JP2008104401A - 精原幹細胞のインビトロ増殖方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来法よりも高い増殖効率で、精原幹細胞を増殖させることが可能な方法を提供すること。
【解決手段】PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することを含む、精原幹細胞の増殖方法。本発明の方法を用いれば、従来法と比較して高い増殖効率で精原幹細胞を増殖させることが可能となる。本発明の方法を用いれば、精原幹細胞への遺伝子操作に要する時間が短縮されるので、より高い効率でトランスジェニック動物やノックアウト動物を作製できることが期待される。
【選択図】なし

Description

本発明は、PDGF−C又はGDF11を用いる精原幹細胞の増殖方法、精原幹細胞の製造方法、精原幹細胞増殖促進剤、精子の製造方法等に関する。
哺乳類精巣の精原幹細胞(spermatogonial stem cell)は、成体で無限に増殖し続け、減数分裂を経て精子形成に至る源となる細胞である。精原幹細胞は、次世代へ遺伝子を引き継ぐために分配される成体における唯一の幹細胞であるため、生体実験、医学的研究、バイオテクノロジー等に有用である。
Brinsterらは、1994年にin vivoで精原幹細胞を移植することに成功した(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., vol.91, No.24, p.11298-11302, 1994:非特許文献1)。この方法では、精巣を形成する精細管内に幹細胞を移植すると、該幹細胞がコロニーをつくり、ドナー細胞由来の精子形成を起こし、仔をつくることができるというものである。これによって、ES細胞以外にも生殖系列細胞を操作する新しい可能性が切り開かれ、精原幹細胞を用いた発生工学という新しい分野が確立された。
本願発明者らは、精原幹細胞のインビトロ長期培養方法を開発した(国際公開第2004/092357号パンフレット:特許文献1、Biology of Reproduction, vol.69, No.2, p.612-616, 2003:非特許文献2)。新生児の精巣細胞をグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、白血病抑制因子(LIF)等の存在下で培養すると、生殖細胞が固有の形状のコロニーを形成し、幹細胞が5ヶ月以上にわたり増殖した。不妊マウスの精細管に移植すると、培養した細胞は精子形成コロニーをつくり、正常な精子及び子孫を産出した。これにより、精原幹細胞を実用可能な程度にまで増殖させ、操作し、バイオテクノロジー等へ応用することが可能となった。実際に本願発明者らは、該方法を用いて増殖させた精原幹細胞に外来遺伝子を導入し、遺伝子改変精原幹細胞を得、該遺伝子改変精原幹細胞からトランスジェニック動物及びノックアウト動物を作製することに成功している(Biology of Reproduction, vol.72, No.1, p.236-240, 2005:非特許文献3、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., vol.103, No.21, p.8018-8023, 2006:非特許文献4)。
本願発明者らは、上記の培養方法を更に改良し、培養の安定が多数種類のサイトカイン等の因子に依存していない、より安定で効率的な雄性生殖系列幹細胞の増殖方法(特願2004−263027)、血清やフィーダー細胞を用いない精原幹細胞の増殖方法(Biol. Reprod., vol.72, p.985-991, 2005:非特許文献5、特願2004−307332)を開発した。
更に、本願発明者らは、FGF9等のFGF類が精原幹細胞等の雄性生殖系列幹細胞の増殖促進効果を有することを見出し、FGFを含む培地中で雄性生殖系列幹細胞を培養することを含む、従来よりも増殖効率の高い、雄性生殖系列幹細胞の増殖方法を開発している(特願2006−73471)。
以上のように、本願発明者らが開発してきた方法により、試験管内で精原幹細胞の自己複製を誘導し、該細胞に遺伝子改変を導入し、該細胞からトランスジェニック動物やノックアウト動物を作製することが可能となったが、精原幹細胞の増殖のスピードが必ずしも十分ではなく(マウスでの倍加時間:〜2.5日)、精原幹細胞への遺伝子導入から子孫獲得までにかかる時間が長い(約6ヶ月)のが問題であった。
そこで、従来法よりも高い増殖効率で、精原幹細胞を増殖させることが可能な方法を開発することが望まれる。
一方、PDGF−Cは、2000年に報告された、血小板由来増殖因子ファミリーの公知のサイトカインで、falloteinやSCDGF等とも呼ばれる。PDGF−Cは、組織のリモデリング、血管新生、胚発生、悪性腫瘍、繊維症等に関与していることが報告されているが、精原幹細胞の増殖へのPDGF−Cの関与については知られていない。PDGF−Cの詳細については、FEBS Journal, vol.272, p.5723-5741, 2005(非特許文献6)を参照のこと。
また、GDF11は、TGF−βファミリーの公知の分泌タンパク質で、BMP11等とも呼ばれる。GDF11は、アクチビンタイプIIA及びIIB受容体を介して、脊椎のパターン形成等に関与していることが報告されているが(Genes & Development, vol.16, p.2749-2754, 2002:非特許文献7)、GDF11の生体内における機能の詳細についてはほとんど知られていない。
国際公開第2004/092357号パンフレット Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., vol.91, No.24, p.11298-11302, 1994 Biology of Reproduction, vol.69, No.2, p.612-616, 2003 Biology of Reproduction, vol.72, No.1, p.236-240, 2005 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., vol.103, No.21, p.8018-8023, 2006 Biol. Reprod., vol.72, p.985-991, 2005 FEBS Journal, vol.272, p.5723-5741, 2005 Genes & Development, vol.16, p.2749-2754, 2002
本発明の目的は、従来法よりも高い増殖効率で、精原幹細胞を増殖させることが可能な方法を提供することである。
上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、PDGF−C又はGDF11の存在下で精原幹細胞を培養すると、従来法と比較して著しく高い細胞数の増加が確認された。更に、PDGF−C及びGDF11の存在下で精原幹細胞を培養すると、相乗的に増殖効率が増加した。そして、これらの方法により培養された細胞を不妊ヌードマウスの精細管内へ移植すると、精子形成コロニー形成が確認され、この培養細胞が精原幹細胞を含むことが証明された。
以上の知見に基づき、本発明が完成された。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することを含む、精原幹細胞の増殖方法。
[2]培地がPDGF−C及びGDF11を含む、[1]記載の方法。
[3]培地が更にFGF9を含む、[1]記載の方法。
[4]培地が更にGDNFレセプターリガンドを含む、[1]記載の方法。
[5]GDNFレセプターリガンドがGDNFである、[4]記載の方法。
[6]培地が更にFGF2を含む、[1]記載の方法。
[7]培地が更にEGFを含む、[1]記載の方法。
[8]培地が以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、[1]記載の方法:
1)PDGF−C、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
2)GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF。
[9]培地が以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、[1]記載の方法:
1)PDGF−C、GDNF、FGF2及びEGF;
2)GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF。
[10][1]記載の方法により増殖された精原幹細胞。
[11]PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することを含む、精原幹細胞の製造方法。
