JP2008070525A - 画像表示装置及び複合現実感システム - Google Patents
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Abstract
【課題】違和感のない現実空間映像又は複合現実空間映像の提示が可能であり、かつ該映像に対する歪補正処理を少なくする。
【解決手段】画像表示装置は、撮像素子21と、該撮像素子上に像を形成する撮像光学系22と、撮像素子を用いて生成された画像を表示する表示素子11と、表示素子上に表示された画像を観察者の瞳に導く光学系であって、撮像光学系の光軸と同軸上に光軸が位置する表示光学系12とを有する。撮像光学系と表示光学系は、被写界から撮像素子に向かう光束に対して撮像光学系で生じる歪曲収差量と表示光学系の射出瞳側から表示素子に向かう光束に対して表示光学系で生じる歪曲収差量とが同一の範囲にある光学系とする。さらに、表示素子に、撮像光学系により撮像素子上に形成される被写界像と同一の歪曲状態を有する画像を表示する。
【選択図】図1
【解決手段】画像表示装置は、撮像素子21と、該撮像素子上に像を形成する撮像光学系22と、撮像素子を用いて生成された画像を表示する表示素子11と、表示素子上に表示された画像を観察者の瞳に導く光学系であって、撮像光学系の光軸と同軸上に光軸が位置する表示光学系12とを有する。撮像光学系と表示光学系は、被写界から撮像素子に向かう光束に対して撮像光学系で生じる歪曲収差量と表示光学系の射出瞳側から表示素子に向かう光束に対して表示光学系で生じる歪曲収差量とが同一の範囲にある光学系とする。さらに、表示素子に、撮像光学系により撮像素子上に形成される被写界像と同一の歪曲状態を有する画像を表示する。
【選択図】図1
Description
本発明は、撮像光学系により形成された被写体像を撮像素子により撮像し、該撮像により得られた画像を表示光学系を通して観察者に観察させる画像表示装置に関する。
実写画像である現実空間映像とCG(コンピュータグラフィクス)画像である仮想空間映像とを合成して複合現実空間を作り出す複合現実感システムが知られている。
このシステムには、現実空間映像を取得するための撮像系(撮像光学系及び撮像素子)と現実空間映像に仮想空間映像を合成した複合現実空間映像を観察者に提示する表示系(表示素子及び表示光学系)とを有する画像表示装置が用いられる。この種の画像表示装置には、例えば、ビデオシースルータイプHMDと称されるものがある。
そして、該画像表示装置において、複合現実空間映像を提示するにあたり、現実空間映像(被写界画像)を現実空間(実被写界)に対して等倍となるように表示することで、複合現実空間における操作が直感的に行える。また、撮像光学系の光軸と表示光学系の光軸とを一致させておくことで、視差の問題を生じることなく観察者を取り囲む現実空間の映像を表示し、それに仮想空間映像を合成した複合現実空間映像を提示できる。
上記のような画像表示装置において、撮像系で得られた現実空間映像には、撮像光学系の歪曲収差に起因した歪が発生しており、これにより、現実空間映像と仮想空間映像との合成位置関係にずれが発生し、複合現実感が不自然になるという問題がある。これを解決する方法として、特許文献1には、現実空間映像の歪を補正する補正手段を設け、歪が補正された現実空間映像と仮想空間映像とを合成する装置が開示されている。
特開2002−271691号公報(段落0036〜0037、図1等)
上記のような画像表示装置においては、一般に、撮像光学系と同様に、表示光学系も歪曲収差を有している。このため、この表示光学系の歪曲収差による提示映像の歪も補正しなければ、観察者の感覚と提示される複合現実空間映像とにずれが生じ、違和感が生じる。
したがって、現実空間映像に対して仮想空間映像を合成する前に現実空間映像から撮像光学系の歪曲収差に起因した歪を排除する処理と、合成された複合現実空間映像に、表示光学系の歪曲収差に起因した歪を打ち消す歪を発生させる処理とが必要と考えられる。
しかしながら、これらの処理に要する時間や回路規模等の観点から、上記2つの処理のうち一方をなくすることができれば、より良い複合現実感システムを構成できる。
表示光学系は、表示素子からの光により射出瞳を形成する。そして、観察者は、射出瞳の近傍に眼を配置することで、表示素子上に表示された画像の拡大虚像を認識する。言い換えれば、表示光学系は、射出瞳位置を入射瞳として虚像位置に向かう光を表示素子上に結像させる。以下、このように表示光学系において、瞳から表示素子に向かって光(光線)を追うことを、逆光線追跡という。
