JP2008190095A - 防護手袋 - Google Patents

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【課題】ガス状有機化学物質だけでなく、液状、有害なエアロゾル等に対して透過抑制性があり、指先操作性が良好で、透湿性を有し、蒸れ感の少ない防護手袋を提供することにある。
【解決手段】ガス状有機化学物質に対しては透過抑制性があり、水蒸気に対しては透過性を有する選択透過膜およびガス吸着性物質を含む層(ガス吸着層)をそれぞれ1層以上有し、かつ手袋の内側から見て、ガス吸着層の外側には少なくとも1層以上の選択透過膜を配置し、選択透過膜とガス吸着層の積層体の厚さが2.0mm以下であり、かつ手袋の縫い目部分が有機化学物質に対して透過抑制性の樹脂でシール加工されてなる防護手袋。
【選択図】図1

Description

本発明は、有害化学物質の取り扱い作業者が使用する手袋に関する。更に詳しくは、有機リン系化合物等の如く皮膚から吸収されて人体に悪影響を及ぼすガス状又は液状有機化学物質及び有害な微粉塵、細菌、ウィルス等から作業者の指先又は手部を有効に防護し得ると共に、指先操作性が良好で且つ透湿性により着用者の手の蒸れ感を抑制できる防護手袋に関するものである。
有害化学物質などから指先や手部を保護する防護手袋としては、従来から提案されている。例えばゴム曳き布のように、有害化学物質が全く透過しない材料で構成されたものがあり防護性能に優れている。しかし、この場合、生地のごわつき感により指先操作性が劣り、また通気性および透湿度が全くないため、酷暑環境下や過酷な肉体労働環境下で作業すると手袋内部が汗で蒸れ不快となる問題が有る。
一方、通気性があり活性炭等の吸着材料を含む布帛を使用した防護手袋に関しても例示されている。それらは通気性により手から発散される汗や水蒸気を効果的に衣服外に放出し、蒸れ感を抑制することができるが、有害化学物質の濃度が高いときなどは、比較的短時間でガス吸着物質による吸着が飽和状態に近づき防護性が低下するという問題と、液状の有機化学物質、有害な微粉塵、細菌、ウィルス等のエアロゾルに対して完全な防護性を得ることが出来ない問題が有る(例えば、特許文献1)。
また液体遮断性でありながら水蒸気透過性でありフィルムを具備する、蒸れ感の少ない防護手袋についても開示されているが、ガス状の有機化学物質についての防護性については明記されておらず、一般的な水蒸気透過性を有するフィルムについては、ガス状の有機化学物質の侵入を招き、着用者の手部を保護できない可能性が高い(例えば、特許文献2)。
特開平8−218210号公報 特開2005−29938号公報
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、ガスの状有機化学物質だけでなく、液状、有害なエアロゾル等に対して透過抑制性があり、水蒸気に対しては透過性を有する選択透過膜とガス吸着層を少なくとも1層以上含む防護材料から構成され、指先操作性が良好で、且つ透湿性を有する蒸れ感の少ない防護手袋を提供することにある。
本発明は上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.ガス状有機化学物質に対しては透過抑制性があり、水蒸気に対しては透過性を有する選択透過膜およびガス吸着性物質を含む層(ガス吸着層)をそれぞれ1層以上有し、かつ手袋の内側から見て、ガス吸着層の外側には少なくとも1層以上の選択透過膜を配置し、選択透過膜とガス吸着層の積層体の厚さが2.0mm以下であり、かつ手袋の縫い目部分が有機化学物質に対して透過抑制性の樹脂でシール加工されてなる防護手袋。
2.選択透過膜の透湿度が60g/m・h以上である上記1に記載の防護手袋。
3.メルトインデックスが200g/10min以下の接着剤により選択透過膜とガス吸着層が積層されている上記1または2に記載の防護手袋。
4.外層付加層および/または内層付加層を付与した上記1〜3いずれかに記載の防護手袋。
5.外層付加層および/または内層付加層を付与した防護手袋の厚みが3.0mm以下である上記1〜4のいずれかに記載の防護手袋。
6.外層付加層の掌部に天然皮革、人工皮革、織物、編物、フェルトから選ばれる滑り止め(保護層)が貼り付けられている上記1〜5のいずれかに記載の防護手袋。
