JP2009063368A - 電流測定装置および電流測定方法 - Google Patents

電流測定装置および電流測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁路のエアギャップによる性能の劣化やヒステリシスの影響を排除可能な電流測定装置および電流測定方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、測定対象とする電気回路に鎖交させて前記測定対象に流れる電流を測定する電流測定装置は、パイプ状の容器からなり、当該容器中に所定の磁性流体が充填され、前記測定対象に鎖交させて連続性を有する磁路として用いられる磁路形成体と、前記磁路形成体に設けられ、前記測定対象に流れる電流によって前記磁路形成体に誘導される磁界を検出するコイルと、前記コイルにより検出した磁界から所定の周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を増幅する信号処理部と、前記信号処理部から出力された処理結果に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出し、当該算出結果を表示する電流算出部と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、電流測定装置および電流測定方法に関する。
従来、電線等を流れる電流を非接触で計測する電流測定装置(以下、カレントトランスフォーマー(CT)とも称する。)として、クランプオン電流計が多種販売されている(例えば、非特許文献1参照。)。また、CTの磁路の一部を、磁性流体を用いて形成し、磁性流体を利用して構成された磁気光学素子のファラデー回転角を測定することで電流を測定するCTが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平6−34669号公報 カタログ ディジタルクランプオンハイテスタ3281,3282等、日置電機(株)
通常、CTの磁芯は、フェライトやパーマロイ、積層電磁鋼板などを用いて形成され、これらの素材は、用途にあわせて選定される。ここで、CTの磁芯にはクランプ機構が付加されるため、固体で構成する磁路は、少なくとも2箇所以上の接続部が発生することとなる。本特許で意味しているクランプ構造とは、測定対象である電流と磁路を鎖交させるために、磁路が容易に脱着できる機構を意味している。この接続部の接続面は、面接触が理想的であるが、ミクロ的には接続面に微小な凹凸が存在するために点接触となり、接続部と測定対象との間には、エアギャップが形成される。磁路内では、エアギャップは大きな磁気抵抗となり、磁路の透磁性能の低下を引き起こす。このため、クランプ式のCTでは、磁路の不連続性という原因により測定精度が劣化するといった問題があった。
継ぎ目の無い(エアギャップのない)磁路をもつCTを製作することは可能である。しかしながら、このような継ぎ目のないCTを測定対象とする電気回路と鎖交させる際には、一旦、測定対象の電気回路をオープンにする、すなわち、電気回路を切断してCTの磁路に通し、再度接続する必要がある。つまり、継ぎ目のないCTの装着は、測定対象の新設時に行うか、または、既設の測定対象の休止時に対象とする電気回路を切断して作業を行わなければならないという問題がある。
発明者らが測定対象とする導体としては、パイプラインなどの長大構造物がある。これらの長大構造物に流れる直流防食電流や迷走電流、または、長大構造物に並走する高圧送電線により長大構造物に誘導される交流誘導電流を測定し、構造物の腐食原因調査や健全性を監視するといったニーズがある。
パイプラインに継ぎ目のないCTを装着するには、パイプラインの新設時に行うか、パイプラインが稼動中の場合には、稼動を停止して内部流送物を置換した後、パイプの切断工事により装着し、その後切断した箇所を復旧するといった、大掛かりで長期の稼動停止を伴う工事が必要となる。このため、既設の構造物に対して継ぎ目なしCTを適用することは、容易ではないという問題があった。
また、通常CTに使用される磁路の材料であるフェライトやパーマロイ、積層電磁鋼板には、ヒステリシスが存在する。このヒステリシスが位相の遅延や計測レスポンスの悪化を生じさせ、CTにおいて位相計測やハイレスポンスな計測を難しくする原因となっているという問題があり、適用に限界があるという問題があった。
他方、CTのS/N(Signal−to−Noise)比を向上させるためには、CTの磁路と被測定電気回路との鎖交数を増加させるといった対策が考えられる。
測定対象が導電ケーブルなどの柔軟性のあるケーブルであれば、測定対象をCTの磁路に複数回貫通させればよい。しかし、測定対象がパイプなど既設構造物の場合には、測定対象を複数回貫通させることは不可能である。また、CTの磁路を改造して鎖交数を増加させる手段が考えられるが、クランプさせるためには、分割数を増やし、多数の磁芯で構成することとなる。接続部に形成される複数のエアギャップは、精度を劣化させる原因であるため、精度を向上させるために、エアギャップを極力小さくする精密な継ぎ手構造が求められる。さらに、接続部には磁芯の応力が集中しやすくなるため、この応力集中に耐えられる頑丈な継ぎ手構造を形成しなければならなくなるといった問題が生じる。
従来のCTでは、磁路中の磁界をピックアップコイルで計測するか、または、磁路の間隙にホール素子などを挿入して、測定対象に流れる電流を測定している。これらのピックアップコイルやホール素子は、外部からのノイズに弱く、また、温度特性を持つといった欠点がある。このため、磁気シールドや温度補正などの対策を施しており、装置的に複雑となってコストもかかることとなる。
磁性流体および磁気光学効果を利用した電流センサは、例えば特許文献1に開示されている。これは、磁路の一部を磁性流体とし、磁性流体と磁気光学素子との接続をとることで、磁路を構成している。
特許文献1に記載の電流センサでは、クランプ構造に関する記述は無く、被測定導体への脱着においては、前述した問題が生じると考えられる。また、磁性流体と磁束補足部との間には固体と液体の接続部が形成されるため、磁路の均質性は失われることとなる。そのため、磁気特性の劣化要因は、この接合面が主な原因となることが多い。また、流体と固体の接続構造においては、流体の漏洩を防ぐ水密構造および形状を保持する強度を実現しなければならず、構造的に複雑になる。
