JP2009507494A - キメラのhcnチャネル - Google Patents

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Abstract

本発明は、2種以上の型のHCNチャネルの部分を含む、キメラの過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)ポリペプチドを提供する。また、本発明は、心臓の律動障害に罹患した対象を治療する方法も提供し、この方法は、キメラのHCNポリペプチドを心臓の選択した領域で発現させるステップを含み、その結果、心臓においてペースメーカー電流を誘発し、それによって、対象を治療する。

Description

本明細書に開示する発明は、米国国立保健研究所からのNIH助成金第HL-28958号による米国政府の支援を受けて実施された。したがって、米国政府は、本発明の特定の権利を有する。
本出願は、全内容が参照によって本明細書に組み入れられている米国仮特許出願第60/832515号、2006年7月21日出願;第60/781723号、2006年3月14日出願;および第60/715934号、2005年9月9日出願、ならびに米国特許出願第11/490997号、2006年7月21日出願の利益を主張する。
本出願全体にわたり、種々の刊行物を参照し、それらの著者名および日付、特許番号または特許公開番号を括弧内に示す。これらの刊行物を、明細書の末尾に、全て列挙する。本明細書において本発明を記載し、特許請求する時点におけるそれら刊行物中の現況技術を当業者に向けてより完全に記載するために、これらの刊行物の全体の開示が参照によって本出願に組み入れられている。しかし、本明細書への参考文献の引用を、そのような参考文献が本発明の先行技術であると認めるものであると解釈してはならない。
本発明は、2種以上のHCNアイソフォームに由来する部分を含む、キメラの過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)ポリペプチド、および、心臓においてペースメーカー電流を誘発し、それによって、心臓の律動障害を治療するための、これらのキメラのポリペプチドの心臓での発現に関するものである。
哺乳動物の心臓は、筋原性の起源の律動を発生させる。心臓の律動を発生させるのに必要である全てのチャネルおよび輸送体は、筋細胞に存在する。これらの要素が局所的に大量に存在することまたはこれらの要素の特徴から、律動が、特異的な解剖学的部位、すなわち、洞房結節から起こると予想される。洞房結節は、わずか数千個の電気的に活性のペースメーカー細胞からなり、この細胞が律動性の活動電位を自発的に発生させ、次いで、この活動電位が伝播して、心房および心室の協調した筋収縮を誘発する。律動は、自律神経系によって調節されるが、自律神経系によっては開始されない。
ペースメーカー細胞の機能障害または損失が、疾患または加齢によって生じる場合がある。例えば、急性心筋梗塞により、毎年数百万人が死亡し、生存者においては、一般的に筋細胞数および心臓のポンプ機能の著しい低下が生じる。成体の心筋細胞は、ごく稀にしか分裂せず、筋細胞の損失に対する通常の応答として、代償性肥大および/またはうっ血性心不全が含まれ、うっ血性心不全は、顕著な年間死亡率を有する。
電子工学的ペースメーカーは、洞房結節、房室性の伝導、またはその両方が停止した状況下で、規則的な心拍を提供する救命デバイスである。また、電子工学的ペースメーカーは、うっ血性心不全の治療にも適応している。電子工学的ペースメーカー治療の主要な適応症の1つに、正常に機能する洞房結節の活動電位が、心室に伝播できないような高度心ブロックがある。高度心ブロックの結果、心室停止および/または細動、そして死に至る。電子工学的ペースメーカー治療の別の主要な適応症として、洞房結節の機能障害があり、この場合には、洞房結節が正常な心拍を開始できず、それによって、心拍出量が損なわれる。
米国仮特許出願第60/832515号 米国仮特許出願第60/781723号 米国仮特許出願第60/715934号 米国特許出願第11/490997号 米国仮特許出願第60/832518号 米国特許第6849611号 米国特許第6783979号 米国特許第6110161号 米国仮特許出願第60/701312号 米国特許第5983138号 米国特許第5318597号 米国特許第5376106号 Ausubelら、section 2.9、supplement 27 (1994) SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math. 2:482頁(1981) NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48:443頁(1970) PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444頁(1988) HigginsおよびSharp、Gene 73: 237〜244頁(1988) Higgins およびSharp、CABIOS 5: 151〜153頁(1989) Corpetら、Nucleic Acids Research 16: 10881〜90頁(1988) Huangら、「Computer Applications in the Biosciences 8」、155〜65頁(1992) Pearsonら、「Methods in Molecular Biology 24」、307〜331頁(1994) 「Current Protocols in Molecular Biology、Chapter 19」、Ausubelら編、Greene Publishing and Wiley-Interscience、New York (1995) Altschulら、J. Mol. Biol., 215:403〜410頁(1990) Altschulら、Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402頁(1997) HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915頁(1989) KarlinおよびAltschul、Proc. Nat'l. Acad Sci. USA 90:5873〜5877頁(1993) Wooten およびFederhen、Comput. Chem.、17:149〜163頁(1993) Claverie およびStates、Comput. Chem.、17:191〜201頁(1993) 「the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」、NIH Publication No. 85-23、改訂1996年
電子工学的ペースメーカーは、心ブロックおよび/または洞房結節の機能障害の治療において有用であるにもかかわらず、定期的なモニターおよび整備が必要であること、ならびに運動や情動の要求に対する応答が不十分であることを含む、特定の欠点を有する(Rosenら、2004年; Rosen、2005年; Cohenら、2005年)。したがって、電子工学的ペースメーカーは、素晴らしい医学的緩和の典型である一方、完全な解決策にはならない(Rosenら、2004年)。したがって、正常機能を、例えば、自律的な応答性を示すことによって、より完全に再生し、究極的に治癒をもたらすことができる代替法の開発が望まれている(Rosenら、2004年)。
治療上の解決法として、心臓でのイオンチャネルの発現に基づく生物学的ペースメーカーを使用して、自発的な速度を生理学的に許容される範囲内で発生させることができる。生物学的なペースメーキング(pacemaking)の分野を進歩させるにあたっての重要な課題の1つは、(1)内因性の律動が突然停止した後に、過度に長期の休止期が生じないように、心臓の律動を最適化し、かつ(2)カテコールアミンおよびアセチルコリンに対する適切な応答を維持する一方で、生理学的に低い基礎速度を有する律動を誘発する、イオンチャネルの同定である。これまでの研究では、2つの理由から、Ifペースメーカー電流をもたらす過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)イオンチャネルに焦点があてられていた(Bielら、2002年)。すなわち、第1に、HCNイオン電流チャネルは、哺乳動物の心臓でペースメーカー活動を開始させ、第2に、これらのチャネルの活性化は、カテコールアミンによって増加し、アセチルコリンによって緩慢になり、これらのチャネルの自律的な応答をもたらす。自律的な応答性は、明らかに心臓におけるペースメーカー活動に不可欠なものであるはずであるが、これを欠くことが、電子工学的ペースメーカーの重要な欠点である。
本発明は、野生型HCNチャネルと比較して、改善された特徴を示す、キメラのHCNチャネルの産生、ならびに生物学的なペースメーキングおよび心臓の律動障害の治療のための、これらのキメラのチャネルの使用に関する。
本明細書に開示する発明は、2種以上のHCNチャネルのアイソフォームに由来する部分を含む、キメラのHCNポリペプチドを提供する。好ましい実施形態では、これらの部分は、アミノ末端部分、膜貫通部分およびカルボキシ末端部分である。特定の実施形態では、HCNのキメラの少なくとも1つの部分が、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来する動物種とは異なる動物種に由来する。いくつかの実施形態では、膜貫通部分は、HCN1チャネルに由来するか、あるいは配列番号・に記載する配列を有するhHCN1のD140-L400、または配列番号・に記載する配列を有するmHCN1のD129-L389である。特定の実施形態では、アミノ末端部分は、HCN2、HCN3またはHCN4に由来し、カルボキシ末端は、HCN2、HCN3またはHCN4に由来する。ある好ましい実施形態では、アミノ末端部分は、HCN2に由来し、カルボキシ末端部分は、HCN2に由来する。好ましくは、キメラのHCNポリペプチドは、野生型HCNチャネルと比較して、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、増強されたcAMP応答性、および増強された神経体液性応答からなる群から選択された、改善された特徴を提供する。
例示的なキメラとして、mHCN112、mHCN212、mHCN312、mHCN412、mHCN114、mHCN214、mHCN314、mHCN414、hHCN112、hHCN212、hHCN312、hHCN412、hHCN114、hHCN214、hHCN314またはhHCN414があげられる。
特定の実施形態では、キメラの部分は、変異HCNチャネルをさらに含む。例えば、変異HCNチャネルは、S3-S4リンカー、S4電位センサー、S4-S5リンカー、S5、S6およびS5-S6リンカー、Cリンカー、ならびにC末端の環状ヌクレオチド結合ドメイン(「CNBD」)からなる群から選択されたチャネルの領域に、変異を含有することができる。例示的な変異チャネルとして、配列番号・に記載の配列を有するmHCN2に由来する、E324A-mHCN2、Y331A-mHCN2、R339A-mHCN2およびY331A,E324A-mHCN2があげられる。配列番号・に記載の配列を有するmHCN1に由来する例示的な変異チャネルとしては、mHCN1-ΔΔΔがあげられる。
また、本発明は、本明細書に記載するキメラのHCNポリペプチドのうちのいずれかをコードする核酸、および当該核酸を含むベクターも提供する。さらに、本発明は、そのインスタントな核酸(instant nucleic acid)を含む細胞も提供し、当該細胞は、キメラのHCNポリペプチドを発現する。特定の実施形態では、当該細胞は、(a)少なくとも9回継代されており、(b) CD29、CD44、CD54およびHLAクラスIの表面マーカーを発現し、かつ(c) CD14、CD34、CD45およびHLAクラスIIの表面マーカーを発現しないヒト成体間葉系幹細胞(hMSC)である。
その上さらに、本発明は、そのインスタントな核酸、ベクターまたは細胞を含む薬学的組成物も提供する。
その上、本発明は、本明細書に記載するキメラのHCNポリペプチドを発現する細胞のうちのいずれかを、対象の心臓のある領域に投与するステップを含む、心臓の律動障害に罹患した対象を治療する方法であって、心臓の当該領域におけるキメラのHCNポリペプチドの発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象を治療する方法を提供する。
また、本発明は、キメラのHCNポリペプチドをコードする核酸を、対象の心臓の細胞に形質移入し、その結果、当該のキメラのHCNポリペプチドを心臓で機能的に発現させるステップを含む、心臓の律動障害に罹患した対象を治療する方法であって、当該ポリペプチドの発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象を治療する方法も提供する。
さらに、本発明は、(a) HCNポリペプチドのアミノ末端部分をコードする核酸をHCNポリペプチドの膜貫通部分をコードする核酸に連結し、当該の膜貫通部分をコードする核酸をHCNポリペプチドのカルボキシ末端部分をコードする核酸に連結することによって、組換え核酸を作製するステップであって、HCNポリペプチドのコード化部分は、2種以上のHCNアイソフォームまたはその変異体に由来するステップと、(b) キメラのHCNポリペプチドを産生するように、当該組換え核酸を細胞内で機能的に発現させるステップとを含む、キメラのHCNポリペプチドを産生する方法も提供する。
その上さらに、本発明は、(1)電子工学的ペースメーカーと、(2)生物学的ペースメーカーとを含むタンデム型ペースメーカーシステムを提供し、生物学的ペースメーカーは、キメラのHCNイオンチャネルを機能的に発現する植込み型の細胞を含み、かつ当該細胞を対象の心臓に植え込んだ場合、発現したキメラのHCNチャネルが、有効なペースメーカー電流を発生させ、かつキメラのHCNは、2種以上の型のHCNチャネルの部分を含む。より好ましい実施形態では、当該植込み型細胞は、心筋細胞とのギャップ結合仲介伝達が可能である。その他の実施形態では、当該細胞は、幹細胞、心筋細胞、心臓のコネキシンを発現するように操作された線維芽細胞または骨格筋細胞、および内皮細胞からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、当該細胞は、hMSCである。
好ましい実施形態では、当該のタンデム型システムの生物学的ペースメーカーは、少なくとも約200,000個のhMSCを含み、より好ましくは、少なくとも約700,000個のhMSCを含む。
過分極活性化カチオン電流は、If、IhまたはIqと呼ばれ、20年以上前に初めて心臓細胞および神経細胞で発見された(総説として、DiFrancesco、1993年; Pape、1996年を参照)。これらの電流は、Na+イオンまたはK+イオンによって運ばれ、心臓および神経のペースメーカーの活動、静止電位の設定、入力コンダクタンスおよび長さ定数、ならびに樹状突起の統合を含む、広範な生理機能に寄与する(RobinsonおよびSiegelbaum、2003年; Bielら、2002年を参照)。イオンチャネルのサブユニットの過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)ファミリーが、分子クローニングによって同定されており(総説として、Clapham、1998年; SantoroおよびTibbs、1999年; Bielら、2002年)、起源を違えて発現させても、4種の異なるHCNアイソフォーム(HCN1、HCN2、HCN3およびHCN4)のそれぞれが、自然のIfの主要な特性を有するチャネルを生成することから、HCNチャネルが、この電流に関係がある分子であることが確認されている。したがって、これらのチャネルの分子成分によって、心拍数を調節するための天然の標的が提示される。
一般的にいうと、HCNポリペプチドは、3つの主要なドメイン、すなわち、(1)細胞質側のアミノ末端ドメイン; (2)膜貫通ドメインおよびそれらを連結する領域を含む膜内部分;ならびに(3)細胞質側のカルボキシ末端ドメインに分かれる。N末端ドメインが、チャネルの活性化において主要な役割を担っている様子はない(Bielら、2002年)。しかし、膜貫通ドメインおよびそれらを連結する領域が、ゲーティング(gating)の動態の決定において重要な役割を担っているのに対して、C末端のCNBDは、交感神経系および副交感神経系(それぞれ、細胞性のcAMPのレベルを上昇および低下させる)にチャネルが応答する能力の主要な原因である。
キメラのHCNチャネル。
Wangら(2001年b)は、HCN1とHCN2との間のキメラを使用して、cAMPの調節作用に関する分子基盤、およびこれら2種のチャネルの機能的特性の違いに関する分子基盤を調査した。本発明は、キメラのHCNチャネルを産生するために、HCNのアイソフォーム全4種からの部分をコードするヌクレオチド配列のin vitro組換えによるHCNチャネルの特性の操作を包含する。実施例に詳述するように、これらのキメラのうちの特定のものは、心臓障害の治療に使用するためのペースメーカー電流を発生させるのに、野生型チャネルと比較して、有利な特徴を示す。
したがって、本発明は、2種以上のHCNアイソフォームに由来する部分を含む、キメラのHCNポリペプチドを提供する。HCN1、HCN2、HCN3およびHCN4の4種のHCNアイソフォームが存在する。4種のアイソフォームの全てが、脳で発現する。また、HCN1、HCN2およびHCN4は、心臓でも顕著に発現し、HCN4およびHCN1は、洞房結節で優勢であり、HCN2は、心室特異的伝導系で優勢である。「mHCN」は、マウス(murineまたはmouse)のHCNを示し、「hHCN」は、ヒトのHCNを示す。HCNチャネルは、生物学的ペースメーカー活動を誘発することができるならば、いずれのHCNチャネルであってもよい。
好ましい実施形態では、当該部分は、アミノ末端部分、膜内部分およびカルボキシ末端部分である。その他の好ましい実施形態では、当該部分は、ヒトHCNアイソフォームに由来する。本明細書で使用する場合、「キメラのHCNポリペプチド」または「HCNキメラ」とは、2種以上のHCNチャネルのアイソフォームの部分を含むHCNポリペプチドを意味するものとする。したがって、あるキメラは、HCN1の部分と、HCN2またはHCN3またはHCN4の部分等とを含むことができる。例えば、また、本発明は、以下の順で近接している、ヒトHCN1チャネルまたはヒトHCN2チャネルのアミノ末端部分と、ヒトHCNチャネルの膜内部分と、ヒトHCNチャネルのカルボキシ末端部分とを含む、ヒトのキメラのHCNポリペプチドも提供し、1つの部分は、あるHCNチャネルに由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来するHCNチャネルとは異なる。
特定の実施形態では、HCNのキメラの少なくとも1つの部分が、ある動物種に由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来する動物種とは異なる。例えば、チャネルの1つの部分は、ヒトに由来することができ、別の部分は、非ヒトに由来することができる。
「HCNXYZ」(ただし、X、YおよびZは、整数1、2、3または4のいずれか1つであり、X、YおよびZの少なくとも1つは、その他の数の少なくとも1つとは異なる数である)という用語は、XYZの順で近接する3つの部分を含む、キメラのHCNポリペプチドを意味するものとし、Xは、N末端部分であり、Yは、膜内部分であり、Zは、C末端部分であり、かつ数X、YまたはZは、当該部分が由来するHCNチャネルを示す。例えば、HCN112は、HCN1からのN末端部分および膜内部分、ならびにHCN2からのC末端部分を有するHCNのキメラである。
インスタントなキメラのHCNポリペプチドのその他の実施形態では、膜内部分は、HCN1に由来する。さらなる実施形態では、配列番号・ (図4を参照)に記載の配列を有するhHCN1のD140-L400である。さらに別の実施形態では、配列番号・(図4を参照)に記載する配列を有するmHCN1のD129-L389である。異なる実施形態では、アミノ末端部分は、HCN2、HCN3またはHCN4に由来し、カルボキシ末端は、HCN2、HCN3またはHCN4に由来する。その他の実施形態では、アミノ末端部分は、HCN2に由来し、カルボキシ末端部分は、HCN2に由来する。
本発明の好ましい実施形態は、野生型HCNチャネルと比較して、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、増強されたcAMP応答性、および増強された神経体液性応答からなる群から選択された、改善された特徴を示す、キメラのHCNポリペプチドを提供する。HCN1は、最も迅速な動態を有するが、cAMP応答性が乏しい。HCN2は、動態はより緩慢であるが、良好なcAMP応答性を有する。したがって、HCN1とHCN2とのキメラを実験的に研究した結果、本発明は、これらおよびその他のキメラを発現する細胞を含むペースメーカーシステムを提供する。図1に、HCN1/HCN2のキメラの模式図を示す。
その他の実施形態では、インスタントなキメラHCNポリペプチドは、mHCN112、mHCN212、mHCN312、mHCN412、mHCN114、mHCN214、mHCN314、mHCN414、hHCN112、hHCN212、hHCN312、hHCN412、hHCN114、hHCN214、hHCN314またはhHCN414を含む。
HCN112キメラ(HCN1のN末端ドメイン、HCN1の膜貫通ドメインおよびHCN2のC末端ドメインを含有する;図1を参照)は、生物学的なペースメーキングに用いる好ましいキメラのチャネルである。なぜならば、適切なHCN1の膜貫通ドメイン(迅速な動態を示す)、およびHCN2のC末端ドメイン(良好なcAMP応答性を示す)を含有するからである。N末端ドメインのチャネルゲーティングおよびcAMP応答性への寄与が定義されていないことから、HCN212(図3を参照)もまた、好ましい候補である。したがって、ある好ましい実施形態では、キメラのHCNポリペプチドは、配列番号・ (図5を参照)に記載の配列を有するhHCN212である。さらに別の好ましい実施形態では、キメラのHCNポリペプチドは、配列番号・ (図6を参照)に記載の配列を有するmHCN212である。その他の好ましいキメラは、HCN312およびHCN412である。また、HCN4も、緩慢な動態を示すが、cAMP応答性は良好であり、したがって、HCN114、HCN214、HCN314およびHCN414もまた、好ましいキメラとなる。
3つの広範な機能性ドメインに関してHCNチャネルを上記で定義したが、キメラのチャネルにおけるこれらのドメインの間に境界を設定することができる複数の部位が存在する。また、本発明は、異なって規定された境界を有するドメインを使用して生み出されたHCNのキメラである変異体も包含する。これらの境界も、個々のHCNチャネルの望ましい生物化学的および生物物理的な特徴を組み換えるのに役立つ。
特定の実施形態では、HCNのキメラは、アミノ末端部分と膜内部分とカルボキシ末端部分とを含み、これらはこの順で近接しており、各部分は、HCNチャネルの一部またはHCNチャネルの変異体の一部であり、かつ1つの部分は、あるHCNチャネルまたはあるHCNチャネルの変異体に由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来するHCNチャネルまたはHCNチャネルの変異体とは異なる。種々の実施形態では、ポリペプチドの少なくとも1つの部分は、野生型HCNチャネルの一部と比較して、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、増強されたcAMP応答性、および増強された神経体液性応答からなる群から選択された、改善された特徴を提供する変異を含有するHCNチャネルに由来する。特定の実施形態では、変異HCNチャネルは、S3-S4リンカー、S4電位センサー、S4-S5リンカー、S5、S6およびS5-S6リンカー、Cリンカー、ならびにC末端のCNBDからなる群から選択されたチャネルの領域に、変異を含有する。その他の実施形態では、変異部分は、配列番号・ (図7を参照)に記載の配列を有するmHCN2に由来し、E324A-mHCN2、Y331A-mHCN2、R339A-mHCN2またはY331A,E324A-mHCN2を含む。好ましい実施形態では、変異部分は、E324A-mHCN2を含む。特定のその他の実施形態では、変異部分は、HCN1-Δ229-231、HCN1-Δ233-237、HCN1-Δ234-237、HCN1-Δ235-237、HCN1-Δ229-231/Δ233-237、HCN1-Δ229-231/Δ234-237、およびHCN1-Δ229-231/Δ235-237(Tsangら、2004年参照)を含む。好ましい実施形態では、変異部分は、HCN1-Δ235-237(本明細書では、HCN1-ΔΔΔとしても示す; Tseら、2006年参照)を含み、そこでは、チャネルの開口に有利になるように、S3-S4リンカーが、残基235〜237を欠失させることによって系統的に短縮されている。
本明細書では、アミノ酸置換が関与するポリペプチドの変異を、変異を受けたアミノ酸残基の1文字略語、ポリペプチド内の当該残基の位置、および当該残基が変異したアミノ酸残基の1文字略語を提供する表示によって識別する。したがって、例えば、E324Aは、324位のグルタミン残基(E)がアラニン(A)に変異した変異ポリペプチドを識別する。Y331A, E324A-mHCN2は、一方は331位のチロシン(Y)がアラニン(A)に変異し、他方は324位のグルタミン酸残基がアラニンに変異した、二重変異を有するマウスHCN2を示す。
本明細書では、S3-S4リンカー内の欠失の結果得られるHCNの変異を、「Δ」の表示によって識別し、欠失させたアミノ酸残基を、ポリペプチド鎖内の位置番号によって示す。したがって、例えば、HCN1-Δ229-231/Δ235-237は、229〜231位および235〜237位の残基を欠失させた変異HCN1ポリペプチドを識別する。
キメラのHCNチャネルをコードする核酸、およびそれを含むベクター。
また、本発明は、本明細書に記載するキメラのHCNポリペプチドのうちのいずれかをコードする核酸も提供する。核酸は、DNA、RNAまたはそれらの混合物であることができる。DNAは、cDNAまたはゲノムDNAであることができる。また、本発明は、当該インスタントな核酸と、高いストリンジェンシーの条件(0.5×SSCまたはSSPE緩衝液、1% SDS、68℃)下で特異的にハイブリダイズすることできる核酸も提供する。さらに、本発明は、当該インスタントな核酸のうちのいずれかを含むベクターも提供する。本明細書で使用する場合、「ベクター」とは、当技術分野で既知のいずれかの核酸ベクターを意味するものとする。ベクターは、当該核酸が内部に挿入された発現ベクターを含む組換えベクターであることができる。そのようなベクターとして、これらに限定されないが、プラスミドベクター、コスミドベクターおよびウイルスベクターがあげられる。異なる実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、またはレトロウイルスベクターである。pCI、pCMS-EGFP、pHygEGFP、pEGFP-C1、ならびにCre-lox Adベクターの構築のためのシャトルプラスミドであるpDC515およびpDC516を含む、いくつかの真核生物の発現プラスミドを、本明細書に記載する構築物で使用する。しかし、本発明は、これらのプラスミドベクターおよびそれらの誘導体に限定されず、当業者に既知のその他のベクターも含むことができる。
キメラのHCNチャネルを発現する細胞。
また、本発明は、本明細書に記載する核酸または組換えベクターのうちのいずれかを含む細胞も提供し、この細胞は、当該核酸を機能的に発現し、それによって、コードされたキメラのHCNポリペプチドを発現する。好ましい実施形態では、当該細胞は、キメラのHCNポリペプチドを、ペースメーカー電流を当該細胞内で誘発するのに有効なレベルで発現する。「細胞」は、生物学的細胞、例えば、HeLa細胞、幹細胞または筋細胞、および非生物学的細胞、例えば、リン脂質ベシクル(リポソーム)またはウイルス粒子を含むものとする。好ましくは、本発明の生物学的ペースメーカーは、心筋細胞とのギャップ結合仲介伝達が可能である生物学的細胞を含む。例示的な細胞として、これらに限定されないが、幹細胞、心筋細胞、少なくとも1種の心臓のコネキシンを発現するように操作された線維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞があげられる。より好ましい実施形態では、幹細胞は、成体間葉系幹細胞または胚性幹細胞であり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。より好ましい実施形態では、幹細胞は、ヒト成体間葉系幹細胞(hMSC)またはヒト胚性幹細胞(hESC)であり、当該幹細胞は、実質的に分化できない。その他の実施形態では、当該hMSCは、(a)少なくとも9回、より好ましくは9〜12回継代されており、(b) CD29、CD44、CD54およびHLAクラスIの表面マーカーを発現し、かつ(c) CD14、CD34、CD45およびHLAクラスIIの表面マーカーを発現しない。さらなる実施形態では、当該細胞は、少なくとも1種の心臓のコネキシンをさらに発現する。さらに別の実施形態では、少なくとも1種の心臓のコネキシンは、Cx43、Cx40またはCx45である。
本発明で使用する場合、核酸を「機能的に発現する」または「発現する」とは、当該核酸がコードする機能性ポリペプチドの産生が可能であるように当該核酸を細胞またはその他の生物学的な系に導入し、それによって、当該の機能性ポリペプチドを産生することを意味するものとする。また、コードされたポリペプチド自体についても、機能的に発現するという。
本発明の異なる実施形態では、当該核酸を、ウイルスベクターを用いる感染、プラスミドによる形質転換、コスミドによる形質転換、エレクトロポレーション、リポフェクション、形質移入化学試薬を使用する形質移入、熱ショックによる形質移入またはマイクロインジェクションによって、細胞に導入する。さらなる実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、AAVベクター、またはレトロウイルスベクターである。
骨髄由来および/または循環中のhMSCの心筋梗塞後の患者の心臓への送達により、機械的性能の何らかの改善が得られ、明白な毒性はなかったとの最近の報告がある(Strauerら、2002年; Perinら、2003年)。これらおよびその他の動物実験(Orlicら、2001年)から、hMSCは、心臓合胞体内に取り込まれ、次いで、新しい心臓細胞に分化して、機械的機能を回復すると推定される。しかし、6匹の非免疫抑制成体イヌのLV心外膜下へのmHCN2形質移入hMSCの注入後の42日間にわたりhMSCの分化はみられなかった(Plotnikovら、2005年b)。さらに、少なくとも9回以上、好ましく9〜12回継代したhMSCは、実質的に分化できず、CD29、CD44、CD54およびHLAクラスIの表面マーカーを含む、hMSCの表面マーカーを保持するが、CD14、CD34、CD45およびHLAクラスIIの表面マーカーを発現しないことが示されている。2006年7月21日出願の米国仮特許出願第60/832518号を参照されたい。
薬学的組成物。
さらに、本発明は、本明細書に記載する核酸、ベクター、細胞、幹細胞、HCNポリペプチドならびにHCNポリペプチドの変異体およびキメラのうちのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物も提供する。薬学的に許容される担体は、当業者に周知であり、これらに限定されないが、0.01〜0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液、リン酸緩衝食塩水(PBS)、または0.9%食塩水があげられる。また、そのような担体として、水性または非水性の溶液、懸濁液および乳濁液があげられる。水性の担体として、水、アルコール/水溶液、乳濁液または懸濁液、食塩水、および緩衝媒体もあげられる。非水性の溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、およびオレイン酸エチル等の注射用有機エステルである。また、保存剤、ならびに例えば、抗菌剤、抗酸化剤およびキレート化剤等のその他の添加剤も、上記の担体の全てと共に含むことができる。
HCNチャネルを発現する生物学的材料を含む生物学的ペースメーカー。
また、本発明は、HCNポリペプチドまたはその変異体もしくはキメラをコードする核酸を、ペースメーカー電流を細胞内で誘発するのに有効なレベルで、機能的に発現する植込み型の細胞を含む生物学的ペースメーカー、および心臓の状態を治療するためのこれらの生物学的ペースメーカーの使用も提供する。
「生物学的ペースメーカー」とは、HCNイオンチャネル遺伝子等の遺伝子を発現するまたはその発現を起こすことができる生物学的材料を意味するものとし、この生物学的材料を心臓に導入すると、心臓の生物学的ペースメーカーの活動が誘発される。「生物学的ペースメーカーの活動」とは、生物学的材料の細胞または細胞を含む合胞体構造への導入に由来する活動電位の律動的な発生を意味するものとする。「合胞体」または「合胞体構造」とは、成分細胞間にギャップ結合仲介連続性が存在する組織を意味するものとする。そのような合胞体によって、電気信号の電気的な伝播が可能となる。「細胞内で電流を誘発する」とは、細胞に電気的な流れを引き起こさせることを意味するものとする。「イオンチャネル」とは、ポリペプチドまたはポリペプチドの組合せによって生み出された細胞膜中の経路を意味するものとし、このポリペプチドは、細胞膜に局在化し、膜を越えるイオンの移動を容易にし、それによって、膜を貫通する電気の流れを発生させる。「イオンチャネル遺伝子」とは、イオンチャネルのサブユニット、あるいはイオンチャネルの2つ以上のサブユニットまたはイオンチャネル全体をコードするポリヌクレオチドを意味するものとする。「ペースメーカー電流」とは、生物学的材料または電子工学的デバイスが発生させる律動的な電気の流れを意味するものとする。
「HCNチャネル」とは、過分極活性化カチオン電流をもたらす過分極活性化環状ヌクレオチド依存性イオンチャネルを意味するものとし、この電流は、cAMPによって直接制御され、心臓および脳におけるペースメーカーの活動に寄与する。
心臓または心臓の選択された部位において「生物学的ペースメーカー活動を誘発する」とは、心臓または心臓の部位に活動電位を律動的に発生させることを意味するものとする。HCNチャネルとして、これらに限定されないが、野生型の同種または異種のHCNチャネル、キメラのHCNチャネル、変異HCNチャネル、およびキメラ-変異HCNチャネル、すなわち1つまたは複数の部分が変異HCNチャネルに由来するキメラのHCNチャネルがあげられる。
治療上の解決法として、生物学的ペースメーカーを使用して、心臓に植え込んだ部位から起こる自発的な拍動速度を生理学的に許容される範囲内で発生させることができる。「拍動速度」とは、(1)心臓/心筋もしくはその一部の収縮速度、または細胞単位の所与の期間にわたる個々の筋細胞の1回または複数の収縮(例えば、1分あたりの収縮または拍動の回数)、あるいは(2)細胞単位の所与の期間にわたる1つまたは複数の電気的パルスの出力の速度を意味するものとする。生物学的ペースメーカーを使用して、正常に自発的であるが、発火が緩慢過ぎる心臓細胞の部位の拍動速度を増加させることも可能であり、または正常に静止状態の領域において自発的な活動を開始させることも可能である。自然の生物学的ペースメーカーによる活動電位の開始は、多数のイオンチャネルと輸送体との間のバランスに依存し、それらの多くはホルモンによって調節されていることから、生物学的ペースメーカーを生み出すにはいくつかの可能なアプローチが存在する。
