JP2009211878A - 発電システム - Google Patents
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Abstract
【課題】起動時の改質器における一酸化炭素濃度を低く抑え、起動特性の高い発電システムを提供する。
【解決手段】発電システム100は、燃料を改質することによって改質ガスを生成する改質器3と、改質器3で生成した改質ガス中の一酸化炭素を低濃度化する一酸化炭素除去器4と、低濃度化した改質ガスが供給されて、電気化学反応により電力を取り出す燃料電池7と、起動時に、改質器3の温度を定常時の反応温度よりも50〜100℃以下に保持した後に燃料を供給して、燃料が改質器3に導入された瞬間に改質器3の温度を反応温度まで上昇させるよう制御する制御部123と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】発電システム100は、燃料を改質することによって改質ガスを生成する改質器3と、改質器3で生成した改質ガス中の一酸化炭素を低濃度化する一酸化炭素除去器4と、低濃度化した改質ガスが供給されて、電気化学反応により電力を取り出す燃料電池7と、起動時に、改質器3の温度を定常時の反応温度よりも50〜100℃以下に保持した後に燃料を供給して、燃料が改質器3に導入された瞬間に改質器3の温度を反応温度まで上昇させるよう制御する制御部123と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料を改質することによって生成した改質ガスを用いて電気化学反応により発電する発電システムに関する。
近年では、エネルギー変換効率の高いクリーンな電源として、水素の電気化学反応により電気エネルギーを生成する燃料電池が自動車や携帯電子機器などに応用され始めている。水素は、常温で気体であるために取り扱い及び貯蔵方法に問題があることから、貯留した水素を燃料電池に供給するのではなく、通常はメタノール等のアルコールや炭化水素を貯留し、貯留したアルコール又は炭化水素を触媒の存在下で反応させることにより水素を主成分としたガスを生成して燃料電池に供給することも行われている。
このような燃料電池へ水素を供給するための小型の化学反応装置として、シリコン、ガラス或いは金属に代表される基板で微細な反応流路を形成し、流路内でメタノール水溶液等を元に小規模の化学反応を起こさせる改質器と呼ばれる装置がある。このような小型改質器を含め、容積当たりの大きな表面積をもつ微小空間で反応を行うことにより、従来よりも精密に濃度や温度を制御できる反応器をマイクロリアクターと呼んでいる。マイクロリアクターは、大量の反応生成物を得るために、従来の化学プラントのように反応容器をスケールアップするのではなく、その利点を活かして、複数並べることで生成物の量を稼ぐ発電システムが考えられている。
このような燃料電池へ水素を供給するための小型の化学反応装置として、シリコン、ガラス或いは金属に代表される基板で微細な反応流路を形成し、流路内でメタノール水溶液等を元に小規模の化学反応を起こさせる改質器と呼ばれる装置がある。このような小型改質器を含め、容積当たりの大きな表面積をもつ微小空間で反応を行うことにより、従来よりも精密に濃度や温度を制御できる反応器をマイクロリアクターと呼んでいる。マイクロリアクターは、大量の反応生成物を得るために、従来の化学プラントのように反応容器をスケールアップするのではなく、その利点を活かして、複数並べることで生成物の量を稼ぐ発電システムが考えられている。
発電システムの一例として、図16にその模式図を示す。この発電システム300では、燃料容器301内のメタノール等の発電用燃料を気化器302により気化し、気化された発電用燃料を改質器303により水素ガスの他、副生成物として二酸化炭素、一酸化炭素を含む改質ガスに改質し、その改質された改質ガス中の一酸化炭素を一酸化炭素除去器304により除去し(濃度を下げ)、一酸化炭素除去後の水素ガスを燃料電池(発電セル)307に供給する。燃料電池307では水素と酸素を電気エネルギーに変換するが、供給された水素の全てを使い切ると発電効率の低下を招くため、改質ガス中の水素のうち70%程度を電気エネルギーに変換し、残りの水素を触媒燃焼器305にて空気中の酸素との反応により燃焼させて熱エネルギーに変換し、改質器303及び一酸化炭素除去器304を加熱して所定の化学反応が進行するように改質させるための反応熱に充てている。
このような発電システムの起動方法は、まず、気化器や、改質器、一酸化炭素除去器の各反応器を昇温して、気化器での気化温度や各反応器の反応温度に保っておいた後、燃料を投入し、気化器、改質器及び一酸化炭素除去器においてそれぞれ順番に気化、改質反応、一酸化炭素除去反応が起こるようになっている。
このような発電システムの起動方法は、まず、気化器や、改質器、一酸化炭素除去器の各反応器を昇温して、気化器での気化温度や各反応器の反応温度に保っておいた後、燃料を投入し、気化器、改質器及び一酸化炭素除去器においてそれぞれ順番に気化、改質反応、一酸化炭素除去反応が起こるようになっている。
ここで、改質器の温度を改質反応温度範囲内である300℃に保持した後、メタノール燃料を投入した時の反応挙動を図18に示す。図18から明らかなように、改質開始直後のガス中には定常時の二倍程度の一酸化炭素が含まれている。このままの組成のガスが、後段の一酸化炭素除去器へ導入されると、一酸化炭素除去器で十分除去できる一酸化炭素濃度の限界を超えてしまう場合があり、一酸化炭素除去器から排出される改質ガス中の一酸化炭素の濃度が、一酸化炭素除去器の後段の燃料電池の触媒に対して悪影響を及ぼす程度の高濃度になってしまう。
このために、図17のフローチャートに示すように、まず、気化器や、改質器、一酸化炭素除去器の各反応器を加熱手段によって加熱昇温し、気化温度、各反応温度に保っておき(ステップS11)、燃料を投入し(ステップS12)、その後、改質器で生成された改質ガスを一旦、触媒燃焼器に導入する(ステップS13)。そして、所定時間が経過するまでは一酸化炭素除去器に改質ガスを導入せずに、所定時間が経過したら、一酸化炭素除去器に空気とともに改質ガスを導入している(ステップS14、ステップS15)。このように不安定な組成の改質ガスを起動後すぐに後段の一酸化炭素除去器や燃料電池に導入せずに、一旦、触媒燃焼器にバイパスしてガス組成が安定するのを待ってから、後段の一酸化炭素除去器等に導入することによって一酸化炭素除去器における一酸化炭素除去効率を上げている。
また、特許文献1では、起動時において、燃料を供給して起動バーナを点火して触媒燃焼器及び改質器を昇温させ、改質器で生成された改質ガスを補助燃焼部に供給して補助燃焼部で燃焼した排ガスの熱によって一酸化炭素除去器を加熱し、CO濃度が燃料電池の電極を被毒しない濃度に到達後、改質器で生成された改質ガスの供給を補助燃焼部から一酸化炭素除去器へと切り替えることが示されている。
特開2003−243018号公報