[12]培地がPDGF−C及びGDF11を含む、[11]記載の方法。
[13]培地が更にFGF9を含む、[11]記載の方法。
[14]培地が更にGDNFレセプターリガンドを含む、[11]記載の方法。
[15]GDNFレセプターリガンドがGDNFである、[14]記載の方法。
[16]培地が更にFGF2を含む、[11]記載の方法。
[17]培地が更にEGFを含む、[11]記載の方法。
[18]培地が以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、[11]記載の方法:
1)PDGF−C、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
2)GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF。
[19]培地が以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、[11]記載の方法:
1)PDGF−C、GDNF、FGF2及びEGF;
2)GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF。
[20][11]記載の方法により製造された精原幹細胞。
[21]PDGF−C又はGDF11を含む、精原幹細胞増殖促進剤。
[22]PDGF−C及びGDF11を含む、[21]記載の剤。
[23]更にFGF9を含む、[21]記載の剤。
[24]更にGDNFレセプターリガンドを含む、[21]記載の剤。
[25]GDNFレセプターリガンドがGDNFである、[24]記載の剤。
[26]更にFGF2を含む、[21]記載の剤。
[27]更にEGFを含む、[21]記載の剤。
[28]以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、[21]記載の剤:
1)PDGF−C、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
2)GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF。
[29]以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、[21]記載の剤:
1)PDGF−C、GDNF、FGF2及びEGF;
2)GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF。
[30]以下の工程を含む、移植された精原幹細胞に由来する精子を形成する非ヒト動物の製造方法:
a)PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することにより、精原幹細胞を増殖する工程;及び
b)a)で増殖された精原幹細胞を不妊非ヒト動物の精細管の中に移植し、該精原幹細胞に由来する精子形成を起こした非ヒト動物を得る工程。
[31]該培地がPDGF−C及びGDF11を含む、[30]記載の方法。
[32]以下の工程を含む、精子の製造方法:
a)PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することにより、精原幹細胞を増殖する工程;
b)a)で増殖された精原幹細胞を不妊非ヒト動物の精細管の中に移植し、該精原幹細胞に由来する精子形成を起こした非ヒト動物を得る工程;及び
c)該非ヒト動物から精子を単離する工程。
[33]該培地がPDGF−C及びGDF11を含む、[32]記載の方法。
本発明の方法を用いれば、従来法と比較して高い増殖効率で精原幹細胞を増殖させることが可能となる。本発明の方法を用いれば、精原幹細胞への遺伝子操作に要する時間が短縮されるので、より高い効率でトランスジェニック動物やノックアウト動物を作製できることが期待される。
本発明の精原幹細胞の増殖方法は、PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することを特徴とする。PDGF−C又はGDF11を用いることによって、精原幹細胞の増殖効率が飛躍的に上昇する。
本発明の方法によれば、精原幹細胞を精原幹細胞としての能力を保持したまま、高い効率で増殖させることが可能となる。本明細書において、精原幹細胞としての能力を保持したままの精原幹細胞の増殖を「増幅」という。
本発明の方法は、PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することにより、既存の精原幹細胞から新たな精原幹細胞を製造する方法でもある。
本明細書において、精原幹細胞とは、自己複製し、精子又はその前駆細胞(例えば精細胞、精祖細胞、精母細胞、精娘細胞等)へ分化し得る能力(精原幹細胞としての能力)を有する生殖系列細胞をいう。
本明細書において、精原幹細胞のうち、インビトロでGDNFレセプター作動性化合物(GDNF等)に依存的に増殖された精原幹細胞、例えば、Biol. Reprod., vol.69, p612-616, 2003に記載された方法により増殖された精原幹細胞を、GS細胞という。
細胞が精原幹細胞であるか否かは、例えば、Brinster, RL et al., Proc Natl Acad Sci USA, vol.91, No.24, p.11298-11302, 1994等に記載された方法に従って、不妊の雄性動物の精細管内に対象の細胞を移入し、該細胞が精細管内で精子形成コロニーを形成する能力を有するか否かを試験することにより判別することができる。該試験の結果、精子形成コロニーを形成する能力を有する細胞は精原幹細胞であると判別される。
また、細胞が精原幹細胞であるか否かは、例えば、フローサイトメーター等を用いて、細胞表面マーカー等の発現を解析することによっても判別し得る。有用な細胞表面マーカーとしては、β1−インテグリン、α6−インテグリン、EE2、EpCAM、SSEA−1、c−kit、CD9、フォルスマン抗原等が挙げられる(例えば、WO2004/092357等を参照)。
本発明の方法において用いられる精原幹細胞は、脊椎動物由来の細胞であれば特に限定されない。該脊椎動物としては、例えば、哺乳動物、鳥、魚、両生動物および爬虫類動物が挙げられる。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来る。鳥類としては、ニワトリ、ウズラ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、エミュ、ダチョウ、ホロホロ鳥、ハト等を挙げることができる。脊椎動物は、好ましくは哺乳動物である。
精原幹細胞細胞が由来する動物の齢は、本発明の方法により精原幹細胞を増殖し得る限り特に限定されず、新生仔、幼仔、成体、老体のいずれであってもよいが、若齢の動物ほど精巣に含まれる幹細胞(精原幹細胞等)の頻度が高いこと等から、製造効率の観点からはより若齢の動物を用いることが好ましい。
本発明の方法において用いられる精原幹細胞は、単離・精製されたものであってもよく、あるいは、精原幹細胞を含む精巣細胞として本発明に用いられてもよい。精巣細胞は、上記脊椎動物の精巣より自体公知の方法で調製することができる。例えば精巣を摘出し、摘出された精巣をコラゲナーゼ、トリプシン、DNaseなどの分解酵素で消化することにより、精巣細胞を分散させる(例えば、WO2004/092357等を参照)。分散された精巣細胞は培養液により洗浄され、回収される。
精原幹細胞の単離・精製は、例えば精原幹細胞に特異的に発現する細胞表面抗原を認識する抗体を用いて、セルソーターや、抗体磁性マイクロビーズ等を用いる方法などにより行うことができる。例えば、精原幹細胞は、α6−インテグリン、c−kit、CD9等の細胞表面抗原を指標に濃縮することができる(例えば、Proc Natl Acad Sci USA, 97, 8346-8351, 2001等を参照)。あるいはヘキスト等のdyeを用いて精原幹細胞を濃縮することも可能である(例えば、Development, 131, 479-487, 2004等を参照)。また、接着性の低い培養プレート(例えば、ultralow attachment plate (Nunc)等)上で、精巣細胞を7〜10日間培養後、プレート上に接着したコロニー形成細胞を採取することによっても精原幹細胞を濃縮することが出来る。
精原幹細胞は、本発明の方法に用いられる前にインビトロで培養されていてもよい。この前培養の条件は、特に限定されないが、例えば、WO2004/092357やBiol. Reprod., vol.72, p.985-991, 2005に記載されているように、上述の酵素処理で得られた精巣細胞をGDNF、LIF、EGF及びFGF2等の存在下で培養することにより、精原幹細胞を増殖させることができる。
