以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、Si基板上に反射防止膜を形成し、更にその上にArF化学増幅型レジストを膜厚300nmで形成し、これをArFステッパーにより下地膜加工用のパターンをレジスト膜に対して露光し、次いで加熱を行ったのち、更に現像を行いピッチ260nmでレジスト残し寸法115nm(ピッチに対するレジストパターンの比率=0.442:現像液比率では0.558)のレジストパターンを形成するプロセスへの適用例を示す。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる被評価物の構造決定方法を示すフローチャートである。
現像中のレジスト膜のプロファイルを算出するため、あるモデルを立てる(ステップS101)。現像中のレジストパターンからは、レジストと現像液との反応生成物が発生する。以下、レジストの反応生成物を含んだ現像液を混合相と呼び、混合相中のレジストの割合を混合比と定義する。一般的には、反応生成物の拡散は十分に早くないので、反応生成物の拡散の仕方、すなわち液相における混合比の分布をモデルとして取りこまないと、現像中のパターン評価の精度が悪くなってしまう。そこで、本実施形態では、ライブラリ作成工程で、現像モデルを決める。
図2に現像の進み方の模式図を示す。現像初期では、図2に示すように、露光されたレジスト膜103では膜厚方向に現像が進む。その結果、反応生成物は矢印に示す方向に拡散していくので、混合比は膜厚方向の分布となり、基板から離れるに従って比率が低くなる。膜厚方向の現像が終了すると、横方向に現像が進む。そこで、矢印方向に向かって、現像液が空間内を占める割合が大きくなるモデルを仮定する。なお、図2において、101はシリコン基板、符号102は反射防止膜、符号103は露光されていないレジスト膜、符号105は現像液である。
次に、具体的に基板の構造・光学定数を与えるまでのステップを示す。図3に上述したモデルをもとにして作成した膜厚方向の層構造を示す。レイヤD2〜D1が現像液とレジストの反応生成物の混合相、レイヤR1からレイヤR4が現像液とレジストの反応生成物の混合相とレジストパターンである。レイヤD1とレイヤD2との違いは、反応生成物の混合比の違いである。同様に、レイヤR1,レイヤR2,レイヤR3,レイヤR4の違いは、反応生成物の混合比の違いである。反応生成物は、レジストと現像液の界面で発生し、現像液層に拡散していく。よって、パターンの下部で反応生成物の割合が高くなっている。
先ず、前記被評価物及び各測定環境を構成する各物質の比率を仮定した複数の仮想構成比率と設定する。空間の中で各物質が占める比率を変化させる。
次に、(表1)に示された条件に基づいて、反射率波長分散計算値のデータベースを作成する(ステップS102)。データベースは、(表1)に示す条件で空間の中で各物質が占める比率を変化させ、それに応じた平均的な光学定数を決定する。更に、多重干渉計算を行って反射率を求める。反射率の波長分散は300〜800nmの範囲で計算した。ここで、計算の手法としては、Maxwellの方程式を用いて、規則的なパターンからの回折光の電界、磁界、強度を解く、Morham(J.Opt.Soc.Am.,Vol.12, No.5, May 1995 1077-1086)らのRCWA(Rigorous coupled-wave analysis)法などが一般的に用いられる。なお、レジストと現像液が反応して形成される反応生成物の光学定数は、レジストの光学定数と同じとしている。
なお、平均的な複素屈折率は、例えば現像液層のレイヤD2において、現像液/空間=0.95である場合に、現像液の複素屈折率(屈折率n,消衰係数k)=(1.33,0)とレジストの複素屈折率(1.67,0.06)を用いて(1)式(2)式のように求めた。
レジスト膜へのパターンの露光、及び露光後の加熱(PEB)まで行った基板を冷却した後、基板を現像装置に移動する。基板主面に現像液を供給して現像液膜を形成し、レジスト膜の現像を開始する(ステップS103)。レジスト膜には、デバイスパターンが露光されたデバイスパターン領域とモニタパターンが露光されたモニタパターン領域とを有する。
次いで寸法計測用のパターンが露光された部分の上方に反射率計測手段を配置して現像中のパターンの変化を反射率変化の観察を介して行う(ステップS104)。
図4に反射率計測手段の概要を示す。反射率計測手段は、光源211からの光を観察光学系212内部のミラーにより反射させてレジスト膜201のモニタパターン領域203に照射する。モニタパターン領域203で反射し、回折により生じた0次回折光を観察光学系212で集光し、この光を石英製の光ファイバーを介して分光器213に伝送して波長分散を計測する構成になっている。分光器213で検出された波長分散計測値は逐次コンピュータ214に送られる。なお、モニタパターン領域203は、デバイスパターン領域202の外部に形成されている。また、データベース215には、ステップS102で計算された反射率波長分散計算値が格納されている。
コンピュータ214では分光器213から送られた反射率の波長分散測定値とデータベース215に格納された波長分散計算値とを比較し、波長分散測定値とほぼ同じ分散値を有する類似反射率分散計算値を複数抽出する(ステップS105)。ここでの抽出は、先ず、ある波長λでの測定した反射率値r
λと波長λでの反射率計算値r
λcの二乗和siを算出する。
そして、この二乗和が最小となる反射率計算値から順に検索する。本実施形態では、二乗和が最小値をとる反射率計算値に対して110%以下の二乗和をとる反射率計算値を検索する。
これらの反射率計算値の元になっている空間比率に対して二乗和に応じた加重平均を取って空間比率予測値rpiを求める(ステップS106)。空間比率予測値rpiは、反射率計算の元になった空間比率riとその時の二乗和siから、次の(4)式で求められる。
rpi=(Σri/si)/(Σ(1/si)) …(4)
(4)式を用いてレイヤR1からレイヤR4D2までそれぞれ空間比率予測値を求める。この空間空間比率予測値rpiをピッチに占めるパターン寸法比率とみなす。
加重平均により求めた空間比率予測値rp4が所定値に等しいか判定する(ステップS107)。本実施形態の場合、所定値とは、56%である。本実施形態では、ピッチ260nmでレジスト残し寸法115nmのレジストパターン(ピッチに対するレジストパターンの比率=0.442:現像液比率では0.558)を形成する。従って、レイヤR4の空間比率予測値rp4が56%に等しいか判定する。
空間比率予測値rp4が56%に等しければ、洗浄液を基板表面に供給して現像を停止させる(ステップS108)。
空間比率予測値rp4が56%に等しくない場合、引き続き現像を行いステップS103〜S107を繰り返し行う。空間比率予測値rp4が56%に等しい場合、洗浄液を基板表面に供給して現像を停止させる。
以下に、ステップS103〜S107の処理をより具体的に説明する。
現像開始後20秒たった時点での反射率測定値に対する二乗和が最小のものから順に求めた空間比率riを(表2)に示す。
