JP2009183224A - 病害抵抗性種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法 - Google Patents
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Abstract
【課題】萎黄病抵抗性、炭疽病抵抗性あるいは両方の抵抗性を有する種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法を提供する。
【解決手段】萎黄病抵抗性、炭疽病抵抗性、または萎黄病・炭疽病複合抵抗性を有する種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法であって、少なくとも一方の親を「アスカウェイブ」または「芳玉」から導入した萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統として、および/または両親ともに炭疽病抵抗性を有する系統として交配する。
【選択図】図1
【解決手段】萎黄病抵抗性、炭疽病抵抗性、または萎黄病・炭疽病複合抵抗性を有する種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法であって、少なくとも一方の親を「アスカウェイブ」または「芳玉」から導入した萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統として、および/または両親ともに炭疽病抵抗性を有する系統として交配する。
【選択図】図1
Description
本発明は、萎黄病抵抗性、炭疽病抵抗性あるいは両方の抵抗性を有するイチゴの種子繁殖型の一代雑種品種(F1品種)の育種法に関する。
炭疽病と萎黄病はイチゴ生産における重大病害で、どちらもイチゴ植物体を萎凋枯死させ生産に壊滅的被害を及ぼす恐れがある。そのため、これら病害に対して抵抗性を有する品種の育成が強く求められている。
従来のイチゴ品種は栄養繁殖性であり、優秀な形質を有する植物体が1個体得られれば、遺伝様式に拘わらず品種とすることができた。そのため、多様な変異の中から優秀な個体を選抜する技術が重視され、病害抵抗性に関し、本発明者らは、選抜対象の実生幼植物に炭疽病菌を接種し抵抗性個体を選抜する方法(非特許文献1)、萎黄病抵抗性について調べようとする植物体の自殖実生群を用い隔離条件で自殖実生に菌を接種して抵抗性程度を評価する方法(非特許文献2)、同様に自殖実生群を用いて炭疽病抵抗性と萎黄病抵抗性を並行して評価する方法(非特許文献3)を開発してきた。
一方、本発明が目指す種子繁殖型品種は、栄養繁殖性作物にみられる増殖親植物から子植物への病害虫やウィルスの伝染環を断ち切ることができる利点を持つが、育種操作が煩雑になるうえ、種子繁殖型品種であっても容易に栄養繁殖できるため、育成者権の確保が困難であるという問題があった。しかし、近年、イチゴは八倍体であるが多くの遺伝子が二倍体と同様に遺伝することが確認され、品種識別用のDNAマーカーによって育成者権確保が可能になったことから、種子繁殖型品種への関心は高まり始めている。
さらに、種子繁殖型品種に病害抵抗性を付与することができると、病害感染の機会が格段に低下し、病害防除の点で相乗効果を得ることができる。
さらに、種子繁殖型品種に病害抵抗性を付与することができると、病害感染の機会が格段に低下し、病害防除の点で相乗効果を得ることができる。
栄養繁殖型品種と異なり、種子繁殖型品種の育成には遺伝的固定操作が必要であり、特定の形質を付与するためには、当該形質に関する遺伝様式の解明が重要になる。従来、イチゴでは自殖弱勢が生じるため、一代雑種育種法(F1育種法)が適していること(非特許文献4)や、イチゴ品種「アスカウェイブ」には萎黄病抵抗性の主働遺伝子を有していること(非特許文献5)などが開示されている。
しかしながら、従来、萎黄病や炭疽病などの病害抵抗性を付与したイチゴの一代雑種品種を確実に得ることが困難であった。また、栄養繁殖型品種を含めても、萎黄病および炭疽病の両病害に対する抵抗性を兼ね備えたイチゴ品種はなかった。
植物防疫第57巻第6号(2003)271−275ページ、イチゴ炭疽病抵抗性の遺伝的特性と育種 園芸学会雑誌第74巻別冊2(2005)168ページ、「実生幼苗を用いた後代検定によるイチゴ萎黄病抵抗性の評価法」 園芸学会雑誌第75巻別冊2(2006)517ページ、「実生幼苗を用いた後代検定によるイチゴの炭疽病・萎黄病複合抵抗性の評価法」 園芸学研究第6巻別冊2(2007)216ページ、「種子繁殖型イチゴ品種の育成(第3報)F1系統の特性」 園芸学雑誌第74巻第1号(2005)57−59ページ、「イチゴ萎黄病抵抗性の品種間差および抵抗性品種と罹病性品種のF1における抵抗性の分離」
植物防疫第57巻第6号(2003)271−275ページ、イチゴ炭疽病抵抗性の遺伝的特性と育種 園芸学会雑誌第74巻別冊2(2005)168ページ、「実生幼苗を用いた後代検定によるイチゴ萎黄病抵抗性の評価法」 園芸学会雑誌第75巻別冊2(2006)517ページ、「実生幼苗を用いた後代検定によるイチゴの炭疽病・萎黄病複合抵抗性の評価法」 園芸学研究第6巻別冊2(2007)216ページ、「種子繁殖型イチゴ品種の育成(第3報)F1系統の特性」 園芸学雑誌第74巻第1号(2005)57−59ページ、「イチゴ萎黄病抵抗性の品種間差および抵抗性品種と罹病性品種のF1における抵抗性の分離」
