JP2010059078A - 神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写調節用組成物 - Google Patents

神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写調節用組成物 Download PDF

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伸介 松崎
Masaya Toyama
正彌 遠山
Takaryo Kuwahara
隆亮 桑原
Hiroaki Okuda
洋明 奥田
Natsuko Kumamoto
奈都子 熊本
Shingo Miyata
信吾 宮田
Ryota Hashimoto
亮太 橋本
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Abstract

【課題】Dysbindinの機能に基づく、精神疾患の予防及び/又は治療に有用である組成物を提供すること。
【解決手段】Dysbindinの結合因子としてnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)を見出し、DysbindinとNFYBとの複合体によって、神経伝達及び/又はシナプス形成に関連するmyristoylated alanine-rich C-kinase substrate(MARCKS)の転写が抑制されることに基づく、ディスビンディン(Dysbindin)及び核転写因子Yベータ〔nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)〕を含有してなる、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写調節用組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写調節用組成物に関する。より詳しくは、ディスビンディン(Dysbindin)と核転写因子Yベータ〔nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)〕とを含む複合体を含有するものであり、該複合体によって神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写が調節される、精神疾患の予防及び/又は治療に用いられる組成物に関する。また、被検物質がDysbindinとNFYBとの結合活性を変化させ得るか否かを評価することによる被検物質のスクリーニング方法、DysbindinとNFYBとを含む複合体を診断マーカーとして生体試料におけるマーカーの存在量を測定することによる統合失調症発症の予測方法、ならびに前記予測方法に用いられるキットに関する。
現在の日本社会において、心の問題は非常に注目を集めている。子供を含む若年層においては自閉症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、引きこもり、キレル等、労働者や高齢者を含む大人においても気分障害による自殺、労働力の低下・損失等が非常に大きな問題となっており、早急な対応が求められている。さらに、これらの精神疾患は人口の約10%〔うつ病を中心とした気分障害:7〜8%、統合失調症:1〜2%、自閉症(及び関連疾患):1%、ADHD:学齢期3〜9%〕が罹患し、日本における入院受療率の第一位(259人/人口10万人)を占めると報告されている。これらの問題を是正するには、早期診断、リスクマネージメントによる発症抑制、治療、的確な治療効果の判定等が非常に重要となる。
現在行われている精神疾患診断方法は、DSM−IV等の精神疾患診断基準に基づく行動異常をもとにした診断が中心である。また、治療においても行動異常・言動異常等に対する対処療法であり、それら症状の変化を元に、治療の開始又は終了時期を決定している。またさらに、治療効果の判定も、行動変化を指標として行われている。
一方、精神疾患関連遺伝子として、dystrobrevinと相互作用するタンパク質として同定されたDysbindinは、統合失調症と関連することが報告されている(非特許文献1、2参照)。また、非特許文献3においては、Dysbindinの発現が、統合失調症患者において減少することが報告されており、これらの発見により、Dysbindinの機能不全は、統合失調症に関係があることが示唆されている。
Straub RE, Jiang Y, MacLean CJ, Ma Y, Webb BT, Myakishev MV, et al.、Am. J. Hum. Genet.、2002、71、p337-348 Numakawa T, Yagasaki Y, Ishimoto T, Okada T, Suzuki T, Iwata N, et al.、Hum. Mol. Genet.、2004、13、p2699-2708 Talbot K, Eidem WL, Tinsley CL, Benson MA, Thompson EW, Smith RJ, et al.、J. Clin. Invest.、2004、113(9)、p1353-63
従来の精神疾患の診断方法や治療効果の判定は、行動変化観察等の医師の主観的な判断によるところが大きい。そのため、診断が遅くなることにより治療開始が遅れ病気が長期化すること、さらには根本的な治療薬が存在しないため再発を繰り返すこと、また、投薬を中止させるタイミング、社会復帰させるタイミングを図ることが難しいことから、いたずらに治療を長引かせたり、逆に投薬中止後に再発したりすること等の問題がある。
また、精神疾患の治療に現在用いられている薬剤は、症状に対する対処療法的なものに過ぎないことから、同一の精神疾患であっても各薬剤による効果の個人差は大きく、当初の意図に反して治療途中に薬剤や投与量を変更することも少なくない。一方で、早期に的確な診断と治療が施されれば、薬剤の常用なしに社会生活を送るまでの回復が認められるケースもあることから、早期の、かつ的確な診断・治療への期待が高まっている。
そこで、本発明者らは、統合失調症を中心とした精神疾患を科学的見地から鑑み、これまで行われてきた「症状ベースでの分類」から「分子レベルでの分類」に変更することを提唱し、分子メカニズムに基づいた精神疾患の診断基準及び/又は治療基準の確立を目指した。Dysbindinは統合失調症と関連することが報告されているが、その発症メカニズムは未だ不明であることから、本発明者らは、その発症メカニズムに着目した。
本発明の課題は、Dysbindinの機能に基づく、精神疾患の予防及び/又は治療に有用である組成物を提供することにある。また、前記機能に基づいて、精神疾患の予防及び/又は治療に有用である物質をスクリーニングする方法、及び精神疾患発症の予測方法、さらには該予測方法に用いられるキットを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、Dysbindinの結合因子としてnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)を見出し、DysbindinとNFYBとの複合体によって、神経伝達及び/又はシナプス形成に関連するmyristoylated alanine-rich C-kinase substrate(MARCKS)の転写が抑制されることを明らかにし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕 ディスビンディン(Dysbindin)及び核転写因子Yベータ〔nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)〕を含有してなる、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写調節用組成物、
