱材の過冷却状態が解放されるように構成されていることを特徴とする過冷却解放装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、蓄熱材の過冷却状態を解放又は解除する技術に関する。
蓄熱材の過冷却状態を解放又は解除する技術として、当該蓄熱材に対して物理的刺激を与えるという手法、例えば、過冷却状態にある蓄熱材中で部材同士を接触させることにより蓄熱材に刺激を与える手法がよく知られている。その中の一つの手法として、蓄熱材中で別の部材に接触可能に設計又は選択されている部材の、温度変化に伴う形状の変化を利用して前記部材を接触させ、物理的刺激を作り出す手法がある。
この手法の一例として、形状記憶合金製バネが温度変化に伴い変形する際に生じる力により二つの部材を圧接させ、その当接部に接触する蓄熱材の過冷却状態を解放させるものがある(特許文献1参照)。
また、他の例として、片持ち支持されたバイメタル製部材の自由端を温度変化に伴い変形する過程で別の部材と擦り合わせ、その擦り合わせ部に接触する蓄熱材の過冷却状態を解放させるものがある(特許文献2)。
蓄熱材中で別の部材に接触可能に設計又は選択されている部材の、温度変化に伴う形状の変化を利用して前記部材を接触させ、物理的刺激を作り出すことにより蓄熱材の過冷却状態を解放又は解除する手法は、物理的刺激を作り出す際、格段の外的な動力を必要とせず、又は、それ故に簡素な装置又は方法の構成にし易いという点で有益である。
特開平2−171594号公報 特開昭57−70399号公報
部材の温度変化に伴う形状の変化を利用して物理的刺激を作り出すために、形状記憶合金やバイメタルを採用する場合、形状記憶合金やバイメタルの形状の変化が蓄熱材の融点又はその近傍の温度(特に融点よりも低い温度)において丁度又は好ましい程度で都合良く変形するようにその素材を設計又は選択することが必要となる。
しかし、このことは理屈のうえでは可能であっても、現実問題として、蓄熱材の融点範囲によっては必ずしも容易とはいえない。
また、そのような物理的刺激を作り出す機構は、簡素であることに越したことはない。
本発明は、以上の問題または課題に鑑みてなされたものであり、蓄熱材中に配設された部材の温度変化に伴う形状の変化を利用して物理的刺激を作り出すことにより蓄熱材の過冷却状態を解放又は解除する技術であって、当該部材の設計又は選択がより容易なものを提供することを目的とし、また、温度変化に伴う部材の形状の変化を利用して物理的刺激を作り出す新たな又は簡素な機構に係る技術を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するための、本発明の第1の形態は、蓄熱材の過冷却状態を解放する過冷却解放方法であって、第1の部材の少なくとも一部と第1の部材と熱膨張係数が異なる第2の部材の少なくとも一部とが常時互いに接合することなく接触している接触部分を蓄熱材中に設け、第1の部材と第2の部材との間の熱膨張係数の違いに起因する、前記接触部分における両部材間の相対的な摺動を前記蓄熱材の過冷却状態の解放の契機とすることを特徴とする過冷却解放方法に係る。
本発明の第2の形態は、蓄熱材の過冷却状態を解放する過冷却解放装置であって、第1の部材と、第1の部材と熱膨張係数が異なる第2の部材と、第1の部材の少なくとも一部と第2の部材の少なくとも一部とが常時互いに接合することなく接触している接触部分とを蓄熱材中に備え、第1の部材と第2の部材との間の熱膨張係数の違いに起因する、前記接触部分における両部材間の相対的な摺動を契機として、前記蓄熱材の過冷却状態が解放されるように構成されていることを特徴とする過冷却解放装置に係る。
本発明の第3の形態は、第2の形態において、前記接触部分において、第1の部材の少なくとも一部の面と第2の部材の少なくとも一部の面とが互いに摺擦可能に圧接されていることを特徴とする過冷却解放装置に係る。
