JP2009520505A - 微少流体細胞培養培地 - Google Patents

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Abstract

微少流体細胞培養培地は、細胞塊に治療環境を提供するのに必要な治療濃度領域よりも低い、活性材料初期濃度を有してもよい。

Description

本出願は、次の米国仮出願についての恩典を主張するものである:2005年12月2日に出願された60/741,864号、2005年12月2日に出願された60/741,665号。
連邦政府により後援された研究又は開発に関する言明
本発明は、NASA賞NNCO4AA21A、陸軍研究局(Army Research Office)賞DAAD19-03-1-0168、及び米国国立科学財団(National Science Foundation)賞BES0238265の内の少なくとも1つの下、政府の援助を受けて成されたものである。政府は本発明に対し一定の権利を有する。
1. 技術分野
本発明は微少流体(microfluidic)細胞培養培地に関する。
2. ディスカッション
微少流体装置は、使用者がナノリットルからマイクロリットルの容量の流体で作業することを可能にして、試薬消費を削減し、インビボにおける細胞対流体の容量割合により良く適合する生理的細胞培養環境を作り出し、及び、複層流(multiple laminar streams)による細胞の亜細胞処理(subcellular treatment)等の低いレイノルズ数現象を活用した実験を行うのに有用である。多くの微少流体装置は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の好ましい物理学的特性、視覚的透明性及び生物適合性のため、PDMSから作られている。
概要
本発明の態様は、微少流体細胞培養装置中の細胞塊のための微少流体細胞培養培地の形をとっても良い。当該培地は細胞塊に治療環境を提供する。当該細胞塊は活性材料を有する。当該培地は、当該活性材料の初期濃度を有する流体を含む。流体の活性材料は、一つの細胞工程の少なくとも一部のために、細胞塊により利用され得る。流体は細胞塊により放出される活性材料を受けることができる。初期濃度は、細胞塊に治療環境を提供するのに必要な治療濃度範囲よりも低い。
本発明の態様は、細胞培養期間中に、微少流体細胞培養装置中の細胞塊と共に使用するための微少流体細胞培養培地の形をとっても良い。当該装置は、培地の一部を吸収すること、および培地の一部が蒸発するのを許すことの、少なくともどちらか一方となるよう形作られている。当該培地は、細胞培養期間中、細胞塊に治療環境を提供するのに必要とされる治療濃度範囲よりも低い活性材料の初期濃度を有する、水を基材とした流体を含む。初期濃度は、該流体からの決められた量の水が細胞培養期間中に吸収されること、および蒸発することの、少なくともどちらか一方の場合に、細胞塊の近くの流体中の活性材料濃度が治療濃度領域内に入るような値を有する。
本発明の態様は、細胞培養期間中に、微小細胞培養装置中の細胞塊と共に使用するための微小細胞培養培地の形をとっても良い。当該装置は、培地の一部を吸収すること、および培地の一部が蒸発するのを許すことの、少なくともどちらか一方となるよう形作られている。当該培地は、細胞培養期間中、細胞塊に治療環境を提供するのに必要とされる治療重量オスモル濃度範囲よりも低い初期重量オスモル濃度を有する、水を基材とした流体を含む。初期重量オスモル濃度は、該流体からの決められた量の水が細胞培養期間中に吸収されること、および蒸発することの、少なくともどちらか一方の場合、細胞塊の近くの流体の重量オスモル濃度が治療重量オスモル濃度領域内に入るような値を有する。
詳細な説明
図1は、微少流体細胞培養システム又は装置10の分解透視図である。装置10は、以下により詳細に説明されるように、例えば胚などの細胞塊を収容するよう形作られた基板12、非剛性膜14、設置台16、及び針作動(actuating)装置18を含む。
図2aは基板12の上からの図である。基板12は漏斗22、貯蔵器24及び貯蔵器上掛け(オーバーレイ;overlay)26を含む。漏斗22の底部28は、貯蔵器24と微小導管30を介して流体が連絡する。微小導管30は1マイクロリットルより少ない容量を有する。以下に詳細に説明するよう、流体が漏斗22及び貯蔵器24の間を移動できるように、貯蔵器24は、微小導管30に開口を提供する貯蔵器開口32を含む。
図2bは、基板12の、図2aの切断線2b-2bに沿った横断面での横からの図である。以下に詳細に記載されるように、微小導管30の一部は基板12中に形成されており、微小導管30の別の部分は膜14により形成される。しかしながら、微小導管30は完全に基板12中に形成されても、又はその他の任意の好適な様式であってもよい。微小導管30は、四角形、円形、鐘(ベル)形、又はその他の好適な形の横断面を有し得る。基板12はさらに、貯蔵器上掛け26内での流体保持を促進するように、親水性表面34を含む。
流体は漏斗22及び貯蔵器24の間を、膜14の局所的な変形を介して動き得る。流体はまた、漏斗22及び貯蔵器24の間を、以下に詳細に説明されるように、重力の影響下で動き得る。
基板12は視覚的に透明であり得、プラスチック(例えば、PDMS、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン)又はガラス等の材料から作られ得る。
図2cは基板12の底からの図である。基板12は、以下に詳細に記載されるように、基板12を膜14に対して配置するのを助ける雌ロケーター36を含む。
基板12は、ソフトリソグラフィを用いて製作された、厚い(例えば8mm)PDMSスラブを含み得る。PDMSスラブは、プレポリマー(Sylgard 184、Dow-Corning)を、1:10の硬化剤-基剤比で、陽画レリーフ造作に対して鋳造することにより調製し得る。レリーフ造作はSU-8(MicroChem, Newton, MA)を含み得、そして、薄い(例えば、200μm)ガラスウェハ上に、裏面散乱光フォトリソグラフィを用いて製作し得る。プレポリマーは次に60℃で60分間硬化させてもよく、それから尖らせた14ゲージのブラント針により孔を開けてもよい。
基板12は、プラズマ酸化(SPI supplies, West Chester, PA)により不可逆に一緒に封じられた、基剤の硬化剤に対する割合が1:10である割合で硬化されたPDMSの2つの層を含み得る。漏斗22及び貯蔵器24は、最上層に形成されている。微小導管30はソフトリソグラフィにより底層に形成されている。以下に詳細に説明されるように、微小導管30は下を向いており、そして膜14に対して封じられていても良い。
図3aは、針作動装置18(図1)の膜14及び針54の部分的に切り取られた、横断面での横からの図である。膜14は、膜14を基板12に対し配置し、基板12の雌ロケーター36に収容されるように形作られた雄ロケーター38(図1)を含む。
膜14は視覚的に透明であり、最上層40、上表面41、中間層42、底層44及び底面45を含む。最上層40及び底層42はPDMSを含む。中間層42はパリレンを含む。最上層40及び底層44は代わりに、非剛性プラスチック(例えば、ポリウレタン)、又はハイドロゲル(例えば、ポリビニルアルコール)等の任意の好適な非剛性、生物適合性のポリマーを含み得る。中間層42は代わりに、ポリ塩化ビニリデン又はポリウレタン等の任意の好適な非剛性ポリマーを含み得る。
最上層40及び底層44は合わせて、1mmよりも小さい、例えば、200μmの厚さであり得る。中間層42は、2〜20μm、例えば、2〜5μmの範囲の厚さであり得る。
針作動装置18の針54は、膜14を局所的に変形して最上層40の少なくとも一部が微小導管30(図2b)へ延びるよう、示されている位置から膜14へと選択的に延びていてもよい。針54の選択的作動により、以下に詳細に説明されるように、微小導管30中の流体は動くか、又は、微小導管30中の流体の動きは止められ、若しくは妨げられ得る。
中間層42は、例えば流体の重量オスモル濃度の望ましくない変動を防ぐ為、微小導管30内に含まれる流体(例えば、水を基材とした流体)の蒸発を最小限とする。中間層42はまた、微小導管30からの、少なくとも一つの気体(酸素及び二酸化炭素等)の流れに対して抵抗性であり、針54の選択的作動により引き起こされる亀裂に対する機械的耐久性及び安定性を提供する。針54の作動による疲労は、膜14を通って流体が微小導管30から動く割合を実質的に減少させる中間層42の能力を、実質的に増さない。
膜14は、以下に詳細に説明されるように、設置台16に対して膜14を配置するのに使用される雌ロケーター(図示なし)を含む。
膜14は、4インチのシラン化シリコンウェハ上に100μmの厚さにPDMSをスピンコートし、この層を120℃で30分間硬化させ、2.5又は5μmの厚さのパリレン層を沈積させ、得られたパリレン表面を90秒間プラズマ酸化し、さらに別の100μmの厚さのPDMS層をスピンコートして、およそ200μmの総体的な厚さまで硬化させることにより調製できる。
図3bは、針作動装置118(図示なし)の膜114及び針154の代替的な態様の部分的に切り取られた、横断面での横からの図である。膜114は最上層140、上表面141、底層142及び下表面145を含む。最上層140はPDMSを含み、そして底層142はポリ塩化ビニリデンを含む。最上層140は代わりに、非剛性プラスチック(例えば、ポリウレタン)、又はハイドロゲル(例えば、ポリビニルアルコール)等の任意の好適な非剛性、生物適合性のポリマーを含み得るのに対し、底層142はポリウレタン等の任意の好適な非剛性ポリマーを含み得る。
最上層140及び底層142は合わせて、1mm未満、例えば、200μmよりも薄い厚さを有し得る。
底層142は、例えば流体の重量オスモル濃度の望ましくない変動を防ぐため、微小導管30内に含まれる流体(例えば、水を基材とした流体)の蒸発を最小限にする。底層142はまた、微小導管30からの少なくとも1つの気体(酸素及び二酸化炭素等)の流れに対して抵抗性であり、針154の選択的作動により引き起こされる亀裂に対して機械的耐久性及び安定性を提供する。針154の作動による疲労は、膜114を通って流体が微小導管30から動く速度を実質的に減少させる底層142の能力を、実質的に増すことはない。
膜114は、新しく混合した1:10 PDMSをシラン化ガラススライド(Corning Glass Works, Corning, NY)上におよそ120μm又は400μmのいずれかの均一な厚さにスピンコートし、120℃で一晩硬化させ、その後、PDMSとの等角な接触を介してポリ塩化ビニリデンを付着させることにより、形作られ得る。
図1を参照すると、設置台16は針孔48及び雄ロケーター50を含む。針孔48は、針作動装置18の針54を収容するよう形作られている。雄ロケーター50は、膜14の雌ロケーターに収容され、設置台16を膜14に対し配置するように形作られている。特に、設置台16を膜14に対して設置することにより、針孔48は微小導管30と整列される。設置台16は、以下に詳細に説明されるように、針作動装置18に対して設置台16を配置するのに使用される雌ロケーター(図示なし)を含む。
設置台16は剛性であり、視覚的に透明であり、そして、ポリスチレン、環状オレフィン共重合体、ガラス又は金属等の材料から作られている。
針作動装置18は以下に詳細に記載されるようにブライユ型アクチュエータである。針54は18gの力により作動される。しかしながら、針54は、およそ3gから300gまでの範囲の力により作動され得る。針54は、例えば、一秒に10回、又は1分に1回作動され得る。針54は、数分から数週間の期間に亘って作動され得る。しかしながら、任意の好適な触覚装置を用いてもよい。
針作動装置18の針54は、作動された場合、延びて膜14を押圧し、微小導管30を制限又は閉鎖する。針54は、流体が微小導管30を介して漏斗22及び貯蔵器24の間を流動するような、任意の好適な様式により作動され得る。針54はまた、流体が微小導管30を介して漏斗22及び貯蔵器24の間を動かないようにも作動され得る。
針作動装置18は雄ロケーター56を含む。雄ロケーター56は、設置台16の雌ロケーター52に収容され、設置台16を針作動装置18に対して整列するように形作られている。ロケーター46と56を整列することにより、針54は針孔48と整列される。
図4aは基板112及び膜114の部分的に切り取られた、横断面での横からの図である。貯蔵器124及び漏斗122は、微小導管130を介して流体が連絡する。生物適合性の流体158は、針作動装置118により、膜114の局所的な変形を介して、貯蔵器124及び漏斗122の間を輸送され得る。Dは、生物適合性の流体158の高さの、貯蔵器124及び漏斗122の間の差異である。