また、コストダウンを目的として使用する磁性流体の量を削減するために、磁路の断面積を極力小さくした場合、測定対象とする電流の直流バイアスにより磁路が飽和してしまい、正確な電流量を測定することができない状況が発生することがある。また、磁性流体で構成する磁路に気泡が混入した場合、気泡の混入部分が磁路の断面欠損の原因となり、磁路の磁気特性が悪化する原因となる。加えて、磁性流体を封入する容器が不透明であると、磁路中に気泡が存在しても確認できないため、問題となる。
また、上記特許文献1に記載の電流センサでは、測定対象とする電流に関して交流、直流の区別が述べられておらず、測定対象が交流+直流である場合には、いずれの成分も計測できないという構成である。すなわち、測定対象とする電流が直流だとしても、ノイズのような交流の成分が測定対象に重畳された場合には、測定精度が悪くなることが懸念される。
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、磁路のエアギャップによる性能の劣化やヒステリシスの影響を排除可能な、新規かつ改良された電流測定装置および電流測定方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、磁性流体が充填されたパイプ状の容器を測定対象に巻きつけた後に、前記パイプ状の容器を閉ループ構造とすることによって、磁路のエアギャップによる性能の劣化やヒステリシスの影響を排除可能であることに想到した。
その主旨とするところは、以下の通りである。
(1)測定対象とする電気回路に鎖交させて前記測定対象に流れる電流を測定する電流測定装置であって、パイプ状の容器からなり、当該容器中に所定の磁性流体が充填され、前記測定対象に鎖交させて連続性を有する磁路として用いられる磁路形成体と、前記磁路形成体に設けられ、前記測定対象に流れる電流によって前記磁路形成体に誘導される磁界を検出するコイルと、前記コイルにより検出した磁界から所定の周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を増幅する信号処理部と、前記信号処理部から出力された処理結果に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出し、当該算出結果を表示する電流算出部と、を備えることを特徴とする、電流測定装置。
(2)測定対象とする電気回路に鎖交させて前記測定対象に流れる電流を測定する電流測定装置であって、パイプ状の容器からなり、当該容器中に所定の磁性流体が充填され、前記測定対象に鎖交させて連続性を有する磁路として用いられる磁路形成体と、前記磁路形成体の少なくとも一部に設けられ、前記測定対象に流れる電流によって前記磁性流体に誘導される磁界に起因する磁気光学効果を測定する磁気光学効果測定部と、前記磁気光学効果の測定結果から所定の周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を増幅する信号処理部と、前記信号処理部から出力された処理結果に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出し、当該算出結果を表示する電流算出部と、を備えることを特徴とする、電流測定装置。
(3)前前記磁気光学効果測定部には、所定波長を有する偏光が入射し、前記磁気光学効果測定部は、前記磁性流体による前記偏光の偏光面の回転角を測定し、前記電流算出部は、前記回転角に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出することを特徴とする、(2)に記載の電流測定装置。
(4)前記磁路形成体は、前記測定対象に複数回鎖交させて用いられることを特徴とする、(1)または(2)に記載の電流測定装置。
(5)前記電流測定装置は、直流電源と、前記直流電源により流れる電流の大きさを調整する電流調整部と、前記電流の大きさを計測する直流電流計と、を有する直流電流回路部を更に備え、前期直流電流回路部は、前記磁路形成体に鎖交するように設けられ、前記測定対象に流れる電流に重畳する直流成分とは逆向きの電流を流し、前記直流成分に起因する前記磁性流体の磁気飽和を軽減する
ことを特徴とする、(1)または(2)に記載の電流測定装置。
(6)前記直流電流回路部は、前記直流成分と打ち消しあう電流の大きさを決定することで、前記直流成分の大きさを測定することを特徴とする、(5)に記載の電流測定装置。
(7)前記パイプ状の容器は、樹脂材料を用いて形成されることを特徴とする、(1)または(2)に記載の電流測定装置。
(8)前記パイプ状の容器は、透明または半透明であることを特徴とする、(7)に記載の電流測定装置。
(9)測定対象とする電気回路に流れる電流を測定する電流測定方法であって、パイプ状の容器からなり、当該容器中に所定の磁性流体が充填され、所定の磁性流体が充填された磁路形成体を、前記測定対象に鎖交させるステップと、前記測定対象に流れる電流に起因して前記磁路形成体に誘導される磁界を検出するステップと、検出した前記磁界から所定の周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を増幅するステップと、増幅した前記周波数成分に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出し、当該算出結果を表示するステップと、を含むことを特徴とする、電流測定方法。
(10)測定対象とする電気回路に流れる電流を測定する電流測定方法であって、パイプ状の容器からなり、当該容器中に所定の磁性流体が充填され、所定の磁性流体が充填された磁路形成体を、前記測定対象に鎖交させるステップと、前記測定対象に流れる電流に起因して前記磁路形成体に誘導される磁界により前記磁路形成体に生じる磁気光学効果を測定するステップと、前記磁気光学効果の測定結果から所定の周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を増幅するステップと、増幅した前記周波数成分に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出し、当該算出結果を表示するステップと、を含むことを特徴とする、電流測定方法。
(11)前記磁気光学効果を測定するステップでは、所定波長を有する偏光を、前記磁路形成体の少なくとも一部に照射し、前記磁界による前記偏光の偏光面の回転角を測定することを特徴とする、(10)に記載の電流測定方法。
(12)前記磁路形成体を前記測定対象に鎖交させるステップでは、中空の前記パイプ状の容器、または、前記所定の磁性流体が一部注入された前記パイプ状の容器を前記測定対象に鎖交させ、前記測定対象に鎖交させた前記パイプ状の容器に、更に前記所定の磁性流体を注入することを特徴とする、(9)または(10)に記載の電流測定方法。
