皮膚細胞の下層組織においてアデノシン三燐酸ATPの合成を誘発することにより皮膚の細胞を電気化学的に新生して皮膚に代謝エネルギーを搬送し、皮膚自体が自己修復や自己維持を行う支援をする必要がある。
本発明は、肉体の一部を浸した浴槽内に直流電流を放電する陽極によって電子すなわち代謝エネルギーを搬送し、電気化学現象を利用することで皮膚細胞においてアデノシン三燐酸ATP合成を誘発することを目的とする。この放電作用を駆動する電気的な圧力すなわち電圧、この放電に曝す持続時間、電圧波形の性質などのうち1つ以上の要因次第で、同じ代謝エネルギーを搬送しても深く浸透させることができ、そのような深部の細胞の代謝エネルギーを補給し、更に、皮膚の下層に存在する筋肉および組織を回復させて増強することができる。
本発明の方法は、電気化学現象を利用して筋肉を増強強化するとともに皮膚細胞を賦活するが、その手段として、解剖学的構造の治療を受けるべき部分を電解液を入れた容器に浸す方法を採るが、容器に電解液を入れて陽極板を電解液と接触させて電源に接続したうえで、約1ミリアンペアから約50ミリアンペアの電流振幅で、約50ボルトから約120ボルトの範囲のレベルで約0.2ミリ秒から約1ミリ秒の範囲のパルス持続時間と約400ヘルツから約1200ヘルツの範囲の周波数(本件では「パルス繰返し数」と呼ぶ)の電圧で、容器内にパルスを発生させる。
本発明の方法を実施するための装置の一実施形態であるパルス発生装置は、電源、パルス発生回路、スイッチ回路、陰極、バッテリー、容器、および、陽極を備えている。
電源は出力端子で出力信号を生成し、この出力信号の電流振幅は約1ミリアンペアから約50ミリアンペアの範囲で変動し、直流電圧は約50ボルトから約120ボルトの範囲で変動する。
パルス発生回路は上述の電源に動作可能に接続されており、約0.2ミリ秒から約1ミリ秒の範囲で持続時間が変動するとともに、約400ヘルツから約1200ヘルツの範囲でパルス周波数が変動するパルスを生成する。
スイッチ回路は切替式出力端子が設けられており、上述のパルス信号を受信するように接続されているとともに、このパルス信号に応答して、切替式出力端子をシステム接地と接続したり切断したりするように作動する。
陰極には第1端と第2端が設けられており、第1端は上述の切替式出力端子に着脱自在に取り付けられている。
バッテリーは、その陽極が上述の陰極の第2端に接続されているとともに、その陰極が陰極板に接続されている。
容器には電解液が入れてある。
陽極には第1端と第2端が設けられており、第1端は上述の出力端子に着脱自在に取り付けられており、第2端は上述の電解液と接触状態にされる陽極板を有している。
本発明の装置の陽極板は電解液を入れた導電性容器の中に浸漬されているか、または、その導電性容器に接続されているか、いずれかである。液に浸されたバッテリーの陰極は腐蝕性陰極板に接続されており、この陰極板は吸収性の湿らせた布で被覆されているとともに、肉体を押圧して設置されるか、または、電解液または塩水の溶液中に設置されることにより肉体と接触状態にされるのが好ましいが、この溶液中には解剖学的構造の治療を受けていない部分を浸す。しかも、バッテリーの酸化的腐蝕が肉体との接触点では陰極板の腐蝕を緩和する。治療を受けている肉体の肢体または肉体の一部は陽極を含んでいる水または陽極で囲った水に浸漬され、また、バッテリーは低電圧直流バッテリーであるのが好ましいが、電源により放電し、これが延いては、電解液によりパルスで修正された単相電圧の電荷を肉体に伝搬する。
このシステムを利用して約10ミリアンペアから約50ミリアンペアの間の電荷を120ボルトまでの開回路電圧で約5分から約15分までの範囲の治療時間に亘って伝搬することで、筋肉は増強強化され、皮膚も賦活される。
本発明の好ましい実施形態の後段のより詳細な説明から、上記以外の特徴や利点が明らかになるが、これらの好ましい実施形態は添付の図面に例示されている。
