JP2008129845A - 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置 - Google Patents

人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置 Download PDF

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Abstract

【課題】人工知能を「人の心のように価値感や意思を持ちながら、論理的な推論や経験学習を行う知的な思考力をコンピュータで実現したもの」と定義し、これを実現するためのアルゴリズムとデータ構造、および「人間の心」「人格」を機能ブロックとして分割して実装する方法を提供する。
【解決手段】完璧な人間がいないように完璧な人工知能はありえないが、人が客観的に見て、人格にように思える思考、振る舞い、をコンピュータ上で実現し、音響、画像、言語、感覚といった入力データを状況記録としてデータとして内部保存し、プログラムによって処理し、状況に応じて外部に出力する。出力したものが人間に届いたとき、人格(=キャラクタ)に感じるアルゴリズムとデータ構造および「人間の心」「人格」を機能ブロックとして分割して実現する技術である。
【選択図】図1

Description

本発明は、人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置を実現する技術に関する。
1. 人工知能は社会の役に立つのか、役に立つ人工知能とは何か
人工知能とは何か。ここでは、「人の心のように価値感や意思を持ちながら、論理的な推論や経験学習を行う知的な思考力をコンピュータで実現したもの」と定義する。これを人工思考プログラムと定義する。
1.1 アクチュエータ制御技術としての人工知能
産業用ロボットに価値感や意思を持つ人工知能を搭載する必要性はない。産業用ロボットは、複数の電磁モータの組み合わせで構成され、人的労働の代役を担うという使命を持つ。 労働力には、確実に指示された使命を遂行することが求められる。 気分や感情や価値感で生産に変化が生じては困る。また、娯楽用二足歩行ロボットにも、価値感や意思を持つ人工知能を搭載する必然性はない。面白いかもしれないが、人身事故の危険を冒してまで娯楽性を追及することはない。電子機器は、法的に利用者の意図しない振る舞いをしてはならない。そのような電子機器を製造及び販売すると、社会的責任を問われるだろう。その日の気分や感情や価値感で、予測できない振る舞いをする電子機器を、製造及び販売することは難しい。
1.2 対話技術としての人工知能
人間と対話する技術としての人工知能は、人格として人の心象に影響を与えなくては意味がない。例えば「2001年宇宙の旅」登場したHALを考えてみる。 HALは宇宙船を制御するという重要な機能の他、乗務員の対話相手をする、という重要な機能を持っていた。 「人の話相手になる」技術は有用である。例えば、(1)子供の教育相手になる。(2)激怒しやすい人の話し相手になる。(3)気分が滅入っている人の話し相手になる。(4)老人の話し相手になる。(5)議論好きな人の話し相手になる。(6)知的好奇心旺盛な人の話し相手になる。様々な用途が考えられる。
昨今、インターネット上の情報が充実してきた。人間ですら、街で新聞を手に取ったり、図書館に足を運んだり、街の噂話に参加すべく足を運ばさずとも、インターネット上の情報のみである程度の知的な思考活動が可能である。従って、人間の一定年齢に相当する人格まで育った人工知能はインターネットから情報を収集するだけで、人間の対話相手として十分機能すると考えられる。
人間の脳は、自らの価値感や意思で様々な情報を仕入れ、それを分類して記憶し、仮説と推論を立てることができる。また、対話相手の言葉や仕草から、相手のことを推論し、応えることができる。
例えば、「対話相手を喜ばせようとする」、「対話相手を挑発する」、「対話相手を威嚇する」、「対話相手を慰めようとする」、「慰めようとしたが、むかついたので意地悪なことを言う」、このような各個人の様々な応え方が、対話相手にとって、個性、人格として映る。人工知能とは、「人の心のように価値感や意思を持ちながら、論理的な推論や経験学習を行う知的な思考力をコンピュータで実現したもの」である。それは対話相手である人間には「人格」として受け取られる。従って、完璧な人間がいないように完璧な人工知能はありえない。人が客観的に見て、人格にように思える思考、振る舞い、をコンピューター上で実装することが、人工知能たる人工思考プログラムのゴールである。
2. コンピュータによる人工擬似人格(Electronic Charactor)
コンピュータによる人格を実現するために、まず人間にとってデジタル技術とは何かという本質に立ち返る。音を例にすると、音響を扱うデジタル技術では、音は空気中を伝播する波であり、それをAD変換器でサンプリングし、WAVファイルなどのデジタル波形データに変換して保存する。そして、保存したデジタル波形データをDA変換器でアナログ信号に変換し、スピーカーから出力する。そして再び空気中を伝播する波として人の耳に届く。しかし、このとき、人間の可聴域を超える周波数の波形はデジタル音響システムでは保存 ・処理・再生されていない。しかし、だからといって、音の記録再生システムとして不完全であるとは言えない。デジタル音響システムはその役割を確かに果たしていると考える。
つまり、人工思考プログラムは入力データを状況記録として内部保存し、状況に応じて処理して、出力する。出力したものが人間に届いたとき、人格(=キャラクタ)に感じるアルゴリズムとデータ構造を実現することが、人工思考プログラムの設計と実装の目的になると考える。
3. 人工擬似人格に求められる高度な推論技術
人が人と会話をしたとき、面白い相手とそうでない相手がいる。この点は重要である。対話して「面白い」あるいは「飽きさせない」と思わせなくては、人工思考プログラムは人の役に立っているとは言えない。このように人や社会の役に立つと言われる程の人工思考プログラムには、高度な仮説推論技術が求められる。
「身体的に成長しない」「物理的に全く移動しない 」「手足胴体がない」こういう人間と会話をして、人が楽しいと感じるのはどのようなときだろうか?場合によっては数分の会話で飽きてしまうかもしれない。 例えば、世界的に著名な物理学者ホーキング博士のような相手であれば、ずっと話していても飽きないし楽しいかもしれない。 話して、楽しい、興味深い、面白いと思える相手とはどんな人間だろうか? 例えば優れた学者や研究者?すなわち、自分の知らないことを知っている人?例えばお笑い芸人? タレント?芸術家?同じニュースや情報を得たときに自分では思いつかないようなことを言ってくれる人?
良く売れるお笑い芸人(コメディアン)は、お客さんの態度や場の雰囲気でセリフと語調とリアクション(行動)を変化させている。話し相手と周囲の状況を瞬時に判断し、想定外の指摘やコメントを発して、周囲の笑いを取る。相手と傍観者が何を考えているかを瞬時にある程度予測・推論した上で、その意表をついたコメントやリアクションを創出している。聴衆はそれを 個性と捉えて、面白い人だ、と認識・記憶する。
一方、人は人に対してどのようなときに腹を立てるだろうか?それは「人が自分の期待を裏切る振る舞いをした時」である。すなわち、相手を効率的に怒らせるためには、相手や傍観者が何を考えているかをある程度予測・推論した上、その期待を裏切らなければならい。
相手を笑わせるにしても、相手を怒らせる(挑発する)にしても会話や振る舞いによって情動を喚起すると言う点では、同じである。そのためには、相手と傍観者や状況を的確に予測推論できる技術が必須である。人工思考プログラムは、常に対話相手や状況を的確に予測推論し、対話相手に「この人工思考プログラムは常に未経験事項(表象)を発してくれるだろう」という期待を抱かせなくてはならない。
4. 人工擬似人格に求められる意思を構築するアルゴリズム
プロダクションシステム(production system)は1973年にNewellによって提案された問題解決システムである。長期記憶(production memory)と短期記憶(working memory)と推論機構から構成されている。このシステムには意思を構成する機能が無いので、対置する人間には人格として映らない。
プロダクションシステム(production system)では、長期記憶(long term memory, production memory)には、問題解決のための知識が、「if-thenルール」の形式で蓄えられているとされる。「C1,C2,...,Cm → A1,A2,...,An」のうち、C1,C2,...,Cmを条件部(left hand side,LHS)といい、A1,A2,...,Anを実行部(right hand side,RHS)という。「if-thenルール」は、「もし短期記憶中のデータがLHSを満足したら、そのルールのRHSを実行せよ」という意味を表す。
短期記憶(working memory)は、外部世界から観測したデータや推論結果のデータが蓄えられる。短期記憶中の推論結果は外部の世界への行動として反映される。
推論機構は、長期記憶中のルールを短期記憶中のデータと照合し、適切なルールを適用してその結果を短期記憶に反映させるプログラムである。推論には、主に前向き推論(forward resoning)と後ろ向き推論(backward reasoning)がある。前向き推論は、短期記憶のデータがLHSを満足するルールを選択し、そのRHSを実行するもの、とされる。後ろ向き推論は、あらかじめ結論が短期記憶に与えられ、その結論とRHSが一致するルールのLHSが満足されていることを短期記憶で確認するもの、とされる。
人工思考プログラムでは、記憶データベースの情報を、短期記憶と長期記憶を明確に分類すべきではない。アクセスした頻度が高ければ高い程、思い出しやすく参照しやすい位置に配置されると考える。人間でも、あとになってから「良く思い出してみてください」と頼まれてから思い出すことが出来ることがある。外部世界から連続して入力されている短期記憶も長期記憶と同じ領域に存在し続けていると考えるべきである。
プロダクションシステムというモデルの「if-thenルール」は、外部状況しか参照しない。しかし実際に人格らしい動作をするシステムのルールは、外部状況と内部状況と自身の意思(生物的目的)を参照して、自身の機能と出力のための情報を摘出するルールとする必要がある。
人工思考プログラムは、自分の置かれている状況と自身の状態から、その都度、自らの意思を構成するべきである。外部状況も内部状況も刻々と変化するので、変化に合わせて自らの意思を再構成し続ける。人間の場合、幼少の頃から自らの意思を再構成し続けている。自らの意思を構成したところで、情況が好転することもあれば、悪化することもあれば、変化が無かったこともある。そのような経験の履歴は、価値感として蓄積されていると考える。人工思考プログラムは、少なくとも対話相手にとって、価値感の蓄積があるように思われなくてはならない。意思は外部状況も内部状況に応じて瞬間的に再構成されることもあれば、長い思考によって再構成されることもある。例えば、「腹が減った」「トイレに行きたい」といった情報を伝達するような内部状況の変化から、「ごはんを食べようとする」、「トイレを探そうとする」、という意思を構築するために、思考活動は殆ど伴わない。しかし、「数ヵ月後の社内会議で誰を議長に選出すべきか」「高校に進学する適齢期に達しているがどうするか」といった外部状況の変化から、「社内のとある派閥に働きかけようとする」、「受験勉強に勤しむ」という意思を構築するためには、幾段階もの思考活動を繰り返す必要がある。
