JP2009005705A - 血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ - Google Patents
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Abstract
【課題】ヒト血漿由来の血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF−AH)をコードするポリヌクレオチド配列を同定及び単離することで、PAF−AHの組換え生産に有用な材料を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有する成熟ヒトPAF−AHのアミノ酸(42〜441)において、そのN−末端アミノ酸残基を一端とする多くとも12個のアミノ酸からなるN−末端アミノ酸を欠失して得た活性断片からなるポリペプチド。
【選択図】図3
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有する成熟ヒトPAF−AHのアミノ酸(42〜441)において、そのN−末端アミノ酸残基を一端とする多くとも12個のアミノ酸からなるN−末端アミノ酸を欠失して得た活性断片からなるポリペプチド。
【選択図】図3
Description
本発明は、一般に、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)に関し、さらに詳細には、ヒト血漿の血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼをコードする精製され単離された新規ポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドがコードする血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ産物、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ産物の組換え生産のための材料及び方法、ならびに血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼに特異的な抗体物質に関する。
血小板活性化因子(PAF)は、種々の細胞種により合成される、生物学的に活性を有するリン脂質である。 in vivoで、且つ10-10〜10-9Mという通常濃度で、PAFは、特異的なGタンパク質がカップリングした細胞表面受容体に結合することにより、血小板及び好中球などの標的細胞を活性化する(ベナブル(Venable)ら、J. Lipid Res.、34巻、691〜701頁、(1993))。 PAFは、1-o-アルキル-2-アセチル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン構造を有する。 至適な生物学的活性のためには、PAFグリセロール骨格のsn-1位が脂肪族アルコールとエーテル結合をなしておらなければならず、また、sn-3位がホスフォコリン先頭部(head group)を有していなければならない。
通常の生理学的プロセス(例えば、炎症、鬱血及び分娩)においてPAFは機能し、病理学的炎症応答(例えば、喘息、アナフィラキシー、敗血病性ショック及び関節炎)において影響を受ける(ベナブルら、前出、及びリンドバーグ(Lindsberg)ら、Ann. Neurol.、30巻、117〜129頁、(1991))。 病理学的応答におけるPAFの関与の可能性は、PAFへの活性修飾の試みを喚起し、そして、これらの試みで主に焦点が向けられるのは、PAFの細胞表面受容体に対する結合を阻害する、PAFの活性の拮抗剤の開発となっている。 例えば、ヒュアー(Heuer)ら、Clin. Exp. Allergy、22巻、980〜983頁、(1992)を参照されたい。
PAFの合成及び分泌は、その分解及びクリアランスと同様、厳密に制御されているようである。 PAFの病理学的炎症作用が、過剰生産、不適切な生産または分解の払底を増大せしめるPAF調節機構の不全が原因で起こる限りにおいては、PAFの活性を修飾する代替手段が、炎症の解消に導くような自然のプロセスを模倣するかまたは増大させることに関与するであろう。 マクロファージ(スタッフォリニ(Stafforini)ら、J. Biol. Chem.、265巻、17号、9682〜9687頁、(1990))、肝細胞及びヒト肝癌細胞系HepG2(サトー(Satoh)ら、J. Clin. Invest.、87巻、476〜481頁、(1991)及びターベット(Tarbet)ら、J. Biol. Chem.、266巻、25号、16667〜16673頁、(1991))は、PAFを不活性化するPAFアセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)の酵素活性を放出することが報告されている。 PAFを不活性化することに加えて、PAF-AHは炎症を媒介するアラキドン酸カスケードの産物などの酸化的に断片化したリン脂質をも不活性化する。 ストレムラー(Stremler)ら、J. Biol. Chem.、266巻、17号、11095〜11103頁、(1991)を参照されたい。 PAF-AHによるPAFの不活性化は、主にPAFのsn-2のアセチル基の加水分解によって引起こされ、また、PAF-AHはsn-2のアシル基を除去することにより、酸化的に断片化されたリン脂質を代謝する。 2つの型のPAF-AHが同定されている。 すなわち、内皮細胞及び赤血球などの種々の細胞型及び組織中に見出される細胞質型、ならびに血漿及び血清中に見出される細胞外型である。 血漿PAF-AHは、PAFを除く無傷(intact)のリン脂質を加水分解せず、そしてこの基質特異性のために、この酵素は、完全に活性な状態で有害な作用なしにin vivoで循環することができる。 血漿PAF-AHによって、ex vivoでのヒト血液におけるPAFの分解のすべてが説明されるように思われる(スタッフォリニら、J. Biol. Chem.、262巻、9号、4223〜4230頁、(1987))。
細胞質及び血漿のPAF-AHが同様な基質特異性を有するようである一方で、血漿PAF-AHと細胞質PAF-AH及び特徴が明らかになった他のリパーゼと差別化する生化学的特徴を、血漿PAF-AHは有している。 特に、血漿PAF-AHは、リポタンパク質粒子に会合し、ジイソプロピルフルオロホスフェートによって阻害され、カルシウムイオンによっては影響を受けず、タンパク質分解酵素には比較的抵抗性であり、そして43,000ダルトンの見かけの分子量を有する。 スタッフォリニら(1987)、前出、を参照されたい。 同じスタッフォリニらの文献に、ヒト血漿からのPAF-AHの部分精製の手法及びその手法を用いることによって得られる血漿物質のアミノ酸組成が記載されている。 細胞質PAF-AHは、スタッフォリニら、J. Biol. Chem.、268巻、6号、3857〜3865頁、(1993)において報告されているように、赤血球から精製されており、そしてその文献に細胞質PAF-AHの10のアミノ末端残基もまた記載されている。 ハットリ(Hattori)ら、J. Biol. Chem.、268巻、25号、18748〜18753頁、(1993)、はウシ脳からの細胞質PAF-AHの精製を記載している。 本件の親出願に続いて、ハットリら、J. Biol. Chem.、269巻、237号、23150〜23155頁、(1994)においてウシ脳の細胞質PAF-AHのヌクレオチド配列が公表された。 1995年1月5日(本件の親出願の出願日より3カ月後)に、リポタンパク質関連ホスフォリパーゼA2(Lp-PLA2)に対するヌクレオチド配列が、スミスクラインビーチャム(Smithkline Beecham)PLCの特許協力条約(PCT)国際公開第WO 95/00649号パンフレットにおいて公開された。 Lp-PLA2のヌクレオチド配列は、本発明のPAF-AHのヌクレオチド配列と比較すると1箇所で異なっている。 ヌクレオチドが相違(配列番号:7の第1297位に相当する)する結果、そのポリヌクレオチドによってコードされる酵素間にアミノ酸の相違が生じている。 配列番号:8の第379位でアミノ酸はバリンであり、一方、Lp-PLA2で対応する部位はアラニンである。 加うるに、本発明のPAF-AHのヌクレオチド配列は、Lp-PLA2には存在しない、5'端の124塩基と3'端の20塩基を含んでいる。 3カ月後の1995年4月10日に、Lp-PLA2配列は受託番号U24577号としてGenBankに寄託され、これは本発明のPAF-AHのヌクレオチド配列と比較すると11箇所で異なっている。 ヌクレオチドが相違(配列番号:7の第79、81、84、85、86、121、122、904、905、911、983及び1327位に相当する)する結果、双方のポリヌクレオチドによってコードされる酵素間に4つのアミノ酸の相違が生じる。 配列番号:8で第249、250、274及び389位のアミノ酸はそれぞれリジン、アスパラギン酸、フェニルアラニン及びロイシンであり、一方、GenBankの配列で対応する位置にある各々のアミノ酸は、イソロイシン、アルギニン、ロイシン及びセリンである。
PAF-AHの組換えによる生産により、in vivoでの炎症の消散の正常なプロセスを模倣または増大するために、外来のPAF-AHを利用することが可能となるであろう。 PAF-AHは、血漿中に通常見出される産物であるので、PAF-AHの投与によって、PAF受容体拮抗剤の投与よりも生理学上の利点が提供されるであろう。さらに、PAFと構造的に関連性のあるPAF受容体拮抗剤は、本来のPAF-AH活性を阻害し、PAF及び酸化的に断片化されたリン脂質の望ましい代謝が、それによって妨げられる。 このように、PAF受容体拮抗剤によるPAF-AH活性の阻害は、その拮抗剤によるPAF受容体の競合的阻害を妨げる。 ストレムラーら、前出、を参照されたい。 加えて、急性の炎症の局所において、例えば、オキシダントの放出の結果本来のPAF-AH酵素の不活性化が起こり、次には、PAF受容体と結合させるため外から投与されるPAF受容体拮抗剤のいずれのものとも競合するであろうPAF及びPAF様化合物の局所レベルを上昇せしめる結果となる。 対照的に、組換えPAF-AHを用いた処置により、内在性のPAF-AH活性が増大され、そして不活性化された内在性酵素が補われるであろう。
このように、当該技術分野において、ヒト血漿PAF-AHをコードするポリヌクレオチド配列を同定及び単離し、PAF-AHの組換え生産に有用な材料及び方法を開発し、そして血漿中でのPAF-AHの検出用の試薬を作り出す必要性がある。
本発明は、ヒト血漿PAF-AHまたはその酵素的に活性を有する断片をコードする、精製され、単離された新規ポリヌクレオチド(すなわち、いずれもセンス及びアンチセンスストランドの、DNA及びRNA)を提供する。 本発明の好ましいDNA配列には、ゲノム及びcDNA配列ばかりでなく、全体または部分的に化学合成されたDNA配列が含まれる。 配列番号:7で示されるPAF-AHをコードするDNA配列及び、標準のストリンジェンシーの条件下で当該配列の非コードストランドとハイブリダイズするDNA配列または遺伝コードの縮重を伴わなければハイブリダイズするであろうDNA配列が、本発明で企図される。 さらに本発明で企図されるのは、本発明のDNA配列の生物学的複製物(すなわち、in vivoまたはin vitroで作製された、単離されたDNA配列のコピー)である。 PAF-AH配列を組込んだプラスミド及びウイルスDNAベクターなどの自律的に複製する組換え構築体ならびに、特にPAF-AHをコードするDNAが内在性または外来性発現制御DNA配列及び転写ターミネーターと作動可能に結合されるベクターもまた、提供される。
本発明の他の局面において、所望のDNA配列がその中で発現されることを許容する方法で、原核性または真核性宿主細胞が、本発明のDNA配列で安定に形質転換される。 PAF-AH産物を発現する宿主細胞は、多岐にわたる有用な目的に役立つことができる。このような細胞は、PAF-AHと特異的に免疫反応性を有する、抗体物質の開発のための抗原の貴重なソースを構成する。 本発明の宿主細胞は、細胞が好適な培養培地中で生育され、そして細胞からまたは細胞が生育される培地から、例えば、免疫アフィニティー精製によって、所望のポリペプチド産物が単離される、PAF-AHの大規模な製造法において顕著に有用である。
上記した本発明の構成によって、所期の目的であった、ヒト血漿PAF-AHまたはその酵素的に活性を有する断片をコードする新規のポリヌクレオチドを実現した。 さらに、このポリヌクレオチドを利用することで、所望のPAF-AHポリペプチド産物を単離するための方法も確立された。
血漿からPAF-AHを精製するための、本発明により企図される非免疫学的方法には、(a)低密度リポタンパク質粒子を単離する、(b)当該低密度タンパク質粒子を10mM CHAPSを含む緩衝液中にて可溶化し、第1のPAF-AH酵素溶液を作製する、(c)当該第1のPAF-AH酵素溶液をDEAE陰イオン交換カラムに付す、(d)1mM CHAPSを含むおよそpH 7.5の緩衝液を用いて当該DEAE陰イオン交換カラムを洗浄する、(e)0〜0.5M NaClの濃度勾配でなるおよそpH7.5の緩衝液を用いて、当該DEAE陰イオン交換カラムからPAF-AH酵素を溶出して画分とする、(f)当該DEAE陰イオン交換カラムから溶出した、PAF-AH酵素活性を有する画分をプールする、(g)当該DEAE陰イオン交換カラムからの、当該プールした活性画分を、1OmM CHAPSに調整して、第2のPAF-AH酵素溶液を作製する、(h)ブルーダイリガンドアフィニティーカラムに、当該第2のPAF-AH酵素溶液を付す、(i)当該ブルーダイリガンドアフィニティーカラムから、1OmM CHAPS及びカオトロピック塩を含む緩衝液を用いてPAF-AH酵素を溶出する、(j)当該ブルーダイリガンドアフィニティーカラムからの溶出液を、Cuリガンドアフィニティーカラムに付す、(k)1OmM CHAPS及びイミダゾールを含む緩衝液を用いて、当該CuリガンドアフィニティーカラムからPAF-AH酵素を溶出する、(l)当該Cuリガンドアフィニティーカラムからの溶出液をSDS-PAGEに供する、そして、(m)SDS-ポリアクリルアミドゲルから、およそ44kDaのPAF-AH酵素を単離するという工程が含まれる。 好ましくは、工程(b)の緩衝液は25mMトリス-塩酸、10mM CHAPS、pH 7.5であり、工程(d)の緩衝液は25mMトリス-塩酸、1mM CHAPSであり、工程(h)のカラムはブルーセファロースファストフローカラムであり、工程(i)の緩衝液は25mMトリス-塩酸、10mM CHAPS、0.5M KSCN、pH 7.5であり、工程(j)のカラムはCuキレーティングセファロースカラムであり、そして工程(k)の緩衝液はpHが約pH 7.5〜8.0の範囲にある、25mMトリス-塩酸、10mM CHAPS、0.5M NaCl、50mM イミダゾールである。
本発明により企図される、PAF-AHを生産する大腸菌(E.coli)から酵素的に活性なPAF-AHを精製するための方法は、(a)PAF-AH酵素を生産する、溶菌した大腸菌から遠心上清を調製する、(b)ブルーダイリガンドアフィニティーカラムに、当該遠心上清を付す、(c)当該ブルーダイリガンドアフィニティーカラムから、1OmM CHAPS及びカオトロピック塩を含む緩衝液を用いてPAF-AH酵素を溶出する、(d)当該ブルーダイリガンドアフィニティーカラムからの溶出液を、Cuリガンドアフィニティーカラムに付す、及び、(e)1OmM CHAPS及びイミダゾールを含む緩衝液を用いて、当該CuリガンドアフィニティーカラムからPAF-AH酵素を溶出するという工程を含む。 好ましくは、工程(b)のカラムはブルーセファロースファストフローカラムであり、工程(c)の緩衝液は25mMトリス-塩酸、10mM CHAPS、0.5M KSCN、pH 7.5であり、工程(d)のカラムはCuキレーティングセファロースカラムであり、そして工程(e)の緩衝液は25mMトリス-塩酸、10mM CHAPS、0.5M NaCl、100mM イミダゾール、pH 7.5である。
本発明により企図される、PAF-AHを生産する大腸菌から酵素的に活性なPAF-AHを精製するための他の方法は、(a)PAF-AH酵素を生産する、溶菌した大腸菌から遠心上清を調製する、(b)当該遠心上清を、10mM CHAPSを含む低pH緩衝液で希釈する、(c)当該希釈された遠心上清を、約pH 7.5にて平衡化した陽イオン交換カラムに付す、(d)1Mの塩を用いて当該陽イオン交換カラムからPAF-AH酵素を溶出する、(e)当該陽イオン交換カラムからの当該溶出液のpHをあげ、そして当該溶出液の塩濃度を約0.5Mの塩に調整する、(f)ブルーダイリガンドアフィニティーカラムに、当該陽イオン交換カラムからの当該調整された溶出液を付す、(g)当該ブルーダイリガンドアフィニティーカラムから、約2M〜約3Mの塩を含む緩衝液を用いてPAF-AH酵素を溶出する、及び、(h)当該ブルーダイリガンドアフィニティーカラムからの当該溶出液を、約0.1%ツイーンを含む緩衝液を用いて透析するという工程を含む。 好ましくは、工程(b)の緩衝液は25mM MES、10mM CHAPS、1mM EDTA、pH 4.9であり、工程(c)のカラムは、25mM MES、10mM CHAPS、1mM EDTA、50mM NaCl、pH 5.5で平衡化したS セファロースカラムであって、PAF-AHは、工程(d)において、1mM NaClを用いて溶出され、工程(e)における溶出液のpHは、2Mトリスベースを用いてpH 7.5に調整され、工程(f)におけるカラムはセファロースカラムであり、工程(g)における緩衝液は25mMトリス、10mM CHAPS、3M NaCl、1mM EDTA、pH 7.5であり、また、工程(h)における緩衝液は25mM トリス、0.5M NaCl、0.1% ツイーン80、pH 7.5である。
大腸菌から酵素的に活性なPAF-AHを精製するための、本発明によって企図されるさらに別の方法は、(a)CHAPSを含有する緩衝液中で溶菌した後に、可溶化PAF-AH上清を生じる、大腸菌抽出物を調製する、(b)当該上清を希釈し、約pH 8.0に平衡化された陰イオン交換カラムに付す、(c)当該陰イオン交換カラムからPAF-AH酵素を溶出する、(d)当該陰イオン交換カラムからの、調整された溶出液をブルーダイリガンドアフィニティーカラムに付す、(e)3.0Mの塩を含む緩衝液を使用して、当該ブルーダイリガンドアフィニティーカラムに溶出をかける、(f)ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーを行うために好適な緩衝液にて、ブルーダイカラムからの溶出液を希釈する、(g)緩衝液(CHAPS含有またはCHAPS不含)を使用して洗浄及び溶出を遂行する、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィーを実施する、(h)陽イオン交換クロマトグラフィーのために適切な塩濃度まで、当該ハイドロキシルアパタイトからの溶出液を希釈する、(i)希釈後の当該ハイドロキシルアパタイトからの溶出液を、およそ6.0から7.0の間の範囲のpHで、陽イオン交換カラムに付す、(j)好適な組成の緩衝液を用いて当該陽イオン交換カラムからPAF-AHを溶出する、(k)冷却下に陽イオン交換クロマトグラフィーを実施する、及び(l)PAF-AHを、CHAPSを含まないように液体または凍結状態に調製するという工程を含む。
好ましくは、前記工程(a)において、溶菌用緩衝液は25mM トリス、100mM NaCl、1mM EDTA、20mM CHAPS、pH 8.0であり、工程(b)において陰イオン交換クロマトグラフィーのために、上清は、25mM トリス、1mM EDTA、10mM CHAPS、pH 8.0にて3〜4倍に希釈され、カラムは25mM トリス、1mM EDTA、50mM NaCl、10mM CHAPS、pH 8.0で平衡化されたQ-セファロースカラムであり、工程(c)において、陰イオン交換カラムは、25mM トリス、1mM EDTA、350mM NaCl、10mM CHAPS、pH 8.0を使用して溶出され、工程(d)において、工程(c)からの溶出液はブルーダイアフィニティーカラムに直接付され、工程(e)において、カラムは3M NaCl、10mM CHAPS、25mM トリス、pH 8.0の緩衝液で溶出され、工程(f)において、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーのために、ブルーダイカラムからの溶出液は、10mM リン酸ナトリウム、100mM NaCl、10mM CHAPS、pH 6.2にて希釈が行われ、工程(g)において、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーは、10mM リン酸ナトリウム、100mM NaCl、10mM CHAPSで平衡化されたヒドロキシルアパタイトカラムを使用して行われ、さらに溶出は、50mM リン酸ナトリウム、100mM NaCl、10mM CHAPS(含有または不含)、pH 7.5で成し遂げられ、工程(h)において陽イオン交換クロマトグラフィーのために当該ヒドロキシルアパタイトカラムの溶出液の希釈は、CHAPSを含有するかまたは含有しない、リン酸ナトリウムを含むおよそ6.0〜7.0の範囲のpHを有する緩衝液にて行われ、工程(i)において、10mM CHAPSを含有するかまたは含有しない50mMリン酸ナトリウム、pH 6.8で、Sセファロースが平衡化され、工程(j)において、0.01%ツイーン80を含有する50mMリン酸カリウム、12.5mM アスパラギン酸、125mM NaCl、pH 7.5などの好適な組成の緩衝液で溶出を行い、そして工程(k)において、陽イオン交換クロマトグラフィーは2〜8℃で行われる。 PAF-AHを安定化する、工程(l)で使用するために好適な組成の緩衝液の例には、50mM リン酸カリウム、12.5mM アスパラギン酸、125mM NaCl、pH 7.4(近似値、ツイーン80もしくはプルロニック(Pluronic)F68を添加するかもしくは添加しない)、または(少なくとも)125mM NaCl、25mM アルギニン及び0.01%ツイーン80を含有する(およそ0.1及び0.5%のプルロニックF68を含有するかもしくは含有しない)25mM リン酸カリウム緩衝液が包含される。
大腸菌から酵素的に活性なrPAF-AH産物を精製するための、本発明によって企図される別のさらなる方法は、(a)トライトン(Triton)X-100を含有する緩衝液中で溶菌した後に、可溶化rPAF-AH産物上清を生じる、大腸菌抽出物を調製する、(b)当該上清を希釈し、約pH 8.0に平衡化された固定化金属アフィニティー交換カラムに付す、(c)当該固定化金属アフィニティー交換カラムから、イミダゾールを含む緩衝液でrPAF-AH産物を溶出する、(d)当該固定化金属アフィニティー交換カラムからの溶出液を塩濃度調整し、疎水性相互作用カラム(HIC#1)に付す、(e)塩濃度の減少及び/または界面活性剤濃度の増加によって、当該HIC#1に溶出をかける、(f)当該HIC#1の溶出液を滴定して約6.4のpHにする、(g)当該HIC#1の調整された溶出液を、約pH 6.4に平衡化された陽イオン交換カラム(CEX#1)に付す、(h)塩化ナトリウム濃度で当該CEX#1に溶出をかける、(i)当該CEX#1溶出液を約2.0Mの濃度にまで塩化ナトリウムで調整する、(j)約pH 8.0且つ約2.0 M塩化ナトリウムに平衡化された疎水性相互作用カラム(HIC#2)に、調整された当該CEX#1溶出液を付す、(k)塩濃度の減少及び/または界面活性剤濃度の増加によって、当該HIC#2に溶出をかける、(l)当該HIC#2溶出液を希釈し、約6.0のpHに調整する、(m)当該HIC#2溶出液を、約pH 6.0に平衡化された陽イオン交換カラム(CEX#2)に付す、(n)rPAF-AH産物を、好適な組成の緩衝液で当該CEX#2から溶出するという工程を含む。
好ましくは、前記工程(a)において、溶菌用緩衝液は90mM トリス、0.125%トライトンX-100、0.6M NaCl、pH 8.0であり、そして溶菌は高圧ホモジェナイザーで行われ、工程(b)において上清は平衡化緩衝液(20mM トリス、0.5M NaCl、0.1%トライトンX-100、pH 8.0)に希釈し、亜鉛キレートカラム(キレーティングセファロースファストフロー(Chelating Sepharose Fast Flow)、ファルマシア(Pharmacia)社、ウプサラ(Uppsala)、スウェーデン)を充填し、平衡化緩衝液で平衡化し、希釈された上清を付し、そして20mM トリス、0.5M NaCl、4M 尿素、0.1%トライトンX-100、pH 8.0で洗浄し、次いで20mM トリス、0.5M NaCl、0.02%トライトンX-100、pH 8.0にて洗浄し、工程(c)において、溶出は、20mM トリス、50mM イミダゾール、0.02%トライトンX-100、pH 8.0で行われ、工程(d)において、溶出液を1mM EDTA及び2M NaClに調整し、フェニルセファロース6ファストフロー(ファルマシア社)を平衡化緩衝液(2.0M NaCl、25mM トリス、0.02%トライトンX-100、pH 8.0)で平衡化し、工程(c)からの調整された溶出液を室温にて付し、平衡化緩衝液で洗浄し、次いで25mM リン酸ナトリウム緩衝液、0.02%トライトンX-100、pH 6.5にて30 cm/時の流速で洗浄し、工程(e)において、25mM リン酸ナトリウム緩衝液、3%トライトンX-100、pH 6.5にて溶出を行い、工程(g)において、マクロプレップハイ(Macro-Prep High)Sカラム(バイオラッドラボラトリーズ(Bio-Rad Labs)社、リッチモンド、カリホルニア州)を平衡化緩衝液(20mM リン酸ナトリウム緩衝液、0.02%トライトンX-100、pH 6.4)で平衡化し、工程(f)からの調整された溶出液を付し、平衡化緩衝液で洗浄し、次いで25mM トリス、0.02%トライトンX-100、pH 8.0で洗浄し、工程(h)において25mM トリス、0.02%トライトンX-100、1.3 M NaCl、pH 8.0で溶出を行い、工程(j)において、ベーカーボンドワイドポアハイ-プロピル(Bakerbond Wide Pore Hi-Propyl)C3(ベーカー社、フィリプスバーグ(Phillipsburg)、ニュージャージー州)を平衡化緩衝液(2.0 M NaCl、25mM トリス、0.02%トライトンX-100、pH 8.0)で平衡化し、室温にて工程(i)からの調整された溶出液を付し、平衡化緩衝液で洗浄し、次いで、30cm/時の流速で25mM トリス、0.02%トライトンX-100、pH 8.0で洗浄し、工程(k)において10mM トリス、3.0%トライトンX-100、pH 8.0で溶出を行い、工程(l)において平衡化緩衝液(20mM スクシネート、0.1%プルロニックF68、pH 6.0)で希釈を行い、工程(m)において、SPセファロースファストフロー(ファルマシア社)カラムを工程(l)の平衡化緩衝液で平衡化して、工程(l)からの溶出液を付し、次いで平衡化緩衝液で洗浄し、そして工程(n)において50mM リン酸ナトリウム緩衝液、0.7M NaCl、0.1%プルロニックF68、0.02%ツイーン80、pH 7.5で溶出が行われる。
PAF-AH産物は天然の細胞供給源からの単離物として得られても、または化学的に合成されてもよいが、好ましくは、本発明の原核性または真核性宿主細胞が関与する組換え手法によって生産される。 配列番号:8で示されるアミノ酸配列の一部またはすべてを有するPAF-AH産物が企図される。 特に企図されるのは、配列番号:8で示される成熟ヒトPAF-AHアミノ酸配列の最初の12のN-末端アミノ酸までを欠く断片、特に開始のN-末端アミノ酸として配列番号:8のMet46、Ala47、またはAla48を有する断片である。 さらに企図されるのは、前記断片の配列番号:8のアミノ酸配列の30までのC-末端アミノ酸を欠く断片、特にC-末端残基としてIle429及びLeu431を有する断片である。 さらに企図されるのは、PAF-AHの誘導体またはPAF-AHまたは配列番号:8の配列においてS108A、S273A、D286A、D286N、D296A、D304A、D338A、H351A、H395A、H399A、C67S、C229S、C291S、C334S、C407S、D286A、D286N及びD304Aよりなる群から選択されるアミノ酸置換を有するPAF-AHである。 前記の通り、本発明によって前記断片または誘導体断片をコードするポリヌクレオチド(DNAを含む)が提供されるばかりでなく、かかるDNAを含む宿主細胞を生育することによって、かかる断片または誘導体を組換え法により製造する方法も提供される。 現在のところ好ましいPAF-AH産物としては、rPH.2と命名された、配列番号:8のMet46からAsn441までのアミノ酸残基をコードするDNAの原核生物でのポリペプチド発現産物及びrPH.9と命名された、配列番号:8のMet46からIle429までのアミノ酸残基をコードするDNAの原核生物でのポリペプチド発現産物が挙げられる。 rPH.2及びrPH.9産物の双方は、例えば、翻訳開始コドンで始まるPAF-AHの全長の成熟配列をコードするDNAの原核生物での対応する発現産物などよりも、アミノ末端において低い異種性(heterogeneity)を呈する。
さらには、rPH.9産物は、より高いカルボキシ末端の均一性(共通性)を呈する。 哺乳動物宿主細胞を用いることで、本発明の組換え発現産物に至適な生物学的活性を賦与するのに必要であるかもしれない転写後の修飾(例えば、ミリストレーション、グリコシレーション、トランケーション、リピデーション、及び、チロシン、セリンまたはスレオニンのリン酸化)がなされることが期待される。 本発明のPAF-AH産物は、完全長のポリペプチド、断片または誘導体であってよい。 誘導体は、1以上の特定の(specified)(すなわち、天然にコードされる)アミノ酸が欠失もしくは置換されるかまたは、1以上の非特定のアミノ酸が付加された、PAF-AH誘導体からなり、(1)PAF-AHに特異的な1以上の酵素活性または免疫学的特性を損失することなく、または(2)PAF-AHの特定の生物学的活性を特異的に損なわせしめるとよい。 PAF-AHに結合するタンパク質または他の分子を、その活性を修飾するために用いてもよい。
本発明によりさらに企図されるものには、抗体物質(例えば、モノクローナル及びポリクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR-移植抗体(grafted antibodies)等)及びPAF-AHに特異性を有する他の結合タンパク質もある。 特に本発明の実例となる結合タンパク質は、1994年9月30日に、20852 メリーランド州、ロックビル(Rockville)、パークロウンドライブ(Parklawn Drive) 12301のアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託され、それぞれHB 11724及びHB 11725の受託番号を与えられた、ハイブリドーマ90G11D及び90F2Dによって生産されるモノクローナル抗体である。 さらに本発明の実例となる結合タンパク質は、1995年6月1日にATCCに寄託され、HB11900の受託番号を与えられた、ハイブリドーマ143Aによって生産されるモノクローナル抗体である。 PAF-AHに特異的に結合するタンパク質または他の分子(例えば、脂質もしくは小分子)は、血漿から単離されたPAF-AH、組換えPAF-AH、PAF-AH誘導体またはこのような産物を発現する細胞を用いて同定することができる。 さらには、結合タンパク質は、PAF-AHの精製のためばかりでなく免疫用の組成物において有用であり、また、既知の免疫学的手法による液体及び組織試料中のPAF-AHの検出または定量に有用である。 PAF-AH特異的抗体物質に特異的な抗イディオタイプ抗体もまた企図される。
本発明のDNA及びアミノ酸配列の開示が寄与する情報の科学的価値は明白である。 一連の例として、PAF-AHに対するcDNA配列を知ることで、PAF-AHをコードするゲノムDNA配列のDNA/DNAハイブリダイゼーションによる単離や、プロモーター、オペレーター等のPAF-AH発現の制御調節配列を特定することが可能となる。
