JP2010095889A - 張弦梁構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】張弦梁の共振特性を改善し得る有効適切な張弦梁構造を提供する
【解決手段】上弦材1と下弦材2と束材3とにより構成される張弦梁4に対して、その共振特性を改善するための付加振動系8を設置する。付加振動系8を慣性質量ダンパー5と付加バネ6と付加減衰7により構成して、慣性質量ダンパー5を束材3と並列に設置し、付加バネ6を慣性質量ダンパー5と直列に設置し、付加減衰7を慣性質量ダンパー5または付加バネ6と並列に設置する。付加振動系8の固有振動数を主振動系としての張弦梁の固有振動数に同調させる。束材3に直列にバネ9を設置することが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は上弦材と下弦材と束材とにより構成される張弦梁構造に関する。
大スパン架構を構成する構造形式の1つに張弦梁構造がある。これは、梁本体としての上弦材(圧縮材)の下部に下弦材としてケーブル(引張材)を架設し、それら上弦材と下弦材とを束材を介して一体化したもので、トラス構造よりも小さな断面でローコストに大スパンを実現できることから、たとえば大規模なドーム構造物の屋根架構として実用化されている。
しかし、従来一般の張弦梁構造は鉛直剛性が小さく、たとえば30mスパン程度の屋上広場や歩道施設に適用するとその固有振動数が約2Hzになり、歩行時の振動障害が生じやすいという問題がある。長期応力に対する撓みはキャンバー(むくり)で対応できるが、振動問題に対しては構造減衰が小さいため対応が困難であった。
張弦梁構造における鉛直振動を抑制するための手法として、例えば特許文献1に示されているようなTMD(Tuned Mass Damper)を設置することが考えられる。
また、特許文献2には、本体梁に対して付加梁を設置してそれらの間に回転慣性質量ダンパーを介装することにより、小質量の回転錘により得られる大きな回転慣性質量を付加質量として利用してTMDとして機能させる構成の振動低減機構が提案されている。
さらに、特許文献3には、歩道橋等の大スパン構造に対する制振対策として補助質量をトグル機構によって増幅させるシステムについての記載がある。
特開昭63−156171号公報 特開2008−115552号公報 国際公開2005/116481号
特許文献1に示されるような従来一般のTMDを張弦梁を対象とする振動減衰機構として利用する場合、大きな応答低減効果を得るためにはスパン中央部に大きな付加質量を設ける必要があり、これによって生じる曲げ応力増加やTMD装置のコストを考慮すると現実的ではない。
特許文献2に示されるような回転慣性質量ダンパーによる振動低減機構は実際の付加質量を軽減できるが、実質的に梁を二重(ダブル)に設ける必要があるので、そのために躯体全体が複雑化してしまうし、付加梁の設置スペースを確保するために通常は階高を大きくしなければならないから一般的な建物には適用し難い。
特許文献3には、回転慣性質量ダンパーではなく付加質量をもつトグル機構による変形増幅についての理論が記載されているに過ぎず、それを実際の梁に組み込む場合の具体的な構成についての開示はなく、TMDとしての同調条件も示されておらず、直ちに実用化し得るものでもない。
上記事情に鑑み、本発明は主構造としての張弦梁の共振特性を改善し得る有効適切な張弦梁構造を提供すること目的としている。
本発明は上弦材と下弦材と束材とにより構成される張弦梁に対して、該張弦梁の共振特性を改善するための付加振動系を設置してなる張弦梁構造であって、前記付加振動系を慣性質量ダンパーと付加バネと付加減衰により構成して、前記慣性質量ダンパーを前記束材と並列に設置し、前記付加バネを該慣性質量ダンパーと直列に設置し、前記付加減衰を前記慣性質量ダンパーまたは前記付加バネと並列に設置し、前記付加振動系の固有振動数を主振動系としての前記張弦梁の固有振動数に同調させてなることを特徴とする。本発明においては前記束材に直列にバネを設置することが好適である。