このために、図17のフローチャートに示すように、まず、気化器や、改質器、一酸化炭素除去器の各反応器を加熱手段によって加熱昇温し、気化温度、各反応温度に保っておき(ステップS11)、燃料を投入し(ステップS12)、その後、改質器で生成された改質ガスを一旦、触媒燃焼器に導入する(ステップS13)。そして、所定時間が経過するまでは一酸化炭素除去器に改質ガスを導入せずに、所定時間が経過したら、一酸化炭素除去器に空気とともに改質ガスを導入している(ステップS14、ステップS15)。このように不安定な組成の改質ガスを起動後すぐに後段の一酸化炭素除去器や燃料電池に導入せずに、一旦、触媒燃焼器にバイパスしてガス組成が安定するのを待ってから、後段の一酸化炭素除去器等に導入することによって一酸化炭素除去器における一酸化炭素除去効率を上げている。
また、特許文献1では、起動時において、燃料を供給して起動バーナを点火して触媒燃焼器及び改質器を昇温させ、改質器で生成された改質ガスを補助燃焼部に供給して補助燃焼部で燃焼した排ガスの熱によって一酸化炭素除去器を加熱し、CO濃度が燃料電池の電極を被毒しない濃度に到達後、改質器で生成された改質ガスの供給を補助燃焼部から一酸化炭素除去器へと切り替えることが示されている。
しかしながら、上述のような方法で起動させた場合、改質ガスの組成が安定するまでの間、燃料電池で発電することができないので、比較的大型の、長い起動時間を要しても許される用途の発電装置では通用するが、特に携帯電子機器用の電源のように高い起動特性を要求される用途には適していない起動方法である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、起動時の改質器における一酸化炭素濃度を低く抑え、起動特性の高い発電システムを提供することを目的としている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、起動時の改質器における一酸化炭素濃度を低く抑え、起動特性の高い発電システムを提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、
燃料を改質することによって改質ガスを生成する改質部と、
前記改質部で生成した改質ガス中の一酸化炭素を低濃度化する一酸化炭素除去部と、
前記一酸化炭素除去部を介した改質ガスが供給されて、電気化学反応により電力を取り出す発電セルと、
起動時に、前記改質部の温度を定常時の反応温度よりも低い所定範囲の温度で前記改質部に燃料を供給して、燃料が前記改質部に導入された後に前記改質部の温度を前記定常時の反応温度まで上昇させるよう制御する温度制御部と、を備えることを特徴とする。
前記温度制御部は、起動時に前記改質部に燃料を供給するときの温度は、前記定常時の反応温度よりも50℃〜100℃低い温度に制御することを特徴とする。
前記燃料が前記改質部に導入されたことを、前記改質部における温度低下によって検出する温度検出部を備えることを特徴とする。
前記改質部に導入される燃料の流量を検出する流量検出部を備えることを特徴とする。
起動時に前記燃料に酸化剤が混入されていることを特徴とする。
燃料を改質することによって改質ガスを生成する改質部と、
前記改質部で生成した改質ガス中の一酸化炭素を低濃度化する一酸化炭素除去部と、
前記一酸化炭素除去部を介した改質ガスが供給されて、電気化学反応により電力を取り出す発電セルと、
起動時に、前記改質部の温度を定常時の反応温度よりも低い所定範囲の温度で前記改質部に燃料を供給して、燃料が前記改質部に導入された後に前記改質部の温度を前記定常時の反応温度まで上昇させるよう制御する温度制御部と、を備えることを特徴とする。
前記温度制御部は、起動時に前記改質部に燃料を供給するときの温度は、前記定常時の反応温度よりも50℃〜100℃低い温度に制御することを特徴とする。
前記燃料が前記改質部に導入されたことを、前記改質部における温度低下によって検出する温度検出部を備えることを特徴とする。
前記改質部に導入される燃料の流量を検出する流量検出部を備えることを特徴とする。
起動時に前記燃料に酸化剤が混入されていることを特徴とする。
本発明によれば、起動時の改質器における一酸化炭素濃度を低く抑え、起動特性の高い発電システムを提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されないものとする。
図1は、発電システム100の概略構成を示したブロック図である。
発電システム100の主要部は、液体燃料(例えば、改質により水素を生成することのできるメタノール、エタノール、エーテル等の液体燃料、及び、それらのいずれかと水との混合液)を貯留した燃料容器1と、燃料容器1から供給された混合液を気化する気化器2と、気化器2から供給された混合気を触媒により水素リッチな改質ガスに改質する改質器(改質部)3と、改質器3から供給された改質ガスの中から燃料電池(発電セル)7を劣化する要因となる一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去器(一酸化炭素除去部)4と、一酸化炭素除去器4を経由して供給された改質ガス中の水素ガスの電気化学反応により電気エネルギーを生成する燃料電池7と、燃料電池7から排出された水素ガスを燃焼させることにより改質器3等を加熱する燃焼熱を発生する触媒燃焼器5と、触媒燃焼器5から排出された水素ガスをさらに燃焼させて除去した後、排熱させる水素燃焼器8と、改質器3等を加熱する薄膜ヒータ6と、気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4、触媒燃焼器5、薄膜ヒータ6を収容し、外部から断熱する断熱容器10と、ポンプ13と、流量センサ14と、を備えている。触媒燃焼器5は、燃料電池7の下流に設けられている。
図1は、発電システム100の概略構成を示したブロック図である。
発電システム100の主要部は、液体燃料(例えば、改質により水素を生成することのできるメタノール、エタノール、エーテル等の液体燃料、及び、それらのいずれかと水との混合液)を貯留した燃料容器1と、燃料容器1から供給された混合液を気化する気化器2と、気化器2から供給された混合気を触媒により水素リッチな改質ガスに改質する改質器(改質部)3と、改質器3から供給された改質ガスの中から燃料電池(発電セル)7を劣化する要因となる一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去器(一酸化炭素除去部)4と、一酸化炭素除去器4を経由して供給された改質ガス中の水素ガスの電気化学反応により電気エネルギーを生成する燃料電池7と、燃料電池7から排出された水素ガスを燃焼させることにより改質器3等を加熱する燃焼熱を発生する触媒燃焼器5と、触媒燃焼器5から排出された水素ガスをさらに燃焼させて除去した後、排熱させる水素燃焼器8と、改質器3等を加熱する薄膜ヒータ6と、気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4、触媒燃焼器5、薄膜ヒータ6を収容し、外部から断熱する断熱容器10と、ポンプ13と、流量センサ14と、を備えている。触媒燃焼器5は、燃料電池7の下流に設けられている。
