JP2008309620A - 光波レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ASEを削減して送信パワーを増強し、風速計測距離を長くする光波レーダ装置を得る。
【解決手段】信号光と局部発振光に分波する光分波器2と、パルス変調信号発生器3により発生された駆動信号でレーザ光をパルス化するAOM5aと、AOM5aの出力を増幅する第1の光ファイバ増幅器(半導体レーザ6a、6b、希土類添加光ファイバ8a)と、AOM5aと同期させ、遅延された駆動信号で第1の光ファイバ増幅器の出力を再パルス化するAOM5bと、AOM5bの出力を増幅する第2の光ファイバ増幅器(半導体レーザ6c、6d、希土類添加光ファイバ8b)と、送信光を空間にレーザパルス光として出射し、散乱光を受信する望遠鏡10と、局部発振光と散乱光とミキシングしてビート信号へ変換する光ミキサ11と、前記ビート信号を電気信号へ変換する受光器12と、前記電気信号を高速フーリエ変換して風速を求める信号処理装置13とを設けた。
【選択図】図1

Description

この発明は、レーザ光を空間に照射して空間内のエアロゾル移動に伴う散乱光のドップラーシフトによる風速を測定する光波レーダ装置に関するものである。
単一周波数のレーザ光を光送受信部から大気中に照射してエアロゾル散乱光を受信し、光ヘテロダイン受信部で散乱光のドップラーシフトを検出することによって、風速の測定を行うコヒーレントドップラーライダ技術は、気象観測、気象予測、航空の交通安全のための乱気流検出等への応用が期待できる。レーザ光送受信部に光ファイバを用い、構成部品として光ファイバ型光学部品を用いて、装置全体の構成を光ファイバ型とした光波レーダ装置は、小型化や安定性、信頼性の向上に適している(例えば、特許文献1〜3参照)。一方、小型、可搬型な光波レーダ装置において、計測距離の長距離化が求められている。
光ファイバ部品により光回路を構成した光波レーダ装置において、計測距離を長距離化するためには送信光パワーの増強が必要であり、そのためには送信光の増幅を行う光ファイバ増幅器の高出力化が求められる。
しかし、非特許文献1にも示されているように、狭線幅でμsオーダーのパルス幅を持つレーザパルス光を光ファイバ増幅器により増幅する場合、誘導ブリュアン散乱(SBS:Stimulated Brillouin Scattering)の発生により出力パワーが10W程度で制限されている。
特開2003−307567号公報 国際公開第2004/106971号パンフレット 特開2003−240853号公報 Gabor Kulcsar, Yves Jaouen, Guillaume Canat, Elena Olmedo and Guy Debarge "Multiple-Stokes Stimulated Brillouin Scattering Generation in Pulsed High-Power Double-Cladding Er3+-Yb3+ Codoped Fiber Amplifier", IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL.15, NO.6, JUNE 2003
従来の全光ファイバ型の光波レーダ装置でも、SBSによる出力パワーの制限が計測距離を拡大できない原因となっていた。
一方で、SBSが発生するしきい値は、光ファイバの有効コア面積に比例し、有効光路長に反比例して大きくなるため、SBSしきい値の引き上げにはファイバコア径の拡大とファイバ長の短縮が有効であることが良く知られている。しかしながら、光ファイバ増幅器においては、所定の増幅利得を得るためには希土類添加光ファイバの長さが所望する利得の大きさに応じてある一定値以上必要となり、ファイバ長が短いと十分な利得が得られないという問題点があった。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、光ファイバ増幅器を多段化した際、前段の光ファイバ増幅器での自然放出光(ASE)を効果的に削減して後段の光ファイバ増幅器で信号光を効率的に増幅し、また後段の光ファイバ増幅器ほどSBSしきい値を引き上げていくことによってSBSを抑圧して送信レーザ光パワーを増強することにより、風速計測距離の長距離化を図ることができる全光ファイバ型の光波レーダ装置を得るものである。
