JP2009538311A - 血液代替のため、および他の治療的使用のための、最適化フルオロカーボンエマルジョン - Google Patents

血液代替のため、および他の治療的使用のための、最適化フルオロカーボンエマルジョン Download PDF

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Abstract

本発明は連続水相および二つのフルオロカーボンを含む不連続フルオロカーボン相を有する安定したフルオロカーボンエマルジョンを志向し、そして驚くべきことに、臭化ペルフルオロデシルがなおさらに高度に濃縮された臭化ペルフルオロオクチル/臭化ペルフルオロデシルエマルジョンよりも特定の濃度の臭化ペルフルオロオクチルエマルジョンを安定化するのに有効であり、より長時間の器官保持時間、PFDB結晶の形成、より大きなエマルジョン粒子のようなより高度に濃縮されたエマルジョンで経験される有意な問題、製造の問題およびより高濃度の臭化ペルフルオロデシルに特有の反復投与の不能を伴わないことを実証する。

Description

使用の分野
本発明は血液のための酸素キャリアとしてヒト患者に使用するために最適に処方されたフルオロカーボンおよびペルフルオロカーボンエマルジョンならびに相同または同種異型血液への暴露の予防およびその他の治療用途に関する。さらに具体的には、本発明は器官保持時間が最低であり、それにより望ましくない副作用を回避し、最適な安定性を表す連続水相および不連続フルオロカーボン相を有するフルオロカーボンエマルジョン処方を志向する。
発明の背景
血液は無細胞血漿連続相中のコロイド粒子(例えば赤血球、白血球、タンパク質等)の複合分散物である。血液の分散相の構成成分は組織への酸素輸送、止血、宿主防御、栄養およびホルモンの輸送、ならびに代謝廃棄物の除去を含むほとんどの生物学的機能を提供する。血液の全ての機能が重要であるが、血液の中心的な機能は酸素の分配である。酸素欠乏または虚血は急速に細胞、組織および器官の非可逆的な分解に至る。
現在、ヒト血液は急性および慢性貧血患者に最適な薬剤である。しかしながら、提供された血液にその危険性がないわけではない。提供された血液はヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎またはクロイツフェルト・ヤコブ病を引き起こすプリオンのような多数の病原体を夾雑し得る。同種異型血液の輸血はまた癌の再発増加および外科患者における偶発的なまたは術後の感染に連関している免疫抑制を招き得る。Blumbergetら、Blood 66(補1)274a(1966);Maetaniら、Ann.Surg 203:275(1986)。
危険性の公共認識は感染の危険性に集中しているが、輸血ミスに至る事務的な誤りが、輸血に関係する重篤な罹患率および死亡率の最も一般的な原因である。意図されたレシピエント以外へのRBCの投与の報告された発生率は19000回に1回である;しかしながら誤輸血の前向き研究では実際の発生率は400単位に1回であることが見出された。米国血液銀行協会、Noninfectious Serious Hazards of Transfusion, Association Bulletin 01−4(2001)。血液の保存の間に、非可逆的なRBC損傷および輸血後生存の低下を招く生化学的および形態学的変化が血液中に生じる。このいわゆる「保存障害」は2,3−ジホスホグリセリン酸(2,3−DPG)の枯渇を引き起こし、何時間も要する過程である天然の充満までヘモグロビンによる効果的な酸素輸送ができなくなる。Valeriら、「Restoration in vivo erythrocyte adenosine triphosphate,2,3−diphosphoglycerate,potassium ion and sodium ion concentrations following transfusion of acid−citrate−dextrose−stored human red blood cells」J.Lab Clin Med.73:722−33(1969)。保存された血液はまた非溶血性発熱性輸血反応の第一要因として意味づけられるサイトカインのような生物反応性物質をも含有する。
疾病伝搬および事務的な誤りは依然輸血に関する深刻な課題であるが、ドナー血液の利用性は国際的なレベルで重大な懸念として最近浮上してきている。血液不足に関する懸念は感染牛肉の摂取による収縮変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の潜在的危険性のために、長時間ヨーロッパに滞在した血液ドナーを控えるための最近のガイドラインによりある程度後押しされているように思われる。加えて血液ドナープールの減少(高齢化およびドナー制限の増加のため)および多数の高齢患者における大手術のための血液の需要の増加が、選択的手術の取り消しまたは遅延を引き起こす頻繁な地域的な不足を招いている。ドナー血液は投与されるときに、しばしば古く、そして各患者に関して型分けおよび交差適合しなければならず、その過程は危険な輸血遅延を招き得る。血液はまた冷蔵されなければならず、そして貯蔵期限はおよそ42日間であり、そのためにへき地における外傷の状況のような多くの危機的な例で利用不能になる。保存血液の不足は全世界的に重大な問題であり、多くの場合に数日分の供給の血液ストックしかなく、そのために災害への対処が非常に困難になる。
血液の酸素輸送機能に取って代わる治療薬に関する提案が世界中で最優先され続けている。目標は病原体不含の、安定した、長期間保存可能な、低価格の、そして必要とされればいつでもどこでも即座に利用可能である普遍的ドナー生成物である、ドナー血液の代わりを見出すことである。現在では代用血液で行われている、精製ヘモグロビン誘導体およびフルオロケミカルエマルジョンの二つの異なる研究法がある。
1.精製ヘモグロビン基盤の酸素分配
しばらくの間、ヘモグロビン基盤の酸素キャリアを生成するための努力が為されていた。ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶおよそ64000ダルトンの四量体タンパク質である。ヘモグロビンは各々約140個のアミノ酸の四つのサブ単位ポリペプチド鎖から構成される。各鎖は16100ダルトンの分子量を有し、そして1分子の酸素に結合できるテトラピロール鉄含有補欠分子族であるヘムを担持する。ヒトではいくつかの異なる型のヘモグロビンがあり、そして全ての型が四つのサブ単位を含有する。ヒトにおけるヘモグロビンサブタイプにおける差異はグロブリンの一次構造(アミノ酸配列)に限定される。
血液は、組織中に酸素を分布させる赤血球内のヘモグロビンに結合した酸素を輸送する。結果的に、酸素に結合し、そして放出するヘモグロビンの能力により、それが代用血液に関する魅力的な対象になっている。しかしながらヘモグロビンは本質的に不安定な分子である。その赤血球環境の外では、ヘモグロビン分子は急速にアルファおよびベータサブ単位から構成される二量体に解離し、それは腎臓により急速に循環から除去される。故に適当なストロマ不含のヘモグロビン分子の開発は、注入時に二量体に解離しないヘモグロビンの安定した、機能的な四量体の開発に依存する。その赤血球環境の外でのヘモグロビンの別の問題は、それが高い酸素親和性(通常赤血球に存在するその正常なアロステリックエフェクター、2,3−ジホスホグリセリン酸を欠如するため)および尿細管閉塞および結果的には腎不全を引き起こす高濃度の可能性を有することにより引き起こされる。故に、細胞不含状態で、または溶液中で有効な酸素キャリアにするために、ヘモグロビンを化学的に修飾して解離および酸素親和性の問題を回避しなければならない。第二の目標は費用効率が高い様式で高収率の生成物を生成することである。
解離を防御するためにヘモグロビンタンパク質サブ単位を一緒に化学的に結合すること(例えばリン酸ピリドキサールのヘモグロビン分子への結合または種々のその他の架橋計画による)、および組換えヘモグロビンを生成することを含むいくつかの新規な方式で、この問題を解決するための努力が行われている。ヘモグロビンを化学的に改変することに伴われる問題には、供給が不足しているヒト血液のような生ヘモグロビン材料の十分な供給を確実にすることが含まれる。ウシ由来のヘモグロビンのようなその他の哺乳動物から得られたヘモグロビンの使用は、ウシ海綿状脳症ウイルスおよびその他の病原体のために懸念される。一つの代替は組換えヘモグロビンである。組換えヘモグロビンに伴われる問題はその収率が低いことおよび、したがってその生成コストが高いことである。内毒素の夾雑がしばしば大腸菌生成物に伴う問題であるので、純度の懸念もある。
人工ヘモグロビンの別の問題はその他の遊離気体のその結合である。遊離ヘモグロビンは一酸化窒素に貪欲に結合する。このインビボ結合が臨床的に重要かどうかは分かっていないが、一酸化窒素の結合はヘモグロビン注入後に一般的に認められる高血圧の原因として意味づけられている。ストロマ不含ヘモグロビンが血流の局所的自動調節にどのような影響を及ぼすか、およびヘモグロビン注入が関連する高血圧が病態生理学的結果を有するかどうかが依然決定されていない。目下のところ、この現象の重要性を解明するためにこれらの化合物を利用する多くの動物または臨床研究で利用可能なデータはあまりない。
2.フルオロカーボンエマルジョン
フルオロケミカルはフッ素原子からなる分子である。フルオロケミカルまたはフルオロカーボンなる用語はペルフルオロケミカル(「PFC」)なる用語と対比され、主に炭素およびフッ素原子からなる(すなわち水素原子なし)化学的に不活性な合成分子である。液体PFCおよびフルオロカーボンは一般的に透明、無色および実際には無臭であり、そして酸素、二酸化炭素および窒素を含む多くの気体のかなりの量を物理的に溶解する固有の能力を有する。PFCは疎水性であるので、水と混和できず、そしてしたがって界面活性剤(例えばリン脂質)と乳化して、静脈内使用のための水性基盤のPFCエマルジョンを創成しなければならない。高剪断(例えばホモジナイズ)条件下でPFC、界面活性剤および水性バッファーを混合することにより、微小なサブミクロンの大きさの液滴が水性溶媒中に形成される。PFC液滴は、界面活性剤分子の疎水性脂質末端がPFC含有コアに向かう界面活性剤の単層により取り囲まれているが、親水性リン酸含有極性頭部基は液滴の外側表面を形成し、そこで水性環境に暴露される。
PFCおよびフルオロカーボンはヘモグロビンと同一の様式で酸素を組織に分配するのではない。酸素はフルオロカーボン化合物中で高溶解性であり、血管内注射後、それは血液の血漿相に存在する。故にフルオロケミカルの酸素分配に対する寄与は血漿コンパートメント中に担持されるOを増加させるその能力による。フルオロカーボン化合物に担持されるOの絶対量は比較的少ないが、高濃度吸気酸素分画(FiO)でさえ、しばしば90%を超える非常に高いパーセンテージの輸送Oが組織で放出され、フルオロカーボン相からのO抽出に至る。
PFCエマルジョンは、血漿コンパートメント内で担持される溶解した酸素が、酸素分圧(PO)の線形比例的な量で増加することにより血液の全酸素含量を増加させる。POレベル上昇(高濃度の酸素を吸気している患者)で、PFCエマルジョン内の酸素は赤血球(RBC)中のヘモグロビンに結合した酸素よりもさらに速やかに組織に利用可能である。これはPFCエマルジョンからの酸素が線形的に負荷および開放されるが、一方赤血球からの酸素はS形オキシヘモグロビン解離曲線にしたがって化学的に結合および遊離するためである。正常な環境下での組織でのヘモグロビンからのOの抽出は20−25%の範囲であり、そしてフルオロカーボン化合物が循環中でフルオロカーボンに溶解したOを組織に分配している場合よりも全体的に低い。
ヘモグロビンは大気酸素レベルでほぼ飽和しており、そしてその酸素含量は吸気された酸素濃度の増加により任意の有意な量で増加することはできない。PFCエマルジョンに関する抽出比率は、周囲条件下でヘモグロビンに関する約20−25%に比較して、約60%である。高濃度の酸素が吸気された場合、PFCエマルジョンからの酸素抽出は90%以上に達する。結果的にフルオロカーボンまたはPFCエマルジョンが血液中に存在する場合、フルオロカーボンまたはPFCエマルジョンはいつもその酸素負荷を最初に放出し、故にヘモグロビンに結合した酸素を保存するであろう。非常に多くのインビボおよびインビトロ研究が、酸素分配および維持の強化または手術の間の全身および組織酸素供給の改善のためのPFCエマルジョンの効果を支持している。
1960年代初期から血管内酸素治療として使用するための安定したフルオロカーボンエマルジョンの開発のために多くの様々な探査努力が試みられている。注射用フルオロカーボンエマルジョンの最初の商業用の開発は、およそ30年前に株式会社ミドリ十字(大阪、日本)により、第一に合成ポロキサマーで乳化された14%w/vペルフルオロデカリンおよび6%w/vペルフルオロトリプロピルアミン、プルロニックF−68および少量の卵黄レシチンを含む20%w/vPFCエマルジョンであるフルオゾールの生成で達成された。
この最初に作成された生成物の制限には基幹(stem)エマルジョンの凍結保存に関する必要性、使用前のエマルジョンの解凍および続く二つの付属の溶液との混合の必要性が含まれた。一次的には合成プルロニック界面活性剤により引き起こされた、再構築後の短い生成物安定性(8時間)および有意な副作用(例えば重篤な代替経路補体活性化)はフルオゾールに関する大きな問題であった。
重篤な貧血およびひどく出血しているエホバの証人の患者においてフルオゾールが大規模に研究され、そして酸素を分配する能力を明確に実証した。Tremperら、「The preoperative treatment of severely anemic patients with a perfluorochemical oxygen−transporting fluid,Fluosol−DA」;N Engl J Med 307:277−83(1982);Gouldら、「Fluosol−DA as a red−cell substitute in acute anemia」;N Engl J Med 314:1653−6(1986)。
しかしながら、一時的な酸素供給の利益がその宗教的信念のために輸血を拒むこれらの出血する、および極度の貧血の患者において死亡率の結果を有意には改善しなかったという理由で、フルオゾールはこの大容量「代用血液」適応に関してFDA承認を受けなかった。フルオゾールを開発するための次の努力は、それを冠動脈バルーン血管形成(PTCA)手順の補助として、すなわち長時間のバルーン膨張の間の遠位心筋に酸素供給するためにPTCAカテーテルを通して灌流され得る酸素担持低粘度液体として使用することに集中した。PTCA間のフルオゾール処置効果は心筋虚血の軽減、バルーン膨張の間の心室機能の維持(心拍出量の改善)および壁運動アーチファクトの減少(すなわちSTセグメント上昇の減少および左心室駆出分画の改善)に基づいて明確に実証された。Bellら、「Does intracoronary infusion of Fluosol−DA 20% prevent left ventricular diastolic dysfunction during coronary balloon angioplasty?」;J Amer Coll Cardiol 16:959−66(1990);Cowleyら、「Perfluorochemical perfusion during coronary angioplasty in unstable and high−risk patients」;Circulation 81(補IV):IV−27−34(1990)。これらのデータは、1989年12月にFDAにより与えられた米国におけるフルオゾールの販売承認の基礎を成した。今までフルオゾールはFDAにより承認された唯一の合成酸素治療薬に相当する。
1980年代後期および1990年代初期の間のさらなる臨床試験は一次放射線に対する補助としてフルオゾールを使用する癌患者において行われた。これらの研究には進行性頭頸部悪性腫瘍、未分化星状細胞腫、肺の癌腫および多形神経膠芽腫の患者が含まれた。1990年代初期には、血栓溶解剤(組織型プラスミノーゲンアクチベータ)での処置後の補助的な再灌流治療としてのフルオゾールの安全性および効果を評価するために、430人の急性心筋梗塞の患者において大規模多施設臨床研究でも試験された(TAMI−9)。フルオゾール処置群では平均梗塞サイズの低下および虚血再発が少ない傾向が観察された。残念ながら全駆出分画、局所的な壁運動または左心室駆出分画において有意な改善は認められなかった。大容量のフルオゾール投与(15ml/kg)のために、一過性のうっ血性心不全および肺水腫の傾向が観察され、それはフルオゾール処置の酸素供給効果の利益を軽減する可能性があった。
第二の適応を開発するためのこれらの努力にもかかわらず、ミドリ十字は1994年初期に、第一にはPTCA市場での販売不振のために(自動灌流カテーテルが市場に参入してきたので、今やバルーン膨張の間にカテーテルの管腔を通して血液を灌流することが可能になったので)フルオゾールの製造を中止した。加えて長いバルーン膨張時間がPTCA後の冠動脈再狭窄の比率の低下と相関しなかったというデータが有効になっていた。それにもかかわらずフルオゾールのFDA承認は、酸素治療の開発における非常に有意な画期的出来事に相当した。この承認により、患者の虚血組織における低酸素症を寛解させるために、PFC基盤のエマルジョンが一時的な血管内酸素キャリアとして安全および有効の双方であることが実証された。
