JP2009502232A - 胸部x線写真における肺結節の検知 - Google Patents

胸部x線写真における肺結節の検知 Download PDF

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Abstract

胸部X線写真から肺結節画像を作成する方法。方法は、明確な肺野のマップを作成するステップと、明確な肺野から低周波部分を除去してレベル画像を生成するステップと、レベル画像にグレースケール形態学的操作を最低1回実行して結節−骨画像を生成するステップとを含む。結節−骨画像を用いて、肺結節の検知は、結節−骨画像中の結節候補位置を特定するステップと、結節−骨画像中で各結節候補位置周囲の領域をセグメント分割するステップと、セグメント分割した領域の特徴を用いて候補が結節か否かを判定するステップとをさらに含む。

Description

本発明は、コンピュータ支援検知の分野に関し、より特定的には胸部X線写真における肺結節の検知に関する。
肺ガンは男女共通の疾病である。少なくとも一つの統計によれば、米国では2001年に男性90,363人、女性65,606人が肺ガンで死亡したと報告されている。早期発見により肺ガンの5年生存率は12%から70%に上昇すると考えられている。肺ガンの鑑別(スクリーニング)によって早期発見を助長できる。
肺ガンの鑑別には胸部の投影X線写真を利用できる。胸部X線写真では、肺ガンは肺内部の不透明でごつごつした塊状の結節として映る。胸部X線写真で結節が検知されると、次のステップに進んで肺結節が良性か悪性かを診断し、それに応じて患者を治療できる。だが観察者の疲労や結節が肋骨に塞がれている等の様々な理由から、X線写真では結節が検知されない場合がある。ある統計では、胸部X線写真では医師は約30%の結節を見落とすとしている。こうなると、ガンが治療されず患者のガン生存率の低下につながりうる。
擬陰性を減じるため、肺ガン検知ではコンピュータ支援検知またはコンピュータ補助検知(CAD)が利用されている。CADは医師が肺結節を発見する助けとなり、結果的には肺ガン患者の生存率を上昇させる。
米国特許第5,987,094号(発明者Clarke)は、肺結節検知用のコンピュータ支援方法および装置に関する。
米国特許第6,240,201号(発明者Xu)は、胸部X線写真における結節検知方法に関する。この方法は標準的なX線写真に加えて柔組織画像を用いるが、これは常に利用可能とは限らない。
米国特許第6,141,437号(発明者Xu)に記載されているCAD法では、複数の閾値をX線写真に適用して結節の候補となる部位を特定する。だが、結節のセグメント分割には1つ以上の閾値を画像に適用するだけでは十分ではない場合があると考えられている。
米国特許第6,549,646号(発明者Yeh)に記載されている方法では、明確な肺野(clear lung field)を複数のゾーンに分け、各ゾーンに結節検知を最適化する。この技術は明確な肺野より外側の画素を廃棄するので、明確な肺野境界近傍での結節検知能力を低下させる場合がある。
米国特許第6,683,973号(発明者Li)では、胸部X線写真のあるエリアと、正常および異常組織の特徴のテンプレートとを比較する。異常組織の特徴はテンプレート作成時には予測しえないため、このアプローチの効果は限定的と考えられている。
胸部X線写真の肺結節検知に関する他の公知の文献には以下のようなものがある。米国特許第6,088,473号(発明者Xu)、第6,760,468号(発明者Yeh)、第6,058,322号(発明者ニシカワ)、第6,654,728号(発明者Li)、第6,078,680号(発明者ヨシダ)、第6,754,380号(発明者スズキ)、第5,289,374号(発明者ドイ)、および第6,125,194号(発明者Yeh)。
米国特許第5,987,094号明細書 米国特許第6,470,092号明細書 米国特許出願公開第2003/95696号明細書
ここ数年、胸部X線写真での肺結節の自動検知が研究課題の1つとなっているが、いくつかの理由によりこれは未だ困難な問題のままである。投影胸部X線写真では、正常な組織と肺結節とが重畳し識別を困難にしている。また肋骨の交差部や肺血管等の正常組織が肺結節に見える場合もある。加えて、肺結節のサイズ、形状、濃度、およびその他の特徴はばらつきが大きい。
このため、頑強(ロバスト)で既存のシステム/方法の少なくとも1つの欠点/問題を解決する胸部X線写真の肺結節自動検知がなお必要とされている。