本発明による防護手袋は、選択透過膜とガス吸着層を有することを特徴とする防護材料からなる防護手袋であり、ガス状、液状及び有毒なエアロゾル等に対して防護性を有し、且つ薄い防護材料から防護手袋を作製することにより指先操作性を向上させ、且つ高い透湿度により手袋の内側の蒸れを抑制することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る防護手袋を構成する選択透過膜の素材としては、皮膜形成後に有害化学物質に対して透過抑制性を有する樹脂が限定無く使用可能であり、具体的には、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエステル、共重合ポリエステル、ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリビニルアルコール、セルロース、セルロース誘導体、ポリテトラフルオロエチレン等の皮膜形成性能を有するポリマーで皮膜形成後に透湿性とガス状有機化学物質に対して選択透過能を有する材料であればよい。又、これらの材料を単独、混合、あるいは順次積層して皮膜を形成しても構わない。
選択透過膜は皮膜を形成し単独で用いても構わないが、皮膜の補強あるいは保護のために透湿性のある基材と複合しても良い。基材の透湿性については、選択透過膜の透湿性能を損なわないために200g/m・h以上、好ましくは300g/m・h以上である。強度を維持しながら軽量で柔軟な防護材料とするには、基材の厚さは0.05mm以上0.50mm以下が好ましい。基材にはシート状繊維集合体あるいは透湿性のある微多孔あるいは無孔質のフィルム又は膜を用いることが出来る。
シート状繊維集合体としては綿、麻、毛、絹等の天然繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ナイロン、アラミド、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、アクリル系、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリクラール、ポリアリレート、ポリベンザゾール、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド等の合成繊維からなる織物、編物、不織布等が挙げられる。これら繊維は単独あるいは混紡、交織、交編等により組み合わせてシート状繊維集合体としても良い。
透湿性のある微多孔あるいは無孔質のフィルム又は膜としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、共重合ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、アクリレート等のシート状物が挙げられる。
上記の選択透過膜を形成するポリマーはキャスト法、押出法、射出成型法等により一旦ポリマー単独のフィルムとして製膜する方法、メルトブローン法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピン法等による微細繊維不織布を膜とする方法、該ポリマーの溶液あるいは低重合物を基材にコーティング、ディッピング等により塗工後に乾燥あるいは重合固化する方法などが挙げられる。
選択透過膜を基材と複合させて防護手袋とする場合、透湿性の低下を防ぎ且つ材料の柔軟性を維持したうえでラミネート法により積層できる。選択透過膜と基材の間をポリウレタン系あるいはアクリル酸エステル系エマルジョンで接着する場合や選択透過膜あるいは基材の一部を溶着あるいは融着する場合は全面接着もしくはドット状に部分接着するいずれでも構わない。又、低融点の共重合ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンから成る低目付の不織布、網状体あるいは粉体を介して熱接着することも可能である。尚、選択透過膜と基材とを複合させた場合の厚みは、1.5mm以下であることが好ましい。1.5mm以上では、指先操作性が低下する原因となり、好ましくない。
選択透過膜としてはガス状有機化学物質の透過抑制性と透湿性能とのバランスから鑑みるとセルロース誘導体あるいはポリビニルアルコールが好ましい。