最近の10−15年の間の商業的探査努力により、第一世代の希釈処方と比較して生成物の特徴が改善された第二世代フルオロカーボンエマルジョンの開発に至っている。最も成功したこれらの努力は、わずかになお酸素溶解性が高いさらに多用途の直鎖状フルオロカーボン化合物(環状フルオロカーボン分子に代わって)に集中した。これらの第二世代フルオロカーボンエマルジョンにおけるさらなる改善は界面活性剤としてのレシチン、すなわち卵黄リン脂質(EYP)の使用を伴う。EYPは何年もの間イントラリピッド(すなわち食物を摂取できない患者の静脈内栄養補給のためのトリグリセリド基盤の脂肪エマルジョン)のような非経口生成物を作成するために使用されており、そして以前に使用された合成プルロニック基盤の界面活性剤よりもなおさらに生体適合性である。
フルオロカーボン基盤の酸素キャリアを生成するための別の開発努力はロシアにおいて長年にわたって進行中であるが、この生成物に関する英語の文献には有効な情報が比較的少ない。PERFTORANは元来Institute of Theoretical and Experimental Biophysics(プシーチノ、ロシア)で開発され、プルロニックF−68に類似した合成ポロキサマー(Proxanol)で乳化された14%w/vペルフルオロデカリンおよび6%w/vペルフルオロ−n−メチルシクロヘキシルピペリジンからなる20%w/vエマルジョンである。PERFTORANエマルジョンの平均粒子径は<0.2μmである。しかしながらエマルジョンは凍結保存されなければならない(3年まで)が、解凍後2週間しか冷蔵で維持できない。Perftoranは見たところ外傷性失血を被る軍人での戦場使用を含む広範な様々な臨床および医学的適応にわたる500人を超える患者で評価されている。Vorobyevら、「Perfluorocarbon emulsion Perftoran−The plasma substitute with gas transporting function」;Artif Cells Blood Subst Immob Biotech 24:453(1996)。
ロシアではPERFTORANは1999にヒト使用に関して承認された。PERFTORANに関する適応症説明書は「ショック、失血、多発外傷、皮膚の広い表面積での火傷、仮死状態の場合に、および移植学において気体輸送機能を有する代用血液調製物として」使用されるべきであることを主張している。それはまた心肺バイパス法において、四肢虚血を処置するための局所灌流で、および重篤なアルコール中毒のために臨床使用されている。しかしながら報告によると、cGMPガイドラインにしたがって生成物を製造することができないために、PERFTORANを用いる研究はロシア以外では実施されたことがないことは特筆すべきである。
Synthetic Blood International,Inc.(SBI)は長年にわたってLeland Clark Jr.の初期の先駆的な研究に基づいてPFCに関して研究している。この会社の最初の焦点は糖尿病のための移植可能なグルコースバイオセンサを開発し、そして液体換気のためにPFCを利用することであった(Fluorovent)。SBIが見たところカスタム合成されたC1020専売PFC分子に基づいた濃縮60%w/vPFCエマルジョンを処方したのは過去数年のみである。この化合物はインビボ使用のための生体適合性PFCエマルジョンを作成するのに好ましい物理学的特性を有していると主張されている。しかしながらその専売化合物は非常に高いレベルの純度で合成するのが困難である可能性があり、そしてそれがカスタム合成を必要とするので、それは恐らく生成するのに高額の費用がかかる。また、組織滞留時間がその他のさらに一般的に使用されるペルフルオロデカリンまたはペルフルブロンのようなPFCよりも長い可能性があろう。2003年2月にはSBIはOXYCYTEに関してその治験薬の申請を発表し、そして2003年4月に用量漸増第I相研究を開始するためのFDA承認を受けた。
1990年代初期にHemagen/PFC(セントルイス、ミズーリ州)はOXYFLUORを濃縮エマルジョンとして開発することを試みたときに、カスタム合成されたフルオロケミカル、ペルフルオロジクロロオクタン(C16Cl;PFDCO)の使用を試みた。Kaufman RJ.「Clinical development of perfluorocarbon−based emulsions as red cell substitutes」;Blood Substitutes:Physiological Basis of Efficacy.Boston:Birkhauser,52−75(1996)。Hemagen/PFCはそのOXYFLUORエマルジョンの粒子径を小さくし、そしてそれにより生成物の安定性を増大させるためにエマルジョンに油を添加することにより新規の研究法を試みた。得られたOXYFLUORエマルジョンはPFDCOをトリグリセリド(サフラワー油)および唯一の界面活性剤としてEYP(78%w/v(40容量/容量%)フルオロカーボンエマルジョン)と組み合わせることに基づいた3相処方であった。OXYFLUORエマルジョンの平均粒子径は0.22−0.25μmであるが、実際には異なる粒子二つの集団;すなわち小型の油滴(トリグリセリド)およびより大きなPFC含有液滴からなった。結果的にヒトにおける副作用プロフィールはさらに顕著であり、これらのより大きなエマルジョン粒子が誘因となる急性相反応による有意な熱性反応およびインフルエンザ様の病徴を引き起こした。Kaufman R.「The results of a Phase I clinical trial of a 40% v/v% emulsion of HM351(OxyfluorTM)in healthy human volunteers」;Artif Cells Blood Subst Immob Biotech;22:A112(1994)。
Hemagenは一般的にバイパス後に遭遇する認知機能障害を寛解させる適応を続行しているが、それは心肺バイパス法の間に作成された気体状の微小塞栓によりある程度引き起こされる局所脳虚血のためであると推定される。心肺バイパス法の初期段階第IIa相安全性研究が開始されたが、全ての患者は急性の副作用プロフィールを抑制するためにデキサメタゾンで前処置されなければならなかった。これにより究極的にはこれらの臨床研究の廃止に至り、そして開発は究極的には中止された。
記載されたような種々のフルオロカーボンエマルジョンの問題にもかかわらず、具体的なPFCおよび界面活性剤の選択に依存して、長期的に安定なままであり、そして生体適合性である、並外れて小型の粒子(直径中央値<0.2μm)を含む、ヒトでインビボ使用するための安定したフルオロカーボン水中エマルジョンを作成することが可能である。しかしながら適した濃度および量の適切な物理学的および化学的特性を有する特定の(複数の)フルオロカーボンならびに適した界面活性剤の選択は、フルオロカーボンエマルジョンがインビボでどれだけ安全(すなわち生体適合性である)か、およびフルオロカーボン分子がどれだけ速やかに身体から排泄されるかを決定するのに非常に重要である。その他のフルオローボン化合物または部分的にフッ素化された夾雑物を含有する不十分な純度のフルオロカーボンは、フルオロカーボンエマルジョンの安全性に不都合な影響を及ぼすことがあり、そしてしばしば毒性に至る。分子量、脂質溶解性および蒸気圧のようなフルオロカーボンの特徴は全てインビボでのフルオロカーボンの挙動に直接影響する主要な因子である。加えてこれらのフルオロカーボン特性およびフルオローボンと共に使用するための正しい化学的および物理学的特性を有する適切な界面活性剤の選択により、究極的には最終的なフルオロカーボンエマルジョン処方の固有の安定性および貯蔵期限が決定される。
静脈内投与されたフルオロカーボンエマルジョンの薬物動態
静脈内投与されたフルオロケミカルエマルジョンの薬物動態を、図1の4コンパートメントの説明により記載できる。細網内皮系(「RES」)の循環単球または組織常在性マクロファージによる食作用によりエマルジョン滴は循環から除かれる。循環単球は肺循環を通過し、そして循環中のエマルジョン滴を貧食し、次いでフルオロケミカルが血液/空気界面をわたって輸送され、そして呼気中に排泄される肺胞腔に遊走する。この過程に関する速度定数k10は非常に小さいことが示されており、それはこの経路によりわずかなフルオロカーボンしか除去されないことを示している。優勢な血液除去メカニズムはRESの細胞による液滴の取り込みおよび食作用を伴う。投与された用量のおよそ80%以上が血液から除去された後にRESの器官、主に肝臓および脾臓において見出される。
ペルフルオロカーボンは化学的および生物学的に不活性であり、そして故にペルフルオロケミカルに関する代謝は観察されない。食作用の後、細胞内フルオロケミカルは循環脂質キャリア(すなわちカイロミクロンおよびリポタンパク質)に組み込まれることによりRES細胞から除去される(k24)。この時点でフルオロケミカルを呼気中に排泄(k40)、脂肪組織に区分化(k43)またはRESに戻す(k42)ことができる。究極的な除去は、コンパートメント4に集団化または脱集団化する速度定数の大きさに依存する。律速段階k24は、フルオロケミカルの脂質溶解性に決定的に依存する過程であるフルオロケミカルの脂質キャリアへの物質移動により制御される。R.Freyら、「Oxygen Carrying Colloidal Blood Substitutes:5th Int. Symp. On Perfluorochemical Blood Substitutes,Munich,Germany」50頁(1982)のR.E.MooreおよびL.C.Clark。コンパートメント3(脂肪組織)で見出されるフルオロケミカルの濃度はまたフルオロケミカルの親油性特質にも依存する。脂肪はあまり灌流されないので、循環に豊富であるRESと比較して除去は緩徐であろう。脂肪への再分配は全身除去速度(k40)の低下に至る。典型的なフルオロケミカル(例えば臭化ペルフルオロオクチル)に関しては、速度定数は時間−1の単位で以下の大きさである:k10=0.000、k12=0.04、k24=0.006、k42=0.002、k34=0.002、k40=0.07。
フルオロケミカルの特質は観察された薬物動態に顕著な影響を及ぼすことができる。論じたように、k24は一次的にはフルオロケミカルの親油性に依存する。実際にk24での有意な差異は、米国食品医薬品局により承認されたバルーン血管形成手術の間に酸素を組織に分配するためのフルオロカーボンエマルジョンであるフルオロカーボンエマルジョン、フルオゾールの二つのフルオロケミカル構成成分に関して観察されている(株式会社ミドリ十字、大阪、日本)。RES排泄に関する速度定数(k24)はF−デカリンおよびF−トリプロピルアミンに関して各々0.10および0.011/日に等しく、そして全身クリアランスは臭化ペルフルオロオクチルに関してよりも非常に緩徐である。
フルオロケミカルの血管内残留性は「代用血液」適用で使用するために設計されたエマルジョン生成物の効果に直接比例するので、それもまたその生体適合性において重要な因子である。k12(RESによる粒子の取り込み)の大きさはフルオロケミカルの全用量、エマルジョン滴径、およびもしかするとRESによる液滴認識を促進する特異的なオプソニンもしくはジスオプソニン(dysopsonin)の結合、またはこれに代えてエマルジョン滴に特徴的な所定の「ステレス様」特徴に決定的に依存する。2相の分散相構成成分を含有するフルオロケミカルエマルジョンでは、フルオロケミカル構成成分の有意な区分化が、連続相を通るさらに水溶性の構成成分の分子拡散のために、異なる大きさの液滴間で観察される。これはさらに水溶性のフルオロケミカルがより大きな液滴内で濃縮される状況に至るが、一方より小さな液滴はより緩徐に拡散する不溶性構成成分で富化される。異なる大きさの液滴が異なるフルオロケミカル量を有するので、特により大きな液滴がRESにより選択的に除去されるので、血液からの除去に関する個々の速度定数が幾分異なり得る状況を想像することは可能である。
除去過程におけるフルオロケミカル親油性の重要性のさらに直接的な証拠は、ペルフルオロケミカルの2工程除去メカニズムを提唱したObraztsovらの研究に由来する。モデルによれば、第一の工程はRES細胞の細胞質を通って血流へのペルフルオロケミカルの分子拡散である。この過程は数分から数時間の期間で生じる。第二の(律速)工程は脂質キャリアによるRES器官から肺へのフルオロケミカルの物質移動を伴い、その過程はPFC親油性に決定的に依存する。洗練された実験ではObraztsovは、ペルフルオロケミカルの器官保持時間が、PFCエマルジョン投与後に与えられた脂質エマルジョンの静脈内注射後により有意に低下し得ることを見出した。したがって脂質エマルジョンは、器官からPFCを除去し、そしてそれを肺に運ぶ血液中の脂質シンクを提供することができる。Obratzsov,V.Vら、J.Fluorine Chem.54:376(1991)。
フルオロカーボンエマルジョンの安定性
酸素輸送のために設計されたサブミクロンのフルオロケミカルエマルジョンは熱力学的に不安定である。非可逆的な液滴粗大化の第一のメカニズムはオストワルド熟成である。J.G.Reiss,Colloids Surfaces 84:33(1994)。オストワルド熟成はケルビン効果の結果であり、それにより異なる大きさの液滴間での表面張力の小さな差異が経時的により大きな液滴の成長およびより小さなものの収縮に至る。液滴間の物質移動は、連続相を通る分散相の分子拡散により生じる。オストワルド熟成はエマルジョンが作成された後の保存の間のみならず、製造過程の間でも生じ得る。オストワルド熟成を介するエマルジョン粗大化に対抗するために、HaguchiおよびMisraは連続相であまり不溶性でない高分子量の第二の分散相構成成分の添加を提唱した。Higuchiら、J. Pharm. Sci 51:459(1962)。この場合、異なる液滴間の二つの分散相構成成分の有意な区分化は、より小さな液滴に濃縮されている低水溶性の構成成分で生じる。
二つの構成成分相系におけるオストワルド熟成の間に、毛細管効果の結果、異なる大きさの液滴間の化学的ポテンシャルの差異が、二つの構成成分の区分化の結果である化学的ポテンシャルにおける差異により釣り合っている場合、平衡が確立される(蒸発/液体平衡に関するラウールの法則に類似)。
初期液滴径および分布、液滴安定性および究極的にはフルオロケミカルエマルジョンに関して見出された、観察された副作用の多くはオストワルド熟成の低下に決定的に依存する。したがってフルオロカーボンエマルジョンの物理学的安定性は分散されたフルオロカーボン相の性質に決定的に依存する。
分子拡散を介する液滴成長の動態は最もしばしばLifshitz−Slezov−Wagner(「LSW」)理論に関して記載されている。LSW理論は単一の構成成分分散相に関して、平均半径の3乗が経時的に比率ωで直線的に増加することに関係する。
ω=d/dt(a)=8γVCD/9RT
(式中、aは半径であり、γは界面張力であり、Vは分子容量であり、Cは水溶性であり、Dは拡散係数であり、Rはモル気体定数であり、そしてTは絶対温度である)。フルオロカーボンエマルジョン安定性に関してとりわけ重要なことは、フルオロカーボンの分子量に決定的に依存するパラメータである水溶性の項目である。一般的に高分子量のフルオロカーボンは低水溶性を呈し、そして故にエマルジョン安定性がより大きい。しかしながら注射用酸素キャリア(すなわち代用血液)とされているフルオロカーボンエマルジョンはまた生体適合性でなければならない。とりわけ重要なことはRESの器官中でのフルオロカーボンの半減期である。高分子量フルオロカーボンは強化されたエマルジョン安定性を呈するが、それらはまたRESにおいて極めて長時間保持される。
より高分子量の、およびより低水溶性の第二フルオロケミカルまたはフルオロカーボン/水界面で界面張力を有意に低下させるフッ素化界面活性剤を含めることによりオストワルド熟成を低下させることができる。残念なことに低水溶性の第二フルオロカーボンの処方への添加により、循環脂質キャリア中のフルオロケミカルの溶解性もまた低下するであろうから、器官保持の増加、非常に重篤な副作用に至る。フッ素化界面活性剤は重篤な毒性課題を有することが分かっており、それによりそれらはエマルジョン安定剤としては危険性が高くなる。エマルジョン安定性/器官保持のジレンマを打破するために、要求されるエマルジョン安定性/器官保持特徴を提供し、器官保持時間が短く生体適合性であり、そして必要とされる安定性の利益を得るができるだけ最小量で添加される第二フルオロカーボンが選択されなければならない。これを行うためには選択されたフルオロケミカルは親油性であるべきである(例えば臭化ペルフルオロデシル)。非親油性化合物(例えばF−トリプロピルアミンおよびF−N−メチルシクロヘキシルピペリジン)はあまりに緩徐に排泄され、そしてフルオロケミカルエマルジョンを有効に安定化できない。