〔2〕 工程(A):Dysbindinと、nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)及び被検物質とを接触させる工程
工程(B):前記工程(A)で接触させた、DysbindinとNFYBとの結合活性を測定する工程、
工程(C):前記工程(B)で得られた結合活性を、被検物質を接触させない場合の結合活性と比較する工程、ならびに
工程(D):前記工程(C)で行った比較において変動を認める場合に、被検物質はDysbindinとNFYBとの結合活性を変化させる物質であると判定する工程
を含む、DysbindinとNFYBとの結合活性を変化させる物質のスクリーニング方法、
〔3〕 工程(a):被検者由来の生体試料において、Dysbindinとnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)とを含む複合体の発現量を測定する工程、
工程(b):前記工程(a)で測定された発現量を対照者における発現量と比較する工程、ならびに
工程(c):前記工程(b)で行った比較において変動を認める場合に被検者は統合失調症を発症している可能性が高いと判定する工程
を含む、統合失調症発症の予測方法、ならびに
〔4〕 Dysbindin及びnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)に対する抗体を含有してなる、統合失調症発症の予測用キット
に関する。
本発明の神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写調節用組成物は、Dysbindinと、Dysbindinの結合因子であるnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)とを含む複合体が、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質のプロモーター領域に結合して転写を抑制することにより、前記物質の発現を抑制することが可能となり、種々の精神疾患の予防及び/又は治療に有用であるという優れた効果を奏する。
本発明の組成物は、ディスビンディン(Dysbindin)と、Dysbindinの結合因子である核転写因子Yベータ〔nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)〕とを含む複合体(以下、本発明の複合体ともいう)を含有するものであり、本発明は、前記複合体によって、神経伝達及び/又はシナプス形成に関連する物質の転写を抑制することにより、脳内における神経伝達物質の発現量やシナプス形成を調節することが出来るという大きな特徴を有する。
従来の精神疾患の治療標的は、脳内におけるシナプス受容体での神経伝達物質の結合を調節することである。受容体近傍における神経伝達物質は、1種類の神経伝達物質であっても複数種の受容体を介して作用することから、受容体と神経伝達物質との特異的な結合を調節するのみでは正常機能を残存したまま神経伝達を十分にコントロールすることが難しい。しかしながら、本発明では、Dysbindinタンパク質が転写因子NFYBと結合することによって形成された複合体が、核内に存在する物質、即ち、神経伝達及び/又はシナプス形成に関連する物質のDNAに結合することにより、神経伝達物質そのものの発現量を調節すること、シナプスからの神経伝達物質の分泌量を調節すること、あるいは、シナプス自体の形成を調節することが可能となる。従って、DysbindinとNFYB結合レベルを調節することで精神疾患を発症している脳内における神経伝達をコントロールすることが可能になる。
Dysbindinは統合失調症に関連することが報告されており、かかる疾患を発症する脳内においては、そのmRNA及びタンパク質の発現量が減少していることも知られている。本発明者らは、Dysbindinの機能を解明するために、酵母ツーハイブリッド(Yeast Two Hybrid:Y2H)法によるスクリーニングを行い、Dysbindinの結合因子を調べた。その結果、Dysbindinは神経伝達に関与するタンパク質と結合することが判明した。
一方、本発明者らは、Y2H法によるスクリーニングにより、Dysbindinが神経伝達に関与する因子のみに結合するのではなく、転写に関与する因子として、nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)と相互作用することを見出した。このことから、Dysbindinが遺伝子の転写に直接関与することが示唆され、Dysbindinは核内にも局在していることが推察される。Dysbindinが核内に局在することや核内におけるその機能についてはこれまで知られていないため、さらなる検討を重ねた結果、核内に局在するDysbindinがNFYBと相互作用することにより、神経伝達及び/又はシナプス形成に関与する遺伝子、例えば、ミリスチル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質〔myristoylated alanine-rich C-kinase substrate(MARCKS)〕遺伝子の転写を、該プロモーター領域のCCAATモチーフを介して抑制することを明らかにした。
本発明の組成物は、Dysbindinとnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)とを含む複合体を含有する。
Dysbindinは、ジストロブレビン結合タンパク質であり、骨格筋細胞のジストロフィン関連のタンパク質複合体を構成する。脳内での発現は2002年になって初めて報告されたが、その脳内での機能はほとんど解明されていない。一方で、統合失調症との関連が示唆されており、現在、統合失調症発症と最も関連のある因子としても知られている。
nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)は、核転写制御因子として知られるヒト遺伝子であり、特定の配列への結合によって、ゲノムの調節コードを解釈して、遺伝子発現を促進又は抑制する機能を有する。現在よく知られている機能としては、CBP/p300に作用してヒストンアセチル化を促し転写を促進させる機能、又はHDACに作用してヒストン脱アセチル化を促し転写を抑制する機能が挙げられる。
なお、本明細書において、NFYBとは、上記遺伝子(NFYBポリヌクレオチド)である態様と、該遺伝子によってコードされるタンパク質である態様のいずれをも意味するものとし、Dysbindinとの複合体形成には該タンパク質が関与する。NFYBを構成するポリヌクレオチドには、該ポリヌクレオチド以外にも、前記ポリヌクレオチド及びそれらの相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうるポリヌクレオチドであって、かつ、核転写制御作用を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも含まれる。