本発明の第4の形態は、第2の形態において、第1の部材の少なくとも一部と第2の部材の少なくとも一部とが螺合機構に挟まれることにより、前記接触部分において、第1の部材の少なくとも一部の面と第2の部材の少なくとも一部の面とが摺擦可能に圧接されていることを特徴とする過冷却解放装置に係る。
なお、バイメタルでは、熱膨張係数が互いに異なる部材同士が、相対移動できないように接合されている。
本発明における「接合することなく」とは、異なる部材同士が相対移動できないほどに一体化していない状態を意味している。
「常時互いに接合することなく接触している」の「常時互いに・・・接触している」とは、蓄熱材中で別の部材に接触するように設計又は選択されている部材の、温度変化に伴う形状の変化が起こる時のみならず、その前後においても接触しているという意味であり、いかなる時、状況又は条件においても接触しているという意味に限定されない。
「摺動」とは摺れならが動くこと、「摺擦」とは、摺れながら擦れることをいう。「圧接」とは、圧力を加えられながら又は圧力が加えられることにより、接触していることをいう。
熱膨張係数が互いに異なる部材同士が、温度変化に伴い、接触部分において相対的に摺動すると、それが契機となって蓄熱材中で物理的刺激が作り出され、当該蓄熱材の過冷却状態が解放又は解除される。
このとき、熱膨張係数が互い異なる部材同士は、互いに接合していない別部材なので、部材の材質の組み合わせの選択肢が拡がり、それにより、種々ある蓄熱材の融点範囲により相応しく(より詳しくは、その蓄熱材の融点又はその近傍の温度において丁度又は好ましい程度で変形するように)各部材の素材を設計又は選択し易くなる。
従って、本発明によれば、物理的刺激を作り出すために必要な部材の設計又は選択が容易な、蓄熱材の過冷却状態を解放又は解除する技術(過冷却解放方法及び装置)を実現することができる。
また、このようにして出来上がる、蓄熱材の過冷却状態の解放又は解除の機構は、従来技術に比しても、十分簡素といえる。従って、本発明によれば、蓄熱材の過冷却状態を解放又は解除するための、構成がより簡素な機構を実現することができる。
以上は、本発明の各形態に共通する効果であるが、特定の形態に固有の効果は以下のとおりである。
本発明の第3の形態によれば、接触部分において、熱膨張係数が互いに異なる部材の各部材の少なくとも一部の面同士が互いに摺擦可能に圧接されているので、当該面同士の相対的な摺動が契機となって、蓄熱材中でより大きな物理的刺激が作り出され易くなる。
なお、第1の部材の少なくとも一部の面と第2の部材の少なくとも一部の面とが互いに摺擦可能に圧接する機構としては、例えば第1の部材と第2の部材を挟持する挟持機構がある。
また、この点は、本発明の第4の形態においても同様であるが、第4の形態によれば、両部材の接触が、螺合機構による挟み込み(例えば、螺合するボルトとナットとの間に、両部材を介挿させ、当該ボルトとナットを絞り込んで密着させるだけ)という簡単な手法により実現できるという長所がある。
[実施形態1]
本実施の形態に係る過冷却解放装置は、熱膨張係数の異なる部材の接触が、螺合機構による挟み込み、すなわち、螺合するボルトとナットとの間に、両部材を介挿させ、当該ボルトとナットを締め込んで密着させることにより構成される形態である。
図1は本実施の形態に係る過冷却解放装置1の説明図であり、ボルト2とナット3の間に、第1部材からなる第1平ワッシャ4と、第2部材からなる第2平ワッシャ5を交互に重ね、さらに第2部材からなるスプリングワッシャ6を入れて、ナット3を締めこんで第1平ワッシャ4と第2平ワッシャ5を密着させたものである。
図1(a)はナット3を締めこむ前の状態を示し、図1(b)はナット3を締め込んだ状態を示している。
なお、ナット3を締め込んで第1平ワッシャ4と第2平ワッシャ5を密着させる際には、各ワッシャ間に蓄熱材を挟みこむことが好ましく、そのため例えば液状の蓄熱材の中に過冷却解放装置を浸漬させ、浸漬させた状態でナット3を締め込む作業を実施するようにすればよい。