ここで、発電システム100は、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、PDA、電子手帳、腕時計、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、ゲーム機、遊技機、家庭用電気機器、その他の電子機器に用いられる。この場合、気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4、触媒燃焼器5、燃料電池7及び水素燃焼器8からなる発電装置本体は電子機器本体1000に搭載されており、燃料容器1は電子機器本体1000を介して発電装置本体に装着された場合、燃料容器1から気化器2に混合液が供給されるようになっている。燃料電池7により生成された電気エネルギーは電子機器本体1000を駆動するために用いられる。
具体的には、図1に示すように、発電システム100は、さらに、燃料電池7により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換するDC/DCコンバータ121と、DC/DCコンバータ121に接続される2次電池122と、それらを制御する制御部123も備える。
DC/DCコンバータ121は燃料電池7により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換したのちに電子機器本体1000に供給する機能の他に、燃料電池7により生成された電気エネルギーを2次電池122に充電し、燃料電池7側が運転されていない時に、電子機器本体1000に2次電池122側から電気エネルギーを供給する機能も果たせるようになっている。
制御部123は気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4、触媒燃焼器5、燃料電池7、水素燃焼器8を運転するために必要な図示しないポンプやバルブ類、そして、電圧が印加されると加熱する発熱抵抗体を有する薄膜ヒータ6、後述の温度センサ類、DC/DCコンバータ121等を制御し、電子機器本体1000に安定して電気エネルギーが供給されるように、具体的には後述の図2のフローチャートに基づいて制御を行う。
具体的には、図1に示すように、発電システム100は、さらに、燃料電池7により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換するDC/DCコンバータ121と、DC/DCコンバータ121に接続される2次電池122と、それらを制御する制御部123も備える。
DC/DCコンバータ121は燃料電池7により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換したのちに電子機器本体1000に供給する機能の他に、燃料電池7により生成された電気エネルギーを2次電池122に充電し、燃料電池7側が運転されていない時に、電子機器本体1000に2次電池122側から電気エネルギーを供給する機能も果たせるようになっている。
制御部123は気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4、触媒燃焼器5、燃料電池7、水素燃焼器8を運転するために必要な図示しないポンプやバルブ類、そして、電圧が印加されると加熱する発熱抵抗体を有する薄膜ヒータ6、後述の温度センサ類、DC/DCコンバータ121等を制御し、電子機器本体1000に安定して電気エネルギーが供給されるように、具体的には後述の図2のフローチャートに基づいて制御を行う。
燃料電池7は、触媒微粒子を含有又は付着させた燃料極(水素極)と、触媒微粒子を含有又は付着させた酸素極(空気極)と、燃料極と酸素極との間に挟持された固体高分子電解質膜と、を備える。
気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4、触媒燃焼器5及び水素燃焼器8は、後述するが、いずれも2枚の基板を接合した構造を有し、どちらか一方又は両方の基板の接合面に蛇行したマイクロ流路が形成されている。触媒燃焼器5では、燃焼触媒(例えば、白金等)がマイクロ流路の壁面に形成され、改質器3では、水蒸気改質触媒(例えば、Cu/ZnO系触媒やPd/ZnO系触媒)がマイクロ流路の壁面に形成され、一酸化炭素除去器4では、選択酸化触媒(例えば、白金等)がマイクロ流路の壁面に形成されている。水素燃焼器8では、水素の酸化を促進させる触媒(例えば、白金等)がマイクロ流路の壁面に形成されている。なお、各触媒は、少なくとも一種類以上の金属種又は少なくとも一種以上の金属酸化物が含まれていることが好ましい。
気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4及び触媒燃焼器5は、熱損失を低減するために断熱容器10内に収容されている。断熱容器10は、ガラス製又は金属製の箱体であり、断熱容器10の内壁面には、赤外線のような熱線となる電磁波に対して断熱容器10よりも高い反射性の赤外線反射膜(例えば、Au、Ag、Al)が成膜され、断熱容器10の中空の圧力が10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧された状態に保たれている。また、断熱容器10内には、気化器2、改質器3及び一酸化炭素除去器4の精密な温度制御のための電熱材からなる温度センサが設けられている。温度センサは、温度変化に応じて電気抵抗が変化し、所定の印加電圧又は電流に対する抵抗値から温度を読み取ることができるものである。また、改質器3に設けられた温度センサ(温度検出部)が、起動時において、予め設定された定常時の改質反応適正温度300℃よりも50℃〜100℃低い200℃〜250℃の範囲内の予め設定された温度に達したことを検知したら、その温度を維持し、引き続き制御部123によりポンプ13を動作させて、燃料容器1から取り込んだ水を含む液体燃料を気化器2に供給し、気化器2から気化された燃料が改質器3に導入を開始してからまた昇温して改質反応適正温度300℃に達したらその温度で保持するように設定されている。なお、この温度センサは後述する薄膜ヒータ6と兼用しても良い。制御部123は、定常時において、改質ガスが改質器3の流路外に出る頃に改質ガス中の水素濃度がピークになるように予め改質器3を流れる改質ガスの流量を設定している。