当該技術分野において標準のストリンジェンシーの条件下で、本発明のDNA配列を用いて行われるDNA/DNAハイブリダイゼーション手法により、PAF-AHの対立変異体(allelic variants)、PAF-AHの1以上の生化学的及び/または免疫学的特性を担う構造的に関連のある他のタンパク質、ならびにPAF-AHと相同のヒト以外の種のタンパク質をコードするDNAの単離を許容することが、同様に期待される。 本発明により提供されるDNA配列の情報によって、相同組換えまたは、機能を有するPAF-AH酵素を発現しない齧歯類またはPAF-AH酵素変異体を発現する齧歯類の「ノックアウト」ストラテジー(例えば、カペッチ(Kapecchi)、Science、244巻、1288〜1292頁、(1989)を参照されたい)による開発もまた可能となる。 本発明のポリヌクレオチドを好適にラベルした場合、細胞がPAF-AH酵素を合成する能力を検出するハイブリダイゼーションアッセイにおいて有用である。 本発明のポリヌクレオチドは、1または複数の疾病状態の基礎になる、PAF-AH遺伝子座における1または複数の遺伝的変更を同定するために有用な診断法のための基礎となるかもしれない。 さらに本発明によって入手可能となるのものに、PAF-AHを通常発現している細胞による、PAF-AHの発現調節に関係するアンチセンスポリヌクレオチドもある。
哺乳動物、特に、ヒトの被験者に、病理学的炎症状態の改善を目的として、本発明のPAF-AH調製物を投与することが企図される。 病理学的炎症状態におけるPAFの関与が暗示されることに基づき、例えば、喘息(ミワ(Miwa)ら、J. Clin. Invest.、82巻、1983〜1991頁、(1988)、シー(Hsieh)ら、J. Allergy Clin.Immunol.、91巻、650〜657頁、(1993)、及びヤマシタ(Yamashita)ら、Allergy、49巻、60〜63頁、(1994))、アナフィラキシー(ベナブルら、前出)、ショック(ベナブルら、前出)、再灌流傷害(reperfusion injury)及び中枢神経系虚血(リンドバーグら(1991)、前出)抗原誘発性関節炎(ザルコ(Zarco)ら、Clin. Exp. Immunol.、88巻、318〜323頁、(1992))粥腫形成(ハンドレイ(Handley)ら、Drug Dev.Res.、7巻、361〜375頁、(1986))、クローン病(デニゾット(Denizot)ら、Digestive Diseases and Sciences、37巻、3号、432〜437頁、(1992))、虚血性腸壊死/壊死性小腸結腸炎(デニゾットら、前出、及びカプラン(Caplan)ら、Acta Paediatr.、追補、396巻、11〜17頁、(1994))、潰瘍性結腸炎(デニゾットら、前出)、虚血性発作(サトー(Satoh)ら、Stroke、23巻、1090〜1092頁、(1992))、虚血性脳傷害(リンドバーグら、Stroke、21巻、1452〜1457頁、(1990)及びリンドバーグら(1991)前出)、全身性紅斑性狼瘡(マツザキ(Matsuzaki)ら、Clinica Chimica Acta、210巻、139〜144頁、(1992))、急性膵炎(カルド(Kald)ら、Pancreas、8巻、4号、440〜442頁、(1993))、敗血症、カルドら、前出)、急性後天性連鎖球菌性(acute post streptococcal)糸球体腎炎(メッツァノ(Mezzano)ら、J. Am. Soc. Nephrol.、4巻、235〜242頁、(1993))、IL-2療法により惹き起こされる肺浮腫(ラビノビッチ(Rabinovici)ら、J. Clin. Invest.、89巻、1669〜1673頁、(1992))、アレルギー性炎症(ワタナベ(Watanabe)ら、Br. J.Pharmacol.、111巻、123〜130頁、(1994))、虚血性腎不全(グリノ(Grino)ら、Annals of InteRNAl Medicine、121巻、5号、345〜347頁、(1994))、早期分娩(preterm labor) (ホフマン(Hoffman)ら、Am. J. Obstet. Gynecol.、162巻、2号、525〜528頁、(1990)及びマキ(Maki)ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻、728〜732頁、(1988))、ならびに成人呼吸窮迫症候群(adult respiratory distress syndrome)ラビノビッチら、J.Appl. Physiol.、74巻、4号、1791〜1802頁、(1993)、マツモトら、Clin. Exp. Pharmacol. Physiol.、19巻、509〜515頁、(1992)及びロドリゲツ−ロイジン(Rodriguez-Roisin)ら、J. Clin. Invest.、93巻、188〜194頁、(1994))などの処置において、PAF-AHを投与することが示唆される。 さらに企図されるのは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の中枢神経系への感染を処置するためのPAF-AH調製物の使用である。 本明細書にて使用される「処置」なる語は、予防的及び治療的の双方の処置を包含するものである。
前記の病理学的状態の多くの動物モデルが、当該技術分野において記載されている。 例えば、喘息、鼻炎、及び湿疹に対するマウスモデルが、本願明細書の実施例16に記載され、関節炎に対するウサギモデルがザルコら、前出、に記載され、虚血性腸壊死/壊死性小腸結腸炎に対するラットのモデルがフルカワ(Furukawa)ら、Ped. Res.、34巻、2号、237〜241頁、(1993)及びカプランら、前出、に記載され、発作に対するウサギのモデルがリンドバーグら(1990)、前出、に記載され、狼瘡に対するマウスのモデルがマツザキら、前出、に記載され、急性膵炎に対するラットのモデルがカルドら、前出、に記載され、IL-2療法により惹き起こされる肺浮腫に対するラットのモデルがラビノビッチら、前出、に記載され、アレルギー性炎症のラットのモデルがワタナベら、前出、に記載され、腎異系移植のウサギのモデルがワトソン(Watson)ら、Transplantation、56巻、4号、1047〜1049頁、(1993)に記載され、ならびに成人呼吸窮迫症候群のラット及びモルモットのモデルがラビノビッチら、前出、及びレロウッチ−ツビアナ(Lellouch-Tubiana)、Am.Rev.Respir.Dis.、137巻、948〜954頁(1988)に記載されている。
本発明により特に企図されるのは、哺乳動物中で内在性PAF-AH活性を補足し、病因となる量のPAFを不活性化するに足る量のPAF-AHを、哺乳動物に投与することからなる、PAF-AHが媒介する病理学的状態が疑われるかまたは罹患している哺乳動物の処置法に用いられるPAF-AH組成物である。
本発明により企図される治療用/医薬組成物は、PAF-AH産物及び生理学的に許容しうる希釈剤(賦形剤)または担体を含み、また、抗炎症効果を有する他の試薬を含んでもよい。 指示される投与量は、内在性PAF-AH活性を補い、且つ病理的状態をもたらす量のPAFを不活性化するに足る量であろう。 一般的な投与量の考慮のためには、Remmington's Pharmaceutical Sciences、18版、Mack Publishing Co.、イーストン、ペンシルベニア州(1990)を参照されたい。 投与量は、約0.1〜約1000μg PAF-AH/kg 体重の間で変動するであろう。 本発明の治療用組成物は、処置すべき病理学的状態に依存して、種々の経路により投与されうる。 例えば、投与は、静脈内、皮下、経口、座薬、及び/または肺を経由する経路により投与されてもよい。
肺の病理学的状態のためには、肺を経由する経路によるPAF-AHの投与が特に指示される。 肺を経由する投与における用途のために企図されるのは、例えば、当該技術分野において標準的な、噴霧器、投与量吸入器(dose inhaler)、及び粉末吸入器(powder inhaler)を含む広範な送達(delivery)デバイスである。 エアロゾル調剤の吸入による肺及び循環系への種々のタンパク質の送達は、アジェイ(Adjei)ら、Pharm. Res.、7巻、6号、565〜569頁、(1990)(ロイプロリドアセテート(leuprolideacetate))、ブラケット(Braquet)ら、J. Cardio.Pharm.、13巻(追補 5): s.143〜146頁、(1989)(エンドセリン-1)、ハッバード(Hubbard)ら、Annals of InteRNAl Medicine、III巻、3号、206〜212頁、(1989)(α1-アンチトリプシン)、スミス(Smi
th)ら、J. Clin. Invest.、84巻、1145〜1146頁、(1989)(α-1-プロテナーゼインヒビター)、デブス(Debs)ら、J. Immunol.、140巻、3482〜3488頁、(1933)(組換えガンマインターフェロン及び腫瘍壊死因子アルファ)、1994年9月15日公開の、特許協力条約(PCT)国際公開番号第WO 94/20069号(組換え係留化(pegylated)顆粒球コロニー刺激因子)に記載されている。
th)ら、J. Clin. Invest.、84巻、1145〜1146頁、(1989)(α-1-プロテナーゼインヒビター)、デブス(Debs)ら、J. Immunol.、140巻、3482〜3488頁、(1933)(組換えガンマインターフェロン及び腫瘍壊死因子アルファ)、1994年9月15日公開の、特許協力条約(PCT)国際公開番号第WO 94/20069号(組換え係留化(pegylated)顆粒球コロニー刺激因子)に記載されている。
本発明の数多くの他の局面及び利点は、本書に添付した図面を参照して、以下の詳細な説明を考慮すれば、明らかとなるであろう。
以下の実施例により本発明を例証する。
実施例1は、ヒト血漿からのPAF-AHの新規な精製法を示す。 実施例2は、精製されたヒト血漿PAF-AHのアミノ酸マイクロ配列決定を記載する。 ヒト血漿PAF-AHをコードする全長のcDNAのクローニングを、実施例3に記載する。 ヒト血漿PAF-AH遺伝子の、推定されるスプライス変異体の同定を実施例4に記載する。 ヒト血漿PAF-AHをコードするゲノム配列のクローニングを、実施例5に記載する。 実施例6は、ヒト血漿PAF-AH cDNAと相同な、イヌ、マウス、ウシ、ニワトリ、ラット及びマカクのcDNAのクローニングを記載する。 実施例7は、COS 7細胞で一過性に発現された組換えPAF-AHの酵素活性を証明するアッセイの結果を示す。 実施例8は、大腸菌、酵母菌(S. cerevisiae)及び哺乳動物細胞における、全長、部分欠損型及びキメラのヒトPAF-AHのDNAの発現を記載する。 実施例9は、大腸菌からの組換えPAF-AHの精製のためのプロトコル、及びその酵素活性を確証するアッセイを示す。 実施例10は、アミノ酸置換誘導体ならびにアミノ末端側及びカルボキシ末端側の欠損産物を含む種々の組換えPAF-AH産物を記載し、また、血漿から単離された天然型PAF-AHはグリコシル化されていることを立証する実験を記載する。 種々の組織及び細胞系におけるヒト血漿PAF-AH RNAの発現に対するノザンブロットアッセイの結果を、実施例11に示し、一方、in situハイブリダイゼーションの結果を実施例12に示す。 実施例13には、ヒト血漿PAF-AHに特異的なモノクローナル及びポリクローナル抗体の作製を記載する。 実施例14、15、16、17、18及び19は、それぞれ、動物モデルにおける急性炎症、胸膜炎、喘息、壊死性全腸炎、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)及び膵炎への、本発明の組換えPAF-AH産物の投与のin vivoでの治療効果を記載する。 実施例20は、HIV感染に関わる神経毒性に対する組換えPAF-AH産物のin vitroでの効果を記載する。 実施例21は、PAF-AH活性の欠損を示すヒト患者の血清のイムノアッセイの結果を示し、さらに、その欠損の原因らしいと考えられる、その患者における遺伝的傷害の同定を記載する。
実施例1
アミノ酸配列決定のための材料を供給するために、ヒト血漿からPAF-AHを精製した。
アミノ酸配列決定のための材料を供給するために、ヒト血漿からPAF-AHを精製した。
A.精製条件の至適化
最初に、リンタングステン酸(phosphotungstate)を用いて、血漿から低密度リポタンパク質(LDL)粒子を、沈澱させ、次いで0.1%ツイーン20中に可溶化し、そしてスタッフォリニら(1987)、前出、の方法に従って、DEAEカラム(ファルマシア社、ウプサラ、スウェーデン)のクロマトグラフィーに供したが、可溶化の再評価及び引き続いての精製条件に必要なDEAEカラムからのPAF-AH活性体の溶出は、一致しないものであった。
最初に、リンタングステン酸(phosphotungstate)を用いて、血漿から低密度リポタンパク質(LDL)粒子を、沈澱させ、次いで0.1%ツイーン20中に可溶化し、そしてスタッフォリニら(1987)、前出、の方法に従って、DEAEカラム(ファルマシア社、ウプサラ、スウェーデン)のクロマトグラフィーに供したが、可溶化の再評価及び引き続いての精製条件に必要なDEAEカラムからのPAF-AH活性体の溶出は、一致しないものであった。
ツイーン20、CHAPS(ピアスケミカル社(Pierce Chemical Co.,)ロックフォード(Rockford)、イリノイ州)及びオクチルグルコシドを、LDL粒子の可溶化能について、遠心及びゲル濾過クロマトグラフィーにより評価した。 CHAPSにより、可溶化した活性体の回収がツイーン20よりも25%上回り、またオクチルグルコシドよりも300%上回る回収がなされた。 次いで、10mM CHAPSで可溶化したLDL沈澱物を、DEAEセファロースファストフローカラム(陰イオン交換カラム、ファルマシア社)で、1mM CHAPSを含む緩衝液を用いて分画して、次なるカラムの評価用の部分精製したPAF-AHの大量のプール(「DEAEプール」)を得た。
DEAEプールは、さらなるPAF-AH活性体の精製における有用性について、種々のクロマトグラフィーカラムをテストするための出発材料として用いた。 テストしたカラムとしては、ブルーセファロースファストフロー(ファルマシア社)(ダイリガンドアフィニティーカラム)、S-セファロースファストフロー(ファルマシア社)(陽イオン交換カラム)、Cuキレーティングセファロース(ファルマシア社)、(金属リガンドアフィニティーカラム)、フラクトゲル S(イー・エム・セパレーションズ(EM Separations)社)、ギッブスタウン(Gibbstown)、ニュージャージー州)(陽イオン交換カラム)、及びセファクリル(Sephacryl)-200(ファルマシア社)(ゲル濾過カラム)が挙げられる。 これらのクロマトグラフィー手法では、1mM CHAPSで操作した場合、すべて低く、満足のいかないレベルの精製にとどまった。 引き続き1mM CHAPS中でセファクリルS-200のゲル濾過クロマトグラフィーを行うと、期待された44kDaのおおよそのサイズというよりもむしろ、広範なサイズ範囲にわたって溶出する酵素的に活性な画分が得られた。 まとめて考えると、これらの結果は、LDLリポタンパク質が溶液中で凝集していることを示唆していた。
そこで、PAF-AH活性体の凝集について分析用ゲル濾過クロマトグラフィーにより、異なるLDL試料を評価した。 DEAEプール及び新たに可溶化したLDL沈澱物からの試料は、1mM CHAPSを含む緩衝液で平衡化したスペローズ(Superose)12(ファルマシア社)で分析した。 いずれの試料とも、殆どの活性体が150kDaを越える、きわめて広い範囲の分子量にわたって溶出した。 次いで10mM CHAPSを含む緩衝液で平衡化したスペローズ12で試料を分析したところ、活性体の大半がPAF-AH活性体について期待された44kDa付近に溶出された。 しかしながら、試料には、凝集物に相当する高分子量の領域に、いくらかのPAF-AH活性体が含まれていた。
引き続き、他の試料をゲル濾過によってテストすると、およそ44kDaの範囲に専らPAF-AH活性体を溶出した。 これらの試料とは、0.5M NaClの存在下で10mM CHAPS中で可溶化したLDL沈澱物及び、DEAEカラムから溶出した後10mM CHAPSに調整した新たなDEAEプールであった。 これらのデータにより、非凝集性のPAF-AHを維持するために、少なくとも10mMのCHAPSが必要であることが示唆される。 DEAEのクロマトグラフィーの後、但し引き続いてのクロマトグラフィー工程の前に、1mMから10mMへとCHAPS濃度を高めることで、精製に劇的な差が生じた。 例えば、S-セファロースファストフローでのPAF-AHの精製の度合いは、2倍から10倍へと増大した。 PAF-AH活性体は、1mM CHAPS中でブルーセファロースファストフローカラムに不可逆的に結合したが、このカラムにおいて10mM CHAPSで最も高いレベルの精製がなされた。 10mM CHAPSを前もって添加しても、DEAEクロマトグラフィーは改善されなかった。
ブルーセファロースファストフローカラムの後のCuキレーティングセファロースのクロマトグラフィーで、PAF-AH活性体が15倍濃縮された。 試料が煮沸されない限りにおいて、還元SDS-ポリアクリルアミドゲルからPAF-AH活性体を回収できることも、判定された。 Cuキレーティングセファロースカラムから溶出された物質の活性は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供すると、ゲルを銀染色した場合に見られる主たるタンパク質のバンドに一致した。
B.PAF-AH精製プロトコル
かくして、アミノ酸配列決定用のPAF-AHを精製するために用いる新規のプロトコルは、4℃で実施される以下の工程からなるものであった。 ヒト血漿を、1リットルのナルゲンボトル中、900mlアリコート(aliquots)づつに分割し、pH 8.6に調整した。 次いで90mlの3.85%リンタングステン酸ナトリウムに続き23mlの2M MgCl2を添加することにより、LDL粒子を沈澱させた。 その後、血漿を3600gにて15分間遠心した。 ペレットを800mlの0.2%クエン酸ナトリウム中に再懸濁させた。 10g NaCl及び24mlの2M MgCl2を添加することにより、再びLDLを沈澱させた。 3600gにて15分間遠心することにより、LDL粒子をペレットとした。 この洗浄を2度繰り返した。 次にペレットを−20℃で凍結せしめた。 5Lの血漿からのLDL粒子を、5Lの緩衝液A(25mMトリス塩酸、10mM CHAPS、pH 7.5)中に再懸濁させて一晩撹拌した。 可溶化したLDL粒子を3600gにて1.5時間遠心した。 上清を集めて、残っている固形物をすべて除去するために、ワットマン(Whatman) 113濾紙を用いて濾過した。 可溶化したLDL上清を、緩衝液B(25mM トリス塩酸、1mM CHAPS、pH 7.5)で平衡化したDEAEセファロースファストフローカラム(11cm×10cm、1L樹脂容量、80ml/分)に負荷した。 吸光度がベースラインに戻るまで、緩衝液Bを用いてカラムを洗浄した。 8Lの、0〜0.5M NaClの濃度勾配を用いてタンパク質を溶出し、480mlの画分を集めた。 この工程は、以下のブルーセファロースファストフローカラムへ結合させるために必須であった。 本質的に実施例4に記載の方法によって、各画分についてアセチルヒドロラーゼ活性をアッセイした。
かくして、アミノ酸配列決定用のPAF-AHを精製するために用いる新規のプロトコルは、4℃で実施される以下の工程からなるものであった。 ヒト血漿を、1リットルのナルゲンボトル中、900mlアリコート(aliquots)づつに分割し、pH 8.6に調整した。 次いで90mlの3.85%リンタングステン酸ナトリウムに続き23mlの2M MgCl2を添加することにより、LDL粒子を沈澱させた。 その後、血漿を3600gにて15分間遠心した。 ペレットを800mlの0.2%クエン酸ナトリウム中に再懸濁させた。 10g NaCl及び24mlの2M MgCl2を添加することにより、再びLDLを沈澱させた。 3600gにて15分間遠心することにより、LDL粒子をペレットとした。 この洗浄を2度繰り返した。 次にペレットを−20℃で凍結せしめた。 5Lの血漿からのLDL粒子を、5Lの緩衝液A(25mMトリス塩酸、10mM CHAPS、pH 7.5)中に再懸濁させて一晩撹拌した。 可溶化したLDL粒子を3600gにて1.5時間遠心した。 上清を集めて、残っている固形物をすべて除去するために、ワットマン(Whatman) 113濾紙を用いて濾過した。 可溶化したLDL上清を、緩衝液B(25mM トリス塩酸、1mM CHAPS、pH 7.5)で平衡化したDEAEセファロースファストフローカラム(11cm×10cm、1L樹脂容量、80ml/分)に負荷した。 吸光度がベースラインに戻るまで、緩衝液Bを用いてカラムを洗浄した。 8Lの、0〜0.5M NaClの濃度勾配を用いてタンパク質を溶出し、480mlの画分を集めた。 この工程は、以下のブルーセファロースファストフローカラムへ結合させるために必須であった。 本質的に実施例4に記載の方法によって、各画分についてアセチルヒドロラーゼ活性をアッセイした。
活性画分をプールし、当該プールを約10mM CHAPSとするために充分なCHAPSを添加した。 0.5M NaClを含む緩衝液Aで平衡化したブルーセファロースファストフローカラム(5cm×10cm、200mlベッド容量)に、DEAEプールを4ml/分にて一晩かけて負荷した。 吸光度がベースラインに戻るまで、16ml/分にて平衡化緩衝液を用いてカラムを洗浄した。
PAF-AH活性体は、16ml/分にて、0.5M KSCN(カオトロピック塩)を含む緩衝液Aを用いて段階的に溶出し、50mlの画分を集めた。 この工程の結果、1000倍を越える精製がなされた。 活性画分をプールし、1Mトリス塩酸、pH 8.0を用いてそのプールをpH 8.0に調整した。 ブルーセファロースファストフロークロマトグラフィーからの活性なプールは、緩衝液C(25mMトリス塩酸、10mM CHAPS、0.5M NaCl、pH 8.0(pH 7.5でも有効であった))で平衡化したCuキレーティングセファロースカラム(2.5cm×2cm、10mlベッド容量、4ml/分)に負荷し、カラムを50mlの緩衝液Cを用いて洗浄した。 PAF-AH活性体は、50mMイミダゾールを含む緩衝液Cを100ml用いて溶出し、10mlの画分を集めた。 PAF-AH活性を含む画分をプールし、緩衝液Aに対して透析した。 PAF-AH活性体の15倍の濃縮がなされることに加えて、Cuキレーティングセファロースカラムにより若干の精製が行われた。 Cuキレーティングセファロースプールを、37℃にて15分間、50mM DTT中で還元し、0.75mm、7.5%ポリアクリルアミドゲルに負荷した。 0.5cm毎にゲルの薄片を切断し、200μlの25mMトリス塩酸、10mM CHAPS、150mM NaClを含む使い捨ての微量遠心チューブに入れた。 薄片を粉砕し、4℃にて一晩インキュベートさせておいた。 次いで、各ゲル薄片の上清をPAF-AH活性についてアッセイして、SDS-PAGE上のいずれのタンパク質バンドがPAF-AH活性を含むかを判定した。 PAF-AH活性は、およそ44kDaのバンドにおいて見出された。 平行して実験を行った2つのゲルからのタンパク質をPVDF膜(イモビロン(Immobilon)-P、ミリポア(Millipore)社)に電気を用いて転写し、クマシーブルーで染色した。 そのPVDF膜の写真を、図1に示す。
以下の表1に示すように、5Lのヒト血漿からおよそ200μgのPAF-AHが、2×106倍精製された。 それに比べて、スタッフォリニら(1987)、前出、には、PAF-AH活性体の3×104倍の精製が記載されているのである。
実施例2
アミノ酸配列決定のため、実施例1に記載のPAF-AHを含むPVDF膜からの、およそ44kDaタンパク質のバンドを切除し、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)473Aプロテインシーケンサーを用いて配列決定した。 PAF-AH活性体に対応するおよそ44kDaのタンパク質バンドのN-末端配列分析により、そのバンドが2つのメジャーな配列と2つのマイナーな配列を含むことが示唆された。 その2つのメジャーな配列の割合は1:1であり、よって配列データを解読するのは困難であった。
アミノ酸配列決定のため、実施例1に記載のPAF-AHを含むPVDF膜からの、およそ44kDaタンパク質のバンドを切除し、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)473Aプロテインシーケンサーを用いて配列決定した。 PAF-AH活性体に対応するおよそ44kDaのタンパク質バンドのN-末端配列分析により、そのバンドが2つのメジャーな配列と2つのマイナーな配列を含むことが示唆された。 その2つのメジャーな配列の割合は1:1であり、よって配列データを解読するのは困難であった。
SDSゲルで分離された2つのメジャーなタンパク質の配列を判別するため、およそ44kDaのバンドを含む平行して実験を行った2枚のPVDF膜を半分に切断し、膜の上部と下部とが別個に配列決定に供されるようにした。
膜の下半分について得られたN-末端配列は、FKDLGEENFKALVLIAF(配列番号:1)であった。 タンパク質データベースの検索により、この配列がヒト血清アルブミンの断片であることが明らかとなった。 同じPVDF膜の上半分についても配列決定を行い、決定したN-末端アミノ酸配列は、IQVLMAAASFGQTKIP(配列番号:2)であった。 この配列は、検索したデータベースの中のいずれのタンパク質にもマッチせず、また、スタッフォリニら(1993)、前出、における赤血球の細胞質PAF-AHについて報告された、MKPLVVFVLGG(配列番号:3)のN-末端アミノ酸配列とも異なっていた。 新規配列(配列番号:2)を、以下の実施例3に記載のように、ヒト血漿PAF-AHのcDNAクローニングに利用した。
実施例3
ヒト血漿PAF-AHをコードする全長のクローンを、マクロファージcDNAライブラリーから単離した。
ヒト血漿PAF-AHをコードする全長のクローンを、マクロファージcDNAライブラリーから単離した。
A.マクロファージcDNAライブラリーの構築
末梢血単球由来のマクロファージから、ポリA+RNAを採取した。 インビトロゲンコピーキット(Invitrogen Copy Kit)(サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて、二本鎖の、平滑端部とした(blunt-ended)cDNAを作製し、哺乳動物発現ベクター、pRc/CMV(インビトロゲン)へと挿入する前に、そのcDNAにBstXIアダプターを連結した。 エレクトロポレーションにより、得られたプラスミドを大腸菌株XL-1ブルーに導入した。 形質転換された菌を、総計978枚のアガロースプレート1枚あたりおよそ3000コロニーの密度で播種した。 各プレートから別々に調製したプラスミドDNAは、個々のプールとして保持し、また、それぞれ300,000クローンを表す、より大きなプールへと集めることも行った。
末梢血単球由来のマクロファージから、ポリA+RNAを採取した。 インビトロゲンコピーキット(Invitrogen Copy Kit)(サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて、二本鎖の、平滑端部とした(blunt-ended)cDNAを作製し、哺乳動物発現ベクター、pRc/CMV(インビトロゲン)へと挿入する前に、そのcDNAにBstXIアダプターを連結した。 エレクトロポレーションにより、得られたプラスミドを大腸菌株XL-1ブルーに導入した。 形質転換された菌を、総計978枚のアガロースプレート1枚あたりおよそ3000コロニーの密度で播種した。 各プレートから別々に調製したプラスミドDNAは、個々のプールとして保持し、また、それぞれ300,000クローンを表す、より大きなプールへと集めることも行った。
B.PCRによるライブラリースクリーニング
実施例2に記載の新規なN-末端アミノ酸配列に基づく、縮重アンチセンスオリゴヌクレオチドPCRプライマーを利用した、ポリメラーゼ連鎖反応により、マクロファージライブラリーをスクリーニングした。プライマーの配列を、以下にIUPAC命名法に従って記載するが、ここで「I」は、イノシンである。
実施例2に記載の新規なN-末端アミノ酸配列に基づく、縮重アンチセンスオリゴヌクレオチドPCRプライマーを利用した、ポリメラーゼ連鎖反応により、マクロファージライブラリーをスクリーニングした。プライマーの配列を、以下にIUPAC命名法に従って記載するが、ここで「I」は、イノシンである。
5' ACATGAATTCGGIATCYTTIGTYTGICCRAA 3' (配列番号:4)
プライマーの各コドンの第3位のヌクレオチドを選択するのに、ワダ(Wada)ら、Nuc. Acids Res.、19S巻、1981〜1986頁、(1991)のコドン選択表を用いた。 プライマーは、300,000クローンのマクロファージライブラリープールをスクリーニングするために、いずれもpRc/CMVのクローニング部位の側に位置するSP6またはT7プロモーター配列のどちらかに特異的なプライマーと組合わせて用いた。 すべてのPCR反応には、100 ngの鋳型cDNA、1μgの各プライマー、0.125mMの各dNTP、10mMのトリス塩酸、pH 8.4、50mM MgCl2及び2.5単位のTaqポリメラーゼが含まれていた。 94℃、4分間で最初の変性工程を行なった後、94℃で1分、60℃で1分、そして、72℃で2分の増幅を30サイクル行った。 その結果得られたPCR産物は、pブルースクリプトSK-(ストラタジーン(Stratagene)社、ラ・ジョラ(La Jolla)、カリフォルニア州)中にクローン化し、そしてそのヌクレオチド配列を、ダイデオキシチェーンターミネーター法により決定した。 PCR産物は、新規ペプチド配列により予測される配列を含み、配列番号:7のヌクレオチド1〜331に対応するものである。
プライマーの各コドンの第3位のヌクレオチドを選択するのに、ワダ(Wada)ら、Nuc. Acids Res.、19S巻、1981〜1986頁、(1991)のコドン選択表を用いた。 プライマーは、300,000クローンのマクロファージライブラリープールをスクリーニングするために、いずれもpRc/CMVのクローニング部位の側に位置するSP6またはT7プロモーター配列のどちらかに特異的なプライマーと組合わせて用いた。 すべてのPCR反応には、100 ngの鋳型cDNA、1μgの各プライマー、0.125mMの各dNTP、10mMのトリス塩酸、pH 8.4、50mM MgCl2及び2.5単位のTaqポリメラーゼが含まれていた。 94℃、4分間で最初の変性工程を行なった後、94℃で1分、60℃で1分、そして、72℃で2分の増幅を30サイクル行った。 その結果得られたPCR産物は、pブルースクリプトSK-(ストラタジーン(Stratagene)社、ラ・ジョラ(La Jolla)、カリフォルニア州)中にクローン化し、そしてそのヌクレオチド配列を、ダイデオキシチェーンターミネーター法により決定した。 PCR産物は、新規ペプチド配列により予測される配列を含み、配列番号:7のヌクレオチド1〜331に対応するものである。
以下に記すPCRプライマーは、前記のクローン化したPCR断片に特異的なものであり、全長のクローンを同定するためにデザインした。
センスプライマー(配列番号:5)
5' TATTTCTAGAAGTGTGGTGGAACTCGCTGG 3'
アンチセンスプライマー(配列番号:6)
5' CGATGAATTCAGCTTGCAGCAGCCATCAGTAC 3'
これらのプライマーを利用するPCR反応を前記のごとくに実施し、最初に300,000クローンのcDNAプールを、次いでより小さい3000クローンのプールの適切なサブセット(subset)をスクリーニングした。 その後、期待されるサイズのPCR産物を生産している3000クローンのプール3つを、菌の形質転換のために用いた。
5' TATTTCTAGAAGTGTGGTGGAACTCGCTGG 3'
アンチセンスプライマー(配列番号:6)
5' CGATGAATTCAGCTTGCAGCAGCCATCAGTAC 3'
これらのプライマーを利用するPCR反応を前記のごとくに実施し、最初に300,000クローンのcDNAプールを、次いでより小さい3000クローンのプールの適切なサブセット(subset)をスクリーニングした。 その後、期待されるサイズのPCR産物を生産している3000クローンのプール3つを、菌の形質転換のために用いた。
C.ハイブリダイゼーションによるライブラリースクリーニング
形質転換された菌からのDNAを、元のクローン化したPCR断片をプローブとして用いたハイブリダイゼーションによって、引き続きスクリーニングした。コロニーをニトロセルロース上にブロットし、50%ホルムアミド、0.75M塩化ナトリウム、0.075Mクエン酸ナトリウム、0.05Mリン酸ナトリウム、pH 6.5、1%ポリビニルピロリドン、1%フィコール、1%ウシ血清アルブミン及び50ng/mlの超音波処理済サケ精子DNA中でプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを行った。 ハイブリダイゼーションプローブは、ランダムヘキサマープライミングによってラベルした。 42℃にて一晩ハイブリダイゼーションを行った後、ブロットを、42℃にて、0.03M塩化ナトリウム、3mMクエン酸ナトリウム、0.1% SDS中で良く洗浄した。 10のハイブリダイズするクローンのヌクレオチド配列を決定した。クローンのうちの1つ、クローンsAH 406-3は、ヒト血漿から精製したPAF-AH活性体の元のペプチド配列により予測される配列を含んでいた。 ヒト血漿PAF-AHのDNA及び推定したアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:7及び8に記す。