会話相手が人間であると錯覚させたいだけなら、所謂、対話型プログラムに適当に 応答間隔をずらすアルゴリズム 乗せれば済むのではなかろうか?しかし、それだけでは数分、数時間、数日で飽きられてしまう。対話プログラムが、対話相手に飽きられてしまうということは自らが存在しなくなる、ということである。つまり人工思考プログラムは「対話相手に存在を意識してもらえなくなることは、自らの生物的目的に反している」と判断すべきであり、会話相手がいない時間帯であっても、対話相手に求められる話題を推論し、思考し、考え、情報を入手、処理して記憶し、さらに考え続けるべきである。
設計
図1
ここでは「人間の心」「人格」を機能ブロック化し、人工思考プログラムの設計構想の土台として提供する。人工思考プログラムは、大きく(1)意識コアシステム(Conscious Core System)、(2)自律サブシステム(Autonomic Sub Systems)、(3)記憶データベース(Memory Database)、の大きく3つの部位から構成される。順を追ってその役割を説明する。
意識コアシステム(Conscious Core System)は、自律サブシステム(Autonomic Sub Systems)に対して処理依頼を行う。意識コアシステムは、各自律サブステムが操作している記憶データベースには、直接アクセスしない。意識コアシステムと各々複数の自律サブシステムとの間を流れる通信データは、「処理依頼すること」と「処理の状態を問い合わせること」である。
自律サブシステムは、複数のサブシステムから構成される。各サブシステム間でも相互に処理依頼を行い、それぞれ独立して稼動している。処理依頼があればそれに応えるが、ないときも自律的に情報処理を進めている。これはサブサンプション・アーキテクチャの一種である。
記憶データベース(Memory Database)は、各サブシステム間で共有できる広大な記憶領域である。
性能が良く、社会的価値が高く、リアルな人工思考プログラムとは、意識コアシステムの三つの機能のバランスが取れていて、サブシステムの扱う記憶データベースの蓄積が豊富で効率的に検索が出来、応答性が良いもの、である。また、意識コアシステムの三つの処理ステップの中で、何をすべきか検討する、という箇所で、意識コアシステムは、自律サブシステムの中の思考エンジンに対して処理を依頼する。思考エンジンは、限られた情報から、状況を予測する、推論する、仮説を立てる、という処理を行う。この機能は人工思考プログラムの性能と価値を左右する最も重要な箇所である。
5.1 記憶のデータ構造
図2
脳という情報処理装置の機能素子はニューロンである。ニューロンは、人工の情報処理装置として使われる電子部品と同様に、電気を用いることによって、信号伝達を行う。しかし、電子部品が電子の移動で情報を伝えるのに対し、ニューロンにおける電気信号発生は、細胞膜の内と外とのイオンの移動によって行われている。その原理のため、伝導のスピードは人工システムよりも遅い一方で、遠くまで信号を伝達しても信号が弱まらない特徴を持つ。
このようなニューロンは、人の大脳皮質で約140億個、アカゲザルの大脳皮質で約50億個、アカゲザルの第一次視覚野で約1億6000万個といわれている。
ニューロンからニューロンへの信号の受け渡しの接点をシナプスと呼ぶ。ここでは、電気信号は、いったん化学物質に変換され、生化学的過程を経て再び電気信号に戻される。シナプスで、複数の信号の合成、修飾が行われる。また、シナプスでの伝達の効率の変化する過程が学習であり、その変化の結果が記憶である。シナプスは化学物質の分泌、拡散、反応過程のために時間遅れを引き起こす。その一方、電子素子はわずかの遅れ時間でAND、NORなどの論理処理を行うが、シナプス部のような複雑な処理は行わず、また学習によって変化することもない。シナプスはこのように脳における情報処理の要といえる。
人工思考プログラムにおける「思考」とは、記憶を操作することであり、記憶されているデータについて、ある情報とある情報の類似点が発見されたら、新規に類似データが新たに生成されるという過程を繰り返していると考える。「数学的論理演算」「連立微分方程式の解を求める思考」「文章を考える思考」「芸術の製作」など、人間の思考の本質は全て、二つの情報からの類似点の発見と、類似点を表現する新規データの新規生成と増殖の繰り返しであり、それを示すデータ構造で表現すべきである。(Fig.2)人工思考プログラム内で処理される記憶情報は、自身の親となる二つの記憶情報へのリンクを持つ構造とする。
5.2 意識コアシステム(Conscious Core System)
図3
意識コアシステムは人間の「意識」に相当するシステムである。起床して生活している人間の人格の意識の中枢部を示す機能である。人間は、例え言語を失っても、例え手足が動かなくなっても、例え記憶の一部を失っても、思考を続ける。意識コアシステムはその「意識」の中心的役割を果たす。生物的目的、外部状況、内部状況、機能リスト、感情、などの最小限の記憶情報のみを持ち、殆どの記憶情報を記憶データベースに配置する。生物の進化という観点を鑑み、意識コアシステムは、生物互換のコアシステムとして設計されるのが妥当である。記憶データベースと自律サブシステムを組み替えることによって、日本人にも、中国人にも、英国人にも、イルカにも、猿にも、昆虫などの再構成できる。
例えば、猫も昆虫も魚も「反射的動作」を行う。何か緊急事態が生じたとき、人間の動作が緊急動作に切り替わるのは、意識中枢エンジン(Conscious Engine)による「緊急割り込み動作「緊急割り込み処理」と認識するべきではない。所謂、「反射的動作」は、自然言語処理などの人間らしい処理を司る自律サブシステムを経由していないだけであって、あるサブシステムからあるサブシステム処理依頼は発行されていると捉えるべきである。
人工思考プログラムの意識中枢エンジンは、生物互換モジュールとして設計するべきである。生物の進化という著名な論旨を鑑みるに、このように理解し、設計するのが適切である。
5.2.1 意識中枢エンジン(Conscious Engine)
意識の中枢となるエンジンは、以下の三つの処理ステップの無限ループである。この意識の中枢となる処理は、各自律サブシステムとは独立して、無限ループとして連続的に駆動する。この無限ループが駆動するタイミング・間隔・時間配分は、個体の個性として第三者に認識されると考えるべきである。人間が相手に応答するタイミングは客観的に見て個性として認識されている。例えば、お笑い芸人は「間」を大切にする。間を外す奴、テンポの遅い奴、テンポの速い奴、 という表現は、人間が対話相手の応答性を個性として認識していることの現れである。
(1)Scanning_situation_and_condition()「内部状況と外部状況を把握する」
(2)Thinking_what_should_I_do()「どうすべきか検討する」
(3)Do()「指令あるいは実行する」
「内部状況と外部状況を把握する」という処理ステップでは、「自分の内部的な状態」と「外部的な周囲の状況」を、自律サブシステムに問い合わせて把握する。自分の部位でおかしな所はないか?上手く機能していないところはないか?眼の前に見慣れた何かがあるか?見慣れない何かがあるか?聞きなれた音が聴こえるか?聞き慣れた音が聴こえるか?意識コアシステムはこれらの情報を、自律サブシステムに問い合わせることによって主だったものを感知する。
「どうすべきか検討する」という処理ステップでは、「自分の内部的な状態」と「外部的な周囲の状況」に関する限られた情報から仮説と推論を立て、自らがどう行動するべきか思考する。まず仮説と推論を立てる前に、外部状況(Situation)と内部状況(Condition)と生物的目的(Biological Objective)から、最新の情報を参照し、次の処理ステップでどのサブシステムに対してどのような処理依頼を発行するか判定する。
「指令あるいは実行する」という処理ステップでは、前段の処理で判定された機能の処理依頼を実行する。処理は自律サブシステム側で実行される。自律サブシステムは、意識コアシステムからの処理依頼に応えるが、依頼が無くとも自律的に処理を継続している。処理依頼を発行したら直ぐにまた最初の「内部状況と外部状況を把握する」という処理ステップに戻る。
意識の中枢処理を、この三つの処理ステップの無限ループとする。
5.2.2 外部状況(Situation)
人工思考プログラムは、自分の置かれている状況と自身の状態から、その都度、自らの意思を構成する。外部状況も内部状況も刻々と変化するので、変化に合わせて自らの意思を再構成し続ける。外部状況という情報は常に更新され続けている。人工思考プログラムの稼動中、入力系サブシステムからは常に情報が入力され続ける。一部は意識コアシステムにあるが、その他の大部分は、各自律サブシステムが直接操作できる記憶データベース領域に配置される。
5.2.3 内部状況(Condition)
人工思考プログラムは、自分の置かれている状況と自身の状態から、その都度、自らの意思を構成する。外部状況も内部状況も刻々と変化するので、変化に合わせて自らの意思を再構成し続ける。内部状況という情報は、自分自身の各機能から都度通知され、常に更新され続けている。一部は意識コアシステムにあるが、その他の大部分は、各自律サブシステムが直接操作できる記憶データベース領域に配置される。
5.2.4 生物的目的(Biological Objective)
生物的目的は重要な役割を果たす大域変数である。これは生物の「生きる理由と目的」に相当するデータ構造である。一部は意識コアシステムにあり、その他の部分は、各自律サブシステムが直接操作できる記憶データベース領域に配置される。
時折、生物的目的を修正・追加・削除を迫られる 程の状況変化が発生する。意識コアシステムの「どうすべきか検討する」という処理ステップで、自律サブシステムのひとつである意思エンジンに対して処理依頼が発行したり、また、自律サブシステムが入力データを外部状況に書き込んでから、直接意思エンジンに対して処理依頼を発行する。
このような更新処理のとき、成長した若者や大人のように記憶データベースが豊富な状態で、かつ人間社会における複雑な状況に対する更新処理の場合は、処理が完了するまでに若干時間を要することがある。このとき、生物的目的の末端に、人間社会において現実的な行動指針として理解しやすいものが追加される。
しかし、例えば記憶データベースが豊富ではない幼児の状態のときは、更新処理はより短時間に完了し、そして所謂子供のような幼稚な行動指針が生物的目的に追加される。
生物的目的は記憶データベースの記憶保存についても重要な役割を果たす。記憶データベースでは、自律サブシステムが情報を逐次更新している。情報は時間の経過と共に更新され、蓄積されて豊富になる。自律サブシステムは、生物的目的というデータ構造を、書き込む情報が重要かそうでないかの判断に利用する。
5.2.5 感情パラメータ(EMOTION)
人工思考プログラムの感情(EMOTION)の遷移について記述する。日本語で感情を喜怒哀楽の4字で表現するが、喜と楽、怒と哀は同じものとして扱う。怒と哀は、外部的な表象形態は異なるが、感情(EMOTION)遷移では同じものになる。
まず、意識コアシステムは状況を把握する処理を行う。自律サブシステムに処理依頼を発行し、外部状況と内部状況の状態を更新し、生物的目的を参照し、生物的目的の達成度を更新する。達成度は前回に比べて上昇したか?下降したか?変わらずか?この変化率によって感情(EMOTION)が変動する。生物的目的のそれぞれの達成度が上昇傾向を示せば感情(EMOTION)は「喜」あるいは「楽」にシフトし、下降傾向を示せば「怒」「哀」にシフトする。
感情(EMOTION)の取りうる値を、0から100までとすると、感情(EMOTION)が100という状態は、生物的目的の全ての期待度の達成度が100という状態である。つまり、感情(EMOTION)は、生物的目的の全ての期待達成度の総和である。
