JP2008502040A - 自律的相互作用エンティティおよびマルチエージェントシステムが存在する環境において、媒体の時間変化シミュレーションを非同期かつカオス的な処理によって実行するデバイス - Google Patents
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Abstract
媒体の時間変化をシミュレートするためのデバイス(D)およびシミュレーションマネージャを備えた、多目的モードにおいてアクティブオブジェクトプログラムを実行するコンピュータである。前記デバイス(D)は、エナクションオブジェクトからなる特定の起動されたオブジェクトを結合したものの時間変化をオブジェクトによってシミュレートするための専用のソフトウエアを備える。前記エナクションオブジェクトは、それぞれが物理現象を表すような自律的空間−時間エンティティを定義する。起動されると、状態オブジェクトを通じてマルチエージェント媒体において相互作用を行い、エンティティ間の空間的、時間的な相互作用の検出を可能にする。前記状態オブジェクトは、シミュレーションを行う媒体を表す仮想環境を形成する、トポロジー的な時間空間的な機能を提供する、相互作用媒体を定義する。(ii)シミュレーションマネージャは、シーケンス毎にエナクションの選択と前記エナクションそれぞれの起動を行う。前記起動は各シーケンスにおいて一回のみ、シーケンス毎に少なくとも一部は変更される順番で行い、それによってエナクションオブジェクト間の時間的、空間的相互作用をシーケンス毎に動的に変化させることが可能になる。
【選択図】図2
【選択図】図2
Description
本発明は、例えば、液体、気体、固体、微粒子の媒体などにおける物理現象に見られる、媒体の時間変化のコンピュータシミュレーション(もしくはモデル化)に関する。
当業者が知っているように、仮想現実の媒体における相互作用の現象論的アニメーションをモデル化することは、特に、媒体の次元が重要で、モデル化を実時間で実行されなければならない場合において非常に困難である。
例えば、海のような液体媒体の場合、この困難さは主に、多数の視点が同時に成立しなければならないという事実に起因する。より正確には、モデル化は、海としての視点、海洋学的見地からの視点、及びコンピュータグラフィックの視点においても成立しなくてはならない。実際、船員は特殊なボキャブラリを用いて海を不均一な媒体(流体)として表現し、彼らの航行技術を導き出す局所的な現象を観測している。一方で、海洋学者と技術者は、それらの現象を多数のモデルが互いに重なり合う複雑なシステムの形でモデル化している。
物理現象をモデル化するために、コンピュータグラフィックスの専門家は、例えばナビエ−ストークス方程式のような微分方程式に基づくコンピュータグラフィックスモデルを一般的に使用する。実際、これらの微分方程式をダイレクトデジタル法で解くアルゴリズムの複雑さのため、その構成物のディメンション(例えば、流体の場合、数平方キロメートル)に対して比較的大きなディメンションの媒体のアニメーションの処理は実行できない。更に、この種の微分方程式を解くには初期条件が必要であり、それによって相互作用の処理には向かないものになってしまう。
従って、解析解が無い場合、コンピュータシミュレーションは、考察中のシステムの現在の状態からこの同じシステムの次の状態へ進む反復手法(微粒子或いはスペクトル手法として知られる)に頼ることになる。一般的に各システムはサブシステム又はメッシュに分割され、これらのサブシステムのそれぞれの時間変化は、並列かつ同期して計算される。その結果、時刻(T+1)におけるシステムの状態は、時刻Tにおける各メッシュへの、選択された現象の並列適用によって、メッシュ間で起きる現象に影響されることなく得ることができる。
(ナビエ−ストークスの)の微分方程式のダイレクト局所デジタル解を使用して、微粒子及びスペクトルの反復方法を組み合わせることは、確かに提案されている。(例えば、D.Hinsinger氏らによる文献“Interactive animation of ocean waves”Symposium on Computer Animation(SCA),p.161−166,2002 および、S.Thon氏による文献“Ocean waves synthesis using a sectrum−based turbulence function”,IEEE−Computer Graphics International(CGI),p.65−74,Switzerland、2000,IEEE Computer Society)しかしながら、媒体のディメンションがその成分の規模において大きい場合、不均一媒体において種々の現象によって引き起こされる局所的影響を同時に考慮することはできない。例えば、海のような流体の場合、波の崩壊、風、流れ、海底の形状などによってすべての波長の波に対して起きた局所的影響を10もしくは数10平方キロメートルに渡って考慮することは不可能だが、船員にとって意味があり、かつ海洋学者にとって物理的に信頼に値するシミュレーションを実行するにはこれらの考慮が必要である。
従って、本発明の目的は、この状態を改善することである。
本発明は、マルチタスクモードで起動されたオブジェクトによってプログラミングの実行が可能なコンピュータへの組み込みに適した、媒体の時間変化をシミュレートするためのデバイスを提案する。
本デバイスは、
起動されたオブジェクトの少なくともいくつかを結合したものの変化をオブジェクトによってシミュレーションし、“エナクション”オブジェクトとして知られる第一のオブジェクトを備え、前記エナクションオブジェクトは、それぞれが物理現象を表す自律的空間−時間エンティティを定義しており、起動すると、“状態”オブジェクトとして知られる第二のオブジェクトを介してマルチエージェントシステム(SMA)内で相互作用を行い、前記状態オブジェクトは、仮想環境を形成するトポロジー的な空間−時間機能を提供する相互作用媒体を定義し、前記仮想環境はシミュレーションされた媒体の表現およびエンティティ間の空間的時間的な相互作用の検出が可能であるソフトウエアと、
エナクションの選択およびそれぞれのエナクションの起動をシーケンス上で実行でき、エナクションはシーケンス内で一度だけ起動され、その起動順序はシーケンス間で少なくとも一部はランダムに異なっており、それによってエナクションオブジェクト間で空間−時間的相互作用を起こし、シーケンス毎に動的に変化を起こさせることを特徴とするシミュレーションマネージャと、
を備えることを特徴とする。
起動されたオブジェクトの少なくともいくつかを結合したものの変化をオブジェクトによってシミュレーションし、“エナクション”オブジェクトとして知られる第一のオブジェクトを備え、前記エナクションオブジェクトは、それぞれが物理現象を表す自律的空間−時間エンティティを定義しており、起動すると、“状態”オブジェクトとして知られる第二のオブジェクトを介してマルチエージェントシステム(SMA)内で相互作用を行い、前記状態オブジェクトは、仮想環境を形成するトポロジー的な空間−時間機能を提供する相互作用媒体を定義し、前記仮想環境はシミュレーションされた媒体の表現およびエンティティ間の空間的時間的な相互作用の検出が可能であるソフトウエアと、