形質転換された菌からのDNAを、元のクローン化したPCR断片をプローブとして用いたハイブリダイゼーションによって、引き続きスクリーニングした。コロニーをニトロセルロース上にブロットし、50%ホルムアミド、0.75M塩化ナトリウム、0.075Mクエン酸ナトリウム、0.05Mリン酸ナトリウム、pH 6.5、1%ポリビニルピロリドン、1%フィコール、1%ウシ血清アルブミン及び50ng/mlの超音波処理済サケ精子DNA中でプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを行った。 ハイブリダイゼーションプローブは、ランダムヘキサマープライミングによってラベルした。 42℃にて一晩ハイブリダイゼーションを行った後、ブロットを、42℃にて、0.03M塩化ナトリウム、3mMクエン酸ナトリウム、0.1% SDS中で良く洗浄した。 10のハイブリダイズするクローンのヌクレオチド配列を決定した。クローンのうちの1つ、クローンsAH 406-3は、ヒト血漿から精製したPAF-AH活性体の元のペプチド配列により予測される配列を含んでいた。 ヒト血漿PAF-AHのDNA及び推定したアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:7及び8に記す。
クローンsAH 406-3は、予測される441アミノ酸のタンパク質をコードする読み取り枠を有する1.52kbのインサートを含む。 アミノ末端において、比較的疎水性の領域である41残基が、タンパク質マイクロ配列決定により同定されたN-末端アミノ酸(配列番号:8の42位のイソロイシン)の前に存在する。 しかして、コードされているタンパク質は、長いシグナル配列かまたは、切断されて機能を有する成熟タンパク質を生じる付加的なペプチドをシグナル配列に加えて有しているかもしれない。 シグナル配列の存在が、分泌タンパク質の1つの特徴である。 それに加えて、あらゆる既知の哺乳動物リパーゼ、微生物リパーゼ及びセリンプロテアーゼの活性部位のセリンを含むと信じられている、コンセンサスGxSxGモチーフが、クローンsAH 406-3がコードするタンパク質に含まれている(配列番号:8のアミノ酸271〜275)。 チャプス(Chapus)ら、Biochimie、70巻、1223〜1224頁、(1988)及びブレンナー(Brenner)、Nature、334巻、528〜530頁、(1988)を参照されたい。
以下の表2は、配列番号:8より予測される本発明のヒト血漿PAF-AHのアミノ酸組成と、スタッフォリニら(1987)、前出、に記載の、称するところによれば精製されたものの、アミノ酸組成の比較である。
前出のハットリらのウシ脳細胞質PAF-AHのヌクレオチド及び推定されたアミノ酸配列と、本発明のヒト血漿PAF-AHのヌクレオチド及びアミノ酸配列とのアラインメントを試みると、配列における有意な構造的類似性は、なんら観察されなかった。
実施例4
PAF-AH cDNAの5'非翻訳領域(配列番号:7のヌクレオチド31〜52)及び3'端における翻訳終止コドンにわたる領域(配列番号:7のヌクレオチド1465〜1487)にハイブリダイズするプライマーを用いて、マクロファージ及び刺激したPBMC cDNAについてPCRを実施すると、ヒトPAF-AH遺伝子と推定されるスプライスバリアントが1つ検出された。 PCR反応により、ゲル上に2つのバンドが得られ、1つは実施例3のPAF-AH cDNAの予期されるサイズに対応しており、いま1つはそれより約100bp短かった。 両方のバンドの配列決定により、大きい方のバンドが実施例3のPAF-AH cDNAであって、一方短い方のバンドは血漿PAF-AHのシグナル及びプロペプチド配列と推定される領域をコードするPAF-AH配列のエキソン2(以下の実施例5)を欠失していた。 触媒性三つ組残基(catalytic triad)と思われるアミノ酸及びすべてのシステインが、短い方のクローンに存在していたので、当該クローンがコードするタンパク質の生化学的活性は血漿の酵素の活性に匹敵するかもしれないと思われる。
PAF-AH cDNAの5'非翻訳領域(配列番号:7のヌクレオチド31〜52)及び3'端における翻訳終止コドンにわたる領域(配列番号:7のヌクレオチド1465〜1487)にハイブリダイズするプライマーを用いて、マクロファージ及び刺激したPBMC cDNAについてPCRを実施すると、ヒトPAF-AH遺伝子と推定されるスプライスバリアントが1つ検出された。 PCR反応により、ゲル上に2つのバンドが得られ、1つは実施例3のPAF-AH cDNAの予期されるサイズに対応しており、いま1つはそれより約100bp短かった。 両方のバンドの配列決定により、大きい方のバンドが実施例3のPAF-AH cDNAであって、一方短い方のバンドは血漿PAF-AHのシグナル及びプロペプチド配列と推定される領域をコードするPAF-AH配列のエキソン2(以下の実施例5)を欠失していた。 触媒性三つ組残基(catalytic triad)と思われるアミノ酸及びすべてのシステインが、短い方のクローンに存在していたので、当該クローンがコードするタンパク質の生化学的活性は血漿の酵素の活性に匹敵するかもしれないと思われる。
細胞質で活性を有する酵素をコードすることが予測されるPAF-AHスプライスバリアントの生物学的関連性の評価を開始するために、血液単球由来のマクロファージにおける2つの種類の相対存在量を、RNAseプロテクション法により調べた。 単離したばかりの単球中には、いずれのメッセージ(mRNA)も存在しなかったが、単球がマクロファージへとin vitroで分化する第2日目に双方のメッセージ(mRNA)が見出され、培養6日目まで存続した。その2つのメッセージ(mRNA)の量は、分化の期間を通して概ね同等であった。 対照的に、神経組織での同様の分析では、PAF-AHの全長の細胞外型をコードすることが予測される全長のメッセージ(mRNA)のみしか発現されていないことが明らかになった。
実施例5
ヒト血漿PAF-AHのゲノム配列も単離した。 高いストリンジェンシーの条件下でのDNAハイブリダイゼーションにより、ヒトゲノムDNAを含むラムダ及びP1ファージクローンを単離することによって、PAF-AH遺伝子の構造を決定した。 ファージクローンの断片をサブクローン化し、そしてcDNAクローンsAH 406-3全体において一定の間隔でアニールするよう設計されたプライマーを用いて配列決定した。 さらにエキソンの側部に位置するイントロン領域と再結合するよう設計された新たな配列決定用プライマーを、配列を確認するために、エキソン−イントロン境界を越えて、改めて配列決定を行うために用いた。 エキソン/イントロン境界は、ゲノム配列とcDNA配列とが分岐する点として明らかにされた。これらの分析により、ヒトPAF-AH遺伝子が12のエキソンからなることが明らかとなった。
ヒト血漿PAF-AHのゲノム配列も単離した。 高いストリンジェンシーの条件下でのDNAハイブリダイゼーションにより、ヒトゲノムDNAを含むラムダ及びP1ファージクローンを単離することによって、PAF-AH遺伝子の構造を決定した。 ファージクローンの断片をサブクローン化し、そしてcDNAクローンsAH 406-3全体において一定の間隔でアニールするよう設計されたプライマーを用いて配列決定した。 さらにエキソンの側部に位置するイントロン領域と再結合するよう設計された新たな配列決定用プライマーを、配列を確認するために、エキソン−イントロン境界を越えて、改めて配列決定を行うために用いた。 エキソン/イントロン境界は、ゲノム配列とcDNA配列とが分岐する点として明らかにされた。これらの分析により、ヒトPAF-AH遺伝子が12のエキソンからなることが明らかとなった。
エキソン1、2、3、4、5、6、及び7の一部は、ラムダFIX(ストラタジーン社)中で構築された雄性胎児の胎盤のライブラリーから単離された。ニトロセルロース上にファージプラークをブロットし、50%ホルムアミド、0.75M塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)、1%ポリビニルピロリドン、1%フィコール、1%ウシ血清アルブミン、及び50ng/mlの超音波処理済サケ精子DNA中でプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを行った。 エキソン2〜6及び7の一部を含むファージクローンを同定するために用いるハイブリダイゼーション用プローブは、cDNAクローンsAH 406-3全体で構成されるものであった。 エキソン1を含むクローンは、cDNAクローンの5'端由来の断片(配列番号:7のヌクレオチド1〜312)を用いて同定した。 両プローブとも、ヘキサマーランダムプライミングによって、32Pでラベルした。 42℃にて一晩ハイブリダイゼーションを行った後、ブロットを、42℃にて、30mM塩化ナトリウム、3mMクエン酸ナトリウム、0.1%SDS中で良く洗浄した。 エキソン1、2、3、4、5、及び6のDNA配列に加えて、部分的な周囲のイントロン配列を、それぞれ配列番号:9、10、11、12、13及び14に記す。
エキソン7の残部ならびにエキソン8、9、10、11、及び12は、ヒトP1ゲノムライブラリーから単離したP1クローンからサブクローン化した。 ニトロセルロース上にP1ファージプラークをブロットし、0.75M塩化ナトリウム、50mMリン酸ナトリウム(pH 7.4)、5mM EDTA、1%ポリビニルピロリドン、1%フィコール、1%ウシ血清アルブミン、0.5% SDS、及び0.1mg/mlの総ヒトDNA中でプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを行った。 ヘキサマーランダムプライミングによって32Pでラベルしたハイブリダイゼーションプローブは、前記のように単離したラムダクローンの3'端から由来するゲノムDNAの2.6kbのEcoR1断片で構成されていた。 この断片は、ファージクローン上に存在するエキソン6及びエキソン7の一部を含んでいた。 65℃にて一晩ハイブリダイゼーションを行った後、前記のようにブロットを洗浄した。 エキソン7、8、9、10、11、及び12のDNA配列に加えて、部分的な周囲のイントロン配列を、それぞれ配列番号:15、16、17、18、19、及び20に記す。
実施例6
全長の血漿PAF-AH cDNAクローンを、マウス、イヌ、ウシ及びニワトリ脾臓cDNAライブラリーから単離し、ラット胸腺cDNAライブラリーから部分的なラットのクローンを単離した。 クローンは、ヒトcDNAへの低いストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションにより同定した(ハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミドの代わりに20%ホルムアミドを用いたこと以外は、前記実施例5のエキソン1〜6について記載したと同じであった)。 ヒトPAF-AH sAH 406-3 cDNAクローンの1kb HindIII断片(配列番号:7のヌクレオチド309〜1322)をプローブとして用いた。 加えて、部分的なサルのクローンを、配列番号:7のヌクレオチド285〜303及び851〜867に基づくプライマーを用いて、PCRによりマカク脳cDNAから単離した。 マウス、イヌ、ウシ、ニワトリ、ラット、及びマカクのcDNAクローンのヌクレオチド及び推定されたアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:21、22、23、24、25及び26に示す。
全長の血漿PAF-AH cDNAクローンを、マウス、イヌ、ウシ及びニワトリ脾臓cDNAライブラリーから単離し、ラット胸腺cDNAライブラリーから部分的なラットのクローンを単離した。 クローンは、ヒトcDNAへの低いストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションにより同定した(ハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミドの代わりに20%ホルムアミドを用いたこと以外は、前記実施例5のエキソン1〜6について記載したと同じであった)。 ヒトPAF-AH sAH 406-3 cDNAクローンの1kb HindIII断片(配列番号:7のヌクレオチド309〜1322)をプローブとして用いた。 加えて、部分的なサルのクローンを、配列番号:7のヌクレオチド285〜303及び851〜867に基づくプライマーを用いて、PCRによりマカク脳cDNAから単離した。 マウス、イヌ、ウシ、ニワトリ、ラット、及びマカクのcDNAクローンのヌクレオチド及び推定されたアミノ酸配列を、それぞれ配列番号:21、22、23、24、25及び26に示す。
それらのcDNAクローンとヒトcDNAクローンの推定されたアミノ酸配列を比較することにより、以下の表3に示す、アミノ酸の同一性の百分率値が得られた。
さらには、ヒト血漿PAF-AHは、血漿の低密度及び高密度リポタンパク質粒子との特異的な相互作用を媒介する領域を有していることが予期される。 これらの粒子との相互作用は、種間で高く保存されているアミノ酸の大きなストレッチを有するが酵素の触媒三つ組残基(catalytic triad)を含まない、分子のN-末端半分によって媒介されているのかもしれない。
実施例7
ヒト血漿PAF-AH cDNAクローンsAH 406-3(実施例3)が、PAF-AH活性を有するタンパク質をコードしているか否かを確定するため、pRc/CMV発現構築体をCOS7細胞内で一過性に発現させた。 DEAEデキストラン法によりトランスフェクトして3日後に、COS細胞培地をPAF-AH活性についてアッセイした。
ヒト血漿PAF-AH cDNAクローンsAH 406-3(実施例3)が、PAF-AH活性を有するタンパク質をコードしているか否かを確定するため、pRc/CMV発現構築体をCOS7細胞内で一過性に発現させた。 DEAEデキストラン法によりトランスフェクトして3日後に、COS細胞培地をPAF-AH活性についてアッセイした。
60mm組織培養ディッシュ当たり300,000細胞の密度で、細胞を播種した。 次の日、0.5mg/ml DEAEデキストラン、0.1mMクロロキン及び5〜10μgのプラスミドDNAを含有するDMEM中で細胞を2時間インキュベートした。 次いで、細胞を、10%DMSOを含むリン酸緩衝生理食塩水中で1分間処理し、培地で洗浄し、そしてジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP)を用いて前処理して内在性ウシ血清のPAF-AHを不活性化しておいた子牛胎児血清10%を含有するDMEM中でインキュベートした。 3日間インキュベートした後、トランスフェクトした細胞からの培地をPAF-AH活性についてアッセイした。 10mM EDTAまたは1mM DFPのいずれかの存在下または非存在下でアッセイを行い、スタッフォリニら(1987)、前出、により以前に血漿PAF-AHについて報告されたように、組換え酵素がカルシウム非依存性でありセリンエステラーゼ阻害剤DFPによって阻害されるか否かを判定した。 陰性の対照には、インサートを欠くpRc/CMVかまたはsAH 406-3インサートを逆方向に有するpRc/CMVを用いてトランスフェクトした細胞が含まれていた。
トランスフェクト体上清におけるPAF-AH活性は以下の変更を加えて、スタッフォリニら(1990)、前出、の方法により測定した。 要約すると、[アセチル-3H]PAF(ニューイングランドヌクレアー(New England Nuclear)社、ボストン、マサチューセッツ州)からの3H-アセテートの加水分解を測定することによりPAF-AH活性を測定した。 水性の遊離3H-アセテートは、オクタデシルシリカゲルカートリッジ(ベーカーリサーチプロダクツ(Baker Research Products)社、フィリプスバーグ(Phillipsburg)、ペンシルベニア州)を用いた逆相カラムクロマトグラフィーにより、ラベルされた基質から分離した。 50μlの反応液容量で0.1M ヘペス緩衝液、pH 7.2中、10μlのトランスフェクト体の上清を用いて、アッセイを行った。 標識:非標識のPAFの割合を1:5として、1反応当たり計50ピコモルの基質を用いた。 37℃にて30分間反応液をインキュベートし、40μlの10M酢酸を添加することによって停止した。 オクタデシルシリカゲルカートリッジを通して溶液を洗浄し、次いでカートリッジは0.1M酢酸ナトリウムですすいだ。 各試料からの水性溶出液を集めて、液体シンチレーションカウンターで1分間計測した。酵素活性は、1分当たりのカウント数で表した。
図2に示すように、sAH 406-3でトランスフェクトした細胞からの培地は、バックグラウンドよりも4倍のレベルでPAF-AH活性を有していた。 この活性は、EDTAの存在によっては影響を受けなかったが、1mM DFPにより阻止された。 これらの観察から、クローンsAH 406-3が、ヒト血漿酵素PAF-AHに一致した活性体をコードしていることが証明された。
実施例8
全長及び様々な欠損が施されたヒト血漿PAF-AHのDNA及びマウス−ヒトのキメラPAF-AHのDNAを、組換え法によって、大腸菌及び酵母菌にて発現し、また、哺乳動物細胞にて安定に発現させた。
全長及び様々な欠損が施されたヒト血漿PAF-AHのDNA及びマウス−ヒトのキメラPAF-AHのDNAを、組換え法によって、大腸菌及び酵母菌にて発現し、また、哺乳動物細胞にて安定に発現させた。
A.大腸菌における発現
大腸菌発現ベクター内へのサブクローニングが容易に行える、クローンsAH 406-3からのヒト血漿PAF-AH cDNAのタンパク質をコードする断片を作製するために、PCRを用いた。 サブクローン化したセグメントは、Ile42(配列番号:8、ヒト血漿から精製された酵素のN-末端残基)をコードするコドンを有するヒト遺伝子の5'端で始まるものであった。 構築体中には、本来の終止コドンまでの遺伝子の残部が含まれた。利用した5'センスPCRプライマーは、5' TATTCTAGAATTATGATACAAGTATTAATGGCTGCTGCAAG 3'(配列番号:28)であり、翻訳開始コドン(下線部)のみならずXbaIクローニング部位を含むものであった。 利用した3'アンチセンスプライマーは、5' ATTGATATCCTAATTGTATTTCTCTATTCCTG 3'(配列番号:29)であって、sAH406-3の終止コドンにまたがり、EcoRVクローニング部位を含むものであった。 PCR反応は、本質的に実施例3に記載のように実施した。 その結果得られたPCR産物は、XbaI及びEcoRVを用いて消化し、そして、クローニング部位に近接した上流にTrpプロモーター(デボエ(deBoer)ら、PNAS、80巻、21〜25頁、(1983))を含むpBR322ベクター内にサブクローン化した。 大腸菌株XL-1ブルーをその発現構築体で形質転換し、次いで100μg/mlのカルベニシリン(carbenicillin)を含むLブロス(broth)中で培養した。 一晩培養した培養物からの形質転換体をペレットとし、50mMトリス塩酸、pH 7.5、50mM NaCl、10mM CHAPS、1mM EDTA、100μg/ml リソゾーム、及び0.05 トリプシン阻害単位(TIU)/mlのアプロチニン(Aprotinin)を含む溶菌用緩衝液中に再懸濁した。 氷上で1時間インキュベートし、2分間超音波処理を施した後、実施例4に記載の方法により、PAF-AH活性について溶菌物をアッセイした。 発現構築体(trp AHと名付けた)で形質転換された大腸菌は、PAF-AH活性を有する産物を作り出していた。実施例9の表6を参照されたい。
大腸菌発現ベクター内へのサブクローニングが容易に行える、クローンsAH 406-3からのヒト血漿PAF-AH cDNAのタンパク質をコードする断片を作製するために、PCRを用いた。 サブクローン化したセグメントは、Ile42(配列番号:8、ヒト血漿から精製された酵素のN-末端残基)をコードするコドンを有するヒト遺伝子の5'端で始まるものであった。 構築体中には、本来の終止コドンまでの遺伝子の残部が含まれた。利用した5'センスPCRプライマーは、5' TATTCTAGAATTATGATACAAGTATTAATGGCTGCTGCAAG 3'(配列番号:28)であり、翻訳開始コドン(下線部)のみならずXbaIクローニング部位を含むものであった。 利用した3'アンチセンスプライマーは、5' ATTGATATCCTAATTGTATTTCTCTATTCCTG 3'(配列番号:29)であって、sAH406-3の終止コドンにまたがり、EcoRVクローニング部位を含むものであった。 PCR反応は、本質的に実施例3に記載のように実施した。 その結果得られたPCR産物は、XbaI及びEcoRVを用いて消化し、そして、クローニング部位に近接した上流にTrpプロモーター(デボエ(deBoer)ら、PNAS、80巻、21〜25頁、(1983))を含むpBR322ベクター内にサブクローン化した。 大腸菌株XL-1ブルーをその発現構築体で形質転換し、次いで100μg/mlのカルベニシリン(carbenicillin)を含むLブロス(broth)中で培養した。 一晩培養した培養物からの形質転換体をペレットとし、50mMトリス塩酸、pH 7.5、50mM NaCl、10mM CHAPS、1mM EDTA、100μg/ml リソゾーム、及び0.05 トリプシン阻害単位(TIU)/mlのアプロチニン(Aprotinin)を含む溶菌用緩衝液中に再懸濁した。 氷上で1時間インキュベートし、2分間超音波処理を施した後、実施例4に記載の方法により、PAF-AH活性について溶菌物をアッセイした。 発現構築体(trp AHと名付けた)で形質転換された大腸菌は、PAF-AH活性を有する産物を作り出していた。実施例9の表6を参照されたい。
tacIIプロモーター(デボエ、前出)、サルモネラ菌(Salmonella typhimurium)からのアラビノース(ara)Bプロモーター(ホルビッツ(Horwitz)ら、Gene、14巻、309〜319頁、(1981))、及びバクテリオファージT7プロモーターの、3種類のプロモーターを含む構築体もまた、大腸菌内でのヒトPAF-AH配列の発現を行うために利用した。 Trpプロモーター(pUC trpAH)、tacIIプロモーター(pUC tac AH)、及びaraBプロモーター(pUC ara AH)からなる構築体をプラスミドpUC19(ニューイングランドバイオラブス(New England Biolabs)社、マサチューセッツ州)の中に組み立て、一方、T7プロモーターからなる構築体(pET AH)はプラスミドpET15B(ノバゲン(Novagen)社、マディソン、ウィスコンシン州)の中に組み立てた。 T7プロモーター領域のリボソーム結合部位に融合されたaraBプロモーターで構成されるハイブリッドプロモーター、pHAB/PHを含む構築体もまた、pET15Bの中に組み立てた。 すべての大腸菌構築体が、20〜50 U/ml/OD600の範囲内でPAF-AH活性を生産した。 この活性は、総細胞タンパク質の1%以上が総組換え体タンパク質に対応することを示す。
アミノ末端側を伸長した大腸菌発現構築体のいくつかについても、PAF-AHの生産について検討を行った。 天然型の血漿PAF-AHのN-末端は、アミノ酸配列決定(実施例2)によりIle42として同定された。 しかしながら、Ile42に近接した上流の配列は、シグナル配列切断部位で見出されるアミノ酸には一致していない(すなわち、リジンが-1位に見出されないので、「-3-1ルール」には従っていない、フォン・ヘイネ(von Heijne)、Nuc. Acids Res.、14巻、4683〜4690頁、(1986)を参照されたい)。 おそらくは、より古典的なシグナル配列(M1〜A17またはM1〜P21)が、細胞分泌系により認識され、引き続きタンパク質内部分解性切断(endoproteolytic cleavage)が行われる。 開始のメチオニンで始まるPAF-AHに対する全コード配列(配列番号:7のヌクレオチド162〜1487)を、大腸菌内で発現するために、trpプロモーターを用いて作った。 表4に示すように、この構築体は活性なPAF-AHを産生したが、Ile42で始まる元の構築体のレベルの約50分の1しか発現しなかった。 Val18で始まる他の発現構築体(配列番号:7のヌクレオチド213〜1487)は、元の構築体の約3分の1のレベルで、活性なPAF-AHを生産した。 これらの結果より、大腸菌において生産される組換えPAF-AHの活性に対して、アミノ末端部の延長は重要または必須ではないことが示唆される。
詳細には、pBAR2/PH.2は、DNAの以下のセグメントを含んでいた。 すなわち、(1)第1994位の破壊されたAatII部位から第6274位のヌクレオチドのEcoRI部位までに、細菌のプラスミドpBR322に由来する複製の起点と、アンピシリンまたはテトラサイクリンのいずれかに対する耐性をコードする遺伝子を含むベクター配列、(2)第6274位のEcoRI部位から第131位のXbaI部位までに、サルモネラ菌のアラビノースオペロン由来のDNA(GenBank受入番号M11045、M11046、M11047、J01797)、(3)第131位のXbaI部位から第170位のNcoI部位までに、pET-21b(ノバゲン、マディソン、ウイスコンシン州)由来のリボソーム結合部位を含むDNA、(4)第170位のNcoI部位から第1363位のXhoI部位までに、ヒトPAF-AH cDNA配列、及び(5)第1363位のXhoI部位から第1993位の破壊されたAatII部位までに、バクテリオファージT7由来の転写終止配列及びバクテリオファージf1由来の複製の起点を含むpET-21b(ノバゲン)からのDNA断片を含んでいた。
rPH.9と命名されたさらなるPAF-AH産物は、全長のPAF-AH cDNA(配列番号:8)によってコードされるポリペプチドのアミノ酸残基Met46からIle429までに及ぶアミノ酸残基をコードするDNAの組換え発現産物である。 rPH.9をコードするDNAは、細菌細胞にてrPH.2を生産するために使用されるものと同じベクターへ挿入された。 このプラスミドは、pBAR2/PH.9と命名され、これは詳細にはDNAの以下のセグメントを含んでいた。 すなわち、(1)ベクター配列の第1958位の破壊されたAatII部位から第6239位のヌクレオチドのEcoRI部位までに、細菌のプラスミドpBR322に由来する複製の起点と、アンピシリンまたはテトラサイクリンのいずれかに対する耐性をコードする遺伝子を含み、(2)第6239位のEcoRI部位から第131位のXbaI部位までに、サルモネラ菌のアラビノースオペロン由来のDNA(GenBank受入番号M11045、M11046、M11047、J01797)、(3)第131位のXbaI部位から第170位のNcoI部位までに、pET-21b(ノバゲン、マディソン、ウイスコンシン州)由来のリボソーム結合部位を含むDNA、(4)第170位のNcoI部位から第1328位のXhoI部位までに、ヒトPAF-AH DNA配列、(5)第1328位のXhoI部位から第1958位の破壊されたAatII部位までに、バクテリオファージT7由来の転写終止配列及びバクテリオファージf1由来の複製の起点を含むpET-21b(ノバゲン、マディソン、ウイスコンシン州)からのDNA断片を含んでいた。
pBAR2/PH.2及びpBAR2/PH.9におけるPAF-AH産物の発現は、グルコース存在下且つアラビノース非存在下に厳密に抑制されているが、グルコースを枯渇させた培養物にL-アラビノースが添加されると強いプロモーターとして機能する、araBプロモーターの制御下にある。 プラスミドを含む細胞についての選択は、培養培地へのアンピシリン(もしくは関連抗生物質)またはテトラサイクリンのいずれかを添加することを通して成し遂げることができる。 様々な大腸菌株をPAF-AH産物の組換え発現のための宿主として使用することができ、かかる菌株にはW3110、DH5α、BL21、C600、JM101及びそれらの誘導株などのアラビノース代謝に対する原栄養株、CAG629、KY1429などの蛋白質分解酵素活性が低くなった変異を含む株、ならびにSB7219及びMC1061などのアラビノースを分解する能力を欠いた株が包含されるが、これらに限定されることはない。 アラビノースを分解することができない株を使用する利点は、PAF-AHの生産のための誘導剤(アラビノース)が誘導期間中に培地から枯渇されず、その結果アラビノースを代謝することができる株を用いて得られるレベルに比較して随分高レベルのPAF-AHが得られることにある。 様々な大腸菌株で活性PAF-AHを産物を発現するために、いかなる好適な培地及び培養条件を使用してもよい。 例えば、L-ブロス、EDM295(酵母抽出物及び酸加水分解されたカゼインを添加したM9ベースの最小培地)などの富化培地組成物、またはA675(炭素源としてグリセロールを使用し、微量要素及びビタミンを追加し、pH 6.75に調整したAベースの最小培地)などの「限定」培地のいずれかによって、rPAF-AH産物の実質的な生産が可能となる。 テトラサイクリンは、プラスミドの選択を支えるために培地に含まれるものである。
プラスミドpBAR2/PH.2は、大腸菌株MC1061(ATCC53338)に形質転換された。 この株は、アラビノースオペロンの欠失を持っており、それによってアラビノースを代謝することができない株である。 MC1061は、ロイシン栄養要求性でもあり、ロイシン変異を補完するカザミノ酸を含有する限定培地を使用する回分−供給培養によって培養した。
pBAR2/PH.2で形質転換された大腸菌MC1061細胞を、2gm/Lのグルコースを含有する回分培地中で30℃にて増殖させた。 グルコースは、細胞増殖のための炭素源及びアラビノースプロモーターからの発現抑制の、2つの目的にかなうものである。 グルコースレベルが枯渇する(50mg/Lを下回る)時点で栄養供給(300g/Lのグルコースを含有する)を開始した。 酸副産物の形成を限定する速度にて、16時間にわたり直線的に供給量を増加させた。
この時点で、グルコースの代わりにグリセロールを含有する培地に栄養供給を切り替えた。 同時に、500g/LのL-アラビノースを、最終濃度5g/Lとなるように添加した。 グリセロールの供給は、一定の供給速度で22時間持続した。 中空繊維での濾過により細胞を採収し、およそ10倍の懸濁液にまで濃縮した。 細胞ペーストは、-70℃にて保存した。約80g/Lの最終細胞量(OD600=50〜60)が得られ、65〜70単位/OD/mlのPAF-AH活性を有しており、これは総細胞タンパク質の約10%に相当していた。 約75リットルの最終培養容量に、50〜60グラムのPAF-AHが含まれていた。
pBAR2/PH.2またはPH.9を、SB7219またはMC1061株によって発現すると、rPAF-AH産物の高レベルでの生産を成し遂げることができる。 アラビノース分解能を欠く他の株も、高い細胞密度での生産のために好適である。 好ましくは、細胞は以下の条件下で培養される。 指数増殖しているSB7219;pBAR2/PH.2及びSB7219;pBAR2/PH.9株を、2g/Lのグルコースを含有する回分培地を含むファーメンターに播種する。 一旦グルコースが消費されれば、健全な指数増殖を維持するために、タンクに微量要素、ビタミン、マグネシウム及びアンモニウム塩を含有するグリセロール溶液を供給する。 タンクを30℃に維持し、酸素を補給するために空気を供給し、約15%飽和の溶解酸素レベルを越えるよう維持するために攪拌する。 培養液の細胞密度が110g/L(細胞湿質量)を越えれば、一定の供給速度を賦課し、L-アラビノースを培養液に添加(最終濃度約0.5%)する。 目的物質の産生は、16〜22時間観察される。 典型的には、培養は40〜50g/L(乾燥細胞重量)まで行われる。 遠心分離によって細胞を採収し、-70℃に保存して、分析のためにrPAF-AH産物を精製する。 150単位/ml/OD600を越える特定の生産性が、定常的に得られる。
B.酵母細胞における発現
組換えヒトPAF-AHは、酵母(Saccharomyces cerevisiae)でも発現された。 rPAF-AH発現を行なうために、酵母ADH2プロモーターを用い、7U/ml/OD600を生産した(下記の表5参照)。
組換えヒトPAF-AHは、酵母(Saccharomyces cerevisiae)でも発現された。 rPAF-AH発現を行なうために、酵母ADH2プロモーターを用い、7U/ml/OD600を生産した(下記の表5参照)。
1.ヒトPAF-AH cDNA構築体の発現