本発明によれば、主構造としての張弦梁に対して、慣性質量効果を利用した付加振動系を付加することにより、その付加振動系がTMD機構として機能して主構造に対する優れた制振効果が得られ、したがってローコストに大スパンを構築できる張弦梁本来のメリットを損なうことなくその共振特性を大幅に改善することができる。
特に、慣性質量ダンパーと付加バネを直列した付加振動系によりTMD機構を構成するので、小質量の回転錘によって大きな付加質量効果が得られるとともに、付加バネを調節することで下弦材の剛性によらず広範な振動数に同調させることができる。
図1に本発明の実施形態である張弦梁構造の概要を示す。符号1は上弦材、2は下弦材、3は束材であり、これらにより主構造(主振動系)としての張弦梁4が構成されている。
本例における上弦材1はH形鋼からなり、これは多少のむくりを設けても良いが全長にわたってほぼ水平に架設すれば良く、従来一般の張弦梁のようにアーチ形状とする必要はない。
下弦材2としてはロッド(丸鋼)または平鋼を使用し、その両端を上弦材1の両端に対してピン接合して全長にわたって下に凸の折れ線形状(図1(a)では扁平V状)に架設し、その折れ点位置に束材3を配置する。なお、図1(c)に示すように折れ点を2個所(ないしそれ以上の複数個所)として、それぞれの折れ点位置に束材3を設置しても良い。
束材3は鋼管等の鋼材からなるものであるが、図示しているようにこの束材3に直列にバネ9(たとえば皿バネ)を介装しても良く、その場合は束材3とバネ9との合成バネ剛性を束材3の剛性k0として評価する(バネ9を設けない場合には束材3自体の剛性をk0とする)。
本発明では上記の張弦梁4に対して、慣性質量ダンパー5、付加バネ6、付加減衰7からなる付加振動系8を付加し、その付加振動系8を主振動系としての張弦梁4に対するTMD機構として機能させるものである。なお、(c)に示すように複数の束材3を有する場合にはそれぞれの束材3の位置に付加振動系8を設置することを原則とするが、一部を省略(たとえば3個所ある場合には中央を省略)することもできる
慣性質量ダンパー5としては特許文献2に示されているようなボールねじ機構によって回転錘(フライホイール)を回転させる形式のものが好適に採用可能であり、それを束材3と並列に設置する。
付加バネ6は慣性質量ダンパー5と直列に設置する。
付加減衰7としてはオイルダンパーや粘性ダンパー等の粘性減衰または摩擦減衰を使用し、これを図示例のように慣性質量ダンパー5と並列に設置するか、あるいは付加バネ6と並列に設置するか、もしくはその双方に設置すれば良い。
そして、慣性質量ダンパー5と付加バネ6と付加減衰7からなる付加振動系8の固有振動数f0を、上弦材1と下弦材2と束材3からなる主構造(主振動系)としての張弦梁4の固有振動数f1に同調させる。
すなわち、図2に示すように、上弦材1の剛性k1、下弦材2の剛性k2、束材3の剛性k0(上述のように束材3にバネ9を直列に設置した場合にはそれらの合成バネ剛性をk0とする)、張弦梁4を含む床梁の有効質量m、慣性質量ダンパー5による慣性質量ψ0、付加減衰7の減衰係数c0(単に付加減衰c0という)、付加バネの剛性k00(単に付加バネk00という)とし、慣性質量ダンパー5の上下端に逆向きの静的荷重Pが作用したときの上下端間の鉛直変位δ(上弦材の変位δ1+下弦材の変位δ2)とした場合、同調条件より次式の関係を満足するように各諸元を設定する。
Figure 2010095889
なお、上弦材1の剛性k1が下弦材2の剛性k2よりも充分に小さい場合や、さらに束材3の剛性k0よりも充分に小さい場合には、上式における ψ0/m は次式のいずれかで近似しても良い(具体的な演算過程については図2参照)。
Figure 2010095889
Figure 2010095889
上記構造では、全ての要素を組み立てた後に束材3を伸張させることにより、下弦材2にプレストレス(引張力)を導入でき、それにより通常の張弦梁と同様に下弦材2が束材3を介して上弦材1を押し上げるように作用するとともに、下弦材2が撓んだり振動時に座屈したりすることを防止できる。束材3には、長期応力として、下弦材2の引張力に釣り合う圧縮力が作用する。