セルロース誘導体の酢化度としては50%以上、好ましくは55%以上であることが好ましい。50%未満であると対象とするガス状有機化学物質によっては効果的な透過抑制性が得られない場合がある。
セルロース誘導体の重合度の指標である6%粘度は、50×10-3Pa・S以上275 ×10-3Pa・S以下、好ましくは70 ×10-3Pa・S以上140×10-3Pa・S以下であることが好ましい。50 ×10-3Pa・S以下であるとガス状有機化学物質に対して効果的な透過抑制性が得られず、275 ×10-3Pa・S以上では材料が堅くなり手袋には適さない。
セルロース誘導体からなる選択透過膜は、セルロース誘導体を60質量%以上含むことが必要であり、好ましくは80質量%以上含むものである。セルロース誘導体の含有量が60質量%未満であると、ガス状有機化学物質に対する透過抑制性を維持しながら、高透湿な材料を得ることができない。ブレンドするポリマーとしては、例えばガスおよび水蒸気に対し耐透過性を有する柔軟なポリマーとブレンドすることにより選択透過膜の透湿性及び透過抑制性をある程度保持しながらより柔軟な選択透過膜が作製できる。柔軟なポリマーとしては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール系共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等があげられる。また必要に応じ可塑剤を併用することにより選択透過膜の柔軟性を向上させることもできる。可塑剤としては、クエン酸トリエチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等がある。
セルロース誘導体の溶媒としては、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物、グリコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素およびジメチルスルホキシド等が挙げられるが、対象とする有害化学物質や生産設備などにより適宜選定できる。
セルロース誘導体からなるポリマー固形分濃度は5質量%以上30質量%以下の範囲が、加工性に優れる。5質量%未満あるいは30質量%を超えると加工性が悪くなる。
本発明で使用する選択透過膜の厚さとしては、3μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上70μm以下であることが好ましい。3μm以下であると、ガス状有機化学物質に対しての防護性が満足できないうえ、十分な強度が得られない。一方、100μmを超えると、透湿性が低下するうえ、材料が堅くなり手袋の材料には適さない。
選択透過膜の目付としては、150g/m以下、好ましくは100g/m以下であることが好ましい。150g/m以上では、軽量で柔軟な手袋の材料になり得ない。
選択透過膜の透湿性としては、60g/m・h以上850g/m・h以下、好ましくは80g/m・h以上750g/m・h以下であることが好ましい。60g/m・h以下では発する汗・蒸気を有効に外部へ放出できず、850g/m・hを超えるとガス状有機物質に対して透過抑制性を維持できない。
本発明の防護手袋材料に用いられる選択透過膜は、透過するガス状有機化学物質の透過濃度が100ppm以下であることが好ましく。さらに好ましくは50ppm以下である。100ppmを超えるとガス吸着層への負荷が多くなり防護できる時間が短くなる。
ここでいうガス状有機化学物質とは炭素元素を1つ以上持つガス状化合物のことである。50以上の比較的大きな分子量をもち、活性炭等のガス吸着性物質が吸着可能なガス状化学物質である。一例を挙げると、農薬、殺虫剤、除草剤に使用される有機リン系化合物や塗装作業などに使用されるトルエン、塩化メチレン、クロロホルムなどの一般的な有機溶剤があげられる。
本発明に使用するガス吸着層としては、活性炭やカーボンブラックなどの炭素系吸着材、あるいは、シリカゲル、ゼオライト系吸着材、炭化ケイ素、活性アルミナなどの無機系吸着材から対象とする被吸着物質に応じ適宜選定することができる。その中でも広範囲なガスに対応できる活性炭は好ましく、特に吸着速度や吸着容量が大きく少量の使用で効果的な透過抑制性が得られることから繊維状活性炭がより好ましい。