pSFN/PAFAH.1を例外として、PAF-AHの発現のために構築されるプラスミドには、COS細胞においてプラスミドの複製コピー数を高めることを許容するために、サイトメガロウイルス由来の強力なウイルスプロモーター、ウシ生長ホルモン遺伝子由来のポリアデニル化部位、及びSV40複製起点を使用する。 プラスミドは、細胞内にエレクトロポレーションした。
プラスミドの第1セットは、ヒトPAF-AH cDNAの5'フランキング配列(pDC1/PAFAH.1)または5'もしくは3'フランキング配列の双方(pDC1/PAFAH.2)を、哺乳動物細胞において高レベルで発現することが知られている他の遺伝子からの配列と置換して構築した。 これらのプラスミドをCOS、CHOまたは293細胞内にトランスフェクトすることで、実施例7においてCOS細胞に一過性にトランスフェクトした後のクローンsAH 406-3について言及したと概ね同様のレベル(0.01単位/mlまたはバックグラウンドを2〜4倍上回る)でのPAF-AHの生産につながった。 サイトメガロウイルスプロモーターの代わりにフレンド(Friend)脾臓フォーカス形成ウイルスプロモーターを含む、別のプラスミドを構築した。 ヒトPAF-AH cDNAは、フレンド脾臓フォーカス形成ウイルスプロモーターの制御下に、プラスミドpmH-neo(Hanhら、Gene、127巻、267頁(1993))の中に挿入した。 pSFN/PAFAH.1と命名されたこのプラスミドを用いてミエローマ細胞系NSOをトランスフェトし、数百のクローンをスクリーニングした結果、0.15〜0.5単位/mlのPAF-AH活性を現す2つのトランスフェクト体(4B11及び1C11)が単離された。 比活性は5000単位/mgと推定され、これら2つのNSOトランスフェクト体の生産性は約0.1mg/Lに該当する。
2.マウス−ヒトキメラPAF-AH遺伝子構築体の発現
哺乳動物の発現ベクターpRc/CMV内にマウスPAF-AHをコードするcDNAを含む構築体(pRc1/MS9)で、COS細胞へトランスフェクトした後、5〜10単位/ml(バックグラウンドを1000倍上回る)のレベルで分泌PAF-AHが生産される結果となった。 マウスPAF-AHの比活性はヒト酵素とほぼ同様であると推定され、従って、マウスcDNAはヒトPAF-AH cDNAよりも500〜1000倍高いレベルで発現されている。
哺乳動物の発現ベクターpRc/CMV内にマウスPAF-AHをコードするcDNAを含む構築体(pRc1/MS9)で、COS細胞へトランスフェクトした後、5〜10単位/ml(バックグラウンドを1000倍上回る)のレベルで分泌PAF-AHが生産される結果となった。 マウスPAF-AHの比活性はヒト酵素とほぼ同様であると推定され、従って、マウスcDNAはヒトPAF-AH cDNAよりも500〜1000倍高いレベルで発現されている。
COS細胞におけるヒトとマウスのPAF-AHの発現レベル間の相違を調べるために、2つのマウス−ヒトキメラ遺伝子を構築し、COS細胞での発現について試験した。 これらのうち第1の構築体、pRc/PH.MHC1は、マウスPAF-AHポリペプチド(配列番号:21)のN-末端側の97アミノ酸が、ヒトPAF-AHのC-末端側の343アミノ酸に融合されたアミノ酸をコードする配列を発現ベクターpRc/CMV(インビトロゲン、サンディエゴ、カリフォルニア州)内に含んでいる。 プラスミドpRc/PH.MHC2内の第2のキメラ遺伝子は、pRc/CMV内に、マウスPAF-AHポリペプチドのN-末端側の40アミノ酸が、ヒトPAF-AHのC-末端側の400アミノ酸残基に融合されたアミノ酸をコードする配列を含んでいる。 pRc/PH.MHC1を用いたCOS細胞のトランスフェクションの結果、培地中に1〜2単位/mlのPAF-AH活性が蓄積した。 pRc/PH.MHC2でトランスフェクトされた細胞由来のコンディションド メディウムは、わずか0.01 単位/mlのPAF-AH活性しか含まないことが見出された。 これらの実験から、マウスとヒトのPAF-AH遺伝子の発現レベル間の相違は、第40と97残基の間のポリペプチドセグメントまたは、PAF-AHタンパク質のこの領域をコードしている、対応するRNAもしくはDNAセグメントに、少なくとも部分的に帰するものであると考えられる。
3.PAF-AHコード配列の最初の290 bpの再コーディング
トランスフェクトされた哺乳動物細胞において生合成されるヒトPAF-AHが低レベルであることについての一つの仮説は、天然型遺伝子によって利用されているコドンが、充分な発現のための最適状態に及ばないものであるということである。 しかしながら、一般にコドンを最適化することで発現に対して多くとも10倍の効果しか得られないので、マウスとヒトの遺伝子の発現レベル間の500〜1000倍の相違は、コドン使用頻度(usage)が原因でありうるらしいとは考えられない。 マウスとヒトのPAF-AH発現レベル間の相違を説明する第二の仮説は、ヒトPAF-AHの5'側翻訳領域内のmRNAが、mRNAの比較的迅速な分解を導くかまたは不充分な翻訳開始もしくは伸長を惹起こすような二次構造を形成することである。
トランスフェクトされた哺乳動物細胞において生合成されるヒトPAF-AHが低レベルであることについての一つの仮説は、天然型遺伝子によって利用されているコドンが、充分な発現のための最適状態に及ばないものであるということである。 しかしながら、一般にコドンを最適化することで発現に対して多くとも10倍の効果しか得られないので、マウスとヒトの遺伝子の発現レベル間の500〜1000倍の相違は、コドン使用頻度(usage)が原因でありうるらしいとは考えられない。 マウスとヒトのPAF-AH発現レベル間の相違を説明する第二の仮説は、ヒトPAF-AHの5'側翻訳領域内のmRNAが、mRNAの比較的迅速な分解を導くかまたは不充分な翻訳開始もしくは伸長を惹起こすような二次構造を形成することである。
これらの仮説を検討するために、オーセンティックな(authentic)ヒトPAF-AHタンパク質のアミノ末端から第96残基までをコードする合成断片であって、異なる配列であるが同じアミノ酸をコードするコドンにほとんどのコドンが置換(「再コード」)されているものを構築した。 第2コドンをGTGからGTAに変えると、Asp718部位が創出される結果となり、これはマウスcDNAに存在するものであり、合成断片の片方の端部であった。 断片のいま一つの端部は、ヒトの遺伝子のコドン97にて通常見出されるBamHI部位を含んでいた。 およそ290bpのAsp718/BamHI断片は、サンドゥ(Sandhu)ら、Biotechniques、12巻、14〜16頁(1992)に記載された、合成遺伝子の構築のための二重非対称PCR法を使用して作製されたPCR断片に由来するものであった。 合成Asp718/BamHI断片は、配列番号:7の第453位のヌクレオチドで開始するヒトPAF-AH分子の残余部分をコードするDNA断片に連結され、しかして、オーセンティックなヒトPAF-AH酵素をコードする配列が哺乳動物発現ベクターpRc/CMV(インビトロゲン、サンディエゴ)内に挿入され、プラスミドpRc/HPH.4が創出された。 再コードされた遺伝子の完全な配列を、配列番号:30に示す。 pRc/HPH.4においてヒトPAF-AHをコードする配列に隣接する5'フランキング配列は、pRc/MS9内のPAF-AHをコードするマウスcDNA配列からのもの(配列番号:21の第1〜116位のヌクレオチド)である。
pRc/HPH.4からのヒトPAF-AHの発現を調べるために、pRc/HPH.4(再コードされたヒト遺伝子)、pRc/MS9(マウスPAF-AH)、またはpRc/PH.MHC1(マウス−ヒトハイブリッド1)で、COS細胞を一過性にトランスフェクトした。 トランスフェクトされた細胞からのコンディションド メディウムを、PAF-AH活性について調べ、5.7単位/ml(マウス遺伝子)、0.9単位/ml(マウス−ヒトハイブリッド1)、または2.6単位/ml(再コードされたヒト遺伝子)の活性を含むことが見出された。 このようにして、ヒトPAF-AHをコードする配列の最初の290bpを再コードするストラテジーは、一過性のCOS細胞へのトランスフェクションにおいて、数ナノグラム/mlから約0.5μg/mlまでにヒトPAF-AHの発現レベルを高めることで成功を修めた。 pRc/HPH.4由来の再コードされたPAF-AH遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を含む哺乳動物発現ベクターに挿入され、そして当該ベクターで、DHFR欠損のチャイニーズハムスター卵巣細胞をトランスフェクトすることができる。 かようにトランスフェクトされた細胞は、遺伝子の増幅に起因して高レベルのPAF-AHを作るクローンを得るために、メトトレキセート耐性クローン選択に用いることができる。
実施例9
大腸菌内で発現される組換えヒト血漿PAF-AH(Ile42で始まる)を、種々の方法により単一のクマシーブルー染色SDS-PAGEバンドにまで精製し、そして本来のPAF-AH酵素が示す活性についてアッセイした。
大腸菌内で発現される組換えヒト血漿PAF-AH(Ile42で始まる)を、種々の方法により単一のクマシーブルー染色SDS-PAGEバンドにまで精製し、そして本来のPAF-AH酵素が示す活性についてアッセイした。
A.組換えPAF-AHの精製
利用した第1の精製手法は、本来のPAF-AHについて実施例1において記載した手法と類似している。 以下の工程は、4℃にて実施した。 PAF-AHを生産している大腸菌(発現構築体trp AHで形質転換したもの)50mlからの菌体を、実施例8に記載のように溶菌した。 10,000gで20分間遠心することにより、残渣を除去した。 緩衝液D(25mMトリス-塩酸、10mM CHAPS、0.5M NaCl、pH 7.5)で平衡化したブルーセファロースファストフローカラム(2.5cm×4cm、20mlベッド容量)に、0.8ml/分でその上清を負荷した。
利用した第1の精製手法は、本来のPAF-AHについて実施例1において記載した手法と類似している。 以下の工程は、4℃にて実施した。 PAF-AHを生産している大腸菌(発現構築体trp AHで形質転換したもの)50mlからの菌体を、実施例8に記載のように溶菌した。 10,000gで20分間遠心することにより、残渣を除去した。 緩衝液D(25mMトリス-塩酸、10mM CHAPS、0.5M NaCl、pH 7.5)で平衡化したブルーセファロースファストフローカラム(2.5cm×4cm、20mlベッド容量)に、0.8ml/分でその上清を負荷した。
カラムは、100mlの緩衝液Dで洗浄し、0.5M KSCNを含む緩衝液A 100 mlで3.2ml/分にて溶出した。 緩衝液Dで平衡化した1mlのCuキレーティングセファロースカラムに15mlの活性画分を負荷した。 カラムを5mlの緩衝液Dで洗浄し、引き続き100mMイミダゾールを含む緩衝液Dを5ml用いて重力の速度で溶出した。 PAF-AH活性を有する画分を、SDS-PAGEにより分析した。
精製の結果は表6に示すとおりであり、ここで単位は1時間当たりのPAF加水分解のμmol数に等しい。 4℃にて得られる精製産物は、43 kDaのマーカーの下に単一の強いバンドとして、直接その上下に染まっている拡散した染色部分とともに、SDS-PAGE上に現れた。 組換え物質は、実施例1に記載の血漿からのPAF-AH調製物に比較して有意に、より純粋であり、より大きな比活性を呈する。
常温にて、異なる精製手法も実施した。PAF-AHを生産している大腸菌(発現構築体pUC trp AHで形質転換したもの)の菌体(100g)を200 mlの溶菌用緩衝液(25mMトリス、20mM CHAPS、50mM NaCl、1mM EDTA、50μg/ml ベンズアミド、pH7.5)中に再懸濁し、次いで15,000psiにてマイクロフルイダイザー(microfluidizer)を3回通すことによって溶菌した。 14,300×gにて1時間遠心することにより、固形物を除去した。 希釈用緩衝液(25mM MES(2-[N-モルフォリノ]エタンスルホン酸)、10mM CHAPS、1mM EDTA、pH 4.9)中に上清を10倍希釈し、緩衝液E(25mM MES、10mM CHAPS、1mM EDTA、50mM NaCl、pH 5.5)で平衡化したSセファロースファストフローカラム(200ml)(陽イオン交換カラム)に25ml/分にて負荷した。 1リットルの緩衝液Eでカラムを洗浄し、1M NaClを用いて溶出して、次いで溶出液を集めて、0.5mlの2Mトリスベースを用いてpH 7.5に調整した50mlの画分とした。 PAF-AH活性を含む画分をプールし、0.5M NaClに調整した。 そのSプールを、緩衝液F(25mMトリス、10mM CHAPS、0.5M NaCl、1mM EDTA、pH 7.5)に平衡化したブルーセファロースファストフローカラム(2.5cm×4cm、20ml)に、1ml/分にて負荷した。 カラムを100mlの緩衝液Fで洗浄し、4ml/分にて、3M NaClを含む緩衝液Fを100ml用いて溶出した。 次いで、試料中のエンドトキシンレベルを低減せしめるため、ブルーセファロースファストフロークロマトグラフィー工程を繰り返した。 PAF-AH活性を含む画分をプールし、緩衝液G(25mMトリス、pH 7.5、0.5M NaCl、0.1%ツイーン80、1mM EDTA)に対して透析した。 精製の結果を表7に示すが、ここで単位は、1時間当たりのPAF加水分解のμmol数に等しい。
本発明により企図されるさらに別の精製手法は、以下の菌の溶菌、清澄化(clarification)、及び第1のカラム工程を伴う。 菌体を、溶菌用緩衝液(25mMトリス、pH 7.5、150mM NaCl、1%ツイーン80、2mM EDTA)中に1:1に希釈する。 冷却したマイクロフルイダイザー中に、15,000〜20,000psiにて材料を3回通すことにより溶菌を実施し、その結果99%を越える細胞の破壊を惹き起こさせる。 溶菌物は、希釈用緩衝液(25mM トリス、pH 8.5、1mM EDTA)中に1:20に希釈し、次いで、Q-セファロースビッグビーズクロマトグラフィーメディア(ファルマシア社)を詰めて25mMトリス、pH 8.5、1mM EDTA、0.015%ツイーン80で平衡化したカラムに付す。 溶出液を、25mM MES、pH 5.5、1.2M 硫酸アンモニウム、1mM EDTA中に1:10に希釈し、次いで同じ緩衝液に平衡化したブチルセファロースクロマトグラフィーメディア(ファルマシア社)に付す。 25mM MES、pH 5.5、0.1%ツイーン80、1mM EDTA中にPAF-AH活性が溶出される。
大腸菌から酵素的に活性なPAF-AHを精製するための、本発明によって企図されるさらに別の方法は、(a)CHAPSを含有する緩衝液中で溶菌した後に可溶化PAF-AH上清を生じる、大腸菌抽出物を調製する、(b)当該上清を希釈し、約pH 8.0に平衡化された陰イオン交換カラムに付す、(c)当該陰イオン交換カラムからPAF-AH酵素を溶出する、(d)当該陰イオン交換カラムからの、調整された溶出液をブルーダイリガンドアフィニティーカラムに付す、(e)3.0Mの塩を含む緩衝液を使用して、当該ブルーダイリガンドアフィニティーカラムから溶出を行う、(f)ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーを行うために好適な緩衝液にて、ブルーダイカラムからの溶出液を希釈する、(g)緩衝液(CHAPS含有またはCHAPS不含)を使用して洗浄及び溶出を遂行する、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィーを実施する、(h)陽イオン交換クロマトグラフィーのために適切な塩濃度まで、当該ハイドロキシルアパタイトからの溶出液を希釈する、(i)希釈後の当該ハイドロキシルアパタイトからの溶出液を、およそ6.0から7.0の間の範囲のpHで、陽イオン交換カラムに付す、(j)好適な組成の緩衝液を用いて当該陽イオン交換カラムからPAF-AHを溶出する、(k)冷却下に陽イオン交換クロマトグラフィーを実施する、及び(l)PAF-AHを、CHAPSを含まないように液体または凍結状態に調製するという工程を含む。
好ましくは、前記工程(a)において溶菌用緩衝液は25mMトリス、100mM NaCl、1mM EDTA、20mM CHAPS、pH 8.0であり、工程(b)において陰イオン交換クロマトグラフィーのために、上清は、25mMトリス、1mM EDTA、10mM CHAPS、pH 8.0にて3〜4倍に希釈され、カラムは25mM トリス、1mM EDTA、50mM NaCl、10mM CHAPS、pH 8.0で平衡化されたQ-セファロースカラムであり、工程(c)において陰イオン交換カラムは、25mMトリス、1mM EDTA、350mM NaCl、10mM CHAPS、pH 8.0を使用して溶出され、工程(d)において工程(c)からの溶出液はブルーダイアフィニティーカラムに直接付され、工程(e)においてカラムは3M NaCl、10mM CHAPS、25mMトリス、pH 8.0の緩衝液で溶出され、工程(f)においてヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーのために、ブルーダイカラムからの溶出液は、10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、10mM CHAPS、pH 6.2にて希釈が行われ、工程(g)においてヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーは、10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、10mM CHAPSで平衡化されたヒドロキシルアパタイトカラムを使用して行われ、さらに溶出は、50mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、10mM CHAPS(含有または不含)、pH 7.5で行われ、工程(h)において当該ヒドロキシルアパタイトカラムの溶出液の陽イオン交換クロマトグラフィーのための希釈は、CHAPSを含有するかまたは含有しない、リン酸ナトリウムを含むおよそ6.0〜7.0の範囲のpHを有する緩衝液にて行われ、工程(i)において、10mM CHAPSを含有するかまたは含有しない50mMリン酸ナトリウム、pH 6.8でSセファロースを平衡化し、工程(j)において、0.01%ツイーン80を含有する50mMリン酸カリウム、12.5mMアスパラギン酸、125mM NaCl、pH 7.5などの好適な組成の緩衝液で溶出を行い、そして工程(k)において、陽イオン交換クロマトグラフィーは2〜8℃で行われる。 PAF-AHを安定化する、工程(l)で使用するために好適な組成の緩衝液の例には、50mMリン酸カリウム、12.5mMアスパラギン酸、125mM NaCl、pH 7.4(近似値、ツイーン80もしくはプルロニック(Pluronic)F68を添加するかもしくは添加しない)、または(少なくとも)125mM NaCl、25mMアルギニン及び0.01%ツイーン80を含有する(およそ0.1及び0.5%のプルロニックF68を含有するかもしくは含有しない)25mMリン酸カリウム緩衝液が包含される。
B.組換えPAF-AHの活性
PAFアセチルヒドロラーゼの最も顕著な特性は、基質のsn-2位に短い残基を持つ基質に対する、著しい特異性である。 この厳密な特異性により、PAFアセチルヒドロラーゼがPLA2の他の型から区別される。 かくして、組換えPAF-AHがsn-2位に長鎖脂肪酸を持つリン脂質を分解するか否かを判定するため、1-パルミトイル-2-アラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(アラキドノイルPC)の加水分解をアッセイした。 その理由は、この物質が、よく特徴付けをなされたPLA2の型に対する好ましい基質であるからである。 本来のPAF-AHを用いた以前の研究から予測されるように、組換えPAF-AHとともにインキュベートした場合、このリン脂質は加水分解を受けなかった。 追加の実験で、アラキドノイルPCを、0〜125μMの範囲の濃度で標準のPAF加水分解アッセイに入れ、それが組換えPAF-AHによるPAFの加水分解を阻害するかどうかを判定した。 PAFの濃度より5倍大きい、最も高い濃度のPAF-AHにおいてさえ、PAF加水分解は何等阻害されなかった。 かくのごとく、組換えPAF-AHは、本来の酵素と同じ基質特異性を呈し、長鎖の基質は認識しないものである。 さらに、組換えPAF-AH酵素は、sn-2脂肪酸の酸化的切断がなされていた、酸化型リン脂質(グルタロイルPC)を速やかに分解した。 本来の血漿PAF-AHは、カルシウム非依存性、及びスルフヒドリル基を修飾する化合物またはジスルフィイドを開裂せしめる化合物に対する耐性を含めた、他のホスフォリパーゼとPAF-AHとの区別がなされる種々の他の特性を有する。
PAFアセチルヒドロラーゼの最も顕著な特性は、基質のsn-2位に短い残基を持つ基質に対する、著しい特異性である。 この厳密な特異性により、PAFアセチルヒドロラーゼがPLA2の他の型から区別される。 かくして、組換えPAF-AHがsn-2位に長鎖脂肪酸を持つリン脂質を分解するか否かを判定するため、1-パルミトイル-2-アラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスフォコリン(アラキドノイルPC)の加水分解をアッセイした。 その理由は、この物質が、よく特徴付けをなされたPLA2の型に対する好ましい基質であるからである。 本来のPAF-AHを用いた以前の研究から予測されるように、組換えPAF-AHとともにインキュベートした場合、このリン脂質は加水分解を受けなかった。 追加の実験で、アラキドノイルPCを、0〜125μMの範囲の濃度で標準のPAF加水分解アッセイに入れ、それが組換えPAF-AHによるPAFの加水分解を阻害するかどうかを判定した。 PAFの濃度より5倍大きい、最も高い濃度のPAF-AHにおいてさえ、PAF加水分解は何等阻害されなかった。 かくのごとく、組換えPAF-AHは、本来の酵素と同じ基質特異性を呈し、長鎖の基質は認識しないものである。 さらに、組換えPAF-AH酵素は、sn-2脂肪酸の酸化的切断がなされていた、酸化型リン脂質(グルタロイルPC)を速やかに分解した。 本来の血漿PAF-AHは、カルシウム非依存性、及びスルフヒドリル基を修飾する化合物またはジスルフィイドを開裂せしめる化合物に対する耐性を含めた、他のホスフォリパーゼとPAF-AHとの区別がなされる種々の他の特性を有する。
本来の及び組換え血漿PAF-AH酵素のいずれも、DFPに対して感受性を有し、このことによりそれらの活性部位の一部がセリンを含んでなることが示唆される。 本来の血漿PAFアセチルヒドロラーゼの希有の特徴は、それが循環しているリポタンパク質と強固に会合しており、そしてその触媒活性がリポタンパク質との環境により影響を受けることである。 本発明の組換えPAF-AHをヒト血漿(内在性酵素活性を除くためにDFPで前処理したもの)とともにインキュベートすると、本来の活性体と同様に低密度及び高密度リポタンパク質と会合した。 低密度リポタンパク質の修飾は、粥腫において観察されるコレステロールの沈着に必須であること、及び脂質の酸化がこの過程における初発因子であることの実質的な証拠があるので、この結果は重要である。 PAF-AHは、in vitroで酸化条件下に低密度リポタンパク質を修飾から保護し、そしてそのような役割をin vivoで果たしているかもしれない。 したがって、炎症を消散させるためのみならず、アテローム性動脈硬化プラーク(atherosclerotic plaque)におけるリポタンパク質の酸化の抑制にも、PAF-AHの投与が指示される。
これらの結果はすべて、cDNAクローンsAH 406-3がヒト血漿PAFアセチルヒドロラーゼの活性を有するタンパク質をコードしていることを確証するものである。
実施例10
他の種々の組換えPAF-AH産物を、大腸菌内で発現させた。 それらの産物には、単一のアミノ酸変異を有するPAF-AH誘導体及びPAF-AH断片が含まれる。
他の種々の組換えPAF-AH産物を、大腸菌内で発現させた。 それらの産物には、単一のアミノ酸変異を有するPAF-AH誘導体及びPAF-AH断片が含まれる。
A.PAF-AHアミノ酸置換産物
PAF-AHは、リン脂質であるPAFを加水分解するので、リパーゼである。 PAF-AHと他の特徴付けがなされたリパーゼの間に明らかな総体的類似性は存在しない一方で、構造的に特徴付けがなされたリパーゼの比較において見出される保存された残基がある。 1つのセリンが、活性部位のメンバーとして同定されている。 そのセリンはアスパラギン酸残基及びヒスチジン残基とともに、そのリパーゼの活性部位を呈する触媒活性3残基群を形成する。 3つの残基は、一次タンパク質配列においては近接していないが、構造的研究により、三次元空間においてはその3つの残基が近接していることが証明されている。 哺乳動物リパーゼの構造の比較によれば、Asp残基が通常、活性部位のセリンに対して24アミノ酸だけC-末端側にあることが示唆されている。 加えて、ヒスチジンは、通常、活性部位のセリンに対し、109〜111アミノ酸だけC-末端側にある。
PAF-AHは、リン脂質であるPAFを加水分解するので、リパーゼである。 PAF-AHと他の特徴付けがなされたリパーゼの間に明らかな総体的類似性は存在しない一方で、構造的に特徴付けがなされたリパーゼの比較において見出される保存された残基がある。 1つのセリンが、活性部位のメンバーとして同定されている。 そのセリンはアスパラギン酸残基及びヒスチジン残基とともに、そのリパーゼの活性部位を呈する触媒活性3残基群を形成する。 3つの残基は、一次タンパク質配列においては近接していないが、構造的研究により、三次元空間においてはその3つの残基が近接していることが証明されている。 哺乳動物リパーゼの構造の比較によれば、Asp残基が通常、活性部位のセリンに対して24アミノ酸だけC-末端側にあることが示唆されている。 加えて、ヒスチジンは、通常、活性部位のセリンに対し、109〜111アミノ酸だけC-末端側にある。
部位特異的突然変異及びPCRによって、ヒトPAF-AHコード配列の個々のコドンを、アラニン残基をコードするように変えて、大腸菌で発現させた。 以下の表8に示すように、ここで例えば「S108A」の略語は108位のセリン残基がアラニンに変えられていることを示すのであるが、Ser273、Asp296、またはHis351の点突然変異により完全にPAF-AH活性が損なわれる。 活性部位残基間の距離は、PAF-AH(SerからAspは23アミノ酸、SerからHisは78アミノ酸)と他のリパーゼについては類似している。 これらの実験により、Ser273、Asp296、及びHis351が、活性に対して重要な残基であり、それゆえに触媒活性3残基群の残基の候補となりそうそうであることが立証される。 システインは、ジスルフィド結合を形成することができるので、タンパク質の機能的な完全性にしばしば重要である。 血漿PAF-AH酵素は5つのシステインを含んでいる。 5つのうちのいずれかが酵素活性に重要であるかを判定するために、各システインを個々にセリンに突然変異せしめ、その結果得られた突然変異体を大腸菌内で発現させた。 組換え法によって生産されたこれらの変異体の部分精製された調製物を使用した予備的な活性の結果を、以下の表8の第2カラムに示し、また、さらに精製された調製物を使用した結果を以下の表8の第3カラムに示す。 かかるデータにより、システイン変異体のすべてが概して同等の活性を有しており、従って、いずれのシステインもPAF-AH活性のために必要ではないらしいことが示される。 他の点突然変異もまた、PAF-AH触媒活性に殆ど、またはまったく効果を有しなかった。 表8において、「++++」は、約40〜60U/ml/OD600の、野生型PAF-AH活性を表し、「+++」は、約20〜40U/ml/OD600活性を表し、「++」は、約10〜20U/ml/OD600活性を表し、「+」は、1〜10U/ml/OD600活性を表し、そして「-」は、<1U/ml/OD600活性を示す。
種々の時間にわたりエキソヌクレアーゼIIIを用いてPAF-AHコード配列の3'端を消化し、その後、すべての3つの読み取り枠における終止コドンをコードするプラスミドDNAに、短くしたコード配列を連結することにより、C-末端側欠失体を調製した。 10の異なる欠失体構築体を、DNA配列分析、タンパク質発現、及びPAF-AH活性により特徴付けした。 21〜23のC-末端アミノ酸を除去すると、触媒活性が大幅に低減し、52残基を除去すると完全に活性が損なわれた。 図3を参照されたい。
PAF-AHのアミノ末端領域でも同様の欠失を行った。N-末端側に大腸菌チオレドキシンを付加したPAF-AHとの融合体を調製して、一貫して高レベルにPAF-AH活性体を発現させることを容易ならしめた(ラ・バリー(LaVallie)ら、Bio/technology、11巻、187〜193頁、(1993))。 自然にプロセッシングを受けたN-末端(Ile42)から19アミノ酸を除去すると、99%まで活性は減少し、一方26アミノ酸を除去すると、融合タンパク質における酵素活性は完全に損なわれた。 図3を参照されたい。 12アミノ酸の欠失は、酵素活性を約4倍増強させるようであった。
実施例1に記載したと同様の方法(Cuカラムの代わりに、アミコン(Amicon)社のミクロコン(Microcon)30フィルターを利用して、ブルーセファロースからの溶出液を濃縮した)による新鮮なヒト血漿からのPAF-AHの次なる精製物に、Ile42に加えて2つのN-末端、Ser35及びLys55が同定された。 かかる異種性は、血漿における酵素の本来の状態かもしれないし、または精製の際に生じたのかもしれない。
精製された前記物質を、グリコシル化についての分析にも付した。 精製された天然型のPAF-AHを、糖タンパク質からN-に結合した炭化水素を除去する酵素であるN-グリカナーゼの存在下または非存在下にインキュベートした。 処理されたPAF-AH試料は、12%SDSポリアクリルアミドゲルにて電気泳動され、次いで、ウサギポリクローナル抗血清を使用してウェスタンブロッティングによって可視化した。 N-グリカナーゼで処理されなかったタンパク質は45〜50kDaの拡散したバンドとして移動し、一方グリカナーゼで処理されたタンパク質は約44kDaの明瞭なバンドとして移動し、天然型のPAF-AHがグリコシル化されていることが立証された。
N-末端の異種性は、組換えPAF-AH(Ile42のN-末端)の精製された調製物でも観察された。 これらの調製物は、Ala47、Ile42、またはIle42に隣接する人工的な開始点Met-1で開始するN-末端を有するポリペプチドの混合物であった。
1.PAF-AH断片とPAF-AHとの予備的比較
組換え法によって製造されたPAF-AHの異種性が観察されたことに鑑みて、他の組換え産物を調製し、そして組換え発現及び精製の後に相同性について調べた。 大腸菌株MC1061でのpBAR2/PH.2及びpBAR2/PH.9の組換え発現産物の組成を、培養の増殖期の際の異なる時点で分析した。 タンパク質発現を誘導した後の5から22時間のうちの時点で集めた組換えpH.2及びPH.9の部分精製試料を、マトリックスアシスト型レーザー脱着イオン化質量分析計(MALDI-MS)によって分析した。
組換え法によって製造されたPAF-AHの異種性が観察されたことに鑑みて、他の組換え産物を調製し、そして組換え発現及び精製の後に相同性について調べた。 大腸菌株MC1061でのpBAR2/PH.2及びpBAR2/PH.9の組換え発現産物の組成を、培養の増殖期の際の異なる時点で分析した。 タンパク質発現を誘導した後の5から22時間のうちの時点で集めた組換えpH.2及びPH.9の部分精製試料を、マトリックスアシスト型レーザー脱着イオン化質量分析計(MALDI-MS)によって分析した。
PH.2発現ベクターが利用された場合、部分精製されたタンパク質のスペクトルで、rPAF-AHタンパク質に対して予測される質量値に2つのピークが観察された。 すべての時点で2つのピークが観察されたが、培養において培地中のアセテートの蓄積及び/または酸素の枯渇として示唆されるストレスがかけられた場合に、より高い異種性が観察された。 この質量領域におけるMALDI-MS技術の精度は、およそ±0.3%(約1アミノ酸の質量に該当)であった。 観察された高い方の質量ピークは、PH.2ベクターに対して予測される全長の翻訳産物から翻訳後に除去されることが予測される翻訳開始のメチオニンを引いたものの存在位置に一致していた。 低い方の質量ピークは、およそ1200原子質量単位低かった。
PH.9発現ベクターが利用された場合には、rPAF-AHタンパク質に対して予測される質量値に部分精製されたタンパク質のスペクトルの単一ピークが主として存在していた。 この単一ピークはすべての時点において観察され、相違する時点で異種性が増大することはなかった。 このタンパク質の観察された質量は、PH.9ベクターに対して予測される全長の翻訳産物から開始のメチオニンを引いたものの存在位置に一致していた。
