特に本発明は、GHS−Rをモジュレートする有用な化合物および組成物、ならびにそれら化合物の使用法および製法に関する。それら化合物のいくつかの例としては、ビアリール系、トリアリール系、およびスピロ系のスルホンアミド化合物のようなヘテロアリール系スルホンアミド化合物、ならびに多環式部分を持つそれ以外の化合物が含まれる。ヘテロアリール系化合物の例には、トリアゾロ−ピリジル化合物(たとえば置換されたか、または非置換の[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピリジニル化合物)が含まれる。それらの化合物は、対象者(たとえば哺乳類、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ)の病気、疾患または病状をモジュレートすることを含めた治療適用に使用可能である。それらの化合物には、有用なGHS−R拮抗剤が含まれる。そのような拮抗剤は、たとえば対象者の摂食を低下させるのに使用できる。
それらの化合物については立体異性体も含めて、小集団ずつ、あるいはコンビナトリアル化学的な手法で調製し、構造が異なる化合物ライブラリーを得ることができる。
一つの態様によれば、本発明は式(I)の化合物で特徴づけられる。
式(I)
式(I)中、R
1は水素、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクリル、シクリルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、あるいはR
1はR
2またはR
3と一緒になって環を形成することもでき、それらの各々は、1〜4個のR
6で必要に応じて置換され得る。
kは、単結合、O、C(O)、C(O)O、OC(O)、C(O)NR3、NR3C(O)、S、SO、SO2、CR2=CR2、またはC≡Cであり、
nは0〜6、好ましくは1〜3であり、
R2はH、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、またはC2−C6アルキニルであり、
R3はH、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、またはC2−C6アルキニル、あるいはR3はR2、R4またはR5と一緒になって環を形成することもでき、それらの各々は、1〜2個のR6で必要に応じて置換され得る。
Aは、
であり、
xおよびyは各々、独立して0〜6であり、
Mはアリール、ヘテロアリール、シクリル、またはヘテロシクリルであり、それらの各々は、1〜4個のR
9で必要に応じて置換され得る。
R4およびR5は各々、独立してH、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクリル、またはヘテロシクリルであるか、あるいはR4およびR5は一緒になって複素環式環を形成することができ、またはR4およびR5は共にアジド部分を形成することができる。またはR4およびR5の一方または両方が独立してR7aおよびR7bの一方または両方につながって、R4およびR5が結合している窒素とR7aおよびR7bとの間に一個または複数の架橋を形成することができ、その場合の架橋の各々には1〜5個の炭素が含まれる。またはR4およびR5の一方または両方は、独立してR7aおよびR7bの一方または両方につながって、R4およびR5が結合する窒素を含有する一個または複数の複素環式環を形成することができ、R4およびR5の一方または両方が独立してR3につながって環を形成することができ、またはR4およびR5の一方または両方が独立してR8につながって環を形成することもでき、またはR4およびR5は各々、独立して必要に応じて1〜5個のハロ、1〜3個のヒドロキシ、1〜3個のアルキル、1〜3個のアルコキシ、1〜3個のオキソ、1〜3個のアミノ、1〜3個のアルキルアミノ、1〜3個のジアルキルアミノ、1〜3個のニトリル、または1〜3個のハロアルキルで置換される。
Xaは2〜4個の縮合またはスピロ型のシクリル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリール環であり、その各々は必要に応じて1〜4個のR10で置換される。
R6およびR6’は各々、独立してハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、ハロアルキルチオ、アセチル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、オキソ、C(O)OR2、OC(O)R2、N(R3)2、C(O)N(R3)2、NR3C(O)R2、またはSR2である。
R7aおよびR7bは各々、独立して水素、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、シクリル、シクリルアルキル、またはヘテロシクリルであり、またはR7aおよびR7bの一方または両方は、独立してR4およびR5の一方または両方につながって、R4およびR5が結合している窒素とR7aおよびR7bとの間に一個または複数の架橋を形成することができ、その場合の架橋の各々には1〜5個の炭素が含まれる。またはR7aおよびR7bの一方または両方は、独立してR4およびR5の一方または両方につながって、R4およびR5が結合する窒素を含む一個または複数の複素環式環を形成することができ、またはR7aおよびR7bの一方または両方は、独立してR8につながって環を形成することもできる。そのR7aおよびR7bは各々、独立して必要に応じて1〜5個のハロ、1〜3個のヒドロキシ、1〜3個のアルキル、1〜3個のアルコキシ、1〜3個のアミノ、1〜3個のアルキルアミノ、1〜3個のジアルキルアミノ、1〜3個のニトリル、または1〜3個のハロアルキルで置換される。
R8はHまたはC1−C6アルキルであるか、あるいはR8はR4、R5、R7aまたはR7bにつながって環を形成することができる。
R9はハロゲン、アルキル、シクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキルオキシ、ハロアルキルチオ、アセチル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、オキソ、C(O)OR2、OC(O)R2、N(R2)2、C(O)N(R2)2、NR2C(O)R2、SR2である。
R10は各々、独立してアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、シアノ、カルボニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、シクリル、シクリルアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、−OR11、−NR11R11’、−CF3、−SOR12、−SO2R12、−OC(O)R11、−SO2NR12R12’、−(CH2)mR14またはR15であり、その各々は必要に応じて1〜3個のR16で置換される。
R11およびR11’は各々、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクリル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールである。
R12およびR12’は各々、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルチオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロシクロアルキル、またはシクリル、シクリルアルキル、あるいはR12およびR12’は一緒になって環化して−(CH2)qX(CH2)s−を形成することができる。R12およびR12’は各々、独立して必要に応じてハロゲン、OR11、アルコキシ、ヘテロシクロアルキル、−NR11C(O)NR11R11’、−C(O)NR11R11’、−NR11C(O)R11’、−CN、オキソ、−NR11SO2R11’、−OC(O)R11、−SO2NR11R11’、−SOR13、−S(O)2R13、−COOHおよび−C(O)OR13からなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されてもよい。
R13は各々、独立してアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであり、その各々は必要に応じて−(CH2)wOHで置換されてもよい。
R14は各々、独立してアルコキシ、アルコキシカルボニル、−C(O)NR12R12’、−NR11R11’、−C(O)R12、−NR11C(O)NR11R11’、または−N−ヘテロアリールである。
R15は各々、独立して−(CH2)pN(R12)C(O)R12’、−(CH2)pCN、−(CH2)pN(R12)C(O)OR12’、−(CH2)pN(R12)C(O)NR12R12’、−(CH2)pN(R12)SO2R12、−(CH2)pSO2NR12R12’、−(CH2)pC(O)NR12R12’、−(CH2)pC(O)OR12、−(CH2)pOC(O)OR12、−(CH2)pOC(O)R12、−(CH2)pOC(O)NR12R12’、−(CH2)pN(R12)SO2NR12R12’、−(CH2)pOR12、−(CH2)pOC(O)N(R12)(CH2)mOH、−(CH2)pSOR12、−(CH2)pSO2R12、−(CH2)pNR11R11’または(CH2)pOCH2C(O)N(R12)(CH2)mOHである。
R16は各々、独立してハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、−(CH2)pNR11C(O)NR11R11’、−(CH2)pC(O)NR11R11’、−(CH2)pNR11C(O)R11’、−CN、−(CH2)pNR11SO2R11’、−(CH2)pOC(O)R11、−(CH2)pSO2NR11R11’、−(CH2)pSOR13、−(CH2)pCOOHまたは−(CH2)pC(O)OR13である。
XはCR11R11’、O、S、S(O)、S(O)2、またはNR11である。
mは1〜6の整数である。
pは0〜5の整数である。
qおよびsは各々、独立して1〜3の整数である。
wは0〜5の整数である。
いくつかの例では、Xaには以下の式(II)に示した部分が含まれる。
式(II)
ここで、Q
1およびQ
2は各々、独立してシクリル環、複素環式環、アリール環またはヘテロアリール環であり、その場合のQ
1は1〜4個のR
10で置換され得、Q
2はR
10およびQ
3からなる群から選択される1〜4個の置換基で置換され得る。
Q3は3〜8員の縮合またはスピロ型のシクロアルキル環、複素環式環環、アリールまたはヘテロアリール環であって、Q3はR10およびQ4からなる群から選択される1〜5個の置換基で必要に応じて置換されてもよい。
Q4は3〜8員の縮合またはスピロ型のシクロアルキル環、複素環式環、アリール環またはヘテロアリール環であって、Q4は1〜5個のR10で必要に応じて置換されてもよい。
BはNまたはCR17であり、DはNまたはCR17であり、R17はHまたは単結合である。
いくつかの例では、Xaには以下に示した構造が含まれる。
各々の例では、Xaは必要に応じて1〜4個のR
10で置換され、その置換については炭素原子に限定されないが、水素に結合されるものとして描かれる窒素原子群を含むヘテロ原子とすることもできる。
いくつかの例では、Xaは
各々の例では、Xaは必要に応じて1〜4個のR10で置換され、その置換は炭素原子に限定されないが、水素に結合されるものとして描かれる窒素原子群を含むヘテロ原子とすることもできる。
いくつかの実施形態では、R10はR15である。
いくつかの例では、R10はR15であり、R12はヘテロシクリルまたはアルキルであって、必要に応じてヒドロキシルまたはハロゲンで置換される。
いくつかの例では、R15は(CH2)pC(O)OR12、(CH2)pOC(O)R12、または(CH2)pOC(O)N(R12)(CH2)mOHである。
いくつかの例では、R10はR15であり、R12およびR12’は独立して水素、アルキル、またはシクロアルキルであって、そのアルキルまたはシクロアルキルは必要に応じて−C(O)OR13または−C(O)NR11R11’で置換されるか、またはR12およびR12’が一緒になって環化して−(CH2)qX(CH2)s−を形成することができる。
いくつかの例では、R15は−(CH2)pN(R12)C(O)OR12’、−(CH2)pN(R12)C(O)NR12R12’、または(CH2)pOC(O)NR12R12’であって、そのR12およびR12’は独立して水素またはアルキルであり、そのアルキルは必要に応じて−C(O)NR11R11’で置換され、そのR11およびR11’は独立して水素またはアルキルである。
いくつかの実施形態では、
nは1であり、
kは単結合またはOであり、
R1はアリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキルである。
いくつかの実施形態では、
nは1であり、
kはOであり、
R1はアリールアルキルである。
R1の例としてはフェニルメチルが挙げられる。
いくつかの実施形態では、
nは2であり、
kは単結合であリ、
R1はアリールである。
いくつかの実施形態では、R1およびR3は一緒になって複素環式環を形成する。その複素環式環はたとえば1〜2個のR6で置換され得る。
いくつかの実施形態では、R1およびR2は一緒になって環を形成する。
いくつかの例では、Aは、
例えば、
ここで、R
7aおよびR
7bは水素であり、xは1であり、yは0または1である。
いくつかの実施形態では、AはCH2CH2またはCH2CH2CH2であり、
R4およびR5は各々、独立してアルキルであるか、あるいはR4およびR5が一緒になって複素環式環を形成する。いくつかの実施形態では、R7aおよびR7bは各々、Hであり得る。
いくつかの実施形態では、R7aまたはR7bの少なくとも一個は、R4またはR5の少なくとも一個と一緒になって、R4およびR5が結合した窒素を含んだ複素環式環を形成する。
いくつかの実施形態では、
R7aおよびR7bは各々、独立してアルキルであり、
R4およびR5は各々、独立して水素またはアルキルであり、
xおよびyは各々、独立して0または1である。
いくつかの実施形態では、
いくつかの例では、Aはアミノ基を適当な位置になるように働くスペーサーである。またいくつかの例では、Aは環状のアルキル基または直鎖のアルキルである。別の例では、Aはアリール体である。
いくつかの例では、R1はアリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、またはアリールアルキルオキシである。
いくつかの例では、R2は水素またはCH3である。
一つの態様によれば、本発明は式(I)の構造または本明細書に記載のそのほかの構造を有する化合物を特徴とするものであって、本化合物はGHS−Rへの結合に関してグレリンと競合する。
