JP2008504486A - 排気ガスディフューザ - Google Patents

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Abstract

エンジンで生じる排気ガスを拡散させるディフューザであって、前記ディフューザの複数部分を画定する1つまたは複数の壁を含み、また、前記ディフューザの全長のほぼ3分の1にわたる最初の部分であって、前記最初の部分の入口では、前記最初の部分の壁またはそれぞれの壁での境界層流の形状係数が1.3〜1.6の範囲内にあって、前記最初の部分における前記形状係数を実質的に直線的に増大して、前記最初の部分の出口における前記形状係数が1.6〜2.2の範囲に入るように構成した最初の部分と、前記最初の部分に後続して、前記ディフューザの残りの長さにわたる主要部分であって、前記主要部分の全長にわたって、前記形状係数を1.6〜2.2の範囲内に維持するように構成した主要部分とから成るディフューザ。

Description

本発明は、エンジンで生じる排気ガスを拡散させるディフューザに関する。
本発明は、ガスタービンエンジンの排気ダクトに使用できる環状ディフューザに特に適用される。
ディフューザは、作動流体の静圧を上昇させるために用いられる装置であり、この装置は、流体運動エネルギーを減らすことにより、作動流体の静圧を上昇させる。このように節約されたエネルギーの大きさは、圧力の上昇によって、他の場所で仕事をすることができる。例えば、ガスタービンでは、タービン部分での圧力比が大きくなると、さらに多くの仕事が、このガスタービンで、なされることになる。
単に、排気ダクトの断面積を流体の流れの方向に次第に大きくして、流体を広げるだけで、排気ダクト中の静圧を上昇させることがある。しかしながら、このような広げられた流体の流れ挙動は、いくつかのファクタ(係数)によって決まり容易には予測できないので、所与の状況に最適なディフューザ形状を設定する最善の方法が確立されていない。所与のタービンでは、それぞれの技術者がそれぞれ異なる性能特性を持つ異なるディフューザ形状を設計しがちである。
一般に重要であると見なされる1つのファクタは、境界層の剥離である。ディフューザ壁(境界層)に接する流体が乱流となって、ディフューザ壁から離れるときには、拡散エリアに損失があり、また圧力回復が低下し、すなわち、ディフューザの性能が劣化する。事実上、その流れがディフューザ内のどこで分かれようとも、その静圧(よって、回復)は、その地点に固定され、すなわち、ディフューザの排気圧は、その剥離地点での静圧に等しい。ディフューザ内の広がり角がさらに大きくなると流れ剥離が促進されるが、しかるに、ディフューザの広がり角がさらに小さくなると、流れ剥離が促進されないことがよく知られている。
この流れ剥離問題への従来の慎重な取組みでは、一般に、ディフューザは、その広がり角が小さくなり、かつ、その長さが比較的に長くなる。しかしながら、長いディフューザは、そのディフューザがガスタービンエンジンの一部である場合に、ガスタービン・エンジンの設計をさらに複雑にし、かつ費用のかかるものにするという点で不利益をこうむる。さらに、エンジンの長さは、例えば利用可能なスペースが限られている海上での石油掘削装置では、著しく重要である。
逆に、ディフューザ設計への従来の積極的な取組みでは、さらに大きい広がり角がもたらされ、かつ、長さがさらに短くなるが、ただし、最高性能が得られない問題がある。
本発明の目的は、性能と長さを最適にするディフューザ形状を提供することである。
本発明に係る第1の発明によれば、エンジンで生じる排気ガスを拡散させるディフューザであって、前記ディフューザの複数部分を画定する1つまたは複数の壁を含み、また、前記ディフューザの全長のほぼ3分の1にわたる最初の部分であって、前記最初の部分の入口では、前記最初の部分の壁またはそれぞれの壁での境界層流の形状係数が1.3〜1.6の範囲内にあって、前記最初の部分における前記形状係数を実質的に直線的に増大して、前記最初の部分の出口における前記形状係数が1.6〜2.2の範囲に入るように構成した最初の部分と、前記最初の部分に後続して、前記ディフューザの残りの長さにわたる主要部分であって、前記主要部分の全長にわたって、前記形状係数を1.6〜2.2の範囲内に維持するように構成した主要部分とから成るディフューザが提供される。
