JP2008257080A - 複屈折性フィルム、積層フィルム、及び画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、画像表示装置の構成部材として好適な複屈折性フィルム、並びに、該複屈折性フィルムを有する積層フィルム及び画像表示装置に関する。
液晶表示装置は、液晶分子の電気光学特性を利用して、文字や画像を表示する画像表示装置の1つである。しかし、液晶表示装置は、光学異方性を有する液晶分子を利用するため、ある方向には優れた表示特性を示しても、他の方向では、画面が暗くなったり或いは不鮮明になったりする。このため、液晶表示装置には、所定の位相差をもたらす複屈折性フィルム(位相差フィルム、光学補償層などとも呼ばれる)が用いられている。
従来、複屈折性フィルムの1つとして、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足する複屈折性フィルムが知られている(特許文献1)。かかる屈折率の関係を満たす複屈折性フィルムは、通常、高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼着し、該高分子フィルムを厚み方向に膨張するように延伸することにより作製できる。
特開2000−231014号公報
しかしながら、上記のようにして作製された高分子フィルムからなる複屈折性フィルムは、分厚くなり易く、このため、液晶表示装置の薄型軽量化の要請に対応できない。
また、収縮性フィルムの収縮力を利用して、高分子フィルムを厚み方向へ延伸する処理が必要である。
また、収縮性フィルムの収縮力を利用して、高分子フィルムを厚み方向へ延伸する処理が必要である。
本発明の目的は、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満たし、薄型軽量化に優れた複屈折性フィルムを提供することであり、併せて、比較的簡単に作製できる複屈折性フィルムを提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記複屈折性フィルムを有する積層フィルム、及び画像表示装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記複屈折性フィルムを有する積層フィルム、及び画像表示装置を提供することである。
本発明の複屈折性フィルムは、−SO3M基(Mは対イオンを表す)を有するリオトロピック液晶性多環式化合物を含み、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足することを特徴とする。
好ましくは、上記多環式化合物は、下記一般式(I)で表されるアセナフト[1,2−b]キノキサリン誘導体である。
好ましくは、上記多環式化合物は、下記一般式(I)で表されるアセナフト[1,2−b]キノキサリン誘導体である。
上記複屈折性フィルムは、リオトロピック液晶性多環式化合物を主成分として含むので、例えば、該多環式化合物を含む溶液を塗工することによって形成することができる。従って、本発明の複屈折性フィルムは、薄型に形成することができ、その製造工程も比較的簡易に行える。
また、上記複屈折性フィルムは、−SO3M基を有する多環式化合物を含むので、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満たすフィルムとなる。
また、上記複屈折性フィルムは、−SO3M基を有する多環式化合物を含むので、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満たすフィルムとなる。
また、本発明の積層フィルムは、上記複屈折性フィルムが他のフィルムに積層されていることを特徴とする。
さらに、本発明の画像表示装置は、上記複屈折性フィルム又は上記積層フィルムを備えることを特徴とする。
さらに、本発明の画像表示装置は、上記複屈折性フィルム又は上記積層フィルムを備えることを特徴とする。
本発明の複屈折性フィルムは、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満たすので、画像表示装置の光学補償材料として有用であり、更に、薄型に形成できるので、画像表示装置の薄型軽量化に寄与できる。
上記複屈折性フィルムを有する画像表示装置は、薄型軽量化に優れ、視野角特性にも優れている。
上記複屈折性フィルムを有する画像表示装置は、薄型軽量化に優れ、視野角特性にも優れている。
<本発明に於ける用語の意味>
本発明において、主要な用語の意味は、下記のとおりである。
「複屈折性フィルム」とは、その面内及び/又は厚み方向に複屈折(屈折率の異方性)を示す葉状体を言い、例えば、波長590nmにおける面内及び/又は厚み方向の複屈折率が、1×10−4以上であるものを含む。
「nx」、「ny」とは、複屈折性フィルムの面内に於いて互いに直交する方向の屈折率をそれぞれ示し(但し、nx>ny)、「nz」とは、複屈折性フィルムの厚み方向の屈折率を示す。
「透過率(T[λ])」とは、可視光に於ける光線(代表的には波長590nm)の透過率をいい、フィルム厚100μmで、分光光度計で測定されたスペクトルデータを基に視感度補正を行ったY値をいう。
「面内の複屈折率(Δnxy[λ])」とは、23℃で波長λ(nm)における複屈折性フィルムの面内の屈折率差をいう。Δnxy[λ]=nx−nyによって求めることができる。
「面内の位相差値(Re[λ])」とは、23℃で波長λ(nm)における複屈折性フィルムの面内の位相差値をいう。Re[λ]は、複屈折性フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re[λ]=(nx−ny)×dによって求めることができる。
「厚み方向の位相差値(Rth[λ])」とは、23℃で波長λ(nm)における複屈折性フィルムの厚み方向の位相差値をいう。Rth[λ]は、複屈折性フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth[λ]=(nx−nz)×dによって求めることができる。
「Nz係数」とは、Rth[λ]/Re[λ]から算出される値であり、本発明では、は590nmを基準とする、Rth[590]/Re[590]から算出される値である。Rth[590]及びRe[590]は、上記のとおりである。
なお、これら各値は、下記実施例の欄に記載の方法によって測定できる。
「リオトロピック液晶性」とは、温度や化合物(溶質)の濃度を変化させることにより、等方相−液晶相の相転移を起こす性質をいう。液晶相は、偏光顕微鏡で観察される液晶相の光学模様によって、確認、識別することができる。
本発明において、主要な用語の意味は、下記のとおりである。
「複屈折性フィルム」とは、その面内及び/又は厚み方向に複屈折(屈折率の異方性)を示す葉状体を言い、例えば、波長590nmにおける面内及び/又は厚み方向の複屈折率が、1×10−4以上であるものを含む。
「nx」、「ny」とは、複屈折性フィルムの面内に於いて互いに直交する方向の屈折率をそれぞれ示し(但し、nx>ny)、「nz」とは、複屈折性フィルムの厚み方向の屈折率を示す。