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性について遺伝的特性の解明を進め、得られた知見を一代雑種育種法に適用することによって、両病害に抵抗性を持つ種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法を提供することを目的とする。
本発明の育種法は、萎黄病抵抗性、炭疽病抵抗性、または萎黄病・炭疽病複合抵抗性を有する種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法であって、少なくとも一方の親を「アスカウェイブ」または「芳玉」から導入した萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統として、および/または両親ともに炭疽病抵抗性を有する系統として、交配することを特徴とする。
特に、少なくとも一方の親が「アスカウェイブ」または「芳玉」から導入した萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統として、および両親が炭疽病抵抗性を有する系統として、交配することを特徴とする。
特に、少なくとも一方の親が「アスカウェイブ」または「芳玉」から導入した萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統として、および両親が炭疽病抵抗性を有する系統として、交配することを特徴とする。
上記萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統は、萎黄病抵抗性を有する自殖実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 87.5%以上 100%以下である系統より得られたもの、あるいは、当該系統を自殖した場合に、その実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 87.5%以上 100%以下であるもの、または、当該系統に萎黄病罹病性品種を交配した場合に、その実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 75%以上 100%以下であることによって識別されることを特徴とする。
上記炭疽病抵抗性を有する系統は、炭疽病抵抗性株の出現率が 50%以上 100%以下に固定した系統であることを特徴とする。
本発明の病害抵抗性種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法は、少なくとも一方の親を「アスカウェイブ」または「芳玉」から導入した萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統として、および/または両親ともに炭疽病抵抗性を有する系統として交配することにより、また、上記萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統または炭疽病抵抗性を有する系統を、それぞれの病害の抵抗性株を所定の出現率を示すものを用いることにより、従来の栄養繁殖型品種と同程度の萎黄病抵抗性、炭疽病抵抗性あるいは両病害に抵抗性を持つ種子繁殖型のイチゴ品種を育成することができる。
本発明者らは、既に、栄養繁殖型イチゴ育種の研究によって、「アスカウェイブ」が萎黄病抵抗性の主働遺伝子を有していること(非特許文献5)、および、炭疽病抵抗性には複数の相加的遺伝子が関与していること(非特許文献1)を見出した。さらに、種子繁殖型一代雑種品種育成に向けて研究を進めた結果、新たに、第一に、萎黄病抵抗性は一種の完全優性遺伝子に支配されていること、第二に、炭疽病抵抗性の栄養繁殖系統であっても自殖によって炭疽病抵抗性が低下した植物が出現することと、それを回復し一代雑種品種の交配親として用いることができる適切な炭疽病抵抗性遺伝子の集積程度を見出した。これら知見を一代雑種育種法に適用することによって本発明に至った。
すなわち、本発明は、第一に萎黄病抵抗性一代雑種品種育成のため萎黄病抵抗性完全優性遺伝子のホモ接合体を片親または両親に用い、第二に炭疽病抵抗性一代雑種品種育成のために両親ともに炭疽病抵抗性を有する系統として、また炭疽病抵抗性株の出現率が 50%以上 100%以下に固定した系統を交配親として両親に用いる育種方法である。また、両者の統合によって萎黄病と炭疽病に複合抵抗性を持つ一代雑種品種を作出する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、「アスカウェイブ」由来の萎黄病抵抗性完全優性遺伝子(以下、Frs遺伝子という)をホモ接合に持つ系統を片親または両親に、相加的効果を持つ複数の炭疽病抵抗性遺伝子を集積した固定系統(以下、炭疽病抵抗性固定系統という)を両親に用いる。また、両者を統合するには、Frs遺伝子ホモ接合と炭疽病抵抗性遺伝子の集積を兼ね備えた固定系統(以下、複合抵抗性固定系統という)を交配親に用いる。