2.PAF-AH断片の精製
組換え法によって発現されたrPH.2(Met46〜Asn441をコードするDNAの発現産物)及びrPH.9(Met46〜Ile429をコードするDNAの発現産物)調製物を、精製されたrPAF-AH(Ile42〜Asn441をコードするDNAの発現産物)とさらに比較するために精製した。 rPH.9は、大腸菌株SB7219から生産し、そして前記した亜鉛キレート精製法に概ね従って精製し、一方rPH.2は大腸菌株MC1061によって生産し、下記の通りに精製した。 形質転換された菌体は、溶菌用緩衝液(100mMスクシネート、100mM NaCl、20mM CHAPS、pH6.0)を用いて菌のペーストを希釈することによって溶菌した。 スラリーを混合し、高圧破砕によって溶菌した。溶菌された菌体は、遠心分離し、rPH.2を含むその上清を保存した。 清澄化された上清を、1mM EDTA、10mM CHAPSを含有する25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0にて5倍に希釈した。 希釈された上清は、次いでQセファロースカラムに付した。 カラムは、カラム容量の3倍量の1mM EDTA、50mM NaCl、10mM CHAPSを含有する25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0で洗浄し(洗浄1)、次いで、カラム容量の10倍量の1mM EDTA、10mM CHAPSを含有する25mMトリス緩衝液、pH 8.0で洗浄し(洗浄2)、そしてカラム容量の10倍量の1mM EDTA、100mM NaCl、10mM CHAPSを含有する25mMトリス緩衝液、pH 8.0で洗浄した(洗浄3)。溶出は、1mM EDTA、350mM NaCl、10mM CHAPSを含有する25mMトリス緩衝液、pH 8.0を用いて行った。 Qセファロースの溶出液は、25mMトリス、1mM EDTA、10mM CHAPS、pH 8.0にて3倍に希釈し、次にブルーセファロースカラムに付した。 カラムは先ず、カラム容量の10倍量の25mMトリス、1mM EDTA、10mM CHAPS、pH 8.0で洗浄した。 次いでカラムは、カラム容量の3倍量の25mMトリス、0.5M NaCl、10mM CHAPS、pH 8.0で洗浄した。 溶出は、25mMトリス、3.0M NaCl、10mM CHAPS、pH 8.0を用いて行った。 ブルーセファロースの溶出液は、10mMリン酸ナトリウム、10mM CHAPS、pH 6.2で5倍に希釈し、次いでクロマトグラフィーカラムに付した。 カラムは、カラム容量の10倍量の10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、0.1%プルロニックF68、pH 6.2で洗浄した。 120mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、0.1%プルロニックF-68、pH 7.5を用いてrPH.2を溶出した。 ヒドロキシルアパタイトの溶出液は、10mMリン酸ナトリウム、0.1%プルロニックF68、pH 6.8にて6倍に希釈した。 希釈されたヒドロキシルアパタイトの溶出液は、0.5Nのコハク酸を使用してpH 6.8に調整し、次いでSPセファロースカラムに付した。 SPセファロースカラムは、カラム容量の10倍量の50mMリン酸ナトリウム、0.1%プルロニックF68、pH 6.8で洗浄し、次いで50mMリン酸ナトリウム、125mM NaCl、0.1%プルロニックF68、pH 7.5で溶出した。 溶出されたrPH.2は、50mMリン酸ナトリウム、125mM NaCl、0.15%プルロニックF68、pH 7.5にて4mg/mlの最終濃度に希釈することによって調製し、0.02%ツイーン80の最終濃度となるようにツイーン80を添加した。 調製された産物は、0.2μの膜を通して濾過し、使用するまで保存した。
組換え法によって発現されたrPH.2(Met46〜Asn441をコードするDNAの発現産物)及びrPH.9(Met46〜Ile429をコードするDNAの発現産物)調製物を、精製されたrPAF-AH(Ile42〜Asn441をコードするDNAの発現産物)とさらに比較するために精製した。 rPH.9は、大腸菌株SB7219から生産し、そして前記した亜鉛キレート精製法に概ね従って精製し、一方rPH.2は大腸菌株MC1061によって生産し、下記の通りに精製した。 形質転換された菌体は、溶菌用緩衝液(100mMスクシネート、100mM NaCl、20mM CHAPS、pH6.0)を用いて菌のペーストを希釈することによって溶菌した。 スラリーを混合し、高圧破砕によって溶菌した。溶菌された菌体は、遠心分離し、rPH.2を含むその上清を保存した。 清澄化された上清を、1mM EDTA、10mM CHAPSを含有する25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0にて5倍に希釈した。 希釈された上清は、次いでQセファロースカラムに付した。 カラムは、カラム容量の3倍量の1mM EDTA、50mM NaCl、10mM CHAPSを含有する25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.0で洗浄し(洗浄1)、次いで、カラム容量の10倍量の1mM EDTA、10mM CHAPSを含有する25mMトリス緩衝液、pH 8.0で洗浄し(洗浄2)、そしてカラム容量の10倍量の1mM EDTA、100mM NaCl、10mM CHAPSを含有する25mMトリス緩衝液、pH 8.0で洗浄した(洗浄3)。溶出は、1mM EDTA、350mM NaCl、10mM CHAPSを含有する25mMトリス緩衝液、pH 8.0を用いて行った。 Qセファロースの溶出液は、25mMトリス、1mM EDTA、10mM CHAPS、pH 8.0にて3倍に希釈し、次にブルーセファロースカラムに付した。 カラムは先ず、カラム容量の10倍量の25mMトリス、1mM EDTA、10mM CHAPS、pH 8.0で洗浄した。 次いでカラムは、カラム容量の3倍量の25mMトリス、0.5M NaCl、10mM CHAPS、pH 8.0で洗浄した。 溶出は、25mMトリス、3.0M NaCl、10mM CHAPS、pH 8.0を用いて行った。 ブルーセファロースの溶出液は、10mMリン酸ナトリウム、10mM CHAPS、pH 6.2で5倍に希釈し、次いでクロマトグラフィーカラムに付した。 カラムは、カラム容量の10倍量の10mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、0.1%プルロニックF68、pH 6.2で洗浄した。 120mMリン酸ナトリウム、100mM NaCl、0.1%プルロニックF-68、pH 7.5を用いてrPH.2を溶出した。 ヒドロキシルアパタイトの溶出液は、10mMリン酸ナトリウム、0.1%プルロニックF68、pH 6.8にて6倍に希釈した。 希釈されたヒドロキシルアパタイトの溶出液は、0.5Nのコハク酸を使用してpH 6.8に調整し、次いでSPセファロースカラムに付した。 SPセファロースカラムは、カラム容量の10倍量の50mMリン酸ナトリウム、0.1%プルロニックF68、pH 6.8で洗浄し、次いで50mMリン酸ナトリウム、125mM NaCl、0.1%プルロニックF68、pH 7.5で溶出した。 溶出されたrPH.2は、50mMリン酸ナトリウム、125mM NaCl、0.15%プルロニックF68、pH 7.5にて4mg/mlの最終濃度に希釈することによって調製し、0.02%ツイーン80の最終濃度となるようにツイーン80を添加した。 調製された産物は、0.2μの膜を通して濾過し、使用するまで保存した。
3.配列決定によるPAF-AH断片とPAF-AHの比較
精製されたrPH.2及びrPH.9の調製物は、アプライドバイオシステムズモデル473Aプロテインシーケンサー(アプライドバイオシステムズ社、フォスターシティー、カリホルニア州)を使用したN-末端配列決定及びヒューレットパッカード(Hewlett-Packard)モデルG1009A C-末端プロテインシーケンサーを用いたC-末端配列決定によって、精製されたrPAF-AH調製物と比較した。 rPH.2調製物は、rPAF-AHに比べてN-末端の異種性が小さかった。 rPH.9調製物のN-末端分析は、rPH.2の場合に類似していたが、rPH.9についてはrPH.2よりも少ないC-末端の異種性(heterogeneity)が観察された。
精製されたrPH.2及びrPH.9の調製物は、アプライドバイオシステムズモデル473Aプロテインシーケンサー(アプライドバイオシステムズ社、フォスターシティー、カリホルニア州)を使用したN-末端配列決定及びヒューレットパッカード(Hewlett-Packard)モデルG1009A C-末端プロテインシーケンサーを用いたC-末端配列決定によって、精製されたrPAF-AH調製物と比較した。 rPH.2調製物は、rPAF-AHに比べてN-末端の異種性が小さかった。 rPH.9調製物のN-末端分析は、rPH.2の場合に類似していたが、rPH.9についてはrPH.2よりも少ないC-末端の異種性(heterogeneity)が観察された。
精製されたrPH.2調製物は、Ala47のN-末端を有する主配列(約86〜89%)とAla48のN-末端を有する少数配列(約11〜14%)を含んでおり、この2つのN-末端の割合は異なる培養条件下でもかなり一致したものであった。 精製されたrPH.9調製物も、Ala47のN-末端を有する主配列(約83〜90%)とAla48のN-末端を有する少数配列(約10〜17%)を含んでいた。 これに対し、Ile42で開始するポリペプチド(rPAF-AH)を細菌において製造する試みを行った結果、Ala47(20〜53%)、Ile42(8〜10%)にて、またはIle42に隣接する人工的な開始のMet-1メチオニン(37〜72%)をN-末端として有するポリペプチドの様々な混合物が得られた。 rPH.2及びrPH.9については、ポリペプチドを細菌が合成した後、N-末端残基として第47位のアラニン(または第48位のアラニン)を残して、開始のメチオニンがアミノ末端ペプチダーゼによって効率よく除去される。
C-末端配列決定は、1つのロットのrPH.2について行われ、これは主配列(約80%)としてHOOC-Asn-TyrのC-末端を有することが観察され(翻訳産物の予測配列であるHOOC-Asn441-Tyr440のC-末端に一致)、一方約20%はHOOC-Leuであった。 rPH.2調製物をSDS-PAGEによって分画した後、第一及び第二のバンドのさらなる配列決定から、分子量の小さい方の第二バンド(AHL、B.5節に後記)から、全長の翻訳産物よりも10アミノ酸短い産物に一致するHOOC-Leu-MetのC-末端配列が得られ、また、低レベルのHOOC-Hisが得られた。 さらにペプチドマッピングを行って、他のC-末端をもつものがPH.2タンパク質のあるロットに存在することが示されている。 rPH.9のC-末端は、直接配列決定によれば主としてHOOC-Ile-His(ロットに依存して、約78〜91%)であり、これは翻訳産物の予測されるC-末端配列であるHOOC-Ile429-His428に一致していた。 この技術には、ある程度のバックグラウンド(「ノイズ」)があるらしく、従って、他の低レベルの配列を除外することはできなかった。
4.MALDI-MSによるPAF-AH断片とPAF-AHの比較
精製されたrPH.2及びrPH.9調製物についてのMALDI-MSを実施した。 rPH.2のスペクトルは、前記のB.1.節において部分精製されたタンパク質について観察されたものと類似した、rPAF-AH産物に対して予測される質量値(図4参照)にスペクトルの2つのピークを呈した。 第二の、低分子量のピークは、典型的には、総計のおよそ20〜30%存在していた。 rPH.9スペクトルは、PH.9ベクターに対する全長の翻訳産物から翻訳開始のメチオニンを引いたものに対する予測値と一致する質量に、主たるピークを示した(図5参照)。 rPH.9に対して、小さな、わずかに低分子量のショルダーピークも観察され、これは総計のおよそ5%に該当していた。
精製されたrPH.2及びrPH.9調製物についてのMALDI-MSを実施した。 rPH.2のスペクトルは、前記のB.1.節において部分精製されたタンパク質について観察されたものと類似した、rPAF-AH産物に対して予測される質量値(図4参照)にスペクトルの2つのピークを呈した。 第二の、低分子量のピークは、典型的には、総計のおよそ20〜30%存在していた。 rPH.9スペクトルは、PH.9ベクターに対する全長の翻訳産物から翻訳開始のメチオニンを引いたものに対する予測値と一致する質量に、主たるピークを示した(図5参照)。 rPH.9に対して、小さな、わずかに低分子量のショルダーピークも観察され、これは総計のおよそ5%に該当していた。
5.SDS-PAGEによるPAF-AH断片とPAF-AHの比較
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を、精製されたrPAF-AH、rPH.2及びrPH.9の調製物について実施した。 タンパク質分子量マーカーの標準に基づき、rPAF-AH産物に対して予測された電気泳動上の移動範囲近傍で、rPH.2については複雑なバンドの形成パターンが観察された。 1つ、またはいくつかのゲルにおいては2つの主たるバンドが認められ、その主バンドの上方及び下方に容易に観察される第2のバンドを伴っていた。 これらの、上方第2、中央第1、及び下方第2のバンドを、それぞれAHU、AHM及びAHLと称した。 これらのバンドはすべて、ウェスタンブロットにて抗rPAF-AHモノクローナル抗体と反応することで、rPAF-AH関連産物として同定されている。 上方第2バンドAHUは、タンパク質の保存期間を通して強度が増強されており、おそらくはrPAF-AH産物の修飾された分子種に該当するものである。 rPAF-AH調製物のSDS-PAGEは、rPH.2の場合に類似している。 rPAF-AHに対して予測される分子量の近くに移動する2つの主バンドと、さらにその主バンドの上方のマイナーバンドと下方の陰影(うすい)バンドがある。 これに対して、rPH.9では、SDS-PAGE上に主たる単一ピークを呈し、明瞭な分割はなかった。 わずかに低分子量の位置と、ダイマーと予測される位置にも、かすかなバンドが認められた。 AHU様のバンドは観察されなかった。
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を、精製されたrPAF-AH、rPH.2及びrPH.9の調製物について実施した。 タンパク質分子量マーカーの標準に基づき、rPAF-AH産物に対して予測された電気泳動上の移動範囲近傍で、rPH.2については複雑なバンドの形成パターンが観察された。 1つ、またはいくつかのゲルにおいては2つの主たるバンドが認められ、その主バンドの上方及び下方に容易に観察される第2のバンドを伴っていた。 これらの、上方第2、中央第1、及び下方第2のバンドを、それぞれAHU、AHM及びAHLと称した。 これらのバンドはすべて、ウェスタンブロットにて抗rPAF-AHモノクローナル抗体と反応することで、rPAF-AH関連産物として同定されている。 上方第2バンドAHUは、タンパク質の保存期間を通して強度が増強されており、おそらくはrPAF-AH産物の修飾された分子種に該当するものである。 rPAF-AH調製物のSDS-PAGEは、rPH.2の場合に類似している。 rPAF-AHに対して予測される分子量の近くに移動する2つの主バンドと、さらにその主バンドの上方のマイナーバンドと下方の陰影(うすい)バンドがある。 これに対して、rPH.9では、SDS-PAGE上に主たる単一ピークを呈し、明瞭な分割はなかった。 わずかに低分子量の位置と、ダイマーと予測される位置にも、かすかなバンドが認められた。 AHU様のバンドは観察されなかった。
精製されたrPH.2及びrPH.9調製物の組成は、2Dゲル(尿素存在下の等電点電気泳動(IEF)と、それに続く第2次元のSDS-PAGE)でも分析した。 rPH.9については、2DゲルでIEF方向に分離される5つの主要スポットが示された。 電荷の異種性は、rPH.9のロット間で一致しているようであった。 これとは対照的に、rPH.2の2Dゲルのパターンは、IEF及びSDS-PAGE方向に分離するおよそ15のスポットを含んでいたので、より複雑であった。
6.PAF-AH断片とPAF-AHの活性の比較
精製されたrPH.2及びrPH.9は、血清から精製された内在性のPAF-AHの酵素活性と識別できない程度の酵素活性を有しており、また、rPH.2及びrPH.9は、精製された内在性のPAF-AHと同様に、リポタンパク質と結合する。
精製されたrPH.2及びrPH.9は、血清から精製された内在性のPAF-AHの酵素活性と識別できない程度の酵素活性を有しており、また、rPH.2及びrPH.9は、精製された内在性のPAF-AHと同様に、リポタンパク質と結合する。
実施例11
ヒト組織におけるヒト血漿PAF-AH mRNAの発現パターンの予備分析を、ノザンブロットハイブリダイゼーションによって行った。
ヒト組織におけるヒト血漿PAF-AH mRNAの発現パターンの予備分析を、ノザンブロットハイブリダイゼーションによって行った。
RNAは、RNA スタット(Stat)60(テル−テスト(Tel-Test)"B"、フレンズウッド(Friendswood)、テキサス州)を用いて、ヒト大脳皮質、心臓、腎臓、胎盤、胸腺及び扁桃腺から調製した。 加えて、ホルボールエステルである、ホルボールミリスチルアセテート(PMA)を用いてマクロファージ様表現型に分化誘導した、ヒト造血前駆体様細胞系、THP-1(ATCC TIB 202)からRNAを調製した。 組織のRNAならびに、誘導前及び誘導後1〜3日の、前骨髄球細胞THP-1細胞系から調製したRNAは、1.2%アガロースホルムアルデヒドゲルで電気泳動を行い、引き続き、ニトロセルロース膜に転写した。 全長のヒト血漿PAF-AH cDNAであるsAH 406-3は、ランダムプライミングによりラベルを行い、ライブラリースクリーニングについて実施例3に記載したと同様の条件下で膜にハイブリダイズさせた。 初期の結果では胸腺、扁桃腺、及びより低い度合いで胎盤のRNA中の1.8 kbのバンドに、PAF-AHプローブがハイブリダイズすることが示唆された。
PAFは、正常な生理学的条件のみならず、病理学的条件下でも脳において合成されている。 この分子の既知の前炎症性及び潜在的神経毒性の特性を考慮すれば、PAF合成の局在またはその迅速な代謝に関する機構は、神経組織の健康にとって重大であることが予測されよう。 神経組織におけるPAFアセチルヒドロラーゼの存在が、それに符合して、かような保護的役割を果たしているのである。 興味深いことに、ウシのヘテロ三量体細胞内PAF-AH(このクローニングは、ハットリら、J. Biol. Chem.、269巻、37号、23150〜23155頁、(1994)に記載)及び本発明のPAF-AHは双方とも、脳において同定されている。 その2つの酵素が脳の同様の領域または相違する領域にて発現されているのかを確定するために、ウシ脳の細胞内PAF-AH cDNAのヒト相同体をクローニングし、そして脳におけるそのmRNAの発現パターンを、本発明のPAF-AHのmRNA発現パターンと、前の段落に記載したと本質的に同様の方法によりノザンブロッティングで比較した。 ノザンブロッティングによって調べた脳の領域は、小脳、髄、脊髄、被殻、扁桃体、尾状核、視床、ならびに大脳皮質の後頭極、前頭葉及び側頭葉であった。 双方の酵素のメッセージ(mRNA)は、これらの組織各々に検出されたが、ヘテロ三量体の細胞内型は、分泌型よりもはるかに大量に現れていた。 さらなる組織のノザンブロット分析によって、ヘテロ三量体の細胞内型は、胸腺、前立腺、精巣、卵巣、小腸、結腸、末梢血白血球、マクロファージ、脳、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓及び副腎を包含する、多岐にわたる組織及び細胞に発現されていることがさらに明らかになった。 このように至る所で発現していることは、ヘテロ三量体の細胞内PAF-AHが、普遍的な細胞内ハウスキーピング機能を有していることを示している。
ヒト血液から単離した単球におけるPAF-AH RNAの発現、及び培養中にそれらがマクロファージへと自発的に分化する間のPAF-AH RNAの発現も調べた。 新鮮な単球では殆ど、または全くRNAが検出されなかったが、マクロファージへと分化する間に発現が誘導され、そして維持された。 分化している細胞の培養培地においてPAF-AH活性の相伴う(concomitant)蓄積があった。 ヒト血漿PAF-AH転写物の発現は、1日目にTHP-1細胞RNAでも観察されたが、誘導後3日目には観察されなかった。 THP-1細胞は、基底状態ではPAF-AHに対するmRNAを発現していなかった。
実施例12
in situハイブリダイゼーションによって、ヒト及びマウス組織中のPAF-AHの発現を調べた。
in situハイブリダイゼーションによって、ヒト及びマウス組織中のPAF-AHの発現を調べた。
ヒトの組織は、National Disease Research Interchange及びthe Cooperative Human Tissue Networkから得た。 正常マウス脳及び脊髄、ならびにEAEステージ3マウスの脊髄は、S/JLJマウスから採取した。 正常S/JLJマウスの胎児は、受胎後11〜18日目に採取した。
組織切片を、少量のOCT化合物(マイルス社(Miles, Inc.,)、エルクハート(Elkhart)、インディアナ州)とともに、ティッシュ・テク(Tissue Tek)IIクリオモールド(cryomold)(マイルスラボラトリーズ社(Miles Laboratories, Inc.,)、ナパービル(Naperville)、イリノイ州)内に置いた。 それらはクリオモールド内の中心に置き、クリオモールドにOCT化合物を満たし、その後、2-メチルブタン(C2H5CH(CH3)2、アルドリッチケミカルカンパニー社(AldrichChemical Company, Inc.,)、ミルウォーキー、ウィスコンシン州)入りの容器に入れて、そして容器は液体チッ素中に入れた。 クリオモールド内の組織及びOCT化合物が一旦凍結すると、切断するまで-80℃にてそのブロックを保存しておいた。 組織ブロックを6μmの厚さに切断し、ベクタボンド(Vectabond)(ベクターラボラトリーズ社(Vector Laborator-ies, Inc.,)、バーミンガム、カリフォルニア州)を被覆したスライドに固着させ、-70℃にて保存し、そしてそれらを暖めて且つ凝結(condensation)を除去するためにおよそ5分間50℃に置いて、その後、4℃にて20分間4%パラホルムアルデヒド中で固定して、70%、95%、100%エタノールで各等級につき1分間づつ4℃にて脱水して、次いで室温で30分間風乾させた。 70%ホルムアミド/2×SSC中で70℃にて2分間切片を変性させ、2×SSCで2度すすぎ、脱水した後、30分間風乾した。 in vitro RNA転写35S-UTP取り込み(アマーシャム社)によって、PAF-AH遺伝子の内部の1KbのHindIII断片(配列番号:7のヌクレオチド308〜1323)由来のDNAから、またはハットリらによって同定されたヘテロ三量体細胞内PAF-AH cDNA由来のDNAから作製された、放射能で標識した単鎖のmRNAを用いて、組織をin situでハイブリダイズさせた。 プローブは250〜500bpの種々に異なる長さのものを用いた。 ハイブリダイゼーションは、50℃にて一晩(12〜16時間)、35S-標識リボプローブ(6×105cpm/切片)、tRNA(0.5μg/切片)及びジエチルピロカーボネート(depc)処理した水を、ハイブリダイゼーション用緩衝液に加え、50%ホルムアミド、0.3M NaCl、20mM トリス、pH 7.5、10%デキストラン硫酸、1×デンハーツ(Denhardt's)溶液、100mMジチオスレトール(DTT)及び5mM EDTAという最終濃度となるようにした。 ハイブリダイゼーションの後、4×SSC/10mM DTTで室温にて1時間、その後、50%ホルムアミド/1×SSC/10mM DTTで60℃にて40分間、2×SSCで室温にて30分、さらに0.1×SSCで室温にて30分、切片を洗浄した。 切片を脱水し、2時間風乾してコダックNTB2写真用乳濁液で被覆し、2時間風乾して現像(完全な暗所で4℃にて保管した後)して、ヘマトキシリン/エオシンで対比染色した。
A.脳
小脳。 マウス及びヒトのいずれの脳においても、小脳のプルキニエ細胞層内、籠細胞内、ならびに歯状核(小脳内の4つの深核(deep nuclei)の1つ)内の個々の神経細胞体上に、強いシグナルが見られた。 ヘテロ三量体細胞内PAF-AHに対するメッセージ(mRNA)もまた、これらの細胞型に観察された。 加えて、顆粒球内の個々の細胞及び灰白質の分子層内に血漿PAF-AHのシグナルが見られた。
小脳。 マウス及びヒトのいずれの脳においても、小脳のプルキニエ細胞層内、籠細胞内、ならびに歯状核(小脳内の4つの深核(deep nuclei)の1つ)内の個々の神経細胞体上に、強いシグナルが見られた。 ヘテロ三量体細胞内PAF-AHに対するメッセージ(mRNA)もまた、これらの細胞型に観察された。 加えて、顆粒球内の個々の細胞及び灰白質の分子層内に血漿PAF-AHのシグナルが見られた。
海馬。 ヒト海馬切片では、神経細胞体らしき、切片全体にわたる個々の細胞が強いシグナルを示した。 これらは、多形細胞体及び顆粒細胞として同定された。 ヘテロ三量体細胞内PAF-AHに対するメッセージ(mRNA)も、海馬に観察された。
脳幹。 ヒト及びマウス双方の脳幹切片上には、灰白質内の個々の細胞に強いシグナルが認められた。
皮質。 (大)脳、後頭、及び側頭皮質から採取したヒト皮質切片上、ならびにマウス全脳切片上において、皮質全体の個々の細胞が、強いシグナルを示した。 これらの細胞は、錐体細胞、星細胞及び多形細胞体として同定された。 皮質の異なる層における発現パターンに、差異はないように思われた。 これらのin situハイブリダイゼーションの結果は、ノザンブロッティングによって得られる(大)脳皮質に対する結果とは異なっている。 ノザンブロッティングの感度に比べてin situハイブリダイゼーションの感度の方がより高いことからこの差異が生じるようである。 小脳及び海馬におけると同様、ヘテロ三量体細胞内PAF-AHの類似の発現パターンが観察された。
脳下垂体。 ヒト組織切片の下垂体前葉内の個々の分散細胞上に、幾分弱いシグナルが見られた。
B.ヒト結腸
健常及びクローン病の結腸のいずれも、切片の粘膜内に存在するリンパ凝集体(lymphatic aggregation)内にシグナルを呈し、シグナルのレベルはクローン病患者からの切片の方がわずかに高かった。 クローン病患者の結腸では、固有層にも強いシグナルが見られた。 同様に、クローン病患者の虫垂切片において高レベルのシグナルが観察され、一方健常人の虫垂ではより低いものの検出可能なシグナルを呈した。 潰瘍性大腸炎患者からの切片は、リンパ凝集体にも、固有層にも明らかなシグナルを示さなかった。
健常及びクローン病の結腸のいずれも、切片の粘膜内に存在するリンパ凝集体(lymphatic aggregation)内にシグナルを呈し、シグナルのレベルはクローン病患者からの切片の方がわずかに高かった。 クローン病患者の結腸では、固有層にも強いシグナルが見られた。 同様に、クローン病患者の虫垂切片において高レベルのシグナルが観察され、一方健常人の虫垂ではより低いものの検出可能なシグナルを呈した。 潰瘍性大腸炎患者からの切片は、リンパ凝集体にも、固有層にも明らかなシグナルを示さなかった。
C.ヒト扁桃腺及び胸腺
扁桃腺の胚中心の中及び胸腺の中の個々の細胞の分散された群に、強いシグナルか見られた。
扁桃腺の胚中心の中及び胸腺の中の個々の細胞の分散された群に、強いシグナルか見られた。
D.ヒトリンパ腺
健常な提供者から取ったリンパ腺切片上には強いシグナルが観察されたが、一方敗血病性ショックの提供者からのリンパ節の切片においては、幾分弱いシグナルが観察された。
健常な提供者から取ったリンパ腺切片上には強いシグナルが観察されたが、一方敗血病性ショックの提供者からのリンパ節の切片においては、幾分弱いシグナルが観察された。
E.ヒト小腸
健常人及びクローン病患者の小腸のいずれも、パイエル集腺及び固有層における切片で弱いシグナルを呈し、クローン病患者の組織でのシグナルの方がわずかに高かった。
健常人及びクローン病患者の小腸のいずれも、パイエル集腺及び固有層における切片で弱いシグナルを呈し、クローン病患者の組織でのシグナルの方がわずかに高かった。
F.ヒト脾臓及び肺
脾臓(健常及び脾臓膿瘍切片)または肺(健常及び気腫切片)組織のいずれにおいても、シグナルは観察されなかった。
脾臓(健常及び脾臓膿瘍切片)または肺(健常及び気腫切片)組織のいずれにおいても、シグナルは観察されなかった。
G.マウス脊髄
正常及びEAEステージ3の脊髄のいずれにおいても、脊髄の灰白質内に強いシグナルがあり、その発現はEAEステージ3の脊髄でわずかに高かった。 EAEステージ3の脊髄において、おそらくは浸潤マクロファージ及び/または他の白血球であろうが、白質内の細胞及び血管周囲のカフス(cuffs)で、シグナルを示し、これは正常の脊髄にはなかった。
正常及びEAEステージ3の脊髄のいずれにおいても、脊髄の灰白質内に強いシグナルがあり、その発現はEAEステージ3の脊髄でわずかに高かった。 EAEステージ3の脊髄において、おそらくは浸潤マクロファージ及び/または他の白血球であろうが、白質内の細胞及び血管周囲のカフス(cuffs)で、シグナルを示し、これは正常の脊髄にはなかった。
F.マウス胎児
11日目のマウス胎児において、第4脳室内の中枢神経系でシグナルが明瞭であり、脳及び脳幹へと発達する間の胎児の経時的変化にわたって、そのシグナルは一定のままであった。 胎児が成熟するにつれ、脊髄内の中枢神経系(12日目)、初期皮質及びガッセル半月神経節(14日目)、及び下垂体(16日目)でシグナルが明瞭となった。 脊髄を残す神経の末梢神経系(14または15日目の初め)で、シグナルが観察され、さらに17日目に、胎児の頬鬚(whiskers)の周囲に強いシグナルが出現した。 14日目には肝臓及び肺に、腸(15日目の初め)に、ならびに口/喉の後部(posterior portion)(16日目の初め)においても、発現が見られた。 18日目までには、発現パターンは皮質、後脳(小脳及び脳幹)、脊髄の腰椎領域を残す神経、口/喉の後部、肝臓、腎臓へと分化していき、肺及び腸においてかなり弱いシグナルが見られた。
11日目のマウス胎児において、第4脳室内の中枢神経系でシグナルが明瞭であり、脳及び脳幹へと発達する間の胎児の経時的変化にわたって、そのシグナルは一定のままであった。 胎児が成熟するにつれ、脊髄内の中枢神経系(12日目)、初期皮質及びガッセル半月神経節(14日目)、及び下垂体(16日目)でシグナルが明瞭となった。 脊髄を残す神経の末梢神経系(14または15日目の初め)で、シグナルが観察され、さらに17日目に、胎児の頬鬚(whiskers)の周囲に強いシグナルが出現した。 14日目には肝臓及び肺に、腸(15日目の初め)に、ならびに口/喉の後部(posterior portion)(16日目の初め)においても、発現が見られた。 18日目までには、発現パターンは皮質、後脳(小脳及び脳幹)、脊髄の腰椎領域を残す神経、口/喉の後部、肝臓、腎臓へと分化していき、肺及び腸においてかなり弱いシグナルが見られた。
G.要約
扁桃腺、胸腺、リンパ腺、パイエル集腺、虫垂、及び結腸リンパ凝集体におけるPAF-AH mRNAの発現は、これらの組織に食細胞性及び抗原作用(antigen-processing)細胞として役立つ組織マクロファージが存在するので、可能性のある優勢な、PAF-AHのin vivoでの源はマクロファージであるという結論に一致する。
扁桃腺、胸腺、リンパ腺、パイエル集腺、虫垂、及び結腸リンパ凝集体におけるPAF-AH mRNAの発現は、これらの組織に食細胞性及び抗原作用(antigen-processing)細胞として役立つ組織マクロファージが存在するので、可能性のある優勢な、PAF-AHのin vivoでの源はマクロファージであるという結論に一致する。
炎症性組織におけるPAF-AHの発現は、単球由来のマクロファージの役割が、炎症を消散させることであるという仮説に一致するであろう。 PAF-AHはPAF及び前炎症性リン脂質を不活性化し、かくしてこれらのメディエーターにより開始せしめられる結果生じる炎症カスケードをダウンレギュレートすることが期待されるであろう。
