従来、半導体製造において使用される超高純度空気は、大気を、2.5〜5.1MPaに圧縮して、断熱膨張操作によって、−191℃以下まで深冷して液体空気を得、これを精分留して液体窒素と液体酸素にした後、さらに、それぞれを気化させた後、窒素ガス対酸素ガスの体積比で約4対1の割合で混合し、15.2MPaに再圧縮して高圧容器に充填したものである。圧縮と深冷と精分留を経る過程で不純物が除かれ、超高純度空気になる。当然、この方法による超高純度空気は乾き空気(ドライエア)であって水分を含んでいない。
したがって、従来から使用されている超高純度空気は、高圧設備を用いて極めて大量のエネルギーを消費した高価な空気であるから、製造コストと省エネの両面からクリーン作業空間の様な大量に消費する箇所への供給は到底許容されるものではない。つまり、消費量が少なくて済むごく限定した箇所乃至超低露点のドライエアを必要とする工程にだけ使用されるものであった。
一方、半導体や液晶ディスプレイ(LCD)製造は、高い清浄度に保たれたクリーンルーム、クリーンチャンバ又はミニエンバイロメント内で加工、製造されている。特に、最近の高集積度半導体は、清浄度クラス1以下のミニエンバイロメント内で製造される。一般的にクリーンルームは、系外より取入れた空気中のダストやミスト等の粒子状汚染物質を除去する清浄化と、調温調湿とを行って、当該クリーンルーム等に連続的に供給するとともに、その供給量と同量のクリーンルーム内の空気を系外へ排出する1パス使い捨て方式の空調設備が用いられている。
しかしながら、系外へ排出される空気は、前述のようにエネルギーを用いて調温調湿したものであり、省エネルギーの観点からは、系外へ排出する空気量をできるだけ少なくして、クリーンルーム内の空気を清浄化して、循環使用可能なように構成することが好ましい。又、クリーンルーム内において、被加工物に対して様々な加工作業が行われる際には、加工作業に伴って分子状汚染物質が発生するため、近年ではクリーンルーム内の空気を循環させる際に、粒子状汚染物質だけでなく分子状汚染物質も好適に除去できるように構成した空気清浄化装置乃至高純度空気調製装置も開発されている。
このうち粒子状汚染物質は、クリーンルーム内の空気を循環供給させる管路中の随所に高性能フィルタを設置して清浄度クラスに応じた除去が行われている。例えば、図5は、従来技術による清浄化装置の説明図であるが、処理空気導入口1乃至調温調湿装置60の上流側に高性能フィルタ(3)61及び/又は下流側(図示せず)に設置され、乃至は、従来技術によるクリーンルーム100内の超高純度調温調湿空気吹出し口105に、高性能フィルタ(4)115が設置されている。
特に、超高純度調温調湿空気吹出し口105に設置する高性能フィルタ(4)115は、フィルタファン(2)114と一体化したファンフィルタユニット(FFU)110の中に配設されている。
(ケミカルフィルタ)
一方、分子状汚染物質は、当該クリーン作業空間への超高純度調温調湿空気吹出し口105付近に設置したケミカルフィルタ(A2)111、ケミカルフィルタ(B2)112、ケミカルフィルタ(C2)113、及び循環空気ダクト104に設置したケミカルフィルタ(A1)81、ケミカルフィルタ(B1)82及びケミカルフィルタ(C1)83に通じて除去している。
特に超高純度調温調湿空気吹出し口105付近の天井に設置するケミカルフィルタ(A2)111、ケミカルフィルタ(B2)112及びケミカルフィルタ(C2)113は、フィルタファン(2)114と粒子状汚染物質を除去する高性能フィルタ(4)115とを一体化した前述のファンフィルタユニット(FFU)110の中に組込まれている。
なお、図5に示した従来の調温調湿装置60は、高性能フィルタ(3)61と、従来の冷却除湿器62と従来の加温器63と従来の加湿器64から構成されており、清浄化調温調湿空気は清浄化調温調湿空気送風機(3)101で昇圧されて清浄化調温調湿空気供給口2に流入する。
しかして、近時は、半導体製造用のシリコン基板、LCD製造用のガラス基板は共に大型化して、それに伴いクリーンルーム等のクリーン作業空間も大容量のものとなっている。従って、循環供給する超高純度調温調湿空気の絶対量も増大しており、循環空気ダクトは大口径となり、当該循環空気ダクトに設置するケミカルフィルタも、当該クリーン作業空間への吹出し口に設置するファンフィルタユニット(FFU)に組込まれるケミカルフィルタも大型となっている。又、当然、粒子状汚染物質を除去する高性能フィルタも、フィルタファンも大型となっている。即ち、FFUが大型となっている。
しかしながら、大型のFFUを設置すると当然重量増となり、クリーン作業空間を構築している構造部材の強度を増加させねばならないから、それら部材も今までよりも大きく太くする必要がある。同時にパワーの増大したフィルタファンを内蔵させることになるため、加振力が増加する。それゆえ、クリーン作業空間に設置した装置、例えば、半導体製造におけるパターン形成工程の塗布装置や露光装置等の振動も増大させることになるから、パターン形成に支障を来たすという問題が発生する。このように、FFUを大型にする方法には限界があり、ケミカルフィルタを大型にしないで設置数を増やす方法も併用せざるを得ない。
又、半導体製造やLCD製造においては、近時の基板の大型化によって使用する薬剤量も増加するから、それに伴って発生する分子状汚染物質量も増加するため、寿命のあるケミカルフィルタの取替え頻度も増加している。
薬剤の使用に伴って発生する分子状汚染物質は、トリメチルアミン(TMA)、トリエチルアミン(TEA)、N−メチルピロリドン(NMP)等の塩基性であって且つ有機性のアミン類、並びに、シンナ類やエチレングリコールモノブチルエーテル(EGMBE)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、乳酸エチル、シクロヘキサノン等の有機性の物質である。
この他の分子状汚染物質は環境大気や、人体や、クリーン作業空間内で薬剤を取扱う加工作業等、に由来していて常に存在する塩基性のアンモニア、並びに、環境大気に由来している酸性のNOx、SOx、Cl-及びそれぞれは微量ではあるが環境大気に由来する極めて多種類の有機性物質である。
したがって、処理空気中には、塩基性のアンモニアと塩基性且つ有機性であるアミン類と芳香族系、グリコールエーテル類、エステル類、ケトン類その他炭化水素系の有機性の物質と酸性のNOx、SOx、Cl- が混在している。
それゆえケミカルフィルタによる除去方式では、塩基性物質を捕集・除去するケミカルフィルタ(B)と、有機性物質を捕集・除去するケミカルフィルタ(C)と、及び酸性物質を捕集・除去するケミカルフィルタ(A)の3種類を使用している。
このうち、一般的に、ケミカルフィルタ(B)は、布状フィルタ材に酸性薬剤を含浸させたもの、繊維状フィルタ材に陽イオン交換基を付加したもの又は布状フィルタ材にプリーツを付けて袋状に縫製してその袋の中に陽イオン交換樹脂を充填したものが用いられる。
したがって、ケミカルフィルタ(B)の捕集・除去の原理は、フィルタ材上で酸と塩基の中和反応を生起させて不揮発性の中和物に転化させることである。それゆえ、フィルタ材に含浸させた酸性物質量と反応する塩基性物質の化学当量以上の塩基性汚染物質は、捕集・除去が不可能となるゆえ、必然的に寿命が存在するという問題がある。そのため、寿命となったケミカルフィルタ(B)は新品と取替えるという大懸りな作業が不可避となる。
一方、有機性物質を捕集・除去するケミカルフィルタ(C)は、通常布状フィルタ材にプリーツを付けて袋状に縫製して、その袋中に粒状活性炭を充填したもの、又は、活性炭繊維をフィルタ材としたものが用いられている。
したがって、ケミカルフィルタ(C)の捕集・除去の原理は、有機性物質を選択率良く物理吸着することであるから、充填した活性炭の飽和吸着量以上の有機性汚染物質量は捕集・除去が不可能となるゆえ、これまた寿命が存在するという問題がある。なお、アミン類のうち、強塩基性のアミンはケミカルフィルタ(B)で、弱塩基性のアミンはケミカルフィルタ(C)で捕集・除去される。