(13)前記磁路形成体を前記測定対象に鎖交させるステップと、前記磁界を検出するステップとの間に、前記測定対象に流れる電流に重畳する直流成分とは逆向きの電流を流す直流電流回路部を、前記磁路形成体に対して鎖交させ、前記直流成分に起因する前記磁性流体の磁気飽和を軽減するステップを更に含むことを特徴とする、(9)に記載の電流測定方法。
(14)前記磁路形成体を前記測定対象に鎖交させるステップと、前記磁気光学効果を測定するステップとの間に、前記測定対象に流れる電流に重畳する直流成分とは逆向きの電流を流す直流電流回路部を、前記磁路形成体に対して鎖交させ、前記直流成分に起因する前記磁性流体の磁気飽和を軽減するステップを更に含むことを特徴とする、(10)に記載の電流測定方法。
本発明によれば、従来問題となっていたクランプ式のCTにおける磁路のエアギャップによる性能の劣化やヒステリシスの影響を排除できる。また、パイプラインなどの既設構造物の切断工事などを必要とせず、着脱可能で電流を測定できる大型CTを実現することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、以下の説明では、測定対象である電気回路がパイプラインである場合について説明するが、本発明に係る電流測定装置の測定対象が下記に示す例に限定されるわけではなく、電流を流しうる金属を用いて形成された任意の構造体に適用可能である。
(第1の実施形態)
以下に、図1〜図3を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る電流測定装置および電流測定方法について、詳細に説明する。図1および図2は、本実施形態に係る電流測定装置について説明するための説明図であり、図3は、本実施形態に係る電流測定装置を測定対象に設置する方法を説明するための説明図である。
<電流測定装置10の構成について>
図1は、本実施形態に係る電流測定装置10をパイプライン1内に流れる交流電流計測に適用した例である。図1(a)および図1(b)に示したように、本実施形態に係る電流測定装置10は、磁路形成体に対応する磁路形成用パイプ101と、ピックアップコイル103と、信号処理部であるフィルタ・アンプ回路109と、電流算出部111と、を備える。
磁路形成用パイプ101(以下、パイプ101とも称する。)は、例えば樹脂材料等を用いて形成される半透明または透明のパイプ状容器である。この磁路形成用パイプ101は、容易に形状を変えることが可能であり、磁路形成用パイプ101の形状を変形させることで、任意形状の測定対象に対して電流測定を行うことが可能となる。磁路形成用パイプ101に用いられる樹脂材料は、磁性流体に用いられる溶媒に対して耐久性を有するものであれば、任意のものを使用可能であり、例えば、テフロン(登録商標)等の樹脂材料を用いることができる。
この磁路形成用パイプ101の内部には、所定の磁性流体12が充填される。磁性流体は、所定の溶媒中にマグネタイト等の強磁性体粒子が安定に分散している液体である。本実施形態に係る電流測定装置10では、例えば、強磁性体粒子として四三酸化鉄(マグネタイト、Fe)を含み、溶媒としてイソパラフィンを含む磁性流体を使用することができる。この磁性流体12は、例えば、20℃における比重が1.1〜1.4程度であり、20℃における粘度が10〜22mPa・sec程度であり、飽和磁化が33〜70mT程度であることが好ましい。このような磁性流体は、例えば、シグマハイケミカル社やフェローテック社から入手することも可能である。
かかる磁路形成用パイプ101は、測定対象に1回または複数回巻きつけられた後に、ピックアップコイル103が装着される。その後、磁路形成用パイプ101の端部が、以下で説明する磁性流体注入部105に接続され、ギャップ構造や磁気的な不連続性の存在しない閉ループ構造となる。
ピックアップコイル103は、磁路形成用パイプ101に装着され、測定対象であるパイプライン1に流れる電流によりパイプ101に誘導される磁界を検出する。本実施形態に係るピックアップコイル103は、磁路形成用パイプ101に装着可能なものであれば、任意のものを使用することが可能である。ピックアップコイル103のパイプ101への装着方法は特に限定されるわけではなく、例えば、中空のピックアップコイル103を用いて、パイプ101をピックアップコイル103に通すことで、コイル103の設置を行ってもよい。また、ピックアップコイル103の巻き数等は、測定対象とする電流の大きさや必要とする精度、および、磁性流体で構成する磁路と被測定電気回路の鎖交数で決定すればよい。
フィルタ・アンプ回路109は、ピックアップコイル103が検出した磁界に関する出力信号から、所定の周波数成分のものを抽出し、抽出した周波数成分の信号を増幅する。フィルタ・アンプ回路109が抽出する周波数は、例えば、測定対象が設置されている国や地域の商用周波数とすることができる。例えば、測定対象が東日本に存在する場合には、抽出する周波数を例えば50Hzと設定することが可能であり、測定対象が西日本に存在する場合には、抽出する周波数を例えば60Hzと設定することが可能である。周波数成分の抽出に際しては、フィルタ・アンプ回路109は、例えば、ローパスフィルター、ハイパスフィルターまたはバンドパスフィルター等の各種フィルタやデジタルフィルタ等を利用することができる。
なお、信号処理部は、上述のようにフィルタを用いて周波数成分を検出する代わりに、同期検波を用いて所定の周波数成分を検出してもよい。
電流算出部111は、信号処理部であるフィルタ・アンプ回路109の出力値に基づいて、測定対象であるパイプライン1に流れる電流を算出し、算出結果を表示する。電流算出部111は、フィルタ・アンプ回路109の出力値に基づいて、出力信号の振幅等を測定してもよく、ピックアップコイル103の出力値と標準電流量との相関を、検量線やピックアップテーブル等の形で把握しておき、これらに基づいて電流を算出してもよい。
本実施形態に係る電流測定装置10は、例えば図1(a)に示したように、直流電源151と、電流調節部153と、直流電流計155とを備えた直流電流回路部150を更に備えてもよい。この直流電流回路部150は、磁路形成体である磁路形成用パイプ101に鎖交するように設置される。かかる直流電流回路部150は、測定対象に流れる電流に含まれる直流成分に起因する磁性流体12の磁気飽和を軽減するために用いられる。また、かかる直流電流回路部150を用いることで、測定対象に流れる電流に含まれる直流成分の大きさを計測することも可能である。直流電流回路部150については、以下で改めて説明する。