PDGF−Cは、血小板由来増殖因子ファミリーの公知のサイトカインであり、falloteinやSCDGF等とも呼ばれる。PDGF−Cとしては、ヒト(Genbankアクセッション番号:NP_057289、AAF80597、AAK51637等)、マウス(Genbankアクセッション番号:NP_064355、AAH37696、AAK58566等)、ラット(Genbankアクセッション番号:AAM47265、NP_112607等)等のPDGF−Cが例示される。
培地中に含まれるPDGF−Cの濃度は、精原幹細胞の増殖を促進し、該細胞の増殖を達成しうる濃度であれば特に限定されないが、通常0.05ng/ml〜100mg/ml、例えば0.5ng/ml〜100μg/ml、好ましくは0.5ng/ml〜1μg/ml、より好ましくは2〜500ng/mlである。
GDF11は、TGF−βファミリーの公知のサイトカインであり、BMP11等とも呼ばれる。GDF11としては、ヒト(Genbankアクセッション番号:NP_005802、AAF21631、AAF21630、O95390等)、マウス(Genbankアクセッション番号:NP_034402、Q9Z1W4等)、ラット(Genbankアクセッション番号:Q9Z217等)等のGDF11が例示される。
培地中に含まれるGDF11の濃度は、精原幹細胞の増殖を促進し、該細胞の増殖を達成しうる濃度であれば特に限定されないが、通常0.05ng/ml〜100mg/ml、例えば0.5ng/ml〜100μg/ml、好ましくは0.5ng/ml〜1μg/ml、より好ましくは2〜500ng/mlである。
本発明の方法において用いられる培地は、PDGF−CとGDF11の両方を含むことが好ましい。PDGF−C及びGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養すると、相乗的に増殖効率が増加する。
本発明の方法において用いられる培地は、更にFGF9を含むことが好ましい。FGF9も精原幹細胞の増殖を促進することができる。FGF9としては、例えば、ヒト(Genbankアクセッション番号:BAA03572)及びマウス(Genbankアクセッション番号:AAC52529、BAA07410)のFGF9を挙げることが出来る。
培地中に含まれるFGF9の濃度は、精原幹細胞の増殖を促進し、該細胞の増殖を達成しうる濃度であれば特に限定されないが、通常0.05ng/ml〜100mg/ml、例えば0.5ng/ml〜100μg/ml、好ましくは0.5ng/ml〜10μg/ml、より好ましくは0.5ng/ml〜1μg/ml、更に好ましくは0.5〜200ng/ml、よりいっそう好ましくは0.5〜50ng/ml、最も好ましくは2〜20ng/mlである。
本発明の方法において用いられる培地は、上述のサイトカインに加え、更に、従来の精原幹細胞の増殖方法(例えば、Biology of Reproduction, vol.69, No.2, p.612-616, 2003、国際公開第2004/092357号パンフレット、Biol. Reprod., vol.72, p.985-991, 2005等を参照)において用いられる因子(GDNFレセプターリガンド、FGF2、EGF、LIF等)を含むことが好ましい。
GDNFレセプターリガンドは、精原幹細胞の自己増殖や分化に必須の因子である(Cellular and Molecular Life Sciences, vol.58, No.8, p.1061-1066, 2001、Science, vol.287, No.5457, p.1489-1493, 2000参照)。GDNFレセプターリガンドとは、GDNFレセプター(例えばcRetレセプターチロシンキナーゼ)又は該レセプターの補助レセプター(例えばGFRα1〜4)に結合して、該レセプターを介して細胞や生体を活性化し得る化合物を意味する。例えば、本発明の精原幹細胞の増殖方法において用いられたときに、GDNFレセプターを介して精原幹細胞の増殖を促進し、該細胞の増殖を達成し得る物質をいう。
GDNFレセプターリガンドとしては、例えば、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ノルトリン(Neurturin)、ペルセフィン(Persephin)、アルテミン(Artemin)等のサイトカインや、GDNFレセプター又は該レセプターの補助レセプターを特異的に認識する抗体やその結合性フラグメントが挙げられる。GDNFレセプターリガンドは、好ましくはGDNFである。
GDNFとしては、例えば、ヒト及びラット(WO93/06116号パンフレット)、マウス(例えばGene 203, 2, 149-157, 1997参照)等のGDNFが例示される。
本発明の方法において、GDNFレセプターリガンドが培地中に含まれる場合、その濃度は、精原幹細胞の増殖を促進し、該細胞の増殖を達成しうる濃度であれば特に限定されないが、通常0.05ng/ml〜100mg/ml、例えば0.5ng/ml〜100μg/ml、好ましくは0.5ng/ml〜10μg/ml、より好ましくは0.5ng/ml〜1μg/ml、更に好ましくは0.5〜200ng/ml、よりいっそう好ましくは0.5〜50ng/ml、最も好ましくは2〜20ng/mlである。
FGF2は、精原幹細胞の増殖の補助、特に増殖の誘導又は増強に有用であり、FGF2を培地に添加することで、より安定且つ効率的に精原幹細胞を増殖させることが出来る。FGF2としては、例えば、ヒトFGF2(例えばEndocrine Rev., 8, 95, 1987参照)、ウシFGF2(例えばProc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 6963, 1984参照)、マウスFGF2(例えばDev. Biol., 138, 454-463, 1990参照)、ラットFGF2(例えばBiochem. Biophys. Res. Commun., 157, 256-263, 1988参照)等が例示される。
本発明の方法において、FGF2が培地中に含まれる場合、その濃度は、精原幹細胞の増殖を補助し、該細胞の増殖を達成し得る濃度であれば特に限定されないが、通常濃度0.05ng/ml〜100mg/ml、例えば0.5ng/ml〜100μg/ml、好ましくは0.5ng/ml〜10μg/ml、より好ましくは0.5ng/ml〜1μg/ml、更に好ましくは0.5〜200ng/ml、よりいっそう好ましくは0.5〜50ng/ml、最も好ましくは2〜20ng/mlである。
EGFは、精原幹細胞の増殖の補助、特に増殖の誘導又は増強に有用であり、EGFを培地に添加することで、より安定且つ効率的に精原幹細胞を増殖させることが出来る。EGFとしては、例えば、マウス(例えばNature, 257, 325-327, 1975参照)、ヒト(例えばProc Natl Acad Sci USA, 88, 415, 1991参照)等のEGFが例示される。
本発明の方法において、EGFが培地中に含まれる場合、その濃度は、精原幹細胞の増殖を補助し、該細胞の増殖を達成しうる濃度であれば特に限定されないが、通常濃度0.05ng/ml〜100mg/ml、例えば0.5ng/ml〜100μg/ml、好ましくは0.5ng/ml〜10μg/ml、より好ましくは0.5ng/ml〜1μg/ml、更に好ましくは0.5〜200ng/ml、よりいっそう好ましくは0.5〜50ng/ml、最も好ましくは2〜30ng/mlである。
LIFは、特に、精巣細胞からのGS細胞培養の樹立を補助するために有用である。LIFとしては、例えば、ヒト(特開平1-502985)、マウス(特開平1-502985)、ヒツジ(特開平4-502554)、ブタ(特開平4-502554)、ウシ(特開平8-154681)等のLIFが例示される。本発明の方法において、LIFが培地中に含まれる場合、その濃度は、通常10〜10units/ml、例えば10〜10units/ml、好ましくは10〜10units/ml、より好ましくは3×10〜5×10units/mlである。
従って、好ましい一態様において、本発明の方法に用いる培地は、以下のいずれかの因子の組み合わせを含む:
1)PDGF−C、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
2)GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF。
より好ましい一態様において、本発明の方法に用いる培地は、以下のいずれかの因子の組み合わせを含む:
1)PDGF−C、GDNF、FGF2及びEGF;
2)GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF。
本発明の方法において培地に含まれ得るサイトカイン(PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNFレセプターリガンド、FGF2、EGF、LIF等)は、動物由来のもの、好ましくは上述の哺乳動物由来のものであれば特に限定されない。
