JP2009000082A - マイクロ波誘導加熱による植生培地の加温装置 - Google Patents

マイクロ波誘導加熱による植生培地の加温装置 Download PDF

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Abstract

【課題】野菜など植物の育成に温室が使用されているが、そのために供給されるエネルギーは大きく、原油の高騰に伴い省エネルギー化が要望されるようになった。
【解決手段】温室内で生育する植物の根が伸展している近傍、すなわち培地の要部を集中的に加温しようとするもので、その概要は、圃場にスリットアンテナ6付き導波管5を埋設し、その一端にマイクロ波発信機3を接続してその導波管5内にマグネトロン4を送信する。このマグネトロン4は前記スリットアンテナ6から漏洩してその周りにあらかじめ被覆しておいた誘電素材7および土壌に当たりこれらを加温することになる。この植物の培地を加温するために本発明においては導波管5にプラスチックパイプを利用するなどによる経済性と、培地に例えば電気炉中に発生する酸化スラグを強制酸化などにより誘電率を大きくした破砕物(誘電素材7)等を利用することにより熱効率の向上を図った。
【選択図】図4

Description

本発明は、植物の育成用圃場における、いわゆる植生培地の加温装置に関する。
従来、植生培地にエネルギーを供給するシステムとしては、化石燃料や電気エネルギーを利用して温水を発生させこの温水によって土壌を加温するものがある。
また、ガス燃料を使用してコージェネレーション設備を運転し、そのコージェネレーション設備で生産される熱及び電力を供給するものが知られている
特開2006−204195公報 特開2002−295307公報
ガス燃料を利用したコージェネレーション設備によるもの、ガス温風発生装置に通水管を内蔵するもののいずれもが空気又は水を加熱し、その熱エネルギーを媒体として培地に伝達するものであり、熱効率的には決してよいものではなかった。
また、植物の成長のために一定の温度条件に保つべき培地の体積(面積×培地深さ)は該植物の根の延伸部の範囲内であってそれ以外の土壌の温度コントロールは必要の無いものと考えられる。したがって、通水管を温室内培地に張り巡らせるのはエネルギーの無駄使いであるといわざるを得ない。より効率的な加温設備、加温方法の開発が望まれる所以である。
上記の課題に鑑み本願の発明者は、植生培地すなわち植物の根部近傍を選択的に加温することにより省エネルギーを図ったものである。
本発明の請求項1記載の発明においては、植物を栽培する圃場内においての培地への熱エネルギー供給をマイクロ波誘電加熱の方法によることを手段として、必要最低限の植生培地加熱を実現した。
請求項2に記載の発明においては、1台のマイクロ波発信機電源に対して温室内に埋設した複数のマイクロ波導波管を並列に接続して、それぞれのマイクロ波導波管に順次マイクロ波を発信させることを手段として少数のマイクロ波発信機電源により多くの面積の培地を加温しようとするものである。
請求項3の発明においては、スリットアンテナを設けたマイクロ波用導波管を該スリットアンテナが上向きになるように圃場の植生培地に埋設し、その上部に通常の土壌(一般的な土または培養土など。以下に土壌と記す。)を被覆し、あるいはフェライト系無機質の礫状体またはその破砕物などからなる誘電体((以後、この種の誘電体を誘電素材と称す。)を被覆盛り土することを手段として、該培地の水分あるいは水分を含むフェライト系無機質に集中的にマイクロ波を照射して誘電加熱し、植物の根の近傍を生育に適した温度に維持しようとするものである。
請求項4の発明においては、培地に埋設するマイクロ波用導波管が誘電率の小さいプラスチックからなる円形または方形のパイプであり、その外周面に磁性のない金属箔テープ(例えばアルミニュームテープ)を巻き付けまたは非磁性金属を含有するペイントを塗布することにより、該パイプの軸方向直線上の管壁表面に多数のスリットアンテナ(非被覆面)を残して被覆し尽くすことを手段として、安価なスリットアンテナ付導波管の使用を可能にした。
請求項5に記載の発明においては、植物用培地を加熱する装置として電源、マイクロ波発生装置、スリットアンテナ付導波管、誘電体素材または誘電素材と培養土とからなる簡易な構成としたことにより請求項1,請求項2または請求項3記載のマイクロ波誘電加熱による植生培地の加温装置を安価なものにした。
請求項6に記載の発明においては、培地が、または培養土などの土壌によって被覆される基部の培地が誘電加熱性物質である電気炉酸化スラグの改質骨材(電気炉酸化スラグを強制酸化などにより誘電率を大きくしたもので、コンクリート用スラグ骨材の第4部(JIS A 5011−4)相当品であり、以下において誘電素材と称す。)の礫状またはその粉末であることを手段として、本発明の培地加温装置により加温された該培地の保温時間を長時間保ち得るものとしたもので、したがって、一つの電源に複数台の培地加温装置を接続してそれら複数台に順次、間欠的に通電を行うことによって広範囲の圃場において所定温度が得られるものとした。
