(発明の分野)
本発明は、エリスロポエチンレセプター(EPO-R)のアゴニストであるペプチド化合物に関する。本発明はまた、抗EPO抗体によって特徴づけられる、赤芽球癆(PRCA)等の抗エリスロポエチン(EPO)抗体によって媒介される障害を治療または予防するために、このようなペプチド化合物を使用する治療方法に関する。本発明のペプチド化合物を含む医薬組成物も提供される。
(発明の背景)
組換え治療薬がますます開発されるにつれ、これら新しい薬剤の免疫原性が関心事項となっている(Schellekens H. (2003) Nephrol. Dial. Transplant 18: 1257-9)。慢性腎疾患(CDK)における貧血を改善するための組換えヒトEPOの使用は、この状態を管理する上での、この20年間における大きな進展である。この治療は、一般的には良好な耐容性を示すものであるが、抗EPO抗体の中和は、PRCA等の障害を引き起こし得る(Bergrem Hら、(1993) In: Bauer C, eds. Erythropoietin: Molecular Physiology and Clinical Application. New York、NY、Marcel Dekker 1993:266-275; Peces Rら、(1996) N. Engl J. Med. 334: 630-3;およびPrabhakar SSら、(1997) Clin. Nephrol. 47:331-5参照)。2002年に、この重篤な合併症の増加が報告された(Casadeval NJら、(2002) N. Engl J. Med. 346:469-75;およびGershon SKら、(2002) N. Engl. J. Med. 346:1584-6)。
PRCAとは、骨髄中の赤血球前駆体がほとんどない一方で、巨核球および白血球前駆体は、通常、正常レベルで存在する状態を言う。PRCAの患者において、抗EPO抗体は、赤血球生成促進剤(ESA)(例えばエポエチンまたはダルベポエチン)だけでなく、患者の内因性EPOも中和するので、重症例においては、赤血球生成活性がほとんど阻害され、骨髄内において赤芽球が実質的になくなり、網状赤血球数が<l0×109/Lとなる(Rossert Jら、(2004) J. Am. Soc. Nephrol. 15: 398-406)。結果として生じる貧血は重度のものであり、ヘモグロビン濃度はしばしば5または6g/dLまで落ち込み、患者は輸血に依存するようになり、通常、少なくとも月に1回の赤血球輸血を必要とする。
主としてIgG1またはIgG4サブタイプの中和抗EPO抗体は、分子のタンパク質部分に対するものである。なぜならば、EPOの脱グリコシル化は、抗体の結合を無効にしないからである(Casadevall NJら、(2002) N. Engl. J. Med. 346: 469-75)。抗EPO抗体に媒介されるPRCAの発症は、米国外で販売されているエポエチンアルファの製剤の1つ(EPREXTMまたはERYPOTM)の皮下(SC)での使用においての方がはるかに一般的であり(Bennett CLら、(2004) N. Engl. J. Med. 351: 1385-7)、欧州において、これら製品の皮下投与についての認可が一時的に取り消されることとなった。一般的に、皮膚のランゲルハンス細胞(樹状細胞)による抗原提示のために、タンパク質の皮下経路による投与の方がより免疫を生じやすい。皮下経路の投与の使用が減少し、続いて製剤が改善されたことにより、この病気の発症は迅速に減少したものの、低いベースライン割合が依然としてあり、最も新しく市販されたESAについての報告がなされている(Bennett CLら、(2004) N. Engl. J. Med. 351: 1385-7;およびHowman Rら、(2007) Nephrol. Dial. Transplant 22: 1462-4)。2005年11月に「Dear Doctor」レターが発行されたが、これは、抗体形成のリスクを避けるために、血液透析を受けている患者において、米国で認可されたすべてのESAを静脈内(IV)投与するように勧告するものであった。これは、コストに関して重大な意味合いを有するものである。なぜならば、エポエチンアルファおよびベータの皮下経路での投与は、静脈内経路よりも効率的であるからである(Kaufman JSら、(1998) N. Engl. J. Med. 339: 578-83)。また、ESA治療を受けたことのない患者において自然に形成され、自己免疫疾患のPRCAを引き起こす抗EPO抗体についての報告もある(Casadevall Nら、(1996) N. Engl. J. Med. 334: 630-3)。更に、抗EPO抗体生成の潜在的なリスクは、生物学的に類似の薬剤を含めたESAの開発および使用にも影響を与え得る。
これまでの抗EPO抗体に媒介されるPRCAの治療は、問題のあるものである(Verhelst Dら、(2004) Lancet 363: 1768-71)。抗EPO抗体に媒介されるPRCAに関連する貧血は、網状赤血球数の少なさ、ヘモグロビンレベルの低さ、骨髄において赤芽球が無いこと、組換えヒトEPOによる治療への耐性、およびEPOに対する中和抗体によって特徴付けられる(Casadevall Nら、(1996) N. Engl. J. Med. 334: 630-3)。抗体の中和効果は、ESAの用量を増やしても無効にならない。別の組換えESAへの切り替えは、抗EPO抗体の交差反応性があるので適切ではない。抗体に媒介されるPRCAは、組換えEPOを用いた更なる治療を不可能にし、患者の貧血を改善し、ヘモグロビンレベルを管理する目的で抗EPO抗体の生成を抑制するために、患者が定期的な輸血および/または免疫抑制療法を受けることを必要とする。場合によっては免疫抑制療法がこの病気を治してはいるが(Verhelst Dら、(2004) Lancet 363: 1768-71)、こうした投薬療法には相当なリスクおよび副作用が付随する。PRCAが治療されないままの場合、または免疫抑制への応答が無い場合、患者は通常輸血に依存し続け、これが鉄過剰を引き起こす。病気の回復後、タンパク質ベースのESA治療を再度受けることができた患者は少なく、これは再発性の抗体形成のリスクを伴う(Andrade Jら、(2005) Nephrol. Dial. Transplant 20: 2548-51)。また、抗体に媒介されるPRCAの患者にタンパク質ベースのESAを繰り返し注射した後では、アナフィラキシー様反応のリスクもある(Weber Gら、(2002) J. Am. Soc. Nephrol. 13: 2381-3)。従って、この症候群に対するより安全でより効果的な治療が非常に望まれている。
ペプチドがEPOレセプターアゴニストとして作用し、赤血球生成を刺激することができるという概念は、1996年に最初に報告されたが、元のペプチド(EMP-l)は治療剤として開発されなかった(Wrighton NCら、(1996) Science 273: 458-464)。天然のEPOおよび組換えEPOとまったく関係のないアミノ酸配列を有する新規の合成ペプチドをベースにしたESAが、米国特許出願公開第2005/0137329号(米国特許第7,084,245号として特許された)、第2007/0027074号、第2007/0104704号、米国非仮出願第11/777,500号(2007年7月13日出願)、および国際公開第WO 2006/060148号に記載されており、インビトロ、および種々の動物種において赤血球生成を刺激することが示されている(Fan Q.ら、(2006) Exp. Hematol. 34: 1303-11)。
タンパク質ベースのESAの使用がもたらす抗EPO抗体によって特徴付けられるPRCA等の障害の治療は、副作用、および免疫抑制療法の成功が限定的であることから、現在は満足できるものではない。PRCAのリスクは、貧血の管理に重要な影響をもたらし、結果としてESAの皮下(SC)での使用が限定される。最新の発明は、合成ペプチドベースのEPOレセプターアゴニストを患者に投与することにより、抗EPO抗体を有する患者において赤血球生成を刺激する方法を提供する。最新の発明はまた、合成ペプチドベースのEPOレセプターアゴニストを患者に投与することにより、抗EPO抗体を有する患者におけるPRCA等の障害を予防または治療する方法も提供する。
(発明の要旨)
本発明は、劇的に強化された効力および活性を有するEPO-Rアゴニストである新規のペプチド化合物を提供する。これらのペプチド化合物は、アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有するぺプチドモノマーのホモダイマー、またはアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有するぺプチドモノマーのホモダイマー、アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)(配列番号3)を有するぺプチドモノマーのホモダイマーであり、ここで、各アミノ酸は標準的な一文字の略記によって示す。「(AcG)」はN-アセチルグリシンであり、「(1-nal)」は1-ナフチルアラニンであり、「(MeG)」はN-メチルグリシンであってサルコシンとしても知られている。ペプチドダイマーの各ペプチドモノマーは、モノマーのシステイン残基間における分子内ジスルフィド結合を含有する。
ペプチドモノマーは、分岐している第3級アミドリンカーに共有結合されることによって二量化されてよい。第3級アミドリンカーは、
-C1O-CH2-X-CH2-C2O-
と表すことができ:
ここで、XはNCO-(CH2)2-N1H-であり;リンカーのC1は、第1ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基と共にアミド結合を形成し;リンカーのC2は、第2ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基と共にアミド結合を形成し;XのN1は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて、活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合し、ここで、PEGの分子量は約20,000〜40,000ダルトンである(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有し、リンカーのN1がカルバメート結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有し、リンカーのN1がアミド結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有し、リンカーのN1がカルバメート結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有し、リンカーのN1がアミド結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ペプチドモノマーは、分岐している第3級アミドリンカーに共有結合されることによって二量化されてもよい。第3級アミドリンカーは、
-C1O-CH2-X-CH2-C2O-
と表すことができ:
ここで、XはNCO-(CH2)2-NH-C3O-であり;リンカーのC1は、第1ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基と共にアミド結合を形成し;リンカーのC2は、第2ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基と共にアミド結合を形成する。本発明のペプチドダイマーは、以下の構造:
-N1H-(CH2)4-C4H-N2H-
を有するスペーサー部分を更に含み:
ここで、スペーサーのC4は、XのC3に共有結合し;スペーサーのN1は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて、活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に共有結合し;スペーサーのN2は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて活性化PEG部分に共有結合し、ここで、PEGの分子量は約10,000〜50,000ダルトンである(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。各PEG部分は、それぞれ10,000ダルトン(1OkD)、20kD、30kD、40kDまたは50kDであってよい。
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有し、スペーサーのN1とN2の両方がカルバメート結合を通じて活性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
好ましい実施形態において、2つのペプチドモノマーのC末端リジンはL-リジンである。また、当業者は上記の化学構造から理解するであろうが、2つの直鎖状のPEG部分はリジンによって結合され(例えばmPEG2-Lys-NHSまたはmPEG2-リシノール-NPCとして)、このリジンもまた好ましくはL-リジンであり、以下の立体化学を生み出す。
あるいは、1つ以上のリジン残基がD-リジンであってもよく、代替の立体化学を生み出すが、当業者はこれを容易に理解するであろう。
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有し、スペーサーのN1とN2の両方がアミド結合を通じて活性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
この場合もやはり、この化合物内のリジン分子は、好ましくは全てL-リジンであり、以下の立体化学を生み出す。
あるいは、1つ以上のリジン残基はD-リジンであってもよく、代替の立体化学を生み出すが、当業者はこれを容易に理解するであろう。
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有し、スペーサーのN1とN2の両方がカルバメート結合を通じて活性化PEG部分に共有結合し、ここでYがカルバメート基である場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
好ましくは、この分子内でペプチドモノマーと直鎖状のPEG部分とを結合するリジン残基は、全てL-リジンであり、以下の立体化学を生み出す:
あるいは、1つ以上のリジン残基がD-リジンであってもよく、代替の立体化学を生み出すが、当業者はこれを容易に理解するであろう。
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有し、スペーサーのN1とN2の両方がアミド結合を通じて活性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
好ましくは、この分子のペプチドモノマーと直鎖状のPEG部分とを結合するリジン残基は、全てL-リジンであり、以下の立体化学を生み出す。
その他の実施形態において、1つ以上のリジン残基がD-リジンであってもよく、代替の立体化学を生み出すが、当業者はこれを容易に理解するであろう。
ペプチドモノマーはまた、リジンリンカーへの結合によって二量化することができ、それによって、第1ペプチドモノマーはそのC末端においてリジンのεアミノ基に結合され、第2ペプチドモノマーはそのC末端においてリジンのαアミノ基に結合される。
本発明のペプチドダイマーは、以下の構造:
-N1H-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-N2H-
を有するスペーサー部分を更に含む。
一方の端部において、スペーサーのN1は、アミド結合を通じてリジンリンカーのカルボニル炭素に結合する。反対側の端部において、スペーサーのN2は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて、活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合し、ここで、PEGの分子量は約20,000〜40,000ダルトンである(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。
スペーサーが、カルバメート結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物(配列番号3)は以下のように示すことができる:
スペーサーが、アミド結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物(配列番号3)は以下のように示すことができる:
本発明は、このようなペプチド化合物を使用して種々の病状を治療する方法を更に提供する。これに含まれるのは、治療上有効量の上記化合物の1つを患者に投与することにより、中和抗EPO抗体によって特徴付けられる患者における障害を治療または克服する方法である。また、治療上有効量の上記化合物の1つを患者に投与することにより、中和抗EPO抗体によって特徴付けられる患者における障害の発症を予防または減少させる方法も含まれる。また、タンパク質ベースのESAによって治療されている患者における中和抗EPO抗体によって特徴付けられる障害を治療または予防する方法も含まれ、この方法は、治療上有効量の上記化合物の1つを患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、治療上有効量は、患者の体重1kg当たり化合物0.05〜0.3mgの用量である。また、タンパク質ベースのESAによって治療されていない患者における中和抗EPO抗体によって特徴付けられる障害を治療または予防する方法も含まれ、この方法は、治療上有効量の上記化合物の1つを患者に投与する工程を含む。また、抗EPO抗体によって特徴付けられる障害を有する患者における貧血を改善する方法も含まれる。また、輸血によるサポート無しにヘモグロビンを増加または回復させる方法も含まれる。ある実施形態においては、輸血によるサポート無しに、ヘモグロビンの範囲が標的範囲である10〜13g/dL、好ましくは11〜12g/dLまで増加または回復する。また、網状赤血球数を回復または増加させる方法も含まれる。ある実施形態においては、網状赤血球数は100×109/L〜250×109/Lまで回復または増加する。ある実施形態において、障害はPRCAである。
更に、ある実施形態においては、障害はPRCAであり、治療上有効量は、患者の体重1kg当たり化合物0.05〜0.3mgの用量である。その他の実施形態において、予防するべき、またはその発症が減少されるべき障害はPRCAであり、治療上有効量は、患者の体重1kg当たり化合物0.05〜0.3mgの用量である。別の実施形態において、障害はPRCAであり、治療上有効量は、患者の体重1kg当たり化合物0.075〜0.2mgの用量である。治療上有効量は、2〜4週間に1回投与することができる。ある実施形態において、治療上有効量は、4週間に1回(Q4W)投与することができる。いくつかの実施形態においては、治療上有効量をはじめに4週間に1回投与し、追加の治療上有効量を隔週に投与することができる。
本発明は、このようなペプチド化合物で構成される医薬組成物を更に提供する。ある実施形態において、PEGの分子量は約20,000ダルトンである。その他の実施形態において、医薬組成物は、上記化合物のうちのいずれか1つおよび薬学的に許容可能なキャリアを含む。
(発明の詳細な説明)
定義:
ペプチドにおけるアミノ酸残基は、以下のように略記する:フェニルアラニンはPheまたはF;ロイシンはLeuまたはL;イソロイシンはIleまたはI;メチオニンはMetまたはM;バリンはValまたはV;セリンはSerまたはS;プロリンはProまたはP;トレオニンはThrまたはT;アラニンはAlaまたはA;チロシンはTyrまたはY;ヒスチジンはHisまたはH;グルタミンはGlnまたはQ;アスパラギンはAsnまたはN;リジンはLysまたはK;アスパラギン酸はAspまたはD;グルタミン酸はGluまたはE;システインはCysまたはC;トリプトファンはTrpまたはW;アルギニンはArgまたはR;グリシンはGlyまたはG。ペプチドにおける非従来型のアミノ酸は以下のように略記する:1-ナフチルアラニンは1-nalまたはNp、N-メチルグリシン(サルコシンとしても知られる)はMeGまたはSc;アセチル化グリシン(N-アセチルグリシン)はAcG。
本明細書において、用語「ポリペプチド」または「タンパク質」とは、アミド結合を通じて共に結合するαアミノ酸であるアミノ酸モノマーからなるポリマーのことを言う。従って、ポリペプチドの長さは少なくとも2アミノ酸残基長であり、通常はより長い。一般的に、用語「ペプチド」とは、長さが2〜3アミノ酸残基長しかないポリペプチドのことを言う。本発明の新規のEPO-Rアゴニストペプチドの長さは、好ましくは約50アミノ酸残基長しかない。より好ましくは、約17〜40アミノ酸残基長である。ペプチドとは対照的に、ポリペプチドは、任意の数のアミノ酸残基を含んでいて良い。従って、用語「ポリペプチド」は、ペプチドと共により長いアミノ酸の配列をも含む。
本明細書において、フレーズ「薬学的に許容可能な」とは、「一般的に安全と考えられる」(例えば、ヒトに投与したときに、生理学的に許容でき、異常亢進(gastric upset)、めまい等のアレルギー反応または類似の有害反応を典型的に起こさない)分子的実体および組成物のことを言う。好ましくは、本明細書において、用語「薬学的に許容可能な」とは、動物、特にヒトにおける使用について、連邦政府または州政府の規制機関が許可している、あるいは、米国薬局方またはその他の一般的に承認された薬局方においてリストアップされていることを意味する。用語「キャリア」とは、化合物が共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルのことを言う。このような薬学的キャリアは、石油、動物、植物、または合成由来のものを含む水および油等の滅菌した液体であって良い(例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等)。水または水溶液、生理食塩水、水性デキストロース溶液および水性グリセロール溶液が、特に注射可能な溶液用のキャリアとして好ましく用いられる。適切な薬学的キャリアは、E. W. Martin著「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
本明細書において、用語「アゴニスト」とは、相補的な生物学的に活性なレセプターに結合し、レセプターにおける生物学的反応を引き起こすため、またはレセプターの既存の生物学的活性を高めるために生物学的に活性のレセプターを活性化する、生物学的に活性なリガンドのことを言う。
EPO-Rアゴニストである新規ペプチド
本発明は、劇的に強化された効力および活性を有するEPO-Rアゴニストである新規のペプチド化合物を提供する。これらのペプチド化合物は、アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有するぺプチドモノマーのホモダイマー、またはアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有するぺプチドモノマーのホモダイマーであり、ここで、各アミノ酸は標準的な一文字の略記によって示す。「(AcG)」はN-アセチルグリシンであり、「(1-nal)」は1-ナフチルアラニンであり、「(MeG)」はN-メチルグリシンであってサルコシンとしても知られている。ペプチドダイマーの各ペプチドモノマーは、モノマーのシステイン残基間における分子内ジスルフィド結合を含有する。このようなモノマーは、以下のように図式的に示すことができる:
これらの単量体ペプチドは、二量化されて、強化されたEPO-Rアゴニスト活性を有するぺプチドダイマーを提供する。リンカー(Lk)部分は、分岐鎖の第3級アミドであり、各モノマーのC末端リジン残基への同時結合によって、2つのペプチドモノマーのC末端を架橋する。第3級アミドリンカーは、
-C1O-CH2-X-CH2-C2O-
と表すことができ:
ここで、XはNCO-(CH2)2-N1H-であり;リンカーのC1は、第1ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基と共にアミド結合を形成し;リンカーのC2は、第2ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基と共にアミド結合を形成し;XのN1は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて、活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合し、ここで、PEGの分子量は約20,000〜40,000ダルトンである(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。
第3級アミドリンカーは、
-C1O-CH2-X-CH2-C2O-
と表すことができ:
ここで、XはNCO-(CH2)2-NH-C3O-であり;リンカーのC1は、第1ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基と共にアミド結合を形成し;リンカーのC2は、第2ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基と共にアミド結合を形成する。本発明のペプチドダイマーは、以下の構造:
-N1H-(CH2)4-C4H-N2H-
を有するスペーサー部分を更に含み:
ここで、スペーサーのC4は、XのC3に共有結合し;スペーサーのN1は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて、活性化PEG部分に共有結合し;スペーサーのN2は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて活性化PEG部分に共有結合し、ここで、PEGの分子量は約10,000〜60,000ダルトンである(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。