本発明は、「アスカウェイブ」由来の萎黄病抵抗性完全優性遺伝子(以下、Frs遺伝子という)をホモ接合に持つ系統を片親または両親に、相加的効果を持つ複数の炭疽病抵抗性遺伝子を集積した固定系統(以下、炭疽病抵抗性固定系統という)を両親に用いる。また、両者を統合するには、Frs遺伝子ホモ接合と炭疽病抵抗性遺伝子の集積を兼ね備えた固定系統(以下、複合抵抗性固定系統という)を交配親に用いる。
ここでは、萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性を統合した複合抵抗性一代雑種品種の作成方法を図に基づいて説明する。図1は、本発明の一代雑種育種法の実施形態の一例を説明する図である。
まず、Frs遺伝子と炭疽病抵抗性遺伝子の両方を有する栄養繁殖系統の作出方法について述べる。
Frs遺伝子は完全優性遺伝子であり、既存品種の中では「アスカウェイブ」と「芳玉」がヘテロ接合に持つ(以下、「アスカウェイブ」を例に説明する)。一方、炭疽病抵抗性は複数の相加的遺伝子に支配されており、「サンチーゴ」、「宝交早生」および「中間母本農2号」が抵抗性品種である。既存品種の中で、Frs遺伝子と炭疽病抵抗性を併せ持つ品種は存在しない。
まず、Frs遺伝子と炭疽病抵抗性遺伝子の両方を有する栄養繁殖系統の作出方法について述べる。
Frs遺伝子は完全優性遺伝子であり、既存品種の中では「アスカウェイブ」と「芳玉」がヘテロ接合に持つ(以下、「アスカウェイブ」を例に説明する)。一方、炭疽病抵抗性は複数の相加的遺伝子に支配されており、「サンチーゴ」、「宝交早生」および「中間母本農2号」が抵抗性品種である。既存品種の中で、Frs遺伝子と炭疽病抵抗性を併せ持つ品種は存在しない。
萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性の間に遺伝的な相関関係はないため、「アスカウェイブ」と炭疽病抵抗性品種を交配すると、その一代雑種において萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性を併せ持つ植物が出現する。それを選抜するため、まず、非特許文献1に示した「炭疽病胞子懸濁液の噴霧接種による実生幼苗選抜法」を行い、生存する植物を育てランナー増殖植物あるいは自殖種子を得る。非特許文献2の方法等でランナー植物または自殖実生を用いて萎黄病抵抗性程度を評価選抜することによって、萎黄病と炭疽病に複合抵抗性を有する栄養繁殖系統を得ることができる。また、非特許文献3に示したとおり、炭疽病抵抗性と萎黄病抵抗性を並行して評価することもできる。なお、萎黄病はランナーを通じて感染するため、感染した菌を除くことが難しく、炭疽病の様に供試植物に直接接種するのは適切でない。
この段階で得られる複合抵抗性栄養繁殖系統は、親品種の影響が強くて多様性に乏しい。そこで、続いて、得られた複合抵抗性系統を用いて同様の交配と選抜を行うことを繰り返す。あるいは、交配を進め多様な変異を作出しておいてから、最終的に抵抗性選抜を行うことも可能である。これによって、Frs遺伝子を導入し炭疽病抵抗性を有する様々な栄養繁殖系統を作出することができる。
次に、Frs遺伝子をホモ接合に持つ系統の作出方法について説明する。
「アスカウェイブ」はFrs遺伝子ヘテロ接合体であり、罹病性品種との交配によって新たに作出される萎黄病抵抗性系統も全てFrs遺伝子ヘテロ接合体である。ホモ接合体は、ヘテロ接合体の自殖またはヘテロ接合体同士の交配あるいは半数体の倍加によって作出できる。
「アスカウェイブ」はFrs遺伝子ヘテロ接合体であり、罹病性品種との交配によって新たに作出される萎黄病抵抗性系統も全てFrs遺伝子ヘテロ接合体である。ホモ接合体は、ヘテロ接合体の自殖またはヘテロ接合体同士の交配あるいは半数体の倍加によって作出できる。
ここで、Frs遺伝子は完全優性遺伝子であることから、ヘテロ接合体の自殖またはヘテロ接合体同士を交配した場合、得られる実生群には萎黄病抵抗性植物と罹病性植物が混在する。それらの中からFrs遺伝子ホモ接合体を検出する方法は、次の2つがある。第1に、供試植物の自殖実生群において萎黄病抵抗性植物株の出現率(以下、「株の出現率」を単に「株率」ともいう)が 87.5%以上 100%以下であるもの、第2に、供試植物に罹病性品種を交配した一代雑種実生群において萎黄病抵抗性植物株の出現率が 75%以上 100%以下であるものである。
Frs遺伝子ホモ接合体の自殖後代は全てFrs遺伝子ホモ接合体になることから、一度ホモ接合体を検出すると、以後は、萎黄病抵抗性検定なしに自殖によって固定を進めることができる。その際、次に示す炭疽病抵抗性固定系統の育成方法を行うことによって、Frs遺伝子ホモ接合と炭疽病抵抗性遺伝子集積を兼ね備えた自殖固定系統(複合抵抗性固定系統)を作出することができる。
次に、炭疽病抵抗性固定系統の育成方法について説明する。
栄養繁殖として炭疽病抵抗性系統であっても、自殖後代では抵抗性強度が劣る系統が出現する。そこで、自殖実生群における炭疽病抵抗性植物の選抜とその選抜植物の自殖を交互に繰り返し炭疽病抵抗性固定系統を作出する。ここで、目標とする自殖実生の生存率は 50%以上である。