従来法のようにマッチングが一番良いものを抽出した場合、レイヤR1〜R4の間で現像液の空間比率0.6、レイヤD1,D2での現像液の空間比率が1.00という結果になる。しかし、順位1と順位2の二乗和を見ると、差は僅かに4%である。この差は、比率の振り幅(10%刻み)を考慮すると誤差の範囲にある。従って順位1の2乗和に対して2乗和が+10%までを候補とし、それらの現像液の空間に占める比率から加重平均により空間比率予測値rpiを求める。(表2)では順位1から順位5までが対象になる。
この段階のレジストのボトム寸法は114.4nm(=260×(1-0.56))と決定した。所望のパターン寸法は115nm±8%であったので、この段階で現像を停止し、リンスを行った。確認のため大気中で(表1)とほぼ同様の条件(現像液/空間を大気/空間と置き換え、大気の光学定数でモデリングしたところが異なる)で作成したデータ-ベースの比較ではレジスト残しパターン寸法が114.0nmであるとの結果を得た。更にこのレジストパターンを電子線を用いた測長機で線幅測定を行ったところ114.1nmと、現像中の測定値とほぼ同じ値が得られた。
なお、上述の加重平均により算出した空間比率予測値を用いて計算した反射率と計測値との比較を図5に示す。ここでは500nm〜700nmでの比較を示している。ここで、実線は測定値を15次関数でフィッティングした曲線である。(表3)に示した分布から計算された反射率波長分散は、15次関数に非常に良く重なっていることが確認することが出来た。従って、実際の測定値を十分に再現していると言える。
図5には、二乗和が最小のモデルから計算された反射率波長分散を波線で示す。実線で描かれた曲線と波線で描かれた曲線とは、局所的には良く一致している。しかし、図示された波長領域全体で一致しているとは言い難い。また、レジストパターン線幅も104nmと認識しており、実際の値に対して10nmも細く認識していた。この測定値によると加工不良との判断により基板再生することになるが、先の114nmが真値であり、良品と不良品の判断をも誤らせる結果であることは言うまでも無い。
本実施形態によれば、従来法に対して高い精度で寸法を予測できる。また、良品と不良品について適切な判断を可能にするものである。今回の実験と同じ精度の解析を従来の手法を用いて行う場合のモデル条件を(表4に)示す。
(表1)で作成された計算値の数は、表4のそれに比べて2.5×105分の1であり、データ数を大幅に削減できている。今回の検出時間は0.2秒であり現像時の計測を容易に行うことができた。従来法では14時間程度かかる。よって、従来法では、現像時の適用は到底困難であり、通常の大気中での評価にたいしても適用が難しかった。このように検索時間を大幅に短縮でき、プロセスの進行過程でのレジストパターン寸法を容易に行うことを可能にした。
本実施形態ではレジストパターン寸法を予測しているが、これに限るものではない。図6は、(表1)のモデルを用いて計算した反射率波長分散計算値のデータベースを用いて、現像中のKrFレジストの寸法変動を断面形状として求めたものである。断面形状は各層毎に空間に対するレジストの比率を求め、それを膜厚方向に線で結んで示している。細かい点線が現像開始4秒後、二点鎖線が現像開始6秒後、一点鎖線が現像開始10秒後、粗い点線が現像開始20秒後、実線が現像開始30秒後の断面形状である。現像開始4秒後ではレジストパターンの裾が大きいことが判る。現像が進むに従い、トップ及びボトム(裾)のレジストパターンは次第に細くなり、また形状も矩形になる。
図6のレジスト膜のボトム寸法を横軸に現像時間をとって表したのが図7である。レジストパターンがピッチに対して0.44のサイズになる時間を図7から求めると20秒であることが判る(点線は現像を停止させずに寸法比率をもとめたもの)。図7の如く時間に対する寸法を順次求めていき、所望寸法となる現像時間を予測し、停止させることによっても高精度の現像制御が可能である。図6は、複数の反射率波長分散計算値を用いて加重平均により算出したため図7の関係においても高い精度を得ている。
従来法では図8のように現像時間に対する寸法比率の大小関係が逆転している点が見られており、制御を大きく劣化させる。このように本手法を用いることで現像の制御を飛躍的に向上できる(点線は現像を停止させずに寸法比率を求めたもの、現像停止の信頼性が低いことがわかる)。
本実施形態は現像時の寸法測定及び現像後の寸法測定に関するものであるがこれに限るものではない。単純に寸法を測定する場合には酸化膜のエッチングパターン、配線パターンなどその材料と大気について空間比率を変化させて計算した反射率波長分散計算値からなるデータベースと測定値とをレジストパターン寸法計測と同様の手法で解析することで高い精度でそのパターン寸法やプロファイルを効率よく短時間で求めることが可能である。
本実施形態では反射率計算値に対する構造予想であるがこれに限るものではない。空間比率を変化させた膜構造のモデルからRCWA(Rigorous coupled-wave analysis)により算出したcosδ、tanψのデータベースに対して、エリプソメトリの技術で計測したcosδ、tanψの計測値に対しても同様の手法で類似波形を見出し、その元になっている空間比率に対して、誤算が小さいほど重みを大きくする加重平均により空間比率を予測し、測定物質の構造の特定を行うことも可能である。
空間比率予測値rは本実施形態では(4)式のとおり加重平均を二乗和の逆数を用いて算出したがこれに限るものではない。空間比率予測値rは一般的に測定値との誤差の絶対値Rに対してRが小さいほど空間比率が大きくなるような決め方であれば如何なる関係式を用いても良い。例えば空間比率予想値rが(5)式で表され、Rが取りうる範囲において、Rが大きくなるに従いf(R)が小さくなる関数(例えばRの取りうる範囲内で単調減少関数)であれば良い。
r=(Σri×f(R))/(Σ(f(R)) (5)
f(R)=1/R、1/Rx:xは正の実数、e-Rなど
(第2の実施形態)
エッチング深さについてもエッチングパターンの材料とエッチング中の雰囲気(供給ガスと反応ガス)の空間的な比率を変化させて反射率波長分散計算値のデータベースを作成し、測定値と比較し、測定値と類似の波長分散計算値を複数抽出し、それらの元になっている空間比率の二乗和に基づく加重平均からエッチング深さを求めることもできる。
図9は酸化膜のエッチング時間ごとに測定した反射率から求めたエッチング深さを示したものである。従来法で求めた深さ(点線)は時間に対するエッチングレートが変化しているようにギクシャクした結果になっている。一方、本発明により加重平均で求めた結果(実線)では求めたエッチング時間に対するエッチング深さが非常に良好に求められており、20秒後以降のエッチングレートについても略一定の値が得られている(単位エッチング時間に対するエッチング深さ変化量が一定)。この実施形態の場合においても解析誤差の影響が殆ど無い状態でエッチング深さの解析を行うことができる。