本発明の方法および装置は、筋肉の増強のみを目的とした米国特許第6,856,837号に開示されている方法および装置の改良版である。本発明では、筋肉が増強されるのみならず、毛細血管をより大きく開いて皮膚に滋養を与えるようにすることにより、更には、皮膚細胞においてアデノシン三燐酸ATP 合成を誘発することにより、皮膚細胞が賦活される。米国特許第6,856,837号は筋肉を電気化学的に増強することを目的とし、その手段として陽極探針からの刺激として、5ミリアンペアから25ミリアンペアの間で120ボルトまでの開回路電圧を1000ヘルツ付近の周波数でパルス伝搬する方法を採用しているが、刺激は数秒間に亘り神経筋接合部の上にある小さい表層領域にしか伝達されない。このような取組みは筋肉を増強しても、上述のような電界導入の直接的で積極的な有用性を神経筋接合部の上層の皮膚の小面積のみに限定してしまううえに、刺激に曝す時間が長すぎると皮膚が損傷してしまう密度になってしまう。皮膚は下層の組織の回復の結果として生じる、より良好な皮膚への血行の恩恵を受けるものの、皮膚細胞の大きな区画においてアデノシン三燐酸ATP合成を誘発することからはそれほどの利益を直接得ることはない。
本発明の方法および装置は、治療を受けている肉体の小さい1点のみに電荷が数秒間だけ集中される米国特許第6,856,837号の方法および装置を改良して、治療時間を長く取ることができるようにしたうえに遥かに低い濃度レベルの電荷刺激により広い肉体領域を曝すものにしている。筋肉増強のために肉体の深部にまで所定アンペア数の電流を駆動するのに必要とされるのと同じレベルの電圧が使われるため、より広い体表面をより長時間刺激に曝した結果として、同等またはより多量の電荷が神経筋の接合部に到達し、それにより、電解液すなわち回路分岐液に浸漬された筋肉を強化し、かつ、皮膚細胞上の小さい点に火傷や疱疹を生じることなしに、または、筋収縮も起こさずに皮膚細胞を賦活する。
図1は、本発明の一実施形態に従って筋肉の横断方向細管に刺激を与えるパルスを生成するためのパルス発生装置100を例示している。この細管に沿って細胞全体に搬送されて筋肉増強と筋収縮に必要な蛋白質合成を誘発する刺激は、米国特許第6,856,837号に開示されているものと同じであるが、電荷の強力な集中により皮膚細胞を損傷してしまうのではなく、皮膚細胞によるアデノシン三燐酸ATPの有用な合成も誘発するような分散した態様で伝搬される。アデノシン三燐酸ATPの合成によって細胞はエネルギーを獲得することができるようになる。
装置100は、ピークが約50ボルトから120ボルトの範囲の開回路電圧をパルスで修正された単相電圧波形で発生し、この電圧を約1ミリアンペアから50ミリアンペアの範囲の電流で授える。図2に例示されている装置100の回路により使用者はパルス発生の周波数を約400ヘルツから約1200ヘルツの間で約0.2ミリ秒を下回ることなく約1ミリ秒を上回ることもないパルス幅で変動させることができるようになるとともに、電流流速の振幅を0ミリアンペアから50ミリアンペアの間で変動させることができるようになる。
大型容器120が図1に例示されているが、この中には回路分岐水が貯蔵されて電解液として作用するが、洋風茶匙1杯分の塩またはソーダを含有して水中の電気の流れに対する抵抗を低減するように図るのが好ましい。治療を受けるべき肉体の領域、例えば、足首から下、脚部、手、顔などを容器120の中に浸す。極板125は、ステンレス鋼で作成されているのが好ましいが、装置100の陽極に接続されて、容器120の中に設置される。陰極板137はバッテリー170の陰極に接続されており、このバッテリーの陽極は装置100の陰極に接続されている。陰極板137は腐蝕性金属様の、鉄または亜鉛から作成されており、肉体と接触状態になる極板137の部分は面積が9平方インチまたはそれを越える大きさで、濡れた吸収性の布によって被覆されているのが好ましい。
図1では、バッテリー170の陽極は装置100の陰極に接続されており、陰極は陰極板137に接続されている。バッテリー170は電圧が約12ボルトを越えているべきではなく、電流を渡すのが容易になる電圧が選択されるようにするのが好ましい。この点で、銅−酸のバッテリーまたはニッケル−金属水酸化物のバッテリーのCサイズまたはAAサイズが好ましいかもしれないが、アルカリバッテリーまたはニッケル−カドミウムのバッテリーもうまく作動する。