本発明に係る第2の発明によれば、ガスタービンエンジンで生じる排気ガスを拡散させるのに適したディフューザであって、環状の形を有し、かつ、前記ディフューザの複数部分を画定する内側環状壁と外側環状壁とを備え、また、第1の部分と、前記第1の部分に後続する第2の部分とから成り、前記ディフューザの断面積の増加率が、前記第1の部分の方が、前記第2の部分よりも大きいようなディフューザが提供される。
次に、本発明を、例示として添付図面を参照して、説明する。
本発明は、流体境界層の状態を特徴づける特定の係数に焦点を合わせている。この係数は、表面から流体が離れた地点を表示するために使用されることがある。この係数は、「形状係数(Shape Factor)(H)」として知られており、境界層排除厚さを、運動量厚さで除算した値として定義されている。
Hについては、従来技術で認められた正確な数値はなく、すなわち、境界層の剥離が実際に発生するときに、単に大まかな範囲だけが示される。例えば、Kristian Angele氏による論文である「Experimental studies of turbulent boundary layer separation and control(乱流境界層の剥離および制御に関する実験による調査)」(KTHメカニックス、S−100 44 ストックホルム、スウェーデン)は、第6章の中で、H=3.3、H=2.35、H=2.85といったように、様々な値を与えている。
大まかに言えば、ディフューザ用の形状係数の範囲と分布に関して、以下の条件を満たす場合に好ましい。
(i)ディフューザの入口において、Hが1.3〜1.6の範囲内にある。
(ii)Hの値が、入口(最初の部分)から、ディフューザの全長のほぼ3分の1の所にある地点(最初の部分の末端)まで、Hが入口からほぼ直線的に増大しており、前記地点ではHの値が1.6〜2.2の範囲内にある。
(iii)上記の最初の部分の末端から、ディフューザの残りの有効長さ(主要部分)にわたって、Hが1.6〜2.2の範囲内にある。
さらに具体的に言えば、形状係数の範囲と分布に関して、以下の条件を満たす場合に、特に好ましい。
(i)ディフューザの入口において、Hが1.3〜1.6の範囲内にある。
(ii)Hの値が、入口(最初の部分)から、ディフューザの全長のほぼ3分の1の所にある地点(最初の部分の末端)まで、Hが入口からほぼ直線的に増大しており、前記地点ではHの値が1.6〜2.1の範囲内にある。
(iii)上記の最初の部分の末端から、ディフューザの残りの有効長さ(第2の部分)の2分の1の距離にわたって、Hが1.6〜2.1の範囲内にある。
(iv)上記の第2の部分の末端から、ディフューザの残りの有効長さ(第3の部分)にわたって、Hが1.6〜2.2の範囲内にある。
ディフューザの入口にて表わされるHの小さい方の値は、安定した境界層を直ちに確立するために、好適であることが判明している。
前述の通り、ディフューザを設計するときに、選択する方法が多数ある。本発明の場合には、軸対称境界層法と結び付けて考えられる軸対称流線彎曲貫流法(axisymmetric streamline curvature throughflow method)を用いて、ディフューザの流体流れ特性を評価することが好ましい。これらの流体流れ特性の結果は、三次元(3D)ナビエ・ストークスの計算でチェックされる。ディフューザ全体にわたって所望のH値が得られるまで、この方法を繰り返して実行し、したがって、所与のどんなディフューザ長さでも、優れた性能を与えるディフューザ壁形状がもたらされる。もちろん、環状ディフューザの場合、H用の値は、内側の環状ディフューザ壁でも、外側の環状ディフューザ壁でも得られなければならない。