別の態様によれば、本発明は式(I)の構造または本明細書に記載のそのほかの構造を有する化合物を特徴とするものであって、本化合物は対象者の食欲または摂食行動の改変に効果を示す。
別の態様によれば、本発明は式(I)の構造または本明細書に記載のそのほかの構造を有する化合物を特徴とするものであって、本化合物は白色脂肪組織(WAT)中のレシスチン、レプチン、またはアジポネクチンmRNAの調節、あるいはたとえば血液中のインスリン、IGF−1、GH、コルチソル、トリグリセリド類、脂肪酸類、コレステロール類(たとえばVLDLまたはHLDL粒子)またはグルコールのレベルの調節に効果を示す。
別の態様によれば、本発明は式(I)の構造または本明細書に記載のそのほかの構造を有する化合物を特徴とするものであって、本化合物は腫瘍性細胞、たとえばグレリン感応性の病気またはGHS−R拮抗剤感応性の病気の細胞の成長を抑制する効果を示す。
別の態様によれば、本発明は表Iに挙げた化合物を特徴とする。
また別の態様によれば、本発明はGHS−Rの活性を調節する有機化合物(たとえば拮抗剤、作動剤、または逆作動剤)であって、分子量が700ダルトン未満であり、L−型またはD−型のアミノ酸(たとえばそれらの塩も含めて)残基を本質的に含まない化合物を特徴とする。たとえば、ある実施形態では、本化合物は金属陽イオンの結合または金属陽イオンの含有も可能である。
一つの実施形態では、本有機化合物はヘテロアリールスルホンアミド部分を含む。一つの実施形態では、本化合物は多環式(たとえば二環式または三環式)のヘテロアリールスルホンアミド部分を含む。また一つの実施形態では、本化合物は分子量が[D−Lys−3]−GHRP−6またはH(2)N−D−Arg−Pro−Lys−Pro−D−Phe−Gln−D−Trp−Phe−D−Trp−Leu−Leu−NH(2)(L−756867)のそれより小さいか、あるいは[D−Lys−3]−GHRP−6またはL−756867の分子量の2倍、1.5倍、1.4倍、1.2倍、1.1倍、0.8倍、0.6倍、または0.5倍以内のものである。
別の態様によれば、本発明は本明細書に記載の化合物、たとえば表1に挙げた化合物または上述の化合物、ならびに薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を特徴とする。
別の態様によれば、本発明は対象者でのGHS−R活性を低減させる方法を特徴とする。本方法には対象者におけるGHS−R活性を低減させるのに有効な量の、本明細書に記載の化合物を対象者に投与する工程が含まれる。一つの実施形態では、対象者は哺乳類、たとえばヒト、霊長類、イヌ、ネコ、競走馬、純系種または農業上の哺乳類である。
一つの実施形態では、GHS−R活性は下垂体、脳、脊髄、子宮、脾臓、膵臓、腎臓、副腎、骨格筋、甲状腺、肝臓、視床下部、心臓、肺、小腸の各組織、および脂肪組織の一つまたは複数において調節される。
別の態様によれば、本発明は以下の工程を含んだ方法を特徴とする。すなわち対象者について、肥満であるか、確立された臨床基準(たとえば“NIH Clinical Guidelines on the Identification and Evaluation,and Treatment of Overweight and Obesity in Adults”(1998))によって肥満のリスクがあるか、インスリン抵抗性があるか、または過剰体重であるかの診断を下し、次に体重減少、体重増加抑制、体脂肪の減少、代謝活性の増大、血糖値の減少、血中インスリン濃度の減少またはインスリン感受性の増大に有効な量の、本明細書に記載の化合物を対象者に投与する。
肥満に関しては、体重の状態を示す手段であって、身長に対する体重の計測で得られる、対象者の体格指数(BMI)によっても規定できる。(体脂肪率の計測としてのGarrow JSおよびWebster J.Queteletの指数(W/H2)、International Journal of Obesity,1985;9:147−153参照。)BMIが18.5またはそれ以下の場合は過少体重とみなし、BMIが18.5−24.9の場合は正常とみなし、BMIが25.0−29.9の場合は過剰体重とみなし、BMIが30.0またはそれ以上の場合は肥満とみなす。このBMIの範囲規定は、体重が疾患および死亡に影響することに基づくものである。(WHO,“Physical status:The use and interpretation of anthropometry”、スイス、ジュネーブ:世界保健機構1995:WHO技術レポートシリーズ参照。)BMIが増えると、いくつかの疾患のリスクが増す。
別の態様によれば、本発明は過食症および肥満を伴うプレ−ダー−ウイリィ症候群を患う患者の処置法を特徴とする。プレーダー−ウイリィ症候群とは、過食症、肥満、筋緊張低下および軽度の精神薄弱を特徴とし、第15染色体に局在する遺伝性疾患である。(たとえばGrowth Hormone & IGF Research 13(2003)22−327;Growth hormone & IGF Research 14(2004)1−15;The Journal of Clinical Endrocrinology & Metabolism 88(1):174−178;The Journal of Clinical Endrocrinology & Metabolism 88(5):2206−2212;The Journal of Endrocrinology & Metabolism 88(5):3573−3576;The Journal of Clinical Endrocrinology & Metabolism 87(12):5461−5464参照。)本処置方法には、対象患者の体重の維持または減少、および/または食欲の低下、過食症に対する二次的な行動障害の抑制、ならびに重度の肥満に伴う罹患および死亡のリスクの低減に有効な量の、本明細書に記載の化合物を対象患者に投与する工程が含まれる。肥満が関係する死亡の例としては、II型糖尿病、心血管系疾患および脳卒中が挙げられると考えられる。いくつかの例では、肥満を伴うプレーダー−ウイリィ症候群を患う患者については、たとえば患者のDNAメチル化体試験、マイクロサテライト検査、および/または臨床的表現型分類によって認定できる。
別の態様によれば、本発明はインスリンが関係する病気、たとえば糖尿病、網膜症、ニューロパシー(神経障害)、腎症、および末梢器官の損傷の処置方法または予防方法を特徴とする。本方法には、患者のインスリン抵抗状態の処置または予防に有効な量の、本明細書に記載の化合物を患者に投与する工程が含まれる。
別の態様によれば、本発明は患者のGHS−R活性を低減させるのに有効な量の、本明細書に記載の化合物を患者に投与する工程(たとえば拮抗剤または逆作動剤の投与)が含まれる。一つの実施形態では、対象患者は癌、糖尿病、神経疾患、肥満、加齢性の病気、新生物の病気、新生物以外による病気、心血管系疾患、代謝性疾患または皮膚疾患からなる群から選択される病気と診断されるか、または病気を有する。
たとえば、本化合物は経口投与、または非経口的、たとえば注射などによって投与される。一つの実施形態では、本化合物は複数の投与間隔、たとえば規則的な投与間隔を設けて投与される。一つの実施形態では、本発明方法には患者のGHまたはIGF−1活性のモニタリング、GHS−Rによって調節される遺伝子または蛋白質(たとえばレシスチン、レプチンまたはアジポネクチン)のモニタリング、あるいは患者の血液中または血漿中のグレリン、インスリン、レプチンおよび/またはIGF−1のレベルのモニタリングがさらに含まれる。
別の態様によれば、本発明はグレリンのレベルが特徴的な病気(たとえば、プレーダー−ウイリィ症候群のようなグレリンレベル亢進性疾患)、あるいはGHS−R介在シグナル伝達レベルが所望値または正常値を超えていることが特徴的な病気の処置法または予防法を特徴とする。本発明方法には、患者のGHS−R介在性シグナル伝達を減弱、抑制または遮断するのに有効な量の、本明細書に記載の化合物を患者に投与する工程が含まれる。
別の態様によれば、本発明はグレリンレベルまたはGHS−R介在性シグナル伝達レベルが所望値または正常値より低いことを特徴とする病気の処置法または予防法を特徴とする。本発明方法には、患者のたとえば下垂体、脳、脊髄、子宮、脾臓、膵臓、腎臓、副腎、骨格筋、甲状腺、肝臓、小腸および心臓の一種または複数種の組織におけるGHS−R介在性シグナル伝達を上昇させるのに有効な量の、本明細書に記載の化合物を患者に投与する工程が含まれる。
別の態様によれば、本発明はGHS−R感応性の新生物性の病気の処置法または予防法を特徴とする。本方法には、新生物性の病気の寛解(たとえば新生物細胞の増殖抑制、死滅、またはその細胞活性の低減または抑制)に有効な量の、本明細書に記載の化合物を患者に投与する工程が含まれる。
別の態様によれば、本発明は患者の摂食行動の調節方法を特徴とする。本方法には、患者の摂食行動を調節する(たとえば患者の食欲を増大させる)のに有効な量の、本明細書に記載の化合物を患者に投与する工程が含まれる。一つの実施形態では、本発明化合物は食事時間、または食事が可能になると予想される時間の前(たとえば少なくとも0.5、1,2または4時間前)に投与される。関連する態様によれば、本発明方法には患者の摂食行動の調節、たとえば患者の食欲の低減に有効な量の化合物を患者に投与する工程が含まれる。一つの実施形態では、本化合物は食事時間、または食事が可能になると予想される時間の前(たとえば少なくとも0.5、1、2または4時間前)に投与される。
別の態様によれば、本発明は患者の新生物性の病気の処置法または予防法を特徴とする。本発明方法には、対象の新生物性の病気においてグレリン、GHS−R作動剤、またはGHS−R拮抗剤に感受性のある細胞が介在するかどうかを判断する工程、および本明細書に記載のGHS−R相互作用性化合物を選択する工程、ならびにその選択化合物を患者に投与する工程が含まれる。
別の態様によれば、本発明は神経変性性の病気の処置法または予防法を特徴とする。本方法には、患者の神経変性性の病気を寛解させるのに有効な量の、本明細書に記載の化合物を患者に投与する工程が含まれる。
別の態様によれば、本発明は代謝性の病気の処置法または予防法を特徴とする。本発明には、患者の代謝性の病気の寛解に有効な量の、本明細書に記載の化合物を患者に投与する工程が含まれる。
別の態様によれば、本発明は心血管系の病気の処置法または予防法を特徴とする。本発明方法には、患者の心血管系の病気の寛解に有効な量の、本明細書に記載の化合物を患者に投与する工程が含まれる。
一つの態様によれば、本発明には胃、腸(たとえば小腸または大腸)または十二指腸の病気、あるいは消化器系(たとえば胃または小腸)通過に障害を及ぼす全般的な病気の処置法が含まれる。対象の病気は、たとえば迷走神経のような神経の損傷によって胃または小腸の収縮が引起こされて生じる可能性がある。さらに、対象の病気は慢性または急性でもありえる。対象の病気の処置については、それらの病因に限定されない。いくつかの実施形態では、機能不全は手術後の患者に起こリ、たとえば手術によって胃部または結腸部の障害が起こる。ほかの実施形態では、機能不全には腹腔内または後腹膜の感染症、動脈または静脈の損傷による腸間膜虚血、後腹膜または腹腔内の血留、腹腔内の手術、腎臓または胸部の疾患、あるいは代謝障害(たとえば低カリウム血症)が伴う。いくつかの実施形態では、機能不全は胃または腸に対して神経損傷を引起こす可能性がある糖尿病のような慢性的な状態の結果として起こる。そのような病気の代表例には、腸閉塞(たとえば手術後の腸閉塞)および胃無力症(たとえばI型またはII型の糖尿病のいずれかの患者で起こるものも含めた糖尿病性胃アトニー)が含まれる。
ほかの実施形態では、式(I)の化合物は悪液質、特に癌に関係する悪液質の処置に使用できる。本明細書に記載または参照の化合物の有効量は、悪液質リスク患者に対してその処置または予防目的で投与できる。
別の態様によれば、本発明は本明細書に記載の化合物、ならびに本明細書に記載の病気、たとえば、摂食に関する病気、過剰または非所望のGHS−R活性を特徴とする代謝性の病気、心血管系の病気、神経変性性の病気、およびGH/IGF−1活性の変調を伴う病気の処置のための本化合物投与用説明書(添付文書)を含むキットを特徴とする。
別の態様によれば、本発明は本明細書に記載の化合物(1)、ならびにGHS−Rによって調節される一個または複数の遺伝子の発現、たとえばレシスチン、レプチンまたはアジポネクチンの発現をモニタリングするための一種または複数の試薬(2)、あるいはグレニン、インスリン、IGF−1またはレプチンのような代謝調節因子の血漿中レベルをモニタリングするための一種または複数の試薬を含むキットを特徴とする。
ほかの態様によれば、本発明は患者のIGF−1レベル(たとえば循環血中のIGF−1のレベル)をモジュレートする方法を特徴とする。本方法には、本明細書に記載の化合物を投与する工程が含まれる。一つの実施形態では、本発明に記載の化合物はIGF−1レベルを変える(たとえばIGF−1レベルを上げるか、または下げる)のに有効な量で患者に投与される。特に、拮抗剤ではIGF−1レベルの低減に有効になるような挙動を示し、作動剤ではIGF−1レベルの上昇に有効になるような挙動を示す。
一つの態様によれば、本発明は患者のインスリンレベル(たとえば循環血中のインスリンレベル)をモジュレートする方法を特徴とする。本発明には、本明細書に記載の化合物の投与が含まれる。一つの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、インスリンレベルをモジュレートする(たとえばインスリンレベルを上げるか、または下げる)のに有効な量で患者に投与される。特に、拮抗剤ではインスリンレベルの低減に有効な挙動を示し、作動剤ではインスリンレベルの上昇に有効な挙動を示す。
一つの態様によれば、本発明は患者のグルコースレベル(たとえば循環血中または血液中のグルコースレベル)をモジュレートする方法を特徴とする。本発明方法には、本明細書に記載の化合物の投与が含まれる。一つの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、グルコースレベルをモジュレートする(たとえばグルコースレベルを上げるか、または下げる)のに有効な量で患者に投与される。特に、作動剤ではグルコースレベルの上昇に有効な挙動を示し、拮抗剤ではグルコースレベルの減少に有効な挙動を示す。
「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のいずれかのラジカルを指す。「アルキル」という用語は、表示された炭素原子数を含む直鎖または分岐鎖であり得る炭化水素鎖を指す。たとえば、C1−C10といえば、その基が中に1〜10個の(包含)炭素原子を持ち得ることを示す。「低級アルキル」という用語は、C1−C8アルキル鎖を指す。いずれの数表示もない場合では、「アルキル」とはその中に1〜10個の(包含)炭素原子を有する鎖(直鎖または分岐鎖)のことである。「アルコキシ」という用語は、−O−アルキル基を指す。「アルケン」という用語は、二価のアルキル(すなわち、−R−)を指す。「アミノアルキル」という用語は、アミノが置換したアルキルを指す。「メルカプト」という用語は、−SH基を指す。「チオアルコキシ」という用語は、−S−アルキル基を指す。