栄養繁殖として炭疽病抵抗性系統であっても、自殖後代では抵抗性強度が劣る系統が出現する。そこで、自殖実生群における炭疽病抵抗性植物の選抜とその選抜植物の自殖を交互に繰り返し炭疽病抵抗性固定系統を作出する。ここで、目標とする自殖実生の生存率は 50%以上である。
最後に、萎黄病・炭疽病複合抵抗性一代雑種品種(F1品種)の作出方法について説明する。
前述の方法によって、炭疽病抵抗性固定系統と複合抵抗性固定系統を複数作出する。それらの間で、片方あるいは両方の交配親が複合抵抗性固定系統になる組合せで複数の交配を行い、複数の一代雑種を作出する。各一代雑種において炭疽病抵抗性検定を行い、炭疽病抵抗性植物が高率で得られる一代雑種を選んで品種とする。当該品種を生み出す交配親系統は栄養繁殖によって維持する。
前述の方法によって、炭疽病抵抗性固定系統と複合抵抗性固定系統を複数作出する。それらの間で、片方あるいは両方の交配親が複合抵抗性固定系統になる組合せで複数の交配を行い、複数の一代雑種を作出する。各一代雑種において炭疽病抵抗性検定を行い、炭疽病抵抗性植物が高率で得られる一代雑種を選んで品種とする。当該品種を生み出す交配親系統は栄養繁殖によって維持する。
1.Frs遺伝子の発見
非特許文献5において、「アスカウェイブ」には萎黄病抵抗性主働遺伝子の存在が示唆された。そこで本発明では、関与する主働遺伝子の数を確定するため、抵抗性品種「アスカウェイブ」と罹病性品種「サンチーゴ」の交配後代で萎黄病抵抗性の遺伝様式を調べた。表1に「アスカウェイブ」と「サンチーゴ」の交配第1代実生群における抵抗性と罹病性の株数を、表2に交配第2代集団の萎黄病抵抗性株率によって階級分けした第1代系統数の分布を、また表3に表2の結果を基に解析した第1代系統の分離比を示す。なお、上記「アスカウェイブ」と「サンチーゴ」の交配は、それぞれの自殖、ならびに「アスカウェイブ」および「サンチーゴ」をそれぞれ花粉親と子房親とした正逆交配を行なったことを示す。
その結果、表1、表2および表3に示すとおり、イチゴ萎黄病抵抗性は一遺伝子座の完全優性遺伝子に支配されること、および、抵抗性品種「アスカウェイブ」は当該遺伝子をヘテロ接合で有することを見出した。このイチゴ萎黄病抵抗性に関する完全優性遺伝子を、Frs遺伝子と表すこととした。
非特許文献5において、「アスカウェイブ」には萎黄病抵抗性主働遺伝子の存在が示唆された。そこで本発明では、関与する主働遺伝子の数を確定するため、抵抗性品種「アスカウェイブ」と罹病性品種「サンチーゴ」の交配後代で萎黄病抵抗性の遺伝様式を調べた。表1に「アスカウェイブ」と「サンチーゴ」の交配第1代実生群における抵抗性と罹病性の株数を、表2に交配第2代集団の萎黄病抵抗性株率によって階級分けした第1代系統数の分布を、また表3に表2の結果を基に解析した第1代系統の分離比を示す。なお、上記「アスカウェイブ」と「サンチーゴ」の交配は、それぞれの自殖、ならびに「アスカウェイブ」および「サンチーゴ」をそれぞれ花粉親と子房親とした正逆交配を行なったことを示す。
その結果、表1、表2および表3に示すとおり、イチゴ萎黄病抵抗性は一遺伝子座の完全優性遺伝子に支配されること、および、抵抗性品種「アスカウェイブ」は当該遺伝子をヘテロ接合で有することを見出した。このイチゴ萎黄病抵抗性に関する完全優性遺伝子を、Frs遺伝子と表すこととした。
2.Frs遺伝子ホモ接合体の検出法
Frs遺伝子が一遺伝子座の完全優性遺伝子と見出されたことから、理論上、供試植物を自殖して得られる実生群の萎黄病抵抗性株率は、供試植物がホモ接合体であった場合は 100%、ヘテロ接合体であった場合は 75%になる。また、供試植物に罹病性品種を交配して得られる実生群の萎黄病抵抗性株率は、供試植物がホモ接合体であった場合は 100%、ヘテロ接合体であった場合は 50%になる。これを確認するため、表3に示した「アスカウェイブ」自殖第1代のうち、第2代の萎黄病抵抗性株率が 0%以上 37.5%未満、37.5%以上 87.5%未満、および 87.5以上 100%以下のものを3系統ずつ選んで、罹病性品種「サンチーゴ」と交配した。得られた実生群に萎黄病菌を接種して無病徴株率を求めた。その結果、表4のとおり、理論値に合致する値が得られた。
したがって、Frs遺伝子の接合状態が異なる植物が混在した中からホモ接合体の植物を選抜するには、次の2つの方法を用いることができる。第1に、供試植物の自殖実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 87.5%以上 100%以下であるもの、第2に、供試植物に罹病性品種を交配して得られた実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 75%以上 100%以下であるものである。この基準は、理論上の値を基に、それぞれの中間の値 87.5%と 75%を閾値とすることによって得られる。