本発明の目的は、画像中で肋骨およびその他の骨と重なる結節を検知する胸部X線写真における肺結節検知方法を提供することである。
本発明の他の目的は、明確な肺野の境界部に発生する結節を検知する胸部X線写真における肺結節検知方法を提供することである。
上記の目的は一例として挙げただけであり、本発明の1つ以上の実施形態の一例として考えられたい。当業者であれば、本発明によって達成される本発明に固有の他の望ましい目的および利点を考案または理解できる。本発明は前掲の特許請求の範囲によって規定される。
本発明は、胸部X線写真における肺結節の自動検知に関する。
本発明の一実施形態に従い、胸部X線写真から肺結節画像を生成する方法を提供する。方法は、明確な肺野(clear lung field:CLF)のマップを作成するステップと、明確な肺野から低周波部分を除去してレベル画像を生成するステップと、レベル画像にグレースケール形態学的操作(morphological operation)を最低1回実行して、結節−骨画像を生成するステップとを含む。
本発明の他の実施形態に従い、胸部X線写真から肺結節を検知する方法を提供する。方法は、明確な肺野のマップを作成するステップと、明確な肺野から低周波部分を除去してレベル画像を生成するステップと、レベル画像の明確な肺野より外側の領域を、明確な肺野中のコード値よりも低いコード値に設定するステップと、レベル画像にグレースケール形態学的操作を最低1回実行して結節−骨画像を生成するステップと、結節−骨画像中で結節候補位置を特定するステップと、結節−骨画像中の各結節候補位置の周囲の領域をセグメント分割するステップと、セグメント分割した領域の特徴を用いて候補が結節か否かを判定するステップとを含む。
上記および上記以外の本発明の目的、特徴、ならびに利点は、以下に記す本発明のより詳細な説明および添付図面の例示から理解できる。図中、同一要素間のスケーリングは必ずしも必要ない。
以下は本発明の好適な実施形態の詳細な説明である。添付図面を参照し、図中、同一参照番号は各図面において同じ構成要素を示すものとする。
図1は、本発明に従う肺結節検知方法の概要を示すフローチャートである。
ステップ110で示すように、胸部X線写真(すなわち胸部画像)が結節検知システムの入力である。X線写真のコード値のメトリックは、画像検出器における露光値ログ、DICOM標準規格のパート14に記載されるP値、またはその他任意の画像表現でもよい。希望に応じて、画素間隔が画像面の距離0.171mmに対応するように画像をスケーリングしてもよい。
ステップ112では、胸部X線写真から画像中の明確な肺野(CLF)を示す肺マスクを計算する。一般に、明確な肺野は縦隔で仕切られた左右の肺野に分けられる。肺マスクは公知の方法を用いて求めることができ、例えば、以下の文献等に記載されている方法がある。米国特許出願番号第10/994,714号(発明の名称「(医用画像における閉塞組織構造の分割方法(SEGMENTING OCCLUDED ANATOMICAL STRUCTURES IN MEDICAL IMAGES)」2004年11月22日出願(コダック社ドケットNo.89072)。米国特許出願番号第10/315,884号(発明の名称「ディジタル胸部X線写真の自動分析方法(METHOD FOR AUTOMATED ANALYSIS OF DIGITAL CHEST RADIOGRAPHS)」2002年12月10日出願(コダック社ドケットNo.85325)。両出願は本願と同一譲受人に譲渡され、本願に引用により適用する。
ステップ113では、以後の工程が入力画像の変化に影響されないようにするため、画像を標準形式にする。画像は目標コード統計値を達成するようにスケーリングされる。次いで、明確な肺野内の低周波部分を除去する。このステップからの出力画像を「レベル画像」と称する。
ステップ114では、結節が強調されかつ骨の強調が解かれた画像を作成する。この画像を「結節−骨画像」と称する。ステップ114は、異なるサイズの結節を強調するために複数の異なる縮尺(スケール)で実行される。本発明の実施形態では、このステップは直径約0.5cm〜約1.5cmの小サイズの結節、および直径約1.5cm〜約3.0cmの中サイズの結節に対して行われる。一般に、小サイズの結節の処理をスケール0処理と称し、中サイズの結節の処理をスケール1処理と称する。
ステップ116では、ステップ114で考慮したスケールごとに結節の候補位置を検知する。各スケールで検知された結節候補は結節候補リストに統合される。結節候補が検知されたスケールの情報は保持される。
