JP2008500043A - 黄色ブドウ球菌に対する感染防御免疫応答を誘導するためのポリペプチド - Google Patents

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Abstract

本発明は、配列番号1に対して構造的に近縁であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および、このようなポリペプチドの使用を特徴とする。配列番号1は全長型S.aureusポリペプチドの誘導体である。天然に存在するこの全長型ポリペプチドは本明細書中では全長の「ORF0826」として示される。配列番号1のこの誘導体はアラニンの付加を最初のメチオニンの後に含有する。配列番号1のHisタグ誘導体は、S.aureusに対する感染防御免疫応答を生じさせることが見出された。

Description

本出願明細書中を通して引用される参考文献は、特許請求されている発明に対する先行技術であることを認めるものではない。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、広範囲の様々な疾患および状態の原因である病原体である。S.aureusによって引き起こされる疾患および状態の例には、菌血症、感染性心内膜炎、毛包炎、フルンケル、カルブンケル、膿痂疹、水疱性膿痂疹、蜂巣炎、ボトリオミセス症、毒素性ショック症候群、熱傷様皮膚症候群、中枢神経系の感染症、感染性および炎症性の眼疾患、骨髄炎、ならびに、関節および骨の他の感染症、ならびに、気道感染症が含まれる(The Staphylococci in Human Diseases、CrossleyおよびArcher(編)、Churchill Livingstone Inc.、1997)。
免疫学的方法を、S.aureus感染症およびS.aureusの拡大を食い止めるために用いることができる。免疫学的方法には、受動免疫法および能動免疫法が含まれる。受動免疫法では、S.aureusを標的とする免疫グロブリンが用いられる。能動免疫法では、S.aureusに対する免疫応答が誘導される。
可能性のあるS.aureusワクチンはS.aureusの多糖およびポリペプチドを標的とする。標的化を、S.aureusの好適な多糖またはポリペプチドをワクチン成分として使用して達成することができる。可能なワクチン成分として用いることができる多糖の例には、S.aureus5型およびS.aureus8型の莢膜多糖が含まれる(Shinefield他、N.Eng.J.Med.、346:491−496、2002)。可能なワクチン成分として用いることができるポリペプチドの例には、コラーゲンアドへジン、フィブリノーゲン結合タンパク質およびクランピング因子が含まれる(Mamo他、FEMS Immunology and Medical Microbiology、10:47−54、1994;Nilsson他、J.Clin.Invest.、101:2640−2649、1998;Josefsson他、The Journal of Infectious Diseases、184:1572−1580、2001)。
S.aureusのポリペプチドの配列に関する情報が、S.aureusのゲノムを配列決定することから得られている(Kuroda他、Lancet、357:1225−1240、2001;Baba他、Lancet、359:1819−1827、2000;Kunsch他、欧州特許出願公開EP0786519(1997年7月30日公開))。ある程度ではあるが、バイオインフォマティクスが、ゲノム配列決定から得られたポリペプチド配列を特徴づけようとして用いられている(Kunsch他、欧州特許出願公開EP0786519(1997年7月30日公開))。
ディスプレー技術を伴う技術などの様々な技術および感染患者からの血清を、可能性のある抗原をコードする遺伝子を特定しようとすることにおいて使用することができる(Foster他、国際特許出願公開WO01/98499(2001年12月27日公開);Meinke他、国際特許出願公開WO02/059148(2002年8月1日公開);Etz他、PNAS、99:6573−6578、2002)。
本発明は、配列番号1に対して構造的に近縁であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および、このようなポリペプチドの使用を特徴とする。配列番号1は全長型S.aureusポリペプチドの誘導体である。天然に存在するこの全長型ポリペプチドは本明細書中では全長の「ORF0826」として示される。配列番号1のこの誘導体はアラニンの付加を最初のメチオニンの後に含有する。配列番号1のHisタグ誘導体は、S.aureusに対する感染防御免疫応答を生じさせることが見出された。
「感染防御」免疫または「感染防御」免疫応答に対する言及は、S.aureus感染に対する検出可能なレベルの感染防御を示す。このような感染防御レベルは、動物モデルを使用して評価することができ、例えば、本明細書中に記載される動物モデルなどを使用して評価することができる。
従って、本発明の第1の態様では、配列番号1に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド免疫原であって、ポリペプチドが、配列番号3、配列番号4または配列番号5ではないポリペプチド免疫原が記載される。免疫原に対する言及は、S.aureusに対する感染防御免疫を提供することができることを示す。
配列番号1に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むということに対する言及は、配列番号1に関連づけられる領域が存在すること、および、さらなるポリペプチド領域が存在してもよいことを示す。配列番号3、配列番号4または配列番号5のポリペプチドは85%の同一性に含まれるが、本発明の第1の態様から除外される。
参照配列に対するパーセント同一性(これはまた、参照配列に対してパーセント同一であるとして示される)は、ポリペプチド配列を参照配列に関してアラインメントし、対応する領域における同一アミノ酸の数を求めることによって決定される。この数が、参照配列(例えば、配列番号1)におけるアミノ酸の総数によって除され、次いで、100が乗じられ、最も近い整数に丸められる。
本発明の別の態様では、S.aureusに対する感染防御免疫を提供するポリペプチドと、このポリペプチドにカルボキシル末端またはアミノ末端において共有結合的に結合した1つ以上のさらなる領域または成分とを含む免疫原が記載され、この場合、それぞれの領域または成分が独立して、下記の性質:
免疫応答を強化すること、精製を容易にすること、または、ポリペプチドの安定性を促進すること
の少なくとも1つを有する領域または成分から選択される。
「さらなる領域または成分」に対する言及は、ORF0826の領域とは異なる領域または成分を示す。さらなる領域または成分は、例えば、さらなるポリペプチド領域またはペプチド以外の領域が可能である。
本発明の別の態様では、患者においてS.aureusに対する感染防御免疫応答を誘導することができる組成物が記載される。本発明の組成物は、医薬的に許容されるキャリアと、S.aureusに対する感染防御免疫を提供するポリペプチドの免疫学的効果的な量とを含む。
免疫学的効果的な量は、S.aureus感染に対する感染防御免疫を提供するために十分な量である。この量は、S.aureus感染の可能性または重篤度を著しく防止するために十分でなければならない。
本発明の別の態様では、S.aureus感染に対する感染防御免疫を提供するポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む核酸が記載される。組換え遺伝子は、ポリペプチドをコードする組換え核酸を、適切な転写およびプロセシングのための調節エレメント(これには、翻訳エレメントおよび翻訳後エレメントを含むことができる)と一緒に含有する。組換え遺伝子は宿主ゲノムから独立して存在することができるか、または、宿主ゲノムの一部であることが可能である。
組換え核酸は、この配列および/または形態によって自然界に存在しない核酸である。組換え核酸の例には、精製された核酸、自然界に見出されるのと異なる核酸を提供する一緒に組み合わされた2つ以上の核酸領域、および、天然において互いに会合する1つ以上の核酸領域(例えば、上流または下流の領域)の非存在が含まれる。
本発明の別の態様では、組換え細胞が記載される。本発明の細胞は、S.aureusに対する感染防御免疫を提供するポリペプチドをコードする組換え遺伝子を含む。
本発明の別の態様では、S.aureusに対する感染防御免疫を提供するポリペプチドを作製する方法が記載される。本発明の方法は、本発明のポリペプチドをコードする組換え核酸を含有する組換え細胞を成長させること、および、このポリペプチドを精製することを伴う。
本発明の別の態様では、本発明のポリペプチドをコードする組換え核酸を含有する組換え細胞を宿主において成長させる工程と、このポリペプチドを精製する工程とを含むプロセスによって作製された、S.aureusに対する感染防御免疫を提供するポリペプチドが記載される。種々の宿主細胞を用いることができる。
本発明の別の態様では、S.aureusに対する患者における感染防御免疫応答を誘導する方法が記載される。本発明の方法は、S.aureusに対する感染防御免疫を提供するポリペプチドの免疫学的効果的な量、または、このような感染防御ポリペプチドを含有する免疫原の免疫学的効果的な量を患者に投与する工程を含む。
特定の用語が相互に排他的でない限り、「または」に対する言及はいずれかの可能性または両方の可能性を示す。場合により、「および/または」などの表現が、いずれかの可能性または両方の可能性を強調するために使用される。
「含む」などの開いた用語に対する言及はさらなる要素または工程を可能にする。場合により、「1つ以上の」などの表現が、さらなる要素または工程の可能性を強調するために、開いた用語とともに、または、開いた用語を伴うことなく使用される。
明示的に言及されない限り、「a」または「an」などの用語に対する言及は1つに限定されない。例えば、「a cell(細胞)」は「cells(細胞)」を除外しない。場合により、1つまたは複数などの表現が、複数の存在が可能であることを強調するために使用される。
本発明の他の特徴および利点が、種々の実施例を含めて、本明細書中に提供されるさらなる記載から明らかである。提供された実施例は、本発明を実施する際に有用である種々の構成成分および方法論を例示する。実施例により、特許請求されている発明は限定されない。本開示に基づいて、当業者は、本発明を実施するために有用である他の構成成分および方法論を特定することができ、また、用いることができる。
図1は、配列番号1および配列番号2のアミノ酸配列を例示する。全配列は配列番号2である。太字で示される部分は配列番号1である。下線領域は、配列番号1に付加されたHisタグ領域である。
図2は、配列番号1(SEQ1)配列番号3(SEQ3)、配列番号4(SEQ4)、配列番号5(SEQ5)、配列番号6(SEQ6)、および配列番号7(SEQ7)の間での配列比較を例示する。アミノ酸の違いが太字で示される。
図3は、配列番号2をコードする核酸配列(配列番号8)を例示する。配列番号1をコードする領域が太字で示される。Hisタグ領域およびGCCのアラニンコドンには下線が引かれている。
図4は、ORF0826をコードする核酸配列(配列番号9)を例示する。
図5A、5B及び5Cは、配列番号2のポリペプチドをヒドロキシリン酸アルミニウムアジュバント(AHP)において使用する別々の実験からの結果を例示する。ポリペプチドは「SEQ2」として示される。
感染防御免疫を提供する配列番号1近縁ポリペプチドの能力が、配列番号2を使用して下記に提供される実施例において例示される。配列番号2は配列番号1のHisタグ誘導体である。Hisタグはポリペプチドの精製および同定を容易にする。
配列番号1は、ORF0826と称される全長型S.aureusポリペプチドの誘導体である。配列番号1と構造的に近縁であるポリペプチドには、異なるS.aureus株に存在する対応した領域と、天然に存在する領域の誘導体とを含有するポリペプチドが含まれる。配列番号1のアミノ酸配列が図1に太字の領域によって例示される。図1はまた、配列番号2に存在するHisタグ領域を例示する。
ORF0826の配列
ORF0826近縁配列には、参考文献毎に異なる名称が与えられている。異なる名称のいくつかの例が、Kuroda他、Lancet、357:1225−1240、2001において(SAV23049およびSA2097)、Baba他、Lancet、359:1819−1827、2002において(MW2222)、また、Etz他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99(10):6573−6578、2002において(SA2295)示される。