また、本発明の方法において培地に含まれ得るサイトカインは、天然型タンパク質のみならず、合成又は組換えタンパク質であってもよい。該サイトカインは、公知の配列情報に基づき、遺伝子組み換え技術を利用して調製することが出来る。また、該サイトカインとしては市販されているものを利用してもよい。
本発明の方法において用いられる培地の基礎培地は、自体公知のものを用いることができ、特に限定されないが、例えばDMEM、EMEM、RPMI−1640、α−MEM、F−12、F−10、M−199、HAM、ATCC−CRCM30、DM−160、DM−201、BME、SFM−101、Fischer、McCoy’s 5A、Leibovitz’s L−15 、RITC80−7、HF−C1、MCDB107、NCTC135、Waymouth’s MB752/1、StemPro−34 SFM等が挙げられる。また、ES細胞培養用等に改変された培地を用いてもよく、上記基礎培地の混合物を用いてもよい。
本発明の方法において用いられる培地は、自体公知の添加物を含むことができる。添加物としては、特に限定されないが、例えば成長因子(例えばインスリン等)、鉄源(例えばトランスフェリン等)、ポリアミン類(例えばプトレシン等)、ミネラル(例えばセレン酸ナトリウム等)、糖類(例えばグルコース等)、有機酸(例えばピルビン酸、乳酸等)、血清蛋白質(例えばアルブミン等)、アミノ酸(例えばL−グルタミン等)、還元剤(例えば2−メルカプトエタノール等)、ビタミン類(例えばアスコルビン酸、d−ビオチン等)、ステロイド(例えばβ−エストラジオール、プロゲステロン等)、抗生物質(例えばストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、緩衝剤(例えばHEPES等)、栄養添加物(例えばStemPro-Nutrient Supplement等)等が挙げられる。当該添加物は、それぞれ自体公知の濃度範囲内で含まれることが好ましい。
また、本発明の方法において用いられる培地は、血清を含んでいてもよい。血清としては、動物由来の血清であれば特に限定されないが、好ましくは上記哺乳動物由来の血清(例えばウシ胎児血清、ヒト血清等)である。また血清の代替添加物(例えばKnockout Serum Replacement (KSR)(Invitrogen社製)等)を用いてもよい。血清の濃度は特に限定されないが、通常、0〜30(v/v)%の範囲である。採取されたばかりの精巣細胞から、精原幹細胞の培養を樹立する場合に、精原幹細胞以外の体細胞の増殖を抑制するため、血清の濃度を低く(例えば、0〜5(v/v)%)設定してもよい。
尚、本発明の方法において用いられる培地は、血清不含であってもよい。マウス及びラットの精原幹細胞の無血清培養が報告されている(Biol. Reprod., 72, 985-991, 2005: Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 102 17430-17435, 2005)。
本発明の方法において用いられる培地は、B27(J. Neurosci. Res., vol. 35, p. 567-576, 1993、Brain Res., vol. 494, p. 65-74, 1989)を含んでいてもよい。特に、精原幹細胞を無血清培地中で培養する場合、B27は精原幹細胞の増殖を増強し得る(Biol. Reprod., vol.72, p.985-991, 2005)。B27としては、B-27 Supplement(商品名)、B-27 Supplement Minus AO(商品名)、B-27 Supplement Minus Vitamin A(商品名)(以上、Invitrogen社製)等の市販品を用いてもよい。B27の培地への添加量は、本発明の方法において、精原幹細胞の増殖を増強させうる範囲で、特に限定されないが、例えばB-27 Supplement (Invitrogen社製)であれば、1〜100μl/ml、好ましくは5〜40μl/ml程度、培地に添加される。
本発明の方法においては、精原幹細胞をフィーダー細胞の存在下で培養してもよい。フィーダー細胞とは、精原幹細胞と共に培養された際に、精原幹細胞としての能力を維持した状態での精原幹細胞の増殖を補助する環境を提供する、非精原幹細胞をいう。フィーダー細胞としては、特に限定されないが、自体公知のものを用いることができ、例えば、線維芽細胞(哺乳動物の胎児線維芽細胞、マウス線維芽細胞株STO等)が挙げられる。フィーダー細胞は自体公知の方法、例えば放射線(ガンマ線等)照射や抗癌剤(マイトマイシンC等)処理等で不活化されていることが好ましい。フィーダー細胞を用いる場合には、通常、例えば6穴プレートの1穴あたり、10〜10個程度の細胞数が用いられる。精原幹細胞をフィーダー細胞の存在下で培養することにより、精原幹細胞がフィーダー細胞に接着し、より効率的に増殖コロニーを形成することができる。
あるいは、フィーダー細胞を用いる代わりに、精原幹細胞をラミニンなどの細胞外マトリクスを介して不溶性担体に接着した状態で培養してもよい(Biol. Reprod., vol.72, p.985-991, 2005)。この場合、精原幹細胞は、不溶性担体の表面に被覆された細胞外マトリクスに付着することにより、間接的に不溶性担体に接着する。
不溶性担体としては、本発明の方法において用いられた際に、精原幹細胞の増殖を達成し得る範囲において特に限定されず、通常、細胞毒性がなく、滅菌可能で、タンパク質に親和性を有する部材を用いることができる。一般的にプラスチック系、ガラス系の部材が好ましい。しかし、不溶性担体は、金属やセラミックでもよく、一定の素材に限定されるものではない。不溶性担体は、通常、シャーレ、プレート、フラスコ、ボトル、ビーズ、中空糸などの培養器材(培養に用いるための器具または材料)に成形して培養に提供される。
細胞外マトリクスとは、細胞の外側の空間を構成する生体高分子をいう。細胞外マトリクスとしては、コラーゲン、エラスチン等の線維性タンパク質、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のグルコサミノグリカンやプロテオグリカン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン等の細胞接着性タンパク質等が挙げられ、精原幹細胞の不溶性担体への接着を媒介し、精原幹細胞の増殖を達成し得る範囲において特に限定されないが、好ましくは細胞接着性タンパク質であり、より好ましくはラミニンである。
細胞外マトリクスを不溶性担体に被覆する方法としては、一般的に、非共有結合(水素結合、イオン結合、疎水結合等)、共有結合等を使用した方法を用いることができる。例えば、細胞外マトリクスを含む適当な緩衝液(例えばリン酸緩衝液等)中に不溶性担体を静置することにより、細胞外マトリクスを非共有結合により不溶性担体に結合させることが出来る。
本発明の方法における細胞培養条件としては、細胞培養技術において通常用いられている培養条件を用いることができる。例えば、培養温度は通常約30〜40℃の範囲であり、好ましくは約37℃が例示される。CO濃度は通常約1〜10%の範囲であり、好ましくは約5%が例示される。湿度は通常約70〜100%の範囲であり、好ましくは約95〜100%が例示される。
本発明の方法において、精原幹細胞の継代間隔、希釈率は、培養条件により適宜設定されるが、通常、2〜10日間隔で、1/2〜1/10倍希釈で細胞が継代される。
本発明の方法により増殖された精原幹細胞は、半永久的に凍結保存することが可能であって、必要に応じて融解・起眠して使用することができる。当該精原幹細胞は凍結保存・融解後も、自己複製し、精子又はその前駆細胞へ分化し得る能力(精原幹細胞としての能力)を維持する。凍結保存においては、ジメチルスルホキシドとウシ胎児血清アルブミンを含有するセルバンカー(DIA-IATRON社製)等の自体公知の細胞凍結保存用組成物中に細胞を懸濁し、−80〜−200℃、好ましくは−196℃(液体窒素中)の条件で細胞を保存する。
本発明の方法により増殖された精原幹細胞を凍結保存後起眠させる際には、常法に従って溶媒中で融解し、懸濁して細胞浮遊液とする。融解の方法も特に限定されないが、例えば、37℃の恒温槽中で、10%胎児ウシ血清を含有するDMEM(DMEM/FCS)を用いて行うことができる。具体的には、恒温槽に凍結チューブを浮かべ、凍結させた細胞へDMEM/FCSを滴下して融解する。細胞を遠心して洗浄した後、培地に再度懸濁する。
一度起眠した精原幹細胞を、培養後、再度凍結しても、精原幹細胞としての能力は維持される。