表示光学系は、表示素子上の画像を、瞳位置近傍に眼を配置した観察者に提示する光学系であるため、該瞳と表示素子との間であって、瞳から所定距離離れた位置にしかレンズ等の光学素子を配置できない。該光学素子は、正の光学的パワー(焦点距離の逆数)、すなわち集光作用を有する。このため、逆光線追跡においては、表示素子上に樽型の歪曲が発生する。
この歪曲の発生を抑えるには、光学素子のパワーを抑えることが必要となる。しかし、これによって画角が小さくなり、できるだけ広画角での画像提示が求められる画像表示装置には好ましくない。
本発明は、違和感のない現実空間映像又は複合現実空間映像の提示が可能であり、かつ該映像に対する歪補正処理を少なくすることできるようにした画像表示装置及び複合現実感システムを提供することを目的の1つとしている。
本発明の一側面としての画像表示装置は、撮像素子と、該撮像素子上に像を形成する撮像光学系と、撮像素子を用いて生成された画像を表示する表示素子と、表示素子上に表示された画像を観察者の瞳に導く光学系であって、撮像光学系の光軸と同軸上に光軸が位置する表示光学系とを有する。そして、撮像光学系と表示光学系は、被写界から撮像素子に向かう光束に対して撮像光学系で生じる歪曲収差量と表示光学系の射出瞳側から表示素子に向かう光束に対して表示光学系で生じる歪曲収差量とが同一の範囲にある光学系とする。さらに、表示素子に、撮像光学系により撮像素子上に形成される被写界像と同一の歪曲状態を有する画像を表示することを特徴とする。
また、上記画像表示装置により現実空間映像を撮像し、該撮像された現実空間映像に生じている歪曲と同じ歪曲を有する仮想空間映像を該現実空間映像に対して位置を合わせて表示素子に表示させる画像処理装置を有する複合現実感システムも本発明の他の側面を構成する。
本発明によれば、観察者は現実空間に対して違和感のない現実空間映像又は複合現実空間映像を観察できる画像表示装置を実現することができる。さらに、提示映像に対して必要な歪補正処理を少なくすることができ、これにより、従来の画像表示装置に比べて、処理時間の短縮や処理のための回路規模の縮小を図ることができる。
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施例1である画像表示装置を含む複合現実感システムの構成を示している。
図中、1は表示系であり、11はLCDやエレクトロルミネセンス等の表示素子、12は表示素子上に表示された画像の拡大像を観察者の眼Eに提示するための表示光学系を構成するレンズである。
2は撮像系であり、21は撮像素子、22は外界(実被写界、すなわち現実空間)を撮像して撮像素子上に被写界像を形成するための撮像光学系である。撮像光学系22は、絞り222を有し、絞り222と撮像素子21との間にはレンズ221が配置されている。また、絞り222と外界との間にはレンズ223が配置されている。なお、表示光学系の光軸は、撮像光学系22の光軸と同軸上にある。
図中、3はパーソナルコンピュータ等の画像処理装置であり、撮像系2により取得された現実空間映像とCG画像等の仮想空間映像とを合成して複合現実空間映像を作成し、この複合現実空間映像を表示素子11に出力する。なお、画像処理装置3は、画像表示装置内に組み込まれていてもよいし、画像表示装置とは別に設けられていてもよい。
また、図には、レンズ12,221,223を単レンズエレメントで構成されているように示しているが、これらはそれぞれ複数のレンズエレメントによって構成されていてもよい。また、図には、221を凸レンズ、223を凹レンズとして記載しているが、これらレンズ221,223がそれに限定されるものではない。
本実施例の画像表示装置は、表示系1の光軸と撮像系2の光軸とが一致するよう配置されている。また、撮像系2の画角と表示系1の画角とが一致するよう構成されている。なお、ここにいう「一致」は、厳密な一致だけでなく、多少のずれはあるが光学的に一致しているとみなせる場合をも含む。
これによって、撮像系2により取得された現実空間映像が、表示系1により等倍で観察者に提示される。すなわち、被写界に対する表示素子11及び表示光学系12により観察者に提示される被写界画像の倍率が1である。このようにして、観察者が画像表示装置を用いずに認識する現実空間と同一の空間認識を観察者に与えることができ、観察者は、複合現実空間においても現実空間で行うのと同様に違和感なく作業を行える。
図2には、本実施例において、表示光学系12と撮像光学系22との歪曲の違いの許容量を説明するための歪曲収差図である。図中、L1は表示光学系12の歪曲収差曲線、L2は撮像光学系22の歪曲収差曲線である。