従って、本発明の新規ペプチドは、PEG部分も含有することができ、PEG部分は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて、ペプチドダイマーの第3級アミドリンカーに共有結合する。PEGは、薬学的に許容可能な水溶性ポリマーである。本発明において使用するためのPEGは、約20キロダルトン(20K)〜約60Kの分子量を有する直鎖状で分岐していないPEGであってよい(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。最も好ましくは、PEGの分子量は約30K〜40Kである。当業者は、以下についての考慮に基づいて、所望のポリマーサイズを選択することができるであろう:所望の用量;循環する時間;タンパク質分解への耐性;もしあれば、生物学的活性に対する効果;取り扱い易さ;抗原性の程度または欠如;および治療用ペプチドに対するその他に知られているPEGの効果。
本発明のペプチド、ペプチドダイマーおよびその他のペプチドベースの分子は、水溶性ポリマーを分子のレセプター結合部分(例えばペプチド+スペーサー)に結合させる種々の化学反応のうちのいずれかを使用して、水溶性ポリマー(例えばPEG)に結合させることができる。典型的な実施形態は、水溶性ポリマーとレセプター結合部分の共有結合のために単一の結合点を用いるが、別の実施形態では、複数の結合点を使用することができる。これには更なるバリエーションが含まれ、ここで、異なる種類の水溶性ポリマーが、異なる結合点においてレセプター結合部分に結合する。これには、スペーサーおよび/または一方もしくは両方のペプチド鎖への共有結合点が含まれていて良い。いくつかの実施形態において、ダイマーまたはより高次のマルチマーは、異なる種類のペプチド鎖(すなわちヘテロダイマーまたはその他のヘテロマルチマー)を含むであろう。一例を挙げると(これに限定されるものではない)、ダイマーは、PEG結合点を有する第1ペプチド鎖を含んでいて良く、第2ペプチド鎖は、PEG結合点を欠いているか、または第1ペプチド鎖と異なる結合の化学反応を利用して良く、また、いくつかのバリエーションにおいて、スペーサーは、PEG結合点を含有するか、または欠いていて良く、該スペーサーは、PEG化されている場合、第1および/または第2ペプチド鎖のものと異なる結合の化学反応を利用して良い。別の実施形態は、レセプター結合部分のスペーサー部分に結合するPEGと、分子のペプチド部分のアミノ酸の1つの側鎖に結合する異なる水溶性ポリマー(例えば炭水化物)とを用いる。
レセプター結合部分(ペプチド+スペーサー)のPEG化には、幅広い種類のポリエチレングリコール(PEG)が使用できる。実質的に任意の適切な反応性PEG試薬が使用できる。好ましい実施形態において、反応性PEG試薬は、レセプター結合部分に結合してカルバメート結合またはアミド結合を形成することになる。適切な反応性PEGの種類は、日油株式会社(150-6019 東京都渋谷区恵比寿4−20−3 恵比寿ガーデンプレイスタワー)の薬物送達システムカタログ(2003)、およびNektar Therapeutics社(35806 アラバマ州ハンツビル ディスカバリードライブ490)の分子工学カタログ(2003)に掲載され市販されているものを含むがこれらに限定されない。例を挙げると(これらに限定されるものではない)、以下のPEG試薬が、種々の実施形態において多くの場合に好ましい:mPEG2-NHS;mPEG2-ALD;マルチ-Arm PEG;mPEG(MAL)2;mPEG2(MAL);mPEG-NH2;mPEG-SPA;mPEG-SBA;mPEG-チオエステル;mPEG-ダブルエステル;mPEG-BTC;mPEG-ButyrALD;mPEG-ACET;ヘテロ官能性PEG(NH2-PEG-COOH、Boc-PEG-NHS、Fmoc-PEG-NHS、NHS-PEG-VS、NHS-PEG-MAL);PEGアクリレート(ACRL-PEG-NHS);PEG-リン脂質(例えばmPEG-DSPE);当業者が選択した、化学反応によって活性化グリセリンベースのPEGのGLシリーズを含むSUNBRITEシリーズの分岐したPEG;SUNBRITE活性化PEGのいずれか(カルボキシル-PEG、p-NP-PEG、Tresyl-PEG、アルデヒドPEG、アセタール-PEG、アミノ-PEG、チオール-PEG、マレイミド-PEG、ヒドロキシル-PEG-アミン、アミノ-PEG-COOH、ヒドロキシル-PEG-アルデヒド、カルボン酸無水物タイプ-PEG、官能化されたPEG-リン脂質を含むがこれらに限定されない);および特定の適用および用法向けに当業者が選択したその他の類似のおよび/または適切な反応性PEG。
本発明の新規ペプチドは、カルバメート結合またはアミド結合を通じてスペーサー部分に共有結合する2つのPEG部分をも含有していて良く、ここで、スペーサー部分は、ペプチドダイマーの第3級アミドリンカーに共有結合する。本発明のこのような実施形態において使用される2つのPEG部分のそれぞれは、直鎖状であって良く、単一の結合点で共に結合されて良い。各PEG部分の分子量は、好ましくは約10キロダルトン(10K)〜60Kである(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。直鎖状のPEG部分が特に好ましい。より好ましくは、2つのPEG部分のそれぞれの分子量は約20K〜40Kであり、更に好ましくは約20Kと約40Kの間である。更に好ましくは、2つのPEG部分のそれぞれの分子量は約20Kである。当業者は、以下についての考慮に基づいて、所望のポリマーサイズを選択することができるであろう:所望の用量;循環する時間;タンパク質分解への耐性;もしあれば、生物学的活性に対する効果;取り扱い易さ;抗原性の程度または欠如;および治療用ペプチドに対するその他に知られているPEGの効果。
本発明はまた、アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)(配列番号3)を有するぺプチドモノマーのホモダイマーであるペプチドアゴニストを含み、ここで、各アミノ酸は標準的な一文字の略記によって示す。「(AcG)」はN-アセチルグリシンであり、「(1-nal)」は1-ナフチルアラニンであり、「(MeG)」はN-メチルグリシンであってサルコシンとしても知られている。ペプチドダイマーの各ペプチドモノマーは、モノマーのシステイン残基間における分子内ジスルフィド結合を含有する。このようなモノマーは、以下のように図式的に示すことができる:
これらの単量体ペプチドは、二量化されて、強化されたEPO-Rアゴニスト活性を有するぺプチドダイマーを提供する。リンカー(Lk)部分はリジン残基であり、各モノマーのC末端アミノ酸への同時結合によって、2つのペプチドモノマーのC末端を架橋する。1つのペプチドモノマーは、そのC末端においてリジンのεアミノ基に結合し、2つ目のペプチドモノマーは、そのC末端においてリジンのαアミノ基に結合する。例えば、ダイマーは式Iのように構造的に示すことができ、式IIのように要約できる:
式Iおよび式IIにおいて、N2はリジンのεアミノ基の窒素原子を表し、N1はリジンのαアミノ基の窒素原子を表す。
本発明のペプチドダイマーは、以下の構造:
-N1H-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-N2H-
を有するスペーサー部分を更に含む。
一方の端部において、スペーサーのN1は、アミド結合を通じてリジンリンカーのカルボニル炭素に結合する。反対側の端部において、スペーサーのN2は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて、活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合し、ここで、PEGの分子量は約10,000〜60,000ダルトンである(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。より好ましくは、PEGの分子量は約20,000〜40,000ダルトンである。
従って、本発明の新規ペプチドは、PEG部分も含有し、PEG部分はペプチドダイマーに共有結合する。PEGは、薬学的に許容可能な水溶性ポリマーである。本発明において使用するためのPEGは、約20キロダルトン(20K)〜約60Kの分子量を有する直鎖状で分岐していないPEGであってよい(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。最も好ましくは、PEGの分子量は約20K〜約40Kであり、更に好ましくは、分子量は約30K〜約40Kである。当業者は、以下についての考慮に基づいて、所望のポリマーサイズを選択することができるであろう:所望の用量;循環する時間;タンパク質分解への耐性;もしあれば、生物学的活性に対する効果;取り扱い易さ;抗原性の程度または欠如;および治療用ペプチドに対するその他に知られているPEGの効果。
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有し、リンカーのN1がカルバメート結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有し、リンカーのN1がアミド結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有し、リンカーのN1がカルバメート結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有し、リンカーのN1がアミド結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
本発明の好ましいペプチドダイマーは、以下を含むがこれらに限定されない:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有し、スペーサーのN1とN2の両方がカルバメート結合を通じて活性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有し、スペーサーのN1とN2の両方がアミド結合を通じて活性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有し、スペーサーのN1とN2の両方がカルバメート結合を通じて活性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
ホモダイマーの各モノマーがアミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有し、スペーサーのN1とN2の両方がアミド結合を通じて活性化PEG部分に共有結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物は以下のように示すことができる:
本発明の好ましいペプチドダイマーは、以下を含むがこれらに限定されない:
スペーサーが、カルバメート結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物(配列番号3)は以下のように示すことができる:
スペーサーが、アミド結合を通じて活性化ポリエチレングリコール(PEG)部分に結合する場合、本発明の新規ペプチド化合物(配列番号3)は以下のように示すことができる:
この二量体構造は、[Ac-ペプチド、ジスルフィド]2Lys-スペーサー-PEG20-40Kと書くことができ、以下を示す:リジンのαアミノ基およびεアミノ基の両方に結合するN末端がアセチル化されたペプチドであって、各ペプチドは分子内ジスルフィドループを含有し、スペーサー分子はリジンのC末端とPEG部分の間に共有結合を形成し、ここで、PEGの分子量は約20,000〜約40,000ダルトンであるもの。
本発明の好ましいペプチドダイマーは、以下を含むがこれらに限定されない:
20種類の従来のアミノ酸の立体異性体(例えばD-アミノ酸)、a,a-二置換アミノ酸等の非天然のアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、およびその他の従来のものではないアミノ酸も、本発明の化合物の適切な成分であり得る。従来のものではないアミノ酸の例は、以下のものを含むがこれらに限定されない:β-アラニン;3-ピリジルアラニン;4-ヒドロキシプロリン;O-ホスホセリン;N-メチルグリシン;N-アセチルセリン;N-ホルミルメチオニン;3-メチルヒスチジン;5-ヒドロキシリジン;ノルロイシン;並びにその他の類似のアミノ酸およびイミノ酸。その他の変異も可能であり、例えば以下が含まれる:アミノ末端の変異;カルボキシ末端の変異;1つ以上の天然の遺伝的にコードされるアミノ酸の、従来のものではないアミノ酸による置換;1つ以上のアミノ酸残基の側鎖の変異;ペプチドのリン酸化反応等。
本発明のペプチド配列は、単独で、またはペプチド鎖のN末端および/またはC末端の延長部と結合して存在することができる。このような延長部は、非天然の配列を任意に伴う、または実質的に伴わない天然にコードされるペプチド配列であって良い。延長部は、当業者が所望するように、任意の付加、欠失、点突然変異、もしくはその他の配列の変異または組合せを含んでいて良い。一例を挙げると(これに限定されるものではない)、天然の配列は全長であっても部分長であっても良く、側鎖結合を通じて炭水化物、PEG、またはその他のポリマー等を結合する部位を提供するためのアミノ酸置換を含み得る。あるバリエーションにおいて、アミノ酸置換の結果、配列がヒト化されてヒト免疫系に適合する。非免疫グロブリンのスペーサー配列を伴う、または伴わない本発明のEPO-R活性化配列に隣接する、または近接する免疫グロブリン配列を含む、全てのタイプの融合タンパク質が提供される。実施形態の1つのタイプは、重鎖および/または軽鎖の可変(V)領域の代わりにEPO-R活性化配列を有する免疫グロブリン鎖である。
本発明のペプチド化合物の調製
(ペプチド合成)
本発明のペプチドは、当技術分野において知られている古典的方法によって調製できる。これらの標準的方法は、排他的固相合成、部分的固相合成法、フラグメント縮合、古典的な溶液合成、およびDNA組み換え技術を含む(例えばMerrifield J. Am. Chem. Soc. 1963 85:2149参照)。
1つの実施形態において、ペプチドダイマーのペプチドモノマーは個々に合成され、合成の後で二量化される。
別の実施形態において、ダイマーのペプチドモノマーは、ペプチド合成の開始部位として機能することが可能な2つの官能基と、別の分子部分(例えば固体支持体表面上に存在する場合がある)への結合を可能にする第3官能基(例えばカルボキシル基またはアミノ基)とを有する分岐している第3級アミドリンカーLK部分によってC末端を通じて結合する。この場合、固相合成技術のあるバリエーションにおいて、2つのペプチドモノマーはリンカーLK部分の2つの反応性窒素基上に直接合成することができる。このような合成は、逐次であっても同時であっても良い。
別の実施形態において、固相合成技術のあるバリエーションにおいて、2つのペプチドモノマーはリンカーLK部分の2つの反応性窒素基上に直接合成することができる。このような合成は、逐次であっても同時であっても良い。この実施形態においては、ペプチド合成の開始部位として機能することが可能な2つのアミノ基と、別の分子部分(例えば固体支持体表面上に存在する場合がある)への結合を可能にする第3官能基(例えばリジンのカルボキシル基;またはリジンアミドのアミノ基、カルボキシル基がアミド部分-CONH2に変換されているリジン残基)とを有するリジンリンカー(LK)部分を使用する。
ダイマーのペプチド鎖のリンカー上への逐次合成を行うべきである場合、リンカー分子上の2つのアミン官能基は、2つの異なる直交除去型アミン保護基で保護される。保護されたリンカーは、リンカーの第3官能基を通じて固体支持体に結合される。第1アミン保護基が除去され、ダイマーの第1ペプチドが第1脱保護アミン部分上に合成される。次に第2アミン保護基が除去され、ダイマーの第2ペプチドが第2脱保護アミン部分上に合成される。例えば、リンカーの第1アミノ部分はAllocで保護されて良く、第2アミノ部分はFmocで保護されて良い。この場合、Fmoc基(Alloc基ではない)は、弱塩基(例えばジメチルホルムアミド(DMF)中の20%ピペリジン)による処理によって除去することができ、第1ペプチド鎖が合成される。その後で、Alloc基を適切な試薬(例えばPd(PPh3)/4-メチルモルホリンおよびクロロホルム)を使用して除去することができ、第2ペプチド鎖が合成される。ジスルフィド結合の形成を制御するために異なるシステインのチオール保護基を使用するべきである場合(以下に述べる)、たとえダイマーのペプチド鎖の最終的なアミノ酸配列が同一であっても、この技術を使用する必要があることに留意されたい。
ダイマーのペプチド鎖のリンカー上への同時合成を行うべきである場合、リンカー分子の2つのアミン官能基は、同一の除去可能なアミン保護基で保護される。保護されたリンカーは、リンカーの第3官能基を通じて固体支持体に結合される。この場合、リンカー分子の2つの保護された官能基は同時に脱保護され、脱保護されたアミン上に2つのペプチド鎖が同時に合成される。この技術を使用すると、ダイマーのペプチド鎖の配列が同一になり、システイン残基のチオール保護基が全て同一であることに留意されたい。
ペプチド合成のための好ましい方法は、固相合成である。固相ペプチド合成手順は当技術分野において周知である(例えばStewart Solid Phase Peptide Syntheses (Freeman and Co.:サンフランシスコ) 1969;米国サンディエゴのNovabiochem社の2002/2003 General Catalog;Goodman Synthesis of Peptides and Peptidomimetics (Houben-Weyl、シュトゥットガルト) 2002参照)。固相合成において、合成は、典型的には、αアミノ保護樹脂を使用してペプチドのC末端の端から開始する。適切な出発原料は、例えば、クロロメチル化された樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ポリスチレン樹脂、またはベンズヒドリルアミン樹脂等に、必要なαアミノ酸を付着させることによって調製できる。このようなクロロメチル化された樹脂の1つは、BIO-BEADS SX-1という商品名で市販されている(カリフォルニア州リッチモンド、Bio Rad Laboratories社製)。ヒドロキシメチル樹脂の調製は記載されている(Bodonszkyら、(1966) Chem. Ind. London 38:1597)。ベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂は記載されており(Pietta and Marshall (1970) Chem. Commun. 650)、塩酸塩の形態はBeckman Instruments社(カリフォルニア州パロ・アルト)より市販されている。例えば、Gisin (1973) Helv. Chim. Acta 56:1467に記載の方法に従えば、重炭酸セシウム触媒の助けを借りて、αアミノ保護アミノ酸をクロロメチル化された樹脂に結合することができる。
最初の結合後、例えば室温で有機溶媒中のトリフルオロ酢酸(TFA)または塩酸(HCl)溶液を使用して、αアミノ保護基を除去する。その後、αアミノ保護アミノ酸を、増えていく支持体結合ペプチド鎖に連続して結合させる。αアミノ保護基は、ペプチドの段階的合成の分野において有用であることが知られているものであり、以下を含む:アシル型保護基(例えばホルミル、トリフルオロアセチル、アセチル);芳香族ウレタン型保護基(例えばベンジルオキシカルボイル(Cbz)および置換されたCbz);脂肪族ウレタン保護基(例えばt-ブチルオキシカルボニル(Boc)、イソプロピルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル);アルキル型保護基(例えばベンジル、トリフェニルメチル);フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc);アリルオキシカルボニル(Alloc);および1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)エチル(Dde)。
側鎖保護基(典型的にはエーテル、エステル、トリチル、PMC等)は、結合中は無傷のままであり、アミノ末端保護基の脱保護中またはカップリング中は分離されない。側鎖保護基は、最後のペプチドの合成が完了したときに除去可能でなければならず、反応条件下において標的ペプチドを変えない。Tyrの側鎖保護基は、テトラヒドロピラニル、tert-ブチル、トリチル、ベンジル、Cbz、Z-Br-Cbz、および2,5-ジクロロベンジルを含む。Aspの側鎖保護基は、ベンジル、2,6-ジクロロベンジル、メチル、エチルおよびシクロヘキシルを含む。ThrおよびSerの側鎖保護基は、アセチル、ベンゾイル、トリチル、テトラヒドロピラニル、ベンジル、2,6-ジクロロベンジルおよびCbzを含む。Argの側鎖保護基は、ニトロ、トシル(Tos)、Cbz、アダマンチルオキシカルボニルメシトイルスルホニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチル-ベンゼンスルホニル(Mtr)またはBocを含む。Lysの側鎖保護基は、Cbz、2-クロロベンジルオキシカルボニル(2-Cl-Cbz)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(2-Br-Cbz)、TosまたはBocを含む。
αアミノ保護基の除去後、残りの保護されたアミノ酸は所望の順番で段階的に結合される。各保護されたアミノ酸は、一般的に、溶液(例えば塩化メチレン(CH2Cl2)、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはそれらの混合液)中の、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3 テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)またはジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の適切なカルボキシル基活性剤を使用して、約3倍過剰で反応させる。
所望のアミノ酸配列の完成後、所望のペプチドは、トリフルオロ酢酸(TFA)またはフッ化水素(HF)等の試薬による処理によって樹脂の支持体から分離され、ぺプチドが樹脂から切り離されるのみならず、残りの側鎖保護基も全て切り離される。クロロメチル化された樹脂を使用する場合、フッ化水素による処理の結果、遊離ペプチド酸が形成される。ベンズヒドリルアミン樹脂を使用する場合、フッ化水素による処理の結果、遊離ペプチドアミドが直接的に得られる。あるいは、クロロメチル化された樹脂を採用する場合、ペプチド樹脂をアンモニアで処理することによって側鎖が保護されたペプチドを脱カップリングすることができ、所望の側鎖が保護されたアミドが与えられる。または、アルキルアミンで処理することによって、側鎖が保護されたアルキルアミドまたはジアルキルアミドが与えられる。次に、側鎖の保護は、フッ化水素を使用する処理によって通常の方法で除去され、遊離型アミド、アルキルアミド、またはジアルキルアミドが与えられる。
本発明のエステルの調製においては、ペプチド酸を調製するために使用される樹脂が使用され、側鎖が保護されたペプチドが、塩基および適切なアルコール(例えばメタノール)を使用して切断される。次に側鎖保護基が、フッ化水素を使用した処理によって通常の方法で除去され、所望のエステルが得られる。
これらの手順は、本発明の化合物のいずれかのペプチドであって、20種類の天然の遺伝的にコードされるアミノ酸以外のアミノ酸が1箇所、2箇所またはそれ以上の箇所において置換されているものを合成するためにも使用できる。本発明のペプチドに置換され得る合成アミノ酸は、以下を含むがこれらに限定されない:N-メチル;L-ヒドロキシプロピル;L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニル;δアミノ酸(L-δ-ヒドロキシリシルおよびD-δ-メチルアラニル等);L-α-メチルアラニル;βアミノ酸;およびイソキノリル。D-アミノ酸および非天然の合成アミノ酸も、本発明のペプチドに組み込むことができる。
(ペプチドの改変)
また、本発明のペプチド化合物のアミノ末端および/またはカルボキシ末端を改変させて、その他の本発明の化合物を生成することもできる。例えば、アミノ末端は、酢酸またはハロゲン化されたその誘導体(α-クロロ酢酸、α-ブロモ酢酸、またはα-ヨード酢酸等)を使用してアセチル化できる。
20種類の遺伝的にコードされたアミノ酸(または立体異性体のD-アミノ酸)の天然の側鎖は、以下のもので置換できる:その他の側鎖、例えばアルキル、低級アルキル、4、5、6または7員環の環状アルキル、アミド、アミド低級アルキル、アミドジ(低級アルキル)、低級アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシおよびその低級エステル誘導体等の基;並びに4、5、6または7員環の複素環。特に、プロリン残基の環の大きさが、5員環から4、6または7員環に改変されているプロリンアナログを採用することができる。環状基は飽和されていても不飽和でも良く、不飽和の場合、芳香族でも非芳香族でも良い。複素環基は、好ましくは、1つ以上の窒素、酸素および/または硫黄のヘテロ原子を含有する。このような基の例は以下を含む:フラザニル、フリル、イミダゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル(例えばモルホリノ)、オキサゾリル、ピペラジニル(例えば1-ピペラジニル)、ピペリジル(例えば1-ピペリジル、ピペリジノ)、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル(例えば1-ピロリジニル)、ピロリニル、ピロリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル(例えばチオモルホリノ)、およびトリアゾリル。これらの複素環基は、置換されていてもされていなくても良い。基が置換されている場合、置換基は、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、酸素、あるいは、置換されたまたは置換されていないフェニルであって良い。