このようなアプローチとして、これらに限定されないが、β2アドレナリン作動性受容体を過剰発現させて、内因性の心房の速度を増加させるアプローチ(Edelbergら、1998年; 2001年)、ドミナントネガティブKir2.1AAA構築物を、野生型Kir2.1遺伝子と一緒に発現させて、内向き整流性電流IK1を抑制するアプローチ(Miakeら、2002年; 2003年)、HCN2チャネルを過剰発現させて、過分極活性化、内向きペースメーカー電流(If)、したがって、活動電位開始速度を増加させるアプローチ(Quら、2003年; Plotnikovら、2004年; Potapovaら、2004年)、および胚性幹細胞または間葉系幹細胞から新しいペースメーカー細胞を生み出すアプローチ(Kehatら、2004年; Xueら、2005年)があげられる。これらのアプローチでは、正常な心臓の自然のペースメーカーの機能の基本的な決定要因を操作することを探索している。すなわち、交感神経性のインプットを増加させる、再分極化電流を減少させる、および/または拡張期に脱分極化電流を増加させる介入のいずれかによって、活動電位開始速度が増加するはずである(Bielら、2002年)。これらの目標を達成するために使用する方法では、ウイルス感染または裸のプラスミドの形質移入を介して遺伝子を導入する(Edelbergら、1998年; 2001年)か、自然の遺伝子の補完物を組み入れている胚性幹細胞(Kehatら、2004年)、またはペースメーカー遺伝子を保有するプラットフォームとして操作された成体間葉系幹細胞(MSC) (Potapovaら、2004年)を使用することになっている。後者のアプローチの背後にある原理を、図2に示す。また、非心臓細胞におけるペースメーカー活動電位の発生および/または非心臓細胞と心臓細胞との融合体の誘導も、最近試みられている(Choら、2005年)。
生物学的ペースメーカーの戦略を選択するにあたっては、催不整脈の可能性を考慮しなければならない。理想的なアプローチとは、望ましくない副作用を有しない自発的な活動を生み出すまたは増強するものであろう。この点では、βアドレナリン作動性受容体の上方制御による自律的な応答性の増強には、特異性の問題がある。これは、交感神経性の傾向の増加は、単一のイオン電流に特異的でないからである。過分極化内向き整流性電流IK1を減少させる、または内向きペースメーカー電流Ifを増強するのいずれかによって特異的なイオン電流を標的にすると、結果として、正味の内向き電流が、ペースメーカーの範囲の電位で増加する。しかし、IK1は、終末の再分極にも寄与し、その下方制御の結果、長期の活動電位が生じ(Miakeら、2002年)、これによって、不整脈が伴う可能性がある。対照的に、Ifは、拡張期の電位でのみ流れるので、活動電位の長さに影響しないはずである。したがって、Ifは、魅力的な分子標的であり、生物学的ペースメーカーの開発に好ましい。
HCN遺伝子の発現に基づく生物学的ペースメーカーの作製は、過去に記載されている。米国特許第6849611号および第6783979号を参照されたい。米国特許第6849611号は、対象に投与するHCNイオンチャネル含有組成物を教示しており、この組成物は、洞房結節の活動が異常な場合の活動電位を開始する部位として機能し、したがって、洞房結節の欠損に取って代わる生物学的ペースメーカーとして作用する。米国特許第6783979号は、HCNイオンチャネルをコードする核酸を含むベクターを教示しており、このベクターを心臓組織に適用して、心臓の生体組織にイオン電流を提供することができる。そのようなベクターを心臓に適切に投与すると、ペースメーカーとして作用する電流を提供することができる。また、米国特許第6783979号には、MiRP1と組み合わせたHCN遺伝子の発現に基づく生物学的ペースメーカーも記載されている。上記の刊行物の全内容が、参照によって本明細書に組み入れられている。
異なるHCNアイソフォームは、特徴的な生物物理学的特性を示す。例えば、アフリカツメガエル卵母細胞からの無細胞パッチにおいて、HCN2チャネルの定常状態の活性化曲線は、HCN1チャネルの定常状態の活性化曲線と比べ、20mVより過分極している。また、cAMPのCNBDへの結合が、HCN2の活性化曲線をより正の電位へ17mV顕著にシフトさせるが、HCN1の応答は、それよりはるかに程度が低い(4mVのシフト)。HCN2の動態が、HCN4の動態よりも好都合であり、HCN2のcAMP応答性が、HCN1のcAMP応答性よりも優れていることから、生物学的ペースメーカーの活動を発生させる実験は、HCN2に集中している。
図3は、ペースメーカー電位を開始する場合の、HCNチャネルおよびHCNチャネルが運ぶIf電流の役割を理解するための開始点を提供する。手短にいうと、第4相の脱分極は、細胞膜の過分極時に活性化された内向きナトリウム電流によって開始され、その他の電流によって継続および維持される(Bielら、2002年)。後者は、カルシウムチャネルおよびナトリウム/カルシウム交換体が運ぶ内向き電流とカリウムが運ぶ外向き電流との間のバランスを組み入れる。ペースメーカー電位の活性化は、βアドレナリン作動性のカテコールアミンによって増加し、アセチルコリンによって減少し、これはそれぞれ、Gタンパク質共役受容体およびアデニル酸シクラーゼ-cAMPセカンドメッセンジャー系を介する。
HCN1〜4のアイソフォームをコードする完全長cDNAが、異なる種からクローン化されており、哺乳動物細胞系内で発現させて機能的に特徴付けられている。例えば、マウス脳からのHCN1〜3のクローン化および機能的特徴付けを報告している、Santoroら(1998年)およびLudwigら(1998年);ヒト心臓からのHCN2およびHCN4のクローン化および機能的特徴付けを報告しているLudwigら(1999年);ウサギ心臓からのHCN4のクローン化および機能的特徴付けを報告しているIshiiら(1999年);ラット脳のHCN1〜4のクローン化を報告しているMonteggiaら(2000年);ならびにヒト脳からのHCN3のクローン化および機能的特徴付けを報告しているSteiberら(2005年)を参照されたい。
図4は、最大の一致となるようにアライメントさせた、マウス(配列番号・)、ラット(配列番号・)、ヒト(配列番号・)、ウサギ(配列番号・)、およびモルモット(部分配列;配列番号・)からのHCN1ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。多様な哺乳動物種からのHCN2、HCN3およびHCN4についての同様なアライメントを、図7、8および9のそれぞれに示す。ある種における異なるHCNアイソフォーム間のアミノ酸同一性は、約45〜60%であり、違いは、主としてN末端およびC末端の領域において配列同一性が低いことによる。例えば、mHCN1〜3の一次配列は、約60%の全アミノ酸同一性を有し(Ludwigら、1999年)、hHCN3は、その他のhHCNと46〜56%の相同性を有する(Stieberら、2005年)。それに比べ、顕著に高い程度の相同性が、異なる種の同族のアイソフォーム間で観察されている。例えば、Ludwigら(1999年)は、hHCN2のcDNAクローンは、mHCN2のクローンと、94%の全配列同一性を有すると報告しており; Stieberら(2005年)は、hHCN3は、mHCN3と94.5%のアミノ酸相同性を有すると報告しており; HCNチャネルに関する総説で、Bielら(2002年)は、個々のHCNチャネルの型の一次配列は、哺乳動物において90%以上の配列同一性を示すことを開示している。
表1は、Stieberら(2005年)、補充表S2から改作したものであるが、hHCN3のその他のhHCNとのアミノ酸相同性、およびhHCN3のmHCN3とのアミノ酸相同性を示す。特に目立つのは、膜貫通コアドメインおよび環状ヌクレオチド結合ドメインにおいて、hHCN3配列とmHCN3配列との相同性が100%に近いことである。hHCN3とmHCN3とは、N末端領域およびC末端領域では、それぞれ81%および91%相同であり、これらは、膜貫通領域およびCNDB領域における相同性の程度よりは低いが、それにしてもhHCN3のN末端とその他のhHCNのアイソフォームのN末端領域との間の22〜35%の相同性、C末端領域の17〜27%の相同性、およびhHCN3とその他のhHCNのアイソフォームとの間の46〜56%の全体的な相同性よりは、相当に高い。
上記の相同性のデータは、本発明において、異なる種からの同族のHCNのアイソフォームを効果的に代用することができることを示唆している。例えば、hHCN2をmHCN2の代わりに、またはhHCN2の部分を、mHCN2の対応する部分の代わりに用いることができる。したがって、本発明では、1つの種、例えば、マウスからのHCN2またはHCN2の部分の使用を含む生物学的ペースメーカーまたは方法は、その他の種からのHCN2またはHCN2の対応する部分の使用を包含し、それらの種は、好ましくは、哺乳動物の種であり、これらに限定されないが、ヒト、ラット、イヌ、ウサギまたはモルモットがあげられる。同様に、マウスのHCN1、HCN3もしくはHCN4またはそれらの部分の使用を含む生物学的ペースメーカーまたは方法は、それぞれ、その他の種、好ましくは、その他の哺乳動物の種からのHCN1、HCN3もしくはHCN4またはそれらの対応する部分の使用を包含する。
より一般的には、特定のHCNのアイソフォームの使用を含む生物学的ペースメーカーまたは方法は、そのようなアイソフォームと、少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の全体的な相同性を示すHCNチャネルの使用を包含する。HCNのアイソフォームの部分を含む本発明の実施形態では、特定のHCNのアイソフォームのN末端部分の使用は、そのようなアイソフォームのN末端と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の相同性を示すHCNチャネルのN末端部分の使用を包含する。その上、特定のHCNのアイソフォームのC末端部分の使用は、そのようなアイソフォームのC末端と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の相同性を示すHCNチャネルのC末端部分の使用を包含する。
ペプチド配列間の「相同性」パーセントとは、最大の一致となるようにアライメントさせた場合、ペプチドの等価な位置におけるアミノ酸残基が同一であるまたは機能的に類似する、パーセントで表す程度を意味するものとする。機能的に類似するアミノ酸の例として、グルタミンおよびアスパラギン;セリンおよびスレオニン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンがあげられる。ペプチド配列間の「アミノ酸同一性」パーセントまたは「配列同一性」パーセントとは、最大の一致となるようにアライメントさせた場合、ペプチドの等価な位置におけるアミノ酸残基が同一である、パーセントで表す程度を意味するものとする。ペプチドの場合、相同性パーセントは、通常、配列同一性パーセントよりも高い。核酸の場合、「相同性」パーセントは、「配列同一性」パーセントと同じことを意味するものとし、最大の一致となるようにアライメントさせた場合、核酸の等価な位置におけるヌクレオチドが同一である、パーセントで表す程度である。
本発明の目的のためには、相同性を有する2つの配列、すなわち、所望のポリヌクレオチドと標的配列とは、6×SSC、0.5% SDS、5×デンハート液および100gの非特異的キャリアーDNAのハイブリダイゼーション溶液中で、それらが二本鎖複合体を形成して、ハイブリダイズすることができる。全内容が参照によって本明細書に組み入れられている、Ausubelら、section 2.9、supplement 27 (1994)を参照されたい。そのような配列は、「中等度のストリンジェンシー」でハイブリダイズすることでき、中等度のストリンジェンシーとは、6×SSC、0.5% SDS、5×デンハート液および100μgの非特異的キャリアーDNAのハイブリダイゼーション溶液中、温度60℃と定義される。「高いストリンジェンシー」のハイブリダイゼーションのためには、温度を68℃まで上げる。中等度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション反応に続き、ヌクレオチドを、0.05% SDSを加えた2×SSCの溶液中、室温で5回洗浄し、次いで、0.1% SDSを加えた0.1×SSCを用いて、60℃で1時間、数回洗浄する。高いストリンジェンシーでは、洗浄温度を、典型的には、約68℃の温度まで上げる。ハイブリダイズしたヌクレオチドは、10,000cpm/ngの特異的な放射活性を有する放射標識プローブ1ngを使用して検出されたヌクレオチドであることができ、この場合、ハイブリダイズしたヌクレオチドは、-70℃、72時間以下のX線フィルムへの暴露後、明確に目に見える。
比較のための配列アライメントの方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適アライメントは、SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math. 2:482頁(1981)の局所的な相同性アルゴリズムによって; NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol. 48:443頁(1970)の相同性アライメントアルゴリズムによって; PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. 85:2444頁(1988)の類似性を検索する方法によって;ならびにこれらのアルゴリズムをコンピュータ処理の実行によって行うことができる。後者の例として、これらに限定されないが、Intelligenetics (Mountain View、カリフォルニア州)製のPC/Geneプログラム中のCLUSTAL;ならびにGenetics Computer Group (GCG) (575 Science Dr.、Madison、ウィスコンシン州、米国)製のWisconsin Genetics Software Package中のGAP、BESTFIT、BLAST、FASTAおよびTFASTAがあげられる。CLUSTALプログラムは、HigginsおよびSharp、Gene 73: 237〜244頁(1988); Higgins およびSharp、CABIOS 5: 151〜153頁(1989); Corpetら、Nucleic Acids Research 16: 10881〜90頁(1988); Huangら、「Computer Applications in the Biosciences 8」、155〜65頁(1992);ならびにPearsonら、「Methods in Molecular Biology 24」、307〜331頁(1994)によって、十分記載されている。
データベース類似性検索のために使用することができるBLASTファミリーのプログラムには、ヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチドのデータベース配列と比較するBLASTN; ヌクレオチドのクエリー配列をタンパク質のデータベース配列と比較するBLSTX;タンパク質のクエリー配列をタンパク質のデータベース配列と比較するBLASTP;タンパク質のクエリー配列をヌクレオチドのデータベース配列と比較するTBLASTN;およびヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチドのデータベース配列と比較するTBLASTXが含まれる。「Current Protocols in Molecular Biology、Chapter 19」、Ausubelら編、 Greene Publishing and Wiley-Interscience、New York (1995); Altschulら、J. Mol. Biol., 215:403〜410頁(1990); およびAltschulら、Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402頁(1997)を参照されたい。
BLAST解析を行うためのソフトウエアは、例えば、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から一般に公開されている。このアルゴリズムでは、まず、クエリー配列中の長さWの短い単語を同定することによって高いスコアを示す配列の対(HSP)を同定することになる。これらの単語は、データベース配列中の同一の長さの単語とアライメントさせた場合、マッチするか、何らかの正の値の閾値スコアTを満足するかのいずれかである。Tは、(neighborhood word score thresholdと呼ばれる。これらの初めのneighborhood wordのヒットは、それらを含有するより長いHSPを見つける検索を開始するための種として働く。次いで、単語ヒットを、累積アライメントスコアが増加することが可能な間は、各配列に沿って両方の方向へ伸長させる。ヌクレオチド配列の場合は、パラメーターM (マッチする残基の対に対するリワードスコア;常に>0)、およびパラメーターN (ミスマッチする残基に対するペナルティスコア;常に<0)を使用して、累積スコアを計算する。アミノ酸配列の場合は、スコア行列を使用して、累積スコアを計算する。累積アライメントスコアが、最大達成値から量Xだけ減少した場合; 1つまたは複数の負のスコアを示す残基のアライメントの蓄積により、累積スコアが、ゼロ以下になった場合;あるいはどちらかの配列の末端に達した場合に、各方向への単語ヒットの伸長を停止する。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、TおよびXによって、アライメントの感度および速度が決まる。(ヌクレオチド配列の場合の) BLASTNプログラムは、デフォルトとして、単語長(W) 11、期待値(E) 10、カットオフ100、M = 5、N = -4および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、単語長(W) 3、期待値(E) 10およびBLOSUM62スコアリング行列を使用する(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915頁(1989)を参照)。
配列同一性パーセントの計算に加えて、また、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、KarlinおよびAltschul、Proc. Nat'l. Acad Sci. USA 90:5873〜5877頁(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の1つの尺度として、最小和確率(smallest sum probability) (P(N))があり、これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間のマッチが偶然に生じる確率を示す。
BLAST検索は、タンパク質を、ランダム配列として設計できると想定している。しかし、多くの実際のタンパク質は、非ランダム配列の領域を含み、それらは、ホモポリマー配列、短い反復または1種もしくは複数のアミノ酸を多く含む領域である場合がある。無関係なタンパク質間でも、そのような低複雑度の領域のアライメントが可能であるが、そのようなタンパク質は、その他の領域では全く異なる。そのような低複雑度のアライメントを減少させるために、低複雑度をフィルターする多数のプログラムを利用することができる。例えば、SEG (Wooten およびFederhen、Comput. Chem.、17:149〜163頁(1993))およびXNU (ClaverieおよびStates、Comput. Chem.、17:191〜201頁(1993))の低複雑度フィルターを単独または組み合わせて利用することができる。
配列の複数のアライメントを、デフォルトパラメーター(GAP PENALTY = 10、GAP LENGTH PENALTY = 10)を用いて、アライメントのCLUSTAL法を使用して行うことができる(HigginsおよびSharp、CABIOS. 5:151〜153頁(1989))。CLUSTAL法を使用する対でのアライメントためのデフォルトパラメーターは、KTUPLE 1、GAP PENALTY = 3、WINDOW = 5および DIAGONALS SAVED = 5である。
キメラのHCNチャネルを発現する細胞を含む生物学的ペースメーカー。
上記で開示したように、本発明は、多様なキメラのHCNポリペプチドを、ペースメーカー電流を細胞内で誘発するのに有効なレベルで、機能的に発現する細胞を提供する。そのような細胞が、生物学的ペースメーカーを構成し、特定のキメラの使用が、生物学的ペースメーカーに有利な特徴を与える(実施例6を参照)。
変異HCNチャネルを発現する細胞を含む生物学的ペースメーカー。
また、本発明は、変異HCNポリペプチドを、ペースメーカー電流を細胞内で誘発するのに有効なレベルで、機能的に発現する細胞を含む生物学的ペースメーカーも提供する。
イオンチャネルの電位活性化について知られていることの大部分は、電位開口型K+ (Kv)チャネルの研究からである。HCNチャネルは、Kvチャネルの場合の脱分極の代わりに、膜の過分極に応答して開くが、HCNチャネルは、Kvチャネルに非常に類似した膜貫通トポロジーを有する。これらのイオンチャネルの全てが、4つのサブユニットを有し、各サブユニットは、6つの膜貫通セグメントであるS1〜S6を有する。正に荷電したS4ドメインが、主要な電位センサーを形成し、S5およびS6が、これら2つを連結するS5-S6リンカーと一緒になって、イオン透過経路を含有するポアドメイン、およびイオンの流れを制御するゲートを形成する(Larsson、2002年)。活性化ゲートは、S6へリックスのC末端の端の交差によって形成される(Decherら、2004年)。ゲートの活性化および不活性化、選択的イオン透過性ならびにイオンチャネルの電位感知の機構に関する物理学的基盤の理解において、多くの進展が、生物物理学的な実験および最近記載された細菌のK+チャネルの構造に基づいてもたらされている。しかし、電位の変化がこれらのチャネルを開閉させる分子機構、ならびに電位センサーとゲートとの間の機構については、依然として理解されていない部分が多い。特に、どのようにして共役機構の結果、KvチャネルとHCNチャネルとでは、活性化が逆の電位に依存するようになるのかについては不明のままである。
電位センサーの動きがHCNチャネルのポアの開閉と共役するには、S4、S5およびS6の膜貫通ドメインの全体的な再編成が関わり、特異的なアミノ酸の相互作用の必要はないと思われていた。しかし、最近の研究から、物理的な共役は、S4-S5リンカーのアミノ酸とS6ドメインのアミノ酸との間の特異的な相互作用を含む可能性があることが示唆されている(Chenら、2001年a; Decherら、2004年)。これらの研究は、S4-S5リンカーが、HCNチャネルの過分極活性化による開口を仲介する共役機構の重要な成分であることを示唆している。
電位の感知およびHCNチャネルの活性化を、変異によって変化させることができる。例えば、HCN2のS4-S5リンカーのアラニンスキャニング変異誘発によって、3つのアミノ酸が、正常なゲーティングのために、特に重大な意味をもつことが明らかになった(Chenら、2001年a)。Y331またはR339の変異、および程度はより低いがE324の変異が、チャネルの閉鎖を混乱させた。S4ドメインの塩基性の残基の変異(R318Q)が、チャネルの開口を阻止した。逆に、R318QおよびY331Sの二重変異を有するチャネルは、恒常的に開口した。
Decherら(2004年)は、S6のC末端の端およびS6をCNBDに接続するC-リンカーのアラニンスキャニング変異誘発を使用して、変異によってチャネルの閉鎖を妨害して、正常なゲーティングのために重要である5つの残基を同定した。さらなる変異解析によって、S4-S5リンカーのR339とC-リンカーのD443との間の特異的な静電気的相互作用が、閉鎖状態を安定化させ、したがって、電位感知とHCNチャネルのゲーティングの活性化との共役に関与することが示唆された。また、S4-S5リンカーの残基とS6ドメインのC末端の端の残基との間の相互作用も、閉鎖状態のhERGチャネルおよびether-a-go-goチャネルを安定化するために重大な意味をもつことが示されている(Ferrerら、2006年)。これらの変異研究は、S4電位センサー、電位感知とポアの開閉との共役に結びつけられているS4-S5リンカー、ポアを形成するS5、S6およびS5-S6リンカー、C-リンカー、ならびにCNBDにおける変異が、HCNチャネルの活性に影響する点で特に重要である可能性があることを示している。
また、S3-S4リンカー(HCN1の残基229EKGMDSEVY237)も、HCNチャネルの表現型の活性化に影響する点で重要であることが示されている(Tsangら、2004年)。具体的には、S3-S4リンカーの完全な欠失(Δ229-237)、ならびにΔ229-234、Δ232-234およびΔ232-237の欠失によって、正常な電流の活動が消滅した。逆に、Δ229-231、Δ233-237、Δ234-237、Δ235-237、Δ229-231/Δ233-237、Δ229-231/Δ234-237およびΔ229-231/Δ235-237の全てから、強力な過分極活性化内向き電流が得られたことから、S3-S4リンカーの長さを操作することによって、HCNを発現する内因性の細胞および操作した細胞の電気的な活動を微調整する目的で、HCNのゲーティングを必要に応じて改変する柔軟な方法を得ることができることが示唆される。最近、洞不全症候群のブタの左心房でmHCN1-Δ235-237 (HCN1-ΔΔΔ)を発現させると、形質移入したin situブタ心臓で、安定な、カテコールアミン応答性の生物学的ペースメーカー活動を、再現性よく誘発することが示された(Tseら、2006年)。この生物学的ペースメーカーは、生理的な心拍数を示し、心筋を高い信頼性でペーシングすることができ、埋め込んだ二室性の電子工学的ペースメーカーによる電子工学的なペーシングを十分に減少させた(Tseら、2006年)。
したがって、本発明は、生物学的ペースメーカーを提供し、当該生物学的ペースメーカーは、変異HCNイオンチャネルを、ペースメーカー電流を細胞内で誘発するのに有効なレベルで、機能的に発現する植込み型の細胞を含む。好ましい実施形態では、変異HCNチャネルは、改善された特徴を提供し、それらの特徴として、野生型HCNチャネルと比較して、これらに限定されないが、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現レベル、向上した安定性、増強されたcAMP応答性および増強された神経体液性応答があげられる。本発明の特定の実施形態では、変異HCNチャネルは、S4電位センサー、S4-S5リンカー、S5、S6、S5-S6リンカー、ならびに/またはCリンカーおよびCNBDにおいて少なくとも1つの変異を保有し、これらの変異の結果、上記で議論した特徴のうちの1つまたは複数が得られる。その他の実施形態では、HCN変異体は、E324A-HCN2、Y331A-HCN2、R339A-HCN2またはY331A,E324A-HCN2である。好ましい実施形態では、変異HCNチャネルは、E324A-HCN2である。
上記の変異に加えて、異なるHCNアイソフォームにおける多くの変異が報告されている。これらとして、電位の感知および活性化におけるE324残基、Y331残基およびR339残基の役割をより詳細に調査するために、Chenら(2001年a)が作製したHCN2におけるR318Q、W323A、E324A、E324D、E324K、E324Q、F327A、T330AおよびY331A、Y331D、Y331F、Y331K、D332A、M338A、R339A、R339C、R339D、R339EならびにR339Qがあげられる。また、Chenら(2001年b)は、mHCN1におけるR538EおよびR591Eの変異も報告しており; Tsangら(2004年)は、mHCN1におけるG231AおよびM232Aを報告しており; Vemanaら (2004年)は、mHCN2におけるR247C、T249C、K250C、I251C、L252C、S253C、L254C、L258C、R259C、L260C、S261C、C318S、S338Cを報告しており; MacriおよびAccili (2004年)は、mHCN2におけるS306Q、Y331DおよびG404Sを報告しており;かつDecherら(2004年)は、mHCN2におけるY331A、Y331D、Y331S、R331FD、R339E、R339Q、I439A、S441A、S441T、D443A、D443C、D443E、D443K、D443N、D443R、R447A、R447D、R447E、R447Y、Y449A、Y449D、Y449F、Y449G、Y449W、Y453A、Y453D、Y453F、Y453L、Y453W、P466Q、P466V、Y476A、Y477A および481Aを報告している。上記の刊行物の全ての全内容が、参照によって本明細書に組み入れられている。上記に列挙した報告されている変異のうちの特定のものが、単独または組合せで、生物学的ペースメーカーを生み出す場合に、HCNチャネルに有利な特徴を与えることができる。本明細書に開示する発明は、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現および/または向上した安定性、増強されたcAMP応答性ならびに増強された神経体液性応答を提供することによって等、チャネルのペースメーカー活動を改善させる、単独または組合せでのHCNチャネルの全ての変異を包含する。
本明細書に開示する実験では、より迅速な動態およびより正の活性化の関係の両方を示すと報告されている(Chenら、2001年a) mHCN2におけるE324A変異を探索した。これらの特徴の両方は、ペースメーキングを増強するはずである。筋細胞、アフリカツメガエル卵母細胞およびin situイヌ心臓において発現させた場合、HCN2と比較したE324Aのペースメーカー活動の詳細を、実施例1で提供する。
HCNチャネルおよびMiRP1の発現を含む生物学的ペースメーカー
発現する電流の大きさを増加させる、および/またはその活性化の動態を速めることによって、HCNチャネルの生物学的ペースメーカー活動を増強する別のアプローチの場合、HCN2をそのベータサブユニットであるMiRP1と同時発現させる。実施例3に記載するように、筋細胞の培養物にHCN2アデノウイルス、およびHAタグを付けたMiRP1を含む第2のアデノウイルスを感染させた結果、電流の大きさの増加、ならびに活性化および非活性化の動態の加速の高まりが顕著であった。また、全内容が参照によって本明細書に組み入れられている米国特許第6783979号、およびQuら(2004年)も参照されたい。多くのMiRP1の変異が報告されており(例えば、Mitchesonら、2000年; Luら、2003年; Piperら、2005年を参照)、これらの変異のうちの特定のもの、またはそれらの組合せが、生物学的ペースメーカーを生み出すために使用するHCNチャネルが発現する電流の大きさを増加させ、かつ電流の活性化の動態を高めるのに有利となる可能性がある。本明細書に開示する発明は、MiRP1におけるそのような変異またはそれらの組合せの全てを包含する。
生物学的ペースメーカーを形成するためのHCNチャネル遺伝子の細胞への送達。
生物学的ペースメーカー中でイオンチャネルおよび心臓のコネキシンを発現させるために使用する遺伝子またはその変異体もしくはキメラを、心臓に送達する必要がある。DNAを細胞内に導入するための多くの方法が、当技術分野で知られており、これらのうち、DNAを心臓に送達する少なくとも3つの広範なアプローチが存在する。すなわち、裸のDNA、ウイルスベクターおよび細胞の使用であり、細胞の場合、hMSCまたは胚性幹細胞ESCがあげられる。現在の実験では、hMSCおよびESCが利用されているが、HCN遺伝子および心臓のコネキシン遺伝子を発現する細胞型、または発現するように作製することができる細胞型であればいずれであっても、細胞の送達システムとして役立つことができるであろう。ペースメーカー遺伝子の送達プラットフォームとして使用することができるであろう別の細胞型の例として、これらに限定されないが、いずれかの継代後期の幹細胞、心筋細胞、コネキシンを発現するように操作された線維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞があげられる。
遺伝子送達の方法はそれぞれ、特有の困難を有する。裸のDNAは、取り込みが不十分であり、短期間の効果しかない。ウイルスベクターは、はるかにより効率的であるが、感染の恐れのほとんどない複製欠損性アデノウイルスを使用すると、ペースメーカー機能の改善が一過性でしかない可能性が高まり、さらに、炎症応答の恐れも高まり、レトロウイルスおよびその他のより持続性のウイルスベクターを使用すると、発癌性および感染性の危険が伴う。
例えば、hESCまたはhMSCを使用する細胞治療の利用は、ウイルスベクターの使用を避ける1つの方法である。いくつかの研究室が、心臓の系譜に沿って分化することができ、心臓の律動の細胞に基づく制御を提供することができると思われるESCの使用を探索している。これらの細胞の利点の中には、これらの細胞が機能性のギャップ結合を生成し、自発的な律動を発生させるという利点がある(Rosenら、2004年)。しかし、そのようなアプローチは、依然として初期の段階にあり、細胞の免疫原生、適切な細胞系譜の同定、幹細胞がペースメーカー細胞以外の系に分化する可能性、および腫瘍形成の恐れを含む、問題を提起している(Rosenら、2004年)。別法として、骨髄に由来する、遺伝子操作された成体hMSCを、イオンチャネルを心臓に送達するためのプラットフォームとして利用すれば(Potapovaら、2004年)、アレルギー反応は回避されるが、これには、導入遺伝子の安全で持続性の発現が依然として求められている。ここでは、細胞を、分子/遺伝子情報を隣接する心筋に送達することができると思われる生物学的に不活性のベクターとして設定することになるであろう。以下に記載する実験は、hMSCがペースメーカーイオンチャネルを心臓に送達するための魅力的なプラットフォームを提供することを示している。ペースメーカー遺伝子材料のin vitroにおけるパッケージ、およびペースメーカーイオンチャネルの心臓内への送達を可能にすることができるその他の細胞型として、これらに限定されないが、いずれかの継代後期の幹細胞、コネキシンを発現する線維芽細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、および内皮細胞があげられる。