気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4及び触媒燃焼器5は、熱損失を低減するために断熱容器10内に収容されている。断熱容器10は、ガラス製又は金属製の箱体であり、断熱容器10の内壁面には、赤外線のような熱線となる電磁波に対して断熱容器10よりも高い反射性の赤外線反射膜(例えば、Au、Ag、Al)が成膜され、断熱容器10の中空の圧力が10Pa以下、望ましくは1Pa以下に減圧された状態に保たれている。また、断熱容器10内には、気化器2、改質器3及び一酸化炭素除去器4の精密な温度制御のための電熱材からなる温度センサが設けられている。温度センサは、温度変化に応じて電気抵抗が変化し、所定の印加電圧又は電流に対する抵抗値から温度を読み取ることができるものである。また、改質器3に設けられた温度センサ(温度検出部)が、起動時において、予め設定された定常時の改質反応適正温度300℃よりも50℃〜100℃低い200℃〜250℃の範囲内の予め設定された温度に達したことを検知したら、その温度を維持し、引き続き制御部123によりポンプ13を動作させて、燃料容器1から取り込んだ水を含む液体燃料を気化器2に供給し、気化器2から気化された燃料が改質器3に導入を開始してからまた昇温して改質反応適正温度300℃に達したらその温度で保持するように設定されている。なお、この温度センサは後述する薄膜ヒータ6と兼用しても良い。制御部123は、定常時において、改質ガスが改質器3の流路外に出る頃に改質ガス中の水素濃度がピークになるように予め改質器3を流れる改質ガスの流量を設定している。
次に、発電システム100の動作について説明する。
図2は、発電システム100の起動時におけるフローチャートである。
制御部123は、薄膜ヒータ6を電気により発熱し、改質器3の温度が、定常時改質反応温度(例えば、300℃)より50℃以上低温の所定の温度となるように保持する。好ましくは定常時改質反応温度より50〜100℃低い温度範囲内の所定の温度とする。この温度を起動時改質反応温度と定義する。また、同様に、気化器2及び一酸化炭素除去器4のそれぞれの薄膜ヒータ6で電気により発熱しそれぞれの所望の動作温度となるように加熱する(ステップS1)。気化器2での気化温度は、120℃〜130℃と起動時改質反応温度より十分低い。
改質器3が起動時改質反応温度で保持されたら制御部123は、燃料ポンプ13が作動し、燃料容器1に貯留された燃料である混合液が気化器2のマイクロ流路に供給される(ステップS2)。混合液が気化器2のマイクロ流路を流動している時に、混合液が気化して混合気が生成される。薄膜ヒータ6によって改質器を定常時改質反応温度から50℃以上低温で保持し続ける(ステップS3)。その後、気化器2と改質器3との間の流路に配置された流量センサ(流量検出部)14が、当該流路内の流量を検知して、制御部123が、流量センサ14からの流量信号に基づいて、気化されて高圧になった混合気が相対的に低圧の改質器3のマイクロ流路に到達されたか否かを判断する(ステップS4)。なお、流量センサ14を配置しなくても、起動時改質反応温度で保持された改質器3が、より低温の混合気が改質器3内に導入されると、混合気の熱容量によって改質器3内の熱が奪われ、瞬間的に温度が下がることになり、この温度の下げを温度センサが検出することにより、混合気が改質器3に到達したと判別することができる。燃料が改質器3内に導入されると、制御部3は、改質器3の温度が、起動時改質反応温度から定常時改質反応温度になるように切り替えるよう改質器3の薄膜ヒータ6に制御信号を出力し、薄膜ヒータ6が改質器3を定常時改質反応温度まで昇温する(ステップS5)。一方、混合気が改質器3に到達していなければ、到達するまで改質器3を定常時改質反応温度から50℃以上低い状態で保持しておく(ステップS4)。
ステップS5のように改質器3を定常時改質反応温度まで昇温させる間に、マイクロ流路において混合気が流動して、混合気が触媒に接触する。混合液がメタノールと水との混合液の場合、これにより、メタノールと水が触媒の作用を受けて、化学反応式(1)のような水蒸気改質反応が起こる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
また、化学反応式(1)についで逐次的に起こる化学反応式(2)によって微量の一酸化炭素COが副成される。
H2+CO2→H2O+CO …(2)
図2は、発電システム100の起動時におけるフローチャートである。
制御部123は、薄膜ヒータ6を電気により発熱し、改質器3の温度が、定常時改質反応温度(例えば、300℃)より50℃以上低温の所定の温度となるように保持する。好ましくは定常時改質反応温度より50〜100℃低い温度範囲内の所定の温度とする。この温度を起動時改質反応温度と定義する。また、同様に、気化器2及び一酸化炭素除去器4のそれぞれの薄膜ヒータ6で電気により発熱しそれぞれの所望の動作温度となるように加熱する(ステップS1)。気化器2での気化温度は、120℃〜130℃と起動時改質反応温度より十分低い。
改質器3が起動時改質反応温度で保持されたら制御部123は、燃料ポンプ13が作動し、燃料容器1に貯留された燃料である混合液が気化器2のマイクロ流路に供給される(ステップS2)。混合液が気化器2のマイクロ流路を流動している時に、混合液が気化して混合気が生成される。薄膜ヒータ6によって改質器を定常時改質反応温度から50℃以上低温で保持し続ける(ステップS3)。その後、気化器2と改質器3との間の流路に配置された流量センサ(流量検出部)14が、当該流路内の流量を検知して、制御部123が、流量センサ14からの流量信号に基づいて、気化されて高圧になった混合気が相対的に低圧の改質器3のマイクロ流路に到達されたか否かを判断する(ステップS4)。なお、流量センサ14を配置しなくても、起動時改質反応温度で保持された改質器3が、より低温の混合気が改質器3内に導入されると、混合気の熱容量によって改質器3内の熱が奪われ、瞬間的に温度が下がることになり、この温度の下げを温度センサが検出することにより、混合気が改質器3に到達したと判別することができる。燃料が改質器3内に導入されると、制御部3は、改質器3の温度が、起動時改質反応温度から定常時改質反応温度になるように切り替えるよう改質器3の薄膜ヒータ6に制御信号を出力し、薄膜ヒータ6が改質器3を定常時改質反応温度まで昇温する(ステップS5)。一方、混合気が改質器3に到達していなければ、到達するまで改質器3を定常時改質反応温度から50℃以上低い状態で保持しておく(ステップS4)。
ステップS5のように改質器3を定常時改質反応温度まで昇温させる間に、マイクロ流路において混合気が流動して、混合気が触媒に接触する。混合液がメタノールと水との混合液の場合、これにより、メタノールと水が触媒の作用を受けて、化学反応式(1)のような水蒸気改質反応が起こる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
また、化学反応式(1)についで逐次的に起こる化学反応式(2)によって微量の一酸化炭素COが副成される。
H2+CO2→H2O+CO …(2)