また、リン酸化反応およびその他の方法によって、ペプチドを容易に改変させることができる(例えばHrubyら、(1990) Biochem J.268:249-262に記載)。
本発明のペプチド化合物は、類似の生物学的活性を有する非ペプチド性化合物の構造モデルとしての役割も果たす。リードペプチド化合物と同一のまたは類似の所望の生物学的活性を有するが、溶解度、安定性ならびに加水分解およびタンパク質分解への感受性に関してはリード化合物よりも好ましい活性を有する化合物を構築するために、種々の技術を利用可能であることを、当業者は認識している(Morgan and Gainor (1989) Ann. Rep. Med. Chem. 24:243-252参照)。これらの技術は、ホスホン酸塩、アミデート、カルバメート、スルホンアミド、第二級アミンおよびN-メチルアミノ酸で構成される主鎖でペプチドの主鎖を置換することを含む。
(ジスルフィド結合の形成)
本発明の化合物は、2つの分子内ジスルフィド結合を含有する。このようなジスルフィド結合は、各ペプチドモノマーのシステイン残基の酸化によって形成できる。
1つの実施形態において、システイン結合の形成の制御は、所望の異性体の最適な形成に効果的なタイプおよび濃度の酸化剤を選択することによって行われる。例えば、2つの分子内ジスルフィド結合(各ペプチド鎖に1つ)を形成するためのペプチドダイマーの酸化は、酸化剤がDMSOまたはヨウ素(I2)である場合に優先的に達成される(分子内ジスルフィド結合の形成よりも)。
その他の実施形態において、システイン結合の形成は、ペプチド合成中のチオール保護基の選択的使用によって制御される。例えば、2つの分子内ジスルフィド結合を有するダイマーが所望である場合、第1モノマーペプチド鎖が、第1チオール保護基(例えばトリチル(Trt)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、および1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)エチル(Dde)等)で保護されたコア配列の2つのシステイン残基を用いて合成され、次に、第2モノマーペプチドが、第1チオール保護基とは異なる第2チオール保護基(例えばアセトアミドメチル(Acm)、t-ブチル(tBu)等)で保護されたコア配列の2つのシステイン残基を用いて合成される。その後、第1チオール保護基が除去されて、第1モノマーの二硫化物の環化を生じさせ、次に第2チオール保護基が除去されて、第2モノマーの二硫化物の環化を生じさせる。
本発明のその他の実施形態は、これらのジスルフィド誘導体のアナログを提供し、その中において、硫黄原子のうちの1つがCH2基またはその他の硫黄の異性体(isotere)で置換されている。これらのアナログは、本発明の化合物から調製することができ、ここで、各ペプチドモノマーは、少なくとも1つのCまたはホモシステイン残基を含有し、当技術分野において知られている方法を使用した分子内または分子間の置換により、第2C残基がα-アミノ-γ-酪酸で置換されている(例えばBarkerら、(1992) J. Med. Chem. 35:2040-2048;およびOrら、(1991) J. Org. Chem. 56:3146-3149参照)。この置換はα-アミノ-γ-酪酸のその他のホモログおよびホモシステインを使用しても起こり得ることを、当業者は容易に理解するであろう。
前述の環化方法に加え、その他の非ジスルフィドペプチド環化の方法も使用できる。このようなその他の環化方法は、例えば、アミド-環化の方法や、チオ-エーテル結合の形成を伴うものを含む。従って、本発明の化合物は、分子内アミド結合または分子内チオ-エーテル結合のいずれかを有する環化形態で存在することができる。例えば、コア配列の1つのシステインがリジンで置換され、2つ目のシステインがグルタミン酸で置換される形で、ペプチドを合成して良い。その後、これら2つの残基の側鎖間のアミド結合を通じて環状モノマーを形成して良い。あるいは、コア配列の1つのシステインがリジン(またはセリン)で置換される形でペプチドを合成して良い。そして、コア配列のリジン(またはセリン)残基の側鎖と2つ目のシステイン残基の側鎖との間のチオ-エーテル結合を通じて環状モノマーを形成して良い。このように、本発明の化合物を環化するために、ジスルフィド環化方法に加え、アミド環化方法およびチオ-エーテル環化方法のいずれをも容易に使用することができる。あるいは、α置換酢酸でペプチドのアミノ末端にキャップをすることができ、ここで、α置換基は、αハロ酢酸(例えばα-クロロ酢酸、α-ブロモ酢酸、またはα-ヨード酢酸)等の離脱基である。
(分岐している第3級アミドリンカーの追加)
ペプチドモノマーは、分岐している第3級アミドリンカー部分によって二量化できる。1つの実施形態において、リンカーは、ペプチド合成中にペプチドに組み込まれる。例えば、リンカーLK部分が、ペプチド合成の開始部位として機能可能な2つの官能基と、1つ以上のその他の分子部分への結合を可能とする1つ以上のその他の官能基(例えばカルボキシル基またはアミノ基)とを含有する場合、リンカーは、固体支持体に結合させることができる。その後、固相合成技術のバリエーションにおいて、2つのペプチドモノマーを、リンカーLK部分の2つの反応性窒素基上に直接合成させて良い。
代替の実施形態において、リンカーは、ペプチド合成後に、ペプチドダイマーの2つのペプチドモノマーに結合させることができる。このような結合は、当技術分野において十分に確立されている方法によって達成できる。1つの実施形態において、リンカーは、合成されたペプチドモノマーの標的官能基への結合に適切な2つの官能基を含有する。例えば、事前に活性化されているか、または適切なカップリング試薬の存在下で、2つのカルボキシル基を含有するリンカーを、2つのペプチドモノマーそれぞれの標的リジン側鎖のアミン基と反応させることができる。
例えば、ペプチドモノマーを、第3級アミドリンカー:
A*-C1O-CH2-X-CH2-C2O-B*
に化学的に結合させることができ、ここで:
XはNCO-(CH2)2-NH-Yであり、Yは適切な保護基であり(t-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基等);A*は適切な官能基であって(N-オキシスクシンイミド等)、リンカーのC1を第1ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基に結合させるために使用され;B*は適切な官能基であって(N-オキシスクシンイミド等)、リンカーのC2を第2ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基に結合させるために使用される。
加えて、例えば、ペプチドモノマーは、第3級アミドリンカー:
A*-C1O-CH2-X-CH2-C2O-B*
に化学的に結合させることができ、ここで:
XはNCO-(CH2)2-NH-C3O-であり、A*は適切な官能基であって(N-オキシスクシンイミド等)、リンカーのC1を第1ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基に結合させるために使用され;B*は適切な官能基であって(N-オキシスクシンイミド等)、リンカーのC2を第2ペプチドモノマーのC末端リジン残基のεアミノ基に結合させるために使用され;第3級アミドリンカーは、スペーサー部分:
Y-NH-(CH2)4-C4H-NH-Y
に化学的に結合され、ここで、
XのC3はスペーサーのC4に共有結合し、Yは適切な保護基(t-ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基等)である。
(リジンリンカーの追加)
ペプチドモノマーは、リジンリンカーLK部分によって二量化できる。1つの実施形態において、リジンリンカーは、ペプチド合成中にペプチド内に組み込まれる。例えば、リジンリンカーLK部分が、ペプチド合成の開始部位として機能可能な2つの官能基と、別の分子部分への結合を可能とする第3官能基(例えばカルボキシル基またはアミノ基)とを含有する場合、リンカーは、固体支持体に結合させることができる。その後、固相合成技術のバリエーションにおいて、2つのペプチドモノマーを、リジンリンカーLK部分の2つの反応性窒素基上に直接合成させて良い。
ペプチドダイマーがリジンリンカーLK部分によって二量化される場合における代替の実施形態において、当該リンカーは、ペプチド合成後に、ペプチドダイマーの2つのペプチドモノマーに結合させることができる。このような結合は、当技術分野において十分に確立されている方法によって達成できる。1つの実施形態において、リンカーは、合成されたペプチドモノマーの標的官能基への結合に適切な少なくとも2つの官能基を含有する。例えば、リジンの2つの遊離型アミン基は、2つのペプチドモノマーそれぞれのC末端カルボキシル基と反応させることができる。
(スペーサーの追加)
本発明のペプチド化合物は、スペーサー部分を更に含む。1つの実施形態において、スペーサーは、ペプチド合成中にペプチド内に組み込まれて良い。例えば、スペーサーが、1つの遊離型アミノ基と、別の分子部分への結合を可能とする第2官能基(例えばカルボキシル基またはアミノ基)とを含有する場合、スペーサーを、固体支持体に結合させることができる。
1つの実施形態において、2つの官能基を含有するスペーサーは、はじめに第1官能基を通じて固体支持体に結合される。次に、ペプチド合成の開始部位として機能可能な2つの官能基と、別の分子部分への結合を可能とする第3官能基(例えばカルボキシル基またはアミノ基)とを有するリジンリンカーLK部分が、スペーサーの第2官能基およびリンカーの第3官能基を通じてスペーサーに結合される。その後、固相合成技術のあるバリエーションにおいて、2つのペプチドモノマーはリンカーLK部分の2つの反応性窒素基上に直接合成することができる。例えば、遊離型アミン基を有する固体支持体に結合されたスペーサーは、リンカーの遊離型カルボキシル基を通じてリジンリンカーと反応させて良い。
代替の実施形態において、スペーサーは、ペプチド合成後にペプチドダイマーに結合させることができる。このような結合は、当技術分野において十分に確立されている方法によって達成できる。1つの実施形態において、リンカーは、合成されたペプチドの標的官能基への結合に適切な少なくとも1つの官能基を含有する。例えば、遊離型アミン基を有するスペーサーは、ペプチドのC末端カルボキシル基と反応させることができる。別の例において、遊離型カルボキシル基を有するリンカーは、リジンアミドの遊離型アミン基と反応させることができる。
(ポリエチレングリコール(PEG)の結合)
近年、ポリエチレングリコール(PEG)等の水溶性ポリマーが、治療上および診断上の重要性を有するペプチドの共有結合修飾に使用されてきている。このようなポリマーの結合は、生物学的活性を強化し、血液循環時間を引き延ばし、免疫原性を低下させ、水溶性を高め、プロテアーゼ消化への耐性を高めると考えられている。例えば、治療用ポリペプチド(例えばインターロイキン(Knaufら、(1988) J. Biol. Chem. 263;15064;およびTsutsumiら、(1995) J. Controlled Release 33:447)、インターフェロン(Kitaら、(1990) Drug Des. Delivery 6:157)、カタラーゼ(Abuchowskiら、(1977) J. Biol. Chem. 252:582)、スーパーオキシドジスムターゼ(Beauchampら、(1983) Anal. Biochem. 131:25)、およびアデノシンデアミナーゼ(Chenら、(1981) Biochim. Biophy. Acta 660:293)等)に対するPEGの共有結合は、それらのインビボでの半減期を引き延ばし、および/または、それらの免疫原性および抗原性を低下させることが報告されている。
本発明のペプチド化合物は、カルバメート結合またはアミド結合を通じて、分岐している第3級アミドリンカーまたはペプチドダイマーのスペーサーに共有結合されるポリエチレングリコール(PEG)部分を含んでいて良い。本発明において使用されるPEGの例は、約20キロダルトン(20K)〜約40Kの分子量を有する直鎖状で分岐していないPEGである(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。好ましくは、PEGは、約30K〜約40Kの分子量を有する。
本発明において使用される別のPEGの例は、約10K〜約60Kの分子量を有する直鎖状のPEGである(用語「約」とは、PEGの調製において、記載された分子量よりも大きい分子もあれば小さい分子もあることを示す)。好ましくは、PEGは約20K〜約40Kの分子量を有する。より好ましくは、PEGは約20Kの分子量を有する。
PEGを共有結合する方法(PEG化)の例を以下に述べる。これらの例示的記述によって限定する意図はない。広範囲のPEGを共有結合する多様な方法が、当技術分野において十分確立されていることを、当業者は理解するであろう。従って、当技術分野において知られている多数の結合方法のうちのいずれかによってPEGが結合されているペプチド化合物が、本発明に包含される。
例えば、活性化PEG分子を結合できる反応基(例えば遊離型のアミノ基またはカルボキシル基)を通じて、PEGをリンカーに共有結合させることができる。異なる反応部分を有するメトキシル化されたPEG(mPEG)を使用して、PEG分子をアミノ基に結合させることができる。このようなポリマーは、mPEG-スクシンイミジルスクシネート、mPEG-スクシンイミジルカーボネート、mPEG-イミデート、mPEG-4-ニトロフェニルカーボネート、およびmPEG-塩化シアヌルを含む。同様に、遊離型アミン基(mPEG-NH2)を有するメトキシル化されたPEGを使用して、PEG分子をカルボキシル基に結合させることができる。
いくつかの実施形態において、リンカーまたはスペーサーは、末端アミノ基(すなわちスペーサーの末端に位置する)を含有する。この末端アミノ基は、安定した共有カルバメート結合を作成するために、適切に活性化されたPEG分子(mPEG-パラ-ニトロフェニルカルボネート(mPEG-NPC)等)と反応させることができる。あるいは、この末端アミノ基は、安定した共有カルバメート結合を作製するために、反応性N-ヒドロキシル-スクシンイミド(NHS)基を含有する適切に活性化されたPEG分子(例えばmPEG-スクシンイミジルブチレート(mPEG-SBA)またはmPEG-スクシンイミジルプロピオネート(mPEG-SPA)等)と反応させることができる。その他の実施形態において、リンカー反応基は、適切な反応条件下で活性化されてアミン含有PEG分子と共有結合を形成することが可能なカルボキシル基を含有する。適切なPEG分子は、mPEG-NH2を含み、適切な反応条件は、カルボジイミドに媒介されたアミド形成等を含む。
EPO-Rアゴニスト活性のアッセイ
(インビトロでの機能アッセイ)
インビトロ競合結合アッセイは、EPO-Rへの結合に関してのEPOに対する試験ペプチドの競争力を定量する。例えば(例えば米国特許第5,773,569号に記載)、ヒトEPO-Rの細胞外ドメイン(EPO結合タンパク質、EBP)は、大腸菌中で組み換え技術により生成することができ、組み換えタンパク質は、固体支持体(マイクロタイタープレートまたは合成ビーズ等)に結合される(例えばPierce Chemical社(イリノイ州ロックフォード)製のスルホリンク(Sulfolink)ビーズ等)。次に、固定化されたEBPを、標識された組み換えEPO、または標識された組み換えEPOおよび試験ペプチドと共にインキュベートする。このような実験には、試験ペプチドの連続希釈が採用される。追加される試験ペプチドのないアッセイポイントが、EPOのEBPへの結合の総量を定義する。試験ペプチドを含有する反応物について、結合されたEPOの量を定量し、コントロール(総量=100%)の結合の割合で示す。これらの値を、ペプチド濃度に対してプロットする。IC50値は、EBPへのEPOの結合を50%減少させる試験ペプチドの濃度として定義される(すなわちEPO結合の50%阻害)。
異なるインビトロ競合結合アッセイは、近接する2つのビーズ、すなわちEPOに結合されたビーズおよびEPO-Rに結合されたビーズの機能として産生された光シグナルを測定する。ビーズの近接は、EPOのEPO-Rへの結合によって生み出される。EPO-Rへの結合においてEPOと競合する試験ペプチドは、この結合を妨げ、光の放射の減少を引き起こす。光の放射を50%減少させる結果となった試験ペプチドの濃度を、IC50値として定義する。
本発明のペプチドは、EPO-Rへの結合について、非常に効率的にEPOと競合する。この強化された機能は、実質的により低い濃度のペプチドでのEPOの結合を阻害する能力(すなわち非常に低いIC50値を有すること)によって示される。
EPOレセプターに特異的に結合する本発明の単量体または二量体のペプチドEPO-Rアゴニストの生物学的活性および効力は、インビトロでの細胞ベースの機能アッセイを使用して測定できる。
1つのアッセイは、ヒトEPO-Rを発現し、fosプロモーター駆動のルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物で更にトランスフェクトされた、マウスプレB細胞株に基づく。EPOまたは別のEPO-Rアゴニストに曝されると、このような細胞は、ルシフェラーゼを合成することによって反応する。ルシフェラーゼは、基質であるルシフェリンが添加されると光の放射を引き起こす。従って、このような細胞内でのEPO-R活性化のレベルは、ルシフェラーゼ活性の測定によって定量することができる。試験ペプチドの活性は、試験ペプチドの連続希釈物を細胞に加え、次にこれを4時間インキュべートすることによって測定される。インキュべート後、ルシフェリン基質を細胞に加え、光の放射が測定される。最大値の半分の光の放射となった試験ペプチドの濃度をEC50として記録する。
本発明のぺプチドは、このアッセイにおいてEPO-Rシグナル伝達依存性ルシフェラーゼ発現を促進する、劇的に高められた能力を示す。この高められた機能は、実質的により低い濃度のペプチドで、ルシフェラーゼ活性の最大値の半分を生み出す能力(すなわち非常に低いEC50値を有すること)によって示される。本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの効力および活性を見積もる上で、このアッセイが好ましい方法である。
別のアッセイは、FDC-P1/ER細胞(Dexterら、(1980) J. Exp. Med. 152:1036-1047)、すなわち、十分に特徴づけされた形質転換されていないマウス骨髄由来細胞株であって、中にEPO-Rが安定にトランスフェクトされているものを使用して行うことができる。これらの細胞は、EPO依存性の増殖を示す。
1つのこのようなアッセイにおいて、細胞は、必要な成長因子の存在下、半ば固定した密度(half stationary density)まで成長する(例えば米国特許第5,773,569号に記載)。次に、細胞をPBS内で洗浄し、成長因子不含の全体培地中で、16〜24時間飢餓状態にする。細胞の生存率を測定後(例えばトリパンブルー染色によって)、ストック液(成長因子不含の全体培地中)を作製して50μL当たり約105個の細胞とする。試験するべきペプチドEPO-Rアゴニスト化合物の連続希釈物(典型的には、ファージに結合されている、あるいは他の結合されているまたは固定されているペプチドとは対照的に、遊離型の液相ペプチドである)を、96ウェル組織培養プレートに作製し、最終的な量をウェル当たり50μLとする。細胞(50μL)を各ウェルに加え、細胞を24〜48時間インキュベートする(この時点で、ネガティブコントロールは死滅するか、または休眠しているはずである)。次に、当技術分野において知られている技術によって、細胞増殖を測定する(例えばMTTアッセイ:細胞増殖の指標として、H3-チミジンの取り込みを測定する)(Mosmann (1983) J. Immunol. Methods 65:55-63参照)。ペプチドは、EPO-Rを発現する細胞株においても、発現しない親細胞株においても評価する。細胞増殖の最大値の半分を生み出すのに必要な試験ペプチドの濃度を、EC50として記録する。
本発明のぺプチドは、このアッセイにおいてEPO依存性の細胞増殖を促進する、劇的に高められた能力を示す。この高められた機能は、実質的により低い濃度のペプチドでの細胞増殖刺激活性の最大値の半分を生み出す能力(すなわち非常に低いEC50値を有すること)によって示される。本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの効力および活性を見積もる上で、このアッセイが好ましい方法である。
別のアッセイにおいて、細胞は、EPOを補った培地中で定常期まで成長させ、採取し、次にEPO不含の培地中で更に18時間培養する。細胞を、等しい細胞密度を有する3つのグループに分ける。1つのグループは、更なる因子を追加せず(ネガティブコントロール)、1つのグループはEPOを有し(ポジティブコントロール)、実験用グループは、試験ペプチドを有する。次に、培養した細胞を種々の時点で採取し、固定し、DNA結合蛍光色素(例えばヨウ化プロピジウムまたはヘキスト染色、どちらもSigma社より入手可能)で染色する。次に、例えばFACS Scan Flowサイトメトリーを使用して、蛍光を測定する。次に、細胞周期の各フェーズにおける細胞のパーセンテージを、例えば、CelIFITソフトウエアのSOBRモデル(Becton Dickinson社製)を使用して測定することができる。EPOまたは活性ペプチドで処理された細胞は、ネガティブコントロールグループに比べ、S期においてより高い割合の細胞を示す(DNA含量の増加の指標としての蛍光の増加によって測定される)。
FDCP-1(例えばDexterら、(1980) J. Exp. Med. 152:1036-1047参照)またはTF-1(Kitamuraら、(1989) Blood 73:375-380)の細胞株を使用して、類似のアッセイを実施できる。FDCP-1は、WEHI-3馴化培地(IL-3を含有する培地、ATCC番号TIB-68)を補った場合、増殖するが分化はしない、成長因子依存性のマウス多能性初期造血前駆細胞株である。このような実験用に、FDCP-1細胞株をヒトまたはマウスEPO-Rでトランスフェクトして、それぞれFDCP-1-hEPO-RまたはFDCP-1-mEPO-R細胞株を調製する。これらは、EPOの存在下で増殖できるが、分化はしない。細胞増殖に対するペプチドEPO-Rアゴニストの効果を測定するために、EPO依存性の細胞株であるTF-1も使用できる。
更に別のアッセイにおいては、本発明の化合物がEPOアゴニストとして機能する能力を確かめるために、Krystal (1983) Exp. Hematol 11:649-660に記載されているH3-チミジンの脾臓細胞への取り込みをベースにしたマイクロアッセイ用の手順を採用できる。手短に言えば、B6C3F1マウスに、フェニルヒドラジン(60mg/kg)を2日間毎日注射する。3日目に、脾臓細胞を除去し、24時間にわたる増殖能力を、MTTアッセイを使用して確かめる。
エリスロポエチン反応性の細胞株におけるEPOのEPO-Rへの結合は、レセプター、並びにShc、vavおよびJAK2キナーゼを含む多数の細胞内タンパク質両方のチロシンリン酸化を誘導する。従って、別のインビトロアッセイは、本発明のペプチドの、EPO-Rおよび下流の細胞内シグナルトランスデューサータンパク質のチロシンリン酸化を誘導する能力を測定する。上述の結合アッセイおよび増殖アッセイによって識別される活性ペプチドは、エリスロポエチン反応性細胞におけるEPOの場合とほぼ同一のリン酸化パターンを引き起こす。このアッセイ用に、FDC-P1/ER細胞(Dexterら、(1980) J Exp Med 152:1036-47)を、EPOを補った培地中で維持し、定常期まで成長させる。次に、これらの細胞を、EPOなしの培地中で24時間培養する。次に、定義された数のこのような細胞を、試験ペプチドと共に37℃で約10分間インキュベートする。EPOを有する細胞のコントロール試料についても、各アッセイを実施する。次に、処理した細胞を遠心分離によって採取し、SDS溶解緩衝液に再懸濁し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を実施する。ゲル内の電気泳動されたタンパク質をニトロセルロースに移し、ブロット上のタンパク質を含有するホスホチロシンを、標準的な免疫学的技術によって視覚化する。例えば、ブロットは、抗ホスホチロシン抗体(例えばUpstate Biotechnology, Inc.社製のマウス抗ホスホチロシンIgG)で調べ、洗浄し、そして二次抗体(例えば、Kirkegaard & Perry Laboratories, Inc.社(ワシントンDC)製のペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG)で調べることができる。その後、ホスホチロシンを含有するタンパク質を、標準的な技術(比色分析、化学発光アッセイ、蛍光分析を含む)によって視覚化できる。例えば、化学発光アッセイは、Amersham社のECLウェスタンブロッティングシステムを使用して実施できる。
本発明のぺプチドの活性を評価するために使用できる別の細胞ベースのインビトロアッセイは、マウスの骨髄またはヒトの末梢血細胞を使用したコロニーアッセイである。マウスの骨髄は、マウスの大腿骨から得ることができ、ヒトの末梢血の試料は、健康なドナーから得ることができる。末梢血の場合、はじめに、例えばフィコール−ハイパック濃度勾配(Stem Cell Technologies, Inc.社(カナダ国バンクーバー州))による遠心分離によって、単核細胞血液から単離する。このアッセイ用に、オリジナルの試料内の有核細胞の数および濃度を確立するために、有核細胞をカウントする。製造者の指示(Stem Cell Technologies, Inc.社(カナダ国バンクーバー州))に従って、定義された数の細胞をメチルセルロース上に置く。実験的なグループは試験ペプチドで処理し、ポジティブコントロールグループはEPOで処理し、ネガティブコントロールグループはいかなる処理も行わない。次に、定義されたインキュベーション期間(一般的に10日および18日)後、各グループの成長するコロニーの数をスコアする。活性ペプチドは、コロニーの形成を促進することとなる。