本発明の方法により増殖された精原幹細胞は、精原幹細胞としての能力を維持しているので、該細胞を不妊動物の精細管の中に移植することにより、該移植された細胞に由来する精子形成を起こした動物を製造することが出来る。精原幹細胞の移植方法としては、例えば、精細管内への直接注入、輸出管からの注入、精巣網からの注入等が挙げられ、注入対象である動物の種類や、操作の容易性等を考慮して適宜選択できる。例えばマウス、ラット等のげっ歯類においては、輸出管からの注入が好ましく用いられ、ウシ等の家畜においては精巣網からの注入が好ましく用いられる。移植された精原幹細胞は、精細管内において増殖し、精子形成コロニーを形成する。
レシピエント動物の動物種は、精原幹細胞が由来する上記の脊椎動物と同様である。
不妊動物としては、ブスルファン等の抗癌剤投与によって不妊化された雄性動物や、遺伝的に精子形成能力を欠損している雄性動物(例えばWマウスなど)等が挙げられる(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., vol.91, No.24, p.11298-11302, 1994、Cellular and Molecular Life Sciences, vol.58, No.8, p.1061-1066, 2001等を参照)。
移植された精原幹細胞を高い効率で生着させる観点から、該不妊動物の動物種は、移植される精原幹細胞の動物種と同一であることが好ましい。また、該不妊動物の系統も、移植される精原幹細胞の系統と同一であることが更に好ましい。
動物種及び/又は系統が不妊動物と移植される精原幹細胞との間で異なっている場合は、移植された細胞が拒絶される可能性を減弱する目的で、不妊動物は免疫不全動物であることが好ましい。該免疫不全動物としては、遺伝的に免疫機能を欠損している動物(例えばヌードマウス等)や、T細胞等の免疫担当細胞の細胞表面抗原(例えばCD4等)に対する抗体を投与すること等により免疫寛容を誘導した動物等が挙げられる。
また、上述の方法によって得られた、移植された精原幹細胞に由来する精子を形成する動物から精子を採取することにより、本発明の方法によって増殖された精原幹細胞由来の精子を製造することが出来る。
更に、上述の方法により得られた精子を卵に受精させ、胚を得ることにより、本発明の増殖方法によって増殖された精原幹細胞由来の胚を製造することが出来る。卵とは精子が受精可能な雌性配偶子をいう。卵としては、例えば、卵細胞、卵母細胞等が挙げられる。精子と卵の受精は、顕微受精、IVF等の周知の方法により行うことができる。
また、上述の方法により得られた胚を、宿主雌動物の子宮又は卵管に移入し、子孫を得ることにより、本発明の方法によって増殖された精原幹細胞由来の子孫を製造することが出来る。
宿主雌動物は、好ましくは偽妊娠動物である。偽妊娠動物は、正常性周期の雌動物を、精管結紮などにより去勢した雄動物と交配することにより得ることができる。
胚が移入された宿主雌動物は、妊娠し、本発明の方法によって増殖された精原幹細胞由来の子孫を出産する。
また、上述の方法により得られた、移植された精原幹細胞に由来する精子形成を起こした動物と雌とを自然交配し、子孫を得ることによっても、本発明の方法によって増殖された精原幹細胞に由来する子孫を製造することが出来る。該自然交配に用いられる雌は、通常、野生型雌動物である。
本発明の方法を用いれば、精原幹細胞としての能力を維持した状態で長期間にわたって、安定に、精原幹細胞を増殖させることが可能であるので、自体公知の方法で、本発明の方法により増殖された精原幹細胞の遺伝子を改変し、例えば、特定の外来遺伝子が導入された精原幹細胞や、特定の遺伝子を欠損した精原幹細胞等の遺伝子改変精原幹細胞を製造することができる。
精原幹細胞への遺伝子導入の方法としては、例えば、特定の遺伝子が機能的に発現できるように構築されたベクターを精原幹細胞に導入する。ベクターとしては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等を用いることができる。また、ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、センチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、パルボウイルス、セムリキ森林ウイルス、ワクシニアウイルス等が挙げられる。
ベクターを精原幹細胞に導入する方法としては、例えば、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、又はリポフェクション法等の一般的な遺伝子導入法が挙げられる。ウイルスをベクターに用いる場合には、上述の一般的な遺伝子導入法によりウイルスのゲノムを細胞に導入してもよいし、ウイルス粒子を、細胞へ感染させることによっても、該ウイルスのゲノムを細胞に導入することができる。
また、本発明の方法を用いれば、外来遺伝子が安定に導入された安定な遺伝子改変精原幹細胞を選択することが出来る。例えば、ベクターと同時にマーカー遺伝子を細胞へ導入し、マーカー遺伝子の性質に応じた方法で細胞を培養すればよい。例えば、マーカー遺伝子が、宿主細胞に致死活性を示す選抜薬剤に対する薬剤耐性を付与する遺伝子である場合には、該薬剤を添加した培地を用いて、ベクターが導入された細胞を培養すれば良い。薬剤耐性付与遺伝子と選抜薬剤の組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせなどをあげることができる。
また、同様の方法を用いて、特定の遺伝子を欠損した精原幹細胞を得ることも可能である。特定の遺伝子を欠損した精原幹細胞を得る方法としては、例えばターゲッティングベクターを用いた相同的組換え(ジーンターゲッティング法)が挙げられる。即ち、特定の遺伝子の染色体DNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすること等によって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(ターゲッティングベクター)を、相同組換え法により精原幹細胞の染色体に導入する。マーカー遺伝子として薬剤耐性を付与する遺伝子を用いる場合には、該薬剤を添加した培地を用いて、ベクターが導入された細胞を培養すれば良い。薬剤耐性付与遺伝子と選抜薬剤の組み合わせとしては、例えば、ネオマイシン耐性付与遺伝子とネオマイシンとの組み合わせ、ハイグロマイシン耐性付与遺伝子とハイグロマイシンとの組み合わせ、ブラストサイジンS耐性付与遺伝子とブラストサイジンSとの組み合わせなどを挙げることができる。得られた細胞を用いた薬剤耐性遺伝子に対応した薬剤を添加した培地を用いて培養することにより、ターゲッティングベクターが安定に導入された細胞を選択することが出来る。また、ターゲッティングベクター中の相同的組換え領域の外側にチミジンキナーゼ(TK)遺伝子などの細胞に対して毒性に作用し得るマーカー遺伝子を配置し、該マーカー遺伝子が細胞に対して毒性を発揮し得る条件(例えばTK遺伝子を用いる場合には、ガンシクロビル添加培地中で細胞が培養される)にて細胞を培養することにより、ランダムにターゲッティングベクターが導入された細胞を選択的に排除し、適切な相同的組換えを起こした細胞を高い効率で選択することが出来る(ポジティブ−ネガティブセレクション)。得られた細胞について当該特定の遺伝子のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した特定の遺伝子のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、特定の遺伝子を欠損した精原幹細胞を選択することにより得ることができる。或いは、組織特異的又は発達段階特異的な様式で特定の遺伝子を欠失させるCre−loxP系等を用いてもよい(Marth,J.D.(1996)Clin.Invest.97:1999−2002;Wagner,K.U.ら(1997)Nucleic Acids Res.25:4323−4330)。
また、ジーントラップ法を用いても、遺伝子を欠損した精原幹細胞を得ることが可能である。ジーントラップ法とは、レポーター遺伝子を含むトラップベクターを細胞に導入したとき、該遺伝子が染色体上の内在性遺伝子座内にランダムに組み込まれることを利用して未知の遺伝子を探索したり、内在性遺伝子を破壊したりする方法をいう。トラップベクターは、通常、レポーター遺伝子(lacZ遺伝子等)、プラスミド配列(プラスミドレスキュー法による内在性遺伝子の回収に必要な配列であって、複製開始点などを含む)及び選択マーカー遺伝子(neo遺伝子等)を含む。レポーター遺伝子は、通常、プロモーターを有しておらず、スプライスアクセプターのみを有するので、内在性遺伝子の下流に組み込まれたときにのみレポーター遺伝子は発現する。トラップベクターの組み込みは、ほとんどの場合、内在性遺伝子の破壊を生ずる。したがって、トラップベクターを精原幹細胞へ導入することによって、内在性遺伝子が破壊された精原幹細胞を得ることが出来る。