図9を用いてエッチング停止の制御を行うことも可能である。しかし、従来法では揺らぎが大きくエッチング停止精度が悪く、時として酸化膜下のストッパー膜もエッチングしてしまう問題があった。一方、本発明の手法によれば高い精度でエッチングの停止を行うことができ、酸化膜下のストッパー材に殆どダメージを与えることなく加工することを実現でき、ストッパー膜成膜工程を大幅に削減できる。
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示すフローチャートである。図11は、本発明の第3の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示す断面図である。
先ず、図11(a)に示すように、未処理のシリコン基板上に膜厚100nmの第1のシリコン酸化膜を形成する(ステップS201)。
次に、第1のシリコン酸化膜のシリコン酸化膜Aの膜厚を計測する(ステップS202)。
次に、図11(b)に示すように、第1のシリコン酸化膜上に膜厚500nmの第2のシリコン酸化膜を形成する(ステップS203)。第1のシリコン酸化膜と第2のシリコン酸化膜とは、光学定数が若干異なる膜である。第2のシリコン酸化膜が形成された状態の基板を基板Aとする。
次に、第2のシリコン酸化膜の膜厚を測定するために、基板Aの光強度測定を行う(ステップS204)。図12に光強度測定の光学系の模式図を示す。基板A上に、光を入射させる。基板Aからの反射光を計測し、強度変化(tanψ)、位相変化(cosΔ)の波長分散を測定する。ここで計測する反射光としては、TM偏光、TE偏光、そのほかの偏光などの偏光光、若しくは偏光板を用いないで直接反射光の測定を行ってもよい。入射角も斜め入射でなくても垂直入射でもよい。また、単一の波長で光を入射して、入射角、検出角を変化させて測定してもよい。光を入射して、反射して得られる光を検出する方法であればよい。
基板Aの光強度測定結果から、第2のシリコン酸化膜の膜厚を求める(ステップS205)。
次に、図11(c)に示すように、第2のシリコン酸化膜上に膜厚50nmの反射防止膜、250nmのレジスト膜を塗布形成する(ステップS206)。レジスト膜にArFエキシマレーザーによりレチクルを介して露光する。ベーク処理、現像処理を行い、100nmライン/スペース(1:1)のレジストパターンを形成する。レジストパターンは、それぞれの幅が100nmのラインパターンとスペースパターンが交互に配列されたパターンである。この状態の基板を基板Bとする。
反射防止膜の膜厚、レジスト膜のパターン寸法、及び膜厚を測定するために、基板Bの光強度測定を行う(ステップS207)。図13に、基板Bの検査工程の光学系の模式図を示す。被処理基板上に、光を入射させる。被処理基板からの回折光のうち0次光を計測し、強度変化(tanψ)、位相変化(cosΔ)の波長分散を測定する。膜厚計測と同様、TM偏光、TE偏光、そのほかの偏光、などの偏光光であってもよいし、偏光板を用いないで測定を行ってもよい。また、0次光ではなく、1次以上の光であってもよい。入射角も垂直入射でなくても斜め入射でもよい。また、単一の波長で光を入射して、入射角、検出角を変化させて測定してもよい。光を入射して、反射もしくは回折して得られる光を検出する方法であればよい。
次に、反射防止膜およびレジストパターンの検査として、レジストパターンの寸法(線幅)を計測する(ステップS208)。このように、半導体ウエハの一連の処理においては、処理工程とその処理工程で追加された構造(膜厚、ピッチ、比率、寸法、光学定数)の検査工程が繰り返し行われる。
図14を用いて、検査の具体的な手順を説明する。図14は第3の実施形態に係わる構造検査の手順を示すフローチャート。
検査に先立って、基板構造とそれに対応する光強度が収められた光強度ライブラリを作成する。
まず、基板の全ての層について、それぞれの層で予想される構造が含まれる構造群を作成する(ステップS301)。層の構造とは、層の光学定数、膜厚、ピッチ、比率、寸法などである。予想される構造とは、処理工程で生じうる構造のばらつきの範囲に含まれる構造である。次に、各層の構造群の組み合わせから基板構造が作成される。
基板構造ライブラリAが、ステップS201で作成された基板構造から作成される(ステップS302)。
次に、第1の基板構造ライブラリに含まれる各基板構造について、実際の検査と同じ条件で光を入射した場合に反射もしくは回折して得られる光強度計算を行い、光強度の波長分散が算出される(ステップS303)。ここで、計算の手法としては、Maxwellの方程式を用いて、規則的なパターンからの回折光の電界、磁界、強度を解く、Morham(J.Opt.Soc.Am.,Vol.12, No.5, May 1995 1077-1086)らのRCWA(Rigorous coupled-wave analysis)法などが一般的に用いられる。
基板構造ライブラリAに納められた基板構造とそれに対応する光強度の波長分散が収められた光強度ライブラリBが作成される(ステップS304)。
次いで、層構造が検査によってわかっている層を抽出する(ステップS401)。
次に、抽出された層について、その層の構造の検査結果をもとに、新たな層構造群を作成する(ステップS402)。ここで作る層構造は、検査精度を考慮して作られる。
次に、抽出された層の構造群とステップS102で作成された基板構造ライブラリAを比較して、第1の基板構造ライブラリから抽出された層の構造群が含まれる基板構造を抽出する(ステップS403)。
次に、光強度ライブラリBの中から、抽出された基板構造と対応する光強度を選び、光強度ライブラリCを作成する(ステップS404)。
図2や図3に示すような光学系を有する検査装置内に実際に複数の層が形成されている基板を搬送し、検査領域の光強度の測定を行い、光強度の波長分散を測定する(ステップS501)。
次に、測定された光強度の波長分散と光強度ライブラリCに格納された波長分散とを比較する(ステップS502)。
そして、光強度ライブラリにある光強度の波長分散と最もよく一致する波長分散を求め、その波長分散に対応する基板構造を決定する(ステップS503)。
また、本発明の他の実施形態として、図15に示すような手順の形態もありうる。なお、図14で説明したステップと同様なステップには、同じ符号を付してある。図15に示した検査方法の場合、基板構造ライブラリAで光強度の波長分散の計算を行わない。基板構造ライブラリBが作成された後に、光強度の波長分散の計算を行い(ステップS414)、光強度ライブラリCを作成する(ステップS415)。
また、本発明の他の実施形態として、図16に示すフローチャートで表されるような形態もありうる。なお、図14,図15で説明したステップと同様なステップには、同じ符号を付してある。
図15に示した検査方法の場合、事前に構造が決定されない層を抽出する(ステップS421)。そして、ステップS421で抽出された層の構造群を作成する(ステップS422)。層の構造とは、層の光学定数、膜厚、ピッチ、比率、寸法などである。予想される構造とは、処理工程で生じうる構造のばらつきの範囲に含まれる構造である。構造が決定された層を抽出する(ステップS423)。構造が決定されている層の構造群を作成する(ステップS424)。そして、ステップS422とステップS424で作成された構造群に基づいて基板構造ライブラリBを作成する(ステップS403)。