いくつかの代表的な第一および第二フルオロカーボンは以下の一覧に含まれる。
1.第一フルオロカーボン
第一フルオロカーボンはその短い器官保持時間および生体適合性に関して選択される。一般的に、器官での半減期は好ましい約4週未満であり、さらに好ましくは約2または3週未満であり、そして最も好ましくは7日以下である。分子量は約460から約550ダルトンである。
かかる可能性のある第一フルオロカーボンにはCCH=CHC(「F−44E」)、i−CFCFCH=CHC13(「F−i36E」)のようなビス(F−アルキル)エテンおよびC1018(F−デカリン、ペルフルオロデカリンまたはFDC)のような環状フルオロカーボン;F−アダマンタン(FA);ペルフルオロインダン;F−メチルアダマンタン(FMA);F−1,3−ジメチルアダマンタン(FDMA);ペルフルオロ−2,2,4,4−テトラメチルペンタン;F−ジ−またはF−トリ−メチルビシクロ[3,3,1]ノナン(ノナン);F−トリプロピルアミン、F−4メチルオクタヒドロキノリジン(FMOQ)、F−n−メチル−デカヒドロイソキノリン(FMIQ)、F−n−メチルデカヒドロキノリン(FHQ)、F−n−シクロヘキシルピロリジン(FCHP)およびF−2−ブチルテトラヒドロフラン(FC−75またはRM101)のようなC7−12ペルフルオロアミンが含まれる。
第一フルオロカーボンのその他の実例には、臭化ペルフルオロオクチル(C17Br,USANペルフルブロン)、1−ブロモペンタデカフルオロヘプタン(C15Br)および1−ブロモトリデカフルオロヘキサン(C13Br、臭化ペルフルオロヘキシルまたはPFHBとしても公知)のような臭素化ペルフルオロカーボンが挙げられる。その他の臭素化フルオロカーボンはLongに対する米国特許第3975512号および第4987154号、ならびに米国特許第5628930号および第5635538号に開示されており、その全てを参照により本明細書の一部とする。
1−クロロ−ヘプタデカフルオロオクタン(C17Cl、塩化ペルフルオロオクチルまたはPFOClとも称される);水素化ペルフルオロオクチルおよび様々な数の炭素原子を有する類似の化合物のようなその他の非フッ素置換基を有するフルオロカーボンもまた企図される。
本発明にしたがって企図されたさらなる第一のフルオロカーボンには、ペルフルオロアルキル化エーテル、ハロゲン化エーテル(特に臭素化エーテル)または(CFCFO(CFCFOCF(CF;(COのようなポリエーテルが含まれる。さらに例えば一般式C2n+1−Cn’2n’+1;C2n+1OCn’2n’+1またはC2n+1CH=CHCn’2n’+1(式中nおよびn’は同一かまたは異なっており、そして約1から約10である)を有する化合物のようなフルオロカーボン−炭化水素化合物を使用することができる(化合物が室温で液体である限り)。かかる化合物には例えばC17およびC13CH=CHC13が含まれる。
第一フルオロカーボンとして使用するためのその他の可能なフルオロカーボンにはペルフルオロアミン;一般構造:
2n+1
(式中、nは6から8の整数であり、そしてRはBr、Cl、I、CHまたは2もしくは3個の炭素原子の飽和もしくは不飽和炭化水素からなる群から選択される親油性部分を含む)を有する末端置換された直鎖脂肪族ペルフルオロカーボン;一般構造:
2n+1−CH=CH−Cn’2n’+1
(式中、nおよびn’の合計は6から10に等しい)を有するビス(F−アルキル)エテン;および一般構造:
2n+1−O−Cn’2n’+1
(式中、nおよびn’の合計は6から9に等しい)を有するペルフルオロエーテル;
が含まれる。
加えてペルフルオロシクロアルカンもしくはペルフルオロアルキル−シクロアルカン、ペルフルオロアルキル飽和複素環式化合物、またはペルフルオロ第三級アミンの一般的な群から選択されるフルオロカーボンは第一のフルオロカーボンとして利用されるのに適当であり得る。一般的にはSchweighart、米国特許第4866096(その全てを参照により本明細書の一部とする)を参照のこと。
エステル、チオエーテルおよびその他の種々の修飾された混合フルオロカーボン−炭化水素化合物(異性体を含む)もまた本発明の第一のフルオロカーボンとしての使用に適当な広義のフルオロカーボン材料に包含されることは理解されよう。その他の適当なフルオロカーボンの混合物もまた企図される。
本明細書に列挙されていないが、治療適用に役立つであろう、本開示に記載された特性を有するさらなるフルオロカーボンもまた企図される。かかるフルオロカーボンは市販により入手可能であるかまたは特別に調製され得る。当業者には理解されるように、当分野において周知であるフルオロカーボンの調製のための種々の方法が存在する。例えばSchweighart、米国特許第4895876号(その全てを参照により本明細書の一部とする)を参照のこと。
2.第二フルオロカーボン
第二フルオロカーボンは一つまたはそれより多い親油性部分で置換され、そして第一のフルオロカーボンよりも高分子量である脂肪族フルオロカーボンでよい。親油性部分はフルオロカーボン分子の末端で置換されていてよい。好ましくは、第二のフルオロカーボンの分子量は約540ダルトンより大きい。第二のフルオロカーボンの分子量の上限に対する制約はしばしばその器官保持時間および第一のフルオロカーボンにより可溶化されるその能力に関係する。最も好ましい第二のフルオロカーボンは約150℃より高い沸点および約1×10−9モル/リットル未満の水溶性を有する。
もちろん当業者に理解されるように、様々な親油性基で置換された多くのフルオロカーボンを本発明の第二のフルオロカーボンとして適当に使用することができる。かかるフルオロカーボンにはエステル、チオエーテルおよび種々のフルオロカーボン−炭化水素化合物(異性体を含む)が含まれ得る。本明細書にて示された基準を満足する二つまたはそれより多いフルオロカーボンの混合物もまた本発明の第二のフルオロカーボンとしての使用に適当な広義のフルオロカーボン材料に包含される。本明細書に列挙されていないが、治療適用に役立つであろう、本開示に記載された特性を有するフルオロカーボンもまたさらに企図される。
親油性部分は最適にはBr、Cl、I、CHまたは2もしくは3個の炭素原子の飽和もしくは不飽和炭化水素からなる群から選択される。結果的に好ましい第二のフルオロカーボンを一般式:
2n+1XまたはC2n
(式中、nは8以上、好ましくは10から12であり、そしてXはBr、ClまたはIからなる群から選択されるハロゲン化物である)により表されるような末端で置換されたフルオロカーボンハロゲン化物;一般式:
2n+1−(CHn’CH
(式中、nは8以上、好ましくは10から12であり、そしてn’は0から2である)により表される1−アルキル−ペルフルオロカーボンもしくはジアルキルペルフルオロカーボン;一般式:
2n+1−Cn’(2n’−1(式中、nは10以上、好ましくは10から12であり、そしてn’は2または3のいずれかである)により表される1−アルケニル−ペルフルオロカーボン;または
以下の一般構造:
Br−(C2n+1−O−Cn’2n’+1
(式中、nおよびn’は各々少なくとも2であり、そしてnおよびn’の合計は8以上である)を有する直鎖状もしくは分岐した臭素化ペルフルオロエーテルもしくはポリエーテル;
の群から選択できる。
最も好ましくは、本発明の第二のフルオロカーボンは直鎖状もしくは分岐した臭素化ペルフルオロアルキルエーテル、臭化ペルフルオロデシル(C1021Br);臭化ペルフルオロドデシル(C1225Br);1−ペルフルオロデシルエテン(C1021CH=CH);および1−ペルフルオロデシルエタン(C1021CHCH)からなる群から選択され;臭化ペルフルオロデシルが特に好ましい。
特定の第二フルオロカーボンが問われなければならない問題は、第二フルオロカーボンにより提供される安定性の増大よりも、長い器官保持時間および半減期、毒性、生体適合性およびその他の厄介事の潜在的な問題が勝るかどうかである。
臭化ペルフルオロオクチル(「PFOB」)の化学式はC17Brである。その構造はCF(CFCFBrであり、そしてChemical Abstract Service(「CAS」)番号は423−55−2である。PFOBのその他の物理的パラメータには:
沸点 760mmHgで143℃
蒸気圧 37℃で10.5mmHg
融点 4℃
が含まれる。
PFDBの化学式はC1021Brである。その構造はCF(CFCFBrである。CAS番号は307−43−7である。その他の物理的パラメータには:
沸点 760mmHgで180℃
蒸気圧 37℃で1.5mmHg
融点 55℃
が含まれる。
臭化ペルフルオロデシル(「PFDB」)の臭化ペルフルオロオクチル(「PFDB」)またはペルフルオロデカリン(「FDC」)エマルジョンへの添加はすばらしい室温安定性に至ることが見出されている。その親油性特徴のために、RES中のPFDBの半減期はたった23日であり、静脈内適用に許容される値であると考えられる。またPFDBの添加の結果、粒子径分布が狭く、そして大きな粒子がより少なくなることも見出される。PFDBのPFOBエマルジョンへの添加で、液滴径が異なる液滴間の二つの構成成分の有意な区分化が分子拡散の結果として生じ、それにより不溶性構成成分がより小さな液滴中で濃縮されるようになり、そして高溶解性の構成成分がより大きな液滴で富化する。異なる大きさの液滴間の二つの構成成分の区分化により、ラウールの法則による、より小さい液滴に関する溶解性の低下に至る。これは毛細管圧での差異により引き起こされる化学ポテンシャルにおける差異を補う(すなわちケルビン効果)。濃度が毛細管効果と釣り合う場合、液滴成長は停止する。
二つの構成成分分散相に関するエマルジョン成長速度ωabは以下の等式により与えられる:
ωab=1/[(Ф/ω)+(Ф/ω)]
(式中、ФおよびФは各々フルオロカーボンaおよびbの体積分率である。ωおよびωはフルオロカーボンaおよびbに関して前記の等式により与えられた個々のエマルジョン成長速度である。
PFDBは第二フルオロカーボンに関する理想的な候補であることが分かっているが、PFDBを適切な濃度の適切な第一フルオロカーボン(例えばPFOB)と共に、器官保持および半減期での厄介事を引き起こさないが、依然適したエマルジョン安定性を提供するような量で処方すべきである。さらに、任意のフルオロカーボンエマルジョンをできるだけ短い時間間隔で患者に繰り返し使用することが望まれるので、反復投与を可能にするために最小量のPFDBを使用すべきである。これは適切な量の第一フルオロカーボンとの組み合わせにすべきである。
あまりに高濃度でエマルジョンに存在するPFDBのさらなる厄介事は、その高融点(55℃)のためにエマルジョン中で形成されるPFDB結晶の有意な危険性である。エマルジョン中でのPFDBの結晶化は重篤な安全性および毒性課題を引き起こし得る。高濃度のPFDBは製造過程で冷たい領域に遭遇したときに容易に結晶化し得るという点で有意な製造の懸念もある。PFDBはエマルジョン安定剤であるので、製造過程の間に結晶化すべきであるという点で、これは特に大規模製造でエマルジョンを処方するための深刻な検討材料であり、それは目下の生体適合性/毒性課題であるのみならず、その結晶化によりPFDBがエマルジョンを安定化するための利用性を低くし、そして完成したエマルジョンは製品品質規格に合致する可能性がかなり低くなるであろう。PFDBがあまりに高濃度で存在することにおける別の厄介事は、粒子をあまりに小さくする危険性であり、フルオロカーボン粒子の毛細血管床から組織の間質腔への漏れを引き起こすことがあり、それは難しい保持問題を引き起こす。
故にヒトでインビボ使用するための使用可能なフルオロカーボンエマルジョンを創成することはいくつかの重大な検討材料の均衡を必要とする。ヒトにおけるインビボ酸素輸送のために設計されたフルオロカーボンエマルジョンは少なくとも以下の属性を有するべきである:
1.許容される器官半減期:フルオロカーボンエマルジョン構成成分の器官半減期はできるだけ短く、好ましくは4週未満であるべきである;
2.許容される貯蔵安定性:フルオロカーボンエマルジョンは5℃で最低6か月保存できるべきであり、好ましい貯蔵期限は18か月である。保存期間の間、フルオロカーボンエマルジョンの物理的特徴および生体適合性は変化すべきでない。追加の利便性、適用のより大きな可能性および経費削減のために室温保存が好ましい;
3.許容されるインビボ安定性:エマルジョンは静脈内投与された場合に不都合な物理化学的または生化学的特質である相変化、沈殿、コアセルベーション、合体またはその他の凝集現象を起こすべきではない;
4.すばらしい生体適合性:フルオロカーボンエマルジョンは最小限の副作用および無毒性効果しか誘起してはならない。
5.許容される、または最適な粒子径および分布:エマルジョン粒子径は毒性、貯蔵期限、副作用および生体内分布において大きさおよび分布の双方のために重要な役割を果たし、そしてしたがって許容される範囲内にあるべきである;
6.最終滅菌:エマルジョンは最終滅菌できる物理的特徴のものであるべきである;
7.許容される血液半減期:エマルジョンはその意図される目的のために許容される血液半減期を有するべきである;
8.許容される粘度:組織酸素供給および灌流は粘度に反比例するので、全血/フルオロカーボンエマルジョン混合物の粘度は重大である;
9.低い遊離フッ化物値(free fluoride values):フルオロカーボンはすばらしい化学的安定性を呈するべきである;
10.界面活性剤安全性:界面活性剤は生体適合性であり、そして無毒性であるべきである。
11.許容されるフルオロカーボン含量:フルオロカーボンの生体適合性および毒性は全フルオロカーボン含有に決定的に依存し、そして病気の患者に許容される容量で有効でなければならず、そして反復投与用に処方されるべきである;
12.製造:フルオロカーボンエマルジョンはそれを容易に製造できるようにする物理的特性を有し、そして一貫した生成物を生成するために大規模化された方式にすべきである。処方に使用されるフルオロカーボンは容易に生成され、そしてすばらしい純度を有するべきである;そして
13.反復投薬:フルオロカーボンエマルジョンをできるだけ短い時間間隔で患者に反復投与するために繰り返し使用が可能であるべきである。
発明の要旨
本発明は血液回避およびその他の治療用途のためにヒトにおいてインビボ使用するために理想的に適合した安定化されたフルオロカーボンエマルジョンの処方において広範な実験、分析および複数の因子の注意深い均衡の結果として処方されたフルオロカーボンエマルジョンである。好ましい実施態様は、最小の器官保持時間を達成するが、エマルジョン安定性を維持するように処方されているという点で従来技術のフルオロカーボンエマルジョンよりも優れたフルオロカーボンエマルジョンを構成する。
前記されたように、分子拡散またはオストワルド熟成はフルオロカーボンエマルジョンにおける初期粒子径の重要な決定要素であることが示されている。分散フルオロカーボン相として臭化ペルフルオロオクチルを用いておよそ0.2μmの液滴径を短時間で達成できるが、長時間にわたって持続する0.15−0.20μm未満の液滴径は、長時間にわたる特定の濃度のPFOBおよびPFDBの混合に関して達成できる。連続水相で実質的に不溶性であるが、PFOB中では溶解性であるPFDBは、多分散分散物において小さな液滴の溶解性を低下させることにより分子拡散を阻止するために提供される。特定の濃度のPFOBに関しては、PFDBが非常に有効な粒子成長遅延剤であることが見出されている。PFDBはPFOBの直鎖状高分子量類似体であり、2個のさらなる炭素原子および4個のさらなるフッ素原子を有することで構造が異なっている。PFOBおよびPFDBの融点は各々4℃および55℃であり、そして蒸気圧は37℃で各々10.5および1.5mmHgである。
本明細書におけるデータにより驚くべきことに、さらに高濃度のPFOB/PFDBエマルジョンと比較した場合に、PFDBが特定の濃度のPFOBエマルジョンの安定化において有効であるということ、および55−60%w/vPFOBエマルジョンに添加された少量のPFDB(全エマルジョンの1−3%w/v)を使用することにより、より長い器官保持時間、PFDB結晶の形成、より大きなエマルジョン粒子、患者の副作用、製造問題、および反復投与の不能性のような、これらのより高度に濃縮されたエマルジョンにおいて経験される有意な問題なしに、90%w/v/10%w/vPFOB/PFDBエマルジョン、60%w/v/30%w/vPFOB/PFDBエマルジョンおよび60%w/v/10%w/vPFOB/PFDBエマルジョンのようなさらに高濃度のPFDBの混合物で生じるのと同一のエマルジョンの安定化が達成されることが実証される。
少量のPFDBの特定の濃度のPFOBへの添加による粒子径成長の遅延は劇的および予期外であり、量対効果、および生体適合性対安定性に関して最適な均衡がとられている場合、そして本明細書におけるデータにより、およそ1%w/v−3%w/vPFDBの濃度で、およそ55%w/v−60%w/vPFOBを伴って、全フルオロカーボン相のおよそ59−62%w/vまでで、適切な量の卵黄リン脂質で乳化された、有効なフルオロカーボンエマルジョンが創成され、それはヒトにおけるインビボ酸素分配に関して理想的に適合していることが実証される。