エレクトロポレーションが、Ifをin vivoにおいて送達する目的で過剰発現させるために、hMSC等の細胞を遺伝子操作するための好ましいin vitroにおける方法である。エレクトロポレーションは、細胞を高電圧の短いパルスに暴露し、細胞膜のポアを一過性に開口させて、DNAおよびタンパク質等の巨大分子を細胞内へ進入させることができる手法である。また、エレクトロポレーションをin vivoにおいて適用して、核酸およびタンパク質を、ラット、マウスおよびウサギを含む、生きている動物の筋肉細胞へ送達できることも実証されており(米国特許第6110161号を参照)、この方法を使用して、ニワトリの胎生期の心臓に(Harrisonら、1998年)、および移植前の哺乳動物の心筋に(Wangら、2001年c)、直接DNAを送達している。
心臓への送達のために、遺伝子を細胞内に導入するその他の方法として、例えば、アデノウイルス、AAVおよびレンチウイルスを使用するウイルス形質移入、リポソーム仲介形質移入(リポフェクション)、形質移入化学試薬を使用する形質移入、熱ショック形質移入またはマイクロインジェクションがあげられる。AAVは、アデノウイルスに随伴する小型のパルボウイルスであり、それ自体では複製することができず、複製するためには、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスとの同時感染が必要である。ヘルパーウイルスの非存在下では、AAVは、潜伏期に入り、その間にこのウイルスは宿主細胞のゲノムに安定に取り込まれる。AAVに挿入した遺伝子は、長期間宿主細胞のゲノム中で持続することができることから、この潜伏期が故に、AAVは、約4.4kbまでの遺伝子の導入に関わる特定の遺伝子治療への適用に魅力がある(PfeiferおよびVerma、2001年)。レンチウイルスは、レトロウイルスファミリーのメンバーであり、興味深い別法の可能性を提供する(AmadoおよびChen、1999年; Trono、2002年)。アデノウイルスとは異なり、エレクトロポレーションおよびレンチウイルスベクターの使用により、宿主免疫応答を惹起することなく、導入遺伝子を持続して発現させることができる。
安全性は、特にウイルスベクターに関しては、実証すべき要因である。ウイルスベクターまたは細胞による不整脈の発生および腫瘍の形成がないことを、感染および遠部での生着がないことと共に実証する必要がある。安全性および効力が実証されたならば、対費用効果も考慮しなければならない。たとえ発現および送達の問題を克服したとしても、細胞に基づくペースメーカーを長期に持続させるには、非自己性の細胞を利用する場合には、拒絶がないことが要求される。この点では、hMSCは、自己性の源から入手することができるであろう。しかし、これらの細胞は免疫特権を有することを示唆する証拠(Liechtyら、2000年)から、自己性の源を求める必要性が減少する可能性がある。この特権は、長期わたっては試験されていないが、hMSCのイヌ心臓への注入6週間後では、細胞性の拒絶も、液性の拒絶も、明らかには認められなかった(Plotnikovら、2005年b)。胚性幹細胞の場合には、拒絶を考慮する必要が残っている。既製の細胞を、植え込むために準備することができることから、hMSCの免疫特権を有する状況に基づくアロジェネイックな(同種間の)解決法が、より好都合なモデルを提供するであろう。
本明細書に記載するペースメーカーのシステムおよび方法の異なる実施形態では、ウイルスベクターを用いる感染、プラスミドによる形質転換、コスミドによる形質転換、エレクトロポレーション、リポフェクション、形質移入化学試薬を使用する形質移入、熱ショックによる形質移入またはマイクロインジェクションによって、核酸を心臓の細胞内に直接導入する。その他の実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、AAVベクター、またはレトロウイルスベクターである。さらにその他の実施形態では、心臓上または心臓中に、注入またはカテーテル法によって投与する。さらなる実施形態では、心臓の心房、心室の壁、心室の脚または近位の左心室(LV)の伝導系の上または中に、ベクターを投与する。
特定の実施形態では、細胞内で電流を誘発するように核酸を細胞に導入し、当該細胞は心臓に投与される。好ましくは、当該細胞は、心臓と機能性の合胞体を形成する、幹細胞、心筋細胞、少なくとも1種の心臓のコネキシンを発現するように操作された線維芽細胞または骨格筋細胞、あるいは内皮細胞である。特定の実施形態では、当該幹細胞は、実質的に分化できないMSCまたはESCである。好ましい実施形態では、当該幹細胞は、実質的に分化できないhMSCまたはhESCである。さらなる実施形態では、実質的に分化できない成体hMSCは、少なくとも9回継代されており、いくつかの実施形態では、好ましくは、9から12回継代されている。
エレクトロポレーション、これらに限定されないが、アデノウイルス、AAVまたはレンチウイルスを含む、ウイルスを用いる感染、プラスミドによる形質転換、コスミドによる形質転換、リポフェクション、形質移入化学試薬を使用する形質移入、熱ショックによる形質移入またはマイクロインジェクションによって、核酸を幹細胞内に導入することができる。
導入遺伝子の安全で持続性の発現が達成された場合、細胞に基づく生物学的ペースメーカーには、部位特異的な送達または局所送達も要求される。局所送達を達成するためのいくつかの方法、例えば、カテーテルおよび針の使用、ならびに/またはマトリックスおよび「接着剤」の上での増殖が実行可能である。いかなるアプローチを選択するにしても、送達された細胞が、標的部位から分散してはならない。そのような分散は、心臓内およびその他の臓器に望まれない電気的な作用を導入する恐れがある。6匹の成体イヌの左心室心外膜下へ最大約106個のHCN2形質移入hMSCを注入した予備研究において、hMSCの集団は、一貫して、注入部位付近に認められたが、遠隔地には認められなかった(Plotnikovら、2005年b)ことは注目に価する。
即時ペースメーカーのシステムおよび方法の種々の実施形態では、当該幹細胞を、心臓上または心臓中に、注入、カテーテル法、外科的挿入または外科的付着によって投与する。送達部位は、最適な活性化および血行動態の応答を与えるように、患者の病態に基づいて投与時に決定する。したがって、選ぶ部位は、洞房(SA)結節、バッハマン束、房室接合部、ヒス束、左の脚、右の脚、プルキンエ線維、左または右の心房筋、あるいは左または右の心室筋が考えられ、適切な部位は、当業者には周知である。また、心臓で発現させるイオンチャネルの型を、送達部位に応じて変化させることもできる。その上、異なる送達部位では、イオンチャネル遺伝子の発現の異なるレベルが望ましい場合がある。そのような発現の異なるレベルを、発現を推進する異なるプロモーターを使用することによって得ることができる。
別の実施形態では、当該細胞を、直接心臓上または心臓中に、注入またはカテーテル法によって局所投与する。さらなる実施形態では、当該細胞を、冠血管内または心臓に近位の血管内に、注入またはカテーテル法によって全身投与する。さらに別の実施形態では、当該細胞を、心臓の心房または心室のある範囲の上または中に注入する。その他の実施形態では、当該細胞を、心臓の左心房、心室の壁、心室の脚または近位の左心室の伝導系の上または中に注入する。
生物学的ペースメーカーおよび電子工学的ペースメーカーを含むタンデム型システム
本発明は、本明細書に記載する生物学的ペースメーカーのうちのいずれかと電子工学的ペースメーカーとの組合せを含む、心臓の律動障害を治療するためのタンデム型ペースメーカーシステムを包含する。米国仮特許出願第60/701312号、2005年7月21日出願および第60/781723号、2006年3月14日出願、ならびに米国特許出願第11/490997号、2006年7月21日出願は、とりわけ、HCN遺伝子またはそのキメラもしくは変異体の発現に基づく生物学的ペースメーカーが、電子工学的ペースメーカーと併行してとぎれなく動作して、心拍数が選択された最低拍動速度を下回るのを阻止することを示す実験データを提供している。また、タンデム型のシステムは、送達する電子工学的な拍動の全数を節約し、電子工学的ペースメーカー単独の場合に比較して、より高く、より生理的で、かつカテコールアミノ応答性の心拍数も提供する。米国仮特許出願第60/701312号、2005年7月21日出願および第60/781723号、2006年3月14日出願、ならびに米国特許出願第11/490997号、2006年7月21日出願の全内容は、参照によって本明細書に組み入れられている。
電子工学的ペースメーカーは、当技術分野で知られている。例示的な電子工学的ペースメーカーが、米国特許第5983138号、第5318597号および第5376106号; Hayes (2000年);ならびにMosesら(2000年)に記載されており、それら全ての全内容が、参照によって本明細書に組み入れられている。電子工学的ペースメーカーがすでに対象に適用されている場合もあれば、電子工学的ペースメーカーを、対象に、同時または生物学的ペースメーカーを留置した後に適用することもできる。電子工学的ペースメーカーの適切な部位は、熟練した医師には周知であり、対象の状態および本発明の生物学的ペースメーカーの留置によって決まる。例えば、対象が、機能する洞房結節を有するが、洞房結節と房室結節との間にブロックを有する場合、生物学的ペースメーカーを房室結節に投与するのが好ましいであろう。好ましい挿入部位は、これらに限定されないが、対象の心臓のバッハマン束、洞房結節、房室接合部、ヒス束、左または右の脚、プルキンエ線維、左または右の心房筋、あるいは左または右の心室筋である。
本発明の好ましい実施形態では、電子工学的ペースメーカーは、「必要」に応じてペースメーカー信号を出力する、すなわち、生物学的に発生させた拍動を感知し、生物学的ペースメーカーが発火できない場合および/またはバイパスブリッジが設定時間間隔を上回って電流を伝導する場合に、電気的に放電するようにプログラムされる。この時点で、電子工学的なペースメーカーは、生物学的ペースメーカーが活動を再開するまでペースメーカーの機能を引き継ぐ。したがって、いつ電子工学的ペースメーカーが、ペースメーカー信号を出力するかを決定する必要がある。最新式のペースメーカーは、心拍数が閾値レベルを下回る時点を検出する能力を有し、これに応答して、電子工学的ペースメーカー信号を出力することになっている。閾値レベルは、一定の数であってもよいが、好ましくは、身体活動または情動の状況等の患者の活動に応じて変化する。例えば、患者が安静にしているまたは軽度の活動に従事している場合、患者のベースライン心拍数は、60〜80回/分(bpm)(患者毎に異なる)であろう。ベースライン心拍数は、患者の年齢および身体の状態に応じて変化し、スポーツをする患者は典型的にはより低いベースライン心拍数を有する。患者の実際の心拍数(いずれかの生物学的ペースメーカーによって誘発された心拍数を含む)が、特定の閾値ベースライン心拍数、特定の差異または当業者に既知のその他の様式を下回る場合、ペースメーカー信号を出力するように電子工学的ペースメーカーをプログラムすることができる。患者が安静にしている場合、ベースライン心拍数は、安静時の心拍数である。ベースライン心拍数は、患者の身体活動のレベルまたは情動の状況に応じて変化するであろう。例えば、ベースライン心拍数が80bpmである場合、実際の心拍数が約64bpm (すなわち、80bpmの80%)であると検出されたときに、ペースメーカー信号を出力するように、電子工学的ペースメーカーを設定することができる。
また、運動時に、生物学的な構成成分が停止した場合、より高い心拍数で介入し、次いで、ベースラインの心拍数まで徐々に遅らせることによって、介入するように電子工学的な構成成分をプログラムすることもできる。例えば、心拍数が、身体活動または情動の状況によって、120bpmまで増加する場合、閾値を96bpm (120bpmの80%)まで増加させることができる。この治療法の生物学的な部分は、生物学的ペースメーカーの特徴である自律的な応答性および心拍数の範囲を利用し、かつ安全策として機能するベースラインの心拍数も利用され、これは、電子工学的ペースメーカーの特徴である。前回の間隔よりもX% (例えば、20%)長い間隔で休止する場合には常に、ペースメーカー信号を出力するように、電子工学的ペースメーカーを設定することができる。これは、前回の間隔が、電子工学的ペースメーカーの信号によるものでなく、何らかの最小値(例えば、50bpm)より大きい速度を有する間隔であった場合に限られる。
したがって、本ペースメーカーシステムのある実施形態では、電子工学的ペースメーカーは、心臓の拍動速度を感知し、心臓の拍動速度が特定したレベルを下回る場合に、ペースメーカー信号を出力する。さらなる実施形態では、特定したレベルは、基準の時間間隔後に心臓が経験する拍動速度の特定した割合である。さらに別の実施形態では、基準の時間間隔は、特定した持続期間を有する直前の期間である。
本明細書に記載するように、イヌの研究において、植え込んだ生物学的ぺースメーカーを、電子工学的ペースメーカーと併行して試験した。電子工学的応需型ぺースメーカーを、あらかじめ特定した回避速度に設定し、電子工学的に開始させた心拍対生物学的に開始させた心拍の発生頻度をモニターした。このようにして、電子工学的な構成成分は、タンデム型ペースメーカーのユニットの生物学的な構成成分の効力を測定する。そのようなタンデム型の生物学的-電子工学的ペースメーカーには、第1相および第2相臨床治験で要求される患者保護の基準を満たすことだけでなく、単なる電子工学的ペースメーカーを上回る治療上の利点も提供することが期待される。すなわち、タンデム型のシステムの生物学的な構成成分は、患者の運動および情動の状況の変化が要求する範囲にわたり心拍数を変化させるように機能し、電子工学的な構成成分は、生物学的な構成成分が部分的に停止したまたは完全に停止したのいずれの場合にも、安全策を提供する。その上、電子工学的のみのペースメーカーが時の経過と共に通常送達するであろう電子工学的な拍動の発生頻度を減少させることによって、タンデム型のユニットは、電子工学的な構成成分の電池寿命を延長させるであろう。このことは、電源パックが必要とする交換の間隔を大いに延長させることができるであろう。したがって、タンデム型ペースメーカーシステムの構成成分は、安全で生理的な心臓の律動制御の機会を最大化するために、相乗的に動作する。
タンデム型ペースメーカーシステムを用いる治療方法。
タンデム型ペースメーカーの概念は、臨床適用に関して、いくつかの課題を提示する。第1に、このシステムは、意図的に重複性であり、2つの完全に無関係な不全のモードを有することになるであろう。2つの独立した植込み/埋込み部位および独立したエネルギー源は、(例えば、心筋梗塞による)捕捉不全の事象では、安全機構を提供するであろう。第2に、電子工学的ペースメーカーは、ベースラインの安全策のみならず、臨床医の精査に向けて全心拍の継続的な記録も提供し、したがって、患者の進展する生理およびタンデム型ペースメーカーシステムの性能に関する洞察を提供するであろう。第3に、大部分の心臓のペーシングを行うように、生物学的ペースメーカーを設計するので、電子工学的ペースメーカーの寿命延長を、劇的に改善することができるであろう。また、電子工学的ペースメーカーの大きさをさらに小さくすることができる一方で、寿命延長を維持することが可能であろう。最後に、タンデム型システムの生物学的な構成成分は、真に自律的な応答性を提供すると思われ、これは、50年以上にわたる電子工学的ペースメーカーの研究開発が達成できなかった目標である。
また、本発明は、心臓の律動障害に罹患した対象を治療する方法も提供し、この方法は、本発明のタンデム型ペースメーカーシステムを対象に投与するステップを含む。生物学的ペースメーカーを対象の心臓に提供して、有効な生物学的ペースメーカー電流を発生させる。また、心臓の律動障害を治療するために、電子工学的ペースメーカーも対象の心臓に提供して、生物学的ペースメーカーと併行して働かせる。電子工学的ペースメーカーを、生物学的ペースメーカーの前に、生物学的ペースメーカーと同時にまたは生物学的ペースメーカーの後に提供することができる。電子工学的ペースメーカーおよび生物学的ペースメーカーを、心臓の律動障害を補う/治療するのに最も適した心臓の範囲に提供する。例えば、生物学的ペースメーカーを、これらに限定されないが、対象の心臓のバッハマン束、洞房結節、房室接合部、ヒス束、左または右の心房筋、左または右の心室筋、左または右の脚、あるいはプルキンエ線維に投与することができる。生物学的ペースメーカーは、上記に記載する生物学的ペースメーカーであり、好ましくは、心臓のβアドレナリン作動性の応答性を増強し、外向きカリウム電流IK1を減少させ、かつ/または内向き電流Ifを増加させる。
電子工学的ペースメーカーは、上記に記載するように、生物学的ペースメーカーと併行して働く。例えば、電子工学的ペースメーカーは、対象の心臓の拍動速度を感知し、心臓の拍動速度が選択した心臓の拍動速度を下回る場合に、ペースメーカー信号を出力するようにプログラムされる。その他の実施形態では、選択した拍動速度は、基準の時間間隔後に心臓が経験する拍動速度の選択した割合である。その他の実施形態では、基準の時間間隔は、選択した持続期間を有する直前の期間である。したがって、タンデム型のシステムでは、生物学的ペースメーカーが、好ましくは、有効なペースメーキングの信号を発生させるので、電子工学的ペースメーカーは、ペースメーキングの信号をそれほど頻繁に「発火」または送る必要がないことから、電子工学的ペースメーカーの電池の寿命は、保存または延長される。
心臓の律動障害は、心臓の拍動速度に影響し、心拍数を正常で健常な心拍数から変化させるいずれかの障害である。例えば、障害は、これらに限定されないが、洞房結節の機能障害、洞性徐脈、辺縁性ペースメーカー活動、洞不全症候群、心不全、頻脈性不整脈、洞房結節リエントリー頻脈、異所性病巣からの心房性頻脈、心房粗動、心房細動または徐脈性不整脈である場合がある。そのような場合、生物学的ペースメーカーを、好ましくは、対象の心臓の左または右の心房筋、洞房結節あるいは房室接合部に投与する。
心臓の律動障害を治療するための本方法の特定の実施形態では、生物学的ペースメーカーおよび/または電子工学的ペースメーカーと対立しないように、心臓に予め存在するペースメーカー活動の源を切除する。
さらに、本発明は、心臓の律動障害の発生を、そのような障害を起こしやすい対象において抑制する方法も提供し、この方法は、(a) (1) HCNイオンチャネルまたはその変異体もしくはキメラをコードする核酸、(2) MiRP1ベータサブユニットまたはその変異体をコードする核酸、ならびに(3) (i) HCNイオンチャネルまたはその変異体もしくはキメラおよび(ii) MiRP1ベータサブユニットまたはその変異体の両方をコードする核酸のうちの少なくとも1つを、心臓のペースメーカー活動を誘発するのに有効なレベルで、心臓において機能的に発現させることによって、対象の心臓において生物学的ペースメーカー活動を誘発するステップと; (b)電子工学的ペースメーカーを心臓に埋め込むステップとを含み、それによって、対象における当該障害の発生を抑制する。特定の実施形態では、本発明の生物学的ペースメーカーを、対象に提供する。
また、本発明は、生物学的ペースメーカー活動を誘発することができる電流を細胞内で誘発する方法も提供し、この方法は、本明細書に記載する生物学的ペースメーカーのうちのいずれかを心臓に投与するステップと、それによって、HCNイオンチャネルまたはその変異体もしくはキメラ、および/あるいはMiRP1ベータサブユニットまたはその変異体を、生物学的ペースメーカー活動を誘発することができる電流を細胞内で誘発するのに有効なレベルで、心臓において機能的に発現させるステップとを含み、それによって、そのような電流を細胞内で誘発する。
また、本明細書に開示する発明は、対象の心拍数を増加させる方法も提供し、この方法は、本明細書に記載する生物学的ペースメーカーのうちのいずれかを心臓に投与するステップと、それによって、HCNイオンチャネルまたはその変異体もしくはキメラ、および/あるいはMiRP1ベータサブユニットまたはその変異体を、細胞の活性化の時定数を減少させるのに有効なレベルで、対象の心臓において発現させるステップとを含み、それによって、対象の心拍数を増加させる。
また、先行方法において上記で同定したステップを、細胞を収縮させる方法、細胞を活性化するのに必要な時間を短縮する方法、および細胞の膜電位を変化させる方法に使用することもできる。
その他の方法。
また、先行方法のステップを使用して、対象の心臓に埋め込んだ電子工学的ペースメーカーの電池の寿命を保存したり、対象の心臓に埋め込んだ電子工学的ペースメーカーの心臓のペーシングの機能を増強したりすることもできる。
さらに、本発明は、心臓の信号を、感知能力を有する対象の心臓に埋め込んだ電子工学的ペースメーカーを用いてモニターする方法も提供し、この方法は、(a)心臓中または心臓上の部位を選択するステップと、(b)心臓の自然なペースメーカー活動を増強するように、生物学的ペースメーカー活動を選択した部位で本明細書に記載する方法のうちのいずれかによって誘発するステップと、(c)心臓の信号を、電子工学的ペースメーカーを用いてモニターするステップと、(d)心臓の信号を保存するステップとを含む。
また、本発明は、感知能力および要求に応じてペーシングする能力を有する対象の心臓に埋め込んだ電子工学的ペースメーカーの心臓のペーシングの機能を増強する方法も提供し、この方法は、(a)心臓中または心臓上の部位を選択するステップと、(b)心臓の自然なペースメーカー活動を増強するように、生物学的ペースメーカー活動を選択した部位で本明細書に記載する方法のうちのいずれかによって誘発するステップと、(c)心臓の信号を、電子工学的ペースメーカーを用いてモニターするステップと、(d)いつ心臓の信号に基づいて心臓をペーシングする必要があるかを決定するステップと、(e)生物学的ペースメーカー活動と併行する自然なペースメーカー活動が心臓を捕獲できない場合に、選択的に心臓を、電子工学的ペースメーカーを用いて刺激するステップとを含む。
また、本発明は、心臓の律動障害に罹患した対象を治療する方法も提供し、この方法は、本明細書に記載するHCNポリペプチドを発現する細胞のうちのいずれかを対象の心臓のある領域に投与するステップを含み、心臓の当該領域におけるHCNポリペプチドの発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象を治療する。
また、本発明は、心臓の律動障害の発生を、そのような障害を起こしやすい対象において抑制する方法も提供し、この方法は、本明細書に記載するHCNポリペプチドを発現する細胞のうちのいずれかを対象の心臓のある領域に投与するステップを含み、心臓におけるHCNポリペプチドの発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象における当該障害の発生を抑制する。即時方法の好ましい実施形態では、HCNポリペプチドは、キメラのHCNポリペプチドである。
本明細書で使用する場合、障害に罹患した対象を「治療する」とは、対象に、障害および/またはその症状の減弱、寛解または後退を経験させることを意味するものとする。一実施形態では、障害および/またはその症状の再発を阻止する。ある好ましい実施形態では、対象は、障害および/またはその症状から治癒する。
「抑制する」とは、障害の発生の可能性を低下させる、または障害の発生を遅らせる、あるいは障害の発生を完全に阻止することのいずれかを意味するものとする。ある好ましい実施形態では、障害の発生を抑制するとは、その発生を完全に阻止することを意味する。
障害の「発生を抑制する」とは、障害の発生の可能性を低下させる、または障害の発生を遅らせる、あるいは障害の発生を完全に阻止することのいずれかを意味するものとする。ある好ましい実施形態では、障害の発生を抑制するとは、その発生を完全に阻止することを意味する。
「投与する」とは、当業者に既知の多様な方法および送達システムのいずれかを使用して果たされるまたは行われる様式で送達することを意味するものとする。投与を、例えば、心臓周囲から、心臓内へ、心外膜下へ、経内心膜的に、インプラントを介して、カテーテルを介して、冠内へ、内心膜へ、静脈内へ、筋肉内へ、胸腔検査鏡を介して、皮下へ、非経口的に、局所的に、経口的に、腹腔内へ、リンパ節内へ、病巣内へ、硬膜外へ、またはin vivoエレクトロポレーションによって行うことができる。また、投与を、例えば、1回、複数回、および/または1回もしくは複数回の長期にわたり行うこともできる。
「対象」とは、いずれかの動物または人工的に改変した動物を意味するものとする。動物として、これらに限定されないが、ヒト、非ヒトの霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、フェレット、マウス、ラットおよびモルモット等のげっ歯類、ならびにニワトリおよびシチメンチョウ等の鳥類があげられる。人工的に改変した動物として、これに限定されないが、ヒトの免疫系を有するSCIDマウスがあげられる。ある好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。
心臓の律動障害を治療する、または心臓の律動障害の発生を抑制するための本発明に記載する方法のいずれかの実施形態では、心臓に予め存在するペースメーカー活動の源を、例えば、手術によって、または化学的に切除する。別の実施形態では、心臓に投与した当該細胞は、心臓と機能性の合胞体を形成する。その他の実施形態では、当該細胞を、対象の心臓の当該領域に、注入、カテーテル法、外科的挿入または外科的付着によって投与する。さらにその他の実施形態では、当該細胞を、直接心臓上または心臓中に、注入またはカテーテル法によって局所投与する。さらなる実施形態では、当該細胞を、冠血管またはその他の心臓に近位の血管のうちの少なくとも1つに、注入またはカテーテル法によって全身投与する。さらに別の実施形態では、当該細胞を、心臓の心房または心室のある領域に投与する。
即時方法の特定の実施形態では、当該障害は、洞房結節の機能障害、洞性徐脈、辺縁性ペースメーカー機能、洞不全症候群、頻脈性不整脈、洞房結節リエントリー頻脈、異所性病巣からの心房性頻脈、心房粗動、心房細動、徐脈性不整脈または心不全であり、当該細胞を、対象の心臓の左または右の心房筋、洞房結節、あるいは房室接合部に投与する。その他の実施形態では、当該障害は、伝導ブロック、完全房室ブロック、不完全房室ブロックまたは脚ブロックであり、当該細胞を、対象の心臓のある領域に投与し、その結果、心臓の損傷した伝導を補う。この領域は、心室の中隔壁または自由壁、房室接合部、あるいは心室の脚であることができる。
さらに、本発明は、心臓の律動障害に罹患した対象を治療する方法も提供し、この方法は、キメラのHCNポリペプチドが心臓において機能的に発現するように、本明細書に記載するHCNポリペプチドを発現させる核酸のうちのいずれかを、対象の心臓の細胞に形質移入するステップを含み、当該ポリペプチドの発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象を治療する。
その上さらに、本発明は、心臓の律動障害の発生を、そのような障害を起こしやすい対象において抑制する方法も提供し、この方法は、キメラのHCNポリペプチドが心臓において機能的に発現するように、本明細書に記載するHCNポリペプチドを発現させる核酸のうちのいずれかを、対象の心臓の細胞に形質移入するステップを含み、当該ポリペプチドの発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象における当該障害の発生を抑制する。本発明に開示する治療方法のいずれかの特定の実施形態では、心臓に予め存在するペースメーカー活動の源を、例えば、手術によって、または化学的に切除する。
その他の実施形態では、心臓の細胞は、心臓の心房または心室に存在する。
特定の実施形態では、当該障害は、洞房結節の機能障害、洞性徐脈、辺縁性ペースメーカー機能、洞不全症候群、頻脈性不整脈、洞房結節リエントリー頻脈、異所性病巣からの心房性頻脈、心房粗動、心房細動、徐脈性不整脈または心不全であり、対象の心臓の右または左の心房筋、洞房結節、あるいは房室接合部の細胞に形質移入する。その他の実施形態では、当該障害は、伝導ブロック、完全房室ブロック、不完全房室ブロックまたは脚ブロックであり、対象の心臓のある領域の細胞に形質移入し、その結果、心臓の損傷した伝導を補う。この領域は、心室の中隔壁または自由壁、房室接合部、あるいは心室の脚であることができる。
また、本発明は、本明細書に開示するキメラのHCNポリペプチドのうちのいずれかを産生する方法も提供し、この方法は、(a)組換え核酸を、HCNポリペプチドのアミノ末端部分をコードする核酸をHCNポリペプチドの膜貫通部分をコードする核酸に連結し、当該の膜貫通部分をコードする核酸をHCNポリペプチドのカルボキシ末端部分をコードする核酸に連結することによって作製するステップであって、HCNポリペプチドのコード化部分は、2種以上のHCNアイソフォームまたはその変異体に由来するステップと、(b)当該組換え核酸を細胞内で機能的に発現させるステップとを含み、その結果、キメラのHCNポリペプチドを産生する。
さらに、本発明は、インスタントなキメラのHCNポリペプチドのうちのいずれかを作製する方法も提供し、この方法は、HCNチャネルのアミノ末端部分、HCNチャネルの膜貫通部分、およびヒトHCNチャネルのカルボキシ末端が、この順で隣接するようにスプライスするステップを含み、少なくとも1つの部分は、あるHCNアイソフォームに由来し、これは、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来するHCNアイソフォームとは異なる。
電子工学的ペースメーカーの主要な欠点は、運動および情動の要求に対する応答が不十分であることである。本明細書に開示する心臓の律動障害を治療する、または心臓の律動障害の発生を抑制する方法の追加の利点は、当該方法が、心臓のβアドレナリン作動性の応答性を増強することを含むことにある。また、これらの方法は、外向きカリウム電流IK1を減少させること、および内向き電流Ifを増加させることも含む。
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提示し、いかなる場合においても、実施例に続く特許請求の範囲に記載する本発明を制限する意図はなく、そのように解釈してはならない。これらの実施例は、組換え核酸ベクターの構築、宿主細胞へのそのような組換えベクターの形質移入、および形質移入細胞における遺伝子の機能的な発現に使用する方法等の当業者に周知の実験方法の詳細な説明を含まない。そのような従来法の詳細な説明は、全内容が参照によって本明細書に組み入れられているSambrookら(1989年)を含む、多数の刊行物に提供されている。
培養細胞におけるHCNチャネルの発現および電気生理学的特徴付け。
心筋細胞およびアフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞の単離および培養。
コロンビア大学のInstitutional Animal Care and use Committeeのプロトコールに従って、成体ラットは、噴門切除術前にケタミン-キシラジンで麻酔し、新生仔ラットは、断頭した。新生仔ラットの心室筋細胞の培養物を、過去の記載(ProtasおよびRobinson、1999年)に従って調製した。手短にいうと、1〜2日齢のウィスターラットを安楽死させ、心臓を手早く取り出し、心室を標準的なトリプシン処理の手順を使用して分離した。筋細胞を収集し、線維芽細胞の増殖を減少させるためにあらかじめ平板培養した後、まず、血清含有培地で培養し(以下に記載するプラスミドを用いる形質移入の場合を除く)、次いで、24時間後、無血清培地(SFM)中、37℃、5% CO2下、インキュベートした。活動電位の研究を、フィブロネクチンでコートした9×22mmのカバーガラス上に直接播種した4日齢の単層培養物上で行った。電位固定実験のために、4〜6日齢の単層培養物を、0.25%トリプシンに短時間(2〜3分)曝すことによって再懸濁し、次いで、フィブロネクチンでコートしたカバーガラス上に再播種して、2〜8時間以内に研究した。
Kuznetsovら(1995年)によって記載された手順を使用して、新鮮な成体心室筋細胞を単離、調製した。これは、心房を切り取る前に、コラゲナーゼのランゲンドルフ灌流を必要とした。残った組織を刻み、追加のコラゲナーゼ溶液中で分離させた。単離した筋細胞をSFM中に懸濁させ、次いで、0.5〜1×103細胞/mm2で、9×22mmのカバーガラス上に播種した。2〜3時間後、筋細胞がカバーガラスに付着してから、アデノウイルス感染の手順を開始した(以下を参照)。
イヌ筋細胞の調製のために、どちらかの性別の成体イヌを、承認されたプロトコールを使用して、ペントバルビタールナトリウムの注射(80mg/kg体重)によって堵殺した。心筋細胞を、過去の記載(Yuら、2000年)に従って、イヌ心室から単離した。マウス心筋細胞について記載された手順(Zhouら、2000年)を修正して、イヌ心筋細胞の初代培養の方法とした。心筋細胞を、マウスのラミニン(10μg/ml)であらかじめコートしたカバーガラス上で、2.5%ウシ胎仔血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(PS)を含有する基礎培地(MEM)中に0.5〜1×104細胞/cm2で播種した。5% CO2インキュベーター中、37℃で1時間培養した後、培地を、FBSを含有しないMEMに交換した。24時間後に幹細胞を添加し、共培養物を、5%FBSを有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中に維持した。全ての実験で、Cell Tracker Green (Molecular Probes製、Eugene、オレゴン州)を使用して、同時培養したhMSCをHeLa細胞と区別した(Valiunasら、2000年)。
卵母細胞を、成熟した雌のアフリカツメガエルから、過去に記載された(Yuら、2000年)承認済みプロトコールに従って調製した。
心筋細胞および卵母細胞における野生型および変異HCNチャネルの発現。
マウスHCN2 (mHCN2、GenBank AJ225122)またはマウスHCN4 (mHCN4、GenBankに寄託中)をコードするcDNAを、pCI哺乳動物発現ベクター(Promega製、Madison、ウィスコンシン州)中にサブクローニングした。得られたプラスミド(pCI-mHCN2またはpCI-mHCN4)を、指示に従って、新生仔ラットの心室筋細胞への形質移入のために使用した。成功したDNA導入の視覚マーカーとしての高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)の遺伝子を発現する別のプラスミド(pEGFP-CI; Clontech製、Palo Alto、カリフォルニア州)を、全ての形質移入実験に含めた。形質移入のために、まず、2μgのpCI-mHCNおよび1pgのpEGFP-CIを、10μlのリポフェクチン(Gibco Life Technologies製、Rockville、メリーランド州)を含有する200μlのSFM中、室温で45分間インキュベートした。次いで、混合物を、0.8mlのSFM中に懸濁した106個の細胞を含有する35mmのペトリ皿に添加した。CO2インキュベーター中、37℃で一晩インキュベートした後、プラスミドおよびリポフェクチンを含有する培地を捨て、2mlの新鮮なSFMで皿を再び満たした。パッチクランプ実験を、形質移入3〜5日後に蛍光顕微鏡法による検出が可能なレベルのGFPを示す再懸濁細胞上で行った。
