JP2009073755A - 癌治療薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】 主に膵臓癌に対してより優れた治療効果を示す癌治療薬を提供する。
【解決手段】 本発明に係る癌治療薬は、シチジン2リン酸からデオキシシチジン2リン酸への還元を触媒するリボヌクレオチドリダクターゼの活性を阻害する作用を備える第1化合物たるジェムシタビンと、前記リボヌクレオチドリダクターゼの分解を亢進させる作用を備える第2化合物たるトラニラストとを組み合わせて構成してある。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明に係る癌治療薬は、シチジン2リン酸からデオキシシチジン2リン酸への還元を触媒するリボヌクレオチドリダクターゼの活性を阻害する作用を備える第1化合物たるジェムシタビンと、前記リボヌクレオチドリダクターゼの分解を亢進させる作用を備える第2化合物たるトラニラストとを組み合わせて構成してある。
【選択図】 図1
Description
本発明は癌治療薬、主に膵臓癌の治療に用いる治療薬に関する。
膵臓癌は、腹腔内の深部に位置するため早期発見が困難であるのに加え、充実性の腫瘤を形成して浸潤及び転移を起こし易く、また、外科手術により切除可能な場合であっても早期に再発する割合が高い難治癌であるため、膵臓癌に対しては化学療法による治療が重要な役割を果たしている。
かかる化学療法に用いる治療薬としては多くの場合、ジェムシタビンが選択されているが、更に有効な治療薬の開発が要求されている。
これに対して、後述する特許文献1には、例えばジェムシタビンとアセチルジナリン(CI−994)とを組み合わせた治療薬が開示されている。
特表2002−525320号公報
これに対して、後述する特許文献1には、例えばジェムシタビンとアセチルジナリン(CI−994)とを組み合わせた治療薬が開示されている。
しかしながら、アセチルジナリン(CI−994)は臨床試験中の癌治療剤であるので、どのような副作用を招来するのか不明であるのに加え、前記特許文献1には膵臓癌に対する試験結果が示されておらず、ジェムシタビンとアセチルジナリン(CI−994)とを組み合わせた治療薬が膵臓癌に対してどの程度の治療効果をもたらすのかが不明であるという問題があった。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、主に膵臓癌に対してより優れた治療効果を示す癌治療薬を提供する。
(1) 本発明に係る癌治療薬は、シチジン2リン酸(CDP)からデオキシシチジン2リン酸(dCDP)への還元を触媒するリボヌクレオチドリダクターゼの活性を阻害する作用を備える第1化合物と、前記リボヌクレオチドリダクターゼの分解を亢進させる作用を備える第2化合物とを組み合わせてなることを特徴とする。
(2) 本発明に係る癌治療薬は必要に応じて、前記第1化合物はジェムシタビンであることを特徴とする。
(3) また、本発明に係る癌治療薬は必要に応じて、前記第2化合物はトラニラストであることを特徴とする。
(4) 更に、本発明に係る癌治療薬は必要に応じて、治療対象の癌は膵臓癌であることを特徴とする。
本発明者は、市販されている複数の治療薬について鋭意検討した結果、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、及びケロイド等の治療に用いられているトラニラストと前述したジェムシタビンとを組み合わせてなる治療薬が膵臓癌に対して相乗的な治療効果を奏するという知見を得て本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明者はトラニラストとジェムシタビンとの相乗効果が奏されるのが以下の理由によることが解明された。
すなわち、本発明者はトラニラストとジェムシタビンとの相乗効果が奏されるのが以下の理由によることが解明された。
図1は、ジェムシタビン(GEM)による抗癌作用機序を説明する説明図である。
図1に示したように、細胞内では、デオキシシチジン(dCyd)からデオキシシチジン1リン酸(dCMP)が生成され、dCMPからデオキシシチジン2リン酸(dCDP)が生成される。一方、dCDPは、シチジン2リン酸(CDP)からリボヌクレオチドリダクターゼサブユニットM1(RRM1)による還元触媒作用によっても生成されており、両経路で生成されたdCDPから生成されたデオキシシチジン3リン酸(dCTP)を用いてDNAが構築・複製される。