このように、前述のケミカルフィルタ(B)の場合と同様に、寿命となったケミカルフィルタ(C)は新品と取替えるという大懸りな作業が不可避となる。
さらに、酸性物質を捕集・除去するケミカルフィルタ(A)は、布状フィルタ材に塩基性薬剤を含浸させたもの、繊維状フィルタ材に陰イオン交換基を付加したもの又は布状フィルタ材にプリーツを付けて袋状に縫製してその袋の中に陰イオン交換樹脂を充填したものが用いられる。
したがって、ケミカルフィルタ(A)の捕集・除去の原理は、フィルタ材上で塩基と酸の中和反応を生起させて不揮発性の中和物に転化させることである。それゆえ、フィルタ材に含浸させた塩基性物質量と反応する酸性物質の化学当量以上の酸性汚染物質量は捕集・除去は不可能となるゆえ、必然的に寿命が存在するという問題がある。
つまり、前述のケミカルフィルタ(B)、(C)の場合と同様に、寿命となったケミカルフィルタ(A)は新品と取替えるという大懸りな作業が不可避となる。
この様にケミカルフィルタ(A)、(B)、(C)は、いずれも寿命があり、取替え作業によって産業廃棄物となり、又、取替え作業時には、それを取付けていたクリーン作業空間での製造工程は操業を停止することになる。そして、近時の半導体並びにLCD基板の大型化は産業廃棄物量を増大させることになり、又、取替え頻度も増加することになる。
さらに又、取替え時には、当該クリーン作業空間や超高純度空気管路やそれの関連機器は、その工程設備の外側にある雰囲気に曝すことになる。そして、その雰囲気は明らかに0.05ppbを越えるアンモニア、2ppbを越える有機物を含有する空気であるから、超高純度空気の雰囲気下にあったクリーン作業空間や超高純度空気管路やそれが接続している関連機器、当該設備の内側も確実に汚染される。特にアンモニアと水の分子は金属表面に吸着付着しやすい。
それゆえ、取替え作業は終了しても、クリーン作業空間や超高純度空気管路やそれの関連機器を超高純度空気の雰囲気下に復旧させるのに長時間のクリーンアップ作業を要することになる。この間の操業停止による損失は莫大となる問題を誘起している。
又、前記したように、取替え作業時に、例えば、常に3〜5ppb存在するアンモニアを含有する屋内空気に曝したとすると、金属表面に吸着付着したアンモニアは、復旧後に超高純度空気の流れによって、少しずつ脱離して超高純度空気流中に混入する。例えばこの脱離によりアンモニアの濃度が0.1ppbとなったとすると、クリーン作業空間内のガラス基板を汚染する確率が倍増することになると考えられる。又、超高純度空気中の水分子が分子運動で金属表面等に凝縮するとき、アンモニア分子がその凝縮熱を奪って気化する精留効果によっても、超高純度空気中のアンモニア濃度は0.1ppb以上となる。つまり、調温調湿した空気中から低分子量、低沸点のアンモニアを0.05ppb以下にすることは極めて困難である。
又、前述したように、クリーンルーム排気中には、アンモニアと塩基性であって且つ有機性であるアミン類の分子状汚染物質、及び多種類の有機性分子状汚染物質及び酸性分子状汚染物質が混在している。これらの分子状汚染物質をケミカルフィルタ(A)、(B)、(C)によって捕集・除去する場合、アンモニアとTMAはケミカルフィルタ(B)で選択性よく捕集・除去される。しかし、TEAとNMPはケミカルフィルタ(B)での捕集・除去は低率であって、主としてケミカルフィルタ(C)で物理吸着により捕集・除去される。ところが、ケミカルフィルタ(C)の吸着容量は一般的に小さいのに加えて、TEAやNMPよりも分子量の大きい他の有機性分子状汚染物質が優先して吸着するため、予想以上に短時間でTEAやNMPの捕集・除去率は低下する。その結果、ケミカルフィルタ(C)は短時間で新品との交換が必要となる。
さらに又、前述したように、取入れたクリーン作業空間の排気、即ち、処理空気中には、塩基性のアンモニアと、塩基性であって且つ有機性であるアミン類の分子状汚染物質、及び様々な分子量を有する有機性分子状汚染物質、及びNOx、SOx、Cl- 等の酸性分子状汚染物質が混在している。加えて、それぞれの分子状汚染物質の発生状況はその成分を含有している薬剤を使用した瞬間や化学反応によってその分子状汚染物質を発生させるような薬剤を使用した瞬間に発生するから、その分子状汚染物質の濃度は数ppmから1ppbの変動幅で脈動状に急変動している。
その様な分子状汚染物質の濃度の変動状態が処理空気導入口においてはいくらか平準化された状態となってはいるが、図5に示すケミカルフィルタ(A1)81、ケミカルフィルタ(B1)82、ケミカルフィルタ(C1)83に流入した場合、それぞれのケミカルフィルタの吸着容量に充分余裕のある時点では、化学吸着するNOx、SOx、Cl- はケミカルフィルタ(A1)81で捕集・除去され、又、アンモニアとTMAはケミカルフィルタ(B1)82で捕集・除去され、物理吸着されるTEA、NMP、シンナ類、EGMBE、PGMEA、MIBK、乳酸エチル、シクロヘキサノン等は、ケミカルフィルタ(C1)83で捕集・除去される。
ところが、例えば、NMP(分子量:99.1)とPGMEA(分子量:132.2)をクリーン作業空間内の加工作業で使用する場合、ケミカルフィルタの吸着容量に充分余裕のある時点では、ケミカルフィルタ(C1)83でそれらの分子状汚染物質は捕集・除去される。しかしながら、そのケミカルフィルタ(C1)83の吸着容量の余裕が僅かになってきた時点で、PGMEAを使用する加工作業が行われ、最高値がppmとなる脈動状でケミカルフィルタ(C1)83に流入すると、NMPがそのケミカルフィルタ(C1)83からPGMEAによって追い出される現象が発生する。同時に、ケミカルフィルタ(C1)83に吸着していたNMPよりも分子量の小さい大気由来の汚染物質がPGMEAによって追い出され、下流に漏出する。以上の好ましくない現象が発生することを本発明者らは見いだした。
下流の超高純度調温調湿空気吹出し口105(図5)に設けたケミカルフィルタ(C2)113の吸着容量に余裕のある時点では、ケミカルフィルタ(C1)83から漏出したNMPとNMPよりも分子量の小さい分子状汚染物質は、ケミカルフィルタ(C2)113で捕集・除去される。しかしながら、吸着容量の余裕が僅かになってきた時点では、前記同様にNMPによって、それよりもさらに分子量の小さい汚染物質が追い出され、従来技術のクリーン作業空間を汚染する現象が発生することを本発明者らは見いだした。
このように、分子状汚染物質の除去装置としてケミカルフィルタが広く用いられているが、ケミカルフィルタ(A)、(B)、(C)はいずれも吸着容量が限られており、定期的乃至状況に応じて臨時に交換する必要がある。そして使用済みのケミカルフィルタは吸着能力を再生することが困難であるため、最終的には廃棄せざるを得ない。即ち、産業廃棄物となる。しかしながら、最近の環境保全の観点からは、産業廃棄物の削減が強く社会から要請されているゆえ、ケミカルフィルタのような使い捨てタイプのものから、繰返し再生使用できて高純度空気に調整可能な装置の開発が強く求められている。
そのため、最近では、ケミカルフィルタを用いない再生可能な吸着材を用いて吸着と再生が同時に行えて、半永久的に使用可能な空気清浄化装置乃至高純度空気調製装置が提案されるに至っている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2001―141274号公報
特許第3320730号公報
特許第3078697号公報
特許第3078697号公報
2005年度半導体製造装置技術ロードマップ報告書(日本半導体製造装置協会発行)
この空気清浄化装置はゼオライトを主成分とするハニカム状積層体を円筒上に形成して、その軸線方向に空気が通過するように構成したハニカム積層体ロータと当該ロータをその軸線周りに回転する駆動手段を備えたものである。そしてハニカム状積層体ロータが回転する空間は軸線周りに吸着部、再生部、冷却部に区分されている。つまり、吸着部、再生部、冷却部が順次移動していくことになり、これが連続的に繰返されるようになっている。