58%w/vPFOBおよび2%w/vPFDBの処方が好ましいが、55%−60%w/vPFOB/3%w/vPFDB、55−60%w/vPFOB/2%w/vPFDBおよび55−60%w/vPFOB/1%w/vPFDBのような全ての可能性のある組み合わせを伴う、55%w/v、56%w/v、57%w/v、58%w/v、59%w/vおよび60%w/vPFOBに添加された1、2および3%w/vPFBDのようなその他の処方が本発明の範囲内である。10%w/vPFDBまでおよびそれを超えてさらにPFDBを添加することにより、エマルジョン安定性に関してあまりさらなる利益は供されないが、生体適合性、器官保持時間および製造課題に関する有意な問題が創成される。
より少量のPFDBのPFOBエマルジョンへの添加はエマルジョン中の粒子成長の速度を遅延させるのみならず、エマルジョンが創成された後のより小さな粒子の初期形成が可能になる。エマルジョンの形成時のより小さな粒子の創成は液滴間接触の数の低下を招き、それは合体による粒子成長を緩徐にし、そしてEYP表面層を補強して、接触する液滴の表面の融合をさらに困難にする。より小さな粒子はフルオロカーボン粒子の沈殿の現象を緩徐にすることにより液滴間接触を減少させるので、液滴は最大に離れるようになる。しかしながら粒子があまりに小さくなりすぎる場合、毛細血管床から組織間の間質腔へのフルオロカーボン粒子の漏れの有意な危険性がある。故に液滴間接触を減少させる粒子径を創成することと、漏れの問題を引き起こすほどに小さすぎないことの間で均衡をとらなければならない。
沈殿速度はストークスの法則(RossおよびMorrison、Colloidal Systems and Interfaces.Wiley−Interscience(ニューヨーク)69−125頁(1988))により与えられる:

V={2r2(ρ−ρ)g}/9η
(式中、r=液滴半径
ρ=油の密度
ρ=水の密度
η=粘度)。
ペルフルブロンの密度は1.9g/lであり、それで密度なる項目(ρ−ρ)は、容器の底部で粒子を濃縮する急速な沈殿を助長する。PFDBがペルフルブロンに添加された場合に生じる液滴半径の低下により沈殿の速度Vは低下する。PFOBのPFDBに対する比率を増大させることにより、およびPFDBがPFOBに溶解性であるという事実のために、さらなるPFDBが本明細書に記載された処方中のPFOBにより運び去られ、そして患者の組織にはわずかなPFDBしか保持されない。さらに、PFOBエマルジョンを安定化するためのより少量のPFDB(1−3%w/v)の添加は、原価高のPFDBのために有意な金銭上の節約、ペルフルオロカーボンの高収量、さらに濃縮されたPFDBエマルジョンに関して要求されるよりも少ないEYP要求、および長い貯蔵期限に至るであろう。エマルジョン中の過剰な遊離脂肪酸およびリゾレシチン化合物のような加水分解生成物を少なくするEYPレベルの低下のために、EYPの量の減少もまたより大きな適合性を導く。
本出願に記載されるフルオロカーボンエマルジョンを、手術における同種異型血液への暴露の防御、および患者が血液を要求するその他の状況において使用することができる。以下に限定するわけではないが、本発明のフルオロカーボンエマルジョンに関するいくつかのその他の治療には、手術後器官機能(腸、肝臓、心臓、脳、腎臓)、鎌状赤血球貧血の処置、器官保存、器官移植、化学療法処置の強化、放射線処置の強化、一酸化炭素中毒の処置、「ベンズ」の処置、外傷性脳損傷および卒中の処置が含まれる。ヒトでの使用のために処方されるが、本発明のフルオロカーボンエマルジョンを任意の哺乳動物、鳥類、は虫類または魚類において使用することができる。
本発明は以下を志向するが、それに限定されるものではない:
1)不連続フルオロカーボン相がフルオロカーボン臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルからなり、ここで臭化ペルフルオロオクチルはフルオロカーボンエマルジョン中全エマルジョンのおよそ57−60%w/vで存在し、そして臭化ペルフルオロデシルはエマルジョン中全エマルジョンのおよそ2−3%w/vで存在する連続水相および不連続フルオロカーボン相を含み、そしてはさらにおよそ3.5%w/v−4%w/vの量で存在する乳化剤を含むヒト患者におけるインビボ酸素分配のための貯蔵に安定なフルオロカーボンエマルジョン。
2)さらにd,α−トコフェロールを含むパラグラフ1のエマルジョン。
3)d,α−トコフェロールがおよそ1%w/vの量で存在するパラグラフ1のエマルジョン。
4)さらにNaCl、NaHPOおよびEDTAを含むパラグラフ1、2および3のフルオロカーボンエマルジョン。
5)PFOBが57−59%w/vの量で存在し、そしてPFDBが2%w/vの量で存在するパラグラフ1および3のフルオロカーボンエマルジョン。
6)PFOBが58%w/vの量で存在し、そしてPFDBが2%w/vの量で存在するパラグラフ1、2および3のフルオロカーボンエマルジョン。
7)乳化剤がおよそ3.6%w/vの量で存在する卵黄リン脂質であり、そしてさらにNaCl、NaHPO・HO、NaHPO・7HOを含むパラグラフ1のフルオロカーボンエマルジョン。
8)フルオロカーボンエマルジョンがさらにd,α−トコフェロールおよびEDTAを含むパラグラフ1−4のフルオロカーボンエマルジョン。
9)d,α−トコフェロールが0.0025w/v以下で存在し、そしてEDTAが0.02w/vで存在するパラグラフ1、2、3、6および7のフルオロカーボンエマルジョン。
10)不連続フルオロカーボン相が臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルからなり、ここで臭化ペルフルオロオクチルはフルオロカーボンエマルジョン中全エマルジョンのおよそ57−60%w/vで存在し、そして臭化ペルフルオロデシルはエマルジョン中全エマルジョンのおよそ1−3%w/vで存在する連続水相および不連続フルオロカーボン相を含むヒトおよびその他の哺乳動物の組織に酸素を輸送するためのフルオロカーボンエマルジョン。
11)さらにおよそ3.5%w/v−4%w/vの量で存在する卵黄リン脂質からなる乳化剤を含むパラグラフ10のフルオロカーボンエマルジョン。
12)エマルジョンがフッ素化界面活性剤およびレシチン基盤の界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤により安定化されるパラグラフ10のフルオロカーボンエマルジョン。
13)不連続相がおよそ58−59%w/vPFOBおよびおよそ2−3%w/vPFDBからなるパラグラフ10、11および12のフルオロカーボンエマルジョン。
14)不連続相がおよそ58%w/vPFOBおよび2%w/vPFDBからなるパラグラフ10、11および12のフルオロカーボンエマルジョン。
15)エマルジョンの形成時に粒子直径の中央値が0.18μm以下であるフルオロカーボン粒子が形成されるパラグラフ10および14のフルオロカーボンエマルジョン。
16)不連続フルオロカーボン相が臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルからなり、ここで臭化ペルフルオロオクチルはフルオロカーボンエマルジョン中全エマルジョンのおよそ58%w/vで存在し、そして臭化ペルフルオロデシルはエマルジョン中全エマルジョンのおよそ2%w/vで存在する連続水相および不連続フルオロカーボン相を含むヒトおよびその他の哺乳動物の組織に酸素を輸送するためのフルオロカーボンエマルジョン。
17)およそ3−4%w/vの量のレシチンをさらに含むパラグラフ16のフルオロカーボンエマルジョン。
18)レシチンが卵黄レシチンであり、そして3.6%w/vで存在するパラグラフ17のフルオロカーボンエマルジョン。
19)さらに抗酸化剤を含むパラグラフ16および18のフルオロカーボンエマルジョン。
20)抗酸化剤がd,α−トコフェロールであるパラグラフ19のフルオロカーボンエマルジョン。
21)不連続フルオロカーボン相がフルオロカーボン臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルからなり、ここで臭化ペルフルオロオクチルはフルオロカーボンエマルジョン中全エマルジョンのおよそ58%w/vで存在し、そして臭化ペルフルオロデシルはエマルジョン中全エマルジョンのおよそ2%w/vで存在する連続水相および不連続フルオロカーボン相を含み、そしてさらにおよそ3.6%w/vの量で存在する乳化剤を含むヒトでインビボ使用するためのフルオロカーボン。
22)乳化剤が卵黄リン脂質であるパラグラフ21のエマルジョン。
23)さらにおよそ1%w/vの量でd,α−トコフェロールを含むパラグラフ21および22のエマルジョン。
24)乳化剤がおよそ3.6%w/vの量で存在し、そしてさらにNaCl、NaHPO・HO、NaHPO・7HOを含むパラグラフ21および23のフルオロカーボンエマルジョン。
25)フルオロカーボンエマルジョンがさらにd,α−トコフェロールおよびEDTAを含むパラグラフ21、22および24のフルオロカーボンエマルジョン。
26)d,α−トコフェロールが0.0025w/v以下で存在し、そしてEDTAが0.02w/vの量で存在するパラグラフ23のフルオロカーボンエマルジョン。
27)臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルがエマルジョンを形成するために水性連続相中に不連続相を形成し、ここで臭化ペルフルオロオクチルはエマルジョンの全量の57−60%w/vの量で存在し、そして臭化ペルフルオロデシルはエマルジョンの全量の1−3%w/vの量で存在し、さらに乳化剤を含む患者に酸素を分配するための医薬品の製造における臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルの使用。
28)さらに乳化剤として卵黄リン脂質を含むパラグラフ27の使用。
29)さらにNaCl、NaHPO・HO、NaHPO・7HOを含むパラグラフ27および28の使用。
30)臭化ペルフルオロオクチルがエマルジョンの全量の58−59%w/vの量で存在し、そして臭化ペルフルオロデシルがエマルジョンの全量の1−3%w/vの量で存在するパラグラフ27−29の使用。
31)臭化ペルフルオロオクチルが全エマルジョンの58%w/vの量で存在し、そして臭化ペルフルオロデシルが全エマルジョンの2%w/vの量で存在するパラグラフ27および28の使用。
32)臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルがエマルジョンを形成するために水性連続相中に不連続相を形成し、ここで臭化ペルフルオロオクチルはエマルジョンの全量の58%w/vの量で存在し、そして臭化ペルフルオロデシルはエマルジョンの全量の2%w/vの量で存在し、さらにエマルジョンの全量の3.6%w/vの量で卵黄リン脂質を含む乳化剤を含む患者にインビボで酸素を分配するための医薬品の製造における臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルの使用。
33)さらにNaCl、NaHPO・HOおよびNaHPO・7HOを含む請求項32に記載の使用。
34)長時間のサイズ安定性の特徴を有する臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルを含むインビボで酸素を輸送するためのフルオロカーボンエマルジョンの製造の方法であって:
a)第一タンク中での熱水へのナトリウム塩の水溶液の調製および窒素でのスパージ;
b)臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルの第二タンクへの添加および窒素でのスパージ;
c)第三タンクへの乳化剤の添加および第三タンクへの第一タンクの内容物の添加;
d)臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルの第三タンクへの添加および臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルを乳化するための内容物の混合;
e)第三タンクの内容物を一つまたはそれより多いホモジナイザータンクへ導くこと;
の工程を含む。
35)第一タンク中の水溶液を65℃から80℃の温度範囲で調製するパラグラフ34の製造の方法。
36)窒素スパージの間水溶液が55℃から65℃に調整された温度であるパラグラフ34および35の製造の方法。
37)第一タンクに添加されたナトリウム塩にはリン酸一ナトリウム一水和物、塩化ナトリウムおよびエデト酸カルシウム二ナトリウムが含まれるパラグラフ34−36の製造の方法。
38)臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルを第二タンク中15−25℃で維持するパラグラフ34の製造の方法。
39)臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシル(フルオロカーボン溶液)を窒素スパージの間真空下で維持するパラグラフ37および38の製造の方法。
40)乳化剤が卵黄リン脂質であるパラグラフ34の方法。
41)d,α−トコフェロールを乳化剤と共に第三タンクに添加するパラグラフ34の方法。
42))d,α−トコフェロールを卵黄リン脂質と共に第三タンクに添加するパラグラフ34の方法。
43)第一タンクの内容物がインラインフィルターハウジングを通して第三タンクに添加され、そして分散混合機を通して再循環されるパラグラフ34−40の方法。
44)インラインフィルターハウジングがおよそ0.45μmのメッシュを有するパラグラフ43の方法。
45)第一タンクの内容物を第三タンクに添加した後、その内容物を攪拌機で混合するパラグラフ43−44の方法。
46)フルオロカーボン溶液が分散混合機の頭部に添加されるが、第一タンクの内容物は再循環しているパラグラフ34および43−44の方法。
47)流速が少なくとも150L分になるまでフルオロカーボン溶液が分散混合機に添加されないパラグラフ46の方法。
48)フルオロカーボン溶液を乳化するために高速高剪断混合機の下で第一タンクの内容物が第三タンクに添加されるパラグラフ40−42の方法。
49)フルオロカーボン溶液が乳化された後、混合物が分散混合機を通して再循環されるパラグラフ48の方法。
50)混合物がおよそ1600−1750Lの質量流量で240−300L/分で再循環されるパラグラフ49の方法。
51)第三タンクの内容物がインラインフィルターを通してホモジナイザータンクに導かれるパラグラフ34の方法。
52)不連続フルオロカーボン相が58%w/v臭化ペルフルオロオクチルおよび2%w/v臭化ペルフルオロデシルからなる連続水相および不連続フルオロカーボン相を含み、さらに卵黄リン脂質からなる乳化剤を含むヒトおよびその他の哺乳動物においてインビボ酸素供給に使用するためのフルオロカーボンエマルジョン。
53)およそ95−96重量/重量%の臭化ペルフルオロオクチルおよびおよそ3−4重量/重量%の臭化ペルフルオロデシルを伴う連続相および不連続フルオロカーボン相を含み、さらに卵黄リン脂質からなる乳化剤を含むヒトにおけるインビボ酸素供給および同種異型または同種血への暴露の回避に使用するためのフルオロカーボンエマルジョン。
54)不連続フルオロカーボン相が臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルからなり、ここで臭化ペルフルオロオクチルはフルオロカーボンエマルジョン中全エマルジョンのおよそ57−60%w/vで存在し、そして臭化ペルフルオロデシルはエマルジョン中全エマルジョンのおよそ1−3%w/vで存在する連続水相および不連続フルオロカーボン相を含むヒトおよびその他の哺乳動物の組織への酸素輸送、ならびに同種異型または同種血への暴露の回避のためのフルオロカーボンエマルジョン。
55)さらにおよそ3.5%w/v−4%w/vの量で存在する卵黄リン脂質からなる乳化剤を含むパラグラフ54のフルオロカーボンエマルジョン。
56)エマルジョンがフッ素化界面活性剤およびレシチン基盤の界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤により安定化されるパラグラフ54および55のフルオロカーボンエマルジョン。
57)不連続相がおよそ58−59%w/vPFOBおよびおよそ2−3%w/vPFDBからなるパラグラフ54のフルオロカーボンエマルジョン。
58)不連続相がおよそ58%w/vPFOBおよびおよそ2%w/vPFDBからなるパラグラフ54のフルオロカーボンエマルジョン。
59)エマルジョンの形成時に粒子直径の中央値が0.18μm以下であるフルオロカーボン粒子が形成されるパラグラフ54のフルオロカーボンエマルジョン。