Frs遺伝子が一遺伝子座の完全優性遺伝子と見出されたことから、理論上、供試植物を自殖して得られる実生群の萎黄病抵抗性株率は、供試植物がホモ接合体であった場合は 100%、ヘテロ接合体であった場合は 75%になる。また、供試植物に罹病性品種を交配して得られる実生群の萎黄病抵抗性株率は、供試植物がホモ接合体であった場合は 100%、ヘテロ接合体であった場合は 50%になる。これを確認するため、表3に示した「アスカウェイブ」自殖第1代のうち、第2代の萎黄病抵抗性株率が 0%以上 37.5%未満、37.5%以上 87.5%未満、および 87.5以上 100%以下のものを3系統ずつ選んで、罹病性品種「サンチーゴ」と交配した。得られた実生群に萎黄病菌を接種して無病徴株率を求めた。その結果、表4のとおり、理論値に合致する値が得られた。
したがって、Frs遺伝子の接合状態が異なる植物が混在した中からホモ接合体の植物を選抜するには、次の2つの方法を用いることができる。第1に、供試植物の自殖実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 87.5%以上 100%以下であるもの、第2に、供試植物に罹病性品種を交配して得られた実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 75%以上 100%以下であるものである。この基準は、理論上の値を基に、それぞれの中間の値 87.5%と 75%を閾値とすることによって得られる。
3.Frs遺伝子を持つ既存栄養繁殖型品種について
非特許文献5において、26品種中で萎黄病を発病しないのは3品種「芳玉」、「アスカウェイブ」および「アイストロ」だけであった。本発明では、これら3品種ならびに罹病性品種「宝交早生」、「サンチーゴ」および「とちおとめ」を用いて交配実験を行った。Frs遺伝子は一遺伝子座の完全優性遺伝子であるから、表5に示した抵抗性株率は、「アイストロ」はFrs遺伝子を有していないことを、「芳玉」と「アスカウェイブ」はヘテロ接合を有していることを示している。また、「芳玉」と「アスカウェイブ」は炭疽病罹病性である。したがって、既存26品種の中にFrs遺伝子をホモ接合に持つ品種は存在せず、また、Frs遺伝子を持ち炭疽病抵抗性遺伝子が集積した品種も存在しない。
非特許文献5において、26品種中で萎黄病を発病しないのは3品種「芳玉」、「アスカウェイブ」および「アイストロ」だけであった。本発明では、これら3品種ならびに罹病性品種「宝交早生」、「サンチーゴ」および「とちおとめ」を用いて交配実験を行った。Frs遺伝子は一遺伝子座の完全優性遺伝子であるから、表5に示した抵抗性株率は、「アイストロ」はFrs遺伝子を有していないことを、「芳玉」と「アスカウェイブ」はヘテロ接合を有していることを示している。また、「芳玉」と「アスカウェイブ」は炭疽病罹病性である。したがって、既存26品種の中にFrs遺伝子をホモ接合に持つ品種は存在せず、また、Frs遺伝子を持ち炭疽病抵抗性遺伝子が集積した品種も存在しない。
4.炭疽病抵抗性遺伝子の集積
炭疽病抵抗性の栄養繁殖系統「三系17」と「三系19」を用いて、自殖第2代まで炭疽病菌接種後の生存株率を調べた。なお、「三系17」および「三系19」は、「愛ベリー」、「とよのか」「女峰」および「宝交早生」を最初の育種素材とし、さらに、育種素材として「章姫」、「あかしゃのみつこ」および「とちおとめ」を加えながら、非特許文献1の「病害抵抗性選抜を組み込んだ育種体系」によって9世代に亘って相互に交配を繰り返して作出した炭疽病抵抗性栄養繁殖系統群の中から、新品種候補として栄養系選抜された系統である。その結果、表6に示すとおり、自殖第1代の生存株率は「三系17」で 75.4%、「三系19」で 90.5%であったが、自殖第2代では、「三系17」で 27.3%、「三系19」で 66.7%まで低下する系統が現れた。したがって、炭疽病抵抗性固定系統を得るには、抵抗性検定による個体選抜あるいは系統選抜を行いながら自殖固定を進める必要がある。ここで、抵抗性の系統選抜が有効であることは、自殖第1代の生存株率が高い「三系19」が、「三系17」よりも、第2代で抵抗性系統が高率で得られていることから類推できる。
あるいは、自殖固定を進めておいてから炭疽病抵抗性系統選抜を行うことも可能である。
炭疽病抵抗性の栄養繁殖系統「三系17」と「三系19」を用いて、自殖第2代まで炭疽病菌接種後の生存株率を調べた。なお、「三系17」および「三系19」は、「愛ベリー」、「とよのか」「女峰」および「宝交早生」を最初の育種素材とし、さらに、育種素材として「章姫」、「あかしゃのみつこ」および「とちおとめ」を加えながら、非特許文献1の「病害抵抗性選抜を組み込んだ育種体系」によって9世代に亘って相互に交配を繰り返して作出した炭疽病抵抗性栄養繁殖系統群の中から、新品種候補として栄養系選抜された系統である。その結果、表6に示すとおり、自殖第1代の生存株率は「三系17」で 75.4%、「三系19」で 90.5%であったが、自殖第2代では、「三系17」で 27.3%、「三系19」で 66.7%まで低下する系統が現れた。したがって、炭疽病抵抗性固定系統を得るには、抵抗性検定による個体選抜あるいは系統選抜を行いながら自殖固定を進める必要がある。ここで、抵抗性の系統選抜が有効であることは、自殖第1代の生存株率が高い「三系19」が、「三系17」よりも、第2代で抵抗性系統が高率で得られていることから類推できる。
あるいは、自殖固定を進めておいてから炭疽病抵抗性系統選抜を行うことも可能である。
5.目標とする炭疽病抵抗性遺伝子の集積程度