「アルケニル」という用語は、一個または複数の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖であり得る炭化水素鎖を指す。そのアルケニル部分には、表示された数の炭素原子が含まれる。たとえばC2−C10とは、その基の中に2〜10個の(包含)炭素原子が存在し得ることを示す。「低級アルケニル」という用語は、C2−C8アルケニル鎖を指す。いずれの数表示もない場合、「アルケニル」とは、その中に2〜10個の(包含)炭素原子を有する鎖(直鎖または分岐鎖)のことである。
「アルキニル」という用語は、一個または複数の炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分岐鎖であり得る炭化水素鎖を指す。そのアルキニル部分には、表示された数の炭素原子が含まれる。たとえばC2−C10とは、その基の中に2〜10個の(包含)炭素原子が存在し得ることを示す。「低級アルキニル」という用語は、C2−C8アルキニル鎖を指す。いずれの数表示もない場合、「アルキニル」とは、その中に2〜10個の(包含)炭素原子を有する鎖(直鎖または分岐鎖)のことである。
「アリール」という用語は、6員炭素からなる単環式、10員炭素からなる二環式、または14個員炭素からなる三環式の芳香族環を指し、各々の環の0、1、2、3または4個の原子は、置換基によって置換され得る。アリール基の例には、フェニル、ナフチルなどが含まれる。「アリールアルキル」という用語または「アラールキル」という用語は、アリールが置換したアルキルを指す。「アリールアルケニル」という用語は、アリールが置換したアルケニルを指す。「アリールアルキニル」という用語は、アリールが置換したアルキニルを指す。「アリールアルコキシ」という用語は、アリールが置換したアルコキシを指す。
本明細書で用いられる「シクロアルキル」または「シクリル」という用語は、3〜12個、好ましくは3〜8個、さらに好ましくは3〜6個の炭素を有する飽和および部分的不飽和の環状炭化水素基を含め、そのシクロアルキル基は必要に応じて置換され得る。好ましいシクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが含まれるが、それらに限定されない。
「ヘテロアリール」という用語は、芳香族の5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式の環を指し、単環式では1〜3個のヘテロ原子、二環式では1〜6個のヘテロ原子、または三環式では1〜9個のヘテロ原子を持ち、そのヘテロ原子はO、NまたはSから選択され(たとえば、単環式、二環式または三環式の場合では各々、炭素原子、および1〜3個、1〜6個または1〜9個のN、OまたはSのヘテロ原子を持つ)、各々の環の0、1、2、3または4個の原子は置換基で置換され得る。ヘテロアリール基の例には、ピリジル、フリルまたはフラニル、インミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニルまたはチエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリルなどが含まれる。「ヘテロアリールアルキル」という用語はまたは「ヘテロアラールキル」という用語は、ヘテロアリールが置換したアルキルを指す。「ヘテロアリールアルケニル」という用語は、ヘテロアリールが置換したアルケニルを指す。「ヘテロアリールアルキニル」という用語は、ヘテロアリールが置換したアルキニルを指す。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールが置換したアルコキシを指す。
「ヘテロシクリル」という用語は、非芳香族の5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式の環を指し、単環式では1〜3個のヘテロ原子、二環式では1〜6個のヘテロ原子、三環式では1〜9個のヘテロ原子を持ち、そのヘテロ原子はO、NまたはSから選択され(たとえば、単環式、二環式、または三環式の場合では各々、炭素原子、および1〜3個、1〜6個または1〜9個のN、OまたはSのヘテロ原子を持つ)、各々の環の0、1、2または3個の原子は、置換基で置換され得る。ヘテロシクリル基の例には、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニルなどが含まれる。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルが置換したアルキルを指す。
「スルホニル」という用語は、二重結合を介して2個の酸素原子に結合した硫黄を指す。「アルキルスルホニル」とは、スルホニルが置換したアルキルを指す。
「アミノ酸」という用語は、アミノ基およびカルボキシル基の両方を含む分子を指す。アミノ酸の適例には、ペプチド中に見られる20種の天然アミノ酸(たとえばA、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、V(一文字略号での表記))のD型およびL型の両方の異性体、ならびに有機合成またはそれ以外の代謝経路によって調製される非天然型アミノ酸が含まれるが、それらに限定されない。
「アミノ酸側鎖」という用語は、天然アミノ酸中のα−炭素に結合した20種類の基のうちのいずれか一つを指す。たとえば、アラニンに関するアミノ酸側鎖はメチルであり、フェニルアラニンに関するアミノ酸側鎖はフェニルメチルであリ、システインに関するアミノ酸側鎖はチオメチルであり、アスパラギン酸に関するアミノ酸側鎖はカルボキシメチルであり、チロシンに関するアミノ酸側鎖は4−ヒドロキシフェニルメチルであり、そのほかのアミノ酸についても然りである。
「置換基」という用語は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、またはヘテロアリールの各々の基に対して、その基のいずれかの原子において「置換された」基を指す。本明細書に記載の原子団のいずれについても、さらに置換基が置換し得る。置換基の適例には、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アリール、アラールキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、アルカンスルホニル、アルキルカルボニル、およびシアノ基が含まれるが、それらに限定されない。
GHS−Rは、GHの分泌を調節できる。GHは、それ自体がIGF−1産生の調節物質である。したがって、たとえば本明細書に記載の化合物のような、GHS−R活性を調節する化合物については、GH/IGF−1系の活性を調節(たとえば増大または低減)するのに用いることができる。たとえば、GHS−R作動剤はGH活性および/またはIGF−1活性を増大させるのに使用できる。GHS−R拮抗剤は、GH活性および/またはIGF−1活性を低減させるのに使用できる。またこの適用には、米国特許出願第10/656530号に参照されるように、本明細書に記載の化合物が使用され得る用途、たとえばGH/IGF−1系の調節因子としての用途に含まれる内容とも一体化している。
GH/IGF−1系には、下流の標的として転写因子フォークヘッド(支点)を有する、細胞外および細胞内の一連のシグナル伝達成分が含まれる。GH/IGF−1系の主要な成分については、プレIGF−1成分、IGF−1成分およびポストIGF−1成分の3種類のカテゴリーに分けることができる。「プレIGF−1成分」には、GH、GH−R、グレニン、GHS−R、GHRH、GHRH−R、SSTおよびSST−Rが含まれる。「ポストIGF−1成分」には、IGF−1−R、ならびにPI(3)キナーゼ、PTENホスファターゼ、PI(3,4)P2、14−3−3蛋白質、およびPI(3,4,5)P3ホスファチジルイノシトールキナーゼ類を含めた細胞内シグナル伝達成分、AKTセリン/スレオニンキナーゼ(たとえばAKT−1、AKT−2またはAKT−3)、あるいはフォークヘッド(支点)転写因子(FOXO−1、FOXO−3またはFOXO−4など)が含まれる。「成長ホルモン産生細胞系のシグナル伝達経路成分」とは、(i)成長ホルモン産生細胞中に存在するか、または成長ホルモン産生細胞によるGH放出を調節する蛋白質、あるいは(ii)クラス(i)中の蛋白質に直接結合する蛋白質のうちの一つである。クラス(i)の成長ホルモン産生細胞系シグナル伝達経路成分の例としては、GHS−R、GSRH−RおよびSST−Rのような細胞表面受容体が挙げられる。クラス(ii)の成長ホルモン産生細胞系シグナル伝達経路成分の例としては、GHRH、グレリン、およびSSTが挙げられる。
GHS−R活性の変更などによってGHのレベルを調節する化合物は、下流効果を持ち得る。たとえば、本発明化合物は、IGF−1受容体シグナル伝達経路エフェクターのレベルまたは活性を変更(たとえば増大または低減)できる。「IGF−1受容体シグナル伝達経路エフェクター」とは、フォークヘッド転写因子によってIGF−1に対応してレベルが直接調節される蛋白質または生物学的物質のことである。たとえば、その蛋白質をコードする遺伝子の発現は、FOXO−1、FOXO−3aまたはFOXO−4のようなフォークヘッド転写因子によって直接調節され得る。例を挙げると、IGF−1受容体シグナル伝達経路エフェクターには、GADD45、PA26、セレノプロテインP、Whip1、サイクリンG2およびNIP3を含めることができる。
本明細書で用いられる「GH/IGF−1系の活性」とは、GH分泌の刺激、IGF−1レベルの増大、またはIGF−1受容体シグナル伝達が可能な系の成分の全般的な効果を指す。したがって、「GH/IGF−1系をダウンレギュレーション(下方制御)する」とは、たとえばGH、IGF−1またはIGF−1受容体シグナル伝達のうちの一つまたは複数が低減するように、一種または複数の成分を調節することを指す。いくつかの場合では、たとえばGHレベルが維持されていても、その活性が抑制されていることがあり、その場合のIGF−1レベルについてはGHレベルが低減しなくとも低下する。またいくつかの場合では、GHおよびIGF−1の両方のレベルが低下することもある。
特定の蛋白質の「拮抗剤」には、対象成分の活性が、たとえば競合的または非競合的な抑制、不安定化、破壊、クリアランスなどによって低下するように、蛋白質レベルでその生体成分に直接結合するか、またはその生体成分を修飾する化合物が含まれる。たとえばその活性の低下には、内在性のリガンドに対する反応性の低下を含めることができる。たとえばGHS−R拮抗剤は、GHS−Rのグレリンに対する反応性を低減できる。
特定の蛋白質の「作動剤」には、対象成分の活性が、たとえば活性化、安定化、分布の変更などによって増大するように、蛋白質レベルでその生体成分に直接結合するか、またはその生体成分を修飾する化合物が含まれる。
特定の蛋白質の「逆作動剤」には、たとえば不活性型の対象蛋白質への結合および/または安定化によって、対象蛋白質の活性高次構造の形成を妨げるように平衡化させる固有の負活性を持ち、対象蛋白質(たとえば受容体)の構成性作用を蛋白質レベルで抑制する化合物が含まれる。
一般に、受容体は活性型(Ra)および不活性型(Ri)の高次構造で存在する。受容体に影響を及ぼすある種の化合物は、RaのRiに対する比を変えることができる。たとえば、完全な作動剤はRa/Ri比を上げ、「最大限の」飽和効果を起こし得る。部分的作動剤については、受容体に結合した時に完全作動剤(たとえば内在性作動剤)の場合よりも起こる反応が小さい。したがって、部分的作動剤の場合のRa/Ri比については、完全作動剤の場合のそれより小さい。しかしながら、部分的作動剤の作動能については、完全作動剤のそれに比較して大きい場合、または小さい場合もあり得る。
GHS−R拮抗作用がグレリンよりも小さなある種の化合物では、アッセイすると拮抗作用ならびに作動作用も示すものもあり得る。それらの化合物はグレリンと受容体との相互作用を完全に妨げる効果を示すため、グレリンによるGHS−Rの活性化に拮抗する。しかしながら、それらの化合物はそれ自体、通常はグレリンに対応する量よりも少ないにもかかわらず、受容体活性をある程度上げる。そのような化合物については、「GHS−R部分的作動剤」とすることができる。
「正常な」GHレベル域である対象者とは、クルコース摂取後に血中GHレベルを酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはポリクローナルイムノアッセイによって計測する糖耐性試験を行うと、正常域に復帰すると考えられる対象者のことである。この試験での正常な結果は、グルコース経口摂取後1〜2時間以内のGHレベルが1ng/mL未満であるとされる。しかしながら、GHレベルが過剰である末端肥大症患者では、グルコース摂取後に1ng/mL未満まで低下しない可能性がある。GHレベルについては20−30分ごとに変動し、時刻、ストレスレベル、運動などに応じてもレベルが変わるため、GHレベルが過剰であるかかどうかを判断する標準的な手段は、グルコースを投与することである。このアプローチでは、GHが正規化され、GHの振幅変動、年齢、性差、またはそのほかの諸因子による影響がなくなる。さらに末端肥大症患者では必ずIGF−1レベルが増大しているため、IGF−1レベルを計測し、年齢および性差に適合させた正常対照と比較することが可能ともいえる。
「GH/IGF−1系の活性指標」という用語は、その活性を示す検出可能な適当なGH/IGF−1系を指す。その属性の例としては、循環性(循環血中)GH濃度、循環性IGF−1濃度、GH振幅周期、GH振幅の大きさ、グルコース反応時のGH濃度、IGF−1受容体リン酸化、およびIGF−1受容体基質のリン酸化が挙げられる。GHS−Rの活性を調節する化合物は、GH/IGF−1系活性の一種または複数の指標を変えることができる。
(略号:)
GHは成長ホルモン;GH−Rは成長ホルモン受容体;IGFはインスリン様成長因子;GHRHはGH放出ホルモン;GHRH−RはGH放出ホルモン受容体;GHSはGH分泌促進物質;GHS−RはGH分泌促進物質受容体;SSTはソマトスタチン、SST−Rはソマトスタチン受容体、PIはホスホイノシトール、AGRPはアグーティ関連蛋白質;ARCは弓状核;ICVは大脳第三脳室(性):NPYはニューロペプチドY;WATは白色脂肪細胞;Bnはベンジル;Bocはtブチルオキシカルボニル;Cbzはベンジルオキシカルボニル;DCMはジクロロメタン;DIPEAはジイソプロピルエチルアミン;DMFはジメチルホルムアミド;EDCは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩;EtOAcは酢酸エチル;hは時間;HOBTはヒドロキシベンゾトリアゾール;Msはメタンスルホニル:PrepLCは予備調製済み高圧液体クロマトグラフィー;RTは室温;TFAはトリフルオロ酢酸;THFはテトラヒドロフランである。