静脈内投与されたフルオロカーボンの排泄に関する四つの構成要素の薬物動態モデルである。 本出願の一つの実施態様にしたがってエマルジョンを作成する方法工程を示すフローチャート。 90%w/vPFOB、90%w/vPFOB/1%w/vPFDBおよび90%w/vPFOB/10%w/vPFDBエマルジョンに関して時間の関数としてdのLifshitz−Slezov−Wagnerグラフを説明する。 60/30%w/vPFOB/PFDBフルオロカーボンエマルジョンおよび6%EYP(2.7gPFC/kg)の静脈内投与後のラットにおけるPFOBおよびPFDBの血管内残留性を示す。 空洞に近いリン脂質ベシクルの分画およびおよそ0.15μmのリン脂質の単分子層により安定化されたエマルジョン滴の分画を示す、PFOB/PFDBエマルジョンに関して得られたSdFFFフラクトグラムを示す。 液滴径の関数として生じる区分化を説明するSdFFF研究を示す。右軸(プロットの円で与えられる)はガスクロマトグラフィにより決定されるような単一の大きさの液滴中のPFDBのモル分画を表す。PFOBおよびPFDBは各々大液滴および小液滴中で富化されることが見出される。 2.7gPFC/kg用量の静脈内投与の直ぐ後、24時間後のエキソビボラット血液における実施例Vのエマルジョンの粒子径分布を示す。差し込み図は経時的な粒子径分布の変化を示す。一度血管コンパートメントに入ると、より大きな液滴が細網内皮系により選択的に除去される。 60/30%w/vPFOB/PFDBの2.7gPFC/kg、6%EYPエマルジョンの静脈内投与後、エキソビボラット血液から得られた単一サイズの(monosized)エマルジョンにおけるPFDBのモル分画のl/dに対するプロットである。プロットされたデータには注射前のエマルジョンおよび24時間後の試料が含まれる。溶解性の低いフルオロケミカル構成成分であるPFDBのモル分画は投与後増加する。ならびに (パネルA)包括解析集団(N=492)、(パネルB)失血≧20ml/kgのプロトコール定義された目標母集団(N=330)および(パネルC)臨床的有益性を有する群(事後解析)、すなわち手術による失血≧10ml/kgの患者(N=424)における任意の同種異型およびPAD輸血を回避する対象のパーセントを示す。(群間p<0.05)
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明のフルオロカーボンエマルジョンは連続水相および不連続フルオロカーボン相の二つの相を含む。浸透物質、バッファーおよびキレート剤を連続相に含み、浸透圧およびpHを維持し、生理学的許容性を促すことができる。乳化剤を使用して不連続相と連続相の間の界面で層を形成することにより不連続相中のフルオロカーボン液滴の形成および安定性に役立てる。乳化剤は単一の化合物、または複数の界面活性剤の場合のように複数の化合物からなってよい。
本明細書で使用される際には「容量あたりの重量」または「w/v」なる表現はエマルジョン容量100cmまたは100mlあたりのグラムを意味する。「重量あたりの重量」なる表現は、合計で所定の重量になる種々の構成成分の(複数の)重量分画を意味するように用いられそして理解されよう。
本発明はすばらしい生体適合性および有効性を有して高度に安定しているフルオロカーボンの混合物を含むフルオロカーボンエマルジョンを志向する。本発明は、不連続相がPFOBおよびPFDBの混合物により形成されるフルオロカーボンエマルジョンを提供する。先行技術のエマルジョンとは対照的に、本発明のフルオロカーボンエマルジョンは保存時に最小の粒子成長を呈し、そして粒子成長を防御するために使用するPFDBの量は最少であり、そして有意な器官保持および長い半減期の問題を回避する。
本発明のエマルジョンを以下の手順にしたがって製造できる。水性タンク(タンク#1)中予め重量測定された量のリン酸一ナトリウム一水和物(USP)、塩化ナトリウム(USP)およびエデト酸カルシウム二ナトリウムを65から80℃で必要量の注射用熱水(WFI)に添加することにより水溶液を調製する。水溶液を窒素スパージし、そして温度を55から65℃(+/−5℃)に調整する。必要量のPFC構成成分(PFOBおよびPFDB)をPFCタンクに添加し、そして20+/−5℃を維持する。次いでPFC液体を窒素でスパージして溶解した酸素を置換し、そして次に液体を脱気するために真空下に置く。脱気の後、PFC液体を真空下60℃(+/−5℃)まで加熱する。
必要量の卵黄リン脂質およびd−α−トコフェロール(USP)を予混合タンク(タンク#2)に添加し、そして窒素でパージする。窒素加圧下でタンク#1の水溶液を、インライン0.45μmフィルターハウジングを通して予混合タンク(タンク#2)に移し、そして次に分散混合機を通して再循環させる。予混合タンクの内容物を攪拌機で混合する。少なくとも150L/分で流速を確立した後、PFC溶液を分散混合機の頭部に添加するが、水溶液は再循環している。界面活性剤(EYP)および水性塩分散物に添加し、その間高速高剪断混合機を用いることによりPFCを乳化する。これによりPFC粒子の最適な界面活性剤コーティングに至る。予混合の間タンク中で窒素パージを続ける。PFCを添加し、そして水相で乳化された後、1670+/−70Lの質量流量で280+/−20L/分で分散混合機を通して混合物を再循環させる。
予混合を完了した後、前記で調製されたエマルジョンをタンク#2からインライン10μmフィルターを通して2個のホモジナイザータンクH1およびH2に、熱交換機に循環させ、そして60+/−5℃で1170+/−5kgの全質量流量でタンク#2に戻す。次いで最適なホモジナイズを達成するために制御された圧力で最初に60+/−3℃で、そして次に11+/−3℃でホモジナイズを行う。ホモジナイズの最終工程ではエマルジョンを、ホモジナイザーを通して、タンク#2に戻す代わりにタンク#3に移す。ホモジナイズのこの最終工程は「分離流路」として記載され、そして充填タンクに移された全ての生成物はホモジナイザーを通過している。
リン酸二ナトリウム七水和物(USP)、リン酸一ナトリウム一水和物(USP)および塩化ナトリウム(USP)の窒素スパージされたバッファー溶液をWFI中タンク#1(11+/−5℃)内で調製し、そして0.45μmフィルターを通してホモジナイズされたエマルジョンを含有するタンク#3に移す。エマルジョンを少なくとも5分間攪拌した後、流速10+/−1L/分で充填ループを通して循環させる。充填温度は11+/−3℃で制御される。充填の直前にエマルジョンを10μmフィルターハウジングに通過させるか、または再循環させてタンク#3に戻すかのいずれかにする。エマルジョンを100ml瓶(USP I型ガラス)に充填し、そして層流(クラス100)フード下で予め洗浄されたシリコン前処理された28mmの灰色のブチルゴム栓で栓をする。栓を受け取る前に各瓶の上部空間を窒素でパージする。28mmアルミニウムラッカー塗装された3片一組のオーバーシールを、栓をされた瓶の上に置き、そして手作業で圧着する。
次いで生成物を最終的に蒸気超加圧オートクレーブ内で清浄空気/清浄蒸気の混合物の注入により蒸気滅菌し、検査し、そして滅菌後2から8℃で保存する。充填過程の始点および終点から選択された試料を最終製品規格に対する一致に関して分析する。
実施例1
4%w/vEYPを伴う90%w/vPFOBエマルジョン(90/4%w/v)の調製
Longの方法(米国特許第4987154号、その全てを参照により本明細書の一部とする)にしたがって90%w/vPFOBエマルジョンを得るために高圧ホモジナイズによりPFOB 90g、卵黄リン脂質(EYP)4gおよび生理学的レベルの塩およびバッファーを含有する参照エマルジョンを調製した。次いで一つのPFOBおよび四つのPFOB/PFDBエマルジョンを創成するために、90%w/vPFOBエマルジョンに第二フルオロカーボン、臭化ペルフルオロデシル(PFDB)を1%、2%、5%および10%(重量/重量)臭化ペルフルオロデシルを含有する量で添加した。実施例1の手順により調製された四つのPFOB/PFDBエマルジョンを、粒子径分析器を用いる40℃3か月間加速安定性試験に置いた。
表1は一つのPFOBおよび四つのPFOB/PFDBフルオロカーボンエマルジョンに関して粒子径分析器を用いて試験された経時的な粒子径安定性を実証する。かかるエマルジョンには、フルオロカーボン相の100%が臭化ペルフルオロオクチルである対照、およびフルオロカーボン相が90重量/重量%から99重量/重量%臭化ペルフルオロオクチルであり、安定剤として添加された1重量/重量%から10重量/重量%臭化ペルフルオロデシルを伴う本発明のエマルジョンが含まれる。表1では「EYP」は卵黄リン脂質を指し、「ペルフルブロン」は臭化ペルフルオロオクチルであり、「PFDB」は臭化ペルフルオロデシルであり、そして「S」はμm/moの単位の粒子成長の速度である。図3はエマルジョンの三つ、90%w/vPFOBエマルジョン、90%w/vPFOB/1%w/vPFDBエマルジョンおよび90%w/vPFOB/10%w/vPFDBエマルジョンに関して時間の関数としてのdの典型的なLifshitz−Slezov−Wagnerグラフを説明する。Lifshits−Slezov−Wagner理論により、d対時間のプロットが直線を生じるであろうと予測されるので、3乗の項は縦座標に関して選択される。実際にこの線形の依存性は一般的にフルオロカーボンエマルジョンに関して観察される。
Figure 2009538311
前記の結果により、より高濃度のPFDBがより低濃度のPFDBよりもさらに効果的に90%w/vPFOBエマルジョンを安定化することが実証される。90%w/vPFOB/10重量/重量%PFDBフルオロカーボンエマルジョンが最小粒子径を有して3か月にわたって最も安定であることが判明した。
実施例2
60%w/vPFOBエマルジョン(臭化ペルフルオロオクチル/臭化ペルフルオロデシル)の安定化
Longの手順(米国特許第4987154号)および実施例1の教示にしたがってエマルジョンを調製したが、90%w/vPFOBエマルジョンの代わりに、60%w/vPFOBエマルジョンを作成し、そして第二の60%w/vPFOBエマルジョンを10%w/vPFDBで安定化した。表2はPFDB不含60%w/vペルフルブロンエマルジョンに関する40℃で3か月間の加速安定性試験における粒子径増加を、10%w/vPFDB含有60%w/vペルフルブロンエマルジョンと比較する。安定性試験は、粒径分析器を用いて実施された。表2は10%w/vPFDBを添加した60%w/vPFOBエマルジョンに関する3か月間にわたる粒子成長の低下を示す。
Figure 2009538311
結果により、60%w/vPFOBエマルジョンと比較して、10%w/vPFDBが添加された60%w/vPFOBエマルジョンに関する3か月間にわたる粒子成長の有意な低下が実証される。
実施例3
二つの構成成分の分散相エマルジョン(60%w/vPFOB/30%w/vPFDBフルオロカーボン)におけるフルオロカーボンに関する血管内残留性における差異
図4はPFOBおよびPFDBの双方の除去に関する典型的なデータを表す。図4はラットにおけるPFOBおよびPFDBの血管内残留性に関して、6%w/vEYPにより安定化された60/30(%w/v)の比率のPFOB/PFDBに関して得られたSdFFFフラクトグラムのプロットを示す。一般的にPFDB除去に関する速度定数はPFOBのものよりも20−30%小さい。
図4で示されるデータを有するエマルジョン組成物は6%w/vEYPにより安定化された60/30%(w/v)の比率のPFOB/PFDBを含有する。この場合PFDBに関する速度定数はPFOBのものよりも20%高い。投与後最初の数時間で血液からの除去がk12により制御されると考えられるであろう(図1参照)。したがって循環するエマルジョン滴のフルオロケミカル組成物は無傷のままであるはずである。次に二つの分散相構成成分が異なる速度定数を有し得るのは如何なるわけか。この問題に答えるために、ガスクロマトグラフィに連結された沈降場流動分画(SdFFF)の使用により静脈内に投与された液滴の組成を試験し、それにより液滴の特質を確認することができる。
図5は6%w/vEYPにより安定化された60/30%w/vの比率のPFOB/PFDBに関して得られたSdFFFフラクトグラムのプロットを示す。データを質量加重検出器応答対液滴直径として表す。鋭い空隙容量ピークの隣に現れるショルダーはわずかな量の可溶化されたフルオロケミカルを含有するリン脂質ベシクルの存在によるものである。より大きな(後で溶出)ピークは、界面吸着された単層のリン脂質により安定化されたフルオロケミカルエマルジョン滴に起因する。単分散分画においてこの型の液滴の濃度がガスクロマトグラフィにより確認されている。
実施例4
60/30%w/vPFOB/PFDBエマルジョンにおける構成成分の分散相の区分化
図6は6%EYPにより安定化された60/30%w/vの比率のPFOB/PFDBにおける種々の単一サイズの液滴分画間で生じる分散相構成成分の区分化を説明する。図6で示されるのはSdFFFフラクトグラム(左軸にプロットされる)およびガスクロマトグラフィにより決定されるような様々な単一サイズの液滴のPFDBのモル分画(バルクXpfdb=0.291)である。バルク組成物は合体媒介過程における全粒子径分布にわたって予期される組成物であり、このメカニズムにより構成成分の区分化を生じることができない。散乱補正はこのデータには適用されていない。故に分布は光を強く散乱するより大きな液滴を過加重する傾向がある。これはより大きな直径中央値への分布のシフトを導く。直径中央値は0.15μmであるが、液滴中の最大フルオロケミカル含量はおよそ0.13μmで観察される。左端(粒子径が小さい)の二つの組成物の点は粒子径分布の外側であり、依然フルオロケミカルピーク濃度のおよそ10%および20%を含有すると思われる(すなわちそれらは明らかに分布のテールである)。
これらのより小さな液滴はより緩徐に拡散するPFDB構成成分において有意に富化される(5%以上)が、より大きな液滴はPFOBにおいて5%まで富化される。区分化の程度は10重量/重量%PFDBのみを含有するPFOB/PFDBエマルジョンに関して観察されたものよりも少ない。これは、第二フルオロケミカルの濃度が増加するので、エマルジョンがオストワルド熟成に対してより安定になるためであると予測される。
実施例5
エキソビボ血液中のフルオロケミカルエマルジョンにおける粒子径分布の変化のdFFF研究
図7は6%w/vEYPにより安定化された60/30(w/v)%の比率のPFOB/PFDBを2.7gPFC/kgの用量で静脈内投与した後にエキソビボラット血液中で観察された粒子径分布のプロットである。対照と相対して注射直後のエキソビボエマルジョンに関して液滴径がわずかに増加する(0.19μm対0.15μm)。これはある程度の血清タンパク質によるオプソニン化、液滴凝集の増加またはこれに代えて粒子径が0.15μmから1μmの範囲である血漿中のいくつかの粒子の干渉を反映し得る。24時間後、大きな液滴の有意な分画が優先的に除去されている。図7の差し込み図は、初期時間での直径の様式では留意される変化はほとんどないことを示している。しかしながら、0.2μm未満の液滴の集団では3時間および6時間後でさえも有意な増加が留意される。同様に0.5μmよりも大きな液滴の集団では低下が留意される。
これらの結果を全て総合すれば、マクロファージが選択的に大きな粒子を分布から除去することが示される。より小さな粒子がPFDBにおいてさらに濃縮されるので、PFDBに富む粒子の濃度は経時的に増加するであろうと予期される。図8は対照(すなわち注射前)と相対した24時間試料に関するXPfdb対1/dのプロットを示す。これらの点は前記のとおり、液滴分布にわたって単一サイズの分画を収集し、そしてフルオロケミカル内容物に関してガスクロマトグラフィにより分析することにより得られる。XPfdbは対照と相対したエキソビボ試料に関して増加し、これは循環液滴が実際にPFDB構成成分で12%ほども富化されることを示している。これは対照で観察された値を5%超えて有意に増加している。
実施例6
連続水相中に58%w/vPFOBおよび2%w/vPFDBフルオロカーボン不連続相を処方するための本出願の教示にしたがってPFOB/PFDBフルオロカーボンエマルジョンを作成する。その構成成分は:
Figure 2009538311
である。この58%w/v/2%w/vPFOB/PFDBエマルジョンの浸透圧は300から310ミリオスモル/kgであり、pHは7.0から7.2であり、そして粘度はおよそ4センチポアズ(1/秒の剪断)である。
実施例6にしたがって作成されたエマルジョンは60/10%w/vPFOB/PFDBエマルジョンのようなその他のエマルジョンほどに安定であるか、もしくはさらに安定であるか、またはほぼ90/10%w/vPFOB/PFDBエマルジョンほどに安定であるが、そのエマルジョンの良くない副作用を伴わないことが判明した。60/10%w/vPFOB/PFDBエマルジョンよりも500%少ないPFDBを使用することにより、実施例6のエマルジョンは、その長い半減期および器官保持の問題を有する過剰なPFDBを回避する。90/10%w/vPFOB/PFDBエマルジョンと比較して、実施例6のエマルジョンはほとんど50%少ないPFOBおよび500%少ないPFDBを使用し、さらに酸素分配において90/10%w/vエマルジョンほどに有効であると判明する(後の実施例参照)。インフルエンザ様の副作用のような実施例6のエマルジョンの副作用は大きなフルオロカーボン粒子に起因し、90/10%w/vPFOB/PFDBエマルジョンと比較してほとんど目立たなかった。非臨床研究の結果により、さらに濃縮されたエマルジョン中のより高量のフルオロカーボンにより創成されたより大きなフルオロカーボン粒子による、食細胞のエマルジョン粒子誘起の刺激に応答したインフルエンザ様副作用はサイトカイン、プロスタグランジン、トロンボキサンおよび/またはエンドペルオキシド生成物の短時間放出によるものであることが実証された。