次に、上述した検査方法を図10,図11を用いて説明した半導体装置の製造工程に適用した例を説明する。図17は、本発明の第3の実施形態に係わる半導体装置の製造工程を示すフローチャートである。光強度測定(ステップS204)の時点で、Si基板上にシリコン酸化膜A、シリコン酸化膜Bが形成されている。従って、従来例と同じように、基板構造ライブラリIIAは、Si基板の予想される構造群、シリコン酸化膜Aの予想される構造群、シリコン酸化膜Bの予想される構造群をそれぞれ作成する(ステップS301)。そして、ステップS301aで作成された各構造群を用いて基板構造ライブラリIIAを作成する(ステップS302)。ステップ301aでは、Si基板、シリコン酸化膜A、及びシリコン酸化膜Bの構造群の数がそれぞれ、1、21、101であった。よって、基板構造ライブラリIIAに含まれる基板構造の数は、2121個となった。
ステップS203で測定されたシリコン酸化膜Aの膜厚を用いて、シリコン酸化膜Aの構造群を新たに作成する(ステップS402)。シリコン酸化膜Aの膜厚dAが102nmと求められていて、測定精度は±1nmであったので、(表5)に示すようなシリコン酸化膜Aの構造群を作成した。膜厚の刻みは測定の精度を高めるため、1nmとした。
従って、基板構造ライブラリIIAのうち必要な基板構造は、(表5)に示す構造群の組み合わせとなる。第2のシリコン酸化膜Bの構造群の数は3つになる。ステップS403で抽出されるSi基板、シリコン酸化膜A、シリコン酸化膜Bの構造の数は、1、3、101である。そして、ステップS404で作成される光構造ライブラリIIBに含まれる光強度の波長分散の数は、303個になる。
ステップS207の光強度の波長分散測定の時点で、Si基板上にシリコン酸化膜A,シリコン酸化膜B,反射防止膜(ALL),及びレジスト膜が形成されている。シリコン酸化膜A,シリコン酸化膜B,反射防止膜(ALL),及びレジスト膜の予想される構造から、構造群をそれぞれ作成する。ここでは、ステップS202,S205でシリコン酸化膜A及びシリコン酸化膜Bの構造が検出されている。シリコン酸化膜A及びシリコン酸化膜Bの構造群を検出結果に基づいて作成する(ステップS422)。また、構造が検出されていない、Si基板、反射防止膜、及びレジスト膜の構造群をそれぞれの予想される構造から作成する(ステップS424)。
シリコン酸化膜Aの膜厚が(dA=102nm)、シリコン酸化膜Bの膜厚が(dB=510nm)と求められていて、測定精度は±1nmであったので、(表6)に示すようなシリコン酸化膜AおよびBの構造群を作成した。なお、(表6)には、Si基板、反射防止膜、レジスト膜の構造群を示す。
(表6)に示すように、ステップ基板構造ライブラリIIIBのうち必要な基板構造は、(表6)に示す構造群の組み合わせとなる。Si基板、シリコン酸化膜A、シリコン酸化膜B、反射防止膜、レジスト膜の構造群の数がそれぞれ、1、3、11、3、231となり、基板構造ライブラリIIIBの数は、22869個となる。光強度ライブラリIIICは、この基板構造ライブラリIIIBをもとに作成される。
(表6)に示すように、シリコン酸化膜A及びシリコン酸化膜Bの構造群を作成する際、測定精度の範囲(±1%)で構造を定義したが、余裕をみて2倍の範囲(±2%)で構造を作成してもよい。また、反射防止膜,レジスト膜の構造群を作成する際、処理工程における揺らぎも余裕をみて2倍の範囲(±4%)で構造群を作成してもよい。
図18を用いて従来法の、具体的な検査の手順を示す。なお、図18では、各ステップは図14と同一符号を付し、詳細な説明を省略する。図18に示すように、従来は、既に得られた層の検査結果に基づいた、光強度ライブラリBを作成していない。光強度ライブラリAと光強度測定との結果とを比較している(ステップS512)。
次に、図18に示した方法を図10に示すフローに適用した場合を図19を参照して説明する。
ステップS204の時点では、Si基板上にシリコン酸化膜A及びシリコン酸化膜Bが形成されている。従って、Si基板の予想される構造群、第1のシリコン酸化膜の予想される構造群、第2のシリコン酸化膜の予想される構造群がそれぞれ作成される(ステップS301a)。
本実施形態では、シリコン酸化膜A及びシリコン酸化膜Bの処理工程での揺らぎが、屈折率と消衰係数にはなく、膜厚が中心値に対して±10%であったので、(表6)のように構造群を定義した。
(表7)に示すように、Si基板、シリコン酸化膜A、及びシリコン酸化膜Bの構造群の数がそれぞれ、1、21、101となり、基板構造ライブラリIIAの数は、2121個となった(ステップS302a)。光強度ライブラリIIAは、基板構造ライブラリIIAをもとに作成した(ステップS303a)。
ステップS207の時点では、Si基板上にシリコン酸化膜A、シリコン酸化膜B、反射防止膜、レジストが形成されている。従って、Si基板の予想される構造群、シリコン酸化膜Aの予想される構造群、シリコン酸化膜Bの予想される構造群、反射防止膜の予想される構造群、レジストの予想される構造群がそれぞれ作成される(ステップS301b)。それぞれの構造群を(表8)に示す。
本実施形態では、処理工程での揺らぎが、屈折率と消衰係数にはなく、酸化膜の膜厚が中心値に対して±10%、反射防止膜厚が±2%、レジスト膜厚が±2%、レジスト寸法が±10%であったので、(表8)に示すように構造群を生成した。Si基板、シリコン酸化膜A、シリコン酸化膜B、反射防止膜、レジスト膜の構造の数がそれぞれ、1、21、101、3、231となった。その結果、ステップS302bで生成される基板構造ライブラリIIIAに格納された基板構造の数は、453789個となる。光強度ライブラリIIIAはこの基板構造ライブラリIIIAをもとに作成される(ステップS303b)。
(発明の効果)
(2)測定精度の向上
従来法では、例えば、構造検査工程(ステップS205)でシリコン酸化膜Bの膜厚を求める際に、シリコン酸化膜Aの膜厚がd11nmでシリコン酸化膜Bの膜厚がd21nmの場合と、シリコン酸化膜Aの膜厚がd12nmでシリコン酸化膜Bの膜厚がd22nmの場合で波長分散がほとんど変わらない場合に、本来はシリコン酸化膜Aの膜厚がd11nmでシリコン酸化膜Bの膜厚がd21nmであるにもかかわらず、シリコン酸化膜Aの膜厚がd12nmでシリコン酸化膜Bの膜厚がd22nmと算出してしまう可能性があった。しかし、シリコン酸化膜Aの膜厚d12nmというのが、図9のd1±1%に含まれていなければ、膜厚としてd12という値が算出されることはないので、測定の誤認の可能性が低くなり、測定精度が向上する。
(1)ライブラリ数の大幅な減少
従来法ではそれぞれの層で予想される構造の変動をすべてライブラリにしていたため、莫大な数の光強度ライブラリが必要となっていた。本方法では、ある構造検査工程での検査よりも先立って行われている検査の結果を取り込んで光強度ライブラリを作成したため、光強度ライブラリの数が大きく減少する。その結果、光強度の波長分散の測定結果から類似した光強度波長分散を検索する時間が大幅に短くなる。