漏斗122及び貯蔵器124はさらに、上の導管126を介して流体が連絡する。微小導管130は、流体の流れに対して上導管126よりも強い抵抗性を有する。上の導管126は、例えば、生物適合性の流体158をはじくよう、疎水性の表面により特徴付けられる。
非相溶流体160(例えば、生物適合性の流体158よりも低い密度を有する油)が、導管126を介して、漏斗122及び貯蔵器124の間を動いても良い。非相溶流体160は、生物適合性の流体158の蒸発を減らして、生物適合性の流体158の中及び外への酸素及び二酸化炭素の流れを減少させる。重力は、漏斗122中の非相溶流体160が貯蔵器124中の非相溶流体160と等しい高さとなるように、非相溶流体160に対して働き、それにより生物適合性の流体158における高さの差異Dを維持する。
D’は、例えば、貯蔵器124から漏斗122へ生物適合性の流体158を動かすのに針作動装置118を用いた後の、漏斗122中の生物適合性の流体158の高さ、及び貯蔵器124中の生物適合性の流体158の高さの間における所望の差異である。このような高さは、細胞培養に資する所望量の流体を漏斗122中に提供し得る。生物適合性の流体158は貯蔵器124から漏斗122へ動かされるため、膜114の変形が無い場合には、例えば、生物適合性の流体158がさらに漏斗122及び貯蔵器124の間を動くように、又は、生物適合性の流体158が漏斗122及び貯蔵器124の間を動くのを防ぐように、重力の影響下、非相溶流体160は導管126を介して漏斗122から貯蔵器124へと流れ、非相溶流体160は、重力の影響下、高さD’の差異を所望の時間、例えば、約30分間に亘り実質的に維持するであろう。従って、微小導管130と導管126は、漏斗122と貯蔵器124の間に連続的な流体の通路を形成する。
流体は、様々な方法により、漏斗122と貯蔵器124の間を動き得る。例えば、ポンプが、非相溶流体160を、漏斗122及び貯蔵器124の内の一つから、他方の漏斗122及び貯蔵器124へ汲み出しても良く、それにより生物適合性の流体158の高さが変わる。
漏斗122は上部分164及び下部分166を含む。漏斗122の表面168は、上部分164から下部分166へと内向きに先細になっている。さらに、上部分164は下部分166よりも広い幅を有する。
漏斗122の形は、下部分166の中及び外への細胞の一段階出し入れを容易にする。下部分166が実質的に遮られずに使用者に見えるような角度で、細胞を保持したピペットを漏斗122に挿入してもよい。同様に、下部分166が実質的に遮られずに使用者に見えるような角度で、下部分166から細胞を除くために、漏斗122にピペットを挿入してもよい。
図4bは漏斗122及び微小導管130の部分的に切り取られた、横断面での横からの拡大図である。漏斗122の下部分166は、細胞塊170を収容するよう形作られている。細胞塊170は細胞高Hを有し、微小導管130は導管高hを有する。細胞塊170は、例えば、ヒト接合子、哺乳類接合子、哺乳類細胞の塊り、又は単一の哺乳類細胞であり得る。微小導管130は、細胞塊170が、漏斗122の下部分166から出ないように形作られている。
図4cは、微小導管130をその長さに沿って見下ろす、漏斗122及び微小導管130の、部分的に切り取られた、横断面での横からの別の拡大図である。細胞塊170は細胞幅Wを有し、微小導管130は導管幅wを有する。細胞塊170もまた細胞長(図示なし)を有する。微小導管130は、導管高h及び導管幅wの内の少なくとも1つが、細胞高H、細胞幅W及び細胞長Lの内の少なくとも1つよりも小さくなるように形作ることができる。
角度Aは漏斗122の逆表面168により規定される。角度Aは30°以上160°以下の範囲であり得る。
導管高h及び導管幅wの内の少なくとも一方は、250μm又はヒトの髪の幅よりも小さくてもよい。細胞塊170が露出させたヒト接合子である場合、導管高h及び導管幅wの内の少なくとも一方は140μmよりも小さくても良い。細胞塊170が露出させた哺乳類接合子である場合、導管高h及び導管幅wの内の少なくとも一方は、70μmよりも小さくてもよい。細胞塊170が哺乳類細胞の塊りである場合、導管高h及び導管幅wの内の少なくとも一方は、50μmよりも小さくてもよい。細胞塊170が単一の哺乳類細胞である場合、導管高h及び導管幅wの内の少なくとも一方は、5μmよりも小さくてもよい。
図5aは、漏斗222及び微小導管230の部分的に切り取られた、横断面での横からの拡大図である。下部分266は、細胞塊270の一部が下部分266に閉じ込められるような大きさとなっている。
下部分266は250μmよりも狭い幅を有し得る。細胞塊270が露出させたヒト接合子である場合、幅は140μmよりも狭くても良い。細胞塊270が露出させた哺乳類接合子である場合、幅は70μmよりも狭くてもよい。細胞塊270が哺乳類細胞の塊りである場合、幅は50μmよりも狭くてもよい。細胞塊270が単一の哺乳類細胞である場合、幅は5μmよりも狭くてもよい。
図5bは、漏斗322及び微小導管330の部分的に切り取られた、横断面での横からの拡大図である。下部分366は、細胞塊370の一部が下部分366に閉じ込められるような大きさとなっている。さらに、微小導管330は下部分366より上にある。
図5cは、漏斗422及び微小導管430の部分的に切り取られた、横断面での横からの拡大図である。下部分466及び微小導管430は、細胞塊470の一部が下部分466、又は下部分466の近くの微小導管430の一部のどちらかの中にあるような大きさとなっている。
微少流体装置は、鐘型微少流体導管造作、培養培地貯蔵器、及び、培養のための漏斗形ウェルを持つPDMSスラブを含み得る。培地貯蔵器及び漏斗の形にしたウェルは微少流体導管と連結されている。漏斗の形にしたウェルは、細胞の一段階出し入れを容易にするための約60°の進入角度、及び、約500μmの直径の尖端を有し得る。
漏斗型ウェルにおいて、細胞を指定の領域に動かす必要はない。逆に、漏斗に入れられた細胞は静止したままである。漏斗中の培地又は化学組成物を、細胞がインビボにおいて経験する状態を模倣するように徐々に変えることができる。さらに、漏斗に連結された導管の寸法を、細胞が漏斗に閉じ込められるように、ソフトリソグラフィ工程により調節することができる。その後、細胞は多様な流動条件に供してもよい。
PDMSスラブは、プレポリマー(Sylgard 184, Dow-Corning)を1:10の基剤-硬化薬剤比で、高さ約30μm及び幅400μmの陽画レリーフ造作に対して鋳造することにより調製し得る。レリーフ造作は、SU-8(MicroChem, Newton, MA)を含み得、約200μmの薄いガラスウェハ上に、裏面散乱光フォトリソグラフィを用いて製作し得る。
微少流体装置は、一つ又は複数の微小導管と連絡する開口をその尖端に有する、先細りのウェルを有し得る。ウェル及び微小導管は流体で満たされ得る。1つ又は複数の細胞(例えば、胚)を、例えば、ピペットによりウェル中に導入してもよい。細胞は底へ沈むが、微小導管よりも大きいため、ウェルから出ることは妨げられる。
連続的又は非連続的に流体をウェル中に導入してもよい。流体は細胞のために必要な成長培地を含み得る。単一の孔を底に持つウェルでは、例えば、流体はウェル中で微小導管から特別の栄養素を導入して上昇させ、その後、微小導管を介して、今度は外因物質(例えば、ごみ)を含有する流体を除いて、下降させることができる。
流体の導入及び除去は、慣用の重力ポンプ、又は定流重力により可動されるポンプを用いて行うことができる。流体の導入及び除去はまた、ポンプ等の外部の備えにより、又は、搭載若しくは「半搭載(semion-board)」触覚アクチュエータに基づくポンプシステムにより行うことができる。
細胞が導管へと通過しないような入口の大きさとなっている限り、ウェルは、底ではなく他の位置及び/高さに引入口を有してもよい。例えば、ウェルの底、及び、真ん中又は上端付近に開口があってもよく、流体は底から供給され、上端に近いところで除去される。
ウェルは、ウェルに加えられた細胞がウェルの底及び中央へ向かって沈降する傾向を示すように、その壁が直線的又は曲線的のどちらかの造作で傾斜している多角形の形を有し得る。
ウェルが形成される材料は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性物質、金属、ガラス又はセラミックであり得る。
微少流体装置はウェルを含む最上層を含み得、エラストマー層、又は、より低い強度若しくは低いモジュールの層の支えとなるよう、比較的剛性の材料より構築される。最上層は、ガラス又はポリメチルメタクリレート等の硬い透明材料を含み得る。ウェルは、例えば、5μm Ra〜0.1μm Raの範囲の低い表面粗度を有し得る。
当該ウェルは最上層を貫通し得、その為、最上層の一方の側に開いた広口の末端、及び、第2層中の微小導管との流体の連絡を可能とする比較的狭い孔を底層に有する。
当該微小導管は、間違った整列を最小限にするよう、ウェル中の開口に対して近くに位置を定めることができる。例えば、間違った整列は50μmを超えるべきではない。当該第2層もまた、微小導管が実質的に第2層の一番上にある場合には特に、例えば最上層の底表面と隣接して、底層を構成し得る。
微少流体装置は、少なくとも部分的に第2層の底に沿った微小導管を含み得る。第3又は密封層をそれに対し適用し得る。この密封層は、種々の微小導管のためのバルブ及びポンプとしてブライユ型触覚アクチュエータが働くよう、むしろ薄い方が良い。この手段により、例えば、流体は、バルブ調節(バルブがオンかオフか)、及び、微小導管に関してポンプが一方若しくは他方の方向に汲み出しているかに依存して、所定の微小導管中において一方若しくは両方の方向に向かって流動するか、又は汲み出されるようにできる。
使用の際、ウェルはまず流体(例えば、胚培養培地)で満たされて、1つ又は複数の胚がウェルに加えられる。次いで、1つ又は2つの細かい油滴をウェル中の液表面上に落とすことにより作られる油の上掛けが提供される。
当該油はウェルからの液体の蒸発を減らすか又は防止し、それにより、その中の成分の重量オスモル濃度、又は濃度を安定させる。このような油が無い場合、液体は蒸発し得る。油の上掛けはまた、特に流体中への酸素及びCO2を含む空気の流れ、並びにこれらの気体の流体からの放出に影響する。油は、例えば、シリコン油、パラフィン油又はポリエチレンオリゴマー油である、任意の互換オイルであっても良い。同じ理由により、存在する場合には、第2又は第3層は、水の喪失を最小限にする材料、例えば、パリレン又は他の材料を含み得る。
第2及び第3層は、特に態様が触覚アクチュエータを用いている場合、鋳造されたエラストマーより作られ得る。「オフチップ(off-chip)」流体供給又はバルブ調節が使用される場合には、しかしながら、エラストマーを使用する必要はなく、鋳造エポキシ、注入成形熱可塑性物質、又はガラス等の他の材料を使用できる。これらの材料の表面は生物適合性であるべきであり、そうでない場合には、適切にコートされているべきである。
胚培養において慣用的に採用されるように、接合子を流体を含むウェル中に導入してもよい。その後、ウェル中の流体は油で覆われ、好適な温度でインキュベートされる。流体は連続的又は非連続的に微小導管を通ってウェル内、及び外へと導かれる(例えば、ウェル中の流体レベルが周期的に増加及びその後減少する、行ったり来たりする型の流体供給)。成長する胚を慣用の光学顕微鏡手法により調査してもよく、適当な段階まで成長したと判断されたら、胚はウェルより除かれる。ウェルの上端が底よりも大きい場合には、一段階除去は特に簡単であり、且つ、胚を損傷する危険性は低い。
微少流体装置は、流動特性が非常に変化に富み、且つ、有機ポリシロキサンエラストマー等の圧縮性又はねじれるエラストマー性材料で形成された微小導管を含み得る。しかしながら、能動制御が望まれない部分の基板は、硬い、例えば、実質的に非弾力性の材料より構築され得る。
微少流体装置は、チャンバー又は通路(「空の空間」)の形又は容量を変える少なくとも1つの活動部分を含み得る。このような活動部分には混合部分、ポンプ駆動部分、バルブ調節部分、流動部分、導管又は貯蔵器選択部分、細胞破砕部分、及び凝結除去部分が含まれる。これらの活動部分は、微少流体装置の関連する部分に圧力をかけ、それによりこれらの特性を構成する空の空間の形又は容量を変えることにより、流体流動、流体特性、導管又は貯蔵器特性に、幾ばくかの変化を誘導する。「空の空間」という用語は基板材料がないことを指す。使用の際には空の空間は流体で満たされ得る。
活動部分は、所望の能動制御を成し遂げるため、その各々の導管を閉じるよう、又は、導管の断面領域を制限するよう、圧力により活性化可能であり得る。この目的を達成するため、導管及び貯蔵器は、微少流体装置の外部からの適度の圧力が、導管又は貯蔵器(「微少流体の造作」)が圧縮され、各々の造作の局所的制限又は完全な閉鎖が起こるように構築され得る。