以上、本実施形態に係る電流測定装置の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化した装置により構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
<電流測定装置10による電流測定方法について>
続いて、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る電流測定方法について、詳細に説明する。
本実施形態に係る電流測定方法では、まず、中空のピックアップコイル103に、半透明なテフロンパイプ101を通し、測定対象とする電気回路であるパイプライン1に複数回(図1(a)においては、4回)巻きつけ、パイプ101の両端を、水密製を有する継ぎ手113を用いて、図2に示す磁性流体注入部105に接続する。
図2に示すように、磁性流体注入器14のノズルを、磁性流体注入部105に溜めている磁性流体下にある注入口に差込み空気を混入させないように差し込み、磁性流体12を注入していく。磁性流体注入器14の選定は、磁性流体12の粘性に応じて、ポンプやグリスガン等を選択することが可能である。また、注入時に気泡が混入したか否かは、テフロンパイプが半透明なため判別が容易であり、気泡がパイプ端から出るまで磁性流体を注入していけばよい。
また、磁性流体12の粘度が弱くパイプ101内の空気の押し出しよりも早く流動してしまう場合には、図3(a)に示すようにパイプ容器を傾斜させておき、下部より空気を押し出しながら磁性流体注入器14にて磁性流体12を充填していく。磁性流体12がパイプ101内に気泡なく充填されたら、パイプ101の両端を封止してから測定対象とするパイプライン1に配管させる(図3(b))。パイプライン1への巻きつけが終了すると、パイプ101の両端を磁性流体注入部105に配管し、残った空間に対して磁性流体を充填する(図3(c))。なお、パイプ101を測定対象であるパイプライン1に巻きつける際には、例えば図3(c)に示したように、磁路形成用パイプ101と、測定対象であるパイプライン1との間に、隙間が出来ていてもかまわない。
磁性流体を磁性流体注入部105に十分充填した後、磁路全域にわたり気泡が無いことを確認して、磁性流体注入部105を封止栓107で密封する。本実施形態では、磁路中に気泡が混入しないように磁性流体注入部105を注入する場合について説明したが、この方法に限定されるわけではなく、気泡を混入させずにパイプに磁性流体を充満させる方法であれば、磁性流体の粘度にあわせて任意の方法を用いることが可能である。
本実施形態に係るパイプライン1に流れる交流電流の計測回路は、通常のCTでの測定における信号処理となんら変わることは無く、ピックアップコイル103の出力に含まれる計測対象とする周波数成分を、フィルタ・アンプ回路109または同期検波で検知する処理を行い、振幅等を測定して測定結果を表示すれば良い。
なお、本実施形態に係る電流測定方法の適用においては、事前に以下で説明するような校正作業を行ってピックアップコイル103の出力測定結果と標準電流量との相関を把握し、ピックアップコイルの出力測定結果と標準電流量との相関を表す情報を電流算出部111に記憶させておくことで、測定対象とする電流量を把握することができる。
校正方法は、例えば、以下のように行うことが可能である。まず、磁性流体を用いたCTが装着された時点で、測定対象とする導体の電源をゼロとし、出力調整機能および出力電流表示機能を有する交流発生電源、または、交流発生電源と交流電流測定器の電気回路を、磁性流体のCTに鎖交させる。そして、磁性流体のCTに対して所定の値の交流電流を通電して交流電流測定器の読みを真の値とし、その際のピックアップコイルの出力を記録すればよい。測定対象とする電流のレンジにあわせて、上記真の値を変化させてピックアップコイルの出力値を数点計測し、真の値と計測値との相関を把握する。得られた相関を表す情報を、電流算出部111に記憶させる。
また、測定対象とする導体が稼動中のパイプラインのような活線であり電流の通電停止が不可能である場合、または、誘導電流等が重畳されている導体において、測定対象とする導体電流をゼロにできない場合には、事前に同じ設計で磁性流体のCTを作成し、上記と同じ出力電流表示機能のある交流発生電源または交流発生電源と交流電流測定器の電気回路を磁性流体のCTに対して鎖交させて、交流を通電する。この際に得られる交流電流測定器の読みを真の値とし、ピックアップコイルの出力を記録すればよい。
ピックアップコイルにより磁路中の磁界を検出する際、ピックアップコイルの特性上、磁界の変化量を検知する。そのため、測定対象とする電流に直流が重畳していても問題はないが、直流電流成分が大きく、かつ、磁路の断面積が十分な大きさがとられていない場合には、磁気飽和による検知能力の不良が起こる。このため、CTの設計に際しては、予め直流成分の重畳を考慮して磁気飽和しない磁路の断面積を決定し、CTを設計してもよい。また、例えば図1に示したように、直流電流回路部150によって直流成分とは反対方向に直流電流を流すことで、磁気飽和を防ぐことができる。直流電流量の大きさの調整は、例えば、オシロスコープなどによりピックアップコイルの出力波形を観察して、交流波形が変形しない大きさを選定すればよい。
電流算出部111は、信号処理されたピックアップコイルの出力に応じた真の電流値のデータを照会して、測定対象に流れる電流を出力することが可能である。
以上説明したような電流測定装置および電流測定方法を用いることで、従来問題となっていたクランプ式のCTにおける磁路のエアギャップによる性能の劣化やヒステリシスの影響を排除できる。また、ノイズの影響や直流電流の重畳による磁路の飽和を排除し、パイプラインなどの既設構造物の切断工事などを必要とせず、着脱可能で電流を測定できる大型CTを実現することができる。
(第2の実施形態)
続いて、図4〜図8を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る電流測定装置および電流測定方法について、詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る電流測定装置10について説明するための説明図であり、図5は、本実施形態に係る電流測定装置10に設けられる磁気光学効果測定部について説明するための説明図である。図6および図7は、本実施形態に係る電流測定方法について説明するための説明図である。図8は、直流電源の出力を変化させた場合の光センサの出力変化について説明するためのグラフ図である。
<電流測定装置10の構成について>