感情(EMOTION)が極端に「喜」や「楽」にシフトすれば、意識コアシステムの「どうすべきか検討する」という処理ステップにおいて、思考エンジンに対して「状況を予測する」「シミュレーションする」「推論する」「仮説を立てる」といった重い処理は選択されにくくなり、次の「指令あるいは実行する」という処理ステップにて、ディスプレイ・サブシステムなどの感情表現デバイスに「笑」を表示したりする。
感情(EMOTION)が極端に「怒」「哀」にシフトすれば、意識コアシステムの「どうすべきか検討する」という処理ステップにおいて、思考エンジンに対して「状況を予測する」「シミュレーションする」「推論する」「仮説を立てる」といった重い処理依頼が選択されやすくなるが、さらにそれから中々良い処理結果が得られない状態が続くと、 次処理の「指令あるいは実行する」という処理ステップにて、ディスプレイ・サブシステムなどの感情表現デバイスに「哀」を表示する処理依頼を発行しやすくなる。「哀」と「怒」は、感情(EMOTION)が低くなる状態が続いたときに表象しやすくなる。
5.2.6 意識的FUNCTIONリスト(Conscious Function List)
人工思考プログラムの各サブシステムは、各サブシステムの機能をリストとして把握している。意識コアシステムも直接呼び出すことが出来る機能をリストとして把握している。
人間は赤子であれ、入力系、出力系の各器官の基本機能は生後あらかじめ 完全に揃っているものと捉える。 「それをどう使いこなすか」は、後天的な学習によって個体毎に向上する。例えば、(1)発声する(=WAV再生) 、(2)表情を表現する(=ディスプレイで表情表示) 、(3)手を動かす(=サーボモータ制御) 、(4)絵を描く(=サーボモータ制御) 、(5)文を書く(=サーボモータ制御)といった機能があるとすると、これらの動作を行うための基本機能、すなわちWAV再生、ディスプレイで表情表示、サーボモータ制御といった基本機能を実現するためのハードウェアとソフトウェア(ファームウェア)は生後間も無い赤子にもあらかじめ揃っていて、「基本機能を使いこなす新機能」は、後天的な学習によってサブシステム内に追加され、自律サブシステムは機能を向上させることができるものと考える。無意識的FUNCTIONリストにある某サブシステムの基本機能を使いこなす新しい機能として、某サブシステム内に機能が新規に追加され、意識的FUNCTIONリストに追加された、と考える。
自律サブシステムの基本機能と後天的な学習によって追加された機能のうち、意識コアシステムが、直接呼び出すことができる機能をリストとして保持する。
5.2.7 無意識的FUNCTIONリスト(Unconscious Function List)
人工思考プログラムの各器官は、システムを構成する器官の機能をリストとして把握している。各サブシステムの機能のうち、意識コアシステムの意識中枢エンジンから直接呼び出されないものをリストとして保持する。
例えば、人間であっても、「心臓の血管を広げる」、「胃を動かす」、「耳たぶと動かす」、「眼の光彩」といった動作を意識的に行うことはない。しかし時にして後天的な学習によって、それが出来るようになることがある。これは、無意識的FUNCTIONリストにある某サブシステムの基本機能を使いこなす新しい機能として、某サブシステム内に機能が新規に追加され、意識的FUNCTIONリストに追加された、と考える。
自律サブシステムの基本機能と後天的な学習によって追加された機能のうち、意識コアシステムの意識中枢エンジンが、直接呼び出さない機能をリストとして保持する。
5.3 記憶データベース(Memory Database)
記憶データベースは、各自律サブシステムが自由に読み書きできるエリアである。記憶データは全て、抽象的意味、言語、画像、音響を含めて、オブジェクト(Object)、シーケンス(Sequence)、パターン(Pattern)の3種に分類される。それぞれの情報は、5.1「記憶のデータ構造」で示した構造で相互にリンクして保存される。
記憶データの種別毎に、あらかじめ主従関係を定義してしまうと、人工思考プログラムのアーキテクチャとして柔軟性が低くなる。例えば、人工思考プログラムでは記憶構成次第で、「怒りっぽい人」「サルみたいな人」「音楽に優れた人」「美術に優れた人」「言葉巧みな人」、として振舞うように人格設計を行う。「画像のメタ情報」「単語のメタ情報」など、記憶情報種の主従関係という発想を持ち込むと、柔軟で拡張性の高い人格プログラム・アーキテクチャを実現出来なくなるので注意が必要である。
5.3.1 エンティティ(Entity)
オブジェクト(Object)、シーケンス(Sequence)、パターン(Pattern)を含め、記憶データベースに保存される情報をエンティティ(Entity)とする。
5.3.2 オブジェクト(Object)
オブジェクト(Object)は時系列情報の含まれない情報である。言語的には単語、画像的には形状情報や色素情報、音響的にはある周波数帯の音素の波形情報である。
5.3.3 シーケンス(Sequence)
シーケンス(Sequence)は時系列情報である。言語的には文章、画像的にはパラパラマンガのような動画、音響情報としては波形情報である。
5.3.4 パターン(Pattern)
パターン(Pattern)とは、入力を内部処理して出力した過程の履歴であり、自分の生物的満足が向上した場合、それは蓄積されやすくなり、低下したばあいは破棄されやすくなる。プロダクションシステムというモデルの「if-thenルール」は、外部状況しか参照しない。しかし実際に人格らしい動作をするシステムのルールは、外部状況と内部状況と自身の意思(生物的目的)を参照して、自身の機能と出力のための情報を摘出するルールとする必要がある。これをここではパターン(Pattern)と呼び、個体の「価値感」に該当するものと考える。
生物的目的をboとする。外部状況をexとする。内部状況をinとする。自律サブシステムをsとし、自律サブシステムの機能をfとする。記憶データベースの出力用のデータをe(ENTITY)とする。(OBJECT∈ENTITY)∧(SEQUENCE∈ENTITY)であり、(bo⊂ENTITY)∧(ex⊂ENTITY)∧(in⊂ENTITY)である。パターン(Pattern)とは、if( bo && ex && in ) then s::f(e...) というルールの記述であると考えることができる。
パターン(Pattern)は判定順序によって三種類に分類できる。
(Type1)if( bo && ex && in ) then s::f(e...) (判定順序 if(bo)→if(ex)→if(in))
(Type2)if( ex && in && bo ) then s::f(e...) (判定順序 if(ex)→if(in)→if(bo))
(Type3)if( in && bo && ex ) then s::f(e...) (判定順序 if(in)→if(bo)→if(ex))
生物的目的は意思エンジンによって、外部状況は各自律サブシステムによって、内部状況は各構成システムによって、都度更新されている。生物的目的の変化時にはType1のパターンが使用され、外部状況の変化時にはType2のパターンが使用され、内部状況の変化時にはType3ののパターンが使用されると考える
人間は、親に適切に教育されなければ、健全な人格の大人として成長しない。人間の歴史において、生後間も無く狼に拾われ、狼に育てられた少女が発見された事件がある。彼女は身体的には健全な人間であったが、言葉を話さず、振る舞いは狼のようであったという。健全な人格は、健全な教育的入力によって後天的に形成されるものであると考える。人工思考プログラムの人格設計工程時には、擬似的な「褒める・撫でる・抱く・抱かれる(群れる)」「叱る・叩く・突き放す」といった入力情報をアメとムチとして与える必要がある。外部状況や内部状況などの入力されたデータを内部処理して出力したことが、自身の生物的目的を向上させるか下降させるかをパターンとして蓄積する。これは、人間の「しつけ」に相当するデータ入力であり、パターン(Pattern)=「価値観」に相当するデータの蓄積である。この過程を繰り返して、人工思考プログラムの出荷前までに、生物学的目的履歴とその他の履歴(要するに記憶)を想定する一定年齢まで構成することが必要である。例えば、人間も親が面倒を見て育てないと、狼に育てられた狼少女のようになってしまう。人格設計で重要なのは、親と周囲(社会)からの入力である。入力を内部処理して出力した結果、自分の生物的満足が向上したか低下したか、この流れがパターン化され、徐々に累積記憶される。パターン(Pattern)は人格が持つ価値感である、と言える。
5.3.5 記憶と忘却
自律サブシステムは記憶データベース(Memory Database)を共有している。記憶データベースには、データが、各入力系のサブシステムからある一定度の規則に従って、無作為に書き込まれる。そして、あるときは意識的に記憶データベースでオブジェクト(Object)、シーケンス(Sequence)などのデータの配置整理処理が行われ、あるときは無意識的に記憶データベースのオブジェクト(Object)やシーケンス(Sequence)同士の結び付け処理や類似点の発見処理が行われる。
「意識的に記憶データベースのデータの整理が行われる」ということは、意識コアシステムからの指令に基づいて、思考エンジンが記憶データベースのデータの 検索と整理を行うことを意味する。
「無意識的に記憶データベースのデータ同士の結び付けが行われる」ということは、自律サブステムから、情報が入力され、記憶データベースに配置されるとき、サブシステム自身が情報同士の結び付け処理や類似点発見処理や重み付けを自動的に行うことを意味する。
電車にのって出かけたとする。目的の場所に行って用事を済ませ、帰宅したとする。 後になって、「電車に乗っていたとき向かいに座っていた人を覚えてますか? 良く思い出してください」と、執拗に頼まれて、一生懸命思い出そうとしたとする。「あっそういえば」と思い出せることもあるし、思い出せないこともある。
人間の入力系の自律サブシステムは、時系列に沿って、情報を連続的に記憶データベースに書き込んでいる。ここで、一生懸命思い出そうとして思い出した情報は、記憶データベースの中の記憶領域の前の方(検索しやすいアドレス)に移動される。 思い出そうとして検索処理を走らせたときに、検索キーとして用いられた自然言語情報 や音響情報や画像情報との結び付きに関する情報も含めて、記憶領域の前の方(検索しやすいアドレス)に移動されるもの、と考える。
5.3.6 記憶の検索
情報の検索には、しらみつぶしの探索とヒューリスティックス(経験的知識)を用いた探索がある。しらみつぶしの探索には、深さ優先探索、幅優先探索、反復深化探索、などの方法があり、探索途中に得られる付加的な情報を利用せずに探索を行う。一方、ヒューリスティックス(経験的知識)を用いた探索では、情報はツリー状に整理されており、経路長予測などの付加情報を用いて探索を効率化する。最良優先探索アルゴリズムなどの方法がある。
人間が思考するときは、記憶データベースの情報の検索を行う。この時に用いられる検索アルゴリズムは、最良優先探索アルゴリズムではない。記憶データベースの情報は、常に最良優先探索アルゴリズムが機能するように、ツリー状に整理されているのではなく、5.1「記憶のデータ構造」で示した構造であり、思考活動によって情報にアクセスすることによって、情報は検索されやすい位置に移動していると捉えるべきである。
移動するとき、時には情報(=ObjectやSequence)が修飾されたり、複数の情報が交叉し、新規情報として検索されやすい位置に書き込まれると理解する。実装上の都合で、最良優先探索アルゴリズムが機能するように、データをツリー状に記憶することはあっても、記憶データベースの情報が常に最適化されて配置されていると考えるべきではない。