既存品種18種と発明者らが育成した炭疽病抵抗性栄養繁殖系統22種、合計40種の品種・系統を用いて116組の交配を行い、また、交配親品種・系統はそれぞれ自殖を行った。それぞれの実生群において炭疽病菌を接種し生存株率を求めた。
なお、既存品種18種は、「アイストロ」、「章姫」、「アスカウェイブ」、「あまおう」、「さがほのか」、「さちのか」、「さぬき姫」、「サンチーゴ」、「いちご中間母本農2号」、「デコルージュ」、「とちおとめ」、「とよのか」、「ひのしずく」、「紅ほっぺ」、「美濃娘」、「もういっこ」、「やよいひめ」および「ゆめのか」を、炭疽病抵抗性栄養繁殖系統22種は、「三系17」および「三系19」と同様に作出した系統群の中から任意に選んだ栄養繁殖系統を用いた。
その結果、交配親品種・系統の自殖実生群の生存株率は 0 から 100%まで分布した。また、交配親両親の自殖実生群生存株率平均値と各一代雑種の実生群生存株率の間に、相関係数 0.89 の有意な相関が認められた。そこで、炭疽病菌接種後の生存株率が 90%以上の一代雑種について、その交配親の自殖実生群生存株率をチェックしたところ、最も小さい親の値は 54.1%で、両親の平均値としては最低 73.4%であった(表7参照)。このことから、自殖実生群の生存株率が 50%ある系統は、それが 90%以上の系統と交配することによって、炭疽病菌を接種しても 90%以上の植物が生存する炭疽病抵抗性一代雑種品種を作出できる可能性がある。したがって、炭疽病抵抗性固定系統における抵抗性遺伝子集積の目標値を、その自殖実生群の生存株率 50%以上と定めることができる。
既存品種18種と発明者らが育成した炭疽病抵抗性栄養繁殖系統22種、合計40種の品種・系統を用いて116組の交配を行い、また、交配親品種・系統はそれぞれ自殖を行った。それぞれの実生群において炭疽病菌を接種し生存株率を求めた。
なお、既存品種18種は、「アイストロ」、「章姫」、「アスカウェイブ」、「あまおう」、「さがほのか」、「さちのか」、「さぬき姫」、「サンチーゴ」、「いちご中間母本農2号」、「デコルージュ」、「とちおとめ」、「とよのか」、「ひのしずく」、「紅ほっぺ」、「美濃娘」、「もういっこ」、「やよいひめ」および「ゆめのか」を、炭疽病抵抗性栄養繁殖系統22種は、「三系17」および「三系19」と同様に作出した系統群の中から任意に選んだ栄養繁殖系統を用いた。
その結果、交配親品種・系統の自殖実生群の生存株率は 0 から 100%まで分布した。また、交配親両親の自殖実生群生存株率平均値と各一代雑種の実生群生存株率の間に、相関係数 0.89 の有意な相関が認められた。そこで、炭疽病菌接種後の生存株率が 90%以上の一代雑種について、その交配親の自殖実生群生存株率をチェックしたところ、最も小さい親の値は 54.1%で、両親の平均値としては最低 73.4%であった(表7参照)。このことから、自殖実生群の生存株率が 50%ある系統は、それが 90%以上の系統と交配することによって、炭疽病菌を接種しても 90%以上の植物が生存する炭疽病抵抗性一代雑種品種を作出できる可能性がある。したがって、炭疽病抵抗性固定系統における抵抗性遺伝子集積の目標値を、その自殖実生群の生存株率 50%以上と定めることができる。
6.萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性の遺伝相関確認と複合抵抗性植物の作出
Frs遺伝子ヘテロ接合で炭疽病罹病性の「アスカウェイブ」と萎黄病罹病性で炭疽病抵抗性の「サンチーゴ」を交配し、F1植物140個体を得た。各F1植物体単位で萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性をそれぞれ検定したところ、萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性の間に遺伝相関はみられなかった。そのため、萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性の両者を併せ持つ各F1植物体が27個体得られた。
Frs遺伝子ヘテロ接合で炭疽病罹病性の「アスカウェイブ」と萎黄病罹病性で炭疽病抵抗性の「サンチーゴ」を交配し、F1植物140個体を得た。各F1植物体単位で萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性をそれぞれ検定したところ、萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性の間に遺伝相関はみられなかった。そのため、萎黄病抵抗性と炭疽病抵抗性の両者を併せ持つ各F1植物体が27個体得られた。
7.多様な萎黄病・炭疽病複合病害抵抗性栄養繁殖系統の育成
炭疽病抵抗性母本として発明者らが育成した様々な栄養繁殖系統を用い、「アスカウェイブ」からFrs遺伝子の導入を試みた。例えば図2に示すとおり、萎黄病罹病性で炭疽病抵抗性の栄養繁殖系統9701701と「アスカウェイブ」を交配し、得られたF1植物群において「炭疽病胞子懸濁液の噴霧接種による実生幼苗選抜法」(非特許文献1)を実施して複数の生存株を得た。当該生存株の中から後代実生検定(非特許文献2)によって萎黄病抵抗性系統を選抜し9902801とした。続いて、9902801に別の萎黄病罹病性・炭疽病抵抗性栄養繁殖系統9701902を交配し、同様に選抜して、炭疽病・萎黄病複合抵抗性系統0005202を得た。さらに、0005202と別の萎黄病罹病性・炭疽病抵抗性栄養繁殖系統0020301の交配から、食味が良く早生で多収性の炭疽病・萎黄病複合抵抗性系統0212921を育成した。
