JP2009171883A - ポリヒドロキシアルカノエートおよびポリヒドロキシアルカノエートの製造方法 - Google Patents

ポリヒドロキシアルカノエートおよびポリヒドロキシアルカノエートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 寒冷地においても流動性を失うことなく粘接着性を有し、接着剤やバインダー等に利用することができるポリヒドロキシアルカノエート、およびバイオディーゼル燃料の副産物を有効利用して該ポリヒドロキシアルカノエートを工業生産に適応して生産する製造方法を提供する。
【解決手段】 3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシドデカノエートからなる群から選択される少なくとも一つをモノマーユニットとしてなり、ガラス転移温度が−48℃以下である。
【選択図】 図6

Description

本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)およびPHAの製造方法に関し、特に3−ヒドロキシブチレート(3HB)をモノマーユニットとして含まず、ガラス転移温度(Tg)が−48℃以下であるPHA、およびバイオディーゼル燃料の副産物を炭素源に利用してPHAを製造する方法に関する。
生分解性ポリエステルは、現在までに数多くの微生物において、糖や植物油等の再生可能な生物有機資源(バイオマス)を原料として生成され、微生物の体内に蓄積されることが知られている。その中でも、PHAは化学合成プラスチックと同様に熱可塑性を示し、優れた生分解性と生体適合性を有することから注目を集めているポリエステルであり、ポリマー中において90種類以上のモノマー構造が確認されている。
このように微生物によって生産される代表的なPHAとして、3HBをモノマーユニットとしたものが挙げられるが、3HBをモノマーユニットとしたPHA{P(3HB)}は結晶性が高く、硬くてかつ脆い性質を持っており、実用性に乏しいとされている。このような問題を解決するため、PHAの性質を改善する様々な試みがなされている。
特に、3HB以外のモノマーユニットからなるPHAは、PHAを生産する微生物の種類や培地組成、培養条件等を変えたり、微生物を新規に分離したり、または遺伝子組換え技術を用いて形質転換した微生物を用いる等によって製造が実現されている。
例えば、特表平4−504205号公報には、シュードモナス・フルオレッセンスrRNA分枝の細菌を所定の栄養培地中で培養することにより、6〜10の炭素原子を有する繰返し単位から構成されるPHAを製造する方法が開示されている(特許文献1)。
特開平7−031490号公報には、新規に分離したシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)31−1株により、モノマーユニットである3−ヒドロキシヘキサノエート(3HHx)、3−ヒドロキシオクタノエート(3HO)、3−ヒドロキシデカノエート(3HD)、または3−ヒドロキシドデカノエート(3HDD)からなる共重合体を産生することが開示されている。そして、その共重合体の数平均分子量は110,000〜290,000、ガラス転移温度は−44℃〜−34℃であることが開示されている(特許文献2)。
特開2001−178484号公報には、新規に分離したシュードモナス・チコリアイH45株を、酢酸ナトリウムを単一炭素源として含む培地中で培養することにより、炭素数6(以下、「C6」のように示す。)、C8、C10、C12、C14のモノマーユニットを少なくとも一種類含むPHAを製造する方法が開示されている(特許文献3)。
特開2004−321167号公報には、所定の形質転換微生物を、C6からC10を炭素源として含む培地で培養することにより、C6からC10のモノマーユニットから構成されたPHAを生産する方法が開示されている(特許文献4)。
一方、バイオ燃料についても、環境保全への推進の高まりから利用促進に向けた施策が急速に進展しており、菜種油や廃食用油等から生成されるバイオディーゼル燃料(BDF)は軽油代替として注目されている。BDF製造時には副産物(BDFB)が約20%排出されるが、そのほとんどが産業廃棄物として処分されているため、近年、BDFBの有効利用方法が検討されている。
例えば、特開2006−180782号公報には、微生物による発酵技術によってBDFBから水素およびエタノールを製造することが報告されている(特許文献5)。
他方、微生物によるPHAの発酵合成は、炭素源以外の栄養源である窒素源や無機塩類等を欠乏させて微生物の増殖を制限した場合に促進されることから、従来は、微生物を増殖させる一段階目と、PHAを蓄積させる二段階目とからなる二段階培養法が採用されている。
二段階培養法の一段階目は、栄養豊富な培地で微生物を培養し増殖させることを目的としているため、資化可能な炭素源を自由に選択することができる。また、二段階目は、一段階目で得られた微生物を洗浄回収し、炭素源以外の栄養源の制限下において新たに炭素源を加えたミネラル培地により微生物を培養し、PHAの生産を誘導するものである。
これに対し一段階培養法は、窒素源と炭素源とを加えた栄養豊富な培地中において、微生物の増殖とPHAの蓄積とを同時に行わせることによりPHAを発酵合成する方法である。この一段階培養法においてもPHAを生産することはできるが、従来、二段階培養法に比べて生産量が非常に少ないという問題がある。
例えば、前記特許文献2には、炭素源としてオクタン酸ナトリウムを与えた一段階の培養により、3HHxと3HOとをモノマーユニットとする共重合体を生産することが開示されている。また、特開2002−253285には、炭素化合物と天然培地成分とを加えた無機培地に所定のアルカン酸を添加したものを用いて培養することにより、一段階でPHAを製造する方法が開示されている(特許文献6)。