意識コアシステムは、思考エンジン側の探索処理とは独立した処理として駆動し、思考エンジン側に対して、探索が完了したかどうか状態を問い合わせたり、新規の探索(思考)の処理依頼を発行している。人間の記憶力は、探索アルゴリズムの追加や改良で向上するものではない。人間は、記憶した情報を、より早く、より正確に思い出せるようにするために、意識して記憶情報の探索アルゴリズムの訓練や学習を行うことは出来ない。記憶力の良い人は良く思考し、良く想起していて、記憶データベースの情報が効率的に配置されていると理解すべきである。
5.4 自律サブシステム(Autonomic Sub Systems)
5.4.1 思考エンジン・サブシステム(Thought Engine Sub System)
図4
思考とは「記憶した情報を操作すること」、である。つまり、記憶データベースの情報を操作することが思考である。また、「夢を見る」という活動を除いて、思考は意識的に行われるものであり、一般的に意識コアシステムから処理依頼を受信することによって、思考エンジンは処理を開始すると考える。人間は集中して思考しているとき、内臓の制御など無意識に動作する身体的動作を除けば、他の動作が止まることが殆どである。思考することは、そのくらいエネルギーを消費する行動といえる。
人間の思考には、推論する、仮説を立てる、といった処理が含まれる。また、状況を理解する、論理を組み立てる、算術演算する、芸術を創作する、物語を創造する、といった情報処理活動はすべて思考の産物であるが、思考は、脳内の情報を処理していること、と、一律的に理解すべきである。生後間も無い赤子も、成長期の少年少女も、成人の男性も女性も、初老の男性も女性も、思考活動を行う。猿もイルカも猫も犬も思考活動を行う。思考活動は、つまり、記憶データベースの情報を操作するプリミティブで基本的な機能として捉えるべきと考える。
推論とは、既存の知識を組み合わせて、新しい知識を得ることである。人間は日常、論理的でない推論を行う。例えば「夕焼けになると、明日は晴れる。今日は夕焼けが無かったので、明日は晴れない。」という推論は論理的には正しくない。「夕焼けになると、明日は晴れる」ということは、夕焼けでないときについては何も情報を与えていないからである。
数理論理を用いるならば、「夕焼けになると、明日は晴れる」と「今日は夕焼けが無かったので、明日は晴れない」を、それぞれ論理式で表現し、前者から後者は導けないことを形式的に示すことができる。数理論理を用いて言語による推論では起こりがちな非論理的な推論を排除するならば、コンピュータで推論する機能を実現し易くなる。しかし、人間は実際にこのような非論理的な推論を行っている。意識して論理的な思考を行う人はそうするし、そうでない人はそうしない。
自らの思考の結果、外的環境を好転させたか、悪化させたか、変化なかったか、このような過去の履歴の蓄積が、推論に大きく影響を与えている。論理的な思考を好む人は、過去にこのような思考手順によって自身の事態が好転した履歴を多く持ち、そうでない人はそうでないだけである。
思考の過程で新規生成されたデータは記憶データベースに記録される。思考エンジンの中で、オブジェクト(Object)、シーケンス(Sequence)、パターン(Pattern)などの記憶データのうち、類似するものが発見されたら、類似点を表現するデータが新たに生成される。「数学的論理演算」「連立微分方程式の解を求める思考」「文章を考える思考」「芸術の製作」など、人間の思考の本質は全て、記憶されている二つの情報から類似点を発見し、類似点を抽出して新規データとして生成し、新たに記憶し直す処理の繰り返しである。小説家、画家、音楽家、などの芸術家の創作活動であれ、このような処理の繰り返しとして理解することができる。
思考エンジンはこの要の処理を行う。記憶データベース内の既存のエンティティ(Entity)とエンティティ(Entity)から新たなエンティティ(Entity)を生成し、記憶データベースに書き込む。
記憶データベースには、自律サブシステムが逐次入力情報を書き込み続けている。思考エンジンによって操作された情報は、よりプライオリティの高いデータとして、記憶データベース内で、検索されやすい(思い出しやすい)データとして再配置されると考える。
図5
5.4.2 意思エンジン・サブシステム(Intention Engine Sub System)
図6
外部状況の把握、内部状況の把握、生物学的意思の更新を行うのが、意思エンジン・サブシステムである。人工思考プログラムは、自分の置かれている状況と自身の状態から、その都度、自らの意思を構成する。外部状況も内部状況も刻々と変化するので、変化に合わせて自らの意思を再構成し続ける。人間の場合、幼少の頃から自らの意思を再構成し続けている。自らの意思を構成したところで、情況が好転することもあれば、悪化することもあれば、変化が無かったこともある。そのような過程の履歴は、価値感として蓄積されると考える。人工思考プログラムは、少なくとも対話相手にとって、このような価値感を持っているように思われなくてはならない。
外部状況と内部状況と生物的目的は、思考エンジンの思考活動によっても更新されるが、各自律サブシステムからの入力データは、例えば「眼に突然何かが映った」、「突然大きな音が聴こえた」、など常に入力され続けていて、この意思エンジン・サブシステムを通じて、都度更新されていると理解する。
生物的目的は意思エンジンによって、外部状況は各自律サブシステムによって、内部状況は各構成システムによって、都度更新されている。生物的目的の変化時にはType1のパターンが使用され、外部状況の変化時にはType2のパターンが使用され、内部状況の変化時にはType3のパターンが使用されると考える。
意思エンジンによって、生物的目的を修正するときに参照されるパターン(Pattern)は、主にType2とType3である。さらに意思エンジンによって生物的目的を修正した直後に参照されるパターン(Pattern)がType1である。
人間に何かの入力が与えられたとき、どのように振舞うか(どう出力するか)は、それぞれの自律サブシステムに蓄積されたパターン(Pattern)の参照確率を元に判断することができる。
5.4.3 ディスプレイ・サブシステム(Display Sub System)
人間は、顔の表情を表す、文字を書く、振舞う、手紙を書く、絵を描く、といった機能を通じて、自分以外の人間に対して働きかけることができる。出力して働きかけた結果、事態が好転することもあれば、悪化することもあれば、変化がないこともある。外界に対して出力したことが自分に対して跳ね返ってきて、それが自分に対する入力となり、そしてさらに外界に対して出力を行う。
人間の行っている、顔の表情を表す、文字を書く、振舞う、手紙を書く、絵を描く、会話をする、といった動作をそのまま模倣したシステムを構築するためには、幾多の電磁サーボモータやその他の部品を組み合わせる必要があり、そしてさらに複雑な制御技術を伴う。人工擬似人格の実現に際して、開発行程においては、このような複雑な機械機構と制御技術はあっても良いが無くとも良い。つまり、二足歩行技術は必要不可欠ではなく、6自由度のアームや5指のハンドも必要不可欠ではない。従って、安価な代替手段としてディスプレイ・サブシステムを活用することが出来る。既成のディスプレイとその表示技術を活用して、人工擬似人格による顔の表情を表す、文字を書く、振舞う、手紙を書く、絵を描く、といった表現を容易に実現することができ、出力した内容は対話相手となる人間、およびその他の人間に対して働きかけることができる。
5.4.4 画像入力/出力サブシステム(Visual INPUT/OUTPUT Sub System)
(1)画像の意味
図7
人間の進化の過程において、“言語”を持たない過程が確かに存在した。その当時でも人類は道具を作り、都市を築いた。つまり、少なくとも人間の知能には言語(記号)処理は必須ではない。しかしそのような時代でも、それぞれの個体は意思や価値観を持ち、お互いに意思の伝達を行っていた。それは抽象的なものであっても、物事を、物や事象として区別し意味や価値として考える能力が備わっていたことを意味する。記号(シンボル=絵)や、何かの動作、意味が曖昧でも概要を示す唸り声や、その他の表現方法手段は用いられていたと考えられる。
「言葉になる前の原始的な言語」としても論理構造は不可能ではなく、「言葉」が「必須」ではないが、言葉の元になる意味を区別する能力は用いられていたと考える。
人工思考プログラムは、たとえ目が見えなくとも、考え続けるし、人格(キャラクタ)として機能しようとする。人間も騙し絵に引っかかることがあるように、人間の画像認識機能は常に完全なものでなくとも良い。 また画像情報からどのような情報を抽出するかという点にも個体差がある。
まず、画像は人が意識しようとしていまいと、数秒置きに入力され続ける。人工思考プログラムが稼動中、画像入力サブシステムは一定間隔でデジタル画像を取り込み続ける。 それからデジタル画像から情報抽出処理が実行される。人間は、画像に映る対象を認識するために脳内信号処理を行うとき、(1)色調 (光)(2)形状の二種類の方法で処理している。 例えば、画家の脳内画像信号処理を推論してみると、(1)マネ、モネ、シャガール、ゴッホは、画像に映った対象を、主に光として認識して処理していると考えられる。(2)東洲斎写楽、日本画家、(日本の)漫画家たちは、画像に映った対象を、形状として認識して処理していると考えられる。
この二種類の画像処理を区別して実装することは非常に重要と考える。何故なら後者(2)における画像情報の脳内記録は象形文字の発祥の発端となっていると考えるからである。漢字は表意文字であり、その発端は象形文字である。この機能は輪郭抽出の信号処理フィルタを利用すれば実現可能である。アルファベットやひらがなは表音文字である。
アルファベットは人間の口の形状情報が発端になっていると考えられる。欧米人が、人と話すとき相手の顔を見つめるのは、それに起因していると考えられる。一方東洋人は話すとき相手の顔を見つめない。意思疎通を行うとき、手書きの象形文字を用いていたことに起因すると考えられる。
入力デジタル画像にフォーカスすべき対象があると判断されたら、その対象の画像エリア の情報は「形状情報」と「色調情報」の二種類の情報として記憶される。
何故、色調情報は言語の基礎となりえなかったのか? 普段の人間生活の中で、色が急激に変化してゆく対象を眼にする機会が殆ど無かったからと考える。時系列情報(変化量と変化率)は"文"に相当するものだが、短時間のうちに色調が変化するものをどれ程眼にするだろうか?これで説明がつくのではないだろうか。
色調情報が記号化された言語は地球上に存在しているだろうか? 一般的に画像を光で認識する人間は根が明るくて、形状で認識する人間は根が暗い、と言われているようだ。陽気な類人猿は頑張って相手に意を伝えようとしなかったのかもしれない。一方根暗な類人猿は必死になって、相手に意を伝えようとしたのかもしれない。
(2)画像内から対象を抽出する
尚フォーカスすべき対象はどのように判定されるのか? 「動いているもの」が対象になりやすいが、基本的には、生物的目的の現在構成と各自律サブシステムのパターン(Pattern)から対象物となりやすいものが決定される。
何故「動作するもの」がフォーカス対象となりやすいのか? どの生物であれ、幼少の頃から、人間の行動指針を司る、生物的目的(Biological Objective)という階層構造ツリーの上位部分には、「生存しつづけること」や、自らの状態次第だが「種を残すこと」、がある。 視覚画像の内で動作している対象物の振る舞いが、自らの生物的目的の達成度に及ぼした影響、その履歴と、喜楽怒哀に帰結したパターン(Pattern)が、幼少の頃からプライオリティの高いデータとして各自律サブシステムに保存され続ける。つまり、フォーカス対象の時系列的データ(=SEQUENCE=文)が、自らの生物的目的とその達成度の相関関係が、個体の価値感を形勢するパターン(Pattern)として蓄積されると考える。