この空気清浄化装置において、処理空気をハニカム状積層体の吸着部に通じて清浄化してクリーンルームに供給すると同時に加熱した空気を再生空気としてハニカム状積層体の再生部に送り、吸着部で吸着させた分子状汚染物質を加熱空気中に脱離させて排出させている。
処理空気は、送風機を稼動させて、クリーンルーム内空気を装置内に導入している。そして導入した空気(処理空気)は、処理空気ダクト内を流下して、ハニカム状積層体ロータへ送られ清浄化されてクリーンルームに循環供給される。この空気清浄化装置においては、外気供給手段から一部の外気が取入れられ、処理空気に混入されている。
つまり、一部の外気を導入させた処理空気がハニカム状積層体ロータの軸線方向の一方向側から他方側に通過する間で分子状汚染物質が吸着部で吸着除去される。そして吸着材によって清浄化された処理空気は、除塵フィルタを通過して粒子状汚染物質を除去してクリーンルームに循環供給されている。
ところで、前記したとおり、処理空気中には、塩基性のアンモニアと塩基性且つ有機性であるアミン類と芳香族系、グリコールエーテル類、エステル類、ケトン類その他の炭化水素系の有機物と酸性のNOx、SOx、Cl- が混在している。
したがって、それらの分子状汚染物質を効率良く吸着除去するためには、ハニカム状積層体に担持させる吸着部材であるゼオライトの弱疎水性と強疎水性の割合を変える必要があるだけでなく、ハニカム状積層体ロータの吸着部で吸着除去が困難な分子状汚染物質が存在する際には、その空気清浄化装置とクリーンルームとの間にさらにケミカルフィルタを設置して除去することが記載されている。このように特許文献1に記載の空気清浄化装置は吸着ロータと産業廃棄物となるケミカルフィルタ(化学吸着フィルタ)を併用する装置である。
他方、クリーンルーム排ガスを導入して分子状汚染物質を吸着除去する吸着材として従来から知られている活性炭、シリカゲル、モレキュラシーブ、ゼオライト等の吸着材を用いて、排ガス中の非メタン系炭化水素を0.2ppm以下まで吸着除去する清浄気体の調製方法及び調製装置が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
当該文献においては、クリーンルーム排ガスからの清浄気体の調製方法には、非メタン系炭化水素系の分子状汚染物質の吸着除去には有効であることが記載されている。
しかしながら、排ガス中に混在している塩基性分子状汚染物質の除去並びに酸性分子状汚染物質、塩基性且つ有機性の分子状汚染物質の除去に適用できる吸着材に関する記載はなく、さらには、有機性分子状汚染物質がppbオーダまで除去可能であることを明確にしていない。
又、半導体やLCD基板の処理工程で必要とする機器を収容したクリーンルームに循環供給する清浄空気の調製方法としてゼオライトや活性炭を添加した吸着材で構成されるロータ式空気清浄化装置を用いて処理空気中の有機性分子状汚染物質であるオレフィン、パラフィン、芳香族、ジオレフイン類の炭化水素を0.1ppm以下に除去する方法提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。
当該方法は、吸着材ロータ式によるものであるから、吸着と再生を同時並行して繰返し操作できるという特徴を有する。
しかしながら、当該文献には、環境大気中に有機性分子状汚染物質と共に混在している塩基性分子状汚染物質や酸性分子状汚染物質、およびクリーン作業空間の加工作業に使用されて0.1ppm以下に除去する必要のある有機性分子状汚染物質、それと共に加工作業に使用されて混入する塩基性分子状汚染物質及び塩基性且つ有機性の分子状汚染物質の除去に適用できる繰返し吸着と再生可能な吸着材、装置及び方法に関する言及はない。さらには、炭化水素が数ppbまで除去可能であることを明確にしていない。
特に、ドライな高純度空気を必要とする最先端の半導体製造においては、代表的な塩基性分子状汚染物質であるアンモニアは濃度0.1ppb以下即ち0.1μg/m3以下、有機性分子状汚染物質はヘキサデカン換算で22ppb以下即ち22μg/m3以下、又代表的な酸性分子状汚染物質であるSOxはSO4換算で0.1ppb以下即ち0.1μg/m3以下が要求されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
つまり、代表的な塩基性分子状汚染物質であるアンモニアの除去に関しては、前記特許文献1に記されている清浄化空気中の濃度よりさらに低減させられる高選択率をもった吸着材が必要であり、又有機性分子状汚染物質の除去に関しては、前記特許文献3に記されている清浄化方法よりも一層除去率を向上させて確実にヘキサデカン換算で22ppb以下を達成させられる清浄化方法の開発、即ち、超高純度空気に調製する方法の開発が必要なのである。
さらに環境大気由来の有機性分子状汚染物質と共に混在している塩基性及び酸性の分子状汚染物質についても又、加工作業に使用されて清浄空気中に混入する有機性、塩基性、又は、塩基性且つ有機性の分子状汚染物質についても繰返し再生可能な吸着材を用いた長期間に亘って連続安定に循環供給可能な超高純度空気に調製する方法の開発が望まれている。
(回分式温度スイング吸着装置)
次に、処理空気を従来技術よる回分式温度スイング吸着装置(以下、回分式TSA装置という)に通じた際に生起する技術課題について図を用いて説明する。図4は従来技術による回分式TSA装置100の構成図である。図4には吸着モードが(A)系統、したがって再生モードが(B)系統の場合を示した。
処理空気は、処理空気導入口1から流入して高性能フィルタ(1)11を通過する間で粒子状汚染物質を除去した後、分岐/合流継手T1から開閉弁V1、分岐/合流継手T2を経て吸着材ユニット(A)13Aに流入する。吸着材ユニット(A)13Aにて塩基性分子状汚染物質や有機性分子状汚染物質及び又は酸性分子状汚染物質が吸着除去される。
即ち、処理空気は吸着材ユニット(A)13Aを通過する間で塩基性、有機性、酸性の分子状汚染物質が除去され、分岐/合流継手T3、開閉弁V2、分岐/合流継手T4を経て超高純度空気送出口16に流入する。このとき開閉弁V1、V2は開弁状態であるが、開閉弁V4、V5、V6、V3は閉弁状態である。
一方、再生空気は屋内又は屋外の空気を再生空気取入れ口26から取入れて、再生空気冷却加熱部28に流入させる。即ち、再生空気は、再生空気フィルタ21を経て再生空気送風機22、再生空気冷却器23、再生空気予熱器24、再生空気加熱器25を流下する。ついで分岐/合流継手T8、開閉弁V7、分岐/合流継手T5を経て吸着材ユニット(B)13Bに流入する。再生モードの加熱時間帯においては再生空気冷却器23に使用する伝熱媒体の冷媒は流通させず、再生空気加熱器25には通電させる。
したがって、吸着材ユニット(B)13Bは再生空気によって加熱されるから吸着モード時に吸着した塩基性分子状汚染物質や有機性分子状汚染物質及び又は酸性分子状汚染物質を脱離する。吸着材ユニット(B)13Bを流出した再生空気は、分岐/合流継手T6、開閉弁V8、分岐/合流継手T7を経て再生空気予熱器24に流入する。再生空気予熱器24では高温の再生空気のもつ余剰熱で低温の再生空気を予熱する。そして高温の再生空気は冷却され排出空気となって再生空気排出口27から排出される。
又、再生モードの冷却時間帯において、再生空気冷却器23には伝熱媒体の冷媒を流通させ、再生空気加熱器25には通電しない。したがって、吸着材ユニット(B)13Bは再生空気によって冷却されて、処理空気の温度に近づけて吸着モードの切換えに備える。再生モードが(B)系統の場合、開閉弁V7、V8は開弁状態にある。