図1に示したように、細胞内では、デオキシシチジン(dCyd)からデオキシシチジン1リン酸(dCMP)が生成され、dCMPからデオキシシチジン2リン酸(dCDP)が生成される。一方、dCDPは、シチジン2リン酸(CDP)からリボヌクレオチドリダクターゼサブユニットM1(RRM1)による還元触媒作用によっても生成されており、両経路で生成されたdCDPから生成されたデオキシシチジン3リン酸(dCTP)を用いてDNAが構築・複製される。
ところで、ジェムシタビン(dFdC)が細胞内に滲入すると、当該dFdCからジェムシタビン1リン酸(dFdCMP)が生成され、dFdCMPからジェムシタビン2リン酸(dFdCDP)が生成される。
このdFdCDPは、前述したRRM1の酵素活性を阻害するのでdCDPの生成量が減少する。
このdFdCDPは、前述したRRM1の酵素活性を阻害するのでdCDPの生成量が減少する。
一方、dFdCDPからはジェムシタビン3リン酸(dFdCTP)が生成されるようになっているので、細胞内におけるdFdCTPとdCTPとの濃度比は次第にdFdCTPの値が大きくなる方向へ傾き、DNAが複製する際にdCTPに代えてdFdCTPが取り込まれる。これによって当該細胞が死滅し、抗癌作用が奏されるのである。
ここで、本発明者は新たに、トラニラストは、前述したRRM1の分解能を備えるプロテアソームによるRRM1の分解を亢進させる作用を有するという知見を得た。
ここで、本発明者は新たに、トラニラストは、前述したRRM1の分解能を備えるプロテアソームによるRRM1の分解を亢進させる作用を有するという知見を得た。
従って、トラニラストが滲入した細胞内では、プロテアソームによるRRM1の分解が亢進されてジェムシタビンの標的酵素であるRRM1の総量が減少し、残存するRRM1の酵素活性もジェムシタビンの代謝産物であるdFdCDPによって阻害されるのである。しかも、RRM1の総量が減少しているため、RRM1に対するdFdCDPの相対濃度が高くなり、当該酵素に対する酵素阻害作用が増大する。
このようにして、シチジン2リン酸(CDP)からデオキシシチジン2リン酸(dCDP)への還元を触媒するリボヌクレオチドリダクターゼの活性を阻害する作用を備える第1化合物、例えばジェムシタビンと、前記リボヌクレオチドリダクターゼの分解を亢進させる作用を備える第2化合物、例えばトラニラストとの相乗効果が奏されるのである。
以上のような作用機序により両化合物による相乗効果が奏されるため、両化合物を組み合わせてなる癌治療薬は、正常細胞より活発な増殖性を示す略全ての種類の癌細胞に対して相乗的な抗癌作用を奏する。
特に膵臓癌については、両化合物による相乗的な抗癌作用が確認された。
特に膵臓癌については、両化合物による相乗的な抗癌作用が確認された。
(本発明の実施形態)
以下、本発明に係る癌治療薬について詳述する。
癌の化学療法剤として既に市販されているジェムシタビン、パクリタキセル、CPT−11(塩酸イリノテカン)、及び5−FU(5−Fluorouracil)と、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、及びケロイド等の治療剤として既に市販されているトラニラストとをそれぞれ組み合わせて癌細胞に対する作用をin vitro試験により検討した。
以下、本発明に係る癌治療薬について詳述する。
癌の化学療法剤として既に市販されているジェムシタビン、パクリタキセル、CPT−11(塩酸イリノテカン)、及び5−FU(5−Fluorouracil)と、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、及びケロイド等の治療剤として既に市販されているトラニラストとをそれぞれ組み合わせて癌細胞に対する作用をin vitro試験により検討した。
その結果、パクリタキセルとトラニラストとを組み合わせた癌治療薬、CPT−11とトラニラストとを組み合わせた癌治療薬、及び5−FUとトラニラストとを組み合わせた癌治療薬ではいずれも、パクリタキセル、CPT−11、及び5−FUをそれぞれ単独で用いた場合と比べて、癌細胞増殖抑制効果に変化は認められなかった。
しかし、ジェムシタビンとトラニラストとを組み合わせた癌治療薬を用いた場合、ジェムシタビンを単独で用いた場合に比べて、癌細胞増殖抑制効果が増大していた。
しかし、ジェムシタビンとトラニラストとを組み合わせた癌治療薬を用いた場合、ジェムシタビンを単独で用いた場合に比べて、癌細胞増殖抑制効果が増大していた。
一方、トラニラストを単独で用いた場合には癌細胞増殖抑制効果は認められなかった。
つまり、ジェムシタビンとトラニラストとを組み合わせた癌治療薬を用いた場合、相乗的な癌細胞増殖抑制効果が奏されていた。