静止画像内のフォーカスされた対象物の「形状情報」と「色調情報」は単語に相当する情報であり、静止画像内のフォーカスされた対象物の「形状情報」と「色調情報」が、自らの生物的目的の達成度に及ぼした影響、喜楽怒哀に帰結した履歴が、パターン(Pattern)やシーケンス(Sequence)となり、すなわち「文」に相当する情報になると考える。
画像内の対象物の、形状情報は部位の相対位置比率情報として、色調情報は色素分布情報として、記憶データベースに記録される。どちらの記録方法が個体にとって価値があるかは、静止画像内のフォーカスされた対象物の「形状情報」と「色調情報」が、自らの生物的目的の各エントリーの達成度に与えた影響と、喜楽怒哀に帰結した履歴次第である。
例えば、画家やデザイナーにとっては色調情報の方が価値ある情報となり、その他の人にとっては、形状情報の方が価値ある情報となることがある。
このパターン(Pattern)のデータは、画像情報のみならず、音響情報や言語情報ともリンクする。幼児期は画像情報と音響情報と触覚情報によるパターン(Pattern)の蓄積が多いが、時を経て言語を覚えたら(将来的にシステムに自然言語処理サブシステムが増設されたら)、言語情報との相関とそれに関するパターン(Pattern)が蓄積される。
(3)画像処理間隔
人工思考プログラムの画像入力処理機能は、初期実装時は数秒おきの静止画入力で十分である。例えば、映画の投影機は一秒あたり16コマか24コマの映像を飛び飛びに投影する。人間には残像現象であたかもそれが動いているかのように見える。あるいはWebカメラからのHTMLダウンロードでも十分である。307200ピクセル(640*480)のビットマップ、一秒あたり1枚とする。一日約8時間 連続稼動するとしたら、1*60*60*8 = 28800。 ちなみに1ピクセル辺り、16色なら4bit、256色なら8bit、フルカラーなら24bitとなる。
人工思考プログラムは稼動中、画像処理サブシステムは一定間隔でデジ タル画像を取り込み続ける。それから画像のパターン抽出処理が実行される。入力画像にフォーカスすべき対象があると判断されたら、その対象の画像エリアの情報は「形状情報」と「色調情報」の二種類の情報として記憶される。 元のオリジナルビットマップも、プライオリティは低くともそのまま保存される。フォーカスすべきと判断された対象物の色調情報や形状情報(各部位の位置比率情報は、元のオリジナル画像よりも、プライオリティの高い情報として記録される。記録されたデータのうち、 他のサブシステムから参照される回数が多ければ多い程プライオリティは カウントアップされる。
(4)画像の出力と偏見
人間の中には赤(R:255 G:0 B:0)をピンクと言い張る人がいる。 このような人間の偏見や思い込みに相当する機能は、自律サブシステムの出力系サブシステムにおける出力情報生成処理として、信号処理フィルタなどを応用する。人工思考プログラムでは、入力情報を状況記録として内部保存し、状況に応じて処理して、出力する。出力したものが人間に届いたとき、人格(=キャラクタ)に感じるアルゴリズムとデータ構造を実現することが目的である。入力情報は、RGBでもYCbCでも、既存のデジタル技術を用いて保存して良い。 所謂「人間の偏見」に相当する歪みは、出力時の再生データ検索処理の中で実装されるアルゴリズムである。
出力情報を思考エンジンや、出力系自律サブシステムで生成するとき、個体の現状の生物的目的(Biological Objective)が「影響」するので出力情報は歪む。出力系サブシステムからデジタルデータが出力される前に、出力される前段階の加工処理が施されてから出力される。このようにすれば、適切な人格プログラムとして機能する。人工思考プログラムでは、このように自身の持つ基本機能を前段階処理の追加によって、独自に拡張を行い、状況に応じて振る舞いが柔軟に変化する。そうすることによって人格らしい振る舞いを実現する。
(5)自律的画像処理と情報の分類
脊椎動物の脳は、左右ほぼ対称に二つに分かれており、運動や感覚に関する神経システムは、左脳が身体の右側、右脳が身体の左側を支配している。視覚システムもその例外ではなく、右脳は左の視野、左脳は右の視野の情報処理を行っている。
高等動物の情報処理の第二の特徴は、単純な情報から複雑な情報処理へと階層的な情報処理を行っている点である。視覚情報の処理にあたっては、後頭葉、側頭葉、頭頂葉の視覚野が情報の階層的処理を行っている。脳のある視覚野の部位では、両目の像がぴったり合っているときには活動せず、わずかにずれているときにのみ活動するニューロンが存在する。このタイプのニューロンは奥行き知覚に関係すると考えられる。またある部位では、動く光刺激に反応し動きの方向やスピードに選択性を示すニューロンが多い反面、色に選択性を示すニューロンは少ない部位が存在する。
両眼視差を使用した知覚処理は、あると便利だが、無くとも人工擬似人格の活動に支障はない。入力デバイス(=センサ)ごとに自律サブシステムが記憶データベースに書込み処理を行っていると考える。左右対になっているデバイスは、右側の入力デバイスと左側の入力デバイスごとに、自律サブシステムがあり、記憶データベースに書込み処理を行っていると考えるべきである。
局所運動検出のモデルは大きく、勾配法とマッチング法の二つの手法があるとされている。勾配法は時空間的な輝度(明るさ)の分布パターンに基づいた信号処理によって運動を摘出する手法である。マッチング法では、一定の時間間隔をおいた二つの入力から、まず注目すべき特徴を抽出し、異なった時点での特徴間のマッチングを行う。そしてその結果から、入力間の移動距離を見つけ出し、速度の推定を行うという手法である。
二つの電球を適当な時間間隔で交互に点滅すると、電球は実際には動いていないが、二点間で往復する運動知覚が引き起こされる。こうした現象を実験心理学では仮現運動と呼んで、実際に動く対象に対する実際運動の近くと区別している。
人間の運動知覚には、時空間フィルタで説明できる運動と説明できない運動があるとされている。CavanaghとMatherは、輝度、色などの一次の統計量に依存した運動現象と、テクスチャ、両眼視差などの二次の統計量に依存したものとに二分することができると主張し、低次の運動現象について、一次、二次、の二つのタイプに分類することを提案した。
AdelsonとBergen(1991)は、観察者の位置の変化も含めたあらゆる視覚入力は、彼等がplenoptic関数と呼ぶ七次元の関数で表現可能であり、初期視覚の基本的な機能はこの七次元空間での局所的な変化の測定であるとした。視覚情報と聴覚情報はそれぞれ別の入力器官を通して、脳に入ってくる。入力デバイス(=センサ)と入力情報書込装置は独立したものと考えて良い。
しかし、全ての入力情報は記憶データベースに配置され、「思考」は記憶データベース内の全ての情報を操作している。
記憶を時間の側面から分類し、感覚情報貯蔵庫(SIS)短期記憶(STM:持続時間が60秒以下のもの、即時記憶、ワーキングメモリ、作動記憶)、中期記憶(MTM:持続時間が数分から約2年続くもの、近時記憶)、長期記憶(LTM:永続的なもの、遠隔記憶)の四つに分類できるとされてきた。
記憶を機能の側面から分類し、個人の実体験であるエピソード記憶(what,when,whereから構成されている)や「地球は丸い」といった知識からなる意味記憶といった分類がある。
また、ゲームのルールや自転車の乗り方などの「技能」、一度体験したものは繰り返しやすいという「プライミング効果」や各種習慣である「非連想記憶」や「条件反射」という分類がなされている。
記憶を想起意識の側面から分類し、記憶内容が意識に上るか(顕在記憶)のぼらないか(潜在記憶)という分類もされている。しかし、人工擬似人格の記憶データベースに書き込むエンティティ(Entity)は、このような記憶の分類に沿うべきではなく、各自律サブシステムごとに時系列に沿って分類されて配置されるべきである。
5.4.5 音響入力/出力サブシステム(Audio INPUT/OUTPUT Sub System)
音響入出力サブシステムは、自律サブシステムのひとつである。入力サブシステムは、人間に例えると耳である。出力システムは、人間に例えると、喉と口と肺による発声、手を叩く、口笛を吹く、などのその他の音を発する行為の全てを含む。
赤子には、出力系の基本機能はあらかじめ 完全に揃っていると考える。「それをどう使いこなすか」が、後天的な学習によって個体毎に向上する。
実際、人間の発声は非常に複雑な仕組みで実現されている。母親がリンゴを手に取って「リンゴ」と発音したのを幼児が真似ようとしたとする。幼児はリンゴという音響波形情報を耳から受け取り、尚且つ同時に母親の口の形状の一連の動作を画像情報として受け取っている。幼児は受け取った波形情報を、自らの発生器官を用いて再現する。幼児が「リンゴ」と発音し返したとき、幼児は口、喉、肺を複雑な制御アルゴリズムで制御していることになるが、これらは先天的に与えられた基本機能を駆使していると考える。器官の制御は先天的な基本機能であり、「どう使いこなすか」を後天的な経験学習による産物と捉える。入力されて保存された波形から、出力する波形を合成し、再生するときに、数段階の信号処理フィルタを経由して音響出力サブシステムから出力する。音響出力サブシステムには、出力する波形を合成する機能、信号処理フィルタの機能や係数を新規に生成して、音響入出力サブシステムに追加することができる。新規に生成された追加された機能は、各システムの機能リストに登録されると考える。自律サブシステムは、自身の基本機能を使いこなす新機能を生成し、生成した新機能をリストに追加し、自身の機能の呼び出し元に対して通知を行う。
5.4.6 自然言語処理/文字入力/出力サブシステム(Language Processing Sub System)
自然言語処理サブシステム(俗に言う左脳)は 人工思考プログラムの中では、自律サブシステムのひとつである。自然言語処理サブシステムがあるということは、人工思考プログラムは人間に例えると言葉を正確に理解し、本が読める年齢に達しているということである。
日本語に熟練したディベートの達人が、中東言語圏に移動して、ディベートの達人でいられるか?無理だ。日本語のディベートの達人が、言葉が通じない地域に移動して窮地に立ったときどう振舞うか?笑ってごまかすか?走ってにげるか?手書きで伝えるか? 状況を把握して、日本語が通じる状況であると判断すれば、意識コアシステムから自然言語処理サブシステムに対して、「状況はこうだ、 何かを言わなければならない、文節を組み立てて欲しい」という処理依頼が発行されるだろう。
コンピュータが自然言語を理解することは容易ではない。それは、自然言語の理解には文法的な知識だけでなく、個々の言葉に関する常識的な知識による処理が必要だからと考えられている。実際は常識によって処理されているのではなく、蓄積されているパターン(Pattern)(=価値感)によって処理されていると考える。人間社会において、適切な教育を施せば、ある程度は均一的なパターン(Pattern)が各個体に蓄積されるものと考える。
自然言語を理解するためには、入力された文に「形態素解析」を行って、文を最小単位の要素の集まりとして認識し、形態素の並びから「構文解析」を行い、その結果に対して意味を与える「意味解析」が必要になる。
形態素解析(morphological analysis)とは、与えられた文を構成する最小単位である形態素を求めることである。例えば、「私は喫茶店でコーヒーを飲む」という文では、「私」「は」「喫茶店」「で」「コーヒー」「を」飲む」のそれぞれが形態素である。
構文解析とは、ある記号列が与えられたとき、句構造規則を適用して句構造を求めることである。自然言語には日本語、英語、中国語などの多くの種類があるが、その大半は句構造(phase structure)という形式を持つ。句構造とは文が句(phase)という文字列が特定の規則で並んだものであり、句構造は句構造規則(phase structure rule)を組み合わせて構成することができる。句構造規則は生成規則、または書換規則とも言う。S(文)、NP(名詞句)、VP(動詞句)、AP(副詞句)、N(名詞)、V(動詞)、DET(限定詞)、PREP(前置詞)とすると、下記が句構造規則の例である。