このように、吸着材ユニットを2系統備える従来の回分式TSA装置においては、吸着と再生のモードを同時に実行して連続的に超高純度空気を供給しようとすると、処理空気,再生空気、超高純度空気、排出空気相互の混入を防止して(A)系統吸着材ユニット(A)13A、(B)系統吸着材ユニット(B)13Bのそれぞれと、それらの空気の流れるダクトを接続する必要がある。そのため吸着材ユニットの上流側には処理空気又は排出空気が流れる2系統のダクト並びに処理空気を取入れて(A)系統と(B)系統のそれぞれの吸着材ユニットへ分岐する分岐/合流継手T1、排出空気を(A)系統と(B)系統から再生空気排出口27へ導くダクトに接続するダクトの分岐/合流継手T7及びそれぞれの両側にダクト回路を開閉するためのV1、V4、V5及びV8を配置する必要がある。
又、吸着材ユニットの下流側には、超高純度空気又は再生空気が流れる2系統のダクト並びに超高純度空気を取出す(A)系統ダクトと(B)系統ダクトから超高純度空気送出口16へ導くダクトに接続するダクトの分岐/合流継手T4、再生空気を導き(A)系統と(B)系統のそれぞれの吸着材ユニットへ送出する分岐/合流継手T8及びそれぞれの分岐/合流継手の両側に設置してダクトを開閉するための開閉弁V2、V3、V6及びV7を配置する必要がある。
さらに、(A)系統ダクトから排出空気ダクトへ、又は(B)系統ダクトから排出空気ダクトへ再生空気が流れるように分岐/合流継手T2、T6が、再生空気ダクトから(A)系統ダクトへ、又は再生空気ダクトから(B)系統ダクトへ再生空気が流れるように分岐/合流継手T3、T5が必要である。結局、吸着材ユニット(A)13A及び吸着材ユニット(B)13Bの上流側と下流側のそれぞれに2系統、計4系統のダクトと計8基の開閉弁と計8基の分岐/合流継手が必要である。
このため、極めて複雑で長いダクトの「引きまわし」が必要となる。ここで、本発明が対象としているクリーン作業空間で使用されるダクトは、径が50mm程度の小配管ではない。例えば、500mmの正方形の断面ダクト(処理空気量500m3/minの場合、約8m/sの流速で流すためには正方形断面のダクトの寸法は1000mmとなる。)したがって、仮にこの「引きまわし」が30mであったならば、ダクトのみで30m3の占有空間が必要となる。処理空気量が40m3/minの場合は同じく約8m/sの流速、且つ30mの引きまわしでは、ダクトのみで8.7m3の占有空間が必要となる。
つまり、常圧下にある空気が流れるダクトの占有空間は、実際は莫大なものであって、これにダクトの分岐/合流継手や、ダクトの重なり、交叉、曲がり、拡大(縮小)、開閉弁、断熱材の装着等のために必要な空間が加わるから、装置全体としての占有空間は極めて大きなものとなる。
これが吸着材ユニットを2系列備える回分式TSA装置をコンパクトにするのを困難にしている第1の理由である。
吸着モードを(A)系統から(B)系統へ、再生モードを(B)系統から(A)系統へ切換える場合は、開弁状態にある開閉弁V1、V2、V7及びV8を閉弁状態へ、閉弁状態にある開閉弁V4、V5、V3及びV6を開弁状態に切換えることになる。逆に吸着モードを(B)系統から(A)系統へ、再生モードを(A)系統から(B)系統へ切換える際は、開閉弁V1、V2、V7及びV8を閉弁状態から開弁状態へ、開閉弁V4、V5、V3及びV6開弁状態から閉弁状態に切換えることになる。
さらに、吸着モードと再生モードの切換えは、処理空気と超高純度空気の流れを停止させることなく、圧力損失が小さくて口径の大きい開閉バルブ8基を同時に動作を開始させ、且つ、同時に動作を停止させる必要があり、しかも動作時間を可能な限り短時間とする必要がある。
しかしながら、8基全ての開閉弁を同時に動作を開始させて、同時に動作を停止させ、且つ、短時間で動作させることは極めて困難である。いずれかの開閉弁にわずかな遅れがあると、超高純度空気の流量と圧力が変動する大きな問題がある。
もしも、上記したような切換え時において、超高純度空気の流量と圧力が変動することになった場合は、加工製品の歩留まりを著しく低下させる大きな要因となる。
さらに他の問題は、図4の従来技術による回分式TSA装置において、吸着モードと再生モードの切換えの際には、8基の分岐/合流継手と8基の開閉弁との間にあるダクト内の空気はその開閉弁を閉弁状態とした場合はその流れが停止するから、次の開弁となるまでの間はそのまま滞留する淀み箇所となることである。図4には淀み箇所となるダクトを破線で示した。
例えば開閉弁V4と分岐/合流継手T6との間のダクトは再生開始直後の高濃度の脱離した汚染物質を含む排出空気が滞留する淀み箇所となるから、切換え後の超高純度空気中の汚染物質濃度に影響するという問題がある。又、分岐/合流継手T1と開閉弁V4との間のダクトも開閉弁V4の開閉動作に遅れがあると再生開始直後の高濃度の脱離した汚染物質を含む排出空気が滞留する淀み箇所となる。
さらに又、図4の再生モードの冷却時間においては、屋内又は屋外の空気を取入れた再生空気中にはアンモニアが3〜5ppb含まれており、そのうちのいくらかは金属壁面に付着するが、到底再生空気中のアンモニアは0.05ppb以下にまでに減少し得ないから、分岐/合流継手T5と吸着材ユニット13Bとの間のダクトは、再生空気中のアンモニアによって汚染され、切換え後の超高純度空気中のアンモニア濃度が変動することになる。
以上の説明から明らかに、ドライな超高純度空気は大量のエネルギを消費して製造された極めて高価な空気であり、又、図5に示したように超高純度空気調製装置としてケミカルフィルタを用いると、定期的に新品に取替えるという大懸りな取替え作業が発生する。加えて、その作業を行う際には必然的にクリーンルーム内の加工作業を停止せざるを得ないという問題が発生し、さらに産業廃棄物が発生するという環境問題が生じている。さらに、取替え作業終了後、超高純度空気の雰囲気下に復旧させるクリーンアップ作業が必要であるから加工作業の停止はなお継続させざるを得ない。この間の経済的損失とエネルギーの浪費問題も同時に発生する。
他方、一定の加工量を維持しようとすると、予備のクリーン作業空間を設置せざるを得ず、設備投資が増大するという問題がある。加えて、塩基性、有機性、酸性の分子状汚染物質の捕集・除去率は製品の歩留まりに大きな影響を及ぼすため、常時モニタする必要がある。クリーン作業空間の大きさにもよるが、ケミカルフィルタは多数箇所に設置されており、個々のケミカルフィルタの管理とモニタ要員の確保とモニタ装置の導入と設置は不可欠となる。これによる加工製品のコストアップも不可避である。
又、以上の説明から空気清浄化装置乃至超高純度空気調製装置としてケミカルフィルタを用いた場合、クリーン作業空間内で製造される加工製品のコストアップと環境問題とエネルギー浪費とを誘発している。それゆえ、ケミカルフィルタを用いる方法を改変する方法、即ち、ケミカルフィルタを用いない方法の開発が不可避である。
他方、前記した特許文献1や特許文献3で提案されているようなケミカルフィルタを使用せず再生可能な吸着材を用いて吸着と再生が同時に行えて、半永久的に使用可能な吸着材ロータによる空気清浄化装置には、次の問題がある。
第1に、長いダクトの引きまわしが必要であると同時に吸着材ロータの断面とダクトの断面の形状が全く相違するため複雑な構造形状の継手が多数必要となる。したがって、コンパクトな装置とすることが困難である。
第2に、それらの継手端面と吸着材ロータ端面の摺動箇所からの処理空気、再生加熱空気、再生冷却空気の漏洩を防止できない。
第3に吸着材ロータは吸着、再生、冷却の3区域に区画する必要があり、それらの区域に流速乃至流量、温度、圧力、流れ方向、汚染物質の質(有機性、塩基性、酸性)と濃度の各々が相違する処理空気、再生加熱空気、再生冷却空気の混入を防止することは極めて困難である。即ち、吸着ロータでは、非特許文献1に記載されている高純度空気にまで清浄化することは困難である。
第4に再生加熱空気、再生冷却空気も連続して流すためエネルギー消費量が多い。
第5に処理空気中に確実に存在するアンモニアと塩基性且つ有機性であるTEA、TMA、NMPとが混在する場合の汚染物質の除去・清浄化に関する言及はない。
さらに、従来技術による回分式温度スウィング吸着装置は、8基の開閉弁と8基の分岐/合流継手が必要な上に、複雑で長いダクトの引き回しが必要であるため、コンパクトな装置とすることが原理的に困難である。加えて、汚染物質が滞留する淀み箇所が必ず存在すると同時に、大口径の8基の開閉弁を同時に作動させる困難性のため、モード切替え時に超高純度空気の流量、圧力、汚染物質濃度変動を発生させることは避けられない。