まず、図4を参照しながら、磁性流体の磁気光学特性を利用して電流を計測する電流測定装置10について、詳細に説明する。図4(a)および図4(b)に示したように、本実施形態に係る電流測定装置10は、磁路形成体に対応する磁路形成用パイプ101と、信号処理部であるフィルタ・アンプ回路109と、電流算出部111と、磁気光学効果測定部200と、を備える。
本実施形態に係る磁路形成用パイプ101と、電流算出部111とは、本発明の第1の実施形態に係る磁路形成用パイプ101と、電流算出部111と同様の構成を有し、同一の効果を奏するため、詳細な説明は省略する。
磁気光学効果測定部200は、測定対象であるパイプライン1に流れる電流によって、磁路形成用パイプ101中の磁性流体12に生じる磁気光学効果を測定し、測定結果をフィルタ・アンプ回路109に出力する。磁気光学効果測定部200のより詳細な構成については、以下で改めて説明する。
フィルタ・アンプ回路109は、磁気光学効果測定部200が検出した磁気光学効果に関する出力値(更に詳細には、後述のような光センサからの出力値)から、所定の周波数成分のものを抽出し、抽出した周波数成分の信号を増幅する。フィルタ・アンプ回路109が抽出する周波数は、例えば、測定対象が設置されている国や地域の商用周波数の2倍の値とすることができる。例えば、測定対象が東日本に存在する場合には、抽出する周波数を例えば100Hzと設定することが可能であり、測定対象が西日本に存在する場合には、抽出する周波数を例えば120Hzと設定することが可能である。周波数成分の抽出に際しては、フィルタ・アンプ回路109は、例えば、ローパスフィルター、ハイパスフィルターまたはバンドパスフィルター等の各種フィルタやデジタルフィルタ等を利用することができる。
なお、信号処理部は、上述のようにフィルタを用いて周波数成分を検出する代わりに、同期検波を用いて所定の周波数成分を検出してもよい。
また、本実施形態に係る電流測定装置10は、例えば図4(a)に示したように、直流電源151と、電流調節部153と、直流電流計155とを備えた直流電流回路部150を更に備えてもよい。かかる直流電流回路部150は、本発明の第1の実施形態に係る直流電流回路部150と同様の構成を有し、同一の効果を奏するため、詳細な説明は省略する。
<磁気光学効果測定部200の構成について>
続いて、図5を参照しながら、本実施形態に係る磁気光学効果測定部200の構成について、詳細に説明する。図5は、本実施形態に係る磁気光学効果測定部200について説明するための説明図である。
図5(a)に示したように、本実施形態に係る磁気光学効果測定部200は、光源201と、検光子203と、磁性流体膜250と、ビームスプリッター205と、光センサ207,209とを主に備える。
光源201は、所定波長の光を射出する。本実施形態に係る光源としては、各種レーザーや、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等の光量に脈動のない光源を使用することが可能である。光源201が射出する光の波長は、用いられる磁性流体12の種類に応じて決定される。
検光子203は、光源201から射出された光の中から、所定の偏光面を有する偏光のみを透過させる偏光子である。本実施形態に係る検光子203は、例えば、光源201からの光を、P偏光やS偏光へと変換する。ここで、P偏光とは、試料面に入射する光の電気ベクトルの振動方向が、試料面の法線と光の進行方法である波面の法線とを含む面に平行な直線偏光のことであり、S偏光とは、試料面に入射する光の電気ベクトルの振動方向が、試料面の法線と光の進行方法である波面の法線とを含む面に垂直な直線偏光のことである。
磁性流体膜250は、例えば図5(b)に示したように、磁路形成用パイプ101の一部に設けられた石英ガラス等からなるガラスセル251を用いて形成される。このガラスセル251は、複数枚の石英ガラスを用いて形成される略直方体形状を有しており、その両端は、磁路であるパイプ101と接続されている。また、ガラスセル251の厚みは、磁性流体12の厚みが数十マイクロメートルから数百マイクロメートルとなるように形成される。
ビームスプリッター205は、当該ビームスプリッター205に入射した光を、2つの光路に分岐させる。本実施形態に係るビームスプリッター205では、コットン・ムートン効果により偏光面が回転した光を、P偏光成分を有する光の光路と、S偏光成分を有する光の光路とに分岐する。
光センサ207,209は、当該センサに入射した光の検知を行い、検知した光を、光量に応じた電圧に変換して出力する。この光センサとしては、例えばフォトディテクタ等を使用することが可能である。
以上、本実施形態に係る電流測定装置の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化した装置により構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
<本実施形態に係る電流測定方法について>
続いて、図6〜図8を参照しながら、本実施形態に係る電流測定方法について、詳細に説明する。図6および図7は、本実施形態に係る電流測定方法を説明するための説明図であり、図8は、直流電源の出力を変化させた場合の光センサの出力変化について説明するためのグラフ図である。
図6に示したように、光源201から射出された所定波長を有する光は、検光子203を透過することで、S偏光のみの光となる。この透過光は、磁性流体膜250を透過する間に、光の進行方向と垂直な磁化強度に応じて、コットン・ムートン効果により偏光面が回転する。
コットン・ムートン効果による偏光面の回転角は、光源201が射出する光の波長や、磁性流体12の種類(例えば、磁化特性と屈折率との関係等)や、磁性流体12の濃度や、磁性流体膜250の厚みによって変化するため、測定対象とする電流の周波数や振幅などにより、適切に選定する必要がある。
磁性流体膜250を透過した偏光は、ビームスプリッター205に入射して、鉛直方向のS偏光成分と水平方向のP偏光成分に分離され、P偏光成分は進行方向(すなわち、光源201から検光子203へと向かう光軸方向)に透過され、S偏光成分は横90°方向に反射される。
S偏光成分およびP偏光成分に分離された偏光は、それぞれ光センサ207および209により検知され、光量に応じた電圧として変換される。これら光センサ207,209の出力信号は、それぞれフィルタ・アンプ回路109へと出力され、計測目標とする電流の周波数fの2倍の周波数2fにあわせてフィルタリングが行われた後に増幅され、電流算出部111へと出力される。
