JP2008119743A - 中空構造嵌合部の接合方法 - Google Patents
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Abstract
【目的】押出成形した形材の形状、寸法精度は、圧延により成形した場合に比べると低いため、中空構造の押出形材を嵌合した場合は、嵌合部において形材との間に隙間が部分的に生じることがある。また、押出形材の嵌合部において、押出方向への荷重負荷に対して形材が滑りやすくなるために嵌合部の締結力は、押出方向に垂直方向への荷重負荷に対する締結力よりも低くなる。このため、嵌合部における隙間の発生を防止するとともに、嵌合部における締結力を増加させ、かつ締結力を一定に保持するため、高能率で高強度に嵌合部の押出形材を接合することが必要となる。
【構成】本発明は、中空構造をした押出形材の嵌合部を摩擦攪拌スポット接合あるいは摩擦攪拌接合することによって、嵌合部の締結力を増加し、締結力を一定に保持することができる。
【選択図】図5
【構成】本発明は、中空構造をした押出形材の嵌合部を摩擦攪拌スポット接合あるいは摩擦攪拌接合することによって、嵌合部の締結力を増加し、締結力を一定に保持することができる。
【選択図】図5
Description
本発明は、金属材料を押出加工によって成形した中空構造の形材を嵌合することによって繋ぎ合わせた場合、嵌合部に生じる形材間の隙間によって生じる締結力の低下を防止するとともに、押出方向への荷重負荷に対する締結力を増加させ、かつ締結力を一定に保持するための接合法として、摩擦攪拌スポット接合(点接合型)および摩擦攪拌接合(連続接合)に関する。
嵌合は、電子部品の組み立てをはじめ、プラスチック容器、金属製屋根、金属製窓用サッシの製作など、広範な産業分野において製品、部品の製作に応用されている。このような嵌合した製品、部品は、嵌合による締結力によって一体化された状態で使われている。
金属材料の押出加工は、種々の形状に成形することができるが、その寸法、形状精度は圧延加工に比べると低いと言われている。長尺の押出形材では、寸法、形状精度が部分的に低下することがある。中空構造をした押出形材を嵌合することによって大きな部材を製作する場合、嵌合部で重ね合わせた材料との間に隙間が生じることがあり、その隙間が嵌合部の締結力を低下させる原因になる。また、中空構造の押出形材を嵌合によって繋ぎ合わせた場合、嵌合部の締結力において以下の問題点がある。例えば、図1は押出形材(11と12)、(12と13)の弾性変形を用いて圧入して押出形材(11、12、13)一体化した例である。嵌合部では、図2aに示すよう押出方向に垂直方向(←→方向)への荷重負荷に対して締結力は大きいが、図2bに示すような押出方向への荷重負荷に対しては滑りやすくなり、押出方向に垂直方向への荷重負荷に比べると締結力は低くなる。
このため、中空構造の押出形材を嵌合して大型部材を製作する場合には、嵌合部で重ね合わせた材料との間に生じる隙間の発生による締結力の低下、および嵌合部における押出方向への荷重負荷に対する締結力の低下を防止しなければならない。中空構造の押出形材を嵌合する場合には、嵌合部の締結力の増加および締結力を一定に保持するるため、嵌合部で重ね合わせた材料同士を高能率で結合することを技術課題とするものである。
図2bに示すような中空構造をした押出形材における嵌合部の締結力を増加させると同時に、締結力を一定に保持する方法として、嵌合部において以下の公知の結合方法が考えられる。
ボルト・ナット結合法は、結合する部分を穴あけ加工などの前処理が必要となるだけでなく、ボルトやナットなどの消耗品が必要となり、結合に要するコストが高くなる。嵌合部の締結力は高くなり、締結力は一定に保持されるが、有限の長さを有する中空構造の押出形材の内部でボルトとナットを結合する場合には穴の位置を合わさなければならならず、奥深い内部でボルトを挿入する穴の位置にナットを位置あわせて取り付けるには困難が生じる。
リベット結合法は、ボルト・ナット結合法と同様に、穴あけ加工の前処理が必要となり、またリベットなどの消耗品がコスト高になる。締結力は高くなり、締結力も一定に保持されるが、中空構造の押出形材の内部でリベット穴の位置を合わせるには困難が必要となる。
型かしめ結合法は、パンチ(凸型)を型(凹部)に押し込んで結合するが、締結力はボルト・ナット結合法やリベット結合法よりも低く、緩みやすい欠点がある。消耗品は不要であるが、中空構造部を結合することは困難である。
セルフ・ピアッシング結合法は、凹凸状の型が必要となるだけでなく、消耗品としてリベットが必要となる。締結力は高いが、設備費がかかるため、コスト高になる。