つまり、ジェムシタビンとトラニラストとを組み合わせた癌治療薬を用いた場合、相乗的な癌細胞増殖抑制効果が奏されていた。
図1に示したように、ジェムシタビンによる癌細胞増殖抑制作用は、癌細胞内でジェムシタビン(dFdC)から代謝生成されたジェムシタビン2リン酸(dFdCDP)が、CDPからdCDPへの還元を触媒するリボヌクレオチドリダクターゼサブユニットM1(RRM1)の酵素活性阻害するとともに、dFdCDPから代謝生成されたdFdCTPがDNAに取り込まれることによって惹起されることが知られている。
一方、本発明者が新たにトラニラストの作用機序について検討したところ、トラニラストはプロテアソームによるRRM1の分解を亢進させる作用を有していることが解明された。
従って、トラニラストのプロテアソームによるRRM1の分解亢進作用によって癌細胞内におけるRRM1の総量が減少する一方、前述したようにジェムシタビンの代謝生成物であるdFdCDPによって癌細胞中に残存するRRM1の酵素活性も阻害されるため、トラニラストとジェムシタビンとの相乗作用が奏されるのである。
ところで、これらジェムシタビン及びトラニラストは既に市販されており、それぞれ用法、用量、及び副作用等も既知である。よって、ジェムシタビンとトラニラストとを組み合わせて癌治療薬として用いる場合であっても、当該癌治療薬を安全に用いることができる。
ここで、in vitroにあっては、ジェムシタビンが100nM〜100μMの濃度であり、トラニラストが25μM〜100μMの濃度になるように組み合わせた場合に癌細胞に対する相乗効果が認められ、より好ましくはジェムシタビンが1μM〜100μMの濃度であり、トラニラストが50μM〜100μMの濃度になるように組み合わせた場合に癌細胞に対する相乗効果が更に認められた。
ここで、ジェムシタビンは、通常1000mg/m2の投与量で30分間程度、点滴静注するが、直後の血中濃度は約65μMで半減期は19分、2時間後には略1/100の650nMに減少する。従って100nM〜100μMに設定したジェムシタビン濃度は妥当である。
一方、トラニラストは経口内服薬であり、300mg/日(100mg/回×3回)服用する。服用中のトラニラストの血中濃度は100μM以上であることが報告されているため、25〜100μMに設定したトラニラスト濃度は臨床使用量および血中濃度との対比においても妥当性がある。
ジェムシタビン(GEM)とトラニラストとを組み合わせてなる癌治療薬について説明する。
図2は、膵臓癌細胞株KP4のGEM及びトラニラストに対する感受性を試験した結果を示すグラフであり、縦軸は生細胞率を、また横軸はGEMの濃度をそれぞれ示している。
図2は、膵臓癌細胞株KP4のGEM及びトラニラストに対する感受性を試験した結果を示すグラフであり、縦軸は生細胞率を、また横軸はGEMの濃度をそれぞれ示している。
かかる感受性試験は次のようにして行った。
膵臓癌細胞株KP4(独立行政法人 理化学研究所より入手)を培養液に所要細胞密度になるよう懸濁させ、マイクロプレート(96穴)の各穴内に1×104細胞/穴となるようように分注し、CO2インキュベーター内、37℃で1晩、静置培養した。
ここで、培養液には、RPMI1640(シグマ社製)にウシ胎仔血清(FBS)(シグマ社製)を10%(容量/容量)になるように添加した溶液を用いた。
膵臓癌細胞株KP4(独立行政法人 理化学研究所より入手)を培養液に所要細胞密度になるよう懸濁させ、マイクロプレート(96穴)の各穴内に1×104細胞/穴となるようように分注し、CO2インキュベーター内、37℃で1晩、静置培養した。
ここで、培養液には、RPMI1640(シグマ社製)にウシ胎仔血清(FBS)(シグマ社製)を10%(容量/容量)になるように添加した溶液を用いた。
このようにしてKP4が培養された各穴を6つのグループに分け、その内の5つのグループにはそれぞれGEM(イーライ・リリー社製)を10nM、100nM、1μM、10μM、及び100μMになるように培養液に添加した。なお、残りの1グループの培養液にはGEMは添加していない。更に、これら6グループをそれぞれ5つのサブグループに分け、その内の4サブグループにそれぞれにトラニラスト(キッセイ薬品工業株式会社製)を各グループ別に25μM、50μM、75μM、及び100μMになるように培養液に添加した。なお、残りの1サブグループの培養液にはトラニラストは添加していない。
各穴内のKP4を更に48時間培養した後、各穴内のKP4の生細胞数をMTT法により求めた。そして、GEM及びトラニラストを添加していない場合のMTT法による測定値に対する、GEM及び/又はトラニラストを添加した場合のMTT法による測定値を求めることによって、生細胞率とした。