本発明による培地の加熱は、導波管に間欠的に設けたスリットアンテナから漏れ出すマイクロ波を、その上方に埋設、被覆した水分を含む通常の土壌や誘電体の盛り土に作用させて熱エネルギーを得るもので、植生に必要な最低限のエリアに熱エネルギーを供給することを可能とし、無駄のないエネルギー利用を可能にしたものである。
さらには、誘電加熱される培地に比熱の大きい導電性物質、たとえば前記のフェライト系無機質の粒状物あるいは磁性鉄粉などを使用することによって、一度加熱されるとそれが放冷するまでに相当時間を要するもので、その間、他の導波管にマイクロ波発信を行なうことが可能で、したがって、一台の発信機電源により複数の導波管を操作できることになる。
前記の培地としては通常使用される土壌や培養土などを被覆することも可能であるが、誘電素材を被覆することによって電磁波の大気中への漏洩が防止されるので人体に無害となる。
本発明に係るマイクロ波誘電加熱による植生培地の加温装置の実施形態は図に示したように、スリットアンテナを有するマイクロ波伝送用導波管を圃場内に埋設し、そのスリットアンテナの直上に比誘電率の大きい培地素材を被覆し、または、更に育成植物に適合した土壌をその培地素材の上に或いは混合して盛土し、前記導波管の一端には電源に接続されたマイクロ波発生装置を装着する。
本発明に係る培地加温装置1の実施例を説明する。実施例1においては、SUS304の角パイプ(100×50×2t×4000L)2本をJIS BRJ−2相当のフランジで延伸結合してその終端をブランドフランジ5aで閉塞処理し、該角パイプの一つの面に幅が0.5〜2mm×長さ30mmのスリット6を5mm〜10mm間隔で5本〜15本を開口し、これを1ブロックとしてほぼ250mmピッチで17ブロックに設けてスリットアンテナ付き導波管5とした(図1)。なお、前記スリットアンテナ6の寸法、本数等はマイクロ波発生装置から遠くなるにしたがって大きく、かつ、多く設けことが各々植栽部位に均等な加温に必要であることは勿論である。
前記導波管5の始端にはマグネトロン3a(空冷。2.45GHz、波長約12cmのマイクロ波を850Wで出力するもの)を有するマイクロ波発信装置3を付設し、これを電源装置2に接続した。この周波数帯は家庭用電子レンジの仕様で、情報伝達以外の用途に割り当てられ、その使用には制限がない。なお、このようなマイクロ波(電磁波、MW)加熱器においては終端のアプリケータまでの導波管にはアイソレーター、チューナが付属装着されて整合を取り、反射波を少なくしているのが通例であるが、本発明ではこのような付属品を必須とはせず、圃場の特定部位すなわちスリットの上部近傍の培地をアプリケータとしたものである。
前記のスリットアンテナ6,6,6・・・・付き導波管5を圃場内に埋設し、そのスリット6の上方に培地7(誘電素材:0〜100重量%と土壌:0〜100重量%を混合したもの)を被覆盛土した。さらにその上面に、ロックキューブ9(ロックウールを樹脂で固め成形した筒状体)に培養土7または誘電素材7を詰め込んで載置(図4(a))し、その周辺に電磁波シールド用シート11を被覆した。
前記した誘電素材の一例として前記のウスタイト(FeO)、マグネタイト(Fe)、アイアンクロマイト(FeO・Cr)、マグネシオフェライト(MgO・Fe)などを主成分とする電気炉中に発生する酸化スラグの破砕物(0.3〜2.5mmの粒度調製品:株式会社星野産商製「CKハイパーグリッド」)を使用した。その主要成分を示したのが表1であるが、熱的性質を追記すると、比熱が0.16Cal/g℃、熱伝導率が0.031ジュール/cm・Sec・℃で真比重は3.84、絶乾比重は3.52である。この誘電素材のみを培地としても使用しても良く(図5(a))、また、この培地にさらに培養土などの植物に適用される土壌を盛土(図4(b),図5(b))ないし混合(図4(a))してもよいことは前述の通りである。図4、図5において、ケース10は塩化ビニル樹脂などからなるケーブルダクト(電線保護カバー)のような筒状または溝状のものでその筒内に導波管6と培地7または導波管6を収容するものとし、さらに、電磁波漏洩を防止するためのシールドシートを地面に被覆した。
Figure 2009000082
このような、マイクロ波による培地加温装置1において、前記のマイクロ波発生装置3からのマイクロ波4は導波管5内を通り、前記のそれぞれのスリットアンテナ6.6.6・・・・から上方の培地に発信され、その培地にある誘電素材7を発熱させることにより減衰され、地上に漏洩することは殆んど無いが、図4、図5に示したように盛土の上にさらに金網やアルミニューム入り布例えば寒冷沙)などのシート11を被覆することによって電磁波を遮蔽することがより安全で望ましい。
このようにして発生した培地の熱は長時間保持されることが望ましく、そのためには、培地を構成する誘電素材7としては比熱ならびに比重の大きい物質が好ましい。その一例として前記の電気炉から排出される酸化スラグ(セラミックの一種である。)を挙げたがこれに限定するものではなく、例えば鉄粉や水分を含んだ土壌も良好に加温され、熱容量も大きいのである。