過冷却解放装置を構成する第1平ワッシャ4と第2平ワッシャ5を形成する部材に要求される材質としては、線膨張率が異なることである。そこで、第1平ワッシャ4、第2平ワッシャ5として利用できる部材の一例とそれらの線膨張率と共に表1に示す。
Figure 2010133688
表1から分かるように、SUS304(以下、「SUS」と表記する場合あり)と、ポリプロピレン(以下、「PP」と表記する場合あり)との間では、線膨張率の差が6×10-5/Kであり、大きな差異があるといえる。
また、SUS304と、ポリカーボネート(以下、「PC」と表記する場合あり)及びアルミナ(以下、「AO」と表記する場合あり)との間では、線膨張率の差が10×10-5/Kであり、大きな差異があるといえる。
したがって、例えば第1平ワッシャ5をポリプロピレン、ポリカーボネートまたはアルミナで形成し、SUS304で第2平ワッシャ4を形成することにより、過冷却解放装置を構成することができる。
表1に示した各部材によって第1平ワッシャ4、第2平ワッシャ5及びスプリングワッシャ6を形成し、これらの組み合わせによる過冷却解放の効果を確認する実験を行なったので、これを以下の実施例において説明する。
<臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAB)の水溶液>
蓄熱材として、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAB)の水溶液を使った実験を実施した。TBABは、準包接水和物を生成することが知られており、その潜熱を利用した蓄冷剤が知られている。なお、当該TBAB水溶液から生成するTBAB水和物の融点は12℃である。
具体的な実験方法は、40wt%濃度のTBAB水溶液を調整し、水溶液100gをガラスサンプル瓶に入れ、さらに、図1に例示された過冷却解放装置を1個入れ、蓋をして加熱と冷却を繰り返した。
加熱と冷却は、恒温槽を用い、それぞれ40℃と8℃に槽内温度を設定することにし、それぞれの温度において少なくとも1時間当該温度を保持して水溶液の状況を確認した。
なお、実験に用いた過冷却解放装置の構成は、以下に示す構成1〜3とした。
(A)構成1
第1平ワッシャ :ポリプロピレン(PP)
第2平ワッシャ :SUS304(SUS)
スプリングワッシャ:SUS304(SUS)
ボルト・ナット :SUS304(SUS)
ワッシャの装着態様:第1平ワッシャと第2平ワッシャの交互4枚重ね
(B)構成2
第1平ワッシャ :ポリカーボネート(PC)
第2平ワッシャ :SUS304(SUS)
スプリングワッシャ:SUS304(SUS)
ボルト・ナット :SUS304(SUS)
ワッシャの装着態様:第1平ワッシャと第2平ワッシャの交互4枚重ね
(C)構成3
第1平ワッシャ :アルミナ(AO)
第2平ワッシャ :SUS304(SUS)
スプリングワッシャ:SUS304(SUS)
ボルト・ナット :SUS304(SUS)
ワッシャの装着態様:第1平ワッシャと第2平ワッシャの交互4枚重ね
各構成の実験の結果を表2に示す
Figure 2010133688
ポリプロピレン(PP)の第1平ワッシャ4と、SUS304(SUS)の第2平ワッシャ5を4対組み合わせた“構成1”においては、加熱/冷却の繰り返し回数が300回に達した場合でも、冷却の際1時間以内に過冷却解除が確認され、TBAB水和物の生成が見られた。
また、ポリカーボネート(PC)の第1平ワッシャ4とSUS304(SUS)の第2平ワッシャ5の組み合わせである“構成2”、アルミナ(AO)の第1平ワッシャ4と、SUS304(SUS)の第2平ワッシャ5の組み合わせである“構成3”の場合でも、“構成1”と同様に、加熱/冷却の繰り返し回数が300回に達した場合でも、冷却の際1時間以内に過冷却解除が確認され、TBAB水和物の生成が見られた。