ステップ118では、各候補周囲の領域をセグメント分割し、これは候補が実際の結節と一致する場合は画像中で結節の境界を規定する。
ステップ120では、セグメント分割した領域に基づいて特徴を計算する。特徴は、セグメント分割した領域のサイズ、形状、テクスチャ、グラジエント、および他の特徴に基づく。
ステップ122では、ステップ120で計算した候補の特徴(および後ほどより詳細に説明するステップ116で計算した任意の特徴)を用いて、検知した各候補を「結節」または「非結節」に分類する。
ステップ124では、胸部画像に結節が検知された位置を示すマーク(または他の印)を付与する。マーク付けには、候補の位置を中心とした円、セグメント分割した領域の真ん中を中心とした円、セグメント分割した領域の境界、または検知結果を示す任意の種類のマークを含みうる。
その後、マーク付きのX線写真の印刷、保存、送信、観察等を行う(ステップ126)。
次にステップ113をより詳細に説明する。レベル画像の作成方法(図1のステップ113)について、図2を参照して胸部X線写真206と肺マスク208を用いてより詳細に説明する。
ステップ210では、希望に応じて画像を反転させ、高いX線減衰(すなわち高濃度)が画像中の高コード値に対応するようにする。この時点では、画像中の骨領域は空気または柔組織が大半を占める画像領域よりも高いコード値をもつ。
ステップ212では、画像全体の平均コード値および標準偏差が目的値とほぼ等しくなるように画像をスケーリングする。例えば目標平均コード値は2000、標準偏差は500である。本発明の一実施形態では画像全体をスケーリングする。本発明の他の実施形態では、これらコード値の目標値を明確な肺野内で用いる。本実施形態では、左右の明確な肺野のコード値はそれぞれ独立してスケーリングする。
本発明のいくつかのステップでは、画像中の各画素における高度が画素のコード値に正比例する起伏量図(レリーフマップ)として画像を考慮する。このためステップ214では、左右の明確な肺野を緩変動関数にそれぞれ適合させ、例えば2次2変数多項式を使用する。次いでステップ216では、左右の明確な肺野に適合させた関数を画像から減じる。この画像では、明確な肺野中の超低周波トレンド部分が除去される。ステップ218では、明確な肺野より外側のコード値が、画像の明確な肺野内部の最小値に設定される。これにより明確な肺野の境界にある結節の検知が容易になる。こうしてレベル画像が得られる(ステップ220)。
次に図1のステップ114、すなわち結節−骨画像の作成方法について、図3を参照してレベル画像316を用いてより詳細に説明する。
ステップ318では、結節を強調し他の画像内容を減じるようにレベル画像を修正する。ステップ320では、骨を強調し他の画像内容を減じるようにレベル画像を修正する。ステップ318および320はどちらも、グレースケール形態学的操作を用いる。この操作は以下の文献等に記載されている。「画像分析および数理形態学(Image Analysis and Mathematical Morphology)」第1巻、424〜478ページ、J.Serra著、1982年、Academic Press社刊。
ステップ318では、結節テンプレート324を用いてレベル画像にグレースケール形態学的操作を行い「結節画像」を作成する。当業者には公知であるが、結節テンプレートは、画素のコード値が画像中央を中心とした2変数正規分布となる小さな画像である。正規分布の標準偏差から前処理を行うスケールが決定される。
ステップ320は、胸部X線写真に現れる骨の特徴であるテンプレートを用いてグレースケール形態学的操作を実行する。テンプレートは、好適には長く薄い骨様のオブジェクトの画像である。ただし、テンプレートに含まれる骨様のオブジェクトに要求される配向はレベル画像中の位置によって異なる。本発明では、グレースケール形態学的操作は、好適には複数の骨様テンプレート(図3の要素326)を用いて実行される。本願の出願人が提案する一実施形態では、骨様構造の向きが−68°、−45°、−22°、0°、+22°、+45°および+68°の7つのテンプレートを使用する。こうして得られた「骨画像」中の画素のコード値は、画素において骨テンプレートを用いてグレースケール形態学的操作から得た最大値である。