特表平4−504205号公報 特開平7−031490号公報 特開2001−178484号公報 特開2004−321167号公報 特開2006−180782号公報 特開2002−253285号公報
しかしながら、特許文献1から5に記載された発明においては、製造されたPHAのTgは高温であり、数平均分子量や重量平均分子量も異なっている。ここで、PHAを構成するモノマーユニットの種類が同じであっても、モノマーユニットの構成比や分子量が相違することにより、ガラス転移温度や粘度、接着性等が異なるといった全く違う特性を有するPHAとなる。例えば、バイオポールD400G(モンサント社製)とバイオポールD600G(モンサント社製)はポリヒドロキシブチレート/バリレート共重合体であって、構成するモノマーユニットは同じであっても、ガラス転移温度はそれぞれ5℃と−10℃であり、15℃もの差がある。さらに、特許文献2においては、製造されたPHAのモノマーユニットの構成比およびガラス転移温度が数℃違うことにより、ゴム状や油状といった異質な性状を有することが示されている。
また、BDFBの有効な利用方法は開発されはじめたところであり、現在は水素やエタノール、1,3−プロパンジオールを生産するために利用されているにとどまり、他の物質を製造するために有効利用された報告はない。
さらに、前記二段階培養法によるPHAの製造は、前記一段階培養法に比べて多くの設備を設ける必要があり、それに伴って作業工程が煩雑となり、余分な手間と時間を要するため、工業的な生産には適さない。また、特許文献2に記載された発明のような従来の一段階培養法によるPHAの製造法においては、二段階培養に比べて生産量が少なく、半分程度の生産量にまでなってしまうといった問題があった。さらに、特許文献6に記載された発明においては、一段階培養法によりPHA生産されているが、炭素源化合物と高価な酵母エキスの添加が必要となるといった問題点があった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、3HBを含むことなくTgが−48℃以下のPHAであって、高価な酵母エキス等を添加する必要もなくBDFBを炭素源として有効利用して微生物にPHAを生産させることができ、かつ、生産させたPHAの分離回収が簡便であり、通常二段階培養が必要な微生物を用いても、一の培養装置内での一段階の培養において効率的にPHA生産が可能であるPHAおよびPHAを製造する方法を提供することを目的としている。
本発明に係るポリヒドロキシアルカノエートの特徴は、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシドデカノエートからなる群から選択される少なくとも一つをモノマーユニットとしてなるポリヒドロキシアルカノエートであって、かつガラス転移温度が−48℃以下である点にある。
また、本発明において、前記3−ヒドロキシオクタノエートの組成率と前記3−ヒドロキシデカノエートの組成率との合計が70%以上であることが好ましい。
そして、本発明において、−5℃以上45℃以下における粘度が1.0×10mPa/s以上1.2×10mPa/s以下であって、温度の上昇に伴って前記粘度が低下することが好ましい。
さらに、本発明において、分子量分布が1から2であることが好ましい。
一方、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエートの製造方法の特徴は、油脂をエステル交換反応することにより得られたバイオディーゼル燃料の副産物を炭素源として微生物発酵法により製造する点にある。
また、本発明に係るポリヒドロキシアルカノエートの製造方法の別の特徴は、油脂をエステル交換反応することにより得られたバイオディーゼル燃料の副産物を中和した中和副産物を炭素源として微生物発酵法により製造する点にある。
また、本発明において、前記微生物発酵法における培養が前記バイオディーゼル燃料の副産物または前記中和副産物を培地に用いた一段階の培養であることが好ましい。
そして、本発明においては、第1組成のモノマーユニットが3ーヒドロキシオクタノエートであって第2組成のモノマーユニットが3−ヒドロキシデカノエートであるポリヒドロキシアルカノエート、または第1組成のモノマーユニットが3ーヒドロキシデカノエートであって第2組成のモノマーユニットが3−ヒドロキシオクタノエートであるポリヒドロキシアルカノエートを、培養時間を制御することにより選択的に製造することが可能である。
また、本発明において、前記微生物発酵法における微生物がラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)またはポリヒドロキシアルカノエート生成組換え大腸菌であることが好ましい。
さらに、本発明において、前記微生物発酵法における微生物としてシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)を用いることにより3−ヒドロキシブチレートをモノマーユニットとして含まないポリヒドロキシアルカノエートを製造することが好ましい。
また、本発明において、前記微生物発酵法における培養が流加培養法または連続培養法により行われることが好ましい。
本発明によれば、これまで産業廃棄物として処理されていたBDFBを有効利用して、工業生産に適応した生産方法によって簡便かつ効果的にPHAを得ることができる。そして、得られたPHAは3HBを含むことなくTgが−48℃以下であることから、寒冷地においても流動性を失うことなく粘接着性を有し、接着剤やバインダー樹脂等に利用することができる。また、培養時間を適宜選択することによって、PHAの組成比率を調節することができるため、利用目的に応じて所望の性質を有するPHAを製造することができる。