本発明は前述の事実に鑑みてなされたものであって、調温調湿されたクリーンルーム、クリーンチャンバ、及びミニエンバイロメント等のクリーン作業空間からの排気を処理空気として取入れて、その処理空気中の粒子状汚染物質及び塩基性分子状汚染物質及び有機性分子状汚染物質及び又は環境大気に由来する酸性分子状汚染物質を除去してさらに精密に調温調湿して超高純度空気に調製するに際して、当該クリーン作業空間の製造作業を停止させることなく、吸着材を用いてアンモニアは0.05ppb以下、窒素酸化物(NOx)は0.1ppb以下、硫黄酸化物(SOx )は検出限界以下、塩素イオン(Cl-)は0.01ppb以下、アミン類を含む有機性分子状汚染物質はヘキサデカン換算で2ppb以下まで除去した後、さらに、調温調湿して超高純度空気に調製して、当該クリーン作業空間に長期間に亘って連続安定に循環供給する方法を提供して、前述の問題を解決しようとするものである。
前述した課題を解決するべく、本願の発明者らはアンモニア50ppbとPGMEA500ppbとトルエン270ppbとを環境大気に添加させた場合、及びアンモニア50ppbとNMP290ppbとトルエン270ppbとを環境大気に混入させた場合について、第1層は活性炭と固体塩基性物質を含むものを用いた吸着材、第2層は固体酸性物質を含むものを用いた吸着材、第3層は活性炭を含むものを用いた吸着材、の3層からなる吸着材ユニットを構成し、これに上記の成分を混入させた処理空気、及び吸着材ユニットを流下した超高純度空気を分岐した再生空気を通じる10m3/min規模の図2に示す回分式TSA装置10と図3に示す調温調湿装置30を、クリーンルームに接続するシステムに関し長期繰り返し循環供給試験を行った結果、安定的に超高純度の空気に調製できることを見出して本発明を完成するに至った。
〔1〕即ち、本発明によれば、調温調湿されたクリーンルーム、クリーンチャンバ、及び/又はミニエンバイロメントのクリーン作業空間からの排気を処理空気としてこれを超高純度空気に調製して前記クリーン作業空間に循環供給するにあたり、当該処理空気を回分式温度スイング吸着装置に取り入れた後、調温調湿装置に通じるか、若しくは、当該処理空気を調温調湿装置に取り入れた後、回分式温度スイング吸着装置に通してクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する方法であって、上記回分式温度スイング吸着装置は、前記処理空気中の塩基性分子状汚染物質、有機性分子状汚染物質及び/又は酸性分子状汚染物質を吸着材で除去する吸着モードにある吸着材ユニットの系統、並びに、前記した塩基性、有機性及び又は酸性の分子状汚染物質を吸着した吸着材ユニットに、前記吸着モードにある吸着材ユニットを通過させた超高純度空気を分配器に流入させて分岐せしめ、分岐当該空気を再生空気として通じることにより、冷却・加熱する再生モードにある吸着材ユニットの系統を、並列に配置した(A)、(B)の2系統を備え、更に再生空気を冷却・加熱する再生空気冷却・加熱部、並びに、吸着モードと再生モードを交互に繰り返す(A)系統と(B)系統の切換え手段である第1バルブ及び第2バルブを備えたことを特徴とするクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する方法が提供される。
また本発明によれば、調温調湿されたクリーンルーム、クリーンチャンバ、及び/又はミニエンバイロメントのクリーン作業空間からの排気を処理空気としてこれを超高純度空気に調製して前記クリーン作業空間に循環供給するにあたり、当該処理空気を回分式温度スイング吸着装置に取り入れた後、調温調湿装置に通じるか、若しくは、当該処理空気を調温調湿装置に取り入れた後、回分式温度スイング吸着装置に通してクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する装置であって、上記回分式温度スイング吸着装置は、前記処理空気中の塩基性分子状汚染物質、有機性分子状汚染物質及び/又は酸性分子状汚染物質を吸着材で除去する吸着モードにある吸着材ユニットの系統、並びに、前記した塩基性、有機性及び又は酸性の分子状汚染物質を吸着した吸着材ユニットに、前記吸着モードにある吸着材ユニットを通過させた超高純度空気を分配器に流入させて分岐せしめ、分岐当該空気を再生空気として通じることにより、冷却・加熱する再生モードにある吸着材ユニットの系統を、並列に配置した(A)、(B)の2系統を備え、更に再生空気を冷却・加熱する再生空気冷却・加熱部、並びに、吸着モードと再生モードを交互に繰り返す(A)系統と(B)系統の切換え手段である第1バルブ及び第2バルブを備えたことを特徴とするクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する装置が提供される。
〔2〕また、本発明によれば、〔1〕の方法において、前記分配器は、前記吸着材ユニットを流下させた超高純度空気を供給空気と再生空気とに所定流量比で分岐するものであって、前記吸着材ユニットと前記第2バルブとの間に設置したことを特徴とする〔1〕記載のクリーンルーム排気を超高純度空気に調整する方法が提供される。
また、本発明によれば、上記装置において、前記分配器は、前記吸着材ユニットを流下させた超高純度空気を供給空気と再生空気とに所定流量比で分岐するものであって、前記吸着材ユニットと前記第2バルブとの間に設置したことを特徴とするクリーンルーム排気を超高純度空気に調整する装置が提供される。
〔3〕また、本発明によれば、〔1〕又は〔2〕の方法において、前記吸着材ユニットは、第1層に有機性分子状汚染物質及び酸性分子状汚染物質を選択的に吸着する活性炭と固体塩基性物質を含むものを用いた吸着材層a、第2層に塩基性分子状汚染物質を選択的に吸着する固体酸性物質を含むものを用いた吸着材層b及び第3層に有機性分子状汚染物質及びNOx、SOxを含む酸性分子状汚染物質を選択的に吸着する活性炭を含むものを用いた吸着材層cから構成されていることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する方法が提供される。
また、本発明によれば、上記装置において、前記吸着材ユニットは、第1層に有機性分子状汚染物質及び酸性分子状汚染物質を選択的に吸着する活性炭と固体塩基性物質を含むものを用いた吸着材層a、第2層に塩基性分子状汚染物質を選択的に吸着する固体酸性物質を含むものを用いた吸着材層b及び第3層に有機性分子状汚染物質及びNOx、SOxを含む酸性分子状汚染物質を選択的に吸着する活性炭を含むものを用いた吸着材層cから構成されていることを特徴とするクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する装置が提供される。
〔4〕また、本発明によれば、〔1〕の方法において、前記第1バルブ及び第2バルブは内部が枠型仕切板により4つの小室に区画されており板状回動弁体の回動によって各小室の開放と閉鎖を繰返して、前記(A)系統と(B)系統を切換える4ポート自動切換えバルブであることを特徴とする〔1〕記載のクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する方法が提供される。
また、本発明によれば、上記装置において、前記第1バルブ及び第2バルブは内部が枠型仕切板により4つの小室に区画されており板状回動弁体の回動によって各小室の開放と閉鎖を繰返して、前記(A)系統と(B)系統を切換える4ポート自動切換えバルブであることを特徴とするクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する装置が提供される。