発現効率向上のために、mHCN2のアデノウイルス構築物を調製した。遺伝子の送達および導入の手順は、過去に出版された方法(Ngら、2000年; Heら、1998年)に従った。CMVプロモーターの下流にmHCN2 DNAを含むDNA断片(EcoRI制限部位およびXbaI制限部位の間)をプラスミドpTR-mHCN2から得(SantoroおよびTibbs、1999年)、シャトルベクターpDC516 (AdMaxTM; Microbix Biosystems製、Toronto、カナダ)中にサブクローニングした。得られたpDC516-mHCN2シャトルプラスミドを、35.5kbのE1欠失AdゲノムプラスミドpBHGΔE1,3FLP (AdMaxTM)と共に、E1補完HEK293細胞内に同時形質移入させた。これらの2つのベクターの組換えが成功した結果、アデノウイルスmHCN2 (AdmHCN)の産生に至り、次いで、これを、プラーク精製し、HEK293細胞中で増幅し、CsClバンド形成後に収集したところ、少なくとも1011ffu/mlのタイターに達した。
また、マウスのmE324Aのアデノウイルス構築物(AdmE324A)も、過去の記載(Quら、2001年)に従って調製した。mE324A点変異を、mHCN2配列に、QuickChange (登録商標) XL Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene製、La Jolla、カリフォルニア州)を用いて導入し、pDC515シャトルベクター(AdMax (商標)、Microbix Biosystems製)中にパッケージして、pDC515mE324Aを生み出した。次いで、pDC515mE324Aを、pBHGfrtΔE1,3FLPと共に、E1補完HEK293細胞内に同時形質移入させた。次いで、アデノウイルス構築物AdmE324Aを収集し、CsClで精製した。以前の研究(Quら、2003年)と一貫させるために、in vivoでの注入のための試料を調製する際に、全容量700μl中で、3×1010ffuの各アデノウイルスを等量のGFP発現アデノウイルス(AdGFP)と混合した。
ラット心室筋細胞のAdHCN2感染を、単離した細胞をカバーグラス上に播種した2〜3時間後に行った。培地を皿(35mm)から除去し、AdHCN2を含有する0.2〜0.3ml/皿の接種材料を添加した。m.o.i. (multiplicity of infection:感染効率--ウイルス単位の細胞に対する比)の値は、15〜100であった。接種材料を、20分毎に皿を穏やかに傾けることによって、細胞全体に分散させ、その結果、細胞はウイルス粒子に均一に曝された。2時間の吸着期間の間、皿をCO2インキュベーター中、37℃で保ち、次いで、接種材料を捨て、皿を洗浄し、適切な培地で再び満たした。皿を、インキュベーター中に24〜48時間さらに保った後、電気生理学的実験を行った。
新生仔の心室筋細胞のアデノウイルス感染を、最初の播種4日後に、細胞の単層培養物上で行った。細胞を、ウイルスを含有する混合物(m.o.i.: 20、250μlの培地中)に2時間曝し、2回すすぎ、SFM中、37℃、5% CO2下、24〜48時間インキュベートした後、上記に記載するように再懸濁し、電気生理学的研究に供した。以前の実験では、AdGFPを利用したが、AdmHCN2にin vitroで曝した細胞の>90%が電流を発現することが見出された(Quら、2001年)ことから、その後の実験では、感染した細胞の選択を促進する目的での、細胞のAdGFPとの同時感染は行わなかった。
アフリカツメガエル卵母細胞におけるHCNの発現のために、卵母細胞に、マウス野生型mHCN2プラスミドおよびマウス変異mHCN2 (E324A)プラスミドから作製した5ngのcRNAを注入した。注入卵母細胞を、18℃で24〜48時間インキュベートした後、電気生理学的解析に供した。
培養心筋細胞および卵母細胞における電気生理学的測定。
電位および電流信号を、パッチクランプ増幅器(Axopatch 200)を使用して記録した。電流信号を、16ビットA/D変換器(Digidata 1322A、Axon Instruments製、Union City、カリフォルニア州)を用いてデジタル化し、パーソナルコンピュータに保存した。データの取得および解析を、pCLAMP 8ソフトウエア(Axon Instruments製)を用いて行った。カーブフィッティングおよび統計解析を、SigmaPlotおよびSigmaStat (SPSS製、Chicago、イリノイ州)をそれぞれ使用して行った。
全細胞パッチクランプ法を利用して、培養筋細胞からのmHCN2電流を記録した。実験を、35℃で灌流した細胞上で行った。外部溶液は、以下をmM単位で含有し、pH 7.4であった: NaCl、140; NaOH、2.3; MgCl2、1; KCl、10; CaCl2、1; HEPES、5;グルコース、10。MnCl2 (2 mM)およびBaCl2 (4 mM)を添加して、その他の電流を遮断した。ピペット溶液は、以下をmM単位で含有し、pH 7.2であった:アスパラギン酸、130; KOH、146; NaCl、10; CaCl2、2; EGTA-KOH、5; Mg-ATP、2; HEPES-KOH、10。
HCNの活性化曲線を測定するために、標準的な2段階プロトコールを利用した。mHCN2に関しては-25から-135mVまでの過分極化段階、およびmE324Aに関しては-5または-15から-135mVまでの過分極化段階を、-10mVの保持電位から適用し、これには、(-125また-135mVまでの)テール電流段階が続いた。mHCN2チャネルの場合、過分極化電位が低いほど、試験段階の持続期間はより長く、全ての電位で、定常状態の活性化により密接に近づいた。テール電流対試験電位の規準化したプロットは、ボルツマン関数に当てはまり、次いで、フィッティングから活性化の最大半量の電位(V1/2)および勾配因数(s)を定義した。活性化の動態は、同一の記録から決定し、非活性化の動態は、-135mVまでの前パルスによって完全な活性化を達成した後に、各試験電位で記録した記録から決定した。次いで、時定数を、活性化または非活性化の電流の記録の早期の時間経過を単一指数関数に当てはめることによって求めた。初期の遅延も、後期の緩慢な活性化または非活性化の相のいずれをも、無視した(Quら、2001年; Atomareら、2001年)。電流密度を、試験電位の終わりに測定し、細胞膜の静電容量に対して規準化した、電流の振幅の時間依存性の成分の値として表した。液間電位差に関しては、記録を補正しなかった。液間電位差は、これらの条件下で9.8mVであると過去に決定された(Quら、2001年)。
アフリカツメガエル卵母細胞における測定のために、卵母細胞を、2微小電極電位固定法を使用して電位固定した。細胞外記録溶液(OR2)は、以下をmM単位で含有した: NaCl、80; KCl、2; MgCl2、1;およびNa-HEPES、5 (pH 7.6)。発現したWt mHCN2の定常状態の活性化を記録するために、電流を、10mVずつ増加させる-30mVと-160mVとの間の2秒間の過分極化パルス、次いで、+15mVまでの1秒の脱分極化パルスによって誘発した。保持電位は、-30mVであった。mHCN2 (E324A)の場合、電流を、10mVずつ増加させる+20mVと-130mVとの間の3秒間の過分極化パルス、次いで、+50mVまでの1秒の脱分極化パルスによって誘発した。保持電位は、+20mVであった。野生型(Wt) mHCN2の場合の電流/電位の関係を構築するために、細胞を-30mVで保持し、電流を、活性化を飽和させる-140mVまでの2秒の過分極化電位段階、次いで、10mVずつ増加させる-80mVと+50mVとの間の2秒の脱分極化電位段階によって誘発した。mHCN2 (E324A)の場合、細胞を+20mVで保持し、電流を、活性化を飽和させる-110mVまでの1.5秒の過分極化電位段階、次いで、テール電流を記録するための10mVずつ増加させる-80mVと+50mVとの間の1.5秒の脱分極化電位段階によって誘発した。Wt mHCN2の場合、電流の振幅を記録するために、電流を、-30mVの保持電位から-120mVまでの3秒の過分極化電位パルスを適用することによって誘発した。mHCN2 (E324A)の場合、電流を、+20mVの保持電位から-120mVまでの3秒の過分極化電位パルスを適用することによって誘発した。
データを平均±SEMとして示す。実験データを、適宜、スチューデントt検定またはイェーツ補正を伴うカイ二乗検定を使用して比較した。比較するに当たって、同一の培養からの対応する細胞を使用し、各比較に少なくとも3つの別々の培養物からのデータをプールした。
心筋細胞におけるmHCN2およびmE324Aによって誘発されたペースメーカー電流。
過去の実験によって、培養中の新生仔ラット筋細胞におけるHCN2の過剰発現が、拍動速度を増加させるペースメーカー電流を誘発すること、ならびにHCN2のペースメーカー遺伝子の変異および/または適切なアクセサリーチャネルサブユニットの追加が、発現した電流の特徴を変化させ、これには拍動速度のさらなる増強が期待されるであろうことが示されている(米国特許第6849611号; Quら、2001年; Quら、2004年)。また、HCN2を発現するAdによる感染は、単層培養物の同調的な拍動の自発的な拍動速度を顕著に増加させた(米国特許第6849611号; Quら、2001年)。また、筋細胞培養物に、HCN2アデノウイルスおよびGFPタグを付けたMiRP1またはHAタグを付けたMiRP1のいずれかを保有する第2のウイルスを感染させた。MiRP1は、HCN2のベータサブユニットである。その結果、電流の大きさの増加、ならびに活性化および非活性化の動態の加速の高まりが顕著であった(Quら、2004年)。
本明細書に記載する全細胞電位固定実験では、mHCN2を発現する筋細胞およびmE324Aを発現する筋細胞の両方は、過分極化電位に応答して内向き電流を引き起こした。-10mVの保持電位からの-25から-125mVまでの範囲に及ぶ試験電位で求めた代表的な規準化した電流の記録を、図10AおよびBに示す。挿入図の拡大した電流から、mE324Aチャネルの活性化の閾値も、mHCN2チャネルの活性化の閾値も、負の値を示すが、前者の絶対値は、後者の絶対値よりも小さいことが明らかである。
mHCN2とmE324Aとの間の活性化の電位依存性の差は、図10Cに示す電流-電位の関係の平均からより明らかである。曲線は、上記に記載したように、テール電流から求めた。個々の活性化曲線はそれぞれ、ボルツマンの式に当てはまり、全細胞から計算した中間点(V1/2)および勾配因数(s)を、平均して統計的に比較した。mHCN2を発現する細胞(n = 14)およびmE324Aを発現する細胞(n = 16)の平均パラメーターはそれぞれ、V1/2 = -66.1±1.5mVおよび-46.9±1.2mV (P < 0.05)、ならびにs = 10.7±0.5mVおよび9.6±0.4mV (p > 0.05)であった。したがって、卵母細胞において過去に得られたデータ(Chenら、2001年)と一致し、本明細書で確認されるように(図12〜15を参照)、mHCN2とmE324Aの両方の構築物を新生仔の筋細胞で発現させた場合、mE324A変異の結果、mHCN2の活性化曲線と比較して、活性化曲線が正にシフトした。
mE324Aチャネルの活性化動態は、mHCN2の活性化動態より迅速なように見える(図10AおよびBの挿入図)。この差を実証するために、活性化および非活性化の時定数を、上記に記載したように、異なる電位で測定して平均した(図10D)。これらのデータは、mE324Aチャネルに関して観察されたより迅速な活性化の動態が、ゲーティングの動態の電位依存性の正のシフトによって生じたことを示している。活性化および非活性化の両方の電位依存性が、正にシフトし、その結果、非活性化を測定した正の電位において、mE324Aの場合の非活性化がmHCN2の場合より緩慢となった。さらに、このシフトは、電流-電位の関係のシフトに相関する。実際に、動態-電位の関係の相対ピークは、過去に決定されたV1/2の値と一致した。
活性化の関係および動態における正のシフトの結果として、mE324Aの場合、mHCN2と比較して、より多くの電流が、心臓サイクルのより早期に通過するようになることが期待されるであろう。しかし、生物学的ペースメーカーとして有益であるためには、また、自律的な応答性を保存することも必要である。この点を評価するために、mHCN2およびmE324Aの活性化曲線を、ピペット溶液中のcAMPの非存在下および存在下で比較した(図11)。両方のチャネルは、図11の簡単な説明で詳述するように、飽和する細胞内cAMPの存在に応答した。
また、変異チャネルおよび野生型が電流を発現したか否かについても検討した。6つの対応する細胞培養物において、mE324A電流を発現する筋細胞の割合は、mHCN2を発現する割合より顕著に低かった(それぞれ、93個の細胞の36.6%対47個の細胞の74.5%、P < 0.05)。さらに、電流を発現した細胞において、(-135mVで測定した) mE324Aの電流密度は、mHCN2の電流密度より約2.5倍小さかった(それぞれ、21.0±3.5pA/pF、n = 12対53.5±8.7pA/pF、n = 10、P < 0.05)。
アフリカツメガエル卵母細胞におけるmHCN2およびmE324Aによって誘発された電流。
図12は、起源を違えて発現させた電流の活性化の特性および動態を示す。卵母細胞において、mHCN2は、mE324Aより35mV負に活性化する。このより正の活性化には、mE324Aに関する活性化の動態の電位依存性のシフトおよび活性化の中間点におけるより迅速な動態の両方が伴う。mHCN2およびmE324Aの両方は、8-Br-cAMP (1mM)の適用に応答して、活性化が正にシフトした(図13)。mHCN2の場合、cAMPは、Vhを約8mVシフトさせた(Vhの値は、コントロールで-92.7mV±1.1mV、およびcAMPで-84.9mV±0.7mV (n = 6、 P < 0.01)であり、対応する勾配(s)の値は、13.9mV±1.0mVおよび9.5mV±0.6mV (n = 6、 p > 0.05)であった)。mE324Aの場合、cAMPは、Vhを約7mV正にシフトさせた(Vhの値は、コントロールで-57.3mV±1.6mV、およびcAMPで-48.9 mV±1.8mV (n = 9、 P < 0.01)であり、対応する勾配(s)の値は、15.2mV±1.3mV、および19.7mV±0.1mV (n = 9、p > 0.05)であった)。
mHCN2およびmE324Aの両方は、5mM Cs+で遮断される内向き電流を発生させ、逆転電位は、-40mV付近であった(図14)。最後に、単一の電位パルスを飽和(-120mV)付近で適用して、mHCN2およびmE324Aの発現レベルを比較した。HCN2が誘発した電流は、912.7±63.7nA、n = 9であり、E324Aが誘発した電流は、579.8±18.2nA、n = 9 (P < 0.01)であった。したがって、mE324Aを発現する卵母細胞の場合、発現が顕著に減少した(図15を参照)。
新生仔および成体の心室筋細胞の細胞環境がHCNチャネルのゲーティングおよび興奮性に及ぼす効果。
HCNアイソフォームの異なる細胞型における電位依存性。
現在、HCN遺伝子ファミリーの4種のメンバーが知られている(Santoroら、1997年; Ludwigら、1998年; Santoroら、1998年)。これらのうちの3種(HCN1、HCN2およびHCN4)が、心臓に存在するが、これら3種のアイソフォームの相対的なメッセージのレベルは、領域および齢によって変化する(Shiら、1999年; Ishiiら、1999年; Ludwigら、1999年)。Ifがより小さな絶対値の負の電位で活性化する洞房結節およびプルキンエ線維は、主にHCN1およびHCN4を含有する。心室は、HCN2およびHCN4を含有し、HCN2のHCN4に対するmRNAの比は、成体の方が新生仔の心室より大きい。このことから、HCN2が、生得的に負で活性化するアイソフォームであり、その相対的な存在量によって、心臓の異なる領域または異なる齢での活性化の閾値が決まることが示唆される。しかし、起源を違えた発現研究は、この単純な説明を支持しない。実験室間で幾ばくかの変動があるものの、HCN2およびHCN4を哺乳動物の細胞系で発現させた場合、活性化電位の差は、10mV未満であった(Ludwigら、1999年; Moosmangら、2001年; Altomareら、2001年)。したがって、発現した特異的なHCNのアイソフォーム自体に固有の特徴が、成体心臓の領域の面においても、心室の発達の面においても、自然のIfの多様な電位依存性に対する十分な説明にはなっていないようである。
それに代わる仮説が、特定のアイソフォームを発現させる細胞環境が電位依存性に影響を及ぼすというものである。細胞環境として、ベータサブユニット、細胞骨格系の要素、リン酸化酵素、脱リン酸化酵素またはその他の要因の有無をあげることができるであろう。これらの予想される違いが原因で、起源を違えた発現系ではなく、筋細胞で発現させると、HCN2および/またはHCN4の電位依存性が異なると思われる。同じ理由で、これらのアイソフォームの1種または両方は、筋細胞の成熟しつつある状態に感受性があり、新生仔において発現させた場合、成体の心室細胞と比較して、異なる電位依存性を示す可能性がある。ここに、これらの問題に取り組んだデータを提示する。
培養細胞におけるHCNアイソフォームの発現。
成体および新生仔のラット心室筋細胞を、実施例1の記載に従って、単離、培養した。また、マウスのHCN2およびHCN4を、実施例1の記載に従って、pCIおよびアデノウイルスベクターにサブクローニングし、これら培養筋細胞中で発現させた。
電気生理学的測定。
全細胞電位固定法を利用して、自然のIf、または発現させたIHCN2もしくはIHCN4を記録した。活動電位を、再び全細胞パッチ電極を使用して、電流クランプモードで記録した。実験は、35℃で灌流した細胞上で行った。細胞外溶液は、以下をmM単位で含有し、pH 7.4であった: NaCl、140; NaOH、2.3; MgCl2、1; KCl、5.4; CaCl2、1.0; HEPES、5;グルコース、10。自然の電流(If)を発現する筋細胞、またはHCN2 (IHCN2)もしくはHCN4 (IHCN4)を発現する筋細胞から記録を取るために、[K+]0を10mMに増加させ、MnCl2 (2 mM)およびBaCl2 (4 mM)を灌流液に添加して、カルシウム電流および内向き整流性電流(IK1)を取り除いた。一部の実験では、CsCl (4mM)を細胞外に使用して、ペースメーカー電流をCs感受性の電流として同定した。パッチピペット溶液は、以下をmM単位で含有した:アスパラギン酸、130; KOH、146; NaCl、10; CaCl2、2; EGTA-KOH、5; Mg-ATP、2; HEPES-KOH、10、pH 7.2。指定する場合、10μM cAMPを、ピペット溶液に含めた。溶液を迅速に交換する装置のおかげで、実験プロトコールがはかどった。ピペットの抵抗は、通常1〜3Mであった。Axopatch-200B増幅器およびpClampソフトウエア(Axon Instruments製)を、データの習得および解析に使用した。ペースメーカー電流(If、IHCN2またはIHCN4)を、-35から-145mVの範囲の電位までの過分極化段階の終わりに測定する時間依存性の成分と定義し、保持電位は、別途指定しない限り、-35mVであった。IfおよびIHCN2の測定の場合、過分極化試験パルスは、電位範囲を通して、3から6秒間であった。活性化がより緩慢なIHCN4の場合の定常状態の電流を正確に記録するために、試験電位の長さを、-125mVでの6秒から、-55mVでの60秒の長さまで変化させた。テール電流を記録する場合、試験パルスには、-125mVまでの8秒の電位段階が続いた。全てのペースメーカー電流のプロトコールにおいて、各エピソードを、-5mVまでの0.5秒間のパルスで終了して、確実に完全に非活性化させた。
自然の電流または発現させた電流の活性化の関係を、定常状態のI-V関係から決定することができる。この場合、逆転電位(Vf)は、完全に活性化したI-V関係から別途決定し(Acciliら、1991年)、活性化の関係(y = I / (gmax * (V - Vf))、ただし、gmaxは最大コンダクタンスである)を得るのに使用した。この方法を、新生仔ラット心室細胞において、HCN2プラスミドまたはHCN4プラスミドを用いた発現の初期の研究に使用した。それに続くIfまたはIHCN2の研究では、テール電流の測定を利用した。テール電流を、試験電位に対してプロットして、最大コンダクタンスと活性化電位との関係を得た。この関係を、最大コンダクタンスによって規準化し、ボルツマン関数(y = 1 / (1 + exp ((V - V1/2) / K)))に当てはめて、活性化の最大半量の電位(V1/2)、および勾配因数(K)を決定した。テール電流を、負の電位(-125mV)で測定して、より小さな絶対値の負の電位における一過性の外向き電流およびその他の電流による混入を避けた。
活性化の動態を、過分極化パルスが活性化した電流の早期の時間経過を単一指数関数に当てはめることによって決定した。初期の遅延も、何らかの後期の緩慢な活性化も、無視した。非活性化の動態を、-125mVまでの条件づけパルスによる最大活性化後の各試験電位における電流の記録の時間経過を単一指数関数に当てはめることによって決定した。活性化および非活性化の両方について、正確性を保証するために、当てはめる電流の記録の長さは、測定した時定数の少なくとも3倍の長さとした。
全てのデータを、平均±SEMとして示す。統計的な有意を、対についてはt検定、および多要素の比較については分散分析によって検討し、P < 0.05で決定した。
HCN2およびHCN4を発現する新生仔心室筋細胞の比較。
培養中の新生仔ラット心室細胞が、約-70mVの閾値電位で活性化する小さなIfを示すと過去に報告されている(Robinsonら、1997年; Cerbaiら、1999年)。図16Aは、培養中の新生仔ラット心室細胞における自然のIfの電流の記録の代表的なファミリーを示す。時間依存性の内向き電流の成分が、-65mVまたはそれより負の電位段階の場合に認められる。リボヌクレアーゼプロテクションアッセイによるメッセージのレベルの研究では、HCN2およびHCN4の両方が、新生仔の心室に存在し、相対的なメッセージのレベルは約5:1であることが示されている(Shiら、1999年)。したがって、これらのアイソフォームのそれぞれを、新生仔心室の培養物中で別々に発現させた。先の記載に従い、リポフェクチンによる形質移入の方法を利用し、HCNプラスミドを、pEGFP-C1と同時形質移入して、発現細胞の同定を促進した。発現効率は、視覚的に検出した蛍光を発する細胞の数に基づくと5%未満であった。蛍光を発する細胞の90%超が、If様電流を、自然の電流の少なくとも10倍の大きさで示した。図16BおよびCはそれぞれ、HCN2およびHCN4を形質移入した筋細胞から発現した代表的な電流の記録を示す。電流の大きさは、発現させた電流と自然の電流とを明確に区別するような大きさである。さらに、発現したHCN4の動態は、HCN2と比較して、より緩慢であることが明らかである(図16Cの異なる時間の目盛に留意されたい)。また、より緩慢なHCN4の動態は、起源を違えた発現研究においても報告されている。
図16に示すもの等の電流の記録を使用して、準定常状態のI-V関係を決定した。自然の電流および発現させたHCN2の場合、3秒の電位段階が、ほとんどの試験電位において、定常状態に近づくのに十分であったが、より小さな絶対値の負の段階においては、電流は定常状態に達しなかった。顕著により長いパルスが、HCN4の適切な解析には必要であった。いずれの場合も、逆転電位は別途決定し、これを使用して、I-V関係を変換し、自然の電流および発現させた電流の対応する活性化の関係を得た。自然の電流(Quら、2001年から採用)、および発現させた電流について、活性化の関係の平均を、図17Aに示す。実験は、細胞を分離したのと同じ日に形質移入されている、4〜6日齢の培養物上で行った。HCN2を発現する新生仔筋細胞は、HCN4を発現する新生仔筋細胞よりも、より負の電位で活性化する電流を示し、この差は、統計的に有意であった(それぞれ、-74.8±1.4mVのV1/2、n = 17、および-66.3±2.0mV、n = 14; P = 0.001)。勾配因数(K)には差がなかった(7.7±0.7mV、および6.7±0.7mV; P = 0.348)。活性化の中間点におけるHCN2とHCN4との差8.5mVは、統計的に差があるものの、成体心室と新生仔心室との間の(閾値の測定値に基づく)差40mVよりは、はるかに小さい。このことから、HCN2 / HCN4の比の発達に伴う増加が、齢に依存するIfの活性化の負のシフトに寄与する可能性があるにしても、これだけでは、このシフトを完全には説明できないことが示唆されている。図17Bでは、HCN2 (n = 6〜9)およびHCN4 (n = 4〜5)を発現する新生仔心室筋細胞から記録した電流の活性化の動態を比較する。ほとんどの電位に関して、HCN4の活性化の動態は、HCN2の活性化の動態よりも、顕著に緩慢である。HCN4は、HCN2よりも、小さな絶対値の負の電位で活性化することから、このことを、活性化の電位依存性におけるシフトによって説明することはできない。むしろ、これは、起源を違えた発現の実験でも報告されている(Ludwigら、1999年; Altomareら、2001年)ように、2種のアイソフォームの動態の基本的な差を示している。自然のIf (n = 8)は、HCN2の活性化の動態とHCN4の活性化の動態との中間の活性化の動態を示すが、自然の電流の大きさが小さいので、2種の発現させたアイソフォームの挙動が、より顕著に異なる、より小さな絶対値の負の電圧における信頼できる動態のデータを得るのが困難である。
HCN2を発現する新生仔および成体の心室筋細胞の比較。
これまでの実験から、HCN4/HCN2のアイソフォームの切換えからは、新生仔心室と成体心室との間の自然のIfの差を完全には説明しにくいことが示唆されたことから、HCN2 (両方の齢におけるメッセージのレベルでの主要な心室のHCNアイソフォーム(Shiら、1999年))を、成体心室筋細胞と新生仔筋細胞とで発現させて、その特徴を比較した。これには、成体心室細胞を培地中で48時間維持する必要があった。以前の報告は、より長期の培養条件の結果、自然の電流の活性化の電位依存性に顕著な正のシフトが生じる可能性があることを示した(Faresら、1998年)。したがって、まず、急速に分離した細胞中の自然の電流を、無血清培地中で2日間培養維持した細胞中の自然の電流と比較した。逆転電位を別途決定する必要なしに、活性化の関係の直接的な構築を可能にする電位固定プロトコールを利用した。種々の試験電位までの過分極化段階の後、-125mVまでの第2の段階によって、テール電流を発生させ、この大きさを利用して、活性化の関係を決定した。図18AおよびBに、急速に分離した成体ラット心室細胞および培養した成体ラット心室細胞からの代表的な電流の記録を示す。いずれの場合も、細胞は、桿状で、静止状態であり、図に示すように、いずれの場合の閾値電位(すなわち、時間依存性の電流が認められる第1の電位段階)も、新生仔の自然の電流が示したもの(図16)よりも負である。リポフェクチンによる形質移入の方法は、効率が低く、成体筋細胞におけるHCNの発現の研究には不十分であった。したがって、マウスHCN2の配列を含有するアデノウイルス構築物(AdHCN2)を調製した。成体細胞をこのアデノウイルス構築物で処理した結果、高レベルの電流の発現を得た(図18C、異なる目盛に留意されたい)。HCN2を発現する成体心室筋細胞では、記録した電流は、新生仔細胞で過去に観察された閾値(図16B)よりも負の閾値で活性化した。
新生仔筋細胞において、HCN2のアルファサブユニットが、自然の洞房結節のペースメーカー電流に近い動態およびcAMP感受性を示す(Quら、2001年)ことから、HCN2のアルファサブユニットが利用された。しかし、データは、洞房結節の自然の電流が主にHCN4のアルファサブユニットによって運ばれているが、HCN1およびHCN2のアルファサブユニット(Shiら、1999年; 2000年)、ならびにMiRP1のベータサブユニット(Yuら、2001年)も存在することを示唆している。したがって、これらその他のアルファサブユニットおよびベータサブユニットのアデノウイルス構築物を、単独でまたは組み合わせて、培養中の興奮性の細胞内で過剰発現させ、細胞に基づく速度アッセイに利用することができる。本構築物は、哺乳動物細胞において高レベルの発現を促進するCMVプロモーターの制御下のHCN2を含んだが、構築物を、発現レベルをより強く制御するように調節できるプロモーターを使用して調製することもできる。
新生仔ラット心室細胞が、心臓のペースメーキングに関連するその他の電流の多くを示すことから、新生仔ラット心室細胞が利用された。これは、T型およびL型のカルシウム電流ならびに低密度の内向き整流性電流の存在を含む。さらに、生理的な電位の範囲の、またはそれに近い活性化の閾値を有するペースメーカー電流も含まれる(Quら、2000年)。これらの細胞の自然のペースメーカー電流は小さいが、自然のペースメーカー電流が、新生仔心室では、生理的に適切な電位で活性化する(しかるに、成体心室では、自然のペースメーカー電流は、静止電位に対して負で活性化する(Robinsonら、1997年))という事実から、過剰発現させた電流も、生理的な電位の範囲で活性化するであろうことが示唆された。この予想は、確認されている(Quら、2001年)。事実、HCN2およびHCN4の両方が、新生仔ラット心室筋細胞で発現させると、生理的に適切な電位で活性化することが実証されている(図16および17)。これらの初期の研究では、HCN2またはHCN4を、培養中の筋細胞中で低率で過剰発現させる効率の低い形質移入の方法を利用した。このアプローチでは、電流を特徴付けすることはできるが、電流を高密度で発現する細胞が少な過ぎることから、隣接する単層の培養物の自発的な拍動は起こらなかった。しかし、これらの培養物にHCN2のアデノウイルス構築物を感染させると、細胞の> 90%において電流を過剰発現させることができ、それによって、培養物全体の拡張期の脱分極および拍動速度が変化する。
図19 (図A)は、HCN2が過剰発現しないこれらの培養物が、自発的に拍動するが、正常な心臓の洞房結節の特徴である緩慢な拡張期の脱分極を欠いていることを示す。さらに、サイクルの長さも、一定でない。対照的に、HCN2を過剰発現している培養物は、より迅速な速度で拍動し、サイクルの長さが一定で、顕著な拡張期の脱分極を有する(図B)。
正常な心臓ペースメーカーは、独立に拍動するが、交感神経および副交感神経から放出される神経伝達物質によって調節される。前者は、ノルエピネフリンを放出し、これは、βアドレナリン作動性受容体に作用して、cAMP濃度を上昇させ、心拍数を増加させる。後者は、アセチルコリンを放出し、これは、ムスカリン作動性受容体に作用して、cAMP濃度を低下させ、心拍数を減少させる。図20は、HCN2を過剰発現する細胞培養物において、βアドレナリン作動性アゴニストであるイソプロテレノールによって、予想された心拍数の増加が発生するのを実証している。図21は、HCN2を過剰発現する細胞培養物において、ムスカリン作動性アゴニストであるカルバコールによって、予想された心拍数の減少が発生するのを実証している。図22は、洞の速度を遅らせるペースメーカー電流の選択的ブロッカーであるZD-7288も、HCN2を過剰発現する細胞培養物の速度を遅らせるのを実証している。
過剰発現させたHCN2チャネルが、洞房結節における自然のペースメーカーチャネルと同じように応答し、筋細胞の信号を送る自然のプロセスを圧倒しないことをさらに確認するために、イソプロテレノールの閾値濃度が新生仔心室筋細胞おいて過剰発現させたHCN2に及ぼす効果を測定した。洞房結節では、自然のペースメーカー電流に対するイソプロテレノールの閾値濃度は、約1nMであることが見出された(Zazaら、1996年)。イソプロテレノールの効果は、最大電流を増加させずに、活性化曲線を正にシフトさせる。この効果を、活性化曲線の中間点までの第1の段階、および最大の曲がりまでの第2の段階を有する、2段階の電位プロトコールによって可視化することができる。図23では、この2段階のプロトコールを利用して、イソプロテレノールのこの閾値濃度が、新生仔ラット心室細胞おいて過剰発現させたHCN2の活性化曲線をシフトさせることを示している。このシフトは、約5mVであり、自然の電流に対する効果と一致する。
したがって、新生仔ラット心室細胞において、ペースメーカー電流のアルファサブユニットおよびベータサブユニットを過剰発現するアデノウイルス構築物を使用すると、強力な拡張期の脱分極を有する、規則的な速度で自発的に拍動する培養物を生じる。さらに、これらの改変した培養物の速度は、薬物に、洞房結節の正常な心臓のペースメーカーが応答するのと同様の様式で応答する。このことは、高スループット速度アッセイに向けて、生物学的な基盤を提供する。このアッセイは、細胞を適切なマルチウェルチャンバー中で増殖させ、カルシウム感受性または電位感受性の色素を使用して、蛍光プレートリーダーによって検出するのに都合のよい出力信号を発生させることによって実現することができる。または、細胞を、包埋した記録用電極を含むマルチウェルチャンバー中で増殖させ、電気的な活動を、速度の読取りとして直接測定することもできる。
図24AおよびBでは、急速に分離した成体心室細胞および培養した成体心室細胞における自然のIfの活性化の関係および動態を比較する。2日の培養期間があっても、V1/2には、有意な差は生じないが、培養により、より小さな絶対値の負の中間点に向かう傾向があり(急速に単離した細胞、-105.3±2.6mV、n = 12対培養した細胞、-98.7±1.8mV、n = 7; P = 0.092)、また、勾配因数にも、有意な差はなかった(10.9±1.2mV対14.4±1.9mV)。また、活性化の動態も、急速に単離した成体心室と培養した成体心室との間で差はなかった。図17からの新生仔のデータ(破線)を重ねて、自然のIfの電位依存性および活性化の動態における新生仔/成体の差を示す。したがって、短期間の培養によって、Ifが有意に変化することはなく、電位依存性において何らかの傾向があるとしても、それは、発達の効果に比べれば、わずかである。新生仔と成体とを比較することによって、活性化の電位依存性が齢によって異なると報告した発達の以前の研究が確認される(Robinsonら、1997)。
新生仔心室筋細胞と成体心室筋細胞とにおけるHCN2の特徴を比較するために、アデノウイルス構築物を、両方の調製物に使用した。新生仔のデータは、リポフェクチンの方法を使用した以前の結果と類似した(図17)。図25Aは、2種の培養調製物中のHCN2を発現する筋細胞から得たテール電流の測定値からの活性化の関係の平均を示す。同一のタンパク質を、新生仔筋細胞調製物および成体筋細胞調製物中で発現させると、成体細胞の場合、有意により負の電位で、発生した電流が活性化することが明らかである。新生仔筋細胞および成体筋細胞で発現したHCN2のV1/2の値はそれぞれ、-77.6±1.6mV (n = 24)、および-95.9±1.9mV (n = 13)であった(P < 0.001)。その上、勾配因数(K)も、有意な差を示し(9.8±0.6mV対6.5±0.5mV、P < 0.001)、これは、新生仔の場合、電位依存性がより浅いことを反映している。図25Bは、発現したHCN2の活性化/非活性化の動態の電位依存性に関するデータを示す。このデータは、標準的な動態モデルに良好に当てはまり、これら2種の培養物の間には、活性化の時定数の最大値の差がほとんどないことを示している。しかし、成体の場合、この関係の電位依存性は、活性化の関係におけるシフト(18mV)に類似する量(21mV)だけ負にシフトしている。さらに、これらの2種の培養調製物の動態の関係の相対的なピークは、過去に決定したV1/2の値と一致する(矢印、図25B)。したがって、新生仔筋細胞および成体筋細胞において発現させた場合、HCN2の活性化の動態の電位依存性の差は、定常状態の活性化の関係の電位依存性と関係があるように見える。