ORF0826は、S.epidermidisの分泌型抗原Ssaとの大きな程度の相同性を互いに有する。Ssaは、Lang他、FEMS Immunology and Medical Microbiology、29:213−220、2000に記載される。
ORF0826近縁配列に対応するポリペプチド配列が種々の特許刊行物において提供されているようである(Meinke他、国際特許出願公開WO02/059148(2002年8月1日公開)、および、Masignani他、国際特許出願公開WO02/094868(2002年11月28日公開))。
図2は種々のORF0826近縁配列の配列比較を提供する。配列番号3はメチシリン耐性S.aureusの配列であり(これは、www.sanger.ac.ukに寄託された核酸配列データを検索することによって得られた)、配列番号4はWO02/059148の配列識別番号73に対応し、配列番号5はWO02/094868の配列識別番号782に対応し、配列番号6および配列番号7は、天然に存在するさらなる配列である。
天然に存在する他のORF0826配列を、既知のORF0826配列と比較して、大きな程度の配列類似性または連続するアミノ酸の存在に基づいて特定することができる。連続するアミノ酸は特徴的なタグを提供する。異なる実施形態において、天然に存在するORF0826配列は、配列番号1でのように、少なくとも20個、または少なくとも30個、または少なくとも50個の連続するアミノ酸を有し、および/または、配列番号1との少なくとも85%の配列類似性または配列同一性を有する、ブドウ球菌属細菌(好ましくは、S.aureus)に見出される配列である。
配列類似性は、この分野で広く知られている種々のアルゴリズムおよび技術によって求めることができる。一般には、配列類似性は、ギャップ、付加および置換を配列の一方において考慮して、最大のアミノ酸同一性を得るために2つの配列をアラインメントする技術によって決定される。
配列類似性を、例えば、プログラムlalign(これはHuangおよびMiller,(Adv.Appl.Math.、12:337−357、1991)によって開発された;<<sim>>プログラムについて)を利用する局所的アラインメントツールを使用して求めることができる。選択肢および環境変数は下記の通りである:−f#ギャップ内の最初の残基に対するペナルティー(初期値、−14);−g#ギャップ内のそれぞれのさらなる残基に対するペナルティー(初期値、−4);−s str(SMATRIX)代わりのスコア化行列ファイルのファイル名。タンパク質配列については、PAM250が配列アラインメントのための初期値−w#(LINLEN)出力ライン長(60)によって使用される。
配列番号1近縁ポリペプチド
配列番号1近縁ポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含有する。「ポリペプチド」に対する言及は最小または最大のサイズ制限を提供しない。
配列番号1に対して少なくとも85%同一であるポリペプチドは配列番号1からの約25個までのアミノ酸変化を含有する。異なる実施形態において、配列番号1近縁ポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも90%同一であるか、または、少なくとも94%同一であるか、または、少なくとも99%同一であり、または、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸変化によって配列番号1とは異なり、または、配列番号1のアミノ酸2から167から本質的にはなる。それぞれのアミノ酸変化は独立して、付加、置換または欠失のいずれかである。
示されたアミノ酸から「本質的にはなる」に対する言及は、参照されたアミノ酸が存在すること、および、さらなるアミノ酸が存在してもよいことを示す。このようなさらなるアミノ酸はカルボキシル末端またはアミノ末端において存在し得る。異なる実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のさらなるアミノ酸が存在する。好ましいさらなるアミノ酸はアミノ末端のメチオニンである。
様々な変化を、S.aureusに対する感染防御免疫を誘導することができる誘導体を得るために配列番号1に対して行うことができる。変化を、例えば、S.aureusに対する感染防御免疫を誘導する能力を保持する誘導体を得るために、または、感染防御免疫を提供することに加えて、特定の目的を達成することができる領域をもまた有する誘導体を得るために行うことができる。
図2に提供される配列比較は、配列番号1に対する可能性のある変化の設計を導くことを助けるために使用することができる。加えて、様々な変化を、他のORF0826配列を考慮に入れて、また、アミノ酸の公知の性質を考慮に入れて行うことができる。
一般には、種々のアミノ酸を置換して、活性を保持することにおいて、類似する性質を有するアミノ酸を交換することが好ましい。アミノ酸置換のために考慮に入れることができる要因には、アミノ酸のサイズ、電荷、極性および疎水性が含まれる。アミノ酸の性質に対する種々のアミノ酸R基の影響はこの分野では広く知られている(例えば、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley、1987−2002)、付録1Cを参照のこと)。
アミノ酸を交換して、活性を維持することにおいて、代替アミノ酸は1つ以上の類似する性質(例えば、ほぼ同じ電荷および/またはサイズおよび/または極性および/または疎水性など)を有しなければならない。例えば、バリンをロイシンの代わりに使用すること、アルギニンをリシンの代わりに使用すること、および、アスパラギンをグルタミンの代わりに使用することは、ポリペプチドが機能することにおいて変化を引き起こさないための良好な候補である。
特定の目的を達成するための変化には、ポリペプチドの産生または効力、または、コードされた核酸のクローニングを容易にするために設計される変化が含まれる。ポリペプチドの産生を、組換え発現のために好適な開始コドン(例えば、メチオニンに対するコドン)の使用によって容易にすることができる。このようなメチオニンは後で、細胞のプロセシングのときに除かれる場合がある。クローニングを、例えば、アミノ酸の付加または変化が付随し得る制限部位の導入によって容易にすることができる。
免疫応答を誘導するポリペプチドの効力をエピトープ増強によって高めることができる。エピトープ増強を、種々の技術を使用して、例えば、MHC分子に対するペプチド親和性を改善するためのアンカー残基の変化を伴う技術、および、T細胞受容体に対するペプチド−MHC複合体の親和性を増大させる技術などを使用して行うことができる(Berzofsky他、Nature Review、1:209−219、2001)。