当該造作を囲む壁及び外表面は、少量の圧力により外表面及び、場合により内部造作の壁がねじれ、この時点で断面領域が減るか又は完全に造作が閉じるよう、エラストマー性であり得る。
装置の活動部分を「活性化」するのに必要とされる圧力は、更新可能ブライユディスプレー等の外部触覚装置により供給し得る。触覚アクチュエータは装置の活動部分に接触し、賦活された場合、延びて変形可能なエラストマーを押し、活動部分中の造作を制限又は閉鎖する。
種々の流動導管並びに貯蔵器の寸法は容量及び流速特性により決定し得る。完全な閉鎖用に設計された導管は、微小導管及びアクチュエータの間のエラストマー性の層が導管の底に接近できるような深さ(水深)であり得る。基板をエラストマー性材料により製造すると、一般に丸められた、特に最も遠い角(アクチュエータから遠く)が丸められた横断面と同様に、完全な閉鎖が容易になる。深さはまた、例えば、アクチュエータの延長可能な突出(例えば、針)が可能とする延長に依存する。従って、導管の深さは、例えば、1nmから500μmまで変動し得る。
微少流体装置はネガティブフォトレジストを用いて製造され得る(例えば、SU-8 50フォトレジスト(Micro Chem Corp., Newton, Mass.))。フォトレジストをガラス基板に適用し、適当なマスクを介して、被覆されていない側から露出させてもよい。硬化の深度は露出の長さ及び光源強度等の要因に依存するため、非常に薄いものから、フォトレジストの深部へと到るものまでに亘る造作が作製され得る。露出されていないレジストは除かれ、ガラス基板上に浮き上がったパターンが残る。硬化性エラストマーがこの母型で鋳造され、その後、除かれる。
SU-8フォトレジストの材料特性及び低費用光源からの散乱光を、角が丸められ及び滑らかで、且つ上端が平らである横断面プロフィール(例えば鐘型)の微小構造及び導管を生成するのに採用できる。短い露出は丸まった上端を産生する傾向があるのに対し、より長い露出は丸まった角の平坦な上端を産生する傾向がある。より長い露出はさらに、より幅広い導管を産生する傾向もある。これらのプロフィールは、流体流動を止めるのに導管構造が完全につぶれることを必要とする、圧縮、変形に基づくバルブに理想的である。このような導管では、ブライユ型アクチュエータは微小管の完全な閉鎖を行い、それにより非常に有用なバルブ付き微小導管が作製される。このような形はまた、それら自身が均一な流界を作り出すのを助け、さらに、優れた光学特性を有する。
典型的な手順では、フォトレジスト層は基板の裏側からマスク(例えば、フォトプロットされたフィルム)を介して、紫外線(UV)トランスイルミネーターにより作られた散乱光に露出される。鐘型横断面は、散乱光により作られた球状波面がネガティブフォトレジストへ浸透する様式に従って生成される。露出用量に依存したSU-8吸収係数における変化が、角における露出深度を限定する。
製作された構造の正確な横断面の形及び幅は、フォトマスク造作のサイズ、露出時間/強度、レジストの厚さ、及びフォトマスクとフォトレジストの間の距離の組合せにより決定され得る。裏面露出は、フォトマスクにより規定されるサイズよりも幅広く、場合によっては、元のフォトレジスト被覆の厚さと比べ低い高さの造作を作るが、転写されたパターンの寸法の変化は、マスク寸法及び露出時間から容易に予測される。
フォトマスクパターン及び得られるフォトレジストパターンの幅の間の関係は、一定のフォトマスク開口サイズを超えると本質的に直線的である(例えば、勾配1)。この直線的な関係は、簡単な定数の引き算によるフォトマスクの開口サイズの直接的な補正を可能にする。露出時間が一定に保たれた場合、微小導管の高さを元のフォトレジストの厚さよりも低くする不完全な露出となる閾値開口サイズが存在する。より低い露出用量は、より滑らかで、かつより丸まった横断面プロフィールの導管を作るであろう。あまりに遅過ぎる光露出用量、又はあまりに厚過ぎるフォトレジストでは、しかしながら、フォトレジストに浸透するのに不十分であり、その結果、元のフォトレジストの厚さよりも薄い断面となる。
厚さ30μmの鐘型横断面導管の適合性は、市販の更新可能なブライユディスプレーの圧電垂直アクチュエータを用いて、外部から力を導管に加えることにより評価することができる。長方形横断面の場合等のように、導管断面が不連続の接平面を有する場合には、膜と壁の間に空間を残し得る。逆に、鐘型横断面の導管は、同じ条件下で完全に閉鎖し得る。鐘型又は長方形型横断面の微小導管に、200μm PDMS膜を介してブライユ針が押し付けられた場合、同じ幅の長方形導管が多くの漏れを有し得るのに対し、鐘型導管は完全に閉鎖され得る。
変形に基づく微少流体バルブとして用いた場合、鐘型微小導管は、慣用の長方形又は半円形横断面の導管と比べて、圧縮により自己密閉し得る。例として、30μmの幅及び高さを有する鐘型導管は、ブライユ針による18gfの力の圧迫により完全に閉じられ得る。
プロフィールが表面張力により決定されるため、徐々に傾斜した側壁を持つ鐘型横断面を有する導管は、フォトマスク規定の丸められたパターンを製作するのに最も便利な方法の一つである溶融レジスト技術により製作されない場合もある。
鐘型導管は、変形により完全に導管を閉じる能力を損なうことなく微少流体導管内の横断面領域を最大とする。さらに、鐘型横断面は導管の光学顕微鏡検査における収差を減らし、導管の全幅に亘ってより均一な速度プロフィールの流界を得るのに有利である平坦な天井、及び床を導管に提供する。これらの鐘型横断面形の微小導管の利点、並びに、更新可能なブライユディスプレーに基づく便利で低価格の市販のバルブ作動機構は、微少流体細胞培養及び分析系、バイオセンサー、並びに、マイクロレンズ等のチップ上の光学装置等の広範囲に亘る微少流体の実用に有用であろう。
触覚アクチュエータの外への延長はそれらの所望の目的のために十分であるべきである。深さ40μmの微小導管の完全な閉鎖は、例えば、単一のアクチュエータが使用される場合には、通常40μmの延長(例えば、針)又はそれよりも長い延長を必要とし、導管の向き合った側で二元アクチュエータが使用される場合には、約20μm又はそれよりも長い延長を必要とするであろう。
蠕動ポンプ駆動、混合、及び流動制御のためには、導管に対してより短い延長が有用である。触覚アクチュエータの面積サイズは、導管の幅及び機能に応じて異なり得、40μmから約2mmの範囲であり得る。同様に、より大きなサイズでも、より小さなサイズでも可能である。
細胞塊、例えば細胞は、微少流体装置内の微小導管及び/又は貯蔵器で培養してもよい。さらに、細胞は細胞培養中、種々の産物、又は活性材料を放出し得る(例えば、免疫調節剤、代謝基質、栄養素及び成長因子)。伝統的な細胞培養装置(例えば、ペトリ皿)と異なり、細胞により微少流体細胞培養装置中に放出された活性材料は、細胞に近接する培地の濃度に顕著に影響し得る。これは、少なくとも部分的には、微少流体細胞培養装置に伴う培地の比較的小さな容量(例えば、500ナノリットル)及び細胞に近接する培地からこれらの活性材料を遠ざける(例えば、細胞表面から450ミクロン内の培地から遠ざける)比較的少ない拡散輸送のためである。細胞に近接する流体から活性材料を遠ざける対流輸送が、細胞に近接する流体から活性材料を遠ざける拡散輸送よりも少ない場合には、上述の状況はまた、対流が存在する場合でも真である。
細胞は典型的には、上述の活性材料について、ある範囲濃度を好む。換言すれば、所定の活性材料及び所定の細胞についての治療濃度領域が存在する。当該領域内で細胞工程(例えば、成長)は最適化され、それにより培地は細胞に治療環境を提供する。幾つかの状況において、治療領域は単一の値であり得る。他の状況では、治療領域は複数の値の範囲であり得る。
非微少流体細胞培養装置で使用するために調製された培地は、典型的には、上記において検討した材料について、各々の治療領域内に入る初期濃度を有する。例えば、ヒト胚付近の培地中の乳酸の至適濃度が21.4ミリモル濃度の場合、非微少流体細胞培養装置で使用するために調製された培地は、少なくとも21.4ミリモル濃度の乳酸の初期濃度を有するであろう。しかしながら、同じ培地は、微少流体細胞培養装置においては、ヒト胚の乳酸の正味放出が胚に近接する培地中の乳酸濃度に影響すると考えられるため、下位の乳酸濃度となり得る。
微少流体細胞培養装置中の細胞塊と共に使用するための微少流体細胞培養培地は、細胞塊に近接する培地中の、上記において検討した産物の濃度に細胞塊が影響することを考慮して調製され得る。ヒト胚付近の培地中の乳酸の至適濃度が21.4ミリモル濃度の場合、微少流体細胞培養装置で使用するために調製された培地は、21.4ミリモル濃度よりも低い初期濃度を有し得る。この、より低い濃度は、実験的に見出し得る。例えば、初期乳酸濃度が10、15、20及び21.4ミリモル濃度の、受精から8細胞段階までの受精接合子に使用するための幾つかの細胞培養培地を調製し得る。受精接合子は、微少流体細胞培養装置中、各濃度において72時間培養されるであろう。72時間が超過した時点で接合子の成長が評価されるであろう。接合子の成長に20.0ミリモル濃度の乳酸初期濃度の培地が至適と見出された場合には、微少流体細胞培養装置において使用するための培地は、乳酸初期濃度20.0ミリモル濃度で調製されるであろう。
非微少流体細胞培養装置と比較した微少流体細胞装置において使用するための培地中の乳酸の初期濃度の違いは、微少流体装置中の細胞付近の産物の濃度が治療領域内に入ること(例えば、接合子が、接合子付近の乳酸濃度を初期の20.0ミリモル濃度から至適の21.4ミリモル濃度に上昇させる正味量の乳酸を放出すること)を示唆している可能性がある。
微少流体細胞培養装置と用いるための微少流体細胞培養培地はまた、任意の細胞用に調製してもよい。培地には、細胞自身によっても提供され得る、細胞に治療的恩恵を提供するため添加される、多くの成分が存在する。このような場合、治療的恩恵を示すに必要とされるよりも低い濃度でその成分が基礎培地に提供されている培地処方でも、依然として、細胞付近において治療レベルに達する処方が提供できる。この自己産生を促進するために添加し得る添加物もまた存在する。
多様なその他の細胞放出分子が濃度変動の対象となり得る。例えば、可溶性組織適合性複合体、不溶性組織適合性複合体、及びインターフェロンを含み得る免疫調節剤がある。その他の例には、二酸化炭素、ピルビン酸及び炭水化物を含み得る代謝産物、並びに、代謝物を含み得る栄養素が含まれる。
上記において検討した細胞による幾つかの産物の細胞内産生をさらに促進するために、添加物(例えば、脂質、代謝基質及び成長因子)を微少流体細胞培養培地に添加しても良い。添加物の例には代謝基質(例えば、グルコース、ピルビン酸)が含まれる。脂質添加物の例にはビタミンD3、デキサメタゾン及びグルココルチコイドが含まれる。代謝基質添加物の例にはピルビン酸及び炭水化物が含まれる。
当該代謝分子のいくつかについてより詳細な例が以下に記載される。
ピルビン酸は基質として、種々の培養培地に0〜5mMの範囲内で含まれる。ピルビン酸はまた、二酸化炭素及びその培地均等物の細胞内産生を増幅するのに有用な添加物である。
グルコースは代謝基質の別の例である。細胞培養処方中のグルコースの量は5.5mM〜55mMに亘る。多くの古典的な培地は5.5mM D-グルコース(インビボにおける正常な血糖レベル)で補われている。生物学的製造及び組織光学で使用される専売培地を設計するための基礎培地として使用される幾つかの重要な培地は、糖尿病レベル(10mM又はそれ以上)の補足グルコースを含む。これらのレベルのグルコースは、細胞及び細胞産物を、グルコースを介した酸化及びカルボニルストレスから保護するために、特別の処方戦略を必要とする。
幾つかの脂質についてのより詳細な例が以下に記載される。
リノレイン酸は種々の培地中に200nM〜300nMの範囲で多くの場合含まれる。リノレイン酸はその他多数の脂肪酸の前駆体である(プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、リン脂質、糖脂質及びビタミン)。これらは、膜等の細胞構造及び長期エネルギー貯蔵の重要な構成物である。リポ酸は、幾つかの基礎培地、及び多くの無血清培地に10nM〜1.0uMで含まれる。リポ酸は高い頻度でピルビン酸の代謝に必要とされる。リポ酸はインビトロにおいて酸化ストレスにより誘導されるインスリン耐性を解消することが示されてきた。酸化ストレスの条件下では、リポ酸は、増大したグルコース取り込みを支える作用因子としてインスリンを代替し得る。リポ酸は、細胞内抗酸化物質を再生し、キレート化による酸化還元反応からの遷移金属を除き、反応性酸素種と非酵素的に反応する(除去)。リポ酸は細胞中のグルタチオン(抗酸化物質)を増加させることができる。リポ酸は、細胞外L-シスチンをL-システインに還元することにより、グルタミン酸により誘導されるアポトーシスから細胞を保護するのを助ける。リポ酸はヒドロキシルラジカル、次亜塩素酸、ペルオキシ亜硝酸、及び一重項酸素を除去できる。