「透過率(T[λ])」とは、可視光に於ける光線(代表的には波長590nm)の透過率をいい、フィルム厚100μmで、分光光度計で測定されたスペクトルデータを基に視感度補正を行ったY値をいう。
「面内の複屈折率(Δnxy[λ])」とは、23℃で波長λ(nm)における複屈折性フィルムの面内の屈折率差をいう。Δnxy[λ]=nx−nyによって求めることができる。
「面内の位相差値(Re[λ])」とは、23℃で波長λ(nm)における複屈折性フィルムの面内の位相差値をいう。Re[λ]は、複屈折性フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re[λ]=(nx−ny)×dによって求めることができる。
「厚み方向の位相差値(Rth[λ])」とは、23℃で波長λ(nm)における複屈折性フィルムの厚み方向の位相差値をいう。Rth[λ]は、複屈折性フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth[λ]=(nx−nz)×dによって求めることができる。
「Nz係数」とは、Rth[λ]/Re[λ]から算出される値であり、本発明では、は590nmを基準とする、Rth[590]/Re[590]から算出される値である。Rth[590]及びRe[590]は、上記のとおりである。
なお、これら各値は、下記実施例の欄に記載の方法によって測定できる。
「リオトロピック液晶性」とは、温度や化合物(溶質)の濃度を変化させることにより、等方相−液晶相の相転移を起こす性質をいう。液晶相は、偏光顕微鏡で観察される液晶相の光学模様によって、確認、識別することができる。
<本発明の複屈折性フィルム>
本発明の複屈折性フィルムは、−SO3M基(Mは対イオンを表す)を有するリオトロピック液晶性多環式化合物を含み、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足している。該リオトロピック液晶性多環式化合物は、溶液状で、液晶相を示すものである。この液晶相は、特に制限はなく、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相などが挙げられ、好ましくはネマチック液晶相である。
本発明の複屈折性フィルムは、−SO3M基(Mは対イオンを表す)を有するリオトロピック液晶性多環式化合物を含み、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足している。該リオトロピック液晶性多環式化合物は、溶液状で、液晶相を示すものである。この液晶相は、特に制限はなく、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相などが挙げられ、好ましくはネマチック液晶相である。
上記多環式化合物は、好ましくは、−SO3M基を有するアセナフト[1,2−b]キノキサリン誘導体であり、より好ましくは、下記式(I)で表されるアセナフト[1,2−b]キノキサリン誘導体である。
上記Mは、好ましくは、水素イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、他の金属イオン、又は置換若しくは無置換のアンモニウムイオンである。この金属イオンとしては、例えば、Ni2+、Fe3+、Cu2+、Ag+、Zn2+、Al3+、Pd2+、Cd2+、Sn2+、Co2+、Mn2+、Ce3+等が挙げられる。例えば、複屈折性フィルムが上記多環式化合物を含む水溶液から形成される場合、上記Mは、当初、水への溶解性を向上させるイオンを選択しておき、成膜後は、複屈折性フィルムの耐水性を高めるために、水に不溶性又は難溶性のイオンに置換することもできる。
式(I)において、Rで表される炭化水素は、特に限定されず、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)、置換基を有していてもよい環状アルキル基(好ましくは炭素数3〜6の環状アルキル基)、置換基を有していてもよいアルケニル基(好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基)、置換基を有していてもよいアリール基(好ましくはベンゼン環が1個のアリール基)などが挙げられる。また、式(I)のアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜6のものである。
また、式(I)において、X、Y及びZは、好ましくは、それぞれ独立して、−OM基、−COOM基、−NH2基、−SM基、−PO3M基の何れかである。また、X、Y及びZの置換数l、m及びnは、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0〜1である。かかる多環式化合物は、水系溶媒への溶解性に優れる。
また、式(I)において、X、Y及びZは、好ましくは、それぞれ独立して、−OM基、−COOM基、−NH2基、−SM基、−PO3M基の何れかである。また、X、Y及びZの置換数l、m及びnは、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0〜1である。かかる多環式化合物は、水系溶媒への溶解性に優れる。
本発明の複屈折性フィルムは、適当な基材上に上記多環式化合物を含む塗工膜を形成することにより得られ、この塗工膜は、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足する。上記多環式化合物を含む複屈折性フィルムの屈折率楕円体がnz>nx>nyとなる作用は明確ではないが、次のように推定される。すなわち、上記多環式化合物は、基材上に塗工した際、その−SO3M基が基材表面上に対面するように向いて液晶相を形成し、多環式化合物の長軸方向が基材表面に対する法線方向にほぼ配向するためと推定される。このように多環式化合物が、その長軸方向が基材表面に対して略直交するように配向することにより、厚み方向の屈折率(nz)が最大となる複屈折性フィルムが得られる。
上記の作用から、多環式化合物は、基本骨格の長軸方向の端部に−SO3M基を有するものが好ましい。このような多環式化合物としては、例えば、下記一般式(II)または一般式(III)で表されるアセナフト[1,2−b]キノキサリン誘導体が挙げられる。
多環式化合物は、上記式(II)または式(III)で表される中でも、好ましくはl、m及びnの少なくとも1つが0のもの(X、Y及びZの少なくとも1つが無置換のもの)であり、より好ましくはl、m及びnが何れも0のもの(X、Y及びZが何れも無置換のもの)である。かかる多環式化合物は、−SO3M基以外の置換基の相互作用が少なく、多環式化合物の長軸方向が基材表面に対して略直交するように配向し易く、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足する複屈折性フィルムを確実に形成し得る。また、かかる多環式化合物は、水系溶媒への溶解性にも優れている。
特に好ましくは、上記式(II)のX、Y及びZが何れも無置換の多環式化合物であり、該多環式化合物は、下記式(IV)で表されるアセナフト[1,2−b]キノキサリン誘導体である。