このようにして得られた遺伝子改変精原幹細胞を用いて、上述と同様の方法によって、遺伝子改変精原幹細胞に由来する精子を形成する非ヒト動物、遺伝子改変精原幹細胞に由来する精子(遺伝子改変精子)、遺伝子改変精原幹細胞に由来する胚(遺伝子改変胚)、遺伝子改変精原幹細胞に由来する非ヒト子孫(遺伝子改変非ヒト子孫あるいは遺伝子改変非ヒト動物)等を製造することが出来る。
また、本発明の方法、及び該方法により増殖された精原幹細胞は、雄の不妊治療に有用である。
例えば、不妊患者の精巣からバイオプシーで精原幹細胞を採取し、該細胞を本発明の方法によって試験管中で培養する。そして、当該不妊患者の精細管中に増殖された精原幹細胞を注入(マイクロインジェクション)して、患者の精巣の精細管の中に培養細胞由来の精子形成を起させるという手法によって、不妊治療を実施することができる。この手法は、例えば、化学療法や放射線治療による不妊に対して、特に効果的である。
このように、本発明の方法により増殖された精原幹細胞は雄性動物の不妊治療に利用可能であるため、上記精原幹細胞を含む特に男性を対象とした不妊治療剤も本発明の範囲内である。
本発明の不妊治療剤は、常套手段に従って、有効量の上記精原幹細胞を医薬として許容される担体と混合することにより製造することが出来る。本発明の不妊治療剤は、通常は、注射剤、懸濁剤、点滴剤等の非経口製剤として製造される。当該非経口製剤に含まれ得る担体としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などの注射用の水性液を挙げることが出来る。本発明の不妊治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤、酸化防止剤などと配合してもよい。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒト等の上述の哺乳動物に対して投与することができる。
また、本発明の方法、該方法により増殖された精原幹細胞は、生殖細胞レベルにおける遺伝子治療に有用である。
例えば、特定の遺伝子に変異を有する患者から、バイオプシーで精原幹細胞を採取し、本発明の方法によって試験管中で培養させる。そして、上述の遺伝子改変方法等により、該変異遺伝子を正常に機能する遺伝子と置換した精原幹細胞を作製し、その変異が子孫に伝わらないようにするという治療方法である。このような治療方法においても、精原幹細胞の維持および増殖が必要となるが、この場合に、本発明の方法を有効に利用することができる。
また、本発明は、PDGF−C又はGDF11を含む、精原幹細胞増殖促進剤に関する。本発明の剤を含む培地を用いて、上記本発明の方法により精原幹細胞を培養することにより、精原幹細胞の増殖効率が飛躍的に上昇する。また、本発明の剤を、従来用いられている精原幹細胞の培養培地に添加することにより、精原幹細胞の増殖効率が飛躍的に上昇する。
本発明の剤は、PDGF−CとGDF11の両方を含むことが好ましい。PDGF−C及びGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養すると、相乗的に増殖効率が増加する。
本発明の剤は、更にFGF9を含むことができる。FGF9も精原幹細胞の増殖を促進することができる。
本発明の剤は、上述のサイトカインに加え、更に、従来の雄性生殖幹細胞の増殖方法(例えば、Biology of Reproduction, vol.69, No.2, p.612-616, 2003、国際公開第2004/092357号パンフレット、Biol. Reprod., vol.72, p.985-991, 2005等を参照)において用いられる因子(GDNFレセプターリガンド(例えばGDNF)、FGF9、FGF2、EGF、LIF等)を含むことができる。
従って、好ましい一態様において、本発明の剤は、以下のいずれかの因子の組み合わせを含む:
1)PDGF−C、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
2)GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF。
より好ましい一態様において、本発明の剤は、以下のいずれかの因子の組み合わせを含む:
1)PDGF−C、GDNF、FGF2及びEGF;
2)GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
3)PDGF−C、GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
4)PDGF−C、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;
5)GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;並びに
6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF。
本発明の剤は、更に生理学的に許容される担体(例えば、生理的な等張液(生理食塩水、上述の基礎培地、ブドウ糖やその他の補助薬(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)を含む等張液等)、賦形剤、防腐剤、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、結合剤、溶解補助剤、非イオン性界面活性剤、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、保存剤、酸化防止剤、上述の添加物などを含むことができる。
本発明の剤に含まれる上記各構成成分の混合割合は、本発明の剤が本発明の方法に用いられる培地に添加されるなどして用いられた場合に、各構成成分の培地中の濃度が、上述の好適な範囲に入るように構成されていることが好ましい。
本発明の剤は、等張な水溶液、あるいは粉末等の状態で、上記本発明の方法に用いる培地に添加されるなどして用いられる。あるいは本発明の剤は、上記本発明の方法に用いられる培地であってもよい。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1:ラット又はマウス精原幹細胞の増殖及びその機能解析)
実験材料及び方法
(1)細胞培養
精巣細胞が、SDバックグラウンドで作製されたGFPトランスジェニックラット(以下 GFP ratと呼ぶことがある)(大阪大学、岡部勝博士より提供)(生後11〜16日齢)又はDBA/2バックグラウンドへかけ合せたトランスジェニックマウス系統C57BL6/Tg14(act-EGFP-OsbY01)(Green mouseと呼ぶ)(大阪大学、岡部博士より提供)(生後0〜2日齢)から採集された。このGFP rat及びGreen mouseはEGFP遺伝子を実質的に全ての細胞型において発現しているので、EGFPの蛍光を指標に当該ラット又はマウス由来の細胞を追跡することが可能である。
精巣細胞は、Biology of Reproduction, vol.69, No.2, p.612-616, 2003に記載された方法に準じ、コラゲナーゼ(タイプIV、シグマ社製)およびトリプシン(インビトロゲン社製)を用いた2段階酵素分解によって採集された。
精巣細胞の懸濁液を20〜30μmのナイロンメッシュに通して未消化細胞塊を除去し、600×gで5分間遠心して精巣細胞を回収し、更に、該精巣細胞から抗CD9抗体を用いて磁気ビーズ法により、CD9陽性細胞として精原幹細胞を濃縮した。濃縮操作はProc Natl Acad Sci USA、1999年、96巻、5504-5509頁の記載に準じて実施した。
回収された精原幹細胞は培地中に分散され、マウス胎児線維芽細胞(MEF)上、又はラミニンコートされた培養用ディッシュ上で培養された。ラミニンコートプレートは、培養ディッシュを20μg/mlの濃度でラミニン(BD Biosciences)を含むPBSにより37℃で一晩処理した後、該溶液を除去し、PBSで2回洗浄することにより調製した。
基礎培養培地としては、StemPro サプリメント(Invitrogen)、25μg/ml インシュリン、100μg/ml トランスフェリン、60μM プトレシン、30nM セレン酸ナトリウム、30μg/ml ピルビン酸、1μl/ml DL−乳酸(Sigma)、2mM L−グルタミン、5×10−5M 2−メルカプトエタノール、MEM非必須アミノ酸溶液(Invitrogen)、10−4M アスコルビン酸、10μg/ml d−ビオチン及び3μg/ml ヘパリンが補充されたStemPro-34 SFM(Invitrogen)を用いた。適宜所望の濃度のサイトカインが培地に添加された。基礎培養培地1mlあたり0.625μlのFCSが添加された。なお、本実施例において使用されたサイトカインは下表の通りである。
細胞は5%の二酸化炭素を含む空気中で、37℃にて維持され、適宜新たなラミニンコートディッシュ上へ継代された。
(2)培養されたラット精原幹細胞の移植及び解析