ステップ322では、骨画像(ステップ318より)が結節画像(ステップ320より)から減じられ、結節−骨画像328となる。得られた結節−骨画像では、肺結節の特徴である画像内容は正のコード値をもち、骨の特徴である画像内容はどちらかといえば負のコード値をもち、その他の画像内容はゼロに近いコード値をもつ。
次に図1のステップ116、すなわち結節の候補位置の特定方法について、図4を参照して結節−骨画像406と肺マスク408を用いてより詳細に説明する。結節の候補位置の特定方法は、ステップ114で生成される各結節−骨画像(図3に図示)に対して行うことを留意されたい。
さらに図4を参照すると、結節−骨画像のグラジエントをステップ410で計算する。これにはまず、コード値Cijの画像をノイズ除去のためぼやけさせる。次に、ソーベル(Sobel)処理によりグラジエントを計算する。得られたグラジエント画像はグラジエント・マグニチュードMijとグラジエント方向Gijをもつ。
ステップ412では、明確な肺野中の各画素においてポイントベースの特徴群を計算する。特徴群の計算について以下に図5を参照して詳述する。図5に示すように、内円512と外円510は画像中の関心画素(ピクセル・オブ・インタレスト:POI)524の周囲に概念的に描かれる。円の大きさは検知すべき結節の大きさの範囲によって異なる。(これは図3のステップ318の結節−骨画像作成に使用した結節テンプレートのサイズに一致するのが好ましい。)
図5に示す円512および円510はS個のセクターに分割できる。図では0番から7番までの8個のセクターを示す。各セクターは内円の内側の内セクターと、内外の円の間の外セクターとを含む。たとえば516はセクター6の内セクター、514はその外セクターを指す。
POI524におけるグラジエント特徴を次のように計算する。内径内側のセクター0に位置する画素522に注目する。この画素におけるグラジエント方向を図5に518として示す。POIへ向かう方向520も示す。方向518と520間の角度はθである。結節がPOI524を中心として存在し、かつ画素522が結節内部にあれば、cosθ値は1.0に近似する。だがグラジエントのマグニチュードMが小さければ、方向の信頼性がなく、POIを中心とした結節の証左として使用すべきでない。またグラジエントのマグニチュードが大きければ、画素522は骨のエッジ部に位置すると考えられ、やはり証左としては使用すべきではない。上記のことから、指数ijのPOIにおける特徴は、内径内側で明確な肺野内でもあるセクターkに位置する画素mnに基づき、以下の式で求められる。
Figure 2009502232
ここでtおよびtはグラジエントのマグニチュードの上下それぞれの閾値を表し、変数Nは内セクターk中の明確な肺野の画素数を表す。
上記の式は、セクターkの内円内側にある画素のみに基づいてPOIにおける結節の証左を与える。結節の中心がPOIならば、Ψijは大きくかつK個のセクターすべてにおいて均一となることが予想される。このような考え方に基づいて、グラジエント特徴は以下の式で表される。
Figure 2009502232
図5の内円512とほぼ同サイズの結節がPOIを中心に存在する他の証左は、この内円内側のコード値が内円512と外円510間の周囲領域よりも一般に高いことである。図5では、514は内円−外円間の領域6中のあるエリアである。これはセクターkにおいて次式を用いて測定される。
Figure 2009502232
ここでCmnは画素mnのコード値、N innerは内セクターk中の明確な肺野の画素数、N outerは外セクターk中の明確な肺野の画素数を表す。
結節がPOIを中心とし、かつ内円内側に含まれるとすれば、δ ijは大きく、かつS個のセクターすべてに対して均一であることが予想される。このような考え方に基づいて、濃度特徴は次のように定義される。
Figure 2009502232
ここで
Figure 2009502232
ステップ412で計算される各特徴(PtGradとPtDensity)は、ポイントベースの特徴として識別するため、名称の最初に接頭語Ptを付す。領域ベースの特徴については下記で説明する。
図4に戻って、ステップ414では、結節−骨画像中のコード値と上述したグラジエントおよび濃度の特徴とに基づいてスコアマップを作成する。結節−骨画像中では結節領域は一般に正のコード値をもつ。従って結節−肋骨画像中の対応する画素が0以下ならば、スコアマップ中でスコアSijは0である。またΨijまたはΔijが0以下の場合も、スコアは0に設定される。それ以外の場合には、スコアijはΨijに等しい。