表示光学系12については、表示素子11の有効表示領域(観察者に導かれる画像が表示される領域)の対角長Ddの半値である最大像高を1に規格化し、表示光学系12の射出瞳側SDから表示素子11の表示面への逆光線追跡での表示面上の歪曲収差を示している。
撮像光学系22については、撮像素子21の有効撮像領域(観察可能な現実空間映像を取得する領域)の対角長Diの半値を1に規格化し、被写体から撮像素子21の撮像面への順光線追跡での表示面上の歪曲収差を示している。
ここで、理想像高をY’、実像高をYとするとき、歪曲Distは、
Dist=(Y−Y’)/Y’x100(%)
で表される。
図2では、表示光学系12と撮像光学系22の歪曲をそれぞれDist_disp,Dist_camとしている。そして、最大像高を1に規格化したものを縦軸にとり、歪曲の値を横軸にとって、Dist_dispをプロットしたものをL1として、Dist_camをプロットしたものをL2として示している。
また、表示光学系12と撮像光学系22の最大像高における歪曲をそれぞれ、Dist_disp1,Dist_cam1とし、表示光学系12と撮像光学系22の像高5割における歪曲をそれぞれDist_disp2,Dist_cam2とする。Ddiff1,Ddiff2は表示光学系12と撮像光学系22との最大像高及び像高5割における歪曲の差を表している。
Ddiff1=Dist_disp1−Dist_cam1
Ddiff2=Dist_disp2−Dist_cam2
Ddiff2=Dist_disp2−Dist_cam2
である。
また、撮像素子21の有効撮像領域及び表示素子11の有効表示領域における水平長さに対する対角長の比率をD/Hとし、水平方向の画素数をHpnとするときに、以下の式1,2の関係を満たすことが好ましい。
-2.5%≦Ddiff1≦2.5% ・・・式1
-2/(0.5xD/HxHpn/2)x100≦Ddiff2[%]≦2/(0.5xD/HxHpn/2)x100 ・・・式2
-2/(0.5xD/HxHpn/2)x100≦Ddiff2[%]≦2/(0.5xD/HxHpn/2)x100 ・・・式2
これらの式1,2を満たすことで、被写界から撮像素子21に向かう光束に対して撮像光学系21で生じる歪曲収差量と表示光学系12の射出瞳SD側から表示素子11に向かう光束に対して表示光学系12で生じる歪曲収差量とが同一の範囲にあると言える。
式1の条件を外れると、撮像された現実空間と画像表示装置で観察(認識)する空間との倍率差が、画像表示装置を使用して作業を行う際に違和感を生じる程度に大きくなり、好ましくない。
また、式2の条件を外れると、画像表示装置を使用して作業を行う主領域となる画像中心領域において現実空間とのずれが大きくなり、細かい作業に対応することが困難となる。
更に望ましくは、以下の条件を満足することが好ましい。
-1.5%≦Ddiff1≦1.5% ・・・式1′
-1/(0.5xD/HxHpn/2)x100≦Ddiff2[%]≦1/(0.5xD/HxHpn/2)x100 ・・・式2′
-1/(0.5xD/HxHpn/2)x100≦Ddiff2[%]≦1/(0.5xD/HxHpn/2)x100 ・・・式2′
これらの式1′,式2′を満たすことで、上述した倍率差や画像中心領域における現実空間とのずれが極めて小さくなり、空間認知における違和感がほとんどなくなり、また非常に精密な作業も行えるようになる。
以上の構成においては、表示素子11の最大像高DD(=Dd/2)と、撮像素子21の最大像高DI(=Di/2)に対して、両者の焦点距離fD,fIがDD/DI=fD/fIを満たす場合を前提としている。但し、厳密にはこれを満たす必要は無く、
0.97≦(fD/DD)/(fI/DI)≦1.07 ・・・式3
の条件を満足する程度でよい。すなわち、現実空間と観察者の認識する空間との歪曲を除いた倍率差を抑えればよい。
なお、式3の範囲で生じる倍率差を含めて、上記式1,式2(又は式1’,式2’)の条件が成り立つようにすれば、更に好ましい。
図3は、本実施例における画像処理の流れを示す図である。図中、4は撮像光学系22により撮像素子21の撮像面上に理想的に結像すべき現実空間(現実空間映像)である。5は理想的に結像すべき現実空間4に重畳すべきCG空間(仮想空間映像)である。6は観察者が認識する空間(複合現実空間映像)である。