上記多環式化合物は、例えば、芳香族ジアミン化合物とアセナフテンキノン誘導体の脱水縮合などによって得ることができる。
具体的には、芳香族ジアミン化合物またはその置換物を、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸などの無機スルホン酸などを用いてスルホン化することにより、−SO3M基が導入された芳香族ジアミン化合物を得ることができる。該芳香族ジアミン化合物とアセナフトキノンまたはその置換物とを、下記反応式(a)に示すように、縮合反応させることによって、上記−SO3M基を有する多環式化合物を得ることができる。得られた多環式化合物のMが水素以外の場合、適当な酸を接触させることにより、該−SO3H基を有する多環式化合物を得ることができる。
本発明の複屈折性フィルムは、例えば、上記多環式化合物を適切な溶媒に溶解させて液晶相の状態とし、この溶液を基材上に塗工乾燥することによって作製できる。上記多環式化合物は、溶液中に於いて安定な液晶相を形成する。このため、多環式化合物を含む溶液からのソルベントキャスティング法により、高い面内複屈折率を有し、可視光の領域で吸収がないか又は小さい、透明な複屈折性フィルムを作製できる。
上記複屈折性フィルムは、上記多環式化合物以外に、任意の適切な添加剤が含まれていてもよい。該添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、耐電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤などが挙げられる。該添加剤の配合割合は、上記多環式化合物の固形分100質量部に対し、0を超え10質量部以下である。
本発明の複屈折性フィルムは、溶液塗工によって製膜できるので、薄型に形成できる。
この複屈折性フィルムの厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。複屈折性フィルムの厚みの上限は、特に限定されず、面内及び/又は厚み方向の位相差値の設計に応じて適宜設定できるが、薄型軽量化の点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
この複屈折性フィルムの厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。複屈折性フィルムの厚みの上限は、特に限定されず、面内及び/又は厚み方向の位相差値の設計に応じて適宜設定できるが、薄型軽量化の点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
さらに、上記複屈折性フィルムは、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足し、且つ、比較的高い面内の複屈折率を示す。このため、上記複屈折性フィルムは、従来の複屈折性フィルムに比べて、格段に薄い厚みで、所望の位相差値を得ることができる。
上記複屈折性フィルムの波長590nmにおける透過率(T[590])は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。上記複屈折性フィルムのヘイズ値は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、特に好ましくは3%以下である。かかるヘイズ値の複屈折性フィルムは、画像表示装置の表示特性に優れている。ただし、該ヘイズ値は、JIS−K7105に準じて測定された値をいう。
上記複屈折性フィルムの波長590nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[590])は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.05〜0.3であり、特に好ましくは0.1〜0.3である。
上記複屈折性フィルムの波長590nmにおける面内の位相差値(Re[590])は、目的に応じて、適切な値に設定され得る。上記Re[590]は、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは20nm〜500nmであり、特に好ましくは50nm〜300nmである。
また、上記複屈折性フィルムの波長590nmにおける厚み方向位相差値(Rth[590])は、目的に応じて、適切な値に設定され得る。上記Rth[590]は、好ましくは−10nm以上であり、より好ましくは−500nm〜−10nmであり、特に好ましくは−100nm〜−10nmである。
上記複屈折性フィルムのNz係数は、好ましくは0未満であり、より好ましくは−0.5を超え0未満であり、特に好ましくは−0.3〜−0.1である。Nz係数が上記の範囲にある複屈折性フィルムは、様々な駆動モードの液晶セルの光学補償に利用することができる。
上記複屈折性フィルムの波長590nmにおける面内の位相差値(Re[590])は、目的に応じて、適切な値に設定され得る。上記Re[590]は、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは20nm〜500nmであり、特に好ましくは50nm〜300nmである。
また、上記複屈折性フィルムの波長590nmにおける厚み方向位相差値(Rth[590])は、目的に応じて、適切な値に設定され得る。上記Rth[590]は、好ましくは−10nm以上であり、より好ましくは−500nm〜−10nmであり、特に好ましくは−100nm〜−10nmである。
上記複屈折性フィルムのNz係数は、好ましくは0未満であり、より好ましくは−0.5を超え0未満であり、特に好ましくは−0.3〜−0.1である。Nz係数が上記の範囲にある複屈折性フィルムは、様々な駆動モードの液晶セルの光学補償に利用することができる。
<本発明の複屈折性フィルムの製造方法>
1つの実施形態において、本発明の複屈折性フィルムは、次の各工程を有する製造方法によって得ることができる。
工程(1):上記多環式化合物と、溶媒と、を少なくとも含有し、液晶相を示す溶液を調製する工程。
工程(2):基材を準備する工程。
工程(3):工程(2)の基材の表面に、上記工程(1)の溶液を塗工し、これを乾燥する工程。
なお、上記工程(1)と工程(2)は、何れの工程を先に行ってもよいし、或いは、同時並行的行ってもよく、その実施順序は問わない。
1つの実施形態において、本発明の複屈折性フィルムは、次の各工程を有する製造方法によって得ることができる。
工程(1):上記多環式化合物と、溶媒と、を少なくとも含有し、液晶相を示す溶液を調製する工程。
工程(2):基材を準備する工程。
工程(3):工程(2)の基材の表面に、上記工程(1)の溶液を塗工し、これを乾燥する工程。
なお、上記工程(1)と工程(2)は、何れの工程を先に行ってもよいし、或いは、同時並行的行ってもよく、その実施順序は問わない。
[工程(1)]
工程(1)は、上記多環式化合物を少なくとも含む溶液を調製する工程である。