ステップ416では、スコアマップ中の局所ピークを見つける。局所ピーク群は結節候補の位置である。好適には、2つのピーク間の距離が最小間隔より短ければ、最大スコアをもつピークのみから候補が作成される。
次いで、候補をリストに加え、リストをスコア降順にソートする(ステップ418)。候補リストは処理が発生するスケールごとに1つ作成される。通常、精細スケールでの処理のほうが粗スケールでの処理よりも多くの候補を生成する。本願の出願人が用いる本発明の一実施形態では、スケール0で特定した最大スコアをもつ40の候補と、スケール1で特定した最大スコアをもつ30の候補が次の処理用に選択された。
この結果(ステップ420において)、候補の位置と特徴値が検出される。
次に、図6を参照して、図1のステップ118の候補周囲の領域をセグメント分割する方法について詳述する。候補が結節中に位置する場合、セグメント分割法は画像中で結節の境界を特定することを目的とする。この方法への入力は、結節が特定されたスケールでの結節候補606と結節−骨画像608である。
ステップ610では、結節候補が中心に位置する関心領域(ROI)を、希望の画像サイズ(例えば画像サイズ512×512)で、結節−骨画像608から切り取る。様々なROIサイズを使用できるが、検知すべき最大結節よりも大きいサイズが好ましい。
次ステップ(ステップ612)では、ROIに閾値を適用して第1の領域マップを作成する。結節−骨画像では正のコード値をもつ領域は結節様の特徴を有する。画像に低い正の閾値を適用することにより、ROI中に結節様領域のマップを形成する。領域マップはROIとほぼ同サイズのバイナリ画像である。領域マップ中の画素は、ROI中の対応する画素が閾値以上かつ明確な肺野内部にある場合は255に設定される。それ以外の場合には、マップ画素は0に設定される。
ROIが結節を含む場合、ステップ612後の領域マップは、通常、結節と結節様に見える他の画像領域とを含む。ステップ614では、例えば以下の文献に記載されている等のバイナリ形態学的操作を用いて、領域マップを侵食する。侵食により領域マップ中の結節領域と他領域間の接続部分が破壊される。「画像分析および数理形態学(Image Analysis and Mathematical Morphology)」第1巻、34〜62ページ、J.Serra著、1982年、Academic Press社刊。
次にステップ616では、領域マップ中で候補を含む接続領域を保持し、それ以外のすべての領域は画素を0に設定して除去する。次いでステップ618では、ステップ614と同じカーネル(粒)を用いて領域マップを膨張させ、選択領域における侵食を逆行させる。
ステップ618後の領域マップは、結節支持領域と解釈される1つの接続領域を含む。以下の各ステップにより領域マップを改良する。
ステップ620では、結節−骨画像の支持領域内のピークを検出する。
ステップ622では、ステップ620で検出したピークを用いて、分水嶺(ウォーターシェッド)分割アルゴリズム(watershed segmentation algorithm)を初期化する。適当なウォーターシェッド分割アルゴリズムは以下の文献に記載されている。「ディジタル空間における領域分割:没入シミュレーションに基づく有効なアルゴリズム(Watersheds in Digital Spaces:An Efficient Algorithm Based on Immersion Simulations)」、VincentおよびSoille著、1991年、IEEEパターン分析およびマシーン知能に関する論文誌、Vol.13、No.6、583〜598ページ。ウォーターシェッド分割のために、ROIを反転させてピークが最小となるようにする。ROI中の支持領域は複数の集水池(catchment basin)に分けられる。各最小値には1つの集水池を関連づける。
ステップ624では、非反転ROIを用いて、支持領域が1つ以上のピークをもち、各ピークがステップ622で求めた集水池に対応する結合画素の束をもつようにする。多くの場合、肺結節はX線写真では個々の複数の塊のようにみえる。特に中型〜大型結節の場合はそうである。ステップ624の意図は、結節領域中にどの束が含まれるかを判定することである。結節領域は、候補位置を含む束である主要束で初期化される。次に連結束が加えられる。連結束は主要束中のピークとその他すべてのピークとの間に線を引いて特定される。この線上の最小コード値が、2つのピークのコード値に基づく閾値より大きければ、この束は連結束と称され結節領域に加えられる。本発明の一実施形態では、閾値は2つのピークにおける平均コード値の半分である。束を結節領域に加えるプロセスは再帰的であり、束を加える場合はその束に連結された他の束も加えられる。
