JP2009189743A - 血管内皮前駆細胞の増殖方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】血液と特定の高分子材料を接触させることにより、EPCマーカーであるCD34抗原やVE-カドヘリンが細胞表面にあらわれたCD34+細胞やVE-カドヘリン+細胞の割合が増加する。即ち、EPCが刺激されて、血管内皮細胞に分化することで、血管の損傷を修復するため、血管に優しい血液の浄化方法を提供することができる。つまり、特定の高分子材料を用いた血液浄化用デバイス、即ち体外循環材料を用いて血液を浄化することによる。
【選択図】図2
Description
Science 275: 964-7 (1997) Blood 90: 5002-5012 (1997) Blood 92: 362-367 (1998) Blood 95: 3106-3112 (2000) J Clin Invest. 105: 71-77 (2000)
1.血液を合成高分子材料と接触させることを特徴とする血液中のEPCの増殖方法。
2.血液の浄化方法において、血液と合成高分子材料を接触させることにより血液中に含まれるEPCを増殖させる工程を含む、血液の浄化方法。
3.EPCの増殖が、CD34抗原陽性細胞の増加を指標とする、前項2に記載の血液の浄化方法。
4.EPCの増殖が、VE-カドヘリン陽性細胞の増加を指標とする、前項2又は3に記載の血液の浄化方法。
5.血液の浄化に使用するデバイスであって、該デバイスにおいて血液との接触面部分に合成高分子材料が付与されていることを特徴とする血液浄化用デバイス。
6.前記血液浄化用デバイスが、体外循環材料である前項5に記載の血液浄化用デバイス。
7.前記合成高分子材料が、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン酸、ポリアクリロニトリル膜、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステル系ポリマーアロイ、ポリエーテルスルホン及びセルローストリアセテートからなる群から選択されるいずれかである前項5又は6に記載の血液浄化用デバイス。
ここでCD34抗原陽性(CD34+)細胞とは細胞表面にCD34抗原を表現している細胞をいう。CD34抗原は、分子量約110kDaの短鎖膜貫通型リン酸化糖タンパク質であり、細胞外部に大きさの異なる2つのドメインを有する。そのうち、膜近傍領域(C末端領域)は、アミノ酸が約110個の大きさで、球状構造からなる。もう一方のN末端領域は、アミノ酸約140個の大きさで、N−結合型糖鎖とシアル酸を含むO−結合型糖鎖が数多く付加している。CD34抗原は、最も未分化な多能性幹細胞と全細胞系統の造血前駆細胞に発現するといわれている。本発明において、CD34+細胞を指標とするのは、EPCの増加によりCD34+細胞が増加すると判断されるからである。EPCの増加により、浄化した血液を生体内に戻した際に、EPCが血管内皮細胞へ分化し、傷害を受けた血管を修復するものと考えられる。
また、カドヘリン (Cadherin) とは細胞表面に表現される糖タンパク質の一群で、細胞接着をつかさどる分子であり、動物の胚発生に重要な役割を果たす。
本実施例では、血液浄化方法に使用する体外循環材料の末梢血でのEPC増加を、CD34抗原陽性(CD34+)細胞を指標とし、in vitroにて確認した。
SDラットで10週齢の雌を使用した。これらのラットから、ネンブタール麻酔下で、IVC(個別換気ケージシステム)より約7mL/匹の血液を採取した。
体外循環材料として、以下を使用した。
i) ポリメチルメタクリレート(PMMA)中空糸膜(カバー付):GB−U(東レの透析用人工腎臓製品:製品名“フィルトライザー”)の膜
ii) PMMA中空糸膜(カバーなし)
iii) ポリスルホン(PMPT)中空糸膜:TS−UL(東レの透析用人工腎臓製品:製品名“トレスルホン”)の膜
約5mLの血液を50mLのポリプロピレンチューブを用いて、各体外循環材料(PMMA(カバー付・カバーなし)やポリスルホンと接触させ、37℃の温浴槽にて1時間振盪混和し、インキュベーションした。対照として、2mLの血液のみも同様にインキュベーションした。
インキュベーション後の各体外循環材料と接触させた血液及び対照を、ネンブタール麻酔下でラットの大腿骨静脈に、2mL静脈投与した。
末梢血と体外循環材料を接触してインキュベーションした前後での、EPCマーカーの一つであるCD34+細胞の変動を調べた。体外循環材料との接触全血をラットに静注した後、24時間及び65時間後に尾静脈より採取したラット末梢血中のCD34+細胞の変動を調べた。
CD34+細胞の測定は、血液をACK lysing buffer (Ammonium Chloride Potassium)処理にて赤血球を破壊した後、抗CD34抗体及びウサギ−抗ラット-FITC 抗体を用いて染色し、フローサイトメーターセルソーター(FACSシステム)にて末梢血中のCD34+発現細胞の割合を調べた。
ラット末梢血と体外循環材料との接触1時間後のCD34+の割合(%)を図1に示した。ラット血液をPMMAやポリスルホンなどの体外循環材料と共に、37℃で1時間インキュベーションすると、体外循環材料を加えなかった対照コントロールの血液と比べ、接触血液中のCD34+細胞の割合が有意に増加した。また、PMMAのカバーなしの方が、PMMAのカバー付に比べ、接触血液中のCD34+細胞の増加を有意に促進させた。
本実施例では、図2に示す方法に従い、血液浄化方法に使用する体外循環材料の末梢血でのEPC増加能をCD34+細胞の増加を指標として確認した。本実施例では、死細胞染色用蛍光色素PI(Propidium Iodide)で染色された死細胞を除去して解析した点で、実施例1とは相違する。
SDラットで8週齢又は16週齢の雌を使用した。これらのラットから、ネンブタール麻酔下で、IVCより約7mL/匹の血液を採取した。
体外循環材料として、以下を使用した。
i) ポリメチルメタクリレート(PMMA)中空糸膜(カバー付):BG−U(東レの透析用人工腎臓製品:製品名“フィルトライザー”)の膜
ii) PMMA中空糸膜(カバーなし)
iii) ポリスルホン(PSPT)中空糸膜(カバー付):TS−UL(東レの透析用人工腎臓製品:製品名“トレスルホン”)の膜