この発明に係る光波レーダ装置は、単一周波数のレーザ光を発生する基準光源と、前記レーザ光を信号光と局部発振光に分波する光分波器と、駆動信号を発生するパルス変調信号発生器と、前記駆動信号を所定時間遅延する遅延手段と、前記パルス変調信号発生器により発生された駆動信号で前記光分波器からの信号光である連続発振レーザ光をパルス化する第1の音響光学変調器と、前記第1の音響光学変調器の出力を増幅する第1の光ファイバ増幅器と、前記第1の音響光学変調器と同期させた、前記遅延手段により遅延された駆動信号で前記第1の光ファイバ増幅器の出力を再パルス化する第2の音響光学変調器と、前記第2の音響光学変調器の出力を増幅する第2の光ファイバ増幅器と、送信光と受信光の光路を切り替える光サーキュレータと、前記第2の光ファイバ増幅器から前記光サーキュレータを経た送信光を空間に送信レーザパルス光として出射し、出射した送信光が空間中のエアロゾルにより散乱された散乱光を受信する望遠鏡と、前記光分波器により分波された局部発振光と前記望遠鏡から前記光サーキュレータを経た散乱光とミキシングしてビート信号へ変換する光ミキサと、前記ビート信号を電気信号へ変換する受光器と、前記電気信号を高速フーリエ変換して周波数の解析を行い、ドップラーシフト成分を検出して風速を求める信号処理装置とを設け、前記パルス変調信号発生器及び第1の音響光学変調器間、前記パルス変調信号発生器及び遅延手段間、前記遅延手段及び第2の音響光学変調器間、並びに前記受光器及び信号処理装置間を除くすべての素子間は、シングルモードの光ファイバで接続され、前記第1の光ファイバ増幅器は、シングルモードの励起光を出力する第1の半導体レーザと、前記第1の音響光学変調器の出力である信号光と前記第1の半導体レーザにより出力された励起光を合波する第1の信号光/励起光合波器と、第1の希土類が添加され、前記第1の音響光学変調器の出力を増幅する第1の希土類添加光ファイバとから構成され、前記第2の光ファイバ増幅器は、波長1480nm帯のシングルモードの励起光を出力する第2の半導体レーザと、前記第2の音響光学変調器の出力である信号光と前記第2の半導体レーザにより出力された励起光を合波する第2の信号光/励起光合波器と、前記第1の希土類の添加濃度よりも大きい濃度で第2の希土類が添加され、コア径が前記第1の希土類添加光ファイバよりも大きく、かつファイバ長が前記第1の希土類添加光ファイバよりも短く、前記第2の音響光学変調器の出力を増幅する第2の希土類添加光ファイバとから構成されているものである。
この発明に係る光波レーダ装置は、SBSしきい値を引き上げることができ、送信光パワーを高出力化でき、ひいては風速計測距離の長距離化を図ることができるという効果を奏する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置について図1から図4までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置の構成を示す図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1において、この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置は、単一周波数のレーザ光を発生する基準光源1と、前記レーザ光を信号光と局部発振光に分波する光分波器2と、駆動信号を発生するパルス変調信号発生器3と、前記駆動信号を所定時間遅延する遅延手段4と、前記パルス変調信号発生器3により発生された駆動信号で前記光分波器2からの信号光である連続発振レーザ光をパルス化する音響光学変調器(AOM)(第1の音響光学変調器)5aと、前記音響光学変調器5aの出力を増幅する第1の光ファイバ増幅器と、前記音響光学変調器5aと同期させた、前記遅延手段4により遅延された駆動信号で前記第1の光ファイバ増幅器の出力を再パルス化する音響光学変調器(AOM)(第2の音響光学変調器)5bと、前記音響光学変調器5bの出力を増幅する第2の光ファイバ増幅器と、送信光と受信光の光路を切り替える光サーキュレータ9と、前記第2の光ファイバ増幅器から前記光サーキュレータ9を経た送信光を空間に送信レーザパルス光として出射し、出射した送信光が空間中のエアロゾルにより散乱された散乱光を受信する望遠鏡10と、前記光分波器2により分波された局部発振光と前記望遠鏡10から前記光サーキュレータ9を経た散乱光とミキシングしてビート信号へ変換する光ミキサ11と、前記ビート信号を電気信号へ変換する受光器12と、前記電気信号を高速フーリエ変換して周波数の解析を行い、ドップラーシフト成分を検出して風速を求める信号処理装置13とが設けられている。