本発明の化合物の活性を実証するために使用できるその他のインビトロ生物学的アッセイは、以下の文献に開示されている:Greenbergerら、(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2931-2935(EPO依存性の造血前駆細胞株);Quelle and Wojchowski (1991) J. Biol. Chem. 266:609-614(B6SUt.EP細胞におけるタンパク質チロシンリン酸化);Dusanter-Fourtら、(1992) J. Biol. Chem. 287:10670-10678(ヒトEPO反応性細胞におけるEPOレセプターのチロシンリン酸化);Quelleら、(1992) J. Biol. Chem. 267:17055-17060(FDC-ER細胞におけるサイトゾルタンパク質、pp100のチロシンリン酸化);Worthingtonら、(1987) Exp. Hematol. 15:85-92(ヘモグロビンの比色分析);Kaiho and Miuno (1985) Anal. Biochem. 149:117-120(2,7-ジアミノフルオレンを用いたヘモグロビンの検出);Patelら、(1992) J. Biol. Chem. 267:21300-21302(c-mybの発現);Witthuhnら、(1993) Cell 74:227-236(JAK2の関連およびチロシンリン酸化);Leonardら、(1993) Blood 82:1071-1079(GATA転写因子の発現);およびAndoら、(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:9571-9575(D2およびD3の循環によるG1遷移の調節)。
種々のレセプターに対するアゴニストおよびアンタゴニストの効果を測定するために、ミクロフィジオメーターとして知られているMolecular Devices社が設計した機器を用いるとうまくいくことが報告されている。この機器の基礎は、レセプターの活性化に応じた細胞外培地の酸性化速度の変化の測定である。
(インビボでの機能的アッセイ)
試験ペプチドの効力を評価するために使用できるインビボでの機能的アッセイの1つは、赤血球増加性・過低酸素症(exhypoxic)マウスのバイオアッセイである。このアッセイのために、マウスに対し、交互のコンディショニングサイクルを数日間適用する。このサイクルにおいて、低圧条件の期間と周囲圧力条件の期間を、マウスに交互に適用する。その後、試験ペプチドを投与する前に、周囲圧力において2〜3日間マウスを維持する。試験ペプチド試料、またはポジティブコントロールマウスの場合はEPOスタンダードを、条件付けしたマウスに皮下注射する。2日後に、放射性標識を施した鉄(例えば59Fe)を投与し、放射性標識を施した鉄の投与の2日後に血液試料を採取する。そして、標準的な技術により、各血液試料についてヘマトクリット値および放射能を測定する。活性の試験ペプチドを注射したマウスの血液試料は、試験ペプチドまたはEPOを注射されなかったマウスよりも多い放射能(赤血球のヘモグロビンによるFe59の結合による)を示すことになろう。
試験ペプチドの効力を評価するために使用できる別のインビボでの機能的アッセイは、網状赤血球のアッセイである。このアッセイのために、EPOまたは試験ペプチドのいずれかを、正常な未処理のマウスに3日間連続で皮下注射する。3日目に、デキストラン鉄もマウスに腹腔内注射する。5日目に、血液試料をマウスから採取する。チアゾールオレンジによる染色およびフローサイトメトリ(flow cytometer)分析(網状赤血球数カウントプログラム)によって、血液中の網状赤血球の割合(%)を測定する。更に、ヘマトクリット値を手動で測定する。補正された網状赤血球の割合を、以下の式を使用して決定する:
% RETIC補正値(CORRECTED) = % RETIC観測値(OBSERVED) X (ヘマトクリット個体値(INDIVIDUAL)/ヘマトクリット正常値(NORMAL))
活性の試験化合物は、試験ペプチドまたはEPOを注射されなかったマウスに比べて、% RETICCORRECTEDのレベルがより高いであろう。
本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの使用
本発明のペプチド化合物は、治療方法および薬剤の製造方法において有用である。本発明のペプチド化合物は、インビボで循環中和抗EPO抗体の存在下、赤血球生成を刺激するために、ヒトを含む温血動物に投与することができる。抗EPO抗体は、本発明のペプチド化合物の効果を中和しない。抗EPO抗体は、IgG1またはIgG4サブタイプのものであり、EPOのタンパク質部分を対象にする。その他の実施形態において、抗EPO抗体は、IgG2、IgG3、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgMサブタイプのものである。
本発明のペプチド化合物は、抗EPO抗体によって特徴づけられる障害を治療する、または治すために、温血動物に投与することができる。例えば、本発明のペプチド化合物は、PRCAに関係する抗EPO抗体の治療において使用できるであろう。PRCAの型には、自己免疫性PRCA、抗体媒介性PRCA、薬物または薬剤に誘発される急性自己限定性PRCA、後天性慢性赤芽球癆、および先天性赤芽球癆が含まれる。本発明のペプチド化合物はまた、赤血球形成不全にかかっている患者における抗体媒介性の貧血の治療または予防において使用できるであろう。本発明のペプチド化合物はまた、赤芽球癆にかかっている患者における抗EPO抗体媒介性の貧血の治療または予防においても使用できるであろう。
本発明のペプチド化合物は、抗EPO抗体の存在によって特徴づけられる障害を有する患者における貧血を改善する、または治療するために、温血動物に投与することができる。本発明のペプチド化合物は、抗EPO抗体媒介性PRCAにかかっている温血動物における貧血を改善するために投与することができる。本発明のペプチド化合物は、抗EPO抗体ができてしまった、透析を受けている、および透析前CDKである温血動物における貧血を改善するために、投与することができる。本発明のペプチド化合物は、抗EPO抗体ができてしまった、化学療法に誘導された貧血にかかっている温血動物に投与することができる。本発明のペプチド化合物は、ヘモグロビンを標的範囲である10〜13g/dLまで(好ましい標的範囲は11〜12g/dL)回復させるために、抗EPO抗体に媒介されたPRCAにかかっている温血動物に投与することができる。本発明のペプチド化合物は、ヘモグロビンを11g/dLより高いレベルまで回復させるために、抗EPO抗体に媒介されたPRCAにかかっている温血動物に投与することができる。
本発明のペプチド化合物は、抗EPO抗体によって特徴付けられる障害の発症を予防する、または減少させるために、温血動物に投与することができる。例えば、本発明のペプチド化合物は、抗EPO PRCAの予防において使用できるであろう。本発明のペプチド化合物は、抗EPO抗体の存在によって特徴付けられる障害を有する温血動物における貧血の発症を予防する、または減少させるために投与することができる。本発明のペプチド化合物は、抗EPO抗体に媒介されたPRCAにかかっている温血動物における貧血の発症を予防する、または減少させるために投与することができる。本発明のペプチド化合物は、抗EPO抗体ができてしまった、透析を受けている、および透析前CDKである温血動物における貧血の発症を予防する、または減少させるために投与することができる。本発明のペプチド化合物は、化学療法を受けている温血動物における貧血の発症を予防する、または減少させるために投与することができる。本発明のある局面において、本発明のペプチド化合物は、透析を受けている、および透析前CDKである、または化学療法に誘導された貧血にかかっている温血動物であるが、組換えEPO療法をまだ受けたことのないもの、または抗EPO抗体がまだできていない温血動物における貧血の発症を予防する、または減少させるために投与することができる。本発明のペプチド化合物は、ヘモグロビンを11g/dLより高いレベルで維持するために、抗EPO抗体に媒介されたPRCAにかかっている温血動物に投与することができる。
このように、本発明は、抗EPO抗体によって特徴づけられる障害の治療方法または予防方法を包含し、これらの方法は、EPO-Rを刺激するのに十分な量の本発明のペプチドを投与することにより、インビボでの抗EPO抗体の存在に関連した症状を緩和することを含む。
医薬組成物
本発明の別の局面において、上述のEPO-Rアゴニストペプチド化合物の医薬組成物が提供される。このような組成物の投与によって緩和または調節される状態は、上述のものを含む。このような医薬組成物は、経口的、非経口的(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、経皮的(受動的に、あるいはイオントフォレシスまたはエレクトロポレーションを使用)、経粘膜的(鼻、膣、直腸、または舌下)な経路による投与のため、あるいは生体内分解性の挿入物の使用のためであって良く、各投与経路に適切な剤形に処方することができる。一般的に、本発明は、有効量の本発明のEPO-Rアゴニストペプチドまたは誘導体生成物と共に、薬学的に許容可能な希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/またはキャリアを含む医薬組成物を包含する。そのような組成物は以下を含む:種々の緩衝液(例えばTris-HCl、アセテート、リン酸塩)の希釈液、pHおよびイオン強度;洗浄剤および可溶化剤等の添加剤(例えばTween20、Tween80、ポリソルベート80)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えばチメルゾル、ベンジルアルコール)および膨張性物質(例えばラクトース、マンニトール);高分子化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸等)の微粒子調製物またはリポソームへの材料の組み込み。ヒアルロン酸も使用できる。このような組成物は、本発明のタンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度、およびインビボでのクリアランスの速度に影響を与え得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版(1990, Mack Publishing Co.(ペンシルバニア州18042イーストン)) pp. 1435-1712参照(引用することにより本明細書に組み込まれる)。組成物は、液体の形態、または乾燥粉末の形態(例えば凍結乾燥)に調製できる。
(経口送達)
本明細書は、経口固体剤形の使用を意図しており、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版 1990 (Mack Publishing Co.(ペンシルバニア州18042イーストン))の第89章にそれらの概要が述べられている(引用することにより本明細書に組み込まれる)。固体剤形は以下を含む:錠剤;カプセル;丸薬;トローチまたは薬用キャンデー;カシェ剤;ペレット剤;粉末;あるいは顆粒。また、本発明の組成物を処方するために、リポソームまたはプロテイノイドによるカプセル化も使用できる(例えば米国特許第4,925,673号において報告されているプロテノイドミクロスフェア)。リポソームによるカプセル化を使用でき、リポソームは種々のポリマーで誘導体化できる(例えば米国特許第5,013,556号)。治療用の可能な固体剤形は、Marshall, K., Modern Pharmaceutics, G.S. BankerおよびC.T. Rhodes編 第10章 1979に記載されており、引用することにより本明細書に組み込まれる。一般的に、処方は、EPO-Rアゴニストペプチド(またはその化学的に修飾された形態)、並びに、胃の環境に対する保護および腸における生物学的活性材料の放出を可能にする不活性成分を含む。
経口投与のための液体剤形の使用も本明細書は意図しており、それには薬学的に許容可能な乳剤、溶液、懸濁液、およびシロップが含まれ、それらは以下を含むその他の成分を含有できる:不活性希釈剤;湿潤剤等のアジュバント;乳化剤および懸濁化剤;並びに甘味剤、香料添加剤および香料(perfuming agent)。
誘導体の経口送達が有効であるように、ペプチドを化学修飾することができる。一般的に、意図される化学修飾は、成分の分子自体に少なくとも1つの部分を結合するものであり、ここで、この部分は:(a)タンパク質分解の阻害;および(b)胃または腸から血流への取り込みを可能にする。また、成分(1つまたは複数)の全体的な安定性の増加および体内を循環する時間の増加も所望されている。上述のように、薬学的な使用のためには、PEG化が好ましい化学修飾である。使用できるその他の部分は、以下を含む:プロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリプロリン、ポリ-1,3-ジオキソランおよびポリ-l,3,6-チオキソカン(例えばAbuchowskiおよびDavis (1981), Enzymes as Drugs, "Soluble Polymer-Enzyme Adducts," HocenbergおよびRoberts編 (Wiley-Interscience(ニューヨーク州ニューヨーク) pp. 367-383;およびNewmarkら、(1982) J. Appl. Biochem. 4:185-189参照)。
経口の処方物について、放出の位置は胃、小腸(十二指腸、空腸または回腸)、または大腸であって良い。当業者は、胃では溶解しないが十二指腸または腸の他の場所において材料を放出する、入手可能な処方物を有する。好ましくは、放出により、ペプチド(または誘導体)の保護によってまたはペプチド(または誘導体)の放出によって、胃の環境を越えて(小腸の中等)胃の環境の悪影響を避けることになる。
完全な胃への耐性を確保するために、少なくともpH 5.0まで不浸透性であるコーティングが必須である。腸溶コーティングとして使用されるより一般的な不活性成分の例は以下の通りである:酢酸セルローストリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、セルロースアセテートフタレート(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、およびShellac。これらのコーティングは、混合薄膜として使用できる。
コーティングまたはコーティングの混合は、錠剤にも使用することができ、胃に対する保護を意図しない。これには、糖衣、または錠剤をのみ込みやすくするコーティングが含まれる。カプセルは、乾燥した治療薬(すなわち粉末)を送達するための硬い殻(ゼラチン等)から成っていて良く、液体の形態については、軟らかいゼラチンの殻を使用できる。カシェ剤の殻の材料は、濃いデンプンまたはその他の食用紙であって良い。丸薬、薬用キャンデー、成形タブレットまたは粉薬錠剤については、湿らせて固める(massing)技術が使用できる。
ペプチド(または誘導体)は、粒径が約1mmの顆粒またはペレットの形態における細かい多微粒子(multiparticulate)として、処方物内に含ませることができる。カプセル投与用の材料の処方は、粉末、軽く圧縮したプラグ、または錠剤としてでも良い。これらの治療薬は、圧縮によって調製できる。
着色剤および/または香料添加剤も含むことができる。例えば、ペプチド(または誘導体)を処方し(リポソームまたはミクロスフェアによるカプセル化等により)、その後更に食用生成物、例えば着色剤および香料添加剤を含有する冷却された飲料内に含有させることができる。
ペプチド(または誘導体)の容量を、不活性材料で希釈するまたは増加させることができる。これらの希釈剤は以下を含むことができる:炭水化物(特にマンニトール)、αラクトース、無水乳糖、セルロース、スクロース、修飾されたデキストランおよびデンプン。ある無機塩類も充填剤として使用することができ、それらには以下のものが含まれる:カルシウム三リン酸塩、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウム。市販されている希釈剤として、Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、EmcompressおよびAvicellが挙げられる。
治療薬を固体剤形に処方する際に、崩壊剤を含ませることができる。崩壊剤として使用される材料は、デンプン(デンプンをベースにした市販の崩壊剤であるエキスプロタブを含む)を含むが、これらに限定されない。以下のものも全て使用できる:デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸カルボキシメチルセルロース、天然のスポンジおよびベントナイト。崩壊剤は、不溶性のカチオン交換樹脂であっても良い。崩壊剤および結合剤として粉末のゴムも使用することができ、寒天、カラヤまたはトラガカント等の粉末のゴムを含むことができる。崩壊剤として、アルギン酸およびそのナトリウム塩も有用である。
ペプチド(または誘導体)の薬剤を保持して硬い錠剤を形成するために、結合剤を一緒に使用することができ、結合剤には、アラビアゴム、トラガカント、デンプンおよびゼラチン等の天然の生成物由来の材料が含まれる。その他には、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。ペプチド(または誘導体)を粒状にするために、アルコール溶液中でポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のどちらも使用することができる。
処方工程中の付着を防ぐために、ペプチド(または誘導体)の処方において抗摩擦剤を含ませることができる。ペプチド(または誘導体)とダイ壁との間の層として滑剤を使用でき、これらは以下を含み得るがこれらに限定されない:ステアリン酸(そのマグネシウム塩およびカルシウム塩を含む)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油およびワックス。水溶性の滑剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、種々の分子量のポリエチレングリコール、カーボワックス4000および6000等)も使用できる。
処方中に薬物の流動特性を改善することができ、圧縮中に再配列を助ける流動促進剤を添加することができる。流動促進剤は、デンプン、タルク、焼成シリカおよび水和シリコアルミネートを含み得る。
水溶性の環境へのペプチド(または誘導体)の溶解を助けるために、界面活性剤を湿潤剤として加えることができる。界面活性剤は、陰イオン洗浄剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネートおよびジオクチルソジウムスルホネート等)を含み得る。陽イオン洗浄剤も使用でき、これは、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンズエソミウム(benzethomium)を含み得る。界面活性剤として処方物に含ませ得る潜在的な陰イオン洗浄剤のリストは以下の通りである:ラウロマクロゴール400;ステアリン酸ポリオキシル40;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60;グリセロールモノステアレート;ポリソルベート20、40、60、65および80;ショ糖脂肪酸エステル;メチルセルロース;並びにカルボキシメチルセルロース。これらの界面活性剤は、単独で、または多様な割合での混合物として、タンパク質または誘導体の処方物において存在することができる。
ペプチド(または誘導体)の取り込みを潜在的に強化する添加剤は、例えば、脂肪酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。
放出制御経口用処方物が望ましいであろう。ペプチド(または誘導体)は、拡散または浸出機構によって放出を可能にする不活性マトリックス(例えばゴム)に組み込ませることができる。ゆっくり変性するマトリックスも、処方物に組み込ませることができる。いくつかの腸溶コーティングも、放出を遅らせる効果を有する。放出制御の別の形態は、Oros治療薬システム(Alza社)に基づく方法によるものである。すなわち、水を通し、浸透圧の効果による単一の小さな開口部を通じて薬物を外に押し出す半透性の膜内に、薬物を入れる。
処方の際にその他のコーティングを使用することができる。これらには、コーティングパンにおいて適用できる多様な糖類が含まれる。また、ペプチド(または誘導体)は、薄膜でコートされた錠剤内に与えることができ、この場合に使用される材料は、2つのグループに分かれる。1つ目は、非腸溶性の材料であって以下を含む:メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、プロビドンおよびポリエチレングリコール。2つ目のグループは、一般的にフタル酸のエステル類である腸溶性の材料から成る。
最適な薄膜コーティングを提供するために、材料の混合を使用できる。薄膜コーティングは、パン塗布装置または流動床において、あるいは圧縮コーティングによって行うことができる。
(非経口送達)
本発明の非経口投与用製剤は、滅菌した水溶性または非水溶性の溶液、懸濁液、または乳剤を含む。非水溶性溶剤またはビヒクルの例は以下の通りである:プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;植物油(オリーブオイルおよびトウモロコシ油等);ゼラチン;および注射可能な有機エステル(オレイン酸エチル等)。このような剤形は、アジュバント(保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤等)も含有することができる。それらは、例えば、細菌保持フィルターによるろ過、組成物内への滅菌剤の組み入れ、組成物への放射線照射、または組成物の加熱によって滅菌できる。また、使用の直前に滅菌水またはその他の滅菌した注射可能な培地を使用しても製造できる。
(直腸または膣送達)
直腸または膣投与用の組成物は、好ましくは、活性物質に加えて賦形剤(ココアバターまたは坐薬用ワックス等)を含み得る坐剤である。経鼻または舌下投与用の組成物も、当技術分野において周知の標準的な賦形剤と共に調製される。
(肺送達)
本明細書は、EPO-Rアゴニストペプチド(またはその誘導体)の肺送達も意図している。ペプチド(または誘導体)は、吸入中に哺乳動物の肺まで送達され、肺の上皮層を通過して血流まで至る(例えば以下を参照:Adjeiら、(1990) Pharmaceutical Research 7:565-569;Adjeiら、(1990) Int. J. Pharmaceutics 63:135-144 (酢酸ロイプロリド); Braquetら、(1989) J. Cardiovascular Pharmacology 13(sup5): 143-146 (エンドセリン-1);Hubbardら、(1989) Annals of Internal Medicine, Vol. III, pp. 206-212(α1-抗トリプシン);Smithら、(1989) J. Clin. Invest. 84:1145-1146(α-1-プロテイナーゼ);Osweinら、(1990) "Aerosolization of Proteins", Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II Keystone, Colorado (組み換えヒト成長ホルモン);Debsら、(1988) J. Immunol. 140:3482-3488 (インターフェロン-γおよび腫瘍壊死因子α);およびPlatzらの米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子))。全身的作用のための薬物の肺送達のための方法および組成物は、Wongらの米国特許第5,451,569号に記載されている。
治療薬の肺送達用に設計された広範囲の機械装置を、本発明の実施において使用することが意図されており、それらには、噴霧器、定量吸入器、および粉末吸入器が含まれるがこれらに限定されず、これらの全てが当業者のよく知るものである。本発明の実施に適切な市販されている機器の具体例としては、Ultravent噴霧器(Mallinckrodt社(ミズーリ州セントルイス))、Acorn II噴霧器(Marquest Medical Products社(コロラド州エングルウッド))、Ventolin定量吸入器(Glaxo社(ノースカロラナ州リサーチトライアングルパーク))、およびSpinhaler粉末吸入器(Fisons社、マサチューセッツ州ベッドフォード)がある。
これらの機器は全て、ペプチド(または誘導体)の投薬に適切な処方の使用を必要とする。典型的には、各処方は、採用する機器のタイプに特異的であり、治療に有用な通常の希釈剤、アジュバントおよび/またはキャリアに加え、適切な推進材料の使用を伴うことができる。また、リポソーム、マイクロカプセルまたはミクロスフェア、包接錯体、あるいはその他のタイプのキャリアの使用が意図されている。化学修飾のタイプまたは採用する機器のタイプに依存して、化学的に修飾したペプチドを異なる処方で調製することもできる。
ジェット型または超音波型いずれにおいても、噴霧器と共に使用するのに適切な処方物は、典型的には、溶液1mLに対して生物学的に活性のタンパク質約0.1〜25 mgの濃度で水に溶解させたペプチド(または誘導体)を含む。また、処方物は、緩衝液および単糖を含むことができる(例えば、タンパク質の安定化および浸透圧の調節のために)。噴霧器用の処方物はまた、エアロゾルの形成において溶液の噴霧によって引き起こされる表面に誘起されたペプチド(または誘導体)の凝集を減少させるまたは防ぐために、界面活性剤を含有することができる。