多環式化合物は、上記で例示したものから適宜なものが選択され得る。多環式化合物は、例えば、一般式(I)で表される化合物であって、−SO3M基の置換数及び/又置換位置が異なるものや、X、Y及びZの種類及び/又は置換数及び/又は置換位置が異なるもの、などから選択した1種単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
溶媒は、上記多環式化合物を溶解させて、液晶相(好ましくはネマチック液晶相)を発現させることができるものであれば、任意のものを選択できる。
上記溶媒は、例えば、水などの無機溶剤であってもよいし、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、アミド類、セロソルブ類などの有機溶剤であってもよい。該有機溶媒としては、例えば、n−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。
工程(1)は、上記多環式化合物を少なくとも含む溶液を調製する工程である。
多環式化合物は、上記で例示したものから適宜なものが選択され得る。多環式化合物は、例えば、一般式(I)で表される化合物であって、−SO3M基の置換数及び/又置換位置が異なるものや、X、Y及びZの種類及び/又は置換数及び/又は置換位置が異なるもの、などから選択した1種単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
溶媒は、上記多環式化合物を溶解させて、液晶相(好ましくはネマチック液晶相)を発現させることができるものであれば、任意のものを選択できる。
上記溶媒は、例えば、水などの無機溶剤であってもよいし、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、アミド類、セロソルブ類などの有機溶剤であってもよい。該有機溶媒としては、例えば、n−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。
上記溶媒は、特に好ましくは水である。該水の電気伝導率は、好ましくは20μS/cm以下であり、さらに好ましくは0.001μS/cm〜10μS/cmであり、特に好ましくは0.001μS/cm〜5μS/cmである。上記水の電気伝導率の下限値は、0μS/cmである。水の電気伝導率を上記の範囲とすることによって、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足する複屈折性フィルムが得られ得る。
上記溶液における多環式化合物の濃度は、リオトロピック液晶相を示す範囲に適宜、調整され得る。上記溶液における多環式化合物の濃度は、好ましくは3質量%〜40質量%であり、より好ましくは3質量%〜30質量%であり、特に好ましくは5質量%〜30質量%であり、最も好ましくは10質量%〜30質量%である。溶液の濃度を上記範囲とすることによって、該溶液は、安定な液晶状態を示し得る。
上記溶液は、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、界面活性剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤などが挙げられる。上記添加剤の添加量は、好ましくは溶液100質量部に対して、0を超え10質量部以下である。
上記溶液は、界面活性剤をさらに含有し得る。界面活性剤は、多環式化合物を含む溶液の基材表面へのぬれ性、塗工性を向上させるために使用される。上記界面活性剤は、好ましくは、非イオン界面活性剤である。上記界面活性剤の添加量は、好ましくは、溶液100質量部に対して、0を超え5質量部以下である。
[工程(2)]
工程(2)は、基材を準備する工程である。好ましくは、前記基材の少なくとも一方の表面には、親水化処理が施される。
工程(2)は、基材を準備する工程である。好ましくは、前記基材の少なくとも一方の表面には、親水化処理が施される。
本発明に用いられる基材は、上記多環式化合物を含有する溶液を、均一に流延するために用いられる。上記基材は、任意の適切なものが選択され得る。上記基材としては、例えば、ガラス基板、石英基板、高分子フィルム、プラスチックス基板、アルミや鉄などの金属板、セラミックス基板、シリコンウエハーなどが挙げられる。上記基材は、好ましくは、ガラス基板又は高分子フィルムである。
上記ガラス基板としては、任意の適切なものが選択され得る。上記ガラス基板は、好ましくは、液晶セルに用いられるものである。このようなガラス基板は、例えば、アルカリ成分を含むソーダ石灰(青板)ガラス、又は低アルカリ硼砂酸ガラスである。上記ガラス基板は、市販のものをそのまま用いてもよい。市販のガラス基板としては、例えば、コーニング社製 ガラスコード:1737、旭硝子(株)製 ガラスコード:AN635、NHテクノグラス(株)製 ガラスコード:NA−35などが挙げられる。
上記高分子フィルムを形成する樹脂としては、任意の適切なものが選択され得る。好ましくは、上記高分子フィルムは、熱可塑性樹脂を含有する。上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。上記の熱可塑性樹脂は、1種単独で、または2種以上を組み合せて用いることができる。また、上記の熱可塑性樹脂は、任意の適切なポリマー変性を行ってから用いることもできる。上記ポリマー変性としては、例えば、共重合、架橋、分子末端、立体規則性などの変性が挙げられる。
基材として高分子フィルムを用いる場合、高分子フィルムは、可視光の光線透過率に優れ、透明性に優れるものを用いることが好ましい。この高分子フィルムの可視光に於ける透過率(T[590])は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。また、高分子フィルムのヘイズ値は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。ただし、ヘイズ値は、JIS−K7105に準じて測定された値をいう。
基材として高分子フィルムを用いる場合、複屈折性フィルムを形成した後、前記基材を保護フィルムとして利用することもできる。
基材として高分子フィルムを用いる場合、複屈折性フィルムを形成した後、前記基材を保護フィルムとして利用することもできる。
本発明に用いられる基材は、好ましくは、セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムである。多環式化合物を含む溶液のぬれ性に優れ、厚みバラツキの小さい複屈折性フィルムが得られ得るからである。
上記セルロース系樹脂は、任意の適切なものが採用され得る。上記セルロース系樹脂は、好ましくは、セルロースの水酸基の一部または全部がアセチル基、プロピオニル基および/またはブチル基で置換された、セルロース有機酸エステルまたはセルロース混合有機酸エステルである。上記セルロース有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等が挙げられる。上記セルロース混合有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。上記セルロース系樹脂は、例えば、特開平2001−188128号公報[0040]〜[0041]に記載の方法により得ることができる。