前記第1の光ファイバ増幅器は、シングルモードの励起光を出力する半導体レーザ(第1の半導体レーザ)6a、6bと、前記音響光学変調器5aの出力である信号光と前記半導体レーザ6a、6bにより出力された励起光を合波する信号光/励起光合波器(第1の信号光/励起光合波器)7a、7bと、前記音響光学変調器5aの出力を増幅する希土類添加光ファイバ(第1の希土類添加光ファイバ)8aとから構成されている。
また、前記第2の光ファイバ増幅器は、波長1480nm帯のシングルモードの励起光を出力する半導体レーザ(第2の半導体レーザ)6c、6dと、前記音響光学変調器5bの出力である信号光と前記半導体レーザ6c、6dにより出力された励起光を合波する信号光/励起光合波器(第2の信号光/励起光合波器)7c、7dと、コア径が前記希土類添加光ファイバ8aよりも大きく、かつファイバ長が前記希土類添加光ファイバ8aよりも短く、前記音響光学変調器5bの出力を増幅する希土類添加光ファイバ(第2の希土類添加光ファイバ)8bとから構成されている。
なお、パルス変調信号発生器3〜AOM5a、5b間と受光器12〜信号処理装置13間を除くすべての素子間は、シングルモードの光ファイバで接続されている。
基準光源1は、波長1.5μm帯でスペクトル線幅が100kHz以下の連続発振ファイバレーザである。パルス変調信号発生器3は、AOM5a、5bに駆動信号を与える。遅延手段4は、AOM5bに与えるパルス変調信号発生器3からの駆動信号に遅延を与える。半導体レーザ6a、6bは、希土類添加光ファイバ8aを励起し、半導体レーザ6c、6dは、希土類添加光ファイバ8bに励起するための波長1480nm帯のシングルモード出力半導体レーザである。信号光/励起光合波器7a〜7dは、半導体レーザ6a〜6dから出力される励起光を希土類添加光ファイバ8a、8bへ結合させる。希土類添加光ファイバ8aは、1.55μm帯の信号光の増幅を行うためにエルビウム(Er)がコア内に添加されたシングルモードファイバである。希土類添加光ファイバ8bは、Erとイッテルビウム(Yb)がコア内に添加されたシングルモードファイバである。
つぎに、この実施の形態1に係る光波レーダ装置の動作について図面を参照しながら説明する。
図2は、この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置の2段目の光ファイバ増幅器で増幅された出力光の時間波形(取れている場合)と、同期が取れていない従来構成の出力光の時間波形を示す図である。また、図3は、この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置の望遠鏡から出射されるレーザパルス光の時間波形と、従来構成から出射されるレーザパルス光の時間波形を示す図である。さらに、図4は、この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置で風速の測定を行ったとき受信されるSN比と、従来構成で受信されるSN比を示す図である。
まず、基準光源1からの連続発振レーザ光を、光分波器2は、信号光と局部発振光に分岐する。この信号光は、AOM5aによりパルス幅1.5μs、繰り返し周波数1〜16kHzのパルスに切り出され、希土類添加光ファイバ8aへ入射する。
希土類添加光ファイバ8aは、上述したように、Erが添加されたファイバで、半導体レーザ6aおよび6bからの励起光を入力することにより、反転分布を形成して入力されてきたパルス光の増幅を行う。
希土類添加光ファイバ8aは、通常のシングルモードのEDFAであり、ここではSBSが発生しない範囲(約10W)に出力を制限してパルス増幅を行う。なお、1段目の光ファイバ増幅器として、希土類添加光ファイバ8aの入射側と出射側の両側にそれぞれ半導体レーザ6a及び信号光/励起光合波器7aと、半導体レーザ6b及び信号光/励起光合波器7bを設けているが、片側のいずれか一方にだけ半導体レーザ及び信号光/励起光合波器を設けても構わない。
また、半導体レーザ6c、6dには波長として1480nm帯を用いているが、980nm帯を用いてもよい。
このようにして希土類添加光ファイバ8aで増幅した信号パルス光を、遅延手段4によりAOM5aとパルス切り出しの開始時間を同期させたAOM5bでパルスの再切り出しを行い、2段目の光ファイバ増幅器となる希土類添加光ファイバ8bで増幅する。
希土類添加光ファイバ8bは、希土類添加光ファイバ8aで増幅され出力されてきた信号パルス光をさらに高ピークパワー、高エネルギーに増幅する。なお、2段目の光ファイバ増幅器として、希土類添加光ファイバ8bの入射側と出射側の両側にそれぞれ半導体レーザ6c及び信号光/励起光合波器7cと、半導体レーザ6d及び信号光/励起光合波器7dを設けているが、片側のいずれか一方にだけ半導体レーザ及び信号光/励起光合波器を設けても構わない。