定量吸入器と共に使用するための処方物は、一般的に、界面活性剤の助けを借りて推進剤内に懸濁させたペプチド(または誘導体)を含有する微粉化した粉末を含む。推進剤は、この目的で採用される任意の従来の材料であって良い。例えば、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、または炭化水素等(トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノールおよび1,1,1,2-テトラフルオロエタン、またはそれらの組合せを含む)。適切な界面活性剤は、ソルビタントリオレエートおよび大豆レシチンを含む。オレイン酸も、界面活性剤として有用であり得る。
粉末吸入機器からの投薬のための処方物は、ペプチド(または誘導体)を含有する微粉化した乾燥粉末を含み、膨張性薬剤(ラクトース、ソルビトール、スクロースまたはマンニトール等)も含むことができ、その量は、機器からの粉末の分散を促進する量である(例えば処方物の50〜90wt%)。ペプチド(または誘導体)は、最も有利に微粒子の形態に調製するべきであり、肺の末端まで最も効果的に送達するために、平均粒径は10mm(またはミクロン)未満、最も好ましくは0.5〜5mmである。
(経鼻送達)
EPO-Rアゴニストペプチド(または誘導体)の経鼻送達も意図している。経鼻送達は、治療薬を鼻に投与したすぐ後に、ペプチドが血流まで行き着くことを可能にし、治療薬を肺に堆積させる必要が無い。経鼻送達用の処方物は、デキストランまたはシクロデキストランを有するものを含む。
本発明のペプチドと共に、経鼻送達を促進するために使用されるその他の経皮吸収促進剤を使用することも意図されている(2003年12月17日に出願された国際公開第2004/056314号等に記載されており、その全体を引用することによって、本明細書に組み込まれる)。
(用量)
ペプチド化合物全てについて、更なる研究が実施され、種々の患者における種々の状態を治療するための適切な用量についての情報が提供される。投薬を受ける者の治療の状況、年齢、および総体的な健康状態を考慮すれば、当業者は、適切な投薬用量を突き止めることができるであろう。選択される用量は、所望の治療効果、投与経路、および所望の治療期間に依存する。一般的には、哺乳動物に対し、体重1kg当たり0.001〜10mgの用量を毎日投与する。投与スケジュールは、循環における半減期および使用される処方により異なる。
本発明の方法における治療投薬用量の範囲は、個体の体重1キログラム(kg)に対して化合物0.05〜0.3ミリグラム(mg)(0.05〜0.3mg/kg)であって良い。より具体的には、投薬用量の範囲が0.05〜0.2mg/kgであるのが好ましい。更に、医師は、0.05mg/kgの用量から始めて、治療している個体それぞれについて個体それぞれのヘモグロビン反応に基づいて、約25〜50%ずつ用量を増量していくことができる。このように、医師は、適切なヘモグロビン反応が得られるまで、個体それぞれの用量を増量していくことができる。透析未経験の患者、透析患者、または化学療法に誘導された貧血にかかっている患者である個体の場合、適切なヘモグロビン反応とは、増量して標的レベルである約11〜12g/dLのヘモグロビンを得ること、または、医師が定める別のヘモグロビンレベルを得ることであろう。
多数の投与経路が使用できる(上述の通り、経口投与、静脈内投与等)。好ましい投与経路は、皮下であろう。別の投与経路は、静脈内投与であろう。本発明の方法において使用するための好ましい化合物は、以下に示すものを含む。
カルバメート結合;サルコシン無し;PEGの重量の範囲(ここでは配列番号1を示す):
カルバメート結合;サルコシン無し;好ましいPEGの重量(ここでは配列番号1を示す):
カルバメート結合;サルコシン有り;PEGの重量の範囲(ここでは配列番号2を示す):
カルバメート結合;サルコシン有り;好ましいPEGの重量(ここでは配列番号2を示す):
アミド結合;サルコシン無し;PEGの重量の範囲(ここでは配列番号1を示す):
アミド結合;サルコシン無し;好ましいPEGの重量(ここでは配列番号1を示す):
アミド結合;サルコシン有り;PEGの重量の範囲(ここでは配列番号2を示す):
アミド結合;サルコシン有り;好ましいPEGの重量(ここでは配列番号2を示す):
本発明のペプチド(またはその誘導体)は、1つ以上の更なる有効成分または医薬組成物と共に投与することができる。例えば、本発明のペプチドは、EPO-Rを活性化するその他のペプチド化合物、または有効成分、または医薬組成物と共に投与することができる。
実施例
次に、本発明について、以下の実施例を基に説明する。しかし、これらの実施例および明細書中に記載のその他の例は、単に実例として挙げただけであり、本発明または任意の例示された形態の範囲および意味を限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書に記載されたいかなる特定の好ましい実施形態にも限定されない。実際には、本明細書を読めば、本発明の多数の変更およびバリエーションが、当業者にとって明らかであろうし、本発明の精神および範囲から逸脱することなく作成することができる。従って、本発明は、請求項が請求するものと同等の内容の範囲全部と共に、添付された特許請求の範囲における用語によってのみ限定される。
固相合成によるEPO-Rアゴニストペプチドダイマーの合成
工程1−Cbz-TAPの合成:
無水DCM(100ml)中の市販のジアミン(Aldrich Chemical社製の「TAP」)(1Og、67.47mmol)を含有する溶液を0℃まで冷却した。無水DCM(50ml)中のベンジルクロロホルメート(4.82ml、33.7mmol)の溶液を、滴下漏斗を通して6〜7時間かけてゆっくりと加え、反応混合物の温度を0℃に維持しておき、そして室温まで(25℃まで)上昇させておいた。更に16時間後、真空下でDCMを除去し、3N HClとエーテルとの間で残液を分配した。水層を回収し、50%NaOH水溶液を用いてpH8〜9まで中和し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を無水Na2SO4で乾燥し、次に真空下で濃縮して粗モノ-Cbz-TAP(5g、収率約50%)を調製した。この化合物は、更なる精製を加えずに次の反応に使用した。
工程2−Cbz-TAP-Bocの合成:
ヘキサン(25ml)中Cbz-TAP(5g、17.7mmol)の激しく攪拌した懸濁液に、Boc2O(3.86g、17.7mmol)を加え、室温で一晩攪拌を継続した。反応混合物をDCM(25ml)で希釈し、10%クエン酸水溶液(2×)、水(2×)およびブラインで洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、真空下で濃縮した。粗生成物(収量5g)を、次の反応に直接使用した。
工程3−Boc-TAPの合成:
先の反応で得られた粗生成物をメタノール(25ml)に溶解し、炭素(5% w/W)上の5% Pdの存在下、バルーン圧力下で16時間水素化した。混合物をろ過し、メタノールで洗浄し、ろ液を真空内で濃縮し、粗H-TAP-Boc生成物(収量3.7g)を調製した。工程1〜3終了後のBoc-TAPのおおよその総収率は、44%であった(使用したCbz-Clの量に基づいて計算)。
工程4−TentaGel-リンカーの合成:
TentaGelブロミド(2.5 g、0.48mmol/g、Rapp Polymere社(ドイツ国)製)、フェノール酸リンカー(5倍当量)およびK2CO3(5倍当量)を、20mLのDMF中で14時間、70℃まで加熱した。室温まで冷却後、樹脂を洗浄し(0.1 N HCl、水、ACN、DMF、MeOH)、乾燥して琥珀色の樹脂を得た。
工程5−TentaGel-リンカー-TAP(Boc)の合成:
2.5gmの上記の樹脂、H-TAP-Boc(1.5gm、5倍当量)および氷AcOH(34μl、5倍当量)を1:1の割合のMeOH-THFの混合物中に入れ、一晩シェイクした。これにTHF中の1M ソディウムシアノボロハイドライド溶液(5倍当量)を加え、別途7時間シェイクした。樹脂をろ過、洗浄(DMF、THF、0.1 N HCl、水、MeOH)、および乾燥した。少量の樹脂を、DCM中のBz-ClおよびDIEAでベンゾイル化し、70% TFA-DCMで切断し、LCMSおよびHPLCによってチェックした。
工程6−TentaGel-リンカー-TAP-Lysの合成:
上記の樹脂を、活性化Fmoc-Lys(Fmoc)-OH溶液(5倍当量のアミノ酸および5倍当量のHATUをDMF中に0.5Mで溶解し、その後に10倍当量のDIEAを加えることによって調製)で処理し、14時間静かにシェイクした。樹脂を洗浄し(DMF、THF、DCM、MeOH)、乾燥して、保護された樹脂を産生した。DCM中の10%無水酢酸および20%ピリジンの溶液で樹脂を20分間処理することによって、残余のアミン基にキャップをし、その後、上記のように洗浄した。DMF中の30%ピペリジンにおいて20分間樹脂を静かにシェイクすることによってFmoc基を除去し、その後洗浄し(DMF、THF、DCM、MeOH)、乾燥した。
工程7−TentaGel-リンカー-TAP-Lys(ペプチド) 2 の合成:
上記の樹脂を、HBTU/HOBt活性化を伴うFmoc−アミノ酸結合のサイクルの繰り返しに適用し、ピペリジンを用いてFmocを除去し、両方のペプチド鎖を同時に構築した。これは、Applied Biosystems社より入手可能なABI 433自動ペプチド合成器を用いて便利に実施した。最後のFmocの除去後、DMF中の無水酢酸(10倍当量)およびDIEA(20倍当量)で20分間、末端アミン基をアシル化し、その後、上記のように洗浄した。
工程8−樹脂からの切断:
上記の樹脂を、TFA(82.5%)、フェノール(5%)、エタンジチオール(2.5%)、水(5%)およびチオアニソール(5%)の溶液に3時間室温で懸濁した。代わりの切断用カクテル(TFA(95%)、水(2.5%)およびトリイソプロピルシラン(2.5%)等)も使用することができる。TFA溶液を5℃まで冷却し、Et2Oに注ぎ込んでペプチドを沈殿させた。減圧下のろ過および乾燥により、所望のペプチドを得た。C18カラムを用いた調製HPLCによる精製により、純粋なペプチドを得た。
工程9−分子内ジスルフィド結合を形成するためのペプチドの酸化:
20% DMSO/水中にペプチドダイマーを溶解し(1mg乾燥重量ペプチド/mL)、室温で36時間静置した。C18 HPLCカラムに反応混合物を装填することにより、ペプチドを精製し(Waters Delta-Pak C18、粒径15ミクロン、孔径300オングストローム、長さ40mm×200mm)、その後、直線的勾配法(ACN/水/0.01% TFA;ACNを5%から95%まで)を40分行った。所望のぺプチドを含有する画分を凍結乾燥(lyopholization)することにより、ふわふわした白色の固体の生成物が得られた。
工程10−末端-NH 2 基のPEG化:
カルバメート結合を通じたPEG化:
ペプチドダイマーを、乾燥DMF中1.5倍当量(モルベース)の活性化PEG種(日油株式会社(日本)製のmPEG-NPC)と混合し、澄んだ溶液を得た。5分後、上記溶液に4倍当量のDIEAを加えた。混合物を周囲温度で14時間攪拌し、その後、C18逆相HPLCで精製した。PEG化されたペプチドの構造を、MALDI質量分析法によって確認した。精製されたペプチドにも、以下に概要を述べる通りの陽イオン交換クロマトグラフィーを通じた精製を適用した。以下の図式は、配列番号3を使用したmPEG-NPCのPEG化を示す。
アミド結合を通じたPEG化:
ペプチドダイマーを、乾燥DMF中1倍当量の活性化PEG種(Shearwater社(米国)製のPEG-SPA-NHS)の1.5倍当量(モルベース)と混合し、澄んだ溶液を得た。5分後、上記溶液に10倍当量のDIEAを加えた。混合物を周囲温度で2時間攪拌し、その後、C18逆相HPLCで精製した。PEG化されたペプチドの構造を、MALDI質量分析法によって確認した。精製されたペプチドにも、以下に概要を述べる通りの陽イオン交換クロマトグラフィーを通じた精製を適用した。以下の図式は、配列番号3を使用したPEG-SPA-NHSのPEG化を示す。
工程11−イオン交換による精製:
いくつかの交換用支持体について、出発二量体ペプチドを保持する能力に加え、未反応の(または加水分解された)PEGから上記のペプチド-PEG結合を分離する能力を調査した。イオン交換樹脂(2〜3g)を1cmカラムに装填し、次にナトリウム型に変換し(溶離液のpHが14になるまで0.2 N NaOHをカラムに装填した;約5カラム容積)、次に水素型に変換し(溶離液が充填pHにマッチするまで0.1 N HClまたは0.1 M HOAcのいずれかで溶離した;約5カラム容積)、次に、pHが6になるまで25% ACN/水で洗浄した。結合前のペプチドまたはペプチド-PEG結合を、25% ACN/水(10mg/mL)に溶解し、TFAでpHを3未満に調節し、次に、カラムに装填した。2〜3カラム容積の25% ACN/水で洗浄し、5mLの画分を回収した後、25% ACN/水中0.1 M NH4OAcで溶離することにより、ペプチドをカラムから離し、再び5mLの画分を回収した。HPLCによる分析により、どの画分が所望のペプチドを含有しているかが明らかになった。エバポレイティブ光散乱検出器(ELSD)を使用した分析は、ペプチドをカラム上に保持し、NH4OAc溶液で溶離した場合(一般的に画分4〜10の間)、混入物質として非結合のPEGは観察されなかったことを示した。ペプチドを最初の洗浄緩衝液で溶離したとき(一般的に最初の2画分)、所望のPEG結合および過剰なPEGの分離は観察されなかった。
以下のカラムは、ペプチドおよびペプチド-PEG結合の両方を保持することに成功し、結合されていないペプチドからペプチド-PEG結合を精製することに成功した。
フラグメント縮合によるEPO-Rアゴニストペプチドダイマーの合成
工程1:(Cbz) 2 -Lysの合成
標準条件下で、リジンをベンジルクロロホルメート溶液と反応させ、その2つのアミノ基においてCbz基で保護されたリジンを得る。
工程2:Boc-TAPの合成
実施例1の工程1〜3に記載されているようにして、Boc-TAPを合成する。
工程3:(Cbz) 2 -LysおよびBoc-TAPの結合
標準結合条件下で、(Cbz)2-LysとBoc-TAPを結合させ、(Cbz)2-Lys-TAP-Bocを得る。
工程4:Lys-TAP-Boc
先の反応で得られた粗生成物をメタノール(25ml)に溶解し、炭素(5% w/W)上の5% Pdの存在下、バルーン圧力下で16時間水素化した。混合物をろ過し、メタノールで洗浄し、ろ液を真空内で濃縮し、粗Lys-TAP-Boc生成物を調製した。
工程5:フラグメント縮合によるペプチドモノマーの合成
標準的な技術により、ペプチドモノマー配列の4つのペプチドフラグメントを合成する。これらの部分的に保護されたフラグメントは、次に、2つの独立した結合の過程に適用される。第1過程においては、N末端のモノマーの半分を、ペプチドフラグメントのうちの2つを結合することによって形成し、一方で、C末端のモノマーの半分は、その他の2つのペプチドフラグメントを結合させることによって形成する。結合の第2過程において、N末端の半分とC末端の半分を結合して、完全に保護されたモノマーを形成する。次にモノマーは、標準的な技術によってOBnが脱保護される。
工程6:分子内ジスルフィド結合を形成するためのペプチドモノマーの酸化
次に、OBnが脱保護され、縮合されたペプチドモノマー(配列番号12)をヨウ化物で酸化し、モノマーのAcmで保護されたシステイン残基間に分子内ジスルフィド結合を形成する。
工程7:ペプチドダイマーを形成するための酸化され、OBnが脱保護されたモノマーへのLys-TAP-Bocの結合
標準条件下で、Lys-TAP-Bocを、2倍モル過剰の酸化され、OBnが脱保護されたモノマーに結合し、ペプチドダイマーを形成する。次に、標準条件下で、ペプチドダイマーを脱保護する。
工程8:脱保護されたダイマーのPEG化
次に、実施例1の工程10に記載されるように、脱保護されたペプチドダイマーをPEG化する。
工程9:イオン交換による精製
次に、実施例1の工程11に記載されるように、PEG化されたペプチドダイマーを精製する。
インビトロ活性アッセイ
この実施例では、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価する際に有用な種々のインビトロアッセイについて述べる。これらのアッセイの結果は、本発明の新規のペプチドがEPO-Rに結合し、EPO-Rのシグナル伝達を活性化することを実証する。更に、これらのアッセイの結果は、新規ペプチド組成物において、以前に記載されていたEPO擬似ペプチドに比べて、EPO-R結合親和性および生物学的活性が驚くほど増加することを示す。
実施例1または2で提供された方法に従って、EPO‐Rアゴニストペプチドダイマーを調製する。一連のインビトロ活性アッセイ(レポーターアッセイ、増殖アッセイ、競合結合アッセイ、およびC/BFU-eアッセイを含む)を使用して、これらペプチドダイマーの効力を評価する。これら4つのアッセイについては、以下に更なる詳細を述べる。
これらインビトロ活性アッセイの結果は、表2にまとめてある。
1.レポーターアッセイ
このアッセイは、マウスプレB細胞株由来のレポーター細胞、Baf3/EpoR/GCSFR fos/luxに基づく。このレポーター細胞株は、ヒトEPOレセプターの細胞外部分からヒトGCSFレセプターの細胞内部分までを含むキメラレセプターを発現する。この細胞株は、fosプロモーター駆動のルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物で更にトランスフェクトされる。赤血球生成剤を加えることによってこのキメラレセプターが活性化される結果、ルシフェラーゼレポーター遺伝子が発現する。従って、ルシフェラーゼ基質であるルシフェリンが加えられると、光が生成される。よって、このような細胞におけるEPO‐R活性化のレベルは、ルシフェラーゼ活性の測定によって定量できる。
Baf3/EpoR/GCSFR fos/lux細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS;Hyclone社)、10% WEHI-3上清(WEHI-3細胞の培養物由来の上清;ATCC番号TIB-68)、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補ったDMEM/F12培地(Gibco社)において培養する。アッセイの約18時間前に、10%FBSおよび0.1% WEHI-3上清を補ったDMEM/F12培地に細胞を移すことによって、細胞を飢餓状態にする。アッセイの日に、10%FBSを補った(WEHI-3上清は無い)DMEM/F12培地で細胞を一回洗浄し、次に、10%FBSを補った(WEHI-3上清は無い)DMEM/F12培地において、知られている濃度の試験ペプチドの存在下で、または、EPO(R & D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス))をポジティブコントロールとして使用して、細胞(1×106個/mL)を培養する。このアッセイにおいては、試験ペプチドの連続希釈物を同時に試験する。37℃で4時間、5% CO2雰囲気においてアッセイプレートをインキュベートし、その後、各ウェルに対してルシフェリン(Steady-Glo;Promega社(ウィスコンシン州マディソン))を加える。5分間のインキュベーション後、Packard Topcount Luminometer(Packard Instrument社(イリノイ州ダウナーズグローブ))を使用して光の放射を測定する。光のカウント(light count)を、試験ペプチド濃度に対してプロットし、Graph Pad社のソフトウェアを使用して分析する。最大値の半分の光の放射となった試験ペプチドの濃度を、EC50として記録する(表2参照;レポーターEC50)。
2.増殖アッセイ
このアッセイは、トランスフェクトされてヒトEPO-Rを発現する、マウスプレB細胞株、Baf3に基づく。得られる細胞株、BaF3/Gal4/Elk/EPORの増殖は、EPO-Rの活性化に依存する。MTTを使用して細胞増殖の程度を定量する。この際、MTTアッセイにおけるシグナルは、生存細胞の数に比例する。
スピナーフラスコ中、10%FBS(Hyclone社)および2% WEHI-3上清(ATCC番号TIB-68) を補ったDMEM/F12培地(Gibco社)において、BaF3/Gal4/Elk/EPOR細胞を培養する。スピナーフラスコ中、10%FBSおよび0.1% WEHI-3上清を補ったDMEM/F12培地において、細胞密度1×106個/mlで、培養した細胞を一晩飢餓状態にする。次に、ダルベッコ(Dulbecco)PBS(Gibco社)で、飢餓状態の細胞を2回洗浄し、10%FBSを補った(WEHI-3上清は無い)DMEM/F12培地において、1×106個/mlの細胞密度まで再懸濁する。次に、50μLアリコート(細胞が〜50,000個)の細胞懸濁液を、96ウェルアッセイプレートに3つ組で平板培養する。10%FBSを補った(WEHI-3上清Iは無い)DMEM/F12培地中の50μLアリコートの試験用EPO擬似ペプチドの連続希釈物、あるいは、50μLのEPO(R & D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス))またはAranespTM(ダルベポエチンα;Amgen社より市販されているEPO‐Rアゴニスト)を、96ウェルアッセイプレートに加える(最終ウェル容量:100μL)。例えば、試験ペプチド(またはコントロールEPOペプチド)の最終濃度が81OpM〜0.0045pMの範囲である、12の異なる希釈物を試験することができる。そして、平板培養した細胞を、37℃で48時間インキュベートする。次に、10μLのMTT(Roche Diagnostics社)を各培養プレートのウェルに加え、4時間インキュベートする。次に、10% SDS+0.01N HClを加えることにより、反応をストップさせる。そして、プレートを37℃で一晩インキュベートする。次に、波長595nmでの各ウェルの吸光度を、分光測光法によって測定する。試験ペプチド濃度に対する吸光度の読み取り値のプロットを構築し、Graph Pad社のソフトウェアを使用して、EC50を計算する。最大値の半分の吸光度となった試験ペプチドの濃度を、EC50として記録する(表2参照;増殖EC50)。
3.競合結合アッセイ
2つのビーズ(ビオチニル化したEPO‐R結合ペプチドトレーサーを有するストレプトアビジンドナービーズおよびEPO‐Rが結合するアクセプタービーズ)が近接する機能として光シグナルが産生されるアッセイを使用して、競合的結合の計算を行う。光は、非放射エネルギー伝達によって産生される。光が照射されると、一重項酸素が第1ビーズから放出され、放出された一重項酸素との接触により、第2ビーズからの光の放出が引き起こされる。これらのビーズのセットは市販されている(Packard社製)。ビーズの近接は、EPO‐R結合ペプチドトレーサーのEPO‐Rへの結合によって生み出される。EPO‐Rへの結合について、EPO‐R結合ペプチドトレーサーと競合する試験ペプチドが、この結合を防ぐことになり、光の放出の減少を引き起こす。
より詳細には、方法は以下の通りである。4μLの試験EPO‐Rアゴニストペプチドの連続希釈物、あるいはポジティブまたはネガティブコントロールを、384ウェルプレートのウェルに加える。その後、2μL/ウェルのレセプター/ビーズのカクテルを加える。レセプタービーズカクテルは以下のものより成る:15μLの5mg/mlストレプトアビジンドナービーズ(Packard);15μLの5mg/mlモノクローナル抗体abl79(この抗体は、組み換えEPO‐Rに含有されるヒト胎盤アルカリホスファターゼタンパク質の部分を認識する);プロテインAでコーティングされたアクセプタービーズ(プロテインAは、abl79抗体に結合する;Packard社);112.5μLの1:6.6で希釈した組み換えEPO‐R(abl79標的エピトープを含有するヒト胎盤アルカリホスファターゼタンパク質の部分に対し、融合タンパク質としてチャイニーズハムスター卵巣細胞内で生成);および607.5μLのAlphaquest緩衝液(4OmM HEPES、pH 7.4;1mM MgCl2;0.1% BSA, 0.05% Tween 20)。軽くたたいて混合する。2μL/ウェルのビオチニル化したEPO‐R結合ペプチドトレーサーを加える(最終濃度:3OnM)。配列:ビオチン- GGLYACHMGPITWVCQPLRG(配列番号4)を使用し、実施例1に記載の方法に従って、ペプチドトレーサーであるEPO‐R結合ペプチド(表の「レセプターEC50(pM)」参照)を作製する。
1分間遠心分離にかけて混合する。プレートをPackard社のTop Sealでシールし、ホイルで包む。室温で一晩インキュベートする。18時間後、AlphaQuest読み取り器(Packard社)を使用して、光の放出を読み取る。ペプチドの濃度に対する光の放出をプロットし、Graph PadまたはExcelで分析する。
試験ペプチド無しの場合と比べて、光の放出が50%減少する結果であった試験ペプチドの濃度を、IC50として記録する(表2参照:AQ IC50)。
4.C/BFU-eアッセイ
EPO-Rのシグナル伝達は、骨髄幹細胞が分化し、赤血球前駆体が増殖するように刺激する。このアッセイは、一次ヒト骨髄多能性幹細胞からの赤血球前駆細胞の増殖および分化を刺激する試験ぺプチドの能力を測定する。
