JP2009041985A - 触媒中のゼオライトの分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ゼオライトを含有する触媒中のゼオライトの含有量をより正確に算出する方法を提供すること、特に、FCCプロセスに用いられる触媒中のフォージャサイト型ゼオライトの含有量を正確に分析する方法を提供すること。
【解決手段】ゼオライトを含有する触媒を乾燥処理した後、少なくとも2点の異なる吸着圧でキセノンを触媒に吸着させて129Xe NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルのピークの位置(化学シフト)をyとし、キセノン吸着量をxとしてプロットし、そのプロットの直線部分を理論式y=ax+bにフィッティングして求められる該理論式のaの値から、触媒中のゼオライトの含有量を把握することを特徴とする触媒中のゼオライトの分析方法。
【選択図】なし
【解決手段】ゼオライトを含有する触媒を乾燥処理した後、少なくとも2点の異なる吸着圧でキセノンを触媒に吸着させて129Xe NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルのピークの位置(化学シフト)をyとし、キセノン吸着量をxとしてプロットし、そのプロットの直線部分を理論式y=ax+bにフィッティングして求められる該理論式のaの値から、触媒中のゼオライトの含有量を把握することを特徴とする触媒中のゼオライトの分析方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、触媒中のゼオライトの含有量を把握する方法であって、例えば、炭化水素油の流動接触分解(以下、「FCC」と表記)に用いられる触媒中に通常主活性成分として含まれるゼオライトの量を正確に分析する手法に関するものである。より詳しくは、本発明は、複数のキセノン吸着圧における触媒の129キセノン(129Xe)核磁気共鳴(NMR)スペクトルを測定し、該129Xe NMRスペクトルを利用して触媒中のゼオライト含有量を正確に分析しうる方法であり、本発明によれば、使用中あるいは使用後のFCC触媒中のゼオライト含有量を迅速に把握することができるので、そのゼオライト含有量を指標として該使用中あるいは使用後のFCC触媒の分解活性を迅速に確認することができる。
現在の石油精製では、減圧軽油などの重質油から高付加価値製品であるガソリンを製造する工程において、FCCプロセスが極めて重要な役割を担っている。一般にFCCプロセスでは、固体触媒による炭化水素油の接触分解反応が行われており、その触媒として約60μmの微粒子が用いられている。この微粒子状の触媒には、接触分解反応の主活性成分として、通常フォージャサイト型のゼオライトが含まれている。FCCプロセスでは、触媒上に付着したコークを除去する再生処理が繰り返し行われているが、その際にゼオライトの構造破壊が徐々に進行する。ゼオライトの構造破壊が進行すると、触媒中のゼオライトの含有量が徐々に低下するため、触媒の分解活性も徐々に低下する。このため、使用中あるいは使用後の触媒中のゼオライトの含有量を正確に分析することは、該使用中あるいは使用後の触媒の分解活性の指標を得る上で有意義である。
現在、触媒中のゼオライトの含有量を分析する手法としては、X線回折法(XRD)によるピーク強度の測定がよく用いられている(非特許文献1)。この方法は、触媒のXRDパターンを測定して、そのパターン中のゼオライトに起因するXRDピークを選択し、そのピーク強度の合計値からゼオライトの含有量を推定する方法である。この方法で得られた値は、‘相対X線回折強度’もしくは‘結晶化度’と呼ばれ、NaYゼオライトなどのゼオライト単独での値を100%としたときの百分率で表される。この方法は極めて簡便ではあるものの、例えばゼオライトの構造破壊が著しく進行している場合は、XRDピークも著しく小さくなることから、ゼオライトの含有量を正確に算出することが困難となる。さらに、XRDで得られる触媒中のゼオライトの含有量は、原理的にゼオライトと触媒中の他の成分で密度に差があると誤差が大きくなる。これは、XRDでの値が重量ではなく体積に依存するためである。例えば、触媒中のゼオライト以外の成分の密度がゼオライトよりも著しく大きい場合、XRDによるゼオライトの含有量は実際の値よりも大きくなる傾向がある。
また、もう1つの方法として、液体窒素温度での窒素吸着を利用する手法があり、特に細孔容積を求める方法としてはt−プロット法がよく用いられる(非特許文献2)。t−プロット法とは、窒素の吸着等温線を測定した後、吸着層の統計的な平均厚さtに変換して、再びプロットする方法である。t−プロット法によって算出された触媒の細孔容積を、基準となるゼオライトの細孔容積で割ることによって、便宜的に触媒中のゼオライトの含有量が求まる。しかしながら、この方法はあくまで窒素吸着がゼオライトに選択的に起こることを前提としており、ゼオライト以外の成分への窒素吸着量が増加すると誤差が大きくなる。実際、FCC触媒の場合、ゼオライト以外の成分への窒素吸着量が無視できないことから、t−プロット法を用いた触媒中のゼオライトの含有量の算出はあまり現実的ではない。
上記のようなことから、触媒中のゼオライトの含有量をより正確に分析しうる新たな方法が現在必要とされている。
上記のようなことから、触媒中のゼオライトの含有量をより正確に分析しうる新たな方法が現在必要とされている。
ASTM D 3906 "Standard Test Method for Determination of Relative X-ray Diffraction Intensities of Faujasite-Type Zeolite-Containing Materials"