活性炭のBET比表面積としては700m/g以上3000m/g以下が好ましく、少量の使用で十分な透過抑制性を得るためには、1000m/g以上2500m/g以下がさらに好ましい。BET比表面積が700m/g未満であると十分な防護性を得るために多くの活性炭が必要となり材料が重くなる。一方、3000m/gより大きくなると吸着したガス状有機化学物質を脱離する問題が起こる。
活性炭の目付としては5g/m以上150g/m以下が好ましく、さらに好ましくは20g/m以上100g/m以下であることが好ましい。5g/m未満であると、吸着できる容量が小さくなり使用時間が制限される。一方150g/mより大きくなると材料が重くなる問題が有る。
少量の使用で効果的な透過抑制性を得るために繊維状の活性炭を使用する方法は有効な手段であるが、その際、使用する繊維状活性炭の原料としては、綿、麻といった天然セルロース繊維の他、レーヨン、ポリノジック、溶剤紡糸法によるといった再生セルロース繊維、さらにはポリビニルアルコール繊維、アクリル系繊維、芳香族ポリアミド繊維、リグニン繊維、フェノール繊維、石油ピッチ繊維等の合成繊維が挙げられるが、得られる繊維状活性炭の物性(強度等)や吸着性能から再生セルロース繊維、フェノール系繊維、アクリル系繊維が好ましい。これらの原料繊維の短繊維あるいは長繊維を用いて製織、製編、不織布化した布帛を必要に応じて適当な耐炎化剤を含有させた後、450℃以下の温度で耐炎化処理を施し、次いで500℃以上1000℃以下の温度で炭化賦活する公知の方法によって繊維状活性炭を製造することができる。
繊維状活性炭をシート化する方法としては、シート基材にガス吸着性物質をバインダーにより接着する方法、あるいは吸着剤を適当なパルプおよびバインダーを含めスラリー状とし、湿式抄紙機により抄造する方法、あるいは活性炭素繊維の原料繊維をあらかじめ製織、製編、不織布化し、必要に応じて耐炎化処理したのち炭化・賦活する公知の方法により吸着シートを得ることができる。
したがって、繊維状活性炭シートの形態としては、織物状、編物状、不織布状、フェルト状、紙状、フィルム状などあげられるが、手袋装着時の運動作業性、身体へのフィット性、柔軟性、積層の容易性から織物状、編物状であることが好ましい。
選択透過膜とガス吸着層の積層手段としては、次の2つが上げられる。第1の方法としては、選択透過膜にシート状または粒状または粉状のガス吸着層を接着剤により接着する。第2の方法は、選択透過膜とガス吸着層のいずれかをあらかじめ作製した後、他方をコーティングまたはディッピングする方法があげられる。
使用する接着剤としては、ウレタン系、ビニルアルコール系、エステル系、エポキシ系、塩ビ系、オレフィン系、アミド系、アクリル系、セルロース系など挙げられるが、接着後の柔軟性を考慮するとウレタン系、ビニルアルコール系、エステル系、アミド系が好ましい。
また使用する接着剤のメルトインデックスとしては、200g/10min以下、好ましくは150g/10min以下であることが好ましい。200g/10min以下とすることにより接着の際、ガス吸着性物質の表面を接着剤が被覆する面積が小さくなり積層による選択透過膜の透湿性の低下やガス吸着性能の低下を抑制することができる。
本願発明で用いる接着剤は、不織布状であることが好ましい。粒子であれば均一塗布が困難であるため、少量で接着すると吸着剤を十分に固着できず、また多量に使用すると硬くなり、更には透湿性や吸着性能の低下を招来するためである。またフィルム状の場合はであれば均一に接着可能であるが透湿性や吸着性能が低下しやすいためである。
内層付加層とガス吸着層をあらかじめキルティングにより積層することは、積層によるガス吸着層の性能低下を抑え、より柔軟な積層材料を得るのに有効な手段である。前記2層をあらかじめキルティングにより積層した後、選択透過膜層を接着剤により積層することにより手袋用の防護材料を得ることができる。
選択透過膜およびガス吸着層の層数は、それぞれ少なくとも1層は必要であるが、柔軟性を高める目的や対象ガスが複数にわたるときなどは、選択透過膜とガス吸着層をそれぞれ必要数選定し重ね合わせて使用することは有効な手段である。