〔5〕また、本発明によれば、〔1〕の方法において、前記調温調湿装置は、供給空気の流速乃至流量、静圧、温度及び関係湿度並びに超高純度調温調湿空気供給口における超高純度調温調湿空気の流速乃至流量、静圧、温度、関係湿度及び環境の全圧(大気圧)を計測する計測手段とその計測値を入力して必要な加湿水量を演算させる演算手段とその演算値を変換した制御信号により作動する加湿水ポンプ及びその水量を全量蒸発させるミニボイラを備えた冷凍サイクルを用いる空調装置であることを特徴とする〔1〕記載のクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する方法が提供される。
また、本発明によれば、上記装置において、前記調温調湿装置は、供給空気の流速乃至流量、静圧、温度及び関係湿度並びに超高純度調温調湿空気供給口における超高純度調温調湿空気の流速乃至流量、静圧、温度、関係湿度及び環境の全圧(大気圧)を計測する計測手段とその計測値を入力して必要な加湿水量を演算させる演算手段とその演算値を変換した制御信号により作動する加湿水ポンプ及びその水量を全量蒸発させるミニボイラを備えた冷凍サイクルを用いる空調装置であることを特徴とするクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する装置が提供される。
本発明のクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する方法は、ケミカルフィルタを使用せずに、処理空気中のアンモニア、硫黄酸化物(SOx)、アミン類を含む各種有機物を(非特許文献1)に記載の高純度空気に関する不純物要求値以下に長期に亘り連続安定に除去でき、又、窒素酸化物(NOx)、塩素イオン(Cl-)のいずれについても0.1ppb以下まで長期に亘り連続安定に除去できるので、産業廃棄物の大幅削減と云う環境改善に貢献することができる。
又、本発明のクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する方法は、ケミカルフィルタを使用しないため、寿命となったケミカルフィルタを新品と取替えるという大懸りな作業が無用となり、クリーンルーム内に設置されている装置の操業を停止させる必要もなく、汚染されたクリーン作業空間を超高純度空気の雰囲気下に回復させるために要していたクリーンアップエネルギーも無用となるという製品の製造コストに占める変動費を低減させる経済効果をもたらすことができる。
又、本発明の方法は、ケミカルフィルタを使用しないため予備のクリーン作業空間即ち予備のクリーンルーム等は無用となり、アンモニアをはじめとする分子状汚染物質をモニタする必要はなくなり、モニタ装置と要員が不要となるという製品の製造コストに占める固定費を低減させる大きな経済的効果をもたらすことができる。
さらに、本発明のクリーンルーム排気を超高純度空気に調製する方法によると、半永久的に連続安定して調温調湿した超高純度空気がクリーンルームに循環供給できるので操業度の向上と製品の歩留まり向上に寄与することができる。したがって、製品の製造コストの大幅低減に貢献することができる。加えて、クリーン作業空間からの排気を処理空気として取入れて粒子状汚染物質と分子状汚染物質の除去を行い、調温調湿を行って、そのクリーン作業空間に循環供給するから、その供給量と同量のクリーン作業空間内の空気を系外へ排出した1パス使い捨て方式に要した莫大なエネルギーに比べ本発明のクリーンルーム等のクリーン作業空間向けの調温調湿エネルギーは格段に削減できる。
さらに又、本発明の方法においては、循環空気ダクト55(図1)に高性能フィルタ(1)11(図1及び図2)を設置したのに加え、クリーン作業空間からの排気を処理空気としたから、粒子状汚染物質の濃度は既に極めて低減されており一旦取付けた高性能フィルタ(2)53(図1)は半永久的に連続して安定に使用できる。さらに、たとえ高性能フィルタ(1)11や除塵フィルタ(1)54(図1)を取替えるとしてもクリーン作業空間内の操業を停止する必要はない。
また、本発明の方法においては、使用する吸着材は、従来から知られている薬液を担持した吸着材やイオン交換樹脂と異なり、清浄な加熱空気と接触させることにより、既に吸着されている汚染物質を脱着して再生することが出来る。すなわち、繰返し再生使用可能であって、且つ、塩基性分子状汚染物質を高選択率で吸着する固体酸層と有機性分子状汚染物質及び酸性分子状汚染物質を高選択率で吸着する活性炭層と固体塩基性物質を含有する吸着材層をその固体酸層の上流側に、さらに、有機性分子状汚染物質を高選択率で吸着する活性炭層をその固体酸層の下流側に設けた3層からなる吸着材ユニットを用いたから、塩基性汚染物質であるアンモニアは0.05ppb以下、窒素酸化物(NOx)は0.1ppb以下、硫黄酸化物(SOx)は0.1ppb以下、塩素イオン(Cl-)は0.01ppb以下、アミン類を含む有機性分子状汚染物質はヘキサデカン換算で2ppb以下まで長期に亘り連続安定に除去できる。
従来の酸性汚染物質吸着材の場合、活性炭が元来持っている有機物の吸着能は塩基性物質の含浸により消失する。しかしながら、固体酸性物質は活性炭の有機物質の吸着能を阻害しないので、両者を混合使用しても、固体塩基性物質による酸性汚染物質の除去と活性炭による有機物の除去とが同時に可能となる。
又、本発明によれば、ケミカルフィルタ(C)を使用した場合に発生していた分子量の大きな有機性分子状汚染物質が脈動的に流入した際に、先に吸着していた分子量がそれより小さい有機性分子状汚染物質を追い出す現象は、本発明においては吸着材層cを設けたことによって吸着容量を増加させたことに加え、その処理空気と再生空気を用いる吸着/再生試験を行って吸着容量に余裕のある状態にあることを事前に確認した上で吸着モードから再生モードへ、さらに、再生モードから吸着モードへの切換えサイクル時間を設定しているから、本発明においては発生しない。
本発明における回分式TSA装置は、吸着材ユニットを並列に(A)、(B)2系統と再生機能を備えているから、(A)系統と(B)系統を交互に吸着モードと再生モードに繰返し切換えることによって半永久的に連続して安定にクリーンルーム排気を超高純度空気に調製することが可能である。
本発明における回分式TSA装置で用いる再生空気は、吸着モードにある吸着材ユニットを通過した超高純度空気を分岐して、しかも200〜250℃に加熱しているから、脱離後に吸着材に残留しているアンモニアに対する吸着平衡分圧は0.05ppb以下、窒素酸化物(NOx)に対する平衡分圧は0.1ppb以下、硫黄酸化物(SOx)に対する吸着平衡分圧は0.1ppb以下、塩素イオン(Cl-)に対する吸着平衡分圧は0.01ppb以下、アミン類を含む有機性分子状汚染物質に対する吸着平衡分圧は2ppb以下に相当するレベルとなる。
本発明における回分式TSA装置は、4ポート自動切換えバルブである第1バルブと第2バルブを備えているから、吸着モードと再生モードを交互に切換える際、クリーン作業空間への流れは断続することがなく、圧力変動は発生しない。したがって、超高純度空気と再生空気の流量比を1:1とするときは流量変動は発生しない。
又、本発明における回分式TSA装置は、ダクトの複雑な引きまわしがなく、装置はコンパクトであり、処理空気、清浄空気、再生空気の混入はない。しかも、ダクトとバルブの間に滞留・淀み箇所が生じないから、吸着モードと再生モードの切換え時においても、定常時においても超高純度空気中の分子状汚染物質濃度が増加したり、変動することはなく安定している。
本発明における回分式TSA装置は、吸着材ユニットを並列に(A)、(B)2系統と再生機構を備えているから、(A)系統と(B)系統を交互に吸着モードと再生モードに繰返し切換えることによって長期に亘って連続して安定にクリーンルーム排気を超高純度空気に調製できる。
又、本発明における回分式TSA装置と調温調湿装置に通じて得られる超高純度空気は、非特許文献1に記載の不純物要求値以下まで除去でき、しかも低コスト、省エネ且つ大量の排気を超高純度とする全く新規な調製方法である。