従来方法では、光強度ライブラリIIA,IIIAを用いて基板構造を決定していた。本方法では、光強度ライブラリIIB,IIIBを用いて基板構造を決定している。
また、ライブラリ数が大幅に減少することで、図15,16に示したように予め光強度のライブラリを作らずに、検査工程を行うことが可能になる。例えば構造決定工程(ステップS208)において、従来は検査工程の前に、基板構造ライブラリIIIA、光強度ライブラリIIIAを作成していた。本方法では、光強度ライブラリIIIAを作成せずに、基板構造を決定した(ステップS205)後に、光強度ライブラリIIIBを作成する。光強度ライブラリIIIAを形成しないので、ライブラリの容量を大幅に低減できる。
また、従来のコーター/デベロッパーに構造検査機能がついたような場合には、ロットの一連の処理が終わるまでに、構造検査が終わればよいので、一連の処理が終わるまでに光強度ライブラリIIIBを作成し、測定した光強度を光強度ライブラリIIIBと比較して検査結果を求めればよい。このように、ライブラリの容量を大幅に低減しつつ、精度の高い検査を行うことが可能となる。
(第4の実施形態)
本実施形態は、本発明を用いた場合のパターン評価方法の実施形態である。
図20は、現像中のパターン評価を模式的に示した図、図21はパターン評価方法の手順をフローチャートとして示した図である。図20と図21を用いて、本発明の処理の手順を説明する。
図20に示すように、特定の下地基板(下層からSi301、下層膜302、反射防止膜303)上にレジストを塗布・ベーク、パターン露光、ベークした基板に現像液を供給した状態で、基板上のモニター領域に光を入射し、回折光を検出する。従って、レジストパターン034の上層やパターン間には、現像液305のほかに、レジストの反応生成物と現像液の混合相が存在する。入射光には、複数の波長を有するブロードな光とし(例えばハロゲンランプの光)を用いる。また、検出する回折光強度は400から800nmの波長範囲での0次の回折光のTM偏光を測定する。TM偏光は、0次回折光の光路上に偏光板を挿入して、得ている。ここで検出する回折光の強度の波長分散は、測定領域の構造、光学定数により一意に決まるものである。そこで、本発明では、現像中に、パターンからの回折光を測定し、その結果から寸法を評価する。
図21を用いて、具体的な処理の手順を示す。本実施形態は、回折光強度の予測を現像処理工程の前に予め行い、ライブラリを作成しておく場合である。この場合の評価は、現像処理前に行うライブラリ作成工程と現像処理工程におけるパターン寸法を評価する工程からなる。
ライブラリ作成工程では、まず、レジストが現像液に溶解するときの現像領域の開口部形状と、レジストの反応生成物と現像液で構成される液相内での反応生成物と現像液の混合比の分布を与え、現像のモデルを決める(ステップS601)。
次に、液相及び被処理基板からなる基板の構造と、現像液、基板、及び反応生成物の光学定数を与える(ステップS602)。与えられた構造と光学定数をもとに、特定の角度で光を入射した場合の計算を行い、回折光強度の波長分散を算出する(ステップS603)。ここで、計算の手法としては、Maxwellの方程式を用いて、規則的なパターンからの回折光の電界、磁界、強度を解く、Morham(J.Opt.Soc.Am.,Vol.12, No.5, May 1995 1077-1086)らのRCWA(Rigorous coupled-wave analysis)法を用いた。与えられた構造、光学定数の全ての条件について計算を行って、回折光強度の波長分散のライブラリを作成する(S604)。
次に、パターン寸法を評価する工程について説明する。基板が現像ユニットに搬送される(ステップS605)。次に、基板上に現像液が供給され、現像が開始される(ステップS606)。その後、モニター領域の反射光の測定(ステップS607)を行う。ここでは、モニター領域に、光を入射し、回折光を検出器で検出できるように、基板の位置やモニターユニットの位置を調整する必要がある。この調整は、現像液を供給する際に、基板が移動しない場合には供給の前に行っても良いし、そうでない場合には供給の後に行う。次に、測定した回折光強度の波長分散とライブラリの回折光強度の波長分散を比較する(ステップS608)。そして、ライブラリにある回折光強度の波長分散と最もよく一致する波長分散を求め、パターンの寸法を算出する(ステップS609)。
次に、ライブラリ作成工程について詳しく説明する。現像中のレジストパターンからは、図20で説明したように、レジストの反応生成物が発生する。以下、レジストの反応生成物を含んだ現像液を混合相と呼び、混合相中のレジストの割合を混合比と定義する。一般的に、反応生成物の拡散は十分に早くないので、反応生成物の拡散の仕方、すなわち液相における混合比の分布をモデルとして取りこまないと、現像中のパターン評価の精度が悪くなってしまう。そこで、本発明では、ライブラリ作成工程で、現像モデルを決める(ステップS601)。
図22(a)に現像初期の現像の進み方の模式図を示す。現像初期では、現像領域では膜厚方向に現像が進む。その結果、反応生成物は矢印に示す方向に拡散していくので、混合比は膜厚方向の分布となり、基板から離れるに従って比率が低くなる。膜厚方向の現像が終了すると、図22(b)に示すように、横方向に現像が進む。従って、反応生成物は図23の矢印で示すような方向にも拡散するので、横方向で、パターン側壁から離れるに従って混合比が低くなる。実際には、これらの混合比変化の重ね合わせが混合比の分布となるので、図23の矢印方向に向かって混合比が減少する分布を仮定した。
次に、具体的に基板の構造・光学定数を与えるまでのステップを示す。図24に図23のモデルをもとにして作成した膜厚方向の層構造を示す。図24において、pはパターンピッチ、w1はレジストパターン寸法である。層L0が現像液、層L01が現像液とレジストの反応生成物の混合相、層L11から層L13が現像液とレジストの反応生成物の混合相とレジストパターン、層L2が反射防止膜、層L3が下層膜、層L4がSiである。層L11、層L12、層L13の違いは、反応生成物の混合比の違いである。反応生成物は、レジストと現像液の界面で発生し、現像液層に拡散していくためパターンの下部(L13)で割合が高くなっている。
層L0〜L13の混合比の分布を図25に示す。層L0は全て現像液であるため、混合比は0である。層L01は現像液と反応生成物の混合相であり、混合比は一定値r01をとる。層L11から層L13は、現像液とレジストの反応生成物の混合相とレジストパターンが混在するので、混合比rは位置の関数となり、それぞれ図25に示すようになる。レジストパターン領域(0<x<w1/2、p−w1/2<x<p)で、混合比は1をとる。現像液とレジストの反応生成物の混合相領域(w1/2<x<p−w1/2)で、混合比は0と1の間の値をとる。層L11ではr11(x)、層L12ではr12(x)、層L13ではr13(x)と、位置に応じた関数の形をとる。それぞれの関数r11(x)〜r13(x)は、液相と基板の界面から離れるに従って、混合比が小さくなるような関係になる。