PAFは、脳組織内全体で検出されており、培養しているラット脳顆粒球細胞によって分泌されている。 in vitro及びin vivoでの実験により、PAFは神経組織内の特異的な受容体に結合し、そしてカルシウムの動員、転写活性化遺伝子のアップレギュレーション、及び神経前駆細胞系であるPC12の分化などの、機能的変化及び表現型の変化を誘導することが証明されている。 これらの観察により、脳内でのPAFについての生理学的役割が示唆され、そしてこれに一致して、海馬の組織切片培養物とPAF誘導体及びPAFアンタゴニストを用いた最近の実験により、海馬の長期協力作用(long term potentiation)における重要な逆行性(retrograde)メッセンジャーとしてPAFが関わっていることが示されている。 それ故、炎症におけるその病理学的作用に加えて、PAFは通例の神経シグナルプロセスに関与しているようである。 脳内でのPAF-AHの細胞外の発現は、PAFが媒介するシグナル発生の持続時間及び強さを制御するのに役立つかもしれない。
実施例13
組換えヒト血漿PAF-AHに特異的なモノクローナル抗体を、抗原として大腸菌が生産したPAF-AHを用いて作った。
組換えヒト血漿PAF-AHに特異的なモノクローナル抗体を、抗原として大腸菌が生産したPAF-AHを用いて作った。
マウス#1342に、0日、19日、及び40日目に組換えPAF-AHを注射した。 融合前の追加抗原刺激のため、抗原を含むPBSをマウスに注射し、4日後にマウスを屠殺してその脾臓を無菌的に取り出し、無血清のRPMI、10ml中に入れた。 2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、100単位/ml ペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシン(RPMI)(ギブコ(Gibco)社、カナダ)を補った、無血清のRPMI 1640の中に沈めた2枚の顕微鏡スライドガラスの氷結させた端部間でその脾臓を粉砕することにより、単一細胞懸濁液を形成させた。 細胞懸濁液は、無菌の70-メッシュ ナイテックス(Nitex)セルストレーナー(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)社、パーシパニー(Parsippany)、ニュージャージー州)を通して濾過し、200gで5分間遠心し、そのペレットを20mlの無血清RPMI中に再懸濁することにより2回の洗浄を行った。 投薬を受けたことがない3匹のBalb/cマウスから取った胸腺細胞を、同様に調製した。 11%ウシ胎児血清(FBS)(ハイクローンラボラトリーズ社(Hyclone Laboratories, Inc.,)、ロガン(Logan)、ユタ州)を含むRPMI中で、融合前の3日間対数増殖期に保ったNS-1ミエローマ細胞を、200gで5分間遠心して、ペレットを前の段落に記載したように2回洗浄した。
1×108の脾臓細胞を、2.0×107のNS-1細胞と合わせ、遠心して、上清は吸引した。 細胞ペレットを、チューブを軽く叩くことによって動かし(dislodged)、37℃のPEG 1500(75mMヘペス、pH 8.0中、50%)(ベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim)社)1mlを、1分間にわたって撹拌しながら添加し、引き続き、7分にわたって7mlの無血清RPMIを添加した。 追加に8mlのRPMIを添加し、細胞を200gで10分間遠心した。 上清を廃棄した後、ペレットを、15%FBS、100μMヒポキサンチンナトリウム、0.4μMアミノプテリン、16μMチミジン(HAT)(ギブコ社)、25単位/ml IL-6(ベーリンガーマンハイム社)、及び1.5×106胸腺細胞/mlを含むRPMI 200ml中に再懸濁して、10枚のコーニング(Corning)平底96ウェル組織培養プレート(コーニング社、コーニング、ニューヨーク州)の中に播種した。 融合後2、4及び6日に、100μlの培地を融合プレートのウェルから除去し、新鮮な培地に置き換えた。 8日目に、ELISAによって融合をスクリーニングし、組換えPAF-AHに結合するマウスIgGの存在について調べた。 イムロン(Immulon)4プレート(ダイナテック(Dynatech)社、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を、25mMトリス、pH 7.5中に希釈した組換えPAF-AH、100ng/ウェルで、37℃にて2時間被覆した。 被覆用溶液を吸引し、200μl/ウェルのブロッキング溶液(CMF-PBS中に希釈した0.5%フィッシュスキンゼラチン(シグマ(Sigma)社))を添加して、37℃にて30分間インキュベートした。 0.05%ツイーン20を含むPBS(PBST)でプレートを3回洗浄し、50μlの培養上清を加えた。 37℃にて30分間インキュベートし、前記のように洗浄した後、PBSTで1:3500に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ複合ヤギ抗マウスIgG(fc)(ジャクソンイムノリサーチ(Jackson ImmunoResearch)社、ウェストグローブ(West Grove)、ペンシルベニア州)50μlを添加した。 前記のようにプレートをインキュベートし、PBSTで4回洗浄して、100mMクエン酸、pH 4.5中、1mg/ml o-フェニレンジアミン(シグマ社)及び0.1μl/mlの30% H2O2で構成される基質100μLを添加した。 50μlの15% H2SO4を添加して、5分で呈色反応を停止した。 プレートリーダー(ダイナテック社)でA490を読み取った。
選択したフュージョンウェル(fusion wells)を、96ウェルプレートの中に希釈し、5日後にコロニー数/ウェルを目視的に評価することにより、2回のクローン化を行った。 クローン化したハイブリドーマは、90D1E、90E3A、90E6C、90G11D(ATCC HB 11724)、及び90F2D(ATCC HB 11725)であった。
ハイブリドーマにより生産されるモノクローナル抗体は、イソストリップ(Isostrip)システム(ベーリンガーマンハイム社、インディアナポリス、インディアナ州)を用いてイソタイプを判別した(isotyped)。 その結果、融合90からのハイブリドーマにより生産されるモノクローナル抗体がすべてIgG1であることが示された。
融合90からのハイブリドーマによって生産されるモノクローナル抗体はすべて、ELISAアッセイで良好に機能したが、ウェスタンブロットにてPAF-AHと結合することはできなかった。 ウェスタンによりPAF-AHを認識することができる抗体を作製するために、マウス#1958を組換え酵素で免疫処置した。 融合90について記載したと同様にハイブリドーマを作製したが、ウェスタンの要素となるクローンを同定するためにELISAでなくウェスタンブロッティングによりスクリーニングを行った。
ウェスタン分析のためには、組換えPAF-AHを、125mMトリス、pH 6.8、4%SDS、100mMジチオスレイトール及び0.05%ブロモフェノールブルーを含有する等容量の試料用緩衝液と混合し、そして12%SDSポリアクリルアミドゲル(ノベックス(Novex)社)に付す前に5分間煮沸した。 40mアンペアーにて電気泳動を行った後、192mMグリシン、25mMトリス塩基、20%メタノール、及び0.01%SDS中で125Vにて1時間、タンパク質をフッ化ポリビニリデン膜(ピアス社)へ電気的に転写した。 膜は、5%ウシ血清アルブミン(BSA、シグマ社)を含有する20mMトリス、100mM NaCl(TBS)中で4℃にて終夜インキュベートした。 ブロット膜を、5%BSAを含有するTBS中に1/8000に希釈されたウサギポリクローナル抗血清と室温にて1時間インキュベートし、次いでTBSで洗浄し、そして5%BSAを含有するTBS中でアルカリホスファターゼ接合ヤギ抗マウスIgGと室温にて1時間インキュベートさせた。 ブロット膜を再度TBSで洗浄し、次いで100mMトリス塩酸、pH 9.5、100mM NaCl、及び5mM MgCl2中で0.02% 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート及び0.03%ニトロブルーテトラゾリウムとインキュベートさせた。 反応は、繰り返し水で濯ぐことによって停止した。
選択されたフュージョンウェル(fusion wells)(ウェスタン分析にてその上清が陽性のもの)は、前記のごとく処理した。 ハイブリドーマ143AがウェスタンブロットにてPAF-AHと反応し、クローン化された(ATCC HB 11900)。
ヒト血漿PAF-AHに対して特異的なポリクローナル抗血清を、フロインドアジュバント中100μgの精製組換え酵素を用いて1カ月ごと3回免疫処理することによってウサギで作らせた。
実施例14
ラット足の浮腫モデル(ヘンリークス(Henriques)ら、Br. J. Pharmacol.、106巻、579〜582頁、(1992))を用いて、急性炎症に対する本発明の組換えPAF-AHのin vivoでの治療効果を評価するために、実験研究を行った。 これらの研究の結果、PAF-AHがPAFで誘発した浮腫を阻止することが立証された。 2つの市販されているPAFアンタゴニストと、PAF-AHの有効性とを比較するために、平行して実験を行った。
ラット足の浮腫モデル(ヘンリークス(Henriques)ら、Br. J. Pharmacol.、106巻、579〜582頁、(1992))を用いて、急性炎症に対する本発明の組換えPAF-AHのin vivoでの治療効果を評価するために、実験研究を行った。 これらの研究の結果、PAF-AHがPAFで誘発した浮腫を阻止することが立証された。 2つの市販されているPAFアンタゴニストと、PAF-AHの有効性とを比較するために、平行して実験を行った。
A.PAF-AHの調製
PAF-AH発現ベクターpuc trp AHで形質転換した大腸菌を、マイクロフルイダイザー内で溶菌し、固形物は遠心により除いて、細胞上清をS-セファロースカラム(ファルマシア社)に負荷した。 50mM NaCl、10mM CHAPS、25mM MES及び1mM EDTA、pH 5.5からなる緩衝液でカラムを良く洗浄した。 緩衝液のNaCl濃度を1Mにまで上げることによってPAF-AHを溶出した。 その後、ブルーセファロースカラム(ファルマシア社)を用いたアフィニティークロマトグラフィーを、追加の精製工程として用いた。 ブルーセファロースカラムにPAF-AH調製物を負荷する前に試料を1:2に希釈して、0.5MにまでNaCl濃度を下げ、さらにpHを7.5に調整した。 0.5M NaCl、25mMトリス、10mM CHAPS及び1mM EDTA、pH 7.5からなる緩衝液でブルーセファロースカラムを良く洗浄した後、NaCl濃度を3.0Mにまで上げることでPAF-AHを溶出した。
PAF-AH発現ベクターpuc trp AHで形質転換した大腸菌を、マイクロフルイダイザー内で溶菌し、固形物は遠心により除いて、細胞上清をS-セファロースカラム(ファルマシア社)に負荷した。 50mM NaCl、10mM CHAPS、25mM MES及び1mM EDTA、pH 5.5からなる緩衝液でカラムを良く洗浄した。 緩衝液のNaCl濃度を1Mにまで上げることによってPAF-AHを溶出した。 その後、ブルーセファロースカラム(ファルマシア社)を用いたアフィニティークロマトグラフィーを、追加の精製工程として用いた。 ブルーセファロースカラムにPAF-AH調製物を負荷する前に試料を1:2に希釈して、0.5MにまでNaCl濃度を下げ、さらにpHを7.5に調整した。 0.5M NaCl、25mMトリス、10mM CHAPS及び1mM EDTA、pH 7.5からなる緩衝液でブルーセファロースカラムを良く洗浄した後、NaCl濃度を3.0Mにまで上げることでPAF-AHを溶出した。
この方法で単離したPAF-AHの純度は、通常、SDS-PAGEにより評価すると95%であり、活性は5000〜10,000U/mlの範囲内にあった。 各PAF-AH調製物に対してなされた追加のクオリティーコントロールとして、エンドトキシンレベル及び新鮮に獲得したラット赤血球への溶血活性の測定が挙げられた。 25mMトリス、10mM CHAPS、0.5M NaCl、pH 7.5を含む緩衝液が、酵素の保管用媒体としてだけでなく、投与のための担体として機能した。 実験に用いた投与量は、実験直前に行った酵素活性アッセイに基づくものであった。
B.浮腫の誘発
180〜200グラム重量の、6〜8週令の雌性ロングエバンス(Long Evans)ラット(チャールスリバー(Charles River)、ウィルミントン(Wilmington)、マサチューセッツ州)を、すべての実験に用いた。 実験操作の前に、ラット1匹当たり、1回の投与当たり、およそ2.5mgのケタセット(Ketaset)(フォートドッジラボラトリーズ(Fort Dodge Laboratories)社、フォートドッジ、アイオワ州)、1.6mgのロンパン(Rompun)(マイルス社、シャウニーミッション(Schawnee Mission)、カンサス州)、0.2mgのエースプロマジン(Ace Promazine)(アベコ(Aveco)社、フォートドッジ、アイオワ州)にて、麻酔用ケタセット、ロンパン及びエースプロマジンの混合物の皮下投与を用いてラットに麻酔をかけた。 PAFまたはザイモサンのいずれかを以下のように投与することにより、足に浮腫を誘発させた。 PAF(シグマ#P-1402)は、クロロホルム/メタノール(9:1)中で-20℃にて保管している19.1mMの貯蔵溶液から、各実験用に新たに調製した。 N2下で乾燥して必要とされる容量にまで減じ、150mM NaCl、10mMトリス、pH 7.5、及び0.25% BSAを含有する緩衝液で1:1000に希釈し、次いで5分間超音波処理した。 ラットに、後足の肉趾間へ、PAF(最終投与量0.96ナノモル)50μlを皮下投与し、1時間後、実験によっては2時間後にも、浮腫を評価した。 ザイモサンA(シグマ#A-8800)は、PBS中、10mg/mlの懸濁液として、各実験のために新たに調製した。 ラットに、後足の肉趾間へ、ザイモサン(最終投与量500μg)50μlを皮下投与し、2時間後に浮腫を評価した。
180〜200グラム重量の、6〜8週令の雌性ロングエバンス(Long Evans)ラット(チャールスリバー(Charles River)、ウィルミントン(Wilmington)、マサチューセッツ州)を、すべての実験に用いた。 実験操作の前に、ラット1匹当たり、1回の投与当たり、およそ2.5mgのケタセット(Ketaset)(フォートドッジラボラトリーズ(Fort Dodge Laboratories)社、フォートドッジ、アイオワ州)、1.6mgのロンパン(Rompun)(マイルス社、シャウニーミッション(Schawnee Mission)、カンサス州)、0.2mgのエースプロマジン(Ace Promazine)(アベコ(Aveco)社、フォートドッジ、アイオワ州)にて、麻酔用ケタセット、ロンパン及びエースプロマジンの混合物の皮下投与を用いてラットに麻酔をかけた。 PAFまたはザイモサンのいずれかを以下のように投与することにより、足に浮腫を誘発させた。 PAF(シグマ#P-1402)は、クロロホルム/メタノール(9:1)中で-20℃にて保管している19.1mMの貯蔵溶液から、各実験用に新たに調製した。 N2下で乾燥して必要とされる容量にまで減じ、150mM NaCl、10mMトリス、pH 7.5、及び0.25% BSAを含有する緩衝液で1:1000に希釈し、次いで5分間超音波処理した。 ラットに、後足の肉趾間へ、PAF(最終投与量0.96ナノモル)50μlを皮下投与し、1時間後、実験によっては2時間後にも、浮腫を評価した。 ザイモサンA(シグマ#A-8800)は、PBS中、10mg/mlの懸濁液として、各実験のために新たに調製した。 ラットに、後足の肉趾間へ、ザイモサン(最終投与量500μg)50μlを皮下投与し、2時間後に浮腫を評価した。
PAFまたはザイモサン投与直前に、及びPAFまたはザイモサン刺激後の示された時点で、足の容量を測定することにより、浮腫を定量化した。 浮腫は、ミリリットルでの足の容量の増大として表した。 水に漬けた足で置き換わる水の容量を計る、プレチスモメーター(UGOバシレ(Basile)、モデル#7150)を用いて、麻酔をかけたラットの容量置換測定を行った。 ある時点と次の時点とが、足を漬けることで比較できることを保証するために、後足の毛の生え際と踵の境界に消えないインクで印を付けた。 この技法を用いて同じ足を繰り返し測定すると、精度が5%以内であることが示された。
C.PAF-AH投与経路及び投与量
PAF-AHは、足の肉趾間へ局所的に、または尾静脈内への静脈内(IV)注射により全身に、注射した。 局所投与の場合、右後足の肉趾間皮下に100μlのPAF-AH(4000〜6000U/ml)をラットに投与した。 左足は、100μlの担体(緩衝化した塩溶液)を投与することにより、対照として用いた。 PAF-AHの全身投与のために、尾静脈内より、300μl担体中に示したユニット数のPAF-AHを含むものを、ラットに静脈内投与した。
PAF-AHは、足の肉趾間へ局所的に、または尾静脈内への静脈内(IV)注射により全身に、注射した。 局所投与の場合、右後足の肉趾間皮下に100μlのPAF-AH(4000〜6000U/ml)をラットに投与した。 左足は、100μlの担体(緩衝化した塩溶液)を投与することにより、対照として用いた。 PAF-AHの全身投与のために、尾静脈内より、300μl担体中に示したユニット数のPAF-AHを含むものを、ラットに静脈内投与した。
対照群は、尾静脈内に静脈内注射で適切な容量の担体を与えた。
D.PAF-AHの局所投与
ラット(N=4)に、右足肉趾間へ100μlのPAF-AH(4000〜6000U/ml)を皮下注射した。 左足には100μlの担体(緩衝化した塩溶液)を注射した。 他の4匹のラットには担体のみを注射した。 すべてのラットに、直ちに足への皮下注射を介してPAFで刺激し、そして刺激後1時間で足の容量を評価した。 図6において、各処置群について足の容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表され、PAFで誘発した足の浮腫が、PAF-AHの局所投与により阻止されることを示す。 PAF刺激の前にPAF-AHの局所処置を受けた群は、対照の注射を行った群に比べて炎症が低減することが示された。 担体で処置した対照群で足の容量の増大が0.63ml±0.14(SEM)であるのに比して、PAF-AH群では0.08ml±0.08(SEM)認められた。 担体のみを足に注射したラットでは足の容量の増大を呈しなかったので、足の容量の増大は、PAFの注射の直接的な結果である。
ラット(N=4)に、右足肉趾間へ100μlのPAF-AH(4000〜6000U/ml)を皮下注射した。 左足には100μlの担体(緩衝化した塩溶液)を注射した。 他の4匹のラットには担体のみを注射した。 すべてのラットに、直ちに足への皮下注射を介してPAFで刺激し、そして刺激後1時間で足の容量を評価した。 図6において、各処置群について足の容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表され、PAFで誘発した足の浮腫が、PAF-AHの局所投与により阻止されることを示す。 PAF刺激の前にPAF-AHの局所処置を受けた群は、対照の注射を行った群に比べて炎症が低減することが示された。 担体で処置した対照群で足の容量の増大が0.63ml±0.14(SEM)であるのに比して、PAF-AH群では0.08ml±0.08(SEM)認められた。 担体のみを足に注射したラットでは足の容量の増大を呈しなかったので、足の容量の増大は、PAFの注射の直接的な結果である。
E.PAF-AHの静脈内投与
ラット(1群当たりN=4)に、PAF刺激の前15分に、PAF-AH(300μl担体中、2000 U)または担体単独を用いて静脈内へ前処置を行った。 PAF刺激の後1時間及び2時間後に、浮腫を評価した。 図7において、各処置群について容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表され、PAFで誘発した足の浮腫が、刺激後1及び2時間で、PAF-AHの静脈内投与により阻止されることを示す。 静脈内経路によって2000UのPAF-AHを与えられた群は、2時間の経時変化にわたり炎症が低減することが示された。 PAF-AH処置群では容量の増大の平均値は0.10ml±0.08(SEM)であったが、これに対し、担体で処置した対照群では0.56 ml±0.11(SEM)であった。
ラット(1群当たりN=4)に、PAF刺激の前15分に、PAF-AH(300μl担体中、2000 U)または担体単独を用いて静脈内へ前処置を行った。 PAF刺激の後1時間及び2時間後に、浮腫を評価した。 図7において、各処置群について容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表され、PAFで誘発した足の浮腫が、刺激後1及び2時間で、PAF-AHの静脈内投与により阻止されることを示す。 静脈内経路によって2000UのPAF-AHを与えられた群は、2時間の経時変化にわたり炎症が低減することが示された。 PAF-AH処置群では容量の増大の平均値は0.10ml±0.08(SEM)であったが、これに対し、担体で処置した対照群では0.56 ml±0.11(SEM)であった。
F.PAFまたはザイモサンで誘発された浮腫におけるPAF-AHによる保護の比較
ラット(1群当たりN=4)に、PAF-AH(300μl担体中、2000U)または担体単独を用いて静脈内へ前処置を行った。 前処置後15分に、前記群にPAFまたはザイモサンAを投与し、それぞれ1時間及び2時間後に、足の容量を評価した。 図8に示すように、ここで各処置群について容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表され、PAF-AH(2000U)の全身投与は、PAFで誘発した足の浮腫を低減させるのに有効であったが、ザイモサンで誘発した浮腫は阻止しえなかった。 0.08±0.02の容量の増大の平均値がPAF-AH処置群において認められ、これに対し、対照群については0.49±0.03であった。
ラット(1群当たりN=4)に、PAF-AH(300μl担体中、2000U)または担体単独を用いて静脈内へ前処置を行った。 前処置後15分に、前記群にPAFまたはザイモサンAを投与し、それぞれ1時間及び2時間後に、足の容量を評価した。 図8に示すように、ここで各処置群について容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表され、PAF-AH(2000U)の全身投与は、PAFで誘発した足の浮腫を低減させるのに有効であったが、ザイモサンで誘発した浮腫は阻止しえなかった。 0.08±0.02の容量の増大の平均値がPAF-AH処置群において認められ、これに対し、対照群については0.49±0.03であった。
G.PAF-AHによる保護の有効投与量の検討
2つの別個の実験において、ラットの群(1群当たりN=3〜4)に、PAF刺激の前15分に、300μlの容量で、PAF-AHの連続的な希釈液または担体の対照を用いて静脈内前処置を行った。 両足ともにPAFで刺激を行い(前記の通り)、1時間後に浮腫を評価した。 図9において、各処置群について容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表され、PAF-AHの投与量を増大させて注射するにつれて、ラットにおけるPAFで誘発した浮腫からの保護は増大することが示される。 実験において、静脈内経路により与えられたPAF-AHのID50は、ラット1匹当たり40Uと80Uとの間であることが見出された。
2つの別個の実験において、ラットの群(1群当たりN=3〜4)に、PAF刺激の前15分に、300μlの容量で、PAF-AHの連続的な希釈液または担体の対照を用いて静脈内前処置を行った。 両足ともにPAFで刺激を行い(前記の通り)、1時間後に浮腫を評価した。 図9において、各処置群について容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表され、PAF-AHの投与量を増大させて注射するにつれて、ラットにおけるPAFで誘発した浮腫からの保護は増大することが示される。 実験において、静脈内経路により与えられたPAF-AHのID50は、ラット1匹当たり40Uと80Uとの間であることが見出された。
H.投与後の時間の機能としてのPAF-AHのin vivoでの有効性
2つの別個の実験において、2群のラット(1群当たりN=3〜4)に、PAF-AH(300μl担体中、2000U)または担体単独を用いて静脈内へ前処置を行った。 投与後に、PAF-AH投与の後15分から47時間の範囲内の時点で、ラットの群にPAFを投与した。
2つの別個の実験において、2群のラット(1群当たりN=3〜4)に、PAF-AH(300μl担体中、2000U)または担体単独を用いて静脈内へ前処置を行った。 投与後に、PAF-AH投与の後15分から47時間の範囲内の時点で、ラットの群にPAFを投与した。
PAF刺激の1時間後に、浮腫を評価した。 図10に示すように、ここで各処置群について容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表され、2000UのPAF-AHを投与すると、少なくとも24時間、PAFで誘発した浮腫からラットが保護される。
I.PAF-AHの薬物動態学
4匹のラットに、300μlの容量で静脈内注射により、2000UのPAF-AHを投与した。 種々の時点で血漿を集め、4℃にて保存し、二重mAb捕獲アッセイ(double mAb capture assay)を用いたELISAによってPAF-AHの血漿中の濃度を測定した。 すなわち、モノクローナル抗体90G11D(実施例13)を、50mM炭酸緩衝液、pH 9.6で100 ng/mlに希釈し、そして4℃にて一晩、イムロン4ELISAプレートに固定化した。 0.05%ツイーン20を含有するPBSで良く洗浄した後、0.5%フィッシュスキンゼラチン(シグマ社)を含むPBSで、室温にて1時間、プレートをブロッキングした。 洗浄したELISAプレートに、15mM CHAPSを含むPBSで希釈した血清試料をデュプリケートで添加し、室温にて1時間インキュベートした。 洗浄後、モノクローナル抗体90F2D(実施例13)のビオチン複合体をPBSで5μg/mlの濃度に希釈してウェルに加え、次いで室温にて1時間インキュベートした。 洗浄の後、エクストラアビジン(ExtraAvidin)(シグマ社)の1:1000希釈液を50μlウェルに加え、室温にて1時間インキュベートした。 洗浄後、基質としてOPDを用いてウェルを現像し、定量した。 その後、標準曲線から酵素活性を計算した。 図11で、データのポイントは平均値±SEMを表すが、180〜200グラムのラットについて5〜6mlの血漿に基づいて予測された濃度、平均値=374U/ml±58.2に、血漿の酵素レベルが1時間で到達したことが示される。 1時間を越えると、血漿中のレベルは徐々に減衰し、24時間で血漿中の濃度の平均値は19.3U/ml±3.4に達するが、それでもなお、酵素的アッセイによりおよそ4U/mlであることが見出されている内在性のラットPAF-AHレベルよりもかなり高い。
4匹のラットに、300μlの容量で静脈内注射により、2000UのPAF-AHを投与した。 種々の時点で血漿を集め、4℃にて保存し、二重mAb捕獲アッセイ(double mAb capture assay)を用いたELISAによってPAF-AHの血漿中の濃度を測定した。 すなわち、モノクローナル抗体90G11D(実施例13)を、50mM炭酸緩衝液、pH 9.6で100 ng/mlに希釈し、そして4℃にて一晩、イムロン4ELISAプレートに固定化した。 0.05%ツイーン20を含有するPBSで良く洗浄した後、0.5%フィッシュスキンゼラチン(シグマ社)を含むPBSで、室温にて1時間、プレートをブロッキングした。 洗浄したELISAプレートに、15mM CHAPSを含むPBSで希釈した血清試料をデュプリケートで添加し、室温にて1時間インキュベートした。 洗浄後、モノクローナル抗体90F2D(実施例13)のビオチン複合体をPBSで5μg/mlの濃度に希釈してウェルに加え、次いで室温にて1時間インキュベートした。 洗浄の後、エクストラアビジン(ExtraAvidin)(シグマ社)の1:1000希釈液を50μlウェルに加え、室温にて1時間インキュベートした。 洗浄後、基質としてOPDを用いてウェルを現像し、定量した。 その後、標準曲線から酵素活性を計算した。 図11で、データのポイントは平均値±SEMを表すが、180〜200グラムのラットについて5〜6mlの血漿に基づいて予測された濃度、平均値=374U/ml±58.2に、血漿の酵素レベルが1時間で到達したことが示される。 1時間を越えると、血漿中のレベルは徐々に減衰し、24時間で血漿中の濃度の平均値は19.3U/ml±3.4に達するが、それでもなお、酵素的アッセイによりおよそ4U/mlであることが見出されている内在性のラットPAF-AHレベルよりもかなり高い。
J.PAFアンタゴニストに対するPAF-AHの有効性
以下の3つの潜在力を有する抗炎症剤、腹腔内(IP)投与(200μl EtOH中、2mg)されるPAFアンタゴニストCV3988(バイオモル(Biomol) #L-103)、腹腔内投与(200μl EtOH中、2mg)されるPAFアンタゴニストのアルプラゾラム(Alprazolam)(シグマ #A-8800)、または静脈内投与されるPAF-AH(2000U)、のうちの1つを用いて、ラットの群(1群当たりN=4)を前処置した。 対照のラットには、300μl容量の担体を静脈内注射した。
以下の3つの潜在力を有する抗炎症剤、腹腔内(IP)投与(200μl EtOH中、2mg)されるPAFアンタゴニストCV3988(バイオモル(Biomol) #L-103)、腹腔内投与(200μl EtOH中、2mg)されるPAFアンタゴニストのアルプラゾラム(Alprazolam)(シグマ #A-8800)、または静脈内投与されるPAF-AH(2000U)、のうちの1つを用いて、ラットの群(1群当たりN=4)を前処置した。 対照のラットには、300μl容量の担体を静脈内注射した。
PAFアンタゴニストはエタノールに溶解されているので、腹腔内に投与した。 CV3988またはアルプラゾラムを注射したラットは、PAFアンタゴニストが循環系の中に入ることを許容するよう、PAFアンタゴニストの投与後30分にPAF刺激を施し、 一方、PAF-AH及び担体で処置したラットは、酵素の投与後15分で刺激を施した。 確立されたPAFアンタゴニストのCV3988及びアルプラゾラムにより成し遂げられるよりはるかに、PAFで誘発した浮腫が、PAF-AHを注射したラットで低減されることが示された。 図12において、各処置群について容量の増大の平均値(ml)±SEMとして浮腫が表されている。
要約すると、rPAF-AHは、in vivoでPAFにより媒介される浮腫を阻止するうえで有効である。 PAF-AH産物の投与は、局所投与または静脈内注射による全身投与とすることができる。 投与量の研究で、160〜2000U/ラットの範囲の静脈内注射により、PAFが介する炎症を劇的に低減させることが見出され、また、ID50の量は40〜80U/ラットの範囲にあるようである。 180〜200グラムのラットに対する血漿容量に基づく計算により、25〜40U/mlの範囲の血漿中の濃度で、PAFで誘発した浮腫が阻止されるはずであると予測される。 この予測は、予備的な薬物動態学研究により支持される。 2000UのPAF-AH投与量で、少なくとも24時間の間、PAFが媒介する浮腫の阻止に有効であることが見出された。 PAF-AHの投与後24時間で、酵素の血漿中の濃度はおよそ25U/mlであることが見出された。 PAF-AHは、試験を行った2つの既知のPAFアンタゴニストよりもさらに有効に、PAFで誘発した浮腫を阻止することが見出された。
まとめると、これらの結果により、PAFで誘発した炎症をPAF-AHが有効に阻止し、PAFが第1のメディエーターである疾患においてPAF-AHは治療的価値を有するかもしれないことが立証される。
実施例15
本発明の組換えPAF-AHを、第2のin vivoモデルであるPAFで誘発した胸膜炎において試験を行った。 PAFが胸膜空間へと導入された際に脈管の漏泄(leakage)を誘発することが、すでに報告されている(ヘンリークら、前出)。 雌性ラット(チャールスリバー、180〜200g)に対して、0.9%とした 200μlの1%エバンスブルー染色液とともに、300μlの組換えPAF-AH(1500μmol/ml/時、実施例14に記載の方法で調製した)または等量の対照緩衝液を、尾静脈に注射した。 15分後に、ラットの胸膜空間にPAF(2.0nmol)の100μlを注射した。 PAF刺激の1時間後にラットを屠殺し、ヘパリン処理したリン酸緩衝化生理食塩水3mlで胸腔を洗浄することで、胸膜液を回収した。 脈管の漏泄の程度を、620nmの吸光度で定量した胸膜空間でのエバンスブルー染色液量によって定量した。 PAF-AHで前処置されたラットが、対照ラットよりも脈管の漏泄の程度がかなり小さい(80%以上の炎症の低減が認められた)ことが判明した。