ステップS4直後において、改質器3の流路内に存在するメタノール及び水の量は定常時に比べて少ないため、混合気中のメタノール及び水が流路内の改質触媒と接触する時間が長くなり、比較的化学反応式(1)の反応が進行しやすい環境になっている。特に、従来のように、ステップS4直後において既に定常時改質反応温度に達していると、比較的化学反応式(1)の反応が著しく進行し、流路の途中で水素濃度が高くなりすぎる。化学反応式(2)の反応は、水素濃度が高いほど進行するため、改質器3の流路から排出される頃には、一酸化炭素の濃度が高くなってしまう。ここで接触時間は改質触媒量に比例し、改質器3の流路入口での未改質反応の混合気の流速に反比例する。なお、後述する比較例の図18では、起動時における改質器3の流路出口での流量は著しく増大しているが、これはメタノール及び水が改質器3の流路内の改質触媒との接触時間が長いことによって化学反応式(1)の反応が進みモル数が増大することによるものであって、改質器3の流路入口での未改質反応の混合気の流速が速いわけではない。
本実施形態では、ステップS1から定常時直前までは、改質器3内の温度が起動時改質反応温度以上定常時改質反応温度未満なため、化学反応式(1)の反応を短期的に抑えることによって引き続いて生じる化学反応式(2)の反応を抑制している。このため、ステップS1から定常時直前まで、改質器3で生成された改質ガスの一酸化炭素の濃度は、一酸化炭素除去器4によって十分燃料電池7を被毒しない程度の抑えられる低い濃度になっている。
このように、ステップS1から定常時直前までは、改質器3内の温度が起動時改質反応温度以上定常時改質反応温度未満とすることで一酸化炭素の濃度を抑え、一方、定常時になると、混合気中の水素が流路内の改質触媒と接触する時間が短くなり、改質ガスが改質器3の流路外に出る頃に改質ガス中の水素濃度がピークになるように流量を設定しているので、依然、改質器3から排出される一酸化炭素の濃度を低く維持できる。
改質器3で生成された改質ガスは一酸化炭素除去器4のマイクロ流路に供給され、更に空気が一酸化炭素除去器4のマイクロ流路に供給される。そして、このマイクロ流路においては、化学反応式(2)で微量に副成され一酸化炭素が一酸化炭素除去器4のマイクロ流路に形成された触媒の作用を受けて、化学反応式(3)に示すように選択的に酸化され、起動時及び定常時に燃料電池7の触媒を被毒しない程度の低い濃度になるまで除去される。
2CO+O2→2CO2 …(3)
そして、改質ガスがそのマイクロ流路から図示しない加湿器を経由して、加湿された後、燃料電池7の燃料極に供給され、空気が燃料電池7の酸素極に供給される。燃料極においては、電気化学反応式(4)に示すように、改質ガス中の水素が燃料極の触媒微粒子の作用を受けて水素イオンと電子とに分離する。水素イオンは固体高分子電解質膜を通じて酸素極に伝導し、電子は燃料極により取り出される。
H2→2H++2e- …(4)
本実施形態では、ステップS1から定常時直前までは、改質器3内の温度が起動時改質反応温度以上定常時改質反応温度未満なため、化学反応式(1)の反応を短期的に抑えることによって引き続いて生じる化学反応式(2)の反応を抑制している。このため、ステップS1から定常時直前まで、改質器3で生成された改質ガスの一酸化炭素の濃度は、一酸化炭素除去器4によって十分燃料電池7を被毒しない程度の抑えられる低い濃度になっている。
このように、ステップS1から定常時直前までは、改質器3内の温度が起動時改質反応温度以上定常時改質反応温度未満とすることで一酸化炭素の濃度を抑え、一方、定常時になると、混合気中の水素が流路内の改質触媒と接触する時間が短くなり、改質ガスが改質器3の流路外に出る頃に改質ガス中の水素濃度がピークになるように流量を設定しているので、依然、改質器3から排出される一酸化炭素の濃度を低く維持できる。
改質器3で生成された改質ガスは一酸化炭素除去器4のマイクロ流路に供給され、更に空気が一酸化炭素除去器4のマイクロ流路に供給される。そして、このマイクロ流路においては、化学反応式(2)で微量に副成され一酸化炭素が一酸化炭素除去器4のマイクロ流路に形成された触媒の作用を受けて、化学反応式(3)に示すように選択的に酸化され、起動時及び定常時に燃料電池7の触媒を被毒しない程度の低い濃度になるまで除去される。
2CO+O2→2CO2 …(3)
そして、改質ガスがそのマイクロ流路から図示しない加湿器を経由して、加湿された後、燃料電池7の燃料極に供給され、空気が燃料電池7の酸素極に供給される。燃料極においては、電気化学反応式(4)に示すように、改質ガス中の水素が燃料極の触媒微粒子の作用を受けて水素イオンと電子とに分離する。水素イオンは固体高分子電解質膜を通じて酸素極に伝導し、電子は燃料極により取り出される。
H2→2H++2e- …(4)
酸素極においては、電気化学反応式(5)に示すように、空気中の酸素と、固体高分子電解質膜を通過した水素イオンと、燃料極により取り出された電子とが反応して水が生成され、電力が生成される。
2H++1/2O2+2e-→H2O … (5)
そして、燃料極からは電気化学反応式(4)に示す反応を起こさなかった未反応の水素を含むオフガスが排出されて、触媒燃焼器5に供給される。触媒燃焼器5においては外部から空気が供給され、水素及び空気が触媒燃焼器5のマイクロ流路を流動する。水素は、改質器3の熱損失分の発熱量、改質器3における改質反応熱と、一酸化炭素除去器4における一酸化炭素酸化反応熱の吸熱量との差分の熱量が得られるだけの空気中の酸素と燃焼触媒により酸化反応する。酸化反応により発生した燃焼熱は、改質器3が適正に改質反応を引き起こす定常時改質反応温度になり、一酸化炭素除去器4が適正に一酸化炭素除去反応を引き起こす定常時一酸化炭素除去反応温度になり、気化器2が適正に気化できる定常時気化温度になるために用いられる。なお、この燃焼熱において上記した定常時の温度になるために不足した熱量分は、薄膜ヒータ6によって補足することによって定常時に気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4が一定になるように制御することが可能となる。
触媒燃焼器5に供給されたオフガスのうち、触媒燃焼器5の酸化反応に使われなかった余剰の水素を含むガスは、断熱容器10の外に出て水素燃焼器8に供給される。水素燃焼器8においては、外部から供給された空気と混合された水素が、発電システム100の外部に排出しても問題のない程度の低濃度になるまで酸化されて排気される。
2H++1/2O2+2e-→H2O … (5)
そして、燃料極からは電気化学反応式(4)に示す反応を起こさなかった未反応の水素を含むオフガスが排出されて、触媒燃焼器5に供給される。触媒燃焼器5においては外部から空気が供給され、水素及び空気が触媒燃焼器5のマイクロ流路を流動する。水素は、改質器3の熱損失分の発熱量、改質器3における改質反応熱と、一酸化炭素除去器4における一酸化炭素酸化反応熱の吸熱量との差分の熱量が得られるだけの空気中の酸素と燃焼触媒により酸化反応する。酸化反応により発生した燃焼熱は、改質器3が適正に改質反応を引き起こす定常時改質反応温度になり、一酸化炭素除去器4が適正に一酸化炭素除去反応を引き起こす定常時一酸化炭素除去反応温度になり、気化器2が適正に気化できる定常時気化温度になるために用いられる。なお、この燃焼熱において上記した定常時の温度になるために不足した熱量分は、薄膜ヒータ6によって補足することによって定常時に気化器2、改質器3、一酸化炭素除去器4が一定になるように制御することが可能となる。