ここでいう「ストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうるポリヌクレオチド」とは、ポリヌクレオチドの断片をプローブとして、当該分野において周知慣用な手法、例えば、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチドを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したメンブランを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline Sodium Citrate:150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウム)溶液を用い、65℃でメンブランを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Current Protocols in Molecular Biology(1994)(Wiley-Interscience)、DNA Cloning 1:A Practical Approach Core Techniques,Second Edition(1995)(Oxford University Press)などに記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、アデニン(A)又はチミン(T)のみからなる配列は除外される。
本明細書において「ハイブリダイズしうるポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。そのようなポリヌクレオチドとして、具体的には、上記遺伝子の塩基配列で表されるポリヌクレオチドと少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。なお、本明細書において、相同性は、例えば、Altschulら(The Journal of Molecular Biology,215,403-410(1990))の開発したアルゴリズムを使用した検索プログラムBLASTを用いることにより計算することがきる。
また、上記NFYB遺伝子においては、単一の遺伝子の変異又は多型で疾患への関与が説明できなくとも、精神疾患への関与が比較的穏やかな遺伝子の変異又は多型が多数存在し、それぞれが組み合わせられて作用することによって精神疾患への関与が説明できる場合もあると考えられる。従って、本発明におけるNFYB遺伝子には、少なくとも1つの一塩基多型(SNPs)を有する遺伝子も含まれるものとする。
DysbindinとNFYBとを含む複合体(以下、本発明の複合体ともいう)とは、Dysbindinタンパク質とNFYBタンパク質とを主な構成成分とするもののことを意味し、具体的には、Dysbindinタンパク質の特定アミノ酸配列がNFYBタンパク質の標的部位を認識して結合している。なお、結合様式については、DysbindinとNFYBとが結合しているのであれば特に限定はなく、結合に影響を与えるような、温度、pH及びイオン強度等の条件についても特に制限されない。
上記複合体は、公知の方法に準じて調製することができ、例えば、以下の方法が例示される。なお、複合体構成成分の結合様式や結合条件については前述のように特に制限のないことから、複合体そのものを調製してもよく、複合体の構成成分を調製してから該構成成分を結合させて複合体を形成させてもよい。
複合体や複合体の構成成分に応じて、既知のアミノ酸配列や塩基配列の情報などをもとに設計し合成したプライマーやプローブを用いて、PCR (Polymerase Chain reaction)法やハイブリダイゼーションにより調製されたポリヌクレオチドを用いて調製することもできる。また、アミノ酸配列に基づいて、該ポリペプチドやポリペプチドをコードするDNAを化学合成することによっても調製することができる。
なお、上記で得られたポリヌクレオチドから複合体を調製するにあたっては、適当な発現ベクターに組み込むことによって調製してもよい。かかるベクターは、真核生物及び原核生物の宿主細胞に形質移入することができるようになり、宿主細胞において、形質移入したポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを発現させることが可能である。発現ベクターには、宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターを用いることができる他、宿主細胞に応じて適宜選択したベクタープラスミドに適当なプロモーター及び形質発現にかかわる配列を導入したものを用いることができる。数種類のポリヌクレオチドで同時に一つの細胞を形質転換する場合は、数種類のポリヌクレオチドが一つの発現ベクターに含まれるように構成してもよく、又は各々別々の発現ベクターに含まれるように構成してもよい。所望のポリヌクレオチドを導入した発現ベクターは、DEAE-デキストラン法、リン酸カルシウム-DNA共沈殿法、リポフェクション法等により宿主細胞に取り込ませ、形質転換させることができる。
本発明の組成物における上記複合体の含有量としては、本発明の所望の効果の発現が得られるのであれば特に限定はなく、通常1〜100重量%程度である。
かくして得られる複合体は、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写を調節する作用を有する。
神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質としては、myristoylated alanine-rich C-kinase substrate(MARCKS)、Phospholipase C beta 4 (PLCB4)、Synaptotagmin 1 (SYT1)等が挙げられるが、なかでも、MARCKSが好ましい。なお、本明細書において「神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質」とは、神経伝達作用、シナプスからのドパミン、グルタミン酸、GABA等の神経伝達物質の分泌作用、シナプス形成作用に関連する物質のことを意味し、具体的には、前記作用に関連する核酸分子及びタンパク質(該核酸分子によってコードされるタンパク質も含む)が挙げられる。
前記物質の転写を調節する方法としては、特に限定はないが、上記複合体が前記物質に結合することにより達成することができる。複合体の神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質への結合様式には特に限定はなく、例えば、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質がMARCKSの場合、複合体のNFYB部分が、MARCKSのプロモーター領域の特定配列、即ち、CCAATモチーフを介して結合することにより転写調節作用が発揮され、MARCKSの発現が抑制される。
なお、転写を調節するとは、その精神疾患に応じて種々の態様がありうるが、例えば、神経伝達を抑制する場合には、神経伝達に関連する物質の発現量を抑制すればよいことから、該物質の転写を抑制すればよい。また、シナプス形成を抑制する場合には、シナプス形成に関連する物質の発現量を抑制するために、該物質の転写を抑制すればよい。
本発明の組成物は、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写を調節する作用を有することから、予防及び/又は治療に、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写を調節する作用を要する疾患に有用である。該疾患としては、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写を調節することにより効果がみられる疾患であれば特に限定はないが、例えば、統合失調症、うつ病、双極性障害等の精神疾患が例示され、なかでも、統合失調症が好適である。