本発明の組換えPAF-AHを、第2のin vivoモデルであるPAFで誘発した胸膜炎において試験を行った。 PAFが胸膜空間へと導入された際に脈管の漏泄(leakage)を誘発することが、すでに報告されている(ヘンリークら、前出)。 雌性ラット(チャールスリバー、180〜200g)に対して、0.9%とした 200μlの1%エバンスブルー染色液とともに、300μlの組換えPAF-AH(1500μmol/ml/時、実施例14に記載の方法で調製した)または等量の対照緩衝液を、尾静脈に注射した。 15分後に、ラットの胸膜空間にPAF(2.0nmol)の100μlを注射した。 PAF刺激の1時間後にラットを屠殺し、ヘパリン処理したリン酸緩衝化生理食塩水3mlで胸腔を洗浄することで、胸膜液を回収した。 脈管の漏泄の程度を、620nmの吸光度で定量した胸膜空間でのエバンスブルー染色液量によって定量した。 PAF-AHで前処置されたラットが、対照ラットよりも脈管の漏泄の程度がかなり小さい(80%以上の炎症の低減が認められた)ことが判明した。
前記の結果は、本発明の組換えPAF-AH酵素の、胸膜炎に罹患した被検者の治療効果を支持するものである。
実施例16
本発明の組換えPAF-AHは、抗原誘発した好酸球モデルでの有効性についても試験を行った。 気道での好酸球の蓄積は、喘息、鼻炎及び湿疹を惹き起こす後期免疫応答の特徴である。 BALB/cマウス(チャールスリバー) は、2週間間隔で行った、4mgの水酸化アルミニウム(イムジェクト・アルム(Imject alum)、ピアスラボラトリーズ(Pierce Laboratories)社、ロックフォード、イリノイ州)中に1μgのオボアルブミン(OVA)で構成される2度の腹腔内注射によって感作させた。 2回目の免疫処置から14日後に、感作したマウスを、エアロゾル化したOVAまたは対照として生理食塩水のいずれかで刺激を施した。
本発明の組換えPAF-AHは、抗原誘発した好酸球モデルでの有効性についても試験を行った。 気道での好酸球の蓄積は、喘息、鼻炎及び湿疹を惹き起こす後期免疫応答の特徴である。 BALB/cマウス(チャールスリバー) は、2週間間隔で行った、4mgの水酸化アルミニウム(イムジェクト・アルム(Imject alum)、ピアスラボラトリーズ(Pierce Laboratories)社、ロックフォード、イリノイ州)中に1μgのオボアルブミン(OVA)で構成される2度の腹腔内注射によって感作させた。 2回目の免疫処置から14日後に、感作したマウスを、エアロゾル化したOVAまたは対照として生理食塩水のいずれかで刺激を施した。
刺激を施す前に、各群に4匹ずつなるように、マウスを任意に4つの群に分けた。 1及び3群のマウスには、25mMトリス、0.5M NaCl、1mM EDTA及び0.1%ツイーン80で構成される対照緩衝液140μlを腹腔内注射により前処置を行った。 2及び4群のマウスは、750単位(140μlのPAF-AH緩衝液を投与した場合の活性は、5500単位/mlであった)のPAF-AHで前処置した。 PAF-AHまたは緩衝液を投与して30分後、1及び2群のマウスを以下に記載するようにエアロゾル化したPBSに曝し、一方で、3及び4群のマウスはエアロゾル化したOVAに曝した。 24時間後に、140μlの緩衝液(1及び3群)または 140μl緩衝液中750単位のPAF-AH(2及び4群)のいずれかを静脈内に注射することにより、2回目の処置を行った。
気管での好酸球の浸潤は、感作したマウスをエアロゾル化したOVAに曝すことで誘発された。 感作したマウスを、円錐形の50ml遠心用チューブ(コーニング社)の中に入れ、ネブライザー(モデル646、デビルビス社(DeVilbiss Corp.,)、サマーセット、ペンシルベニア州)を用いて、20分間、0.9%の生理食塩水に溶解してエアロゾル化したOVA(50mg/ml)を強制的に吸入させた。 対照マウスには、ネブライザーにて 0.9%の生理食塩水を用いた以外は、上記と同様の方法にて処置した。 エアロゾル化したOVAまたは生理食塩水に曝してから48時間後に、マウスを屠殺し、気管を摘出した。 各群から摘出した気管を、OCTに埋設し、組織を切断するまで−70℃にて保存した。
気管の好酸球浸潤を評価するために、マウスの4群からの組織切片を、ルナ溶液とヘマトキシリン−エオシン溶液、またはペルオキシダーゼのいずれかで染色した。 6μmの厚みの組織切片12個を、マウスの各群から切り出し、順次番号付けを行った。 奇数番号が付与された切片を、ルナ溶液で以下のように染色した。 切片を、室温にて5分間、ホルマルアルコール中で固定し、室温にて2分間、水道水を3回交換して洗浄し、次いで、室温にて1分間、蒸留水を2回交換して洗浄した。 組織切片を、ルナ染色液(ルナ染色液は、90mlのヴァイゲルトの鉄ヘマトキシリン及び10mlの1%ビーブリッヒスカーレットからなる)で室温にて5分間染色した。 染色した切片スライドを、1%酸性アルコールに6回浸し、室温にて1分間、水道水で洗浄し、0.5%炭酸リチウム溶液に5回浸し、そして、室温にて2分間、流水の水道水で洗浄した。 切片スライドを、70%、95%、100%のエタノールを用いてそれぞれ、室温にて1分間で脱水させ、室温にて1分間、キシレンを2回交換して洗浄し、そして、サイトシール(Cytoseal)60上に置いた。
ペルオキシダーゼによる染色のために、偶数番号の切片を、4℃のアセトンにて10分間で固定し、そして、風乾させた。 200μlのDAB溶液を各切片に添加し、室温にて5分間放置した。 切片スライドを、室温にて5分間、水道水で洗浄し、そして、2滴の1%オスミウム酸を各切片に対して3〜5秒間作用させた。 切片スライドを、室温にて5分間、水道水で洗浄し、そして、25℃の室温にて、メイアーズのヘマトキシリンで対比染色した。 切片スライドを、流水の水道水で5分間すすぎ、70%、95%、100%のエタノールでそれぞれ、室温にて1分間づつで脱水させた。 切片スライドを、室温にて1分間、キシレンを2回交換して洗浄し、そして、サイトシール60上に載置した。
気管の粘膜下組織中の好酸球の数を評価した。 1及び2群のマウスの気管には、粘膜下組織全体にわたって分散した好酸球はほとんど見出されなかった。 緩衝液で前処置され、霧状のOVAに曝された、3群のマウスの気管では、予期されるとおり、粘膜下組織全体にわたり、多数の好酸球が認められた。 これとは対照的に、PAF-AHで前処置され、霧状のOVAに曝された、4群のマウスの気管では、1及び2群の2つの対照群で見られる結果に匹敵して、粘膜下組織に好酸球がほとんど見られなかった。
このように、喘息、鼻炎及び湿疹において生じるような、気道での好酸球の蓄積を含む後期免疫応答を呈する被検者を、PAF-AHで治療することが指示されるのである。
実施例17
本発明のPAF-AH産物を、壊死性全腸炎(NEC、出生時体重の低い幼児に発症し、かなりの罹患状態及び死亡率を招く、腸の急性の出血性壊死)の処置についても、2つの異なるラットモデルにおいて調べた。 以前の実験によって、グルココルチコイドを用いた処置により、動物及び未成熟幼児におけるNECの発症率が減少することが立証されており、グルココルチコイドの活性が血漿PAF-AHの増加を介して生じることが示唆されている。
本発明のPAF-AH産物を、壊死性全腸炎(NEC、出生時体重の低い幼児に発症し、かなりの罹患状態及び死亡率を招く、腸の急性の出血性壊死)の処置についても、2つの異なるラットモデルにおいて調べた。 以前の実験によって、グルココルチコイドを用いた処置により、動物及び未成熟幼児におけるNECの発症率が減少することが立証されており、グルココルチコイドの活性が血漿PAF-AHの増加を介して生じることが示唆されている。
A.PAF刺激によって誘発されたNECのラットにおける活性
1.NECの予防
組換えPAF-AH産物、rPH.2(0.3ml中、25,500単位、第2及び4群)、または媒体/緩衝液のみ(25mMトリス、0.5M NaCl、1mM EDTA及び0.1%ツイーン80)(第1及び3群)を、180〜220グラムの体重の雌性ウィスター(Wistar)ラット(n=3)の尾静脈内に投与した。 以前にフルカワら(J. Pediatr. Res.、34巻、237〜241頁(1993))によって報告されたように、rPH.2または媒体の注射後15分に、BSA(0.25%)−生理食塩水(第1及び2群)またはBSA−生理食塩水に懸濁したPAF(0.2μg/100グラム)(第3及び4群)のいずれかを、上腸間膜動脈の位置で腹部大動脈へ注射した。 2時間後に、盲腸へのTrietzの靱帯から小腸を取り出し、冷却生理食塩水で充分に洗浄し、肉眼的に調べた。 試料は、小腸の上方、中央及び下方の部位から、顕微鏡による観察で得られた。 組織を、緩衝性ホルマリン中で固定し、そして試料はヘマトキシリン及びエオシンで染色することによって顕微鏡における観察のために処理した。 実験は、3回繰り返して行った。
1.NECの予防
組換えPAF-AH産物、rPH.2(0.3ml中、25,500単位、第2及び4群)、または媒体/緩衝液のみ(25mMトリス、0.5M NaCl、1mM EDTA及び0.1%ツイーン80)(第1及び3群)を、180〜220グラムの体重の雌性ウィスター(Wistar)ラット(n=3)の尾静脈内に投与した。 以前にフルカワら(J. Pediatr. Res.、34巻、237〜241頁(1993))によって報告されたように、rPH.2または媒体の注射後15分に、BSA(0.25%)−生理食塩水(第1及び2群)またはBSA−生理食塩水に懸濁したPAF(0.2μg/100グラム)(第3及び4群)のいずれかを、上腸間膜動脈の位置で腹部大動脈へ注射した。 2時間後に、盲腸へのTrietzの靱帯から小腸を取り出し、冷却生理食塩水で充分に洗浄し、肉眼的に調べた。 試料は、小腸の上方、中央及び下方の部位から、顕微鏡による観察で得られた。 組織を、緩衝性ホルマリン中で固定し、そして試料はヘマトキシリン及びエオシンで染色することによって顕微鏡における観察のために処理した。 実験は、3回繰り返して行った。
肉眼的な所見から、BSA生理食塩水の媒体で処置した群では、正常な外観の腸であることが示唆された。 同様に、PAFの非存在下にrPH.2を注射しても肉眼的所見に何らの影響もなかった。 これに対して、下行大動脈へPAFを注射すると、迅速且つ重篤な、腸の絨毛膜表面の変色及び出血が惹起こされた。 小腸の切片を粘膜側について調べた場合、同様の出血が認められ、腸管が事実上壊死状態にあるようであった。 PAFの大動脈への投与15分前に尾静脈を介してrPH.2を注射すると、腸の外観は正常であった。
顕微鏡による観察に際し、1、2及び4群から得られた腸では、正常な絨毛構造及び固有層内の細胞の正常な個体が明示された。 これに反し、PAFのみで処置した群では、充分に肥厚した壊死部及び粘膜全体に及ぶ出血が示された。
前記実験において使用したラットで、血漿PAF-AH活性も定量した。 PAF-AH活性は、以下の通りに定量した。 尾静脈に注射する前に、血液試料を採取した。 続いて、PAFの注射直前及び屠殺時に、大静脈から血液試料を採取した。 ヘパリン化キャピラリーチューブにおよそ50μlの血液を採収した。 遠心分離(980×g、5分)を行って血漿を得た。 ヤスダ(Yasuda)及びジョンストン(Johnston)、Endocrinology、130巻、708〜716頁、(1992)が、以前報告した通りに、酵素をアッセイした。
注射前のすべてのラットの平均血漿PAF-AH活性は、75.5±2.5単位(1単位は1ナノモル×分-1×ml-1血漿に相当する)であることが見出された。 媒体の注射後15分の平均血漿PAF-AH活性は、第1群については75.2±2.6単位、そして第3群については76.7±3.5単位であった。 25,500単位のrPH.2を注射したラットの血漿PAF-AH活性は、15分後に、第2群については2249±341単位、そして第4群については2494±623単位であった。 第2及び4群の活性は、屠殺時間(rPH.2注射後2時間15分後)まで高値(1855±257単位)を維持していた(第2群=1771±308、第4群=1939±478単位)。 これらの結果、媒体のみを注射されたラット(第1及び3群)の血漿PAF-AH活性は、実験期間中変化しなかったことが示唆される。 PAF注射のみを受けたラットはすべて、NECを発症し、一方PAF注射の後にrPH.2が注射されたラットはすべて完全に保護されていた。
2.NECの予防の用量依存性
ラットにおけるNECに対する保護が用量依存性であるか否かを調べるために、PAF投与の15分前に、漸増量のrPH.2でラットを処置した。 最初に、25.5〜25,500単位の範囲のrPH.2をラットの尾静脈に投与した。 続いて、rPH.2の投与15分後に、PAF(0.2mlのBSA-生理食塩水中0.4μg)を腹部大動脈へ注射した。 PAF投与2時間後に小腸を摘出し、NECの発症について調べた。 血漿PAF-AH活性を、酵素を外来的に投与する前、ならびにrPH.2の投与後15分及び2時間15分に定量した。 結果は、各群で2〜5匹のラットの平均値である。
ラットにおけるNECに対する保護が用量依存性であるか否かを調べるために、PAF投与の15分前に、漸増量のrPH.2でラットを処置した。 最初に、25.5〜25,500単位の範囲のrPH.2をラットの尾静脈に投与した。 続いて、rPH.2の投与15分後に、PAF(0.2mlのBSA-生理食塩水中0.4μg)を腹部大動脈へ注射した。 PAF投与2時間後に小腸を摘出し、NECの発症について調べた。 血漿PAF-AH活性を、酵素を外来的に投与する前、ならびにrPH.2の投与後15分及び2時間15分に定量した。 結果は、各群で2〜5匹のラットの平均値である。
肉眼的所見により、2,000単位未満の酵素が投与されたラットはすべて、NECを発症することが示された。 酵素の最低保護量(2040単位)が投与されたラットにおける血漿PAF-AH活性は、15分後に363単位/mlであり、これは基底レベルよりも5倍増大した数値に該当する。 合計1,020単位未満でrPH.2を投与した場合、得られる血漿酵素活性は平均およそ160以下であって、すべてのラットがNECを発症していた。
3.NECに対する保護の期間
外来性のPAF-AH産物によってNECの発症に対する保護が提供される時間の長さを測るために、尾静脈を介してラットに一定量の酵素を注射し、続いて、様々な時点でPAFを投与した。 rPH.2(0.3ml中8,500単位)または媒体のみを、ラットの尾静脈に投与し、そして、酵素投与後様々な時間にPAF(0.2mlのBSA-生理食塩水中、0.36μg)を腹部大動脈に注射した。 NECの発症について評価するために、肉眼的観察及び組織学的実験用に、PAFの注射後2時間で小腸を摘出した。 酵素投与後様々な時間で、及びPAF投与後2時間で、血漿PAF-AH活性を定量した。 各群について、酵素活性に対する平均値±標準誤差を定量した。
外来性のPAF-AH産物によってNECの発症に対する保護が提供される時間の長さを測るために、尾静脈を介してラットに一定量の酵素を注射し、続いて、様々な時点でPAFを投与した。 rPH.2(0.3ml中8,500単位)または媒体のみを、ラットの尾静脈に投与し、そして、酵素投与後様々な時間にPAF(0.2mlのBSA-生理食塩水中、0.36μg)を腹部大動脈に注射した。 NECの発症について評価するために、肉眼的観察及び組織学的実験用に、PAFの注射後2時間で小腸を摘出した。 酵素投与後様々な時間で、及びPAF投与後2時間で、血漿PAF-AH活性を定量した。 各群について、酵素活性に対する平均値±標準誤差を定量した。
その結果、rPH.2の注射後最初の8時間内でNECを発症したラットはなく、しかしながら、酵素の注射後24及び48時間後にPAFで刺激したラットは100%、NECを発症することが示された。
4.NECの回復
PAF-AH産物の投与で、PAF注射により誘発されるNECの発症を回復することができるか否かを調べるために、PAF(0.4μg)の投与後2分で大静脈への注射を介して25,500単位の酵素を投与した。 いずれのラットもNECを発症することはなかった。 しかしながら、PAFの注射15分後に、この経路を介してrPH.2を投与した場合には、すべてのラットがNECを発症し、この結果は以前フルカワら(前出)により報告された、PAFの投与により誘発されるNECの発症の迅速なタイムコースと一致するものであった。
PAF-AH産物の投与で、PAF注射により誘発されるNECの発症を回復することができるか否かを調べるために、PAF(0.4μg)の投与後2分で大静脈への注射を介して25,500単位の酵素を投与した。 いずれのラットもNECを発症することはなかった。 しかしながら、PAFの注射15分後に、この経路を介してrPH.2を投与した場合には、すべてのラットがNECを発症し、この結果は以前フルカワら(前出)により報告された、PAFの投与により誘発されるNECの発症の迅速なタイムコースと一致するものであった。
これらの観察の概要より、血漿PAF-AH活性の比較的わずかな(5倍)増大によって、NECを保護することができることが示唆される。 これらの観察は、胎児ウサギ(マキら、Proc. Natl. Acad. Sci(USA)、85巻、728〜732頁(1988))及び成熟前の幼児(カプランら、J. Pediatr.、116巻、908〜964頁(1990))における血漿PAF-AH活性が比較的低いことが立証されている以前の報告と併せて、出生時に低体重の幼児に組換えPAF-AH産物を予防的に投与することが、NECの処置に有用であるかもしれないことを示唆するものである。
B.NECの新生児モデルにおける活性
配合飼料及び窒息(ヒトにおける疾患に対する2つの通例の危険因子)により、新生ラットにストレスがかけられた、NECモデルにおいて、PAF-AH産物であるrPH.2の有効性を以下の通りに評価した。 このモデルにおいて、およそ70〜80%のラットが生後第3日までに新生児NECに類似した肉眼的及び鏡顕的腸傷害を発症している。 新生ラットは、CO2で窒息させ、腹部切開により出産させた、妊娠スプラグ−ドーリー(Sprague-Dawley)ラット(ハーラン スプラグ−ドーリー、インディアナポリス、インディアナ州)から得た。 新生ラットは、集めて乾燥させ、そして実験期間全体にわたり新生児用インキュベーター中に保持した。
配合飼料及び窒息(ヒトにおける疾患に対する2つの通例の危険因子)により、新生ラットにストレスがかけられた、NECモデルにおいて、PAF-AH産物であるrPH.2の有効性を以下の通りに評価した。 このモデルにおいて、およそ70〜80%のラットが生後第3日までに新生児NECに類似した肉眼的及び鏡顕的腸傷害を発症している。 新生ラットは、CO2で窒息させ、腹部切開により出産させた、妊娠スプラグ−ドーリー(Sprague-Dawley)ラット(ハーラン スプラグ−ドーリー、インディアナポリス、インディアナ州)から得た。 新生ラットは、集めて乾燥させ、そして実験期間全体にわたり新生児用インキュベーター中に保持した。
第1に、rPH.2の投与量及び吸収特性を評定するために、独立した動物群を使用した。 正常の新生ラット児には、3つの異なる経小腸または腹腔内投与量のrPH.2(3λ、15λまたは75λ)のうちの一つを0時に与え、そして、血漿PAF-AH活性を評価するために、1時間、6時間または24時間後に血液を採収した。 基質インキュベーションアッセイ(グレイ(Gray)ら、Nature、374巻、549頁、(1995))及び、各試料に対する抗ヒトrPAF-AHモノクローナル抗体(実施例13に記載の90F2D及び90G11D)を利用したELISAを使用して、PAF-AH活性を測定した。 選択した試料については、ヒトrPAF-AHに対して作製した2つの異なるモノクローナル抗体(実施例13に記載の90F2D及び90G11D)を使用して、免疫組織化学的分析を実施した。 免疫組織化学的分析は、抗体を1:100に希釈し、終夜インキュベートすることを採用した標準技術で行った。
正常の新生ラットにrPH.2を経小腸投与した後、基質インキュベーションアッセイまたはELISA技術のいずれを使用しても、いかなる時点でも測定可能な血漿PAF-AH活性は見られなかった。 rPH.2の腹腔内投与の場合、両方法を使用して投与後1時間までに、かなりの循環系内PAF-AH活性が測定可能であり、この活性は6時間でピークをなした。 rPH.2の投与量を高めた結果(3から75λ、10から250 U)、血漿PAF-AH活性はさらに高くなった。 免疫組織化学的分析により、経小腸投与の後に、腸粘膜の上皮細胞にrPAF-AH産物が存在することが明らかになった。 反応性は、腸の絨毛に最も密集し、腺窩細胞における染色は最少であった。 空腸よりも回腸により染色が認められ、また、ある程度のrPAF-AH産物が、結腸の一部に免疫化学的に同定された。 対照試料で、または腹腔内経路を介して投与されたラットから回収された検体では、明白な染色は認められなかった。 しかして、rPAF-AH産物の経小腸投与によって、酵素が測定可能に全身的に吸収されることなく、局所的に粘膜上皮に蓄積される結果が惹起こされ、一方これに対してrPAF-AH産物の腹腔内投与では、循環系の酵素レベルが上昇するが局所的な粘膜への蓄積は起こらないという結果となった。
NECモデルにおいて、NECは、カプランら、Pediatr. Pathol.、14巻、1017〜1028頁、(1994)に従い新生ラットにて誘発させた。 概説すると、粉末から再構成された新生児用調合乳(エスビリアク(Esbiliac)、ボーデン社(Borden Inc))を、授乳用チューブを介して3時間毎にラットに与えた。 授乳量は、最初に授乳1回当たり0.1mlにて開始し、プロトコルの4日目までに授乳1回当たり0.4mlまで馴らしながら漸増させた。 すべてのラットを、閉鎖したプラスチックチャンバー内で100%チッ素を50秒間呼吸させ、次いで10分間冷却状態(4℃)に曝すことにより、1日2回無酸素傷害の攻撃を施した。 授乳後その都度、穏やかな手技で腸及び膀胱の機能を刺激した。 ラットは、96時間、または窮迫の徴候を示すまで飼育した。 罹病したラットは、腹部膨張、血便、呼吸窮迫、チアノーゼ、及び嗜眠を呈しており、断頭によって安楽死させた。 屠殺後、各ラットの腸を、壊死の徴候について肉眼的に調べ、次いでその後組織学的分析を行うためにホルマリン固定した。 検体をパラフィン埋設し、ミクロトームで薄切し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、そして2人の観察者により盲検的に検査した。 腸の傷害は、上皮細胞のリフティングまたは分離に対して1+、絨毛中レベルまでへの上皮細胞の痂皮形成に対して2+、絨毛全体の壊死に対して3+、貫壁性壊死に対して4+として評点した。
rPH.2の有効性を評価するために、3つの異なる群のラットに経小腸投与、腹腔内投与またはその両方を介して化合物での処置を施した。 rPH.2調製物は、0.8mg/mlタンパク質、そしておよそ4000単位/mgのPAF-AH活性を有しており、エンドトキシン/タンパク質の比率は0.5 EU/mgを下回っていた。 経小腸投与のラットには、各々の授乳に入れて希釈された25λ(80U)のrPH.2が口胃チューブを介して与えられた(3時間毎)。 腹腔内投与のラットには、毎日2回腹腔内注射することにより75λが与えられた。 対照のラットには、rPH.2を含まない、適量の緩衝液(20mM NaPO4、pH 7.4)を与え、各実験群につき同時に試験した。 死亡率及びNECの徴候を各処置群について評価し、差異を、フィッシャーの完全検定(Fischer's Exact test)を使用して統計的に分析した。 0.05を下回るp値の場合に、有意であると考えた。 結果を以下の表9に示す。
経小腸によるrPH.2の投与は、対照のラットに比較してNEC及び死亡の双方の発生率を有意に減少させた。 経小腸投与による4つの異なる実験の結果から、rPH.2を用いた前処置で19/26(対照)から6/26にNECが減じられることが示された(p<0.001)。 腸の傷害は、被処置及び対照のラット間で多様性があったが、ほとんどの場合、ある部分での中絨毛性(midvillous)壊死、他の領域における絨毛全体の壊死、貫壁性壊死の散発領域、及び残りの、組織学的に正常な腸の部分によりその特徴が示された。 処置ラット及び対照ラットにおける、腸の傷害を伴う、最悪のNECの程度は似通っていた(対照ラットで2.8に対し、rPH.2処置ラットで2.4の評点中央値、p>0.05)。
rPH.2を用いた腹腔内投与により、このモデルにおいてNECまたは死亡に対する有意な影響力が示されることはなかった。 症状の始まりは、この群と対照との間で似通っており(対照で40±5時間に対し、rPH.2処置ラットで36±7時間)、また、双方の群におけるNECの程度も似通っていた(対照での評点中央値2.6に対し、rPH.2処置ラットでは2.5)。
単一の処置群として、経小腸及び腹腔内の双方による平行投与にて、ラットへのrPH.2の投与を行う(3時間毎の各授乳時における、25λのrPH.2に加え、毎日2回75λを腹腔内注射)、さらなる実験を実施した。 結果は前掲の表9に示す。 死亡率では、処置群と対照群との間に有意な差はなかったが、rPH.2処置によって、NECの発生率が有意に減じられた(対照ラットで10/17に対し、rPH.2処置ラットで3/14、p=0.04)。
銘記すべきは、rPH.2処置群において死亡した7匹のラットのうち6匹が、大腸菌に対して陽性の血液培養結果を示した(死亡直前に得られた)ことである。
これらの結果から、PAFで誘発したものでないNECの新生児モデルにおけるPAF-AH産物の保護的役割が、さらに支持される。 rPAF-AH産物を用いた経小腸処置によってNECは予防され、また、これらの用量にて腹腔内処置しても明白な効果は示されなかった。 これらの知見から、調合乳が与えられた、NECに対する危険を孕んだ未成熟新生児にPAF-AH産物を補充することによってこの疾患の発症率が減じられるかもしれないことが示唆される。
実施例18
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のモルモットのモデルでのPAF-AH産物の有効性を調べた。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のモルモットのモデルでのPAF-AH産物の有効性を調べた。
モルモットに対して静脈内に注射された血小板活性化因子(PAF)によって、ヒトにおける初期ARDSを想起させる深部肺炎症がつくり出される。 PAFの静脈内注射後数分以内に、肺の実質組織が鬱血するようになり、気管支及び細気管支の収縮を伴う(レロウッチ−ツビアナら、前出)。 血小板及び多形核好中球が辺縁化し始め、肺の細動脈に沿って細胞集塊が容易に同定される(レロウッチ−ツビアナ、Br. J. Exp. Path.、66巻、345〜355頁、(1985))。 PAFの注入により気道壁から解離し、気道の管腔に蓄積する、気管支上皮細胞も損傷を受ける。 この気道上皮細胞への損傷は、ARDSの進行の際にヒトで生じるヒアリン膜形成に一致するものである。 好中球及び血小板の辺縁化の後、直ちに肺の肺胞隔膜及び肺胞腔へのこれらの細胞の遊出が起こる。PAFによって誘出された細胞浸潤物に伴って、気道の浮腫を惹き起こす、かなりの管漏出が起こる(キルシュ(Kirsch)、Exp. Lung Res.、18巻、447〜459頁、(1992))。 浮腫の顕性は、in vitro実験(灌流されたモルモット肺において、125Iで標識されたフィブリノゲンの管外遊出を、PAFが量依存的(10〜1000 ng/ml)に誘発する)により、さらに支持される(バスラン(Basran)、Br.J.Pharmacol.、77巻、437頁、(1982))。
前記観察に基づき、モルモットにおけるARDSのモデルを開発した。 麻酔をかけた雄性ハートリー(Hartly)モルモット(およそ350〜400グラム)の頸静脈にカニューレを入れ、担体の、0.25%のウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝性生理食塩水(PBS-BSA)500μl用量中に希釈したPAFを100〜400ng/kgの範囲の総投与量で15分にわたり注入する。 PAF注入後様々の間隔をおいて、モルモットを屠殺し、肺組織を採収する。 PAFを注入したモルモットで、用量依存性の肺損傷及び炎症が、15分までに明瞭に顕示され、60分間存在し続ける。 PAFで処置したモルモットの肺胞腔には、好中球及び赤血球が存在するが、対照または偽性注入を行ったモルモットでは存在しない。 上皮細胞の損傷の顕性も明らかであり、ヒトARDS患者におけるヒアリン膜形成を想起させる。 PAFを注入したモルモットから採取した気管支肺胞洗浄(BAL)試料について行ったタンパク質定量により、炎症を受けた肺での劇的なタンパク質の蓄積(血管漏出の明瞭な証拠)が示される。
rPH.2は、ARDSのモルモットモデルにおけるPAFを介した肺損傷に対する完全な保護を行うことが示された。 rPH.2(500μl中2000単位)または500μlのPAF-AH緩衝液のみのいずれかで、モルモットの群を前処置した。 15分後に、これらのモルモットに500μl容量中400ng/kgのPAFを15分間かけて注入した。 加えて、モルモットの偽性群に500μlのPBS-BSAを注入した。 PAF注入の完了時に、モルモットを屠殺し、凝固防止のために2μg/mlのヘパリンを含有する生理食塩水10 mlで肺を2回洗浄することによりBAL液を集めた。 BAL中のタンパク質濃度を定量するために、試料を1:10の生理食塩水で希釈し、OD280を測定した。 偽性モルモットからのBAL液は、2.10±1.3mg/mlのタンパク質濃度を有することが見出された。 これとは極めて対照的に、PAFを注入したモルモットからのBAL液は、12.55±1.65mg/mlのタンパク質濃度であることが見出された。 rPH.2で前処置したモルモットにおいて、BAL液は1.13±0.25 mg/mlのタンパク質濃度を有することが見出され、これは偽性の対照に匹敵し、PAF-AH産物がPAFに呼応した肺浮腫を完全に防御することを立証するものである。
実施例19
PAF-AH産物であるrPH.2の有効性を、急性膵炎の異なる2つのモデルで評価した。
PAF-AH産物であるrPH.2の有効性を、急性膵炎の異なる2つのモデルで評価した。
A.ラット膵炎モデルにおける活性
雄性ウィスターラット(200〜250g)は、チャールズリバーラボラトリーズ(Charles River Laboratories、ウィルミントン、マサチューセッツ州)より購入した。 ラットは、環境を制御した部屋で、23±2℃にて、12時間の明/暗サイクルとして飼育し、標準的な実験動物用食餌を給餌し水は随意に与えた。 ラットは、対照群または実験群のいずれかに任意に割り振った。 50mg/kgのペントバルビタールナトリウムを腹腔内に適用して麻酔をかけ、ポリビニル製カテーテル(サイズV3、バイオラブプロダクツ(Biolab Products)社、レイクハバス(Lake Hav-asu)、アリゾナ州)を、静脈切開によって頸静脈に入れた。
雄性ウィスターラット(200〜250g)は、チャールズリバーラボラトリーズ(Charles River Laboratories、ウィルミントン、マサチューセッツ州)より購入した。 ラットは、環境を制御した部屋で、23±2℃にて、12時間の明/暗サイクルとして飼育し、標準的な実験動物用食餌を給餌し水は随意に与えた。 ラットは、対照群または実験群のいずれかに任意に割り振った。 50mg/kgのペントバルビタールナトリウムを腹腔内に適用して麻酔をかけ、ポリビニル製カテーテル(サイズV3、バイオラブプロダクツ(Biolab Products)社、レイクハバス(Lake Hav-asu)、アリゾナ州)を、静脈切開によって頸静脈に入れた。
カテーテルは、背頸部領域に存在するよう皮下に潜行させ、次いでラットを麻酔から甦らせた。 ラットは、自由に水を飲めるようにしたが、終夜絶食させた。 覚醒しているラットについて、次の日に実験を実施した。 暫くの間、生理食塩水を継続的に(0.2ml/時間)注入することにより、カテーテルの開存性を維持した。 実験の日に、ラットにrPH.2または媒体対照の静脈内注射を行い、次いで、以下のいずれか、すなわち、(1)1時間当たり5μg/kgのセルレインを3.5時間、または(2)1時間当たり10μg/kgのセルレインを5時間(リサーチプラス(Research Plus)、ベイヨン(Bayonne)、ニュージャージー州)を注入した。 注入完遂後直ちに、ラットをペントバルビタールナトリウムで麻酔し、腹部を開いて、続くアッセイ用に5mlの血液を下大静脈から吸い取った。 次いで、ラットを全採血によって屠殺した。 血清アミラーゼ、血清リパーゼ及び血清ビリルビンを測定し、そして膵臓を採収した。 膵臓の断片を、組織学的検査用に4%リン酸緩衝性ホルムアルデヒド溶液にて固定するか、またはミエロペルオキシダーゼ活性の測定用に-80℃に直ちに急速冷凍した。 膵臓のさらなる断片は、下記のように膵臓の水分含量ならびに膵臓のアミラーゼ及びトリプシンについて評価した。 好中球の追放(sequestration)の尺度たるミエロペルオキシダーゼ活性を、下記の通りに膵臓及び肺において評価した。 肺の血管透過性も、下記の通りに評価した。 データの統計的分析は、非対合スチューデントt-検定を使用して行った。 報告データは、少なくとも3回の実験の平均値±S.E.Mで表す。 結果の差は、p<0.05の場合に有意であると考えた。