iv) PSPT中空糸膜(カバーなし)
v) エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVAL(R)−D)中空糸膜(クラレメディカル株式会社)
vi) ポリエーテルスルホン(PES)中空糸膜
vii) セルローストリアセテート(CTA)中空糸膜
約8mLの血液を50mLのポリプロピレンチューブ内で、上記各体外循環材料と接触させ、37℃の温浴槽にて1時間振盪混和し、インキュベーションした。対照として、2mLの血液のみも同様にインキュベーションした。
インキュベーション後の各体外循環材料と接触させた血液及び対照を、ネンブタール麻酔下でラットの大腿骨静脈に、2mL静脈投与した。
末梢血と体外循環材料を接触してインキュベーションした前後での、CD34+細胞の変化を調べた。体外循環材料との接触全血をラットに静注にて返血後、24時間、48時間及び72時間後に尾静脈より採取したラット末梢血についてCD34+細胞の変化を調べた。
ラット末梢血と体外循環材料との接触1時間後のCD34+細胞の割合(%)を図3に示した。その結果、CTAに接触したときCD34+細胞の割合はごくわずかに増加したが、その他は殆ど増加しなかった。実施例1と本実施例の結果の違いは、PI染色により死細胞を除去したことによる非特異反応が除去されたものと考えられる。
本実験結果より、末梢血と体外循環材料とを接触させてもすぐにCD34+細胞が生じるわけではないことが確認された。
本実施例では、実施例2及び図2に示す方法に従い、ラットに返血後1日目、2日目、3日目でのCD34+細胞の誘導割合(%)を測定し、その結果を図4に示した。その結果、PESについてラットに返血後1日で有意にCD34+細胞の割合が増加することが確認されたが、2日以降はCD34+細胞の割合が低下し、対照との差が認められなかった。PSPT(カバー付)、PMMA(カバー付)についても、同様の傾向が認められた。
本実施例では、実施例2及び図2に示す方法に従い、ラットに返血後1日目でのCD34+の分布(%)を図5に示した。本結果では、PES及びPSPTについてラットに返血後1日で有意にCD34+細胞の割合が増加し、PMMAについても若干増加することが確認された。
本実施例では、実施例2及び図2に示す方法に従い、EPCマーカーのひとつであるVE-カドヘリンについてラットに返血後1日目、2日目、3日目での陽性細胞の割合(%)を図6に示した。本結果では、PMMA、PSPTについてラットに返血後1日及び2日目で有意にVE-カドヘリン+細胞の割合が増加することが確認されたが、3日以降はVE-カドヘリン+細胞の割合が低下し、対照との差が認められなかった。
本実施例では、実施例2及び図2に示す方法に従い、ラットに返血後1日目でのVE-カドヘリン+細胞の分布(%)を図7に示した。本結果では、PSPT(カバー付)についてラットに返血後1日で有意にVE-カドヘリン+細胞の割合が増加し、PSPT(カバーなし)、PMMA(カバーなし)についても若干増加することが確認された。
Claims (7)
- 血液を合成高分子材料と接触させることを特徴とする血液中の血管内皮前駆細胞(EPC)の増殖方法。
- 血液の浄化方法において、血液と合成高分子材料を接触させることにより血液中に含まれる血管内皮前駆細胞を増殖させる工程を含む、血液の浄化方法。
- 血管内皮前駆細胞の増殖が、CD34抗原陽性細胞の増加を指標とする、請求項2に記載の血液の浄化方法。
- 血管内皮前駆細胞の増殖が、VE-カドヘリン陽性細胞の増加を指標とする、請求項2又は3に記載の血液の浄化方法。
- 血液の浄化に使用するデバイスであって、該デバイスにおいて血液との接触面部分に合成高分子材料が付与されていることを特徴とする血液浄化用デバイス。
- 前記血液浄化用デバイスが、体外循環材料である請求項5に記載の血液浄化用デバイス。
- 前記合成高分子材料が、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン酸、ポリアクリロニトリル膜、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステル系ポリマーアロイ、ポリエーテルスルホン及びセルローストリアセテートからなる群から選択されるいずれかである請求項5又は6に記載の血液浄化用デバイス。
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JP2008036504A JP2009189743A (ja) | 2008-02-18 | 2008-02-18 | 血管内皮前駆細胞の増殖方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012020566A1 (ja) | 2010-08-10 | 2012-02-16 | 国立大学法人旭川医科大学 | Ape1遺伝子導入による高機能化幹細胞・前駆細胞 |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS6247367A (ja) * | 1985-08-24 | 1987-03-02 | 株式会社 日本メデイカル・サプライ | 血液濃縮器 |
JPH06238139A (ja) * | 1993-02-16 | 1994-08-30 | Asahi Medical Co Ltd | ポリスルホン系半透膜およびその製造方法 |
JP2000042099A (ja) * | 1998-05-25 | 2000-02-15 | Terumo Corp | 中空糸膜型血液透析器 |
-
2008
- 2008-02-18 JP JP2008036504A patent/JP2009189743A/ja active Pending
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WO2012020566A1 (ja) | 2010-08-10 | 2012-02-16 | 国立大学法人旭川医科大学 | Ape1遺伝子導入による高機能化幹細胞・前駆細胞 |
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