なお、MTT法による生細胞数の検出は、MTTキット(プロメガ社製)を用い、OD590nmを測定した。
なお、MTT法による生細胞数の検出は、MTTキット(プロメガ社製)を用い、OD590nmを測定した。
また、図中、白抜き四角印はトラニラストを添加していない場合を、白抜き三角印はトラニラストを25μMになるように添加した場合を、黒丸印はトラニラストを50μMになるように添加した場合を、黒四角印はトラニラストを75μMになるように添加した場合を、白抜き丸印はトラニラストを100μMになるように添加した場合を、それぞれ示している。
その結果、図2に示した如く、いずれの場合もGEMを添加した濃度が高くなるに従ってKP4の生細胞率は低下していたが、トラニラスト添加群においてトラニラスト50μM以上(黒丸印、黒四角印、白抜き丸印)では、GEM10μMの場合で、KP4の生細胞率は略0.4であり、トラニラスト無添加群(白抜き四角印)の略0.8より低い値を示していた。
そこで、生細胞率を70%になすに要するGEMの濃度(IC70)を図2に基づいて計算した。その結果、トラニラストが添加されていない場合では65.1μMであったのに対し、トラニラストが50μMの場合では4.49μMであり、GEMとトラニラストとを組み合わせてなる本発明に係る癌治療薬にあっては、GEMのIC70が略1/14に低減されていた。
つまり、トラニラストを50μMとなるように添加した本発明に係る癌治療薬にあっては、GEMの効果が略14倍増強されることが認められた。
つまり、トラニラストを50μMとなるように添加した本発明に係る癌治療薬にあっては、GEMの効果が略14倍増強されることが認められた。
図3は、GEM、トラニラスト、並びにGEM及びトラニラストを組み合わせてなる本発明に係る癌治療薬の膵臓癌細胞に対する影響を示すヒストグラムであり、縦軸は生細胞率を示している。なお、各数値は図2の対応する数値による。
図中、(a)はGEM及びトラニラストを添加していないコントロールであり、(b)はトラニラストのみを50μMになるように添加した場合を示しており、(c)はGEMのみを10μMになるように添加した場合を示している。また、(d)は本発明に係る癌治療薬の一例を示しており、GEMが10μMでありトラニラストが50μMになるように添加してある。
図3から明らかなように、(b)に示したトラニラストを単独で添加した場合は、(a)に示したコントロールとほぼ同じ値を示し、細胞増殖に何ら影響しなかった。一方、(c)に示したGEMを単独で添加した場合の生細胞率は略0.79であり、(d)に示した本発明に係る癌治療薬を添加した場合の生細胞率は略0.42であり、後者の生細胞率は前者の生細胞率に比べて半数値程度まで有意に減少していた。
これらの結果は、トラニラストがKP4のジェムシタビンに対する感受性を相乗的に増強することを示している。
これらの結果は、トラニラストがKP4のジェムシタビンに対する感受性を相乗的に増強することを示している。
次に、5−FUとトラニラストとを組み合わせてなる癌治療薬について説明する。
図4は、膵臓癌細胞株KP4の5−FU及びトラニラストに対する感受性を試験した結果を示すグラフであり、縦軸は生細胞率を、また横軸は5−FUの濃度をそれぞれ示している。
図4は、膵臓癌細胞株KP4の5−FU及びトラニラストに対する感受性を試験した結果を示すグラフであり、縦軸は生細胞率を、また横軸は5−FUの濃度をそれぞれ示している。
かかる感受性試験は、5−FU(協和発酵工業株式会社製)の添加濃度を100nM、1μM、10μM、100μM、及び1mMとした以外は、実施例1で説明した方法と同様にして行った。
なお、図中、白抜き四角印はトラニラストを添加していない場合を、白抜き三角印はトラニラストを25μMになるように添加した場合を、黒丸印はトラニラストを50μMになるように添加した場合を、黒四角印はトラニラストを75μMになるように添加した場合を、白抜き丸印はトラニラストを100μMになるように添加した場合をそれぞれ示している。
その結果、図4に示した如く、トラニラストを添加した濃度に拘りなく、5−FUを添加した濃度が高くなるに従ってKP4の生細胞率が低下していた。
その結果、図4に示した如く、トラニラストを添加した濃度に拘りなく、5−FUを添加した濃度が高くなるに従ってKP4の生細胞率が低下していた。
図5は、5−FU、トラニラスト、並びに5−FU及びトラニラストを組み合わせてなる癌治療薬の膵臓癌細胞に対する影響を示すヒストグラムであり、縦軸は生細胞率を示している。なお、各数値は図4の対応する数値による。