次に、図25の混合比をもとに、構造・光学定数を与えるのに必要なパラメータである層L0からL4の屈折率、消衰係数、膜厚、寸法を与える。(表10)に与えられた層L0からL4の屈折率、消衰係数、膜厚、寸法を示す。また、図26に各層の屈折率を示す。又、図27に各層の消衰係数を示す。層L
01,L
11〜L
13の屈折率及び消衰係数は、共に位置xの関数となる。
層L0は現像液の層であり、屈折率n0、消衰係数k0とも現像液の値をとる。層L01は現像液と反応生成物の混合相であり、屈折率n01、消衰係数k01は、ともに現像液(n0、k0)とレジスト(n1、k1)の間の値をとる。膜厚はd01である。
層L11から層L13は、現像液とレジストの反応生成物の混合相とレジストパターンが混在するので、屈折率および消衰係数は位置の関数となり、それぞれ図26,図27に示すようになる。レジストパターン領域(0<x<w1/2、p−w1/2<x<p)では、屈折率、消衰係数ともにレジストの値(n1、k1)をとる。現像液とレジストの反応生成物の混合相領域(w1/2<x<p−w1/2)で、屈折率及び消衰係数は、ともに現像液と反応生成物の中間の値をとる。膜厚はそれぞれd11、d12、d13である。
層L2は、反射防止膜であり、屈折率n2、消衰係数k2は、反射防止膜の値をとる。膜厚は、d2である。層L3は下層膜であり、屈折率n3、消衰係数k3は、下層膜の値をとる。膜厚はd3である。層L4はSi膜の層であり、屈折率n4、消衰係数k4は、Siの値をとる。
プロセスで変動しうるパラメータが、層L01の膜厚d1,屈折率n01,消衰係数k01、層L11の膜厚d11,屈折率n11(x),消衰係数k11(x)、層L12の膜厚d12,屈折率n12(x),消衰係数k12(x)、層L13の膜厚d13,屈折率n13(x),消衰係数k13(x)、層L1の寸法w1,層L2の膜厚d2、層L3の膜厚d3であるとする。それぞれのパラメータが5水準とるとすると、構造・光学定数の組み合わせが59で1953125個与えられる(ステップS601,S602)。なお、パラメータの内、屈折率及び消衰係数は、反応生成物の拡散の仕方で変化する。それぞれの構造・光学定数について計算を行い(ステップS603)、1953125個の回折光強度の波長分散が作成される(ステップS604)。
パターン評価時の測定波形の比較において(ステップS608)、測定した反射光強度の波長分散とライブラリの反射光強度の波長分散と比較して寸法を算出した。
従来の現像のモデルを図28に示す。図28において、図28に示すように、膜厚方向における、現像液と反応生成物との混合比の分布を考慮していない。また、レジスト間における現像液と反応生成物との混合比の分布を考慮していなかった。屈折率、消衰係数、膜厚、寸法の値を(表11)に示す。また、従来のモデルの屈折率及び消衰係数を図29,図30に示す。
プロセスで変動しうるパラメータを層L1の膜厚d1、寸法w1、層L2の膜厚d2、層L3の膜厚であるとする。それぞれのパラメータが、5水準とるとする。すると、構造・光学定数が、54で625個の構造・光学定数が与えられる。それぞれの構造・光学定数について計算を行い、625個の回折光強度の波長分散が作成される。そして、測定された反射光強度の波長分散と、計算された626個の波長分散とを比較して寸法を算出する。
本方法と従来法とを比べた場合、レジストの反応生成物と現像液の混合相を仮定する本方法の方が高い精度が得られた。
なお、本実施形態では、波長分散を測定したが、単一の波長で十分精度が得られる場合は単一の波長での測定を行っても良い。また、本実施形態では、現像工程の前にライブラリを作成したが、現像工程中に作成しても良い。また、本実施形態ではパターン寸法を評価したが、パターン形状、現像液と反応生成物の混合比を評価することも可能である。
本実施形態は偏光板を用いてTM偏光を評価したが、十分に精度が得られれば、偏光板を入れずに検出してもよい。また、TE偏光、そのほかの偏光、強度変化(tanψ)、位相変化(cosΔ)を評価してもよい。また、1次以上の回折光を検出してもよい。また、入射する光の角度も垂直入射である必要はない。
また、本実施形態では、混合相のモデルを複雑に入れたため、1953125個という多くの波長分散のライブラリと比較したが、評価を行う時間帯が例えば、現像後半だけであるとすると、反応生成物の拡散がかなり進んでいるので、進んでいないモデルを含むライブラリとの比較を行わなければ処理の時間を短くすることができる。従って、時間帯によって比較するデータを決めておくのも有効である。
(第4の実施形態)
本実施形態は、本発明を用いた場合のパターン形成方法の実施形態である。
現像中のパターン評価を模式的に示した図は第3の実施形態と同様に図11であり、処理の手順をフローチャートとして示した図は図31である。図1と図31を用いて、本発明の処理の手順を説明する。
図11に示すように、特定の下地基板(下層からSi、下層膜、反射防止膜)上にレジストを塗布・ベーク、パターン露光、ベークした基板に現像液を供給した状態で、基板上のモニター領域に光を入射し、回折光を検出する。入射する光は、複数の波長を有するブロードな光とし(例えばハロゲンランプの光)、検出する回折光強度は400から800nmの波長範囲で0次の光を、偏光板を入れずに測定する。ここで検出する回折光の強度の波長分散は、測定領域の構造、光学定数により一意に決まるものである。そこで、本発明では、現像中に、パターンからの回折光を測定し、その結果から寸法を算出し、現像を終了させる。
図31を用いて、具体的な処理の手順を説明する。本実施形態は、回折光強度の予測を現像処理工程の前に予め行い、ライブラリを作成しておく場合である。この場合の評価は、現像処理前に行うライブラリ作成工程と現像処理工程からなる。ライブラリ作成工程では、まず、レジストが現像液に溶解するときの現像領域の開口部形状と、レジストの反応生成物と現像液で構成される液相内での反応生成物と現像液の混合比の分布を与え、現像のモデルを決める(ステップS701)。
次に、液相及び被処理基板からなる基板の構造と光学定数を与える(ステップS702)。
与えられた構造と光学定数をもとに、特定の角度で光を入射した場合の計算を行い、回折光強度の波長分散を算出する(ステップS703)。
与えられた構造、光学定数の全ての条件について計算を行って、回折光強度の波長分散のライブラリを作成する(ステップS704)。ここで、計算の手法としては、Maxwellの方程式を用いて、規則的なパターンからの回折光の電界、磁界、強度を解く、Morham(J.Opt.Soc.Am.,Vol.12, No.5, May 1995 1077-1086)らのRCWA(Rigorous coupled-wave analysis)法を用いた。