本実施形態に係る電流測定方法においては、測定対象とする交流電流に重畳している直流成分を除去した後、交流電流量を測定する必要がある。そのため、本実施形態に係る電流測定方法においては、直流成分を相殺する必要がある。この直流成分の相殺方法については、以下で改めて説明する。
[偏光面の回転について]
検光子203を、光源201から射出された光の中からS偏光のみが検光子203を透過するように設定すると、測定電流が0、すなわち磁性流体膜20に印加される磁界が0となる場合には、磁性流体膜20を通過する偏光面の回転は生じない。そのため、ビームスプリッター205に入射する偏光の偏光成分はS偏光成分のみとなり、鉛直方向のS偏光成分のみが連続して光センサ207により検出される。また、このような場合には、P偏光成分はゼロであるため、光センサ209が配置された光路へと分岐される偏光は存在せず、光センサ209の出力は0となる。
一方、図6に示したように、測定対象に流れている交流電流の直流電流バイアス分が0である場合には、図6(b)に示したように、ゼロ点を中心にした交流電流振幅が作り出す交番磁界Hが磁性流体膜250に対して印加される。
この場合、磁性流体膜250を透過する偏光の偏光面は、コットン・ムートン効果により交番して回転を受ける。このときの回転角をθとすると、交番磁界Hと回転角θとの関係は、以下の(1)式のようになる。ここで、下記(1)式において、αは磁気光学素子のもつ回転係数であり、本実施形態においては、磁性流体の持つ光磁気回転係数である。
Figure 2009063368
従って、磁性流体膜250を透過した偏光の偏光面は、交番磁界Hに同期して回転することとなり、回転の度合い、すなわち回転角は、交番磁界Hの大きさに依存する。
回転した偏光面がビームスプリッター205へと入射すると、偏光面が回転した偏光は、P偏光およびS偏光に分離される。その際、各偏光成分の大きさは、それぞれ以下に示した(2)式および(3)式で表される。
Figure 2009063368
ここで、上記(2)式におけるApは、光センサ209により検知されるP偏光成分の大きさであり、Kは、光センサ209の光電変換係数であり、Aは、ビームスプリッター205に入射した全光量である。同様に、上記(3)式におけるAsは、光センサ207により検知されるS偏光成分の大きさである。なお、(2)式および(3)式に絶対値がついている理由は、偏光面はゼロ点を中心に交番して左右に回転するものの、光センサ207,209の出力は、常に正または0だからである。
上記(2)式および(3)式から明らかなように、どちらの式も常に正または0の値しかとらないため、光センサ207,209の出力は、計測しようとしている周波数を有するサインカーブにおいて負の部分が反転した形となり、見かけ上は周波数の2倍の周波数とみなせる信号に比例した出力となる。
従って、光センサ207,209からの出力波形の周波数は、計測しようとしている周波数と強い相関を有することとなるため、光センサ207,209からの出力波形を用いて、測定対象に流れている電流の大きさを算出することが可能となる。
なお、上述のようなコットン・ムートン効果による偏光面の回転角θは、磁性流体膜250の厚みと、磁性流体膜250にかかる磁界の強度とに比例する。ここで、磁性流体膜250の厚みが厚くなると、偏光面の回転角θは大きくなるものの、磁性流体膜250を透過する光の透過率が低くなる。そのため、磁性流体膜250の厚みは、用いる光源201が射出可能な光強度を勘案して決定する必要があり、上述のように、例えば数十μm〜200μm程度の厚みに設定される。他方、磁性流体膜250にかかる磁界の大きさは、さほど大きなものではないため、磁界による偏光面の回転角θは、小さいものとなる。このような磁性流体膜250の厚みと、この磁性流体膜250にかかる磁界の強度との相乗効果により、実際の偏光面の回転角θは、小さなものとなる。
ここで、(2)式および(3)式において、θが十分に小さく±に振動しているとすると、sinθ<<cosθとなり、さらにcosθは1に近い値での振幅となるため、S偏光成分の光センサ出力値は、図6(b)に示したように、0ラインとは交差しないところで振動することとなる。
続いて、図7を参照しながら、測定対象に直流成分の電流が重畳した場合(すなわち、測定対象を流れる電流に直流成分が含有されている場合)における各光センサ207,209の出力波形について、詳細に説明する。
測定しようとしている交流電流に直流成分Dが重畳している場合、例えば図7(a)に示すように、磁性流体膜250を透過した偏光面は、直流成分Dの作り出す磁界分だけ、回転がシフトすることとなる。このため、偏光面の回転角は、以下の(4)式で表される。ここで、以下の(4)式において、Hdは、直流成分Dの作り出す磁界を表している。
Figure 2009063368
従って、ビームスプリッター205により分離されるP偏光成分、およびS偏光成分の大きさは、以下の(5)式および(6)式のように表される。
Figure 2009063368
ここで、H>Hdの場合には、偏光面はS偏光の振動面とクロスするため、光センサからの出力波形は、正または負にシフトされたサインカーブであって負の部分が反転した波形となる。
また、H<Hdの場合には、偏光面はS偏光の振動面とクロスしないため、光センサからの出力波形は、測定しようとしている交流電流と同じ周波数のサインカーブとなる。
H>Hdの場合H<Hdの場合のいずれにせよ、光センサの出力(最大振幅)と測定しようとしている電流の振幅との相関は小さくなるため、直流成分Hdの影響を除去した後に交流電流成分を測定する必要が生じる。
Hdを除去するためには、図4中における直流電流回路部150により、Hdを相殺するように直流電流を流してやれば良い。この際、直流電流回路部150に流す電流量の調節は、以下のように行う。
直流成分がない場合の光センサの出力は、見かけ上測定しようとする交流電流周波数fの2倍の周波数2fの信号とみなすことができる。このため、本実施形態においては、光センサ209の出力(すなわち、P偏光成分に由来する出力)について、2fのバンドパスまたは同期検波を行い、2fの周波数スペクトルが最大となるように、直流電流回路部150の出力および極性を調整する。
通常、交流電流の測定としては、パイプライン1に誘導される商用周波数の重畳程度の把握を行う。そのため、フィルタリングまたは同期検波においては、例えば、東日本では100Hz、西日本では120Hz、諸外国ではその国の商用周波数の2倍を、設定周波数とする。