B. C. Lippens, J. H. de Boer, J. Catal., 4, 319 (1965).
本発明の目的は、上記要望に鑑み、ゼオライトを含有する触媒中のゼオライトの含有量をより正確に算出する方法を提供することである。特に、FCCプロセスに用いられる触媒中のフォージャサイト型ゼオライトの含有量をより正確に分析する方法を提供することである。しかして、延いては、ゼオライトを含有する触媒の分解活性の指標を得ることである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った。その結果、上記目的を達成するには、ゼオライトを含有する触媒を乾燥処理した後、少なくとも2点の異なる吸着圧でキセノンを吸着させて、それらの129Xe NMRスペクトルを測定し、129Xe NMRスペクトルにおけるピークの位置(化学シフト)をyとし、キセノン吸着量をxとしてプロットし、そのプロットの直線部分を理論式y=ax+bにフィッティングして求められる該理論式のaの値から触媒中のゼオライトの含有量を算出する方法が有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、キセノンがゼオライトにのみ選択的に吸着するという原理に基づいているものであり、さらに詳しくは、129XeNMRにおけるピークの化学シフトyとキセノン吸着量との関係が、ゼオライトの細孔容積に依存するという原理に基づいている。従って、この方法ではゼオライトの含有量が著しく少ない場合や他の成分との密度差が大きい場合においても、ゼオライトの含有量を正確に分析することが可能である。
すなわち、本発明は、次の触媒中のゼオライトの分析方法を提供する。
(1)ゼオライトを含有する触媒を乾燥処理した後、少なくとも2点の異なる吸着圧でキセノンを触媒に吸着させて129Xe NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルのピークの位置(化学シフト)をyとし、キセノン吸着量をxとしてプロットし、そのプロットの直線部分を理論式y=ax+bにフィッティングして求められる該理論式のaの値から、触媒中のゼオライトの含有量を把握することを特徴とする触媒中のゼオライトの分析方法。
(2)前記ゼオライトがフォージャサイト型のゼオライトであることを特徴とする上記(1)に記載の触媒中のゼオライトの分析方法。
(3)前記ゼオライトを含有する触媒が炭化水素油の接触分解用の触媒であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の触媒中のゼオライトの分析方法。
(1)ゼオライトを含有する触媒を乾燥処理した後、少なくとも2点の異なる吸着圧でキセノンを触媒に吸着させて129Xe NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルのピークの位置(化学シフト)をyとし、キセノン吸着量をxとしてプロットし、そのプロットの直線部分を理論式y=ax+bにフィッティングして求められる該理論式のaの値から、触媒中のゼオライトの含有量を把握することを特徴とする触媒中のゼオライトの分析方法。
(2)前記ゼオライトがフォージャサイト型のゼオライトであることを特徴とする上記(1)に記載の触媒中のゼオライトの分析方法。
(3)前記ゼオライトを含有する触媒が炭化水素油の接触分解用の触媒であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の触媒中のゼオライトの分析方法。
本発明によれば、ゼオライトを含有する触媒のゼオライト含有量を正確に分析でき、把握することができる。そして、把握したゼオライトの含有量は該触媒の分解活性の指標となりうる。例えば、使用中あるいは使用後で、含有するゼオライトの構造破壊が進行して、ゼオライトの含有量が低下し、ゼオライトの含有量や分解活性が定かでなくなったFCC触媒のゼオライト含有量を迅速に把握することができる。そのゼオライト含有量を指標として該使用中あるいは使用後のFCC触媒の分解活性を迅速に確認することができ、本発明は該使用中あるいは使用後のFCC触媒の分解活性を知る上で有意義である。
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
(本発明の分析対象)