いくつかのホルモンについてのより詳細な例が以下に記載される。
ヒドロコルチゾン(デキサメタゾン)は、プレーティング効率を上げ、クローン成長を改善し、フィブロネクチン産生を刺激するために、1〜20nM、又は140〜500nMで含まれる。幾つかの培地において、インスリンは0.1〜10ng/ml又は1〜10ug/mlで含まれる。
微少流体細胞培養装置の幾つかは、培地の一部を吸収することができ、及び/又は、細胞培養期間中に培地の一部が蒸発するのを許すこともできる。この吸収及び/又は蒸発は、調製された培地中の一定の産物の濃度を変動させ得る。
一般に、細胞外環境の重量オスモル濃度は通常約300 mmol/kgである。より高い重量オスモル濃度への耐性は細胞型依存的である。チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞及び多様な耐久性のセルラインが広範囲の重量オスモル濃度(300〜500mmol/kg)を許容し、その下で増殖するのに対し、より感受性の高い細胞、哺乳類配偶子及び胚等は、265から285(mmol/kg)よりも有意に低いか又は高い重量オスモル濃度で妨害された成長を示すと考えられる。
300mmol/kgの重量オスモル濃度を有する浸透性の溶質に細胞を置くと、細胞内及び細胞外の流体中の水濃度が同一で、溶質は離れることも又は侵入することもできないため、細胞は膨張も収縮もしないと考えられる。このような溶液は等張であると言われ、通常の細胞外流体と同じ非浸透性溶質の濃度を有するものと定義される。非浸透性溶質を300mmol/kgよりも少なく含む溶液(低張液)は、細胞外流体中のより高い濃度から細胞中へと水が拡散するため、細胞を膨張させる。非浸透性溶質を300mmol/kgよりも多く含む溶液(高張液)は、細胞からより低い水濃度の流体中へと水が拡散するため、細胞を収縮させる。従って、インビトロでは、細胞培養中に重量オスモル濃度レベルを維持することが重要である。
微少流体細胞装置と使用するための微少流体細胞培養培地は、一定量の吸収及び/又は蒸発が起こり得ることを想定して調製され得る。例えば、溶質が、細胞のための治療環境を達成するために一つの範囲内の濃度を有する場合、調製された培地中の当該溶質の初期濃度は、その範囲よりも低いものとなる。濃度値は、培地の一定量が細胞培養の間に吸収されること、及び/又は蒸発することを想定して選択される。
蒸発は、微少流体チップ中での細胞培養においては、微少流体系に存在する少ない液量からの僅かな量の蒸発も重量オスモル濃度における有意の増加に通じ得るため、有害であり得る。さらに、流体区画がその容量に比して非常に広い、水が浸透するか又は蒸発する表面領域を有するため、微少流体チップは特に蒸発しがちである。高められた重量オスモル濃度が、イオンバランス、細胞成長速度、代謝、抗体産生速度、シグナリング及び遺伝子発現に影響し得ることが頻繁に報告されている。
溶質は荷電されたものでも又は中性溶質であっても良い。荷電溶質は、少なくとも塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム及び有機緩衝剤の内の一つを含み得る。荷電溶質は、グルタミン、グリシン及びタウリンを含み得る。荷電溶質は蛋白質を含み得る。中性溶質は、グルコース、トレハロース及びガラクトース等の炭水化物を含み得る。中性溶質は、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、デキストラン、ポリビニルピロリドン及びポリリシン等の高分子を含み得る。
非必須アミノ酸は浸透圧調節及び細胞シグナリングに関して細胞に役立つ。多くの哺乳動物細胞は、ホルモン(例えば、インスリン及びグルカゴン)及び他の細胞容量を変化させる刺激に対する、制御された容量増加又は減少のための機構を必要とする。さらに、着床前のマウス胚は卵管流体中、やや高張な環境で成長するようである。インビトロでは、グリシン、アラニン、グルタミン及びタウリンは、保護しない場合に有害である高張培地の効果から着床前の胚を保護する。例えば、増幅された外部重量オスモル濃度は、接合子から、2細胞胚に培養された初期マウス胚による、細胞内グリシン蓄積を増加させる。グリシンは胚において細胞内オスモライトとして機能し、240 対 310mmol/kgにおける培養により得られた2細胞胚の容量の間には有意な差異がないため、より高い重量オスモル濃度における増加した総蓄積グリシンは増加した細胞内濃度を反映する。グリシンの細胞内蓄積は、培養培地にグリシンを添加する浸透保護効果の説明となるようである。
以下の実施例では、微少流体装置と一緒に使用するための培地を記述する。
実施例1
小さい寸法及び閉じられた外形のため、微少流体導管中では、正常な機能のために必要な、細胞から分泌される分子は細胞付近に留まり、その分子の局所濃度を高める。この濃度の局所的増加のため、元の基礎培地中の分子濃度は、細胞分泌分子が迅速に拡散するか、又は対流に運び去られる巨視的培養系で必要とされるより低くても良い。ここで、制御容量、換言すれば細胞に近接する培地は、分泌された分子の大半が、600秒などの或る期間中閉じ込められていると考えられる容量である。当該期間は流体補充速度の特性により規定される。導管長に沿った一次元的拡散と想定される、幅100μm×高さ100μmの横断面の微小導管を考えた場合、600秒の期間に亘る乳酸の拡散長Lは1100μmであり、制御容量は100μm×100μm×2200μm=3*10-11m3=2.2*10-8Lとなると考えられる。ここで、37℃における乳酸拡散係数は1.1×10-9 m2/sであり、拡散長Lは導管の長さに沿った主に一次元的な拡散に近似すると定義される。対照的に、慣用の静止培養皿では、拡散は三次元的で、制限が無く、制御容量を、上述した微小導管よりも約10倍大きくする。
ここで、胚盤胞段階の単一のウシ胚の乳酸産生速度は38.13pmol/胚/時である。従って、10個の胚盤胞は、600秒の間に約6.36×10-11molの乳酸を産生すると考えられる。ウシ胚の培養に使用される慣用のG1/G2培地中の乳酸濃度は、G2培地で5.87mmol/Lである(G1は10mmol/L)。所定の制御容量では、慣用のG2培地の乳酸量は5.87×10-3×2.2*10-8=1.29×10-10molである。従って、慣用のG2培地が使用された場合には、胚から分泌された乳酸[(6.36×10-11)/(1.29×10-10)×100=49.3%]のため、制御容量中の平均乳酸濃度は約50%増加することとなる。対照的に、より大きな制御容量の培養皿では、平均濃度の局所的増加は5%にしかならないと考えられる。本明細書中の特定の微小導管中の胚により産生された乳酸の局在の為、微小導管用に至適化した培地中には乳酸が減少した濃度(例えば、2.5〜3.5mmol/L)で含まれる。
実施例2
これは、微小導管環境内部且つCO2インキュベーターの外において、長期光学的画像化と共に長期細胞培養を可能ならしめる基礎細胞培養培地である。当該培地は次の有利な特徴を有する:(1)光曝露に対する高い安定性、(2)特に微少流体細胞培養において、限定されているが十分なpH安定性、(3)慣用の治療領域未満ではあるが細胞の即座炭酸塩要求を満たすのに十分なNaHCO3量、並びに(4)二酸化炭素及びその培地均等物の細胞内産生を増幅する追加添加物。
より詳細には、慣用培地と比較して、培地の緩衝剤は減らされた(10〜20mM NaHCO3及び5〜15mM HEPES)。この減少に適合させるため、細胞内のCO2産生を増加するための高濃度ピルビン酸ナトリウム(2〜5mM)の使用、同様に緩衝能を増幅させる遊離塩基性アミノ酸(1.5〜3mM L-アルギニン;0.7〜1.4mM L-ヒスチジン;0.5〜1mM L-システイン)の添加、並びに、急な解糖によるpH下降の抑制を助ける為、ガラクトース単独ではなく、むしろグルコース(10〜20mM)とガラクトース(25〜50mM)との組合せの使用により、pH変動を抑制した。微少流体細胞培養が少ない容量であるため、細胞内で作られた二酸化炭素及び均等物並びに他の細胞産生産物は細胞付近に保たれ、活性産物濃度を治療範囲内に維持した。さらに、培地において使用された適度なリボフラビン(0.2〜0.5:M)及びフェノールレッド(10〜20:M)濃度は、光曝露に対する安定性を向上させる。
CO2(二酸化炭素)は水中で、CO2(二酸化炭素)とH2CO3(炭酸)の間で自発的に相互転換する。CO2、H2CO3、並びに、脱プロトン化された形体のHCO3 -(重炭酸塩)及びCO3 -(炭酸塩)の相対濃度はpHに依存する。
炭酸塩は実験式CO3 --の多価陰イオンであり、且つ、H2CO3(炭酸)の共役塩である重炭酸塩HCO3 -1の共役塩である。
NaHCO3(重炭酸ナトリウム)はイオンNa+及び重炭酸陰イオンHCO3 -からなる塩である。重炭酸陰イオンは水酸化物を形成し、その溶液中では穏やかなアルカリ性であり、
HCO3 - → CO2+OH-
この例では、二酸化炭素及びその培地均等物が活性材料である。重炭酸塩、炭酸、及び炭酸塩は、二酸化炭素の培地均等物である。
実施例3
慣用培地中、活性材料の局所濃度は、細胞消費、及び、細胞付近の活性材料の補給が主に拡散のみによってしか起こらないために減少する。この消耗及び遅い大量輸送に適応させるため、当該材料のバルク培地濃度は、減少した局所濃度が依然として治療領域内にあるように高い濃度に設定されている。効率的な対流輸送がある活発な微少流体系では、当該活性材料のバルク濃度は、材料が細胞の周りに定常的に補充され得るので、低くすることができる。
実施例4
多くの微少流体操作では、大きな容器から少容量の培地をチップ貯蔵器に移すのみの工程が、重量オスモル濃度を変動させる。例えば、生物学的に安全なキャビネットの中で、30マイクロリットルのKSOM培地を瓶から小さな浅い微小貯蔵器に数分に亘って移すことにより、重量オスモル濃度は即座に15mmol/kgも上昇変動した。従って、微少流体培地では重量オスモル濃度は265から250mmol/kgに減らされている。
実施例5
培養培地からの蒸発を補完するため、MCDB 131微少流体細胞培養培地の重量オスモル濃度は、重量オスモル濃度範囲が270〜290mmol/kgであるヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)用のCambrexの専売培地であるEGM2-MVよりも低く調整された。200mmol/kgの低さに重量オスモル濃度レベルが調整されたMCDB 131が、増殖を維持できるかについて、即ち、HMVECに治療環境を提供するかについて試験された。5日間の期間に亘って、重量オスモル濃度200mmol/kgのMCDB 131により維持されたHMVEC増殖は、EGM2-MVにより維持されるものに匹敵した。
培養中の蒸発は、培地の初期には低い重量オスモル濃度をやや増加させつつ、長期増殖を維持できるような治療範囲内に保持すること可能にする。一方、蒸発は、正常レベルの培養培地の重量オスモル濃度を増加させ、増殖を維持する治療重量オスモル濃度範囲から外れさせてしまう可能性がある。
実施例6
上昇した重量オスモル濃度は、イオンバランス、細胞成長速度、代謝、抗体産生速度、シグナリング、及び遺伝子発現に影響し得る。一般に、細胞外環境の重量オスモル濃度は通常約300mmol/kgである。より高い重量オスモル濃度に対する耐性は細胞型依存的である。哺乳類接合子及び胚等の、より感受性の高い細胞は、265から285(mmol/kg)よりも有意に低いか又は高い重量オスモル濃度で、妨害された成長を示すと考えられる。
ペトリ皿中、低い細胞容量-細胞外流体容量比(cell volume/extracellular fluid volume;CV/EV)で行われる慣用の細胞培養と比較して、高いCV/EV比の微少流体環境は、周囲培地の細胞による自己調和に関して多くの利点を有する。しかしながら、高いCV/EV比の系は、典型的には、蒸発割合を増加させる、大きな表面-容量比(surface to volume:SAV)を示し、PDMS等の水蒸気浸透性材料より作られた微少流体装置を用いる場合、難題となる。
第一に、培養のために重量オスモル濃度265mmol/kgの培地を調製しても、培地を巨視的な瓶からウェル又は微少流体装置に水滴を移して油で覆う数分の操作の間の蒸発で、重量オスモル濃度は265から280(mmol/kg)に変動してしまう。従って、これらの水の損失は、微少流体細胞培養用の培地の重量オスモル濃度を15mmol/kg低減することにより補完されるべきである。