エナクションの選択およびそれぞれのエナクションの起動をシーケンス上で実行でき、エナクションはシーケンス内で一度だけ起動され、その起動順序はシーケンス間で少なくとも一部はランダムに異なっており、それによってエナクションオブジェクト間で空間−時間的相互作用を起こし、シーケンス毎に動的に変化を起こさせることを特徴とするシミュレーションマネージャと、
を備えることを特徴とする。
本発明に従うデバイスは、起動されたオブジェクトのそれぞれの状態が、起動された他のオブジェクトのそれぞれの状態を考慮して、各シーケンス内で次々に変化するという事実のために非同期モードで動作し、各起動されたオブジェクトの処理の順序が一つのシーケンスから他のシーケンスへランダムに変化するという事実のためにカオスモードで動作する。また、いつでも(即ち、実時間で)一つ又はそれ以上のオブジェクトを起動又は抑制することが可能なために全てのシミュレーションを初めからやり直す必要なく稼働状態及び/又はシミュレーションされたシステムを変更でき、それによって、真の相互作用性をデバイスに付与する。
また、シミュレーションソフトウエアは、少なくともいくつかの(エンティティによって表される)物理現象の、選択された相互作用媒体への影響を測定する自律エンティティを構成する機能を定義するエナクションオブジェクトを備えており、媒体の選択された場所における、物理現象の測定が可能である。
各エンティティ(またはエナクションオブジェクト)はそれぞれ、第1、第2、および第3アクティブオブジェクトで定義でき、動作を実行する。第1アクティビティは、少なくとも1つの相互作用媒体からなるトポロジー要素を生成することを目的としており、第2アクティビティはそのエンティティによる影響の範囲内に位置するトポロジー要素の特性指定を目的としており、第3アクティビティは、媒体内で生成、検出され、媒体を構成するすべてのエンティティによって指定されたトポロジー要素の、特性関数としてのエンティティの動作を変更することを目的としている。
この場合、それぞれの自律エンティティ(またはエナクションオブジェクト)は、適応パラメータが付与された動作モデルと関連づけられていることが望ましい。生成されたトポロジー要素の特性の検出が必要な媒体の領域がこのモデルによって定義でき、その間の各時刻において、その特性は検出されなければならない。
例えば各検出時刻は、2つの連続した有効時間範囲の外に定義される。有効時間範囲内では、問題のエンティティの動作モデルは、物理的な正確さを維持するために生成されたトポロジー要素の特性を新たに検出する必要がない。
これらの時間ドメインは、問題のエンティティに対し独自に選択された周波数で周期的に間隔を置いていること望ましい。
さらに、シミュレーションソフトウエアはスケジューラを備えることができ、このスケジューラは、選択された周波数に従って動作する実時間モード又は周期的ではあるがある周期から次の周期の間に変化するような期間において動作する仮想タイムモードのいずれかで動作が可能である。
本発明の更なる特徴と利点は、以下の詳細な記述並びに添付の図面によって明らかになるだろう。
添付の図面は、本発明を補うだけでなく、その定義に寄与することもあるものである。
本発明は、仮想現実の不均一媒体における相互作用の現象論的アニメーションのシミュレーションを実行するためのデバイスDに関するものである。
以下の記述において、議論される媒体は流体であり、より正確には、制約のない例として海の一領域を用いる。
しかしながら、本発明は、(副)原子又は粒子スケールで起こるものも含む移動を発生させるような物理現象が発生するあらゆる不均一媒体に関するものである。従って、本発明は、例えば、液体媒体、特に海、水路(川および流水)、湖及び係船地のような流体に、そして固体媒体、特に、材料の抵抗を分析するためのものに、そして大気や空間のような気体媒体に適用される。
さらに、本発明は、不均一媒体において異なる種類の物理現象を組合せた(または合成した)ものが発生する状況にも適用される。従って、本発明は、例えば、電磁気または音波による現象、特に電磁波または音波(動作および適合性)及び電磁放射に関するものである。
本発明に従うデバイスDを海に適用した場合、海としての視点、海洋学的見地からの視点、及びコンピュータグラフィックの視点それぞれにおいて成立するため、海洋シミュレーションは船員にとって意味のあるものとなりつつ、かつ海洋学者から見ても物理的に信頼できるものであり続けることができる。
実際、船員は海を自身の航行技術に影響を与えるような局所現象を観察する不均一流体として記述する特殊なボキャブラリを使用しており、対して海洋学者は物理現象を、多数のモデルが合成された複雑なシステムの形態でモデル化している。
“局所現象”という言葉は、ここでは波群、波の崩壊、少なくとも2つの波群間の相互作用、波群と波崩壊との間の相互作用、波群と風との間の相互作用、波群と水流との間の相互作用、あるいは波群と水深との間の相互作用のような物理現象を意味する。
モデル化された各現象に対応して、少なくとも1つのパラメータに依存した物理現象が少なくとも1つ存在する。各物理現象は、他の物理モデルから独立してモデル化されることに留意することが重要である。
以下の表では、船員によって使用される主な物理現象を、制約のない例として、物理海洋学に使用されるモデルおよび関連するパラメータに対応する形でまとめている。
本発明によるデバイスDは、全ての波長の波群に関する波の崩壊、風、流れや海底のような物理現象の局所的影響を受ける不均一流体(この場合、例えば10平方キロメートルの海の部分)を同時に考慮するように設計されている。
これを行なうため、本発明によるデバイスDは、従来の技術における事前定義又は適応メッシュに関するナビエ−ストークス微分方程式の数値解に依存するシミュレーションデバイスとは異なり、物理海洋学の理論的と実験的結果、およびマルチエージェントシステムにおける相互作用に基づいてモデル化された自律エンティティを定義する“エナクションオブジェクト”として知られる第1オブジェクトを使用する。事前定義または適応メッシュは一切使用しない。
“自律エンティティ”は、ここでは、波群、能動的崩壊、受動的崩壊、天気(風)、局所風、浅瀬や流れのようなエンティティ(またはエナクションオブジェクト)を意味する。これら物理エンティティおよびその相互作用の海洋学的モデルは、例えば、M.Parenthoen氏らによる文献(“IPAS:Interactive Phenomenological Animation of the Sea,International Journal of Offshore and Polar Engineering, 2004”)に詳細に記述されており、参照することによって本明細書に組み込まれるので、ここでは詳述しない。
簡単に言えば、各エナクションオブジェクト(または自律エンティティ)は、“どこで”“いつ”“何を”観察することが必要なのか指定するアクティブ認識ステップに従って動作するように設計されている。以降“aisthesis(アイスシス)”と呼ばれる異なるエンティティの動作は、(それを構成する水の粒子を介して)相互作用媒体として動作するよう意図した媒体(この場合は、海)の空間−時間かつ意味論的トポロジーを構成する。