図中、(a)は5−FU及びトラニラストを添加していないコントロールであり、(b)はトラニラストのみを50μMになるように添加した場合を示しており、(c)は5−FUのみを100μMになるように添加した場合を示している。また、(d)は本発明に係る癌治療薬の一例を示しており、5−FUが100μMでありトラニラストが50μMになるように添加してある。
図5から明らかなように、5−FUを単独で添加した場合の生細胞率は約0.62であり、5−FU及びトラニラストを組み合わせた癌治療薬を添加した場合の生細胞率も約0.64であり、両者の生細胞率に有意差は認められなかった。
次に、CPT−11とトラニラストとを組み合わせてなる癌治療薬について説明する。
図6は、膵臓癌細胞株KP4のCPT−11及びトラニラストに対する感受性を試験した結果を示すグラフであり、縦軸は生細胞率を、また横軸はCPT−11の濃度をそれぞれ示している。
図6は、膵臓癌細胞株KP4のCPT−11及びトラニラストに対する感受性を試験した結果を示すグラフであり、縦軸は生細胞率を、また横軸はCPT−11の濃度をそれぞれ示している。
かかる感受性試験は、実施例1で説明した方法と同様にして行った。
なお、図中、白抜き四角印はトラニラストを添加していない場合を、白抜き三角印はトラニラストを25μMになるように添加した場合を、黒丸印はトラニラストを50μMになるように添加した場合を、黒四角印はトラニラストを75μMになるように添加した場合を、白抜き丸印はトラニラストを100μMになるように添加した場合をそれぞれ示している。
その結果、図6に示した如く、トラニラストを添加した濃度に拘りなく、CPT−11(株式会社ヤクルト本社製)を添加した濃度が高くなるに従ってKP4の生細胞率が低下していた。
なお、図中、白抜き四角印はトラニラストを添加していない場合を、白抜き三角印はトラニラストを25μMになるように添加した場合を、黒丸印はトラニラストを50μMになるように添加した場合を、黒四角印はトラニラストを75μMになるように添加した場合を、白抜き丸印はトラニラストを100μMになるように添加した場合をそれぞれ示している。
その結果、図6に示した如く、トラニラストを添加した濃度に拘りなく、CPT−11(株式会社ヤクルト本社製)を添加した濃度が高くなるに従ってKP4の生細胞率が低下していた。
図7は、CPT−11、トラニラスト、並びにCPT−11及びトラニラストを組み合わせてなる癌治療薬の膵臓癌細胞に対する影響を示すヒストグラムであり、縦軸は生細胞率を示している。なお、各数値は図6の対応する数値による。
図中、(a)はCPT−11及びトラニラストを添加していないコントロールであり、(b)はトラニラストのみを50μMになるように添加した場合を示しており、(c)はCPT−11のみを10μMになるように添加した場合を示している。また、(d)は本発明に係る癌治療薬の一例を示しており、CPT−11が10μMでありトラニラストが50μMになるように添加してある。
図7から明らかなように、CPT−11を単独で添加した場合の生細胞率は約0.83であり、CPT−11及びトラニラストを組み合わせた癌治療薬を添加した場合の生細胞率は約0.82であり、両者の生細胞率に有意差は認められなかった。
次に、パクリタキセルとトラニラストとを組み合わせてなる癌治療薬について説明する。
図8は、膵臓癌細胞株KP4のパクリタキセル及びトラニラストに対する感受性を試験した結果を示すグラフであり、縦軸は生細胞率を、また横軸はパクリタキセルの濃度をそれぞれ示している。
図8は、膵臓癌細胞株KP4のパクリタキセル及びトラニラストに対する感受性を試験した結果を示すグラフであり、縦軸は生細胞率を、また横軸はパクリタキセルの濃度をそれぞれ示している。
かかる感受性試験は、パクリタキセル(ブリストル・マイヤーズ社製)の添加濃度を100pM、1nM、10nM、100nM、及び1μMとした以外は、実施例1で説明した方法と同様にして行った。
なお、図中、白抜き四角印はトラニラストを添加していない場合を、白抜き三角印はトラニラストを25μMになるように添加した場合を、黒丸印はトラニラストを50μMになるように添加した場合を、黒四角印はトラニラストを75μMになるように添加した場合を、白抜き丸印はトラニラストを100μMになるように添加した場合をそれぞれ示している。
その結果、図8に示した如く、トラニラストを添加した濃度に拘りなく、パクリタキセルを添加した濃度が高くなるに従ってKP4の生細胞率が低下していた。