そして、本発明では、そのような張弦梁4に対して慣性質量ダンパー5と付加バネ6を直列配置した付加振動系8を付加したことにより、その付加振動系8がTMD機構として機能する制振構造となる。
この場合、慣性質量ダンパー5に内蔵される回転錘(フライホイール)の実際の質量はそれにより得られる慣性質量ψ0の数百分の一以下と軽量で済むから、大きな付加質量を必要とする通常のTMD機構を設置する場合のように主構造としての張弦梁4に対して大きな負荷がかかることはない。
また、常時の鉛直荷重(自重)に対しては、束材3から上弦材1に上向きの力が作用するので、鉛直方向撓みが大幅に抑制された張弦梁構造となり、上弦材1だけの場合と比較すると桁違いに撓みが小さくなる。
なお、下弦材3の剛性k2が大きい場合、上式中の P/δ には付加バネk00と束材3の剛性k0が大きく寄与するから、それらの合成バネ剛性と慣性質量ψ0により付加振動系8が構成される。つまり、慣性質量ダンパー5と付加バネ6を直列に設置することで、下弦材2の剛性が大きくてもTMDとして有効に機能する構造となる。
この点に関し、特許文献3に示されるような構造では、下弦材の剛性が大きいとTMDのような同調質量ダンパー制振効果が得られないが、本発明によれば上記のように付加バネk00や束材剛性k0を調整することで任意の振動数に同調させることが可能である。
「設計例」
本発明の張弦梁構造の具体的な設計例とその性能について説明する。
スパン30mの張弦梁4を対象とする。床荷重(質量)は構造体を含め1.1tonf/m2とする。張弦梁4の支配幅(間隔)は5.0mとし、慣性質量ダンパー5は中央1個所に設置するものとする。
等価な振動モデルにおいて、構造体有効質量m=1.1×5.0×30/2=82.5ton、
上弦材1となるH形鋼床梁は、H-900×300×16×28を使用し、断面積A0=240cm2、断面二次モーメントI=404000cm4
床スラブと合成効果による割増を考慮して、A=610cm2、J=570000cm4
構造床梁の長期鉛直撓みは中央部で48.5cmより、k1=1.7tonf/cm=1.7MN/m、
下弦材2(斜材)はFB-30×230の平鋼を2枚使用し、ライズ(高低差)を300cmとすると、k2=14.6tonf/cm=14.3MN/m=8.4k1
束材3としてP-216.3φ×8.2を使用し、A=53.6cm2、軸剛性k=375tonf/cm=368MN/m、束材3の端部にバネ9(皿バネ)を設置し、その合成バネ剛性k0=18MN/m=10.6k1とする。
慣性質量ダンパー5と直列に設置する付加バネ6はバネ剛性k00=3.6MN/m=2.1k1とする。
以上の諸元から慣性質量を求めるとψ0=0.31m=26ton、
構造床梁の1次固有振動数はf1=1.72Hz、固有角振動数はω0=2πf1=10.8rad/sec、
付加振動系8の減衰は1次振動数でh=0.15として、c0=2hω0ψ0=84kN・sec/m=86kgf/kine、構造床梁の構造減衰は1次に対してh=0.01とする。
上記設計例を振動モデルとして梁中央部の変位(振幅)応答倍率を求めた結果を図3(a)に示す。縦軸の応答倍率は張弦梁4の中央に加振力が静的に作用したときの撓みに対する比であり、横軸は1次固有振動数f1に対する加振入力振動数fの比を示す。
「制振あり」が上記設計例の場合であり、それとの比較のために、慣性質量ダンパー5を省略したものを「制振なし・束材+皿バネ」とし、さらにバネ(皿バネ)9も省略して束材3を上弦材1中央部で連結したもの(このときの固有振動数は2.18Hzとなる)を「制振なし・束材のみ」として併せて示す。
図3(a)に示されるように、本発明(制振あり)によれば共振点近傍での応答を90%も低減できる。また、束材3をバネ9を使用せず直接上下弦材に接合した場合(制振なし・束材のみ)は張弦梁の剛性がやや増加し変位振幅がその分だけ低減するが、共振点がやや高振動数側にシフトするだけで大きな応答低減効果は期待できない。