本発明はまた、DysbindinとNFYBとの結合活性を変化させる物質のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法は、具体的には
工程(A):Dysbindinと、nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)及び被検物質とを接触させる工程
工程(B):前記工程(A)で接触させた、DysbindinとNFYBとの結合活性を測定する工程、
工程(C):前記工程(B)で得られた結合活性を、被検物質を接触させない場合の結合活性と比較する工程、ならびに
工程(D):前記工程(C)で行った比較において変動を認める場合に、被検物質はDysbindinとNFYBとの結合活性を変化させる物質であると判定する工程
を含む。かかる方法により選択される物質は、例えば、統合失調症やうつ病等の精神疾患に対する治療薬となるものと期待される。
上記スクリーニング方法の工程(B)における結合活性の測定は、当業者においては周知の方法、例えば、酵母ツーハイブリッド(Yeast Two Hybrid:Y2H)法等により、適宜実施することができる。被検物質としては、特に制限はなく、例えば、種々の公知化合物やペプチド、あるいはファージ・ディスプレイ法などを応用して作成されたランダムペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清や、植物、海洋生物由来の天然成分などもスクリーニングの対象となる。その他、生体組織抽出物、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物などが挙げられるが、これらに特に制限されない。
工程(C)における結合活性の比較、及びその後の工程(D)における判定は、被検物質が非存在時のDysbindinとNFYBとの結合活性を100%とした場合に、例えば、被検物質が存在することによって、前記結合活性が好ましくは150%以上となる場合には、当該物質はDysbindinとNFYBとの複合体による神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写抑制作用を大きくする物質であると判断され、脳内における神経伝達物質の発現やシナプス形成を抑制する効果が大きいと考えられる。一方、前記結合活性が好ましくは50%以下となる場合には、当該物質はDysbindinとNFYBとの複合体による神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写抑制作用を小さくする物質であると判断され、脳内における神経伝達物質の発現やシナプス形成を抑制する効果が小さいと考えられる。
また、本発明は、統合失調症発症の予測方法を提供する。本発明の複合体は、生体内で重要な機能、即ち、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写を調節する作用を有することにより、当該物質の発現量を調節することができると考えられる。かかる物質の発現異常は、種々の疾患の原因となり得る。従って、前記複合体の構成成分や前記複合体の発現量を指標とすることや、Dysbindin-NFYB複合体により発現制御される因子の変動を指標とすることにより、このような疾患発症の予測を行うことも可能であり、前記方法は、統合失調症の発症診断として、統合失調症発症因子の測定方法、又は、統合失調症発症の決定方法としても使用可能である。
上記予測方法は、具体的には、
工程(a):被検者由来の生体試料において、Dysbindinとnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)とを含む複合体の発現量を測定する工程、
工程(b):前記工程(a)で測定された発現量を対照者における発現量と比較する工程、ならびに
工程(c):前記工程(b)で行った比較において変動を認める場合に被検者は統合失調症を発症している可能性が高いと判定する工程
を含む。なお、上記「予測方法」とは、疾患の症状を呈している被検者の治療戦略を立てるための検査のみならず、被検者が疾患にかかりやすいか否かを判断するために行う予防のための検査、又は既に罹患しているか否かの検査も含まれる。
上記予測方法の工程(a)における複合体の発現量の測定は、当業者においては周知の方法を用いることができるが、例えば、ELISAキットを用いてDysbindin及びNFYBの発現量の測定を行う方法や、クロマチン免疫沈降法が例示される。なお、DysbindinとNFYBの発現量を測定することは、Dysbindin-NFYB複合体により発現調整される因子の発現量を測定することにより実施することもできる。
工程(b)、及びその後の工程(c)における判定においては、上記により得られた複合体の発現量について、対照者における該発現量に基づいて統計学的な解析を行って比較を行い、被験者の発現量が対照者における発現量と比べて、好ましくは10%以上多い、あるいは少ないという変動が認められた場合に統合失調症を発症している可能性が高いと判定する。解析方法としては、特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。なお、本発明において、対照者とは、統合失調症を発症していないと診断される患者のことを言う。
本発明の別の態様では、統合失調症発症の予測を行うためのキットが提供される。
本発明のキットには、本発明の複合体の存在を検出することができるものであれば全て含まれる。具体的には、本発明の複合体を構成するタンパク質、即ち、Dysbindin及びNFYBに対する抗体を含有するキットが挙げられ、サンプル中のタンパク質を検出する際に抗体を用いる検出方法であれば、前記キットを用いることができる。Dysbindin及びNFYBの試料中での存在量が少ないものであれば、DysbindinとNFYBとの複合体の存在量も少なくなり、結果的には、複合体による転写抑制作用が制限されることが示唆されるため、キットとしては、Dysbindinに対する抗体及びNFYBに対する抗体を含有するものであればよいが、DysbindinとNFYBとの複合体に対する抗体を含有するものであってもよい。また、複合体を構成するタンパク質が検出されるのであれば、複合体を構成するタンパク質以外のタンパク質も前記抗体により同時に検出されることがあってもよく、さらにはDysbindin-NFYB複合体により発現調整される因子を検出するものであってもよいと考えられる。本発明のキットは、統合失調症発症予測の1次スクリーニング用としても利用することが可能である。
なお、DysbindinとNFYBとの結合活性について、その活性を変動させる変異の有無を検定(シークエンシングなど)することにより、被検者における、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写を調節する機能を調べて、統合失調症発症の予測を行うことも可能である。かかる発症予測に用いるキットとしては、SNPs変異体を確認できるものであれば特に限定はない。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
<プラスミドの調製>
V5融合Dysbindinを含有するプラスミド(Dysbindin-V5過剰発現ベクター)及びNFYBを含有するプラスミドを、真核生物発現ベクターpcDNA3.1 (Invitrogen Corp.)を用いて以下のようにして生成する。