次に、培養期間中の微少流体装置への水の浸透は、培地にさらなる重量オスモル濃度変動を起こし、これは細胞機能又は生存に影響し、その結果定期的な回復時間tが必要となる。
単純な拡散方程式、
Figure 2009520505
を用いることにより、所定の湿度条件下における培養期間中に亘る、培地中の損失水分量Δm又は重量オスモル濃度変動を計算することができる。
流体を動かす為の薄い底膜、並びに幅300μm×高さ30μmの横断面及び長さ50,000μmの再循環のための閉じた輪を形成する微少流体導管造作を持つ厚い(約8mm)PDMSスラブより構成されるPDMS微少流体装置を考えると、導管領域Aは1.5×10-5m2であり、導管容量は4.5×10-10m3である。本明細書中、この微小導管は、24時間に亘る流体灌流条件下、オートクライン及びパラクリン効果の細胞に対する効果を研究するために使用され、培地は操業ごとに24時間毎補充される必要がある。この補充時間は、実験の目的に応じて変えることができる。
薄い底PDMS膜がパリレンにより被覆され、かつ培養は非加湿環境(25%)で行われているという理由から、24時間に亘る蒸発の多くが、より厚い上端PDMS(厚さ8mm)を介してのみ起こると想定すると、24時間に亘って上端PDMSを通って漏れ出る単純拡散方程式に基づく水量は、7.85×10-8kgである。この量の水の損失は、与えられた導管容量4.5×10-10m3(又は水中4.5×10-7kg)において265mmol/kgから320mmol/kgへの重量オスモル濃度の変動を起こす。
加湿インキュベーター(85%)下で培養を行った場合、漏れ出る水量は1.57×10-8kgであり、その結果の重量オスモル濃度変動は265mmol/kgから275mmol/kgである。
この10〜55mmol/kgの増量はさらに培地中の重量オスモル濃度を下げることにより補完されるべきである。即ち、操作中の損失を含む水の全損失を補完するため、加湿条件に依存するが、195〜240mmol/kg等の、より低い重量オスモル濃度の培地が、微小導管細胞培養のために調製される。
本明細書において、単純拡散方程式の変数のためのおよその値は:拡散係数D=3×10-9m2/s、PDMS中の水溶性係数S=1.04[(cm3)/cmHg(cm3)PDMS]、37℃における飽和水上気圧PS=6.33×103、P/Ps=0.25(湿度25%)又は0.85(湿度85%)、dx=8000×10-6 (m)である。本明細書中において、培地表面における湿度は37℃において湿度100%、及び37℃における飽和水蒸気特異的容量(Vg)はVg=22.94(m3/kg)、pg=0.0436(kg/m3)と考えられる。
実施例7
多くの培地は有害産物を取り除くスカベンジャーを含む。培地の力学的流動を備えた微少流体系の利用は、有害産物を洗い流すことにより、細胞により産生されたごみのスカベンジャーとして機能し得る。従って、化学的又は材料スカベンジャーの濃度は微少流体培地では減らすことができる。有害産物の例には、有毒金属及びラジカルが含まれる。スカベンジャーの例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、油、チオール及びアスコルビン酸が含まれる。
実施例8
巨視的な皿中、フラスコ中の伝統的な細胞培養に至適化された培養培地を微少流体細胞培養に適用した場合、微少流体系に存在する高い表面-領域比とはならない。巨視的培養皿及びフラスコと比べて、微少流体系では、容量に対する表面領域比は2から3桁大きい。その結果、巨視的培養フラスコ及び皿と比べて、微少流体系では、免疫グロブリン、成長因子、サイトカイン及び治療的細胞環境を提供するのに必要な他の因子等の蛋白質にとって、吸着する表面がより多く存在することとなり、溶液中の存在濃度を減耗させる。その結果、微少流体細胞培養に適用された場合に当該因子の濃度が治療環境を提供するのに必要な閾値レベル以下に下落してしまう為、蛋白質及び他の因子の微少流体細胞培養系中での高頻度の非特異的吸着は、巨視的皿及びフラスコにおいて治療環境を提供するよう至適化されていた培養培地を、最早、治療環境を提供しないものにしてしまう可能性がある。
微少流体細胞培養のための培地の至適化では、治療環境を提供するための閾値レベルを上回るレベルに維持するのに必要とされる因子の量を、伝統的な細胞培養培地中に存在するレベルに対応して調節する必要がある。例えば、巨視的培費細胞培養では、閾値応答として知られている内皮細胞の血管ネットワーク形成を刺激する環境を提供するために、50ng/mlの血管内皮細胞因子(VEGF)が添加される。従って、微少流体培養条件では、添加されるVEGF量は、増大された蛋白質吸着をもたらし且つ内皮細胞が血管ネットワークを形成するのを保証するよう調整される必要がある。
治療環境を支える因子の吸着を介した消耗が特に高い例としては:(1)導管の長さは蛋白質吸着のためにより多くの表面を供するという理由から、流体引入口と細胞の位置との間の長い距離(mm又はcmの単位)、及び(2)蛋白質が吸着するための時間をより多く提供する、拡散効果が優勢となる緩慢なポンプ条件が挙げられる。
装置表面の培地に対する最初の曝露の間に、吸着はより迅速に起こる(産物吸着及び濃度に依存して、1秒よりも短い時間中に吸着し始め、数時間まで続くと考えられる)。蛋白質等の幾つかの産物では、導管壁での停留による消耗は、壁に産物の単層が形成された後に大きく減少する。
装置により停留され得る他の産物(蛋白質以外)には、脂質(ステロイド並びに幾つかのホルモン及びビタミン)が含まれる。蛋白質の例には、アルブミン、グロブリン、成長因子(特にVEGF及び白血病阻害因子(LIF)及び線維芽細胞成長因子)が含まれる。
補遺Aは微少流体細胞培養のための手持ち再循環システム及びあつらえの培地を開示する。補遺Bは胚培養のための装置及びその使用について開示する。補遺Cはプログラムできる触覚アクチュエータを採用した統合微少流体制御を開示する。補遺Dは微少流体工学のためのコンピューター化された制御方法及び系、並びにそれにおいて使用するために製造されたコンピュータープログラムを開示する。補遺A、B、C及びDに記載される装置において、本発明の態様を使用することができる。
補遺A
当業者には多くの変更が理解され、且つ、それらは本明細書中に開示される対象事項の一部である。例えば、かすがい機構は、指板と離れてはいるが、かみ合わせることもできるもの、又はブライユディスプレーモジュールを含む全装置の高さをかけることができる単純なかすがいを含む、他のかすがい機構を置き換えたり、又は増やしたりしてもよい。
同様に、透明の加熱要素はガラススライド上に製作されるものとして記載されているが、このガラススライドが使い捨て装置中に組み入れられ、別の装置であるというよりも、その統合された一部分であり得ることが認識されるであろう。あまり好ましくはないが、加熱要素もまた微少流体工学チップ上に直接配置してもよい。加熱要素はまた、ガラススライド又はチップの一部分のみが加熱され、それにより、例えば流体貯蔵領域のような加熱が望まれない領域中における熱を避けると同時に電力を保存するようなパターンとしてもよい。
本願のラボオンチップ(lab-on-chip)の進んだバージョンでは、チップ自体の上に加熱ユニット及び、望まれる場合には、触覚アクチュエータの制御された操作のための電気回路と共に、一回使用か又は再充電可能かのどちらかのバッテリー動力電源を有することが望ましい。構造を、コード付きの電力源から分離できることにより、微小環境をモジュール内に保持したまま、モジュールを試験、分析等々のための場所へ簡単に運ぶことを可能にする。
本願発明はさらに、装置の導管、貯蔵器等々中に含まれる液体の蒸発を最小限にするための水蒸気バリヤーとして働くフィルム、被覆又は膜をモジュール構造の全体、又は一部に組み入れたPMDS、又は、他のエラストマー性のシリコン構造に関する。好適な水蒸気バリヤーは、一般に、比較的に孔がなく、例えばパリレン性である、疎水性フィルムである。さらに、酸素、二酸化炭素、又はこれら両方の気体の流れに対して抵抗性のあるフィルムもまた、装置中に確立される条件に対する周囲雰囲気のいずれの影響をも最小限にするために適用され得る。このようなフィルムは、プラスチック、特にポリエチレンテレフタレートの飲料容器の分野からのものが周知である。
補遺B
驚くべきことに、ウェルの底のすぐ近くに流体を供給する微小導管装置と連絡されたウェルの底での生育により、胚が十分な生存率で効率的な方法で生育できることが今発見された。底の開口は、胚が導管に入り込めない大きさにしてある。
本発明は、その多くが、装置の壁自体よりも微少流体装置内の空洞、導管等々の容量を図示する添付の図と関連して記述され得る。図示されるように、装置の最適な態様は、その尖端に、1又は複数の微小導管と連絡した開口を有する概して円錐形のウェルである。微小導管と同じく、ウェルも流体で満たされており、例えばピペットにより、1又はそれ以上の胚がウェル中へ導入される。胚は底へ沈むが、ウェル中の孔よりも大きいために、ウェルから出ないようになっている。
流体はウェル中に連続的又は非連続的に導入することができ、流体は胚に必要な成長培地を好ましくは含む。例えば、底に単一の孔を有するウェルでは、流体を、追加の栄養素を微小導管から導入することにより上昇させてもよく、その後、その時点ではもう細胞外物質(ごみ)を含んでいる流体を微小導管を介して除くことにより、下降させることできる。
流体の導入及び除去は、慣用の重力ポンプ又は定流重力駆動ポンプを用いて行うことができる。流体はまた、ポンプ等々の外部備品により、又は、搭載若しくは「半搭載」触覚アクチュエータに基づくポンプシステムにより供給できる。
導管への入り口が、胚が通過して導管中に入らないような大きさとなっている限り、ウェルもまた、排他的に底のみにではなく、他の位置及び/又は高さにおいて引入口を有していてもよい。例えば、ウェルの底、及び真ん中又は先端の近くに開口があってもよく、流体は底から供給され、例えば、先端に近いところで除去される。
ウェルはまた完全に円錐形の形をしている必要はないが、直線又は曲線的であるかは関係ないが、好ましくは、胚が自然にウェルの底且つ中心へと沈下するような、傾斜された形となっている。ウェルの材料は過度に厳密なものではなく、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性物質、金属、ガラス、セラミック等々であり得る。好ましい構造において、装置は多層装置であり、上層はウェルを含み、且つ、エラストマー性の層若しくはより弱い強度の層、及び/又は下のモジュールの支えとなるように比較的硬い材料から構築されている。
従って、最上層がガラス、ポリメチルメタクリレート等々の硬い透明な材料より成ることが好ましい。円錐形のウェルは、好ましくは、5μm Raより小さい、より好ましくは1μm Raより小さい、さらに一層好ましくは0.1μm Raより小さい、低い表面粗度を有するべきである。
好ましい装置において、円錐形のウェルは完全に最上層を貫通し、従って、最上層の一方の側に、開放された、幅広い開口末端を有し、当該層の底では、第2層中の微小導管と流体連絡が可能な比較的小さな孔を有する。第2層は好ましくは、第1層に直接隣接し、円錐形のウェルと流体が連絡する1又は複数の微小導管を有する。導管がウェル中の開口の近くに配置されることは非常に重要である。例えば、50μmの調製不良が好ましくは最大である。特に、微少流体導管が実質的に第2層の一番上にある場合、即ち、最上層の底表面に隣接する場合に、第2層もまた底層を構成していてもよい。しかしながら、好ましい装置において、導管は、少なくともその一部は第2層の底に沿ってあり、且つ、第3層又は密封層がそれに適用されている。ブライユ型触覚アクチュエータが種々の微小導管のバルブ及びポンプとして機能するように、当該密封層は好ましくはかなり薄い。これは、例えば、流体が所定の微小導管において一方向にのみ流れるようにするか若しくは汲み出されるようにするか、又は、バルブに依存して、バルブがオンであるかオフであるかによって、且つポンプが導管に対して一方へ若しくは他方へ汲み出しているかによって二方向性の流れであるようにできることを意味する。
使用において、装置は、まず最初に液体、例えば、胚培養培地で満たされ、そして、1又はそれ以上の胚がウェルに加えられる。その後、1又は2滴の細かい油滴をウェル中の液体表面上に滴らすことにより、油の上掛けが形成される。油は、液体がウェルから蒸発してそれによってその中の成分の重量オスモル濃度又は濃度が変化するのを防ぐ。これはまた、特に流体に入る酸素及びCO2を含む気体の流れ、並びに、流体からのこれらの気体の放出に影響する。油は任意の互換油であってもよく、例えば、シリコン油、パラフィン油、ポリエチレンオリゴマー油等々である。同様の理由から、第2及び/又は第3層中の装置の部分も、例えば、パリレン、又は、その他の、特に水分損失を最小とする覆いにより覆われていても良い。