なお、張弦梁4の剛性のうち上弦材1と下弦材2の寄与は k1:k2=1:8.4 であり、下弦材2のトラス効果により張弦梁4の鉛直剛性が大幅に増大していることがわかる。常時鉛直荷重における撓みを効果的に低減するためには下弦材2による剛性寄与が不可欠であるが、束材3の剛性を大きくすると束材3両端間の相対変位が小さくなり「相対変形を利用してエネルギー吸収する制振機構」を組み込めなくなってしまう。一方、束材3の剛性を小さくしてそれにダンパーを並列すれば制振機構となるが、制振効果を上げるために下弦材2の効きを大幅に低下させることになり、張弦梁4の撓みが増大して長期荷重に対して構造部材としての合理的な性能を確保できなくなってしまう。
そこで、上記設計例のように束材3に直列するバネ9(特に皿バネが好適である)を設置して、張弦梁4としての性能を確保しつつ束材3の鉛直剛性をやや低下させたうえで、これに「慣性質量ダンパーと付加バネを直列したTMD機構」を並列配置する制振機構とすれば、そのTMD機構を主構造に同調させることにより慣性質量ダンパー5の振幅は束材3に直列に設置したバネ9の振幅が拡大されたものとなり、下弦材2の剛性が大きくてもこの制振機構で効果的に振動エネルギーを吸収して応答低減できるものとなる。
なお、束材3にバネ9を設置することによって張弦梁としての剛性がやや低下して撓みが増大するが、これに対してはキャンバー(むくり)で容易に対応できる。
また、バネ9を含めた束材3の鉛直剛性k0は下弦材2の鉛直剛性k2の0.5〜5倍が好適である。k0が小さくなると下弦材2の効きが低下して上弦材1のみの性能に近づき、張弦梁4としての鉛直剛性が低下してしまう。一方、k0がもっと大きくなると張弦梁としての鉛直剛性は増加するものの、ダンパー部分の変形が小さくなって制振機構で吸収するエネルギーが減り、応答低減効果が小さくなってしまう。したがってk0を上記の範囲で適切な値に設定することが肝要といえる。
いずれにしても、本発明では一般的なTMDよりも大きな慣性質量を付与できるため、構造諸元の変動に鈍感な特性を持っており、剛性や床荷重の変動に対して再調整の必要がないという利点がある。
以上の検討は床上からの加振に対する応答であったが、本発明は地震時の上下動も大幅な応答低減が可能となり、その場合の解析結果(張弦梁両端から上下動加振したときのスパン中央部での応答倍率)を図3(b)に示す。縦軸の応答倍率は、両端の加振振幅に対するスパン中央の変位振幅を示す。
床上からの加振モデルで同調させているため、地震入力に対してはわずかに同調がずれているが、床上加振の場合と同様に「制振なし」の場合と比較して共振点近傍で89%もの大幅な応答低減できることがわかる。
「時刻例応答解析による検討」
上記設計例の振動モデルに対して1人歩行時の加振入力を与えた時の応答を検討する。検討用の入力波形を図4に示す。これは(a)に示すように加振力が約30kgf=300Nであり、そのフーリエスペクトルは(b)に示すように2Hz近傍が大きく卓越しているものである。
図5に上記加振入力を与えた場合の梁中央の応答変位を示す。本発明の制振により最大応答変位が100μから88μへと0.88倍に低減し、10秒以降の後揺れが急峻に収束することが分かる。
図6に梁中央の応答加速度を示す。本発明の制振により最大応答加速度が2.1galから1.7galへと0.82倍に低減し、10秒以降の後揺れが急峻に収束するが、制振しないと揺れがなかなか収束しないことが分かる。
上記の場合よりも少し早く歩き、歩調が1割増加(1秒あたりの歩数が増加)した場合を想定して、加振波形の時間間隔を1割短くしてさらに検討を行う。
図7にその場合の加振入力波形を示す。
図8に梁中央の応答変位を示す。「制振なし・束材のみ」の場合に共振状態となるが、「制振なし・束材+皿バネ」と「制振あり(本発明)」は1次固有振動数がずれているので共振状態とはならない。制振により最大応答変位が279μから52μへと0.19倍に低減し、10秒以降の後揺れが急峻に収束することが分かる。