選択透過膜とガス吸着層の積層順序としては、ガス吸着層の寿命を考えると、手袋の内側から見てガス吸着層の外側に少なくとも1層の選択透過膜があることが好ましい。また、選択透過膜を複数用いる場合は、ガス吸着層を保護するために、選択透過膜によりガス吸着層を挟み込む構造としてもよい。
選択透過膜とガス吸着層からなる積層体の質量としては、300g/m以下が好ましく、さらに好ましくは200g/m以下が好ましい。300g/mを超えると指先操作性が劣り、手から発散される汗・蒸気を透湿性だけでは処理できなくなる。
選択透過膜とガス吸着層からなる積層体の厚みとしては、2.0mm以下が好ましく、さらに好ましくは1.5mm以下が好ましい。2.0mmを超えると指先操作性が劣りためである。
図1に示すように選択透過膜とガス吸着層からなる積層材料の最も外側に外層付加層を設けてもよい。外層付加層の目的としては、外部から与えられる機械的な力から選択透過膜およびガス吸着層を保護すること、機械的強度を補うことであり、撥水性と撥油性が付与されている織物、編物あるいは不織布などが好ましい。外層付加層の素材としては、織物、編物及び不織布形態をとれるものは、限定無く使用可能であり、綿、ナイロン、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリベンズアゾール系繊維、フッ素系繊維、ガラス繊維等が使用可能である。
外層付加層としては、JIS L−1092 5.2に記載のスプレー試験を実施した場合の撥水度が4以上、AATCC Test Method 118による撥油度が4級以上である織物、編物、または不織布などが好適に用いることができるが、柔軟性を考慮したものの使用が推奨される。
選択透過膜とガス吸着層からなる積層材料と外層付加層とは、あらかじめ接着剤により接着されている形態でも良いし、柔軟性を考慮し、接着せずに重ね合わせた状態で縫製加工し、手袋を作製しても良い。更に必要に応じて外層付加層へ別の織物、編物、天然皮革、人工皮革、フェルトなどを積層し、滑り止め等を付与しても良い。
図1に示すように選択透過膜とガス吸着層からなる積層材料の最も内側に内層付加層を設けてもよい。内層付加層としては、織物、編物、不織布、開孔フィルム等の材料があげられるが、透湿性、柔軟性の面から粗い密度で製織あるいは製編された織物あるいは編物が好ましい。
内層付加層の目的としては、外部から与えられる機械的な力からガス吸着性物質及び選択透過膜を保護する役割と、着用者の手から発散される汗によるべたつき感を抑制する役割である。
外層付加層および/または内層付加層を付与した積層体の質量としては、600g/m以下が好ましく、さらに好ましくは500g/m以下である。600g/mを超えると指先操作性が低下する原因となる。
また、本発明の手袋素材の厚さとしては、3.0mm以下、好ましくは2.5mm以下であることが好ましい。3.0mmを超えると、指先操作性が低下するうえ、堅くなり手袋の材料には適さない。
上記の材料で手袋を作製する方法は、例えば、透湿膜層、ガス吸着層及び内層付加層の積層体を手型に裁断し、2枚の外周部を熱融着法や縫糸で縫製し、防護性のあるシールテープにより縫製部にシール加工を施す方法によりあらかじめ内側の手袋を作製した後、外層付加層についても、同様に、手型に裁断した2枚を縫製・シール加工して手袋とし、重ねる合わせ手袋とする方法がある。また、外層付加層、透湿膜層とガス吸着層の積層体及び内層付加層をそれぞれ単独で手袋にし、ついでこれらを接着させることなく重ね合わせて3層構造の手袋としても良い。また、それぞれの素材を全て接着させた後、手袋とする方法でも良い。また、内層付加層を具備していない、外層付加層と透湿膜層とガス吸着層からなる手袋でも構わない。
防護手袋は、縫い目からのガス状・液状化学物質の浸透や有害な微粉塵、細菌、ウィルスなどのエアロゾルの進入を防止することが必要であり、かつ透湿性や柔軟性を阻害しないように配慮が必要である。この目的のために、縫製はフラシ縫いで縫製することが好ましい。本発明では、さらに、縫い目からの浸透を防止するために、縫い目をシール加工する。