特に、触覚アクチュエータが用いられたバルブ調節及びポンプ駆動態様が採用されている場合、第2及び第3層は好ましくは鋳造エラストマーより作られている。しかしながら、「オフチップ」流体供給、バルブ調節等々が使用されている場合には、エラストマーを使用する必要はなく、鋳造エポキシ、注入成形熱可塑性物資地、ガラス等々の、他の材料が使用できる。これらの材料の表面が胚培養と適合性であるべきことは当然に認識され、そうでない場合には、適当に被覆されているべきである。
本発明の工程は、接合性の、流体、好ましくは、胚培養に慣用的に採用される成長流体を含むウェル中への導入を必要とする。円錐形のウェル中の流体は次ぎに、好ましくは鉱物油である油で覆われ、装置は好適な温度でインキュベートされる。流体は微小導管を介して連続的又は非連続的にウェル中及びウェル外に向けられる。例えば、ウェル中の流体レベルが循環的に増加し、その後減少する、往復(back and forth)型の流体供給が最も有利であることが見出された。成長する胚は慣用の光学顕微鏡手法により検査することができ、適当な段階まで成長したと判断された時には、胚はウェルから除かれる。ウェルの最上端は底よりも大きいため、除去は特に簡単であり、且つ、損傷の危険性は低い。
補遺C
本発明の微少流体装置は、流体特性を積極的に変化させられ、圧縮性又はねじることが出来るエラストマー性材料により形成された微小導管を含む。従って、実質的に全微少流体装置が、下記に記載されるように、有機ポリシロキサンエラストマー(「PDMS」)等の可撓性のエラストマー性材料より構築されていることが好ましい。しかしながら、装置基板は、能動制御が望まれない部分においては、構築の複雑さ及び費用を通常増加させるものではあるが、硬い、即ち、非弾性材料より構築されていてもよい。幾つかの装置においては、両方の主要な表面からの作動は、土台が無いこと、又は、エラストマー性装置から離れて配置されることを要求するかもしれないが、一般に二次元装置は、好ましくはガラス、シリカ、硬いプラスチック、金属等々の硬い土台を、適当な土台となるように装置の一面に含む。
本発明の微少流体装置は、装置の貯蔵器又は通路(「空の空間」)の形及び/又は容量、特に、流体流動能力を変える、少なくとも一つの活動部分を含む。このような活動部分は、非限定的に、混合部分、ポンプ駆動部分、バルブ調節部分、流動部分、導管又は貯蔵器選択部分、細胞破砕部分、凝集除去(unclogging)部分等々を含む。これらの活動部分は全て、装置の関連部分に圧力をかけ、それによりこられの造作を構成する空の空間の形及び/又は容量を変えることにより、流体流動、流体特性、導管又は貯蔵器特性等々に何等かの変化を誘導する。「空の空間」という用語は、基質材料がないことを指す。使用において、空の空間は通常、流体、微生物等々により満たされている。
装置の活動部分は、所望の能動制御を成し遂げるための、それらの対応する導管を閉じる圧力、又は、横断面領域を制限する圧力により活性化可能である。この目的を達成するために、導管、貯蔵器等々は、微少流体装置の外部からの適度の圧力が、導管、貯蔵器等々(「微少流体造作」)を圧縮し、対応する造作の局所的制限又は完全な閉鎖を起こすよう構築されている。この結果を成し遂げるため、造作を取り巻く装置平面内の壁は好ましくはエラストマー性であり、且つ、外表面(例えば、二次元装置では主要外表面)は、少量の圧力が、外表面、及び場合により内部造作の壁をねじり、この時点において横断面領域を減少させるか、又は構成を完全に閉じるように、必然的にエラストマー性である。
装置の活動部分を「活性化」するのに必要とされる圧力は、更新可能なブライユディスプレーにおいて使用されるような外部触覚装置により供給される。触覚アクチュエータは装置の活動部分に接触し、電圧が加えられた時には、延長し、変形可能なエラストマーを圧迫し、活動部分中の造作を制限又は閉鎖する。
エネルギーを供給することにより造作を閉鎖又は制限するよりも、触覚アクチュエータを、エネルギー供給時に収縮する延長された位置で製造してもよく、又は、通路を閉鎖若しくは制限する、エネルギーが供給された状態で微少流体装置に適用して、エネルギー供給を絶った際に経路をさらに開放してもよい。
現時点において好ましいアクチュエータは、Telesensoryより現在市販されている、直接的にスクリーンテキストをブライユコードに翻訳するGateway(商標)ソフトウェア付きNavigator(商標)ブライユディスプレー等のプログラム可能なブライユディスプレー装置である。これらの装置は、各セル及び各セル「ドット」が個別にプログラム可能な、「8ドット」のセルの直線的整列から一般的になる。このような装置は、一度に一行のテキスト行をブライユ記号に変換して、例えば、テキストメッセージ、書籍等々を「読む」ために、視覚障害者により使用されている。容易に入手可能なため、これらの装置は現時点において好まれている。微少流体装置活動部分は、ブライユディスプレー上の対応する作動可能な「ドット」又は突出の下に配置できるように設計されている。ブライユディスプレーは他の供給元も含め、Handy Tech, Blazie及びAlvaから入手可能である。
しかしながら、融通性を増加するために、多数の微少流体装置で使用可能な、例えば、10×10、16×16、20×100、100×100又はその他の配列である規則的な方形の配列を提供することができる。プログラム可能で延長可能な突出の間隔が狭く数が多い程、微小装置の設計における融通性は大きくなる。このような装置の製造は、当分野において公知の構築方法に従う。アドレス可能性もまた通例の方法から得られる。非規則的な配列も、即ち望まれる場合にのみアクチュエーを有するパターンにおいて、可能である。
非統合(non-integral)使用に好適なブライユディスプレー装置は、24×16の触覚ピンの整列を有するGraphic Window Professional (商標)(GWP)としてHandy Tech Electronik GmbH, Horb, Germanyから入手可能である。微小バルブにより操作される空気式ディスプレーは、Orbital Research,Inc.により開示されており、ブライユ触角セルの費用を、セル当り70USドルから約5〜10ドル/セルに減らすと言われている。圧電性アクチュエータも使用可能であり、電気流動的流体を圧電素子が置換し、それに従って電極配置が変えられている。
本発明の微少流体装置には多くの有用性がある。細胞成長において、供給される栄養素は生態系において利用し得るものをシミュレート(擬態)するよう多様である必要があり得る。種々の導管を閉鎖又は制限するための活動部位を持つ幾つかの供給導管を提供することにより、栄養素及び他の流体の供給は随意に変化させることができる。一例は、骨組織を作るための三次元骨格系であり、貯蔵器から種々の栄養素が骨格に供給され、自然循環をシミュレートするよう蠕動ポンプと組み合わせられる。
さらなる応用は細胞破砕を含む。細胞は、活動部位を介して細胞を導管中で輸送し、導管を流動する細胞を破砕するために導管の閉鎖を作動させることにより、破砕することができる。細胞検出は、例えば、透明な微小流動装置及び好適な検出器を用いたフローサイトメトリー技術により達成し得る。導管に様々な角度で光学ファイバーを埋包することにより、検出及び適当な活性装置の活性化を容易にできる。対応する異なる採取部位又は貯蔵器への導管からの輸送を変更するためにバルブの使用と組合せて、同様の検出技術を、細菌、カビ、藻類、酵母、ウイルス、精子細胞等々を含む胚及び微生物を分類するのに使用することができる。
胚の成長は一般に、胚を順応させ、続いてその成長を許容する導管又は成長チャンバーを必要とする。しかしながら、このような深い導管は効果的に閉じることができない。胚成長が可能な微少流体工学装置は、二つのマスクを用いた多面露出フォトリソグラフィにより製造し得る。第一に、大きな、やや長方形の(幅200μm×深さ200μm)導管、場合により深さ200μmで、長さ300μm及び幅300μmのより大きい成長チャンバーが一端に製造される。当該200μm×200μm導管と合わせて一緒にすることが可能なものは、深さ約30μmのブライユ針により容易に閉じることができるより小さなチャンバーである。1又はそれ以上の細い(30μm)導管が球根状成長チャンバーから出ている。操作において、胚及び培地が当該大きな導管に導入され、球根状成長チャンバーへと移る。成長チャンバーからの出口導管は非常に小さいため、胚はチャンバー中に捕らえられている。合わせて一緒にする導管及び出口導管は、栄養素を供給するために任意の方法、即ち、連続的、脈動、逆流等々により使用することができる。胚は分光及び/又は顕微鏡手法により研究してもよく、多様な導管を収容するPDMS本体を覆うエラストマー性の層を分離することにより除いてもよい。
流体装置の構築は、好ましくは、例えば、D.C.Duffyら、Rapid Prototyping of Microfluidic Systems in Poly(dimethylsiloxane)、ANALYTICAL CHEMISTRY 70、4974〜4984(1998)に記載されるソフトフォトリソグラフィ技術により行われる。また、J.R.Andersonら、ANALYTICAL CHEMISTRY 72、3158〜64(2000)及びM.A.Ungerら、SCIENCE 288、113〜16(2000)を参照されたい。この目的の為、SYLGARD(登録商標)184(Dow Corning Co.)等の付加硬化型RTV-2シリコンエラストマーが使用できる。
種々の流体導管、貯蔵器、成長チャンバー等々の寸法は、容量、及び流体速度特性等々により容易に決定される。完全に閉じられるよう設計された導管は、微小導管及びアクチュエータの間のエラストマー性の層が導管の底に近づくことができるような深さでなければならない。基板をエラストマー性材料で製造することにより、特に最も遠い角(アクチュエータから遠い)が丸い横断面である場合と同じに、一般に、完全な閉鎖が容易になる。深さもまた、例えば、アクチュエータの延長可能な突出が延びることができる長さに依存すると考えられる。従って、導管の深さは極めて異なり得る。100μmよりも小さい深さが好ましく、より好ましくは50μmよりも小さい。10μmから40μmの範囲内の導管の深さが、多くの応用において好ましいが、非常に浅い導管の深さ、即ち1nmも可能であり、好適なアクチュエータでは、特に部分的な閉鎖(「部分的バルブ調節」)が十分な場合には、500μmの深さも可能である。
基板は単層でも、又は多層であっても良い。各層は、レーザー切除、プラズマエッチング、湿式化学方法、注入成形、加圧成形等々を含む多数の技術により調製され得る。しかしながら、上述したように、特に光学特性が重要な場合には、硬化性シリコンから鋳造することが最も好ましい。ネガティブ母型の産生は多数の方法により行われ得、それらの全てが当業者には周知である。次にシリコンは母型に流し込まれ、必要に応じ脱気されて、硬化される。複数の層同士の付着は慣用の技術により成し遂げられ得る。
幾つかの装置を製造する好ましい方法では、ネガティブフォトレジストが原版を調製するのに採用される。Micro Chem Corp.,(Newton, Mass.)のSU-8 50フォトレジストが好ましい。フォトレジストはガラス基板に適用でき、被覆されていない面から好適なマスクを介して露出される。硬化の深さは、露出の長さ及び光源の強度等の要因に依存するため、非常に薄い物からフォトレジストの深さへ到達するものまでに亘る造作が作出され得る。未露出のレジストは除かれ、ガラス基板上に浮き上がったパターンが残される。硬化性エラストマーは、この原版上で鋳造され、その後、除かれる。
SU-8フォトレジストの材料特性、及び高価でない光源からの散乱光を、上端において平坦であるが、角で「丸められ、且つ滑らか」である横断面プロフィール(即ち、鐘形)の微小構造及び導管を産生するのに採用することができる。より長い露出は丸まった角を持つ平坦な上端を作り出す傾向があるのに対し、短い露出は、丸められた上端を作る傾向がある。より長い露出はまた、より広い導管を作り出す傾向にある。これらのプロフィールは、M.A.Ungerら、SCIENCE 2000, 288, 113に開示されるように、流体流動を止めるために導管構造を完全につぶす必要のある、圧縮、変形に基づくバルブにおいて、使用するのに最適である。このような導管により、ブライユ型アクチュエータは微小導管を完全に閉鎖し、それにより非常に有用なバルブ付きの微小導管が作り出される。このような形はまた、均一な流界を生み出し、且つ、同様に良い光学特性を有する。