希土類添加光ファイバ8bからの出力光を送信レーザパルス光として望遠鏡10から出射し、出射した送信光が大気中のエアロゾルにより散乱された散乱光を望遠鏡10により受信する。
この望遠鏡10は、光波レーダの計測距離を拡大するためには開口の大きいものが望ましいが、コリメータのようなもので置き換えることができる。
受信した散乱光は、光サーキュレータ9で取り出して、光ミキサ11により局部発振光とミキシングし、ビート信号へ変換する。つまり、光ミキサ11は、散乱光を局部発振光と合成した際の差周波数光の強度信号を得る。受光器12は、ビート信号を電気信号へ変換する。そして、信号処理装置13は、電気信号へ変換したビート信号を高速フーリエ変換して周波数の解析を行い、ドップラーシフト成分を検出し風速を求める。つまり、信号処理装置13は、受光器12からの電気信号を周波数変換して視線方向風速や、複数視線方向風速から風向風速を演算する。
上記で用いたAOM5a、5bは、60dB程度の高い消光比でパルスの切り出しを行うことができるので、希土類添加光ファイバ8aでパルスオフ期間発生する自然放出光(ASE)を効果的に削減できる。
希土類添加光ファイバ8aで発生するASEは、励起された希土類添加光ファイバ8bで誘導放出を起こして増幅され、希土類添加光ファイバ8bへのエネルギーの蓄積を阻害する要因となるため、AOM5a、5bを用いて前段の光ファイバ増幅器で発生したASEを削減することにより後段の光ファイバ増幅器に蓄積できるエネルギーが減少するのを防ぐことができる。
さらに、AOM5bをAOM5aと同期させることで、希土類添加光ファイバ8aで増幅された出力光の信号部分だけを切り出すことができ、希土類添加光ファイバ8bにおいて信号光だけを増幅させることができる。
AOM5aとAOM5bを同期させることによる効果の様子として、同期が取れていない場合と、取れている場合の希土類添加光ファイバ8bで増幅された出力光の時間波形の例を、図2(a)及び(b)に示す。なお、同期が取れていない従来構成は、例えば図1で遅延手段4がないような構成である。また、図2の信号波形は、オシロスコープのレンジをマイクロ秒程度と広めに設定している場合で、雑音などによる電圧の変動により縦軸方向で幅があるように見えている。
図2において、S1a及びS1bはAOM5aへの駆動信号、S2a及びS2bはAOM5bへの駆動信号、S3a及びS3bは希土類添加光ファイバ8bで増幅された出力の時間波形、S4はAOM5aの駆動信号の立ち上がりを与えるトリガ波形をそれぞれ示している。また、破線S5で囲まれた部分は、希土類添加光ファイバ8aで発生したASEが希土類添加光ファイバ8bで増幅されている部分、S6はAOM5bに与えた遅延時間をそれぞれ示している。
図2(a)では、AOM5bのパルス切り出しタイミングが信号パルスの立ち上がりよりも早く、信号パルス前方に希土類添加光ファイバ8aで発生したASE成分が残っており、これが希土類添加光ファイバ8bで増幅されることによって2つのピークが現れている。破線S5で囲まれた部分は、ASEが増幅された白色光の成分であり光波レーダ装置の送信光パワーには寄与しない。
一方、図2(b)では、AOM5bに入力される駆動信号S2bに信号パルスの立ち上がりとパルス切り出しのタイミングを一致させるように調整した遅延時間S6を与えており、出力パルスの波形S3bには信号光の1つのピークしか現れておらず、パルスのピーク値が図2(a)よりも高くなっている。
上記のようにAOM5bのパルス切り出しのタイミングを調整することで、希土類添加光ファイバ8bに蓄積したエネルギーがASEの増幅に使われるのを防ぎ、信号光の増幅を効率的に行えるようになる。
上記の希土類添加光ファイバ8bは、ErとYbを共添加したシングルモードファイバで、Er添加濃度を5000wt−ppm以上にまで大きくしている。つまり、Er添加濃度が希土類添加光ファイバ8aよりも大きい。また、シングルモード伝搬が可能な範囲で10μm程度にまでコア径を大きくしている。つまり、コア径が希土類添加光ファイバ8aよりも大きい。さらに、半導体レーザ6cおよび6dからの励起光を希土類添加光ファイバ8bのコアへ投入している。
コアへ励起光を投入することで励起パワー密度を大きくでき、希土類添加光ファイバ8bのファイバ長は数m程度で利得を得ることができる。実験では、3.5m程度としており、ファイバ長を短尺にしてコア径を大きくしたことにより、SBSしきい値を引き上げることができている。つまり、ファイバ長が希土類添加光ファイバ8aよりも短い。