直流電流回路部150の出力を変化させたときの2f周波数のスペクトル測定結果を、図8に示す。上述のように、直流出力調整後の直流電流回路部150の電流値の読みは、測定しようとしている交流電流に重畳している直流電流と等価な大きさで極性が逆である。そのため、直流電流回路部150の出力値が、測定対象に流れている電流に重畳している直流成分の大きさとなる。
このように直流の影響を除去した後に、測定対象を流れている交流電流の大きさを算出することとなる。本実施形態に係る電流測定方法においては、事前に以下で説明するような校正作業を行って、光センサの出力測定結果と標準電流量との相関を把握し、光センサの出力測定結果と標準電流量との相関を表す情報を電流算出部111に記憶させておくことで、測定対象とする電流量を把握することができる。
校正方法は、例えば、以下のように行うことが可能である。まず、測定対象とする導体の電源をゼロとし、出力調整機能および出力電流表示機能を有する交流発生電源、または、交流発生電源と交流電流測定器の電気回路を、磁性流体のCTに鎖交させる。そして、磁性流体のCTに対して所定の値の交流電流を通電して交流電流測定器の読みを真の値とし、そのときの垂直方向偏光成分(S偏光成分)のセンサ出力または水平方向偏光成分(P偏光成分)のセンサの出力を記録すればよい。測定対象とする電流のレンジにあわせて、上記真の値を変化させて光センサの出力値を数点計測し、真の値と計測値との相関を把握する。得られた相関を表す情報を、電流算出部111に記憶させる。
また、測定対象とする導体が稼動中のパイプラインのような活線であり電流の通電停止が不可能である場合、または、誘導電流等が重畳されている導体において、測定対象とする導体電流をゼロにできない場合には、事前に同じ設計で磁性流体のCTを作成し、上記と同じ出力電流表示機能のある交流発生電源または交流発生電源と交流電流測定器の電気回路を磁性流体のCTに対して鎖交させて、交流を通電する。この際に得られる交流電流測定器の読みを真の値として、垂直方向S偏光のセンサ出力または水平方向P偏光のセンサの出力を記録すればよい。
電流算出部111は、信号処理された光センサの出力に応じた真の電流値のデータを照会して、測定対象に流れる電流を出力することが可能である。
以上説明したような電流測定装置および電流測定方法を用いることで、従来問題となっていたクランプ式のCTにおける磁路のエアギャップによる性能の劣化やヒステリシスの影響を排除できる。また、ノイズの影響や直流電流の重畳による磁路の飽和を排除し、パイプラインなどの既設構造物の切断工事などを必要とせず、着脱可能で電流を測定できる大型CTを実現することができる。
なお、上述の実施形態においては、磁路のギャップレスを実現するために磁性流体を膜状にし、電流の測定にあたっては、この磁性流体膜を光が透過する際のコットン・ムートン効果を利用したが、これ以外にも磁気光学素子を磁路に挿入することが許されるならば他の磁気光学効果であるファラデー効果や、カー効果を利用することも可能である。
この場合は、通常行われているそれぞれの磁気光学効果を測定する光学系を利用して、測定を行えば良い。
また、上述の実施形態においては、ビームスプリッター205を用いてP偏光成分とS偏光成分の分離を行ったが、ビームスプリッターを用いる代わりに、検光子203を回転させることで、P偏光成分とS偏光成分とを分離することも可能である。
以上説明したように、本発明によれば、閉ループ構造を有するパイプ容器に磁性流体を充填し、エアギャップがなく複数回、被測定電流と鎖交できる磁路を形成することで、磁路のエアギャップによる性能の劣化やヒステリシスの影響を排除できる。
また、磁性流体の容器として、変形可能なパイプ状の容器を使用することで、磁路の長尺化と任意の形状の設定が可能となるため、あらかじめパイプ状容器を測定対象とする電気回路に取り付けた後、磁性流体をパイプ内に充填させることで、切断が不可能な測定対象とする電気回路であっても、磁路を複数回被測定電気回路に鎖交させ、かつギャップレスの磁路を提供することが可能となる。
更に、磁性流体を用いて形成した磁路に、従来のCTで使用されているピックアップコイルやホール素子を適用することで、電流を計測することが可能である。また、耐ノイズ特性を向上させるために、磁性流体の磁気光学効果を測定する部位を磁路中に構成し、磁気光学効果量から被測定電流を推定することで、耐ノイズ性を向上させることが可能である。
他方、被測定電流の直流重畳による磁路の飽和については、重畳電流と同じ大きさの直流電流を逆方向に流す電気回路を磁路と鎖交させ、電流のバランスをとることで、磁路の磁気飽和を削減することが可能である。
また、磁路を構成するパイプ状の容器を透明または半透明なものとすることで、気泡の磁路への混入を防止することができ、磁気特性の劣化を防ぐことができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上述の実施形態においては、直流成分の影響を除去する作業を手動で行う場合について説明したが、制御プログラムによる電流調整機能をもったコンピュータ(CPU)等を用いることで、自動的に求められるようにすることも可能である。
本発明の第1の実施形態に係る電流測定装置について説明するための説明図である。 同実施形態に係る電流測定装置について説明するための説明図である。 同実施形態に係る電流測定装置を測定対象に設置する方法を説明するための説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る電流測定装置について説明するための説明図である。 同実施形態に係る電流測定装置に設けられる磁気光学効果測定部について説明するための説明図である。 同実施形態に係る電流測定方法について説明するための説明図である。 同実施形態に係る電流測定方法について説明するための説明図である。 直流電源の出力を変化させた場合の光センサの出力変化について説明するためのグラフ図である。
符号の説明
1 パイプライン
10 電流測定装置
12 磁性流体
14 磁性流体注入器
101 磁路形成用パイプ
103 ピックアップコイル
105 磁性流体注入部
107 封止栓
109 フィルタ・アンプ回路
111 電流算出部
113 水密継ぎ手
150 直流電流回路部
151 直流電源
153 電流調節部
155 直流電流計
200 磁気光学効果測定部
201 光源
203 検光子
205 ビームスプリッター
207,209 光センサ
250 磁性流体膜
251 ガラスセル

Claims (14)

  1. 測定対象とする電気回路に鎖交させて前記測定対象に流れる電流を測定する電流測定装置であって、