上記セルロース系樹脂は、任意の適切なものが採用され得る。上記セルロース系樹脂は、好ましくは、セルロースの水酸基の一部または全部がアセチル基、プロピオニル基および/またはブチル基で置換された、セルロース有機酸エステルまたはセルロース混合有機酸エステルである。上記セルロース有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等が挙げられる。上記セルロース混合有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。上記セルロース系樹脂は、例えば、特開平2001−188128号公報[0040]〜[0041]に記載の方法により得ることができる。
本発明に用いられる基材は、市販の高分子フィルムをそのまま用いることができる。あるいは、市販の高分子フィルムに延伸処理および/または収縮処理などの2次的加工を施したものを用いることができる。市販のセルロース系樹脂を含有する高分子フィルムとしては、例えば、富士写真フィルム(株)製のフジタックシリーズ(商品名:ZRF80S,TD80UF,TDY−80UL)、コニカミノルタオプト(株)製の商品名:「KC8UX2M」などが挙げられる。
上記基材の厚みは、好ましくは、20μm〜100μmである。基材の厚みを上記の範囲とすることによって、基材のハンドリング性や溶液の塗工性が良好となる。
上記基材の一面に、親水化処理を施すことが好ましい。該親水化処理を施すことにより、多環式化合物を含む溶液の基材表面へのぬれ性、塗工性を向上させることができる。なお、親水化処理とは、基材の水の接触角を低下させる処理をいう。
上記親水化処理は、基材の23℃における水の接触角を、処理前に比べて、好ましくは10%以上低下させる処理であり、さらに好ましくは15%〜80%低下させる処理であり、特に好ましくは20%〜70%低下させる処理が含まれる。なお、この低下させる割合(%)は、式;{(処理前の接触角−処理後の接触角)/処理前の接触角}×100により求められる。
さらに、上記親水化処理は、基材の23℃における水の接触角を、処理前に比べて、好ましくは5°以上低下させる処理であり、さらに好ましくは、10°〜65°低下させる処理であり、特に好ましくは20°〜60°低下させる処理が含まれる。
さらに、上記親水化処理は、基材の23℃における水の接触角を、好ましくは5°〜60°とする処理であり、さらに好ましくは5°〜50°とする処理であり、特に好ましくは5°〜45°とする処理が含まれる。基材の水の接触角を上記範囲とすることによって、厚みバラツキの小さい複屈折性フィルムが得られ得る。
上記親水化処理は、任意の適切な方法が採用され得る。上記親水化処理は、例えば、乾式処理でもよく、湿式処理でもよい。乾式処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、及びグロー放電処理などの放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理および電子線処理などの電離活性線処理などが挙げられる。湿式処理としては、例えば、水やアセトンなどの溶媒を用いた超音波処理、アルカリ処理、アンカーコート処理などが挙げられる。これらの処理は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合せて用いてもよい。
好ましくは、上記親水化処理は、コロナ処理、プラズマ処理、アルカリ処理、又はアンカーコート処理である。上記の親水化処理であれば、高い配向性を有し、且つ、厚みバラツキの小さい複屈折性フィルムを得ることができる。上記親水化処理の条件、例えば、処理時間や強度などは、基材の水の接触角が上記の範囲となるように、適宜、適切に調整され得る。
上記コロナ処理は、代表的には、コロナ放電内へ、基材を通過させることによって、基材表面を改質する処理である。前記コロナ放電は、接地された誘電体ロールと絶縁された電極との間に高周波、高電圧を印加することにより、電極間の空気が絶縁破壊してイオン化して発生する。上記プラズマ処理は、代表的には、低温プラズマ内へ、基材を通過させることによって、基材表面を改質する処理である。前記低温プラズマは、低圧の不活性ガスや酸素、ハロゲンガスなど無機気体中でグロー放電を起こすと、気体分子の一部がイオン化して発生する。上記超音波洗浄処理は、代表的には、水や有機溶媒中に基材を浸漬させて超音波をあてることにより、基材表面の汚染物を除去し、基材のぬれ性を改善する処理である。上記アルカリ処理は、代表的には、塩基性物質を水又は有機溶剤に溶解したアルカリ処理液に、基材を浸漬することによって、基材表面を改質する処理である。上記アンカーコート処理は、代表的には、基材表面にアンカーコート剤を塗工する処理である。
[工程(3)]
工程(3)は、上記工程(2)で準備した基材の表面(親水化処理がなされている場合にはその表面)に、上記工程(1)で調製した溶液を塗工し、これを乾燥する工程である。
上記溶液の塗工速度は、特に限定されないが、好ましくは塗工速度10mm/秒以上であり、より好ましくは50mm/秒以上であり、特に好ましくは100mm/秒以上である。塗工速度の上限は、好ましくは8000mm/秒以下であり、より好ましくは6000mm/秒以下であり、特に好ましくは4000mm/秒以下である。塗工速度を上記範囲に設定することにより、上記溶液中に、多環式化合物が配向するのに適したせん断力が加わり、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足し、且つ厚みバラツキの小さい複屈折性フィルムを得られ得る。
工程(3)は、上記工程(2)で準備した基材の表面(親水化処理がなされている場合にはその表面)に、上記工程(1)で調製した溶液を塗工し、これを乾燥する工程である。
上記溶液の塗工速度は、特に限定されないが、好ましくは塗工速度10mm/秒以上であり、より好ましくは50mm/秒以上であり、特に好ましくは100mm/秒以上である。塗工速度の上限は、好ましくは8000mm/秒以下であり、より好ましくは6000mm/秒以下であり、特に好ましくは4000mm/秒以下である。塗工速度を上記範囲に設定することにより、上記溶液中に、多環式化合物が配向するのに適したせん断力が加わり、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足し、且つ厚みバラツキの小さい複屈折性フィルムを得られ得る。
上記溶液を基材の表面に塗工する方法としては、適宜、適切なコータを用いた塗工方式が採用され得る。上記コータとしては、例えば、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアロールコータ、ナイフコータ、ロッドコータ、スロットダイコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータ、エアドクタコータ、キスコータ、ディップコータ、ビードコータ、ブレードコータ、キャストコータ、スプレイコータ、スピンコータ、押出コータ、ホットメルトコータなどが挙げられる。上記コータは、好ましくは、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアロールコータ、ロッドコータ、スロットダイコータ、スロットオリフィスコータ、カーテンコータ、及びファウンテンコータある。上記のコータを用いた塗工方式であれば、厚みバラツキの小さい複屈折性フィルムを得ることができる。