本発明の一つまたは複数の実施形態の詳細については、以下の記述において述べられる。また本発明のそのほかの特徴点、目的、および利点については、本明細書の記載および請求項によって明確になると考えられる。
(詳細な説明)
本明細書に記載の化合物については、多様な目的、たとえば治療目的に使用できる。本発明化合物の多くはGHS−R活性に拮抗し、たとえば患者におけるGSH−R活性の低減に使用できる。さらに別の化合物はGHS−Rを作動し、たとえば患者におけるGHS−R活性を増大させるのに使用できる。本開示化合物のいくつかについては、GHS−R以外の細胞成分の活性を調節することによる有用な生物学的効果も提供し得る。
本発明化合物の代表例を以下の表1に記述する。それ以外の化合物の例については、本明細書の要約部分で述べた視野の中に入るか、あるいは本明細書のいずれかの部分に記載されている。
GHS−Rを調節する代表的な化合物には、式(I)の化合物が含まれ、そのすべての改変物については本明細書に記載されている。
AならびにR
4およびR
5については、GHS−Rとの相互作用のタイプによって様々のものが選択できる。たとえばいくつかの例では、R
4およびR
5はともに水素であって、その化合物はGHS−Rの作動剤である。またほかの例では、R
4およびR
5はともに独立してアルキルであって、その化合物はGHS−Rの拮抗剤である。
本発明のそのほかの態様によれば、本明細書に記載のいずれかの式の化合物および薬学的に許容される担体を含有する組成物、あるいは本明細書に記載のいずれかの式の化合物、添加される医療用化合物(たとえば、血圧降下性化合物またはコレステロール低下性化合物)および薬学的に許容される担体を含有する組成物、あるいは本明細書に記載のいずれかの式の化合物、添加される治療用化合物および薬学的に許容される担体を含有する組成物が関係する。
本発明で想定される置換基および可変部分の組合せは、安定な化合物が形成される場合に限定される。本明細書で用いられる「安定な」という用語は、生産するのに充分な安定性を持ち、本明細書に記載の目的(たとえば、患者への治療目的または予防目的の投与)に対して充分な期間、活性を維持する化合物を指す。
(グレリン受容体調節性化合物の合成)
当業者であれば分かることであるが、本明細書に記載の式の化合物の合成方法は、当業者にすぐに分かるようなものである。本明細書に記載の化合物については、たとえば国際公開第2004/021984号、米国特許出願第60/559166号(2004年4月2日受理)、および米国特許出願第60/517058号(2003年11月4日受理)に記載の方法を用いて合成することができる。ここで、各内容についてはすべて参照によって本明細書に組込まれている。本明細書に記載の化合物の合成に有用な合成化学上の変換および保護基の方法論については、当業者に知られており、たとえばR.Larock著、“Comprehensive Organic Transformation”(VCH出版社(1989));T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts著、“Protective Groupes in Organic Synthesis、第2版”(John Wiley and Sons社刊(1994));L.Fieser and M.Fieser著、“Fierser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis”(John Wiley and Sons社刊(1994))、およびL.Paquette編、“Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis”(John Wiley and Sons社刊(1995))、ならびにそれらの続版に記載されているような方法論が含まれる。
さらに、本明細書の開示化合物については、固体担体表面上、あるいは固相ペプチド合成によって調製できる。
「固体支持体」という用語は、化合物の同定、単離、精製または化学反応選択性が容易になるように化合物と結合する素材を指す。そのような素材については当業者に知られており、たとえばビーズ、ペレット、ディスク、ファイバー、ゲル、あるいはセルロースビーズ、多孔質ガラスビーズ、シリカゲル、所望によりジビニルベンゼンで架橋化ないし所望によりポリエチレングリコールでグラフト化されたポリスチレンビーズ類、ポリアクリルアミドビーズ、ラテックスビーズ、所望によりN,N’−ビス−アクリルオイルエチレンジアミンで架橋化されたジメチルアクリルアミドビーズ類、疎水性ポリマーで被覆されたガラス粒子、ならびに剛性または半剛性表面を有する素材が含まれる。固体担体は、所望によりアミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、またはハロゲンのような官能基を持ち(Obrecht,D.およびVillalgrodo、J.M.著、“Solid−Supported Combinatorial and Parallel Synthesis of Small−Molecular−Weight Compound Libraries”(Pergamon−Elsevier Science社刊(1998))参照)、「スプリットおよびプール」または「パラレル」合成技法、固相および溶液相技法、ならびにエンコーディング技法(たとえば、A.W.,Curr.Opin.Chem.Bio.、(1997)1,60参照)のような技法において有用なものが含まれる。
「固相ペプチド」という用語は、樹脂(たとえば固体担体)に化学的に結合した状態のアミノ酸を指す。樹脂については一般に市販(たとえば、SigmaAldrich社から)されている。樹脂の例のいくつかには、Rink−レジン類、TentagelSRAM、MBHA、およびBHA−レジン類が挙げられる。
本発明の化合物は、1個または複数個の不斉中心を含む場合があるため、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー、およびジアステレオマー混合物として生成する。そのような化合物異性体の型のすべては、本明細書に明らかに含まれる。本発明の化合物は、上述の例のような多重の互変異型で表わすこともでき、本発明には本明細書に記載の化合物のすべての互変異型が明らかに含まれる(たとえば、ある環式のアルキル化では多重部位でアルキル化が起こり得るが、本発明にはそのような反応生成物のすべてが明らかに含まれる)。そのような化合物のすべての異性体型は、本発明に明らかに含まれる。本明細書に記載の化合物の結晶型のすべては、本発明に明らかに含まれる。
本明細書で用いられ、本明細書に記載の式の化合物を含めた本発明の化合物については、薬学的に許容されるその誘導体またはプロドラッグも含めると規定される。「薬学的に許容される誘導体またはプロドラッグ」とは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩、エステル、エステル塩、またはそのほかの誘導体(たとえば、アミドのイミデートエステル)のいずれも意味し、それらを投与すると、本発明の化合物を(直接的または間接的に)供給できる。特に好適な誘導体およびプロドラッグは、哺乳類に対して投与されると、本発明の化合物のバイオアベイラビリティーを増大させる(たとえば経口投与された際にすぐに吸収されて血中に至る)ものか、あるいはもとの化合物と比較して生物学的コンパートメント(たとえば、脳またはリンパ系)への送達を増大させるものである。好ましいプロドラッグには、水溶性または腸膜通過性能動輸送を高める基が、本明細書に記載の構造式に付加えられた誘導体が含まれる。
本発明の化合物は、適当な官能基を付加えて修飾し、選択的な生物学的特性を高めることができる。そのような修飾については、当業者に知られており、それらには対象の生物学的コンパートメント(たとえば血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透を増大させるもの、経口でのアバイラビリティーを増大させるもの、注射による投与が可能なように溶解度を上げるもの、代謝を変えるもの、ならびに排出速度を変えるものが含まれる。
本発明の化合物の薬学的に許容される塩類には、薬学的に許容される無機ないし有機の酸ならびに塩基から生じるものが含まれる。酸塩類の適例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。塩基から得られる塩類に適するものとしては、アルカリ金属塩類(たとえばナトリウム塩)、アルカリ土類金属塩類(たとえばマグネシウム塩)、アンモニウム塩およびN−(アルキル)4 +塩(第四級アンモニウム塩)が含まれる。本発明は、本明細書に記載の化合物の塩基性窒素含有基のいずれかの第四級化体も想定している。そのような第四級化によって、水溶性、油溶性または分散性のプロドラッグを得ることができる。
(化合物の評価)
GHS−R活性調節能に関する化合物評価には、種々の方法を用いることができる。評価方法には、インビトロでの結合アッセイ、インビトロでの細胞に基づくシグナル伝達アッセイ、およびインビボでの方法が含まれる。それらの評価方法によって、結合活性、あるいはGHS−Rの下流域の活性、たとえばイノシトールリン酸産生のようなGHS−Rの下流域のシグナル伝達活性、Ca2+可動化、または遺伝子転写(たとえばCREB−介在性遺伝子転写)を評価できる。
結合性試験。化合物については一般に、GHS−Rに結合するかどうか、さらにその結合が、GHS−Rと相互作用する既知の一種または複数の化合物と競合するかどうか、ならびにその相互作用の程度を求めて評価できる。たとえば、対象の化合物については、グレリン、イパモレリン、L−692400またはL−692492と競合するかどうかを求めて評価できる。
結合性アッセイの一例としては、まずGHS−R発現性のCOS−7細胞を1ウエルあたり1×105の細胞密度になるまで培養し、約5〜8%の範囲の放射性リガンドの存在下で結合性をアッセイするものである。その細胞についてはたとえばGHS−Rをコードする内在性の核酸、またはGHS−Rをコードする外在性の核酸を発現できるものが挙げられる。GHS−Rをコードする外在性の核酸でトランスフェクトされた細胞については、トランスフェクトしてから、たとえば2日後に使用できる。競合的結合性実験は、1mMのCaCl2、5mMのMgCl2、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミンおよび40mg/mlのバシトラシンが添加された50mMのHEPES緩衝液(pH7.4)0.5ml中、25pMの125I−グレリンを用いて4℃で3時間行われる。非特異的な結合については、1mMの非標識化グレリンの存在下での結合実験で求めることができる。細胞については、氷冷した緩衝液0.5ml中で2回洗浄し、0.5mlの溶解緩衝液(8Mの尿素、2%のNP40/3M酢酸)で溶解する。洗浄および溶解処理後、結合放射活性をカウントする。アッセイはデュプリケートまたはトリプリケート、たとえば統計的検出力が生じるように実施できる。
解離定数(Kd)および阻害定数(Ki)の値については、以下の等式を用い、競合結合実験から算定できる。
Kd=IC50−LおよびKi=IC50/(1+L/Kd)
ここで、Lは放射性リガンドの濃度である。Bmax値については、等式Bmax=B0IC50/[リガンド]を用い、競合結合実験から算定できる。ここで、B0は特異的に結合した放射性リガンドである。
細胞に基づく活性アッセイ。たとえば、GHS−Rの下流域の第二メッセンジャーシグナル伝達成分の蓄積をモジュレートする化合物の能力が評価できる。その例としては、哺乳類細胞、たとえばCOS−7細胞におけるGqシグナル伝達の結果として生じるイノシトールリン酸(IP)が挙げられる。そのほかの組織培養細胞、アフリカツメガエル(Xenopus)の卵母細胞、ならびに始源細胞も使用できる。
ホスファチジルイノシトール代謝回転アッセイ。トランスフェクト1日後のCOS−7細胞を、10%のウシ胎児血清、2mMのグルタミンおよび0.01mg/mlのゲンタマイシン添加の培地1ml/ウエル中で、5μCiの[3H]−ミオイノシトールとともに24時間培養する。次に細胞を、140mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgSO4、1mMのCaCl2、10mMのグルコースおよび0.05%(w/v)のウシ血清が添加された20mMのHEPES緩衝液(pH7.4)中で2回洗浄し、10mMのLiClが添加された緩衝液0.5ml中、37℃で30分間、培養する。いくつかのアッセイでは、細胞をADA(アデノシンデアミナーゼ)(200U/mg、Boehringer Mannheim社.(独国)製)1U/ml濃度とともに30分間、培養することも行われる。
さらに対象化合物とともに37℃で45分間培養後、細胞を氷冷した10%過塩素酸で抽出処理し、氷上で30分間、放置する。得られた上清をKOH/HEPES緩衝液で中和し、Bio−Rad社製のAG 1−X8(商品名)陰イオン交換樹脂上で前述のように[3H]−イノシトールリン酸を精製する。アッセイはデュプリケート、トリプリケートなどで実施できる。
そのほかの二次メッセンジャーのアッセイ。評価が可能な別の二次メッセンジャーにはCa2+が挙げられる。Ca2+の移動性については、エクオリン蛋白質、あるいはFURA−2などの色素のようなカルシウム感受性検出物質を用いて評価できる。あるアッセイの例では、カルシウム移動性は、GHS−Rおよびエクオリンを発現する組換え細胞中で評価される。
遺伝子発現アッセイ。96穴プレート中に播種したHEK293細胞(30000細胞/ウエル)を、pFA2−CREB/pFR−Lucレポータープラスミド(PathDetect(商標)CREB trans−Reporting System(商品名)、Stratagene社製)とGHSコード核酸との混合物で短時間トランスフェクトする。トランスフェクト1日後に細胞を、対象化合物含有媒体中、アッセイ用量100μlで5時間処理する。処理後に細胞を低濃度血清(2.5%)環境で培養する。培養後、細胞をPBSで2回洗浄し、100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬(LucLite(商標)、Packard Bioscience社製)を加えてアッセイする。ルミネッセンスは、TopCounter(商標)(Packard Bioscience社製)のような発光測定装置内で5秒間、計測(たとえば、比光量単位(RLU))する。
そのほかの転写に基づくアッセイには、GHS−R発現性の始源細胞類(たとえば、下垂体、脳、脊髄、子宮、脾臓、膵臓、腎臓、副腎、骨格筋、甲状腺、肝臓、小腸および心臓)、あるいはGHS−R発現性組換え細胞における、GHS−Rで調節される遺伝子の転写の評価を含めることができる。mRNAレベルについては、たとえばマイクロアレイ分析、ノザンブロッティングまたはRT−PCRのいずれかの方法によって評価できる。GHS−R活性によって直接的または間接的に調節される遺伝子の例には、レプチン、レシスチンおよびアジポネクチン遺伝子が挙げられる。GHS−R活性は、循環血中のインスリン、IGF−1およびレプチンのレベルにも影響を及ぼし得る。