21aは撮像面であり、41は現実空間4に存在する被写体が、撮像面上に撮像光学系22の歪曲収差により歪んで形成された像を示している。51は歪処理後の仮想空間映像を示しており、CG空間5の原画像に、撮像光学系22の歪曲収差により発生した現実空間4の歪曲と同じ歪曲を発生させた画像となっている。11aは表示素子の表示面であり、7は該表示面11aに表示すべき画像(合成画像)の例を示している。
現実空間4の像41は、撮像光学系22によって歪み、撮像素子21の撮像面21a上に示したように樽形状の像となる。撮像素子21の光電変換機能により生成された撮影画像は、画像処理装置3へと送られる。
画像処理装置3内には、現実空間領域4に重畳されるべきCG空間5の原画像が格納されている。撮像光学系22は、図2に示したような歪曲収差を持っており、これを予め計測して撮像光学系歪曲データとして保存する。画像処理装置3は、該撮像光学系歪曲データを用いて、CG空間5の原画像をCG空間5の中心からの距離Yに応じて歪ませる関数f(Y)を算出する。そして、該原画像に関数f(Y)を適用する処理を行い、樽形状に歪んだCG画像51を生成する。
画像処理装置3は、撮影画像と歪処理後のCG画像51とを合成し、複合現実空間を示す合成画像7を表示素子11に出力する。この合成画像7も、樽形状に歪んでいる。表示素子11の表示面上11aにおいては、特に画像処理は行われず、歪んだままの合成画像7が表示される。
本実施例の撮像光学系22と表示光学系12は、前述したように撮像光学系22の順光線追跡と表示光学系11の逆光線追跡とで同一範囲の歪曲を発生させる。すなわち、表示光学系11が撮像光学系12の歪を打ち消すような関係になっている。したがって、観察者に認識される空間6の画像は、ほとんど歪みがない画像として観察者に提示される。
以上のように、本実施例によれば、CG画像に対してのみ撮像光学系22が有する歪曲収差により発生する歪曲と同一範囲の歪曲を発生させる処理を行うだけで、観察者に歪みのない合成画像、すなわち複合現実空間画像を認識させることが可能となる。
なお、撮像光学系22の撮像面21aの中心に対する光軸ずれや表示光学系12の表示面11aの中心に対する光軸ずれが生じている場合は、これらを補正する画像処理を適宜行えばよい。
また、上述した関数f(Y)は、撮影画像とCG原画像とにおけるずれが1画素以内になるように、適当な次数を選べばよい。これにより、現実空間とCG空間との位置ずれを許容範囲に抑えることができ、複合現実空間が不自然にならないようにすることができる。また、該ずれを0.5画素以内のずれとすれば、位置ずれが無視できるレベルとなり、更に好ましい。なお、ここでは関数近似による演算での歪補正処理例を示したが、歪補正テーブルを用いて歪補正処理を行う等、他の処理方法を用いてもよい。
さらに、撮像素子21と表示素子11との画素数が異なる場合には、合成画像に対して倍率変換処理や解像度変換処理を行って表示素子11に表示させてもよい。
図4A及び図4Bを用いて、本実施例における撮像光学系22と表示光学系12との瞳間距離pdに関する条件を説明する。瞳間距離pdとは、図4Aに示すように、撮像光学系22の入射瞳224と表示光学系12の射出瞳SDとの間の光軸方向距離である。図4Bのように、撮像光学系22の入射瞳224と表示光学系12の射出瞳SDとが光学的に一致していれば(pd=0)、撮像光学系22を通して撮像した画像と、観察者が該装置を用いずに認識する画像とは、撮像光学系22で発生する歪曲を除いて同一である。
本実施例では、表示光学系12で発生する歪曲によって、撮像光学系22を通して取得された歪曲した撮影画像を歪曲状態を維持したまま表示素子11に表示させることで、観察者が該装置を用いずに認識する画像と同一の画像を観察することができる。このため、観察者は、現実空間を正しく認識できる。
しかしながら、これを実現するためには、図4Bに示すように巨大な反射鏡225を配置することが必要となり、装置の大型化に繋がる。このため、本実施例では、瞳間距離pdを、式4のように設定する。
20mm≦pd≦60mm ・・・式4
これにより、装置を小型化することができる。瞳間距離pdが式4の下限値を下回ると、装置が大型化する。一方、上限値を超えると、明視の近距離物体を観察する際に、撮影画像と表示画像との間の倍率ずれなどが認識されるため、好ましくない。
更に望ましくは、
30mm≦pd≦50mm ・・・式4′
を満たすとよい。これにより、上記問題が更に生じにくくなり、好ましい。
これらの条件を達成するために、図4Cに示すように、図4Bよりも小型の反射鏡などの屈曲光学素子225′を適宜配置することが好ましい。
また、本実施例の撮像光学系22は絞り222の被写体側及び像側にそれぞれ部分光学系223、221を有する。絞り222より被写体側にあるレンズ223の光学的パワー(屈折力)をφ1、撮像光学系22の全系の光学的パワーをφとするときに、以下の条件を満足するとよい。