以下、本発明に係るPHAおよびPHAの製造方法について、本実施形態におけるPHAおよびPHAの製造方法に基づき説明する。
まず、本発明に係るPHAについて説明する。本発明に係るPHAは、3HHx、3HO、3HD、3HDDからなる群から選択される少なくとも一つをモノマーユニットとしてなる。すなわち、本発明におけるモノマーユニットは、3HHx、3HO、3HD、3HDDの4種のモノマーユニット中から選ばれる1つないし4つであり、前記4種のモノマーユニット以外のモノマーユニットは含まれない。ただし、PHA全体として「3HHx、3HO、3HD、3HDDからなる群から選択される少なくとも一つをモノマーユニットとしてなる」場合の他、「3HHx、3HO、3HD、3HHDからなる群から選択される少なくとも一つをモノマーユニットとしてなる」PHAを一部に有するPHAも含まれる。なお、本実施形態におけるPHAは、図3、図4、図5、または図6に示すとおり、3HHxと3HOと3HDと3HDDとからなっている。
ここで、本発明において、「モノマーユニットとしてなる」とは、選ばれたモノマーユニットすべてが前記PHAを構成する場合の他、前記PHAを構成しなくとも、例えば前記PHAの鎖に絡み付く等してモノマーとして残存するような場合も含む趣旨である。
また、本発明に係るPHAは、ガラス転移温度(Tg)が−48℃以下である。ここで、Tgとは、高温では液体であるガラス等の物質が温度の降下により、ある温度範囲で急激にその粘度を増し、ほとんど流動性を失って非結質固体となる温度をいう。ガラス転移温度よりも高温では、網状構造をなす鎖状高分子の各部分の熱運動が激しく、ゴム状弾性を示すが、ガラス転移温度以下では熱運動が自由体積の減少によって抑制されて硬くなる。
なお、本実施形態におけるPHAのTgは、PHAを生成する微生物の炭素源により異なっており、図7に示すとおり、精製グリセリンを炭素源とした場合は−48.6℃ないし−57.3℃、油脂をエステル交換反応することにより得られたバイオディーゼル燃料の副産物(BDFB)を炭素源とした場合は−51.7℃ないし−60.9℃、BDFBを中和した中和副産物(中和BDFB)を炭素源とした場合は−49.0℃ないし−57.7℃である。
また、本発明に係るPHAは、3HHx、3HO、3HD、3HDDからなる群から選択される少なくとも一つをモノマーユニットとしていれば、その組成率は特に限定されないが、本実施形態におけるPHAは、図3、図4、図5、または図6に示すとおり、モノマーユニットのうち3HOの組成率と3HDの組成比率との合計が70%以上である。また、本実施形態におけるPHAの分子量分布は、図3または図7の示すように、物性面の観点からも、好ましくは1から2であり、より好ましくは1.5から2であり、さらに好ましくは1.7から2である。
また、本発明に係るPHAの粘度は、温度依存的に粘性が変化し、特に温度の上昇に伴って粘性が低下する性質を有することが好ましい。本実施形態におけるPHAは、図9または図10に示すとおり、−5℃以上45℃以下における粘度が約1.0×10mPa/s以上約1.2×10mPa/s以下であって、温度の上昇に伴って粘度が低下するという性質を有している。すなわち、本発明に係るPHAは温度依存的に粘性が変化するため、加工等が容易であり、例えば接着剤やバインダー樹脂等に利用することが可能である。
次に、本発明に係るPHAの製造方法について説明する。本発明に係るPHAの製造方法は、精製グリセリンの他、油脂をエステル交換反応することにより得られたバイオディーゼル燃料の副産物(BDFB)やBDFBを中和した中和副産物(中和BDFB)を炭素源とした、微生物発酵法による製造方法である。特に、環境保全やコスト、工業生産への適応性等の観点から、BDFBや中和BDFBを炭素源とした微生物発酵法による製造方法が好ましい。
ここで、BDFBについて詳説する。BDFBとは、バイオディーゼル燃料(BDF)を生成する際に副産物として生成するものであり、本実施形態において用いるBDFBは、図1に示すように主な組成としてグリセリンや脂肪酸を含んでいる。本発明に係るPHAの製造方法において用いられるBDFBは油脂からBDFを生成する際に副産物として生成するものであればこれに限られず、例えば、他の食品由来の有機性不純物や灰分、ミネラル等、他の組成を有していてもよい。
また、BDFは、菜種油や廃食用油等の油脂にメタノールと水酸化カリウム等のアルカリ触媒とを加え、アルコリシスさせてエステル交換反応を起こすことにより一般的に得られるものであるが、BDFBはこれと同時に得られるものである。そのため、BDFBはアルカリ性を有している。そこで、PHAの製造に際しては、前記BDFBを炭素源として微生物発酵法により製造するほか、中和BDFBを炭素源として製造することもできる。
なお、本実施形態においては、図7または図8に示すとおり、精製グリセリンを炭素源とした場合には、室温(約40℃付近まで)で固形のPHAを製造することができ、BDFBまたは中和BDFBを炭素源とした場合には、室温で流動性を有するPHAを製造することができる。
また、本発明に係るPHAの製造方法においては、精製グリセリンやBDFB、中和BDFBをそのまま唯一の炭素源として用いてもよく、また精製グリセリンやBDFB、中和BDFBに脂肪酸、糖等を炭素源を添加して用いてもよい。