触媒燃焼器5に供給されたオフガスのうち、触媒燃焼器5の酸化反応に使われなかった余剰の水素を含むガスは、断熱容器10の外に出て水素燃焼器8に供給される。水素燃焼器8においては、外部から供給された空気と混合された水素が、発電システム100の外部に排出しても問題のない程度の低濃度になるまで酸化されて排気される。
次に、上記発電システム100を構成する改質器3の構成について説明する。
図3は、改質器3の正面、側面及び平面を示す斜視図であり、図4は図3におけるIV−IV矢視断面図である。図5は流路基板31aの上面図、図6は図5におけるVI−VI矢視断面図、図7は流路基板31aの下面図である。
改質器3は、金属、セラミック、シリコン、アルミニウム、ガラス等の材料から板状に形成された流路基板31aと蓋基板31bとを互いに重ね合わせて接合した構造を有している。流路基板31aの蓋基板31bとの接合面には蛇行した溝が凹んだ状態に形成されており、この溝に蓋をするように流路基板31aに蓋基板31bを接合することによって、この溝が流路基板31aと蓋基板31bとの接合部に設けられたマイクロ流路31cとなる。ここで、流路基板31aと蓋基板31bとが改質器3の本体であり、マイクロ流路31cが本体内に形成された内部空間である。蓋基板31bのみにマイクロ流路が形成されていてもよく、流路基板31a及び蓋基板31bの両者にマイクロ流路が形成されていてもよい。流路基板31aと蓋基板31bは後述する陽極接合によって接合される場合、基板間の界面において、一方が可動イオンとなる酸素イオンの供給源となり、他方が酸素イオンと結合することになるため、金属(又はシリコン)基板、ガラス基板の組合せや、ガラス基板、接合用金属膜が被膜されたガラス基板の組合せや、金属基板、接合用ガラス膜が被膜された金属基板の組合せが好適である。
図3は、改質器3の正面、側面及び平面を示す斜視図であり、図4は図3におけるIV−IV矢視断面図である。図5は流路基板31aの上面図、図6は図5におけるVI−VI矢視断面図、図7は流路基板31aの下面図である。
改質器3は、金属、セラミック、シリコン、アルミニウム、ガラス等の材料から板状に形成された流路基板31aと蓋基板31bとを互いに重ね合わせて接合した構造を有している。流路基板31aの蓋基板31bとの接合面には蛇行した溝が凹んだ状態に形成されており、この溝に蓋をするように流路基板31aに蓋基板31bを接合することによって、この溝が流路基板31aと蓋基板31bとの接合部に設けられたマイクロ流路31cとなる。ここで、流路基板31aと蓋基板31bとが改質器3の本体であり、マイクロ流路31cが本体内に形成された内部空間である。蓋基板31bのみにマイクロ流路が形成されていてもよく、流路基板31a及び蓋基板31bの両者にマイクロ流路が形成されていてもよい。流路基板31aと蓋基板31bは後述する陽極接合によって接合される場合、基板間の界面において、一方が可動イオンとなる酸素イオンの供給源となり、他方が酸素イオンと結合することになるため、金属(又はシリコン)基板、ガラス基板の組合せや、ガラス基板、接合用金属膜が被膜されたガラス基板の組合せや、金属基板、接合用ガラス膜が被膜された金属基板の組合せが好適である。
流路基板31aの接合面とは反対側の面には薄膜ヒータ31d(図1の薄膜ヒータ6に相当)が形成されている。薄膜ヒータ31dは電気エネルギーにより発熱する電熱膜であり、具体的には電気抵抗性発熱体、半導体性発熱体を薄膜状に成膜したものである。マイクロ流路31cの壁面には、本発明に係る触媒31eが形成されている。
図8は蓋基板31bの上面図、図9は図8におけるIX−IX矢視断面図である。蓋基板31bには、流路基板31aのマイクロ流路31cの両端部と対応する位置に、厚さ方向に貫通する導入孔31f、排出孔31gが設けられている。導入孔31fは気化器2から反応物を反応流路へ案内し、排出孔31gは反応流路から生成物を排出し、一酸化炭素除去器4へ案内する。
ここで、触媒31eを改質器3のマイクロ流路31cに充填する充填方法について説明する。図10は、触媒31eをマイクロ流路31cに充填する第一の充填方法を経時的に示した断面図である。
始めに、サンドブラスト等で削ることにより蛇行したマイクロ流路41cが予め形成
された流路基板31aを準備し(図10(a)参照)、流路基板31aの一方の面上(マイクロ流路31cが形成された面上)にドライフィルムからなるフォトレジスト32を貼り付ける(図10(b)参照)。フォトレジスト32を貼り付けたら、フォトレジスト32をパターニングしてフォトレジスト32のマイクロ流路31cに対応する部分に開口部33を形成する(図10(c)参照)。
された流路基板31aを準備し(図10(a)参照)、流路基板31aの一方の面上(マイクロ流路31cが形成された面上)にドライフィルムからなるフォトレジスト32を貼り付ける(図10(b)参照)。フォトレジスト32を貼り付けたら、フォトレジスト32をパターニングしてフォトレジスト32のマイクロ流路31cに対応する部分に開口部33を形成する(図10(c)参照)。
なお、図10(a)〜図10(c)に示す工程では、マイクロ流路31cが予め形成された流路基板31aにフォトレジスト32を貼り付けてパターニングしているが、マイクロ流路31cが形成される前の流路基板31aにフォトレジスト32を貼り付けて蛇行した形状にパターニングし、パターニング後のフォトレジスト32をマスクとしてエッチングすることによってマイクロ流路31cを形成してもよい。
開口部33を形成したら、マイクロ流路31cの内壁面及び開口部33の内壁面を含む
フォトレジスト32の表面に、触媒前駆体を溶媒中に分散させた分散液を塗布して、触媒前駆体層34(図10(d)参照)を形成する。溶媒中に分散させる触媒前駆体は、下記乾燥・焼成工程の処理に供される前の物である。
フォトレジスト32の表面に、触媒前駆体を溶媒中に分散させた分散液を塗布して、触媒前駆体層34(図10(d)参照)を形成する。溶媒中に分散させる触媒前駆体は、下記乾燥・焼成工程の処理に供される前の物である。
触媒前駆体層34を形成したら、フォトレジスト32とその面上に形成された不要の触媒前駆体層34とを、機械的力により流路基板31aから引き剥がして除去し、マイクロ
流路31cの内壁面にのみ触媒前駆体層44を残存させる(図10(e)参照)。ただし、フォトレジスト32を除去する場合に、流路基板31aの表面上にレジスト残渣(スカム)が僅かに残存したときには、当該レジスト残渣を酸素プラズマアッシングにより除去するのがよい。これは、後述する接合を確実にするためである。
流路31cの内壁面にのみ触媒前駆体層44を残存させる(図10(e)参照)。ただし、フォトレジスト32を除去する場合に、流路基板31aの表面上にレジスト残渣(スカム)が僅かに残存したときには、当該レジスト残渣を酸素プラズマアッシングにより除去するのがよい。これは、後述する接合を確実にするためである。