図9に梁中央の応答加速度を示す。本発明の制振により最大応答加速度が5.2galから1.4galへと0.28倍に低減し、10秒以降の後揺れが急峻に収束するが、制振しないと揺れがなかなか収束しないことが分かる。
逆に、少し遅く歩き、歩調が1割減少(1秒あたりの歩数が減少)した場合を想定して、加振波形の時間間隔を1割長くしてさらに検討を行う。
図10にその場合の加振入力波形を示す。
図11に梁中央の応答変位を示す。「制振なし・束材+皿バネ」に共振状態となるが、「制振なし・束材のみ」の場合には1次固有振動数がずれているので共振状態とはならない。「制振なし・束材+皿バネ」と「制振あり(本発明)」を比較すると、固有振動数がほぼ同じながら制振による最大応答変位が523μから102μへと0.19倍に低減し、11秒以降の後揺れが急峻に収束することが分かる。
図12に梁中央の応答加速度を示す。本発明の制振により最大応答加速度が6.4galから2.1galへと0.33倍に低減し、11秒以降の後揺れが急峻に収束するが、制振しないと揺れがなかなか収束しないことが分かる。
なお、日本建築学会の「建築物の振動に関する居住性能評価指針」にある鉛直振動に関する性能評価曲線にこの結果をプロットすると図13に示すようになり、制振により一般的な事務所ビルでの性能(V−70)を満足する程度に納まることが分かる。このように、本発明の制振機構を付加することで「加振振動数によらず、共振して過大な応答を生じることのない」張弦梁が実現できる。
次に、上記設計例の振動モデルに上下動加振入力(地震)を与えたときの応答を検討する。検討用の地震動として図14に示すようにやや長周期成分の多いHACHINOHEを梁両端から上下動入力する。そのフーリエスペクトルは(b)に示すように1〜4Hzのパワーが大きいものである。
図15に梁中央の応答変位を示す。「制振なし・束材のみ」「制振なし・束材+皿バネ」「制振あり(本発明)」の順に、最大応答変位が50mmから33mm、14mmへと大幅に低減する。また、制振により30秒以降の後揺れが急峻に収束すること、大きな振幅の継続時間も大幅に短縮されることが分かる。
図16に梁中央の応答加速度を示す。「制振なし・束材のみ」「制振なし・束材+皿バネ」「制振あり(本発明)」の順に、最大応答加速度が663galから400gal、217galへと大きく低減し、30秒以降の後揺れが急峻に収束すること、大きな加速度の継続時間が大幅に短縮されることがわかる。
なお、以上の解析は線形応答解析であり、その解析に用いた設計例の振動モデルは非線形部材を使用していないので応答は入力に比例したものとなり、したがって上記の加振入力が1/10以下の中小地震であっても効果的に応答低減できる。
本発明の効果を以下に列挙する。
(1)ローコストに大スパンを構築できる張弦梁のメリットを保持したまま、その共振特性を大幅に改善できる。
(2)束材にプレストレス(圧縮力)を与えることで従来の張弦梁と同じ応力分布となり、従来と同等の構造部材断面で張弦梁を構築できる。このため、付加振動系として付加する制振機構(TMD機構)以外の構造部材は従来コストと同等で済む。
(3)束材に直列にバネを設置することにより、下弦材の剛性が大きくてもこの制振機構で効果的に振動エネルギーを吸収して応答低減できる。この場合、長期鉛直撓みが従来よりやや増加するが、上記プレストレスによって梁にむくりを与えることで問題にならない。
(4)TMD機構を追加することで共振時の応答倍率を極めて小さくすることができ、加振振動数によらず過大な応答が生じない張弦梁となる。
(5)束材と並列に「慣性質量ダンパーと付加バネを直列したTMD機構」を設けるので、上弦材や下弦材の剛性の如何によらずTMD機構を同調させることができ、特に付加バネを調節することで広範な振動数に同調させることができる。したがって、上弦材および下弦材がどんな部材であってもTMDとして機能させることが可能になり、大きな応答低減効果が得られる。