図6に示す方法の最終出力はステップ626であり、ここで候補周囲の領域を示す領域マップが得られる。肺結節内部に候補がある場合は、領域は画像中の結節の範囲と一致する。候補が結節内部にない場合は、領域は他の画像内容を含む。領域セグメント分割法が失敗する場合もある。例えばステップ612または614において、領域中に画素がないかもしれない。分割が失敗すると領域マップはブランク(例えば全コード値が0)となり、候補に関連したエリアが0となる。
次に、図1のステップ120に示す領域ベースの特徴の計算方法について、図7を参照して詳述する。領域ベースの特徴計算への入力は、レベル画像710、結節−骨画像712、および領域マップ714である。
図7のステップ716では、領域の形状に基づいた特徴を計算する。形状の特徴は以下の式のセットで定義される。
Figure 2009502232
形状特徴Shapeは、正規化した領域の面積である。この特徴とその他の長さまたは面積を測定する特徴とを正規化することで、特徴を撮像システムの倍率および解像度から独立したものにできる。特徴Shapeは、領域に適合した楕円のアスペクト比である。Shapeは、領域の面積とその凸包(convex hull)の面積との比である。最後に、Shapeは、図4の方法で求めた領域の中心と候補位置との間の距離を、領域の有効半径で除算したものである。
次にステップ718を参照すると、領域とその周囲とのコード値の統計の差に基づいて特徴を計算する。領域マップを膨張させて領域周囲マップを作成し、領域マップ中または明確な肺野より外側の画素を減じる。特徴は以下のように表される。
Figure 2009502232
ここでμ、σ、minおよびmaxは、それぞれ平均コード値、コード値の標準偏差、最小コード値、最大コード値を表す。統計的特徴はレベル画像および結節−骨画像の両方について計算される。
ステップ720では、領域中のテクスチャに基づく特徴を計算する。この特徴は、レベル画像中のコード値、グラジエントのマグニチュード、およびグラジエントの向きについて計算する。このような特徴は以下の文献等に記載されている共起関数に基づくことができる。「医用画像のテクスチャ記述についての統計的アプローチ:予備考察(A Statistical Approach to Texture Description of Medical Images:A Preliminary Study)」、BevkおよびKononenko著、2002年6月4日〜7日、第15回IEEEコンピュータベースの医療システムに関するシンポジウム。各テクスチャ特徴は以下の式で表される。
Figure 2009502232
ここでC(i,j)は近傍画素と最小コード値から最大コード値までの総和範囲に対して計算される共起関数である。特徴Textureはエネルギと呼ばれ、Textureはコントラストと呼ばれる。「画像分類のためのテクスチャ特徴(Texture Features for Image Classification)」(Haralickら著、1973年、IEEEシステム、機械、サイバネティクス(自動制御学)に関する論文誌、610〜621ページ)等に記載されている他のテクスチャ特徴を用いてもよい。
ステップ724では、結節−骨画像をコード値が高度の測定手段となる起伏量図として解釈する。好適な実施形態では、セグメント分割された領域内の結節−骨画像を、4次2変数多項式に適合させる。領域中の最大高度点において主曲率を計算する。これについては以下の文献等に記載されている。「IMAGER5003に適用されるサブピクセル精度で相同点および輪郭検出のベースとして強度データの局所多項式を再構成する方法(Local Polynominal Reconstruction on Intensity Data as Basis of Detecting Homologous Points and Contours with Subpixel Accuracy Applied on IMAGER5003)」、Abmayrら著、2004年、ドレスデン、ISPRSワーキンググループV/1、パノラマ写真測量法ワークショップ議事録、Vol.34、パート5/W16。適合させた多項式の2次導関数が計算され、これはヘシアン行列の要素となる。ヘシアン行列λmaxおよびλminの最大および最小固有値が主曲率である。表面特徴は以下の式で表される。