抵抗溶接法は、嵌合部の強度は高いが、電極を中空構造の押出材の内部に挿入することは困難である。また、設備費がかかるだけでなく、通電加熱した際、チリや火花が発生するため、作業環境が悪くなるなどの欠点がある。
上記の結合法では、中空構造をした押出形材を嵌合した部分を高能率、高強度、品質が安定し、かつ安価な結合法として適用することは困難である。
本発明は、中空構造をした押出形材を嵌合した部分の締結力を増加させると同時に、締結力を一定に保持するための接合方法に関する。
上記目的は、中空構造の押出形材の嵌合部を摩擦攪拌スポット接合(点接合)あるいは摩擦攪拌接合(線接合)を適用することによって達成することができる。摩擦攪拌スポット接合は、例えば特許3291491号で開示された接合法である。摩擦攪拌スポット接合は、図3に示すように接合しようとする板材31、32を重ね合わせておき、先端部に特殊形状の小突起物(接合ピン 34)を有する円筒形状の接合ツール33を回転させながら、以下の接合過程を経て重ね合わせた2つの材料が接合される。まず、接合ツールを所定の加圧力で接合する部分に回転しながら圧入する。接合ツール33の先端部に取り付けられた接合ピン34が材料中(31、32)に完全に埋没し、接合工具の肩部が材料に接触した後も接合ピンへの押圧を所定時間保持する。接合ピン近傍の材料は塑性流動現象を起こし、撹拌・一体化される。その後、接合ツール33を接合部から引き抜いて接合を完了する。
一方、摩擦撹拌接合(摩擦攪拌溶接とも言われる)は、例えば特許2712838号で開示された接合法である。摩擦撹拌接合は、摩擦攪拌スポット接合と接合過程は類似しており、以下の接合過程によって接合が行われる。摩擦攪拌接合は、図4に示すように材料31、32を突き合わせて(重ね合わせる場合もある)おき、接合部に先端部に特殊形状の小突起物(接合ピン)を有する円筒形状の接合ツールを回転させながら接合部に圧入し、接合ピンと材料との間で摩擦熱を発生させながら、接合方向に接合ツールを移動させることによって、材料の塑性流動によって撹拌・一体化して接合する方法である。
本発明は、中空構造の押出形材を嵌合した部分を摩擦撹拌スポット接合する、摩擦撹拌接合する、摩擦撹拌スポット接合と摩擦撹拌接合を併用する、などの方法により中空構造をした部材の嵌合部の締結力を増加させる効果と、嵌合部の締結力を一定に保持することを目的とする。
図5、図6および図7は参考例である。中空構造の押出形材を嵌合した部分を接合する場合について説明する。図5は、中空構造の押出形材を嵌合しておき、嵌合部の上側表面を押出方向に図3で示した摩擦攪拌スポット接合(点接合)することによって押出形材11と12、12と13を接合する状態を示したものである。摩擦攪拌スポット接合は、押出形材の嵌合部の領域内で行うものとし、嵌合部に取り付けられたリブの上部付近で行うことにことによって、接合ツールが形材に圧入する際の負荷荷重をリブで受ける。なお本発明は、嵌合部の下側裏面を押出方向に摩擦攪拌スポット接合する場合も含む。
図6は、中空構造の押出形材11と12、12と13を嵌合した部分を、図4で示した摩擦攪拌接合によって嵌合部の表面を押出方向に線接合する状態を示したものである。摩擦攪拌接合は、嵌合部の領域内で行うものとし、嵌合部に取り付けられたリブの上部付近で行うことにことによって、接合ツールが形材に圧入する際の負荷荷重をリブで受ける。なお本発明は、嵌合部の下側裏面を押出方向に摩擦攪拌接合する場合も含む。また本発明は、中空構造の押出形材の嵌合部を図7に示すように部分的に摩擦攪拌接合する場合(嵌合部の表面、裏面)も含むものとする。さらに、本発明は、中空構造押出形材の嵌合部を摩擦攪拌接合(線接合)と摩擦攪拌スポット接合(点接合)を併用する場合も含む。
本発明は、中空構造の押出形材を嵌合した部分を摩擦攪拌スポット接合(点接合)あるいは摩擦攪拌接合(線接合)することによって、嵌合部における締結力の増加および嵌合部の締結力を一定に保持するものである。このため本発明は、例えば鉄道車両の車体の製作に摩擦攪拌接合を適用する方法として、図8に示すように特許第3070735号、特許第3282722号などが開示されている。これらの摩擦攪拌接合は、リブの付いた中空形材41と中空形材42を突き合わせておき、突き合わせた部分に接合ツール43を回転しながら圧入し、図4で示した摩擦攪拌接合(上側、下側を線接合)するものである。また、同様な継手形状として、特許3288669号、特開2004−223587号および特開2004−230412号なども開示されているが、これらの摩擦攪拌接合は単に突き合わせた部材を結合するものであり、本発明における継手形状と異なるものである。しかも本発明は、中空構造の押出形材の嵌合部で生じる欠点を解決するために、摩擦攪拌スポット接合(あるいは摩擦攪拌接合)を適用するものであり、適用目的と継手形状が明確に異なる。