本発明で分析可能なゼオライトは、キセノンが吸着しうる細孔を有するものであれば、特に制限は無い。キセノンは原子直径が0.44nmであることから、0.44nmよりも大きい細孔を有するゼオライトであれば、本発明によって含有量を分析することが可能である。例えば、FCC触媒の主活性成分として一般に用いられているフォージャサイト型のゼオライトは、約1.3nmの細孔(入り口は0.74nm)を有することから、本発明によってその含有量を分析することが可能である。従って、本発明は、X型やY型などのフォージャサイト型ゼオライトだけでなく、フェリエライト、ZSM-5、モルデナイト、β、EMT、L型、Ω型などキセノンが入りうる細孔を有する各種ゼオライトの分析にも適用可能である。さらに、フォージャサイト型ゼオライトに関しては、超安定YゼオライトがFCC触媒の主活性成分としてよく用いられているが、本発明は反応使用前の超安定Yゼオライトだけでなく反応使用後や強制劣化処理後の超安定Yゼオライトの分析にも適用可能である。
(本発明の分析対象)
本発明で分析可能なゼオライトは、キセノンが吸着しうる細孔を有するものであれば、特に制限は無い。キセノンは原子直径が0.44nmであることから、0.44nmよりも大きい細孔を有するゼオライトであれば、本発明によって含有量を分析することが可能である。例えば、FCC触媒の主活性成分として一般に用いられているフォージャサイト型のゼオライトは、約1.3nmの細孔(入り口は0.74nm)を有することから、本発明によってその含有量を分析することが可能である。従って、本発明は、X型やY型などのフォージャサイト型ゼオライトだけでなく、フェリエライト、ZSM-5、モルデナイト、β、EMT、L型、Ω型などキセノンが入りうる細孔を有する各種ゼオライトの分析にも適用可能である。さらに、フォージャサイト型ゼオライトに関しては、超安定YゼオライトがFCC触媒の主活性成分としてよく用いられているが、本発明は反応使用前の超安定Yゼオライトだけでなく反応使用後や強制劣化処理後の超安定Yゼオライトの分析にも適用可能である。
本発明における分析対象の触媒は、上記のような各種ゼオライトを含有する触媒である。特に好ましくは、フォージャサイト型ゼオライトを含有する触媒である。本発明においては、触媒に含まれるゼオライト以外の成分としては特に制限は無く、FCC触媒のマトリックスとして通常用いられるカオリンやシリカ、アルミナなどゼオライト以外の成分が複数含まれていても、ゼオライトの含有量を正確に分析することが可能である。これは、本発明においては、キセノンはゼオライトにのみ選択的に吸着し、ゼオライト以外の成分による妨害効果は極めて低いためである。
また、本発明で分析できるゼオライトの含有量の範囲も特に制限は無く、129Xe NMRスペクトルを測定した際に僅かでもピークを検出することができれば、ゼオライトの含有量を分析することが可能である。これは、本発明においては、ピークの強度ではなくピークの位置からゼオライトの含有量を分析しているためであり、検出感度はXRDに比べても極めて高いといえる。従って、本発明は、ゼオライトとその他の成分の複数成分からなる触媒中のゼオライトの含有量の分析に適しており、特にFCCプロセスに用いられる触媒中のゼオライトの含有量の分析に好適である。
(前処理)
本発明では、分析対象となる触媒の乾燥処理を十分に行うことが好ましい。これは、触媒中に吸着している水が129Xe NMRスペクトルの測定に悪影響を及ぼすためである。仮に触媒中の水を十分に除去せずに129Xe NMRスペクトルの測定を行った場合、キセノンの触媒への吸着量が減少し、かつ129Xe NMRのピークシフトが大きくなるため、結果としてゼオライトの含有量が低く見積もられる恐れがある。触媒の乾燥処理は、ゼオライトに吸着している水を十分に除去しうる条件で行えば特に制限は無いが、約1gの触媒を真空ポンプで排気しながら300℃以上で3時間以上加熱する方法が最も好ましい。
本発明では、分析対象となる触媒の乾燥処理を十分に行うことが好ましい。これは、触媒中に吸着している水が129Xe NMRスペクトルの測定に悪影響を及ぼすためである。仮に触媒中の水を十分に除去せずに129Xe NMRスペクトルの測定を行った場合、キセノンの触媒への吸着量が減少し、かつ129Xe NMRのピークシフトが大きくなるため、結果としてゼオライトの含有量が低く見積もられる恐れがある。触媒の乾燥処理は、ゼオライトに吸着している水を十分に除去しうる条件で行えば特に制限は無いが、約1gの触媒を真空ポンプで排気しながら300℃以上で3時間以上加熱する方法が最も好ましい。