シール加工では、特にガス状、液状の化学物質に対して透過抑制性がある樹脂で縫い目部分を被覆して目止めする。加工に使用する材料としては、透過抑制性がある樹脂の溶液、透過抑制性でかつ接着性の樹脂フィルム、透過抑制性樹脂フィルムを用いたシールテープなどを使用することができる。シールテープとしては、ガス透過抑制層と接着層を含む2層以上からなるものが使用でき、接着層の樹脂としては、ホットメルト樹脂、低温(150℃以下)硬化型の接着剤や湿気硬化型の接着剤を用いることができる。加工性と加工後のシールテープの耐剥離性を考慮すると、硬化型の接着剤を用いることがより好ましい。また、樹脂の種類は縫い目のシールができるものであれば特に限定されないが、柔軟性、接着性、透湿性の点でポリウレタン系樹脂が好ましく、ポリウレタン系樹脂の中では硬化型のものが好ましい。
シール加工の方法は、縫い目部分に接着剤を塗布後に透過抑制性がある樹脂フィルムをラミネートする方法なども採用できるが、上記樹脂で予め作成したフィルムやテープをシール材として使用する方法が、作業性の点で好ましい。
上記で述べた方法により作製した防護手袋は、手袋を装着した状態での手袋の外側から内側へのガス透過性が1%未満であることが好ましく、0.1%未満であることがより好ましい。1%以上になると人体に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
また、該防護手袋は、手袋を装着した状態での手袋の外側から内側への粒子捕集効率が90%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。90%未満になるとウイルスや細菌などが人体に悪影響を及ぼす可能性があるためである。
次に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、本発明で得られた各種評価、試験値は以下に記す方法によるものである。
[ガス透過性試験法]:
試験装置:図2に示したガス透過性試験装置を使用し、以下の(1)〜(3)の手順で実施した。
(1)1m(幅1×奥行き1×高さ1(m))チャンバー内に防護手袋を装着した手型マネキンを設置し、手袋内・外のガス透過濃度を計測できるようにサンプリングチューブを接続する(尚、手型マネキンと手袋の裾部分に隙間ができないようにビニールテープで完全に密封する。)
(2)ガス洗浄瓶(アズワン社製)中にトルエン特級試薬(ナカライテスク社)を入れ、乾燥窒素でバブリングしたトルエン含有窒素を、チャンバー内に一定時間送気した。このときのトルエンガス初期濃度は約1000ppmとなるように調整する。
(3)防護手袋の内側と外側のガスを一定時間毎にシリンジでサンプリングし、ガスクロマトグラフィ(HP社 HP6890)で測定し、ガス透過性を下記式で算出し、24hrの平均値を求める。
ガス透過性(%)=(手袋内側ガス濃度/手袋外側ガス濃度)×100
[粒子捕集効率測定法]:
試験装置:図3に示した粒子捕集効率測定装置を使用し、以下の(1)〜(4)の手順で測定した。
(1)1m(幅1×奥行き1×高さ1(m))チャンバー内に防護手袋を装着した手型マネキンを設置し、手袋内・外の粒子個数を計測できるようにサンプリングチューブを粒子計測器(株式会社RION製KC−14)に接続する(尚、手型マネキンと手袋の裾部分に隙間ができないようにビニールテープで完全に密封する。)。
(2)BOX内の大気塵をHEPAフィルターで完全に除去する。
(3)ラスキン・ノズル式粒子発生装置及びディフュージョンドライヤー(TSI社製モデル306200)を用いてNaCl粒子をチャンバー内に発生させた。このときのNaCl粒子は平均粒子径0.1μmで、粒子濃度は約50000(個/10−2CF)となるように調整する。
(4)防護手袋の内側と外側の0.3μm以上のNaCl粒子個数を上記測定装置で計測し、粒子捕集効率を下記式で算出する。
粒子捕集効率(%)=(1−手袋内側粒子個数/手袋外側粒子個数)×100
[透湿性]:
JIS L−1099 塩化カルシウム法による。
[比表面積]:
窒素の吸着等温線を求め、これを基にしてBET法により算出する。
[質量(目付)]:
JIS L−1018 8.4及びJIS L−1096 8.4による。
[厚さ]:
JIS L−1018 8.5及びJIS L−1096 8.5による。
[メルトインデックス]:
JIS K−7210による。
[指先操作性]:
手袋を装着した状態で紙を捲る動作を行い、アンケート調査から判定を行った。
[蒸れ感]:
手袋を1hr装着した後の蒸れ感をアンケート調査から判定を行った。
選択透過膜を以下の方法で作製した。酢化度55%、6%粘度70×10−3Pa・Sの酢酸セルロース(ダイセル化学工業株式会社L-30)を使用し、溶媒はメチルエチルケトンとN、Nジメチルホルムアミドの1:1混合溶液を使用し、固形分濃度が10質量%となるように室温で混合撹拌することにより酢酸セルロース溶液を作製した。この溶液を離型紙(リンテック株式会社製)上に流延し、コーティングナイフにより膜厚を調節しながら塗工し、オーブン中で乾燥を行った。70℃で5分間乾燥させた後、120℃で10分間乾燥を行った。得られた選択透過膜の厚さは15μm、目付20g/m、透湿度175g/m・hであった。
ガス吸着層として繊維状活性炭織物を以下の方法で作製した。単糸2.2デシテックス20番手のノボラック系フェノール樹脂繊維紡績糸からなる目付85g/mの平織物を410℃の不活性雰囲気中で30分間加熱し、次に870℃まで20分間、不活性雰囲気中で加熱し炭化を進行させ、次に水蒸気を12容量%含有する雰囲気中、870℃の温度で2時間賦活した。得られた織物状の繊維状活性炭の絶乾目付は50g/m、比表面積11400m/g、厚さ0.40mm、通気性は水位計1.27cmの圧力差で470cm/cm・sであった。
外層付加層を以下の方法で作製した。綿糸40番手を使った平織物に、フッ素系撥水・撥油加工を施し、樹脂固形分で0.54質量%付着させた。得られた織物は、厚さ0.30mm、質量120g/m、剛軟度0.56gf・cmで、通気性は水位計1.27cmの圧力差で80cm/cm・s、撥水度は5、撥油度は6級であった。
内層付加層を以下の方法で作製した。28ゲージ2枚筬トリコット機により、フロント筬にポリエステルフィラメント(82.5dtex、36フィラメント)を、またバック筬にポリエステルフィラメント(22dtex、モノフィラメント)を各々セットして、フロント1−2/1−0、バック1−0/2−3の組織で経編地を編成後、定法により精練し、更に分散染料により染色した。このようにして得られた編地は、厚さ0.32mm、質量60g/m、通気性は水位計1.27cmの圧力差で700cm/cm・s、撥水度5、撥油度6級であった。
[実施例1]
前記選択透過膜に目付40g/m、厚さ0.34mmのポリブチレンテレフタレート製のメルトブローン不織布(タピルス株式会社製)をホットメルトタイプのウレタン接着剤で接着後、ガス吸着層及び内層付加層を、目付20g/m、メルトインデックス60g/10minの通気性不織布状ホットメルト接着剤(呉羽テック株式会社製ダイナック)により接着し積層布とした。その積層布2枚を手袋の形状に裁断しフラシ縫いで縫製した後、縫製部を下記のシール加工を施し内側の手袋とした。
シール加工方法:
前記選択透過膜上に固形分30質量%の硬化型透湿性ポリウレタン樹脂(三洋化成工業株式会社製 サンプレンLQ120)を流延し、コーターにより膜厚を調整しながら塗工し、100℃で乾燥させた。該シールテープを幅20mmに裁断し、手袋の縫い目上に該シールテープを接着面が下になるように載せて圧着後、60℃、RH95%の条件下で24hr湿気硬化させた。
外層付加層については、外層付加層のみを2枚重ね合わせ手袋の形状とし、その2枚を縫製し外側の手袋とした。これらの手袋を重ね合わせることにより防護手袋を得た。なお、防護手袋の材料は、目付350g/m、厚さ1.52mm、透湿度144g/m・hであった。この防護手袋を用いた時のガス透過性試験結果、粒子捕集効率測定結果、透湿性、厚み、指先操作性、蒸れ感の結果をそれぞれ表1に示す。
[実施例2]
目付28g/m、厚み19μm、透湿度が143g/m・hの再生セルロースフィルムを選択透過膜として使用した以外は、実施例1と同様の方法で手袋を作製した。なお、防護手袋の材料は、目付358g/m、厚さ1.52mm、透湿度131g/m・hであった。この防護手袋を用いた時のガス透過性試験結果、粒子捕集効率測定結果、透湿性、厚み、指先操作性、蒸れ感の結果をそれぞれ表1に示す。
[実施例3]