上記溶液を乾燥させる方法は、適宜、適切な方法が採用され得る。乾燥方法は、例えば、熱風又は冷風が循環する空気循環式恒温オーブン、マイクロ波もしくは遠赤外線などを利用したヒーター、温度調節用に加熱されたロール、ヒートパイプロール又は金属ベルトなどの乾燥手段が挙げられる。
上記溶液を乾燥させる温度は、上記溶液の等方相転移温度以下であり、低温から高温へ徐々に昇温して乾燥させることが好ましい。上記乾燥温度は、好ましくは10℃〜80℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃である。上記の温度範囲であれば厚みバラツキの小さい複屈折性フィルムを得ることができる。
上記溶液を乾燥させる時間は、乾燥温度や溶媒の種類によって、適宜、選択され得るが、厚みバラツキの小さい複屈折性フィルムを得るためには、例えば1分〜30分であり、好ましくは1分〜10分である。
[他の工程]
本発明の複屈折性フィルムの製造方法は、好ましくは、上記工程(1)〜(3)の後に、下記工程(4)をさらに含む。
工程(4):上記工程(3)で得られたフィルムに、アルミニウム塩、バリウム塩、鉛塩、クロム塩、ストロンチウム塩、及び分子内に2個以上のアミノ基を有する化合物塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物塩を含む溶液を接触させる工程。
本発明の複屈折性フィルムの製造方法は、好ましくは、上記工程(1)〜(3)の後に、下記工程(4)をさらに含む。
工程(4):上記工程(3)で得られたフィルムに、アルミニウム塩、バリウム塩、鉛塩、クロム塩、ストロンチウム塩、及び分子内に2個以上のアミノ基を有する化合物塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物塩を含む溶液を接触させる工程。
本発明において、上記工程(4)は、得られる複屈折性フィルムを、水に対して、不溶化又は難溶化させるために実施される。上記化合物塩としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化バリウム、塩化鉛、塩化クロム、塩化ストロンチウム、4,4’−テトラメチルジアミノジフェニルメタン塩酸塩、2,2’−ジピリジル塩酸塩、4,4’−ジピリジル塩酸塩、メラミン塩酸塩、テトラアミノピリミジン塩酸塩などが挙げられる。このような化合物塩であれば、耐水性に優れた複屈折性フィルムが得られ得る。
上記の化合物塩を含む溶液の化合物塩濃度は、好ましくは3質量%〜40質量%であり、特に好ましくは、5質量%〜30質量%である。複屈折性フィルムに対し、上記範囲の濃度の化合物塩を含む溶液を接触させることによって、複屈折性フィルムの耐水性を向上させることができる。
上記工程(3)で得られた複屈折性フィルムを、上記化合物塩を含む溶液と接触させる方法としては、例えば、当該フィルムの表面に上記化合物塩を含む溶液を塗工する方法、当該フィルムを上記化合物塩を含む溶液に浸漬する方法など、任意の方法が採用され得る。これらの方法が採用される場合、得られた複屈折性フィルムは、水又は任意の溶剤で洗浄することが好ましく、さらに乾燥させることで、基材と複屈折性フィルムとの界面の密着性に優れた積層フィルムが得られ得る。
<本発明の複屈折性フィルムの用途>
本発明の複屈折性フィルムの用途は、特に制限はないが、代表的には、液晶表示装置の光学部材(λ/4板、λ/2板、視野角拡大フィルム、フラットパネルディスプレイ用反射防止フィルムなど)が挙げられる。
本発明の複屈折性フィルムの用途は、特に制限はないが、代表的には、液晶表示装置の光学部材(λ/4板、λ/2板、視野角拡大フィルム、フラットパネルディスプレイ用反射防止フィルムなど)が挙げられる。
1つの実施形態において、本発明の複屈折性フィルムは、これに他のフィルムを積層して、積層フィルムの態様で用いることができる。
他の実施形態において、本発明の複屈折性フィルムは、これに偏光子を積層して、偏光板の態様で用いることができる。
上記偏光板は、本発明の複屈折性フィルムと偏光子とを少なくとも備える積層フィルムである。この偏光板は、更に上記基材を含んでいても良いし、他の光学フィルム(例えば、本発明とは異なる他の複屈折性フィルム、任意の保護フィルムなど)を含んでいてもよい。実用的には、上記偏光板の、構成部材の各層の間には、任意の適切な接着層が設けられ、各層が貼着される。
他の実施形態において、本発明の複屈折性フィルムは、これに偏光子を積層して、偏光板の態様で用いることができる。
上記偏光板は、本発明の複屈折性フィルムと偏光子とを少なくとも備える積層フィルムである。この偏光板は、更に上記基材を含んでいても良いし、他の光学フィルム(例えば、本発明とは異なる他の複屈折性フィルム、任意の保護フィルムなど)を含んでいてもよい。実用的には、上記偏光板の、構成部材の各層の間には、任意の適切な接着層が設けられ、各層が貼着される。
上記偏光板の、偏光子と複屈折性フィルムの貼着角度は、目的に応じて、適宜設定され得る。上記偏光板が、例えば、反射防止フィルムとして用いられる場合には、上記偏光子の吸収軸方向と複屈折性フィルムの遅相軸方向の成す角度が、好ましくは25°〜65°、より好ましくは35°〜55°となるように、偏光子と複屈折性フィルムとが貼着される。また、上記偏光板が、例えば、視野角拡大フィルムとして用いられる場合には、上記偏光子の吸収軸方向と複屈折性フィルムの遅相軸方向の成す角度が、実質的に平行又は実質的に直交となるように、偏光子と複屈折性フィルムとが貼着される。なお、「実質的に平行」とは、偏光子の吸収軸方向と複屈折性フィルムの遅相軸方向の成す角度が、0°±10°の範囲を含み、好ましくは0°±5°である。「実質的に直交」とは、偏光子の吸収軸方向と複屈折性フィルムの遅相軸方向の成す角度が、90°±10°の範囲を含み、好ましくは90°±5°である。
偏光子としては、自然光又は偏光を直線偏光に変換するものであれば、適切なものが採用され得る。上記偏光子は、好ましくは、ヨウ素又は二色性染料を含有するポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする延伸フィルムである。上記偏光子の厚みは、通常、5μm〜50μmである。