フォトレジスト32を除去したら、流路基板31aの他方の面上(マイクロ流路31cが形成されていない面上)に蛇行した形状の金属酸化物等からなる電気発熱抵抗体であるヒータ31dを成膜し、ヒータ31dに加熱するための配線を接続する(図10(f)参照)。ヒータ31dを成膜したら、流路基板31aの一方の面上に蓋基板31aを重ね合わせ、300〜800℃程度の高温環境下において流路基板31aと蓋基板31bのうち一方側が陽極で他方側が陰極となるように1kV程度の電圧を印加し、流路基板31aと蓋基板31bとを陽極接合する(図10(g)参照)。ヒータ31dは、マイクロ流路31cを流れる流体を加熱するものであるのでマイクロ流路31cと平面的に見て重なるように配置させてもよい。またヒータは、マイクロ流路31cが形成される前の段階で流路基板31aに形成されていてもよい。
蓋基板31bと流路基板31aとを陽極接合したら、ヒータ31dを作動させて流路基板
31aを加熱し、マイクロ流路31cの内壁面に残存した触媒前駆体層34を乾燥・焼成する。この乾燥・焼成工程は、ヒータ31dでの加熱の代わりに、陽極接合された蓋基板3
1b及び流路基板31aを加熱炉内に入れて加熱することによってなされてもよい。触媒前駆体層34を乾燥・焼成したら、マイクロ流路31cの一端部31hと他端部31iにそ
れぞれ配管をそれぞれ接続し、ヒータ31dの再度の作動により流路基板31aを加熱した状態で一方の管から他方の管に向けてマイクロ流路31c中で水素(水素を含む混合気体
でもよい。)を流通させ、触媒前駆体層34について水素還元処理をおこなう。
31aを加熱し、マイクロ流路31cの内壁面に残存した触媒前駆体層34を乾燥・焼成する。この乾燥・焼成工程は、ヒータ31dでの加熱の代わりに、陽極接合された蓋基板3
1b及び流路基板31aを加熱炉内に入れて加熱することによってなされてもよい。触媒前駆体層34を乾燥・焼成したら、マイクロ流路31cの一端部31hと他端部31iにそ
れぞれ配管をそれぞれ接続し、ヒータ31dの再度の作動により流路基板31aを加熱した状態で一方の管から他方の管に向けてマイクロ流路31c中で水素(水素を含む混合気体
でもよい。)を流通させ、触媒前駆体層34について水素還元処理をおこなう。
以上の工程を経ることで、触媒前駆体層34が触媒31eからなる層に化学変化し、触
媒31eを改質器3のマイクロ流路31cに充填することができる。
媒31eを改質器3のマイクロ流路31cに充填することができる。
なお、上記充填方法のその他の例として、サンドブラスト等で削ることにより蛇行した形状のマイクロ流路を予め形成した流路基板と蓋基板とを互いに重ね合わせて、陽極接合した後、流路基板に金属酸化物等からなる電気発熱抵抗体である蛇行した形状のヒータを成膜、その後、マイクロ流路の内部を、触媒前駆体を溶媒中に分散させた分散液で満たし、ヒータを作動させて分散液を乾燥させることによりマイクロ流路の内壁面に触媒前駆体層を形成、さらに、ヒータを作動させて触媒前駆体層を焼成して、水素を流通させることにより触媒前駆体層の水素還元処理を行い、このようにして触媒前駆体層が触媒からなる層に化学変化させることで、触媒を改質器のマイクロ流路に充填しても良い。
また、改質器3以外の気化器2、一酸化炭素除去器4、触媒燃焼器5及び水素燃焼器8も、図示しないが改質器3と同様に流路基板と蓋基板とを接合した構造を有し、流路基板と蓋基板との接合部にマイクロ流路が設けられており、蓋基板との接合面とは反対側の面に薄膜ヒータが成膜されている。
図11は、本発明の起動方法による改質器の起動時の反応挙動を示した図である。ここでは、図12に示すように、真空断熱容器10A内にPd/ZnO触媒を塗布した改質器3A、一酸化炭素除去触媒を塗布した一酸化炭素除去器4A、貴金属系燃焼触媒を塗布した触媒燃焼器5A及び、これらの反応器を電力によって加熱可能でかつ抵抗変化によって温度を読み取ることができる薄膜ヒータが設置された発電システム100Aを使用して、改質器3Aの定常時改質反応温度を300℃とし、混合気投入前に改質器3Aを250℃に保持しておき、混合気が改質器3Aに到達した瞬間から改質器3Aの温度を昇温し、定常時改質反応温度である300℃に保持した場合の反応挙動を測定した。具体的には、改質器3Aから排出される改質ガス中の液体成分を凝集器9Aによって取り除いた後、流量計11Aによってガスの流量を測定した。さらに、改質器3Aに混合気が導入された瞬間から約60秒後、430秒後、800秒後、1170秒後の改質ガス中の一酸化炭素濃度をガスクロ分析器12Aによって測定した。
図11から明らかなように、起動時の一酸化炭素濃度が定常時よりも低いことがわかる。なお、起動時に一酸化炭素濃度が上昇する理由は、燃料投入開始時の燃料流量が定常時の燃料流量に対して少ないことによって、燃料と触媒との接触時間が長くなり、メタノール水蒸気改質反応によって生じた一酸化炭素と水素から逆シフト反応によって一酸化炭素が生成するまでの反応時間が確保されてしまうことにある。したがって、燃料投入開始時に大きくなる燃料と触媒の接触時間の増大分を、反応温度を低くすることによって反応速度を低下させて差し引いてしまうことで逆シフト反応が抑制されたために、一酸化炭素濃度が低い水準で抑えられる効果として、本実施例の実験結果が定性的に説明することができる。なお、図11では、起動時における消費電力が若干増加しているが、これは、昇温することによって改質器等をより高温に加熱するために必要な熱損失分の熱量に相当し、図18では、起動時では定常状態と同様に同じ温度なために、既に改質器等が高温を維持しているように蓄熱されているので、熱損失が増大していない。
図11から明らかなように、起動時の一酸化炭素濃度が定常時よりも低いことがわかる。なお、起動時に一酸化炭素濃度が上昇する理由は、燃料投入開始時の燃料流量が定常時の燃料流量に対して少ないことによって、燃料と触媒との接触時間が長くなり、メタノール水蒸気改質反応によって生じた一酸化炭素と水素から逆シフト反応によって一酸化炭素が生成するまでの反応時間が確保されてしまうことにある。したがって、燃料投入開始時に大きくなる燃料と触媒の接触時間の増大分を、反応温度を低くすることによって反応速度を低下させて差し引いてしまうことで逆シフト反応が抑制されたために、一酸化炭素濃度が低い水準で抑えられる効果として、本実施例の実験結果が定性的に説明することができる。なお、図11では、起動時における消費電力が若干増加しているが、これは、昇温することによって改質器等をより高温に加熱するために必要な熱損失分の熱量に相当し、図18では、起動時では定常状態と同様に同じ温度なために、既に改質器等が高温を維持しているように蓄熱されているので、熱損失が増大していない。
図13は、図12に示すシステムにおいて、起動時の改質器の温度をさらに低く、200℃に保持しておいてから、定常時改質反応温度である300℃に昇温した場合の反応挙動を示した図である。この場合、起動時の一酸化炭素濃度はさらに低く抑えられていることがわかる。