表1に示したように、線膨張率がSUS304に比較して、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アルミナはいずれも大幅に小さく、その差は6×10-5/K〜10×10-5/K程度の差がある。
この大きな線膨張率の差により、温度変化に伴い接触部分において第1平ワッシャ4と第2平ワッシャ5とが相対的に摺動し、それが契機となって蓄熱材中で物理的刺激が作り出され、当該蓄熱材の過冷却状態が解放又は解除されたといえる。
<比較例1>
上記の構成1〜3と比較するために以下に示す構成4〜6について同様の実験を行なった。
(D)構成4
第1平ワッシャ :ポリプロピレン(PP)
第2平ワッシャ :ポリカーボネート(PC)
スプリングワッシャ:SUS304(SUS)
ボルト・ナット :SUS304(SUS)
ワッシャの装着態様:第1平ワッシャと第2平ワッシャの交互4枚重ね
(E)構成5
第1平ワッシャ :ポリプロピレン(PP)
スプリングワッシャ:SUS304(SUS)
ボルト・ナット :SUS304(SUS)
ワッシャの装着態様:第1平ワッシャとスプリングワッシャの交互4枚
重ね
(F)構成6
第1平ワッシャ :SUS304(SUS)
スプリングワッシャ:SUS304(SUS)
ボルト・ナット :SUS304(SUS)
ワッシャの装着態様:第1平ワッシャの8枚重ね
各構成の実験の結果を表3に示す
Figure 2010133688
表3の構成4に示したポリプロピレン(PP)の第1平ワッシャ4とポリカーボネート(PC)の第2平ワッシャ5の組み合わせでは、加熱/冷却の繰り返しが10回までは、冷却の際1時間以内に過冷却解除が確認され、TBAB水和物の生成が見られたものの、50回を越えると過冷却解除が起きなくなった。
これは、表1に示したように、ポリプロピレンとポリカーボネートの熱膨張率の差が小さいことに原因があり、温度変化に伴う第1平ワッシャと第2平ワッシャの接触部分における相対的な摺動が十分でなかったためと考えることが出来る。
また、表3の構成5に示したポリプロピレン(PP)の第1平ワッシャとSUS304(SUS
)のスプリングワッシャの組み合わせでは、加熱/冷却の繰り返しが10回までは、冷却の際1時間以内に過冷却解除が確認され、TBAB水和物の生成が見られたものの、50回を越えると過冷却解除が起きなくなった。
これは、ポリプロピレンとSUS304の線膨張率には大きな差はあるものの、スプリングワッシャの構造から考えて、SUS304のスプリングワッシャとポリプロピレンの第1平ワッシャの接触面が小さく点接触のようになるため両者の密着性が十分でないことが原因であると考えられる。
また、表3の構成6に示したSUS304(SUS)の第1平ワッシャ4単独の場合では、加熱/冷却の際の過冷却解除が全く起きなかった。
これは、線膨張率の異なる部材を接触させていないためと考えられる。
<酢酸ナトリウムの水溶液>
次に、蓄熱剤として酢酸ナトリウムを用いた実験を行なった。
蓄熱材として、酢酸ナトリウムの水溶液を使った以外は、実施例1と同様である。酢酸ナトリウムは、水溶液から三水和物を生成することが知られており、その潜熱を利用した蓄熱剤が知られている。なお、当該酢酸ナトリウム水溶液から生成する酢酸ナトリウム三水和物の融点は57℃である。
具体的な実験方法は、50wt%濃度の酢酸ナトリウム水溶液を調整し、水溶液100gをガラスサンプル瓶に入れ、さらに、図1に例示された過冷却解放装置1を1個入れ、蓋をして加熱と冷却を繰り返した。
加熱と冷却は、恒温槽を用い、それぞれ80℃と30℃に槽内温度を設定することにし、それぞれの温度において少なくとも1時間当該温度を保持して水溶液の状況を確認した。
なお、実験に用いた過冷却解放装置1の構成は、前述した構成1、5、6とした。
各構成の実験結果を表4に示す。
Figure 2010133688