また、本発明に係るPHAの製造方法においては、精製グリセリンやBDFB、中和BDFBを炭素源として培地に用いることにより、微生物を培養してPHAを生産することができる方法であれば、一段階培養や二段階培養のみならず、より多くの段階(ステップ)を経る培養を採用してもよい。なお、前記二段階培養は、培地中の制限したい窒素源や無機塩類等が微生物の増殖により消費され欠乏するように調製した培地を用いることにより、一の培養装置内にて行うことも可能である。よって、本発明に係る一段階培養とは、一の培養段階でPHAを発酵合成する培養であり、窒素源と炭素源とを加えた栄養豊富な培地中において微生物の増殖とPHAの蓄積とを同時に行わせることによりPHAを発酵合成する方法のみならず、前述のように培地中の制限したい窒素源や無機塩類等が微生物の増殖により消費され欠乏するように調製した培地を用いることにより、一の培養装置内にて行う培養も含まれる。
例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)は、通常PHAを生産するのに二段階培養が必要な微生物であるが、BDFBまたは中和BDFBを炭素源とすることで、生産量の低下を示すことなく、一段階培養により3HBをモノマーユニットとして含まないPHAを生産することができる。このように、一段階培養が可能になることにより、作業工程や必要な装置を軽減することができることから、本発明に係るPHAの製造方法は工業生産に適用しているといえる。
また、本発明に係るPHAの製造方法においては、培養時間を制御することにより2種類の組成比率を有するPHAを選択して製造することができる。つまり、培養時間を一定時間より短く設定することにより、3HOが第1組成のモノマーユニットであって、3HDが第2組成のモノマーユニットであるPHAを製造することができ、培養時間を一定時間より長く設定すれば、3HDが第1組成のモノマーユニットであって、3HOが第2組成のモノマーユニットであるPHAを製造することができる。前記2種類のPHAは、組成比率が相違することから、粘度や接着性、剪断特性等の異なる性質を有するPHAとなり、利用方法に応じて目的の性質のPHAを選択して製造することが可能である。
さらに、本発明に係るPHAの製造方法においては、精製グリセリンやBDFB、中和BDFBを炭素源としてPHAを生産できる微生物であれば特に限定されないが、本実施形態においては、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)やシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)、アロクロマチウム・ヴィノッサム(Allochromatium vinosum)、ズーグレア・ラミゼア(Zoogloea ramigera)、パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)、Rhisobium meliloti、アシネトバクター属(Acinetobacter sp.)、アルカリゲネスレータス(Alcaligenes latus)、Thiocystis violacea、Thiocapsa phennigii、Synechocystis sp. PCC6803、シュードモナス エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)等のPHA天然生産微生物の他、遺伝子組換え技術によりPHAの生産能を人工的に付与した組換え微生物等が用いられている。
例えば、PHAの生産量を向上をさせたい場合は、窒素制限条件下で培養することによってPHA生成が誘導される微生物が好ましく、本実施形態において用いられているラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)やシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)の他、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)等が用いられることが好ましい。一方、3HBをモノマーユニットとして含まないPHAを製造させたい場合は、シュードモナス属に属する微生物が好ましく、例えば本実施形態において用いられているシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)や所望の形質転換されたPHA生成組み換え微生物が用いられることが好ましい。本実施形態においては、PHA含有量および生成量の点から、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)が好ましい態様として用いられている。
また、本発明に係るPHAの製造方法においては、PHAの生成能を有する組換え微生物であれば導入する酵素遺伝子や遺伝子の由来、宿主は特に限定されない。例えば、導入することができる酵素遺伝子としては、PHA生成細菌由来PHA生成酵素遺伝子や人工的に作成されたヒドロキシアルカノイルCoA重合能を有するたんぱく質をコードするDNA等とモノマー供給関連酵素遺伝子(アセトアセチルCoAレダクターゼ遺伝子、β−ケトチオラーゼ、トランスフェラーゼ、ヒドラターゼ等)を挙げることができ、宿主としては大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、巨大菌(Bacillus megateriumu)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)等を挙げることができる。
なお、本実施形態のPHA製造方法においては、一般的に汎用されているラルストニア・ユートロファ由来のPHAを生成する酵素をコードする遺伝子である、NADPH−アセトアセチルCoAレダクターゼ遺伝子とβ−ケトチオラーゼとPHA重合酵素とを大腸菌(E.coli)に導入したPHA生成組換え大腸菌を使用している。