このアッセイ用に、10% FBS(Hyclone社)を補充したIMDM培地(Gibco社)中、試験ペプチドの連続希釈物を調製する。次に、これらの連続希釈物、またはポジティブコントロールEPOペプチドを、メチルセルロースに加えて最終容積を1.5mLとする。次に、メチルセルロースとペプチドの混合物を、完全にボルテックスする。ヒト骨髄由来のCD34+細胞(Poietics社/Cambrex社)のアリコート(細胞100,000個/mL)を解凍する。50mLチューブに、0.1mLのlmg/ml DNAse(幹細胞(Stem Cells))に対して解凍した細胞を静かに加える。次に、細胞に対して40〜50mLのIMDM培地を静かに加える。培地は、最初の10mLについては、50mlチューブの側面に沿って一滴ずつ加え、残りの培地は、チューブの側面に沿ってゆっくりと分注する。次に、細胞を900rpmで20分間回転させ、静かに吸引することによって培地を注意深く除去する。1mlのIMDM培地に細胞を再懸濁し、1ml当たりの細胞密度を血球計スライド上で測る(スライド上に10μLアリコートの細胞懸濁液;細胞密度は、平均数×細胞10,000個/mLである)。次に、IMDM培地で細胞を希釈し、細胞密度を15,000個/mLとする。次に、100μLの希釈した細胞を、各1.5 mLのメチルセルロースとペプチド試料に加え(アッセイ培地における最終的な細胞濃度は1,000個/mL)、混合物をボルテックスする。混合物内の泡を無くし、平滑断端な針を使用して1mLを吸引する。各試料から吸引した0.25mLの混合物を、24ウェルプレート(Falconブランド)の4つのウェルそれぞれに加える。平板培養した混合物を、多湿のインキュベータ内において5% CO2下、37℃で14日間インキュベートする。位相差顕微鏡(対物5〜10倍;最終倍率100倍)を使用して、赤血球コロニーの存在をスコアする。形成されたコロニーの数が、EPOポジティブコントロールで観察された数と比べて最大数の90%であった試験ペプチド濃度を、EC90として記録する(表2参照;C/BFU-e EC90)。
5.放射性リガンド競合結合アッセイ
あるいは、本発明のペプチドのIC50値を測定するために、放射性リガンド競合結合アッセイも使用することができる。このアッセイは、125I-EPOのEPOrへの結合を測定する。アッセイは、好ましくは、以下の典型的なプロトコルに従って実施される。
B.適切なレセプター濃度の測定
ヒトIgG1のFc部分に融合させた凍結乾燥した組み換えEPOr細胞外ドメインの1本の50μgバイアルを、1mLのアッセイ緩衝液中に戻す。アッセイで使用するためのレセプターの正しい量を測定するために、このレセプター調製物の100μLの連続希釈物を、12×75mmポリプロピレン試験管中、200μLのヨウ化組み換えヒトエリスロポエチン(125I-EPO)と、約20,000cpmで結合させる。チューブにキャップをし、LabQuake回転シェーカー上で4℃で一晩静かに混合する。
次の日に、50μLのプロテイン-Gセファロースの50%スラリーを各チューブに加える。次に、静かに混合しながら4℃で2時間、チューブをインキュベートする。次に、4000RPM(3297×G)で15分間、チューブを遠心分離にかけて、プロテイン-Gセファロースをペレット状にする。上清を注意深く除去して廃棄する。1mLの4℃アッセイ緩衝液で3回洗浄後、Wallac Wizardガンマカウンターでペレットをカウントする。そして結果を分析し、結合の最大値の50%に達するのに必要な希釈度を計算する。
C.ペプチドについてのIC50の測定
ペプチドIのIC50を測定するために、100μLのペプチドの連続希釈物を、12×75mmポリプロピレン試験管中、100μLの組み換えエリスロポエチンレセプター(100pg/チューブ)と結合させる。次に、100μLのヨウ化組み換えヒトエリスロポエチン(125I-EPO)を各チューブに加え、チューブにキャップをし、4℃で一晩静かに攪拌する。
翌日、上記のようにして結合された125I-EPOを定量する。結果を分析し、GraphPad Software社(カリフォルニア州サンディエゴ)製のGraphpad Prismバージョン4.0を使用してIC50値を計算する。アッセイは、試験する各ペプチドについて2回以上繰り返し、全部で3回以上反復してIC50値の測定を得る。
インビボ活性アッセイ
この実施例では、本発明のEPO‐Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価する際に有用な種々のインビボアッセイについて述べる。EPO‐Rアゴニストペプチドダイマーは、実施例1または2で提供された方法に従って調製される。これらペプチドモノマーおよびダイマーのインビボ活性は、連続アッセイ(赤血球増加性・過低酸素症(exhypoxic)マウスのバイオアッセイおよび網状赤血球アッセイを含む)を使用して評価する。これら2つのアッセイについて、以下に更なる詳細を述べる。
1.赤血球増加性・過低酸素症(Exhypoxic)マウスのバイオアッセイ
CotesおよびBangham (1961), Nature 191 : 1065-1067に記載されている方法を適用させた赤血球増加性・過低酸素症(exhypoxic)マウスのバイオアッセイにおいて、試験ペプチドのインビボ活性についてアッセイする。このアッセイでは、試験ペプチドがEPO模倣剤として機能する、すなわち、EPO‐Rを活性化し、新しい赤血球合成を誘導する能力を試験する。赤血球合成は、合成された赤血球のヘモグロビン内への放射性標識された鉄の取り込みに基づいて定量する。
BDF1マウスを、7〜10日間かけて周囲条件に順応させる。すべての動物の体重を測定し、低体重の動物(<15グラム)は使用しない。マウスは、トータルで14日間、低圧室において、連続した調整サイクルに適用する。各24時間のサイクルは、18時間の0.40±0.02%大気圧および6時間の周囲圧力より成る。調整後、マウスは、投薬前に更に72時間、周囲圧力で維持する。
試験ペプチドまたは組み換えヒトEPOスタンダードを、PBS+0.1% BSAビヒクル(PBS/BSA)で希釈する。ペプチドモノマーストック液は、最初にジメチルスルホキシド(DMSO)中に可溶化する。ネガティブコントロールグループは、PBS/BSAのみを注射したマウスの1つのグループと、1% DMSOを注射したマウスの1つのグループとを含む。各投与グループは、10匹のマウスを含む。0.5 mLの適切な試料をマウスに皮下注射する(首筋)。
試料を注射してから48時間後、0.2 mlのFe59(Dupont, NEN社)をマウスに腹腔内注射する(用量:マウス1匹当たり約0.75μキュリー)。Fe59を投与してから24時間後、マウスの体重を測定し、Fe59の投与から48時間後、マウスを屠殺する。心穿刺によって各動物から血液を回収し、ヘマトクリット値を測定する(抗凝血剤としてヘパリンを使用した)。Packardガンマカウンターを使用して、各血液試料(0.2 ml)のFe59の取り込みについて分析する。反応のないマウス(すなわち、放射性の取り込みがネガティブコントロールグループよりも少ないマウス)は、適切なデータセットから除外する。ヘマトクリット値がネガティブコントロールグループの53%よりも少ないマウスも除外する。
結果は、各実験用量について、10匹の動物のセットから得る。各グループから得られた血液試料に取り込まれた放射能の量(分当たりのカウント(CPM))の平均を計算する。
2.網状赤血球アッセイ
正常なBDF1マウスに、3日間連続して、EPOコントロールまたは試験ペプチドのいずれかを投与する(用量:0.5mL、皮下注射)。3日目に、鉄デキストラン(100mg/ml)もマウスに投与する(用量:0.1mL、腹腔内注射)。5日目に、マウスにCO2で麻酔をかけ、心穿刺によって出血させる。各血液試料における網状赤血球の割合(%)は、チアゾールオレンジによる染色およびフローサイトメトリ分析(網状赤血球数カウントプログラム)によって測定する。ヘマトクリット値を手動で測定する。修正された網状赤血球の割合は、以下の式を使用して決定する:
% RETIC補正値(CORRECTED) = % RETIC観測値(OBSERVED) X (ヘマトクリット個体値(INDIVIDUAL)/ヘマトクリット正常値(NORMAL))
3.血液学的アッセイ
正常なCD1マウスに、EPOポジティブコントロール、試験ペプチド、またはビヒクルのいずれかを、4週間の静脈内ボーラス注射によって投与する。ポジティブコントロールおよび試験ペプチドの用量の範囲(mg/kgで示す)は、処方における活性化合物濃度を変えることにより、試験する。注射する量は5 mg/kgである。ビヒクルコントロールグループは12匹より成り、残りの各用量のグループはそれぞれ8匹より成る。毎日の生存能力および週毎の体重を記録する。
投与したマウスは絶食させ、1日目(ビヒクルコントロールマウス)並びに15日目および29日目(4匹/グループ/日)に、イソフルレン吸入によって麻酔をかけ、心穿刺または腹大動脈穿刺によって末端の血液試料を回収する。血液をVacutainer(登録商標)ブランドのチューブに移す。好ましい抗凝血剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
血液試料は、当技術分野において周知の自動臨床分析機器(例えばCoulter社製の機器)を使用して、赤血球合成および生理学を測定する評価項目(ヘマトクリット値(Hct)、ヘモグロビン(Hgb)および総赤血球数(RBC)等)について評価を行う。
アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有するペプチドモノマーのEPO‐Rアゴニストペプチドホモダイマーの合成
工程1:ペプチドモノマーの合成
ペプチドモノマーは、ABI 431Aペプチド合成器上で、TG-RAM樹脂(0.18mmol/g、Rapp Polymere社(ドイツ国))を使用して、標準的なFmoc化学反応を用いて合成する。アミド化されたカルボキシ末端を有するペプチドモノマーの合成用に、82.5%のTFA、5%の水、6.25%のアニソール、6.25%のエタンジチオールを用いて、完全に構築されたペプチドを樹脂から切り離す。脱保護された生成物を樹脂からろ過し、ジエチルエーテルを用いて沈殿させる。完全に乾燥後、生成物は、0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル/水の勾配を使用したC18逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製する。ペプチドの構造は、エレクトロスプレー質量分析によって確認する。ペプチドを、DMSO:水が1:1の溶液に1mg/mLの濃度で溶解し、ジスルフィド形成を起こさせる。生成物は、0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル/水の勾配を使用したC18逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製する。ペプチドモノマーは、以下のように示すことができる:
工程2:三官能性リンカーの合成
100mLのDCM中のジエチルイミノアセテート(10.Og、52.8mmol)およびBoc-ベータ-アラニン(10.Og、52.8 mmol)の溶液に対し、ジイソプロピルカルボジイミド(8.0mL、51.1mmol)を10分間かけて室温で加えた。加える間、反応混合物を10度まで暖め、20分かけて冷却して室温まで戻した。反応混合物を一晩攪拌し、沈殿させたジイソプロピル尿素をろ過した。減圧下で溶媒を除去してゴムを与え、残渣をエチルアセテートに溶解して再びろ過し、更に沈殿した尿素を除去した。有機相を分液漏斗内に配置し、洗浄し(飽和NaHCO3、ブライン、0.5N HCl、ブライン)、乾燥し(MgSO4)、ろ過し、減圧下で濃縮して、無色油としてジエステル生成物を得た。ジエステルを、MeOH:THFが1:1の混合物(100mL)に混ぜ、これに水(25mL)、次にNaOH(5g、125mmol)を加えた。pHを測定して>10となるようにした。反応混合物を室温で2時間攪拌し、6N HClでpH1まで酸性化した。水相をNaClで飽和させ、エチルアセテートを用いて4回抽出を行った。結合されている有機相を洗浄し(ブライン)、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮して、白色の半固体を得た。固体を50mLのDCMに溶解し、これに300mLのヘキサンを加えて白色のスラリーを作製した。溶媒を減圧下で除去し、白色の固体として二塩基酸を得た(14.7g、2工程における収率91.5%)。20mLのDMF中の二塩基酸の溶液(1g、3.29mmol)に対し、N-ヒドロキシスクシンイミド(770mg、6.69mmol)、ジイソプロピルカルボジイミド(1.00mL、6.38mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(3mg、0.02mmol)を加えた。反応混合物を一晩攪拌し、減圧下で溶媒を除去した。残渣をエチルアセテートに混ぜ、ろ過して沈殿した尿素を除去した。有機相を分液漏斗内に配置し、洗浄し(飽和NaHCO3、ブライン、0.5N HCl、ブライン)、乾燥し(MgSO4)、ろ過し、減圧下で濃縮して、白色の固体としてジ-NHSエステル生成物(1.12g、収率68%)を得た。
工程3:ペプチドモノマーへの三官能性リンカーの結合
リンカーの結合のために、乾燥DMFにおいて2倍当量のペプチドを1倍当量の三官能性リンカーと混合して澄明な溶液を得て、2分後に5倍当量のDIEAを加える。混合物を周囲温度で14時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をDCM中の80%TFAに30分間溶解してBoc基を除去し、次にC18逆相HPLCによって精製する。ダイマーの構造をエレクトロスプレー質量分析によって確認する。この結合反応により、リンカーは、各モノマーのリジン残基のεアミノ基の窒素原子に結合される。配列番号1を使用した工程を以下に示す。
工程4:ペプチドダイマーのPEG化
カルバメート結合を通じたPEG化
乾燥DMFにおいて、ペプチドダイマーを当量(モルベース)の活性化PEG種(日油株式会社(日本)製のmPEG-NPC)と混合して、澄明な溶液を得る。5分後に、この溶液に対して4倍等量のDIEAを加える。混合物を周囲温度で14時間攪拌し、次にC18逆相HPLCによって精製する。PEG化されたペプチドの構造を、MALDI質量分析法によって確認する。精製されたペプチドも、以下に概略を述べるように、陽イオン交換クロマトグラフィーを通じた精製に適用した。配列番号1を使用したmPEG-NPCのPEG化を以下に示す。
アミド結合を通じたPEG化
乾燥DMFにおいて、ペプチドダイマーを当量(モルベース)の活性化PEG種(Shearwater社(米国)製のPEG-SPA-NHS)と混合して、澄明な溶液を得る。5分後に、この溶液に対して10倍当量のDIEAを加える。混合物を周囲温度で2時間攪拌し、次にC18逆相HPLCによって精製する。PEG化されたペプチドの構造を、MALDI質量分析法によって確認した。精製されたペプチドも、以下に概略を述べるように、陽イオン交換クロマトグラフィーを通じた精製に適用した。配列番号1を使用したPEG-SPA-NHSのPEG化を以下に示す。
工程5:ペプチドのイオン交換による精製
いくつかの交換用支持体について、出発二量体ペプチドを保持する能力に加え、未反応の(または加水分解された)PEGから上記のペプチド-PEG結合を分離する能力を調査した。イオン交換樹脂(2〜3g)を1cmカラムに装填し、次にナトリウム型に変換し(溶離液のpHが14になるまで0.2 N NaOHをカラムに装填した;約5カラム容積)、次に水素型に変換し(溶離液が充填pHにマッチするまで0.1 N HClまたは0.1 M HOAcのいずれかで溶離した;約5カラム容積)、次に、pHが6になるまで25% ACN/水で洗浄した。結合前のペプチドまたはペプチド-PEG結合を、25% ACN/水(10mg/mL)に溶解し、TFAでpHを3未満に調節し、次に、カラムに装填した。2〜3カラム容積の25% ACN/水で洗浄し、5mLの画分を回収した後、25% ACN/水中0.1 M NH4OAcで溶離することにより、ペプチドをカラムから遊離し、再び5mLの画分を回収した。HPLCによる分析により、どの画分が所望のペプチドを含有しているかが明らかになった。エバポレイティブ光散乱検出器(ELSD)を使用した分析は、ペプチドをカラム上に保持し、NH4OAc溶液で溶離した場合(一般的に画分4〜10の間)、混入物質として非結合のPEGが観察されなかったことを示した。ペプチドを最初の洗浄緩衝液で溶離したとき(一般的に最初の2画分)、所望のPEG結合および過剰なPEGの分離は観察されなかった。
以下のカラムは、ペプチドおよびペプチド-PEG結合の両方を保持することに成功し、結合されていないペプチドからペプチド-PEG結合を精製することに成功した。
アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有するペプチドモノマーのEPO‐Rアゴニストペプチドホモダイマーの合成
工程1において、合成されたペプチドモノマーが:
(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)
であることを除いては、実施例1に記載されているようにして、アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有するペプチドモノマーのEPO‐Rアゴニストペプチドホモダイマーを合成する。
カルバメート結合を通じてPEGをリンカーに結合する場合、配列番号2を使用したこの合成の最終生成物は、以下のように構造的に示すことができる:
アミド結合を通じてPEGをリンカーに結合する場合、配列番号2を使用したこの合成の最終生成物は、以下のように構造的に示すことができる:
インビトロ活性アッセイ
この実施例では、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価する際に有用な種々のインビトロアッセイについて述べる。これらのアッセイの結果は、本発明の新規のペプチドがEPO-Rに結合し、EPO-Rのシグナル伝達を活性化することを実証する。更に、これらのアッセイの結果は、新規ペプチド組成物において、以前に記載されていたEPO擬似ペプチドに比べて、EPO-R結合親和性および生物学的活性が驚くほど増加することを示す。
実施例1または2で提供された方法に従って、EPO‐Rアゴニストペプチドモノマーおよびダイマーを調製する。一連のインビトロ活性アッセイ(レポーターアッセイ、増殖アッセイ、競合結合アッセイ、およびC/BFU-eアッセイを含む)を使用して、これらペプチドダイマーの効力を評価する。これら4つのアッセイについては、以下に更なる詳細を述べる。
これらインビトロ活性アッセイの結果は、表2にまとめてある。
1.レポーターアッセイ
このアッセイは、マウスプレB細胞株由来のレポーター細胞、Baf3/EpoR/GCSFR fos/luxに基づく。このレポーター細胞株は、ヒトEPOレセプターの細胞外部分からヒトGCSFレセプターの細胞内部分までを含むキメラレセプターを発現する。この細胞株は、fosプロモーター駆動のルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物で更にトランスフェクトされる。赤血球生成剤を加えることによってこのキメラレセプターが活性化される結果、ルシフェラーゼレポーター遺伝子が発現する。従って、ルシフェラーゼ基質であるルシフェリンが加えられると、光が生成される。よって、このような細胞におけるEPO‐R活性化のレベルは、ルシフェラーゼ活性の測定によって定量できる。
Baf3/EpoR/GCSFR fos/lux細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS;Hyclone社)、10% WEHI-3上清(WEHI-3細胞の培養物由来の上清;ATCC番号TIB-68)、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補ったDMEM/F12培地(Gibco社)において培養する。アッセイの約18時間前に、10%FBSおよび0.1% WEHI-3上清を補ったDMEM/F12培地に細胞を移すことによって、細胞を飢餓状態にする。アッセイの日に、10%FBSを補った(WEHI-3上清は無い)DMEM/F12培地で細胞を一回洗浄し、次に、10%FBSを補った(WEHI-3上清は無い)DMEM/F12培地において、知られている濃度の試験ペプチドの存在下で、または、EPO(R & D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス))をポジティブコントロールとして使用して、細胞(1×106個/mL)を培養する。このアッセイにおいては、試験ペプチドの連続希釈物を同時に試験する。37℃で4時間、5% CO2雰囲気においてアッセイプレートをインキュベートし、その後、各ウェルに対してルシフェリン(Steady-Glo;Promega社(ウィスコンシン州マディソン))を加える。5分間のインキュベーション後、Packard Topcount Luminometer(Packard Instrument社(イリノイ州ダウナーズグローブ))を使用して光の放射を測定する。光のカウント(light count)を、試験ペプチド濃度に対してプロットし、Graph Pad社のソフトウェアを使用して分析する。最大値の半分の光の放射となった試験ペプチドの濃度を、EC50として記録する。
2.増殖アッセイ
このアッセイは、トランスフェクトされてヒトEPO-Rを発現する、マウスプレB細胞株、Baf3に基づく。得られる細胞株、BaF3/Gal4/Elk/EPORの増殖は、EPO-Rの活性化に依存する。MTTを使用して細胞増殖の程度を定量する。この際、MTTアッセイにおけるシグナルは、生存細胞の数に比例する。
スピナーフラスコ中、10%FBS(Hyclone社)および2% WEHI-3上清(ATCC番号TIB-68) を補ったDMEM/F12培地(Gibco社)において、BaF3/Gal4/Elk/EPOR細胞を培養する。スピナーフラスコ中、10%FBSおよび0.1% WEHI-3上清を補ったDMEM/F12培地において、細胞密度1×106個/mlで、培養した細胞を一晩飢餓状態にする。次に、ダルベッコ(Dulbecco)PBS(Gibco社)で、飢餓状態の細胞を2回洗浄し、10%FBSを補った(WEHI-3上清は無い)DMEM/F12培地において、1×106個/mlの細胞密度まで再懸濁する。次に、50μLアリコート(細胞が〜50,000個)の細胞懸濁液を、96ウェルアッセイプレートに3つ組で平板培養する。10%FBSを補った(WEHI-3上清Iは無い)DMEM/F12培地中の50μLアリコートの試験用EPO擬似ペプチドの連続希釈物、あるいは、50μLのEPO(R & D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス))またはAranespTM(ダルベポエチンα;Amgen社より市販されているEPO‐Rアゴニスト)を、96ウェルアッセイプレートに加える(最終ウェル容量:100μL)。例えば、試験ペプチド(またはコントロールEPOペプチド)の最終濃度が81OpM〜0.0045pMの範囲である、12の異なる希釈物を試験することができる。そして、平板培養した細胞を、37℃で48時間インキュベートする。次に、10μLのMTT(Roche Diagnostics社)を各培養プレートのウェルに加え、次に4時間インキュベートする。次に、10% SDS+0.01N HClを加えることにより、反応をストップさせる。そして、プレートを37℃で一晩インキュベートする。次に、波長595nmでの各ウェルの吸光度を、分光測光法によって測定する。試験ペプチド濃度に対する吸光度の読み取り値のプロットを構築し、Graph Pad社のソフトウェアを使用して、EC50を計算する。最大値の半分の吸光度となった試験ペプチドの濃度を、EC50として記録する。
3.競合結合アッセイ
2つのビーズ(ビオチニル化したEPO‐R結合ペプチドトレーサーを有するストレプトアビジンドナービーズおよびEPO‐Rが結合するアクセプタービーズ)が近接する機能として光シグナルが産生されるアッセイを使用して、競合的結合の計算を行う。光は、非放射エネルギー伝達によって産生される。光が照射されると、一重項酸素が第1ビーズから放出され、放出された一重項酸素との接触により、第2ビーズからの光の放出が引き起こされる。これらのビーズのセットは市販されている(Packard社製)。ビーズの近接は、EPO‐R結合ペプチドトレーサーのEPO‐Rへの結合によって生み出される。EPO‐Rへの結合について、EPO‐R結合ペプチドトレーサーと競合する試験ペプチドが、この結合を防ぐことになり、光の放出の減少を引き起こす。
より詳細には、方法は以下の通りである。4μLの試験EPO‐Rアゴニストペプチドの連続希釈物、あるいはポジティブまたはネガティブコントロールを、384ウェルプレートのウェルに加える。その後、2μL/ウェルのレセプター/ビーズのカクテルを加える。レセプタービーズカクテルは以下のものより成る:15μLの5mg/mlストレプトアビジンドナービーズ(Packard);15μLの5mg/mlモノクローナル抗体abl79(この抗体は、組み換えEPO‐Rに含有されるヒト胎盤アルカリホスファターゼタンパク質の部分を認識する);プロテインAでコーティングされたアクセプタービーズ(プロテインAは、abl79抗体に結合する;Packard社);112.5μLの1:6.6で希釈した組み換えEPO‐R(abl79標的エピトープを含有するヒト胎盤アルカリホスファターゼタンパク質の部分に対し、融合タンパク質としてチャイニーズハムスター卵巣細胞内で生成);および607.5μLのAlphaquest緩衝液(4OmM HEPES、pH 7.4;1mM MgCl2;0.1% BSA, 0.05% Tween 20)。軽くたたいて混合する。2μL/ウェルのビオチニル化したEPO‐R結合ペプチドトレーサーを加える(最終濃度:3OnM)。配列番号4を使用し、実施例1に記載の方法に従って、ペプチドトレーサーであるEPO‐R結合ペプチド(表の「レセプターEC50(pM)」参照)を作製する。
1分間遠心分離にかけて混合する。プレートをPackard社のTop Sealでシールし、ホイルで包む。室温で一晩インキュベートする。18時間後、AlphaQuest読み取り器(Packard社)を使用して、光の放出を読み取る。ペプチドの濃度に対する光の放出をプロットし、Graph PadまたはExcelで分析する。
試験ペプチド無しの場合と比べて、光の放出が50%減少する結果であった試験ペプチドの濃度を、IC50として記録する。
4.C/BFU-eアッセイ
EPO-Rのシグナル伝達は、骨髄幹細胞が分化し、赤血球前駆体が増殖するように刺激する。このアッセイは、一次ヒト骨髄多能性幹細胞からの赤血球前駆細胞の増殖および分化を刺激する試験ぺプチドの能力を測定する。