励起用半導体レーザ6cおよび6dには、波長1.48μm帯のものを用いている。これは、EDFの一般的な励起波長としてよく知られている980nm帯と1.48μm帯での吸収量を実測した結果、1.48μm帯の吸収の方が大きかったからである。
吸収が大きい励起波長帯を選択することで、励起光を吸収させるために必要な希土類添加光ファイバ8bの長さを短くできる。
以上により、希土類添加光ファイバ8bでの増幅後の出力として100W程度のパルス出力をSBSが発生することなく得ることができる。
希土類添加光ファイバ8bのファイバ長は、蓄積できる最大エネルギーを決めるファイバ中のErイオン数と、希土類添加光ファイバ8bにおいてASEが発生するために消費されるエネルギー、SBSしきい値を考慮して決定している。
図3は、望遠鏡10から出射されるレーザパルス光の時間波形を示しており、グラフの横軸は時間(time[μs])、縦軸は出力光のパワー(Output Power[W])を示している。図3において、L1は従来構成から出射される出力パルス波形、L2は本実施の形態1に係る光波レーダ装置から出射される出力パルス波形である。なお、ここで説明する従来構成は、例えば光ファイバ増幅器が1段のものである。
従来構成では出力パルス波形L1のSBSしきい値が低く、SBSを発生させないように送信光パワーが10W程度となっていたものを、本実施の形態1では出力パルス波形L2のSBSしきい値を引き上げることができ、100W程度にまで高出力化した送信光を得ることができている。
図3に示した送信光で風速の測定を行ったときの受信されるSN比を図4に示す。図4において、グラフの横軸は距離(Distance[Km])、縦軸は検出される信号の信号対雑音(SN)比(Detectability[dB])を表す。R1は従来構成の送信光による受信信号のSN比、R2は本実施の形態1に係る光波レーダ装置の送信光による受信信号のSN比、R3は風速の検出に必要なSN比を示しており、SN比R3を上回る部分で風速の検出を行うことができる。なお、ここで説明する従来構成は、例えば光ファイバ増幅器が1段のものである。
図4を参照すると、従来構成の場合、測定可能な距離は1.5km程度であるが、本実施の形態1の場合、測定可能な距離は8km以上となっている。以上のように光ファイバ増幅器の高出力化による送信レーザパルス光の増強により、光波レーダ装置の測定距離が拡大できる。
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る光波レーダ装置について図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、この発明の実施の形態2に係る光波レーダ装置の構成を示す図である。また、図6は、この発明の実施の形態2に係る光波レーダ装置の別の構成を示す図である。
上記の実施の形態1では、2つ目のAOM5bによりパルスの時間ゲート切り出しを行い、前段の光ファイバ増幅器で発生したASEを後段の光ファイバ増幅器へ入射させないようにしたものであるが、ASEの削減は光バンドパスフィルタを用いることもできる。この実施の形態2では、光バンドパスフィルタを用いたものである。
図5において、この発明の実施の形態2に係る光波レーダ装置は、実施の形態1のAOM5bを光バンドパスフィルタ(BPF)14で置き換えた構成となっており、その他の構成は実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
光バンドパスフィルタ14によるASEの削減量が大きいほど後段の光ファイバ増幅器でASEに取り出されるエネルギーを減少でき、出力パルスとして得られるエネルギーが大きくなので、光バンドパスフィルタ14は信号波長を中心にできるだけ狭帯域で、かつ消光比の高いものとする。
また、上記の実施の形態1に記述したように、AOMは高い消光比でパルスの切り出しを行うことができるので、図6に示すように、AOM5bと光バンドパスフィルタ14を組み合わせて連続して配置することにより、前段の光ファイバ増幅器で発生したASEを上記の構成以上に削減でき、後段の光ファイバ増幅器に投入したエネルギーを信号パルスの増幅に効果的に使うことができる。
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る光波レーダ装置について図7を参照しながら説明する。図7は、この発明の実施の形態3に係る光波レーダ装置の構成を示す図である。