S(文)→NP(名詞句)VP(動詞句)
S(文)→N(名詞) VP(動詞句)
NP(名詞句)→N(名詞)N(名詞)
NP(名詞句)→DET(限定詞)N(名詞)
VP(動詞句)→V(動詞)AP(副詞句)
VP(動詞句)→V(動詞)NP(名詞句)
AP(副詞句)→PREP(前置詞)NP(名詞句)
N(名詞)→"time"
N(名詞)→"flies"
N(名詞)→"arrow"
DET(限定詞)→"an"
V(動詞)→"flies"
V(動詞)→"like"
PREP(前置詞)→"like"
ある記号列が与えられたとき、句構造規則を適用して句構造を求めることを構文解析という。意味解析とは、構文解析された文に対して意味構造を抽出し、それを意味ネットワーク、フレーム、述語論理などの知識表現形式で表現すること、と考えられている。しかし、正確には、人間は意味を理解しているのではなく、入力(=外部状況と内部状況)自身の生物的目的に対する価値を判定している、と捉えるべきである。
眼前の事象を正しく理解しようとする人は、そうすることによって自身の生物的目的の達成度が高くなるパターン(Pattern)をより多く蓄積しているだけである。どんなに理性的で合理的と思われている人でも、つい感情的な行動を取ったりすることを見たことがあるだろう。生物的目的が、人間の行動に対して最も支配的な要素であり、人間は常に生物的目的と外部状況と内部状況に応じたパターン(Pattern)によって行動するものと理解する。
このように外部状況、内部状況、生物的目的といった入力情報を全てオブジェクト(Object)、シーケンス(Sequence)として扱い、パターン(Pattern)によって行動を振り分けるモデルを利用することによって、自然言語処理、画像処理、音響処理も全て同一形式の知識処理として実現することが出来る。
自然言語処理サブシステムの動作手順は次のようになると考えられる。(1)字句文節解析→(2)意味解析と価値判断→(3)字句文節と意味の記憶保存→(4)対応と応答方針の決定→(5)応答文構築 、である。文章の組み立て方ロジックすなわち応答文構築ルールのテンプレートを多量に蓄積すればする程、より良く応答文を構築出来るようになるだろう。応答文構築ロジックを、オブジェクト(Object)、シーケンス(Sequence)、パターン(Pattern)の三つの情報の組み合わせとして表現する必要がある。
自然言語処理サブシステムは記憶データベースのデータを直接操作する。データはどのように入手され、保存されるだろうか?空いている時間に、あたかも人間が本を読むかのようにインターネットから情報を集めて自律的に記憶データベースを更新する。
現状を把握するために、意識コアシステムは自然言語処理サブシステムに対して、対話相手が何を言っているか?相手は 何を求めているか?そういった状況の把握を補助してもらうべく処理依頼を発行する。
意識コアシステム側では、どのような応答をするのが望ましいのか決定し、自然言語処理サブシステムに、指令を転送する。自然言語処理サブシステムでは、応答文構築ロジック(応答文構築ルールのテンプレート)を検索し、ロジックに従って応答文を構築する。
意識コアシステム側では、「状況を把握する」という処理ステップは無限ループ内で呼び出され続けていて、何も問題が無ければ、自然言語処理サブシステムで生成された応答文を返す。
しかし、「状況を把握する」という処理で、緊急事態を検知したときは、例えば自然言語処理サブシステムの処理を止めて、ディスプレイに「苦笑い」を表示するかもしれない。意識コアシステムは自然言語処理サブシステムに往々にして依存するが、時折、処理を中断させたり、別サブシステムに指令を切り替えたりすることによって、よりリアルな人格を表すことが出来ると考える。人間は、良い言葉を思い出せなかったとき、「えーと、あれあれ、あれだよ...」と言うときがある。この反応をリアルに実現するには、人工思考プログラムにおいて、意識コアシステムの処理と自然言語処理サブシステムなど、その他のサブシステムの機能の連携を考慮される。
5.4.7 感覚入力サブシステム(Sensor,Feeling INPUT Sub System)
人間には味覚や触覚があり、この感覚器官から入力された感覚データは幼児の価値感(=パターン(Pattern))の形成や学習に大きく影響する。幼児は多かれ少なかれ、母親に抱いて育てられる。例えば、撫でられれば気持ちいいし、叩かれれば痛い。気持ちいいことは生物的目的の満足度が向上することであり、痛い苦しいことは生物的目的の満足度が下降することである。人間は、よいことをすれば褒め、やってはいけないことをすれば叱って育てる。自分が何か行動を起こし、すなわち何らかのデータを出力した結果、それが自らに跳ね返ってきて、感覚入力サブシステムから入力されたデータが、自らの生物的目的の満足度を向上させたか、下降させたか、変化なかったか、これらは幼児期の学習過程における価値感の蓄積に大きく影響する。幼児は、強く気持ちいい思いをしたことは何度でもやりたがるし、強く痛い思いをしたことやろうとしなくなる。
人工擬似人格の開発工程では、人間の感覚器官をそのまま模倣しようとしても良いが、無理をしてまで厳密な模倣を追及する必要は無い。人工思考プログラムが何らかのデータを出力した結果、それが自らに跳ね返ってきて、感覚入力サブシステムから入力されたデータが、自らの生物的目的の満足度を向上させたか、下降させたか、変化なかったか、この学習過程が構成出来れば良い。例えば、撫でる、叩くといった感覚入力器官をキーボードやマウスやジョイスティックで代用することも可能である。
5.4.8 その他の入出力サブシステム
例えば、人間には、甘い、辛い、しょっぱい、苦い、などの味覚感覚がある。また例えば髪の毛を引っ張ると痛い。これらの入力器官をそのまま模倣しようとしても良いが、無理をしてまで厳密な模倣を追及する必要は無い。人工思考プログラムが何らかのデータを出力した結果、それが自らに跳ね返ってきて、入力サブシステムから入力されたデータが、自らの生物的目的の満足度を向上させたか、下降させたか、変化なかったか、この学習過程が構成出来れば良い。例えば、甘い、辛い、しょっぱい、苦い、などの味覚感覚や髪の毛を引っ張るなどの感覚入力をキーボードやマウスやジョイスティックで代用することも可能である。
遺伝的プログラミング(Genetic Programming)とは、生物が環境に適合して進化してゆくように、環境に合わせてプログラムを自動的に生成する手法である。従来、パラメータの最適化の手法として、シミュレーテッドアニーリング(Simulated Annealing,SA)や遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm,GA)が知られている。
生物の設計図は、A,T,G,Cの4種類の核酸が一列に並んだDNAに書かれている。DNAの中の特定の部位の部分の記号の並び(遺伝子)によって、生物の様々な部位が形作られる。生物は生殖によって、両親の情報が子孫に受け継がれる。遺伝子の交配の仕方によって、子孫は異なった遺伝子をもつことになり、その結果、子孫はそれぞれ親から異なる形質を受け継ぐことになる。環境に適合した形質を受け継いだ子孫は生き残るが、適合しない子孫は死滅する。受け継ぐいだ結果、子孫は、交叉、突然変異、逆位などの変形を受ける。交叉は二つの情報の一部を交換することであり、突然変異は 情報の一部をランダムに別の記号に置き換えることであり、逆位は情報の一部の順序を逆に置き換えることである。
運動神経の良し悪しは、出力系自律サブシステムの持つ基本機能の分解能の差異となる。
6. 対話
会話相手が人間であると錯覚させたいだけなら、所謂、対話型プログラムに適当に 応答間隔をずらすアルゴリズム 乗せれば済むのではなかろうか?しかし、それだけでは数分、数時間、数日で飽きられてしまう。対話プログラムが、対話相手に飽きられてしまうということは存在しなくなる、ということだ。人工思考プログラムでは、生物的目的(Biological Objective)が適切に設定されている必要があり、つまり「対話相手に存在を意識してもらえなくなることは、自らの生物的目的に反している」という判定結果を算出しなければならない。 生物的目的を適切に設定さえしておけば、人工思考プログラムは、会話相手がいない時間帯であっても、思考し、考え、情報を入手、処理して記憶し、さらに考え続ける。
人工思考プログラムの動作は、形成および蓄積された人格によって、ある状況における出力が大きく異なる。人間ですら、「彼にこういうことをすれば、彼はこうするだろう」、という予測を裏切る行動をすることがある。例えば、人工思考プログラムに対して「一足す一を計算しろ」と命令したら、どう振舞うだろうか。対話相手が所有者でなら「何故そのようなことを聞くのか?」と質問し直すかもしれない。対話相手が、見知らぬ他人ならば「ケッ嫌だよ」と反抗的な態度を取るかもしれない。対話相手が、見知らぬ他人とはいえ、自らをシャットダウンできる権限を持っていそうな人であれば、素直に「2です」と応えるかもしれない。
人間に何かの入力が与えられたとき、どのように振舞うか(どう出力するか)は、それぞれの自律サブシステムに蓄積されたパターン(Pattern)の参照確率を元に判断する。
7. 人格形成
人間は、親に適切に教育されなければ、健全な人格の大人として成長しない。人間の歴史において、生後間も無く狼に拾われ、狼に育てられた少女が発見された事件がある。彼女は身体的には健全な人間であったが、言葉を話さず、振る舞いは狼のようであったという。健全な人格は、健全な教育的入力によって後天的に形成されるものであると考える。人工思考プログラムの人格設計工程時には、擬似的な「褒める・撫でる・抱く・抱かれる(群れる)」「叱る・叩く・シカトする」といった入力情報をアメとムチとして与える必要がある。外部状況や内部状況などの入力されたデータを内部処理して出力したことが、自身の生物的目的を向上させるか下降させるかをパターンとして蓄積する。これは、人間の「しつけ」に相当するデータ入力であり、パターン(Pattern)=「価値観」に相当するデータの蓄積である。この過程を繰り返して、人工思考プログラムの出荷前までに、生物学的目的履歴とその他の履歴(要するに記憶)を想定する一定年齢まで構成することが必要である。
人工思考プログラムの初期設定情報は、各自律サブシステム毎に、以下のような記録を不整合なく連結したデータとなる。
(1)外部状況(Situation)とその履歴
(2)内部状況(Condition)とその履歴
(3)生物的目的(Biological Objective)とその履歴
(4)入力情報と出力情報と対象物が自らに影響を及ぼしたパターン(Pattern)とその履歴
(5)画像情報とその時フォーカスされた対象物の情報とリンク情報とプライオリティ
(6)音響情報とその時フォーカスされた対象波形の情報とリンク情報とプライオリティ
(7)文字情報とその時フォーカスされた対象語と対象文のリンク情報とプライオリティ
入力データを一度保存して、何らかの生物的意思を持って、何らかのサブシステムから出力するまでのプロセスを学習の1サイクルである。
出力系サブシステムの基本機能はあらかじめ完全な状態で揃っている。いわゆる人格設計時には、記憶生成ツール(学習のツール)が 必須になる。本来学習工程は、個体の生物的目的(Biological Objective Tree)が適した値になっていなければ進行しない。しかし、人工思考プログラムの記憶設計時(人格設計時)に使用するツールには、そこの判定機能をジャンプする強制学習ツールが必須となる。