図1および図2のディフューザは、前述の好ましい方法を用いて設計されている。図1と図2では、「ハブ(hub)」は内側環状壁をさし、また、「翼端(tip)」は、外側環状壁をさす。図1の表の第1の欄と第3の欄には、内側環状壁の位置を定める軸方向xと半径方向rの座標対が載っている。図2からわかるように、軸方向の距離xは、ガスタービン・エンジンの最終低圧(LP)動翼の翼後縁の翼端から測られ、また、半径方向の距離rは、環状ディフューザの軸線から(エンジンの中心線からも)測られる。この表の第2の欄と第4の欄には、外側環状壁の位置を定める軸方向xと半径方向rの座標対が載っている。この表のうち、xhub_modという見出しの付いた第5の欄には、xhubという見出しの付いた第3の欄の値のそれぞれから、第4の欄xtipの最初の値である156.5を減算した後の値が載っている。同様に、xtip_modという見出しの付いた第6の欄には、xtipという見出しの付いた第4の欄の値のそれぞれから、第4の欄xtipの最初の値である156.5を減算した後の値が載っている。第7の欄〜第10の欄には、それぞれ第1の欄、第2の欄、第5の欄、第6の欄の値のそれぞれを、図2に示される最終LP動翼の高さH(Hは137mmに等しい)で除算した後の値が載っている。図1のグラフは、この表の第7の欄〜第10の欄の座標を用いて描かれたものである。
図3のグラフは、4つの曲線を含む。「Hの下限」曲線と「Hの上限」曲線は、上述のさらに具体的なディフューザの形状係数の範囲と分布に対応する。これらの最適化された「ODハブ」拡散曲線と「OD翼端」拡散曲線は、本発明による環状ディフューザの内側環状壁と外側環状壁の形状係数挙動をそれぞれ示している。この形状係数挙動は、前述のさらに具体的なディフューザの形状係数の範囲と分布の範囲内にあることに留意されたい。
本発明は、比較的に短い長さにわたって、比較的に遅い出口速度(高圧の回復)を達成する。本発明は、ディフューザの入口にある比較的に小さい形状係数Hを利用することで、このような出口速度を達成する。Hが小さいので、初期拡散は、流体の剥離のおそれなしに、さらに積極的になされる。したがって、ディフューザの断面積の増加率(それゆえ、この流体の広がり)は、当初、比較的に急速である。Hが大きくなると、このような断面積の増加率は低下して、剥離を回避する。それゆえ、このディフューザは、断面積の増加率が比較的に急速である(それゆえ、拡散が積極的となる)第1の部分と、断面積の増加率が比較的にゆっくりとしている(それゆえ、拡散が積極的でなくなる)第2の部分から成っているものと見なすことができる。
図1のディフューザでは、断面積の比較的に速い増加と、それに続く比較的にゆっくりとした増加は、外側環状壁の形状により得られる。この外側環状壁は、概ね凹面形であって、内側環状壁に向かって彎曲している。この内側環状壁は円錐形である。内側環状壁も、外側環状壁も円錐形であるとすれば、その断面積の増加率は、ディフューザ入口からディフューザ出口まで変化しないであろうと了解される。外側環状壁が凹面形であることにより、断面積の比較的に速い増加と、それに続く比較的にゆっくりとした増加が得られる。もちろん、円錐形である外側環状壁と、概ね凹面形であって、外側環状壁に向かって彎曲している内側環状壁とによって、同一効果が得られるであろう。
図1のディフューザでは、このディフューザの入口において、内側環状壁の半径に対する外側環状壁の半径の比率は、1.6である。上述の好ましいディフューザ設計法を使用することにより、この比率を1.4〜1.8の範囲内で変えられることがわかる。同様に、図1のディフューザのL/Hは10である。ここで、Lはディフューザの軸方向の全長であり、またHは、図2に示されるように、上述のものである。この設計法を使用することにより、このL/Hを7〜12の範囲内で変えられることがわかる。さらに、図1のディフューザでは、この円錐形の内側環状壁と、この環状ディフューザの軸線とのなす角度は6.5度である。この設計法を使用することにより、この角度を5度〜15度の範囲内で変えられることがわかる。図1のディフューザでは、ディフューザ出口に対するディフューザ入口でのディフューザの断面積の比率は、3.3である。この設計法を使用することにより、この比率を3.5まで広げられることがわかる。