約5×10個のGFP rat又はGreen mouseの精原幹細胞懸濁液がKSN系統ヌードマウス(10週齢;Japan SLCより購入した)精巣の精細管内へ輸出管を通して注入された。内因性の精子形成を抑制するために、ヌードマウスは、生後4週間の時期にブスルファン(44mg/kg)で処理され、続いて、死亡率を抑えるために対応する骨髄細胞が注射された。各レシピエントの精巣では、注入物が細管の75〜80%を占めた。
コロニーをカウントするために、レシピエントマウス精巣は、ドナー細胞移植後2ヶ月で回収されUV光下にて蛍光を観察することにより解析された(Okabe M, Ikawa M, Kominami K, Nakanishi T, Nishimune Y. ‘Green mice’ as a source of ubiquitous green cells. FEBS Lett 1997; 407: 313-319)。宿主精巣細胞は内在性の蛍光を有さないので、ドナー生殖細胞は特異的に見分けられた。生殖細胞のクラスターは、細管の全周囲を占め、少なくとも0.1mmの長さを有する場合に、コロニーと定義された(Nagano M, Avarbock M R, Brinster RL. Pattern and kinetics of mouse donor spermatogonial stem cell colonization in recipient testes. Biol Reprod 1999; 60: 1429-1436)。全ての動物実験のプロトコルは、京都大学の動物保護および使用制度委員会によって承認されたものである。
結果
(1)ラット精原幹細胞の増殖に及ぼすPDGF−C及びGDF11の効果−1
2週齢のGFPラット(SD系統)の精巣細胞より抗CD9抗体により濃縮した精原幹細胞を、15ng/ml GDNF、20ng/ml EGF、10ng/ml FGF2、及び10ng/ml FGF9を含む培地中、マウス胎児線維芽細胞(MEF)上で培養することによりラットGS細胞を樹立した。2.0×10個/wellのラットGS細胞をラミニンコートした6穴プレートへ播種し、15ng/ml GDNF、20ng/ml EGF、10ng/ml FGF2、及び10ng/ml FGF9を含む培地に、更にPDGF−C(200ng/ml)及び/又はGDF11(80ng/ml)が添加された培地中で更に6〜11日間培養した。培養後、ウェル内のGS細胞数を計測し、培養開始時からの増殖倍率を算出した。複数回の試験結果を表2〜4に示す。
表2〜4において、コントロールは、GDNF、EGF、FGF2及びFGF9を含む培地中での培養を意味し、培養開始時からの増殖倍率が、該培地にPDGF−C及び/又はGDF11が添加された培地を用いた時と比較されている。
表2〜4に示すように、PDGF−C又はGDF11を培地へ添加することにより、ラットGS細胞の増殖効率が有意に増加した。また、PDGF−CとGDF11の双方を培地へ添加すると、増殖効率が相乗的に増加した。
同様の結果が、30日間培養後のGS細胞の顕微鏡観察によっても確認された(図1)。
(2)ラット精原幹細胞の増殖に及ぼすPDGF−C及びGDF11の効果−2
上記(1)と同様に、2.0×10個/wellのラットGS細胞をラミニンコートした6穴プレートへ播種し、15ng/ml GDNF、20ng/ml EGF、10ng/ml FGF2、及び10ng/ml FGF9を含む培地に、更にPDGF−C(200ng/ml)及び/又はGDF11(80ng/ml又は200ng/ml)が添加された培地中で59日間培養し、ウェル内のGS細胞数を経時的に計測し、培養開始時からの増殖倍率を算出した。試験結果を図2及び3に示す。
図2及び3に示すように、PDGF−C又はGDF11を培地へ添加することにより、ラットGS細胞の増殖効率が有意に増加した。また、PDGF−CとGDF11の双方を培地へ添加すると、増殖効率が相乗的に増加した。
(3)マウス精原幹細胞の増殖に及ぼすPDGF−C及びGDF11の効果
新生児Greenマウス(DBA/2系統)の精巣細胞を、酵素学的に分散し、GDNF(15ng/ml)、FGF2(10ng/ml)、EGF(20ng/ml)、LIF(1×10unit/ml)及びFCSを含むゼラチンコートされたプレート培地へ移した。培養の結果、多くの細胞は、一晩のインキュベート後にプレートに付着した。しかし、サイズが大きく、仮足があったりすることで特徴的に認められる、少なからずの生殖細胞が、浮遊したままであった。浮遊している細胞を、活発なピペッティング後に第2培養プレートへ継代した。細胞をトリプシン処理によって分散し、10〜14日間隔で新しい培養プレート(×1希釈)へ移した。2度目又は3度目の継代から、細胞をマイトマイシンCで不活化されたマウス胎児線維芽細胞(MEF)上で維持し、5〜6日毎に1/3〜1/4希釈で新しいMEFへ継代することにより、マウスGS細胞を樹立した。
1.8×10個/wellのマウスGS細胞をラミニンコートした6穴プレートへ播種し、15ng/ml GDNF、20ng/ml EGF、及び10ng/ml FGF2を含む培地に、更にPDGF−C(200ng/ml)及び/又はGDF11(80ng/ml)が添加された培地中で更に25日間培養した。ウェル内のGS細胞数を計測し、培養開始時からの増殖倍率を算出した。試験結果を図4に示す。
図4において、コントロールは、GDNF、EGF及びFGF2を含む培地中での培養を意味し、培養開始時からの増殖倍率が、該培地にPDGF−C及び/又はGDF11が添加された培地を用いた時と比較されている。
図4に示すように、コントロール(GDNF、EGF及びFGF2を含む培地中での培養)では、GS細胞の増殖は緩やかであったが、PDGF−C又はGDF11を培地へ添加することにより、増殖効率が有意に上昇した。また、PDGF−CとGDF11の双方を培地へ添加すると、増殖効率が飛躍的に増加し、25日間の培養で250倍程度の細胞増殖を示した。
以上(1)〜(3)より、PDGF−C及びGDF11は、精原幹細胞の増殖を促進する活性をそれぞれ有しており、その双方を組み合わせて用いることにより、精原幹細胞の増殖効率が飛躍的に上昇することが立証された。
(4)マウス及びラットGS細胞の幹細胞活性の確認
上記(2)の培養後のラットGS細胞及び上記(3)の培養後のマウスGS細胞が精原幹細胞としての活性を維持し、インビトロで幹細胞が増殖しているか否かを確認するために、不妊マウスの精細管の中に培養細胞を移植し、精子形成コロニーの形成の有無を調べた。
具体的には、樹立されたマウスGS細胞をPDGF−C(200ng/ml)及びGDF11(80ng/ml)の存在下で培養し、該サイトカインの添加時から30日後にGS細胞を回収し、ブスルファン処理されたヌードマウスの精細管へ移植した。移植実験におけるコロニーは、移植から7〜8週間後にUV照射下で観察した。
また、マウスGS細胞と同様に、ラットGS細胞をPDGF−C(200ng/ml)及びGDF11(80ng/ml)の存在下で培養し、該サイトカインの添加時から45日後に回収し、移植試験に供した。
その結果、マウスGS細胞及びラットGS細胞のそれぞれについて、広大な精子形成コロニーの形成が認められた(図5及び6)。
従って、PDGF−C及び/又はGDF11は、精原幹細胞としての能力を維持したままでの精原幹細胞の増殖(即ち増幅)を強力に促進することが示された。
本発明の方法を用いれば、従来法と比較して高い増殖効率で精原幹細胞を増殖させることが可能となる。本発明の方法により、精原幹細胞への遺伝子操作に要する時間が短縮されるので、より高い効率でトランスジェニック動物やノックアウト動物を作製できることが期待される。
ラット精原幹細胞の増殖に対するPDGF−C及び/又はGDF11の効果を示した写真である。(A)コントロール、(B)GDF11、(C)PDGF−C、及び(D)PDGF−C及びGDF11。 ラット精原幹細胞の増殖に対するPDGF−Cの効果を示したグラフである。○はコントロール群を、■はPDGF−C添加群を、それぞれ示す。 ラット精原幹細胞の増殖に対するPDGF−C及び/又はGDF11の効果を示したグラフである。黒三角はコントロール群を、□はGDF11(80ng/ml)添加群を、●はPDGF−C(200ng/ml)及びGDF11(200ng/ml)添加群を、それぞれ示す。 マウス精原幹細胞の増殖に対するPDGF−C及び/又はGDF11の効果を示したグラフである。□はコントロール群を、●はGDF11添加群を、黒三角はPDGF−C添加群を、○はGDF11及びPDGF−C添加群を、それぞれ示す。 PDGF−C及びGDF11を含む培地中で増殖されたマウス精原幹細胞により形成された精子形成コロニーを示す。 PDGF−C及びGDF11を含む培地中で増殖されたラット精原幹細胞により形成された精子形成コロニーを示す。

Claims (33)