PCR法を用いて、ヒト脳cDNAライブラリーからヒトDysbindin及びNFYBを増幅する。なお、前記Dysbindin及びNFYBは、rTaq DNAポリメラーゼ(Takara Bio Inc., Kyoto, Japan)と共に以下のプライマーセット、
Dysbindin:
5′- CTCGAGTTACGTAGAATCGAGACCGAGGAGAGGGTTAGGGATAGGCTTACCAGAGTCGCTGTCCTCACC -3′(フォワード)(配列番号:1)
5′- GGTACCGCCACCATGCTGGAGACCCTTCGCGA -3′(リバース)(配列番号:2)
NFYB:
5′-GCTAGCGCCACCATGACAATGGATGGTGACAGTTCT-3′ (フォワード)(配列番号:3)
5′-GATATCTGAAAACTG AATTTGCTGAAC-3′(リバース)(配列番号:4)
を用いて増幅する。増幅したフラグメントは、pGEM-Tベクター(Promega Corp.)にTAクローニングする。
プロモーターをpGL3-(R2.2) Basic (Promega Corp.)にサブクローニングして、pMARCKS-Luc(-1152)を生成する。その後、これを用いて、pMARCKS-Luc(-1152)の5'欠損構築物、及び領域-700〜-1の内部欠損構築物を生成する。また、二重鎖オリゴヌクレオチドを挿入して、他の領域(-231〜-150)の欠損構築物、及びpMARCKS-Luc/dl(-204〜-187)の点変異構築物を生成する。またさらに、誘発によりプラスミドpMARCKS-Luc(-736/mt)の部位特異的突然変異構築物を生成する(図5A及び5B参照)。
<細胞培養>
SY5Y細胞(IF)をヒューマンサイエンスリサーチリソースバンク(Human Science Research Resources Bank)(HSRRB)から入手した。これらの細胞を、37℃、95%空気/5%CO2雰囲気下にて、組織培養皿(Nalge Nunc, Rochester, NY, USA)において、15%熱不活性化ウシ胎児血清(invitrogen)を含有する50%最小必須培地(Invitrogen)/50%F-12 (Invitrogen)中で維持する。
<Dysbindinモノクローナル抗体の作製>
Dysbindinモノクローナル抗体は、GST-Dysbindinを抗原としてマウスに投与し、マウスの免疫応答による抗体産生を利用することにより調製した。この際に、免疫されたマウスの脾臓をモノクローン化して得られた数百の候補を、GST-Dysbindinを定着させているELISAプレートを用いて絞り込みをかけた。得られた候補クローンの中から、マウスDysbindin(endogenous)、ヒトDysbindin(endogenous)、GST-Dysbindin(exogenous)、GFP-Dysbindin(exogenous)を認識できるものを絞り込んだ結果、1つのクローンに絞られた。このクローンの培養上清をカラムを用いて精製し、Dysbindinモノクローナル抗体Aとした。
<免疫細胞化学>
SY5Y細胞を、3×104細胞/cm2の密度で、ポリ-l-リジンコート4ウェルチャンバーディッシュ上で生育させる。その後、前記細胞を、2%パラホルムアルデヒド含有0.1M PBSで固定し、浸透させた後、0.3%Triton X-100、3%BSA及び10%ヤギ血清を含む0.02M PBSで、室温、30分間ブロッキングし、それぞれのタンパク質に特異的な抗体とインキュベートする。なお、免疫細胞化学用の抗体としては、DysbindinにはGFP抗体又はV5抗体(以降、タグ抗体ともいう)を、NFYBにはNFYB抗体(sc-17753; Santa Cruz)を用いる。なお、共焦点顕微鏡検査は、Carl Zeiss LSM-510共焦点顕微鏡を使用して行う。
<免疫沈降(IP)>
細胞を氷冷PBSで洗浄した後、回収して1mL溶解バッファー〔20mM Tris-HCl(pH 7.8)、0.2%NP-40、1mM EDTA、150mM NaCl、及びプロテアーゼインヒビターカクテル(Roche)〕に懸濁して細胞溶解物を調製する。その後、細胞溶解物を氷上で30分間インキュベートして13,600g×5分間遠心分離し、上清をタンパク質Gセファロースビーズで予備精製した後、抗体/タンパク質Gセファロースビーズを有する溶解バッファー中で、4℃、1時間、免疫沈降(IP)を行なう。なお、IP用の抗体は、Dysbindin(Dysbindinモノクローナル抗体A)、NFYB抗体(sc-17753; Santa Cruz)、マウスモノクローナルIgG抗体(Sigma-Aldrich)を用いる。
<イムノブロッティング(ウェスタンブロッティング)>
SDS-PAGEで分離した全細胞溶解物、又はIP溶解物のアリコートをImmobilon-P膜(Millipore)上にブロットして、それぞれのタンパク質に特異的な抗体とインキュベートする。イムノブロッティング用の抗体は、Dysbindin(Dysbindinモノクローナル抗体A)、NFYB抗体(sc-17753; Santa Cruz)、MARCKS抗体(2F12; Upstate)又はアクチン抗体(C4; Chemicon)である。ブロッティングさせたものは、HRPコンジュゲート抗マウスIgG抗体(7076; Cell Signaling)とインキュベートさせて、ECL plus Western Blotting Detection System (GE Healthcare)によりタンパク質を検出して、その後製造業者のプロトコルに従ってX線フィルムを感光させて、同定を行う。
<siRNAを用いたノックダウン実験>
Dysbindinに対するStealth(登録商標)siRNA 〔5′-CCAAAGUACUCUGCUGGAUUAGAAU-3′(配列番号:5)、及び5′-GCUCCCAGCUUUAAUCGCAGACUUA-3′(配列番号:6)〕、NFYBに対するStealth(登録商標)siRNA 〔5′- UACUGAGGACAGCAUGAAUGAUCAU-3′(配列番号:7)〕、ならびに、ネガティブコントロール二重鎖〔Dysbindinに対するscrambled siRNA, 5′-CCATGATCTCGTCGTTAGAAAGAAA-3′(配列番号:8)、及び5′-GCTACCGTTATTAGCACAGCCCTTA-3′(配列番号:9);NFYBに対するscrambled siRNA, 5′-UACGGAACAACGAGUGUAUAUGCAU-3′(配列番号:10)〕は、Invitrogen Corpから提供された。Lipofectamine 2000 (Invitrogen Corp.)を用いて、製造業者の指示に従い、SY5Y細胞に、100pMの各siRNA、又はscrambled siRNAを導入する。
<RNA抽出及びマイクロアレイ>
Rneasyカラム(Quiagen)を用いて、製造業者の指示に従い、細胞から全量RNAを抽出する。対照及び実験細胞から抽出した全量RNAは、500ナノグラムをそれぞれ増幅して、Agilent low inputリニア増幅キット (Agilent Technologies)を用いて製造業者の指示に従い、Cy3又はCy5標識CTP(Perkin Elmer)のいずれかで標識する。その後、増幅したRNAをUV-vis分光器により定量する。なお、それぞれ1マイクログラムのCy3及びCy5標識ターゲットを混合して、製造業者の指示に従い、Whole Human Genome Oligo Microarray Kit(G4112F)にハイブリダイズさせる。増幅物の1つには他の2種類とは異なる色素を付して、3種類の生物増幅物をそれぞれの時点で使用する。マイクロアレイをHitachi イメージスキャナ上にイメージ化して、GeneSpring 6 (Silicon Genetics )でデータを解析する。
<クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ>
クロマチン免疫沈降アッセイキット(Upstate biotechnology)を用い、製造業者の指示に従ってChIP解析を実施する。詳しくは、タンパク質DNA複合体を1%ホルムアルデヒドで架橋して(室温、10分)細胞を回収し、DNAを500〜1000 bpの長さに超音波破砕する。その後、1晩、4℃でのタンパク質-DNA複合体の免疫沈降を行う。なお、抗体には、抗Dysbindin(Dysbindinモノクローナル抗体A)、抗NFYB(sc-17753; Santa Cruz)及びマウスモノクローナルIgG抗体(Sigma-Aldrich)を使用する。また、MARCKSプロモーター:遠位CCAAT領域, 5’-GGTTTGCTCTTTGATGCTCTTGAT-3’ (配列番号:11)、及び5’-ACTTTCGGGTGGGGTGTAA-3’ (配列番号:12)、に対する特異的なプライマーセットを用いてPCRを行なう。
<レポーターアッセイ>
lipofection 2000 (invitrogen)により、トランスフェクション効率をモニターするphRG-TK(内部コントロール用Renillaレポーター)と共にレポータープラスミドを細胞にトランスフェクションする。Dual Luciferase Assay System (Promega)を用いてルシフェラーゼ活性をアッセイする。なお、全てのアッセイは全く同一に3回行い、結果は±SDで表す。
試験例1、Dysbindinの局在
Dysbindin-V5過剰発現ベクターを用いて、Dysbindinの細胞内局在を免疫細胞化学によって調べた。図1AはHEK293A細胞を用いたウェスタンブロット解析による分画試験の結果を示す。大量のDysbindinタンパク質が細胞質画分に認められた(図1Aの中央レーン)。また、Dysbindinの発現は多くはないが、Dysbindinタンパク質は核画分にも存在することが分かる(図1Aの右端レーン)。次に、図1Bより、HEK293A細胞を形態学的に観察すると、核内にわずかな免疫反応が見られることから(図1Ba、b)、Dysbindinが核内に存在することは明らかである。また、核内から細胞質へのエクスポートを阻害するLPB(レプトマイシン-B)予備処理により、これらの細胞の核内にDysbindinの蓄積が生じた(図1Bc、d)。これらの発見により、Dysbindinタンパク質は核と細胞質の間を活発に往復し、Dysbindinは核の機能に関与することが示される。
試験例2、Dysbindinと転写因子NFYBとの結合
HEK293T細胞を用いて、免疫沈降アッセイによりDysbindin-NFYB相互作用を確認した。HEK293T細胞をDysbindin-V5過剰発現ベクターでトランスフェクトしてV5-Dysbindinを強制発現させて、抗V5抗体を用いて細胞溶解物を免疫沈降(IP)にかけ、次いで得られたIPサンプルを泳動して抗NFYB抗体によりウェスタンブロット解析を行なった。なお、免疫沈降のコントロールとして抗IgG抗体を用いた免疫沈降サンプルを調製し、ウェスタンブロット解析のコントロールとして抗β-アクチン抗体による解析を行った。結果を図2Aに示す。免疫沈降物においてNFYBが検出されたことから、トランスフェクトされた哺乳動物細胞において、NFYBとDysbindinの結合が示唆された。
一方、DysbindinとNFYBの内因性相互作用を確認するために、SH-SY5Y細胞を用いて上記と同様の解析を行った。具体的には、抗NFYB抗体、又は抗Dysbindin抗体を用いて免疫沈降を実施後、得られた各IPサンプルを泳動して抗Dysbindin抗体、又は抗NFYB抗体によりそれぞれウェスタンブロット解析を行なった。なお、コントロールとして抗IgG抗体を用いた免疫沈降サンプルと、免疫沈降を行っていない細胞溶解物についても同様の解析を行った。結果を図2Bに示す。抗NFYB抗体による免疫沈降物においてDysbindinが、抗Dysbindin抗体による免疫沈降物においてNFYBが検出されたことから、Dysbindin及びNFYBの間の内因性相互作用が示された。なお、マウス成体脳についても同様の解析を行い、Dysbindin及びNFYBの間の内因性相互作用が確認された。
試験例3、Dysbindin-NFYB相互作用によるミリスチル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)の転写抑制
Dysbindin-NFYB複合体の標的遺伝子を同定するために、我々は、Dysbindin又はNFYBをノックダウンしたSH-SY5Y細胞において、DNAチップにより発現が変動する遺伝子をスクリーニングした。即ち、図3で示すDysbindin又はNFYBのmRNAに対するsiRNAにより蛋白質レベルでのDysbindin又はNFYB発現抑制効果をウェスタンブロット解析により確認し、本条件下での発現変動因子をDNAチップを用いてスクリーニングした。Dysbindin又はNFYBのノックダウンによりアップレギュレートされた遺伝子を表1に挙げる。なお、Dysbindinのノックダウンによりアップレギュレートされる遺伝子は、NFYBのノックダウンによりアップレギュレートされる遺伝子と共通しており、それらを表1中のAに示す。また、ダウンレギュレートされる共通の遺伝子を表1中のBに示す。
NFYBは、種々の遺伝子のプロモーター領域中のCCAATモチーフに高い特異性を持って結合することが知られていることから、次に、プロモーター領域中にCCAATモチーフを有する遺伝子をスクリーニングした。その中でも、統合失調症の神経伝達の修復に関与する、ミリスチル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)、フォスフォリパーゼCベータ4(PLCB4)、Synaptotagmin(SYT1)に着目したが、MARCKSが神経形成と神経伝達に関与する機能を有し、また、NFYBの標的配列であるCCAATモチーフを2つも有し、さらには、Dysbindin及びNFYBの発現によってMARCKSのmRNAの発現がレギュレートされることから、以降は、MARCKSの転写機能におけるDysbindin−NFYB複合体の相互作用の関与について検討を行った。
まず、DysbindinとMARCKSとのin vitroにおける相互作用について検討した結果を図4Aに示す。上段は、SH-SY5Y細胞におけるMARCKSのタンパク量をウェスタンブロッティング法により解析した結果、下段はその際の発現量を定量化したもの(n=3)であり、上段下段いずれも、左から、No treatment細胞、control RNAi強制発現細胞(コントロール細胞)、Dysbindin RNAi強制発現細胞(Dysbindinノックダウン細胞)についての結果を示す。結果、Dysbindin RNAiによりDysbindin発現量が低下した細胞においてMARCKSの発現上昇が認められた。
DysbindinとMARCKSとのin vivoにおける相互作用について検討した結果を図4Bに示す。左側に野生型マウス(WTマウス)の結果を、右側にDysbindinノックアウトマウス(KOマウス)のデータを示している。それぞれ、生後15日(P15)、生後25日(P25)、生後45日(P45)のマウスの海馬におけるMARCKSタンパク質の発現量を示しており、WTマウスで徐々に発現が低下するのに比して、Dysbindin KOマウスでは発現低下が認められず、高発現状態が持続していた。これらの発見により、Dysbindinのダウンレギュレートによって、MARCKSタンパク質のアップレギュレートに繋がるMARCKS遺伝子の転写が促進されることが示唆される。