これに準じた交配と選抜によって、表8に示した、合計9種の炭疽病・萎黄病複合抵抗性栄養繁殖系統を作出した。
なお、栄養繁殖系統9701701と9701902は、「愛ベリー」、「女峰」および「宝交早生」を育種素材とし、非特許文献1の「病害抵抗性選抜を組み込んだ育種体系」によって5世代に亘って相互に交配を繰り返して作出した炭疽病抵抗性栄養繁殖系統群から選んだ系統で、0020301は、「愛ベリー」、「とよのか」「女峰」および「宝交早生」を最初の育種素材とし、さらに、育種素材として「章姫」を加えながら、非特許文献1の「病害抵抗性選抜を組み込んだ育種体系」によって8世代に亘って相互に交配を繰り返して作出した炭疽病抵抗性栄養繁殖系統群の中から、新品種候補として栄養系選抜された系統である。
炭疽病抵抗性母本として発明者らが育成した様々な栄養繁殖系統を用い、「アスカウェイブ」からFrs遺伝子の導入を試みた。例えば図2に示すとおり、萎黄病罹病性で炭疽病抵抗性の栄養繁殖系統9701701と「アスカウェイブ」を交配し、得られたF1植物群において「炭疽病胞子懸濁液の噴霧接種による実生幼苗選抜法」(非特許文献1)を実施して複数の生存株を得た。当該生存株の中から後代実生検定(非特許文献2)によって萎黄病抵抗性系統を選抜し9902801とした。続いて、9902801に別の萎黄病罹病性・炭疽病抵抗性栄養繁殖系統9701902を交配し、同様に選抜して、炭疽病・萎黄病複合抵抗性系統0005202を得た。さらに、0005202と別の萎黄病罹病性・炭疽病抵抗性栄養繁殖系統0020301の交配から、食味が良く早生で多収性の炭疽病・萎黄病複合抵抗性系統0212921を育成した。
これに準じた交配と選抜によって、表8に示した、合計9種の炭疽病・萎黄病複合抵抗性栄養繁殖系統を作出した。
なお、栄養繁殖系統9701701と9701902は、「愛ベリー」、「女峰」および「宝交早生」を育種素材とし、非特許文献1の「病害抵抗性選抜を組み込んだ育種体系」によって5世代に亘って相互に交配を繰り返して作出した炭疽病抵抗性栄養繁殖系統群から選んだ系統で、0020301は、「愛ベリー」、「とよのか」「女峰」および「宝交早生」を最初の育種素材とし、さらに、育種素材として「章姫」を加えながら、非特許文献1の「病害抵抗性選抜を組み込んだ育種体系」によって8世代に亘って相互に交配を繰り返して作出した炭疽病抵抗性栄養繁殖系統群の中から、新品種候補として栄養系選抜された系統である。
8.複合抵抗性固定系統の作出
表8に示した9種の炭疽病・萎黄病複合抵抗性栄養繁殖系統は、いずれもFrs遺伝子ヘテロ接合体である。0212921を代表として説明すると、自殖第1代の実生群における萎黄病抵抗性株率は 76.9%であった。前述「2.Frs遺伝子ホモ接合体の検出法」のとおり、自殖第2代で各実生群の萎黄病抵抗性株率を調べ、その値が 87.5%以上になる実生群を選んで、各植物の自殖第3代を得る。これらの実生群の自殖親にあたる第1代はホモ接合体であるため、第2代以降の自殖後代は全てホモ接合体になると予想される。
0212921の自殖第1代実生群における炭疽病抵抗性株率は 92.7%であった。この値は、表6に示した「三系19」よりも高い値であり、自殖第2代で実生群の抵抗性株率 50%以上の系統が多数得られると考えられる。したがって、病害抵抗性に限定すると、現在自殖中の169系統のうち、その 25%に当たる42系統程度が、自殖第2代で既に複合抵抗性固定系統になると予測できる。
表8に示した9種の炭疽病・萎黄病複合抵抗性栄養繁殖系統は、いずれもFrs遺伝子ヘテロ接合体である。0212921を代表として説明すると、自殖第1代の実生群における萎黄病抵抗性株率は 76.9%であった。前述「2.Frs遺伝子ホモ接合体の検出法」のとおり、自殖第2代で各実生群の萎黄病抵抗性株率を調べ、その値が 87.5%以上になる実生群を選んで、各植物の自殖第3代を得る。これらの実生群の自殖親にあたる第1代はホモ接合体であるため、第2代以降の自殖後代は全てホモ接合体になると予想される。
0212921の自殖第1代実生群における炭疽病抵抗性株率は 92.7%であった。この値は、表6に示した「三系19」よりも高い値であり、自殖第2代で実生群の抵抗性株率 50%以上の系統が多数得られると考えられる。したがって、病害抵抗性に限定すると、現在自殖中の169系統のうち、その 25%に当たる42系統程度が、自殖第2代で既に複合抵抗性固定系統になると予測できる。
9.複合抵抗性一代雑種品種の作出
一方の親に複合抵抗性固定系統を用い、もう一方の親に炭疽病抵抗性固定系統を用いて交配すると、得られる一代雑種系統は全て萎黄病抵抗性を持つ。これは表4によって類推することができる。炭疽病抵抗性については、表6で類推されるとおり、高度の抵抗性を持つ系統が出現するものの変異が生じる。そこで、各一代雑種系統の炭疽病抵抗性検定を行い、高い炭疽病抵抗性を有する系統を選んで複合抵抗性一代雑種品種とすることができる。