ポリプロピレン(PP)の第1平ワッシャ4と、SUS304(SUS)の第2平ワッシャ5を4対組み合わせた“構成1”においては、加熱/冷却の繰り返し回数が50回に達した場合でも、冷却の際1時間以内に過冷却解除が確認され、酢酸ナトリウム三水和物の生成が見られた。
加熱/冷却の繰り返し回数が300回に達した時点では、過冷却解除の可能性が減り、冷却の際に過冷却解除が起きたり起きなかったりしたが、過冷却解除は約半分の確率で起きた。
これは、前述したように、第1平ワッシャ4のポリプロピレン(PP)と、第2平ワッシャ5のSUS304(SUS)との大きな線膨張率の違いにより、温度変化に伴い第1平ワッシャと第2平ワッシャの接触部分において相対的に摺動が生じ、それが契機となって蓄熱材中で物理的刺激が作り出され、当該蓄熱材の過冷却状態が解放又は解除されたといえる。
<比較例2>
一方、表4の構成5に示したポリプロピレン(PP)の第1平ワッシャ4とSUS304(SUS)のスプリングワッシャの組み合わせでは、加熱/冷却の繰り返しが10回までは、冷却の際1時間以内に過冷却解除が確認され、TBAB水和物の生成が見られたものの、50回を越えると過冷却解除が起きなくなった。
これは、前述の通り、ポリプロピレンとSUS304の線膨張率には大きな差はあるものの、スプリングワッシャの構造から考えて、SUS304のスプリングワッシャとポリプロピレンの平ワッシャの密着性が十分でないことが原因であると考えられる。
また、表4の構成6に示したSUS304(SUS)の平ワッシャ単独の場合では、加熱/冷却の際の過冷却解除が全く起きなかった。
これは、前述の通り、線膨張率の異なる部材を接触させていないためと考えられる。
[実施の形態2]
本発明の他の実施形態を示す。本実施の形態に係る過冷却解放装置においては、熱膨張係数の異なる部材を接触させる手段が、実施の形態1で示した螺合するボルトとナットとの間に両部材を介挿させる形態に代えて、リベットにより両部材を挟み込んで密着させる形態にしたものである。以下、本実施の形態の詳細を説明する。
図2は本実施の形態に係る過冷却解放装置11の説明図である。本実施の形態に係る過冷却解放装置11は、リベット10に、第1部材からなる第1平ワッシャ7と、第2部材からなる第2平ワッシャ8を交互に重ね、さらに第2部材からなるスプリングワッシャ9を入れて、リベット10を締めこんで第1平ワッシャ7と第2平ワッシャ8を密着させたものである。
図2(a)はリベット10を締めこむ前の状態を示し、図2(b)はリベット10を締め込んだ状態を示している。
なお、リベット10を締め込んで第1平ワッシャ7と第2平ワッシャ8を密着させる際には、各ワッシャ間に蓄熱材を挟みこむことが好ましく、そのため例えば液状の蓄熱材の中に過冷却解放装置を浸漬させ、浸漬させた状態でリベット10を締め込む作業を実施するようにすればよい。
表1に示した各部材によって第1平ワッシャ7、第2平ワッシャ8及びスプリングワッシャ9を形成し、これらの組み合わせによる過冷却解放の効果を確認する実験を行なったので、これを以下の実施例3において説明する。
<臭化トリ-n-ブチル-n-ペンチル-アンモニウム(TBPAB)の水溶液>
蓄熱材として、臭化トリ-n-ブチル-n-ペンチル-アンモニウム(TBPAB)の水溶液を使った実験を実施した。TBPABは、準包接水和物を生成し、その潜熱を利用して蓄冷剤として利用することができる。なお、当該TBPAB水溶液から生成するTBPAB水和物の融点は6℃である。
具体的な実験方法は、34wt%濃度のTBPAB水溶液を調整し、水溶液100gをガラスサンプル瓶に入れ、さらに、図2に例示された過冷却解放装置を1個入れ、蓋をして加熱と冷却を繰り返した。
加熱と冷却は、恒温槽を用い、それぞれ40℃と1℃に槽内温度を設定することにし、それぞれの温度において少なくとも1時間当該温度を保持して水溶液の状況を確認した。
なお、実験に用いた過冷却解放装置の構成は、以下に示す構成7〜8とした。
(G)構成7
第1平ワッシャ :ポリプロピレン(PP)