好ましくは、ポリペプチドは精製ポリペプチドである。「精製ポリペプチド」は、このポリペプチドが天然において会合する1つ以上の他のポリペプチドを有しない環境で存在し、および/または、存在する総タンパク質の少なくとも約10%によって表される。異なる実施形態において、精製ポリペプチドは、サンプルまたは調製物における総タンパク質の少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約95%を表す。
1つの実施形態において、ポリペプチドは「実質的に精製される」。実質的に精製されたポリペプチドは、このポリペプチドが天然において会合する他のポリペプチドのすべてまたはこのほとんどを有しない環境で存在する。例えば、実質的に精製されたS.aureusポリペプチドは、他のS.aureusポリペプチドのすべてまたはこのほとんどを有しない環境で存在する。環境は、例えば、サンプルまたは調製物であり得る。
「精製された(される)」または「実質的に精製された(される)」に対する言及は、ポリペプチドが何らかの精製を受けることを必要とせず、例えば、精製されていない化学合成されたポリペプチドを包含し得る。
ポリペプチドの安定性を、ポリペプチドのカルボキシ末端またはアミノ末端を修飾することによって高めることができる。可能な修飾の例には、アミノ末端感染防御基(例えば、アセチル、プロピル、スクシニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニルまたはt−ブチルオキシカルボニルなど)、および、カルボキシル末端感染防御基(例えば、アミド、メチルアミドおよびエチルアミドなど)が含まれる。
本発明の実施形態において、ポリペプチド免疫原は、カルボキシル末端またはアミノ末端においてポリペプチドに共有結合的に結合した1つ以上のさらなる領域または成分を含有する免疫原の一部であり、この場合、それぞれの領域または成分は独立して、下記の性質:
免疫応答を強化すること、精製を容易にすること、または、ポリペプチドの安定性を促進すること
の少なくとも1つを有する領域または成分から選択される。ポリペプチドの安定性を、例えば、アミノ末端またはカルボキシル末端に存在させることができる基(例えば、ポリエチレングリコールなど)を使用して高めることができる。
ポリペプチドの精製を、精製を容易にするために所与の基をカルボキシル末端またはアミノ末端に付加することによって高めることができる。精製を容易にするために使用することができる基の例には、親和性タグを提供するポリペプチドが含まれる。親和性タグの例には、6個のヒスチジンのタグ、trpE、グルタチオンおよびマルトース結合タンパク質が含まれる。
免疫応答を誘導するポリペプチドの能力を、免疫応答を一般に高める基を使用して高めることができる。ポリペプチドに対する免疫応答を高めるためにポリペプチドに結合することができる基の例には、サイトカイン(例えば、IL−2など)が含まれる(Buchan他、2000、Molecular Immunology、37:545−552)。
ポリペプチドの製造
ポリペプチドは、化学合成を伴う技術、および、ポリペプチドを産生する細胞からの精製を伴う技術をはじめとする標準的な技術を使用して製造することができる。ポリペプチドを化学合成するための様々な技術がこの分野では広く知られている(例えば、Vincent、Peptide and Protein Drug Delivery(New York、N.Y.、Decker、1990)を参照のこと)。組換えポリペプチドの製造および精製のための様々な技術もまたこの分野では広く知られている(例えば、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley、1987−2002を参照のこと)。
ポリペプチドを細胞から得ることは、ポリペプチドを産生させるための組換え核酸技術を使用して容易になる。ポリペプチドを産生させるための組換え核酸技術は、ポリペプチドをコードする組換え遺伝子を細胞に導入すること、または、ポリペプチドをコードする組換え遺伝子を作製すること、および、ポリペプチドを発現させることを伴う。
組換え遺伝子は、ポリペプチドをコードする核酸を、ポリペプチド発現のための調節エレメントと一緒に含有する。組換え遺伝子は細胞のゲノムに存在させることができるか、または、発現ベクターの一部であることが可能である。
組換え遺伝子の一部として存在させることができる調節エレメントには、ポリペプチドをコードする配列と天然において会合する調節エレメント、および、ポリペプチドをコードする配列と天然では会合しない外因性の調節エレメントが含まれる。外因性の調節エレメント(例えば、外因性のプロモーターなど)が、組換え遺伝子を特定の宿主において発現させるために、または、発現レベルを増大させるために有用であり得る。一般に、組換え遺伝子において存在する調節エレメントには、転写プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、および、必要な場合には存在するオペレーターが含まれる。真核生物細胞におけるプロセシングのための好ましいエレメントの1つがポリアデニル化シグナルである。
細胞における組換え遺伝子の発現は発現ベクターの使用によって容易になる。好ましくは、発現ベクターはまた、組換え遺伝子に加えて、宿主細胞における自律的複製のための複製起点、選択マーカー、限られた数の有用な制限酵素部位、および、高コピー数のための潜在的能力を含有する。発現ベクターの例には、クローニングベクター、改変されたクローニングベクター、特別に設計されたプラスミドおよびウイルスが含まれる。
遺伝暗号の縮重性のために、非常に多数の異なるコード核酸配列を、特定のポリペプチドをコードするために使用することができる。遺伝暗号の縮重性は、ほとんどすべてのアミノ酸が、異なる組合せのヌクレオチドトリプレット、すなわち、「コドン」によってコードされるために生じる。アミノ酸は下記のようなコドンによってコードされる:
A=Ala=アラニン:コドンGCA、GCC、GCG、GCU
C=Cys=システイン:コドンUGC、UGU
D=Asp=アスパラギン酸:コドンGAC、GAU
E=Glu=グルタミン酸:コドンGAA、GAG
F=Phe=フェニルアラニン:コドンUUC、UUU
G=Gly=グリシン:コドンGGA、GGC、GGG、GGU