-0.25≦φ1/φ≦0.25 ・・・式5
なお、上述したように、レンズ223を複数のレンズエレメントで構成してもよく、この場合は、該複数のレンズエレメントの合成光学的パワーが上記式5を満たせばよい。
式5の範囲を外れると、撮像光学系22での順光線追跡と表示光学系12での逆光線追跡とで同一範囲の歪曲収差を発生させることが困難になる。
また、撮像光学系22として比較的広角の光学系を用いる場合、レンズ221と撮像素子21との間の距離(バックフォーカス)が短くなり易い。これにより、レンズ221と撮像素子21との間にローパスフィルタや赤外カットフィルタ等を配置することが難しくなる。このため、上記式5の条件に代えて、
-0.25≦φ1/φ≦0 ・・・式5′
を満足するようにすれば、バックフォーカスを確保し易くなり、好ましい。
図5には、本発明の実施例2である画像表示装置の構成を示す。実施例1では表示光学系及び撮像光学系をそれぞれレンズを用いて構成した。これに対し、本実施例では、表示光学系120を、屈折率が1より大きい媒質上に3つの面1211,1212,1213を形成したプリズム状の光学素子121を用いて構成している。また、撮像光学系220も、屈折率が1より大きい媒質上に3つの面2261,2262,2263が形成されたプリズム状の光学素子226を用いて構成している。なお、実施例1において絞りより被写体側に設けられていたレンズも本実施例では用いていない。
本実施例では、現実空間から絞り222を通った光が、面2261から光学素子226に入射し、面2262,2261で内部反射した後、面2263を透過して撮像素子21に像を形成している。また、表示素子11に表示された画像光は、面1213から光学素子121に入射し、面1211,1212で内部反射した後、面1211から射出して瞳SDを形成し、観察者の眼Eに導かれる。撮像光学系220及び表示光学系120に光学素子226,121を用いて光路を折り畳むことにより、実施例1に比べて画像表示装置を薄く構成できる。
また、表示光学系120及び撮像光学系220とも、1つの光学素子を用いて構成しているため、その構成面に最低1つの曲面が必要である。特に、内部反射面を曲面とすると、小さな曲率で大きな光学的パワーを得られるため好ましい。本実施例では、面1212,2262を凹面反射面としている。
また、中心画角主光線に対して偏心した曲面を配置すると、画像に非回転対称な歪曲が生じる。中心画角主光線は、撮像光学系220においては、絞り222の中心から撮像素子21の撮像面(有効撮像領域)の中心に至る光線である。また、表示光学系120においては、表示素子11の表示面(有効表示領域)の中心から射出瞳SDの中心に至る光線である。本実施例では、両光学系220,120に凹面かつ偏心した曲面反射面を配置することで、非回転対称な歪曲を含めて両光学系220,120で発生する画像の歪が打ち消されるように構成している。
なお、偏心曲面を配置したことで、歪曲以外の収差も非回転対称に発生するが、これを補正するために、撮像光学系220及び表示光学系120のいずれにも非回転対称形状の面を配置するとよい。これにより、両光学系220,120の結像性能を向上させることができる。
本実施例においても、前述した式1,式2(又は式1′,式2′)の条件が満足されるようにして、現実空間と同一の複合現実空間が認識できるようにすることが望ましい。但し、歪曲が非回転対称であるので、式1,式2(又は式1′,式2′)の条件が各アジムスにおいて満足されるようにすることが望ましい。
また、撮像光学系220の光学素子226に、表示光学系120の光学素子121の形状を撮像素子21と表示素子11の有効領域のサイズ比率に応じて倍率を変えたものを用いれば、現実空間と同一の複合現実空間がより認識され易くできるため、好ましい。
表示素子11と光学素子121との間の距離は、観察者から明視の有限距離に虚像を提示するための距離ddに設定されている。また、撮像素子21と光学素子226との間の距離は、有限距離の外界からの画像を撮像素子21上に形成するための距離diに配置される。このため、diとddはその比率が撮像素子21と表示素子11の有効領域のサイズ比率と同じにはなっていない。つまり、厳密には撮像光学系220と表示光学系120で発生する歪曲は同一ではないが、同一とみなせる範囲の歪曲収差を発生させることはできる。