各自律エンティティは、そのノウハウの機能として生成される媒体に対して働き、それ自身の動作のパラメータを変更することによって、動的に認識した特性に適応する。これが、自律エンティティが、以降エナクションオブジェクトと呼ばれる理由である。エナクションは、西ブルターニュ大学のM.Prenthoen氏が論文において、より正確に定義しており、その論文のタイトルは、“Animation phenomenologique de la mer”である。
以下で詳細に示されるように、媒体(この場合、海)の可視化が、本発明におけるデバイスDによって提供される唯一のオプションであることに注意が必要である。このことは、アニメーションを生成し、結果的に自律エンティティを構成するエンティティと同じ概念レベルで、ユーザー(または観測者)が彼自身を発見するという事実に起因する。言い換えれば、媒体(この場合、海)のアニメーションは、その可視化から独立して発生する。従って、海の可視化は、ユーザー(観測者)が見たい現象、見たい場所の関数として、“いつ”“どこで”“何を”見たいのか指定するべきであり、このようにして媒体の空間−時間的かつ意味的な構造の生成に組み込まれる。
自律エンティティによって生成される媒体を介して相互作用するマルチエージェントシステムとして構成された、海のモデルについて詳しく説明する。
例えば船員のようなユーザーは、彼の行動を、自身の経験や、自身が得た、もしくは読み取った情報によって、彼が観測したおよび/または彼が知っている現象の関数として決定する。
本発明によれば、海の現象論的アニメーションは、他の現象からはそれぞれ独立していると考えられた1つの現象の記述の結果であるモデルからなるマルチモデルシステムである。従って、現象を記述する各モデルは、自律の原則を立証しなければならない。言い換えれば、各現象は、感覚運動とそれ特有の意思決定能力を有する自律エンティティへ“オブジェクト化”(“具体化”)されなければならない。
ユーザー(または観測者)を含む全ての自律エンティティは、例えば、J.Ferber氏による文献(“Les systemes multi−agents:aqercu general“,Technique et Science Informatique,16(8), p.979−1012, 1997)で定義されているように、マルチエージェントシステム(SMA)において相互作用する。
この種のSMAにおいて、各エージェントは、感覚運動能力を有し、かつ他のエージェントによって決定された環境と通信する自律エンティティを構成する。これらのエージェントは、エージェント自身の認識能力、動作、及び決定を内部特性の関数及び環境との相互作用の関数として定義する動作モデルに従ってエージェント自身が変化するような環境に存在する。
相互作用は、空間−時間的構造を持つ媒体を介しており、その媒体は事前に定義されず、エンティティ自体の動作に従って構成されていく。従って各エンティティは、その自動適応に必要な機能としてトポロジー要素を生成することで、その構成に寄与している。全ての異なる自律エンティティは、こうして各エンティティと対応した各トポロジー要素へ特性を割り当て、各エンティティは自身の動作を、対応するトポロジー要素によってその環境において認識した特性へ適応させる。現象の物理的シミュレーションを実行する、エンティティ組織の概略例を図1に示す。
より正確には、図1の例では、“a”、“b”、“c”および“d”は、組織の自律エンティティを示す。それぞれのエンティティ(またはエナクションオブジェクト)は、3つのアクティブオブジェクト、すなわち、認識しようとしているものに対し変換処理を行うそれぞれのアクティビティ、全てのエンティティによって共に認識される世界におけるその動作、および前記世界において実際に認識された特性に応じて、エンティティが変化したものによって定義される。
更に、前に指摘されたように、それぞれの自律エンティティ(a、b、c、d)は、空間−時間的トポロジー要素をその中に挿入することによって媒体を構成するように設計される。媒体を構成するためのエンティティの適性は、それらの第1の役目(またはアクティビティ)を構成しており、これは以降“アイセシス”と呼ばれる。
媒体のグローバルトポロジーは、全てのエンティティの空間−時間的トポロジー要素を共に結合することによって定義される。
それぞれの自律エンティティ(a、b、c、d)はさらに、特性を与えられることによってグローバルトポロジーにおける自身のノウハウの関数として機能するように設計される。媒体に特性を与えるエンティティの適性は、それらの第2の役目(またはアクティビティ)を構成しており、これは、以降“プラクシス”と呼ばれる。
最後に、各自律エンティティ(a、b、c、d)は、自身の動作を、認識した媒体の特性関数として適応するよう設計される。特性とはすなわち、事前に生成され、全てのエンティティによって一緒に決定された、トポロジー要素の特性である。この動作適応のためのエンティティの適性は、第3の役割(またはアクティビティ)を構成しており、これは、以降、“ポイシス”と呼ばれる。
媒体は、組織中の異なる自律エンティティ間の相互作用媒体として働き、媒体を構成する自律エンティティが知覚的予測、媒体における動作、及び媒体への適応というそれぞれ異なる役割が動作している場合にのみ存続できる。
図2において、UML図を用いて本発明によるシミュレーションデバイスDが海という環境に適用された場合に図1に示された組織を実現する構成を説明する。
示されるアーキテクチャは、3つのレベルに分割できる。第1のレベルN1は、アクティブオブジェクトの動作スケジューリング専用である。第2のレベルN2は、相互作用が媒体によって伝達される自然現象を有する物理エンティティよりなる仮想環境専用である。第3のレベルN3は、媒体(この場合、海)のアニメーションに対する仮想環境の指定専用である。
シミュレータとしても知られる第1のレベルN1は、モジュールM1に組み込まれたオブジェクトの方法のポーリング動作を管理するスケジューラ(またはシーケンサ)を備え、それについては、後で詳しく述べる。詳細は後で述べるが、スケジューラは、仮想環境を作るアクティブオブジェクト(またはエンティティ)をその順番が来たときに起動する反復プロセスを実施する。スケジューラは、シミュレーションへバイアスが導入されるのを回避するためにエンティティの自律とカオス的反復を順守するために非同期反復を実行する。
第2のレベルN2は、自然現象とそれらの観測専用である。これによって、3次元空間と時間内に配置された自律エンティティから仮想環境を形成することができる。仮想環境は、オブジェクト方法を備えたモジュールM1を提供する。自律エンティティ(またはエナクションオブジェクト)は状態オブジェクトを介して相互作用を行う。ここで状態オブジェクトは、仮想環境において空間的時間的な相互作用の特定を可能にする空間―時間的トポロジーを提示する相互作用媒体を定義している。すべての相互作用媒体は、媒体と呼ばれるものを共に形成する。仮想環境は、“何が、いつ、どこで動作しているか?”という質問に答えるために、エンティティの位置と相互作用媒体に関するトポロジーの問題を解決するタスクを有する。シミュレーションしようとしている自然現象は、仮想環境内に備えられた物理エンティティにオブジェクト化(具体化)されており、ここで仮想環境は自然現象のシミュレーションの物理的一貫性を保証するものである。さらに、物理現象の観察は、第3のレベルN3に組み込まれたバーチャライザによって提供される測定機能によって成立する。