  1. PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することを含む、精原幹細胞の増殖方法。
  2. 培地がPDGF−C及びGDF11を含む、請求項1記載の方法。
  3. 培地が更にFGF9を含む、請求項1記載の方法。
  4. 培地が更にGDNFレセプターリガンドを含む、請求項1記載の方法。
  5. GDNFレセプターリガンドがGDNFである、請求項4記載の方法。
  6. 培地が更にFGF2を含む、請求項1記載の方法。
  7. 培地が更にEGFを含む、請求項1記載の方法。
  8. 培地が以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、請求項1記載の方法:
    1)PDGF−C、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    2)GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    3)PDGF−C、GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    4)PDGF−C、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    5)GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;並びに
    6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF。
  9. 培地が以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、請求項1記載の方法:
    1)PDGF−C、GDNF、FGF2及びEGF;
    2)GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
    3)PDGF−C、GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
    4)PDGF−C、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;
    5)GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;並びに
    6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF。
  10. 請求項1記載の方法により増殖された精原幹細胞。
  11. PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することを含む、精原幹細胞の製造方法。
  12. 培地がPDGF−C及びGDF11を含む、請求項11記載の方法。
  13. 培地が更にFGF9を含む、請求項11記載の方法。
  14. 培地が更にGDNFレセプターリガンドを含む、請求項11記載の方法。
  15. GDNFレセプターリガンドがGDNFである、請求項14記載の方法。
  16. 培地が更にFGF2を含む、請求項11記載の方法。
  17. 培地が更にEGFを含む、請求項11記載の方法。
  18. 培地が以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、請求項11記載の方法:
    1)PDGF−C、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    2)GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    3)PDGF−C、GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    4)PDGF−C、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    5)GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;並びに
    6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF。
  19. 培地が以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、請求項11記載の方法:
    1)PDGF−C、GDNF、FGF2及びEGF;
    2)GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
    3)PDGF−C、GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
    4)PDGF−C、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;
    5)GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;並びに
    6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF。
  20. 請求項11記載の方法により製造された精原幹細胞。
  21. PDGF−C又はGDF11を含む、精原幹細胞増殖促進剤。
  22. PDGF−C及びGDF11を含む、請求項21記載の剤。
  23. 更にFGF9を含む、請求項21記載の剤。
  24. 更にGDNFレセプターリガンドを含む、請求項21記載の剤。
  25. GDNFレセプターリガンドがGDNFである、請求項24記載の剤。
  26. 更にFGF2を含む、請求項21記載の剤。
  27. 更にEGFを含む、請求項21記載の剤。
  28. 以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、請求項21記載の剤:
    1)PDGF−C、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    2)GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    3)PDGF−C、GDF11、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    4)PDGF−C、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;
    5)GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF;並びに
    6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF並びにFGF2及び/又はEGF。
  29. 以下のいずれかの因子の組み合わせを含む、請求項21記載の剤:
    1)PDGF−C、GDNF、FGF2及びEGF;
    2)GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
    3)PDGF−C、GDF11、GDNF、FGF2及びEGF;
    4)PDGF−C、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;
    5)GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF;並びに
    6)PDGF−C、GDF11、FGF9、GDNF、FGF2及びEGF。
  30. 以下の工程を含む、移植された精原幹細胞に由来する精子を形成する非ヒト動物の製造方法:
    a)PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することにより、精原幹細胞を増殖する工程;及び
    b)a)で増殖された精原幹細胞を不妊非ヒト動物の精細管の中に移植し、該精原幹細胞に由来する精子形成を起こした非ヒト動物を得る工程。
  31. 該培地がPDGF−C及びGDF11を含む、請求項30記載の方法。
  32. 以下の工程を含む、精子の製造方法:
    a)PDGF−C又はGDF11を含む培地中で精原幹細胞を培養することにより、精原幹細胞を増殖する工程;
    b)a)で増殖された精原幹細胞を不妊非ヒト動物の精細管の中に移植し、該精原幹細胞に由来する精子形成を起こした非ヒト動物を得る工程;及び
    c)該非ヒト動物から精子を単離する工程。
  33. 該培地がPDGF−C及びGDF11を含む、請求項32記載の方法。
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