第2平ワッシャ :SUS304(SUS)
スプリングワッシャ:SUS304(SUS)
リベット :SUS304(SUS)
ワッシャの装着態様:第1平ワッシャと第2平ワッシャの交互4枚重ね
(H)構成8
第1平ワッシャ :ポリカーボネート(PC)
第2平ワッシャ :SUS304(SUS)
スプリングワッシャ:SUS304(SUS)
リベット :SUS304(SUS)
ワッシャの装着態様:第1平ワッシャと第2平ワッシャの交互4枚重ね
各構成の実験の結果を表5に示す
Figure 2010133688
ポリプロピレン(PP)の第1平ワッシャ7と、SUS304(SUS)の第2平ワッシャ8を4対組み合わせた“構成7”、およびポリカーボネート(PC)の第1平ワッシャ7とSUS304(SUS)の第2平ワッシャ8を組み合わせた“構成8”においては、加熱/冷却の繰り返し回数が300回に達した場合でも、冷却の際1時間以内に過冷却解除が確認され、TBPAB水和物の生成が見られた。
これは、前述したように、線膨張率がSUS304に比較して、ポリプロピレン、ポリカーボネートはいずれも大幅に小さく、この大きな線膨張率の差により、温度変化に伴い接触部分において第1平ワッシャ7と第2平ワッシャ8とが相対的に摺動し、それが契機となって蓄熱材中で物理的刺激が作り出され、当該蓄熱材の過冷却状態が解放又は解除されたといえる。
<比較例3>
上記の構成7及び8と比較するために以下に示す構成9について同様の実験を行なった。
(I)構成9
第1平ワッシャ :SUS304(SUS)
スプリングワッシャ:SUS304(SUS)
リベット :SUS304(SUS)
ワッシャの装着態様:第1平ワッシャの8枚重ね
実験の結果を前述の表5に示す
表5の構成9に示したSUS304(SUS)の第1平ワッシャ単独の場合では、加熱/冷却の際の過冷却解除が全く起きなかった。
これは、線膨張率の異なる部材を接触させていないためと考えられる。
本発明の一実施の形態に係る過冷却解放装置の模式図である。 本発明の他の実施の形態に係る過冷却解放装置の模式図である。
符号の説明
1 過冷却解放装置
2 ボルト
3 ナット
4 第1平ワッシャ
5 第2平ワッシャ
6 スプリングワッシャ
7 第1平ワッシャ
8 第2平ワッシャ
9 スプリングワッシャ
10 リベット
11 過冷却解放装置

Claims (4)

  1. 蓄熱材の過冷却状態を解放する過冷却解放方法であって、第1の部材の少なくとも一部と第1の部材と熱膨張係数が異なる第2の部材の少なくとも一部とが常時互いに接合することなく接触している接触部分を蓄熱材中に設け、第1の部材と第2の部材との間の熱膨張係数の違いに起因する、前記接触部分における両部材間の相対的な摺動を前記蓄熱材の過冷却状態の解放の契機とすることを特徴とする過冷却解放方法。
  2. 蓄熱材の過冷却状態を解放する過冷却解放装置であって、第1の部材と、第1の部材と熱膨張係数が異なる第2の部材と、第1の部材の少なくとも一部と第2の部材の少なくとも一部とが常時互いに接合することなく接触している接触部分とを蓄熱材中に備え、第1の部材と第2の部材との間の熱膨張係数の違いに起因する、前記接触部分における両部材間の相対的な摺動を契機として、前記蓄熱材の過冷却状態が解放されるように構成されていることを特徴とする過冷却解放装置。
  3. 前記接触部分において、第1の部材の少なくとも一部の面と第2の部材の少なくとも一部の面とが互いに摺擦可能に圧接されていることを特徴とする請求項2に記載の過冷却解放装置。
  4. 第1の部材の少なくとも一部と第2の部材の少なくとも一部とが螺合機構に挟まれることにより、前記接触部分において、第1の部材の少なくとも一部の面と第2の部材の少なくとも一部の面とが摺擦可能に圧接されていることを特徴とする請求項2に記載の過冷却解放装置。
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