IC50およびEC50値については、非線形回帰、たとえばPrism 3.0ソフトウエア(GraphPad Software社(サンジエゴ市)製)の使用によって求めることができる。
インビボでのアッセイ。インビボでのアッセイの例としては、実施例1および以下に記述の絶食−再給餌によるアッセイが挙げられる。
化合物の投与前に、マウスの体重を測定し、体重ごとに複数の群に分ける。午後6時に餌を取除き、一晩(約16時間)絶食させる。翌朝の午前10時に、マウスに対して投与媒体のみ(たとえば、生理食塩水+酢酸、pH=5)、または対象化合物含有媒体のいずれかを投与する。それらのマウスをもとのケージに戻し、予め計量した食餌(およそ90g)を直ちに各ケージ内の食餌供給器に戻す。化合物/媒体の投与から30分、1時間、2時間および4時間後に食餌供給器内に残った餌の重量を計測する。次にマウスごとに最終の体重を記録する。
対象化合物については、ほかの実験での評価も可能である。たとえば、対象化合物を痩身または肥満のマウス(たとえば、(ob/ob)C57BL/6Jマウス)、あるいはそのほかの実験動物に対して投与することもできる。対象化合物の投与経路としては、腹腔内投与または脳室内投与が可能である。投与後の動物については、たとえば食餌行動、不安状態、あるいは一種または複数の生理学的パラメーター、たとえば代謝パラメーターに関して評価を行う。
ICV投与。第三脳室内(ICV)投与については、各薬剤を注射用の人工脳脊髄液4μlに希釈して実施できる。ICV注射については、実験の7日前から脳に定位器具を取付けたマウスを、ペントバルビタールナトリウムで麻酔(80−85mg/kg腹腔内投与)して行う。頭蓋骨の中央縫合に対して0.9mm外側およびブレグマに対して0.9mm後方の位置に挿入した針を用いて頭蓋骨に1個の穴を開ける。末端から3mmの位置にかけて斜めにカットされた24ゲージのカニューレを、第三脳室内にインプラントしてICV注入に用いる。
胃の空隙の評価。対象化合物の投与後に、別に餌の消費試験によって、胃の空隙の評価を行う。胃の空隙の評価の前に、マウスを給水は自由にさせて16時間絶食させる。予め計量したペレットを絶食マウスに1時間、自由に摂取させた後、対象化合物を投与する。化合物の投与から1時間または2時間、マウスを再び絶食させる。摂取されなかったペレットの重量を計測することで、摂食量を求める。化合物投与の2時間後または3時間後に、マウスを頸部脱臼させて殺処分する。直ちに開腹して胃を露出させ、幽門および噴門の両方ともすばやく結紮して除去し、乾燥内容物の重量を測定する。胃の空隙率については、以下の式に従い計算する。
胃の空隙率[%]=(1−(胃から回収された食餌の乾燥重量/摂取食餌重量))×100
不安反応試験。不安反応については、地上50cm、標準的な高架式十字−迷路 ground.13で評価できる。その4本のアームについては、長さ27cm、幅6cmで製作できる。対抗する2本のアームは、高さ15cmの壁で遮蔽されているが、残りのアームは開放状態である。化合物注入10分後のマウスを1匹ずつ、迷路の中央に遮蔽アームの一つに向かうように置く。5分間の試験時間で各アームに滞在した累積時間、および開放アームまたは遮蔽アーム内に入った回数を記録する。開放アーム内に滞在した時間については、総進入時間の百分率(100 開放/開放+遮蔽)で表わし、開放アームへの進入回数については、総進入回数の百分率(100 開放/開放+遮蔽)で表わす。
パラメータ解析。試験化合物が投与されたマウスまたはそのほかの動物は、一種または複数の生物学的パラメータ、たとえば代謝パラメータに関する解析が可能である。マウスについては、処理(たとえば、絶食8時間後に腹腔内注射の実施)の終了時に、エーテル麻酔下で眼窩洞から採血した血液から血清を得る。マウスを頸部脱臼させて殺処分する。直ちに副睾丸脂肪パッド塊体を除去し、その白色脂肪組織(WAT)および腓腹筋の重量を測定する。血糖値については、グルコースオキシダーゼ法によって計測できる。血中のインスリンおよび遊離脂肪酸(FFA)については各々、酵素免疫測定法および酵素法(栄研化学社(日本、東京都)製試薬)によって測定できる。血清中のトリグリセリドおよび総コレステロールについては、酵素法(和光純薬工業(日本、東京都)製試薬)で測定できる。
mRNA分析。RNAについては、胃、副睾丸脂肪またはそのほかの関連する組織から、RNeasy Mini Kit(商品名)(Qiagen社(日本、東京都)製)を用いて単離する。単離された全RNAを、ホルムアルデヒドで変性させ、1%アガロースゲル内で電気泳動させ、HybondN+(商品名)メンブラン上にブロッティングする。そのメンブランを、対象遺伝子に対する標識化(たとえば、放射性標識化、化学標識化または蛍光標識化)cDNAプローブでハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションのシグナルの全積分密度は、濃度測定で求めることができる。データについては、グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼmRNAの存在量に対して、あるいはアクチンmRNAの存在量に対して正規化し、対照値に対する百分率として表わすことができる。評価可能な遺伝子の例としては、グレリン、レプチン、レシスチンおよびアジポネクチンが挙げられる。また、対象遺伝子由来の調節性領域を伴うレポーター構造体を含むトランスジェニック動物の使用、あるいはそのような構造体を伴う組換え細胞の使用も可能である。
本明細書に記載の化合物に関しては、上述のアッセイの一つまたは複数において、そのKi値(拮抗剤として)が200、100、80、70、60または50nM未満をとり得る。本明細書に記載の化合物の、作動剤としてのKd値は、上述のアッセイの一つまたは複数において、20、40、50、100、200、300または500nM超をとり得る。
また本明細書に記載の化合物は、GHS−Rに特異的な受容体、たとえばそのほかの細胞表面の受容体と比較してさらに特異的な相互作用も示し得る。たとえばモチリン受容体は、GHS−Rの相同体である。本明細書で開示された化合物は、好適にはモチリン受容体よりもGHS−Rに対して相互作用すればよく、たとえば少なくとも2、5、10、20、50または100倍の相互作用能を示すものが好ましい。別の実施形態では、本開示化合物はモチリン受容体とも相互作用し得るもので、たとえばモチリン受容体の活性を変える。
一つの実施形態では、本発明化合物はGHS−Rの下流域、たとえばGqシグナル伝達、ホスホリパーゼCシグナル伝達、およびcAMP応答エレメント(CRE)によって働く遺伝子転写、の細胞内シグナル伝達活性を変えることができる。
また本化合物は、ある種の病気、たとえば本明細書に記載の病気に対する治療活性についても評価され得る。多くの病気に関する動物モデルは、当業者によく知られている。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の状態に対する化合物の効果を評価するための細胞および動物には、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)遺伝子を変更したマウス、たとえば内在性プロモーターで働く、ヒトG93AのSOD変異体の種々の数のコピーを保有するSOD1−G93Aトランスジェニックマウス;SOD1−G37Rトランスジェニックマウス(Wongら、Neuron,14(6):1105−1116(1995));SOD1−G85Rトランスジェニックマウス(Bruijinら、Neuron,18(2):327−338(1997));変異型ヒトSOD1発現性C.elegans株(Oedaら、Hum.Mol.Genet.,10:2013−2023(2001));ならびにCu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)における変異体発現性のDrosophia(Phillipsら、Pro.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,92:8574−8578(1995)およびMcCabe、Pro.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,92:8533−8534(1995))が含まれる。
アルツハイマー病に対する化合物の効果を評価するための細胞および動物については、たとえば米国特許第6509515号、第5387742号、第5877399号、第6358752号および第6187992号に記載されている。評価用の動物は、米国特許第6509515号では、脳組織内でのアミロイド前駆蛋白質(APP)レベルが進行性神経病発症の発症に至る程度まで発現する。ポリグルタミン主体の集積を評価するための動物モデルの例としては、R6/2系統のトランスジェニックマウス(Mangiariniら、Cell87:493−506(1996))が挙げられる。
筋萎縮症に対する試験化合物の効果を評価するためのモデルにはたとえば、1)脱神経、たとえば大腿中央部での右坐骨神経の切断、の結果生じるラットの内側腓腹筋塊損失モデル;2)固定化、たとえば右の足首関節を90°に屈曲させて固定すること、の結果生じるラットでの内側腓腹筋塊損失モデル;3)後脚牽引の結果生じるラットの内側腓腹筋塊損失モデル(米国特許出願第2003−0129686号参照);4)悪液質性サイトカインであるインターロイキン−1(IL−1)による処理の結果生じる骨格筋萎縮モデル(R.N.Cooney,S.R.Kimball,T.C.Vary、Shock:7,1−16(1997));ならびに5)グルココルチコイドであるデキサメタゾンによる処理の結果生じる骨格筋萎縮モデル(A.L.Goldberg、J.Biol.Chem.,244:3223−3229(1969))が含まれる。前述の1、2および3のモデルに関しては、神経活動度の変更および/または外界からの様々な度合いでの筋負荷によって筋萎縮を起こさせるものである。また前述の4および5のモデルに関しては、それらのパラメータに直接影響を及ぼさずに萎縮を起こさせるものである。
AMD(加齢関連性の筋変性)についての動物モデルの例としては、滲出性(湿性)筋変性を模したマウスのレーザー誘発性モデル(Boraら、Pro.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,100:2679−2684(2003);変異型カテプシンDの発現によってAMDの「形状萎縮」を伴う状態となるトランスジェニックマウス(Rakoczyら、Am.J.Pathol.,161:1515−1524(2002));ならびに網膜色素上皮におけるVEGF(血管内皮細胞成長因子)の過剰発現によってCNV(随伴陰性変動)が生じるトランスジェニックマウス(Schwesingerら、Am.J.Pathol.158:1161−1172(2001))が挙げられる。
パーキンソン病の動物モデルの例としては、ドパミン作用性神経毒である1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)の処理によるパーキンシン症候群発症性の霊長類モデル(米国特許出願第2003/0055231号参照およびWichmannら、Ann.N.Y.Acad.Sci.,991:199−213(2003)参照);6−ヒドロキシドパミン誘発性障害ラット(たとえば、Lab.Anim.Sci.,49:363−371(1999));ならびにトランスジェニック無脊椎動物モデル(たとえば、Laksoら、J.Neurochem.,86:165−172(2003)およびLink、Mech.Ageing Dev.,122:1639−1649(2001))が挙げられる。
II型糖尿病の動物モデルの例としては、Nkx−2.2またはNkx−6.1欠損性トランスジェニックマウス(米国特許第6127598号);糖尿病性脂肪過多fa/fa(ZDF)ラット(米国特許第6569832号);ならびに肥満の発症およびそれに引き続く明らかなII型糖尿病の進行が同時に起こるアカゲザルのモデル(Hottaら、Diabetes,50:1126−1133(2001));ならびに非反応性IGF−1受容体(KR−IGF−IR)を優性形質として持ち、II型糖尿病様のインスリン抵抗性を示すトランスジェニックマウスが挙げられる。
ニューロパシーについての動物モデルおよび細胞モデルの例としては、ビンクリスチン誘発性の感覚−運動性ニューロパシーのマウスモデル(米国特許出願第5420112号)またはウサギモデル(Ogawaら、Neurotoxicology、21:201−511(2000));自立神経障害研究用のストレプトゾトシン(STZ)誘発性糖尿病ラット(Schmidtら、Am.J.Pathol.,163:21−28(2003));ならびに進行性運動神経障害(PMN)マウス(Martinら、Genomics,75:9−16(2001))が挙げられる。
新生物の病気に関しても、多数の動物モデルおよび細胞モデルが現在までに記述されてきた。原発性腫瘍の拡大を抑制する作用についてのインビボでの化合物評価系の例としては、Crowleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.,90:5021−5025(1993)での記載がある。その例では、CAT(クロラムフェニコール−アセチルトランスフェラーゼ)が発現するように遺伝子工学操作が成された腫瘍細胞(PC3)を、ヌードマウスに注入して行なう。腫瘍の大きさおよび/またはその転移を低減できるかどうかを試験するために、対象化合物をその動物に投与し、腫瘍の大きさおよび/または転移体の成長の計測を行う。種々の臓器内で検出されたCATレベルから、転移抑制性化合物の活性が分かる。すなわち、非投与動物を対照とし、投与動物の組織内でCATが検出されない場合は、その組織に移行またはその組織内で増殖したCAT発現性細胞が存在しないことが示される。
(化合物およびその製剤の投与)
本明細書に記載の式の化合物については、たとえば注入、静脈内、動脈内、皮内、腹腔内、筋肉内または皮下;あるいは経口、口内、経鼻、経粘膜、局所、眼内または吸入による投与が可能であり、用量については体重1kgあたり、約0.001mg〜約100mgの範囲、たとえば0.001〜1mg/kg、1〜100mg/kgまたは0.01〜5mg/kgであり、投与間隔は4〜120時間、たとえば約6、8、12、24、48または72時間ごとであるか、あるいはその特定化合物の諸要件にしたがって設定される。本明細書に記載の投与法では、所望の効果または設定された効果(たとえば対象者の食餌の減少)が生じるのに充分な量の化合物または化合物組成物を投与することが想定されている。本発明の医薬組成物は、一般に1日約1回−約6回の投与が考えられ、たとえば食餌の約1−約4時間前の投与が可能である。あるいは本化合物は持続注入による投与も可能である。そのような投与は、慢性または急性のいずれの治療にも用いることができる。担体用の素材(医薬用添加剤)と配合して単一剤形への製造を可能にする活性成分の量については、処置対象者および投与手段の特殊性に大きく依存する。一般的な製剤では、活性化合物の含量は約5〜約95%(w/w)になると考えられる。そのような製剤には、約20〜約80%の活性化合物が含有するとも言える。