したがって、実施例1と同様に、CG空間の原画像に撮像光学系220で発生する歪曲と同一の歪曲を与える画像処理を行うだけで、観察者はほぼ歪のない複合現実空間を認識することが可能となる。
また、本実施例においても、撮像光学系220に反射鏡を組み込み、撮像光学系220の瞳224と表示光学系120の瞳SDとの距離に関して、式4(又は式4′)の条件を満足させることが好ましい。
図6には、本発明の実施例3である画像表示装置の構成を示す。実施例1では表示光学系及び撮像光学系をそれぞれレンズを用いて構成した。これに対し、本実施例では、表示光学系120を、実施例2と同じ屈折率が1より大きい媒質上に3つの面1211,1212,1213を形成したプリズム状の光学素子121を用いて構成している。また、撮像光学系220′のうち絞り222より被写体側には、屈折率が1より大きい媒質上に3つの面2271,2272,2273が形成されたプリズム状の光学素子227を配置している。なお、絞り222よりも撮像素子側に配置されたレンズ228は、自由曲面を含むレンズ228としている。該レンズ228は、単レンズエレメントで構成してもよいし、複数のレンズエレメントにより構成してもよい。
表示光学系120については、実施例2と同じであるため、説明を省く。撮像系においては、現実空間からの光が面2271から光学素子227に入射し、面2272,2271で内部反射した後に面2273から光学素子227を射出して、絞り222へと向かう。絞り222を通った光は、レンズ228を介して撮像素子21に被写体像を形成する。
本実施例においても、光学素子227を偏心曲面を有する光学素子として、薄型化を達成することが好ましい。この場合に光学素子227において生じる偏心歪曲は、レンズ228に配置した偏心曲面で補正したり、表示光学系12で画像の偏心歪曲分を打ち消したりするようにしてもよい。
本実施例においても、前述した式1,式2(又は式1′,式2′)の条件が満足されるようにして、現実空間と同一の複合現実空間が認識できるようにすることが望ましい。但し、歪曲が非回転対称であるので、式1,式2(又は式1′,式2′)の条件が各アジムスにおいて満足されるようにすることが望ましい。
本実施例によれば、実施例1と同様に、CG空間の原画像に撮像光学系220′で発生する歪曲と同一の歪曲を与える画像処理を行うだけで、観察者はほぼ歪のない複合現実空間を認識することが可能となる。
なお、本実施例における絞り222より被写体側に設けられた光学素子227の光学的パワーをφ1とし、撮像光学系220′の全体の光学的パワーをφとするとき、
-0.25≦φ1/φ≦0.25 ・・・式5
を満足することが好ましい。この範囲を外れると、撮像光学系220′での順光線追跡と表示光学系120での逆光線追跡とで同一範囲の歪曲収差を発生させることが困難になるからである。
更に、
-0.25≦φ1/φ≦0 ・・・式5′
とすれば、バックフォーカスが確保し易くなり、より好ましい。
また、本実施例においては、撮像光学系220′の光路を折り曲げる役割を光学素子227に持たせており、これにより結像に寄与しない面を減らして、少ない構成要素で撮像光学系220′を構成している。
また、本実施例でも、撮像光学系220′と表示光学系120との瞳間距離pdに関する条件式4(又は式4′)を満足している。これにより、小型で、且つ違和感なく近距離作業を行うことができる画像表示装置を実現できる。
図7には、本発明の実施例4である画像表示装置の構成を示す。実施例1では表示光学系及び撮像光学系をそれぞれレンズを用いて構成した。これに対し、本実施例では、表示光学系120を、実施例2と同じ屈折率が1より大きい媒質上に3つの面1211,1212,1213を形成したプリズム状の光学素子121を用いて構成している。また、撮像光学系22は、実施例1と同じレンズ221,223を用いて構成している。
本実施例でも、前述した式1,式2(又は式1′,式2′)、の条件が満足されるようにして、現実空間と同一の複合現実空間が認識できるようにすることが望ましい。
本実施例によれば、実施例1と同様に、CG空間の原画像に撮像光学系220′で発生する歪曲と同一の歪曲を与える画像処理を行うだけで、観察者はほぼ歪のない複合現実空間を認識することが可能となる。
また、本実施例でも、撮像光学系22と表示光学系120との瞳間距離pdに関する条件式4(又は式4′)を満足している。これにより、小型で、且つ違和感なく近距離作業を行うことができる画像表示装置を実現できる。
1 表示系
2 撮像系
11 表示素子
12,120 表示光学系
21 撮像素子
22,220,220′ 撮像光学系
2 撮像系
11 表示素子
12,120 表示光学系