H=His=ヒスチジン:コドンCAC、CAU
I=Ile=イソロイシン:コドンAUA、AUC、AUU
K=Lys=リシン:コドンAAA、AAG
L=Leu=ロイシン:コドンUUA、UUG、CUA、CUC、CUG、CUU
M=Met=メチオニン:コドンAUG
N=Asn=アスパラジン:コドンAAC、AAU
P=Pro=プロリン:コドンCCA、CCC、CCG、CCU
Q=Gln=グルタミン:コドンCAA、CAG
R=Arg=アルギニン:コドンAGA、AGG、CGA、CGC、CGG、CGU
S=Ser=セリン:コドンAGC、AGU、UCA、UCC、UCG、UCU
T=Thr=トレオニン:コドンACA、ACC、ACG、ACU
V=Val=バリン:コドンGUA、GUC、GUG、GUU
W=Trp=トリプトファン:コドンUGG
Y=Tyr=チロシン:コドンUAC、UAU。
配列番号1近縁ポリペプチドの組換え核酸発現のための好適な細胞は原核生物および真核生物である。原核生物細胞の例には、大腸菌、ブドウ球菌属のメンバー(例えば、S.aureusなど)、ラクトバチルス(Lactobacillus)属のメンバー(例えば、L.plantarumなど)、ラクトコッカス(Loctococcus)属のメンバー(例えば、L.lactisなど)、および、バチルス(Bacilus)属のメンバー(例えば、B.subtilisなど)が含まれる。真核生物細胞の例には、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属のメンバー(例えば、S.cerevisiae)、ピキア(Pichia)属のメンバー(例えば、P.pastoris)、ハンセヌラ(Hansenula)属のメンバー(例えば、H.polymorpha)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属のメンバー(例えば、K.lactisまたはK.fragilis)、および、シゾサッカロミセス(Shizosaccharomyces)属のメンバー(例えば、S.pombe)など)が含まれる。
組換え遺伝子の作製、細胞内への導入および組換え遺伝子発現のための様々な技術がこの分野では広く知られている。このような技術の様々な例が、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley、1987−2002)、および、Sambrook他、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)などの参考文献に提供される。
所望される場合、特定の宿主における発現をコドン最適化によって高めることができる。コドン最適化では、より好ましいコドンの使用が含まれる。種々の宿主におけるコドン最適化のための様々な技術がこの分野では広く知られている。
配列番号1近縁ポリペプチドは翻訳後修飾(例えば、N結合型グリコシル化、O結合型グリコシル化またはアセチル化)を含有することができる。ポリペプチドの「ポリペプチド」配列または「アミノ酸」配列に対する言及は、宿主細胞(例えば、酵母宿主など)に由来する翻訳後修飾の構造を有する1つ以上のアミノ酸を含有するポリペプチドを包含する。
翻訳後修飾を化学的に、または、好適な宿主を使用することによって生じさせることができる。例えば、S.cerevisiaeでは、末端から2番目のアミノ酸の性質により、N末端のメチオニンが除去されるかどうかが決定されるようである。さらに、末端から2番目のアミノ酸の性質によりまた、N末端のアミノ酸がNα−アセチル化されるかが決定される(Huang他、Biochemistry、26:8242−8246、1987)。別の例には、タンパク質がN結合型グリコシル化またはO結合型グリコシル化によって修飾される場合、分泌リーダーの存在による分泌のために標的化されるポリペプチド(例えば、シグナルペプチド)が含まれる(Kukuruzinska他、Ann.Rev.Biochem.、56:915−944、1987)。
アジュバント
アジュバントは、免疫応答を生じさせる際に免疫原を助けることができる物質である。アジュバントは、種々の機構によって、例えば、下記の1つ以上によって機能することができる:抗原の生物学的または免疫学的な半減期を増大すること;抗原提示細胞への抗原送達を改善すること;抗原提示細胞による抗原のプロセシングおよび提示を改善すること;および、免疫調節性サイトカインの産生を誘導すること(Vogel、Clinical Infectious Diseases、30(増刊3):S266−270、2000)。
様々な異なるタイプのアジュバントを、免疫応答の生成を助けるために用いることができる。具体的なアジュバントの例には、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムまたはアルミニウムの他の塩、リン酸カルシウム、DNA CpGモチーフ、モノホスホリル脂質A、コレラ毒素、大腸菌の熱不安定毒素、百日咳毒素、ムラミルジペプチド、フロイント不完全アジュバント、MF59、SAF、免疫刺激複合体、リポソーム、生分解性ミクロスフェア、サポニン、非イオン性ブロック共重合体、ムラミルペプチドアナログ、ポリホスファゼン、合成ポリヌクレオチド、IFN−γ、IL−2およびIL−12が含まれる(Vogel、Clinical Infectious Diseases、30(増刊3):S266−270、2000;Klein他、Journal of Pharmaceutical Sciences、89:311−321、2000)。
感染防御免疫を誘導するための患者
「患者」は、S.aureusが感染することができる哺乳動物を示す。患者は予防的または治療的に処置することができる。予防的処置は、S.aureus感染の可能性またはS.aureus感染の重篤度を低下させるために、十分な感染防御免疫をもたらす。治療的処置を、S.aureus感染の重篤度を軽減するために行うことができる。
予防的処置を、本明細書中に記載される免疫原を含有するワクチンを使用して行うことができる。このような処置は、好ましくは、ヒトに対して行われる。ワクチンを、S.aureus感染の危険性が増大している一般集団またはこのような人々に投与することができる。
S.aureus感染の危険性が増大している人々には、医療従事者、入院患者、免疫系が低下した患者、手術を受けている患者、異物の身体インプラント(例えば、カテーテルまたは血管デバイスなど)を受け入れている患者、低下した免疫を生じさせる治療法に直面している患者、および、火傷または創傷による傷害の増大した危険性を有する職業従事者が含まれる(The Staphylococci in Human Disease、CrossleyおよびArvher(編)、Churchill Livingstone Inc.、1997)。