実施例2(図2)におけるスリットアンテナ付導波管5は誘電率の小さいプラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル等)としてポリエチレン製角型パイプを使用したものであり、且つ、一方向、すなわち地下に埋設時上側になる管壁面に多数のスリットアンテナ6、6、6・・・となる窓(非被覆)部を残し、その他の管壁面を磁性のない金属箔テープ例えばアルミニュームテープ12(図2)を該パイプに巻き付けることにより被覆したものである(非磁性金属を多量に含有するペイントの塗装でもよい)。この実施例においての角型パイプは100×50角、長さが8000mmであってその表面に形成したスリット6は前記SUSのスリットアンテナ導波管と同様の寸法、本数、間隔、ブロック数としたもので、樹脂製パイプ自体には切削等によるスリットを開口していない。したがって、前記ステンレス製のものに比べてその製作は極めて容易で安価になった。この導波管5の終端を閉塞し、始端にマイクロ波発信装置3を付設して地中に埋設、その上部に誘電素材7を、または誘電素材と通常の土壌8とを混合して被覆盛土したことは実施例1と同様である。
このプラスチック導波管5において、管内のマイクロ波は前記金属箔テープ12(またはアルミニューム塗装)の内面で反射して導波管内を前進し、該金属箔テープ12によって被覆されていないスリットアンテナ6.6.6・・・・から外部に発信されることになる。したがって、マイクロ波はそのスリット6.6.6・・・・の上部近傍にある誘電素材7、水分を含む培養土等8に作用して発熱し、減衰されることは前記実施例1と同様である(図4(b))。
実施例3は、それぞれにマイクロ波発生装置3を付設した導波管5複数台(図3では3台)を一台の電源装置2に並列接続し、その各導波管5を市販の塩化ビニル製ケーブルダクトからなる長方箱体10に内装した培地加温装置1を示したもので、それぞれのスリット6,6,6・・・の上部の箱体10には窓10a,10a,10a・・・を開口し、その開口縁部に嵌合係合するロックキューブ9・・・を装着し、該ロックキューブ9には誘電素材7および培養土等の土壌8を層状充填または混練して充填したもので、その導波管5の終端を閉塞し、始端にマイクロ波発信装置3を付設し、その3台のマイクロ波発信装置を一台の電源装置に接続したことは前記実施例一、および2と同様である。このような構成になる培地加温装置1を圃場内に埋設して、この一台の電源2からの送電し、それぞれ複数台の導波管5に時差を設けてマイクロ波マグネトロン4を発信させた。前記のように誘電素材7が比熱および比重の大であることによって熱容量が増し、培地の長時間保温が可能となったことにより、このようなマイクロ波発信機への間歇的な通電によっても培地は十分に保温され、植物の良好な育成が得られることになった。
上記実施例3の一例としての培地加温装置1をトマト植栽圃場に埋設してその培地温度を測定し、また、生育状況を測定した。例えば、外気温度が15℃の時には培地温度もほぼ15℃程度であり、また、外気温度が0℃に下がった時において本培地は12〜14℃を保つことができた。その例として冬季(2007年2月21〜22日)に測定した2日間の外気温度と本発明培地加温装置1を適用した培地との比較を表2に示し、その効果としてのトマトの生育状況を表3に示す。
Figure 2009000082
Figure 2009000082
本発明に係る培地加温装置1は、良好な熱効率を得るためには温室内の圃場に埋設使用することが望まれるが、温室外の自然環境下の圃場においても使用は可能である。そのためには、前記シールド用被覆シートを厚めのものを使用して培地と外気との直接接触を避けることが効果的である。
前記の実施例ではトマトの栽培を対象としたがその他の植物にも適用できることは勿論である。例えば、イモ類等の根菜においては前記誘電素材の粒径を微細化してその根の成長に支障のない様に留意し、葉物野菜においては誘電素材の粒径をやや大形化して熱容量を大きくすることで保温効率を良好にするなど適用植物に制限は無い。
本発明に係る培地加温装置の中央縦断面図である。 実施例としてプラスチック角パイプの表面にスリット相当部を残してアルミニュームテープで被覆した導波管を示したものである。 一つのマイクロ波発信機用電源に複数のマイクロ波発信機を並列結線し、それぞれに導波管を接続した培地加温装置である。 導波管に形成したスリットの上部近傍に被覆形成する培地の構成を示した図で(a)は誘電素材と培養土などの土壌を混合したもの、(b)は誘電素材と培養土などの土壌を層状に敷設した状態を示した。 図4と同様、培地の構成を示したもので、(a)は培地全体を誘電素材のみで構成したもの、(b)は誘電素材と培養土などの土壌を層状に敷設したものである。
符号の説明
1.培地加温装置
2.マイクロ波発生電源装置
3.マグネトロン
4.導波管
5.スリットアンテナ
6.マイクロ波
7.誘電素材
8.土壌
9.ロックキューブ
10.箱体
11.フィルム
12.塗装またはテープによる被覆