このアッセイ用に、10% FBS(Hyclone社)を補充したIMDM培地(Gibco社)中、試験ペプチドの連続希釈物を調製する。次に、これらの連続希釈物、またはポジティブコントロールEPOペプチドを、メチルセルロースに加えて最終容積を1.5mLとする。次に、メチルセルロースとペプチドの混合物を、完全にボルテックスする。ヒト骨髄由来のCD34+細胞(Poietics社/Cambrex社)のアリコート(細胞100,000個/mL)を解凍する。50mLチューブに、0.1mLのlmg/ml DNAse(幹細胞(Stem Cells))に対して解凍した細胞を静かに加える。次に、細胞に対して40〜50mLのIMDM培地を静かに加える。培地は、最初の10mLについては、50mlチューブの側面に沿って一滴ずつ加え、残りの培地は、チューブの側面に沿ってゆっくりと分注する。次に、細胞を900rpmで20分間回転させ、静かに吸引することによって培地を注意深く除去する。1mlのIMDM培地に細胞を再懸濁し、1ml当たりの細胞密度を血球計スライド上で測る(スライド上に10μLアリコートの細胞懸濁液;細胞密度は、平均数×細胞10,000個/mLである)。次に、IMDM培地で細胞を希釈し、細胞密度を15,000個/mLとする。次に、100μLの希釈した細胞を、各1.5 mLのメチルセルロースとペプチド試料に加え(アッセイ培地における最終的な細胞濃度は1,000個/mL)、混合物をボルテックスする。混合物内の泡を無くし、平滑断端な針を使用して1mLを吸引する。各試料から吸引した0.25mLの混合物を、24ウェルプレート(Falconブランド)の4つのウェルそれぞれに加える。平板培養した混合物を、多湿のインキュベータ内において5% CO2下、37℃で14日間インキュベートする。位相差顕微鏡(対物5〜10倍;最終倍率100倍)を使用して、赤血球コロニーの存在をスコアする。形成されたコロニーの数が、EPOポジティブコントロールで観察された数と比べて最大数の90%であった試験ペプチド濃度を、EC90として記録する(表2参照;C/BFU-e EC90)。
インビボ活性アッセイ
この実施例では、本発明のEPO‐Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価する際に有用な種々のインビボアッセイについて述べる。EPO‐Rアゴニストペプチドモノマーおよびダイマーは、実施例1で提供された方法に従って調製される。これらペプチドモノマーおよびダイマーのインビボ活性は、連続アッセイ(赤血球増加性・過低酸素症(exhypoxic)マウスのバイオアッセイおよび網状赤血球アッセイを含む)を使用して評価する。これら2つのアッセイについて、以下に更なる詳細を述べる。
1.赤血球増加性・過低酸素症(Exhypoxic)マウスのバイオアッセイ
CotesおよびBangham (1961), Nature 191 : 1065-1067に記載されている方法を適用させた赤血球増加性・過低酸素症(exhypoxic)マウスのバイオアッセイにおいて、試験ペプチドのインビボ活性についてアッセイする。このアッセイでは、試験ペプチドがEPO模倣剤として機能する、すなわち、EPO‐Rを活性化し、新しい赤血球合成を誘導する能力を試験する。赤血球合成は、合成された赤血球のヘモグロビン内への放射性標識された鉄の取り込みに基づいて定量する。
BDF1マウスを、7〜10日間かけて周囲条件に順応させる。すべての動物の体重を測定し、低体重の動物(<15グラム)は使用しない。マウスは、トータルで14日間、低圧室において、連続した調整サイクルに適用する。各24時間のサイクルは、18時間の0.40±0.02%大気圧および6時間の周囲圧力より成る。調整後、マウスは投薬前に更に72時間、周囲圧力で維持する。
試験ペプチドまたは組み換えヒトEPOスタンダードを、PBS+0.1% BSAビヒクル(PBS/BSA)で希釈する。ペプチドモノマーストック液は、最初にジメチルスルホキシド(DMSO)中に可溶化する。ネガティブコントロールグループは、PBS/BSAのみを注射したマウスの1つのグループと、1% DMSOを注射したマウスの1つのグループとを含む。各投与グループは、10匹のマウスを含む。0.5 mLの適切な試料をマウスに皮下注射する(首筋)。
試料を注射してから48時間後、0.2 mlのFe59(Dupont, NEN社)をマウスに腹腔内注射する(用量:マウス1匹当たり約0.75μキュリー)。Fe59を投与してから24時間後、マウスの体重を測定し、Fe59の投与から48時間後、マウスを屠殺する。心穿刺によって各動物から血液を回収し、ヘマトクリット値を測定する(抗凝血剤としてヘパリンを使用した)。Packardガンマカウンターを使用して、各血液試料(0.2 ml)のFe59の取り込みについて分析する。反応のないマウス(すなわち、放射性の取り込みがネガティブコントロールグループよりも少ないマウス)は、適切なデータセットから除外する。ヘマトクリット値がネガティブコントロールグループの53%よりも少ないマウスも除外する。
結果は、各実験用量について、10匹の動物のセットから得る。各グループから得られた血液試料に取り込まれた放射能の量(分当たりのカウント(CPM))の平均を計算する。
2.網状赤血球アッセイ
正常なBDF1マウスに、3日間連続して、EPOコントロールまたは試験ペプチドのいずれかを投与する(用量:0.5mL、皮下注射)。3日目に、鉄デキストラン(100mg/ml)もマウスに投与する(用量:0.1mL、腹腔内注射)。5日目に、マウスにCO2で麻酔をかけ、心穿刺によって出血させる。各血液試料における網状赤血球の割合(%)は、チアゾールオレンジによる染色およびフローサイトメトリ分析(網状赤血球数カウントプログラム)によって測定する。ヘマトクリット値を手動で測定する。修正された網状赤血球の割合は、以下の式を使用して決定する:
% RETIC補正値(CORRECTED) = % RETIC観測値(OBSERVED) X (ヘマトクリット個体値(INDIVIDUAL)/ヘマトクリット正常値(NORMAL))
3.血液学的アッセイ
正常なCD1マウスに、EPOポジティブコントロール、試験ペプチド、またはビヒクルのいずれかを、4週間の静脈内ボーラス注射によって投与する。ポジティブコントロールおよび試験ペプチドの用量の範囲(mg/kgで示す)は、処方における活性化合物濃度を変えることにより、試験する。注射する量は5 mg/kgである。ビヒクルコントロールグループは12匹より成り、残りの各用量のグループはそれぞれ8匹より成る。毎日の生存能力および週毎の体重を記録する。
投与したマウスは絶食させ、1日目(ビヒクルコントロールマウス)並びに15日目および29日目(4匹/グループ/日)に、イソフルレン吸入によって麻酔をかけ、心穿刺または腹大動脈穿刺によって末端の血液試料を回収する。血液をVacutainer(登録商標)ブランドのチューブに移す。好ましい抗凝血剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
血液試料は、当技術分野において周知の自動臨床分析機器(例えばCoulter社製の機器)を使用して、赤血球合成および生理学を測定する評価項目(ヘマトクリット値(Hct)、ヘモグロビン(Hgb)および総赤血球数(RBC)等)について評価を行う。
アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLRK(配列番号1)を有するペプチドモノマーのEPO‐Rアゴニストペプチドホモダイマーの合成
工程1:ペプチドモノマーの合成
ペプチドモノマーは、ABI 431Aペプチド合成器上で、TG-RAM樹脂(0.18mmol/g、Rapp Polymere社(ドイツ国))を使用して、標準的なFmoc化学反応を用いて合成する。アミド化されたカルボキシ末端を有するペプチドモノマーの合成用に、82.5%のTFA、5%の水、6.25%のアニソール、6.25%のエタンジチオールを用いて、完全に構築されたペプチドを樹脂から切り離す。脱保護された生成物を樹脂からろ過し、ジエチルエーテルを用いて沈殿させる。完全に乾燥後、生成物は0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル/水の勾配を使用したC18逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製する。ペプチドの構造は、エレクトロスプレー質量分析によって確認する。ペプチドモノマーは、以下のように示すことができる:
工程2:三官能性リンカーの合成
100mLのDCM中のジエチルイミノアセテート(10.Og、52.8mmol)およびBoc-ベータ-アラニン(10.Og、52.8 mmol)の溶液に対し、ジイソプロピルカルボジイミド(8.0mL、51.1mmol)を10分間かけて室温で加えた。加える間、反応混合物を10度まで暖め、20分かけて冷却して室温まで戻した。反応混合物を一晩攪拌し、沈殿させたジイソプロピル尿素をろ過した。減圧下で溶媒を除去してゴムを与え、残渣をエチルアセテートに溶解して再びろ過し、更に沈殿した尿素を除去した。有機相を分液漏斗内に配置し、洗浄し(飽和NaHCO3、ブライン、0.5N HCl、ブライン)、乾燥し(MgSO4)、ろ過し、減圧下で濃縮して、無色油としてジエステル生成物を得た。ジエステルを、MeOH:THFが1:1の混合物(100mL)に混ぜ、これに水(25mL)、次にNaOH(5g、125mmol)を加えた。pHを測定して>10となるようにした。反応混合物を室温で2時間攪拌し、6N HClでpH1まで酸性化した。水相をNaClで飽和させ、エチルアセテートを用いて4回抽出を行った。結合されている有機相を洗浄し(ブライン)、乾燥し(MgSO4)、減圧下で濃縮して、白色の半固体を得た。固体を50mLのDCMに溶解し、これに300mLのヘキサンを加えて白色のスラリーを作製した。溶媒を減圧下で除去し、白色の固体として二塩基酸を得た(14.7g、2工程における収率91.5%)。20mLのDMF中の二塩基酸の溶液(1g、3.29mmol)に対し、N-ヒドロキシスクシンイミド(770mg、6.69mmol)、ジイソプロピルカルボジイミド(1.00mL、6.38mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(3mg、0.02mmol)を加えた。反応混合物を一晩攪拌し、減圧下で溶媒を除去した。残渣をエチルアセテートに混ぜ、ろ過して沈殿した尿素を除去した。有機相を分液漏斗内に配置し、洗浄し(飽和NaHCO3、ブライン、0.5N HCl、ブライン)、乾燥し(MgSO4)、ろ過し、減圧下で濃縮して、白色の固体としてジ-NHSエステル生成物(1.12g、収率68%)を得た。
工程3:ペプチドモノマーへの三官能性リンカーの結合
リンカーの結合のために、乾燥DMFにおいて2倍当量のペプチドを1倍当量の三官能性リンカーと混合して澄明な溶液を得て、2分後に5倍当量のDIEAを加える。混合物を周囲温度で14時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をDCM中の80%TFAに30分間溶解してBoc基を除去し、次にC18逆相HPLCによって精製する。ダイマーの構造をエレクトロスプレー質量分析によって確認する。この結合反応により、リンカーは、各モノマーのリジン残基のεアミノ基の窒素原子に結合される。配列番号1を使用した結合を以下に示す。
工程4:リジンが結合する2つの直鎖状のPEG鎖を含むPEG部分の合成
mPEG2-リシノール-NPC
市販のものを入手できるリシノールを、過剰のmPEG2-NPCで処理してMPEG2-リシノールを得、これを次にNPCと反応させてmPEG2-リシノール-NPCを形成する。
mPEG2-Lys-NHS
この生成物は、例えば、Nektar Therapeutics社(35806 アラバマ州ハンツビル ディスカバリードライブ490)の分子工学カタログ(2003)のアイテム番号2Z3X0T01等、市販のものを入手することができる。
工程5:ペプチドダイマーのPEG化
カルバメート結合を通じたPEG化
ペプチドダイマーおよびPEG種(mPEG2-リシノール-NPC)を、乾燥DMFにおいて1:2のモル比で混合して澄明な溶液を得る。5分後に、この溶液に対して4倍等量のDIEAを加える。混合物を周囲温度で14時間攪拌し、次にC18逆相HPLCによって精製する。PEG化されたペプチドの構造を、MALDI質量分析法によって確認する。精製されたペプチドも、以下に概略を述べるように、陽イオン交換クロマトグラフィーを通じた精製に適用した。配列番号1を使用し、mPEG-リシノール-NPCを使用したPEG化を以下に示す。
アミド結合を通じたPEG化
ペプチドダイマーおよびPEG種(Shearwater社(米国)製のmPEG2-Lys-NHS)を、乾燥DMFにおいて1:2のモル比で混合して澄明な溶液を得る。5分後に、この溶液に対して10倍当量のDIEAを加える。混合物を周囲温度で2時間攪拌し、次にC18逆相HPLCによって精製する。PEG化されたペプチドの構造を、MALDI質量分析法によって確認した。精製されたペプチドも、以下に概略を述べるように、陽イオン交換クロマトグラフィーを通じた精製に適用した。配列番号1を使用し、mPEG2-Lys-NHSを使用したPEG化を以下に示す。
工程6:ペプチドのイオン交換による精製
いくつかの交換用支持体について、出発二量体ペプチドを保持する能力に加え、未反応の(または加水分解された)PEGから上記のペプチド-PEG結合を分離する能力を調査した。イオン交換樹脂(2〜3g)を1cmカラムに装填し、次にナトリウム型に変換し(溶離液のpHが14になるまで0.2 N NaOHをカラムに装填した;約5カラム容積)、次に水素型に変換し(溶離液が充填pHにマッチするまで0.1 N HClまたは0.1 M HOAcのいずれかで溶離した;約5カラム容積)、次に、pHが6になるまで25% ACN/水で洗浄した。結合前のペプチドまたはペプチド-PEG結合を、25% ACN/水(10mg/mL)に溶解し、TFAでpHを3未満に調節し、次に、カラムに装填した。2〜3カラム容積の25% ACN/水で洗浄し、5mLの画分を回収した後、25% ACN/水中0.1 M NH4OAcで溶離することにより、ペプチドをカラムから遊離し、再び5mLの画分を回収した。HPLCによる分析により、どの画分が所望のペプチドを含有しているかが明らかになった。エバポレイティブ光散乱検出器(ELSD)を使用した分析は、ペプチドをカラム上に保持し、NH4OAc溶液で溶離した場合(一般的に画分4〜10の間)、混入物質として非結合のPEGが観察されなかったことを示した。ペプチドを最初の洗浄緩衝液で溶離したとき(一般的に最初の2画分)、所望のPEG結合および過剰なPEGの分離は観察されなかった。
以下のカラムは、ペプチドおよびペプチド-PEG結合の両方を保持することに成功し、結合されていないペプチドからペプチド-PEG結合を精製することに成功した。
アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有するペプチドモノマーのEPO‐Rアゴニストペプチドホモダイマーの合成
工程1において、合成されたペプチドモノマーが:
(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)
であることを除いては、実施例1に記載されているようにして、アミノ酸配列(AcG)GLYACHMGPIT(1-nal)VCQPLR(MeG)K(配列番号2)を有するペプチドモノマーのEPO‐Rアゴニストペプチドホモダイマーを合成する。
カルバメート結合を通じてPEGをスペーサーに結合する場合、配列番号2を使用したこの合成の最終生成物は、以下のように構造的に示すことができる:
アミド結合を通じてPEGをスペーサーに結合する場合、配列番号2を使用したこの合成の最終生成物は、以下のように構造的に示すことができる:
インビトロ活性アッセイ
この実施例では、本発明のEPO-Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価する際に有用な種々のインビトロアッセイについて述べる。これらのアッセイの結果は、本発明の新規のペプチドがEPO-Rに結合し、EPO-Rのシグナル伝達を活性化することを実証する。更に、これらのアッセイの結果は、新規ペプチド組成物において、以前に記載されていたEPO擬似ペプチドに比べて、EPO-R結合親和性および生物学的活性が驚くほど増加することを示す。
実施例1または2で提供された方法に従って、EPO‐Rアゴニストペプチドモノマーおよびダイマーを調製する。一連のインビトロ活性アッセイ(レポーターアッセイ、増殖アッセイ、競合結合アッセイ、およびC/BFU-eアッセイを含む)を使用して、これらペプチドダイマーの効力を評価する。これら4つのアッセイについては、以下に更なる詳細を述べる。
これらインビトロ活性アッセイの結果は、表2にまとめてある。
1.レポーターアッセイ
このアッセイは、マウスプレB細胞株由来のレポーター細胞、Baf3/EpoR/GCSFR fos/luxに基づく。このレポーター細胞株は、ヒトEPOレセプターの細胞外部分からヒトGCSFレセプターの細胞内部分までを含むキメラレセプターを発現する。この細胞株は、fosプロモーター駆動のルシフェラーゼレポーター遺伝子構築物で更にトランスフェクトされる。赤血球生成剤を加えることによってこのキメラレセプターが活性化される結果、ルシフェラーゼレポーター遺伝子が発現する。従って、ルシフェラーゼ基質であるルシフェリンが加えられると、光が生成される。よって、このような細胞におけるEPO‐R活性化のレベルは、ルシフェラーゼ活性の測定によって定量できる。
Baf3/EpoR/GCSFR fos/lux細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS;Hyclone社)、10% WEHI-3上清(WEHI-3細胞の培養物由来の上清;ATCC番号TIB-68)、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補ったDMEM/F12培地(Gibco社)中で培養する。アッセイの約18時間前に、10%FBSおよび0.1% WEHI-3上清を補ったDMEM/F12培地に細胞を移すことによって、細胞を飢餓状態にする。アッセイの日に、10%FBSを補った(WEHI-3上清は無い)DMEM/F12培地で細胞を一回洗浄し、次に、10%FBSを補った(WEHI-3上清は無い)DMEM/F12培地において、知られている濃度の試験ペプチドの存在下で、または、EPO(R & D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス))をポジティブコントロールとして使用して、細胞(1×106個/mL)を培養する。このアッセイにおいては、試験ペプチドの連続希釈物を同時に試験する。37℃で4時間、5% CO2雰囲気においてアッセイプレートをインキュベートし、その後、各ウェルに対してルシフェリン(Steady-Glo;Promega社(ウィスコンシン州マディソン))を加える。5分間のインキュベーション後、Packard Topcount Luminometer(Packard Instrument社(イリノイ州ダウナーズグローブ))を使用して光の放射を測定する。光のカウント(light count)を、試験ペプチド濃度に対してプロットし、Graph Pad社のソフトウェアを使用して分析する。最大値の半分の光の放射となった試験ペプチドの濃度を、EC50として記録する。
2.増殖アッセイ
このアッセイは、トランスフェクトされてヒトEPO-Rを発現する、マウスプレB細胞株、Baf3に基づく。得られる細胞株、BaF3/Gal4/Elk/EPORの増殖は、EPO-Rの活性化に依存する。MTTを使用して細胞増殖の程度を定量する。この際、MTTアッセイにおけるシグナルは、生存細胞の数に比例する。
スピナーフラスコ中、10%FBS(Hyclone社)および2% WEHI-3上清(ATCC番号TIB-68) を補ったDMEM/F12培地(Gibco社)中で、BaF3/Gal4/Elk/EPOR細胞を培養する。スピナーフラスコ中、10%FBSおよび0.1% WEHI-3上清を補ったDMEM/F12培地において、細胞密度1×106個/mlで、培養した細胞を一晩飢餓状態にする。次に、ダルベッコ(Dulbecco)PBS(Gibco社)で、飢餓状態の細胞を2回洗浄し、10%FBSを補った(WEHI-3上清は無い)DMEM/F12培地に、1×106個/mlの細胞密度まで再懸濁する。次に、50μLアリコート(細胞が〜50,000個)の細胞懸濁液を、96ウェルアッセイプレートに3つ組で平板培養する。10%FBSを補った(WEHI-3上清Iは無い)DMEM/F12培地中の50μLアリコートの試験用EPO擬似ペプチドの連続希釈物、あるいは、50μLのEPO(R & D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス))またはAranespTM(ダルベポエチンα;Amgen社より市販されているEPO‐Rアゴニスト)を、96ウェルアッセイプレートに加える(最終ウェル容量:100μL)。例えば、試験ペプチド(またはコントロールEPOペプチド)の最終濃度が81OpM〜0.0045pMの範囲である、12の異なる希釈物を試験することができる。そして、平板培養した細胞を、37℃で48時間インキュベートする。次に、10μLのMTT(Roche Diagnostics社)を各培養プレートのウェルに加え、4時間インキュベートする。次に、10% SDS+0.01N HClを加えることにより、反応をストップさせる。そして、プレートを37℃で一晩インキュベートする。次に、波長595nmでの各ウェルの吸光度を、分光測光法によって測定する。試験ペプチド濃度に対する吸光度の読み取り値のプロットを構築し、Graph Pad社のソフトウェアを使用して、EC50を計算する。最大値の半分の吸光度となった試験ペプチドの濃度を、EC50として記録する。
3.競合結合アッセイ
2つのビーズ(ビオチニル化したEPO‐R結合ペプチドトレーサーを有するストレプトアビジンドナービーズおよびEPO‐Rが結合するアクセプタービーズ)が近接する機能として光シグナルが産生されるアッセイを使用して、競合的結合の計算を行う。光は、非放射エネルギー伝達によって産生される。光が照射されると、一重項酸素が第1ビーズから放出され、放出された一重項酸素との接触により、第2ビーズからの光の放出が引き起こされる。これらのビーズのセットは市販されている(Packard社製)。ビーズの近接は、EPO‐R結合ペプチドトレーサーのEPO‐Rへの結合によって生み出される。EPO‐Rへの結合について、EPO‐R結合ペプチドトレーサーと競合する試験ペプチドが、この結合を防ぐことになり、光の放出の減少を引き起こす。
より詳細には、方法は以下の通りである。4μLの試験EPO‐Rアゴニストペプチドの連続希釈物、あるいはポジティブまたはネガティブコントロールを、384ウェルプレートのウェルに加える。その後、2μL/ウェルのレセプター/ビーズのカクテルを加える。レセプタービーズカクテルは以下のものより成る:15μLの5mg/mlストレプトアビジンドナービーズ(Packard);15μLの5mg/mlモノクローナル抗体abl79(この抗体は、組み換えEPO‐Rに含有されるヒト胎盤アルカリホスファターゼタンパク質の部分を認識する);プロテインAでコーティングされたアクセプタービーズ(プロテインAは、abl79抗体に結合する;Packard社);112.5μLの1:6.6で希釈した組み換えEPO‐R(abl79標的エピトープを含有するヒト胎盤アルカリホスファターゼタンパク質の部分に対し、融合タンパク質としてチャイニーズハムスター卵巣細胞内で生成);および607.5μLのAlphaquest緩衝液(4OmM HEPES、pH 7.4;1mM MgCl2;0.1% BSA, 0.05% Tween 20)。軽くたたいて混合する。2μL/ウェルのビオチニル化したEPO‐R結合ペプチドトレーサーを加える(最終濃度:3OnM)。配列番号4を使用し、実施例1に記載の方法に従って、ペプチドトレーサーであるEPO‐R結合ペプチド(表の「レセプターEC50(pM)」参照)を作製する。
1分間遠心分離にかけて混合する。プレートをPackard社のTop Sealでシールし、ホイルで包む。室温で一晩インキュベートする。18時間後、AlphaQuest読み取り器(Packard社)を使用して、光の放出を読み取る。ペプチドの濃度に対する光の放出をプロットし、Graph PadまたはExcelで分析する。
試験ペプチド無しの場合と比べて、光の放出が50%減少する結果であった試験ペプチドの濃度を、IC50として記録する。
4.C/BFU-eアッセイ
EPO-Rのシグナル伝達は、骨髄幹細胞が分化し、赤血球前駆体が増殖するように刺激する。このアッセイは、一次ヒト骨髄多能性幹細胞からの赤血球前駆細胞の増殖および分化を刺激する試験ぺプチドの能力を測定する。
このアッセイ用に、10% FBS(Hyclone社)を補充したIMDM培地(Gibco社)中、試験ペプチドの連続希釈物を調製する。次に、これらの連続希釈物、またはポジティブコントロールEPOペプチドを、メチルセルロースに加えて最終容積を1.5mLとする。次に、メチルセルロースとペプチドの混合物を、完全にボルテックスする。ヒト骨髄由来のCD34+細胞(Poietics社/Cambrex社)のアリコート(細胞100,000個/mL)を解凍する。50mLチューブに、0.1mLのlmg/ml DNAse(幹細胞(Stem Cells))に対して解凍した細胞を静かに加える。次に、細胞に対して40〜50mLのIMDM培地を静かに加える。培地は、最初の10mLについては、50mlチューブの側面に沿って一滴ずつ加え、残りの培地は、チューブの側面に沿ってゆっくりと分注する。次に、細胞を900rpmで20分間回転させ、静かに吸引することによって培地を注意深く除去する。1mlのIMDM培地に細胞を再懸濁し、1ml当たりの細胞密度を血球計スライド上で測る(スライド上に10μLアリコートの細胞懸濁液;細胞密度は、平均数×細胞10,000個/mLである)。次に、IMDM培地で細胞を希釈し、細胞密度を15,000個/mLとする。次に、100μLの希釈した細胞を、各1.5 mLのメチルセルロースとペプチド試料に加え(アッセイ培地における最終的な細胞濃度は1,000個/mL)、混合物をボルテックスする。混合物内の泡を無くし、平滑断端な針を使用して1mLを吸引する。各試料から吸引した0.25mLの混合物を、24ウェルプレート(Falconブランド)の4つのウェルそれぞれに加える。平板培養した混合物を、多湿のインキュベータ内において5% CO2下、37℃で14日間インキュベートする。位相差顕微鏡(対物5〜10倍;最終倍率100倍)を使用して、赤血球コロニーの存在をスコアする。形成されたコロニーの数が、EPOポジティブコントロールで観察された数と比べて最大数の90%であった試験ペプチド濃度を、EC90として記録する(表2参照;C/BFU-e EC90)。