21 撮像素子
22,220,220′ 撮像光学系
Claims (7)
- 撮像素子と、
該撮像素子上に像を形成する撮像光学系と、
前記撮像素子を用いて生成された画像を表示する表示素子と、
前記表示素子上に表示された画像を観察者の瞳に導く光学系であって、前記撮像光学系の光軸と同軸上に光軸が位置する表示光学系とを有し、
前記撮像光学系と前記表示光学系は、被写界から前記撮像素子に向かう光束に対して前記撮像光学系で生じる歪曲収差量と前記表示光学系の射出瞳側から前記表示素子に向かう光束に対して前記表示光学系で生じる歪曲収差量とが同一の範囲にある光学系であり、
前記表示素子に、前記撮像光学系により前記撮像素子上に形成される被写界像と同一の歪曲状態を有する画像を表示することを特徴とする画像表示装置。 - 被写界に対する前記表示素子及び前記表示光学系により観察者に提示される被写界画像の倍率が1であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
- 前記歪曲収差量が同一の範囲とは、
-2.5%≦Ddiff≦2.5%
但し、Ddiff=Dist_cam-Dist_disp
なる条件を満たす範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。 - 前記歪曲収差量が同一の範囲とは、
-2/(0.5xD/HxHpn/2)x100≦Ddiff[%]≦2/(0.5xD/HxHpn/2)x100
但し、Ddiff=Dist_cam-Dist_disp、D/Hは前記撮像素子の有効撮像領域及び前記表示素子の有効表示領域における水平長さに対する対角長の比率、Hpnは水平方向の画素数
なる条件を満たす範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。 - 前記撮像光学系は、該撮像光学系の絞りから前記撮像素子までの部分光学系が正の光学的パワーを有し、前記表示光学系は、該表示光学系の射出瞳から前記表示素子までの間で正の光学的パワーを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の画像表示装置。
- 前記撮像光学系は、絞りと、該絞りの被写体側及び像側にそれぞれ部分光学系を有し、以下の条件を満足することを特徴とする画像表示装置。
-0.25≦φ1/φ≦0.25
但し、φは前記撮像光学系の全系の光学的パワーであり、φ1は前記絞りよりも被写体側の部分光学系の光学的パワーである。 - 請求項1から6のいずれか1つに記載の画像表示装置により現実空間映像を撮像し、
該撮像された現実空間映像に生じている歪曲と同じ歪曲を有する仮想空間映像を該現実空間映像に対して位置を合わせて前記表示素子に表示させる画像処理装置を有することを特徴とする複合現実感システム。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006247934A JP2008070525A (ja) | 2006-09-13 | 2006-09-13 | 画像表示装置及び複合現実感システム |
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ID=39292172
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JP2006247934A Pending JP2008070525A (ja) | 2006-09-13 | 2006-09-13 | 画像表示装置及び複合現実感システム |
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JP (1) | JP2008070525A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20210231957A1 (en) * | 2020-01-28 | 2021-07-29 | Canon Kabushiki Kaisha | Image display apparatus |
WO2023157774A1 (ja) * | 2022-02-21 | 2023-08-24 | 国立大学法人東海国立大学機構 | 電子式ゴーグル |
-
2006
- 2006-09-13 JP JP2006247934A patent/JP2008070525A/ja active Pending
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