S.aureusが感染し得る非ヒト患者には、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ウマ、イヌ、ネコおよびマウスが含まれる。非ヒト患者の処置は、ペットおよび家畜を感染防御することにおいて、また、特定の処置の効力を評価することにおいて有用である。
混合ワクチン
配列番号1近縁ポリペプチドは、免疫応答を誘導するために、単独で、または、他の免疫原との組合せで使用することができる。存在させることができるさらなる免疫原には、下記が含まれる:1つ以上のさらなるS.aureus免疫原、例えば、本発明の背景(上掲)において示された免疫原;1つ以上の他のブドウ球菌属生物(例えば、S.epidermidis、S.haemolyticus、S.warneriまたはS.lungunensisなど)を標的化する1つ以上の免疫原;および、他の感染性生物を標的化する1つ以上の免疫原。
動物モデルシステム
動物モデルシステムが、ブドウ球菌属に対する感染防御免疫応答を生じさせる免疫原の効力を評価するために使用された。感染防御動物モデルを設定する際に遭遇した2つの障害が、(1)先天性免疫を乗り越えるために必要とされる非常に大きな抗原投与用量、および(2)早すぎて、感染防御応答を検出することができない死亡率であった。具体的には、細菌抗原投与後、マウスは24時間以内に感染により死亡した。このことは、感染を解消するための特異的な免疫応答のための十分な時間を与えなかった。用量を低下させた場合、コントロールマウスおよび免疫化マウスはともに感染に耐えて生存した。
これらの障害は、定常期の細胞から調製され、適切に力価測定され、静脈内投与されたブドウ球菌を伴う遅い速度論の致死性モデルを使用することによって検討された。この遅い死亡速度論は、細菌感染を克服するための特異的な免疫防御のための十分な時間を与えている(例えば、24時間でなく、10日間)。
定常期のブドウ球菌細胞を、固体培地で成長させた細胞から得ることができる。定常期のブドウ球菌細胞はまた、液体から得ることができる。しかしながら、固体培地で成長させた細胞を用いた結果の方が再現性が良かった。細胞は、好都合には、固体培地で一晩成長させることができる。例えば、S.aureusを、倍加時間が約20分から30分である条件のもとで約18時間から約24時間まで成長させることができる。
ブドウ球菌を、ブドウ球菌の能力を維持するための標準的な技術を使用して固体培地または液体培地から単離することができる。単離されたブドウ球菌は、例えば、グリセロールを含有するリン酸塩緩衝化生理的食塩水における洗浄された高密度懸濁物(>10コロニー形成ユニット(CFU)/mL)として−70℃で保存することができる。
ブドウ球菌の抗原投与は、1日目または2日目から開始して約7日から10日の期間にわたって動物モデルにおいて約80%から90%の死亡をもたらす効力を有しなければならない。力価測定実験を、保存されたブドウ球菌接種物の効力をモニターするために、動物モデルを使用して行うことができる。力価測定実験を接種実験の約1週間前から2週間前に行うことができる。
力価測定実験のための最初の効力は以前の実験に基づくことができる。S.aureusおよび動物モデル系統Beckerについては、好適な効力が一般には、5x10CFU/mlから8x10CFU/mlの範囲に見出された。
投与
免疫原は、この分野で広く知られている技術と一緒に、本明細書中に提供される指針を使用して配合することができ、および、患者に投与することができる。医薬品投与のための様々な指針が、一般には、例えば、Vaccines(編:PlotkinおよびOrenstein、W.B.Sanders Company、1999)、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第20版、編:Gennaro、Mack Publishing、2000)、および、Modern Pharmaceutics(第2版、編:BankerおよびRhodes、Marcel Dekker,Inc.、1990)に提供される(これらはそれぞれが参照により本明細書中に組み込まれる)。
医薬的に許容されるキャリアは免疫原の保存および患者への投与を容易にする。医薬的に許容されるキャリアは種々の成分(例えば、緩衝剤、無菌の注射用水、規定生理的食塩水またはリン酸塩緩衝化生理的食塩水、スクロース、ヒスチジン、塩およびポリソルベートなど)を含有することができる。
免疫原は、種々の経路によって、例えば、皮下経路、筋肉内経路または粘膜経路などによって投与することができる。皮下投与および筋肉内投与を、例えば、ニードルまたはジェット式注射器を使用して行うことができる。
好適な投薬法が、好ましくは、患者の年齢、体重、性別および医学的状態;投与経路、所望される効果;ならびに、用いられる具体的な化合物をはじめとする、この分野で広く知られている要因を考慮に入れて決定される。免疫原は多回用量ワクチン形式で使用することができる。1回の用量は1.0μgから1.0mgの総ポリペプチドの範囲からなることが予想され、本発明の種々の実施形態では、この範囲は0.01mgから1.0mgおよび0.1mgから1.0mgである。
投薬時期は、この分野で広く知られている様々な要因に依存する。最初の投与の後、1回以上の追加免疫投薬を、抗体力価を維持または増強するためにこの後に施すことができる。投薬法の一例が、1日目、1ヶ月、4ヶ月または6ヶ月または12ヶ月のいずれかでの3回目の投薬、および、必要とされる場合にはさらに経過した時間でのさらなる追加免疫投薬である。
抗体の生成
配列番号1近縁ポリペプチドは、このポリペプチドまたはS.aureusに結合する抗体および抗体フラグメントを生じさせるために使用することができる。このような抗体および抗体フラグメントは、ポリペプチドの精製、S.aureusの同定、または、S.aureus感染に対する治療的処置または予防的処置における使用を含む種々の使用法を有する。
抗体はポリクローナルまたはモノクローナルが可能である。抗体を作製および使用するための様々な技術がこの分野で広く知られている。このような技術の様々な例が、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley、1987−2002)、Harlow他、Antibodies,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、1988)、および、Kohler他、Nature、256:495−497、1975に記載される。