なお、MARCKSもシナプス形成等の神経発生に関与するので、図4Bに示されるように、野生型マウスの脳において、MARCKS発現は加齢に伴い著しく減少し、成体期では低いレベルのMARCKS発現が見られた。これらの発見は、MARCKSが脳の発生期に重要な役割を果たすことを支持する。しかし、野生型において豊富なMARCKS発現が確認される発生期に、DysbindinノックアウトマウスではMARCKSの発現に影響を及ぼさなかった。この時期には、MARCKS遺伝子の転写は複数の分子により調節され得るので、Dysbindinの欠損が補われる。また、野生型マウスの成体期におけるMARCKS発現の減少は、Dysbindinノックアウトマウスの脳において観察されず、高レベルのMARCKS発現が検出される(図4B)。これらの発見は、Dysbindinは、発生期とは対照的に、成体の脳においてMARCKS発現に主要な役割を果たすことを示す。よって、Dysbindinノックアウトマウスの結果から判断するに、MARCKSは、対照の脳と比較して、統合失調症の脳において高レベルで発現すると思われる。MARCKSタンパク質の発現の観点から、過剰な神経伝達などの成体期におけるMARCKSの過剰な機能は統合失調症の脳で生じ得ると考えられる。
次に、Dysbindin−NFYB複合体が、MARCKSのプロモーター領域との相互作用によってMARCKSの転写に影響を及ぼすかどうかを調べるために、Dysbindin−Flagを過剰発現させたSH-SY5Y細胞においてクロマチンIP解析を行った。結果を図4Cに示す。その結果、クロマチンIPのPCR産物より、分化誘導刺激を行って1時間後には、Dysbindin及びNFYBがMARCKSと相互作用していることが分かる。さらに内因性のDysbindin及びNFYBについても、同様にMARCKSのプロモーター領域と相互作用しているが、コントロールのIgGとは相互作用しないことが分かる。これらの発見により、Dysbindin−NFYB複合体が、MARCKSの転写抑制に繋がるMARCKS遺伝子のプロモーター領域と相互作用することが示唆される。
試験例4、Dysbindin-NFYB相互作用によるCCAAT-2モチーフを介したMARCKSの転写抑制
NFYBは、CCAATモチーフに結合して標的遺伝子の転写を調節することが知られている。一方、MARCKSのプロモーター領域の予備的な解析を行うことにより、MARCKS遺伝子の5’-UTR領域は2種類のCCAAT配列を有することが明らかになり、CCAAT配列は、-1152〜-700のUTR間、及び、-700〜-614の間のUTR間に位置することが分かった(図5A参照)。なお、以降において、前者のCCAAT配列をCCAAT-1、後者をCCAAT-2と記載する。
CCAAT-1又はCCAAT-2のいずれのCCAAT配列が、Dysbindin-NFYB複合体との結合によりMARCKSの転写を調節しているのかを試験するために、レポーターアッセイを行った。具体的には、ルシフェラーゼアッセイ用に、5種類の短いRNAプローブを調製した(図5A);UTR(1152)-Luc、UTR(953)-Luc、UTR(700)-Luc、UTR(614)-Luc、及びUTR(462)-Luc。内因性Dysbindin及びNFYBの両方を発現するSH-SY5Y細胞に、これらの構築物を一過的にトランスフェクトしてレチノイン酸で刺激し、刺激の24時間後に各細胞群におけるルシフェラーゼ活性を測定した。なお、CCAAT-1配列及びCCAAT-2配列の両方を含有するUTR(1152)-LucでトランスフェクトしたSH-SY5Y細胞において、レチノイン酸刺激後に確認したルシフェラーゼ活性を基準として測定を行った。結果を図5Aに示す。その結果、両CCAAT配列を含有するUTR(953)-Luc及びCCAAT-1配列を含有するがCCAAT-2配列を欠くUTR(700)-Lucをトランスフェクトした細胞において、レチノイン酸刺激後のルシフェラーゼ活性は基準レベルのままであった。しかし、CCAAT-2配列を含有するがCCAAT-1配列を欠くUTR(614)-Lucを発現する細胞においては、レチノイン酸刺激後、顕著に増加したルシフェラーゼ活性が確認された。これらの結果より、CCAAT-2モチーフが、MARCKS遺伝子の転写の抑制に不可欠なものであることが示される。さらに、SH-SY5Y細胞において、CCAAT-1、CCAAT-2、Sp1及び-462領域までのSp1の下流を欠くUTR(462)-Lucのトランスフェクションによってルシフェラーゼ活性が減少していることから、Sp1及びその下流領域はMARCKS転写における調節のメカニズムに欠くことのできないものであることが示される。
CCAAT-2領域がMARCKS遺伝子の転写の抑制に不可欠であることを確認するために、6種類のUTR(1152)-Lucプローブ;UTR(1152)-Lucそのもの[UTR(1152)-Luc]、CCAAT-2に点突然変異を有するもの[M-UTR(1152)-Luc]、CCAAT-2を欠損するもの[D1-UTR(1152)-Luc]、CCAAT-2及びその下流を欠損するもの[D2-UTR(1152)-Luc]、SP1領域及びその下流を欠損するもの[D3-UTR(1152)-Luc]、並びにSp1領域の下流を欠損するもの[D4-UTR(1152)-Luc]を調製した(図5B)。各プローブをトランスフェクトしたSH-SY5Y細胞をレチノイン酸で刺激して、刺激の24時間後に各細胞群におけるルシフェラーゼ活性を測定した。なお、UTR(1152)-Lucがトランスフェクトされた細胞で検出されたルシフェラーゼ活性を基準値として測定を実施した。結果を図5Bに示す。その結果、CCAAT-2に点突然変異を有するプローブ[M-UTR(1152)-Luc]がトランスフェクトされた細胞、並びにCCAAT-2領域を欠くがCCAAT-1及びSp1領域は有するプローブ[D1-UTR(1152)-Luc]がトランスフェクトされた細胞は、ルシフェラーゼ活性の顕著な増加を示し、これはCCAAT-2モチーフがMARCKS遺伝子の転写の抑制に重要な機能を担っていることを示す。
さらに、CCAAT-2モチーフを介したMARCKS遺伝子の転写レベルの調節にDysbindinが関与することを確かめるために、[UTR(1152)-Luc]がトランスフェクトされたDysbindinノックアウト細胞とコントロール細胞におけるルシフェラーゼ活性を比較した。結果を図5Cに示す。Dysbindinのノックアウトにより、[UTR(1152)-Luc]がトランスフェクトされた細胞におけるルシフェラーゼ活性はアップレギュレートされた。しかしながら、[D1-UTR(1152)-Luc]がトランスフェクトされた細胞では、Dysbindinのノックアウトによる効果が認められなかった(図5D)。これらの結果より、Dysbindinが、NFYBの結合サイトであるCCAATモチーフを介して、MARCKS遺伝子の転写を調節していることが示唆される。一方、Sp1領域の下流を欠損するプローブでトランスフェクトされた細胞において、ルシフェラーゼ活性の低下が確認されたことから、Sp1領域の下流もまた、MARCKS遺伝子の転写に必須であることが推察される。