上記接着層は、隣り合う部材の面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で、一体化させるものであれば、任意の適切なものが選択され得る。上記接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤が挙げられる。上記接着層は、被着体の表面にアンカーコート剤層が形成され、その上に接着剤層または粘着剤層が形成されたような多層構造であってもよいし、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。偏光子の一方の側に配置された接着層と他方の側に配置された接着層は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、本発明の複屈折性フィルム及び該複屈折性フィルムを含む積層フィルムは、各種画像表示装置の構成部材として使用できる。
本発明の画像表示装置は、液晶表示装置の他、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。画像表示装置の好ましい用途はテレビ(特に、画面サイズ40インチ以上の大型テレビ)である。画像表示装置が液晶表示装置の場合には、その好ましい用途は、テレビ、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機などのOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフオメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター、医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
本発明の画像表示装置は、液晶表示装置の他、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。画像表示装置の好ましい用途はテレビ(特に、画面サイズ40インチ以上の大型テレビ)である。画像表示装置が液晶表示装置の場合には、その好ましい用途は、テレビ、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機などのOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフオメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター、医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
以下、実施例を示して、本発明を更に説明する。なお、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例で用いた各測定方法は、以下の通りである。
(1)厚みの測定方法:
基材(ガラス板)表面に形成した複屈折性フィルムの一部を剥離し、該基材と複屈折性フィルムの段差を、アルバック社製、触針式表面形状測定器(製品名:「DEKTAK」)を用いて測定した。
(2)T[590]、nx、ny、nz、Re[590]、Rth[590]、及びNz係数の測定方法:
王子計測機器(株)製、製品名:「KOBRA21−ADH」を用いて、23℃で測定した。なお、平均屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ(株)製、製品名:「DR−M4」)を用いて測定した値を用いた。
(3)Δnxy[590]の測定方法:
上記Rth[590]/厚み(nm)から算出した。
(4)液晶相の確認方法:
2枚のスライドガラスで溶液を挟み込み、これをホットステージ(メトラートレド(株)製、製品名:「FP28HT」)に設置後、偏光顕微鏡(オリンパス(株)製、製品名「BX50」)を用いて、温度を変化させながら観察し、液晶相の確認を行った。
なお、実施例で用いた各測定方法は、以下の通りである。
(1)厚みの測定方法:
基材(ガラス板)表面に形成した複屈折性フィルムの一部を剥離し、該基材と複屈折性フィルムの段差を、アルバック社製、触針式表面形状測定器(製品名:「DEKTAK」)を用いて測定した。
(2)T[590]、nx、ny、nz、Re[590]、Rth[590]、及びNz係数の測定方法:
王子計測機器(株)製、製品名:「KOBRA21−ADH」を用いて、23℃で測定した。なお、平均屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ(株)製、製品名:「DR−M4」)を用いて測定した値を用いた。
(3)Δnxy[590]の測定方法:
上記Rth[590]/厚み(nm)から算出した。
(4)液晶相の確認方法:
2枚のスライドガラスで溶液を挟み込み、これをホットステージ(メトラートレド(株)製、製品名:「FP28HT」)に設置後、偏光顕微鏡(オリンパス(株)製、製品名「BX50」)を用いて、温度を変化させながら観察し、液晶相の確認を行った。
[合成例1]
<3,4−ジアミノベンゼンスルホン酸の合成>
攪拌機を備えた反応容器に4%発煙硫酸60mLを投入し、攪拌しながら1,2−フェニレンジアミン10.0gを徐々に添加し、140℃に加熱した後、4時間反応させた。得られた溶液を冷却後、60℃以下に保ちながら92.5mLのイオン交換水を加えて希釈し、25℃以下になるまで冷却した後、3時間攪拌した。沈殿物をろ過後、イオン交換水で再結晶を2回行い、ろ過後の固形分を12時間真空乾燥をし、3,4−ジアミノベンゼンスルホン酸13.7gを得た。
<3,4−ジアミノベンゼンスルホン酸の合成>
攪拌機を備えた反応容器に4%発煙硫酸60mLを投入し、攪拌しながら1,2−フェニレンジアミン10.0gを徐々に添加し、140℃に加熱した後、4時間反応させた。得られた溶液を冷却後、60℃以下に保ちながら92.5mLのイオン交換水を加えて希釈し、25℃以下になるまで冷却した後、3時間攪拌した。沈殿物をろ過後、イオン交換水で再結晶を2回行い、ろ過後の固形分を12時間真空乾燥をし、3,4−ジアミノベンゼンスルホン酸13.7gを得た。
[合成例2]
<アセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸の合成>
攪拌機を備えた反応容器にイソプロパノール60mLとイオン交換水57mLを投入し、窒素バブリングおよび攪拌を行いながら、50%水酸化ナトリウム水溶液4.0mLを添加した。この溶液に上記[合成例1]で得られた3,4−ジアミノベンゼンスルホン酸9.5gを添加し、完全に溶解させた。この溶液を40℃〜45℃に保ちながら1時間かけてアセナフテンキノン9.2gを添加し、35℃〜40℃を保ちながら1時間反応させた(下記反応式(b)参照)。攪拌機を備えた別の反応容器にイソプロパノール300mLを添加し75℃まで加熱攪拌し、これに上記反応溶液を添加した。その後、70℃〜75℃に保ちながら1時間攪拌を続けることでアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸ナトリウム塩を析出させ、ろ過により粗生成物を得た。この粗生成物を210mLの酢酸に分散させ、2.8mLの硫酸を加えた後に30分間攪拌後、室温まで冷却することでアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸を析出させ、ろ過により粗生成物を得た。この粗生成物を酢酸により洗浄することでアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸15gを得た。