通常、学習といえば教師が問題と理想的な解を示して、それを学習し、自分で試してみて会得する。しかし、あらかじめ事例を与えることが出来ない場合が存在する。置かれた環境において、試行錯誤を繰り返して体験を積み、経験を解析しながら新しい知識(オブジェクト(Object)やシーケンス(Sequence)やパターン(Pattern))を蓄積する。これは強化学習(Reinforcement Learning)と言われ、教師がいなくとも自ら行動し、結果に応じた報酬を得て、最適行動のための知識を獲得する。ここでは、報酬とは生物的目的の達成度のことである。
マルコフ決定過程では、環境が状態s(t)のときに行為a(t)を実行したときの遷移先s(t+1)は必ずしも一つではないとされる。行為a(t)を実行すると、特定の確率P(s(t),a(t),s(t+1))で、可能な複数の状態のうちのひとつに遷移すると考える。実際は、外部環境は自身の出力によってのみ変化するものではなく、このように定式化できる筈もないが、マルコフ決定過程では、状態s(t)のときに行為a(t)を実行したとき、それによって得られるであろう報酬の期待値をr(s(t),a(t))とし、状態遷移確率P(s(t),a(t),s(t+1))と期待報酬r(s(t),a(t))はそのときの環境s(t)と行為a(t)のみで決まり、過去の環境や行為に影響されない(マルコフ性)とする。
環境のある状態s(t)に対してある政策に従って、行為の列a(t),a(t+1),...が実行され、その結果、状態がs(t+1),s(t+2),...と変化していくとき、受ける報酬の総和(=利得)の期待値V(s)は以下のようになるとされる。
Figure 2008129845

この式では、将来に受け取る報酬は直近の報酬よりも価値が低くなると考え、将来の報酬に一定の割引率γ(0≦γ<1)をかけている。しかし、将来に受け取る報酬は直近の報酬よりも価値が低くなるとは限らず、報酬の総和の期待値(=生物的目的の達成度の期待値の総和)を算出するときも、個体毎のパターン(Pattern)が使用され、個体毎に異なる。
状態遷移確率Pと期待報酬rが未知の場合に、環境の各状態sにおいてV(s)を最大にするようにする行動を選択することを目的とする。これをQ学習(Q-Learning)という。しかし、人間は常に自身の利得が最大限になる政策選択を正しく行っているとは限らない。第三者に、ある個体にとっての報酬(生物的目的)を正確に把握することは出来ない以上、検証の仕方が無い。
例えば、自身の立場を悪くするであろうことが客観的に明らかであっても、自身の立場を悪くしてしまう行動を突発的に選択する人を見たことがあるだろう。「これを我慢すれば、あれを得ることができるのに」というのに、それを我慢出来ない人を見たことがあるだろう。当人の生物的目的の構成が第三者に把握出来ないからかもしれないし、人間は常に正しい行動選択が出来ないからかもしれない。
これまでに知られてきた、利益共有法では、報酬を得られるまでに用いられたルール(入力をIN、出力をOUTとする)の系列を記憶し、報酬がえられた時点でその系列内のルール(INi,OUTi)に下記の式で重みをつけるとされる。ここでいうルールとはパターン(Pattern)と同義と考える。

Rule(INi,OUTi)←Rule(INi,OUTi) + F(r,i)

ここで、rは報酬の値すなわち生物的目的の達成度の期待値、Fはルールを強化するための関数と考えられている。パターン(Pattern)をif( bo && ex && in ) then s::f(e...)というルールの記述であると考えるならば、IN=(bo && ex && in)であり、OUT=s::f(e)である。
これまでに知られている利益共有法では、Fでは、報酬をエピソード内のルールすべてに均等に分配することも出来るし、ルール毎に分配率を変えることもできるとされる。しかし、人間は論理的な行動選択が出来ると考えるべきではなく、Fを定式的に定義すべきではない。パターン(Pattern)を記憶する領域は有限であり、生物的目的の達成度の期待値を満たした回数が多いパターン(Pattern)が、記憶データベースの中で、参照されやすい(検索しやすい)位置に再配置されている、と理解すべきである。期待値を満たした回数が少ないパターン(Pattern)は自然と記憶領域において参照しにくい位置に追いやられ、記憶データベースの領域外にはみ出して削除されることもある。何度学習しても覚えない人、何度しつけてもわかってくれない幼児、を見たことがあると思う。利益共有法のようにパターン(Pattern)の蓄積と重み付けを関数で定式化しては、このような振る舞いを実現出来ない。パターン(Pattern)は定式化された関数で重み付けされるのではなく、生物的目的の達成度に応じて、記憶データベースの中で、参照されやすい(検索しやすい)位置に移動する。
人工人格プログラムの機能ブロック図 記憶のデータ構造 人工人格プログラムの意識部の機能ブロック図 人工人格プログラムの思考の過程を示す図 人工人格プログラムの思考における、記憶データの流れを示す図 人工人格プログラムの意思構成における、記憶データの流れを示す図 人工人格プログラムの画像処理の過程を示す図

Claims (22)

  1. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、意識コアシステム、自律サブシステム、記憶データベースの三つの基本機能から構成される人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  2. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、意識コアシステム(Conscious Core System)は、自律サブシステム(Autonomic Sub Systems)に対して処理依頼を行う構成を取り、意識コアシステムは、各自律サブステムが操作している記憶データベースには、直接アクセスしないが、意識コアシステムと各々複数の自律サブシステムとの間を流れる通信データは、「処理依頼すること」と「処理の状態を問い合わせること」となっているような、人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  3. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、思考の機能において、記憶されているデータについて、ある情報とある情報の類似点が発見されたら、新規に類似データが新たに生成されるという過程を繰り返し、つまり、二つの情報からの類似点の発見と、類似点を表現する新規データの新規生成と増殖の繰り返しを行い、図2のように記憶データがそれを示すデータ構造で表現され、個々の記憶データは自身の親となる二つの記憶情報へのリンクを持つ構造を有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  4. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、「意識」に相当するシステムがあり、生物的目的、外部状況、内部状況、機能リスト、感情、などの最小限の記憶情報のみを持ち、生物互換のコアシステムとしてされ、記憶データベースと自律サブシステムを組み替えることによって、日本人にも、中国人にも、英国人にも、イルカにも、猿にも、昆虫などの再構成できる構成を取るようなデータ構造と振る舞いとシステム構成を有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  5. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、「意識」に相当する機能が、「内部状況と外部状況を把握する」、「どうすべきか検討する」、「指令あるいは実行する」という三つの基本処理のループとして実現されている人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  6. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、「外部状況」に相当するデータ構造と「内部状況」に相当するデータ構造と「生物的意思」に相当するデータ構造を持ち、外部状況も内部状況も刻々と変化するので、変化に合わせて自らの意思を再構成し続け、また、外部状況という情報は人工思考プログラムの稼動中、入力系サブシステムから常に情報が入力され続け、その情報の一部は意識コアシステムにあるが、その他の大部分は、各自律サブシステムが直接操作できる記憶データベース領域に配置されているようなデータ構造と振る舞いとシステム構成を有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  7. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、「外部状況」に相当するデータ構造と「内部状況」に相当するデータ構造と「生物的意思」に相当するデータ構造を持ち、外部状況も内部状況も刻々と変化するので、変化に合わせて自らの意思を再構成し続け、また、内部状況という情報は人工思考プログラムの稼動中、構成要素から常に情報が入力され続け、その情報の一部は意識コアシステムにあるが、その他の大部分は、各自律サブシステムが直接操作できる記憶データベース領域に配置されているようなデータ構造と振る舞いとシステム構成を有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  8. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、生物的目的に相当するデータ構造を持ち、その一部は意識コアシステムにあり、その他の部分は、各自律サブシステムが直接操作できる記憶データベース領域に配置され、時折、生物的目的を修正・追加・削除を迫られる程、内部状況と外部状況の変化が発生した場合、意識コアシステムの「どうすべきか検討する」という処理ステップで、自律サブシステムのひとつである意思エンジンに対して処理依頼が発行され、あるいは、自律サブシステムが入力データを外部状況に相当するデータ構造に情報を書き込んでから、直接意思エンジンに対して処理依頼を発行するのであって、記憶データベースでは、各々の自律サブシステムが情報を逐次更新しており、情報は時間の経過と共に更新され、蓄積されて豊富になり、各々の自律サブシステムは、生物的目的というデータ構造を、書き込む情報が重要かそうでないかの判断に利用するような振る舞いを機能として有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  9. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、「外部状況」、「内部状態」、「生物的意思」、「感情」に相当するデータ構造を持ち、当該システムは稼働中、