次に現像処理工程について説明する。基板が現像ユニットに搬送される(ステップS711)。次に、基板上に現像液が供給され、現像が開始される(ステップS712)。その後、モニター領域の反射光の測定(ステップS713)を行うが、そのためにはモニター領域に、光を入射し、回折光を検出器で検出できるように、基板の位置やモニターユニットの位置を調整する必要がある。この調整は、現像液を供給する際に、基板が移動しない場合には供給の前に行っても良いし、そうでない場合には供給の後に行う。次に、測定した回折光強度の波長分散とライブラリの回折光強度の波長分散を比較する。そして、ライブラリにある回折光強度の波長分散と最もよく一致する波長分散を求め(S714)、パターンの寸法を算出する(ステップS715)。計算された寸法と所望の寸法とを比較し、現像終了判定を行う。計算された寸法が所望の値である場合、現像を終了する(ステップS717)。計算された寸法が所望の値でない場合、再度反射光の測定(ステップS713)を行い、ライブラリとの波形を比較する(ステップS714)。この処理を算出したパターン寸法が所望値となるまで続ける。
本実施形態の構造・光学定数の与え方(ステップS702)が、第3の実施形態と異なるので、違いを説明する。現像のモデルを取りこんだ図、膜構造の模式図は第3の実施形態と同じくそれぞれ、図23、図24である。また、層1の光学定数の分布も実施形態1と同じく、図26,図27である。本実施形態では、構造・光学定数を与えて(ここまでは第3の実施形態と同じ)、その後に、各層の中で光学定数の平均化を行い、各層での光学定数を一定の値として扱う。従って、
層L
1iの屈折率n
1iは
となる。従って、最終的に得られる構造・光学定数は(表12)のようになる。
プロセスで変動しうるパラメータを層L01の膜厚(d01)、反応生成物の拡散の仕方(n01、k01)、層L11の膜厚(d11)、反応生成物の拡散の仕方(n11、k11)、層L12の膜厚(d12)、反応生成物の拡散の仕方(n12、k12)、層L13の膜厚(d13)、反応生成物の拡散の仕方(n13、k13)、層1の寸法(w1)、層2の膜厚(d2)、層3の膜厚(d3)であるとして、それぞれが5水準とるとして構造・光学定数は5×5×5×5×5×5×5×5×5で1953125個与えられ(ステップS701,702)、それぞれについて計算を行い(ステップS703)、1953125個の回折光強度の波長分散が作成される(ステップS704)。
パターン評価時の測定波形の比較において(ステップS714)、測定した反射光強度の波長分散とライブラリの反射光強度の波長分散と比較して寸法を算出し、現像を終了させた。ライブラリとして、レジストの反応生成物と現像液の混合相を仮定しない場合のライブラリを用いるよりも、レジストの反応生成物と現像液の混合相を仮定する場合の方が高い精度が得られた。
なお、本実施形態では、波長分散を測定したが、単一の波長で十分精度が得られる場合は単一の波長での測定を行っても良い。また、本実施形態では、現像工程の前にライブラリを作成したが、現像工程中に作成しても良い。
本実施形態は偏光板を用いずに評価したが、TM偏光、TE偏光、そのほかの偏光、強度変化(tanψ)、位相変化(cosΔ)でもよい。また、1次以上の回折光を検出してもよい。また、入射する光の角度も垂直入射である必要はない。
また、本実施形態では、混合相のモデルを複雑に入れたため、1953125個という多くの波長分散のライブラリと比較したが、現像後半の評価では、反応生成物の拡散がかなり進んでいるので、進んでいないモデルを含むライブラリとの比較を行わなければ処理の時間を短くすることができる。逆に、現像前半では、反応生成物の拡散があまり進んでいないので、進んでいるモデルを含むライブラリとの比較を行わなければ処理の時間を短くすることができる。従って、時間帯によって比較するデータを決めておくのも有効である。
本実施形態によれば、現像におけるレジストの反応生成物と現像液からなる液相のモデルを明確化し、液相での混合比の分布が、液相とレジストが反応する界面から離れるに従って、レジストの比率が単調に0まで変化するとして、現像中のパターンの回折光強度を正確に予測できるようにした。その結果、パターンの評価精度が大きく向上した。
(第5の実施形態)
図32に第5の実施形態に係わるレジストパターンプロセス条件決定システムを示す。このシステムは、比較演算フィードバック部401,スピンコーティング法の塗布ユニット402、塗布後加熱ユニット403、露光後加熱(PEB)ユニット404、形状計測器405aを具備する現像ユニット405とからなる塗布現像装置と、露光装置406,キャリアステーション407と各ユニットとの間を1wafer単位で搬送可能な搬送機408とから構成されている。また、塗布ユニット402には図示されない第一のレジスト溶液と第二のレジスト溶液(溶剤または感光剤溶液など、第一のレジスト溶液の一部抽出液など)をミキシングしつつ被処理基板上に薬液を滴下するノズルに輸送する薬液調整部が装着される場合もある。
このシステムを用いて、新開発のレジストについて最適なプロセス条件を決定する作業を行った。まず、このシステムのキャリアステーション407に被処理基板24枚を搭載した。搭載した基板は数枚単位で処理される。以下にプロセス条件の自動決定の手順を図33を参照して説明する。図33は、本発明の第5の実施形態に係わるプロセス条件の決定方法の手順を示すフローチャートである。
まず塗布現像装置及び露光装置405に記録されている初期条件を読み出す(ステップS801)。塗布ユニット404では、3枚の基板に対して、(表13)に示す初期条件の回転数で設定して塗布膜を形成する(ステップS802)。
塗布後直ちに、形状計測器405aで、感光性樹脂膜の膜厚を計測する(ステップS803)。比較演算フィードバック部401は、計測された膜厚と設定範囲を比較する(ステップS804)。
膜厚が設定範囲内であれば、初期条件の回転数をプロセス条件として設定する(ステップS805)。膜厚が設定範囲内で無ければ、比較演算フィードバック部401は、回転数と膜厚との関係から、所望の膜厚を得るのに最適な回転数を決定する(ステップS806)。本実施形態の場合、(表13)に示した条件では、膜厚が設定範囲内のレジスト膜が得られなかった。回転数を2400回転に補正した結果、膜厚が正常範囲内のレジスト膜が得られた。そこで、2400回転をプロセス条件に設定した。
続いて、露光量、フォーカス位置については基板面内でそれぞれ変化させると共に、基板毎の露光後のベーク(PEB)の温度及び時間、現像時間の3パラメータについて各2水準の条件を設定する計画を立てた、実験計画に基づき計8枚について塗布,露光,露光後加熱(PEB),現像,形状計測の処理を順次行う(ステップS807)。各パラメータの設定値を(表14)に示す。
そして、形状計測器405aで感光性樹脂パターンの開口部(感光性樹脂が除去された領域)の寸法及び形状の計測を行う(ステップS808)。寸法、形状の計測は規則的なパターンに光を照射し、パターンからの回折光の情報からMaxwellの方程式を用いて、電界、磁界、強度を解く、Morham(J.Opt.Soc.Am.,Vol.12, No.5, May 1995 1077-1086)らのRCWA(Rigorous coupled-wave analysis)法を用いて行われる。