その結果、図8に示した如く、トラニラストを添加した濃度に拘りなく、パクリタキセルを添加した濃度が高くなるに従ってKP4の生細胞率が低下していた。
図9は、パクリタキセル、トラニラスト、並びにパクリタキセル及びトラニラストを組み合わせてなる癌治療薬の膵臓癌細胞に対する影響を示すヒストグラムであり、縦軸は生細胞率を示している。なお、各数値は図8の対応する数値による。
図中、(a)はパクリタキセル及びトラニラストを添加していないコントロールであり、(b)はトラニラストのみを50μMになるように添加した場合を示しており、(c)はパクリタキセルのみを100μMになるように添加した場合を示している。また、(d)は本発明に係る癌治療薬の一例を示しており、パクリタキセルが100μMでありトラニラストが50μMになるように添加してある。
図9から明らかなように、パクリタキセルを単独で添加した場合の生細胞率は約0.84であり、パクリタキセル及びトラニラストを組み合わせた癌治療薬を添加した場合の生細胞率は約0.82であり、両者の生細胞率に有意差は認められなかった。
次に、トラニラストの作用起序について検討した結果について説明する。
まず、細胞内におけるRRM1の濃度に及ぼすトラニラストの影響について検討した。
図10は、細胞内におけるRRM1の濃度に及ぼすトラニラストの影響について検討した結果(上段)を、比較例として細胞内におけるβ−アクチンの濃度に及ぼすトラニラストの影響を検討した結果(下段)とともに示す写真図である。
まず、細胞内におけるRRM1の濃度に及ぼすトラニラストの影響について検討した。
図10は、細胞内におけるRRM1の濃度に及ぼすトラニラストの影響について検討した結果(上段)を、比較例として細胞内におけるβ−アクチンの濃度に及ぼすトラニラストの影響を検討した結果(下段)とともに示す写真図である。
前述した培養液を適量ずつ6穴プレート(ファルコン社)に備えられた4穴に分注し、各穴内にKP4をそれぞれ略1×105 細胞/穴となるように懸濁した後、各穴内の培養液にトラニラストを50μM、100μM、200μMになるように添加した。なお、残りの培養器にはコントロールとしてトラニラストの添加は行っていない。
このプレートを37℃で48時間、CO2インキュベータ内にて静置培養した。そして、各穴別にKP4の細胞抽出液を調整し、得られた各細胞培養液を共試液としてトリスグリシンゲル(インビトロジェン社)で電気泳動し、RRM1抗体及びβ−アクチン抗体を用いたウェスタン・ブロッド法によりRRM1およびβ−アクチンの発現を解析した。
なお、RRM1の解析に用いる一次抗体には、マウスRRM1モノクローナル抗体(ケミコン社製)を用い、同二次抗体には、抗マウスIGg抗体(サンタクルス社製)を用いた。また、発色にはECLシステム(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いた。
図10から明らかなように、構造タンパク質の原料であるβ−アクチンについては、添加したトラニラストの濃度に拘らず全てコントロールと同程度の発色を示しており、細胞内におけるβ−アクチンの濃度に対してトラニラストはなにも影響を及ぼしてなかった。
これに対して、前述したようにGEMの標的酵素であるRRM1については、トラニラストを添加した場合の発色程度はコントロールの発色程度に比べて総じて弱く、しかもその発色程度はトラニラストの添加濃度が高くなるに従い、弱くなっていた。
つまり、トラニラストの添加量が多くなるに従って細胞内におけるRRM1の濃度は低下していた。
つまり、トラニラストの添加量が多くなるに従って細胞内におけるRRM1の濃度は低下していた。
次に、このようなトラニラスト(Tranilast)の添加によるRRM1濃度の低下の機序について検討した。
図11は、トラニラスト及びMG132の添加量を種々変更した場合の細胞内におけるRRM1の濃度について検討した結果(上段)を、比較例として細胞内におけるβ−アクチンの濃度について検討した結果(下段)とともに示す写真図である。なお、MG132は、細胞内でRRM1を分解するプロテアソームの活性を阻害する薬剤である。
図11は、トラニラスト及びMG132の添加量を種々変更した場合の細胞内におけるRRM1の濃度について検討した結果(上段)を、比較例として細胞内におけるβ−アクチンの濃度について検討した結果(下段)とともに示す写真図である。なお、MG132は、細胞内でRRM1を分解するプロテアソームの活性を阻害する薬剤である。
図11から明らかなように、β−アクチンについては、添加したトラニラストの濃度及びMG132の添加の有無に拘らず全てコントロールと同程度の発色を示していた。