先に述べたように、各物理エンティティ(またはエナクションオブジェクト)は、3つの特定の方法(又は動作)、即ち、トポロジー要素に集められる相互作用媒体を生成することを可能とするアイセシスと、影響の及ぶ場所周辺に位置するトポロジー要素それぞれに特性を与えることを可能とするプラクシスと、エンティティの動作の変更、または新たなエンティティの生成を可能とするポイシスを有する。
ある特定のエンティティもまた、相互作用媒体に対する影響を測定することで現象を観測する機能を定義している。その相互作用は、単なる観測者、あるいはそれに没頭している関係者、あるいはモデル作成者を伴うモデルのものでありプログラム言語を介することで行われる。物理エンティティと同様に、その機能は上述の3つの方法へアクセスできるが、プラクシスは無視されることが多い。
先に述べたように、第3のレベルN3は、媒体(この場合、海)のアニメーションに対して仮想環境を指定すること専用である。その一方で、第3のレベルは、第一に、異なるタイプの物理エンティティ(波群、崩壊、流れ、局所風、海底の形状、天気(風)等)を定義するモジュールM2を、第二に、水の粒子とそれに関連する特性(動的位置、マスク、ノーマル、風、流れ、深さ、乱流等)を定義するモジュールM3を、第三に、媒体(この場合、海)を定義するモジュールM4と、第四に観測対象である海の表面のメッシュを形成する多数の水の特定の粒子からなる特定のエンティティであるビジュアライザとを備えており、これらは、選択された周波数(10Hz以上が好ましい)に従って、仮想環境を構成する物理エンティティ、とりわけ波群によって更新され、そして測定機能を通じて波群、波崩壊及び局所風の関数として織り込まれる。
他のアプリケーションが存在する状況で、関連するエナクションオブジェクト(又はエンティティ)のタイプ、状態オブジェクト、及び相互作用メディエータに対応して、適応するのは、第3のレベルN3である。
先に紹介した物理エンティティ内の波群、波崩壊、風、流れ及び海底の形状は、現象の海洋学的な一貫性と、水の粒子(位置、ノーマル、風、流れ、深さ、乱流等)を介したそれらの相互作用を保証する。
先に述べたように、各自律物理エンティティは、(船員によって観測される)物理現象の具体化を起源とする。図3に図式的に示されるように、これらの自律エンティティは、仮想環境内にあり、かつ自身の動作を有している。自律エンティティの動作モデルは、予測能力、即ち、物理的な正確さの維持を目的とした、媒体の新たな特性認識をその中においては必要とはしないような有効時間領域に関連づけられる。自律エンティティが自律的に変化できる時間領域に関する知識によって、この自律エンティティによる認識動作の頻度を決定できる。よって、それぞれのエンティティは、その予測に関連して、時間および与えられた位置において指定された所与のタイプの情報が必要であることを知っている。
各“波群”エンティティは、例えば、それに平均特性(長さ及び幅に関するガウス包絡線の有限拡張、波群速度、波の数、波長、周期、クレストの水平方向形状、位相速度、波群の寿命)を与える一連の波によって制御され、波の非線形な側面をモデル化するために、エンティティを通過する波のクレストに付された位相と振幅の局所外乱も追加される。
実施の形態の例として、一連の波は、モルレー2次元ウェーブレットとすることも可能で、正弦波層の位相が位相速度で進むのに対して、この包絡線は、波群の速度で移動する。モルレー2次元ウェーブレットは、シミュレーションソフトウエア(これについては後に図5を参照して述べる)によって使用される数学的ツールの1つであり、特に相互作用メ媒体(水粒子)において使われる。
波群は、他の自律エンティティ、とりわけ波崩壊、流れ、風、海底形状及び他の波群の影響を受けやすい。
波群は、波崩壊へ動作伝達を実行できなければならないので、従って、その予測ドメインが、波崩壊(より低い頻度で観測されうる他の現象)の寿命を上回ることはできない。海、または物理的な常識では波長が1メートルを越える波の崩壊の最小継続期間が約1秒であるので、例えば、波群のモデルを予測する能力を1秒に設定可能できる。この場合、波群は、認識する媒体の特性における波崩壊、風、流れ及び海底の形状による影響の変化を検出するために、認識動作を周波数1Hzで非同期に起動する。言い換えれば、仮想環境に含まれる各波群のアイセシスはトポロジー要素を1秒毎に生成しており、トポロジー要素は、例えばその包絡線に分布する5つの点からなり、その位置は1秒で予測される。
それぞれの波崩壊は、観測対象である流体の表面を占めることが望ましく、例えば、1m2を測定する隣接した要素ゾーンからなることが望ましい。各ゾーンは、波崩壊の能動又は受動位相と関連し、この波崩壊のアクティブフロントに属するか否に依存する。各アクティブゾーンでは、泡と乱流の生成処理は、波崩壊の局所動作の関数として実行でき(ここで使われている“アクティブ”という言葉は、“生成速度”という物理的意味で理解されるべきであり、コンピュータ的意味で理解されるべきではない)、一方、各パッシブゾーンには、泡と乱流の緩和処理が実行される。
波崩壊のアクティブフロントの伝播は、波と風の影響を受ける非常に動的な処理であるため、アクティブゾーン(この場合、1m2)の動作は、例えば、1秒に少なくとも2回更新される。一方、泡と乱流の散逸は、(泡や乱流を運ぶ流れと、泡として残す風のみから影響されるため)非常に予測が容易で、かつ風と流れの変化は非常にゆっくりしているので、散逸の更新は、例えば10秒毎に行われる。このような条件下では、波崩壊は、認識動作を、アクティブフロントにおいては(波の)群と風の影響を観測するために周波数2Hzで、緩和ゾーンにおいては流れと風の影響を観測するために0.1Hzで起動する。
言い換えれば、仮想環境に組み込まれた波崩壊それぞれのアイセシスは、一方では、0.5秒毎にそのアクティブフロントに対し、アクティビティを変化させるアクティビティの発生およびそれぞれのアクティブゾーン動作終了の決定のために、アクティブゾーンの粒子からなるトポロジー要素を生成する。トポロジー要素はアクティブフロントの前に局所粒子が付加されており、波崩壊の伝播を予測している。そしてまた一方で、アイセシスは10秒毎にパッシブゾーンにおいて補助粒子を生成している。
言い換えれば、仮想環境に組み込まれた波崩壊それぞれのアイセシスは、一方では、0.5秒毎にそのアクティブフロントに対し、アクティビティを変化させるアクティビティの発生およびそれぞれのアクティブゾーン動作終了の決定のために、アクティブゾーンの粒子からなるトポロジー要素を生成する。トポロジー要素はアクティブフロントの前に局所粒子が付加されており、波崩壊の伝播を予測している。そしてまた一方で、アイセシスは10秒毎にパッシブゾーンにおいて補助粒子を生成している。