測定値が許容範囲内であるか判定する(ステップS809)。パターンの寸法の場合、100nm±5%が許容範囲である。パターン形状の場合、側壁角度が88から90°の範囲が許容範囲である。
測定値が許容範囲であれば、更に許容範囲の加工形状が得られる露光量−フォーカスの範囲(ED−マージン)を求め、この範囲ができるだけ広くなるように補正を行うようにした。
8枚のED-マージンデータとそのときの塗布・PEB・現像の水準を比較によりベーク時間が長い方がED−マージンを広げる効果が見られたため、比較演算フィードバック部401は露光後加熱ユニット404に対して、先の条件2水準のうち、長いほうの時間を割り当てた。また、比較演算フィードバック部401は加熱温度と現像時間との間に交互作用が存在するとの判定を示し、ベーク温度については適正と思われる温度を基準に±2℃(3水準)(第一回目の実験の水準に用いた温度変更の幅より小さく)で設定し、現像時間についても適正と思われる時間を基準に±10%(3水準)(第一回目の実験の水準に用いた時間幅より小さく)で設定し、計9枚について塗布,露光,PEB,現像,形状計測の処理を行うよう塗布ユニット402、露光後加熱(PEB)ユニット404,現像ユニット405、と露光装置に指示した。
比較演算フィードバック部401は、最大のED-マージンが得られる条件を決定し、それに対応したベーク温度については基準に対して+0.4℃、現像時間に対しては−5%に最適条件があると判断し、この条件を加熱装置、現像装置のそれぞれに設定した。またフォーカスオフセットと適正露光量を露光装置に設定した。
以上、感光性樹脂パターン形成システムは延べ20枚の基板を処理する工程のなかで、感光性樹脂パターンの寸法、形状を感光性樹脂パターン形成システム内で自動測定し、関連する手段にフィードバックを行うことで塗布条件、加熱条件、露光条件、現像条件を定めることができた。
また、これにより定めた条件で感光性樹脂パターンを作成し、この感光性樹脂パターンをマスクに被処理基板をエッチングして作成した半導体デバイスは、寸法精度を飛躍的に向上できたため、デバイスの信頼性を飛躍的に向上できた。
これらの操作には、膜厚の決定、フィードバックに2分、3パラメータ2水準の評価に23分、詳細な条件決定(2パラメータ3水準)に25分の時間を要し、新規の感光性樹脂材料を用いたパターニングの最適化を僅か50分で行うことができた。従来の破壊検査で場合には8日を要しており、条件決定時間を大幅に短縮できた。
本実施形態の選定パラメータ、水準、補正の対象、条件決定に要する基板枚数は上記実施形態に限るものではない。対象となる感光性樹脂材料、感光性樹脂パターンに対する要求項目と要求値及びその範囲などにより様々な形態を取り得る。
なお、水準の微調整の方法については次ぎの通り行うのが好ましい。
1)ポジレジストのレジストパターン寸法に対する補正
a)所望寸法より太い場合
該露光手段の露光量を増加させる補正、または、露光後の加熱に用いる加熱手段に対して加熱温度を上昇させる補正、または、現像手段の現像時間を長くする補正、または、現像手段の現像液濃度を増加させる補正、現像手段の現像液温度を上昇させる補正、のいずれかにより行う。
b)所望寸法より細い場合
露光手段の露光量を減少させる補正、または、露光後の加熱に用いる加熱手段に対して加熱温度を低下させる補正、または、現像手段の現像時間を短くする補正、または、現像手段の現像液濃度を低下させる補正、現像手段の現像液温度を低下させる補正、のいずれかにより行う。
2)ポジ型レジストの開口寸法に対する補正
a)所望寸法より太い場合
露光手段の露光量を減少させる補正、または、露光後の加熱に用いる加熱手段に対して加熱温度を低下させる補正、または、現像手段の現像時間を短くする補正、または、現像手段の現像液濃度を低下させる補正、現像手段の現像液温度を低下させる補正、のいずれ c)所望寸法より細い場合
該露光手段の露光量を増加させる補正、または、露光後の加熱に用いる加熱手段に対して加熱温度を上昇させる補正、または、現像手段の現像時間を長くする補正、または、現像手段の現像液濃度を増加させる補正、現像手段の現像液温度を上昇させる補正、のいずれかにより行う。
3)ネガ型レジストのレジスト寸法に対する補正
a)所望寸法より太い場合
露光手段の露光量を減少させる補正、または、露光後の加熱に用いる加熱手段に対して加熱温度を低下させる補正、または、現像手段の現像時間を短くする補正、または、現像手段の現像液濃度を低下させる補正、現像手段の現像液温度を低下させる補正、のいずれかにより行う。
b)所望寸法より細い場合
該露光手段の露光量を増加させる補正、または、露光後の加熱に用いる加熱手段に対して加熱温度を上昇させる補正、または、現像手段の現像時間を長くする補正、または、現像手段の現像液濃度を増加させる補正、現像手段の現像液温度を上昇させる補正、のいずれかにより行う。
4)ネガ型レジストの開口寸法に対する補正
a)所望寸法より太い場合
該露光手段の露光量を増加させる補正、または、露光後の加熱に用いる加熱手段に対して加熱温度を上昇させる補正、または、現像手段の現像時間を長くする補正、または、現像手段の現像液濃度を増加させる補正、現像手段の現像液温度を上昇させる補正、のいずれかにより行う。
b)所望寸法より細い場合
露光手段の露光量を減少させる補正、または、露光後の加熱に用いる加熱手段に対して加熱温度を低下させる補正、または、現像手段の現像時間を短くする補正、または、現像手段の現像液濃度を低下させる補正、現像手段の現像液温度を低下させる補正、のいずれかにより行う。
また、本実施形態では形状計測にRCWA法を用いたが、これに限らず、パターン寸法、形状を予測できる手法であれば、如何なる手法も形状計測手段に適用できる。
本実施形態はリソグラフィー工程におけるレジストパターン形成のための条件決定に関するものであるがこれに限るものではなくエッチング工程の条件決定にも適用できる。また、レジスト調整手段が具備されたプロセス条件決定装置を用いた場合にはレジスト溶液の最適化も同時に行うことが可能である。レジスト調整手段では樹脂の種類、感光剤の種類、溶解抑止材の種類、溶剤の種類などが異なる薬液を用意し、ミキサーによりブレンド比を変化させたものを被処理基板上に塗布したものを用い、本実施例のように塗布・ベーク・現像の各条件を最適化しつつ材料の最適化も行うことが可能である。材料メーカーが本発明を実施することにより、材料に最適なプロセス条件を添付して販売することが容易となる。
本発明では実験計画として設定水準を総当りさせてサンプルを作成する手法を用いたがこれに限るものではない。L18などの直交表を用いたタグチメソッドを適用すると少ないサンプルで最適な条件を見出せる可能性が高い。
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
101…シリコン基板,102…反射防止膜,103…露光されていないレジスト膜,105…現像液,201…レジスト膜,202…デバイスパターン領域,203…モニタパターン領域,211…光源,212…観察光学系,213…分光器,214…コンピュータ,215…データベース