(129Xe NMRの測定条件)
つづいて、上記のように乾燥処理を行った触媒の129Xe NMR測定を行う。この測定方法は以下の通りである。
まず、乾燥処理した触媒にキセノンガスを吸着させ、触媒へのキセノンガスの吸着が平衡に達するまで待つ。ここで、キセノン吸着圧とは、触媒が入ったNMR測定管内におけるキセノンガスの吸着平衡に達した時の圧力である。そして、この吸着平衡後にキセノンガスが吸着した触媒の129Xe NMRスペクトルを測定する。このNMR測定における条件は以下の通りである。キセノンの吸着圧は、吸着したキセノンの129Xe NMRピークが観測されれば特に制限は無いが、一般に5kPa以上で吸着させて測定することが好ましい。また、本発明においては、少なくとも2点、好ましくは4〜5点の異なるキセノン吸着圧で触媒の129Xe NMRスペクトルを測定する。これは、測定された129Xe NMRスペクトルのピークの位置(化学シフト)yをキセノン吸着量xに対してプロットし、それを理論式y = ax + bにフィッティングするためである。キセノン吸着量xは、129Xe NMRスペクトルの測定を行う際のキセノン吸着圧より算出することができる。具体的には、129Xe NMR測定と同一の温度で、乾燥処理した触媒のキセノン吸着等温線を測定することにより、キセノン吸着量xを算出することができる。キセノン吸着等温線は、横軸がキセノン吸着圧、縦軸がキセノン吸着量であることから、キセノン吸着等温線を用いてキセノン吸着圧をキセノン吸着量xに変換することができる。
つづいて、上記のように乾燥処理を行った触媒の129Xe NMR測定を行う。この測定方法は以下の通りである。
まず、乾燥処理した触媒にキセノンガスを吸着させ、触媒へのキセノンガスの吸着が平衡に達するまで待つ。ここで、キセノン吸着圧とは、触媒が入ったNMR測定管内におけるキセノンガスの吸着平衡に達した時の圧力である。そして、この吸着平衡後にキセノンガスが吸着した触媒の129Xe NMRスペクトルを測定する。このNMR測定における条件は以下の通りである。キセノンの吸着圧は、吸着したキセノンの129Xe NMRピークが観測されれば特に制限は無いが、一般に5kPa以上で吸着させて測定することが好ましい。また、本発明においては、少なくとも2点、好ましくは4〜5点の異なるキセノン吸着圧で触媒の129Xe NMRスペクトルを測定する。これは、測定された129Xe NMRスペクトルのピークの位置(化学シフト)yをキセノン吸着量xに対してプロットし、それを理論式y = ax + bにフィッティングするためである。キセノン吸着量xは、129Xe NMRスペクトルの測定を行う際のキセノン吸着圧より算出することができる。具体的には、129Xe NMR測定と同一の温度で、乾燥処理した触媒のキセノン吸着等温線を測定することにより、キセノン吸着量xを算出することができる。キセノン吸着等温線は、横軸がキセノン吸着圧、縦軸がキセノン吸着量であることから、キセノン吸着等温線を用いてキセノン吸着圧をキセノン吸着量xに変換することができる。
実際に129Xe NMRスペクトルを測定する条件は、NMR装置の磁場強度など性能に依存するため一概には言えないが、NMRの観測周波数を129キセノン(129Xe)核に合わせ、測定結果のS/N比が最も良くなる条件を選択すべきである。すなわち、一般的には、パルス幅を45°、パルスの繰り返し時間を0.5秒以上、積算回数を1,000回以上、パルスシークエンスをシングルパルスとすることが好ましい。化学シフトの基準としては、0.5MPaのキセノンガスの129Xe NMRスペクトルを測定し、そのピーク位置を2.32ppmと設定することが好ましい。また、129Xe NMR測定は常温で行うことが好ましい。
なお、本発明において、129Xe NMRスペクトルを表記する場合は、基準に対して化学シフトが増加する方向を「低磁場側」、化学シフトが減少する方向を「高磁場側」として示す。
なお、本発明において、129Xe NMRスペクトルを表記する場合は、基準に対して化学シフトが増加する方向を「低磁場側」、化学シフトが減少する方向を「高磁場側」として示す。