    パイプ状の容器からなり、当該容器中に所定の磁性流体が充填され、前記測定対象に鎖交させて連続性を有する磁路として用いられる磁路形成体と、
    前記磁路形成体に設けられ、前記測定対象に流れる電流によって前記磁路形成体に誘導される磁界を検出するコイルと、
    前記コイルにより検出した磁界から所定の周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を増幅する信号処理部と、
    前記信号処理部から出力された処理結果に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出し、当該算出結果を表示する電流算出部と、
    を備えることを特徴とする、電流測定装置。
  2. 測定対象とする電気回路に鎖交させて前記測定対象に流れる電流を測定する電流測定装置であって、
    パイプ状の容器からなり、当該容器中に所定の磁性流体が充填され、前記測定対象に鎖交させて連続性を有する磁路として用いられる磁路形成体と、
    前記磁路形成体の少なくとも一部に設けられ、前記測定対象に流れる電流によって前記磁性流体に誘導される磁界に起因する磁気光学効果を測定する磁気光学効果測定部と、
    前記磁気光学効果の測定結果から所定の周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を増幅する信号処理部と、
    前記信号処理部から出力された処理結果に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出し、当該算出結果を表示する電流算出部と、
    を備えることを特徴とする、電流測定装置。
  3. 前記磁気光学効果測定部には、所定波長を有する偏光が入射し、
    前記磁気光学効果測定部は、前記磁性流体による前記偏光の偏光面の回転角を測定し、
    前記電流算出部は、前記回転角に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出する
    ことを特徴とする、請求項2に記載の電流測定装置。
  4. 前記磁路形成体は、前記測定対象に複数回鎖交させて用いられる
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の電流測定装置。
  5. 前記電流測定装置は、
    直流電源と、
    前記直流電源により流れる電流の大きさを調整する電流調整部と、
    前記電流の大きさを計測する直流電流計と、
    を有する直流電流回路部を更に備え、
    前記直流電流回路部は、
    前記磁路形成体に鎖交するように設けられ、
    前記測定対象に流れる電流に重畳する直流成分とは逆向きの電流を流し、前記直流成分に起因する前記磁性流体の磁気飽和を軽減する
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の電流測定装置。
  6. 前記直流電流回路部は、前記直流成分と打ち消しあう電流の大きさを決定することで、前記直流成分の大きさを測定する
    ことを特徴とする、請求項5に記載の電流測定装置。
  7. 前記パイプ状の容器は、樹脂材料を用いて形成される
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の電流測定装置。
  8. 前記パイプ状の容器は、透明または半透明である
    ことを特徴とする、請求項7に記載の電流測定装置。
  9. 測定対象とする電気回路に流れる電流を測定する電流測定方法であって、
    パイプ状の容器からなり、当該容器中に所定の磁性流体が充填され、所定の磁性流体が充填された磁路形成体を、前記測定対象に鎖交させるステップと、
    前記測定対象に流れる電流に起因して前記磁路形成体に誘導される磁界を検出するステップと、
    検出した前記磁界から所定の周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を増幅するステップと、
    増幅した前記周波数成分に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出し、当該算出結果を表示するステップと、
    を含むことを特徴とする、電流測定方法。
  10. 測定対象とする電気回路に流れる電流を測定する電流測定方法であって、
    パイプ状の容器からなり、当該容器中に所定の磁性流体が充填され、所定の磁性流体が充填された磁路形成体を、前記測定対象に鎖交させるステップと、
    前記測定対象に流れる電流に起因して前記磁路形成体に誘導される磁界により前記磁路形成体に生じる磁気光学効果を測定するステップと、
    前記磁気光学効果の測定結果から所定の周波数成分を抽出し、抽出した前記周波数成分を増幅するステップと、
    増幅した前記周波数成分に基づいて前記測定対象に流れる電流を算出し、当該算出結果を表示するステップと、
    を含むことを特徴とする、電流測定方法。
  11. 前記磁気光学効果を測定するステップでは、
    所定波長を有する偏光を、前記磁路形成体の少なくとも一部に照射し、
    前記磁界による前記偏光の偏光面の回転角を測定する
    ことを特徴とする、請求項10に記載の電流測定方法。
  12. 前記磁路形成体を前記測定対象に鎖交させるステップでは、
    中空の前記パイプ状の容器、または、前記所定の磁性流体が一部注入された前記パイプ状の容器を前記測定対象に鎖交させ、
    前記測定対象に鎖交させた前記パイプ状の容器に、更に前記所定の磁性流体を注入する
    ことを特徴とする、請求項9または10に記載の電流測定方法。
  13. 前記磁路形成体を前記測定対象に鎖交させるステップと、前記磁界を検出するステップとの間に、
    前記測定対象に流れる電流に重畳する直流成分とは逆向きの電流を流す直流電流回路部を、前記磁路形成体に対して鎖交させ、前記直流成分に起因する前記磁性流体の磁気飽和を軽減するステップを更に含む
    ことを特徴とする、請求項9に記載の電流測定方法。
  14. 前記磁路形成体を前記測定対象に鎖交させるステップと、前記磁気光学効果を測定するステップとの間に、
    前記測定対象に流れる電流に重畳する直流成分とは逆向きの電流を流す直流電流回路部を、前記磁路形成体に対して鎖交させ、前記直流成分に起因する前記磁性流体の磁気飽和を軽減するステップを更に含む
    ことを特徴とする、請求項10に記載の電流測定方法。
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