当該一代雑種品種の作出に必要な交配親は栄養繁殖で維持することができる。
一方の親に複合抵抗性固定系統を用い、もう一方の親に炭疽病抵抗性固定系統を用いて交配すると、得られる一代雑種系統は全て萎黄病抵抗性を持つ。これは表4によって類推することができる。炭疽病抵抗性については、表6で類推されるとおり、高度の抵抗性を持つ系統が出現するものの変異が生じる。そこで、各一代雑種系統の炭疽病抵抗性検定を行い、高い炭疽病抵抗性を有する系統を選んで複合抵抗性一代雑種品種とすることができる。
当該一代雑種品種の作出に必要な交配親は栄養繁殖で維持することができる。
本発明の一代雑種育種法は、萎黄病抵抗性、炭疽病抵抗性あるいは両方の抵抗性を有するイチゴの種子繁殖型の一代雑種品種を得ることができるので、イチゴ生産に用いる種子繁殖型品種を作出する方法として好適に利用できる。
F Frs遺伝子(萎黄病抵抗性完全優性遺伝子)
f Frs遺伝子の対立遺伝子
RF 萎黄病抵抗性
RC 炭疽病抵抗性
f Frs遺伝子の対立遺伝子
RF 萎黄病抵抗性
RC 炭疽病抵抗性
Claims (5)
- 萎黄病抵抗性、炭疽病抵抗性、または萎黄病・炭疽病複合抵抗性を有する種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法であって、
少なくとも一方の親を「アスカウェイブ」または「芳玉」から導入した萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統として、および/または両親ともに炭疽病抵抗性を有する系統として、交配することを特徴とする病害抵抗性種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法。 - 前記少なくとも一方の親が「アスカウェイブ」または「芳玉」から導入した萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統として、および両親が炭疽病抵抗性を有する系統として、交配することを特徴とする請求項1記載の病害抵抗性種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法。
- 前記萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統は、萎黄病抵抗性を有する自殖実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 87.5%以上 100%以下である系統より得られたものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の病害抵抗性種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法。
- 前記萎黄病抵抗性完全優性遺伝子をホモ接合に持つ系統は、当該系統を自殖した場合に、その実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 87.5%以上 100%以下であるもの、または、当該系統に萎黄病罹病性品種を交配した場合に、その実生群において萎黄病抵抗性株の出現率が 75%以上 100%以下であることによって識別されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の病害抵抗性種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法。
- 前記炭疽病抵抗性を有する系統は、炭疽病抵抗性株の出現率が 50%以上 100%以下に固定した系統であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の病害抵抗性種子繁殖型イチゴ品種の一代雑種育種法。
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KR101515542B1 (ko) | 2012-06-07 | 2015-04-27 | 담양군 | 신품종 딸기 죽향 및 이의 육종 방법 |
KR101556656B1 (ko) | 2012-06-07 | 2015-10-01 | 담양군 | 신품종 딸기 담향 및 이의 육종 방법 |
US10982292B2 (en) | 2013-09-09 | 2021-04-20 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Marker associated with anthracnose resistance in plant of the genus Fragaria and use thereof |
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- 2008-02-07 JP JP2008027473A patent/JP2009183224A/ja active Pending
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