一方、従来の図18では、比較的な高濃度の一酸化炭素によって改質器が被毒することを回避するためには、一酸化炭素濃度が定常時まで低下するまでの間、後段の一酸化炭素除去器に改質ガスを導入しないように制御しなければならないので、導入開始から400秒程度までは発電動作を行わないことになる。これに対して、図11及び図13では前述のように起動時の一酸化炭素濃度が定常時よりも低く抑えられているので、後段の一酸化炭素除去器4Aに改質ガスをすぐに導入できるから、発電開始までの時間は燃料投入から改質ガスが排出され始めるまでの数秒間となる。
一方、従来の図18では、比較的な高濃度の一酸化炭素によって改質器が被毒することを回避するためには、一酸化炭素濃度が定常時まで低下するまでの間、後段の一酸化炭素除去器に改質ガスを導入しないように制御しなければならないので、導入開始から400秒程度までは発電動作を行わないことになる。これに対して、図11及び図13では前述のように起動時の一酸化炭素濃度が定常時よりも低く抑えられているので、後段の一酸化炭素除去器4Aに改質ガスをすぐに導入できるから、発電開始までの時間は燃料投入から改質ガスが排出され始めるまでの数秒間となる。
以上のように、起動時に、改質器3の温度を定常時改質反応温度よりも50〜100℃以下に保持した後に燃料を供給して、燃料が改質器3に導入された瞬間に改質器3の温度を定常時改質反応温度まで上昇させるので、起動時の改質器3における一酸化炭素濃度を低く抑えることができる。また、起動直後の改質ガスを発電に寄与させることができるので、起動特性の高い発電システム100を提供することができる。
燃料が改質器3に導入されたことを、改質器3における温度低下によって検出するので、改質器3への燃料の導入を容易かつ確実に検出することができる。
燃料が改質器3に導入されたことを、改質器3における温度低下によって検出するので、改質器3への燃料の導入を容易かつ確実に検出することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施の形態では、改質器の定常時改質反応温度よりも50℃以上低温の状態から反応を開始することとしたが、図11及び図13からもわかるように、起動後、改質ガスの流量が定常状態の量に達するまでに250秒程度を要してしまう(図11、図13中のFlow Rateライン)。そこで、昇温をより円滑にして、より速く定常状態までに到達させるために、燃料であるメタノール水溶液に予め、過酸化水素を混入させて反応させることが好ましい。これによってより起動特性の高い発電システムを提供することができる。この場合の改質器の反応挙動を図14に示した。図14では、メタノールに対する過酸化水素の分解によって生じる酸素の比率が0.11(モル比)となるように、過酸化水素を混入した場合であり、250℃から反応を開始した。酸化反応を伴っているので、定常状態にまで達する時間が半減しているとともに、改質温度保持のために薄膜ヒータに加える電力(図14中のPower consumptionライン)が2/3程度に削減されている。ただし、部分酸化反応を伴っているので、水素吸収率は過酸化水素を混入しない場合よりも低く、したがって起動時のみに過酸化水素を導入することがより効果的であることが予測できる。この場合の定常状態への切り替え(過酸化水素の供給を停止する)のタイミングは、過酸化水素の効果は昇温時間の短縮であるから、昇温がほぼ完了した時点で切り替えれば良い。図14ではほぼ100秒である。上述したように図11、図14及び図18におけるそれぞれの定常運転に至るまでの時間、すなわち起動時間を図15にまとめた。なお、昇温を円滑にするための手段として、上記過酸化水素以外の酸化剤を使用しても構わない。
例えば、上記実施の形態では、改質器の定常時改質反応温度よりも50℃以上低温の状態から反応を開始することとしたが、図11及び図13からもわかるように、起動後、改質ガスの流量が定常状態の量に達するまでに250秒程度を要してしまう(図11、図13中のFlow Rateライン)。そこで、昇温をより円滑にして、より速く定常状態までに到達させるために、燃料であるメタノール水溶液に予め、過酸化水素を混入させて反応させることが好ましい。これによってより起動特性の高い発電システムを提供することができる。この場合の改質器の反応挙動を図14に示した。図14では、メタノールに対する過酸化水素の分解によって生じる酸素の比率が0.11(モル比)となるように、過酸化水素を混入した場合であり、250℃から反応を開始した。酸化反応を伴っているので、定常状態にまで達する時間が半減しているとともに、改質温度保持のために薄膜ヒータに加える電力(図14中のPower consumptionライン)が2/3程度に削減されている。ただし、部分酸化反応を伴っているので、水素吸収率は過酸化水素を混入しない場合よりも低く、したがって起動時のみに過酸化水素を導入することがより効果的であることが予測できる。この場合の定常状態への切り替え(過酸化水素の供給を停止する)のタイミングは、過酸化水素の効果は昇温時間の短縮であるから、昇温がほぼ完了した時点で切り替えれば良い。図14ではほぼ100秒である。上述したように図11、図14及び図18におけるそれぞれの定常運転に至るまでの時間、すなわち起動時間を図15にまとめた。なお、昇温を円滑にするための手段として、上記過酸化水素以外の酸化剤を使用しても構わない。
3 改質器(改質部)
4 一酸化炭素除去器(一酸化炭素除去部)
7 燃料電池(発電セル)
100 発電システム
123 制御部
4 一酸化炭素除去器(一酸化炭素除去部)
7 燃料電池(発電セル)
100 発電システム
123 制御部
Claims (5)
- 燃料を改質することによって改質ガスを生成する改質部と、
前記改質部で生成した改質ガス中の一酸化炭素を低濃度化する一酸化炭素除去部と、
前記一酸化炭素除去部を介した改質ガスが供給されて、電気化学反応により電力を取り出す発電セルと、
起動時に、前記改質部の温度を定常時の反応温度よりも低い所定範囲の温度で前記改質部に燃料を供給して、燃料が前記改質部に導入された後に前記改質部の温度を前記定常時の反応温度まで上昇させるよう制御する温度制御部と、を備えることを特徴とする発電システム。 - 前記温度制御部は、起動時に前記改質部に燃料を供給するときの温度は、前記定常時の反応温度よりも50℃〜100℃低い温度に制御することを特徴とする請求項1記載の発電システム。
- 前記燃料が前記改質部に導入されたことを、前記改質部における温度低下によって検出する温度検出部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電システム。
- 前記改質部に導入される燃料の流量を検出する流量検出部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電システム。
- 起動時に前記燃料に酸化剤が混入されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電システム。
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