この生成物10gを、1Lのイオン交換水(電気伝導度:0.1μS/cm)に溶解させ、さらに5%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを3.5とした。得られた水溶液は、供給タンクに入れ、日東電工(株)社製の逆浸透膜フィルター(製品名:「NTR−7430フィルター」)を備えた試験装置を用いて、液量が一定となるように逆浸透水を加えながら循環ろ過し、廃液の電気伝導度が146μS/cmとなるまで、残存酸除去を行った。
<アセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸の合成>
攪拌機を備えた反応容器にイソプロパノール60mLとイオン交換水57mLを投入し、窒素バブリングおよび攪拌を行いながら、50%水酸化ナトリウム水溶液4.0mLを添加した。この溶液に上記[合成例1]で得られた3,4−ジアミノベンゼンスルホン酸9.5gを添加し、完全に溶解させた。この溶液を40℃〜45℃に保ちながら1時間かけてアセナフテンキノン9.2gを添加し、35℃〜40℃を保ちながら1時間反応させた(下記反応式(b)参照)。攪拌機を備えた別の反応容器にイソプロパノール300mLを添加し75℃まで加熱攪拌し、これに上記反応溶液を添加した。その後、70℃〜75℃に保ちながら1時間攪拌を続けることでアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸ナトリウム塩を析出させ、ろ過により粗生成物を得た。この粗生成物を210mLの酢酸に分散させ、2.8mLの硫酸を加えた後に30分間攪拌後、室温まで冷却することでアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸を析出させ、ろ過により粗生成物を得た。この粗生成物を酢酸により洗浄することでアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸15gを得た。
この生成物10gを、1Lのイオン交換水(電気伝導度:0.1μS/cm)に溶解させ、さらに5%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを3.5とした。得られた水溶液は、供給タンクに入れ、日東電工(株)社製の逆浸透膜フィルター(製品名:「NTR−7430フィルター」)を備えた試験装置を用いて、液量が一定となるように逆浸透水を加えながら循環ろ過し、廃液の電気伝導度が146μS/cmとなるまで、残存酸除去を行った。
[実施例]
上記合成例2で得られたアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸水溶液に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH=7に調整し、ロータリーエバポレーターを用いて、該水溶液中のアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸の濃度が28質量%となるまで濃縮した。その後、同濃度が24質量%となるまでイオン交換水を加えて攪拌し、水溶液を調製した。調製後の水溶液を偏光顕微鏡観察したところ、23℃でネマチック液晶相を示した。
この水溶液(コーティング液)を厚さ1.3mmのガラス基板上にバーコータ(BUSCHMAN社製、製品名:「mayer rot HS1.5」)を用いて、塗工し(ウェット厚み:3μm)、23℃の恒温室内で自然乾燥させた。その結果、ガラス基板の表面に、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満たす複屈折性フィルムを得た。
この複屈折性フィルムは、厚み0.7μmであり、下記の特性を有していた。
Δnxy[590]=0.19。
T[590]=90%。
Re[590]=125nm。
Rth[590]=−19nm。
Nz係数=−0.16。
上記合成例2で得られたアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸水溶液に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH=7に調整し、ロータリーエバポレーターを用いて、該水溶液中のアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−スルホン酸の濃度が28質量%となるまで濃縮した。その後、同濃度が24質量%となるまでイオン交換水を加えて攪拌し、水溶液を調製した。調製後の水溶液を偏光顕微鏡観察したところ、23℃でネマチック液晶相を示した。
この水溶液(コーティング液)を厚さ1.3mmのガラス基板上にバーコータ(BUSCHMAN社製、製品名:「mayer rot HS1.5」)を用いて、塗工し(ウェット厚み:3μm)、23℃の恒温室内で自然乾燥させた。その結果、ガラス基板の表面に、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満たす複屈折性フィルムを得た。
この複屈折性フィルムは、厚み0.7μmであり、下記の特性を有していた。
Δnxy[590]=0.19。
T[590]=90%。
Re[590]=125nm。
Rth[590]=−19nm。
Nz係数=−0.16。
Claims (10)
- −SO3M基(Mは対イオンを表す)を有するリオトロピック液晶性多環式化合物を含み、屈折率楕円体がnz>nx>nyの関係を満足する複屈折性フィルム。
- 前記多環式化合物が、下記一般式(II)または一般式(III)で表されるアセナフト[1,2−b]キノキサリン誘導体の少なくとも何れか一方を含む請求項1に記載の複屈折性フィルム。
- 前記波長590nmにおける面内の位相差値(Re[590])が、10nm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の複屈折性フィルム。
- 前記波長590nmにおける厚み方向の位相差値(Rth[590])が、−10nm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の複屈折性フィルム。
- Nz係数が、−0.5を超え0未満である請求項1〜5のいずれかに記載の複屈折性フィルム。
- 前記多環式化合物を含む溶液を、基材上に塗工し、乾燥することにより得られたものである請求項1〜6のいずれかに記載の複屈折性フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の複屈折性フィルムと、他のフィルムと、を有する積層フィルム。
- 前記他のフィルムが、偏光子を含む請求項8に記載の積層フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の複屈折性フィルムまたは請求項8または9に記載の積層フィルムを備える画像表示装置。
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