目付32g/m、厚み30μm、透湿度が146g/m・hのPVA系フィルム(クラレ株式会社製ポバール)を選択透過膜として使用した以外は、実施例1と同様の方法で手袋を作製した。なお、防護手袋の材料は、目付362g/m、厚さ1.53mm、透湿度134g/m・hであった。この防護手袋を用いた時のガス透過性試験結果、粒子捕集効率測定結果、透湿性、厚み、指先操作性、蒸れ感の結果をそれぞれ表1に示す。
[比較例1]
目付59g/m、厚み38μm、透湿度が0.46g/m・hのポリフッ化ビニルフィルムを使用した以外は、実施例1と同様の方法で手袋を作製した。なお、防護手袋の材料は、目付394g/m、厚さ1.54mm、透湿度0.34g/m・hであった。この防護手袋を用いた時のガス透過性試験結果、粒子捕集効率測定結果、透湿性、厚み、指先操作性、蒸れ感の結果をそれぞれ表1に示す。
[比較例2]
実施例1において選択透過膜の変わりに目付42g/m、厚さ0.55mmのポリエステルスパンレース不織布(東洋紡績株式会社製)を使用し、さらにガス吸着層として、単糸2.2デシテックス20番手のノボラック系フェノール樹脂繊維紡績糸からなる目付230g/mのスムース編物を400℃の不活性雰囲気中で30分間加熱し、次に870℃まで20分間、不活性雰囲気中で加熱し炭化を進行させ、次に水蒸気を12容量%含有する雰囲気中、870℃の温度で2時間賦活することで作製した絶乾目付125g/m、厚さ1.38mmである編物状の繊維状活性炭を使用し、実施例1と同様の方法で手袋を作製した。なお、防護手袋の材料は、目付477g/m、厚さ3.09mm、透湿度403g/m・hであった。この防護手袋を用いた時のガス透過性試験結果、粒子捕集効率測定結果、透湿性、厚み、指先操作性、蒸れ感の結果をそれぞれ表1に示す。
Figure 2008190095
実施例1〜3は、ガス透過抑制性、粒子捕集効率、透湿性、装着性、指先操作性に優れ蒸れ感が少ない好適な防護手袋であるのに対し、比較例1は透湿性が低いことから、時間の経過と共に、蒸れが発生する結果であった。比較例2は、時間の経過とともに粒子の透過が生じ防護性が劣り、また、指先操作性についても劣る結果であった。
本発明の防護手袋は、外部から皮膚に付着すると有害なガス状、液状及び粒子状の有機化学物質の付着を防止し、かつ高い透湿性により汗などによるべたつきも少なく、指先操作性が良好な防護手袋であり、産業界に寄与することが大である。
本発明の防護手袋を構成する積層体の一例を示す模式断面図である。 ガス透過性試験法を示す概略図である。 粒子捕集効率測定法を示す概略図である。
符号の説明
1:外層付加層
2:選択透過膜
3:ガス吸着層
4:内層付加層
5:チャンバー
6:防護手袋
7:手型マネキン
8:サンプリングチューブ(手袋内側)
9:サンプリングチューブ(手袋外側)
10:ガス洗浄瓶
11:チャンバー
12:防護手袋
13:手型マネキン
14:サンプリングチューブ(手袋内側)
15:サンプリングチューブ(手袋外側)
16:粒子計測器
17:粒子計測器
18:ラスキン・ノズル式粒子発生装置
19:ディフュージョンドライヤー

Claims (6)

  1. ガス状有機化学物質に対しては透過抑制性があり、水蒸気に対しては透過性を有する選択透過膜およびガス吸着性物質を含む層(ガス吸着層)をそれぞれ1層以上有し、かつ手袋の内側から見て、ガス吸着層の外側には少なくとも1層以上の選択透過膜を配置し、選択透過膜とガス吸着層の積層体の厚さが2.0mm以下であり、かつ手袋の縫い目部分が有機化学物質に対して透過抑制性の樹脂でシール加工されてなる防護手袋。
  2. 選択透過膜の透湿度が60g/m・h以上である請求項1に記載の防護手袋。
  3. メルトインデックスが200g/10min以下の接着剤により選択透過膜とガス吸着層が積層されている請求項1または2に記載の防護手袋。
  4. 外層付加層および/または内層付加層を付与した請求項1〜3のいずれかに記載の防護手袋。
  5. 外層付加層および/または内層付加層を付与した防護手袋の厚みが3.0mm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の防護手袋。
  6. 外層付加層の掌部に天然皮革、人工皮革、織物、編物、フェルトから選ばれる滑り止め(保護層)が貼り付けられている請求項1〜5のいずれかに記載の防護手袋。
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