また、本発明に係るPHAの製造方法における微生物発酵法の培養方法として、培地添加のタイミングは特に限定されない。つまり、回分培養のみならず、工業生産に有利な流加培養法や連続培養法においてもPHAを製造することが可能である。なお、本実施形態においては、流加培養法または連続培養法が用いられている。
なお、微生物の培養温度は、微生物の属種、培養方法、基質特異性や基質の溶解性、生産性に応じて適宜選択されればよいが、用いる微生物が成育・増殖し、PHAを生成可能な範囲の培養温度であればよく、好ましくは30〜45℃である。
さらに、PHAの抽出・精製工程は、常法によって行うことができる。例えば、培養液を遠心分離器によって回収し、蒸留水およびメタノールで洗浄して、減圧または凍結乾燥して乾燥菌体を得、乾燥菌体をクロロホルムに懸濁してPHAを加温抽出し、菌体を除去した後、メタノールによりPHAを沈殿回収する方法等がある。
以下、本発明に係るPHAおよびPHAの製造方法の実施例について説明する。なお、本発明の範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
油脂をエステル交換反応することにより得られたバイオディーゼル燃料の副産物(BDFB)の組成を調べるため、財団法人日本食品分析センターに当該組成の分析を依頼した。その結果を図1に示す。なお、当該組成のうち、グリセリンについてはガスクロマト法により、脂肪酸を含むエーテル可溶化分についてはソックスレー抽出法により、強熱残分については直接灰化法(測定条件として、温度:550℃、恒量)により、エーテル可溶化分のうち脂肪酸組成についてはガスクロマト法により、メタノールについてはガスクロマト法により分析されている。なお、重金属については硫化ナトリウム比色法により分析されているが、5ppmを検出限界として検出されなかった。また、BDFB10%水溶液についてガラス電極法によりpHが測定されており、結果はpH10.3であった。
次に、既知のPHA生成細菌を用いて、BDFBとグリセリンとを炭素源とした培地におけるPHAの生産性を比較した。
まずはフラスコにてPHA生成試験を行った。具体的には、まず、フリーズストックされているJM109/pTI305、ラルストニア・ユートロファATCC17699(Ralstonia eutropha ATCC17699)、シュードモナス・プチダKT2440(Pseudomonas putida KT2440)の既知のPHA生成微生物3種をNR培地6mLに植菌し、30℃で一晩浸振とう培養した。
JM109/pTI305は、大腸菌JM109(E.coli.JM109)に、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のphaCABを組み込んだプラスミドpTI305を導入したPHA生成組換え大腸菌である(Polyhydroxyalkanoate synthase from Bacillus sp. INT005 is composed of PhaC and PhaR. Journal of Bioscience and Bioengineering v94, p. 343-350 (2002))。
次に、500mL羽根付き三角フラスコ(イワキ製)で調製したMS培地100mLに中和BDFBまたはグリセロールを1%(wt/vol)加えた培地に、上記にて得られた培養液5mLを加えて、30℃,160rpmで培養した。24時間後にさらにBDFBまたはグリセロールを1%(wt/vol)加えて48時間培養した。培養後、菌体を遠心分離によって回収し、蒸留水および5%メタノールで洗浄した後、減圧または凍結乾燥して乾燥菌体を得た。
なお、本実施例で用いているNR培地およびMS培地の組成は、以下の通りである(J. Bacteriol. V179, p4821-4830 (1997)、Appl. Microbiol. Biotechnol. V45 , p363-370 (1996))。
(NR培地の組成)培地1L中
バクトイーストエクストラクト 3g
バクトペプトン 10g
エルリッヒカツオエキス 10g
(MS培地)培地1L中
リン酸水素二ナトリウム 3.6g
リン酸二水素カリウム 1.5g
塩化アンモニウム 0.5g
硫酸マグネシウム七水和物 0.0104g
トレースエレメント水溶液 0.05mL
<PHAの生成量>
このようにして得られた乾燥菌体を、15重量%濃度の硫酸メタノール溶液2mLとクロロホルム2mLとの混合液に懸濁し、100℃で140分間処理しアルコリシスした。冷却後、超純水を1mL加えよく混合し静置し2層に分離させ、この下層を回収しフィルター濾過により不溶物を除去した。このうち0.5mLと、0.1vol%カプリル酸メチルを含むクロロホルム溶液0.5mLとを混合し、FIDを備えたキャピラリーガスクロマトグラフGC−2010(島津製作所製)にて昇温分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。カラムには、ヒューズド・シリカ・キャピラリーカラムDB−5(カラム内径0.25mm、液層膜厚0.25μm、カラム長30m;島津製作所社製)を使用した。なお、分析条件は、初発温度90℃、5分、昇温速度5℃/分、最終温度250℃、2分にて行った。得られた各PHAの生成量を図2に示す。
図2に示される通り、炭素源としてグリセリンと中和BDFBとを用いた場合で比較すると、JM109/pTI305ではPHA含有量とPHA生成量とに大きな差は見られなかった。一方、ラルストニア・ユートロファATCC17699とシュードモナス・プチダKT2440を用いた場合、中和BDFBを炭素源とするとPHA含有率とPHA生成量とが大幅に上昇した。