本発明の種々の特徴をさらに例示する実施例が下記に提供される。これらの実施例はまた、本発明を実施するための有用な方法論を例示する。これらの実施例は、特許請求されている発明を限定しない。
実施例1:感染防御免疫
本実施例は、配列番号1近縁ポリペプチドが感染防御免疫を動物モデルにおいてもたらすことができることを例示する。配列番号2(配列番号1のHisタグ誘導体)を、感染防御免疫をもたらすために使用した。
配列番号2のクローニングおよび発現
タンパク質を、ベクターによりコードされる末端のHis残基を伴ってpET30ベクターから発現させるために設計した。加えて、アラニン残基をメチオニン開始因子の後においてタンパク質に付加した。設計されたDNA配列は成熟型ORF0826の211アミノ酸の変化型をコードする。
ORF0826のDNA配列(配列番号9)を、Vector NTIソフトウエアを使用して翻訳し、得られた167アミノ酸の配列(配列番号4)を分析した。PCRプライマーを、最初のリシン残基から始まり、停止コドンの前で、末端のイソロイシン残基で終わる遺伝子を増幅するために設計した。順方向PCRプライマーは、発現ベクターへのクローニングを容易にするためのさらなるNcoI制限部位を有した。順方向PCRプライマーはまた、読み枠を一致させたタンパク質の発現を確実にするためにアラニンのコドンが続くメチオニンのコドンを含んでいた。逆方向PCRプライマーは、発現ベクターへのクローニングを容易にするためのXhoI制限部位と、停止コドンとを含んでいた。
PCR増幅された配列をNcoIおよびXhoIにより消化し、次いで、PCRプライマーに組み込まれていたNcoI/XhoI部位を使用してpET30ベクター(Novagen)に連結し、熱ショックによって大腸菌DH5α(Invitrogen)に導入した。コロニーを選択し、30μg/mLのカナマイシンを含むLBにおいて成長させ、DNAミニ調製物を作製し(Promega)、挿入物の完全性を制限消化およびPCRによって決定した。所望の配列からのDNA変化を含有しないクローンを選択した。
大腸菌HMS174(DE3)細胞(Novagen)を形質転換し、カナマイシン(30ug/ml)を含有するLB平板において成長させた。液体LB(カナマイシン)培養物を、LB(カナマイシン)平板からの単一コロニーを接種することによって準備し、A600が0.6から1.0の間になるまで37℃、250rpmでインキュベーションし、次いで、IPTGを1mMの最終濃度に加え、続いて、さらに3時間インキュベーションすることによって誘導した。培養物を4℃で5分間の5000xgでの遠心分離によって集めた。細胞を500μlの溶解緩衝液(Bugbuster、プロテアーゼ阻害剤を含む、Novagen)に再懸濁した。等体積の負荷緩衝液(β−メルカプトエタノールが5%の最終体積に補充されたもの)を加え、サンプルを70℃で5分間加熱した。抽出物をNovex4−20%トリス−グリシンゲルで泳動し、タンパク質についてアッセイし(クーマシーブルー染色し)、ニトロセルロースにブロットし、抗HIS6抗体(Zymed)を用いてプローブした。
配列番号2の精製
凍結された組換え大腸菌細胞のペースト(17.3グラム)を解凍し、100mlの溶解緩衝液(50mMのTris−HCl(pH8.0、20℃)+2mMの塩化マグネシウム、10mMのイミダゾール、0.1%のTween−80、0.15MのNaCl、100uLのBenzonase(25,000ユニット)、1mlのプロテアーゼ阻害剤(Sigma、#P−8849)および100mgのリゾチーム)に再懸濁した。溶解物を、ミクロフリュイダイザーを約14,000psi(約96MPa)で用いて調製した。溶解物を4℃で20分間の11,000xgでの遠心分離によって清澄化した。ペレットをTBS(0.15MのNaCl/20mMのTris−HCl、pH8.0)により2回洗浄し、8M尿素/TBSに再懸濁して、タンパク質をペレットから可溶化した。尿素可溶性タンパク質の溶液をNi−NTAアガロースクロマトグラフィー樹脂(Qiagen、#30250)と混合し、室温で1時間撹拌した。
尿素可溶性タンパク質の溶液におけるクロマトグラフィー樹脂のスラリーをクロマトグラフィーカラムに注ぎ、非結合画分を重力によってカラム出口から集めた。樹脂をTBSにより洗浄し、カラムを溶出緩衝液(0.3Mのイミダゾール、0.15MのNaCl、20mMのTris−HCl(pH7.5)+0.1%のTween−80)により溶出した。タンパク質生成物を含有する画分をクーマシー染色によるSDS/PAGEによって特定し、プールした。Ni−NTAアガロースカラムからのプール画分をZeta Plus(登録商標)BioCap(商標)フィルター(CUNO、#BC0030A90SP)によりろ過した。ろ液を10,000のMWCOのSlide−A−Lyzer(商標)透析カセット(Pierce)において透析緩衝液(20mMのTris−HCl(pH7.5)、0.15MのNaCl、0.1%のTween−80)に対して透析した。透析された生成物をろ過滅菌した。ろ過滅菌した生成物をヒドロキシリン酸アルミニウムアジュバントに0.2mg/mlの最終濃度で吸着させた。ろ過滅菌した生成物の残りを−70℃での長期間の保存のために液体窒素で素早く凍結した。
S.sureus抗原投与物の調製
S.sureusをTSA平板において37℃で一晩成長させた。細菌を、5mlのPBSを平板に加え、細菌を滅菌スプレッダーにより穏やかに再懸濁することによってTSA平板から洗い出した。細菌懸濁物を、Sorvall RC−5B遠心分離機(DuPont Instruments)を使用して6000rpmで20分間遠心分離した。ペレットを16%グリセロールに再懸濁し、小分け物を−70℃で凍結保存した。
使用前に、接種物を解凍し、適切に希釈し、感染のために使用した。各ストック物を少なくとも3回力価測定して、実験未使用マウスにおいて遅い死亡速度論を誘導する適切な用量を決定した。細菌接種物の効力(80%から90%の致死性)を絶えずモニターして、モデルの再現性を保証した。それぞれの抗原投与実験の10日前に、10匹のコントロール動物の一群(これはアジュバント単独により免疫化された)に抗原投与し、動物をモニターした。
配列番号2ポリペプチドについての感染防御研究