典型的な手順では、フォトレジスト層は基板の裏側から、例えば、フォトプロットされたフィルムであるマスクを介して、紫外線(UV)トランスイルミネーターにより生成される散乱光に露出される。鐘形横断面が、散乱光により作り出される球状波面がネガティブフォトレジストへ浸透する様式に従って生成される。露出用量に依存した、SU-8吸収係数(365nmにおいて、露出9700m-1に対して非露出3985m-1)の変化が、角における露出深度を限定する。
製作された構造の正確な横断面の形及び幅は、フォトマスク造作の大きさ、露出時間/強度、レジスト厚さ、並びに、フォトマスク及びフォトレジストの間の距離の組合せにより決定される。裏面露出は、フォトマスクにより規定される大きさよりも広く、場合により、元のフォトレジスト被覆の厚さと比べて高さがより低い造作を作るが、写されたパターンの寸法は、マスク寸法及び露出時間から容易に予測される。フォトマスクパターンの幅、及び得られるフォトレジストパターンの間の関係は、一定のフォトマスク開口の大きさを超えては、本質的に直線的(1の傾斜)である。この直線的な関係は、定数の単純な引き算による、フォトマスク上の開口の大きさの直接の補正を可能にする。露出時間が一定に保たれる場合、それ以下の不完全な露出が、微小導管の高さを元のフォトレジストの厚さよりも低くする閾値開口サイズが存在する。より低い露出用量は、より滑らかで且つより丸まった横断面プロフィールの導管を作るであろう。あまりに遅い光露出用量(又は、あまりに厚いフォトレジストの厚さ)は、しかしながら、フォトレジストに浸透するのに不十分であり、元のフォトレジストの厚さよりも薄い横断面となる。
厚さ30μmの鐘形横断面微小導管の、変形に基づくバルブとしての使用の適合性を、市販されており入手可能な更新可能なブライユディスプレーの圧電性垂直アクチュエータを用いて、導管に外圧をかけることにより評価した。導管横断面が、長方形横断面の場合のように不連続な接平面を有する場合には、膜と壁の間に空間が残されていてもよい。対照的に、鐘形横断面の導管は同じ条件下で完全に閉じられる。ブライユ針が鐘形、又は長方形型横断面微小導管に対して、200μmポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)膜を介して押圧された場合、同じ幅の長方形導管では著しい漏れがあったのに対し、鐘形導管は完全に閉じられた。
記載された技術は、レーザー、平行光線源(マスクアライナ)又はサブミクロン感度フォトマスク等の特別な設備が必要ないため、グレースケールマスクリソグラフィ、又はレザービーム重合等の良く定義され、丸められたプロフィールを生成するための他のフォトリソグラフィ方法と比べて、費用的及び時間的に効率的である;多くの生物学研究室において入手可能なトランスイルミネーターが必要なだけである。さらに、裏面露出技術は、微少流体マスクリソグラフィ等の他のソフトリソグラフィに基づくパターニング方法、及び既存の微小導管のパターン化された腐食液の層流の使用と比べて、より多くのプロフィールを生成できる。
変形に基づく微少流体バルブとして使用された場合、これらの鐘形微小導管は、慣用の長方形又は半円形横断面の導管と比べて、シミュレーション及び実験により証明されたように、圧縮に対して改善された自己密閉を示した。鐘形導管(幅:30μm;高さ:30μm)はブライユ針の18gfの力の圧迫で完全に閉じられた。「緩やかな傾斜」の側壁の鐘形横断面を有する導管が、プロフィールが表面張力により決定されるため、フォトマスクにより規定される丸いパターンを製作するのに最も慣用な方法の一つである溶融レジスト技術により製作できないことは特筆すべきことである。鐘形導管は、変形により導管を完全に閉じる能力を損なうことなく微少流体導管内の横断面領域を最大にする。例えば、本明細書中に記載される導管横断面は以前に報告されている、空気圧で作動される変形に基ずくバルブ(幅100μm;高さ20μm)よりも大きく、哺乳類細胞培養により適する可能性がある。さらに、鐘形横断面は平らな天井及び床の導管を提供し、これは、光学顕微鏡検査の収差を減らすこと、および導管の幅に亘ってより均一な速度プロフィールの流界を獲得するのに有利である。便利で、高価でなく、且つ市販されていて入手可能な、更新可能なブライユディスプレーに基づくバルブ作動機構と組み合わせた、鐘形横断面の形を持つ微小導管のこれらの利点は、微少流体細胞培養及び分析系、バイオセンサー、並びにマイクロレンズ等のチップ上光学装置のような広い範囲の微少流体応用に有用であろう。
触覚アクチュエータの外側への延長は、それらの所望の目的なために十分なものでなければならない。例えば、深度40μmの微小導管の完全な閉鎖は、単一のアクチュエータを用いた場合には一般に40μm又はそれ以上の、および導管の両側において二つのアクチュエータを用いた場合には約20μm又はそれ以上の延長(「突出」)が必要である。蠕動ポンプ駆動、混合及び流動制御のためには、導管の高さに対してより小さい延長が有用である。触覚アクチュエータの面積は、導管の幅及び機能(閉鎖、流動制御、ポンプ駆動等々)により適宜異なり得、好ましくは40μmから約2mm、より好ましくは0.5mmから1.5mmまでに亘り得る。同様に、より大きい及び小さい大きさも可能である。アクチュエータは十分な力を生じなければならない。一つのブライユ型ディスプレー針から生じる力はおよそ176mNであり、そして、その他のディスプレーではより高いか又は低い。
本発明の使用により、一つの装置上に多数の機能を備えることができる。栄養素、成長因子等々を供給するための複数の貯蔵器の使用が可能である。種々の貯蔵器は、任意の流体供給の組合せ、即ち、一度に単一の貯蔵器からの流体供給;又は貯蔵器の任意の組合せからの流体供給も可能にする。これは、前述のように、バルブ付き微小導管を用いて貯蔵器との流体連絡を確立することにより成し遂げられる。ブライユディスプレー又はアクチュエータアレイをプログラミングすることにより、各貯蔵器は随意に成長導管又はチャンバーと連結することができる。多数の延長可能な突出を微小導管供給に沿って組み入れることにより、多様な流速において、蠕動ポンプ駆動を行ってもよい。脊椎動物の循環器系に典型的な不均一な、脈動流動を容易に作り出すことができる。本発明のシステムが提供する融通性にも関わらず、その構築は簡単である。微少流体装置は、その技術的能力にも関わらず、比較的高価でなく且つ使い捨てであり、微少流体装置の簡素さ自体が、単純な、プログラム可能な外部アクチュエータと合わせて費用効果の高いシステムの調製を可能にする。
ラップトップから手持ちサイズまでのシステム中での微少流体細胞研究においてさらなる融通性を提供する、組合わされた、複数のポンプ及びバルブによる制御される流動が、更新可能なブライユディスプレー上で小さなアクチュエータのグリッドを用いることにより作り出される。これらのディスプレーは典型的には、コンピューターモニターに対する触覚アナログとして視覚障害者により使用されている。ディスプレーは通常、各々が8(4×2)個の垂直に動く針(約1〜1.3mm)を有する、20〜80列のセルを含む。同じセル上の2本の針は、典型的には、中心から中心まで2.45mm離れ、異なるセルにおいては3.8mm離れていることもある。各針は、圧電圧機構を用いて上向きに0.7〜1mm突出する能力を有し得、最大約15〜20cNまで支え得る。ブライユ針アクチュエータの制御は、コンピュータープログラム中のテキストを一行変えることにより成し遂げられ得る。ブライユ針の独特な組合せが、所定時にディスプレーされた文字に応じて突出するであろう。ブライユディスプレーは、容易に使用できかつ簡便に利用できるソフトウェアと一緒に予め包装されている。それらは、個人的使用用に設計されており、AC又はバッテリー動力を使用して、ウォークマンからラップトップの大きさまでに亘る。エラストマー性の透明なゴム中の導管に対して可動のブライユ針を用いることにより、導管を変形し、イン・シトゥーポンプ及びバルブを作り出すことができる。
補遺D
微少流体装置の態様は生きた生物の液体中での培養に好適であり得る。微少流体装置は、生きている生物に提供される流体の流れ及び組成を制御し得る。微少流体装置は、層流、偽多重層流又は非層流を提供し得る。微少流体装置は生きた生物に対し物理的操作を行うこともある。微少流体装置は、例えば、細胞洗浄及び剥離、細胞播種及び培養を含む、一般的な細胞培養に用いてもよい。微少流体装置は、微小反応器、組織培養装置、細胞培養装置、細胞選別装置、細胞破砕装置、微小フローサイトメーター、運動性精子選別機、微小気化器、微小分光光度計又は微小規模組織工学装置として使用してもよい。微少流体装置は、微小装置又は導管中部分の通路の要因の状態、又は流動特性を決定するためのセンサーを含み得る。センサーは、例えば、光学的、電気的又は電気工学的センサーであり得る。
一態様において、微少流体装置は積極的に雑多な流動特性を有し、且つ、圧縮可能又はねじることができるエラストマー性材料から形成された微小導管を含む。一態様において、全微少流体装置が、以下に記載されるように、有機ポリシロキサンエラストマー(「PDMS」)等の可撓性のエラストマー性材料より構築されている。しかしながら、装置の基板はまた、能動制御が望まれない部分において硬い、例えば、実質的に非弾性材料により構築され得る。
微少流体装置は、チャンバー又は通路(「空の空間」)、特に装置の流体流動能力部分の形及び又は容量を変える、少なくとも1つの活動部分を含み得る。このような活動部分は、非限定的に、混合部分、ポンプ駆動部分、バルブ調節部分、流動部分、導管又は貯蔵器選択部分、細胞破砕部分、及び凝集除去部分を含む。これらの活動部分は全て、装置の関連部分に圧力をかけ、それによりこれらの造作を構成する空の空間の形及び/又は容量を変えることにより、流体流動、流体特性、導管又は貯蔵器特性に何らかの変化を誘導する。「空の空間」という用語は、基板材料が無いことを指す。使用において、空の空間は通常、流体又は微生物で満たされている。
装置の活動部分は、所望の能動制御を成し遂げるために、その対応する導管を閉じる、又は導管の横断面領域を制限する圧力により活性化できる。この目的を達成するために、導管、貯蔵器又はその他の要素は、微少流体装置の外部からの適度な圧力が、導管、貯蔵器又は他の要素(「微少流体造作」)を圧縮させ、対応する造作の局所的制限又は完全な閉鎖を起こすように構築される。この結果を成し遂げる為に、わずかな量の圧力が外表面、及び場合により内部造作の壁をねじり、この点において横断面領域を減らすか、又は造作を完全に閉じるように、造作を取り囲む装置の面内の壁は、好ましくはエラストマー性であり、且つ、外表面(例えば、二次元装置においては、主要な外表面)がエラストマー性である。
装置の活動部分を「活性化」するのに使用される圧力は、アクチュエータシステムの更新可能なブライユディスプレーで使用されるもの等の外部触覚装置より供給される。触覚アクチュエータは装置の活動性部分に接し、電圧が加えられると、延長し、変形可能なエラストマーに押圧され、活動部分中の造作を制限又は閉鎖する。
いくつかの態様においては、エネルギーを供給することにより造作を閉鎖したり又は制限したりするよりも、触覚アクチュエータを、エネルギーを供給することにより反応する、延長された位置に製作されても良く、又は、通路を閉鎖若しくは制限する、エネルギーが供給された状態で微小流体装置に適用して、エネルギー供給を絶った際に通路をさらに開放しても良い。
本願対象の発明のみではなく、圧力(例えば、空気圧)を使用する他の微少流体装置の装置造作を活性化する作業を、装置が導管壁に近接して1又はそれ以上の空隙を含むよう鋳造することにより有意に改善し得る。これらの空隙は、対応する造作のより完全な閉鎖又はねじりを可能にする。
一態様において、アクチュエータシステムは、流体操作を行う微少流体装置の対応する要素に各々連動する複数の可動針を含む、プログラム可能なブライユディスプレーである。微少流体装置の要素はポンプ及びバルブを含む。針は規則的な幾何学的配列に配列されていても良い。微少流体装置の異なる配置においてこのような配列を使用することができる。この配列では、装置中のどの要素も針に対応しないため、幾つかの針は特定の微少流体装置においては使用されない可能性がある。代わりに、針は、特定の、又は一群の多流体装置の要素に対応するように選択され得る。各針は独立して制御され得、且つ、個別にアドレス可能であり得る。