これに対してRRM1については、MG132を添加していない場合は、前同様、トラニラストの添加量が多くなるに従って細胞内におけるRRM1の濃度は低下していたが、MG132を添加した場合はトラニラストの添加濃度に拘らず、MG132のみを添加した場合と略同程度の発色を示していた。
つまり、MG132によってプロテアソームの活性が阻害された場合、トラニラストはRRM1発現には、なんら影響を及ぼさなかったのである。
これに対してRRM1については、MG132を添加していない場合は、前同様、トラニラストの添加量が多くなるに従って細胞内におけるRRM1の濃度は低下していたが、MG132を添加した場合はトラニラストの添加濃度に拘らず、MG132のみを添加した場合と略同程度の発色を示していた。
つまり、MG132によってプロテアソームの活性が阻害された場合、トラニラストはRRM1発現には、なんら影響を及ぼさなかったのである。
以上の検討結果より、トラニラストはGEMの標的酵素であるRRM1を分解するプロテアソームによるRRM1の分解を亢進していることが判明した。
これによって、GEM及びトラニラストを併用した場合、GEMを単独で用いた場合に比べて抗癌作用が相乗的に増大するのである。
これによって、GEM及びトラニラストを併用した場合、GEMを単独で用いた場合に比べて抗癌作用が相乗的に増大するのである。
Claims (4)
- シチジン2リン酸からデオキシシチジン2リン酸への還元を触媒するリボヌクレオチドリダクターゼの活性を阻害する作用を備える第1化合物と、前記リボヌクレオチドリダクターゼの分解を亢進させる作用を備える第2化合物とを組み合わせてなる癌治療薬。
- 前記第1化合物はジェムシタビンである請求項1記載の癌治療薬。
- 前記第2化合物はトラニラストである請求項1又は2記載の癌治療薬。
- 治療対象の癌は膵臓癌である請求項1から3のいずれかに記載の癌治療薬。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007243792A JP2009073755A (ja) | 2007-09-20 | 2007-09-20 | 癌治療薬 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2007243792A JP2009073755A (ja) | 2007-09-20 | 2007-09-20 | 癌治療薬 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2009073755A true JP2009073755A (ja) | 2009-04-09 |
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ID=40609107
Family Applications (1)
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Country | Link |
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JP (1) | JP2009073755A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012012278A3 (en) * | 2010-07-20 | 2013-02-14 | Corning Incorporated | Compositions and methods for the treatment of pathological condition(s) related to gpr35 and/or gpr35-herg complex |
-
2007
- 2007-09-20 JP JP2007243792A patent/JP2009073755A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2012012278A3 (en) * | 2010-07-20 | 2013-02-14 | Corning Incorporated | Compositions and methods for the treatment of pathological condition(s) related to gpr35 and/or gpr35-herg complex |
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