前述の用量よりも低用量または高用量が要求される場合もある。特別の患者に対する特定の用量および処置方式(レジメン)については、使用化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食餌、投与回数、排出速度、薬物の組合わせ、疾患、体調または症状の重篤度および進行度、患者の疾病素因、体調または症状、ならびに処置担当医の判断を含めた多様な因子に依存すると考えられる。
本発明の化合物、組成物または配合物は、患者の状態が改善するまで、所望により維持用量で投与できる。さらに症状によっては、投与量および/または投与頻度を改善状態が維持されるレベルにまで下げることができる。しかしながら、疾病症状が再発した場合は、長期間にわたる断続的な処置が求められ得る。
本発明の医薬組成物は、本明細書に記載の式の化合物またはその薬学的に許容される塩を含有し、さらにたとえばステロイドまたは鎮痛剤を含めた追加の化合物;ならびに薬学的に許容される担体、効力補助剤または媒体を含有する。本発明の別な組成物は、本明細書に記載の式の化合物またはその薬学的に許容される塩;ならびに薬学的に許容される担体、効力補助剤または媒体を含有する。本明細書で規定される組成物には、本明細書で列挙された式の化合物、ならびにキナーゼ介在性の病気またはその症状を含めた病気または病状を変えるのに有効な量の追加の治療用化合物も含有する。それらの組成物については、本明細書に記載の一種または複数の化合物を、一種または複数の担体、および所望によりさらに、本明細書で列挙された一種または複数の追加の治療用化合物と配合する工程を含む方法によって調製される。
「薬学的に許容される担体または効力補助剤」という用語は、本発明の化合物とともに患者に投与でき、本化合物を治療有効量で投与する場合にその薬理活性を損なわず、かつ非毒性である担体または効力補助剤を指す。
本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、乳剤、ならびに水性の懸濁剤、分散剤および溶液剤を含めたいずれかの経口投与可能な剤形で経口投与できるが、それらの剤形に限定されない。経口投与用錠剤の場合、一般的に用いられる担体にはラクトースおよび澱粉が挙げられる。またステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤も一般には添加される。経口投与用のカプセル剤の場合では、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。経口投与用の水性懸濁剤および/または乳剤の場合では、乳化剤および/または懸濁剤と配合可能な油相中に、活性成分を懸濁または溶解して投与できる。所望によりさらに甘味剤および/または香料および/または着色剤も添加できる。
本発明の医薬組成物は、滅菌注射用の製剤、たとえば滅菌注射用の水性または油性の懸濁液製剤での剤形も可能である。懸濁剤については、適当な分散剤または湿潤剤(たとえば、Tween 80(商品名))ならびに懸濁剤を用い、当業者に既知の技法によって製剤化できる。滅菌注射用製剤は、非毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒、たとえば1,3−ブタンジオール中に溶解または懸濁させた滅菌注射用製剤も可能である。使用可能な許容される媒体および溶媒には、マンニトール、水、リンガー液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに滅菌不揮発性油についても、溶媒または懸濁媒体として一般的に使用される。そのためには、合成モノ−またはジ−グリセリドを含めた弱刺激性の不揮発油のいずれかが使用できる。またオレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸類、さらにオリーブ油またはヒマシ油のような天然産の薬学的に許容される油類、ならびに特にそれらのポリオキシエチレン化誘導体も注射用製剤に有用である。これらの油性の溶液剤または懸濁剤には、長鎖アルコール系の希釈剤または分散剤、またはカルボキシメチルセルロース、あるいは乳剤および/または懸濁剤のような薬学的に許容される剤形で一般に用いられる同様の分散剤も含有可能である。そのほかの一般的に用いられるTween(商品名)またはSpan(商品名)のような界面活性剤および/またはそのほかの乳化剤、あるいは薬学的に許容される固形剤、液剤またはそのほかの剤形の製剤の製造に一般に用いられるバイオアベイラビリティー改善剤も製剤化に使用できる。
本発明の医薬組成物は、直腸内投与用の坐剤の剤形でも投与できる。それらの組成物の調製については、室温では固体であって、直腸内温度では液体となるために直腸内で活性成分を放出することが予想される非刺激性の賦形剤と、本発明の化合物を混合して実施できる。そのような素材には、カカオ脂、ミツロウおよびポリエチレングリコールが含まれるが、それらに限定されない。
本発明の医薬組成物で使用され得る、薬学的に許容される担体、効力補助剤および媒体には、イオン交換体;アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステルのような自己乳化性薬物送達系(SEDDS);Tween類またはそのほかのポリマー系薬物送達マトリックスのような剤形で用いられる界面活性剤;ヒト血清アルブミンのような血清蛋白質;リン酸塩類のような緩衝性物質;グリシン;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物;水;硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩のような塩類または電解質;コロイド状シリカ;三ケイ酸マグネシウム;ポリビニルピロリドン;セルロース系物質;ポリエチレングリコール;カルボキシメチルセルロース・ナトリウム;ポリアクリル酸エステル;ワックス類;ポリエチレン/ポリオキシプロピレンブロック共重合体;および羊脂が含まれる。α−、β−およびγ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン類も、本明細書に記載の式の化合物の送達性を高めるのに好んで使用され得る。
いくつかの場合では、製剤のpHは、薬学的に許容される酸、塩基または緩衝剤で調整することで、製剤化された化合物またはその送達剤形における安定性を高めることができる。
本明細書で用いられる「非経口の」という用語には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、小内包組織内、病変部内および頭蓋内への注入または点滴技法が含まれる。
本発明の医薬組成物は、経鼻エアゾルまたは吸入によって投与できる。そのような組成物は、当業者によく知られた技法によって調製され、生理食塩水に溶解した溶液剤として調製でき、その際にベンジルアルコールまたはそのほかの適当な保存剤、バイオアベイラビリティー改善用吸収促進剤、過フツ化炭化水素、および/または当業者に知られたそのほかの可溶化剤または分散剤が用いられる。
本発明の組成物が、本明細書に記載の式の化合物と一種または複数の治療用または予防用薬剤との配合剤を含む場合、本発明化合物および追加の化合物の両方とも、一回の治療計画で投与される正規用量の約1〜100%の用量域、好ましくは約5〜95%の用量域のレベルで含有するのが好ましい。さらに、本明細書に記載の複数の化合物の配合物も想定される。追加される化合物については、多回投与計画の一部として、本発明の化合物と分けて投与することもできる。あるいは、それらの化合物は本発明の化合物とともに混合して単一の組成物にし、単回投与剤形の一部とすることもできる。
(処置)
本明細書に記載の化合物については、培養中の細胞、たとえばインビトロまたはエクスビボでの培養細胞、あるいは患者に対して、たとえばインビボで投与することで、以下に記載のものを含めた多様な病気の処置、予防、および/または診断を可能にする。
本明細書で用いられる「処置する」または「処置」という用語は、ある化合物を単独または第二の化合物と配合して対象者、たとえば患者に適用または投与すること、あるいは対象者、たとえば病気(たとえば、本明細書に記載の病気)を患う患者、病状を示す患者、または病気の素因を有する者から単離された組織または細胞、たとえば株化細胞に対して化合物を適用するか与えることによって、その病気、病状のいずれかまたはその素因の処置、回復、寛解、軽減、救済、改善、改良または影響(たとえば対象の病気の少なくとも一つの症状の抑制または発祥の遅延化)することと規定される。
本明細書で用いられる、病気の処置に有効な化合物の量、または「治療有効量」とは、対象患者に単回または多回投与する際、または患者から単離した細胞に与える場合、あるいは未処置の場合で病気が予想される対象者の処置、寛解、軽減または改良を行う場合の化合物の有効量を指す。
本明細書で用いられる、病気を防ぐのに有効な化合物の量、または「予防的有効量」とは、病気または病状の再発防止または遅延化における、対象者への単回または多回投与での有効量を指す。
本明細書で用いられる「対象者」という用語は、ヒトおよびヒト以外の動物を含めた意味とする。ヒトの対象者の例としては、たとえば本明細書に記載の病気を患った患者、または健常者が含まれる。本明細書で用いられる「ヒト以外の動物」という用語には、たとえば非哺乳動物(鳥類、両生類、爬虫類など)のような脊椎動物のすべて、ならびにヒト以外の霊長類、あるいはたとえばヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタなどの家畜化動物および/または農業上有用な動物のような哺乳動物が含まれる。
本明細書に記載の化合物の多数は、代謝性の病気の処置または予防に使用できる。「代謝性の病気」とは、代謝の異常または不調を特徴とする疾患または病気のことである。代謝性の病気の範疇の一つには、グルコースまたはインスリンの代謝の病気がある。その例には、インスリン抵抗性疾患、たとえばインスリン抵抗性糖尿病が挙げられる。一つの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、対象者のインスリンまたはグルコースのレベルを下げるのに使用できる。別の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、対象者のインスリンまたはグルコースのレベルを変える(たとえば下げる)のに使用できる。ここで、その化合物による処置は、代謝性の病気の一種または複数の症状の改善に有効な量で実施できる。
いくつかの例では、本明細書に記載の化合物の有効量を患者に投与することを含めた代謝性症候群の処置方法が、本発明によって提供される。
代謝性症候群(たとえばX症候群)は、対象者における一群の代謝性のリスク因子と考えられる。それらの因子には、中心性肥満(腹部内または近傍の過剰な脂肪組織);じゅく腫形成性の異常脂肪血症(主として高トリグリセリドおよび低HDLコレステロールによって、動脈壁でのプラーク形成が促進される脂肪血症の病気);インスリン抵抗性またはグルコース不耐性(インスリンまたは血糖の利用の不適正状態);血栓形成の予備状態(たとえば、高フィブリノゲン、または血中プラスミノーゲン活性化因子量が[−1]);血圧の上昇(すなわち高血圧)(130/85mmHgまたはそれ以上);ならびに炎症の予備状態(たとえば、血中の高感受性C反応蛋白質の増大)が含まれる。
代謝性症候群の根本的な原因は、過体重/肥満、運動不足および遺伝的な諸因子とされる。代謝性症候群の患者では、冠状心疾患、そのほかの動脈壁内プラーク形成関連疾患(たとえば、脳卒中および末梢血管疾患)、ならびにII型糖尿病のリスクが増大する。代謝性症候群については、インスリンの効果的な使用が困難であって、インスリン抵抗性と呼ばれる一般化された代謝性の病気と一体化したものといえる。
本明細書に記載の化合物の多数は、たとえば、小児または成人のようなヒトにおける肥満の処置または予防に使用できる。「肥満」とは、体格指数(BMI)が30またはそれを超える状態を指す。本明細書に記載の化合物の多数は、過体重状態の処置または予防に使用できる。「過体重」とは、BMIが25.0以上の状態を指す。BMI(体格指数)およびそのほかの規定については、”NIH Clinical Guidelines on the Identification and Evaluation,and Treatment of Overweight and Obesity in Adults”(1998)に従うものとする。本化合物による処置は、対象者の体重を変えるのに有効な投与量で実施でき、体重の変化はたとえば、少なくとも2、5、7、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50または55%である。本化合物による処置は、対象者のBMIを下げるのに有効な投与量で実施でき、低減されるBMIはたとえば、30、28、27、25、22、20または18未満である。本化合物は、異常または不適正な体重増加、代謝速度または脂肪沈着、たとえば無食欲症、過食症、肥満、糖尿病または高脂血症、ならびに脂肪または脂質代謝の病気の処置または予防に使用できる。
たとえばGHS−R作動剤については、食餌摂取量の向上、または体重減少を伴う病気、たとえば、無食欲症、過食症などの処置に使用できる。
GHS−R拮抗剤または逆作動剤については、異常または不適正の体重増加、代謝速度または脂肪沈着、たとえば肥満、糖尿病、または高脂血症、ならびに体重増加が原因の脂肪または脂質代謝の病気の処置に使用できる。一つの実施形態では、本明細書に記載の化合物は視床下部性の肥満症の処置に使用できる。たとえば本発明化合物は、視床下部性肥満のリスクが認められる対象者、あるいはグルコースに対する異常な(たとえば著しい)インスリン反応性を示す対象者に投与できる。
別の実施形態では、本明細書に記載の化合物(たとえば、GHS−R拮抗剤または逆作動剤)は、プレーダー−ウィリィ症候群(PWS)を伴う肥満症の処置に投与できる。PWSは、肥満(たとえば病的肥満)を伴う遺伝的な病気の一つである。PWSを患う患者では、一般にGH分泌も不足している。肥満を伴うPWS患者は、一般的な肥満患者とは逆に、絶食時に高いグレリン濃度を示し、このことが摂食亢進に関与し得ると考えられる。したがっていくつかの例では、肥満を伴うPWS患者については、遺伝子マーカー、GHレベルおよび絶食時のグレリン濃度の測定、綿密な表現型の解析、あるいは当業者に既知のそのほかの方法を用いて確定診断できる。本明細書に記載の化合物のようなGHS−R拮抗剤の投与は、体重の減少、体脂肪増加の防止、および/またはPWS付随肥満患者の食欲の低減、および/または糖尿病、心血管系疾患および脳卒中のような同時罹患の疾患の軽減に使用できる。