3つの異なる感染防御研究を、(1)25匹のBALB/cマウス、(2)20匹のBALB/cマウス、および(3)20匹のBALB/cマウスを使用して行った。マウスをヒドロキシリン酸アルミニウムアジュバント(450μg/投薬)での配列番号2ポリペプチド(20μg/投薬)の3回の投薬により免疫化した。ヒドロキシリン酸アルミニウムアジュバント(AHP)はKlein他、Journal of Pharmaceutical Sciences、89、311−321、2000に記載される。投薬を、0日目、7日目および21日目に2回の50μlの注射として筋肉内に施した。マウスを28日目に採血し、この血清を、配列番号2を認識する抗体に対する反応性についてELISAによってスクリーニングした。
実験の35日目に、マウスにS.aureus(10CFU/ml)による抗原投与を行い、AHPにより単に免疫化されていた同じ数のマウスからなるコントロール群に対する評価を行った。マウスを生存についてモニターした。
結果が、図5A、図5Bおよび図5Cに示される。第1の実験(図5A)では、25匹中3匹がAHPコントロール群において生存したことと比較して、25匹中9匹の免疫化マウスが生存した。第2の実験(図5B)では、20匹の免疫化マウスおよび20匹のコントロールマウスを使用したが、コントロールと比較して、増大した感染防御が観測されなかった。第3の実験(図5C)では、AHPコントロール群における30匹中6匹と比較して、20匹中8匹の免疫化マウスが生存した。
第2の実験は、コントロールのAHP群において生存するマウスの数が多いこと(13匹のマウス)のためにヌル実験と見なされた。ヌル実験が、抗原投与のために使用された細菌の量および性状に依存するこのモデルを管理することにおける困難さのために時々認められる。
他の実施形態が下記の請求項に含まれる。いくつかの実施形態が示され、また、記載されているが、様々な改変を、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。
配列番号1および配列番号2のアミノ酸配列を例示する。全配列は配列番号2である。太字で示される部分は配列番号1である。下線領域は、配列番号1に付加されたHisタグ領域である。 配列番号1(SEQ1)配列番号3(SEQ3)、配列番号4(SEQ4)、配列番号5(SEQ5)、配列番号6(SEQ6)、および配列番号7(SEQ7)の間での配列比較を例示する。アミノ酸の違いが太字で示される。 配列番号2をコードする核酸配列(配列番号8)を例示する。配列番号1をコードする領域が太字で示される。Hisタグ領域およびGCCのアラニンコドンには下線が引かれている。 ORF0826をコードする核酸配列(配列番号9)を例示する。 配列番号2のポリペプチドをヒドロキシリン酸アルミニウムアジュバント(AHP)において使用する実験からの結果を例示する。ポリペプチドは「SEQ2」として示される。 配列番号2のポリペプチドをヒドロキシリン酸アルミニウムアジュバント(AHP)において使用する実験からの結果を例示する。ポリペプチドは「SEQ2」として示される。 配列番号2のポリペプチドをヒドロキシリン酸アルミニウムアジュバント(AHP)において使用する実験からの結果を例示する。ポリペプチドは「SEQ2」として示される。

Claims (15)

  1. S.aureusに対する感染防御免疫を提供する、配列番号1に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド免疫原であって、前記ポリペプチドが、配列番号3、配列番号4または配列番号5ではない、ポリペプチド免疫原。
  2. 前記アミノ酸配列が、配列番号1に対して少なくとも95%同一である、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 前記アミノ酸配列が本質的には配列番号1のアミノ酸3から167からなる、請求項2に記載のポリペプチド。
  4. 配列番号1のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸2から167、または、配列番号1のアミノ酸3から167からなる、請求項1に記載のポリペプチド。
  5. 配列番号1に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列と、前記アミノ酸配列にカルボキシル末端またはアミノ末端において共有結合的に結合した1つ以上のさらなる領域または成分とを含み、それぞれの領域または成分が独立して、下記の性質:
    免疫応答を強化すること、精製を容易にすること、または、ポリペプチドの安定性を促進すること
    の少なくとも1つを有する領域または成分から選択される免疫原。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載される免疫の免疫学的効果的な量と、医薬的に許容されるキャリアとを含む、患者における感染防御免疫応答を誘導することができる組成物。
  7. アジュバントをさらに含む、請求項6に記載の組成物。
  8. 請求項1から4のいずれか一項に記載されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え遺伝子を含む核酸。
  9. 発現ベクターである、請求項8に記載の核酸。
  10. 請求項1から4のいずれか一項に記載されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え遺伝子を含む組換え細胞。
  11. 感染防御免疫を提供するS.aureusポリペプチドを作製する方法であって、
    (a)請求項10に記載される組換え細胞を、前記ポリペプチドが発現する条件のもとで成長させる工程;および
    (b)前記ポリペプチドを精製する工程
    を含む、前記方法。
  12. 患者における感染防御免疫応答を誘導する方法であって、請求項1から5のいずれか一項に記載される免疫原の免疫学的効果的な量を前記患者に投与する工程を含む、前記方法。
  13. 前記患者がヒトである、請求項12に記載の方法。
  14. 前記患者がS.auresuの感染に対して予防的に処置される、請求項13に記載の方法。
  15. 患者における感染防御免疫応答を誘導する方法であって、請求項11に記載される方法によって作製されたポリペプチドの免疫学的効果的な量を前記患者に投与する工程を含む、前記方法。
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