HCN2を発現する新生仔筋細胞と成体筋細胞との間の差をもたらすであろう根拠。
その他の電流を、起源を違えて発現させると、発現した電流の生物物理学的な特徴が、時に、達成した電流密度に依存する場合がある(Cuiら、1994年; Guillemareら、1992年; Honoreら、1992年; Moranら、1992年)。新生仔と成体との間のHCN2のV1/2の差が、このような現象の結果であるか否かを決定するために、データの線形回帰分析を行った(図26)。その結果から、新生仔では、V1/2は電流密度と何らかの相関関係があるものの、発現レベルの差からは、新生仔筋細胞と成体筋細胞との間のHCN2の電位依存性の差を説明することができないことが示されている。新生仔の筋細胞では、発現した電流は、広い範囲の電流密度を示し、V1/2との相関関数は0.51であった。成体では、電流密度の変動は、より少なく、活性化の中間点との相関性はなかった(相関関数0.043、P = 0.88)。両方の調製物が共有する電流密度(すなわち、< 60pA/pF、図26の挿入図)では、新生仔筋細胞中で発現した電流は、成体筋細胞中でよりも、有意に小さな絶対値の負のV1/2を示した(P < 0.001)。
自然のIfおよび発現させた電流の両方が、活性化の電位依存性のリン酸化非依存性のシフトによって、cAMPに応答する(DiFrancescoら、1991年; Kauppら、2001年)ことはよく知られているが、リン酸化依存性の機構も報告されている(Changら、2001年; Yuら、1993年; Acciliら、1996年)。新生仔筋細胞と成体筋細胞とのHCN2の活性化の観察された差は、単に2種の細胞調製物内のcAMPの異なる基礎レベルを反映しているに過ぎない可能性もある。このことを試験するために、新生仔細胞および成体細胞中で、AdHCN2を用いて発現させた電流の活性化の関係を測定する実験を、繰り返したが、今回の実験には、ピペット溶液に10μM cAMPを含ませて、電流の最大の正のシフトを達成し、細胞内のcAMPレベルの何らかの差を取り除いた。図27に示すように、新生仔の調製物および成体の調製物の両方において、発現した電流は、よく似た量だけ正にシフトし(ピペット中にcAMPが存在しない場合のデータを、破線および点線で示す)、V1/2の値の大きな差が依然として存在した。したがって、HCN2の活性化の電位依存性の齢に依存する差は、2種の調製物の間のcAMPの基礎レベルの差からは生じない。
HCN2の過剰発現の機能的な効果。
HCN2のアデノウイルス構築物によって、大部分の細胞(パッチクランプを行った細胞の少なくとも90%)において、大きな電流の発現が生じた。次いで、新生仔細胞中で発現する電流の相対的に正の活性化を考慮し、発現する電流を生理的な範囲の電位内に置いて、HCN2の過剰発現が、これらの培養物の自発的な速度を変化させるか否かを決定した。これらの実験は、同調的に拍動する細胞の単層培養物を使用して行い、全細胞パッチ電極によって、近接する単層の1つの細胞から記録を取った。対照(無感染)の培養物は、自発的に拍動し、平均速度は、48.4±4.4回/分(bpm、n = 17)であった。活動電位の間の拡張期の脱分極は、ほとんどまたは全くなく、サイクルの長さは、拍動する度に変化する傾向にあった(図19A)。最大拡張期電位(MDP)は、-65.2±1.6mV (n = 16)であった。対照的に、AdHCN2を感染させた培養物は、より規則的で、より迅速な律動を示し(図19B)、平均速度は、88.0±5.4bpm (n = 16)であった。さらに、これらの培養物は、顕著な拡張期の脱分極を示し、より絶対値の小さい負のMDPを示した(図19C)。発生頻度、第4相の勾配およびMDPの差は、統計的に有意であった(P < 0.05)。AdGFPを感染させた培養物(発生頻度: 45.8±4.7bpm; MDP: -59.5±2.4mV; n = 6)は、無感染の対照の培養物とは差がなかったが、AdHCN2感染細胞とは有意な差があった。
成体培養物は、対照条件下またはAdCHN2による感染後のいずれでも、自発的に拍動しなかった。成体細胞中で発現する電流の相対的に負の活性化の関係を考慮すれば、このことは、驚くに値しなかった。しかし、Ranjanら(1998年)は、成体哺乳動物心室の自然のIfが、陽極開放刺激に寄与することを提案している。十分に強力であれば、過分極化の刺激は、Ifを活性化する。次いで、発生した内向きテール電流は、IK1の電位依存性の遮断と組み合わさり、その結果、刺激の終了時には、膜電位が、脱分極の方向に静止電位をオーバーシュートして、興奮が生じる。したがって、対照の成体培養物とAdHCN2感染培養物との陽極開放興奮に対する感受性を比較した。20ミリ秒の刺激を使用して、閾値陽極刺激に対して達成した最大の負の電位を測定した。また、同一の細胞で、-125mVまでの2秒の電位段階の終わりに、Ifの密度も測定した。図28は、感染細胞が、陽極開放興奮をより容易に呈したことを示す。図28Aは、陽極刺激の典型的な対照(左、上の刺激の時間経過を用いた)および感染(右)の記録、ならびに発生した活動電位の上昇行程を示す。対照細胞と感染細胞との間で、陽極刺激の終わりと活動電位の閾値との間の遅延には、統計的な差はなかった(45±10mV対58±9mV、P > 0.05)。図28Bは、対照細胞(中が白い記号)および感染細胞(中が黒い記号)に関して、閾値における最大の負の電位と、IfまたはIHCN2の密度との間の関係を示すグラフである。対照細胞は、陽極の興奮に必要とした最大の負の電位とIfの密度との間に逆の相関関係を示し(図28B、挿入図)、これは、自然のIfが陽極開放興奮に寄与するという仮説を支持した。それに対して、それは、感染細胞では、膜を約-80mV、すなわち、発現させたHCN2電流の閾値まで過分極するのに十分であった。陽極開放閾値は、発現した電流密度には依存せず、これは、全ての感染細胞で発現した電流の大きさが十分であり、IHCN2の閾値で興奮を達成するのに十分なオーバーシュートを発生させることを示した。必要な刺激のエネルギーを、刺激の開始から活動電位の閾値までの面積の積分として計算すると、対照細胞とAdHCN2感染細胞との間に有意な差があった(3140±279、n = 10対2149±266 mV・ミリ秒、n = 12; P < 0.05)。AdGFPを感染させた細胞の必要な刺激のエネルギーも、自発的な速度も、対照細胞のそれらとは差がなく(データを表示せず)、これは、このことが、単にアデノウイルスによる感染の効果ではないことを示した。その上、対照の筋細胞、AdHCN2感染筋細胞およびAdGFP感染筋細胞の間で、静止電位には差がなかった(データを表示せず)。
新生仔心室および成体心室におけるHCNチャネルの活性化電位に影響する要因。
この初期の研究では、新生仔心室と成体心室とで異なるIfの活性化電位が、心室筋細胞中で発現する場合のHCN2アイソファオームとHCN4アイソファオームとの生物物理学的な特性の明確な差、または筋細胞の成熟しつつある状態が個々のアイソフォーム、特異的には、HCN2に及ぼす影響によるものなのかを探索した。その結果は、成体心室よりも新生仔心室で優勢であるHCN4は、新生仔心室で発現させると、HCN2よりも小さな負の電位で活性化するものの、このアイソフォームの効果は、わずかであることを示している。対照的に、HCN2アイソフォームを、新生仔心室筋細胞および成体心室筋細胞で別々に発現させると、活性化の中間点に、18mVの差があり、一方、培養中の新生仔心室と成体心室では、自然のIf電流の活性化の中間点の差は、22mVである。したがって、これらの実験条件下でのペースメーカー電流の電位依存性の発達に伴う差は、HCN4/HCN2のアイソフォームの切換えというよりは、主に、筋細胞の成熟しつつある状態のHCN2アイソフォームに及ぼす効果によって説明される。さらに、活性化電位のこの差の結果、最大拡張期電位に対する電流の閾値の相対的な位置によって、齢の関数として、発現したHCN2電流の生理的な影響に顕著な差が生じる。
この質問を検討するにあたって、まず、HEK293細胞等の起源を違えた哺乳動物発現系においてではなく、新生仔ラット心室筋細胞において発現させたマウスのHCN2とHCN4との生物物理学的特徴を比較した。起源を違えた発現の以前の研究と同様、これらのデータは、筋細胞中で発現させた場合のHCN2とHCN4との電位依存性の生得的な差、それ自体が、電位依存性の齢に依存する差を説明しないことを示している。HCN2/HCN4メッセージの相対的な比は、発達に伴って増加するが、両方の齢で、リボヌクレアーゼプロテクションに基づくと、HCN2が優勢なアイソフォームである(Shiら、1999年)。新生仔筋細胞におけるHCN2のHCN4に対する活性化の9mV負のシフト(それぞれ、-75および-66mV、リポフェクチンによる形質移入の方法を使用)は、自然の電流の活性化の発達に伴う差よりはるかに小さい。その上、成体の場合よりも新生仔の場合の方が、自然のIfの活性化の動態は、迅速であり、一方、HCN4の活性化の動態は、HCN2の活性化の動態よりも緩慢である。したがって、新生仔のHCN4の優勢な寄与、これは成体のHCN2の優勢な寄与に変化するが、これによっては、活性化電位の差も活性化の動態の発達に伴う差も、十分には説明されない。
しかし、このことは、電位依存性の発達に伴う変化に必要であるまたは寄与する成分として、アイソフォームの切換えを締め出すわけではないことに留意されたい。HCN4は、成体心室においても、新生仔心室においても、顕著により小さな絶対値の負の電位で活性化する、すなわち、HCN2のみが、筋細胞の成熟しつつある状態に感受性を示す可能性もあろう。しかし、HCN4が生得的に正であることを示唆しない、HCN4に関する起源を違えた発現の現存する結果を考慮すると、これは、妥当でないであろう。たとえ同一の調製法を用いたとしても、細胞の調製および/または記録のプロトコールの変動の結果として、実験室間でかなりの差が生じることから、確かに、研究間で活性化電位を比較するのは困難である。それでもなお、新生仔心室におけるHCN4の発現が、報告されている哺乳動物の発現研究のいずれの場合よりも、大幅に小さな絶対値の負であることは興味深い。このアイソファームに関して、-66mVの中間点を観察したが、その他の哺乳動物の発現研究では、-80から-109mVまでの範囲の値が報告されている(Ishiiら、1999年; Ludwigら、1999年; Moosmangら、2001年; Altomareら、2001年)。また、新生仔心室におけるHCN2は、その他の哺乳動物の系よりも小さな絶対値の負の電位で活性化し、中間点は、-83から-97mVまでの範囲の値(Ludwigら、1999年; Moosmangら、2001年; Altomareら、2001年; Moroniら、2000年)に対して、本研究では、-78mV(アデノウイルス感染を用いたテール電流の測定による)である。同一の研究で、HCN2およびHCN4の活性化電位を測定した場合、HCN2が、HCN4と比較して、若干より小さな絶対値の負(Ludwigら、1999年)、同等(Moosmangら、2001年)、または若干より負(Altomareら、2001年)のいずれかで活性化した。したがって、これらの結果は、HCN2とHCN4との間の活性化電位のごくわずかな差を報告したその他の研究と大まかには一致するが、一般的に観察されたのは、その他の哺乳動物の発現系と比較して、新生仔心室においては、両方のアイソフォームの活性化が、より小さな絶対値の負で生じることであった。これは、おそらく、新生仔の筋細胞が、それ以外の発現系と比較して、独特の環境を提供し、より小さな絶対値の負の活性化を可能にすることを示唆している。しかし、少なくとも1種の卵母細胞の発現研究(Santoroら、2000年)は、新生仔心室における活性化と同等の、-78mVの中間点を有するHCN2の活性化を報告し、このことは、その他の系も、より小さな絶対値の負の電位依存性を有するHCN2を発現させることができることを示唆している(実施例1も参照)。
独特なのは新生仔の環境なのか、成体の環境なのか(または、それらが連続体上の2つの異なる点に過ぎないのか)は、明確でないが、HCN2が、これらの2種の細胞調製物中で発現させると、顕著に異なる電位依存性を示すこと、およびこのことが、自然のIfにおける発達に伴う差に匹敵することは明らかである。これらの実験条件下では、自然の電流の活性化の中間点は、新生仔心室と成体心室とでは、約22mVの差があり、これは、過去に報告された閾値の差である約40mV (Robinsonら、1997年)より小さい。急速に単離した成体筋細胞は、6mVより負である活性化の中間点の値を有したことから、この差の一部は、48時間の培養期間が原因である可能性がある。これは、統計的に有意な差ではなかったが、成体筋細胞の形態学的な脱分化を起こす条件下での長期の培養によって、活性化電位の顕著な正のシフトを生じることを見出した以前の研究と調和する(Faresら、1998年)。その上、発達の以前の研究は、成体心外膜の筋細胞を特異的に使用した(Robinsonら、1997年)のに対して、本研究では、成体心臓の全心室を使用して、培養のために生細胞を高い収率で得た。心外膜は、心内膜よりも負であるIfの活性化の勾配が、イヌ心臓で観察されている(Shiら、2000年)。同様な勾配が、成体ラット心室に存在するとすれば、また、このことも本研究で観察されるより小さな絶対値の負の成体の値に寄与するであろう。
心室における自然のIfの活性化の実際の中間点は、新生仔および成体でそれぞれ、-77および-99mVであり、それに対して、HCN2の値は、これら2種の調製物中では、-78および-96mVであった。したがって、HCN2の活性化が、自然のIfの電位依存性を大部分説明する。ピペット中の飽和するcAMPが、新生仔筋細胞および成体筋細胞で、HCN2の電位依存性を類似する量だけシフトさせる(それぞれ、17および14mV)ので、新生仔心室と成体心室との間の活性化の差は、cAMPレベルの差には従属しない。基礎cAMPを、要因として除外する以外は、筋細胞中で発現させた場合のHCN2の電位依存性の齢に依存する差の根拠は、明確でない。異なる心臓の領域における、または齢もしくは疾患の関数としてのIfについて報告されている電位依存性の範囲は、明確であり、これは、組み合わさった機構を反映する可能性がある。その他のチャネルの研究は、自然の電流または発現させた電流の生物物理学的特性を変化させることができる多数の要因を同定しており、これには、ベータサブユニット(Melmanら、2001年; Tinelら、2000年)、局在膜成分(local membrane composition) (Martensら、2000年)、細胞骨格の相互作用(Chauhan VSら、2000年)、リン酸化/脱リン酸化(Changら、1991年; Yuら、1993年; Walshら、1991年)、および切断等のその他の翻訳後修飾(Gerhardsteinら、2000年)が含まれる。これらの機構のうちのいずれかが、IfまたはIHCN2の電位依存性の変動に寄与する程度は分かっていない。これに関して、無細胞マクロパッチにおいて自然のIfを研究すると、活性化のシフトが、顕著に負にシフトするが、パッチの細胞内の面をプロナーゼで処理すると、活性化が、正の方向に56mV逆にシフトする(Barbutiら、1999年)のは興味深い。その上、環状ヌクレオチド結合ドメインを含むHCN2のC末端の大きな部分を欠失させると、活性化が、24mV正にシフトする(Wahlerら、1992年)。
これらの結果から、細胞質内の要素とHCNタンパク質との間の相互作用が、より負の活性化に寄与するが、これらの相互作用は、損傷を受けていない細胞では、おそらく、細胞骨格系の要素、ベータサブユニットまたはその他の要因の存在によって最小化していると推測することができる。これらの要素のうちのいずれかが、活性化電位の領域または発達による変動に実際に寄与する程度は、まだ決定されていない。しかし、この推論が正しいとすると、新生仔におけるHCN2のより小さな絶対値の負の活性化に寄与する要因が、基質に限定されるようには見えない。これは、この調製物中の自然の電流に典型的な発現レベルよりも2〜3桁大きな発現レベルでは、活性化電位の負のシフトが、観察されなかった(実際には、若干正の傾向)からである。
また、新生仔心室および成体心室における自然の電流の動態の特徴も、HCN2によって、おそらく全てではないにしても、大部分説明することができる。新生仔では、自然の電流は、これら同一の細胞で発現させたHCN2の動態とHCN4の動態との中間の動態を伴って活性化する。発現させたHCN2の完全な活性化/非活性化の関係を、新生仔と成体とで比較すると、差は、主に、活性化の電位依存性の差に起因する。したがって、筋細胞の成熟しつつある状態の効果が、活性化の電位依存性に対する効果とは無関係に、発現した電流の活性化の動態に直接及ぶようには見えない。しかし、成体における自然のIfの動態は、発現したHCN2の動態よりも緩慢に見える(図24Bおよび図25Bを比較されたい)。
新生仔培養物中でHCN2を高レベルで発現させると、自発的な速度の顕著な増加が生じることは、驚くに値しない。これには、より小さな負の最大拡張期電位およびより明確な第4相の勾配が伴う。HCN2感染培養物における最大拡張期電位は、HCN2電流の閾値電位に相当し、これは、発現した電流の閾値のレベルでさえ、IK1 (これは、新生仔培養物中では小さい)の寄与を相殺するのに十分であることを示している。成体筋細胞においてHCN2を発現させても、自動性は得られない。これは、成体細胞においては、活性化の範囲がより負であるか、この齢では、IK1の密度がより大きいかのどちらかの理由による。しかし、成体筋細胞においてHCN2を発現させると、陽極開放興奮に対する感受性を増加させる。成体細胞のHCN2感染培養物中では、陽極開放興奮を示すために陽極刺激の間に必要とする最大の負の電位は、HCN2電流の閾値電位に相当する。したがって、心筋におけるHCN遺伝子ファミリーの過剰発現の生理的な影響は、発現した電流の閾値電位によって決まる。この閾値電位、したがって、HCNの過剰発現の生理的な影響は、ある程度、どのアイソファオーム(すなわち、新生仔におけるHCN2対HCN4)が発現するかによって決まる。しかし、この効果は、状況にも依存し、標的組織の成熟しつつある状態に依存して異なる結果を伴う。同じ理由で、この効果は、チャネルを発現させる心臓の領域、および組織の疾患の状態に依存すると思われる。これは、自然の電流が、これらの要因によって顕著な影響を受けるからである。このことは、今後の何らかの努力によって、心臓の律動を、選択的なHCNアイソフォームをその領域で過剰発現させることによって変化させることを、明らかに意味する。これは、標的組織において、発現させた電流が、適切な閾値の電位で活性化するならば、電流レベルを増加させることによって、速度を速めることができることを示唆している。この遺伝子ファミリーの電位依存性を調節する機構に関する洞察が、さらに深まるにつれて、電流レベルおよびその活性化電位の両方を制御することが可能になるであろう。
HCNチャネルの分子成分がチャネルの発現および動態のレベルに及ぼす効果。
MiRP1: HCNチャネルのベータサブユニットが発現を増強し、動態を速める。
イオンチャネルのサブユニットのHCNファミリーが、心臓のIf電流、ならびに神経細胞のIh電流およびIq電流に関係がある分子として同定されている(Ludwigら、1998年; Santoroら、1998年; Santoroら、1999年)。しかし、(HCNチャネルを含めた)多数のイオンチャネルが、大型のアルファサブユニットおよび小型のベータサブユニットのヘテロ多量体である。心臓の遅延整流性電流であるIkr (Abbottら、1999年)およびIKS (Sanguinettiら、1996年)が、この基本原理の例である。それらのアルファサブユニットはそれぞれ、ERGファミリーおよびKCNQファミリーに由来するが、また、両方が、1回膜貫通型タンパク質のファミリーからのベータサブユニットも含有し、これらは、minKおよびMiRP (minK関連ペプチド)と呼ばれる。
MiRP1は、チャネルのサブユニットのHCNファミリーの発現を増強し、活性化の動態を速める。リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ(RPA)は、MiRP1のmRNAが、心臓のペースメーキングの主要な領域である洞房結節で優勢であり、心室では、かろうじて検出できるに過ぎないことを示している。免疫共沈降は、MiRP1がHCN1と複合体を形成することを示している。これらの結果を一緒にすると、MiRP1が、イオンチャネルタンパク質サブユニットのHCNファミリーに関するベータサブユニットであること、および心臓のペースメーキングの活動の重要な調節因子である可能性があることを示唆している。
アフリカツメガエル卵母細胞におけるHCNサブユニットおよびMiRP1サブユニットの起源を違えた発現。
マウスのHCN1またはHCN2、カルボキシ末端にHAタグを付けたまたは付けないラットMiRP1、およびラットminKをコードするcRNAを、mMessage mMachineキット(Ambion製、Austin、テキサス州)を使用することによって転写した。アフリカツメガエルの卵母細胞を単離し、2〜5ng (50〜100nl)のcRNAを注入した後、Barth培地中に、18℃で1〜2日間維持した。HCN1またはHCN2およびMiRP1またはminKの両方を使用する実験のためには、それぞれのcRNAを、1 : 0.04〜1の比で注入した。
卵母細胞上での電気生理学的研究では、2微小電極電位固定を利用した。細胞外記録溶液(OR2)は、以下を含有した: 80mM NaCl、2 mM KCl、1 mM MgCl2、および5 mM Na-HEPES (pH 7.6)。群データを、平均±SEMとして示した。活性化曲線の中間点および勾配の統計的有意の検定を、対応のないスチューデントt検定を使用して行った。P < 0.05を有意とみなす。
リボヌクレアーゼプロテクションアッセイ。
ウサギ心臓組織からの全RNAの調製およびリボヌクレアーゼプロテクションアッセイの実行の手順は、過去に記載されたものに準じた(DixonおよびMcKinnon、1994年)。脳の全RNAは、Clontech製の市販品を入手し、左心室、右心房および脳からは、SV Total RNA System (Promega製)を使用して、全RNAを単離した。各実験に、2μgの全RNAを使用した。シクロフィリンプローブを、各実験で、試料の損失に関する内部対照として使用した。RNAの発現を、乾燥リボヌクレアーゼプロテクションアッセイゲルから、Storm Phosphorimager (Molecular Dynamics製)を使用して直接定量化し、各レーンでシクロフィリンのシグナルに対して規準化した。MiRP1が検出されたウサギ組織のそれぞれにおいて、MiRP1のシグナルは、2つの保護された断片からなっていた。2本のバンドの存在は、RPAプローブのクローニングに使用した、マウスおよびヒトの配列に基づいたPCRプライマーの変性が原因であると思われる。両方のバンドの強度を組み合わせて、定量化に使用した。
タンパク質化学。
膜タンパク質の調製のために、全ての段階を、氷上で行った。25個の卵母細胞を、リンゲル液(96mM NaCl、1.8mM CaCl2、5mM Hepes (pH 7.4))で洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(アプロチニン、ロイペプチンおよびペプスタチンA、各5μg/mlおよび1mM PMSF)を有するLysis Buffer 1 (7.5mM Na2HPO4 (pH 7.4)、1mM EDTA)を用いてボルテックスによって溶解した。可溶化液を、150×gで5分間遠心分離して、卵黄タンパク質を除去し、次いで、14000×gで30分間遠心分離した。膜ペレットを、Lysis Buffer 1で洗浄し、Lysis Buffer 1と同一のセットのプロテアーゼ阻害剤を有する、1mlのLysis Buffer 2 (50mM Tris-HCl (pH 7.5)、150mM NaCl、5mM EDTA、50mM NaF、50mMピロリン酸Na、100mM KH2PO4、10mMモリブデン酸Na、2mM正バナジン酸Na、1% Triton (登録商標) X-100、0.5% NP40)中に再懸濁した。膜画分のタンパク質濃度を、ローリー法によって決定した。
ウエスタンブロットによる免疫化学的解析のために、卵母細胞の膜画分に結合しているタンパク質を、10% SDS/PAGE (HCN1の場合)上、または16.5% Tricine-SDS/PAGE (MiRP1の場合(Sclaggerおよびvon Jagow、1987年))上で分離し、Hybond ECL (商標)ニトロセルロース膜(Amersham Pharmacia Biotech製)に電気ブロットした。ブロッキングおよび抗体インキュベーションを、PEST中で行った。ウサギHCN1抗体(Quality Controlled Biochemicals製)およびラット抗HA高親和性抗体(Roche Molecular Biochemicals製)をそれぞれ、1 : 5000および1 : 500の希釈で使用した。西洋わさびペルオキシダーゼに結合した二次の抗ウサギ断片(Kirkegaard Perry Laboratories製、メリーランド州、米国)および抗ラットIg-POD, Fab断片(Boehringer Mannheim Biochemica製)をそれぞれ、1 : 10000および1 : 2000の希釈で使用した。免疫反応性タンパク質のバンドを、Lumi-LightPLUS Western Blotting Substrate (Roche Molecular Biochemicals製)を使用して可視化した。250μgの膜タンパク質画分、およびジメチルピメリミデートを用いてProtein A/G PLUS-Agarose (Santa Cruz Biotechnology, Inc.製)に架橋したHCN1抗体、10μlを使用して、免疫沈降反応を行った。
MiRP1が卵母細胞で発現したHCNチャネルの発現およびコンダクタンスを増強する。
アフリカツメガエルの卵母細胞を、起源を違えた発現系として利用し、個々の、およびminK (最小Kチャネルタンパク質(minimal K channel protein)、1回膜貫通型タンパク質ファミリーの最初に同定されたメンバー)またはMiRP1のいずれかと同時発現させた、HCN1およびHCN2の発現を検討した。結果を、図29に示す。HCN1 (図29A)およびHCN2 (図29D)の両方が、単独で注入すると、小さな電流を発現する。minKとの同時発現では、HCN1 (図29B)も、HCN2 (図29E)も、類似した、低レベルの電流の発現を生じる。しかし、はるかに大きな電流が、HCN1 (図29C)またはHCN2 (図29F)のいずれかをMiRP1と同時発現させると観察される。MiRP1は、単独の注入でも、100nlのH2Oとの注入でも、電流を誘発しなかった(表示せず)。HCN1およびHCN2の発現研究における、minKを伴う場合またはそうでない場合、およびMiRP1を伴う場合またはそうでない場合の結果の完全なセットを、図29GおよびHに示す。最大コンダクタンスを、最も負の電位での電流の始まりを推進力で割ることによって計算する(逆転電位は、各卵母細胞で測定した)。その結果は、HCN1をMiRP1と同時発現させると、HCN1のコンダクタンスがほとんど3倍増強され、MiRP1は、HCN2の発現を5倍超増強することを実証している。minKとHCN1またはHCN2のいずれかとの同時発現では、HCN1の発現も、HCN2の発現も増強されない。したがって、発現の増強は、MiRP1に特異的である。
図30は、HCN1またはHCN2のいずれかと同時発現させたMiRP1のゲーティングの特性を示す。等時性の活性化曲線を、3秒間(HCN1の場合)または8秒間(HCN2の場合)の過分極化試験パルスに応答する、-10mVで記録したテール電流から構築した。この結果は、中間点の有意な差がないことを実証するが、MiRP1と同時発現させたHCNチャネルの活性化の勾配がより浅いことを統計的に示している(図30AおよびB、詳細は、「図面の簡単な説明」を参照)。
図30C〜Fは、活性化および非活性化の動態を示す。HCN1 (図30C)およびHCN2 (図30D)の両方の活性化に関する生データを示す。図に示すように、MiRP1は、活性化の時定数を減少させる。図30EおよびFに示す活性化および(囲み枠内に示す)非活性化に関する全ての結果の平均は、MiRP1との同時発現が、両方の過程を速めることを示している。
また、MiRP1を伴ってまたは伴わずに発現させたHCN1またはHCN2の整流性の特性も研究した。MiRP1とのHCN1またはHCN2のいずれかの同時発現では、完全に活性化した電流-電位の関係の直線性は変化しなかった(表示せず)。
Ikrの発生におけるMiRP1の予想される役割を検討した過去の研究は、ノーザンブロット解析を利用して、全ラット心臓におけるMiRP1のmRNAの存在を実証した(Abbottら、1999年)。MiRP1が、in vivoにおいてもIf電流の発現を調節するならば、MiRP1のmRNAは、If電流が大きい領域で顕著であるはずである。リボヌクレアーゼプロテクションアッセイを利用して、ラット心臓のSA結節、右心房および心室におけるMiRP1転写物の分布を定量化した。図31に示すように、MiRP1転写物のレベルは、SA結節で最も高く、心房のレベルは、SA結節のレベルの約40%であり、心室のレベルは、かろうじて検出できるに過ぎない(SA結節のレベルの< 4%)。
これらのデータは、HCNファミリーのメンバーとMiRP1との間の複合体がおそらく存在することを示唆し、MiRP1がHCNファミリーのベータサブユニットである可能性があることを示している。この仮説を、抗体が入手できるHCN1を使用して、さらに探索した。
HCN1抗体は、145kDaの見かけ分子量を有する単一のペプチド(グリコシル化されていると思われる(Hansenら、1995年))を認識する。MiRP1は、カルボキシ末端の端にHAエピトープタグが付いており、抗HA高親和性抗体によって、13.5kDaのバンドとして認識された。両方のタンパク質が、膜画分に局在化し、それらを一緒に同時発現させると、タンパク質の発現が(約2倍に)増強された(図32AおよびB)。
HCN1およびMiRP1の複合体が、起源を違えた発現系に存在するであろうか否かを試験するために、免疫共沈降実験を、HCN1単独もしくはMiRP1単独をコードするcRNA、または両方のcRNAを注入した卵母細胞の膜画分を使用して行った。図32Cは、ウエスタンブロット解析によって試験した免疫沈降産物を示す。HCN1のcRNAおよびMiRP1のcRNAの両方を注入した卵母細胞の場合に限って抗HCN1免疫沈降物中にMiRP1が存在したことと、これらのmRNAのうちのいずれか1種を注入した卵母細胞にはMiRP1が存在しなかったこととを一緒にすると、MiRP1が抗HCN1抗体によってプルダウンされたのは、MiRP1がHCN1と複合体を形成していたことが原因である可能性が非常に高いことを示している。
この結果は、これらのタンパク質が、膜内で複合体として共存し、相互に発現を増強し合うことを実証している。このことは、MiRP1が、イオンチャネルのHCNファミリーのベータサブユニットであることを強く示している。
MiRP1は、1回膜貫通型タンパク質のファミリーのメンバーであり、これらのメンバーは、発現を変化させ、KCNQ (minK)およびERG (MiRP1)の両方のファミリーメンバーのベータサブユニットとして働くことが実証されている (Abbottら、1999年; DixonおよびMcKinnon、1994年)。これら過去の研究では、本研究と同様に、minKファミリーのメンバーがゲーティングを変化させており、免疫共沈降によってベータサブユニットであることが実証された。
本研究では、minKが、アフリカツメガエルの卵母細胞中で発現させたHCN1チャネルおよびHCN2チャネルの特性に影響しないことを示している。一方、MiRP1は、両方のHCNのサブユニットの電流の発現を劇的に増強し、電流の活性化および非活性化の動態を速める。また、MiRP1がHERGと結合して、Ikrを形成する場合にも、非活性化の動態の加速が観察される(Abbottら、1999年)。また、本明細書に提示するデータも、MiRP1およびHCN1が、膜内で複合体を形成する可能性があることを示している。
ウサギ洞房結節におけるペースメーカー活動が、わずか数pAの正味の内向き電流によって発生する(Vasalleら、2000年)。この正味の内向き電流は、1桁超より大きな内向き電流と外向き電流とのバランスから生じる。成分電流のそれぞれの生物物理学的特性は知られているものの、この精巧なバランスがどのようにして達成されるのかは、不明のままである。ここに提示した結果は、単一のベータサブユニットが、2種の重要なペースメーカー電流である外向きIkrおよび内向きIfの発現を制御する可能性があることを示している。これが真相であるならば、MiRP1が、心臓ペースメーカーの速度の重要な調節因子として役立つ可能性がある。
in situでの心臓におけるHCNチャネルの過剰発現によるペースメーカー活動の誘発。
HCN2がin situでの心臓においてペースメーカー電流を誘発する。
心臓に固有の伝導系の二次的なペースメーカー組織または心筋の非ペースメーカー細胞のいずれかにおけるIfの過剰発現が、病巣にペースメーカー活動を提供して、洞房結節の優位なペースメーカー機能が存在しない場合、または活動電位が房室結節を介して伝播できない場合に、「要求」モードで心臓を動かすことができるであろうと仮定された。HCN2の動態がHCN4の動態より都合がよく、HCN2のcAMP応答性がHCN1のcAMP応答性より高いことから、関心は、HCN2に集中した。初期の実験は、培養中の新生仔ラット筋細胞で行われた。これらの実験は、過剰発現したペースメーカー電流が拍動速度を増加させることができるのみならず、HCN2ペースメーカー遺伝子の変異および/または適切なアクセサリーチャネルサブユニットの追加によって、発現した電流の特徴を改変させることもでき、これには拍動速度のさらなる増強が期待されることを示した(米国特許第6849611号; Quら、2001年; Quら、2004年; Chenら、2001年b; Plotnikovら、2005年a)。これらの新生仔心室筋細胞は、小さな内因性のペースメーカー電流を現し、HCN2を保有するアデノウイルスに感染させると、顕著により大きなペースメーカー電流を発現する。HCN2および緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するAdに感染させた単層の培養物の自発的な拍動速度を、対照およびマーカーとしてのGFPを組み入れたウイルスと比較したところ、HCN2/GFP発現培養物の拍動速度は顕著に速かった(Quら、2001年)。
この細胞培養の研究の望みをもたせる結果および含蓄に基づいて、概念証明が、アデノウイルスベクター中の少量のHCN2遺伝子およびGFP遺伝子をイヌ左心房に注入することによって試験された(Quら、2003年)。動物の回復後、右迷走神経を刺激して、洞房の緩徐化および/またはブロックを誘発した。この状況では、ペースメーカー活動が、左心房で起こり、アデノウイルスの注入部位にペースマップされた。迷走神経の刺激の強度を増加させ、左迷走神経の刺激も加えた結果、生物学的ペースメーカー活動の休止に至り、このことは、副交感性の応答性を意味する。心房筋細胞は、注入部位から脱凝集し、過剰発現したペースメーカー電流を示した。要するに、これらの結果は、そのようは過剰発現したペースメーカー電流は洞の緩徐化の状況下で回避拍動を提供できたことを示す(Quら、2003年)。