(6)従来のTMD機構と比較して小形軽量ながら大幅に応答低減できる機構である。特に回転慣性質量を利用することにより実際の回転錘(フライホイール)の質量の数百倍〜千倍以上の慣性質量が得られ、それが従来のTMDの付加質量と同じに機能することから、従来のTMDでは実現できなかった大きな付加質量効果を得ることができる。また、回転錘を増減(回転錘の回転慣性モーメントを調整)することで回転慣性質量を調整することもできる。
(7)従来のTMDでは付加質量を構造物の1〜3%程度しか与えることが現実的にできなかったが、本発明によれば回転慣性質量の利用により付加質量を構造物の10〜50%以上とすることも容易に実現できるので、風や交通振動のような小振幅だけでなく地震時の応答低減にも利用できる。
(8)設置後に構造体の剛性が変化したり、床荷重が変動したりした場合でも、再度同調作業しなくても応答低減効果を維持できる。したがって例えば高架橋に適用すれば、疲労特性を改善し、メンテナンス費用を縮減できる。
(9)張弦梁の構造部材断面を増大させても共振点が高振動数側に移動するだけだが、本発明によれば大きな減衰性能を付与できるので、断面を上げなくてもはるかに大きな応答低減が図れる。
(10)全てローコストな部品で構成できるので、大スパン床梁に対する従来の振動低減対策に比較してローコストでより大きな振動抑制ができ、コストパフォーマンスに優れた機構である。
(11)慣性質量ダンパーに作用する反力(負担力)は加振力より小さく、容易に対応できる。
(12)構造体にTMDを設置する場合にはこの重量が構造躯体への負荷となるが、本発明ではTMD機構の重量は従来のTMDより遙かに小さく、本体床梁に負荷とならない。
(13)インパクトダンパーと異なり、応答低減効果は振幅に依存しない。そのため、微振動から大振幅まで幅広く対応できる。
(14)下弦材は平鋼やロッドをそのまま使用できるので省スペースかつローコストであるし、下弦材には長期荷重(自重)により引張力が導入されるので座屈しない。
(15)共振問題を生じている既存床梁に本発明を適用すれば共振問題を解消できる。
本発明の実施形態を示すもので、張弦梁構造を示す概略構成図である。 同、付加振動系の同調についての説明図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析に用いる加振入力波形を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析に用いる加振入力波形を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析に用いる加振入力波形を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果による性能評価を示す図である。 同、応答解析に用いる加振入力波形を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。 同、応答解析結果を示す図である。
符号の説明
1 上弦材
2 下弦材
3 束材
4 張弦梁(主構造、主振動系)
5 慣性質量ダンパー
6 付加バネ
7 付加減衰
8 付加振動系(TMD機構)
9 バネ(皿バネ)

Claims (2)

  1. 上弦材と下弦材と束材とにより構成される張弦梁に対して、該張弦梁の共振特性を改善するための付加振動系を設置してなる張弦梁構造であって、
    前記付加振動系を慣性質量ダンパーと付加バネと付加減衰により構成して、前記慣性質量ダンパーを前記束材と並列に設置し、前記付加バネを該慣性質量ダンパーと直列に設置し、前記付加減衰を前記慣性質量ダンパーまたは前記付加バネと並列に設置し、
    前記付加振動系の固有振動数を主振動系としての前記張弦梁の固有振動数に同調させてなることを特徴とする張弦梁構造。
  2. 請求項1記載の張弦梁構造であって、
    前記束材に直列にバネを設置してなることを特徴とする張弦梁構造。
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