インビボ活性アッセイ
この実施例では、本発明のEPO‐Rアゴニストペプチドの活性および効力を評価する際に有用な種々のインビボアッセイについて述べる。EPO‐Rアゴニストペプチドモノマーおよびダイマーは、実施例1で提供された方法に従って調製される。これらペプチドモノマーおよびダイマーのインビボ活性は、連続アッセイ(赤血球増加性・過低酸素症(exhypoxic)マウスのバイオアッセイおよび網状赤血球アッセイを含む)を使用して評価する。これら2つのアッセイについて、以下に更なる詳細を述べる。
1.赤血球増加性・過低酸素症(Exhypoxic)マウスのバイオアッセイ
CotesおよびBangham (1961), Nature 191 : 1065-1067に記載されている方法を適用させた赤血球増加性・過低酸素症(exhypoxic)マウスのバイオアッセイにおいて、試験ペプチドのインビボ活性についてアッセイする。このアッセイでは、試験ペプチドがEPO模倣剤として機能する、すなわち、EPO‐Rを活性化し、新しい赤血球合成を誘導する能力を試験する。赤血球合成は、合成された赤血球のヘモグロビン内への放射性標識された鉄の取り込みに基づいて定量する。
BDF1マウスを、7〜10日間かけて周囲条件に順応させる。すべての動物の体重を測定し、低体重の動物(<15グラム)は使用しない。マウスは、トータルで14日間、低圧室において、連続した調整サイクルに適用する。各24時間のサイクルは、18時間の0.40±0.02%大気圧および6時間の周囲圧力より成る。調整後、マウスは、投薬前に更に72時間、周囲圧力で維持する。
試験ペプチドまたは組み換えヒトEPOスタンダードを、PBS+0.1% BSAビヒクル(PBS/BSA)で希釈する。ペプチドモノマーストック液は、最初にジメチルスルホキシド(DMSO)中に可溶化する。ネガティブコントロールグループは、PBS/BSAのみを注射したマウスの1つのグループと、1% DMSOを注射したマウスの1つのグループとを含む。各投与グループは、10匹のマウスを含む。0.5 mLの適切な試料をマウスに皮下注射する(首筋)。
試料を注射してから48時間後、0.2 mlのFe59(Dupont, NEN社)をマウスに腹腔内注射する(用量:マウス1匹当たり約0.75μキュリー)。Fe59を投与してから24時間後、マウスの体重を測定し、Fe59の投与から48時間後、マウスを屠殺する。心穿刺によって各動物から血液を回収し、ヘマトクリット値を測定する(抗凝血剤としてヘパリンを使用した)。Packardガンマカウンターを使用して、各血液試料(0.2 ml)のFe59の取り込みについて分析する。反応のないマウス(すなわち、放射性の取り込みがネガティブコントロールグループよりも少ないマウス)は、適切なデータセットから除外する。ヘマトクリット値がネガティブコントロールグループの53%よりも少ないマウスも除外する。
結果は、各実験用量について、10匹の動物のセットから得る。各グループから得られた血液試料に取り込まれた放射能の量(分当たりのカウント(CPM))の平均を計算する。
2.網状赤血球アッセイ
正常なBDF1マウスに、3日間連続して、EPOコントロールまたは試験ペプチドのいずれかを投与する(用量:0.5mL、皮下注射)。3日目に、鉄デキストラン(100mg/ml)もマウスに投与する(用量:0.1mL、腹腔内注射)。5日目に、マウスにCO2で麻酔をかけ、心穿刺によって出血させる。各血液試料における網状赤血球の割合(%)は、チアゾールオレンジによる染色およびフローサイトメトリ分析(網状赤血球数カウントプログラム)によって測定する。ヘマトクリット値を手動で測定する。補正された網状赤血球の割合を、以下の式を使用して決定する:
% RETIC補正値(CORRECTED) = % RETIC観測値(OBSERVED) X (ヘマトクリット個体値(INDIVIDUAL)/ヘマトクリット正常値(NORMAL))
3.血液学的アッセイ
正常なCD1マウスに、EPOポジティブコントロール、試験ペプチド、またはビヒクルのいずれかを、4週間の静脈内ボーラス注射によって投与する。ポジティブコントロールおよび試験ペプチドの用量の範囲(mg/kgで示す)は、処方における活性化合物濃度を変えることにより試験する。注射する量は5 mg/kgである。ビヒクルコントロールグループは12匹より成り、残りの各用量のグループはそれぞれ8匹より成る。毎日の生存能力および週毎の体重を記録する。
投与したマウスは絶食させ、1日目(ビヒクルコントロールマウス)並びに15日目および29日目(4匹/グループ/日)に、イソフルレン吸入によって麻酔をかけ、心穿刺または腹大動脈穿刺によって末端の血液試料を回収する。血液をVacutainer(登録商標)ブランドのチューブに移す。好ましい抗凝血剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
血液試料は、当技術分野において周知の自動臨床分析機器(例えばCoulter社製の機器)を使用して、赤血球合成および生理学を測定する評価項目(ヘマトクリット値(Hct)、ヘモグロビン(Hgb)および総赤血球数(RBC)等)について評価を行う。
ペプチドIは組換えEPOと免疫学的に異なり、PRCAのラットモデルにおいて抗EPO抗体に誘導された貧血を改善する
本発明者らは、実験を行い、ペプチドIが、長期にわたる半減期とゆっくりしたクリアランス時間を有する強力な赤血球生成刺激剤であることを実証している(Fan Q.ら、(2006) Experimental Hematology 34:1303-1311)。本発明者らはまた、ペプチドIのヒトにおける抗EPO抗体に関連したPRCAを改善する潜在力も実証している(Woodburnら、(2007) Experimental Hematology 35:1201-1208)。
交差反応性についての潜在力は、抗EPO抗体に誘導されたPRCAの既存のケースをペプチドIで治療できる可能性に関わってくる。本発明者らは、抗ペプチドI抗体の組換えEPOに対する結合および抗組換えEPO抗体のペプチドIに対する結合を特徴づけるために、複数の種(マウス、ウサギ、カニクイザル、およびヒトを含む)について実験を行っている。本発明者らが行った実験のデータは、組換えEPOに対する抗体はペプチドIと交差反応せず、逆に、ペプチドIに対する抗体は、組換えEPOと交差反応しないことを示した。
ペプチドIの組換えEPO抗体に誘導されたPRCAが原因の貧血を改善する効能を、PRCAのラットモデルにおいて評価した。本発明者らが行った実験は、PRCAのラットモデルにおいて、抗体に誘導された貧血をペプチドIが改善したことを示した。PRCAのラットモデルは、ラットにおける抗EPO抗体を誘導してPRCAのモデルを生み出すことより成った。ラットにおけるPRCAの誘導に続き、PRCAのラットモデルにおいて、ペプチドIまたは組換えEPOを週毎に投与した後に、組換えEPOで処理したラットと比べたペプチドIの赤血球生成活性を評価した。時間の経過と共に、組換えEPOで処理したPRCAのラットモデルにおけるヘモグロビンレベルは、ペプチドIで処理したPRCAのラットモデルよりも減少した。
更に、抗EPO抗体に対して陽性のラットにペプチドIを投与することにより、PRCAに誘導された貧血をペプチドIが改善する力を評価した。貧血の改善は、ペプチドIで処理した抗EPO抗体陽性の貧血のラットにおける網状赤血球増加の、組換えEPOで処理した抗EPO抗体陽性の貧血のラットに比べた有意な増加によって測定された。加えて、ペプチドIで処理した抗EPO陽性動物における貧血は回復に向かい、抗EPO抗体陰性のコントロールラットにおいて得られたヘモグロビンレベルよりも高いヘモグロビンレベルを得る結果となった。
また、貧血の抗EPO抗体陽性のラットにおいて正常なヘモグロビンレベルが維持され得るかどうかを確かめるための実験も行った。約4週間毎に、ペプチドIを用いた全部で7回の更なる注射によって、貧血の抗EPO抗体陽性のラットを処理した。ペプチドIおよびビヒクルで処理した抗体陽性のラットにおけるヘモグロビンレベルを、同時コントロールと比較した。集めたデータは、貧血の抗EPO抗体陽性のラットに対して4週間毎に繰り返しペプチドIを投与することにより、ヘモグロビンレベルの改善が持続する結果となることを実証した。
PRCAラットモデルは、抗EPO抗体に誘導されたPRCAを有する患者において観察されたものと類似の結果を示したので、適切なモデルである。ヒトおよびラットにおけるEPOに誘導されたPRCAは、抗EPO抗体の存在、網状赤血球の不在、及び限定された数の骨髄の赤血球前駆細胞と同時に存在する通常の数の顆粒球および巨核球の系統に関連した重症の貧血によって特徴づけられる。ペプチドIは、これらの動物におけるEPOに誘導された貧血を改善した。
ペプチドIを用いた抗EPO抗体に媒介されたPRCAの治療
1.1 研究方法
ペプチドIが抗EPO抗体によって特徴づけられるPRCAを有する患者における貧血を改善する能力を調べるために、非盲検・前向き(prospective)・非ランダム化の治験(study)を行った。予め特定しておいた主目的は、抗EPO抗体に媒介されたPRCAを有する患者において、6ヶ月の治療期間中、赤血球輸血をする必要なしに、ペプチドIを使用して11g/dLを超えるヘモグロビンレベルまで増加させ、維持することができるかどうかを確認することであった(米国の[KDOQI Clinical Practice Guidelines and Clinical Practice Recommendations for Anemia in Chronic Kidney Disease (2006) Am. J. Kidney Dis. 47 (Suppl 3):S11-S145.]、および欧州のガイドライン[Locatelli Fら、(2004) Nephrol. Dial. Transplant 19 (Suppl 2): iil-47.]、以上の両方に合致する)。赤血球輸血を減らす上でのペプチドIの効果、輸血なしに貧血を改善するのに必要な時間、必要な用量、および安全性の評価も行った。
治験医師(Investigator)および実施企業(Sponsor)は、試験を設計、実施および監督し、患者すべてについて治験への参加に適しているかを検討・確認し、得られる安全性および効能のデータを月毎に検討した。治験のプロトコルは、英国、フランスおよびドイツにおける国の保健局および地方の倫理委員会によって許可された。全ての患者は、書面によるインフォームド・コンセントを提出し、治験は、医薬品の臨床試験の実施の基準に関するガイドライン(Good Clinical Practice)およびヘルシンキ宣言に従って実施された。治験医師がデータを得、開発業務受託機関がデータをモニターし、治験医師および実施企業がデータ分析に関する責任を負った。
1.2 患者の適格性
CKD(透析が必要かどうかに関わらず)および抗EPO抗体を原因とするPRCAまたは赤血球形成不全を有する18歳を超える年齢の患者は、治験に適することとした。患者は、以下の文書化された病歴を有することを必要とした:(1)安定した用量、または徐々に増やした用量のタンパク質ベースのESAを投与されている間、あるいは赤血球輸血に依存している間の、ヘモグロビン濃度の減少;(2)網状赤血球数が30×109/Lより少ない;(3)骨髄検査において、重度の赤芽球低形成または赤血球無形成を示した;および(4)試験で抗EPO抗体陽性が確認された。患者は事前に免疫抑制療法を受けていてもよいが、そのような投薬は、治験に参加する前の少なくとも3ヶ月間は中断している必要があるとした。治験参加時、患者は、輸血に依存しているか、またはESA療法無しにヘモグロビン濃度が継続して11g/dLを下回っている必要があるとした。別の血液学的障害を有すること、別の公知のPRCAの原因があること、およびESAまたは免疫抑制療法を現在受けていること等を、主な除外基準とした。
1.3 処置および結果の測定
全血球計算値、網状赤血球数、尿素、電解質、肝機能検査、鉄状態、抗EPO抗体、および抗ペプチドI抗体のベースラインの測定のために、血液試料を採取した。治験適格性基準に合致させて、ペプチドIによる処理は0.05mg/kgの用量から開始して、4週毎に皮下注射した。ヘモグロビンおよび網状赤血球のカウントは毎週行う一方で、その他の安全性検査のパラメータ(尿素、電解質、肝機能検査、抗EPO抗体および抗ペプチドI抗体を含む)用に試料を毎月採取した。各注射の頻度および用量は、ヘモグロビンレベルの標的範囲である11〜13g/dLを達成するように、患者のヘモグロビン反応に基づいて調節した。その後、この標的範囲は、CREATE [Drueke TBら、(2006) N. Engl. J. Med. 355: 2071-84]およびCHOIR [Singh AKら、(2006) N. Engl. J. Med 355: 2085-98]の研究の公表後、続いて出たKDOQIの勧告[KDOQI Clinical Practice Guideline and Clinical Practice Recommendations for Anemia in Chronic Kidney Disease (2007) Am. J. Kidney Disease 50: 471-530]に沿って、2007年のはじめに11〜12g/dLに変更した。
抗ペプチドI抗体のアッセイは、ELISAによる方法を用い、300ng/mLの感受性で(Fan Q.ら、(2006) Exp. Hematol. 34: 1303-11;およびWoodburn KWら、(2007) Exp. Hematol. 35: 1201-8)、実施企業の研究所において実施した。抗EPO抗体は、放射性免疫沈澱アッセイによって測定した。患者の抗体がペプチドIと交差反応しないことを確認するために、これらの患者の血清を骨髄培養において試験した(以前に記載されたように健康なヒトのドナーから確立された[Verhelst Dら、(2004) Lancet 363: 1768-71])。培養条件は、20%のウシ胎仔血清(コントロールとして)または治験患者の血清の1つのいずれかを含んだ。培養物は、1 IU/mLの組換えヒトEPOまたは0.55μg/mLのペプチドIのいずれかを含んだ(以前に示された濃度は、赤血球増加のために1 IU/mLのEPOに相当することが必要)。第7日に赤血球コロニーをカウントした。
1.4 統計分析
治験センターにアクセス可能な適格性を有する可能性のある患者の最大数を治験医師が見積もり、それに基づいて、抗EPO抗体に媒介されたPRCAを有する患者を5〜20人参加させるように、治験を設計した。患者は、はじめの6ヶ月間に処置するようにした。患者が十分な反応を示した場合、ペプチドIの投与を更に最大で18ヶ月継続することとした。ペプチドIの投与を少なくとも1回受けた患者は全て、安全性の分析において含め、投与に続いてヘモグロビン値を少なくとも1回測定した患者は、効能の分析において含めた。全ての安全性および効能についての結果は、記述統計学を用いてとりまとめた。データは、中央値、第一四分位数(25th percentile)、第三四分位数(75th percentile)および範囲として表す。
2.1 患者の結果およびベースラインの特性
10人の患者が治験に適しており、2006年3月から2007年2月までの間に次々に治験に登録した。ドイツ5名、イギリス3名、フランス2名であった。結果は、患者の2007年8月23日まで平均13.5ヶ月の経過観察(範囲:3〜17ヶ月)により集められ、報告されたデータを反映している。患者のうち9人が透析を受けており(7人が血液透析、2人が腹膜透析)、1人は、腎代償療法が必要ではなかった。患者の男女の割合は、8:2であった。治験スタート時の年齢の中央値は65歳であった(範囲:28〜92歳)。治験エントリーの際、9人の患者が輸血に依存しており、同じ9人の患者が、輸血の繰り返しおよび鉄利用がうまく機能しないことによる重度の鉄過剰を示す臨床検査値であった。ベースラインにおける血液学的パラメータは以下の通りであった:ヘモグロビンの中央値 9.7g/dL(範囲:8.3〜12.6g/dL);網状赤血球数の中央値 21.3×109/L(範囲:1.8〜70×109/L);フェリチンの中央値 1,356μg/L(範囲:229〜7,496μg/L);およびトランスフェリン飽和率(TSAT)の中央値 70.9%(範囲:23〜91%)。全ての患者において抗EPO抗体を確認していた。3人の患者(表1の#3、#4および#6)は、抗体に媒介されたPRCAについて元々記載されているように(Rossert Jら、(2004) J. Am. Soc. Nephrol. 15: 398-406; Casadevall Nら、(2004) ASN, American Society of Nephrology no.SU-P0060)、赤血球生成の完全な抑制は示さなかった。このうち2人の患者は、症候群の発症(#3)または再発(#4、#6)の間に早くに発見され、抗EPO抗体の存在下で赤血球生成減少の徴候があったので、治験に適すると見なされ、従来のESAによる更なる処置から除外された。患者#3における骨髄は、赤血球形成不全(無形成よりもむしろ)を示し、この患者は、まだ輸血を受けたことがなかった。患者#4は、以前にPRCAの診断を受け、エポエチンへの再暴露により再発が起こり、抗EPO抗体のレベルが増加すると共に、ヘモグロビン濃度が減少していた。患者#6は、6ヶ月前にPRCAの確定診断を受け、輸血に依存しており、網状赤血球数は、治験エントリー前に31〜70×109/Lであった。治験に登録した10人の患者のデモグラフィックスおよびベースラインの特性を、以下の表にまとめた:
*患者#6は、治験前に赤血球輸血を毎月受けていた;治験登録前の4ヶ月間、網状赤血球数は2.2×109/L程度の低さであった。ここに報告されたベースライン値は、輸血から約1ヶ月後に採取した血液試料から得られた;結果は、患者の病歴に比較して高いものであった。
†患者#7は、治験登録前に赤血球輸血を毎月受けていた;ここに報告されたベースラインヘモグロビン値は、患者が輸血を受けてから8日後に得られた。
‡患者#7のベースライン網状赤血球数は、1回目のペプチドIの注射から1週間後に得られた値を反映している;実際のベースライン値(処置前の)は得られなかった。
2.2 骨髄培養の結果
1 IU/mLのEPOの存在下、患者の血清は、評価された3人の患者全員についての赤血球の増加を完全に阻害した(図1)。一方で、培養物にペプチドI(0.55μg/mL)を加えると、同じ条件において赤血球分化が観察された。
2.3 貧血の治療
患者10人全員のヘモグロビン反応は、平均13.5ヶ月の経過観察において、輸血無しに11g/dLを超えるヘモグロビン濃度を達成し、それを維持するものであると定義された。ヘモグロビンの中央値は、6ヶ月で、ベースラインにおける9.7g/dL(赤血球輸血からのサポートを受けて)から11.6g/dLまで増加した(図2)。ヘモグロビン反応の時間の中央値は、10週であった(範囲:7〜24週)。患者全員が、ペプチドIの注射毎に2週間後に網状赤血球反応を示し、網状赤血球数のピークは、ベースライン値の中央値21.3×109/Lと比較して、100×109/L〜250×109/Lの範囲であった(図3参照)。ペプチドIによる処置の後、輸血の必要性は減少し、最後にはなくなった。最初の1ヶ月間は、3人の患者が赤血球輸血を受けた;4ヶ月目の時点で、1人の患者がまだ輸血を受けていた;6ヶ月目では、どの患者も輸血を必要としなかった;そして7ヶ月目には、1人の患者が、腎臓移植手術の直前に輸血を受けた。8ヶ月目以降には、更に輸血を必要とする患者はいなかった(図2参照)。この反応を達成するために、全ての患者が投与量のベースラインからの増加を必要とし、1人の患者が、一時的に2週間毎にペプチドIの投与を受けた。ヘモグロビン反応時の投与量の中央値は、1ヶ月当たり0.08mg/kgであった(範囲:0.075〜0.2mg/kg)。データカットオフ時、フェリチンレベルの中央値は、1,243μg/Lまで減少しており(範囲:168〜4,654μg/L)、TSATの中央値は、50.0%に減少していた(範囲:31.1〜90%)。
最大でも10回投与(中央値:6回の投与、範囲:4〜10回の投与)した後は、10人の患者の血清試料のいずれからも抗ペプチドI抗体は検出されなかった。10人の患者のうち7人は、依然として抗EPO抗体陽性であったが、ほとんどの患者において、治験の間に抗EPO抗体が減少した(データは示さず)。
ペプチドIの注射は、概ねよく耐えられるものであり、10人の患者について報告された108の事象のうち、97の事象は重症度が軽度または中等度のものであり、4つの事象のみが以下のように報告された:少なくともペプチドI−高血圧に関連する可能性がある(n=2);治療を必要としない重度の骨の痛み(n=1);および注射部位の血腫(n=1)。2人の患者において4つの重度の有害事象が報告された(1人の患者は心内膜炎にかかり、動静脈瘻手術を行った;もう1人の患者では心房粗動および大腿動脈瘤が見られた)が、これらの事象のいずれもが、治験薬と関連するとは考えられなかった。その他の3人の患者について、重度の、関連性のない有害事象が報告された(疲労、頭痛、耳鳴およびデュピュイトラン拘縮の手術)。治験期間中、3人の患者が腎臓の移植を受け、これを理由に治験からドロップアウトし、それぞれ3ヶ月目、6ヶ月目、6ヶ月目で打ち切りとなった。
3.1 結論
この治験は、循環する中和抗EPO抗体の存在下、ペプチドIが、赤血球生成を刺激する能力を有する結果として、抗体に媒介されたPRCAを有する患者を救うことができることを示すデータを提供する。10人の患者全員において、輸血なしにヘモグロビンが11g/dLよりも高いレベルまで増加するという主要評価項目を達成した。ペプチドIは、治験における被検体がよい耐容性を示すものであり、ペプチドIに関連した重度の有害事象は報告されなかった。
この治験に登録した患者は、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、またはダルベポエチンアルファのいずれかで治療する間に、機能的に関連した抗EPO抗体をつくり出した。4人の患者は、登録前の数年にわたって、輸血に依存した抗EPO抗体に媒介されたPRCAを有していた。2人の患者は、抗体価の減少後、エポエチンに再暴露されたことが原因で、PRCAが再発していた。その他の患者は、治験にエントリーする少し前にこの病気の診断を受けた。トライアルへの登録を見込み、これらの患者に対しては免疫抑制療法による治療を行わなかった。全ての患者において、抗EPO抗体が存在するために、タンパク質ベースのESAで更に治療することが不可能であった。従って、何人かの患者においては、エポエチンへの暴露を早い時期に中断した結果、抗EPOレベルの減少につながると共に、骨髄において赤血球形成不全となり(赤血球生成の完全な抑制というよりもむしろ)、治験開始前に、赤血球輸血をほとんどまたは全く受けていなかった。しかし、エポエチンまたはダルベポエチンアルファとは対照的に、ぺプチドIの作用は抗EPO抗体によって中和されない。これは、この治験において得られたインビトロデータ(図3参照)および以前のインビトロ実験および動物実験(Woodburn KWら、(2007) Exp. Hematol. 35: 1201-8;およびCasadevall Nら、(2004) ASN, American Society of Nephrology no.SU-P0060)と一致する知見である。
全般的に見て、ペプチドIはよい耐容性を示すものであり、中和抗EPO抗体を原因とするPRCAを有する患者における新規の治療の選択肢を提供する。
[配列表]
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本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲を限定されてはならない。実際には、本明細書に記載されたものに加え、本発明の種々の変更が、前述の明細書および付随する図面から、当業者に明らかになるであろう。このような変更は、添付の請求項の範囲内にあることが意図される。
更に、全ての値がおおよそのものであり、記載のために提供されたものであることも理解されるべきである。
特許、特許出願および種々の出版物を含めた多数の引例が、本発明に関する説明において引用され、考察されている。このような引例の引用および/または考察は、単に本発明の説明を明確にするために提供されたものであり、このような引例のいずれかが本発明の「先行技術」であると認めるものではない。本明細書において引用され考察されている全ての引例は、その全体を引用することによって本明細書に組み込まれ、各引例を引用することによって個々に本明細書に組み込まれることと同等の効力を有する。
図1は、EPOまたはペプチドIの存在下で患者の血清を用いた赤血球増加の阻害についての、3人の患者のデータとコントロール被検体のものとの比較を示す。薄いグレーの棒は、EPOの存在下でコントロールまたは患者の血清を用いた場合のインビトロでの赤血球コロニーの数を表す。濃いグレーの棒は、ペプチドIの存在下でコントロールまたは患者の血清を用いた場合のインビトロでの赤血球コロニーの数を表す。
図2は、平均ヘモグロビン(Hgb)濃度およびペプチドIによる治療後に赤血球輸血を受けている患者のパーセンテージを示す。グレーの棒は、ペプチドIによる治療前(-3〜0ヶ月)および最大で9ヶ月までの治療中、1ヶ月ごとに輸血を受けている患者のパーセンテージを示す。
図3は、ペプチドIによる治療後の網状赤血球数の中央値の変化を示す。矢印は、1ヶ月ごとのペプチドIの注射を表す。黒線は、網状赤血球絶対数の中央値を表し、エラーバーは、四分位数範囲(intra-quartile range)を表す。
図4は、1人の患者における、ペプチドIによる治療を受けずに赤血球輸血を受けた後の平均Hgbの変化を示す。矢印は輸血を表す。
図5は、赤血球輸血およびペプチドIによる治療後の、1人の患者における平均Hgbおよび網状赤血球数の中央値の変化を示す。下向きの矢印は輸血を表し、上向きの矢印はペプチドIによる治療を表す。