本発明の神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写調節用組成物は、DysbindinとNFYBとの複合体を含有することにより、該複合体が前記物質の転写に関与するプロモーター領域を介して結合して、転写を調節することが可能となることから、神経伝達やシナプス形成の調節を要する疾患の治療等に好適に用いられる。
図1Aは、HEK293A細胞を用いたウェスタンブロット解析による分画試験の結果を示す図である。レーンは図左より、whole lysate(細胞質、核のいずれをも含む)、細胞質画分、核画分の結果を示す。図1Bは、HEK293A細胞の共焦点顕微鏡写真である。 図2Aは、HEK293T細胞を用いた免疫沈降アッセイの結果を示す図である。レーンは図左より、抗IgG抗体を用いた免疫沈降サンプル、抗Dysbindin抗体を用いた免疫沈降サンプルであり、上段はNFYBによるウェスタンブロッティング、下段はβ-アクチンによるウェスタンブロッティングの解析結果を示す。図2Bは、SH-SY5Y細胞を用いた免疫沈降アッセイの結果を示す図である。上段はNFYBによるウェスタンブロッティング解析結果であり、レーンは図左より、抗IgG抗体を用いた免疫沈降サンプル、抗Dysbindin抗体を用いた免疫沈降サンプル、細胞溶解物を示す。下段はDysbindinによるウェスタンブロッティング解析結果であり、レーンは図左より、抗IgG抗体を用いた免疫沈降サンプル、抗NFYB抗体を用いた免疫沈降サンプル、細胞溶解物を示す。 図3Aは、上段(a)にDysbindinのmRNAに対するsiRNAによりタンパク質レベルでのDysbindin発現抑制効果をウェスタンブロット解析により確認した結果を示し、左から、No treatment細胞、control RNAi強制発現細胞(コントロール細胞)、Dysbindin RNAi強制発現細胞(Dysbindinノックダウン細胞)を示している。また、(b)は、その発現量をImageJ(デンシトメトリー)を用いて、発現量を定量化し、棒グラフにより示したものである。図3Bは、上段にNFYBのmRNAに対するsiRNAによりタンパク質レベルでのNFYB発現抑制効果をウェスタンブロット解析により確認した結果を示し、左から、No treatment細胞、control RNAi強制発現細胞(コントロール細胞)、NFYB RNAi強制発現細胞(NFYBノックダウン細胞)を示している。また、(b)は、その発現量をImageJ(デンシトメトリー)を用いて、発現量を定量化し、棒グラフにより示したものである。 図4AはDysbindinとMARCKSとのin vitroにおける相互作用についての検討結果を示す図である。上段はウェスタンブロッティング法によるMARCKSのタンパク発現量を、下段はその発現量を定量化したものであり、上段下段いずれも左から、No treatment細胞、control RNAi強制発現細胞(コントロール細胞)、Dysbindin RNAi強制発現細胞(Dysbindinノックダウン細胞)についての結果である。図4BはDysbindinとMARCKSとのinvivoにおける相互作用についての検討結果を示す図である。左側に野生型マウスの結果を、右側にDysbindinノックアウトマウスのデータを示し、それぞれ、生後15日(P15)、生後25日(P25)、生後45日(P45)のMARCKSタンパク質の発現量を示す。図4CはDysbindin−NFYB複合体とMARCKSとの相互作用についての検討結果を示す図である。上段から、抗Dysbindin抗体(Dysbindinモノクローナル抗体A)による免疫沈降サンプル、抗NFYB抗体による免疫沈降サンプル、抗IgG抗体による免疫沈降サンプル(コントロール)、免疫沈降を行っていない細胞溶解物についての結果であり、それぞれ、分化誘導刺激直後(0hr)、0.5時間後(0.5h)、1時間後(1h)の結果を示す。 図5AはDysbindin-NFYB相互作用によるMARCKSのCCAAT-1配列、及び、CCAAT-2配列の転写調節機能についての検討結果を示す図である。図5BはCCAAT-2配列の転写調節機能についての検討結果を示す図である。図5C及びDは、CCAAT-2モチーフを介したDysbindinのMARCKS遺伝子の転写レベルの調節機能についての検討結果を示す図である。

Claims (9)

  1. ディスビンディン(Dysbindin)及び核転写因子Yベータ〔nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)〕を含有してなる、神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質の転写調節用組成物。
  2. Dysbindin及びnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)が複合体を形成してなる、請求項1記載の組成物。
  3. 神経伝達及び/又はシナプス形成関連物質が、ミリスチル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質〔myristoylated alanine-rich C-kinase substrate(MARCKS)〕である、請求項1又は2記載の組成物。
  4. 組成物が精神疾患の予防及び/又は治療用である、請求項1〜3いずれか記載の組成物。
  5. 精神疾患が統合失調症である、請求項4記載の組成物。
  6. 工程(A):Dysbindinと、nuclear transcription factor Y, beta(NFYB)及び被検物質とを接触させる工程
    工程(B):前記工程(A)で接触させた、DysbindinとNFYBとの結合活性を測定する工程、
    工程(C):前記工程(B)で得られた結合活性を、被検物質を接触させない場合の結合活性と比較する工程、ならびに
    工程(D):前記工程(C)で行った比較において変動を認める場合に、被検物質はDysbindinとNFYBとの結合活性を変化させる物質であると判定する工程
    を含む、DysbindinとNFYBとの結合活性を変化させる物質のスクリーニング方法。
  7. 工程(a):被検者由来の生体試料において、Dysbindinとnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)とを含む複合体の発現量を測定する工程、
    工程(b):前記工程(a)で測定された発現量を対照者における発現量と比較する工程、ならびに
    工程(c):前記工程(b)で行った比較において変動を認める場合に被検者は統合失調症を発症している可能性が高いと判定する工程
    を含む、統合失調症発症の予測方法。
  8. 工程(a)における複合体の発現量を測定する方法が、クロマチン免疫沈降法である、請求項6記載の予測方法。
  9. Dysbindin及びnuclear transcription factor Y, beta(NFYB)に対する抗体を含有してなる、統合失調症発症の予測用キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPN6013026444; 松崎伸介 他: '社会行動を司る脳の分子とエピジェネティクス-新しい人間科学をめざして 統合失調症発症の分子メカニズム' 脳21 Vol.10, No.1, 2007, p.31-37 *
JPN6013026446; 松崎伸介 他: '社会行動を司る脳の分子とエピジェネティクス-新しい人間科学をめざして 新規創薬を目指した統合失調症発症' 脳21 Vol.10, No.1, 2007, p.4-8 *

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