治療を受けるべき肉体の領域を容器120に貯蔵された液に浸された状態で、使用者は陰極板137を肉体と接触状態に設置してから、装置100からの電流を最低レベルに設定してスイッチを入れてオン状態にする。装置100によって供与されるパルスの周波数と振幅を増大させてから、使用者が電流を感じて具合が悪いと思わない程度に調節するか、増大させずに調節だけを行う。陰極板137を、肉体と接触させたままで肉体の周囲を移動させることで、陰極の刺激効果が陰極板そのものの面積よりも大きい面積にわたって分配されるようにする。好ましい治療時間は5分間から15分間の間で変動させることができる。使用者が筋収縮を起こさせたいと望む場合は、電流強度は筋収縮を誘発させることができる点まで上昇させることができ、また、パルス発生の周波数は筋収縮が最大になる点まで調節することができる。筋収縮が最大になる点は約800ヘルツから約1000ヘルツの間であり、筋肉ごとに異なっている。しかし、筋肉を強化する目的では電気化学現象を利用して筋収縮させる必要なく、これが、本件の新発明の利点である。
電流が終端されていない限り、使用者は治療を受けるべき領域を容器120に入れるべきではないし、また、容器120から出すべきではなく、そうでなければ、四肢を出し入れしている最中に、液中に在る皮膚面の通常より少なくなった面積が高密度の電荷を受けることになる。その結果、使用者は苦痛を受けることになる。小表面積に高密度で筋収縮を誘発するのに十分なレベルの、しかも、それよりも大きい皮膚表面積が浸漬された際には筋収縮を引き起こさないレベルの電流強度でも、収縮していないにも関わらず筋肉は強化される。このことが該当するのは、治療を受けている領域または筋肉を、例えば、5分ではなく10分から15分といった長い期間に亘って液中に残存させたままにしておける場合である。
図2は、装置100のスイッチ回路102とこれに付随するパルス発生回路を例示しており、ここではパルス発生回路を全般的に参照番号104で例示している。スイッチ回路102はCMOS4538 ソリッドステート集積回路であるのが好ましいが、その理由は、この回路が、起こり得る周波数範囲にわたって一定したパルス幅を供与することができるからである。しかしながら、本発明の別な実施形態のうち555タイマー回路に依存するもので使用するにはこれ以外のスイッチ回路が好適であり、そのようなタイマー回路の完全な説明は米国特許第6,856,837号に見られる。555タイマー回路は周波数とともにパルス幅を変動させ、周波数が非常に低くなるとパルスが長くなる。
装置100は90ボルト直流出力源106を備えており、この直流出力源の正出力端は出力抵抗器108と12ボルトツェナーダイオード110とに接続されている。好ましい実施形態では、壁の電源差込口から取った交流(AC)は変圧器(図示せず)によって変換されてから整流器(図示せず)によって整流され、所要の直流電圧を達成する。電源106の負出力端は回路102のノードAでシステム接地に接続されている。出力源106はノードBで12ボルトの直流信号を生成するために使用され、ノードBはキャパシタ112を介してシステム接地に接続されている。ノードBはまた、2個の計時回路に接続されている。第1の計時回路は電位計114、抵抗116、および、キャパシタ118を備えている。端子(ノードC)は抵抗116とキャパシタ118の間の接続部に位置規定されている。第2の計時回路は、パルス幅を決定する抵抗120、キャパシタ122、および、抵抗120とキャパシタ122との間の接続部に位置規定された端子であるノードDを備えている。キャパシタ118とキャパシタ122もシステム接地に接続されている。
ノードEの端子は抵抗124に接続されているが、抵抗124はノードFでキャパシタ126に接続されている。キャパシタ126もシステム接地に接続されている。ノードGの端子は電位計128に接続されており、この電位計は抵抗130にも接続されている。電位計128の中心ワイパーはトランジスタT1のベース端子に接続されている。トランジスタT1のエミッタ端子は抵抗器132に接続されており、トランジスタT1のコレクタ端子はヒューズF1に接続されているが、このヒューズは0.3アンペアの高速溶断ヒューズであるのが好ましい。トランジスタT1はフィリップス製のEGC396トランジスタまたはこれの同等品であるのが好ましい。
発光ダイオード(LED)L1はヒューズF1と十字接続部134との間に接続されている。十字接続部は陰極端子136と陽極端子すなわち探針端子138との両方に接続されている。陰極136はバッテリー170の陽極に接続されているのが好ましく、よって、図1に例示された陰極137に接続されているか、または、図3に例示されている陰極容器139に接続されている。十字接続部134は、回路に陰極端子および探針端子のうちのいずれかを選択的に接続するために使用される。スイッチ回路102は集積回路であり、この回路102のピンの各々で示された端子に応じて回路104に接続される。例えば、スイッチ回路102のピン1、ピン4、ピン8、および、ピン15はどれも全部、端子であるノードAに接続されている。従って、スイッチ回路102と回路104は協働して、本発明に従ってパルスを発生する。