次の段階では、同一のアデノウイルスHCN2/GFP構築物を、蛍光顕微鏡的制御下で、イヌの近位の左心室の伝導系にカテーテルで注入することになった(Plotnikovら、2004年)。このように注入された動物は、洞調律を迷走神経の刺激によって抑制すると、50〜60bpmの速度を有する心室固有の律動を示した。HCN2群の場合、律動は注入部にマップされた。脚組織を心臓から取り出し、微小電極を用いて研究したところ、HCN2を注入した脚組織の自動性が、対照標本の自動性を上回る、すなわち、HCN2を注入した脚が発生させる自発的な速度は、食塩水またはGFPのみを保有するウイルスのいずれかを注入した脚が発生させる自発的な速度より顕著に大きいことが見出された(Plotnikovら、2004年)。
生物学的ペースメーカー機能の予想指標としてのイオン電流の生物物理学的特性。
新生仔ラット筋細胞(図10および図11)およびアフリカツメガエル卵母細胞(図12〜図15)における研究から、mHCN2およびmE324Aの機能に関して一致した結果を得た。これらのin vitroの状況において、mE324A変異がmHCN2と比較してより迅速で、より正のペースメーカー電流の活性化を誘発したことから、変異チャネルは、食塩水を注入したまたはmHCN2を注入した心臓で生じる場合と比較して、より迅速なペースメーカー速度および/またはオーバードライブペーシング後のより短い回避間隔をもたらすであろうことが示唆されると解釈することができよう。しかし、食塩を注入したin situでの心臓およびmHCN2を注入したin situでの心臓の両方が、mE324Aを注入した心臓と同等な回避時間を示した。自動的な速度自体に関しては、mHCN2を注入した心臓の場合とmE324Aを注入した心臓場合とでは同等であり、共に、食塩水を注入した心臓よりも顕著に迅速であった。換言すれば、2つの重要な記述子、すなわち、達成した速度およびオーバードライブ抑制に関しては、in situにおけるmHCN2の効果とmE324Aの効果との間には明確な差は存在しなかった。
これについては、ひとつには、mE324A電流を発現する筋細胞の割合が、mHCN2を発現する筋細胞の割合より顕著に少なかったと説明することができる。さらに、mE324A群の電流密度の方が小さかった。したがって、所与の電位において、mE324Aの場合、mHCN2と比較して、チャネルのうちのより大きな割合が、より迅速に活性化するが、-55mV等の生理学的に適切な電位においては、利用可能なチャネルの全数または正味の電流が、ほぼ同等であると思われる(図10の挿入図を参照)。
生物物理学的な結果から、以下に示す範囲のin situにおける結果が予想された: mE324Aの密度は、mHCN2の密度より小さいこと、およびmE324Aの活性化は、mHCN2の活性化より正でありかつ迅速であることを示す生物物理学的データから、ペースメーカー速度に関しては、どちらの構築物にも優位性がないであろうことが示唆されるであろう。mE324AのcAMP応答が、mHCN2のcAMP応答より正であるという知見から、in situにおけるmE324Aのエピネフリンに対する応答の大きさまたは感受性は、mHCN2の応答の大きさまたは感受性より大きいであろうことが示唆されるであろう。事実、in situにおける研究は、いずれの構築物にも速度の優位性はないが、mE324A変異体はエピネフリンに対するより大きな応答を有することを示した。これは、生物物理学的知見と臨床の含蓄との間の一致を示すのみならず、以下の仮説もまた導く:第1に、十分な電流密度がある限り、生物学的ペースメーカー機能においては、活性化曲線の正の位置および/またはより迅速な動態が、絶対電流密度より重要であり、第2に、アドレナリン作動性応答性は、電位シフトの大きさよりも、cAMPの存在下の活性化曲線の最終的な位置によって決まる。
ヒト間葉系幹細胞を用いた細胞治療。
細胞培養。
ヒト間葉系幹細胞(hMSC; 間葉系幹細胞、ヒト骨髄; Poietics (商標))を、Clonetics/BioWhittaker (Walkersville、メリーランド州、米国)から購入し、間葉系幹細胞(MSC)増殖培地で培養し、継代2〜4回後に使用した。単離および精製したhMSCは、独特の特性、すなわち、正常な核型およびテロメラーゼ活性を失うことなく、多数(12)回培養することができる(van den Bosら、1997年; Pittengerら、1999年)。
ラットCx40、ラットCx43またはマウスCx45を形質移入したHeLa細胞を、hMSCと共に同時培養した。形質移入HeLa細胞の産生、特徴付けおよび培養条件は、過去に記載されている(Elfgangら、1995年; Valiunasら、2000年; 2002年)。
抗コネキシン抗体、免疫蛍光標識化および免疫ブロット解析。
Cx40、Cx43およびCx45の市販され入手可能なマウス抗コネキシンモノクロナール抗体およびマウス抗コネキシンポリクロナール抗体(Chemicon International製、Temecula、カリフォルニア州)を、以前の記載(LaingおよびBeyer、1995年)に従って、免疫染色および免疫ブロットに使用した。フルオレセイン結合ヤギ抗マウスIgGまたはフルオレセイン結合ヤギ抗ウサギIgG (ICN Biomedicals, Inc.製、Costa Mesa、カリフォルニア州)を、二次抗体として使用した。
ギャップ結合の電気生理学的測定。
付着細胞を有するカバーガラスを、NaCl、150; KCl、10; CaCl2、2; Hepes, 5 (pH 7.4);グルコース、5 (それぞれ、mM)を含有する浴溶液を用いて室温(約22℃)で灌流した実験チャンバーに移動させた。パッチピペットを、アスパラギン酸カリウム、 120; NaCl、10; MgATP、3; Hepes、5 (pH 7.2); EGTA, 10 (約pCa 8) (それぞれ、mM)を含有し、0.22μmのポアでろ過した溶液で充填した。充填後、ピペットの抵抗を測定すると、1〜2MΩであった。実験を、二重電位固定を使用して細胞対上で行った。この方法によって、膜電位(Vm)の制御および関連する接合部の電流(Ij)の測定が可能となった。
色素流動研究。
ギャップ結合チャネルを介する色素の移動を、細胞対を使用して調査した。Lucifer Yellow (LY; Molecular Probes製)を、2mMの濃度に達するまでピペット溶液に溶解させた。16ビット、64000ピクセルの白黒濃淡のデジタルCCDカメラ(LYNXX 2000T、SpectraSource Instruments製、Westlake Village、カリフォルニア州)を使用して、蛍光色素の細胞から細胞への広がりの像を撮影した(Valiunas ら、2002年)。異種の対を用いた実験では、LYを、Cell Tracker Greenでタグを付けた細胞に常に注入した。注入細胞のLYに由来する蛍光強度は、Cell Tracker Greenからの初めの蛍光よりも10〜15倍高かった。
ヒトMSCがコネキシンを発現する。
コネキシンであるCx43およびCx40は、典型的な点状の染色によって証明されるように、密接に細胞と細胞とが接触する領域に沿って、かつ培養により単層として増殖したhMSCの細胞質の領域内に免疫局在した(図33A、B)。また、Cx45の染色も検出されたが、Cx43およびCx40の染色とは異なり、細胞内のコネキシンの分布の典型的なものではなかった。むしろ、その特徴は、微細な顆粒状の細胞質性および網様の染色であり、膜に結合するプラークは容易には観察されなかった(図33C)。これは、Cx45チャネルの存在の可能性を排除するわけではなく、Cx43およびCx40のホモタイプ、ヘテロタイプおよびヘテロマーのチャネルと比較して、Cx45チャネルの数が少ないことを意味する。図33Dは、イヌ心室筋細胞およびhMSCのCx43ポリクロナール抗体を用いたウエスタンブロット解析を示し、これは、Cx43のhMSC中の存在をさらに証明している。
hMSCと種々の細胞系との間のギャップ接合部の共役。
hMSC間のギャップ接合部の共役を、図34に示す。hMSCの対の間で記録した接合部の電流は、準対称的(図34A)および非対照的(図34B)な電位依存性を示し、これらは、振幅は等しいが、符号が反対の、20mVずつ増加させる±10mVから開始する±110mVまでの対称的な10秒の接合部を越える電位の段階(Vj)に応答して生じたものである。これらの挙動は、Cx43およびCx40を同時発現する細胞で典型的に観察される(Valiunasら、2001年)。
図34Cは、hMSC対から得たデータの概要を示す。規準化した瞬時(gj,inst、○)および定常状態(gj,ss、●)のコンダクタンスの値をVjに対してプロットした(それぞれ、各Vj段階の初めおよび終わりに決定した)。左の図は、5つのhMSC対からの準対称的な関係を示す。実線の曲線は、データのボルツマンの式への最良のフィッティングを示し、それは、以下のパラメーターを有する:負/正のVjのそれぞれについて、非活性化半量電位、Vj,0 = -70/65mV;最小gj、gj,min= 0.29/0.34;最大gj、gj,max = 0.99/1.00;ゲーティング電荷、z = 2.2/2.3。6つの非対称的な場合からのプロットの概要を、右の図に示す。gj,ssは、負のVjでは、S字型を示して減少し、正のVjに対しては、電位感受性の低下を示した。負のVjでのボルツマンフィッティングは、以下の値を示した: Vj,0 = -72mV、gj,min = 0.25、gj,max = 0.99、z =1.5。
図34DおよびEは、hMSC対からの典型的なマルチチャネル記録を示す。120mMアスパラギン酸Kをピペット溶液として使用して、チャネルを、28〜80pSの範囲の単位コンダクタンスで観察した。約50pSのコンダクタンスでのチャネルの動作(図29Dを参照)は、Cx43のホモタイプのチャネルについて過去に出版された値(Valiunas ら、1997年; 2002年)と一致する。このことは、その他のチャネルの型を締め出すわけではなく、hMSCにおいてはCx43が機能的なチャネルを形成することを示唆するに過ぎない。
共役の性質をさらに定義するために、hMSCを、Cx43、Cx40およびCx45を安定に形質移入したヒトHeLa細胞と共に同時培養した(Elfgangら、1995年)ところ、hMSCは、全てのこれらの形質移入体と共役できることを見出した。図35Aは、hMSCとHeLaCx43との細胞対の間で記録した接合部の電流の例を示し、これは、一連(±10mVから±110mVまで)の対称的な接合部を越える電位の段階(Vj)に応答した、対称的および非対称的な電位依存性電流を現した。準対称的な記録は、優位な機能的なチャネルは、ホモタイプのCx43であることを示唆し、非対称的な記録は、hMSCにおける別のコネキシン(免疫組織化学が示すように、おそらくCx40であろう。図33を参照)の活性を示唆し、これは、ヘテロタイプまたはヘテロマーの形態のいずれか、あるいは両方であろう。これらの記録は、形質移入細胞、すなわち、Cx40およびCx43のへテロタイプおよび混合(ヘテロマー)の形態について出版された記録(Valiunas ら、2000年; 2001年)に類似する。また、hMSCとCx40を形質移入したHeLa細胞との同時培養(図35B)も、hMSCにおけるCx43およびCx40の同時発現と一致する対称的および非対称的な電位依存性接合部電流を示し、これは、Cx43 HeLa-hMSC対のデータに類似した。hMSCと共役した、Cx45を形質移入したHeLa細胞は、Cx45 (HeLa)側が負である場合には、明白な電位ゲーティングを有する非対称的な接合部電流を常に生じた(図35C)。これは、Cx43およびCx40の両方が、Cx45とヘテロタイプのチャネルを形成すると、非対称的な電流を発生させることから、hMSCにおける優位なチャネルの形態がCx43およびCx40である(Valiunasら、2000年; 2001年)ことと一致する。これは、hMSCにおいて機能するチャネルとして、Cx45を排除するわけではなく、Cx45は、hMSCにおいては、細胞間の共役に副次的に寄与することを示す。Cx45の免疫染色において可視化したプラークを認めないこと(図36)は、この解釈をさらに支持するものである。
hMSCと形質移入HeLa細胞との間の対からのgj,ss対Vjのプロットの概要を、図35Dに示す。左の図は、hMSC-HeLaCx43対からの結果を示す。対称的なデータ(●、4つの標本)の場合、ボルツマンフィッティング(実線)から以下のパラメーターを得た:負/正のVjについて、Vj,0 = -61/65mV、gj,min = 0.24/0.33、gj,max = 0.99/0.99、z = 2.4/3.8。非対称的なデータ(○、3つの標本)の場合、負のVjの値でのボルツマンフィッティング(破線)は、以下のパラメーターの値を示した: V j,0 = -70mV、gj,min = 0.31、gj,max =1.00、z = 2.2。中央の図は、hMSC-HeLaCx40対からのデータを示し、3つの対称的(●)および2つの非対称的(○)なgj,ss-Vjの関係を含む。実線は、対称的なデータのボルツマンフィッティングに対応し(負/正のVjについて、V j,0 = -57/76mV、gj,min = 0.22/0.29、gj,max = 1.1/1.0、z =1.4/2.3)、破線は、非対称的なデータのフィッティングである(負/正のVjについて、V j,0 = -57/85mV、gj,min = 0.22/0.65, gj,max = 1.1/1.0、z = 1.3/2.2)。hMSC-HeLaCx45細胞対からの6回の完了した実験からのデータを、右の図に示す。gj,ssのプロット対Vjは、非対称性が強く、正のVjの値でのデータのボルツマンの式への最良のフィッティングは、以下のパラメーターの値を示した: V j,0 = 31mV、g j,min = 0.07、gj,max =1.2、z =1.8。
図35Eは、Lucifer YellowのhMSCからhMSCへ(上の図)、HeLaCx43からhMSCへ(中央の図)、およびhMSCからHeLaCx43へ(下の図)の移動を示す。細胞対の接合部のコンダクタンスを、以前に記載された方法(Valiunasら、2002年)によって同時に測定したところ、それぞれ、約13、約16および約18nSのコンダクタンスを示した。Lucifer Yellowの移動は、HeLa細胞中でのホモタイプのCx43または同時発現したCx43およびCx40に関して過去に報告されたもの(Valiunasら、2002年)に類似した。Cell Tracker Green (Molecular Probes製)を、2つの細胞集団のうちの1つに常に使用して、異種の対の同定を可能にした(Valiunasら、2000年)。Lucifer Yellowを、細胞トレーサーを含有する細胞に常に送達した。Cell Tracker Greenが発生させた蛍光強度は、Cell Tracker Greenの蛍光を発する細胞に送達したLucifer Yellowの濃度によって発生した蛍光強度よりも10〜15倍弱かった。
また、図36に示すように、ヒトMSCを、成体イヌ心室筋細胞と共に同時培養した。図7Aに示すように、Cx43の免疫染色を、桿状の心室筋細胞とhMSCとの間に検出した。hMSCは、心筋細胞と電気的に共役する。巨視的(図36B)およびマルチチャネル(図36C)の両方の記録を得た。図36Bの接合部の電流は、非対称的であり、図36Cの接合部の電流は、ホモタイプCx43チャネルまたはヘテロタイプCx43-Cx40チャネルまたはホモタイプCx40チャネルの動作の結果、典型的に生じる大きさの範囲の単一の現象を示す(Valiunasら、2000年; 2001年)。また、コンダクタンスがホモタイプまたはヘテロタイプの形態と同一またはそれに類似するヘテロマーの形態も可能である。
細胞対の研究によって、hMSCと、その他のhMSCと(13.8±2.4nS、n = 14)、HeLaCx43と(7.9±2.1nS、n = 7)、HeLaCx40と(4.6±2.6nS、n = 5)、HeLaCx45と(11±2.6nS、n = 5)、ならびに心室筋細胞と(1.5±1.3nS、n=4)の有効な共役が実証された。
hMSCの生物学的ペースメーカーのための送達プラットフォームとしての使用。
ヒトMSCは、生物学的ペースメーカーを心臓に送達するための好都合なプラットフォームの候補としてとみられている。その根拠の一部として、ヒトMSCは、免疫特権を有する可能性があり、したがって、拒絶応答を引き起こさないことが期待されることが、Liechtyら(2000年)によって示唆されている。これは、重要である。というのは、生物学的ペースメーカーと電子工学的ペースメーカーとの間のトレードオフの点で、前者のアプローチを使用する際に、何らかの免疫抑制を必要とすることは、細胞治療のアプローチにとっては不利益となり、臨床的には望ましくないからである。
ヒトMSCは、市販品として、または骨髄から容易に得られ、CD44およびCD29の表面マーカーの存在によって、ならびに造血性前駆細胞に特異的である、その他のマーカーが存在しないことによって同定される。遺伝子チップ解析を使用して、hMSCは、HCNアイソフォームのメッセージを保有しないことが決定された。重要なことには、また、hMSCは、ギャップ接合部タンパク質コネキシン43の顕著なメッセージのレベルも有する。後者の観察は、重大な意味をもつ。これは、プラットフォーム治療の背後の理論は、hMSCに対象の遺伝子、例えば、HCN2を積み、心筋に植え込むというものであるからである(Rosenら、2004年)。しかし、細胞に信号を積んでも、細胞が近隣細胞と機能的な連絡を形成しない限り、効果がないであろう。hMSCの送達プラットフォームとしての使用の根底にある原理の概要を、図2に示す。手短にいうと、正常な洞房結節では、膜の過分極が内向き(If)電流を開始し、これは、第4相の脱分極および自律的な律動を発生させる。膜電位の変化の結果、電流が低い抵抗のギャップ結合を介して流れることになり、その結果、活動電位が1つの細胞から次の細胞へと伝播する。hMSCのプラットフォームとしての使用では、hMSCに対象の遺伝子、例えば、HCN2を積むことになり、好ましくは、エレクトロポレーションを用い、それによって、製法からのウイルス成分のいずれをも避ける(Rosenら、2004年; Rosen、2005年; Cohen ら、2005年; Potapovaら、2004年)。hMSCを、隣接する筋細胞と有効に共役させる必要があるであろう。これが生じれば、次いで、共役した筋細胞の高度に負の膜電位が、hMSCを過分極させて、HCNチャネルを開口させ、内向き電流が流れるのを可能にするであろう。次いで、この電流は、低い抵抗のギャップ結合を介して伝播し、共役した筋細胞を脱分極させて閾値電位まで導き、その結果、活動電位が生じ、次いで、これが、伝導系をさらに伝播するであろう。換言すれば、hMSC および筋細胞のそれぞれが機構の必須の部分を保持する必要があるであろう。すなわち、筋細胞は、活動電位を発生させるイオン性の成分を担い、hMSCは、ペースメーカー電流を運び、かつ、ギャップ結合が存在すれば、これら2つの別々の構造的な実体が、単一のとぎれのない生理的な単位として機能するであろう。
そこで、重要な疑問は、ギャップ結合が、hMSCと筋細胞との間に形成されるか否かである。答えは、上記で開示した実験データが示すように、肯定的である。図33は、コネキシン43およびコネキシン40が、hMSC中で明確に実証可能であることを示している。その上、hMSCは、Cx43、Cx40またはCx45を発現する細胞系とも、イヌ心室心筋細胞とも、機能的なギャップ結合チャネルを形成する(全内容が参照によって本明細書に組み入れられている、Valiunasら、2004年も参照)。さらに、hMSCと、別のhMSCまたはHeLaCx43細胞との間のLucifer Yellowの通過(図35Eを参照)も、頑強なギャップ結合仲介共役を示している。Lucifer YellowのhMSCとCx43を形質移入したHeLa細胞との間の移動は、ホモタイプのCx43または同時発現したCx43およびCx40の移動に類似する。Lucifer Yellowの移動では、Cx40は、Cx43よりもLucifer Yellowに対する透過性が約5倍低いことから、ホモタイプのCx40は、優位なチャネルの型としては排除される(Valiunasら、2002年)。さらに、筋細胞に密接に近接するhMSC内に電流を注入すると、その結果、筋細胞へ電流が流れること(図36)は、機能的なギャップ結合の確立をさらに示している。
これらのデータは、MSCが多くの組織の電気的な合胞体に容易に統合して、修復を促進するまたは治療的送達システムのための基質として役立つはずであることを示唆している。特に、これらのデータは、hMSCの心臓組織の修復のための治療的基質としての使用の可能性を支持している。また、血管平滑筋細胞または内皮細胞等のその他の合胞体も、Cx43およびCx40の偏在性から、hMSCと共役することができるはずである(Wangら、2001年a)。したがって、また、それらの合胞体も、hMSCに基づく治療学の対象となることができる。例えば、hMSCに形質移入して、イオンチャネルを発現させることができ、次いで、これらのイオンチャネルは、周囲の合胞体組織に影響を及ぼすことができる。または、hMSCに形質移入して、ギャップ結合を透過することが可能な小型の治療的分子を産生する遺伝子を発現させて、レシピエントの細胞に影響を及ぼすことができる。さらに、短期の治療の目的で、レシピエントの細胞に送達するために、小型の分子をhMSCに直接積むこともできる。そのようなアプローチの成功は、レシピエントの細胞への治療薬の送達のための最終的な導管としてのギャップ結合チャネルによって決まる。第1のアプローチが実施可能であることを、HCN2形質移入hMSCをイヌ心臓に送達することによって、そこでhMSCが自発的な律動を発生させることにより、本明細書で実証している。
別の疑問として、hMSCの自律的な応答性があげられる。Potapovaら(2004年)によって示されたように、HCN2を積んだhMSCへのイソプロテレノールの添加の結果、活性化のシフトが生じ、その結果、増加した電流がより正の電位で流れた。自然なHCN2に期待されるであろうと同様に、この結果は、ペースメーカー速度の増加に至るはずである。また、Potapovaら(2004年)は、hMSCが発現したIfのアセチルコリンに対する応答も調査した。アセチルコリン単独では、電流への効果はなかったが、イソプロテレノールの存在下では、アセチルコリンは、イソプロテレノールのβアドレナリン作動性の効果に拮抗した。これは、拮抗作用が強調された場合の生理的現象に全く一致する。
また、HCN2を積んだヒトMSCをイヌの心臓に部位特異的に注入し、そこで、迷走神経の刺激を使用して、洞房のペースメーカー機能および/または房室の伝導を停止させた(Potapovaら、2004年)。この結果、自発的なペースメーカー機能が生じ、これは、注入部位にペースマップされた。さらに、その部位から取り出した組織は、筋細胞とhMSC要素との間にギャップ接合部が形成されることを示した。最後に、この幹細胞は、ビメンチン染色に陽性であり、これは、細胞が間葉系であることを示し、かつヒトCD44抗原に対して陽性であり、これは、細胞がヒト由来のhMSCであることを示した(Potapovaら、2004年)。
予備的な研究で、Plotnikovら(2005年b)は、hMSCに基づく生物学的ペースメーカーの機能を、植込み後6週にわたり追跡し、発生した速度が安定であることを見出した。同等に重要なことには、免疫グロブリンおよびイヌリンパ球の染色を使用して、hMSCの拒絶が生じたか否かを決定した。2週および6週の時点を使用したが、液性の拒絶の証拠も、細胞性の拒絶の証拠も存在しなかった。これは、hMSCが免疫特権を有する可能性があることを示唆するLiechtyら(2000年)の以前の研究と一致する。より詳細な調査によって、このことが実証されれば、いずれの免疫抑制の必要性もなくなるであろう。
したがって、総合的に、hMSCは、いくつかの理由で、ペースメーカーイオンチャネルを心臓に送達するための非常に魅力的なプラットフォームを提供するようである。すなわち、hMSCは、標準的な臨床介入によって、比較的多くの数で得ることができ; hMSCは、培養で容易に発展し;予備的な証拠から、hMSCは、導入遺伝子を長期に発現させることができ;かつhMSCの投与は、自家性であってもよいし、(hMSCが免疫特権を有することから)保存物からであってもよい。hMSCは、理論的には、自発的な活動が可能な心臓様細胞にin vitroで分化することができるであろうが、本明細書に記載する遺伝子操作のアプローチは、特異的な系譜に沿った分化に依存しない。さらに、このex vivo形質移入法は、DNAの組込みの評価が可能であり、細胞の操作は、絶対安全な死の機構を備える。したがって、成体hMSCは、生物学的ペースメーカー活動を対象の心臓において誘発するステップを含む、心臓の律動障害に罹患した対象を治療するための方法、およびそのような方法で使用するためのキットを作製する場合に利用する好ましいイオンチャネル送達プラットフォームである。
(1)遺伝子治療と(2)本明細書に記載する幹細胞治療との間のデザインの概念的および実際的な違いを強調することは重要である。両者は、共通の終点--生物学的ペースメーカーの送達--を有するが、遺伝子治療は、特異的なHCNアイソフォームを使用して、心臓の筋細胞を操作して、ペースメーカー細胞に変化させるが、hMSC治療は、幹細胞をプラットフォームとして使用して、特異的なHCNアイソフォームおよび/またはMiRP1アイソフォームを、筋細胞が本来の機能を保持する心臓に運ぶ。遺伝子治療は、筋細胞間にすでに存在するホモタイプの細胞間の共役を利用して、ペースメーカー電流が過剰発現している筋細胞から本来の機能を保持する筋細胞へのペースメーカー活動電位の伝播を容易にする。対照的に、幹細胞は、コネキシンの若干異なる集団を有する細胞のヘテロタイプの共役に依存して、幹細胞から機能が未変化で残っている筋細胞へペースメーカー電流のみを送達する。重要なことには、かつ洞房結節細胞とは異なり、HCN 2を形質移入したhMSCは、活動電位を発生させるのに必要なその他の電流を欠くので、興奮性ではない。しかし、形質移入すると、これらの細胞は、脱分極化電流を発生させ、これが、共役した筋細胞に広がり、筋細胞を閾値まで動かす。実際は、筋細胞は、仕掛け線のようにふるまい、筋細胞の過分極で、幹細胞のペースメーカー電流にスイッチが入り、筋細胞の脱分極で、電流のスイッチが切れる。本明細書に提示するデータは、hMSCがペースメーカー遺伝子を含有し、心臓の筋細胞とギャップ結合を介して共役する限り、hMSCは、正常な一次ペースメーカーである洞房結節に類似する様式で心臓ペースメーカーとして機能することを示唆している。
正常なペースメーカー機能に要求される生物学的ペースメーカーの量。
生物学的ペースメーカーは、最適な大きさ(細胞の量として)、および長期の正常な機能のための最適な細胞間の共役が必要である。幸運なことに、以前の研究において、使用したHCN構築物は、しかもin situでのイヌ心臓に投与した形質移入hMSCの数で、周囲の筋細胞に共役して機能し、さらに、顕著な、測定が容易なペースメーカー活動を発生させるまでに機能した。次いで、数学的モデルを使用して、機能を最適化するのに必要とする適切なhMSCの数および共役比が同定されている。
数学的モデルを使用して、量子ドットナノ粒子(QD)を使用するin vivo幹細胞注入が再構築された。約120,000個のQDを含有するhMSCを、(z = 4.9mmで)ラット左心室自由壁に注入し、動物を注入1時間後に堵殺した。10μmの横切片を得、位相差オーバレイを用いて655nmでQDの蛍光を可視化して、組織の境界を示した。QDを、送達されたhMSC内に認め、心筋内の単一のQD+細胞をより高い解像度で可視化した。230個の連続的な10μmの横切片からのQD+領域を同定し、心臓におけるQDクラスターの3D分布を再構築するために使用した。次いで、幹細胞内のIfの特性、活動電位の伝播への細胞の幾何学の効果、幹細胞の数、静止電位が誘発するIfの減少、および活動電位の伝播の要件を考慮に入れて、生物学的ペースメーカーを数学的にモデル化した。hMSCの半径は、7μmであると想定され、これは、105個の幹細胞のクラスターの半径が0.03cmであり、106個の幹細胞では0.07 cmであることを意味した。
このモデルから、105個以上の幹細胞が、筋肉の活動電位を発生させると思われ;筋肉に特徴的な入力抵抗は、約0.03cmで飽和し; Ifの電位依存性の減少により、幹細胞のクラスターから出る電流は、約0.03cmで飽和し、したがって、筋肉内のペースメーカー電位は、約0.03cmで飽和することが示された。約0.03cm 以上の半径の細胞の殻が閾値に達すれば、筋肉内の活動電位の自立した伝播が本質的に保証されると結論付けられた。これは、1,000,000個の幹細胞を注入した場合、生物学的ペースメーカーを生み出すためには、わずか10%が残存する必要があることを意味する。これらの結論は、本明細書に開示するin situでの心臓組織におけるペースメーカー活動の誘発に関する実験結果と一致する。
生物学的ペースメーキングのためのキメラのHCNチャネルの使用。
キメラのHCNチャネルの構築。
Ifペースメーカー電流は、拡張期の電位においてのみ流れ、活動電位の長さに影響しないはずであることから、生物学的ペースメーカーに関する多くの最近の研究は、分子標的としてIfに焦点をあてている。しかし、HCNチャネルの分子構造を操作して、生物学的ペースメーキングのための好ましい特性を有するキメラを産生し、心臓の律動障害を治療することができることは、過去に、示唆されたことも、実証されたこともない。以下に記載するように、望ましい特徴を示す異なるHCNのアイソフォームの部分を、当該のキメラが由来するWt HCNチャネルと比較して、より優れた機能を有するキメラのチャネルに組み換えることができる。
HCNキメラを構築するために、まず、HCN遺伝子を発現ベクターへサブクローニングする。例えば、HCN1〜4をコードする哺乳動物の遺伝子(Santoroら、1998年; Ludwigら、1998年; 1999年; Ishiiら、1999年)を、pGH19 (Santoroら、2000年)およびpGHE (Chenら、2001年b)等のベクターへサブクローニングする。次いで、欠失変異体およびキメラ変異体を、PCR/サブクローニング戦略によって作製し、得られた変異HCN構築物の配列を、DNAシークエンシングによって検証する。
HCNチャネルを、親水性、細胞質側N末端部分(領域1)、主に疎水性アミノ酸を含む、6つの部分からなるS1〜S6のコアの膜貫通(膜内)部分(領域2)、および親水性、細胞質側C末端部分(領域3)の3つの主要な部分を有するとして特徴付けることができる。当業者であれば、これらの部分の境界を、タンパク質の一次構造ならびに構成するアミノ酸の既知の親水性または疎水性に基づいて容易に決定することができる。例えば、mHCN1では、C末端部分は、D390〜L910である。mHCN2のC末端部分は、D443〜L863である。HCN1、HCN2、HCN3およびHCN4のうちのいずれかから、全N末端ドメイン、コア膜貫通ドメインまたはC末端ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を入れ換えることができる。そのようにして構築した異なるキメラを、命名法HCNXYZを使用して識別する。ただし、X、YまたはZは、N末端ドメイン、コア膜貫通ドメインまたはC末端ドメインのそれぞれの身元を指す数(1、2、3または4のいずれか)である。
したがって、例えば、mHCN112のキメラ(図1を参照)の場合、N末端部分および膜内部分は、mHCN1からであり、mHCN1のC末端アミノ酸D390〜L910は、mHCN2のカルボキシ末端のアミノ酸D443〜L863で置換されている。それに対して、mHCN221の場合、mHCN2のカルボキシ末端のアミノ酸D443〜L863は、mHCN1のカルボキシ末端のアミノ酸D390〜L910で置換されている。mHCN211の場合、mHCN1のアミノ末端のアミノ酸M1〜S128は、mHCN2のアミノ末端のアミノ酸M1〜S181で置換されている。それに対して、mHCN122の場合、mHCN2のアミノ酸M1〜S181は、mHCN1のアミノ酸M1〜S128で置換されている。mHCN121の場合、mHCN1のS1〜S6膜貫通ドメインのアミノ酸D129〜L389は、mHCN2の膜貫通ドメインのアミノ酸D182〜L442で置換されている。それに対して、mHCN212 (図1)の場合、HCN2のアミノ酸D182〜L442 (すなわち、膜内部分)は、mHCN1のD129〜L389で置換されている(Wangら、2001年bを参照)。ヒトのキメラのHCNチャネルを調製するために、ヒトHCNチャネルからのドメインを利用して、同一の原理を適用し、必要な変更を加える。例えば、hHCN112は、hHCN1からのアミノ末端ドメインおよび膜内ドメイン、ならびにhHCN2からのカルボキシ末端ドメインを有する。
これらのHCNのキメラの発現は、アフリカツメガエル卵母細胞において容易に観察することができる。例えば、cRNAを、T7 RNAポリメラーゼ(Message Machine; Ambion製、Austin、テキサス州)を使用して、NheI-直線化DNA (HCN1およびHCN1のバックグラウンドに基づく変異体の場合)、またはSphI-直線化DNA (HCN2およびHCN2のバックグラウンドに基づく変異体の場合)から転写することができる。50ngのcRNAを、過去の記載(Gouldingら、1992年)に従ってアフリカツメガエル卵母細胞に注入する。
キメラのHCNチャネルが生物学的なペースメーキングを増強する。
新生仔ラット心室筋細胞で発現させて、HCN2チャネルとキメラのHCN212チャネルとのゲーティング動態を比較する実験を行った。図37は、mHCN2、およびマウスHCN2のD182〜L442をマウスHCN1のD129〜L389で置換することによって生み出したキメラのチャネル(mHCN212)を使用して得た結果を示す。活性化および非活性化の動態の解析は、mHCN212が、mHCN2と比較して、全ての電位でより迅速な動態を示すことを明らかにしている。
新生仔ラット心室筋細胞におけるHCN2チャネルとキメラのHCN212チャネルとの発現効率の比較を、図38に示す。結果は、キメラのチャネルの発現が、野生型チャネルの発現と少なくとも同程度に良好であることを示している。さらに、活性化の電位依存性の解析からは、筋細胞で発現させた場合には、HCN2チャネルとHCN212チャネルとでは、電位依存性の差は示されていない。
マウスHCN212を、新生仔ラット心室筋細胞およびヒト成体間葉系幹細胞で発現させ、次いで、発現した電流を、培地物中で研究した。キメラのmHCN212チャネルをこれら2種の異なる細胞型で発現させた場合には、活性化の電位依存性についても、活性化の動態についても、顕著な差は存在しない(図39を参照)。
図40は、卵母細胞における野生型mHCN2およびmHCN112の定常状態の活性化曲線、活性化の動態およびcAMPによる調節を示す。データは、キメラのHCN112チャネルが、強力なcAMP応答を保存する一方で、HCN2よりも顕著に迅速な動態を達成することを示している。
成体hMSCで発現したmHCN2チャネルとキメラのmHCN212チャネルとのゲーティングの特徴の比較(図41)は、mHCN212の場合、HCN2と比較して、活性化の電位依存性が顕著に正にシフトしていること、および活性化の動態がいずれの測定電位においても顕著に迅速であることを示している。