Figure 2009538311
*ICHガイドラインによって1、3、6か月の尺度で粒子径を測定したGMPロット(全例で粒子径分析器Horiba CAPA−700より)からのデータ。58%w/v/2%w/vPFOB/PFDBエマルジョンの6か月粒子径は0.22μmであった。
表3の結果により、実施例6のエマルジョンはその他の列挙されたエマルジョンよりも経時的にさらにより大きな安定性を有する(0.80μmのS×1000、これはμm/moの単位の粒子成長の速度である)ことが実証される。60%w/vPFOBおよび90%w/vPFOBエマルジョンは各々16.9および44.4μmの非常に高いS値を有した。双方のエマルジョンへのPFDBの添加によりエマルジョンがかなり安定化されるのが補助されることが判明し、60%w/vPFOB/10%w/vPFDBおよび10%w/vPFDBを伴う90%w/vPFOBは各々2.3および3.9であるS値を有した。実施例6の58%w/vPFOB/2%w/vPFDBに関するS値0.80は、その他のエマルジョンと比較して有意に改善され、そして予期外であることが判明した。
実施例6のエマルジョンを無菌的な様式で静脈内投与すべきである。スパイクゴムの栓およびアルミニウムオーバーシールで封をされた110mlの使い捨て瓶でそれは理想的に供給される。エマルジョンは2℃−8℃の間で冷蔵保存されるべきであり、そして凍結してはならない。エマルジョンは投与の前に室温にされるべきであり、そしておよそ1分間繰り返し穏やかにひっくり返してエマルジョンの完全に均質な外観を確実にすべきである。投薬量は個体で異なり、そしてその使用はしかし一般的には1−3ml/kgまたは1−4ml/kgである。
実施例7
実施例6の教示にしたがって作成されたフルオロカーボンエマルジョンの長期間および加速試験
エマルジョンの長期間貯蔵期限を決定するために、24か月の時間枠にわたる規定の時点でHoriba CAPA−700粒子径分析器を用いて安定性データが作成され、そして市販により入手可能である安定性ソフトウェアシステム(SCIENTEK(商標)、タスチン、カリフォルニア)を用いて統計的に分析した。エマルジョンを作成し、そして次に逆向きで長期間条件(5℃)で24か月まで、および加速保存条件(25℃)で6か月までの双方に関して保存した。実施例6にしたがって作成されたエマルジョンを加速試験(6か月)および長期間試験(24か月)の双方で測定した。
Figure 2009538311
その結果により、実施例6のエマルジョンが24か月まで非常に安定した長期間安定性を有することが実証される。データの統計的回帰分析を実施し、そして片側95%信頼性予測有効期限(1998年のFDAガイダンス草案にしたがって)を生じるSCIENTEK安定性ソフトウェアシステムからのデータを分析することにより、遊離脂肪酸、外観、pHおよび卵黄リン脂質含量、浸透圧およびリゾホスファチジルコリン、29か月の有効期限のような安定性の課題を考慮に入れることが推奨された。
実施例8
連続水相中に58%w/vPFOBおよび2%w/vPFDBフルオロカーボン相を処方するための本出願の教示にしたがってPFOB/PFDBフルオロカーボンエマルジョンを作成する。その構成成分は:
Figure 2009538311
である。
実施例6のフルオロカーボンエマルジョンに対するバリエーションを作成したが、d,α−トコフェロールおよびEDTAを伴わなかった。この58%w/v/2%w/vPFOB/PFDBエマルジョンの浸透圧は300から310ミリオスモル/kgであり、pHは7.0から7.2であり、そして粘度はおよそ4センチポアズ(1/秒の剪断)である。
実施例9
実施例6のエマルジョンの単回静脈内投与後のラットにおけるペルフルブロンおよび臭化ペルフルオロデシルの薬物動態および組織分布
この研究は7−9週齢、体重190−267gの間の雄および雌Sprague Dawleyラットに1.8および3.6gPFC/kの用量レベルで種々の時間間隔で実施例6のエマルジョンを単回静脈内投与した後のPFOBおよびPFDBの薬物動態および組織分布を評価するために設計された。薬物動態に関して、160匹のラットを20群に(N=4ラット/性別/用量/時間間隔)、そして組織分布に関しては、156匹のラットを26群に(n=3ラット/性別/用量/時間間隔)分けた。薬物動態血液試料採取のための時間間隔は0.083、0.5、1、3、6、12、36、48、72および96時間であった。組織試料採取のための時間間隔は投与前、24時間、1、2、4、8、13、17、21、26、39、52および72週であった。
薬物動態
投与後ラットにおいて有害な臨床病徴は観察されなかった。以下の表に示されるように雄および雌双方のラットにおいて1.8g PFC/kgまたは3.6g PFC/kgの単回静脈内投与の後に6個の薬物動態パラメータを決定した。1.8g PFC/kgを投与された雄および雌ラットに関するPFOBの平均最終t1/2は〜73時間であり、3.6g PFC/kgを投与された動物に関する平均最終t1/2である181時間と比較した。比較により最終t1/2はPFDBに関して数オーダーさらに大きかった:〜25130時間(雄1.8gPFC/kg)、〜4800時間(雌1.8gPFC/kg)、〜12550時間(雄3.6gPFC/kg)および〜7600時間(雌3.6gPFC/kg)。
PFOBに関する分布容積(Vd)は双方の性別および双方の用量に関して〜1200から2200g/kgであった。対照的にPFDBに関する分布容積の範囲は双方の性別および双方の用量に関して〜1650000から6130000g/kgであった。したがってPFDBに関するVdはPFOBに関するVdよりも約3オーダーさらに大きかった。
Figure 2009538311
T1/2は最後の3または4データポイントを使用して計算した。
**最終相に基づいた
Figure 2009538311
組織分布
26群(N=3ラット/性別/群)。安楽死の前に、体重を記録した。指定された時間(以下を参照)に、ラットをMETOFANE(登録商標)で麻酔し、そして腹部動脈を介して失血させた。EDTAの入ったシリンジに血液を収集し、そして密閉されたプラスチック容器に移し、分析までおよそ−20℃で保存した。得られたデータを薬物動態パラメータの決定に含めた。各ラットから以下の組織を収集し、そして密閉された容器に入れ、そして−20℃で凍結保存した。凍結前に血液および組織試料を分析用に加工した。Oreadにより検証されたGCヘッドスペース法を用いて血液および組織中のPFOBおよびPFDBを定量した。その方法は肝臓において検証され、そして次に全てのその他の組織、血液および血清において相互検証された。収集され、そして分析された組織には心臓、肺、腹部脂肪、脾臓、肝臓、腸間膜リンパ節、腎臓、副腎、精巣、卵巣、子宮、全脳、眼、骨格筋、大腿骨骨髄、および胃腸管が含まれる。
12の時点で双方の性別の組織においてPFOBおよびPFDBの濃度を決定した。雄に関しては、これは血液を含む全部で360の個々の結果であった。雌に関しては24のさらなる結果があった。
雄では1.8gPFC/kgの全用量を投与された動物に関して24時間でPFOB用量のおよそ59%が肝臓で見出された。全用量の<1%が脾臓にあった。3.6gPFC/kgで投与された雄ではこれはおよそ69%まで増加した。雌では、1.8gPFC/kgの全用量を投与された動物に関して24時間でPFOB用量のおよそ4%が脾臓で見出され、そして24時間でPFOB用量のおよそ63%が肝臓で見出された。3.6gPFC/kgを投与された雌では、全用量のパーセントが肝臓ではおよそ53%、および脾臓では<1%であることが見出された。
雄ラットではPFDBの全用量(1.8gPFC/kg)のおよそ15%および85%が各々脾臓および肝臓において見出された。3.6gPFC/kgを投与された雄では脾臓および肝臓において見出されたPFDBの全用量のパーセントは各々およそ11%および69%であった。雌ではPFDBのパーセンテージは脾臓および肝臓において各々PFDBの全用量のおよそ14%および86%であることが見出された。PFCの全用量が3.6g/kgまで増加した場合、脾臓は全用量のおよそ8%および肝臓はおよそ62%を含有した。
1.8g/kgのPFCを投与された雄では、24時間でのPFOBの絶対濃度は眼および骨格筋を除いて全組織で100μg/gを超えた。3.6PFC/kgを投与された雄に関しては、PFOBの濃度は全組織で100μg/gを超えた。PFOBの絶対濃度は眼では平均して定量の上限を超えた。1.8gPFC/kgを投与された雌ではPFOBの濃度は血液、眼および骨格筋を除いて全組織で100μg/gよりも大きかった。3.6g/kgのPFCを投与された雌では24時間でPFOBの濃度が全組織で100μg/gよりも大きかった。加えて肝臓および骨髄での濃度は4群全てに関して10mg/gよりも大きかった。
PFDBの絶対濃度は双方の性別および双方の用量に関して24時間で全組織で1μg/gを超えた。1.8gPFC/kgを投与された雄の脾臓および肝臓では24時間でPFDBの濃度は1mg/gよりも大きかった。3.6PFC/kgを投与された雄の脾臓、肝臓および骨髄ではPFDBの濃度は1mg/gよりも大きかった。3.6gPFC/kg用量群の雌ではリンパ節、脾臓、肝臓および骨髄においてPFDB濃度は1mg/gを超えた。
薬物動態および組織分布の双方の研究により、PFOBと比較してPFDBのより長いt1/2のために投与されたPFOB/PFDBエマルジョン中のPFDBの量を限定するのが望ましいことが明確に実証される。故に任意のPFOB/PFDBエマルジョンは絶対に必要である以上に過剰量のPFDBを回避して処方すべきである。
実施例10
健常ヒトボランティアにおける実施例6のPFOB/PFDBエマルジョンの薬物動態
健常ヒト患者において実施例6にしたがって作成されたフルオロカーボンエマルジョンを用いて2群無作為化比較二重盲検並行群第I相研究を行った。薬物動態を決定するために健常ヒトボランティアにおいて実施例6のフルオロカーボンエマルジョン1.2または1.8gPFC/kgの単回静脈内投与の後、血液および呼気試料をPFOBおよびPFDBに関して分析した。血液試料を投与後336時間まで収集した。
双方の研究におけるPFC血液濃度−時間プロフィールの試験により、初期ピーク濃度(Cmax)は各kgあたりの用量群内の対象に関する絶対用量(体重×各々のkgあたりの用量)に非依存的であることが示され、これはPFCに関する分布空間が体重(body mass)の一定のパセンテージ(血液容量である可能性が最も高い)であることを示唆している。PFOBおよびPFDBの配置は用量依存的であった。
最初の2−4時間の間に初期分布相、続いてより緩徐な初期排泄相があった。血中PFCのこの初期ミカエリス・メンテン低下は恐らく血中PFCのRES取り込みの飽和のためであったが、より緩徐な最終排泄相は身体組織(脂肪組織である可能性が最も高い)中のPFCの長い滞留性の指標である。
最初の12時間の初期PFOB排泄平均半減期(t1/2、12時間)は1.8gPFC/kg用量よりも1.2gPFC/kg用量でより短かった。この実施例のためのPFOBおよびPFDBに関する薬物動態パラメータを表7および8に示す。
Figure 2009538311
投与後最初の12時間内の初期排泄半減期
N=3 5人の対象に関する報告されていない値(r<0.95)のため
N=7 1人の対象に関する報告されていない値(r<0.95)のため
Figure 2009538311
投与後最初の12時間内の初期排泄半減期
N=5 その他の3人の対象に関する報告されていない値(r<0.95)のため
個々に報告された値(r<0.95)
実施例11
非心臓外科手術を行っているヒト対象における実施例6のフルオロカーボン処方の薬物動態
人工股関節全置換または脊髄手術または、根治的恥骨後前立腺摘除術、根治的子宮摘出術、膀胱摘除術および組み合わされた手順を含む種々の泌尿器科および婦人科手順を行っている対象に実施例6のフルオロカーボンエマルジョンを投与した後、PFOBおよびPFDBの薬物動態を決定した。一つの研究でヒト対象は実施例6のフルオロカーボン処方の0.9gPFC/kgまたは1.8gPFC/kgのいずれかを投与され、そして第二の研究のヒト対象は実施例6のフルオロカーボン処方の1.8gPFC/kgを投与された。PFOBおよびPFDBに関する薬物動態パラメータを表9にまとめる。
PFOBの全血液濃度はPFDBのものよりもおよそ30倍高く、投与された処方におけるその相対比率(58%w/vPFOB:2%w/vPFDB)と一致した。PFOBおよびPFDB Cmaxに関する平均値は用量の増加に対して妥当な比率で増加した。1.8gPFC/kgでのAUCに関する平均値は0.9gPFC/kgでのものよりも2倍より大きかったが、変動性が大きいためにPFOBまたはPFDBのいずれかの薬物動態における非線形性についてのいかなる結論も排除される。双方の化合物に関する平均排泄半減期(t1/2)は〜2.4時間から〜5.6時間の範囲であった。これらの対象で生じた手術による出血のためにPFCが循環から喪失されたという事実のために、これらの値は健常ボランティア研究で得られた値よりも低い。
Figure 2009538311
実施例12
心臓外科手術を行っている対象における実施例6の処方の薬物動態
低体温心肺バイパスを用いる冠状動脈バイパス移植すなわちCABG手術を行っているヒト対象に実施例6で教示されるフルオロカーボン処方を投与した後にPFOBおよびPFDBの薬物動態を決定した。第一および第二群では、ヒト対象はバイパスを装着された後であるが、冷却が開始される前に実施例6で教示されるようなフルオロカーボンエマルジョン(2.7gPFC/kg)をバイパス酸素供給器に直接投与された。第4群では対象は大動脈カニューレ挿入の前かバイパスを装着された後のいずれかであるが、冷却が開始される前に実施例6のフルオロカーボンエマルジョン2.7gPFC/kgをバイパス酸素供給器に直接投与された。PFOBおよびPFDBに関する薬物動態パラメータを表10にまとめる。
Figure 2009538311
Figure 2009538311
n=分析のための十分なデータを有する対象の数
max=最大全血液濃度;AUC=無限までの全血液濃度−時間曲線下面積;t1/2=排泄半減期;CL=全血液クリアランス

ペルフルブロンの全血液濃度はPFDBのものよりも〜30倍高く、投与された処方におけるその相対比率(58%w/vPFOB/2%w/vPFDB)と一致した。大動脈カニューレ挿入の前またはCPB開始後の実施例6のフルオロカーボンエマルジョンの投与の結果、PFOBおよびPFDBの双方に関して匹敵する全血液濃度および薬物動態パラメータに至った。
実施例13
中量から多量の失血に関連する選択的非心臓外科手術における保存血の輸血の減少または回避における標準的な輸血実施(対照)に対して急速定容量性血液希釈と組み合わされた実施例6で教示されるような58%PFOB/2%PFDBフルオロカーボンエマルジョン2.7gPFC/kgの有効性の多施設単純盲検無作為化比較並行群研究
この研究の第一の目的は、一時的な酸素キャリアとして実施例6の58%PFOB/2%PFDB(w/v)フルオロカーボンエマルジョンを使用する急速定容量性血液希釈の増加がヒトにおける保存血の輸血、すなわち標準的な輸血実施(ケアの標準/SOC対照)と比較して中量から多量の失血(≧20ml/kg)に随伴される選択的非心臓外科手術を行っている対照におけるヒトにおける保存血の輸血、すなわち同種異型RBCおよび/または術前自己血貯血(PAD)単位を減少させることができるかどうかを評価することであった。
研究計画
これは34の臨床試験施設で行われた第III相単純盲検無作為化並行群比較多施設研究であった。非心臓外科の大手術を行っている20と70ml/kgの間の失血が予期される全部で492人の患者が研究に登録された。さらなる重要な組み入れ基準には;術前ヘモグロビン濃度[Hb]12と15g/dlの間;年齢18から80歳;体重50から125kg;米国麻酔医学会(ASA)身体状況I−III;および術前の急速定容量性血液希釈(「ANH」)の間の自己血液2単位の除去を可能にするのに十分な推定血液容量;が含まれる。手術手順には主として癌大手術(例えば骨盤内容除去、腹腔内腫瘍のための「減量」手順、骨盤および四肢の筋骨格腫瘍の切除、頭頸部大切除、肝臓切除、ならびに脊髄腫瘍の除去)、股関節両側再置換、骨盤骨折の観血的整復および内固定、ならびに血管大手術が含まれることになっていた。この研究では血液回収は許されなかった。対象は手術前に二つの研究群の一つ、第一研究群(ANH+実施例6のフルオロカーボン処方)または第二研究群、対照、標準的な輸血実施(SOC)に無作為化されることになっていた。