アクチュエータシステムの一例は、スクリーンテキストを直接ブライユコードに翻訳するGateway(商標)ソフトウェアを入れたNavigator(商標)ブライユディスプレー等のテレセンサリー社のシステムである。これらの装置は一般に、各セル及び各セル「ドット」が個別にプログラム可能な、「8ドット」セルの直線的配列を含む。このような装置は、一度に一行のテキスト行をブライユ記号に変換して、例えばテキストメッセージ又は書籍を「読む」ために、視覚障害者により使用されている。微少流体装置活動部分は、ブライユディスプレーの対応する作動可能「ドット」又は突出の下に配置できるように設計されている。ブライユディスプレーは、他の供給元も含め、Handy Tech、Blazie及びAlvaから入手可能である。以下に記載されるように、当該システムは、生物に対して行われるべき工程の使用者による選択を可能にすることによってアクチュエータシステムの針を制御し、その後ライブラリーから工程を実行するための、種々のソフトウェアプログラムを使用することもある。
しかしながら、融通性を増すため、多数の微少流体装置で使用可能な、例えば、10×10、16×16、20×100、100×100、又は他の大きさの配列である規則的な方形の配列を提供することができる。プログラム可能で延長可能な突出の間隔が狭く数が多い程、微小装置の設計の融通性は上がる。このような装置の作製は当分野において公知の構築方法に従う。アドレス可能性もまた通例の方法に従う。非規則的な配列も、例えば望しい場合のみアクチュエータを有するパターンにおいて、可能である。
触覚アクチュエータを微少流体装置に組み入れた装置もまた構築できる。アクチュエータは依然として微少流体装置自体の外部に配置されているが、一体化された全体を形成するように、それに対して付着又は結合されている。エレクトロレオロジー(electrorheologic)流体の増強を採用する触覚アクチュエータ装置;「オン」及び「オフ」部分の間の転位に形態記憶ワイヤを採用した電気機械的ブライユ型装置;エレクトロレオロジー又はマグネットレオロジー(magnetorheologic)で機能する流体又はゲルを採用した装置;空気圧で操作されるブライユ装置;特に、強力な永久磁石を採用する、「ボイスコイル」型構造;形態記憶合金及び本質的に伝導性のポリマーシート採用する装置等の、他の型のアクチュエータシステムも使用できる。
非統合使用に好適なブライユディスプレー装置は、24×16の触覚針の配列を有するGraphic Window Professional(商標)(GWP)として、Handy Tech Electronik GmbH(Horb, Germany)から入手可能である。空気式要素がエレクトロレオロジー流体に置き換わり、それに応じ電気配置が変えられた空気式アクチュエータもまた使用可能である。
微少流体装置には多くの用途がある。本明細書中に記載されるソフトウェアは、これらの使用の操作を自動化する。細胞成長において、供給される栄養素は、生きた系における利用可能性をシミュレートするよう変更され得る。種々の導管を閉鎖又は制限する為の活動部位を持つ、幾つかの供給導管を提供することにより、栄養素及び他の流体の供給を随意に変更し得る。一例は骨組織を作出するための三次元骨格システムであり、貯蔵器からの種々の栄養素を供給される骨格は、蠕動ポンプ駆動と組み合わせて自然循環をシミュレートする。
別の適用は細胞破砕を含む。細胞は、活動部分を介して細胞を導管中で輸送し、導管を流動する細胞を破砕するために導管閉鎖を作動することにより、破砕することができる。細胞の検出は、例えば、透明な微少流体装置及び好適な検出器を使用したフローサイトメトリー技術により達成され得る。光学ファイバーを種々の角度で導管に組み込むことにより、適当な活性装置の検出及び活性化を容易にできる。各々の異なる回収部位又は貯蔵器への導管からの運搬を変更するためにバルブの使用と組合せて、同様の検出技術を、細菌、カビ、藻類、酵母、ウイルス及び精子細胞を含む胚並びに微生物を選別するのに使用することができる。
ソフトウェアはアクチュエータシステムを制御し、圧力、従って、導管の開放及び閉鎖、並びに時間的調節を制御する。行われるべき工程に依存して、ソフトウェアはアクチュエータに個別又はグループで入力し、且つ、導管中の流体に対して蠕動ポンプ駆動動作又は混合動作等の動作を与えるパターンを入力してもよい。ソフトウェアは、導管流動を選択的に制御するよう、微少流体装置のセンサーをモニターしても良い。
微少流体装置に連動する例示的な3つの針により形成される蠕動ポンプでは、反復してXXO、OXX、OOX、XOX(ここで、Xは閉鎖位置であり、そしてOは開放位置である)等の導管中の流体を汲み出すパターンを使用し得る。得られる流体流動は、両方向への一過性の動きの脈動となる。パターン変化頻度に対する直線的関係から正味の運動を予測でき、流動方向は作動のパターンを逆にすることにより切り替えることができる。
本発明の使用により、多数の機能を単一の装置上に備えることができる。栄養素、成長因子及び類似のものの供給のための多数の貯蔵器の使用が可能である。種々の貯蔵器は、任意の流体供給の組合せ、例えば一度に単一の貯蔵器からの流体供給、又は貯蔵器の任意の組合せからの流体供給も可能にする。これは、前述のように、バルブ付きの微小導管を利用して貯蔵器との流体連絡を確立することにより成し遂げられる。アクチュエータシステムをプログラミングすることにより、各個別の貯蔵器は随意に成長導管又はチャンバーと連結することができる。微小導管供給に沿って複数の延長可能な突出をさらに組み入れることにより、種々の流速における蠕動ポンプ駆動を行ってもよい。脊椎動物の循環器系に典型的な、不均一な脈動流動を容易に作り出すことができる。微少流体細胞研究においてより融通性を提供する、多数のポンプ及びバルブが組み合わされ、制御された流れが、更新可能なブライユディスプレー上で小型アクチュエータのグリッドを用いることにより作り出され、行われるべき工程の使用者による選択に反応して、ソフトウェアにより自動的に実行される。
本発明の態様が例示され、記載されたが、これらの態様は本発明の全ての可能な形を例示し、且つ記載することを意図してはいない。むしろ、本明細書中に使用される用語は、限定のためというよりも描写のための用語であり、種々の変更が、本発明の趣旨及び範囲から外れることなく加えられ得ることが理解される。
微少流体細胞培養装置の分解透視図である。 図2aは、図1の系の基板の上からの図である。図2bは、図2aの基板の横からの、且つ切断線2b-2bに沿った横断面での図である。図2cは、図2aの基板の下からの図である。 図3aは、図1の系の膜の横からの、且つ部分的に切り取られた横断面での図である。図3bは、膜の下表面から離された作動針の対、及び、図1の系の膜の代替的な態様の、横からの且つ部分的に切り取られた横断面での図である。 図4aは、図1の基板の代替的な態様、及び、図3bの膜の横からの且つ部分的に切り取られた横断面での図であり、当該基板中に形成された貯蔵器対の中の2つの異なる高さの生物学的流体を図示する図である。図4bは、図4aの基板及び膜の拡大された、横からの、部分的に切り取られた横断面での図であり、細胞塊の相対的高さ、及び通路の末端部分を図示する図である。図4cは、図4aの基板及び膜の拡大された、横からの、部分的に切り取られた横断面での別の図であり、貯蔵器を規定する表面の角度、及び、細胞塊の相対的幅、及び、貯蔵器の下部を図示する図である。 図5aは、図1の基板及び膜の代替的な態様の、拡大された、横からの、部分的に切り取られた横断面での図であり、通路の上の貯蔵器の下部に保たれた細胞塊を図示する図である。図5bは、図1の基板及び膜の代替的な態様の、拡大された、横からの、部分的に切り取られた横断面での別の図であり、通路より下の貯蔵器の下部に保たれた細胞塊を図示する図である。図5cは、図1の基板及び膜の代替的な態様の、さらに拡大された、横からの、部分的に切り取られた横断面での別の図であり、貯蔵器の下部よりも小さい幅の細胞塊を図示する図である。

Claims (34)

  1. 微少流体(microfluidic)細胞培養装置中の細胞塊のための微少流体細胞培養培地であって、該培地は該細胞塊に治療環境を提供し、該細胞塊は活性材料を有し、該培地は該活性材料の初期濃度を有する流体を含み、該流体の該活性材料は一つの細胞工程の少なくとも一部で該細胞塊により使用されることができ、該流体は該細胞塊より放出される活性材料を受けることができ、該初期濃度は該細胞塊に治療環境を提供するのに必要な治療濃度領域よりも低い、培地。
  2. 前記細胞塊の近くの流体から活性成分を遠ざける対流輸送が、該細胞塊の近くの流体から活性材料を遠ざける拡散輸送よりも少ない場合、前記初期濃度が該細胞塊に治療環境を提供するのに必要な治療濃度領域よりも低い、請求項1記載の培地。
  3. 前記流体が前記細胞塊の近くにある場合、前記治療濃度領域内に入る前記活性材料の濃度を有する、請求項1記載の培地。
  4. 前記細胞塊による前記活性材料の内生産生を促進する添加物をさらに含む、請求項1記載の培地。
  5. 前記添加物が脂質である、請求項4記載の培地。
  6. 前記脂質が、ビタミンD3、デキサメタゾン及びグルココルチコイドの内の少なくとも一つを含む、請求項5記載の培地。
  7. 前記添加物が代謝基質である、請求項4記載の培地。
  8. 前記代謝基質がピルビン酸である、請求項7記載の培地。
  9. 前記代謝基質が炭水化物である、請求項7記載の培地。
  10. 前記添加物が成長因子である、請求項4記載の培地。
  11. 前記活性材料が免疫調節剤である、請求項1記載の培地。
  12. 前記免疫調節剤が、可溶性組織適合性複合体、不溶性組織適合性複合体及びインターフェロンから選ばれる少なくとも一つを含む、請求項11記載の培地。
  13. 前記活性材料が代謝活性材料である、請求項1記載の培地。
  14. 前記代謝活性材料が二酸化炭素である、請求項13記載の培地。
  15. 前記代謝活性材料がピルビン酸である、請求項13記載の培地。
  16. 前記代謝活性材料が炭水化物である、請求項13記載の培地。
  17. 前記活性材料が栄養素である、請求項1記載の培地。
  18. 前記栄養素が代謝産物である、請求項17記載の培地。
  19. 前記活性材料が成長因子である、請求項1記載の培地。
  20. 細胞培養期間中に微少流体細胞培養装置中の細胞塊と共に使用するための微少流体細胞培養培地であって、該装置は、該培地の一部を吸収すること、および該培地の一部が蒸発するのを許すことの、少なくともどちらか一方となるよう形作られており、該培地は、該細胞培養期間中に該細胞塊に治療環境を提供するのに必要な治療濃度領域よりも低い活性材料初期濃度を有する、水を基材とした流体を含み、該初期濃度は、該流体からの予め決められた量の水が、該細胞培養期間中に吸収されること、および蒸発することの、少なくともどちらか一方の場合に、該細胞塊の近くの流体中の活性材料濃度が該治療濃度領域内に入るような値を有する、培地。
  21. 前記活性材料が溶質である、請求項20記載の培地。
  22. 前記溶質が荷電した溶質である、請求項21記載の培地。
  23. 前記荷電した溶質が塩を含む、請求項22記載の培地。
  24. 前記塩が、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カリウム及び有機緩衝剤の内の少なくとも一つを含む、請求項23記載の培地。
  25. 前記荷電した溶質がアミノ酸を含む、請求項23記載の培地。
  26. 前記アミノ酸が、グルタミン、グリシン及びタウリンの内の一つである、請求項25記載の培地。
  27. 前記荷電した溶質が高分子である、請求項22記載の培地。
  28. 前記高分子が蛋白質である、請求項27記載の培地。
  29. 前記溶質が中性溶質である、請求項21記載の培地。
  30. 前記中性溶質が炭水化物を含む、請求項29記載の培地。
  31. 前記炭水化物が、グルコース、トレハロース及びガラクトースの内の一つである、請求項30記載の培地。
  32. 前記中性溶質が高分子を含む、請求項29記載の培地。
  33. 前記高分子が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコース、デキストラン、ポリビニルピロリドン及びポリリジンの内の一つである、請求項32記載の培地。
  34. 細胞培養期間中に微少流体細胞培養装置中の細胞塊と共に使用するための微少流体細胞培養培地であって、該装置は、該培地の一部を吸収すること、および該培地の一部が蒸発するのを許すことの、少なくともどちらか一方となるよう形作られており、該培地は、該細胞培養期間中に該細胞塊に治療環境を提供するのに必要な治療重量オスモル濃度領域よりも低い初期重量オスモル濃度を有する、水を基材とした流体を含み、その該初期重量オスモル濃度は、該流体からの決められた量の水が該細胞培養期間中に吸収されること、および蒸発することの、少なくともどちらか一方の場合に、該細胞塊の近くの流体の重量オスモル濃度が該治療重量オスモル濃度領域内に入るような値を有する、培地。
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