上記の実施の形態2では、光ファイバ増幅器を多段化した場合において、後段の光ファイバ増幅器に投入した励起エネルギーを効率よく信号光の増幅に使わせるようにするために、後段の光ファイバ増幅器へ入力されていく前段の光ファイバ増幅器で発生したASEを削減するための方法について説明しているが、この実施の形態3では、高ピークパワーの出力光を得るために必要となるSBSを抑圧するための方法を説明する。
図7において、この発明の実施の形態3に係る光波レーダ装置は、1段目の光ファイバ増幅器21と、2段目の光ファイバ増幅器22と、3段目の光ファイバ増幅器23と、・・・、N段目の光ファイバ増幅器24と、望遠鏡10とが設けられている。
上記の実施の形態1及び2では、希土類添加光ファイバ8bとして、ErとYbを共添加したシングルモードファイバでEr添加濃度が5000wt−ppm以上と大きく、シングルモード伝搬が可能な範囲で10μm程度にまでコア径を大きくしたものを用いてSBSしきい値の引き上げを行っているが、希土類添加光ファイバ8bにはEr濃度が高くコア径を大きくしたEr添加光ファイバとして、濃度消光なくEr添加濃度を高くした例えばビスマス系ガラスファイバなどを用いることもできる。
このビスマス系ガラスの希土類添加光ファイバと石英系の希土類添加光ファイバを組み合わせて使用する際には、ガラス組成の異なるファイバではSBSの利得帯域が異なるというよく知られている性質によるSBSしきい値の引き上げ効果も期待できる。
図7に示すような、パルス光の増幅を行う多段化した光ファイバ増幅器をもつ光波レーダ装置は、後段の光ファイバ増幅器では十分な利得が得られる範囲で前段の光ファイバ増幅器よりもファイバ長が短くコア径の大きい希土類添加光ファイバを使用する。
これは、光ファイバ増幅器21の出力パワーは、光ファイバ増幅器22〜望遠鏡10までのSBSしきい値を超えないように制限し、光ファイバ増幅器22の最大出力パワーは、光ファイバ増幅器23〜望遠鏡10までのSBSしきい値を超えないように制限するというように、前段の光ファイバ増幅器の出力パワーはそれより後段部分のSBSしきい値により制限され、信号光は光ファイバ中で増幅されて強度が増し、段階的に光ファイバ増幅器での増幅を繰り返して出射端に近いほどピークパワーが大きくなっていくので、後段の光ファイバ増幅器ほどSBSしきい値を大きくしていかなければならないからである。
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係る光波レーダ装置について図8を参照しながら説明する。図8は、この発明の実施の形態4に係る光波レーダ装置の一部の構成を示す図である。
上記の実施の形態1及び実施の形態2において、複数段の光ファイバ増幅器を接続し、AOM5bによる時間ゲート切り出しや、光バンドパスフィルタ14を用いて第1の光ファイバ増幅器で発生したASE光成分を第2の光ファイバ増幅器に入射させないようにして、光ファイバ増幅器の高出力化を行うものであるが、本実施の形態4では、第2の光ファイバ増幅器全体を収納するものである。
図8において、この発明の実施の形態4に係る光波レーダ装置は、上記の実施の形態1及び2で説明した、信号光/励起光合波器7c、7dと、希土類添加光ファイバ8bと、光サーキュレータ9と、望遠鏡10とを共通の筐体20に収納する。これ以外の構成要素は、共通の筐体20とは別の筐体に収納する。
この発明の実施の形態4に係る光波レーダ装置の動作については、上記の実施の形態1あるいは実施の形態2と共通であるため説明を省略する。
共通の筐体20に収納した信号光/励起光合波器7cと、AOM5b、あるいは光バンドパスフィルタ14とは光ファイバコネクタ20aを用いて接続する。また、信号光/励起光合波器7cと半導体レーザ6c、及び信号光/励起光合波器7dと半導体レーザ6dは、光ファイバコネクタ20c及び20dを用いて接続する。さらに、光サーキュレータ9と光ミキサ11は、光ファイバコネクタ20bを用いて接続する。
信号光/励起光合波器7dと光サーキュレータ9を接続する光ファイバ長、及び光サーキュレータ9と望遠鏡10を接続する光ファイバ長は、シングルモード光ファイバの曲げ損失が生じない程度に短い状態で接続する。
この実施の形態4において、信号光/励起光合波器7c、7dと、希土類添加光ファイバ8bと、光サーキュレータ9と、望遠鏡10とを共通の筐体20に収納しているため、信号光/励起光合波器7cから望遠鏡10までの光ファイバ長を短くすることができ、SBSの発生を効果的に抑制することができる。