本発明によるガスタービンエンジンの環状ディフューザを定義する表と関連グラフである。 図1のディフューザの概略図であって、図1の表/グラフに使用される形状寸法を示す。 本発明による環状ディフューザ用の形状係数の範囲と分布のグラフである。
符号の説明
なし

Claims (11)

  1. エンジンで生じる排気ガスを拡散させるディフューザであって、前記ディフューザの複数部分を画定する1つまたは複数の壁を含み、また、前記ディフューザの全長のほぼ3分の1にわたる最初の部分であって、前記最初の部分の入口では、前記最初の部分の壁またはそれぞれの壁での境界層流の形状係数が1.3〜1.6の範囲内にあって、前記最初の部分における前記形状係数を実質的に直線的に増大して、前記最初の部分の出口における前記形状係数が1.6〜2.2の範囲に入るように構成した最初の部分と、前記最初の部分に後続して、前記ディフューザの残りの長さにわたる主要部分であって、前記主要部分の全長にわたって、前記形状係数を1.6〜2.2の範囲内に維持するように構成した主要部分とから成ることを特徴とするディフューザ。
  2. 前記最初の部分の出口において前記形状係数が1.6〜2.1の範囲内にあるように、前記最初の部分が前記形状係数を増大させ、また、前記主要部分が、長さが実質的に等しい第1の小部分と、後続する第2の小部分とから成り、前記第1の小部分が、前記第1の小部分の長さにわたって、前記形状係数を1.6〜2.1の範囲内に維持するように構成され、また、前記第2の小部分が、前記第2の小部分の長さにわたって、前記形状係数を1.6〜2.2の範囲内にあるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のディフューザ。
  3. 環状の形を有し、かつ、ディフューザの複数部分を画定する内側環状壁と外側環状壁とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のディフューザ。
  4. ガスタービンエンジンで生じる排気ガスを拡散させるのに適したディフューザであって、環状の形を有し、かつ、前記ディフューザの複数部分を画定する内側環状壁と外側環状壁とを備え、また、第1の部分と、前記第1の部分に後続する第2の部分とから成り、前記ディフューザの断面積の増加率が、前記第1の部分の方が、前記第2の部分よりも大きいことを特徴とするディフューザ。
  5. 前記内側環状壁が円錐形であり、また、前記外側環状壁が概ね凹面形であって、前記内側環状壁に向かって彎曲していることを特徴とする請求項4に記載のディフューザ。
  6. ディフューザの前記第1の部分の入口において、前記内側環状壁の半径に対する前記外側環状壁の半径の比率が1.4〜1.8の範囲内にあることを特徴とする請求項5に記載のディフューザ。
  7. Lを、前記内側環状壁と前記外側環状壁の軸線に沿ったディフューザの全長とし、またHを、ディフューザの入口において、前記軸線に垂直な方向における前記内側環状壁と前記外側環状壁との間の距離とすると、前記ディフューザのL/Hが7〜12の範囲内にあることを特徴とする請求項5または6に記載のディフューザ。
  8. 前記円錐形の内側環状壁と、前記内側環状壁および前記外側環状壁の軸線とのなす角度が5度〜15度の範囲内にあることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載のディフューザ。
  9. ディフューザ出口でのディフューザの断面積に対するディフューザ入口でのディフューザの断面積の比率が3.5よりも小さい請求項5ないし8のいずれか1項に記載のディフューザ。
  10. 前記外側環状壁が円錐形であり、また、前記内側環状壁が概ね凹面形であって、前記外側環状壁に向かって彎曲していることを特徴とする請求項4に記載のディフューザ。
  11. 添付図面の図1と図2を参照して実質的に上に述べられる通りの、ガスタービンエンジンで生じる排気ガスを拡散させるのに適したディフューザ。
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