本発明の方法においては、環境の全圧力は一定、即ち、大気圧は常に標準大気圧であるとして関係湿度を制御する方法によって調温調湿する従来の調温調湿装置とは異なり、本発明の調温調湿装置は本発明の出願人が、特開2004―28421において開示した産業用空調装置であって、環境の全圧力(大気圧)、処理空気の流速乃至流量又は送風機全圧、処理空気の温度及び関係湿度、供給する超高純度空気の温度、関係湿度及び静圧を計測する計測手段と、その計測手段を用いて得られる計測値を入力して処理空気及び供給する超高純度調温調湿空気の密度及び絶対湿度が演算できる。
したがって、容易に、必要な冷却除湿量、必要な冷却除湿熱量、必要な加湿量及び必要な加湿熱量を算出させられる演算手段を備えた冷凍サイクルを用いる空調装置であるから、調温調湿に要するエネルギー量を従来以上に削減でき、精度よく調湿できる。
(第1の実施の態様)
以下、本発明を実施するための第1の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1はクリーン作業空間50からの排気を処理空気として処理空気導入口1から取入れて、処理空気中の分子状汚染物質及び粒子状汚染物質の除去と調温調湿を行って、超高純度調温調湿空気供給口2からクリーン作業空間50に超高純度調温調湿空気を供給する本発明の実施形態の構成図である。
図1において処理空気導入口1と超高純度調温調湿空気供給口2の間には、処理空気が流下する順に高性能フィルタ(1)11、回分式TSA装置10、調温調湿装置30が配置されている。
さらに回分式TSA装置10の構成を図2に示した。処理空気は処理空気導入口1から粒子状汚染物質を除去する高性能フィルタ(1)11に流入させた後、第1バルブ12を経て、吸着モードにある(A)系統の吸着材ユニット(A)13Aに流入させる。吸着材ユニット(A)13Aで分子状汚染物質を吸着除去した後、超高純度空気となり、吸着材ユニット(A)13Aと第2バルブ15の間に設置した分配器(A)14Aに流入させる。
分配器(A)により、超高純度空気の一部を分岐し、再生空気として使用する。再生空気とは、吸着モードが終了した吸着材ユニットに加熱した空気(再生空気)を送って、吸着した不純物を脱離させる工程(再生モード)に使用する空気である。
分配器(A)14Aにおいて、吸着モードが(A)系統の場合は、再生モードは、(B)系統となるから、(A)系統から第2バルブ15を通って超高純度空気送出口16へ流れる超高純度空気と再生空気加熱部28を経て第2バルブ15から(B)系統へ流れる再生空気を1:1から1:0.05の範囲の所定流量比に分岐され分配される。なお、分配器を使用しないで、直接、再生空気導入用送風機を用いて大気を導入してもよい。
分岐され、分配器(A)14Aを通過した超高純度空気は、超高純度空気ダクト(A)18内を流れて第2バルブ15を経て超高純度空気送出ダクト19を流れて超高純度空気送出口16に流入する。
(吸着材層a、b、c)
本発明において、吸着材ユニット(A)13A、吸着材ユニット(B)13Bは、各々a〜cの3層の吸着材層が直列に配列され一体化されている。第1層は、有機性物質及び酸性物質を選択的に吸着する活性炭と固体塩基性物質を含有し、通気時に圧力損失が僅少になるようにハニカム状、コルゲート状又はプリーツ状に加工して、更に焼成して調製した成型物を積層した吸着材層aよりなる。活性炭としては活性コークス、グラファイト、カーボン、活性炭素繊維等が挙げられ、固体塩基性物質としては酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、セピオライト、アルミナ、ゼオライト等が使用可能である。第2層は、塩基性物質を選択的に吸着する固体酸性物質であるチタンと珪素等の複合酸化物及び酸化バナジウム等を含有し通気時に圧力損失が僅少になるようにハニカム状、コルゲート状又はプリーツ状に加工して、更に焼成して調製した成形物を積層した吸着材層bよりなる。また第3層は、有機性物質を主に吸着する活性炭を含有し、通気時に圧力損失が僅少になるようにハニカム状、コルゲート状又はプリーツ状に加工して、更に焼成して調製した成形物を積層した吸着材層cよりなる。
なお本発明者らの知見によれば、当初、活性炭を含むものを用いた吸着材層と固体酸性物質を含むものを用いた吸着材層が環境大気に由来する酸性物質に対する除去性能が充分でなかった。そのため、第1層に有機性分子状汚染物質及び酸性分子状汚染物質を選択的に吸着する活性炭と固体塩基性物質を含むものを用いた吸着材層a、第2層に塩基性分子状汚染物質を選択的に吸着する固体酸性物質を含むものを用いた吸着材層b及び第3層に有機性分子状汚染物質及び酸性分子状汚染物質を選択的に吸着する活性炭を含むものを用いた吸着材層cから構成される吸着材ユニットに改良した。
吸着材ユニット(A)13Aに流入した処理空気からは吸着材層aを通過する間において、比較的分子量の大きな有機性分子状汚染物質と環境大気に由来するNOx、SOx、Cl-の酸性分子状汚染物質が除去され、次いで吸着材層bを通過する間でアンモニア並びに塩基性且つ有機性の分子状汚染物質であるTMA、TEA、NMP、他のアミン類が除去され、さらに吸着材層cを通過する間で、吸着材層aで吸着除去されないで、なお処理空気中に残存している有機性分子状汚染物質や酸性分子状汚染物質及び吸着材層bで吸着除去されなかったTMA、TEA、NMPが除去される。特に第3層で、有機性分子状汚染物質、酸性分子状汚染物質を選択的に除去するため、活性炭と固体塩基性物質を含む吸着材aと同様に構成すれば、第1層で除去されなかった低分子の窒素酸化物であるNOxも確実に除去される。
吸着材ユニット(A)13Aから流出した処理空気は、アンモニアは0.05ppb以下、窒素酸化物(NOx)は0.1ppb以下、硫黄酸化物(SOx)は0.1ppb以下、塩素イオン(Cl-)は0.1ppb以下、アミン類を含む有機性分子状汚染物質はヘキサデカン換算で2ppb以下まで除去された超高純度空気となる。
次に本発明においては、超高純度空気を、超高純度空気送出口16から図1の調温調湿装置30に流入させて、当該超高純度空気の温度、湿度の条件がクリーン作業空間50の要求条件を満たすように調整する。
即ち、図3の冷却除湿器32に流入させて、冷却除湿を行う。通常は4〜17℃の範囲の露点となる飽和湿度に調整される。次いで、調温器33に流入させて温度調整する。調温器33は15〜30℃の範囲にある設定温度に精度よく制御して調整することができ、通常は23±0.1℃に調整される。
さらに、図3の調湿器34に流入させて、湿度調整される。調湿器34は関係湿度35〜50%の範囲にある設定関係湿度に精度よく制御して調整することができ、通常は40±0.5%に調整される。本実施の形態においては調湿器34は、僅かな湿度変動に対応できるように必要水量を入力信号として作動させる調湿水ポンプ37とその水量を全量水蒸気とするミニボイラ36を備えており、必要な水分量を蒸発させ、水蒸気の状態で調湿する。又、半導体製造に適合する純水乃至超純水を調湿水取入れ口3から取入れて、調湿水タンク38に貯留した後、使用する。
本発明を実施する場合においては、最低限純水を用いるが、半導体製造の分野では超純水が必要とされ、不純物含有量がppbオーダ又はそれ以下が必要となる場合もある。水質もその分野に要求される水質を選ぶことになる。半導体製造においては、集積度に応じて抵抗率に直接関係する電解質以外に微粒子、生菌、有機炭素、シリカ等を十分除去した純度の高い純水乃至超純水を使用する。
従来の調温調湿装置においては、環境の全圧(通常、大気圧)は天候や季節の変化のいかんに関わらず、又、海抜600mの位置にこの装置が設置されていても、標準大気圧であるとして関係湿度を制御する方法によって調湿が行われている。そのため、大気圧の変動に伴う必要エネルギ量の変動と絶対湿度の変動には追随できていない。因みに、大気圧は1日(24時間)に、20〜50hPa変動しており、絶対湿度は2〜5%変動している。つまり、関係湿度は一定であっても絶対湿度は変動している。本発明が対象とする超クリーン作業空間内の加工作業には、関係湿度よりもむしろ絶対湿度を一定にした清浄化調温調湿空気を供給する必要があるから、本発明の実施の態様においては、特開2004―28421で開示した産業用空調装置を適用することが好ましい。