また、共通の筐体20に収納する要素はすべて、パッシブの光学部品であり、電気的な接続が不要であり、接続ケーブルを小型軽量化でき、また、電気的絶縁の確保や電気雑音抑圧の対策が不要であるため、簡素な筐体で光波レーダ装置を分散配置することができる利点がある。
さらに、共通の筐体20に収納する要素に関して、望遠鏡10以外は光ファイバ部品であり、配置の際の光学アライメント調整が不要で且つ、収納スペースを小さくできる利点がある。
本実施の形態4では、光ファイバ接続用の光ファイバコネクタ20a〜20dを筐体20内に設置することを想定しているが、AOM5b、あるいは光バンドパスフィルタ14、半導体レーザ6c、6d、光ミキサ11を収納する筐体側に光ファイバコネクタ20a〜20dを設置して、筐体20から光ファイバケーブル端末として取り出してもよい。
この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置の構成を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置の2段目の光ファイバ増幅器で増幅された出力光の時間波形(取れている場合)と、同期が取れていない従来構成の出力光の時間波形を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置の望遠鏡から出射されるレーザパルス光の時間波形を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る光波レーダ装置において図3の送信光で風速の測定を行ったときの受信されるSN比を示す図である。 この発明の実施の形態2に係る光波レーダ装置の構成を示す図である。 この発明の実施の形態2に係る光波レーダ装置の別の構成を示す図である。 この発明の実施の形態3に係る光波レーダ装置の構成を示す図である。 この発明の実施の形態4に係る光波レーダ装置の一部の構成を示す図である。
符号の説明
1 基準光源、2 光分波器、3 パルス変調信号発生器、4 遅延手段、5a 音響光学変調器、5b 音響光学変調器、6a 半導体レーザ、6b 半導体レーザ、6c 半導体レーザ、6d 半導体レーザ、7a 信号光/励起光合波器、7b 信号光/励起光合波器、7c 信号光/励起光合波器、7d 信号光/励起光合波器、8a 希土類添加光ファイバ、8b 希土類添加光ファイバ、9 光サーキュレータ、10 望遠鏡、11 光ミキサ、12 受光器、13 信号処理装置、14 光バンドパスフィルタ、20 筐体。

Claims (5)

  1. 単一周波数のレーザ光を発生する基準光源と、
    前記レーザ光を信号光と局部発振光に分波する光分波器と、
    駆動信号を発生するパルス変調信号発生器と、
    前記駆動信号を所定時間遅延する遅延手段と、
    前記パルス変調信号発生器により発生された駆動信号で前記光分波器からの信号光である連続発振レーザ光をパルス化する第1の音響光学変調器と、
    前記第1の音響光学変調器の出力を増幅する第1の光ファイバ増幅器と、
    前記第1の音響光学変調器と同期させた、前記遅延手段により遅延された駆動信号で前記第1の光ファイバ増幅器の出力を再パルス化する第2の音響光学変調器と、
    前記第2の音響光学変調器の出力を増幅する第2の光ファイバ増幅器と、
    送信光と受信光の光路を切り替える光サーキュレータと、
    前記第2の光ファイバ増幅器から前記光サーキュレータを経た送信光を空間に送信レーザパルス光として出射し、出射した送信光が空間中のエアロゾルにより散乱された散乱光を受信する望遠鏡と、
    前記光分波器により分波された局部発振光と前記望遠鏡から前記光サーキュレータを経た散乱光とミキシングしてビート信号へ変換する光ミキサと、
    前記ビート信号を電気信号へ変換する受光器と、
    前記電気信号を高速フーリエ変換して周波数の解析を行い、ドップラーシフト成分を検出して風速を求める信号処理装置とを備え、
    前記パルス変調信号発生器及び第1の音響光学変調器間、前記パルス変調信号発生器及び遅延手段間、前記遅延手段及び第2の音響光学変調器間、並びに前記受光器及び信号処理装置間を除くすべての素子間は、シングルモードの光ファイバで接続され、
    前記第1の光ファイバ増幅器は、
    シングルモードの励起光を出力する第1の半導体レーザと、
    前記第1の音響光学変調器の出力である信号光と前記第1の半導体レーザにより出力された励起光を合波する第1の信号光/励起光合波器と、