天気(天気風)と局所風からなるエンティティは、時間的に連続的に力および/または方向が変化しているが、天気の影響は、観測対象である流体全体に渡って包括的に及ぼされており、影響によって流体上には波群が発生する。それに対して局所風は波群の生成には組み込まれておらず、移動および伝達可能な有限拡張包絡線を有する。このような、媒体から影響を受けない記述モデルによってモデル化されるのが望ましいエンティティでは、実際の認識処理は不要である。これは、流れや海底形状の一次近似においてもいえることであり、このことはそれらのパラメータの変化が時間関数としてのみ変化する(潮流成分)という事実に基づいている。
このように、物理エンティティは、媒体の空間−時間的構造の生成に組み込まれ、その2つの認識動作の間において自律的に変化する。認識動作の1つは、認識的予測(“どこで、いつ、何が必要になるか”)によって特徴づけられ、それは問題のエンティティがその動作を適応させる点に基づいて、媒体の特性の観測に先立って行われる。エンティティ間の相互作用は、このように、エンティティ自身が生成し自身が特性を与えた媒体によってそれらが創出し且つ各特性を与えることによってエンティティが寄与する媒体によって調整される。
以上のことから、仮想的な海のコンピュータモデルは、相互作用的な物理エンティティからなる不均一なマルチエージェントシステム(もしくはSMA)であるといえる。自律エンティティはそれぞれ仮想環境内に存在し、船員によって観測される物理現象(1つもしくは複数の波群、1つもしくは複数の崩壊、天気(風)、局所風、浅瀬、流れ、等)の具体化に基づいた、自身の動作を有している。更に、各エンティティの動作モデルは、実際の動作と理想的には同一のものになるための予測能力によって特徴づけられ、媒体の変化に適応するためにエンティティがその環境の認識を行うべき周波数に対応している。
このように、物理エンティティ(またはエナクションオブジェクト)は、水粒子(相互作用の媒体)の特性に依存した相互作用による現象の海洋学的な一貫性を実現する。これらの特性のうち、特定の記述は、基準位置、(物理エンティティ“波群”によって更新される)動的位置、(物理エンティティ“波群”によって更新される)ノーマル、(物理エンティティ“天気の風”及び“局所風”によって更新される)風、(物理エンティティ“流れ”によって更新される)流れ、(物理エンティティ“海底形状”によって更新される)深さ、及び(物理エンティティ“波崩壊”によって更新される)乱流の密度から構成される。
先に述べたように、水粒子は、流体(この場合、海)の現象論的シミュレーションのための相互作用媒体を構成する。水粒子は、トポロジー機能を構成し、空間/時間における基準位置と呼ばれる。この基準位置は、所与の時刻t0に関連する、空間におけるポイントM(0,X0)(ここでX0はベクトル)を構成する。これらは、媒体(海)の空間−時間的構造の生成中に自律エンティティの動的認識動作によって指定される空間/時間における基準位置である。
水粒子の知識を有する海は、水粒子を生成されるのと同じ速さで、時刻t0における増加順に配列し、その間エンティティは特性観測の予測を行う。もしt0がエンティティモデルの予測が有効な範囲の中であった場合、すなわち2つの認識動作の間であった場合、エンティティは、時刻t0において時間内に存在する粒子にのみ動作を行う。
所与の時刻、それらのプラクシスを実行する前に、エンティティは、自身の動作モデルに従って、自身の空間的な位置を確保する。そして海は、エンティティのプラクシスの動作をあらゆる時刻において空間的トポロジーの問題を解くことで指定できる。空間的トポロジーの問題は、媒体が各エンティティの影響の場に属しているという事実と結びついている。
これらの空間的トポロジーの問題の0(n2)の複雑さを低減するために、流体(海)を矩形領域の規則的なグリッドに分割できる。ここで、nは、あらゆるマルチエージェントシステムにおいて固有の相互作用エンティティの数である。この解決策は、流体を占めるエンティティが比較的一様な密度をもっている(各矩形領域のサイズが仮想環境を占めるエンティティの平均サイズと同じオーダーである)という仮定のもとで有効である。エンティティがそのトポロジー要素の相互作用媒体を大量に使用する時は、ビジュアライザからなるエンティティの場合と同じく、そのトポロジー要素において近隣の問題を解く特別な手法を提供しなければならない。
水粒子の基準位置に加えて、この水粒子を生成するエンティティは、マスクを使用してそれが必要な特性のタイプを1つもしくは複数指定する。このように、プラクシスが特性のタイプに影響を及ぼす物理エンティティのみが動作して、幾何学的というより意味的な第一の選択によって、エンティティや相互作用媒体の間のトポロジー関係を解決する複雑さを軽減する。
水の粒子は、例えば、基準位置M(0,X0)についてのその動的位置、海に対するその速度、海の表面に対するその垂線、それに影響を及ぼす波群のリスト、風、流れ、深さ、乱流の厚み、及び波崩壊とそれに関連する活動のリストのような多くの特性を備えうる。例えば、エンティティ“波群”は特定のモデルに従って動作するが、それはF.J.Gerstner氏による文献(“Theorie der Wellen”,Abhandlungen der koniglichen bominschen,Gesellschaft der Wissenschafte,Prague 1804)によって着想が得られる。そしてエンティティは特に、動的位置、速度及び垂線に関連したモデルに従って動作する。さらに、各波群は、水の粒子がその包絡線内にある場合、波群のリストへ追加できる。そして、エンティティ“波崩壊”は、N.Reul氏らによる文献(”A model of sea−foam thickness distribution for passive microwave remote sensing applications“,Journal of Geophysical Research, 2004)に記述されたタイプのモデル、とりわけ、乱流の厚みと波崩壊とそれらに関連する動作のリストと関連して動作する。
このように、海の各粒子は、海の上で基準位置に時間内に存在し、その特性は自身に影響を及ぼす物理エンティティのプラクシスの関数として更新される。プラクシスの動作は、環境“海”によって決定され、海は水粒子とエンティティの間の近隣問題を解くことによって水粒子の位置およびあらゆる時刻におけるエンティティに関する知識を有している。これらの水粒子は、それらの特性としての相互作用媒体として動作する。それらの特性は存在するすべてのエンティティの影響によるものであり、物理エンティティの動作を適応させるために使用される。水粒子の集合は、それらが相互作用するエンティティによって生成される。この集合は、水の粒子の数と空間におけるそれらの位置との両方において常に変化しており、エンティティが相互作用する媒体を形成する。