本明細書に記載の化合物の多数は、神経系の病気の処置に使用できる。「神経系の病気」とは、ニューロン細胞またはニューロン支持細胞(たとえば、グリアまたは筋肉)の異常または不調を特徴とするものである。その疾患または病気は、中枢神経系および/または末梢神経系に影響を及ぼし得る。それらの病気の例としては、ニューロパシー、骨格筋萎縮症、ならびに神経変性性疾患、たとえばポリグルタミン凝集が少なくとも部分的に生じるもの以外の神経変性性疾患が挙げられる。神経変性性疾患の例としては、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびパーキンソン病が挙げられる。それ以外のクラスの神経変性性疾患には、ポリグルタミンの凝集によって少なくとも部分的に生じる疾患が含まれる。このクラスの疾患には、ハンチントン病、、脊椎延髄性筋萎縮症(SBMAまたはケネディー病)、歯状核・赤核・淡蒼球・ルイ体性萎縮症(DRPLA)、I型脊髄小脳性運動失調症(SCA1)、II型脊髄小脳性運動失調症(SCA2)、マカドー−ジョセフ病(MJD;SCA3)、VI型脊髄小脳性運動失調症(SCA6)、VII型脊髄小脳性運動失調症(SCA7)、およびXII型脊髄小脳性運動失調症(SCA12)が含まれる。本発明化合物の処置は、神経系の病気の少なくとも一種の症状の改善に有効な量で行うことができる。一つの実施形態では、GHS−R拮抗活性を有する化合物は、神経系の病気の処置に使用できる。
本明細書に記載の化合物の多数は、対象者の不安を和らげる目的で使用できる。一つの実施形態では、たとえばGHS−R拮抗作用または逆作動活性を有する化合物は、不安を低減するのに使用できる。
本明細書に記載の化合物の多数は、対象者における記憶保持をモジュレートするのに使用できる。一つの実施形態では、GHS−R拮抗活性または逆作動活性を有する化合物は、記憶保持を低下させるのに用いられる。記憶保持を低下させると、たとえば外傷性ストレスからの回復を促進できる。一つの実施形態では、GHS−R作動活性を有する化合物は、記憶保持を増大させるのに使用される。
本明細書に記載の化合物の多数は、対象者における睡眠、睡眠サイクル(たとえばREM睡眠)または覚醒状態をモジュレートするに使用できる。一つの実施形態では、GHS−R作動活性を有する化合物は、対象者における睡眠の促進または睡眠時無呼吸症の処置に用いられる。
一つの実施形態では、GHS−R作動性、逆作動性または拮抗性の化合物(たとえば本明細書に記載の化合物)は、対象者の概日リズムを変えるのに使用される。たとえば、その化合物を一日のうちの特定の時間、たとえば規則的に毎晩および/または毎朝に送達することで、たとえば日付変更を伴う長距離旅行の前、途中または後に概日リズムをリセットでき、あるいは対象者の概日性の病気を処置できる。それらの化合物は、たとえばGH分泌の脈動性をモジュレートできる。
本明細書に記載の化合物の多数は、心血管系の病気の処置に使用できる。「心血管系の病気」とは、心血管系、たとえば心臓、肺または血管の異常または不調を特徴とする疾患または病気のことである。心血管系の病気の例としては、心不整脈、慢性鬱血性心不全、虚血性脳卒中、冠状動脈疾患おおよび心筋症が挙げられる。本化合物による処置は、対象の心血管系の病気の少なくとも一つの症状を改善させるのに有効な量で実施できる。一つの実施形態では、GHS−R拮抗作用または逆作動活性を有する化合物は、心血管系の病気の処置に使用できる。
本明細書に記載の化合物の多数は、皮膚学上の病気または皮膚学的組織状態の処置に使用できる。「皮膚学上の病気」とは、皮膚の異常または不調を特徴とする疾患または病気のことである。「皮膚学的組織状態」とは、皮膚の機能および/または外観、たとえば化粧上の見栄えに寄与する皮膚およびいずれかの下層組織(たとえば支持組織)のことを指す。本化合物による処置は、皮膚学上の病気の少なくとも一つの症状または皮膚学的組織状態の改善に有効な量で実施できる。一つの実施形態では、GHS−R拮抗活性または逆作動活性を有する化合物は、皮膚学上の病気または皮膚学的組織状態の処置に使用できる。
本明細書に記載の化合物の多数は、高齢者(老人)病の処置に使用できる。「高齢者(老人)病」とは、70歳を超える人間の少なくとも70%が罹患する疾患または病気のことであり、その罹患者数は、本特許出願の受理時点では100000人を超える。一つの実施形態では、高齢者(老人)病は癌または心肺の病気以外の病気とする。好適な母集団としては、米国の母集団がある。その母集団については、性差および/または民族性で限定され得る。
本明細書に記載の化合物の多数は、成長ホルモン活性が過剰な病気の処置または予防に使用できる。たとえば、それらの化合物は対象者におけるGHレベルを低下させるのに使用できる。一つの実施形態では、対象者はヒト、たとえば小児(たとえば3〜11歳)、青年(たとえば12〜19歳)、若年成人(たとえば20〜25歳)、または成人である。一つの実施形態では、GHS−R拮抗活性または逆作動活性を有する化合物は、成長ホルモン活性が過剰な病気の処置に使用できる。
本明細書に記載の化合物の多数は、迷走神経の緊張をモジュレートするのに使用できる。たとえば、本明細書に記載の化合物またはそのほかのGHS−Rモジュレーターは、迷走神経切断状態の対象者、あるいは求心性または遠心性の迷走神経活性が変質するそのほかの病気の対象者に投与できる。一つの実施形態では、対象者に迷走神経機能の異常が観察され、不調が認められた場合に、本明細書に記載の化合物またはそのほかのGHS−Rモジュレーターでの処置が受けられる。
処置対象の疾患および病気の例としては、癌(たとえば肺癌、結腸直腸癌、CLL(慢性リンパ球白血病)、CML(慢性骨髄性白血病)、前立腺癌);骨格筋萎縮症;成人発症型糖尿病;糖尿病性腎症、ニューロパシー(たとえば、知覚神経ニューロパシー、自律神経系ニューロパシー、運動神経ニューロパシー、網膜症);肥満症;骨吸収症;神経変性性疾患(パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、アルツハイマー型短期および長期記憶喪失)ならびに蛋白質凝集(たとえばポリグルタミン凝集以外のもの)または蛋白質の不正フォールディング(不正高次構造)を伴う病気;加齢に関連する筋変性;ベル麻痺;心血管系疾患(たとえば、アテローム性硬化症、心不整脈、慢性閉塞性心不全、虚血性脳卒中、冠状動脈疾患および心筋症);慢性腎不全;II型糖尿病;潰瘍;白内障;老人性痴呆;糸球体腎炎;ギラン−バレー症候群;出血性脳卒中;関節リウマチ;炎症性腸疾患;多発性硬化症;SLE(全身性エリテマトーデス);クローン病;骨関節症;肺炎;および尿失禁が挙げられる。それらの疾患の症状および診断については、当業者によく知られている。
ある実施形態では、それらの化合物は標的組織または臓器内のGHS−Rに局所的に指向する。GHS−Rは、視床下部、心臓、膵臓、小腸、脳(特に弓状核体(ARC)内)、および脂肪組織内で発現する。本明細書に記載の化合物は、上述の一種または複数の組織を標的とすることができる。たとえば、本化合物は肺を標的とする吸入用に製剤化できる。本化合物は、腸を標的とするために、経口摂取されて腸に移行するように製剤化することができる。ほかの実施形態では、処置は全身的に行われ、本発明化合物は標的組織に分布する。
対象の病気および化合物によっては、前述の特定のクラスの化合物の使用に加えて、さらに別のクラスの化合物の使用も処置に含まれる。たとえば、患部の内在性グレリンのレベルが正常組織のそれ、または患部の正常部分のそれよりも低い患者では、GHS−R作動活性を有する化合物の使用が処置に含まれ得る。患部の内在性グレリンのレベルが正常組織のそれ、または患部の正常部分のそれよりも高いほかの患者では、GHS−R拮抗活性を有する化合物の使用が処置に含まれ得る。特定の化合物の適合性については、たとえば動物に基づくアッセイまたは対象者のモニタリングにおいて評価できる。
本明細書に記載の化合物の多数は、エネルギーバランスをコントロールする生物学的シグナルの活性をモジュレートするのに使用できる。そのようなシグナルには、NPY(ニューロペプチドY)、AGRP(アンジオポエチン放出ペプチド)、オレキシン類、MCH(メラニン濃縮ホルモン)、ビーコン(たとえば、Collierら、Diabetes,49:1766(2000)参照)、摂食細胞刺激ホルモン、ニューロメジンU、コルチコトロピン放出因子、およびレプチンのようなペプチドシグナルが含まれる。たとえばNPYは、食物摂取を刺激し代謝速度を抑制し、36個のアミノ酸からなるペプチドである。本明細書に記載の化合物の多数は、NPY活性を低減させるのに使用できる。本明細書に記載の化合物の多数は、食欲を抑制する分子、たとえばボンベシン、IL−1β、レプチンおよびガストリン放出ペプチドの活性または利用能を増大させるのに使用できる。したがって、それらの化合物は胃の求心性迷走神経の放電速度を上げることができる。
サブスタンスPおよびその誘導体がGHS−R活性をモジュレートできることも、今回見出された。特に、サプスタンスPがマウスの摂食行動を変えることが絶食−再給餌アッセイで見出された。したがって、サブスタンスPおよびその誘導体は、食事または代謝に関係する病気、ならびに本明細書に記載のそのほかの病気をモジュレートするのに使用できる。
ヒトの組織におけるGHS−R発現を研究したところ、GHS−Rは下垂体細胞、脳、脊髄、子宮、脾臓、膵臓、腎臓、副腎、骨格筋、甲状腺、肝臓、小腸、および心臓で発現することが分かった。したがって、本明細書に記載の化合物は、それらの組織内でのグレリンレベルまたはグレリン介在シグナル伝達活性が好ましくない疾患および病気の処置に使用できる。たとえば、グレリンレベルまたはグレリン介在シグナル伝達活性が低すぎる場合は、GHS−R作動活性を有する化合物が処置に使用できる。またグレリンレベルまたはグレリン介在シグナル伝達活性が高すぎる場合は、GHS−R拮抗活性を有する化合物が処置に使用できる。所望のグレリン活性のレベルを、たとえば組織ごとに変えることもできる。グレリンは胃から分泌され、胃内または胃の近傍で高レベルであるが、正常な膵組織内ではそれよりずっと低レベルである。
(新生物性の病気)
本明細書に記載の化合物の多数は、新生物性の病気の処置に使用できる。「新生物性の病気」とは、自立的な増殖能または複製能を有する細胞を特徴とする疾患または病気、たとえば細胞増殖を特徴とする異常な状態または体調のことである。新生物性の病気の例としては、癌腫、肉腫、転移性の病気(たとえば、前立腺、結腸、肺、乳房および肝臓が起源の腫瘍類)、造血系の新生物性の病気、たとえば白血病、および転移性腫瘍が挙げられる。よく見られる癌には、乳癌、前立腺癌、結腸癌、肺癌、肝臓癌、および膵臓癌が含まれる。本発明化合物による処置は、新生物性の病気の少なくとも一つの症状の改善、たとえば細胞増殖の低下、腫瘍重量の減少などに有効な量で実施され得る。
新生物性の病気を、GHS−R作動剤または拮抗剤のどちらで処置すべきかについては、新生物のタイプにより定めることができる。たとえばDuxburyらは、Biochem.Biopys.Res.Comm.309:464−468(2003)では、ある種の新生物性の病気がGHS−R拮抗剤で抑制されることが報告されている。それらの病気には、たとえばGHS−RまたはGHS−R1bが内部で発現する膵臓の腺癌腫および新生物、膵臓の内分泌性腫瘍、成長ホルモン産生細胞の腫瘍、および中枢神経系の腫瘍が含まれる。GHS−R拮抗剤で新生物が減弱、抑制または死ぬ場合を、本明細書では「GHS−拮抗剤感受性の新生物の病気」という用語で表わし、その場合はGHS−R拮抗活性を有する化合物で処置できる。
Duxburyらによると、ある種のほかのタイプの新生物、たとえば乳房、肺および甲状腺の腺癌腫については、高レベルのグレリン(10nM超)で抑制でき、したがってGHS−R作動剤で処置できることも報告されており、そのGHS−R作動剤の例としては本明細書に記載のGHS−R作動剤、またはそのほかの既知のGHS−R作動剤が挙げられる。グレリンまたはGHS−R作動剤によって減弱、抑制または死ぬ新生物については、本明細書では「グレリン感受性の病気」という用語で説明し、それらの新生物は、GHS−R作動活性を有する化合物で処置できる。
新生物の細胞がグレリン作動剤または拮抗剤のどちらに感受性があるか(すなわち、その新生物の細胞がグレリン感受性の病気、あるいはGHS−R拮抗剤に感受性のある病気のどちらに該当するか)については、GHS−R作動剤、たとえばグレリンの存在下、あるいは拮抗剤、たとえばD−Lys−GHRP6の存在下で増殖アッセイを行って決めることができる。Duxburyらによって、増殖アッセイの一例が開示されている。その種の一つのアッセイでは、細胞を96穴プレートに約104/ウエルで播種して行われる。その細胞を培地中で3日間培養し、次にグレリンまたはD−Lys−GHRP6、あるいは対照培地と接触させる。それらの細胞の生存率について、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム)アッセイシステム(Trevigen社(米国、メリーランド州、ガイザーズブルグ市)製)を用いて評価する。実施可能なそのほかのアッセイとしては、浸潤アッセイおよび遊走アッセイがある。特定の化合物の作用については、濃度にも影響を受ける可能性があり、アッセイは濃度を変えて行うこともできる。
本明細書に記載の化合物は、上述の新生物の以外にも、良性、前癌性または悪性の「腫瘍」を含めたほかの新生物および過形成の処置にも使用できる。
さらに、癌性の病気の例としては、固形腫瘍、軟組織腫瘍、および転移性病変も挙げられるが、それらに限定されない。固形腫瘍の例としては、悪性腫瘍類、たとえばそれらに罹患した肺、乳房、リンパ系組織類、消化管(たとえば結腸)、尿生殖管(たとえば、腎臓、尿路上皮細胞)、咽頭、前立腺、卵巣のような種々の臓器の肉腫、腺癌腫および癌腫などの悪性腫瘍、ならびに結腸癌、直腸癌、腎細胞癌腫、肝臓癌、非小細胞性肺癌腫、小腸癌などのほとんどにあてはまるような悪性腫瘍を含めた腺癌腫が挙げられる。前述の癌類の転移性病変についても、本発明の方法および組成物を用いて処置または予防できる。
本明細書に記載の化合物は、悪性腫瘍類、たとえばそれらに罹患した肺、乳房、リンパ系組織類、消化管(たとえば結腸)、尿生殖管(たとえば、腎臓、尿路上皮細胞)、前立腺、卵巣、咽頭のような種々の臓器の悪性腫瘍、ならびに結腸癌、腎細胞癌腫、前立癌および/または精巣癌、非小細胞性肺癌腫、小腸癌および食道癌のほとんどにあてはまるような悪性腫瘍の処置に使用できる。処置可能な固形腫瘍の例としては、繊維芽肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、上皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管上皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋芽肉腫、結腸癌腫、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、鱗状細胞癌腫、基底細胞癌腫、腺癌腫、汗腺癌腫、脂腺癌腫、乳頭癌腫、乳腺癌腫、嚢胞腺癌腫、延髄癌腫、気管支原性癌腫、腎細胞癌腫、ヘパトーマ、胆管癌腫、絨毛癌腫、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、胚癌腫、胚小細胞癌腫、胚非小細胞癌腫、膀胱癌腫、上皮癌腫、グリオーマ、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、および網膜芽腫が挙げられる。