これらのデータは、治療適用のためのペースメーカー活動の誘発において、HCN212のキメラは、野生型HCN2チャネルを上回る顕著な利点を有することを示唆している。重要なことには、正のシフトおよびより迅速な動態の結果、特には、心臓細胞の拡張期の電位の範囲(-50から-90mV)に関するが、いずれの特異的な電位に関しても、より短時間でより多くの電流を生じることが期待されるであろう。
したがって、操作して、由来源である自然なHCNチャネルと比較して、抑制または増強された活動を有するキメラのHCNチャネルを生み出すことができ、これによって、心臓の状態を治療するために最適化された異なる特徴を有するチャネルの選択が可能となる。例えば、HCNチャネルの電流の活性化曲線を、より正またはより負の電位にシフトさせることができ;過分極ゲーティングを増強または抑制することができ;チャネルの環状ヌクレオチドに対する感受性を増加または減少させることができ;かつ基礎ゲーティングの差を導入することができる。より具体的には、データは、迅速な動態およびcAMPに対する良好な応答性(したがって、自律的な刺激に対する改変された応答性)を有するペースメーカーチャネルを、例えば、HCN1成分を選択することによって得ることができるという証拠を提供している。また、より緩慢な動態を、例えば、キメラにHCN4成分を選択することによって得ることもできる。心臓障害の治療に有利な特徴を示すHCNキメラの創出は、過去には報告されていない。
in situでのタンデム型生物学的ペースメーカーおよび電子工学的ペースメーカーによるペースメーキング。
イヌへのタンデム型生物学的ペースメーカーの植込みおよび電子工学的ペースメーカーの埋込み。
動物実験を、the Columbia University Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認され、the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals (NIH Publication No. 85-23、改訂1996年)に従うプロトコールを使用して行った。
雑種の成体イヌ、体重22〜25kgに、プロポフォール6mg/kg IVおよび吸入イソフルラン(1.5%〜2.5%)を用いて麻酔を施した。操縦可能なカテーテルを使用して、食塩水(n = 5)、AdmHCN2 (n = 6)、またはAdmE324A (n = 4)を、過去の記載(Plotnikovら、2004年)に従って、左の脚(LBB)に注入した。追加の2匹のイヌには、AdmE324Aを、内部対照として、LV中隔心筋に注入した。完全AVブロックを高周波アブレーションによって誘発し、注入の各部位をカテーテル電極でペーシングして、追跡期間中、心室固有の律動の起源を心電図上で識別した。
電子工学的ペースメーカー(Discovery II、Flextendリード; Guidant製、 Indianapolis、インディアナ州)を埋め込み、VVI 45bpmに設定した。ECG、24時間ホルター心電図によるモニター、ペースメーカーログ点検、および80bpmでのオーバードライブペーシングを、毎日14日間行った。βアドレナリン作動性の応答性を評価するために、第14日に、エピネフリン(1.0、1.5および2.0μg/kg/分、各上限10分間)を、心室固有の速度の50%増加または心室性不整脈(優位な心室固有の律動の形態ではない形態を有する単一の心室性期外収縮、または心室性頻脈)のどちらかが最初に起きる終点まで注入した。2μg/kg/分の最大用量の開始後10分以内に上記の応答のいずれをも観察しない場合には、注入を停止した。
データを、平均±SEMとして示す。in situでの実験では、5匹の食塩水を注入したイヌと2匹のAdmE324Aを(LBBではなく)心筋に注入したイヌとでは、電気生理的な差がなかったので、一緒にして1つの対照群とし、以降の解析に用いた。一元配置分散分析を使用して、植え込んだ構築物の電気生理学的パラメーターへの効果を評価した。次いで、等しい分散を想定する場合のボンフェローニ法および分散が等しくない場合のゲイムズ-ハウエル(Games-Howell)法を使用して、解析を行った。2元分割表解析を行って、エピネフリンが3つの群に異なる効果を有したか否かを評価した。データは、Windows(登録商標)ソフトウエア用のSPSS (SPSS, Inc.製)を使用して解析した。P < 0.05を、有意であるとみなした。
in situでのタンデム型生物学的ペースメーカーおよび電子工学的ペースメーカーの動作。
予備実験では、E324A変異体を保有するアデノウイルスの注入によって、HCN2に代わる効果的なものを提供できる可能性を、in vivoで試験した。E324Aに感染したイヌは、HCN2に感染したイヌと比較して、基礎速度の点では、有意な差を現さないが、カテコールアミン応答性はより高いことを見出した(Plotnikovら、2005年a)。
次いで、現在の実験では、HCN2遺伝子およびE324A-HCN2遺伝子のそれぞれを保有するアデノウイルスベクターを使用して、埋め込んだ電子工学的ペースメーカーと併行してin vivoにおいてペースメーカー活動を発生させ、タンデム型ペースメーカーの性能を、電子工学的ペースメーカーを単独で使用した性能と比較した。6匹のイヌが、操縦可能なカテーテルを介して、左の脚(LBB)へ、0.6mlの食塩水中のHCN2遺伝子を組み入れたアデノウイルスベクターの注入を受けた。HCN2ウイルスは、新生仔ラット筋細胞において、以下のように特徴付けられていた:活性化の中間点= -69.3mV (n = 5); -65mVでの活性化τ= 639±72ms (n = 5); -135mVで発現した電流= 53.5±8.3pA/pF (n =10)。変異E324A遺伝子を組み入れたアデノウイルスベクターを、4匹のイヌには、LBBへ注入し、2匹の追加のイヌには、内部対照として、左心室中隔心筋に注入した。別の対照として、5匹のイヌには、LBBへ0.6mlの食塩水を注入した。
完全房室ブロックを高周波アブレーションによって誘発し、電子工学的ペースメーカーを右心室内心膜頂端へ埋め込み、VVI 45bpmに設定した。ECGおよび24時間モニターを、毎日14日間行った。また、βアドレナリン作動性の応答性も、上記の記載に従って評価した。
電子工学的ペースメーカーは、対照では、全拍動の83±5%を誘発し(p < 0.05)、mHCN2群の26±6%およびmE324A群の36±7%とは対照的であった(後者2つの場合、p > 0.05)。電子工学的にペーシングした拍動について、タンデム型HCN2-電子工学的ペースメーカーと電子工学的ペースメーカー単独とを比較した時間的な解析を、図42Aに示す。研究期間にわたり、HCN2群では、有意に少ない数の拍動が電子工学的に開始されたことは注目に値する。E324Aの結果(表示せず)では、HCN2と有意な差はなかった。
回避時間を、3回の30秒間の80bpmでの心室のオーバードライブペーシングを行った後に、ペーシングを突然休止することによって毎日評価した。次いで、最後に電子工学的にペーシングした拍動と最初の内因性の拍動との間の平均時間を決定した。回避時間は、3群全体で、1〜5秒の範囲に及び、変動が広く、したがって、有意な差はみられなかった。したがって、回避間隔に関しては、利点は、いずれの群にも生じなかった。しかし、基礎心拍数に関しては、14日間を通して異なる結果が存在した。図42Bに示すように、食塩水の対照における平均心拍数は、電子工学的ペースメーカーの心拍数(45bpm)によって決定される平均心拍数であった。これは、mHCN2またはmE324Aを注入したイヌの平均心拍数よりも研究期間を通して有意に緩慢であった。mHCN2群とmE324A 群とでは、差はなかった。
タンデム型ペースメーカーの生物学的な構成成分と電子工学的な構成成分との間の相互関係の例を、図43に示す。生物学的な構成成分が緩慢になると、電子工学的な構成成分が引き継ぐこと、および生物学的な構成成分が迅速化すると、電子工学的な構成成分が発火を止めることが明らかである。
図44は、終末の実験におけるエピネフリンに対する応答を示す。図Aは、全3群について、エピネフリン1μg/kg/分の注入前および注入中の代表的なECGを示す。対照速度は、食塩水群、mHCN2群およびmE324A群のそれぞれで、42、44および52bpmであった。エピネフリンを加えると、速度は、44、60および81bpmに増加した。図Bは、エピネフリンの全部の用量で生じた速度の変化の概要を示す。示されているように、食塩水群では、全てのイヌで、投与したエピネフリン濃度の範囲を通して、50%未満の速度の増加および/または心室の早発性脱分極の発生を示した。mHCN2群の半分が、50%以上の心拍数の増加を生じ、これらのうちの33%が、この増加を達成するために最高用量のエピネフリンを必要とした。残りでは、50%未満の心拍数の増加または心室の早発性脱分極の発生を示した。最後に、mE324A群は、投与したエピネフリンの最低用量で、50%以上の心拍数の増加を現した。したがって、mE324A群は、その他の群のいずれよりも、はるかに高いエピネフリン感受性を示した。
電子工学的ペースメーカーまたは生物学的ペースメーカーのいずれかに代わるものとしてのタンデム治療。
上記に提示した実験データは、とりわけ、mHCN2遺伝子およびmE324A遺伝子の発現に基づく生物学的ペースメーカーが、電子工学的ペースメーカーと併行して、とぎれなく動作して、心拍数が選択された最小拍動速度を下回るのを阻止すること(図42);送達される電子工学的な拍動の全数が保存されること(図43);および電子工学的ペースメーカー単独の場合と比較して、より高い、より生理的で、かつカテコールアミン応答性の心拍数が提供されること(図44)を実証している。アデノウイルスベクターを使用して、ペースメーカー遺伝子をイヌ心臓に導入する一方で、本明細書に提示するデータは、また、hMSCが心臓へのイオンチャネル電流の送達のための有効なプラットフォームを提供することができることも示している。hMSCの使用を好む要因として、心筋細胞を含めた、多様な細胞型とギャップ結合を形成する実証された能力(図33〜図36);少なくとも6週間にわたり、安定にみえるペースメーカー活動を心臓組織で発生させる能力(Plotnikovら、2005年b);および6週後に、液性の拒絶も、細胞性の拒絶もないという証拠があり(Plotnikovら、2005年b)、これが、より長期にわたり確認されれば、hMSC仲介治療では、いずれの免疫抑制の必要性もなくなるであろうという点があげられる。また、HCNチャネルのドメインを組み換えて、心臓の状態を治療する場合に使用するために望ましいゲーティングの特徴を示すキメラのHCNチャネルを産生することができることを示すデータも提供された。
本明細書に提供したデータは、生物学的ペースメーカーの設計には、今日の電子工学的ペースメーカーに課された要求に応じる、特に、生理的な基礎心拍数および要求が高まった時に心拍数を上昇させる手段を提供する可能性があることをいっそう堅固にしている。mHCN2チャネル、mE324AチャネルおよびキメラのHCNチャネルは、異なる特徴を有する生物学的ペースメーカーを提供し、さらに、それらは、生物学的ペースメーカーが、電子工学的ペースメーカーのごとく、基礎心拍数およびカテコールアミン応答性を調整することができる原理も実証している。
電子工学的ペースメーカーの利点および欠点は、過去に検討されており(Rosenら、2004年; Rosen、2005年; Cohenら、2005年)、電子工学的ペースメーカーが、多数の心臓不整脈を治療する救命デバイスとしては、明らかに最先端技術であり、電子工学的ペースメーカーの心不全への使用も増加している。これらの利点は、電子工学的ペースメーカーの欠点を上回る(「背景技術」を参照)。電子工学的ペースメーカーは、医学上の寛解の極めて成功している形態の代表であることから、電子工学的ペースメーカーに取って代わるのは容易ではないであろうが、電子工学的ペースメーカーが完全には生理的ではないという事実から、改良の余地もあれば、究極的に電子工学的ペースメーカーに取って代わるものが望まれてもいる。しかし、電子工学的ペースメーカーに取って代わる治療法は、より持続性で、損傷を与える恐れがより少なく、より生理的でなければならない。このことを心に留めて、生物学的ペースメーカーの開発が進められている。生物学的ペースメーカーは、(1)交換の必要がない、生涯にわたり安定な生理的律動を生み出し; (2)自律的な応答性と共役する安全な基礎律動の要求を満たして、運動および情動の要求に対する応答性を容易にする点で、電子工学的ペースメーカーよりも優れており; (3)活性化の最適な経路を通して伝播が生じ、収縮の効率が最適化されるように、患者毎に適合させた部位に植え込まれ; (4)炎症、新生物または拒絶の危険を与えず;(5)催不整脈性の心配がないという可能性を有する必要があるということが示唆されている。換言すれば、生物学的ペースメーカーは、寛解ではなく、治癒でなければならない(Rosenら、2004年; Rosen、2005年)。
生物学的ペースメーカー単独または電子工学的ペースメーカー単独に基づく治療ではなくタンデム治療の使用を検討する2つの理由がある:一方は、臨床治験に関連し、他方は、より広範な臨床での使用に関連する。適切な安全性および効力の前臨床試験が完了したら、完全心ブロックおよび心房細動の患者におけるタンデム型のペースメーキングの研究が、第1相および第2相を組み合わせた治験のための合理的な出発点であろう。そのような集団は、ペースメーカー治療を必要とし、AVの逐次電子工学的ペーシングの候補ではない。そのような患者のためには、最新式の治療--要求形態の電子工学的な心室のペーシング--が必要であろうし、生物学的な植込みもまた施すことができるであろう。さらに、十分に低い速度に設定した電子工学的な構成成分は、生物学的な成分が停止した場合には、「安全策」を保証するであろう。しかし、たとえ第1相および第2相治験が、生物学的ペースメーカーの安全性および効力の証拠を提供したとしても、どれぐらい長く生物学的ペースメーカーが続くかを理解する必要がある。生物学的ペースメーカーを投与される患者の第1世代では、これは、おそらく、生涯にわたる質問であるはずであり、その間、継続して電子工学的なバックアップが存在しなければならない。
タンデム型ペースメーカーの概念のより広範な臨床適用に関して、検討すべきいくつかの課題がある。第1に、このシステムは、意図的に重複性であり、2つの完全に無関係な不全のモードを有することになるであろう。2つの独立した植込み/埋込み部位および独立したエネルギー源は、(例えば、心筋梗塞による)捕獲の損失の場合には、安全機構を提供するであろう。第2に、電子工学的ペースメーカーは、ベースラインの安全策のみならず、臨床医の精査に向けて全心拍の継続的な記録も提供し、したがって、患者の進展する生理およびタンデム型ペースメーカーシステムの性能に関する洞察を提供するであろう。第3に、大部分の心臓のペーシングを行うように、生物学的ペースメーカーを設計するので、電子工学的ペースメーカーの寿命延長を、劇的に改善することができるであろう。また、電子工学的ペースメーカーの大きさをさらに小さくすることができる一方で、寿命延長を維持することが可能であろう。最後に、タンデム型システムの生物学的な構成成分は、真に自律的な応答性を提供すると思われ、これは、40年以上にわたる電子工学的ペースメーカーの研究開発が達成できなかった目標である。
(参考文献)
可能なキメラのHCNチャネルを示す模式図である。HCN2の要素(明るい線で示す)およびHCN1の要素(暗い線で示す)から構築し、HCN1の迅速な活性化動態をHCN2の強力なcAMP応答と組み合わせるように設計したチャネルの例を示す。このアプローチは、HCNチャネルのC末端細胞質側ドメインが、環状ヌクレオチド結合ドメインを含有し、cAMP応答性に顕著に寄与し、膜貫通ドメインが、活性化動態等のゲーティングの特徴に顕著に寄与するという事実に基づいている。上から下へ: HCN2、HCN212 (中央、すなわち、HCN2の膜貫通部分がHCN1の対応する部分で交換されている)、HCN112 (HCN1のC末端細胞質側部分がHCN2の対応する部分で交換されている)、およびHCN1を示す。 野生型または遺伝子操作したペースメーカー細胞、および遺伝子操作した幹細胞ペースメーカーによる自発的律動の開始を示す図である。上図。自然のペースメーカー細胞または遺伝子導入によりペースメーカー電流を組み入れるように操作した筋細胞においては、活動電位(挿入図)が、膜を貫通するHCNチャネルを通して流れる内向き電流を介して開始される。これらは、膜が最大拡張期電位まで再分極すると開き、膜が活動電位の間に脱分極すると閉じる。電流が筋細胞に隣接するギャップ結合を介して流れると、その結果、筋細胞の興奮および活動電位の伝導系を介する伝播が生じる。下図。幹細胞は、膜内にHCNチャネルを組み入れるように操作されている。膜が過分極している場合に限って、これらのチャネルは開くことができ、電流がチャネルを流れることができる(挿入図)。そのような過分極は、隣接する筋細胞が、幹細胞にギャップ結合を介して堅固に共役している場合に限って送達することができる。そのような共役および局所的な電流の流れを誘発するHCNチャネルの開口の存在下で、隣接する筋細胞が、興奮し、活動電位を開始し、次いで、活動電位は、伝導系を通して伝播する。活動電位の脱分極の結果、次の再分極が大きな負の膜電位を回復するまで、HCNチャネルは閉じた状態になる。したがって、野生型および遺伝子操作したペースメーカー細胞は、各細胞内に、活動電位を開始および伝播するのに必要な全ての機構を組み入れている。対照的に、幹細胞-筋細胞の対形成においては、2種の細胞が、単一の機能単位として一緒に働き、その動作は、2つの異なる細胞型の間に形成されるギャップ結合に決定的に依存する。 洞房結節(SAN)におけるペースメーカー電位の発生におけるIfの役割を示す図である(Bielら、2002年)。対照条件下およびノルエピネフリン(NE)を用いたβアドレナリン作動性刺激後のSANにおけるペースメーカー電位を示す図である。ペースメーカー電位の発生を制御する4種の主要な電流を示す: If電流(過分極活性化環状ヌクレオチド依存性[HCN]チャネルによって発生する)、T型(ICaT)およびL型(ICaL)のカルシウム電流、ならびに再分極化K電流(IK)。 洞房結節(SAN)におけるペースメーカー電位の発生におけるIfの役割を示す図である(Biel et al., 2002)。細胞性環状アデノシン一リン酸(cAMP)の上方制御または下方制御によるHCNチャネルの制御を示すSAN細胞の模式図である。M2: 2型ムスカリン受容体; ACh:アセチルコリン; AC:アデニル酸シクラーゼ; Gαi: Gタンパク質αサブユニット(ACを阻害する); Gβγ: Gタンパク質βγサブユニット; β1-AR: 1型βアドレナリン作動性受容体; Gαs: Gタンパク質αサブユニット(ACを刺激する);ΔV: cAMPの増加または減少によって誘発されたHCNチャネル活性化の電位依存性のシフト。 哺乳動物のHCN1ポリペプチド配列のアライメントを示す図である。マウス(配列番号・)、ラット(配列番号・)、ヒト(配列番号・)、ウサギ(配列番号・)、およびモルモット(部分配列;配列番号・)のHCN1ポリペプチドの配列を、最大の一致となるようにアライメントさせている。 ヒトHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を示す図である。陰影をつけた配列のN末端部分は、hHCN2に由来し、下線を引いた膜貫通部分は、hHCN1に由来し、(陰影も下線もない) C末端部分は、hHCN2に由来する。hHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を、配列番号・に記載する。最大の一致となるようにアライメントさせた場合、この889個のアミノ酸長のキメラhHCN212の配列は、893残基のオーバーラップにおいて、863個のアミノ酸長のmHCN212の配列と91.2%の同一性を示す。 マウスHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を示す図である。陰影をつけた配列のN末端部分は、マウスHCN2に由来し、下線を引いた膜貫通部分は、マウスHCN1に由来し、(陰影も下線もない) C末端部分は、マウスHCN2に由来する。マウスHCN212キメラのチャネルのアミノ酸配列を、配列番号・に記載する。最大の一致となるようにアライメントさせた場合、この863個のアミノ酸長のキメラmHCN212の配列は、893残基のオーバーラップにおいて、889個のアミノ酸長のhHCN212の配列と91.2%の同一性を示す。 哺乳動物のHCN2ポリペプチド配列のアライメントを示す図である。マウス(配列番号・)、ラット(配列番号・)、ヒト(配列番号・)、およびイヌ(部分配列;配列番号・)のHCN2ポリペプチドの配列を、最大の一致となるようにアライメントさせている。 哺乳動物のHCN3ポリペプチド配列のアライメントを示す図である。マウス(配列番号・)およびヒト(配列番号・)のHCN3ポリペプチドの配列を、最大の一致となるようにアライメントさせると、780残基のオーバーラップにおいて、94.6%の同一性を示す。アステリスクは、同一の残基を示し、ピリオドは、同一でない残基を示す。 哺乳動物のHCN4ポリペプチド配列のアライメントを示す図である。マウス(配列番号・)、ラット(配列番号・)、ヒト(配列番号・)、ウサギ(配列番号・)、およびイヌ(部分配列;配列番号・)のHCN4ポリペプチドの配列を、最大の一致となるようにアライメントさせている。 図10Aは、新生仔の心室筋細胞におけるmHCN2およびmE324Aの機能的発現を示す図である。AdmHCN2に感染させた心室筋細胞の代表的な全細胞電流の記録を示す。電流を、-10mVの保持電位から、-25mVから-125mVまでの範囲に及ぶ異なる過分極化電位段階まで段階的に-10mVずつ増加させることによって誘発した。右の挿入図は、mHCN2およびmE324Aの両方について、-35、-45および-55mVで記録した電流の記録を拡大した目盛で示す。 図10Bは、新生仔の心室筋細胞におけるmHCN2およびmE324Aの機能的発現を示す図である。AdmE324Aに感染させた心室筋細胞の代表的な全細胞電流の記録を示す。電流を、-10mVの保持電位から、-25mVから-125mVまでの範囲に及ぶ異なる過分極化電位段階まで段階的に-10mVずつ増加させることによって誘発した。右の挿入図は、mHCN2およびmE324Aの両方について、-35、-45および-55mVで記録した電流の記録を拡大した目盛で示す。 図10Cは、新生仔の心室筋細胞におけるmHCN2およびmE324Aの機能的発現を示す図である。説明のために、mHCN2 (四角)およびmE324A (丸)の電流の平均活性化のデータを、ボルツマンの式(線)に当てはめた。 図10Dは、新生仔の心室筋細胞におけるmHCN2およびmE324Aの機能的発現を示す図である。mHCN2 (四角)およびmE324A (丸)の活性化(中が黒い記号)および非活性化(中が白い記号)の時定数の電位依存性を示す。活性化の平均値は、mHCN2およびmE324Aの両方について、14個の細胞から求め、非活性化の時定数の平均値は、mHCN2では8個の細胞およびmE324Aでは7個の細胞から求めた。 mHCN2およびmE324AのcAMPによる調節を示す図である。ピペット溶液中の10μM cAMPの非存在下(中が白い記号)および存在下(中が黒い記号)で求めたmHCN2 (四角)およびmE324A (丸)の平均活性化分率曲線を示す。cAMPの非存在 下(実線)および存在下(破線)の実験の場合、平均データは、ボルツマンの式に当てはまった。mHCN2に関する計算値は、cAMPの非存在下およびcAMPの存在下のそれぞれについて、V1/2 = -69.6mVおよび-59.9 (9.7mVのシフト)、ならびにs = 10.8および11.0mVであった。mE324Aに関する計算値は、cAMPの非存在下およびcAMPの存在下のそれぞれについて、V1/2 = -46.3mV および-40.7mV (5.6mV) 、ならびにs = 9.1mVおよび8.7mVであった。 図12Aは、卵母細胞において発現した野生型mHCN2または変異mE324Aの活性化を示す図である。発現したmHCN2の活性化を示す。上図: 発現したmHCN2およびmE324Aの活性化の典型的な記録。挿入図は、使用したパルスのプロトコールを示す。mHCN2の場合、電流を、10mVずつ増加させる-30mVと-160mVとの間の2秒間の過分極化パルス、次いで、+15mVまでの1秒の脱分極化パルスによって誘発した。保持電位は、-30mVであった。mE324Aの場合、電流を、10mVずつ増加させる+20mVと-130mVとの間の3秒間の過分極化パルス、次いで、+50mVまでの1秒の脱分極化パルスによって誘発した。保持電位は、+20mVであった。中央図:定常状態の活性化曲線を構築するために使用した対応するテール電流。下図: mHCN2またはmE324Aの活性化曲線。データは、ボルツマンの式(1/[1+exp((V1/2-Vtest)/s)])に当てはまった。mHCN2の場合、最大半量活性化(Vh)は、-92.7mV±1.1mV (n = 9個の細胞)であり、電流は、約-130mVで飽和した。mE324Aの場合、より正の活性化の閾値(約-30mV)が認められ、Vhは、-57.3mV±1.6mV (n = 9個の細胞)であった。 図12Bは、卵母細胞において発現した野生型mHCN2または変異mE324Aの活性化を示す図である。mE324Aの活性化を示す。上図: 発現したmHCN2およびmE324Aの活性化の典型的な記録。挿入図は、使用したパルスのプロトコールを示す。mHCN2の場合、電流を、10mVずつ増加させる-30mVと-160mVとの間の2秒間の過分極化パルス、次いで、+15mVまでの1秒の脱分極化パルスによって誘発した。保持電位は、-30mVであった。mE324Aの場合、電流を、10mVずつ増加させる+20mVと-130mVとの間の3秒間の過分極化パルス、次いで、+50mVまでの1秒の脱分極化パルスによって誘発した。保持電位は、+20mVであった。中央図:定常状態の活性化曲線を構築するために使用した対応するテール電流。下図: mHCN2またはmE324Aの活性化曲線。データは、ボルツマンの式(1/[1+exp((V1/2-Vtest)/s)])に当てはまった。mHCN2の場合、最大半量活性化(Vh)は、-92.7mV±1.1mV (n = 9個の細胞)であり、電流は、約-130mVで飽和した。mE324Aの場合、より正の活性化の閾値(約-30mV)が認められ、Vhは、-57.3mV±1.6mV (n = 9個の細胞)であった。 図12Cは、卵母細胞において発現した野生型mHCN2または変異mE324Aの活性化を示す図である。mHCN2およびmE324Aの活性化の時定数を示す。mE324Aにおける、電位依存性の正のシフトおよびより迅速な活性化の動態の両方に注目されたい。 図12Dは、卵母細胞において発現した野生型mHCN2または変異mE324Aの活性化を示す図である。mHCN2およびmE324Aの活性化の時定数を示す。mE324Aにおける、電位依存性の正のシフトおよびより迅速な活性化の動態の両方に注目されたい。 mHCN2またはmE324Aを注入した卵母細胞におけるIHCN2のcAMPによる調節を示す図である。規準化したイオンのコンダクタンスは、ボルツマンに当てはまり、mHCN2 (左図)およびmE324A (右図)の両方で、8-Br-cAMP (cAMP、1mM)の細胞外への適用が、IHCN2の最大半量活性化の電位(Vh)を7〜8mV正にシフトさせることを示した。 図14Aは、mHCN2およびmE324Aに関する薬理学的評価およびIHCN2の逆転電位を示す図である。mHCN2に関する、IHCN2の電流/電位の関係を示す。上図: Ifの電流/電位の関係を記録するための電位プロトコール。mHCN2の場合、細胞を-30mVで保持し、電流を、活性化を飽和させる-140mVまでの2秒の過分極化電位段階、次いで、10mVずつ増加させる-80mVと+50mVとの間の2秒の脱分極化電位段階によって誘発した。E324Aの場合、細胞を+20mVで保持し、電流を、活性化を飽和させる-110mVまでの1.5秒の過分極化電位段階、次いで、テール電流を記録するための10mVずつ増加させる-80mVと+50mVとの間の1.5秒の脱分極化電位段階によって誘発した。下図:対照、Cs+ (5mM)、および洗い流しの条件のそれぞれの存在下で、IHCN2の完全に活性化された電流/電位の関係を構築するために使用した代表的な記録。mHCN2およびmE324Aの両方で、IfがCs+によって大幅に抑制されたことに注目されたい。 図14Bは、mHCN2およびmE324Aに関する薬理学的評価およびIHCN2の逆転電位を示す図である。mE324Aに関する、IHCN2の電流/電位の関係を示す。上図: Ifの電流/電位の関係を記録するための電位プロトコール。mHCN2の場合、細胞を-30mVで保持し、電流を、活性化を飽和させる-140mVまでの2秒の過分極化電位段階、次いで、10mVずつ増加させる-80mVと+50mVとの間の2秒の脱分極化電位段階によって誘発した。E324Aの場合、細胞を+20mVで保持し、電流を、活性化を飽和させる-110mVまでの1.5秒の過分極化電位段階、次いで、テール電流を記録するための10mVずつ増加させる-80mVと+50mVとの間の1.5秒の脱分極化電位段階によって誘発した。下図:対照、Cs+ (5mM)、および洗い流しの条件のそれぞれの存在下で、IHCN2の完全に活性化された電流/電位の関係を構築するために使用した代表的な記録。mHCN2およびmE324Aの両方で、IfがCs+によって大幅に抑制されたことに注目されたい。 図14Cは、mHCN2およびmE324Aに関する薬理学的評価およびIHCN2の逆転電位を示す図である。mHCN2について、対照、Cs+、および洗い流しの条件の存在下で、完全に活性化された電流/電位曲線を示す。完全に活性化された電流/電位の関係を、テール電流の大きさを、(図15AおよびBから得た)2つの試験電位の間で生じたゲート変数の変化で割ることによって構築した。IHCN2の計算逆転電位は、mHCN2で-41mV、およびmE324Aで-40mVであった。 図14Dは、mHCN2およびmE324Aに関する薬理学的評価およびIHCN2の逆転電位を示す図である。mE324Aについて、対照、Cs+、および洗い流しの条件の存在下で、完全に活性化された電流/電位曲線を示す。完全に活性化された電流/電位の関係を、テール電流の大きさを、(図15AおよびBから得た)2つの試験電位の間で生じたゲート変数の変化で割ることによって構築した。IHCN2の計算逆転電位は、mHCN2で-41mV、およびmE324Aで-40mVであった。 mHCN2またはmE324Aを注入した卵母細胞のおけるIHCN2の電流の大きさの比較を示す図である。IHCN2を、-120 mVで、mHCN2 (n = 10個の細胞)およびmE324A (n = 10個の細胞)について測定した。発現したmE324Aの場合、電流の大きさがより小さいことに注目されたい(t検定、P < 0.01)。電位プロトコールを、挿入図に示す。mHCN2の場合、電流を、-30mVの保持電位から-120mVまでの3秒の過分極化電位パルスを適用することによって誘発した。mE324Aの場合、電流を、+20mVの保持電位から-120mVまでの3秒の過分極化電位パルスを適用することによって誘発した。 新生仔心室培養物における自然のIf、およびHCN2またはHCN4が発現させたIfの電流の記録を示す図である。対照の(形質移入されていない)筋細胞からの記録を示す。 新生仔心室培養物における自然のIf、およびHCN2またはHCN4が発現させたIfの電流の記録を示す図である。リポフェクチンを使用して、pCI-mHCN2およびpEGFP-C1を同時形質移入した筋細胞からの記録を示す。 新生仔心室培養物における自然のIf、およびHCN2またはHCN4が発現させたIfの電流の記録を示す図である。リポフェクチンを使用して、pCI-mHCN4およびpEGFP-C1を同時形質移入した筋細胞からの記録を示す。全ての図において、試験電位を、10mVずつ増加させて、-55から-125Vまで変動させた。図16Aからは、理解しやすいように、記録を選択し、省略していることに留意されたい。 新生仔心室において発現させたHCN2およびHCN2の活性化-電位の関係および動態を示す図である。ボルツマンの関係を使用して、活性化の関係に変換したI-V曲線を示す。自然の電流の活性化の関係(破線)を、Quら、(2000年)から得ている。 新生仔心室において発現させたHCN2およびHCN2の活性化-電位の関係および動態を示す図である。自然のIfの電流の活性化の時定数、ならびに発現したIHCN2およびIHCN4の電流の活性化の時定数を示す。 成体心室筋細胞の電流の記録を示す図である。急速に単離した筋細胞の記録を示す。 成体心室筋細胞の電流の記録を示す図である。培養中に48時間維持した成体筋細胞の記録を示す。 成体心室筋細胞の電流の記録を示す図である。AdHCN2を感染させ、次いで、培養中に48時間維持した成体筋細胞の記録を示す。図18Cでは、垂直の目盛が異なることに留意されたい。 成体心室筋細胞の電流の記録を示す図である。電位プロトコールを示す。 HCN2の過剰発現が新生仔心室培養物の自発的な活動に及ぼす効果を示す図である。単層培養物にAdHCN2またはAdGFPを感染させ、次いで、自発的な活動電位を、全細胞パッチ電極を用いて記録した。対照の単層培養物からの自発的な活動電位を示す。 HCN2の過剰発現が新生仔心室培養物の自発的な活動に及ぼす効果を示す図である。単層培養物にAdHCN2またはAdGFPを感染させ、次いで、自発的な活動電位を、全細胞パッチ電極を用いて記録した。AdHCN2を感染させた単層培養物からの自発的な活動電位を示す。 HCN2の過剰発現が新生仔心室培養物の自発的な活動に及ぼす効果を示す図である。単層培養物にAdHCN2またはAdGFPを感染させ、次いで、自発的な活動電位を、全細胞パッチ電極を用いて記録した。対照、AdHCN2感染培養物、およびAdGFP感染培養物を、自発的な速度、第4相の脱分極の勾配、および最大拡張期電位(MPD)に関して比較した概要データを示す。アステリスクは、対照培養物に対する有意な差を示す。nの値は、対照が16〜17、AdHCN2感染が12〜16、AdGFP感染が6であった。 AdHCN2感染培養物におけるイソプロテレノールによる速度の調節を示す図である。対照の灌流の間の自発的な速度の活性化電位の記録を示す。 AdHCN2感染培養物におけるイソプロテレノールによる速度の調節を示す図である。イソプロテレノールを用いた灌流の間の同一の培養物からの記録を示し、これは、自発的な速度が、対照の記録の間の48bpmから、薬物暴露の間には63bpmに増加することを実証している。 AdHCN2感染培養物におけるカルバコールによる速度の調節を示す図である。対照の灌流の間の自発的な速度の活性化電位の記録を示す。 AdHCN2感染培養物におけるカルバコールによる速度の調節を示す図である。カルバコールを用いた灌流の間の同一の培養物からの記録を示し、これは、自発的な速度が、対照の記録の間の54bpmから、薬物暴露の間には45bpmに減少することを実証している。 AdHCN2感染培養物におけるZD-7288による速度の調節を示す図である。対照の灌流の間の自発的な速度の活性化電位の記録を示す。 AdHCN2感染培養物におけるZD-7288による速度の調節を示す図である。ZD-7288を用いた灌流の間の同一の培養物からの記録を示し、これは、自発的な速度が、対照の記録の間の96bpmから、薬物暴露の間には78bpmに減少することを実証している。 