また、触媒への吸着に用いるキセノンは、特に制限されない。本発明においてNMR測定の対象となる129Xe同位体は、26.4%の天然存在比を有するが、本発明に使用するキセノンは、天然に存在するものであっても、人為的に129Xeを富化したものであってもよい。129Xeの好ましい富化度は40%以上であり、より好ましい富化度は50%以上、特に好ましくは90%以上である。129Xeを人為的に富化したキセノンは、各種市販されており、これらの市販品を適宜利用することができる。また、天然に存在するキセノンを用いても十分な感度で129Xe NMRスペクトルを測定することができ、コストの面で有利である。
さらに、キセノンは、希釈することなくそのまま用いる方が好ましいが、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスと混合し、希釈して使用することも可能である。但し、キセノンを他の不活性ガスと混合して使用した場合、吸着状態がより複雑になることや、NMRの検出感度が著しく低下することなど、実験解析上不利な点が多い。従って、キセノンを不活性ガスと混合して使用する場合は、キセノンの濃度を95%以上とするのが適当である。
さらに、キセノンは、希釈することなくそのまま用いる方が好ましいが、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスと混合し、希釈して使用することも可能である。但し、キセノンを他の不活性ガスと混合して使用した場合、吸着状態がより複雑になることや、NMRの検出感度が著しく低下することなど、実験解析上不利な点が多い。従って、キセノンを不活性ガスと混合して使用する場合は、キセノンの濃度を95%以上とするのが適当である。
(ゼオライトの含有量の分析方法)
測定された129Xe NMRスペクトルのピークの位置(化学シフト)をyとし、その時のキセノン吸着量をxとしてプロットすると、yは一般に理論式y = ax + bに従う。ただし、触媒中に2価のカチオンなど強い電場を形成する吸着サイトが存在する場合、yをxに対してプロットしたプロットの形状は、xが小さくなるにしたがい曲線状に変化することがある。この曲線状の部分を含んだプロットを理論式y = ax + bにフィッティングすると、パラメータa,bを正確に求めることができない。従って、プロットに曲線部分がある場合には、その曲線部分を除去し、yがxに対して直線的に変化する部分、すなわちyをxに対してプロットしたプロットの形状が直線状である部分のみを選んで、理論式y = ax + bにフィッティングする必要がある。なお、この理論式y = ax + bにおいて、aはゼオライト細孔内におけるキセノン同士の衝突頻度に依存し、触媒中のゼオライトの含有量が増加すると、aは減少する。これは、キセノン吸着量xが一定の場合、ゼオライトの含有量が増加すると、結果として細孔内のキセノンの密度が減少するためである。逆に、ゼオライトの含有量が減少すると、細孔内のキセノンの密度が増加するため、aは大きくなる。一方、bは細孔内におけるキセノンの拡散性に依存し、触媒中のゼオライトの含有量とは直接相関しない。従って、本発明では、パラメータaの値を用いて触媒中のゼオライトの含有量を求める。
測定された129Xe NMRスペクトルのピークの位置(化学シフト)をyとし、その時のキセノン吸着量をxとしてプロットすると、yは一般に理論式y = ax + bに従う。ただし、触媒中に2価のカチオンなど強い電場を形成する吸着サイトが存在する場合、yをxに対してプロットしたプロットの形状は、xが小さくなるにしたがい曲線状に変化することがある。この曲線状の部分を含んだプロットを理論式y = ax + bにフィッティングすると、パラメータa,bを正確に求めることができない。従って、プロットに曲線部分がある場合には、その曲線部分を除去し、yがxに対して直線的に変化する部分、すなわちyをxに対してプロットしたプロットの形状が直線状である部分のみを選んで、理論式y = ax + bにフィッティングする必要がある。なお、この理論式y = ax + bにおいて、aはゼオライト細孔内におけるキセノン同士の衝突頻度に依存し、触媒中のゼオライトの含有量が増加すると、aは減少する。これは、キセノン吸着量xが一定の場合、ゼオライトの含有量が増加すると、結果として細孔内のキセノンの密度が減少するためである。逆に、ゼオライトの含有量が減少すると、細孔内のキセノンの密度が増加するため、aは大きくなる。一方、bは細孔内におけるキセノンの拡散性に依存し、触媒中のゼオライトの含有量とは直接相関しない。従って、本発明では、パラメータaの値を用いて触媒中のゼオライトの含有量を求める。