利用可能な場合、PAD単位、および同種異型血液を用いて、各々の術中輸血トリガー、すなわちプロトコール定義された[Hb]またはいくつかのプロトコール定義された術中の生理学的トリガーのいずれか一つのいずれかに関して患者に輸血する。これには頻脈(心拍数≧100bpmまたは麻酔後誘導値の≧135%)、低血圧(MAP≧60mmHgまたは麻酔後誘導値の≧65%)、PVO≦38mmHg(肺動脈カテーテルを使用した場合)またはSTセグメント下降(>0.1mV)または上昇(>0.2mV)が含まれた。
A.対照群(SOC)
標準的な輸血プロトコールで定義されるような標準的な輸血実施で対照群を処置した。各々の術中[Hb]輸血トリガー8.0±0.5g/dlのために、および/または少なくとも一つの生理学的トリガーを生じた場合、利用可能な場合PAD単位、次いで同種異型RBCで彼らに輸血した。吸入酸素分画(FIO)は手術の期間40%(FiO2=0.4)に維持した(一般的な手術において典型的に使用されるレベル)。
B.実施例6のフルオロカーボンエマルジョンでの処置群
外科的切開の前に患者にANHを行ってFiO=1.0で[Hb]8.0±0.5g/dlにし、直ぐ実施例6のフルオロカーボンエマルジョン1.8gPFC/kg静脈内用量(3ml/kg)を続けた。手術の間に[Hb]が6.5±0.5g/dlに到達したときに、さらに実施例6のフルオロカーボンエマルジョン0.9gPFC/kg(1.5ml/kg)用量を投与した。[Hb]5.5±0.5g/dlを下回るか、または任意の(前記される)生理学的トリガーに遭遇した場合、患者は同種異型血液を投与される前に、利用可能な場合ANH単位およびPAD血液を輸血されることになっていた。全てのANH血液は手術後に注入されることになっていた。
双方の群で手術のおわりに[Hb]≧8.5±0.5g/dlが目標とされ、術後(POD)3日を通して維持され、そして退院時のプロトコールにより要求された。[Hb]輸血トリガーの範囲(±0.5g/dl)は個々の患者には適用できないが、施設基準(local standards)にしたがって施設が輸血決定を調整する(双方の群で同等に)ことを可能にするために提供された。
有効性の評価
評価項目
第一の有効性評価項目は急性研究期間中(皮膚切開から24時間)に輸血された同種異型および/またはPAD単位の数であった。第二の評価項目には:(1)急性研究期間中に同種異型RBC輸血を回避する対象のパーセンテージ;(2)急性研究期間中に同種異型RBCおよびPAD単位輸血を回避する対象のパーセンテージ;および(3)回復室に到着してから退院の日(DD)までの経過時間またはPOD21日;が含まれる。第一の有効性集団は全ての無作為化された対象が含まれる包括解析として定義された。第二のプロトコール定義された有効性集団には失血≧20ml/kgと推定される全ての無作為化された対象が含まれた。
結果
患者の個体統計学はスクリーニングおよびベースラインで双方の群において類似し、手術の型も同様であった。合計で14人の処置患者および10人の対照が、患者の依頼かまたはその時点で臨床症状により手術が正当化されないためかのいずれかで処置または手術の前に中止した。術前ANHの間、1618(SD=558ml、範囲:450−3374ml)の血液を吸引し、そして1312ml(SD=680ml、範囲:100−3500ml)のコロイドおよび2418(SD=1627ml、範囲:100−10000ml)晶質輸液で置換した。ANH後[Hb]は8.1±0.5g/dlであった。227人のフルオロカーボンエマルジョン処置患者のうち、50人が初期用量1.8gPFC/kgの実施例6のフルオロカーボンエマルジョンのみを投与され、そして投与のための第二の[Hb]トリガーに到達することはなかったが、177人の対象は2.7gPFC/kg全用量を投与された。
包括解析集団(N=492)では、第一の評価項目(24時間に輸血された同種異型/PAD単位の数の減少)が達成された:フルオロカーボンエマルジョン群は対照よりも必要とされた輸血が少なく(各々1.5対2.1単位)、26%の減少率を示した(表11、術中失血が多いにも関わらなかった[2.7±2.7L対2.3±2.0L;p<0.05])。しかしながらプロトコール定義された目標母集団(失血≧20ml/kg;N=330または無作為化対象の67%)では、フルオロカーボンエマルジョン処置群はPOD1日で平均減少率はより高かった(>40%)(表12)。この差異は退院までにわたって対照とは有意に異なったままであった(POD21日/DDで平均差異3.4対4.9単位;差異の中央値2対4単位;p<0.001)。全体で、POD21日/DDまでにわたってフルオロカーボンエマルジョン処置対象は696単位、対して対照群では846単位を必要とし、これは同種異型血液150単位の正味の節約を示している。
Figure 2009538311
自然対数変換を用いて共分散分析から調整された平均
ランクに関する線形モデルを用いて計算し、平均ランクと比較する
POD21日または退院の日、どちらか早い方
Figure 2009538311
自然対数変換を用いて共分散分析から調整された平均
ランクに関する線形モデルを用いて計算し、平均ランクと比較する
POD21日または退院の日、どちらか早い方

包括解析集団における輸血の回避に関して(図9、パネルA)、急性研究期間(24時間)の間、フルオロカーボンエマルジョン処置群で〜21%多い対象が対照と比較して同種異型およびPAD輸血を回避した(P<0.05)。プロトコール定義された目標母集団では有意に(p<0.05)大きなパーセンテージの対象(ほぼ2倍)がPOD1日からPOD21日/DD間の全ての時点で輸血を回避した(図9、パネルB)。フルオロカーボンエマルジョン処置から利益を被った全ての対象を同定するために事後解析を行い、手術失血が≧10ml/kg(N=424;全対象の86%)であった場合に、対照に対してフルオロカーボンエマルジョン処置患者で輸血が有意に減少したことが示された(図9、パネルC)。
実施例14
有害事象(「AE」)報告(身体検査を含む)、感染の発生率、バイタルサイン(心拍数、血圧および体温)および臨床検査値(血液学、凝固および血液化学)に基づいて実施例6のフルオロカーボンエマルジョンに関して安全性を評価した。電話により患者に手術後3か月間安全性追跡調査を実施した。この研究を行っている間、独立したDSMBを用いて実験室および安全性データを定期的に見直した。
この研究で報告された有害事象(「AE」)および重篤な有害事象(「SAE」)は、これらの対象が実質的な失血を伴う大手術を行っていたので予期された。表13はAEおよびSAEを提示する。全体的に全AEの発生率は対照(81%)と比較してフルオロカーボンエマルジョン処置群(86%)で類似したが、「全身」、「心臓血管系」(高血圧)および「消化器系」(腸閉塞)のカテゴリーに関するフルオロカーボンエマルジョン処置群ではさらなるAEが報告された。主に術後に高血圧を生じ、そしてANH血液の再注入に関係した可能性があった。腸閉塞の症例における臨床結果は少なく、そしてこれらの事象を実施例6のフルオロカーボンエマルジョンでの処置と結びつけることができる事後解析では一般的なパターンまたは病態生理学的メカニズムが見出されなかった。
Figure 2009538311
処置された無作為化対象(手術を行っており、そして処置群の場合、第一の用量のフルオロカーボンエマルジョンをも投与された)
処置群または対照群のいずれかの対象の>5%で報告された有害事象
処置群または対照群のいずれかの対象の>1%で報告された重篤な有害事象

SAEの全体的な発生率の群間の差異は有意であった(フルオロカーボンエマルジョン32%対対照21%;p=0.03)。しかしながら「消化器系」のカテゴリーのみが対照とは統計的に有意に異なり、ほとんどが前記されたように術後の腸閉塞の発症がより高かったためである。4例の腸閉塞のSAEはフルオロカーボンエマルジョン処置群で報告された(それに対して対照ではなし);1例は直腸切断後、2例は大きな婦人科腫瘍切除に続いて、そして1例は根治的膀胱切除術の後。この患者集団での腸閉塞の低発生率の報告は驚くべき事であり、それは大部分の患者が腹骨盤手術を行っていたためであり、これは特に対照群でのある程度の過少報告を示唆している。双方の群の術後罹患の発生率、特質および経時変化は、大規模な悪性腫瘍のための非心臓外科手術を行っている患者に関して公開された文献と合致し、そしてフルオロカーボンエマルジョンの何らかの影響を示唆するものは何も観察されなかった。全ての感染性合併症の集計値は双方の群で32%で類似し、これはフルオロカーボンエマルジョンにより免疫機能が低下しなかったという先の臨床知見を支持している。
前記したように、フルオロカーボンエマルジョン処置群は中等度の術前ANHを行った(平均〜30%の血液容量を吸引し、そして同時にコロイドおよび/または晶質輸液で置換しなければならなかった)。しかしながらこの特定の実例においてANHは必ずしも定容量条件下で実施されているとは限らないという証拠があった。分析により〜70%のフルオロカーボンエマルジョン処置対象において、投与された液体の容量はANHの間に除去された血液の容量に関して適切ではなかったことが示された。幾人かの対象では、不十分な液体の置換が低灌流を招いているかもしれず、それは手術の残りの期間に十分に修正されていなかったかもしれない。故に、特定のフルオロカーボンエマルジョン処置対象は虚血に関係する有害事象のようなよりひどい術後罹患に陥りやすかったかもしれない。その他の対象では、ANHの間の過剰な液体置換が循環過負荷にさらに典型的ないくつかの合併症に関連するようであった。これらの分析により、この研究をモニタリングするデータ安全性評価委員会(「DSMB」)の独立した結論が確認され、それは特定の集計された有害事象におけるいくつかの群の不均衡に留意し、数人の患者が血液量減少性であったかもしれないことを示唆している。しかしながらDSMBは、臨床的に一貫したパターンまたは有意性がないと結論づけ、そして実施例6のフルオロカーボンエマルジョンの効果を確認し、そして安全性プロフィールをさらに評価するために一般外科手術集団でのさらなる研究を行うように要請した。死亡率は群間で類似し(4%対2%)、そして全ての死亡は治験責任医師による被験薬物と無関係であると考えられた。それよりむしろ死亡は自然な腫瘍の進行、敗血症、多臓器不全および心肺合併症によるものであると考えられた。術後数日で発症する血小板数の一過性の減少が観察され、そして以前の臨床データに基づいて予期された。血小板輸血の回数および出血事象の発生率は双方の群で類似したので、この術後血小板数の中等度の低下は臨床的関連性があまりないようである。これはPFCエマルジョンが血小板機能および出血時間に影響を及ぼさないことを実証するヒトボランティアでの先の研究と合致する。
実施例13および14のデータの結論
この一般外科手術研究は、実施例6のフルオロカーボン処方を注入された場合、種々の一般外科的な大手術を行っている対象における同種異型血液およびPAD輸血の統計的に有意な減少および回避を実証するのに成功した。全体的には、術後罹患のプロフィールおよび発生率は双方の群に関して許容され、そしてほとんど注目に値しないと考えられた。SAEの発生率はフルオロカーボンエマルジョン処置群でより高かったが、観察された事象はこの高齢の外科集団に関して予期されないものではなく、そして治験責任医師によると、投与されたフルオロカーボンエマルジョンに起因するものではなかった。また、この特定の研究の単純盲検の特質により、対照群におけるいくつかの事象の過少報告、および恐らくフルオロカーボンエマルジョン処置群での過剰報告の傾向に起因していたようである。
実施例15
心肺バイパス下で一次冠動脈バイパス移植手術を行っている患者における術中の自己血輸血を増加させ、そして同種異型赤血球の輸血を回避するための実施例6のフルオロカーボンエマルジョン2.7gPFC/kgの有効性の第III相単純盲検無作為化並行群多施設比較研究
研究の第一の目的は、CABG手術を行っている患者における心肺バイパス「CPB」の直前に自己血液をさらに多量に回収することを可能にすることにより、同種異型血液の輸血を回避するために一時的な酸素キャリアとしての実施例6のフルオロカーボンエマルジョンの有効性を評価することであった。
研究計画
これは38の臨床試験施設で行われた第III相単純盲検無作為化並行群多施設比較研究であった。低体温または正常体温CPBで一次非緊急CABG手術(弁手術は含まない)を計画されている年齢18から80歳の心臓外科手術の患者を手術前に2群に無作為化した:フルオロカーボンエマルジョン処置(ANH+術中自己血輸血[LAD])または対照(ANHのみ)。さらなる重要な組み入れ基準には:術前スクリーニング[Hb]≧11および≦14g/dl;体重50から125kg;およびASA身体状況分類2もしくは3、または不安定狭心症による場合はASA4;が含まれる。
研究は600人のヒト対象(研究群あたり300人)を登録するように意図された。38の臨床試験施設で全部で411人の対象(処置された205人および対照の206人)を研究に登録した。バイパスを開始する前に麻酔医師が、初期オン・バイパス(on−bypass)[Hb]が8g/dlに至る[Hb]を目標とするANHを実施した;同一の程度のANHがフルオロカーボンエマルジョンおよび対照対象の双方で実施されることになっていた。フルオロカーボンエマルジョン処置群では灌流技師により、対照対象よりも低いオン・バイパス[Hb](6g/dl)を目標とし、そしてさらなる自己血液を保存するためにバイパスを開始する直前にIAD(CPBが開始されると同時に、それにより患者から自己血液を収集する技術)が実施された。ANHおよびIADにより収集された血液は、正常血液量を確実にするのに十分な量のデンプン基盤のコロイド、アルブミンおよび/または晶質で同時に置換されることになっていた。その初期バイパス流速(BFR)は双方の群で酸素供給器(すなわち100%O)により維持された動脈血の最大酸素供給で正常体温状態(35から37℃)で、2.2から2.4L/分/mに設定された。低体温バイパス(28から34℃の温度範囲)の間、BFRは1.8から2.0L/分/mに低下した。双方の群で術中の自己血液の再使用(ABS)が許可された。
双方の群で、プロトコール規定された[Hb]または生理学的トリガーに到達した場合に対象を輸血した。しかしながら術中期間に[Hb]が≧10g/dlであった場合、生理学的トリガーに応答した輸血は強制的ではなかった。臨床上の必要性により決定された場合、BFRを変更できるが、プロトコール定義された生理学的輸血トリガーを補正しようとする目的のために上昇させてはならなかった。これには低体温CPBの間、PVO≦30mmHg(定容量性CPBを使用した場合、≦35mmHg)、SVO≦65%、およびSTセグメント下降(≧0.1mV)または上昇(≧0.2mV)。
フルオロカーボンエマルジョン処置群
フルオロカーボンエマルジョン処置群の対象はバイパスを始める直前に実施例6に記載されるようなフルオロカーボンエマルジョンの第一の静脈内(「IV」)用量(1.8gPFC/kg;3.0ml/kg)を投与された。バイパスが開始されているときに、IAD収集の直後に実施例6のフルオロカーボンエマルジョンの第二の用量(0.9gPFC/kg;1.5ml/kg)をIV投与した。プロトコール定義された[Hb]トリガー(すなわちオン・バイパスで5.5g/dlおよびバイパス直後に7.0g/dl)にしたがって同種異型赤血球を投与する前に、および/またはいずれかの(前記で記載された)生理学的トリガーを生じた場合、対象をANHおよびIAD血液(および利用可能な場合PAD単位)で輸血した。
対照群
対照対象は最後のANH単位が除去された後に、容量が適合した平衡電解質溶液のIV注入(3ml/kg)、続いてバイパスが開始された時にさらに1.5ml/kgを投与された。各々の術中[Hb]輸血トリガー(すなわちオン・バイパスで7.0g/dlおよびバイパス直後に8.0g/dl)に関して、および/またはいずれかの生理学的トリガー(前記で記載された)を生じた場合、同種異型血液を投与される前に対象をANH単位(および利用可能な場合PAD単位)で輸血した。
バイパス直後の期間、双方の群で血流力学安定性を維持するために自己血液を投与した。[Hb]または生理学的トリガーに到達した場合、自己血液、続いて同種異型RBCを輸血した。手術室を離れる前に、禁忌でない場合、全ての利用可能なANH単位およびIAD血液を対象に戻すことになっていた。術後期間(POD7日またはDD、どちらか早い方までの間)、[Hb]>8.0g/dlを維持するために、またはそれより早く通常の介入で回復させることができない生理学的トリガー(術後24時間のみの間のPVOおよびSVO)が観察された場合、同種異型RBCを輸血されることになっていた。
有効性の評価
評価項目
第一の有効性評価項目は、POD7日またはDD、どちらか早い方までの間に対照群と比較したフルオロカーボンエマルジョン処置群で同種異型RBC輸血を回避した対象の比率であった。第二の有効性評価項目はPOD7日またはDD(どちらか早い方)までの間に輸血された同種異型RBC単位の数であった。
安全性の評価
評価項目
有害事象、バイタルサイン、臨床検査値および身体検査に関して安全性を評価した。急性研究期間中の人工呼吸の期間、ICU内の時間、入院期間、術後出血のための再手術および術後心筋梗塞(MI)の発生、卒中および腎不全もまた評価されることになっていた。手術後3か月間、任意の有害事象を評価するために電話により安全性追跡調査を実施した。この研究を行っている間、独立したDSMBを用いて安全性データを定期的に見直した。