1.膵臓水分含量
膵臓の断片を、水気を吸い取って秤量し(湿重量)、次いで、120℃にて34時間で完全に乾燥させ、再度秤量した(乾燥重量)。 膵臓の水分含量は、湿重量と乾燥重量の差として計算し、膵臓の湿重量の百分率として表した。 膵臓の水分含量の増加は、浮腫の発症を示唆すると考えられた。
膵臓の断片を、水気を吸い取って秤量し(湿重量)、次いで、120℃にて34時間で完全に乾燥させ、再度秤量した(乾燥重量)。 膵臓の水分含量は、湿重量と乾燥重量の差として計算し、膵臓の湿重量の百分率として表した。 膵臓の水分含量の増加は、浮腫の発症を示唆すると考えられた。
2.血清及び膵臓アミラーゼ
血清中のアミラーゼ活性は、ピエール(Pierre)ら、Clin. Chem.、22巻、1219頁(1976)に従って、4,6-エチリデン(G7)-p-ニトロフェニル(G1)-α1D-マルトプラシド(ET-G7PNP)(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)を基質として使用して測定した。 10mMリン酸塩緩衝液、pH 7.4にホモジェナイズした膵臓組織におけるアミラーゼ活性を、同じ方法を使用して測定した。
血清中のアミラーゼ活性は、ピエール(Pierre)ら、Clin. Chem.、22巻、1219頁(1976)に従って、4,6-エチリデン(G7)-p-ニトロフェニル(G1)-α1D-マルトプラシド(ET-G7PNP)(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)を基質として使用して測定した。 10mMリン酸塩緩衝液、pH 7.4にホモジェナイズした膵臓組織におけるアミラーゼ活性を、同じ方法を使用して測定した。
3.膵臓トリプシン
基質としてBoc-Gin-Ala-Arg-MCAを使用して、蛍光測定法によりトリプシン活性を測定した。 概説すると、200μlの試料と、150mM NaCl、1mM CaCl2及び0.1%ウシ血清アルブミンを含有する50mMトリス緩衝液(pH 8.0)2.7 mlをキュベット中で混合した。 反応を開始すべくプレインキュベーションを行った20秒後に、試料に基質100μlを添加した。 蛍光の読み取りを行い(励起:380 nm、発光:440 nm)、そして勾配として表現した。 異なる実験からのデータの集積を許容するため、画分のトリプシン活性を総トリプシン活性の百分率として表現した。
基質としてBoc-Gin-Ala-Arg-MCAを使用して、蛍光測定法によりトリプシン活性を測定した。 概説すると、200μlの試料と、150mM NaCl、1mM CaCl2及び0.1%ウシ血清アルブミンを含有する50mMトリス緩衝液(pH 8.0)2.7 mlをキュベット中で混合した。 反応を開始すべくプレインキュベーションを行った20秒後に、試料に基質100μlを添加した。 蛍光の読み取りを行い(励起:380 nm、発光:440 nm)、そして勾配として表現した。 異なる実験からのデータの集積を許容するため、画分のトリプシン活性を総トリプシン活性の百分率として表現した。
4.組織及び形態計測
光学鏡顕のために、膵臓の頭部、主部及び尾部の完全な無作為切片標本を、10%中性リン酸緩衝性ホルマリンに固定した。 パラフィンに埋設した5μmの切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色し、経験を積んだ形態学者が盲検的に調べた。 腺房細胞傷害/壊死を、(a)腺房細胞ゴーストの存在または(b)腺房細胞の空胞化及び膨潤ならびに腺房の全体または一部の組織構造の破壊(双方とも、炎症性反応に関わるに相違なかった)のいずれかとして定義した。 腺房細胞傷害/壊死の量及び腺房組織によって占められる総面積は、NIH-1200イメージ分析ソフトウェアを装備したコンピューター処理面積測定イメージ分析ビデオユニット(モデルCCD-72、Dage-MT1、ミシガンシティー、インディアナ州)を使用してそれぞれ形態計測的に定量化した。 任意に選択した10の顕微鏡視野(125×)を、各組織試料について調べた。 腺房細胞傷害/壊死の程度は、傷害/壊死についての範疇に該当する領域によって占有される総腺房組織の百分率として表した。
光学鏡顕のために、膵臓の頭部、主部及び尾部の完全な無作為切片標本を、10%中性リン酸緩衝性ホルマリンに固定した。 パラフィンに埋設した5μmの切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色し、経験を積んだ形態学者が盲検的に調べた。 腺房細胞傷害/壊死を、(a)腺房細胞ゴーストの存在または(b)腺房細胞の空胞化及び膨潤ならびに腺房の全体または一部の組織構造の破壊(双方とも、炎症性反応に関わるに相違なかった)のいずれかとして定義した。 腺房細胞傷害/壊死の量及び腺房組織によって占められる総面積は、NIH-1200イメージ分析ソフトウェアを装備したコンピューター処理面積測定イメージ分析ビデオユニット(モデルCCD-72、Dage-MT1、ミシガンシティー、インディアナ州)を使用してそれぞれ形態計測的に定量化した。 任意に選択した10の顕微鏡視野(125×)を、各組織試料について調べた。 腺房細胞傷害/壊死の程度は、傷害/壊死についての範疇に該当する領域によって占有される総腺房組織の百分率として表した。
5.膵臓及び肺ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性測定
膵臓及び肺における好中球の追放を、組織ミエロペルオキシダーゼ活性の測定によって評価した。 屠殺時に採収した組織試料は、アッセイの時まで-70℃にて保存しておいた。 試料(50mg)を解凍し、20mMリン酸塩緩衝液(pH 7.4)1mlにホモジェナイズして遠心分離した(10,000×g、10分、4℃)。 得られたペレットを0.5%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)を含有する50mMリン酸塩緩衝液(pH 6.0)に再懸濁し、そして凍結−解凍の4サイクルに付した。 懸濁液は、次いで40秒超音波処理することによりさらに粉砕し、遠心分離(10,000×g、4℃にて5分)を行った。 抽出された酵素、1.6mMテトラメチルベンジジン(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)、80mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 5.4)及び0.3mM過酸化水素からなる反応混液は、37℃にて110秒間インキュベートし、コバスバイオ(CobasBio)自動分析器にて655nmで吸光度を測定した。 次いで、この吸光度を組織試料の画分の乾燥重量に対して補正した。
膵臓及び肺における好中球の追放を、組織ミエロペルオキシダーゼ活性の測定によって評価した。 屠殺時に採収した組織試料は、アッセイの時まで-70℃にて保存しておいた。 試料(50mg)を解凍し、20mMリン酸塩緩衝液(pH 7.4)1mlにホモジェナイズして遠心分離した(10,000×g、10分、4℃)。 得られたペレットを0.5%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)を含有する50mMリン酸塩緩衝液(pH 6.0)に再懸濁し、そして凍結−解凍の4サイクルに付した。 懸濁液は、次いで40秒超音波処理することによりさらに粉砕し、遠心分離(10,000×g、4℃にて5分)を行った。 抽出された酵素、1.6mMテトラメチルベンジジン(シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)、80mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 5.4)及び0.3mM過酸化水素からなる反応混液は、37℃にて110秒間インキュベートし、コバスバイオ(CobasBio)自動分析器にて655nmで吸光度を測定した。 次いで、この吸光度を組織試料の画分の乾燥重量に対して補正した。
6.肺血管透過性の測定
総胆膵管の閉塞もまた、肺血管透過性及び組織学的検査によって定量可能な、重篤な膵炎関連肺傷害に典型的に帰するものである。
総胆膵管の閉塞もまた、肺血管透過性及び組織学的検査によって定量可能な、重篤な膵炎関連肺傷害に典型的に帰するものである。
動物を屠殺する2時間前に、5mg/kgのフルオレセインイソシアネートアルブミン(FITC-アルブミン、シグマケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)の静脈内急速注入を施した。 肺微小血管透過性を、血管区画から気管支肺胞腔へのFITC-アルブミンの漏出の定量によって評価した。 概説すると、屠殺直後に鉗子を用いて右気管支を塞ぎ、気管を曝出した。 続いて、気管に挿入したカニューレを使用することにより右肺を洗浄した。 生理食塩水での3回の洗液(60ml洗浄液)を集め、血清及び洗浄液中のFITC蛍光を、励起:494nm、発光:520nmで測定した。 血液に対する洗浄液の蛍光の割合を計算し、肺における微少血管透過性の測定値として採用した。 肺は、H&Eで染色し、組織学的検査も行った。
7.セルレイン及びrPH.2投与の効果
5μg/kg/時にて3.5時間、セルレイン単独で注入を行うと、ラットにおいて、典型的な穏やかな分泌促進誘発性の膵炎が惹起こされ、これは高アミラーゼ血症、膵臓の水分含量により測定される膵臓浮腫、ならびに顕著な腺房細胞空胞化及び脾臓浮腫を包含する組織学的変化によってその特徴が示される。 対照のラットに生理食塩水を注入した結果、これらの生化学的または組織学的変化の何らかが惹起こされることはなかった。 セルレイン注入の開始30分前に、5、10または20mg/kgの用量でrPH.2を静脈に投与すると、セルレイン単独の注入によって誘発された膵臓浮腫(水分含量)及び組織構造における変化の度合いを有意に変えることはなかった。 rPH.2の投与は、セルレインで誘導された膵臓のトリプシノーゲンまたはアミラーゼ含量の活性化に対する影響も有していなかった。
5μg/kg/時にて3.5時間、セルレイン単独で注入を行うと、ラットにおいて、典型的な穏やかな分泌促進誘発性の膵炎が惹起こされ、これは高アミラーゼ血症、膵臓の水分含量により測定される膵臓浮腫、ならびに顕著な腺房細胞空胞化及び脾臓浮腫を包含する組織学的変化によってその特徴が示される。 対照のラットに生理食塩水を注入した結果、これらの生化学的または組織学的変化の何らかが惹起こされることはなかった。 セルレイン注入の開始30分前に、5、10または20mg/kgの用量でrPH.2を静脈に投与すると、セルレイン単独の注入によって誘発された膵臓浮腫(水分含量)及び組織構造における変化の度合いを有意に変えることはなかった。 rPH.2の投与は、セルレインで誘導された膵臓のトリプシノーゲンまたはアミラーゼ含量の活性化に対する影響も有していなかった。
さらに多量のセルレインをラットに注入(10μg/kg/時を5時間)した結果、さらに重篤な膵炎が惹起こされ、対照に対してより明白な血清アミラーゼ活性及び膵臓浮腫の増大、膵臓MPO活性の顕著な増加、ならびに膵臓でのトリプシノーゲン活性化及びアミラーゼ活性の有意な増大によって特徴が示された。 膵臓の組織構造から、膵臓浮腫及び腺房細胞空胞化のみならず、いくらかのパッチ状の壊死及びいくつかの浸潤細胞が示された。
セルレイン(10μg/kg/時)の注入の開始30分前に、rPH.2を投与(5または10 mg/kg、静脈内)すると、セルレイン単独の注入によって誘発された膵臓の変化の多くのものの度合いが改善された。 結果を以下の表10に示す。 5mg/kgの投与量でrPH.2処置した結果、血清アミラーゼ活性の減少が惹起こされた(10984±1412から6763±1256)。 rPH.2をより多量に、10mg/kgの投与量としても、高アミラーゼ血症のさらなる改善には至らなかった。 rPH.2を5または10 mg/kgいずれかを用いた処置の結果、水分含量で測定した、セルレインで誘発された膵臓浮腫の、ある程度の減少も惹起こされた(セルレイン単独の場合、90.61±0.27に対し、セルレインに加えて5mg/kg rPH.2を用いた場合については88.21±0.61)。 rPH.2を5mg/kgの投与量とした場合、膵臓MPO活性の有意な改善が提供された(対照と比べてセルレイン単独の場合2.92±0.32倍の増加に対して、セルレインとrPH.2との場合1.19±0.21、p<0.05)。 rPH.2の投与量をさらに高めても、MPO活性のさらなる改善には至らなかった。 いずれの投与量のrPH.2でも、膵臓におけるトリプシノーゲン活性化またはアミラーゼ含量の大きさを有意に変えることはなかった。 膵臓の組織形態から、rPH.2前処置の後には、鏡顕的壊死及び浸潤のある程度の改善が示唆された。
膵炎に関わる肺傷害は、臨床的にも、また膵炎のいくつかのモデルでも、両方で観察されている。 5μg/kg/時にて3.5時間セルレインを注入すると、結果として軽症の膵炎が惹起こされるが、肺への有意な傷害は生じなかった。 しかしながら、10μg/kg/時にて5時間セルレインを注入すると、さらに重篤な膵炎が惹起こされ、また、肺の血管透過性増加(0.31±0.04から0.79±0.09)、肺MPO活性(好中球追放を示す)及び組織学的検査に基づく好中球浸潤によって定量化される、肺への傷害が惹起こされた。
セルレインの注入30分前にrPH.2を5mg/kgの用量で投与すると、セルレイン単独の注入によって誘導される肺MPO活性の上昇が有意に改善された(セルレイン単独の場合3.55±0.93に対し、セルレインとrPH.2との場合1.51±0.26)。 rPH.2処置はセルレイン注入後の肺組織において観察される鏡顕的変化の重篤度を有意に減じた。 セルレインで誘導される肺血管透過性の増大は、統計的に有意ではないものの、rPH.2処置によって減じられた。 10mg/kgという高用量のrPH.2とした場合、低用量の場合よりもセルレインで誘発された肺の傷害の重篤さの低減においてさらなる有効性はなかった。
健康な、無作為に捕えたいずれかの性のアメリカンオポッサム(Didelphis virginiana)(2.0kgから4.0kg)を、スコット-ハス(Scott-Hass)より入手し、環境を制御した部屋で、23±2℃にて、12時間の明/暗サイクルとして飼育し、標準的な実験動物用食餌を給餌し水は随意に与えた。 終夜絶食した後、動物は、50mg/kgのペントバルビタールナトリウム(ベテリナリーラボラトリーズ社(Veterinary Laboratories Inc.)、レネクサ、カンサス州)を腹腔内に適用して麻酔をかけた。 滅菌条件下で、正中線切開によって開腹術を実施し、すべての動物において急性壊死性膵炎を誘発するために総胆膵管を結紮した。 加えて、胆汁の貯蔵所として胆嚢が働くことを妨げるべく、胆嚢管を結紮した。 動物を対照群または実験群に無作為に振り分けた。 膵管の結紮後2日目に開始して、実験群に1日当たり5mg/kg体重のrPH.2(4mg/ml溶液として投与)を尾静脈を介して静脈内投与し、一方対照群には、同じ容量の偽薬媒体のみの静脈注射を施した。 処置の1及び2日後(膵管の結紮後3及び4日目)に、致死量のペントバルビタールナトリウムによって動物を安楽死させた。 血清アミラーゼ、血清リパーゼ及び血清ビリルビンの測定のために心臓から血液試料を採取し、そして膵臓を採収した。 膵臓の断片を、組織学的検査用に4%リン酸緩衝性ホルムアルデヒド溶液にて固定するか、またはミエロペルオキシダーゼ活性の測定用に-80℃に直ちに急速冷凍した。 膵臓のさらなる断片は、本実施例のA節に前記した通りに、膵臓の水分含量及び膵臓のアミラーゼについて評価した。 好中球の追放(sequestration)の尺度たるミエロペルオキシダーゼ活性を、前記の通りに膵臓において評価した。 肺の血管透過性も、前記の通りに評価した。
報告した結果は、3回以上の独立した実験における複数の定量より得られた、平均値±平均値の標準誤差(S.E.M)で表す。 データが2群のものでしかない場合、スチューデントt-検定を使用して変化の有意性を評価し、また3群以上の比較の場合には、分散分析法(ANOVA)によって評価した。 ANOVAによって有意差が示唆された場合には、群の間の差について、そのあとに行う検定としてTukey法を使用してデータを分析した。 0.05を下回るp値を、有意差が示されるものと考えた。
結果を表11に示す。 総胆膵管の閉塞の結果、高アミラーゼ血症、高リパーゼ血症及び膵臓の広範囲にわたる壊死によって特徴付けられる重篤な壊死性膵炎が惹起こされた。
さらに、総胆膵管の閉塞は、血清ビリルビンレベルの顕著な増大に関わっていた。 膵管の結紮後2日目に開始したrPH.2の静脈内投与(5mg/kg/日)によって、管閉塞及び偽薬処置のみで誘発される多くの膵臓の変化の度合いが改善された。 rPH.2処置1日で、偽薬処置動物に比較して血清アミラーゼレベルは減少したが、この差は統計的に有意ではなく、そして2日間のrPH.2処置(膵管の結紮後4日目)では、偽薬に比して血清アミラーゼレベルが有意に減少した。 1または2日間のrPH.2処置で、対照に比して血清リパーゼレベルが減少したが、この差は統計的に有意ではなかった。 2日間のrPH.2処置で、対照に比して膵臓アミラーゼ含量が減少したが、1日の処置では膵臓アミラーゼの上昇が惹起こされた。 rPH.2を用いた処置が、血清ビリルビンレベル、膵臓ミエロペルオキシダーゼ活性または膵臓水分含量に影響を及ぼすことは観察されなかった。
胆膵管の閉塞によって誘発される、特徴的な主たる組織学的変化には、顕著な壊死、炎症細胞の浸潤、腺房細胞の空胞化、及び腺房管腔の顕著な拡大が包含されていた。 腺房細胞傷害に対する膵臓の形態計測検査によって、rPH.2処置の1及び2日後の膵臓に対するrPH.2の主要な保護効果が示された。 偽薬処置動物については総腺房細胞組織の48%に傷害があったのに比較して、rPH.2処置の1日後に腺房細胞の傷害は、総腺房細胞組織の約23%に減じられていた。 腺房細胞傷害のかかる減少は、処置2日後には、より一層明瞭であり、このとき、偽薬処置動物については約60%の傷害が生じていたのに比較して、rPH.2処置の結果、総腺房細胞組織の約35%に傷害が生じていた。
FITC注射により定量化される肺血管透過性によれば、偽薬群に比較して、rPH.2処置の1及び2日後に高い有意差が示された。 肺の組織学的検査により、すべての偽薬処置動物において重篤な肺傷害が示された。 肺傷害は、主にマクロファージ、リンパ球及び好中球の間質性且つ肺胞内への浸潤を伴う、広範囲にわたる炎症性応答、ならびにパッチ状であるが顕著な間質性浮腫及び肺胞膜の肥厚によって特徴付けられた。 rPH.2の投与の結果、炎症細胞の浸潤の顕著な減少及び間質性浮腫の減衰が常に惹起こされた。
要約すると、これらの結果より、膵管の結紮の48時間後に開始した、5mg/kg/日の用量でのrPH.2の静脈内投与の結果、アミラーゼ及びリパーゼの血液レベルの増加ならびにH&Eで染色した切片の形態計測検査により定量される腺房細胞傷害の有意な改善、そして膵炎によって誘発される肺傷害の重篤さの有意な減少が惹起こされた。 臨床的に関連性を有する、かかる膵炎モデルにおけるrPAF-AH産物の投与によって、膵炎の重篤さを減少する上での有益な効果が示された。
PAF-AH産物であるrPH.2の、HIV感染に関わる神経毒性に対する効果を評価するために実験を行った。 ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)による中枢神経系の感染の結果、アポトーシスによる神経減損が起こる。 神経細胞との接触を包含する様々な抗原性刺激によって活性化された、HIV-1で感染された単球は、PAFを含む神経毒性プロ炎症性サイトカインを高レベルで分泌している。 HIVで感染され活性化された単球由来のコンディションド メディウムの神経毒性に対するrPH.2の効果を評価した。
以下のように単球をHIVで感染させ、活性化した。 単球は、HIV及びB型肝炎につき血清反応陰性である供血者の白血球フェレーシス後の末梢骨髄細胞(PBMC)から採収し、そしてジェニス(Genis)ら、J. Exp. Med.、176巻、1703〜1718頁、(1992)に記載の通りに向流遠心分離によって、精製(98%を上回る)した。 組換えヒトマクロファージコロニー刺激因子(MCSF)(ジェネティックスインスティテュート社(Genetics Institute, Inc.)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)を含むDMEM(シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)中で、付着単層として細胞を培養した(T-75培養フラスコにて1×104細胞/ml)。 これらの条件下で、単球はマクロファージへと分化する。 7〜10日間の培養後、0.01感染性ビリオン/標的細胞の感染多重度(MOI)にて、マクロファージをHIV-1ADA(受託番号M60472)に曝した。 免疫蛍光法及びin situハイブリダイゼーション技術(カルター(Kalter)ら、J. Immunol.、146巻、298〜306頁、(1991))によって調べると、これらの条件下で、HIV-1接種の7日後に単球の20〜50%が感染されていた。 2日から3日毎に、すべての培養物に新鮮な培地を再補給した。 HIV-1感染後5〜7日目、及び逆転写酵素活性のピークの間(107cpm/ml)(カルターら、前出に従って評価した)、HIV-1が感染した単球細胞の培養物及び平行して行った非感染単球細胞の培養物を、LPS(10ng/ml)または媒体で37℃にて30分間刺激し、次いで神経毒性アッセイに使用するまで-80℃にて急冷凍した。
ヒト大脳皮質神経細胞培養物を、以下のように樹立した。 ヒト胎児脳組織を、バンカー(Banker)及びコウアン(Cowan)、Brain Res.、126巻、397〜425頁、(1977)の変法に従って、第2の3カ月期(second trimester、妊娠13〜16週)のヒト胎児脳組織の終脳から得た。 概説すると、脳組織を集めて、30mlの冷ハンクス(Hank's) BSS(Ca+2及びMg+2に加えて25mM HEPES、及び5×ゲンタマイシンを含有する)にて洗浄して、付着髄膜及び血液から分離し、2mm3の断片に切断した。 その組織を230μMのナイテックスバッグに押し通し、炎で磨表面を形成した(flame-polish)パスツールピペットを通して10〜15回、穏やかに粉砕した。 組織は550rpmにて5分間、4℃で遠心分離し、次いで、N1成分(インシュリン、5mg/l;トランスフェリン、5mg/l;セレナイト、5μg/l;プロゲステロン20nM;プトレシン、100μM)、さらに10%胎児ウシ血清(FCS)、PSN抗生物質混合物(ペニシリン、50mg/l;ストレプトマイシン、50mg/l;ネオマイシン、100mg/l)、及びフンギゾン(2.5mg/l)を含有するMEM-hipp(D-グルコース5g/l;L-グルタミン、2mM;HEPES、10mM;ピルビン酸ナトリウム、1mM;KCl 20mM)の5〜10mlにペレットを再懸濁した。 細胞数及び生存率は、0.4%トリパンブルーを含むハンクスBSSで希釈し(1:1容量/容量)、血球計算盤を用いて計数することによって定量した。 細胞は、10mlのピペットを用いて5回、注意深くほぐし、そして、24ウェル培養ディッシュに入れた、ポリ-L-リジン(70K〜150K分子量、シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)で予め被覆された12mmカバーガラスにつき105細胞の密度にて播いた。 1mlの培地を各培養ウェル内にピペットで入れた。 3日毎に培地を変えながら、5%CO2/95%空気の給湿した条件下で37℃にて10〜28日間、細胞を培養した。 これらの条件下で、培養物のニューロンについての均質性は60〜70%を上回り、20〜30%の星状細胞と、1%を下回る小膠細胞を含んでおり、〜10%のマクロファージ及び小膠細胞染色を伴っていた。 培養の14〜28日後に、神経細胞の培養は、N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)または非NMDA受容体を、NMDAまたはアルファ-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)の刺激毒性用量投与後に死滅するのに充分なレベルで発現している。
神経毒性アッセイは、以下の通りに実施した。 被検試料は、(a)LPSで刺激された、HIV-1で感染された単球細胞由来のコンディションド メディウム、(b)対照培地、(c)51μg/mlにてrPH.2が添加されたコンディションド メディウムまたは(d)rPH.2用の媒体が添加されたコンディションド メディウムであり、これを、1:10容量/容量濃度にて24時間、神経細胞培養物に付した。 新しく切断されたDNAのフリーの3'-OH端にジゴキシゲニン-dUTPを結合するためにターミナルデオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)を用いる市販のキット(アポプ・タグ(Apop Tag);ONCOR、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を使用して、4%パラホルムアルデヒドに固定した神経細胞のカバーガラス上でin situにてアポトーシスを起こした核を同定することによって、神経毒性を測定した(TUNEL染色)。 無作為に選択した15以上の顕微鏡の視野において、TUNEL染色されたニューロンのデジタル化像を、コンピューター化した形態計数器(MCID、イメージングリサーチ(Imaging Research)社、セントカテリーナ、オンタリオ、カナダ)を使用して、[50×視野当たり、TUNELで染色された核の数/総ニューロンの数]について分析した。 データは、TUNEL染色に対して陽性なニューロンの核(%)±SEMで表され、図13に示すものである。 対照と実験処置との間の統計的有意性の検定は、ANOVAまたは対合t-検定によって確認し、0.05以下のp値の場合に有意であると判定した。 これらの培養物の定量によって、HIVで感染され活性化された単球細胞由来のコンディションド メディウムは、大脳皮質ニューロンの総個体数のほぼ25%に神経細胞死を誘導し、そしてrPH.2が総ニューロン数の5%を下回るまでにかかる毒性を低減できることが確認された。 対照培地で処置された培養物に比し、50μg/mlのrPH.2が神経細胞死に対して効果を有することはなかったので、rPH.2自体は神経毒性ではなかった。 中枢神経系におけるPAFの代謝を担う酵素であるPAF-AH産物と共にインキュベートすることによって神経毒性をほとんど完全に排除することができるので、本実験結果は、HIV-1で感染された、活性化された単球細胞由来のコンディションド メディウムを適用することによって誘導される神経毒性の主要要素は、PAFに起因するに相違ないことを明らかに示唆するものである。 これらの知見から、HIV-1感染に関わるCNS神経学的疾患の処置における治療的介入の可能性が示唆される。
実施例21
日本人のほぼ4%はその血漿中に、低量または検出不可能なレベルのPAF-AH活性を有している。 この欠損は、常染色体で劣性に起こる欠損を遺伝的に引き継いだと思われる喘息小児患者の呼吸症状と厳密に相関する(ミワら、J. Clin. Invest.、82巻、1983〜1991頁、(1988))。
日本人のほぼ4%はその血漿中に、低量または検出不可能なレベルのPAF-AH活性を有している。 この欠損は、常染色体で劣性に起こる欠損を遺伝的に引き継いだと思われる喘息小児患者の呼吸症状と厳密に相関する(ミワら、J. Clin. Invest.、82巻、1983〜1991頁、(1988))。
酵素は存在するが不活性な状態、もしくはPAF-AHの生合成不能の状態からこの欠損が生じるのかを確かめるために、PAF-AH活性が欠損している複数の患者からの血漿を、PAF-AH活性について(形質変換体に関する実施例10に記載した方法によって)ならびに以下のサンドウィッチ ELISAにおいてモノクローナル抗体90G11D及び90F2D(実施例13)を用いてPAF-AHの存在についての双方に関してアッセイを行った。 イムロン4平底プレート(ダイナテック社、チャンティリー、ヴァージニア州)を、100ng/ウェルのモノクローナル抗体90G11Dで被覆し、一晩置いた。 このプレートを、CMF-PBSに希釈した0.5%フィシュスキンゼラチン(シグマ社) で室温にて1時間ブロックし、3回洗浄した。 患者の血漿を、15mM CHAPSを含むPBSで希釈し、プレートの各ウェルに添加(50μl/ウェル)した。 このプレートを、室温にて1時間インキュベートし、4回洗浄した。
常法によってビオチン化し、PBSTに希釈した5μg/mlのモノクローナル抗体 90F2Dの50μlを各ウェルに添加し、プレートを、室温にて1時間インキュベートし、そして3回洗浄した。CMF-PBSTに1/1000に希釈したエキストラアビジン(シグマ社)50μlを引き続き各ウェルに添加し、現像前に、室温にて1時間インキュベートした。
PAF-AH活性と酵素レベルとの間の直接的な相関が観察された。 患者の血清中の活性の欠如は、検出可能な酵素の欠如として反映されていた。 同様に、正常な活性の半分の活性を有する血漿試料は、正常レベルのPAF-AH活性の半分の活性を有していた。 これらの観察結果より、PAF-AH活性の欠損が、酵素合成の不能またはモノクローナル抗体を認識しない不活性酵素によるものであることが示唆された。
さらなる実験により、この欠損がヒト血漿PAF-AH遺伝子における遺伝的損傷によるものであることが明らかとなった。 PAF-AH欠損の個体からのゲノムDNAを単離し、PAF-AH遺伝子に特異的なプライマーを用いたPCRの鋳型として使用した。
コーディング配列エキソンのそれぞれをまず増幅し、1つずつ配列決定した。 エキソン9での一つのヌクレオチドの変更(配列番号:7の996位のGからTへ)が観察された。
このヌクレオチドの変更の結果、PAF-AH配列の279位のフェニルアラニンからバリンへのアミノ酸置換(V279F)がもたらされた。 さらに11人のPAF-AH欠損患者個体からのゲノムDNAより、エキソン9を増幅したところ、同じ点突然変異を有することが見出された。
この突然変異が酵素を失活させるか否かを試験するために、この突然変異を含む大腸菌発現構築体を、実施例10に記載したと同様の方法により作製した。 大腸菌内に導入すると、発現構築体はPAF-AH活性を示さなかったが、この突然変異を伴わない対照発現構築体では活性が十分に認められた。 このアミノ酸置換はおそらく、観察された活性の欠損を惹き起こし、本発明のPAF-AH抗体との免疫反応性を欠如せしめる、構造的な修飾をもたらすものであると思われる。
よって、本発明のPAF-AH特異抗体は、血清中のPAF-AHの異常なレベル(正常レベルは、約1〜5単位/mlである)を検出し、PAF-AHを用いた病理学的状態の治療の改善のための診断法において使用することができる。 さらに、PAF-AH遺伝子の遺伝的損傷の同定は、日本人患者に認められるPAF-AH欠損の遺伝子スクリーニングを可能とする。 この突然変異により、制限エンドヌクレアーゼ部位(Mae II)が新しく生じるので、活性体の対立遺伝子と変異体の対立遺伝子とを識別する、制限断片長多型性(RFLP)分析の簡単な方法を可能なものとする。 レウィン(Lewin)、Genes V、オックスフォードユニバーシティープレス(Oxford University Press)ニューヨーク、ニューヨーク州、(1994)の第136〜141頁を参照されたい。
12人のPAF-AH欠損患者のゲノムDNAのスクリーニングをMaeIIによるDNAの消化、サザンブロッティング、及びエキソン9プローブ(配列番号:17のヌクレオチド1〜396)を用いたハイブリダイゼーションによって行った。 すべての患者において、突然変異対立遺伝子と一致するRFLPが認められた。
本発明のポリペプチドは、急性炎症、胸膜炎、喘息、壊死性全腸炎、成人呼吸窮迫症候群、膵炎、およびHIV感染などの疾患の治療において利用できる。
Claims (1)
- 配列番号:8に記載のアミノ酸配列中の成熟ヒト血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(アミノ酸42-441)において、そのN-末端アミノ酸残基を一端とする多くとも12個のアミノ酸からなるN-末端アミノ酸を欠失して得た活性断片からなる、ことを特徴とする精製および単離されたポリペプチド。
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