本発明における触媒中のゼオライトの含有量の算出方法は、具体的には以下の通りである。まず、分析対象の触媒について129Xe NMRスペクトルの測定を行って得られた上記の如きプロットを上記理論式にフィッティングしてaを算出し、それをa1とする。また、基準とする試料について、分析対象の触媒と同様に、129Xe NMRスペクトルの測定を行って得られた上記の如きプロットを上記理論式にフィッティングしてaを算出し、それをa0とする。しかして、触媒中のゼオライトの含有量を、計算式 ゼオライトの含有量(質量%)=a0÷a1×100により求める。この計算において、a0は基準とする試料を何にするかによって変化するため、場合に応じて適切な物質を基準の試料として選択することが望ましい。例えば、分析対象の触媒が超安定Yゼオライトを含む場合は、基準の試料として、超安定Yゼオライトもしくは結晶性の高いNaYゼオライトを用いることが適切である。なお、このようにして得られたゼオライトの含有量は、キセノンがゼオライト由来の細孔にのみ吸着する原理に基づいている。このため、本発明を利用することによって、X線回折法や窒素吸着法よりも正確なゼオライト含有量を求めることができる。
上述したように、乾燥処理した触媒の129Xe NMRスペクトルを測定し、該スペクトルのピークの位置(化学シフト)yをキセノン吸着量xに対してプロットした時の直線部分を理論式y = ax + bにフィッティングして求めたa値から、触媒の分解活性の指標となるゼオライトの含有量を算出することができる。従って、例えば反応後や強制劣化処理後の触媒において、ゼオライトの含有量が未知の場合でも、本発明によって触媒中のゼオライト含有量を正確に算出することができ、触媒の分解活性に関する指標を得ることができる。
以下に本発明の内容を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例1
分析対象触媒として、超安定Yゼオライト(以下「USY−S」と表記)を約30質量%,カオリン及びシリカを約70重量%含む触媒Aを用いた。この触媒Aを400℃,4h,真空下で乾燥処理して、吸着水を十分に除去した。その後、引き続き、この触媒Aのキセノン吸着等温線を測定した後、129Xe NMRスペクトルを以下に示す条件で測定した:
・NMR測定装置:ブルカー製MSL−400核磁気共鳴装置
・磁場強度:9.4テスラ
・129Xeの観測周波数:110.668MHz
・パルス幅:45°
・パスルシークエンス:シングルパルス
・パルスの繰り返し時間:0.5秒
・積算回数:5,000〜40,000回
・NMR測定温度:25℃
・キセノン吸着圧:0.005〜0.12MPaの範囲で吸着圧が異なる9点
そして、測定された129Xe NMRスペクトルのピーク位置yをキセノン吸着量xに対してプロットした。このプロットを図1に示した。このプロットでは、xが0.5未満の場合、やや曲線状に変化した。従って、この場合ではxが0.5未満の点を除去し、xが0.5以上の点を用いて、y = ax + bにフィッティングしaを算出した。その結果、a = 12.572となった。
分析対象触媒として、超安定Yゼオライト(以下「USY−S」と表記)を約30質量%,カオリン及びシリカを約70重量%含む触媒Aを用いた。この触媒Aを400℃,4h,真空下で乾燥処理して、吸着水を十分に除去した。その後、引き続き、この触媒Aのキセノン吸着等温線を測定した後、129Xe NMRスペクトルを以下に示す条件で測定した:
・NMR測定装置:ブルカー製MSL−400核磁気共鳴装置
・磁場強度:9.4テスラ
・129Xeの観測周波数:110.668MHz
・パルス幅:45°
・パスルシークエンス:シングルパルス
・パルスの繰り返し時間:0.5秒
・積算回数:5,000〜40,000回
・NMR測定温度:25℃
・キセノン吸着圧:0.005〜0.12MPaの範囲で吸着圧が異なる9点
そして、測定された129Xe NMRスペクトルのピーク位置yをキセノン吸着量xに対してプロットした。このプロットを図1に示した。このプロットでは、xが0.5未満の場合、やや曲線状に変化した。従って、この場合ではxが0.5未満の点を除去し、xが0.5以上の点を用いて、y = ax + bにフィッティングしaを算出した。その結果、a = 12.572となった。