結果
フルオロカーボンエマルジョン処置群と対照群との間で脳血管傷害(CVA)および術後出血事象の発生における不均衡原因論を調査するためのこの研究では、患者の登録を一時停止したので398人の対象(200人のフルオロカーボンエマルジョン処置患者および198人の対照患者)からの全ての利用可能なデータを用いて暫定的な安全性分析を実施した。残りの13人の対象(5人のフルオロカーボンエマルジョンおよび8人の対照)が研究の前に中止し、そして割り当てられたプロトコール処置を受けなかった。
この患者集団で予期されたように、研究に参加した全ての対象に関してAEが報告された。プロトコール規定された分析により、全体的なAEまたはSAEの発生率の群間での統計的に有意な差異は示されなかった。SAEの発生率(全体で34.4%;フルオロカーボンエマルジョン処置38.5%;対照30.3%)および死亡(全体で1.5%;フルオロカーボンエマルジョン処置2.5%;対照0.5%)は、一般的にCPBを含むCABG手術後3か月までに予期された公開された範囲内であったが、対照群の死亡率0.5%は例外的に低かった(表9参照)。CPBを含むCABG手術を行っている患者の大きなコホートを伴う最近の文献では、4.5%の死亡率が報告された。Klein M,Mahoneyら、「Blood product use during routine open heart surgery:The impact of the centrifugal pump」Artificial Organs 25(4):300−305(2001)。
退院の日までの広範な室内実験を含むその他のプロトコール定義された安全性結果の分析により、医学的に重要な悪影響の証拠はほとんど示されなかった。本質的には、この研究で報告された術後罹患の特質および時間経過は、このCABG集団に関する病歴データと合致した。
Figure 2009538311
処置された無作為化対象(手術を行っており、そしてフルオロカーボンエマルジョン群の場合、第一の用量をも投与された)
Oxygent群または対照群のいずれかの対象の>10%で報告された有害事象
Oxygent群または対照群のいずれかの対象の>1%で報告された重篤な有害事象

重篤な神経学的および出血性合併症に関する全体的な発生率は、文献で通常報告される範囲内であった;しかしながら対照群での率は例外的に低かった。典型的には、限局的または全体的のいずれかの有害な神経学的結果はCABGを行っている患者のおよそ2%から6%で生じ、そしてCABG患者のおよそ2%が胸腔内出血のための再手術を必要とする。フルオロカーボンエマルジョン群での神経学的および出血性事象が予期された率よりも高かった理由は、広範な事後診査分析および仮説生成の主題であった。
手順の違いが神経学的事象の危険性を増加させたようである。フルオロカーボンエマルジョン処置群に無作為化された対象はANH(除去された血液容量の平均9.5%)を行い、そして時には非常に急速に、IADによりさらに血液除去された(血液容量の平均18.4)。吸引された自己血液の全容量(ANH+IAD)は重篤な神経学的合併症の有意な危険因子であることが判明した:組み合わされた血液収集手順を用いて重篤な神経学的事象が報告された対象において、報告されなかった対象と比較して、さらに平均330mlの自己血液が吸引された。フルオロカーボンエマルジョン処置対象における昇圧剤のより一般的な使用(灌流圧を後押しするため)により、彼らはバイパスを始めていたので、低血圧であったかもしれない(すなわち大容量の血液の急速な除去に続発して、十分な液体置換がなかった可能性がある)ことが示唆され、そしてIADの間に酸素負債に至る低灌流/低酸素エピソードを生じ、その影響は何時間も持続し、そして術後罹患を悪化させる可能性があったという仮説が支持される助けとなる。
Figure 2009538311
2人の対照対象はIADを実施された。何らかの理由でANH手順を継続できず、そして「ANH血液」の残りを除去される必要があった場合、対照対象においてプロトコールによりこれが許可された。
フルオロカーボンエマルジョン処置群では、IAD吸引およびIAD返血の間の時間ならびに使用したヘタスターチの容量は出血性合併症のための注目に値する独立した危険因子であった。多容量のIAD収集血液および多容量のヘタスターチ使用のための希釈性凝固障害は手術の終わりの高濃度のヘパリンを伴うIAD返血と組み合わされ、ヘパリン化およびCPBにより既に引き起こされた止血機能障害を悪化させたという仮説が立てられる。
対照群では、手順の違いがまた重篤な神経学的および出血性合併症の著明に低い発生率において役割を果たしているかもしれない。中等度のANH(初期オン・バイパス目標[Hb]=8.0g/dl)および手術の間の100%酸素の投与により、患者の結果が改善されていたかもしれない:前者は血液粘度の低下および微小血管血流の改善により、そして後者は利用可能な酸素の量の増加および組織による抽出の程度の改善を可能にすることによる。加えて、バイパス回路の有害な影響に暴露されない新鮮な自己血液がバイパス後の期間の輸血に利用可能であった。
いくつかのその他の因子、特に治験施設をまたぐ患者の管理の重要な手順の態様の標準化の欠如、ならびに有害事象報告を標準化するための実験室および臨床パラメータの予め確立された定義の欠如もまたこの研究の安全性を混乱させていたかもしれない。最も重要なことに、この調査の結果により、実施例6のフルオロカーボンエマルジョンの投与自体が神経学的または出血性事象の危険性を増加させていたのではないようであったということが示される。加えて、エキソビボ室内実験により、実施例6のフルオロカーボンエマルジョンと、血液、コロイドまたはその他の一般的な試薬およびCPBの間に使用される薬物(例えばヘパリン)のいずれかとの間の有意義な物理学的または化学的相互作用または不適合性の証拠がないことが示された;さらにこれらの混合物において剪断依存性の粘度測定には影響がなかった。同様に止血およびCNSに関係する薬理学的および毒性学的研究の詳細な遡及的検討により、種々のモデルにおいてPFC基盤のエマルジョンの影響の証拠を明らかにすることができなかった。
実施例16
一般外科手術を行っているヒト患者における臨床研究
整形外科手術を行っている対象(N=147)を第一の研究に登録し、そして泌尿生殖器手術を行っている対象(N=99)を第二の研究に登録した。研究はほとんど同一であったので、要旨を合わせて以下に提供する。
目的/研究計画
これらの無作為化多施設比較単純盲検並行群研究の目的は、整形外科手術(人工股関節置換または脊髄手術)または泌尿生殖器手術(根治的前立腺切除、根治的子宮摘出または嚢胞切除)を行っている患者におけるANHの後、いずれかの血液+FiO=0.4またはコロイド+FiO=1.0に相対して、実施例6のフルオロカーボンエマルジョン(0.9または1.8gPFC/kg)の単回静脈内注入+FiO1.0の安全性および有効性を評価することであった。全部で246人の対象(フルオロカーボンエマルジョンで処置された109人およびコロイドまたは血液で処置された137人[対照群])をこれらの研究に無作為化した。
有効性評価項目には、生理学的輸血トリガーの逆転および逆転の期間が含まれた。安全性は術後28日にわたる有害事象の発生率、臨床検査値(血液学、血液化学および凝固)およびバイタルサインに基づいて評価された。
安全性結果
これらの研究における全体的な有害事象の発生率は血液対照(68%)群およびコロイド対照(61%)群と相対して、1.8gPFC/kg(66%)群に関して同程度であった;0.9gPFC/kg(50%)を投与された対象における有害事象の発生率は全てのその他の群よりも低かった。一般的に、有害事象は軽度から中等度の重篤度であり、そして研究された手術集団における術後罹患に典型的であった。対象の研究からの中止に至る事象はなかった。
いずれかの研究で研究期間後30日の間またはそれ以内に死亡した対象はなかった。フルオロカーボンエマルジョンおよび対照群との間で報告された重篤な有害事象の発生率または型において臨床的に有意義な差異はなく、そして発生率は全てのその他の処置群(フルオロカーボンエマルジョン0.9gPFC/kg、1.8gPFC/kgおよび血液対照群に関して各々5%[n=2]、11%[n=8]および9%[n=6])に相対して、コロイド対照群(18%、対象13人)に関して最も大きかった。全ての重篤な有害事象は治験責任医師により被験薬物との関連性の可能性がなかったと判断された。
検査値異常は被験薬物よりもむしろ手術および血液希釈手順に関係しているようであった。双方の研究で、フルオロカーボンおよび対照群において第2日から第3日にわたって血小板数の一過性の減少が観察された。血小板数のこの低下の底は双方の研究で第2日に観察され、そして群間でほとんど差はなかった。第28日までに、手術に対して予期される急性相応答である相当な過補償に続いて、血小板数は全ての処置群に関してベースラインレベル近くに戻った。臨床的に有意義なバイタルサインまたは身体検査知見は留意されなかった。
有効性結果
実施例6のフルオロカーボンエマルジョンは1.8gPFC/kgの用量で、双方の研究で血液対照よりも輸血トリガーの逆転を達成する対象の比率が有意に高いことが見出された(第一および第二の研究で各々97%対60%および69%対37%)。加えて、逆転の期間(すなわち第一の輸血トリガーに関して処置の開始から第二の輸血トリガーのための輸血の開始または手術の終わりまでの時間)は血液およびコロイド対照群の双方に相対してフルオロカーボンエマルジョン1.8gPFC/kgを投与された対象に関して有意に長かった(第一研究および第二研究で各々60対30分および28対15分)。フルオロカーボンエマルジョン0.9gPFC/kg群もまたコロイド対照群よりも有意に長い逆転の期間を示した。
フルオロカーボンエマルジョン1.8gPFC/kgもまた第一の輸血でのP/Oトリガーの修正において、血液対照よりもさらに有効であることが見出された(第二の研究においてのみ、各々87%対14%の対象)。加えてフルオロカーボンエマルジョン1.8gPFC/kg群で対象2人(6%)のみ、対して血液対照群では対象13人(43%)に関して、FiOが第二の輸血トリガーとして挙げられた。これにより実施例6のフルオロカーボンエマルジョンが第一の輸血トリガーでの処置の後、大部分の症例でFiOレベルを持続できることが示されると思われる。実施例6のフルオロカーボンエマルジョンがFiOを上昇させ、生理学的輸血トリガーを逆転させ、そして投与後の次のトリガーの発生を遅延させる能力は実施例6のフルオロカーボンエマルジョンの酸素分配特性を実証した。
結論
血液希釈を伴う中等度の失血手術の間の輸血トリガーの逆転の期間および逆転を達成する対象の比率の双方に関して、FiO=1.0で投与された1.8gPFC/kgの実施例6のエマルジョンの単回注入は、血液+aFiO=0.4(第二の研究のみ)またはコロイド+FiO=1.0のいずれかよりも統計的に良好であった。0.9gPFC/kgの実施例6のフルオロカーボンエマルジョン+FiO=1.0はこれらの有効性測定値に関して血液+FiO=0.4での処置に統計的に類似した。同種異型血液に関する要求の第二の評価項目に関する利点はこの研究では認められなかった。この手術設定を用いて、実施例6のフルオロカーボンエマルジョン(0.9および1.8gPFC/kg)は1.8gPFC/kgで血小板数の軽度な減少のみを伴う許容される安全性プロフィールを示した。

Claims (20)

  1. 連続水相および不連続フルオロカーボン相を含む、ヒト患者におけるインビボ酸素分配のための保存に安定したフルオロカーボンエマルジョンであって、該不連続フルオロカーボン相がフルオロカーボン臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルからなり、ここで該臭化ペルフルオロオクチルが該フルオロカーボンエマルジョン中全エマルジョンのおよそ57−60%w/vで存在し、そして該臭化ペルフルオロデシルが該エマルジョン中全エマルジョンのおよそ2−3%w/vで存在し、そして該エマルジョンはさらに、およそ3%w/v−4%w/vの量で存在する卵黄リン脂質からなる乳化剤を含む、エマルジョン。
  2. さらにd,α−トコフェロールを含む請求項1に記載のエマルジョン。
  3. 前記d,α−トコフェロールがおよそ1%w/vの量で存在する請求項1に記載のエマルジョン。
  4. さらにNaCl、NaHPOおよびEDTAを含む請求項2に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  5. 前記臭化ペルフルオロオクチルが57−59%w/vの量で存在し、そして前記臭化ペルフルオロデシルが2%w/vの量で存在する請求項1に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  6. 前記臭化ペルフルオロオクチルが58%w/vの量で存在し、そして前記臭化ペルフルオロデシルが2%w/vの量で存在する請求項1に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  7. 前記卵黄リン脂質がおよそ3.6%w/vの量で存在し、そしてさらにNaCl、NaHPO・HO、NaHPO・7HOを含む請求項1に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  8. 前記フルオロカーボンエマルジョンがさらにd,α−トコフェロールおよびEDTAを含む請求項1に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  9. d,α−トコフェロールが0.0025w/vの量で存在し、そしてEDTAが0.02w/vの量で存在する請求項8に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  10. 連続水相および不連続フルオロカーボン相を含む、ヒトおよびその他の哺乳動物の組織に酸素を輸送するためのフルオロカーボンエマルジョンであって、該不連続フルオロカーボン相が臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルからなり、ここで該臭化ペルフルオロオクチルが該フルオロカーボンエマルジョン中全エマルジョンのおよそ57−60%w/vの量で存在し、そして該臭化ペルフルオロデシルが該エマルジョン中全エマルジョンのおよそ1−3%w/vで存在する、エマルジョン。
  11. さらにおよそ3.5%w/v−4%w/vの量で存在する卵黄リン脂質からなる乳化剤を含む請求項10に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  12. 前記エマルジョンが界面活性剤により安定化される請求項10に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  13. 前記不連続フルオロカーボン相がおよそ58−59%w/vPFOBおよびおよそ2−3%w/vPFDBからなる請求項10に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  14. 前記不連続相がおよそ58%w/vPFOBおよび2%w/vPFDBからなる請求項10に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  15. エマルジョンの形成時に粒子直径の中央値が0.18μmのフルオロカーボン粒子が形成される請求項10に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  16. 連続水相および不連続フルオロカーボン相を含む、ヒトおよびその他の哺乳動物の組織に酸素を輸送するためのフルオロカーボンエマルジョンであって、該不連続フルオロカーボン相が臭化ペルフルオロオクチルおよび臭化ペルフルオロデシルからなり、ここで該臭化ペルフルオロオクチルが該フルオロカーボンエマルジョン中全エマルジョンのおよそ58%w/vの量で存在し、そして該臭化ペルフルオロデシルが該エマルジョン中全エマルジョンのおよそ2%w/vの量で存在する、フルオロカーボンエマルジョン。
  17. さらにおよそ3−4%w/vの量のレシチンを含む請求項16に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  18. レシチンが卵黄リン脂質であり、そして3.6%w/vの量で存在する請求項17に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  19. さらにキレート剤を含む請求項16に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
  20. 前記キレート剤がd,α−トコフェロールである請求項19に記載のフルオロカーボンエマルジョン。
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