動作中は、電源106から取った90ボルト直流(90VDC)が十字接続部134の端子140に現れる。図1に例示されている腐食性陰極137と陽極125、または、図2の代替の実施形態に例示されているような陰極139と陽極容器126が回路に接続されていると仮定すると、スイッチ回路102の作動によりパルスがノードGに現れ、これにより選択的にトランジスタT1を活動状態にする。トランジスタT1は回路の陽極と陰極を接続することにより「オン状態に」切替えられる。これは、使用者が容器120に皮膚を浸さなくても、皮膚に陰極137を付着させながら、同時に体の別な部分を図1に例示されている陽極容器120に浸すと起こる現象である。これに代わる例として、使用者が体のどこか一部を陰極容器139に浸すと同時に、体の治療を受けるべき部分を図2に例示されている陽極容器126に浸漬すると、トランジスタT1が「オン状態に」切替わる。トランジスタT1が「オン状態に」切替わると、図2に例示されている経路P1を通って電流が流れる。LEDは、電流が経路P1を流れていることを示すために設けられている。
計時回路を調節することにより、多様なパルス繰返し数と多様な電流振幅を達成することができるようになるが、これは後段で説明する。特に、このことは、電位計114、128を調節することにより達成される。よって、本発明によれば、図2に例示されている陰極136と陽極または接地138が接続される際に、それと同時に使用者が体の一部を陽極125を入れた容器120に浸したままで陰極137と接触状態になるか、または、使用者が体の一部を陽極容器126に浸したままで陰極容器139に浸かることによって接続が行われると、スイッチ回路102によって生成されたパルスが経路P1を流れる電流を制御し、それにより、筋肉細胞を横断方向に走る細管を賦活し、筋肉を増強するとともに細胞アデノシン三燐酸ATP を合成するよう図っている。筋収縮を起こさずに10分強にわたって体の筋肉の一部または全部を過負荷状態にするのに、肉体の一部を陽極容器の中に浸して約400ヘルツから約1000ヘルツの間の周波数を約0.25ミリ秒のパルス幅で約5ミリアンペアから約50ミリアンペアであるのが好ましい可変電流強度で浴びると十分であるが、電流が筋収縮を起こすほど強い場合には上述の時間は5分だけになる。
図3に例示されているのは、上述の方法の代替の実施形態である。この実施形態では、陽極容器126はそれ自体が導電性である。皮膚は乾燥状態の金属と接触させるべきではないが、液中で金属と接触させることはできる。この実施形態では、陰極板は導電性の容器139と置き換えてもよい。このような配置により、陰極板137に常に体の上を伝って移動させることに何らの支障もなく、陰極の刺激効果をより広い面積にわたって分配させることができるようになる。容器139は腐蝕性物質から製造しても、ステンレス鋼から製造しても、いずれでもよいが、腐食性物質から製造される場合、容器は時々酸化金属を除去する必要が生じる。これに代わる例として、容器139は非導電性の物質から製造されるとともに、図1に例示されているように腐蝕性陰極137を入れるようにしてもよい。
筋肉を強化するとともに皮膚の細胞を新生する方法の使用例を、使用者の顔面と頭部の前側を定期的に容器120の中に浸漬すると同時に、常に陰極板137を使用者の皮膚に接触させたままで陰極板137を使用者の腹部の上を伝って移動させることによって実証してみた。治療時間は8分から10分の間であったが、その際の電流振幅は、米国特許第6,856,837号の方法に従って電流が搬送されたならば、すなわち、経皮電極によって電流が搬送されたならば、1秒間でも痛すぎて持続できないレベルに設定されていた。潜水用呼吸管を使うことにより、上記期間中もずっと、使用者は正常な呼吸を維持することができた。
当業者なら、本発明の真髄および範囲から逸脱せずに、本発明の方法を多様な用法や条件に適合させるように多様な変更および修正を施すことができる。このようにしてできた変更例および修正例は適切かつ公正に添付の特許請求の範囲の各請求項の均等物の範囲に完全に入るものであり、かつ、そのように解釈されるべきである。