即ち、図3に示すように、超高純度空気送出口16における超高純度空気の流速、静圧、温度及び関係湿度、超高純度調温調湿空気供給口2における流速、静圧、温度及び関係湿度並びに環境の全圧を計測する計測手段である流速センサ(1)41、静圧センサ(1)42、温度センサ(1)43、関係湿度センサ(1)44、流速センサ(2)45、静圧センサ(2)46、温度センサ(2)47、関係湿度センサ(2)48、大気圧(全圧)センサ49を設置し、得られる計測値を入力して必要な加湿水量を演算させる演算手段40、その加湿水量の演算値を変換した制御信号により作動する加湿水ポンプ37及びその水量を全量蒸発させるミニボイラ36を備えた調温調湿装置である。
図3に示した調温調湿装置30で、温度及び湿度の調整を行った超高純度調温調湿空気は超高純度調温調湿空気送風機35で昇圧して、図1及び図3に示す超高純度調温調湿空気供給口2に送気して、クリーン作業空間50に供給する。
なお、図1に示す様に通常、クリーン作業空間50内の超高純度調温調湿空気吹出し口56付近には、清浄度クラスを最終調整する高性能フィルタ(2)53が設置されており、又、空気取入れ口(1)57付近には除塵フィルタ(1)54、取入れ空気ファン(1)58、さらに、クリーン作業空間からの排気を一連の処理装置10、30、50へ循環させるための循環送風機51、循環空気ダクト55が設置されている。
本発明の回分式TSA装置で用いられる第1バルブと第2バルブとしては、本出願人らが特開2006−300394において提案している4ポート自動切換えバルブを使用することが望ましい。以下その内容を、図7−8を用いて説明する。
本発明の実施の態様においては、4ポート自動切換えバルブ90は、内部に空間を有する筐体部91、当該空間部を4つの小室に区画する開口部92を有する枠形仕切板93、当該枠形仕切板93の開口部92を開放又は閉鎖する板状回動弁体94並びに当該4つの小室に区画されて存在する気体を常に流入させる流入ポートL1、流体の流入と流出を交互に行う流入/出ポート(1)L2、気体を常に流出させる流出ポートL3及び気体の流入と流出を交互に行う流入/出ポート(2)L4並びに前記板状回動弁体94を回転軸95周りに回動させる駆動手段96を備え、且つ、前記筐体部91を構成する部材、及び前記枠形仕切板93、前記回転軸95、前記板状回動弁体94は、好ましくは断熱機能を備え、且つ、いずれも同形状、同サイズ又は同機能を有する4ポート自動切換えバルブであることが望ましい。又、(A)系統と(B)系統の吸着モード、再生モードの切換えは第1バルブと第2バルブを同時に作動させることによって行う。
ここで本発明の実施の態様における回分式TSA装置の再生操作について図2を用いて説明する。前記したとおり、図2に示した分配器(A)14Aにおいて、吸着モードが(A)系統の場合は、再生モードは(B)系統となるから、(A)系統から第2バルブ15を通って超高純度空気送出口16へ流れる供給空気と、再生空気加熱部28を経て第2バルブ15から(B)系統へ流れる再生空気は、1:1から1:0.05の範囲の流量比で供給空気と再生空気に分配される。
再生モードは、加熱時間帯と冷却時間帯とから構成される。再生モードが加熱時間帯である場合において、図2の分配器(A)14Aで分岐された再生空気は、再生空気3方弁20を経て再生空気送風機22で昇圧されて再生空気予熱器24に流入して高温の再生空気のもつ廃熱を回収する。それによって、再生空気自身は常温から150〜200℃まで予熱昇温される。次いで再生空気は再生空気加熱器25に流入して200〜250℃に加熱されて流出して第2バルブ15から超高純度空気ダクト(B)18Bと分配器(B)14Bを経て吸着材ユニット(B)13Bに流入する。
200〜250℃に加熱された再生空気が吸着材ユニット(B)13Bに流入することによって吸着材は加熱され、前回のサイクルにおいて(B)系統が吸着モードのとき常温状態おいて吸着材に吸着されていたアンモニアが脱離され、高温状態の当該再生空気の気流中に混入する。この際、塩基性のアンモニア並びにTMA、TEA、NMP、他のアミン類の塩基性且つ有機性である分子状汚染物質は固体酸性物質を含むものからなる吸着材層bに、PGMEA、EGMBE、MIBK、シンナ類、シクロヘキサノン等の有機性分子状汚染物質等と環境大気に由来するCl-、NOx、SOxは活性炭を含むものからなる吸着材層aに、吸着材層aに吸着されないで処理空気中に残存している有機性分子状汚染物質や酸性分子状汚染物質及び吸着材層bで吸着されなかったTMA、TEA、NMPの塩基性且つ有機性分子状汚染物質は活性炭を含むものからなる吸着材層cにそれぞれ吸着されていたものが加熱により脱離される。
本発明中に用いる再生空気中のアンモニア、アミン類、その他の有機性分子状汚染物質、NOx、SOx、Cl-等酸性分子状汚染物質の濃度は、分配器(A)14Aから分岐したから超高純度空気中のそれらと同等である。しかも、これを高温に加熱して脱離に用いるため、それぞれの吸着平衡分圧は常温時の吸着平衡分圧より格段に低下させることができる。又、200〜250℃に加熱したから、熱膨張により再生空気の体積流量は常温の清浄空気のそれの0.64倍から1.77倍となり、被吸着物質の脱離に必要な熱エネルギーはもとより吸着材層中を流れる再生空気量として充分な流速を与えることができる。つまり、本発明の脱離条件によって、吸着材層中の分子状汚染物質は徹底的に脱離されて吸着材ユニットから排出される。それゆえ、吸着材ユニット(B)13Bが吸着モードになったときは、処理空気中のアンモニアは0.05ppb以下、窒素酸化物(NOx)は0.1ppb以下、硫黄酸化物(SOx)は0.1ppb以下、塩素イオン(Cl-)は0.1ppb以下、アミン類を含む有機性分子状汚染物質はヘキサデカン換算で2ppb以下となる超高純度空気が繰返し調製できる。
吸着材ユニット(B)13Bを流出した再生空気は第1バルブ12を経て再生空気予熱器24で60〜70℃まで冷却されると同時に常温の再生空気を予熱する熱交換が行われて再生空気排出口27から系外に排出される。通常は、再生空気排出口27は集合排ガス処理装置(図示せず)に接続され、処理される。
次に、再生モードが冷却時間帯となったとき、再生空気送風機22で昇圧された再生空気は再生空気予熱器24と再生空気加熱器25を流れて第2バルブ15から超高純度空気ダクト(B)18Bと分配器(B)14Bを経由して吸着材ユニット(B)13Bに流入する。再生モードが冷却時間帯である場合においては、再生空気加熱器25には通電しないから流入した再生空気は常温のまま吸着材ユニット(B)13B、第1バルブ12、再生空気予熱器24、再生空気排出口27を流れる。当然、加熱時間帯から冷却時間帯に切替わった時点は、常温の再生空気は、再生空気予熱器24、再生空気加熱器25、第2バルブ15、超高純度空気ダクト18B、分配器(B)14B、吸着材ユニット(B)13B、再生空気予熱器24、再生空気排出口27を冷却しながら流れる。
吸着モードにある(A)系統が再生モードに切替った時点は、加熱時間帯となり、再生空気加熱器25に通電されるから、再生空気は超高純度空気ダクト(A)18A、 分配器(A)14A、吸着材ユニット(A)13A、再生空気予熱器24、再生空気排出口27を、加熱しながら流れる。
吸着モードが(B)系統となった時、再生モードは(A)系統となるから、処理空気は第1バルブ12、吸着材ユニット(B)13Bを流れて清浄空気となり、分配器(B)14B、第2バルブ15、超高純度空気送出口16の順に流れ、分配器(B)14Bで分岐された再生空気は再生空気3方弁20、再生空気送風機22、再生空気予熱器24、再生空気加熱器25、第2バルブ15、超高純度空気ダクト(A)18A、吸着材ユニット(A)13A、第1バルブ12、再生空気予熱器24、再生空気排出口27の順に流れ、処理される。