Figure 2009502232
図7のステップ726では、結節−骨画像のセグメント分割した領域中のグラジエントを用いて、グラジエント特徴を計算する。グラジエント特徴は、ステップ410および412(図4および図5に図示)で実行したステップ116の候補検知方法の一部として計算した特徴と似ている。ただしグラジエント特徴では、固定サイズの円領域中の画素ではなく、セグメント分割した領域中の画素がグラジエントの計算に寄与する。グラジエント計算の起点は領域中で最大コード値をもつ画素である。
領域中の各画素について、x軸と画素から起点への線との間の角度φを計算する。さらに、起点を指すベクトルとグラジエントの向きとの間の角度θも計算する。グラジエントのマグニチュードが下閾値tと上閾値tとの間ならば、cosθはφの値の範囲が0°〜360°のS個のビン(bin)に累積される。これにより次の式が導かれる。
Figure 2009502232
ここでkは0〜S−1の整数、Mmnは画素mnにおけるグラジエントのマグニチュード、Nは上記のφの条件を満たす領域中の画素数である。領域のグラジエント特徴は次のように表される。
Figure 2009502232
ここで
Figure 2009502232
ステップ728で計算される最終特徴は、骨の交差部分を擬陽性として低減/削除するものである。キャニー(Canny)エッジ検出器(「エッジ検出の計算アプローチ(A Computational Approach to Edge Detection)」、1986年、IEEEパターン分析およびマシーン知能についての論文誌、Vol8、No.6に記載)を用いて、レベル画像中で明確な肺野内部の突出したエッジを見つけることができる。その後、連結したエッジ画素をチェーンとして形成する。長さおよび直線度の最低規準を満たすチェーンのみを含むチェーンマップを作成する。このマップ中のチェーンは画像中の骨のエッジ部に対応する。オーバラップ特徴は、次の式で表される。
Overlap=Loverlap/Lregion
ここで、Lregionは領域の境界の長さ、Loverlapはチェーンマップ中のチェーンと一致する領域の境界の長さを表す。
図示するこの方法から特徴ベクトル732が出力され、これは図7の方法で計算した領域ベースの特徴のうち1つ以上(好適にはすべて)の特徴を含む。さらに、ステップ412(図4)で計算したポイントベースの特徴がこの特徴に含まれるのが好ましい。
次に、図1のステップ122および124について図8を参照して詳述する。図8の方法では、候補の特徴ベクトル810を分類ステップ812に入力する。本発明の一実施形態では、ガウシアン最尤度(GML)分類器を用いる。だが、ニューラルネットワーク、学習ベクトル量子化器(LVQ)、サポートベクトル装置、および以下の文献で考察されている分類器等を用いてもよい。「統計的パターン認識:論評(Statistical Pattern Recognition:A Review)」、Anilら著、2000年、IEEEパターン分析およびマシーン知能に関する論文誌、Vol.22、No.1、4〜37ページ。ステップ812は複数の分類器を含んでもよい。本発明の一実施形態では、1つの分類器をポイントおよび領域ベースの両方の特徴をもつ候補に使用し、もう1つの分類器を領域分割が失敗したためポイントベースの特徴しか利用できない候補に用いる。
ステップ812の分類器は、X線写真の肺結節の確定事例の特徴を計算し、かつその特徴ベクトルを作成することにより訓練(トレーニング)できる。
画像中の1つの結節またはその他の構造中に2つ以上の候補が生じることが多い。候補周囲の領域を分割すると、2つ以上の候補をもつ領域はほぼ同じとなる。X線写真に2つの検知結果を付すのは望ましくないので、図8のステップ814では、十分なオーバラップがある候補群を同一グループとし、グループ中で1つの候補を残す。本発明の一実施形態では、ステップ812で最高確率と判定された候補が残される。
図8の方法からは検知結果818が出力される。検知結果818は、全候補についての特徴値、領域境界、および分類結果を含む。検知結果を図1のステップ124で用いて、画像のマーク付けを行う。
本発明の肺結節検知方法を、CR(computed radiography)システムから得た47枚の画像のセットに適用した。この画像セットは明確な肺野中に216個の結節を含んでいた。一画像あたり平均4つの擬陽性をもつ操作位置において、67%の結節が検知された。