「癌腫」という用語は、当業者に認識されており、呼吸器系の癌腫、消化管系の癌腫、尿生殖器系の癌腫、精巣癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、内分泌系の癌腫、およびメラノーマを含めた上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。癌腫の例としては、子宮頚部、肺、前立腺、乳房、頭頚部、結腸および卵巣の組織由来の癌腫が挙げられる。その用語には、癌肉腫、たとえば癌腫組織および肉腫組織を構成する悪性腫瘍類を含めたものも含まれる。「腺癌腫」とは、腺組織由来の癌腫、または内部の腫瘍細胞によって腺構造と認められる組織が形成されている癌腫を指す。
「肉腫」という用語は、当業者に認識されており、間葉が分化した悪性腫瘍を指す。
本発明の方法は、造血系由来、たとえば骨髄細胞、リンパ球類または赤血球の系統、またはそれらの前駆細胞由来の過形成/新生物性細胞の増殖を抑制するのにも使用できる。本発明はたとえば、種々の骨髄の病気の処置を企図するものであって、対象の病気には急性前骨髄球性白血病(APML)、急性骨髄球性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられるが、それらに限定されない(Vaickus,L.によるCrit.Rev.in Oncol./Hemotol.,11:267−297(1991)の総説参照)。本発明の方法によって処置できるリンパ球系悪性腫瘍には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、たとえばB細胞系のALLおよびT細胞系のALL、ならびに慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛様細胞白血病(HLL)およびワルデンストレーム−マクログロブリン血症(WM)が含まれるが、それらに限定されない。本発明の処置方法が対象とするほかの型の悪性リンパ腫には、非ホジキンリンパ腫およびその異型、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚型T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒球性白血病(LGF)およびホジキン病が含まれるが、それらに限定されない。
(GHS−Rの作動)
クラスB(たとえばGHS−R作動剤)またはクラスDの化合物については、GHS−R活性レベル、たとえば特定の組織内でのレベルが所望値または正常値に満たない患者における病気の処置に使用できる。そのような化合物については、悪液質、消耗病の一つまたは複数の病気の処置;成人、癌、心不全またはAIDS患者における成長ホルモン放出の刺激;成長ホルモン欠乏性成人の処置;グルココルチコイド類の異化に伴う副作用の予防;骨粗鬆症の処置;免疫系の刺激;創傷治癒の促進;骨折修復の促進;成長遅延の処置;急性または慢性の腎不全または腎機能不全の処置;成長ホルモン欠乏性小児を含む低身長症の処置;慢性病に伴う低身長の処置;肥満に伴う肥満症および成長遅延症の処置;プレーダー−ウィリィ症候群およびターナー症候群に伴う成長遅延の処置;火傷患者または胃腸の手術のような大手術後の患者の入院期間の短縮;子宮内生育遅延、骨格異形成症の処置;高コルチゾール症およびクッシング症候群の処置;末梢性ニューロパシーの処置;骨軟骨断裂症、ヌーナン症候群、睡眠の病気、精神分裂病、うつ病、アルツハイマー病、創傷治癒の遅延および社会心理学的遮断の処置;呼吸不全および肺換気器具依存症の処置;鬱血性心不全の予防または処置;肺機能の改善;収縮および弛緩機能の回復;心筋収縮力の増大;末梢総血管抵抗の低減;鬱血性心不全後の体重減少の低減化または防止、および鬱血性心不全の回復向上;食欲の増進;大手術後の蛋白質異化反応の減弱化;吸収不全症候群の処置;癌またはAIDSのような慢性の病気による蛋白質損失の低減;TPN(全非経口栄養供給)状態の患者における体重増加および蛋白質同化の促進;過インスリン血症の処置;胃潰瘍および十二指腸潰瘍の処置;甲状腺発達の刺激;慢性血液透析患者に対する補助療法;免疫抑制性患者の処置;抗体反応の増大、たとえばワクチン接種後の反応の増大;ヒトでの総リンパ球数の増大;繊維筋痛症候群または慢性疲労症侯群を含めた非回復性の睡眠および筋骨格の痛みが顕在する症候群の処置;虚弱な高齢者における筋肉の強さ、運動性、皮膚厚維持、代謝恒常性および腎恒常性の改善;骨芽細胞、骨再建、軟骨成長の刺激;鬱血性心不全の予防および処置;心臓の構造および/または心機能の保護;鬱血性心不全後の哺乳動物の回復亢進;睡眠の質の向上および/または改善、ならびに睡眠障害の予防および処置;睡眠効率増大および睡眠維持拡大による睡眠の質の増大または改善;情緒異常症、特にうつ病の予防および処置;うつ病患者における気分および主観的な満足状態の改善;インスリン抵抗性の低減;免疫系の刺激;手術後の患者、またはII型糖尿病のような変性状態から二次的に生じる胃麻酔状態における胃の運動性の刺激および促進;ならびに成長増進に使用できる。それらの化合物は、ヒト、あるいは家畜、ペットなどの動物の処置に使用できる。
本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の化合物またはその組成物を有効量投与することで、腸の病気の治療または予防に対する効果(たとえば、手術後の腸閉塞の重篤化の防止または低減)の顕在化を目的とする。いくつかの例では、本化合物は手術前の患者に投与される。またいくつかの例では、本化合物によって、手術後の腸閉塞のような手術後の病気の発症率または重篤化の予防効果および低減化が可能となる。本化合物が急性の病気の処置に投与される例では、投与期間は一般に対象の病気の長さで延長される。たとえば、手術後の腸閉塞の処置を受ける患者の場合では、本発明化合物は手術直後から約24時間から約4日間の間投与できる。これまで述べたように、いくつかの例では、本発明化合物は手術前に投与して患者に予防の利便性を与えることもできる。
いくつかの例では本発明化合物は、手術または化学療法の前段階での低体重の患者に対して、特に利便性を提供する。したがって、手術の前にGH産生性または放出性の化合物を投与すると、患者の手術に対する忍容性および手術からの回復も改善できる。
いくつかの例では、本発明化合物は糖尿病性胃アトニーのような慢性の病気の処置で投与される。たとえば、本発明化合物はグレリンの食前での模擬的上昇を起こす用量および製剤で投与できる。たとえば患者には、食前、たとえば食事の約3時間前から約5分前に、GHの産生または分泌を誘導する化合物を投与でき、投与時期は食事の約2.5時間前、2時間前、約1.5時間前、1時間前、45分前、30分前、15分前などとすることができる。
いくつかの実施形態では、本発明化合物は腸での吸収よりも胃での吸収を高めた製剤化および/または投与が行われる。たとえば、悪液質(たとえば癌関連の悪液質)を患った患者では、腸からではなく胃からの吸収が高められた化合物が投与できる。いくつかの実施形態では、投与経路および/または投与期間は、胃での吸収と腸での吸収との相対量にも影響を及ぼす可能性がある。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグレリン作動性の化合物または組成物は、HIV関連脂肪異栄養症(HALS)を患った患者の処置に使用できる。たとえば本発明化合物は、患者における脂肪異栄養症の低減または進行の抑制に充分な量で患者に投与できる。HALSについては、HIV患者に対してHAART治療(高活性抗レトロウイルス剤療法)を行った場合にこれまで散見されており、たとえばHAART療法を行うと患者の約50%でHALSが起こる。ヌクレオシド阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤の両方についても、この症候群(HALS)に関与することが認められてきた。しかしながら、HIVウイルス感染自体は、HALSには関与しなかった。
HALSは、体中央部の脂肪が増大して随伴脂肪の萎縮がみられる特徴を有する。またHALSには、大血管および小血管の両方の疾患のリスクとなり得る脂肪異栄養症およびインスリン抵抗性も伴う。
(患者の識別)
いくつかの例では、患者または対象者は、GHの産生または放出をモジュレートする化合物を用いて処置を受けると有益性があるかどうかについて鑑定され得る。たとえば、ある患者または対象者では、GHの産生または放出を誘導する化合物を用いて処置すると有益性があると鑑定され得る。たとえば、対象者の内在性のグレリンおよび/またはGHのレベルを測定し評価することで、処置指針を決めることができる。患者のグレリンまたはGHのレベルが規定の標準値、たとえば同年齢および同性の健常者における値よりも低いことが判明した場合、その患者については、GHの産生または放出を誘導する化合物を用いる処置に強く反応する可能性があると鑑定できる。
いくつかの例では、55歳以上であるような高齢者(たとえば、60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85歳以上、90歳以上、95歳以上、または100歳以上)は、いくつかの例では手術後の腸閉塞および悪液質を発症する可能性が若年者よりも高い。したがってそのような患者については、表1に挙げた化合物のような、GHの産生または放出を誘導する化合物を用いる処置に適すると鑑定できる。対象者については、年齢の分析に加えて内在性GHレベルも評価し、GHの産生または分泌を誘発する化合物で処置すると有益性が得られる患者であるかどうかがさらに確実にされ得る。
(キット)
本明細書に記載の化合物は、キット内に提供され得る。そのキットには、(a)本明細書に記載の化合物を含む組成物、および所望により(b)情報提供物が含まれる。情報提供物は、本明細書に記載の方法および/またはそのための本明細書に記載の化合物の使用に関係する記述的、図示的、販売上またはそのほかの物であり得る。
キットの情報提供物は、その形態に制限はない。一つの実施形態では、情報提供物には化合物の製造、化合物の分子量、濃度、使用期限日、バッチ、または製造業者などについての情報が含まれ得る。一つの実施形態では、情報提供物は、本明細書に記載の病気の処置のための、本明細書に記載の化合物の使用に関係するものである。
一つの実施形態では情報提供物には、本明細書に記載の方法を実施するのに適した手法、たとえば適した用量、剤形または投与形式(たとえば、本明細書に記載の用量、剤形または投与形式)での、本明細書に記載の化合物の投与用説明書(添付書)が含まれ得る。好ましい用量、剤形または投与形式としては、非経口、たとえば静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、口腔内、舌下、眼内、および局所が挙げられる。別の実施形態では、情報提供物には、本明細書に記載の化合物を、適当な対象者、たとえば本明細書に記載の病気を有するヒトまたは本明細書に記載の病気のリスクがあるヒトなどのヒトに投与するための使用説明書が含み得る。たとえばその物には、そのような対象者に本明細書に記載の化合物を投与するための使用説明書が含み得る。
キットの情報提供物は、その形態に制限がない。多くの場合では、情報提供物、たとえば使用説明書は、印刷体、たとえば印刷文、描画、および/または写真、たとえばラベルまたは印刷シートで提供される。しかしながら、情報提供物はコンピュータ読取り用材料、ビデオ記録、またはオーディオ記録のようなそのほかのフォーマットでも提供できる。別の実施形態では、キットの情報提供物は情報連絡先、たとえば物理的な住所、電子メールのアドレス、ウエブサイト、または電話番号にあり、キットのユーザーは本明細書に記載の化合物および/または本明細書に記載の方法におけるその使用についての実質的な情報を入手できる。情報提供物はもちろん、どのようなフォーマットの組合わせでも供給され得る。
キットの組成物には、本明細書に記載の化合物に加えて、溶媒、または緩衝剤、安定剤、保存剤、および/または本明細書に記載の症状または病気の処置用の第二の化合物のようなさらにほかの成分も含み得る。そのほかの成分もキットに含まれる場合もあり、本明細書に記載の化合物とは異なる組成物または容器内に含まれ得る。そのような実施形態では、キットには本明細書に記載の化合物とそのほかの化合物との混合、あるいは本明細書に記載の化合物のそのほかの成分との同時使用についての説明書が含まれ得る。
本明細書に記載の化合物は、どのような形態でも提供でき、たとえば液体、乾燥形態または凍結乾燥形態が挙げられる。本明細書に記載の化合物は、本質的に純粋および/または滅菌状態であるのが好ましい。本明細書に記載の化合物が溶液で供給される場合、その溶液は好ましくは水溶液、特に滅菌状態の水溶液である。本明細書に記載の化合物が乾燥形態で提供される場合では、一般に適当な溶媒を加えて復元される。その溶媒、たとえば滅菌水または緩衝液は、所望によりキット内に提供され得る。
キットには、本明細書に記載の化合物を含有する組成物用の一個または複数の容器が含まれ得る。いくつかの実施形態では、キットには別々の複数の容器、ならびに組成物と情報提供物とを分ける仕切りまたは区画が含まれる。たとえば、組成物については瓶、バイアル、またはシリンジ内に入れられ、情報提供物についてはプラスチック製のスリーブまたは小箱内に入れることができる。ほかの実施形態では、キットの別々のエレメントは、単一の非分割型の容器に入れられている。たとえば、情報提供物がラベルの形態で貼られた一個の瓶、バイアルまたはシリンジ内に組成物が入っている。いくつかの実施形態では、キットは複数の個別容器(たとえば1パックとして)を含み、その各容器には本明細書に記載の化合物の単回または複数回投与分の剤形(たとえば、本明細書に記載の剤形)が入っている。たとえばキットは、複数のシリンジ、アンプル、フィルム包装、またはブリスターパックを含み、その各容器には本明細書に記載の化合物の一回投与分が入っている。キットの容器は、気密性、防水性(たとえば、湿気または蒸気が変化しても不透過)および/または遮光性であり得る。
キットは所望により、組成物の投与に適した器具、たとえばシリンジ、吸入器、ピペット、ピンセット、計量スプーン、スポイト(たとえば点眼器)、綿棒(たとえば、綿またはウール製の綿棒)、あるいはいずれかの送達用デバイスを含む。好ましい実施形態では、器具は埋込み可能な送達デバイスである。
そのほかの実施形態については、以下の請求項に掲げる。