図4は、3つのエンティティ(2つの波群と1つの波崩壊)を用いた、アイセシスによる、媒体“海”の空間−時間的構造生成を図式的に示した例である。この図において、媒体(海)を構成する水の粒子は、異なるデザインを有する円によって表される。この例では、所与の時刻t0に、エンティティ崩壊(break(t0))は、一方において、0.5秒(すなわちt0+0.5)に、アクティブフロントZAの水粒子の特性が、およびその前に伝播の方向が必要となることを予測し、他方においては、10秒(すなわちt0+10)に、パッシブゾーンZP(小ドットで示す)の媒体の特性が必要となることを予測する。時刻t1に、第1の波群(group_1(t1))は、自身が1秒後(即ち、t1+1)に存在すると考えられる位置(G1_estim)における特性が必要となることを予測する。そして時刻t1+1のために5つの水の粒子を生成する。さらに、時刻t2には、第2の波群(Group_2(t2))が、自身が1秒後(即ち、t2+1)に存在すると考えられる位置(G2_estim)における特性が必要となることを予測する。そして、時刻t2+1のために5つの水の粒子を生成する。そして、海は、全てのエンティティをこのように形成された空間−時間的構造において動作させて、特性を与える。
先に示したように、本発明に従うデバイスDは、媒体を参照することなく媒体(この場合、海)を特徴づける物理現象を変化させることを可能にする。同様に、デバイスDは、物理現象の可視化とは無関係に、海の表面に固有の物理現象のいくつかをシミュレートすることを可能にしている。ここでは、モデル化された現象は、発見しようとしている対象に依存しているという事実を明らかに考慮から外している。これは、物理エンティティによって生成された媒体(この場合、海)の空間−時間的構造が海洋学的現象のシミュレーションに適合しているが海の表面の相互作用可視化には適合していないという事実によるもので、人間の認識および相互作用アニメーションを提供するコンピュータ化された手段に対して特定の制約を要求するものである。
実際、媒体(この場合、海)の可視化では、ユーザーをモデルのアクティブ要素の一つとして見なすことが必要である。そのため、ビジュアライザは、マン/マシンインターフェースの介在で仮想環境に取り込まれた組織に組み込まれた、自律エンティティを構成しなければならない。その結果、ユーザーは、媒体の空間−時間的構造を指定しなければならず、それらの特性のいくつかは、ユーザーが観測したい対象(どこで、いつ、何を見るか?)である。自身が見たものに依存して、ユーザーは、選択した現象を観察する次の場所を決定する。このステップは、仮想環境を占める自律エンティティによって使用される物と同じであり、それは、動的認識(またはアイセシス)の実行で行われている。
ユーザーは現象を選択すると、マン/マシンインターフェースを使用して、現象を見たい“場所”と“時刻”を指定しなければならない。提供された情報は、専用の認識モデルへ供給される。最小イマーションは画像であり、例えば、仮想カメラの画像によって提供される。仮想カメラとの相互作用は、例えば、制御キーボードおよび/またはマウスを使用することで、考慮される。更に、カメラは、観察者が位置する(または、埋め込まれる)と思われる、例えばボートのような固定又は移動可能オブジェクトに取り付けられる。
可視化流体を作るために、アニメーション(この場合、海の表面)は、10Hz以上の周波数および、そのポイントがある空間的確率分布に従って分布しているメッシュに構造化されたテクスチャード形状に定義された認識モデルに従って実行される。
認識モデルが、マン/マシンインターフェースによって供給される特性に基づいて一旦定義されると、海は、(図2の構成における第3のレベルN3の)エンティティ“ビジュアライザ”によって生成される。先に述べたように、実際、ビジュアライザは、媒体(この場合、海)を認識モデルの関数として構成し、海表面の可視化に付随する特性の修正を行う。こうして、エンティティ“ビジュアライザ”によって観測された特性の投影によって海がマン/マシンインターフェースのディスプレイモニタ上に表示される。
エンティティ“ビジュアライザ”は、形状、カメラの組を表す。以降、形状を構成するポイントの数は、固定され(シミュレーションデバイスDを搭載するコンピュータ機器のパワーに依存する)かつそれらの近傍のトポロジーが長時間にわたって維持されると仮定する。
形状におけるポイントの位置は、ビジュアライザに関連付けられた認識モデルで固定された確率分布に従って発生されることが好ましい。メッシュは、例えば、ポイントのデフォルト位置の初期化中に実行される、いわゆる静的ドローネー三角分割法に従って定義される。このような三角分割法は、M.J.Castro氏らによる文献(“New progress in anisotropic grid adaption inviscid and viscous flow simulation”,Technical Report 2671,INRIA,1995)に特に詳しく記述されている。
形状のトポロジー的構造は、動作中に三角分割を実行しなくてもいいように静的であることが好ましい。しかしながら、例えば、単純な平行移動、回転又は拡大以外の、構造的トポロジーを維持する変換を使用して、それを定義するポイントと同じレベルであるトポロジー構造のグリッドが、動的に変化すると予想することが可能である。この結果、例えば、D.Hinsinger氏による前述の文献に記載されたタイプの投影を、海の動きの細部表示の、カメラ視点への適応に使用することが可能である。
ビジュアライザのアイセシス動作は、例えば少なくとも10秒に1回トポロジー成分を生成することによる媒体(この場合、海)の構成動作に含まれる。トポロジー成分では、関連する水粒子が、ビジュアライザの認識モデルによって決定されたグリッドのポイントの位置を基準位置として有している。
画像の組み立てには、すべてのポイントに関する知識が必要である。第一に、海の表面を再構成するために、動的位置及び垂線の知識、第二にパッシブ泡を示すために乱流の厚みの知識、第三に、水の粒子のシステム(グラフィカルオブジェクトであり、それは、大量のリソースを消費し、その結果、その位置が、ビジュアライザの知覚モデルによって指定される認識注意領域内である場合に、例に挙げられるに過ぎない)のフローの調整を行うための、崩壊動作の知識、第四に、水粒子生成源の発散と(例えば、J.Maillot氏らによる文献(“Interactive texture mapping”,computer Graphics (SIGGRAPH), 27:27−34,1993)に記述されたタイプの“バンプマッピング”を用いた)ウェーブレットのテクスチャのパラメータ化を可能とするために、風の知識、そして第五に、形状グリッドのピッチが、波群の波長に等しい大きさのオーダーである時に波のテクスチャ化を可能とするために、波群の知識である。
ビジュアライザのトポロジー要素を構成する全ての水粒子は、総合して考えると、一般的に、グリッドに影響を及ぼす物理エンティティにとって、特定の手法を用いずにプラクシスのトポロジー問題を解くには大きすぎる。基準ポイントの空間的分布が規則的ではないので、エンコンパスボックスに基づいた単純な方法は、これらの問題を解決するためには十分効果的とはいえない。