Claims (6)

  1. 植物を栽培する圃場において、その培地へのエネルギー供給がマイクロ波誘電加熱の方法によることを特徴とする植生培地の加温装置。
  2. 1台のマイクロ波発信機電源に圃場内に埋設した複数の導波管を並列に接続して、それぞれの導波管に順次マイクロ波を発信することを特徴とする請求項1記載の植生培地の加温装置。
  3. 植物を栽培する培地には、マイクロ波用導波管をその管壁に開口したスリットアンテナ部を上方にして埋設し、その上部に通常の土壌を、または、フェライト系無機質の粒状物またはその破砕物などの誘電素材を盛り土、被覆したことを特徴とする請求項1記載の植生培地の加温装置。
  4. 培地に埋設するマイクロ波用導波管がプラスチックからなる円形または方形のパイプであり、その外周面に磁性のない金属箔テープ(例えばアルミニュームテープ)を巻き付けまたは非磁性金属を含有するペイントを塗布することにより、該パイプの軸方向直線上の管壁表面に多数のスリットアンテナ(非被覆面)を残して被覆したことを特徴とする請求項1記載の植生培地の加温装置。
  5. 培地を加熱する装置が、電源とマイクロ波発生装置とスリットアンテナを設けた導波管と誘電素材または誘電素材と培養土とからなることを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3記載の植生培地の加温装置。
  6. 培地として、または培地としての土壌に盛り土、被覆される誘電加熱用素材が電気炉酸化スラグの改質骨材(電気炉酸化スラグを強制酸化などにより誘電率を大きくしたもので、コンクリート用スラグ骨材の第4部(JIS A 5011−4)相当品)の礫状または粉末であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の植生培地の加温装置。
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