JM109/pTI305等のPHA生成組み換え微生物は、増殖と同時にPHA生成が可能であり、ラルストニア・ユートロファATCC17699やシュードモナス・プチダKT2440は、窒素等の栄養素を制限した条件下で培養することによってPHA生成が誘導されるPHA生産天然菌であることから、中和BDFBはPHA生産天然菌にとって非常に有用な炭素源であることが示された。
以上のように本実施例1によれば、既知のPHA生成細菌は炭素源としてBDFBを利用可能であるとともに、高いPHA生成量が得られることから、環境面のみならず工業生産面において非常に有用であることが示された。
炭素源としてグリセリンを添加した培地においてシュードモナス・プチダKT2440(Pseudomonas putida KT2440)を用いてPHAを生成し、得られたPHAの組成を分析した。また、フラスコとファーメンタでの製造を行ってPHAの生産性を比較した。フラスコでの製造は実施例1の乾燥菌体を常法により分析した結果である。なお、ファーメンタでの製造は、Biotechnology and Bioengineering v68、pp. 446-470 (2002)を参考にして行った。
ファーメンタでの製造について、具体的には、まず、フリーズストックされているシュードモナス・プチダKT2440(Pseudomonas putida KT2440)をNR培地に植菌し、30℃で一晩浸振とう培養した。その培養液1mLをNR培地50mLを含む250mL三角フラスコ(イワキ製)に移し、30℃にて10時間培養した。
次に、得られた培養液20mLを、MR培地980mLを含む3L三角フラスコに移し、30℃で一晩培養した。その後培養液を、リン酸二水素カリウムを除いたMR培地に移植した。移植時、2.7LのMR培地を含むジャーファーメンタに300mLの培養液を添加したものをJar−1、2.5LのMR培地を含むジャーファーメンタに500mLの培養液を添加したものをJar−2とした。攪拌速度を200rpm、培養温度を30℃とし、流加培養(フェドバッチ培養)した。流加液は培地のpHが7.0を超えた際に添加し、24時間までは120mLを、24時間から培養終了までは180mLを、各々添加した。通気量は、24時間までは1vvm、24時間から培養終了までは2vvmとした。また、菌体の増殖に伴い低下する溶存酸素濃度(DO)を、攪拌速度をコントロールすることで30%に制御した。
なお、本実施例で用いているNR培地、MS培地および流加液の組成は、以下の通りである。
(NR培地の組成)培地1L中
バクトイーストエクストラクト 3g
バクトペプトン 10g
エルリッヒカツオエキス 10g
(MR培地の組成)培地1L中、約pH7.0
リン酸水素二アンモニウム 3g
クエン酸 0.8g
グリセロール 20g
硫酸マグネシウム 1.4g
トレースメタル溶液 10mL
(流加液の組成)1L中
グリセリン 500g
硫酸マグネシウム・7水和物 1g
48時間培養後、各培養液から菌体を遠心分離器によって回収し、蒸留水および5%メタノール水溶液で2回洗浄した後、減圧または凍結乾燥して乾燥菌体を得た。
<組成分析>
このようにして得られた各乾燥菌体をクロロホルムに懸濁し、100℃で3時間抽出した。その後、フィルター濾過により菌体を除去後、クロロホルム抽出液にメタノールを10倍量加えてPHAを沈殿回収した。得られた各PHAを実施例1と同様の方法で、100℃にて140分間メタノリシスを行った後、抽出液をFIDを備えたキャピラリーガスクロマトグラフGC−2010(島津製作所製)で昇温分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。カラムは、ヒューズド・シリカ・キャピラリーカラムDB−5(カラム内径0.25mm、液層膜厚0.25μm、カラム長30m)(島津製作所社製)を使用した。分析条件は、初発温度90℃、5分、昇温速度5℃/分、最終温度250℃、2分にて行った。その結果を図2に示す。
<分子量測定>
また、得られた化合物の分子量をゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC測定方法は、TSKgel SuperHZM−Hカラム(6.0nmI.D.×150mm,東ソー製)を2本直列に接続し、移動相はクロロホルムを用いて40℃、流速0.3mL/分にて測定した。純正のポリスチレンを用いて検量線を作成し、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。その結果を図3に示す。
図3に示される通り、フラスコとファーメンタのどちらの製造方法においても3HBをモノマーユニットとして含まず、3HDと3HOとを主成分とするPHAが生成された。
以上のような本実施例2によれば、フラスコのみならずファーメンタを用いても同等のPHAを製造することが可能であることが示され、工業生産に有用であることが示された。
次に、炭素源としてBDFBまたは中和BDFBを添加した培地で製造されたPHAと、グリセリンを添加した培地で製造されたPHAとの組成、分子量および物性を比較した。
具体的には、シュードモナス・プチダKT2440(Pseudomonas putida KT2440)を用いてファーメンタで製造を行った。ファーメンタでの製造は、実施例2と同様に流加培養(フェドバッチ培養)によって行った。
ただし、BDFBまたは中和BDFBを炭素源とする場合、流加液は、pH12のBDFBを121℃で15分間オートクレーブした液体(BDFB)、またはBDFBをpH8.0に調製後、121℃で15分間オートクレーブした液体(中和BDFB)を用いた。このBDFBまたは中和BDFBを基質とした時には、菌体の基質要求性が高く、流加液の添加量がファーメンタ仕込み量を超えるため、培養途中で培養液を5.7Lまたは6.7Lを各々抜き取ってから流加液の添加を継続した。培養液の抜き取りは、pHがアルカリに移行して酸性になった際に行い、流加液を再度添加して同じ培養液を得るために菌体の10%(vol/vol)以上を残した。