上記で引用したすべての文献、特許、議事録およびその他の資料は、本願に引用して適用するものとする。
コンピュータプログラム製品は、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク等)または磁気テープ、光ディスク等の光学記憶媒体、光学テープ、または機械読み取り可能なバーコード、ランダムアクセスメモリ(RAM)もしくは読み出し専用メモリ(ROM)等の固体電子記憶装置、または1台以上のコンピュータを制御して本発明に従う方法を実行する命令を含むコンピュータプログラムを記憶するのに用いられるその他任意の物理的装置または媒体を含みうる。
本発明に従う胸部X線写真中の肺結節の検知方法の一例を示す図である。 レベル画像の作成方法を示す図である。 結節−骨画像を作成する方法を示す図である。 結節候補の位置を特定する方法を示す図である。 ポイントベースの特徴を計算する方法を示す図である。 結節候補周囲の領域をセグメント分割する方法を示す図である。 ポイントおよび領域ベースの特徴を含む候補の特徴ベクトルを作成する方法を示す図である。 特徴ベクトルを分類して候補を選別する方法を示す図である。

Claims (9)

  1. 胸部X線写真から肺結節画像を生成する方法であって、
    明確な肺野(clear lung field)のマップを作成するステップと、
    前記明確な肺野から低周波部分を除去してレベル画像を生成するステップと、
    前記レベル画像にグレースケール形態学的操作(morphological operation)を最低1回実行して、結節−肺画像を生成するステップと、を含む方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、
    前記方法はさらに、前記グレースケール形態学的操作を最低1回行うステップの前に、前記レベル画像中の前記明確な肺野より外側の領域を、前記明確な肺野のコード値よりも低いコード値に設定するステップを含む方法。
  3. 請求項1に記載の方法において、
    前記方法はさらに、前記グレースケール形態学的操作を最低1回行うステップの前に、前記レベル画像中の前記明確な肺野より外側の領域を、前記明確な肺野のコード値と異なるコード値に設定するステップを含む方法。
  4. 請求項1に記載の方法であって、前記結節−肺画像を表示、保存、送信、または印刷するステップをさらに含む方法。
  5. 胸部X線写真から肺結節画像を生成する方法であって、
    明確な肺野のマップを作成するステップと、
    明確な肺野から低周波部分を除去してレベル画像を作成するステップと、
    前記レベル画像中の前記明確な肺野より外側の領域を、前記明確な肺野のコード値よりも低いコード値に設定するステップと、
    前記レベル画像中の前記明確な肺野より外側の領域を、前記明確な肺野のコード値と異なるコード値に設定するステップと、
    前記結節−肺画像中で結節候補の位置を特定するステップと、
    前記結節−肺画像中の前記各結節候補位置の周囲の領域をセグメント分割するステップと、
    前記セグメント分割した領域の特徴を用いて、前記候補が結節であるか否かを判定するステップと、を含む方法。
  6. 請求項5に記載の方法において、前記レベル画像に2回以上のグレースケール形態学的操作を行う方法。
  7. 請求項5に記載の方法において、前記レベル画像に形態学的操作を最低1回行うステップは、
    前記レベル画像に、結節テンプレートを用いて最初のグレースケール形態学的操作を行い、結節画像を生成するステップと、
    前記レベル画像に、骨テンプレートを用いて2回目のグレースケール形態学的操作を行い、骨画像を生成するステップと、
    前記骨画像を前記結節画像から減じて結節−骨画像を生成するステップと、をさらに含む方法。
  8. 請求項5に記載の方法において、前記特徴は、形状特徴、統計的特徴、テクスチャ特徴、サーフェスフィット特徴、グラジエント特徴、およびエッジオーバラップ特徴のうち、少なくとも2つの特徴を含む方法。
  9. 請求項1に記載の方法を1台以上のコンピュータに実行させる命令を内蔵した、少なくとも1つのコンピュータ記憶媒体を備えたコンピュータ記憶製品。
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