    第1の希土類が添加され、前記第1の音響光学変調器の出力を増幅する第1の希土類添加光ファイバとから構成され、
    前記第2の光ファイバ増幅器は、
    波長1480nm帯のシングルモードの励起光を出力する第2の半導体レーザと、
    前記第2の音響光学変調器の出力である信号光と前記第2の半導体レーザにより出力された励起光を合波する第2の信号光/励起光合波器と、
    前記第1の希土類の添加濃度よりも大きい濃度で第2の希土類が添加され、コア径が前記第1の希土類添加光ファイバよりも大きく、かつファイバ長が前記第1の希土類添加光ファイバよりも短く、前記第2の音響光学変調器の出力を増幅する第2の希土類添加光ファイバとから構成されている
    ことを特徴とする光波レーダ装置。
  2. 前記第2の音響光学変調器と前記第2の光ファイバ増幅器の間に挿入され、前記第1の光ファイバ増幅器で発生した自然放出光を遮断する光バンドパスフィルタをさらに備えた
    ことを特徴とする請求項1記載の光波レーダ装置。
  3. 単一周波数のレーザ光を発生する基準光源と、
    前記レーザ光を信号光と局部発振光に分波する光分波器と、
    駆動信号を発生するパルス変調信号発生器と、
    前記パルス変調信号発生器により発生された駆動信号で前記光分波器からの信号光である連続発振レーザ光をパルス化する音響光学変調器と、
    前記音響光学変調器の出力を増幅する第1の光ファイバ増幅器と、
    前記第1の光ファイバ増幅器で発生した自然放出光を遮断する光バンドパスフィルタと、
    前記光バンドパスフィルタの出力を増幅する第2の光ファイバ増幅器と、
    送信光と受信光の光路を切り替える光サーキュレータと、
    前記第2の光ファイバ増幅器から前記光サーキュレータを経た送信光を空間に送信レーザパルス光として出射し、出射した送信光が空間中のエアロゾルにより散乱された散乱光を受信する望遠鏡と、
    前記光分波器により分波された局部発振光と前記望遠鏡から前記光サーキュレータを経た散乱光とミキシングしてビート信号へ変換する光ミキサと、
    前記ビート信号を電気信号へ変換する受光器と、
    前記電気信号を高速フーリエ変換して周波数の解析を行い、ドップラーシフト成分を検出して風速を求める信号処理装置とを備え、
    前記パルス変調信号発生器及び音響光学変調器間、並びに前記受光器及び信号処理装置間を除くすべての素子間は、シングルモードの光ファイバで接続され、
    前記第1の光ファイバ増幅器は、
    シングルモードの励起光を出力する第1の半導体レーザと、
    前記音響光学変調器の出力である信号光と前記第1の半導体レーザにより出力された励起光を合波する第1の信号光/励起光合波器と、
    第1の希土類が添加され、前記音響光学変調器の出力を増幅する第1の希土類添加光ファイバとから構成され、
    前記第2の光ファイバ増幅器は、
    波長1480nm帯のシングルモードの励起光を出力する第2の半導体レーザと、
    前記光バンドパスフィルタの出力である信号光と前記第2の半導体レーザにより出力された励起光を合波する第2の信号光/励起光合波器と、
    前記第1の希土類の添加濃度よりも大きい濃度で第2の希土類が添加され、コア径が前記第1の希土類添加光ファイバよりも大きく、かつファイバ長が前記第1の希土類添加光ファイバよりも短く、前記光バンドパスフィルタの出力を増幅する第2の希土類添加光ファイバとから構成されている
    ことを特徴とする光波レーダ装置。
  4. 前記基準光源は、波長1.5μm帯の連続発振ファイバレーザであり、
    前記第1の希土類添加光ファイバは、エルビウムがコア内に添加されたシングルモードファイバであり、
    前記第2の希土類添加光ファイバは、エルビウム添加濃度が前記第1の希土類添加光ファイバよりも大きく、エルビウムとイッテルビウムがコア内に共添加されたシングルモードファイバである
    ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の光波レーダ装置。
  5. 前記第2の光ファイバ増幅器を構成する要素のうち第2の信号光/励起光合波器、及び第2の希土類添加光ファイバと、前記光サーキュレータと、前記望遠鏡とを同一の筐体に収納し、且つこれら以外の構成要素を前記筐体と分離した別筐体に収納する
    ことを特徴とする請求項1又は3記載の光波レーダ装置。
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