また、基準試料としてUSY−Sを用いて、上記触媒Aと同様の条件で、該USY−Sのキセノン吸着等温線、129Xe NMRスペクトルを測定し、129Xe NMRスペクトルのピーク位置yをキセノン吸着量xに対してプロットした。このプロットを図2に示した。そして、このプロットをy = ax + bにフィッティングし、aを算出したところ、a = 3.652となった。
以上の結果より、129Xe NMRスペクトルより求められる触媒Aのゼオライトの含有量は、下記のとおり29.0(質量%)となり、予想された仕込量とほぼ一致した。
3.652÷12.572×100 ≒ 29.0(質量%)
以上の結果より、129Xe NMRスペクトルより求められる触媒Aのゼオライトの含有量は、下記のとおり29.0(質量%)となり、予想された仕込量とほぼ一致した。
3.652÷12.572×100 ≒ 29.0(質量%)
実施例2
分析対象触媒として、実施例1で用いたと同様の触媒Aを800℃,6h,スチーム中で強制劣化処理して得た触媒Bを用いた。この触媒Bを400℃,4h乾燥処理した後、キセノン吸着等温線、129Xe NMRスペクトルを実施例1と同様の条件で測定した。
そして、測定された触媒Bの129Xe NMRスペクトルのピーク位置yをキセノン吸着量xに対してプロットした。このプロットを図3に示した。このプロットをy = ax + bにフィッティングし、aを算出したところ、a = 26.425となった。
この結果より、129Xe NMRスペクトルより求められる触媒Bのゼオライトの含有量は、下記のとおり13.8(質量%)となった。
3.652÷26.425 ×100= 13.8(質量%)
すなわち、強制劣化処理によってゼオライトの含有量は半分以下に減少したことが明らかとなった。従ってこの触媒では、触媒Aと比べて分解活性が大幅に低下したことが推定される。このように触媒中のゼオライトの含有量が極めて低い場合でも、本発明によれば、129Xe NMRスペクトルを用いてゼオライトの含有量を正確に算出することができる。
分析対象触媒として、実施例1で用いたと同様の触媒Aを800℃,6h,スチーム中で強制劣化処理して得た触媒Bを用いた。この触媒Bを400℃,4h乾燥処理した後、キセノン吸着等温線、129Xe NMRスペクトルを実施例1と同様の条件で測定した。
そして、測定された触媒Bの129Xe NMRスペクトルのピーク位置yをキセノン吸着量xに対してプロットした。このプロットを図3に示した。このプロットをy = ax + bにフィッティングし、aを算出したところ、a = 26.425となった。
この結果より、129Xe NMRスペクトルより求められる触媒Bのゼオライトの含有量は、下記のとおり13.8(質量%)となった。
3.652÷26.425 ×100= 13.8(質量%)
すなわち、強制劣化処理によってゼオライトの含有量は半分以下に減少したことが明らかとなった。従ってこの触媒では、触媒Aと比べて分解活性が大幅に低下したことが推定される。このように触媒中のゼオライトの含有量が極めて低い場合でも、本発明によれば、129Xe NMRスペクトルを用いてゼオライトの含有量を正確に算出することができる。
Claims (3)
- ゼオライトを含有する触媒を乾燥処理した後、少なくとも2点の異なる吸着圧でキセノンを触媒に吸着させて129Xe NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルのピークの位置(化学シフト)をyとし、キセノン吸着量をxとしてプロットし、そのプロットの直線部分を理論式y=ax+bにフィッティングして求められる該理論式のaの値から、触媒中のゼオライトの含有量を把握することを特徴とする触媒中のゼオライトの分析方法。
- 前記ゼオライトがフォージャサイト型のゼオライトであることを特徴とする請求項1に記載の触媒中のゼオライトの分析方法。
- 前記ゼオライトを含有する触媒が炭化水素油の接触分解用の触媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒中のゼオライトの分析方法。
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EP2795301A4 (en) * | 2011-12-12 | 2015-09-09 | Nanonord As | PROCESS FOR DETERMINING CATALYTIC FINE IN OIL |
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