炭素源としてグリセリン、BDFB、中和BDFBを各々用いた各培養液から、実施例2と同様に常法に従って各乾燥菌体を得た。また、組成分析および分子量測定も実施例2と同様の方法により行った。
<PHA組成の経時変化>
培養時間48時間まで経時的に各培養液からPHAを分離回収して、各培養時間におけるPHAの組成分析を行い、含有率を算出した。その結果を図4および図5に示す。
図4および図5に示される通り、BDFBと中和BDFBのいずれを炭素源とした場合でも、3HBをモノマーユニットとして含まず、かつ3HDと3HOとを主成分とするPHAが生成された。また、培養時間が十数時間において、第1組成が3HOであって第2組成が3HDであるPHAから、第1組成が3HDであって第2組成が3HOであるPHAに変化し、培養時間により組成の異なるPHAが生産された。
また、第1組成が3HOであって第2組成が3HDであるPHAと、第1組成が3HDであって第2組成が3HOであるPHAでは、粘性が肉眼上明らかに異なり、第1組成が3HOであって第2組成が3HDであるPHAは粘性が低くて流動性を有し、第1組成が3HDであって第2組成が3HOであるPHAは粘性が高い性質を有していた。
<組成分析>
前述と同様に、培養時間24時間および48時間後に各培養液からPHAを各々分離回収し、キャピラリーガスクロマトグラフGC−2010にて各PHAの組成分析を行ったところ、培養時間24時間と48時間において、各PHAの組成は同様であった。48時間培養後の結果を図6に示す。
図6に示される通り、BDFBおよび中和BDFBを炭素源としても、3HBをモノマーユニットとして含まず、3HDと3HOとを主成分とするPHAが生成された。そして、グリセリンを炭素源とするPHAは、3HOと3HDの含有率に差がみられ、3HOに比べて3HDの含有率が高く示された。一方、BDFBおよび中和BDFBを炭素源とするPHAは3HOと3HDの含有率に大きな差は示されなかった。
また、24時間と48時間の培養によるPHAの組成変化がないことから、BDFBおよび中和BDFBを炭素源とする場合、流加培養(フェドバッチ培養)による連続培養が可能であることが示唆された。
<分子量およびTg測定>
また、前述と同様に、48時間培養後に各培養液からPHAを分離回収し、GPCにて分子量を測定し、熱量分析装置(TGA)と示差走査熱量測定装置(DSC)にてTgを決定した。TGAの測定は、BRUKER AXS TG-DTA 2010(BRUKER社)を使用し、窒素中にて10℃/分の昇温速度で室温から500℃まで測定を行った。DSC測定は、BRUKER AXS DSC 3100を使用し、窒素中にて10℃/分の昇温速度で−5℃から210℃まで測定を行った。その結果を図7に示す。
図7に示される通り、いずれを炭素源として用いた場合においても分子量分布(Mw/Mn)は1.5から2.0であり、Tgは−48℃以下を示した。一方、グリンセリンを炭素源とするPHAは室温(約40℃付近まで)において固形であるのに対し、BDFBまたは中和BDFBを炭素源とするPHAは室温において流動性を有していた。
<熱特性および粘度測定>
次に、前述と同様に、48時間培養後に各培養液からPHAを分離回収し、得られたPHAの熱特性および粘性を調べた。
まず、グリセリンを炭素源とするPHAの粘度測定の予備実験として熱特性について調べた。具体的には、グリセリンを炭素源とするPHAを60度で10分間放置し、状態を肉眼およびスパチュラによる触診にて観察を行った。その実験過程および結果を図8(a)〜(c)に示す。
図8(a)および前述の通り、室温においてグリセリンを炭素源とするPHAは室温で固形であり、60℃では流動性を有する液状に変化した(図8(b))。これをスパチュラですくって状態を観察したところ、粘性を有していた(図8(c))。
つづいて、グリセリン、BDFBおよび中和BDFBを炭素源とするPHAについて、レオメーターにて粘性を測定した。粘性の測定は、温度依存型測定によって行った。その結果を図9および図10に示す。
図9および図10に示される通り、BDFBおよび中和BDFBを炭素源とするPHAは、グリセリンを炭素源とするPHAに比べて粘性が低く、温度の上昇に伴った粘性の低下が観察された。グリセリンを炭素源とするPHAでは、約40℃で融け出し、45℃以上で完全に融け、融けたPHAは温度の低下とともに再び固化し、融解前に比べて粘度の上昇が観察された。
<接着性測定>
次に、前述の通り、48時間培養後にグリセリンを炭素源とする培養液からPHAを分離回収し、得られたPHAの接着性を調べた。
具体的には、加重撓み量の測定を行った。つまり、図11に示すように、まず、2枚のプラスチック製容器の一側面に45℃で溶解したPHAを各々0.1mm添付した(図11(a))。PHAを添付した側面同士を接合して接着性を確認した(図11(b))。その後、−80℃に30分間放置して、容器接着部位に加重をかけて、撓み量を測定した(図11(c))。加重量は、500g、800g、1000gで行った。また、加重量587.5g、678.5gにける加重中および加重後の接着状態についての各観察図を図12、図13に各々示す。
図12および図13に示されるように、587.5gまたは678.5gの加重を容器接着部位にかけても容器同士は接着状態を保ち、加重方向に撓みが生じた(図12(a)、図13(a))。その後、加重を解くと撓みがなくなり、接着面は加重前の状態に戻ることが観察された(図12(b)、図13(b))。そして、加重量500g、800g、1000gにおいても、図12および図13と同様の状態が観察され、各撓み量は、各々2.0mm、5.0mm、6.0mmを示した。