その結果、これらの問題を解決する処理を単純化するために、例えば、A.Klinger氏らによる文献(“Experiments on pictures representation using regular decomposition”,Computer Graphics and Image Processing,5:68−105,1976)に記述されている“クアッドツリー”タイプのような2進ツリープロセスを使用することが有効である。この場合、ツリーは、形状の初期化中、実質的に、三角分割と同時に生成されるのが好ましい。
これら他のトポロジー的構造は、それらが、近傍の概念を変えない変換のみ実行するので、近傍の観点では全シミュレーションを通して固定されたままである。
このようにエンティティ“ビジュアライザ”によって、空間−時間的構造を媒体(この場合、海)に与えることが可能になる。媒体は人間による認識専用であり、海の視覚化に必要な特性へのアクセスを、ディスプレイモニタで見せることによって提供する。海を見せることは、エンティティ“ビジュアライザ”によって実行されたように、海に存在する物理エンティティのプラクシスの写真の現像に対応する。そして見せることは、ディスプレイモニタのグラフィックスカードの特性と形状メッシュの粒度の細かさに主に依存する。
仮想的実時間シミュレーション(1秒当り9個の画像)には、例えば、Nvidia社製のGeForce FXカードのような“Vertex and Pixel shader”バージョン2.0に対応したグラフィックスカード、および、例えば、Intel社製のPentiumIVプロセッサのような1.4GHzで動作するメインプロセッサを使用することが可能である。プログラムでは数メガオクテットがランダムアクセスメモリで使用されるだけで、初期化(三角分割等)は、通常約15秒で実行される。この種のコンピュータ機器で、約4km2の水域を、約8000個の相互作用物理エンティティによって処理することができ、形状グリッドは、6000個のポイントで作られる。そして海洋学的現象の相互作用の物理シミュレーションの複雑さは、CPUの観点から、形状グリッドのアニメーションの同じ大きさのオーダーである。
図5を参照して、本発明によるデバイスDを説明する。前述したように、デバイスDは非同期かつカオスタイプであり、図2を用いて説明したアーキテクチャを組み込むことができる。
図5に概略的かつ機能的に示されているように、デバイスDは、オペレーティングシステムOSと、文献(“Multi−agent system”p.499−524,RSTI−TSI,21/2002)に記述されているoRis環境によって提供されるような、マルチタスクモード処理に適応した処理および計算手段であるCPUとを備えるコンピュータCにインストールすることができる。このようなマルチタスク環境は、例えば、C++又はJava言語のような起動されたオブジェクトによるプログラミングに適している。oRisマルチタスク環境は、ここで示したデバイスDのように、コンパイラ(ここでは、”オブジェクトプログラムコンパイラ“と呼んでいる)と組み合わされている。さらに、oRis環境は、デバイスDのように、コンパイルによってその効率を向上するために、C++言語へのトランスレータ(ここでは、”オブジェクトプログラムインタープリタ“として知られる)と組み合わされる。コードランがダイナミックに修正可能なオンラインコンパイルコードであるような、オンラインコンパイラを形成するよう、このインタープリタを調整してもよい。このようなoRisの開発環境を構成するマルチタスク環境は、AReViという名で知られている。
デバイスDは、起動されたオブジェクトを結合したものの変化をシミュレートするためのソフトウエア(ここで、“汎用シミュレータ”と呼ばれる)を備える。より正確には、このシミュレーションソフトウエア(または汎用シミュレータ)は、エナクションオブジェクトとして知られる(第1の)オブジェクトと、状態オブジェクトとして知られる(第2の)オブジェクトを備える。
また、シミュレーションソフトウエア(又は汎用シミュレータ)は、状態オブジェクトおよびエナクションオブジェクト(またはエンティティ)と組み合わされたシミュレーションマネージャも備えており、エナクションオブジェクトの選択において連続的に逐動作するために自身のスケジューラおよびシーケンサを生成するよう設計されている。このシミュレーションマネージャは、エナクションオブジェクト(またはエンティティ)を発生させる媒体(この場合、海)がトポロジー問題を解決すると、相互作用の計算を実行する。
シミュレーションマネージャは、より正確には、各シーケンス中に1回だけ、そのタイミングを生成するシーケンサ(またはスケジューラ)の制御の下で、シーケンス毎に少なくとも部分的にはランダムに異なった順序で、選択されたエナクションオブジェクトの起動を行なう。これは、その3つのアクティビティそれぞれを、状態オブジェクトの現在の状態に対して適用するためであり、状態オブジェクトは、その状態を新しい状態へと変化させるために指定されている。言い換えれば、エンティティ間の空間-時間的相互作用をシーケンス毎に動的に変化させるためである。
より詳細に説明すれば、ユーザーは、まず、1つ以上のエナクションオブジェクトを選択し、それによって、デバイスDは、システムの空間−時間的変化をシミュレートする。このことが、シミュレーションソフトウエア内で選択された各エナクションオブジェクトを“事前起動”する。
次に、シミュレーションマネージャは、カウンタの値nを1とすることでシーケンスカウンタをリセットし、エナクションオブジェクトのリストを生成する。第1のシーケンス(n=1)は、シミュレーションマネージャが、選択されたエナクションオブジェクトから1つをランダムに選択する選択フェイズから始まり、それを即座に起動する。次に、選択されかつ起動されたエナクションオブジェクトの各エンティティ(または方法)は、それぞれの関連する状態オブジェクトの現在の状態に適用され、現在の状態に対して修正を行う。次に、それぞれのアクティビティが起動され、各状態オブジェクトに適用される。
そしてシミュレーションマネージャは、適用されたばかりのエナクションオブジェクトを、現在のシーケンスのエナクションオブジェクトのリストから削除する。
次に、シミュレーションマネージャは、現在のシーケンスのエナクションオブジェクトのリストに、適用されるべきエナクションオブジェクトが残っているか否かを決定するテストを実行する。
現在のシーケンスのエナクションオブジェクトのリストが空でなければ、シミュレーションマネージャは、残りのエナクションオブジェクトの一つをランダムに選択する選択フェイズを新たに実行する。先に示したように、シミュレーションマネージャは次にこの新たに選択されたエナクションオブジェクトを起動し、そのそれぞれのアクティビティを、先のエナクションオブジェクト(現在のシーケンスでは使用できない)の起動によって変更された各状態オブジェクトの現在の状態に対して適用する。シミュレーションマネージャは、これらの動作(選択−起動、適用及び更新)をエナクションオブジェクトのリストから選択されたエナクションオブジェクトと同じ数だけ実行し、その結果、各エナクションオブジェクトのアクティビティは、関連づけられた状態オブジェクトに一度適用される。これが完了すると、時刻T=0に対応する第1のシーケンス(n=1)が完了する。