イソプロテレノールの閾値濃度が新生仔心室筋細胞において発現させたHCN2電流に及ぼす効果を示す図である。イソプロテレノールへの暴露によって、活性化曲線の中間点までの電位段階に対して、電流が増加したが、活性化曲線の最大値までの第2の電位段階で達成した最大電流は増加しなかったことを示し、これは、この効果は、活性化曲線を電位軸上で正にシフトさせる性質であることを実証している。別の測定は、この細胞におけるシフトの大きさが、約5mVであることを示した。 成体筋細胞における自然のIfの活性化の関係および動態を示す図である。急速に分離した成体心室筋細胞および培養した成体心室筋細胞におけるIfの活性化の関係を示す。 成体筋細胞における自然のIfの活性化の関係および動態を示す図である。急速に分離した成体心室筋細胞および培養した成体心室筋細胞における自然のIfの電流の活性化の時定数を示す。図17からの新生仔のデータを、比較のために、破線で重ねて示す。 新生仔心室および成体心室においてAdCHN2を用いて発現させたIHCN2の活性化の関係および動態を示す図である。テール電流によって測定した新生仔心室培養物および成体心室培養物の活性化の関係を示す。 新生仔心室および成体心室においてAdCHN2を用いて発現させたIHCN2の活性化の関係および動態を示す図である。新生仔心室および成体心室に関する活性化の時定数(四角)および非活性化の時定数(丸)を示す。線は、式への最良のフィッティングから得ている。 新生仔筋細胞および成体筋細胞において発現させたHCN2電流密度の関数としてのV1/2に関するボルツマン関係の回帰の関係を示す図である。培養物に、AdHCN2を感染させた。線は、計算された線形回帰である。垂直および水平のエラーバーはそれぞれ、V1/2およびIHCN2のS.E.M.を示す。挿入図は、< 60pA/pFの電流密度の拡大した目盛を示す。 新生仔筋細胞および成体筋細胞において発現させたHCN2電流の活性化の関係に及ぼす細胞内cAMPの効果を示す図である。対照のピペット溶液を用いた以前のデータ(図25A)を、破線(新生仔)および点線(成体)で示す。 成体心室筋細胞におけるHCN2の過剰発現の効果を示す図である。対照の筋細胞(左、刺激の時間経過を含む)およびAdCHN2感染筋細胞(右)からの代表的な陽極解放刺激の記録を示す。これら2例の静止電位はそれぞれ、-66および-60mVである。理解しやすいように、選択した記録のみを示す。 成体心室筋細胞におけるHCN2の過剰発現の効果を示す図である。陽極刺激の間に達成した最大の負の電位と、(-125mVまでの2秒の電位段階の終わりに測定した)IfまたはIHCN2の電流密度との間の関係をグラフに示す。挿入図は、拡大した時間に基づく、0〜1.2pA/pFの電流密度の範囲を示し、計算された線形回帰を実線で示している。 アフリカツメガエル卵母細胞におけるminKを伴う場合またはそうでない場合、およびMiRP1を伴う場合またはそうでない場合のHCN1およびHCN2の機能的な発現を示す図である。保持電位は、-35mVであり、電位の増加は、常に10mVである。5ngのHCN1のcRNAの注入、および3秒間の-65mVから-115mVの最大電位までの試験パルス。 アフリカツメガエル卵母細胞におけるminKを伴う場合またはそうでない場合、およびMiRP1を伴う場合またはそうでない場合のHCN1およびHCN2の機能的な発現を示す図である。保持電位は、-35mVであり、電位の増加は、常に10mVである。0.2ngのminKを加えた5ngのHCN1の注入、および3秒間の-55mVの最小電位から-115mVの最大電位までの試験パルス。 アフリカツメガエル卵母細胞におけるminKを伴う場合またはそうでない場合、およびMiRP1を伴う場合またはそうでない場合のHCN1およびHCN2の機能的な発現を示す図である。保持電位は、-35mVであり、電位の増加は、常に10mVである。0.2ngのMiPR1を加えた5ngのHCN1の注入、および3秒間の-55mVから-115mVまでの試験パルス。 アフリカツメガエル卵母細胞におけるminKを伴う場合またはそうでない場合、およびMiRP1を伴う場合またはそうでない場合のHCN1およびHCN2の機能的な発現を示す図である。保持電位は、-35mVであり、電位の増加は、常に10mVである。5ngのHCN2のcRNAの注入、および8秒間の-55mVから-95mVまでの試験パルス。 アフリカツメガエル卵母細胞におけるminKを伴う場合またはそうでない場合、およびMiRP1を伴う場合またはそうでない場合のHCN1およびHCN2の機能的な発現を示す図である。保持電位は、-35mVであり、電位の増加は、常に10mVである。0.2ngのminKを加えた5ngのHCN2注入、および8秒間の-65mVから-105mVまでの試験パルス。 アフリカツメガエル卵母細胞におけるminKを伴う場合またはそうでない場合、およびMiRP1を伴う場合またはそうでない場合のHCN1およびHCN2の機能的な発現を示す図である。保持電位は、-35mVであり、電位の増加は、常に10mVである。0.2ngのMiRP1を加えた5ngのHCN2注入、および8秒間の-55mVから-95mVまでの試験パルス。 アフリカツメガエル卵母細胞におけるminKを伴う場合またはそうでない場合、およびMiRP1を伴う場合またはそうでない場合のHCN1およびHCN2の機能的な発現を示す図である。保持電位は、-35mVであり、電位の増加は、常に10mVである。テール電流の最大コンダクタンスを、その振幅をその電位での推進力で割ることによって得た。 発現させたチャネルのゲーティングの特性を示す図である。HCN1単独およびMiRP1と同時発現させたHCN1の活性化曲線を示す。挿入図は、活性化曲線を構築するのに使用した代表的なテール電流を示す。 発現させたチャネルのゲーティングの特性を示す図である。HCN2単独およびMiRP1と同時発現させたHCN2の活性化曲線を示す。 発現させたチャネルのゲーティングの特性を示す図である。HCN1単独およびMiRP1と同時発現させたHCN1の活性化の動態を例示するサンプルデータを示す。 発現させたチャネルのゲーティングの特性を示す図である。HCN2単独およびMiRP1と同時発現させたHCN2の活性化の動態を例示するサンプルデータを示す。 発現させたチャネルのゲーティングの特性を示す図である。HCN1単独およびHCN1 + MiRP1の活性化および非活性化(枠内)の時定数プロットを示す。 発現させたチャネルのゲーティングの特性を示す図である。図30Eと同様であるが、HCN2およびHCN2 + MiRP1に関する。 ウサギにおけるリボヌクレアーゼプロテクションアッセイによって決定したMiRP1のmRNAの発現を示す図である。左心室、右心房、SA結節および全脳から単離した全RNA、2μg上で行った代表的なRPAの例を示す。 ウサギにおけるリボヌクレアーゼプロテクションアッセイによって決定したMiRP1のmRNAの発現を示す図である。MiRP1の相対的な存在量を示すヒストグラムを示す。データを、シクロフィリン保護断片に対して規準化し、値は、3つの独立したmRNAの試料の平均であり、エラーバーは、SEMである。 図32Aは、HCN1イオンチャネルサブユニットを用いた免疫沈降に続く、アフリカツメガエル卵母細胞におけるMiRP1を伴うまたは伴わないHCN1チャネルサブユニットのタンパク質の発現を示すウエスタンブロットを示す図である。分画し、抗HCN1抗体でプローブした卵母細胞膜中のタンパク質を示す。 図32Bは、HCN1イオンチャネルサブユニットを用いた免疫沈降に続く、アフリカツメガエル卵母細胞におけるMiRP1を伴うまたは伴わないHCN1チャネルサブユニットのタンパク質の発現を示すウエスタンブロットを示す図である。抗HA抗体でプローブした卵母細胞膜タンパク質を示す。 図32Cは、HCN1イオンチャネルサブユニットを用いた免疫沈降に続く、アフリカツメガエル卵母細胞におけるMiRP1を伴うまたは伴わないHCN1チャネルサブユニットのタンパク質の発現を示すウエスタンブロットを示す図である。抗HA抗体でプローブしたHCN1のcRNA、MiRP1のcRNA、または両方のcRNAを注入した卵母細胞の膜タンパク質からの抗HCN1抗体によるIP反応の産物を示す。 ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。Cx43免疫染色を示す。 ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。Cx40免疫染色を示す。 ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。Cx45免疫染色を示す。 ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のギャップ結合におけるコネキシンの同定を示す図である。イヌ心室筋細胞およびhMSCにおけるCx43の免疫ブロット解析を示す。心室細胞またはhMSCからの全細胞可溶化液(120μg)をSDSで分解し、膜に移動させ、Cx43抗体を用いてブロットした。分子量マーカーを示す。 hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。対称的な双極性パルスプロトコール(10秒、±10mVから±110mVまで、Vh = 0mV)を使用してhMSCから誘発されたギャップ結合電流(Ij)は、対称的(A)な電位依存性電流非活性化を示した。 hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。対称的な双極性パルスプロトコール(10秒、±10mVから±110mVまで、Vh = 0mV)を使用してhMSCから誘発されたギャップ結合電流(Ij)は、非対称的(B)な電位依存性電流非活性化を示した。 hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。規準化した瞬時(○)および定常状態(●)のgjのVjに対する概要プロットを示す。左図、5つの対からの準対称的な関係;実線、ボルツマンフィッティング:負/正のVjについて、Vj,0 = -70/65mV、gj,min= 0.29/0.34、gj,max = 0.99/1.00、z = 2.2/2.3。右図、6つの対からの非対称的な関係;負のVjでのボルツマンフィッティング: Vj,0 = -72mV、gj,min = 0.25、gj,max = 0.99、z =1.5。 hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。hMSCの対からの単一チャネルの記録を示す。パルスプロトコール(V1およびV2)、およびVjを±80mVに維持した間の細胞対から記録した、関連するマルチチャネル電流(I2)。別々の電流の段階は、単一チャネルの開口および閉鎖を示す。破線:電流レベルゼロ。右手側の全ての点の電流ヒストグラムは、約50pSのコンダクタンスを示す。 hMSC対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。hMSCの対からの単一チャネルの記録を示す。パルスプロトコール(V1およびV2)、およびVjを±80mVに維持した間の細胞対から記録した、関連するマルチチャネル電流(I2)。別々の電流の段階は、単一チャネルの開口および閉鎖を示す。破線:電流レベルゼロ。右手側の全ての点の電流ヒストグラムは、約50pSのコンダクタンスを示す。 hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。hMSC-HeLaCx43対において、一連の5秒電位段階(Vj)に応答して誘発されたIjを示す。上、対称的な電流の非活性化;下、非対称的な電流の電位依存性。 hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。hMSC-HeLaCx40対からの巨視的なIjの記録が、対称的(上図)および非対称的(下図)な電位依存性の非活性化を示す。 hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。Cx45側が相対的に負である場合、hMSC-HeLaCx43対からの非対称的なIjが、電位依存性のゲーティングを示す。hMSCから記録したIj hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。hMSCと形質移入したHeLa細胞との間の対からのgj,ssプロット対Vjを示す。左図、hMSC-HeLaCx43対、準対称的な関係(●)および非対称的な関係(○);実線および破線は、ボルツマンフィッティングである(詳細は本文を参照)。中央図、hMSC-HeLaCx40対からの対称的な関係(●)および非対称的な関係(○);実線および破線は、ボルツマンフィッティングに対応する(詳細は本文を参照)。右図、hMSC-HeLaCx45細胞対からの非対称的な関係; 実線、正のVjでのボルツマンフィッティング(詳細は本文を参照)。 hMSCとCx40、Cx43またはCx45のみを発現するHeLa細胞との間の細胞対の接合部の巨視的な特性を示す図である。全ての場合において、hMSCのHeLa細胞との共役を、同時培養開始6から12時間後に試験した。細胞対における細胞から細胞へのLucifer Yellow (LY)の広がりを示す: hMSCからhMSCへ(上図)、HeLaCx43からhMSCへ(中央図)、およびhMSCからHeLaCx43へ(下図)。全ての場合に、2mM LYを含有するピペットを、全細胞配置の左手側の細胞に付着させた。色素注入12分後に撮影した落射蛍光顕微鏡による顕微鏡写真は、LYの隣接する(右手の)細胞への広がりを示している。同時に測定した接合部のコンダクタンスは、それぞれの対で、約13nS、約16nSおよび約18nSのgjを示した。全ての実験において、Cell Tracker Greenを使用して、hMSCとHeLa細胞とを相互に区別した。 hMSC-イヌ心室細胞対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。筋細胞を第12から72時の間に播種し、hMSCと共に6から12時間同時培養してから、共役を測定した。hMSC-イヌ心室細胞対の場合のCx43の局在化を示す。Cx43の大部分が、心室細胞の末端に局在化し、Cx43の少量は、外側の境界に沿って存在した。強力なCx43の染色が、桿状の心室細胞(中央の細胞)の末端とhMSC(右の細胞)の間に検出された。左側では、心室細胞とhMSCとの間には、Cx43の染色は検出されていない。 hMSC-イヌ心室細胞対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。筋細胞を第12から72時の間に播種し、hMSCと共に6から12時間同時培養してから、共役を測定した。上、hMSC-イヌ心室筋細胞対の位相差顕微鏡写真。下、単極パルスプロトコール(V1およびV2)、および非対称的な電位依存性を示す関連する巨視的な接合部の電流(I2)。 hMSC-イヌ心室細胞対の間のギャップ結合の巨視的特性および単一チャネルの特性を示す図である。筋細胞を第12から72時の間に播種し、hMSCと共に6から12時間同時培養してから、共役を測定した。上、対称的な二相性の60mVパルスによって誘発されたマルチチャネル電流。破線、電流レベルゼロ;点線、チャネルの開口および閉鎖を示す別々の電流の段階を示す。電流ヒストグラムは、約40〜50pSのコンダクタンスを生じた。下、Vjを60mVに維持した間のマルチチャネルの記録。電流ヒストグラムは、48〜64pSのいくつかのコンダクタンスを示し、84pSから99pSのコンダクタンスを有するいくつかの現象(矢印)を伴い、これは、Cx43チャネル、ヘテロタイプCx43-Cx40チャネルおよび/またはホモタイプCx40チャネルの動作に類似する。 左の図は、新生仔ラット心室筋細胞で発現させた場合のmHCN2チャネルとキメラのmHCN212チャネルとのゲーティング動態の比較を示す図である。mHCN2チャネル(中が黒い四角)およびキメラのmHCN212チャネル(中が黒い丸)を使用した結果を示す。X軸上に示す電位に対する過分極化試験電位について、電流の記録の(初期の遅延を取り除いた)早期の部分を単一指数関数に当てはめることによって決定した活性化の動態を示す。 右の図は、新生仔ラット心室筋細胞で発現させた場合のmHCN2チャネルとキメラのmHCN212チャネルとのゲーティング動態の比較を示す図である。mHCN2チャネル(中が黒い四角)およびキメラのmHCN212チャネル(中が黒い丸)を使用した結果を示す。チャネルを完全に活性化するための負の電位への前パルスに続く、脱分極化試験電位から示した電位までの電流の記録を当てはめることによって決定した非活性化の動態を示す。各場合について、単一指数関数のフィッティングの時定数を、y軸に上にプロットすると、全ての電位で、mHCN212は、mHCN2に比較してより迅速な動態を示している。 左の図は、新生仔ラット心室筋細胞におけるmHCN2チャネルとキメラのmHCN212チャネルとの発現効率の比較を示す図である。チャネルを最大に活性化する負の電位までの段階で発現した電流の平均電流密度を示す。 右の図は、新生仔ラット心室筋細胞におけるmHCN2チャネルとキメラのmHCN212チャネルとの発現効率の比較を示す図である。活性化の電位依存性のプロットを示す。 左の図は、筋細胞と幹細胞とで発現させたmHCN212の特徴の比較を示す図である。新生仔ラット心室筋細胞およびヒト成体間葉系幹細胞におけるマウスHCN212の発現から発生する電流を測定した。活性化の電位依存性。 右の図は、筋細胞と幹細胞とで発現させたmHCN212の特徴の比較を示す図である。新生仔ラット心室筋細胞およびヒト成体間葉系幹細胞におけるマウスHCN212の発現から発生する電流を測定した。活性化の動態。 図40Aは、卵母細胞で発現させた野生型mHCN2およびmHCN212の特性を示す図である。定常状態の活性化曲線を示す。 図40Bは、卵母細胞で発現させた野生型mHCN2およびmHCN212の特性を示す図である。活性化の動態を示す。 図40Cは、卵母細胞で発現させた野生型mHCN2およびmHCN212の特性を示す図である。cAMPによる調節を示す。 左の図は、成体ヒト間葉系幹細胞で発現させた場合のHCN2チャネルとキメラのHCN212チャネルとのゲーティングの特徴の比較を示す図である。mHCN212 (中が黒い丸)の場合、HCN2 (中が黒い四角)と比較して、活性化の電位依存性が、顕著に正にシフトしているのを示す。 右の図は、成体ヒト間葉系幹細胞で発現させた場合のHCN2チャネルとキメラのHCN212チャネルとのゲーティングの特徴の比較を示す図である。mHCN212の場合、HCN2と比較して、活性化の動態が、いずれの測定電位においても顕著に迅速であることを示す。 図42Aは、生物学的-電子工学的タンデム型ペースメーカーと電子工学的のみのペースメーカーとの性能の比較を示す図である。食塩水を注入し、かつ電子工学的ペースメーカーを埋め込んだ心臓、または電子工学的ペースメーカーと併行してmHCN2を注入した心臓で生じた電子工学的にペーシングした拍動の割合を示す。両群で、電子工学的ペースメーカーを、VVI 45bpmに設定した。14日間を通して、電子工学的に開始した拍動の数は、各時点で比較すると、HCN2注入群よりも食塩水注入群の方が多かった(P < 0.05)。 図42Bは、生物学的-電子工学的タンデム型ペースメーカーと電子工学的のみのペースメーカーとの性能の比較を示す図である。食塩注入群、mHCN2注入群またはmE324A注入群の第1〜7日および第8〜14日にわたる平均基礎心拍数を示す。後者2群の速度は、食塩群よりも有意に速かった(P < 0.05)。 タンデム型ユニットの生物学的なペースメーカー構成成分と電子工学的なペースメーカー構成成分との間の相互作用の代表的な記録を示す図である。この動物は、mHCN2を投与されていた。生物学的ペースメーカー活動から電子工学的ペースメーカー活動への移行、および電子工学的ペースメーカー活動から生物学的ペースメーカー活動への移行が滑らかである。 図44Aは、生物学的-電子工学的タンデム型ペースメーカー対電子工学的のみのペースメーカーへのエピネフリン注入の効果を示す図である。第14日に、1.0、1.5および2.0μg/kg/分のIV注入を、非電子工学的に誘発したペースメーカー速度の50%の増加または不整脈が発生するまで、あるいは2μg/kg/分の最大用量を10分間投与した。3匹の代表的な動物における、エピネフリン1μg/kg/分のECG上での効果を示す。mE324A投与動物での速度増加が最大であることに注目されたい。 図44Bは、生物学的-電子工学的タンデム型ペースメーカー対電子工学的のみのペースメーカーへのエピネフリン注入の効果を示す図である。第14日に、1.0、1.5および2.0μg/kg/分のIV注入を、非電子工学的に誘発したペースメーカー速度の50%の増加または不整脈が発生するまで、あるいは2μg/kg/分の最大用量を10分間投与した。心室固有のペースメーカー機能の結果生じた心拍数の50%増加を、灰色で示す。食塩水群では、全動物が、最高用量で、< 50%の増加(75%の動物)または不整脈(25%の動物)のいずれかを示して、プロトコールが終止した。mHCN2群では、50%の動物が、50%未満の速度増加を示した。1匹の動物では、最高用量に達したので、注入を止め、2匹の動物では、心室性不整脈が発生した。その他の50%のうち、1匹は、最低のエピネフリンの用量で、50%の速度増加を達成し、その他の2匹は、1.5または2μg/kg/分を必要とした。対照的に、mE324A群では、100%が、最低のエピネフリンの用量で、50%の速度増加を達成し、不整脈はみられなかった。 ラット筋細胞に提供したアデノウイルスベクター中のmHCN2とキメラのHCN212との比較を示す図である。mHCN212は、HCN2よりも高い基礎信号の発生頻度、およびより小さな絶対値の負の最大拡張期電位を示した。 新生仔ラット筋細胞におけるmHCN2およびHCN212の自律的な応答性を示す図である。mHCN212は、イソプロテレノール(βアドレナリン作動性受容体アゴニスト)への暴露後の信号の発生頻度の増加によって実証される自律的な応答性を示す。 図47Aは、ヒト間葉系幹細胞におけるmHCN212の発現を示す図である。hMSCが、mHCN212と同時発現させたGFPを発現していることを示す。GFPが、スライド中にみられる。 図47Bは、ヒト間葉系幹細胞におけるmHCN212の発現を示す図である。電位プロトコール後に、電位を細胞に適用した。 図47Cは、ヒト間葉系幹細胞におけるmHCN212の発現を示す図である。予想されるように、電流応答がセシウムによって遮断されたことを示す。 図48Aは、ヒト間葉系幹細胞(MSC)において発現したmHCN212の活性化を示す図である。電流量が、適用した電位の量によって変化することを示す。 図48Bは、ヒト間葉系幹細胞(MSC)において発現したmHCN212の活性化を示す図である。適用した電位と発生した電流との関係を示す。 ヒト間葉系幹細胞において発現したmHCN212のcAMPによる調節を示す図である。所与の電位で、cAMPは、電流応答を増加させる。電位依存性の正のシフトが、cAMPの存在下でみられ、これは、良好な自律的な応答性を示す。 ヒト間葉系幹細胞におけるmHCN212の発現は、mHCN2よりも高い電流密度を提供することを示す図である。「n」は、試験した細胞の数に等しい。 図51Aは、生物学的ペースメーカーの特徴を示す図である。mHCN2は、電流密度を発現する。 図51Bは、生物学的ペースメーカーの特徴を示す図である。mHCN212は、電流密度を発現する。 図51Cは、生物学的ペースメーカーの特徴を示す図である。適用した電位に応答して、mHCN212が、mHCN2よりも正の電流応答を有することを示す。 図51Dは、生物学的ペースメーカーの特徴を示す図である。動態を示し、HCN212は、HCN2よりも迅速な動態を有することを実証している。 図51Eは、生物学的ペースメーカーの特徴を示す図である。動態を示し、HCN212は、HCN2よりも迅速な動態を有することを実証している。 HCN2を発現するhMSCが、ペースメーカー電流を提供して、植込み後第12〜14日までに、安定な心臓の拍動速度を発生させることを示す図である。HCN2を積んだhMSCの数が増加するにつれて、速度も増加する。約500,000個超のhMSCで、定常状態に達する。 電子工学的ペースメーカーが誘発した拍動の割合が、植込み後第12〜42日では、hMSCによる生物学的ペースメーキングの関数として減少したことを示す図である。イヌに、mHCN2を発現するhMSCを植え込んだ。心拍数が、35bpmを下回ると、電子工学的ペースメーカーが発火するように設定した。図に示すように、mHCN2を発現するように操作した約700,000個のhMSCを含む生物学的ペースメーカーを植え込むと、電子工学的ペースメーカーが誘発した拍動の数は減少した。

Claims (49)

  1. 2種以上のHCNチャネルのアイソフォームに由来する部分を含む、キメラの過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)ポリペプチド。
  2. 前記部分が、アミノ末端部分、膜内部分およびカルボキシ末端部分である、請求項1に記載のHCNポリペプチド。
  3. 前記部分が、ヒトHCNのアイソフォームに由来する、請求項2に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  4. HCNのキメラの少なくとも1つの部分が、その他の2つの部分のうちの少なくとも1つが由来する動物種とは異なる動物種に由来し、請求項2に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  5. 膜内部分が、HCN1チャネルに由来する、請求項2に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  6. 膜内部分が、配列番号・に記載する配列を有するhHCN1のD140-L400である、請求項5に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  7. 膜内部分が、配列番号・に記載する配列を有するmHCN1のD129-L389である、請求項5に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  8. アミノ末端部分が、HCN2、HCN3またはHCN4に由来し、カルボキシ末端部分が、HCN2、HCN3またはHCN4に由来する、請求項2に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  9. アミノ末端部分がHCN2に由来し、カルボキシ末端部分がHCN2に由来する、請求項2に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  10. 野生型HCNチャネルと比較して、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、増強されたcAMP応答性、および増強された神経体液性応答からなる群から選択された改善された特徴を提供する、請求項1に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  11. mHCN112、mHCN212、mHCN312、mHCN412、mHCN114、mHCN214、mHCN314、mHCN414、hHCN112、hHCN212、hHCN312、hHCN412、hHCN114、hHCN214、hHCN314またはhHCN414を含む、請求項1に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  12. 配列番号・に記載する配列を有するhHCN212である、請求項11に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  13. 配列番号・に記載する配列を有するmHCN212である、請求項11に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  14. ポリペプチドの少なくとも1つの部分が、野生型HCNチャネルに由来する部分と比較して、より迅速な動態、より正の活性化、増加した発現、向上した安定性、増強されたcAMP応答性、および増強された神経体液性応答からなる群から選択された改善された特徴を提供する変異を含有するHCNチャネルに由来する、請求項1に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  15. 変異HCNチャネルが、S4電位センサー、S4-S5リンカー、S5、S6およびS5-S6リンカー、Cリンカー、ならびにCNBDからなる群から選択されたチャネルの領域に変異を含有する、請求項14に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  16. 変異部分が、配列番号・に記載の配列を有するmHCN2に由来し、かつE324A-mHCN2、Y331A-mHCN2、R339A-mHCN2またはY331A,E324A-mHCN2を含む、請求項14に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  17. 変異部分が、E324A-mHCN2を含む、請求項16に記載のキメラのHCNポリペプチド。
  18. 請求項12に記載のキメラのHCNポリペプチドをコードする核酸。
  19. 請求項18に記載の核酸と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
  20. 請求項18に記載の核酸を含むベクター。
  21. プラスミドベクター、コスミドベクターまたはウイルスベクターである、請求項20に記載のベクター。
  22. 請求項18に記載のベクターと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
  23. キメラのHCNポリペプチドを発現する、請求項18に記載の核酸を含む細胞。
  24. キメラのHCNポリペプチドを、細胞内でペースメーカー電流を誘発するのに有効なレベルで発現する、請求項23に記載の細胞。
  25. 少なくとも1種の心臓のコネキシンを発現するように操作された線維芽細胞もしくは骨格筋細胞、幹細胞、心筋細胞または内皮細胞である、請求項23に記載の細胞。
  26. 成体間葉系幹細胞または胚性幹細胞である、請求項25に記載の細胞。
  27. ヒト成体間葉系幹細胞である、請求項26に記載の細胞。
  28. 少なくとも1種の心臓のコネキシンをさらに発現する、請求項23に記載の細胞。
  29. 少なくとも1種の心臓のコネキシンが、Cx43、Cx40またはCx45である、請求項28に記載の細胞。
  30. 請求項27に記載の細胞と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
  31. 請求項27に記載の細胞を対象の心臓のある領域に投与するステップを含む、心臓の律動障害に罹患した対象を治療する方法であって、キメラのHCNポリペプチドの心臓の前記領域における発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象を治療する方法。
  32. 心臓に予め存在するペースメーカー活動の源を切除する、請求項31に記載の方法。
  33. 前記細胞が、心臓と機能性の合胞体を形成する、請求項32に記載の方法。
  34. 前記細胞を、心臓の領域に、注入、カテーテル法、外科的挿入または外科的付着によって投与する、請求項32に記載の方法。
  35. 前記細胞を、直接心臓組織上または心臓組織中に、注入またはカテーテル法によって局所投与する、請求項4に記載の方法。
  36. 前記細胞を、冠血管またはその他の心臓に近位の血管のうちの少なくとも1つに、注入またはカテーテル法によって投与する、請求項34に記載の方法。
  37. 前記細胞を、心臓の心房または心室のある領域に投与する、請求項31に記載の方法。
  38. 前記障害が、洞房結節の機能障害、洞性徐脈、辺縁性ペースメーカー機能、洞不全症候群、頻脈性不整脈、洞房結節リエントリー頻脈、異所性病巣からの心房性頻脈、心房粗動、心房細動、徐脈性不整脈または心不全であり、対象の心臓の右または左の心房筋、洞房結節あるいは房室接合部に、前記細胞を投与する、請求項37に記載の方法。
  39. 前記障害が、伝導ブロック、完全房室ブロック、不完全房室ブロックまたは脚ブロックであり、前記細胞を、対象の心臓のある領域に投与して、心臓の損傷した伝導を補う、請求項37に記載の方法。
  40. 前記細胞を、心室の中隔壁または自由壁、房室接合部、あるいは心室の脚に投与する、請求項39に記載の方法。
  41. 請求項27に記載の細胞を対象の心臓のある領域に投与するステップを含む、心臓の律動障害の発生を、そのような障害を起こしやすい対象において抑制する方法であって、心臓におけるキメラのHCNポリペプチドの発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象における前記障害の発生を抑制する方法。
  42. キメラのHCNポリペプチドを心臓において機能的に発現させるように、請求項18に記載の核酸を用いて対象の心臓の細胞を形質移入するステップを含む、心臓の律動障害に罹患した対象を治療する方法であって、前記ポリペプチドの発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象を治療する方法。
  43. 心臓に予め存在するペースメーカー活動の源を切除する、請求項42に記載の方法。
  44. 前記心臓の細胞が、心臓の心房または心室に存在する、請求項42に記載の方法。
  45. 前記障害が、洞房結節の機能障害、洞性徐脈、辺縁性ペースメーカー機能、洞不全症候群、頻脈性不整脈、洞房結節リエントリー頻脈、異所性病巣からの心房性頻脈、心房粗動、心房細動、徐脈性不整脈または心不全であり、対象の心臓の右または左の心房筋、洞房結節あるいは房室接合部の細胞を形質移入する、請求項42に記載の方法。
  46. 前記障害が、伝導ブロック、完全房室ブロック、不完全房室ブロックまたは脚ブロックであり、対象の心臓のある領域において細胞を形質移入して、心臓の損傷した伝導を補う、請求項47に記載の方法。
  47. 心室の中隔壁または自由壁、房室接合部、あるいは心室の脚の細胞に形質移入する、請求項46に記載の方法。
  48. キメラのHCNポリペプチドを心臓において機能的に発現させるように、請求項18に記載の核酸を用いて対象の心臓の細胞を形質移入するステップを含む、心臓の律動障害の発生を、そのような障害を起こしやすい対象において抑制する方法であって、前記ポリペプチドの発現が、心臓のペースメーカー電流を誘発する効果を示し、それによって、対象における前記障害の発生を抑制する方法。
  49. 請求項2に記載のキメラのHCNポリペプチドを産生する方法であって、(a)HCNポリペプチドのアミノ末端部分をコードする核酸をHCNポリペプチドの膜貫通部分をコードする核酸に連結し、前記の膜貫通部分をコードする核酸をHCNポリペプチドのカルボキシ末端部分をコードする核酸に連結することによって、組換え核酸を作製するステップであって、HCNポリペプチドのコード化部分が、2種以上のHCNアイソフォームまたはその変異体に由来するステップと、(b)前記キメラのHCNポリペプチドを産生するように、前記組換え核酸を細胞内で機能的に発現させるステップとを含む、方法。
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