中空構造の押出形材の嵌合部を摩擦攪拌スポット接合した場合の嵌合部の締結力と、嵌合しただけの場合と締結力を比較した。中空構造の押出形材の嵌合部を摩擦攪拌スポット接合した場合の締結力が、中空構造の押出形材を嵌合しただけの場合と比べて、どのような効果を持つかを明らかについて強度試験を行った例について説明する。嵌合部の締結力が小さくなる場合の強度を調べた。すなわち、中空構造をした押出形材を嵌合しただけの場合と、同一の寸法・形状の押出形材の嵌合部を摩擦攪拌スポット接合(1箇所接合)した場合について、いずれも押出方向へ引張せん断試験によってせん断強度を評価した。なお比較のため、押出板材を重ね合わせて摩擦攪拌スポット接合(1箇所接合)した継手のせん断強度を調べた。せん断試験では、板厚2.0mmの板材を重ね合わせて摩擦攪拌スポット接合した場合、板厚2.0mmの中空構造をした押出形材の嵌合部を摩擦攪拌スポット接合した継手の場合はいずれも破断荷重によって評価した。また、中空構造の押出形材を嵌合しただけの場合はせん断試験における最大負荷荷重によって評価した。摩擦攪拌スポット接合は、接合ツールの回転数2000rpm、加圧力5kNを一定として、加圧時間を変化させて行った。摩擦攪拌接合継手のせん断強度は、加圧時間の経過とともに増加し、加圧時間が6sのときに最高値に達し、その後加圧時間が長くなると減少する傾向を示した。摩擦攪拌接合継手のせん断強度は、加圧時間が6sにおける最高値を用いた。せん断試験の結果は、表1に示すように板材同士を摩擦攪拌スポット接合した継手をせん断試験した強度は2.4kNであった。これに対して、中空構造の押出形材を嵌合しただけのせん断強度はわずか0.4kNであるのに対して、嵌合部を摩擦攪拌スポット接合した継手の場合は3.2kNと高い強度を示した。この結果より、中空構造の押出形材を嵌合しただけでは、押出方向へのせん断強度はかなり低い。しかし、嵌合部を摩擦攪拌スポット接合した場合のせん断強度は、板材を重ね合わせて摩擦攪拌スポット接合した場合の強度(2.4kN)と、嵌合しただけの強度(0.4kN)を加算した場合よりもかなり高くなることが明らかになった。以上の結果、中空構造の押出形材の嵌合部を摩擦攪拌スポット接合することによって得られる締結力は、嵌合部における押出方向への締結力の低下を大きく改善することに役立つことが実証された。
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の各請求項で記述した文言あるいは課題を解決するための方法、手段の項の文言に限定されることなく、発明者が容易に置き換えられる範囲に及ぶものである。
本発明によれば、中空構造をした押出形材を嵌合することによって、嵌合だけによる嵌合部の締結力の増強と嵌合部の品質を安定化することができる。さらに、本発明を応用することによって、形材を嵌合して繋ぎ合わせた部分を接合することによって、従来では強度不足のため製作が困難であった大型構造物が製作できるようになる。
中空構造をした押出形材の嵌合部を摩擦攪拌スポット接合した場合、勘合しただけの場合、板材を摩擦攪拌スポット接合した場合のせん断強度試験結果である。
11、12、13、31、32、41、42:形材、33、43:接合ツール、34:接合ピン。
Claims (3)
- 中空構造の押出形材を嵌合することによって大型部材を製作する場合、中空構造の押出形材における嵌合部の締結力を増加させると同時に、嵌合部の締結力を安定にするため、該嵌合部の重ね合わせた部分を押出方向に摩擦スポット接合(摩擦攪拌接合の点接合型)によって結合する接合方法。
- 請求項1において、押出成形によって製作した中空構造をした押出形材の嵌合部の締結力を増加させると同時に、かつ嵌合部の締結力を安定にするため、該嵌合部の重ね合わせた部分を押出方向に摩擦攪拌接合(連続接合)によって結合する接合方法。
- 請求項1において、押出成形によって製作した中空構造をした押出形材の嵌合部の締結力を増加させると同時に、かつ嵌合部の締結力を安定にするため、該嵌合部の重ね合わせた部分を押出方向に部分的に摩擦攪拌接合(間欠に接合)によって結合する接合方法。あるいは、摩擦攪拌スポット接合と部分的な摩擦攪拌接合(間欠に接合)を組み合わせて結合する接合方法。
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2006
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