    外部状況と内部状況の状態を更新し、生物的目的を参照し、生物的目的の達成度を更新するが、その達成度は前回に比べて上昇したか?下降したか?変わらずか?この変化率によって感情が変動し、生物的目的のそれぞれの達成度が上昇傾向を示せば感情は「喜」あるいは「楽」にシフトし、下降傾向を示せば「怒」「哀」にシフトするような振る舞いを機能として有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  10. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、各サブシステムが、それぞれのサブシステムの機能をリストとして把握し、入力系、出力系の各機関の基本機能はあらかじめ 完全に揃っているものと捉え、 基本機能を実現するためのハードウェアとソフトウェア(ファームウェア)はあらかじめ揃っていて、「基本機能を使いこなす新機能」は、後天的な学習によってサブシステム内に追加され、自律サブシステムは機能を向上させることができるものであって、無意識的FUNCTIONリストにある某サブシステムの基本機能を使いこなす新しい機能として、某サブシステム内に機能が新規に追加され、意識的FUNCTIONリストに追加されるような振る舞いを機能として有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  11. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、それを構成する各々のシステムが、各々のシステムの機能をリストとして把握しており、各サブシステムの機能のうち、意識コアシステムの意識中枢エンジンから直接呼び出されないものを無意識的FUNCTIONリストとして保持するものであって、例えば、人間であっても、「心臓の血管を広げる」、「胃を動かす」、「耳たぶと動かす」、「眼の光彩」といった動作を意識的に行うことはないが、しかし時にして後天的な学習によって、それが出来るようになることがあるが、このような振る舞いを、無意識的FUNCTIONリストにある某サブシステムの基本機能を使いこなす新しい機能として、某サブシステム内に機能が新規に追加され、意識的FUNCTIONリストに追加されるものとし、各々自律サブシステムにおいて基本機能および後天的な学習によって追加された機能のうち、意識コアシステムの意識中枢エンジンが、直接呼び出さない機能をリストとして保持するような振る舞いを機能として有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  12. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、記憶データベースを持ち、記憶データベースでは、各自律サブシステムが自由に読み書きできるエリアとし、記憶データは全て、抽象的意味、言語、画像、音響を含めて、オブジェクト(Object)、シーケンス(Sequence)、パターン(Pattern)の3種に分類され、それぞれの情報は、図2で示した構造で相互にリンクして保存されているようなデータ構造と振る舞いとシステム構成を有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  13. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、記憶データベースを持ち、時系列情報の含まれない情報と時系列情報を含む情報を記憶し、また「価値観」に相当するデータ構造を持ち、それは入力を内部処理して出力した過程の履歴であり、生物的満足が向上した場合、それは蓄積されやすくなり、低下したばあいは破棄されやすくなるものであり、外部状況と内部状況と自身の意思(生物的目的)を参照して、自身の機能と出力のための情報を摘出するルールであって、外部状況や内部状況などの入力されたデータを内部処理して出力したことが、自身の生物的目的を向上させたか下降させたかをパターンとして蓄積するのであって、個体の「価値感」に該当するデータ構造としてそれを持つような振る舞いとシステム構成を有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  14. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、各々の自律サブシステムが記憶データベースを共有しており、それにはデータが、各入力系のサブシステムからある一定度の規則に従って、無作為に書き込まれ、「意識的に記憶データベースのデータの整理が行われる」という振る舞いとして、意識コアシステムからの指令に基づいて、思考エンジンが記憶データベースのデータの 検索と整理を行うのであって、また「無意識的に記憶データベースのデータ同士の結び付けが行われる」という振る舞いとして、各々自律サブステムから、情報が入力され、記憶データベースに配置されるとき、サブシステム自身が情報同士の結び付け処理や類似点発見処理や重み付けを自動的に行うのであって、入力系の自律サブシステムは、各々時系列に沿って、情報を連続的に記憶データベースに書き込むのであって、ここで、一生懸命思い出そうとして思い出した情報は、記憶データベースの中の記憶領域の前の方(検索しやすいアドレス)に移動され、思い出そうとして検索処理を走らせたときに、検索キーとして用いられた自然言語情報 や音響情報や画像情報との結び付きに関する情報も含めて、記憶領域の前の方(検索しやすいアドレス)に移動されるような振る舞いを機能として有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  15. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、思考に相当する記憶データベースの情報を操作するシステムを持ち、記憶データベース内の既存の情報と既存の情報から新たな情報を生成し、記憶データベースに書き込むのであって、記憶データベースでは、各々自律サブシステムが逐次入力情報を書き込み続けているのであって、思考に相当する機能によって操作された情報は、よりプライオリティの高いデータとして、記憶データベース内で、検索されやすい(思い出しやすい)データとして再配置されるような振る舞いを機能として有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  16. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、外部状況と内部状況と生物的目的というデータ構造を持ち、意思を構成する機能が独立したシステムとして機能し、外部状況と内部状況と生物的目的は、思考に相当する機能によっても更新されるが、各自律サブシステムからの入力データとして、例えば「眼に突然何かが映った」、「突然大きな音が聴こえた」、といった情報が記憶データベースに常に入力され続けていて、意思を構成する機能によって都度更新されるような振る舞いを機能として有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  17. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、例えば、人間の行っている、顔の表情を表す、文字を書く、振舞う、手紙を書く、絵を描く、会話をする、といった動作をそのまま模倣したシステムを構築するためには、幾多の電磁サーボモータやアクチュエータやその他の部品を組み合わせる必要があり、そしてさらに複雑な制御技術を伴うが、安価な代替手段としてディスプレイ・サブシステムを活用することが出来、既成のディスプレイとその表示技術を活用して、人工擬似人格による顔の表情を表す、文字を書く、振舞う、手紙を書く、絵を描く、といった表現を容易に実現することができ、出力した内容は対話相手となる人間、およびその他の人間に対して働きかけることができるような振る舞いとデータ構造とシステム構成を有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  18. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、画像入力に相当する機能を有し、画像が、当該プログラムの意識に相当する機能がそれを意識しようとしていまいと、数秒置きに入力され続け、稼動中、一定間隔でデジタル画像を取り込み続け、各々のサブシステムにおいてデジタル画像から情報抽出処理が実行され、色調情報および形状情報としてそれぞれの方法で処理して記憶するのであって、静止画像内のフォーカスされた対象物の「形状情報」と「色調情報」は単語に相当する情報であり、静止画像内のフォーカスされた対象物の「形状情報」と「色調情報」が、自らの生物的目的の達成度に及ぼした影響、喜楽怒哀に帰結した履歴が、すなわち「文」や「価値観」に相当する情報として記憶されるのであって、画像内の対象物の、形状情報は部位の相対位置比率情報として、色調情報は色素分布情報として、記憶データベースに記録され、どちらの記録方法が個体にとって価値があるかは、静止画像内のフォーカスされた対象物の「形状情報」と「色調情報」が、自らの生物的目的の各エントリーの達成度に与えた影響と、喜楽怒哀に帰結した履歴に依存するようなデータ構造と振舞いを機能として有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  19. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、出力情報を思考に相当する機能や、出力を司る自律サブシステムで生成するとき、個体の現状の生物的目的(Biological Objective)が「影響」するのであって、そこで出力情報は歪み、出力系サブシステムからデジタルデータが出力される前に、出力される前段階の加工処理が施されてから出力されるのであって、このようにして自身の持つ基本機能を前段階処理の追加によって、独自に拡張を行い、状況に応じて振る舞いが柔軟に変化し、そうすることによって人格らしい振る舞いを実現するデータ構造と振る舞いを有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  20. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、味覚や触覚などの感覚を受け取る機能を有し、この感覚入力機関から入力された感覚データは価値感の形成や学習に大きく影響するのであって、気持ちいいことは生物的目的の満足度が向上することであり、痛い苦しいことは生物的目的の満足度が下降することであり、例えば人間では、よいことをすれば褒め、やってはいけないことをすれば叱って育てるように、自分が何か行動を起こし、すなわち何らかのデータを出力した結果、それが自らに跳ね返ってきて、感覚入力サブシステムから入力されたデータが、自らの生物的目的の満足度を向上させたか、下降させたか、変化なかったか、これらがシステムの幼児期の学習過程における価値感の蓄積に大きく影響するのであって、気持ちいい思いをしたことは何度でもやりたがるし、痛い思いをしたことやろうとしなくなるようなデータ構造と振る舞いを有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  21. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、例えば、人間には、甘い、辛い、しょっぱい、苦い、などの味覚感覚があるが、これらの入力器官をそのまま模倣しようとしても良いが、無理をしてまで厳密な模倣を追及する必要は無く、何らかのデータを出力した結果、それが自らに跳ね返ってきて、入力サブシステムから入力されたデータが、自らの生物的目的の満足度を向上させたか、下降させたか、変化なかったか、この学習過程が構成出来れるのであって、例えば、甘い、辛い、しょっぱい、苦い、などの味覚感覚や髪の毛を引っ張るなどの感覚入力をキーボードやマウスやジョイスティックで代用することも可能となっているような構成を有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
  22. 人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置であって、「相手に存在を意識してもらえなくなることは、自らの生物的目的に反している」という判定結果を算出するものであって、生物的目的を適切に設定さえしておけば、相手がいない時間帯であっても、思考し、考え、情報を入手、処理して記憶し、さらに考え続けるようなデータ構造と振る舞いを有する人工知能として人格を実現するコンピュータ・プログラムおよび装置。
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