現在のシーケンスのエナクションオブジェクトのリストが空の場合、シミュレーションマネージャは、シーケンスカウンタの現在値nを1単位だけ増やす。勿論、シミュレーションマネージャは、実行されるべきシーケンスの数だけテストを実行する。実行されたシーケンスの数が想定していた最大数と等しくなると、シミュレーションマネージャは、このシミュレーションを終了する。反対に、実行されるべきシーケンスが1つでも残っていた場合、シミュレーションマネージャは、時刻T+1、T+2、...、T+nに対応する新たなシーケンスを実行する。そしてシミュレーションマネージャは、新たなシーケンス毎に上述された動作を繰り返す。
シミュレーションの実行時間、すなわちシミュレーションマネージャによって実行されるシーケンスの最大数は、問題のアプリケーションまたはそのアプリケーションを参考にユーザーが選択したパラメータ生成に依存する。しかしシミュレーションは、ユーザーがコンピュータCのマン/マシンインターフェースを介してシミュレーションソフトウエアへストップコマンドを送信することでいつでも中断されうる。ユーザーのコマンドで中断されたシミュレーションは、後に再開されうることに注意が必要である。
シーケンサ(又はスケジューラ)は、仮想時間で動作できる、即ち、その機能は実時間に従って動作することは求められない。しかし繰り返し処理はそれぞれ、物理的ではなく論理的に、1ミリ秒(1ms)の実行時間を示す。勿論、シーケンサは実時間で動作してもよい。その場合、それぞれの繰り返し処理の実行時間は、物理的に、選択された時間である。
シミュレーションソフトウエアに連続的およびカオス的動作モードがあるために、ユーザーは、彼自身とシミュレーション対象(例えば、媒体)との相互作用のための“avatar”の形態で、或いは、1つ以上のエナクションオブジェクトを選択に追加、もしくは削除することで、いつでもシミュレーションに介入できる。また、ユーザーは、1つ以上のエナクションオブジェクトの定義(又は構造)を少なくとも部分的に変更できる。これによってシミュレーションソフトウエアは、大きな相互作用性を持つ。
本発明は、多くの技術分野、とりわけ航行の補助、材料の抵抗や波動現象(電磁又は音波)を研究するための、(例えば、ボートの動作や係船地の代わり/または追加となるような沿岸プラットフォームを研究する)造船工学の分野において非常に多くの用途を有する。従って、応用の1つとして、オブジェクトの検出および/又は調査を実行する際の、船、レーダ波及び海との間の組合せ相互作用のモデル化が挙げられる。
更に、上記では、不均一媒体が同じ性質の物理現象の対象であるような用途について述べている。しかしながら、本発明は、不均一媒体が異なる種類の物理現象の組合せ(又は合成)の対象である用途にも関連している。
本発明は、例である、上記のシミュレーションデバイスの実施の形態のみに制限されず、以下の請求項の範囲内で当業者によって想定され得る全ての変形を含む。
Claims (7)
- マルチタスクモードで起動されたオブジェクトにおいてプログラムをサポートするよう設計されたコンピュータ(C)への組み込みに適した、媒体の時間変化をシミュレーションするデバイス(D)であって、
前記起動されたオブジェクトの少なくともいくつかを結合したものの変化をオブジェクトによってシミュレーションするためのソフトウエアおよびシミュレーションマネージャを備え、
前記ソフトウエアは、“エナクション”オブジェクトとして知られる第1のオブジェクトを備え、前記エナクションオブジェクトは、それぞれが物理現象を表す自律的空間−時間エンティティを定義しており、前記ソフトウエアが起動されると“状態”オブジェクトとして知られる第2のオブジェクトを介してマルチエージェントシステム内で相互作用を行い、前記状態オブジェクトは、仮想環境を形成するトポロジー的な空間−時間機能を提供する相互作用媒体を定義し、前記仮想環境はシミュレーションされた媒体を表示し、前記ソフトウエアによって空間−時間エンティティ間の相互作用の検出が可能になり、
前記シミュレーションマネージャはエナクションの選択およびそれぞれのエナクションの起動をシーケンス上で実行でき、エナクションはシーケンス内で一度だけ起動され、その起動順序はシーケンス間で少なくとも一部はランダムに異なっており、それによってエナクションオブジェクト間で空間−時間的相互作用を起こし、シーケンス毎に動的に変化を起こさせることを特徴とする、デバイス。 - 前記シミュレーションソフトウエアが、選択された物理現象の少なくともいくつかにおける影響を測定可能な自律エンティティを定義するエナクションオブジェクトを備え、前記自律エンティティによって定義されることによって、前記媒体中の選択した場所における前記物理現象の観測が可能になることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
- 各エナクションオブジェクトが第1、第2、および第3のアクティブオブジェクトによって認識され、第1のアクティビティは少なくとも1つの相互作用媒体からなるトポロジー要素を生成するようにし、第2のアクティビティはそのエナクションオブジェクトの影響を受ける領域に位置するトポロジー要素それぞれへ特性を付与するようにし、第3のアクティビティは自身の生成したトポロジー要素の特性関数として、そのエナクションオブジェクトの動作を修正するようにし、前記エナクションオブジェクトそれぞれは前記媒体内で認識され、前記媒体内を構成するすべての前記エナクションオブジェクトによって特性が与えられることを特徴とする、請求項1および2のいずれか1項に記載のデバイス。
- 各エナクションオブジェクトが、調整可能なパラメータが付与された動作モデルと関連づけられており、前記動作モデルは、前記エナクションオブジェクトによって生成された前記トポロジー要素の前記特性を認識すべき媒体の領域およびそれぞれにおいて常に特性を認識するべき時間を定義できることを特徴とする、請求項3に記載のデバイス。
- それぞれの認識時刻が、問題のエナクションオブジェクトの動作モデルが、その物理的な正確さを維持するために生成されたトポロジー要素の新たな特性を必要としない有効時間の範囲外に定義される、請求項4に記載のデバイス。
- 前記時間領域が、問題のエナクションオブジェクトに特有の選択された周波数において周期的に間隔を空けていることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス。
- 前記シミュレーションソフトウエアが、実時間モードと仮想時間モードのうち、選択された一方において動作可能なスケジューラを備えることを特徴とし、前記実時間モードにおいては選択された周波数に従って動作し、前記仮想時間モードでは期間毎に変化するような期間において周期的に動作する、前記各請求項のいずれか1項に記載のデバイス。
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