以上のような本実施例3によれば、グリセリンのみならずBDFBおよび中和BDFBを炭素源として用いても、ファーメンタにおいてPHAを生産することができ、工業生産に有用であることが示された。また、グリセリンを炭素源とするPHAと、BDFBまたは中和BDFBを炭素源とするPHAとは、3HOと3HDの組成含有率、室温性状、ポリマー可溶性および粘度に明らかな違いがみられ、BDFBまたは中和BDFBを炭素源とするPHAは粘着性を必要とする製品の利用に有用な特性を有することが明らかとなった。
なお、本発明に係るPHAおよびPHAの製造方法は、前述した実施例に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
本発明に係るPHAの製造に用いたBDFBの、財団法人日本食品分析センターによる組成分析試験の結果を表す図である。 本実施例1におけるPHAの生成量を示す図である。 本実施例2におけるPHAの組成、生成量および分子量を示す図である。 本実施例3において、BDFBを炭素源とした培地で培養した場合のPHAの経時的組成変化を示す図である。 本実施例3において、中和BDFBを炭素源とした培地で培養した場合のPHAの経時的組成変化を示す図である。 本実施例3におけるPHAの組成および生成量を示す図である。 本実施例3におけるPHAの分子量、Tg、室温性状および可溶性を示す図である。 本実施例3におけるPHAの熱特性を示す図である。 本実施例3におけるPHAの粘度を示す図である。 本実施例3におけるPHAの粘度と温度との相関とを示す図である。 本実施例3におけるPHAの接着性の測定過程を示す参考図である。 本実施例3において、587.5gの加重をかけた場合のPHAの接着性を示す観察図である。 本実施例3において、687.5gの加重をかけた場合のPHAの接着性を示す観察図である。

Claims (11)

  1. 3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシドデカノエートからなる群から選択される少なくとも一つをモノマーユニットとしてなるポリヒドロキシアルカノエートであって、かつガラス転移温度が−48℃以下であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート。
  2. 請求項1において、前記3−ヒドロキシオクタノエートの組成率と前記3−ヒドロキシデカノエートの組成率との合計が70%以上であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート。
  3. 請求項1または請求項2において、−5℃以上45℃以下における粘度が1.0×10mPa/s以上1.2×10mPa/s以下であって、温度の上昇に伴って前記粘度が低下することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかにおいて、分子量分布が1から2であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート。
  5. 油脂をエステル交換反応することにより得られたバイオディーゼル燃料の副産物を炭素源として微生物発酵法により製造することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  6. 油脂をエステル交換反応することにより得られたバイオディーゼル燃料の副産物を中和した中和副産物を炭素源として微生物発酵法により製造することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  7. 請求項5または請求項6において、前記微生物発酵法における培養が前記バイオディーゼル燃料の副産物または前記中和副産物を培地に用いた一段階の培養であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  8. 請求項5から請求項7のいずれかにおいて、第1組成のモノマーユニットが3ーヒドロキシオクタノエートであって第2組成のモノマーユニットが3−ヒドロキシデカノエートであるポリヒドロキシアルカノエート、または第1組成のモノマーユニットが3ーヒドロキシデカノエートであって第2組成のモノマーユニットが3−ヒドロキシオクタノエートであるポリヒドロキシアルカノエートを、培養時間を制御することにより選択的に製造することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  9. 請求項5から請求項8のいずれかにおいて、前記微生物発酵法における微生物がラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)またはポリヒドロキシアルカノエート生成組換え大腸菌であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  10. 請求項5から請求項8のいずれかにおいて、前記微生物発酵法における微生物としてシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)を用いることにより3−ヒドロキシブチレートをモノマーユニットとして含まないポリヒドロキシアルカノエートを製造することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  11. 請求項5から請求項10のいずれかにおいて、前記微生物発酵法における培養が流加培養法または連続培養法により行うことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
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