JP2008070209A - パーキンソン病診断装置およびドーパミン計測データ解析方法 - Google Patents

パーキンソン病診断装置およびドーパミン計測データ解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】PET計測値からドーパミンの反応定数を正確に求められ、PET計測中の動脈採血が不要であり、PET計測時間を短縮できるパーキンソン病診断装置を提供する。
【解決手段】パーキンソン病診断装置1は、検査部位および参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式から得られたドーパミン濃度の厳密解の情報を用いて、ドーパミン濃度計測値からドーパミン反応定数を算出する。厳密解は、ラプラス空間での代数方程式を数式処理によって解くことにより得られる。厳密解では、数式処理によって血液中のドーパミン濃度が消去されており、検査部位と参照部位のドーパミン濃度計測値の比がラプラス空間にて複数の反応定数で表される。入力されるドーパミン濃度計測値は、PETでの計測開始から定常状態に至るまでの計測値変化期間に計測された複数の計測値である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、PETにより得られたドーパミン濃度計測値を解析してパーキンソン病診断指標を得るパーキンソン病診断装置およびドーパミン計測データ解析方法に関し、特に、パーキンソン病診断の指標になるドーパミンの反応定数を正確に算出する検査解析技術に関する。
近年、病巣を早期に発見・診断するための医用検査解析技術の一つとして、PET(Positoron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)検査が広く知られている。PET検査では、投影データが収集され、この投影データに基づく計算処理によって画像データが再構成される。この再構成された画像によって病巣の診断が視覚的に行われる。
パーキンソン病は、周知のように、中年以降に発症し、振戦、筋固縮、動作緩慢を特徴とする進行性の病気である。パーキンソン病は、脳内のドーパミン代謝と関係することが知られている。そこで、ドーパミン濃度を計測できるPETを用いたパーキンソン病診断が従来より研究されている。
PETを用いるパーキンソン病診断においては、放射性同位元素を含むドーパミン濃度を脳の各部分で計測し、その計測されたドーパミン分子の濃度からドーパミンの代謝モデルにおける反応定数を数理的に求め、その反応定数の数値を画像表現することで、視覚的な病気の診断が行われる。反応定数は、病巣部位などにおけるドーパミンおよびその代謝物の移動速度に相当する。代謝モデルとしてはコンパートメントモデルが知られており、コンパートメントモデルは、各部位のドーパミン濃度が異なると仮想的に設定された複数のコンパートメントと、コンパートメント間のドーパミン等の移動速度で表される。
ドーパミン分子の濃度計測値から反応定数を数理的に求めるにあたっては、従来は、数理解析手法として近似解法が用いられている。
また、ドーパミンの代謝モデルが血液中のドーパミン濃度を含むことから、従来の検査技術では、PET計測値と同時に、被検者の持続動脈採血データが解析対象情報として必要とされる。この持続動脈採血は、PET検査中に同時に行われ、長時間に及ぶ。
また、ドーパミン濃度の計測値は、計測開始から増大および減少する計測値変化期間を経て、定常状態に至る。定常状態に至るまでは、例えば60分程度の時間を要する。上記の近似解法を用いる場合は、定常状態の計測値が必要とされる。
従来のPETを用いるパーキンソン病診断は例えば特許文献1に開示されている。
米国特許第4931270号明細書
しかしながら、上述したような現状のパーキンソン病診断においては、下記のような幾つかの問題がある。
まず、従来は、上述のように、ドーパミン濃度計測値から反応定数を求めるのに近似解法に頼っているので、必要な反応定数を正確に求めるのが困難である。これに対して、反応定数を正確に算出できる解析技術の提供が望まれる。この点に関してさらに説明すると、従来の研究では、PET計測結果を用いたパーキンソン病診断は、相対的判断に限られることが多い。例えば、従来は、健常者の若年層と老年層およびパーキンソン病患者の3者の間で相対的な数値比較が行われる。これに対して、反応定数を正確に算出できれば、パーキンソン病の絶対的指標としてPET計測結果を使えるようになることが期待される。
また、従来は、上述したように、PET計測値と同時に被検者の持続動脈採血データが解析対象情報として必要とされるため、PET計測中の採血が被験者に強いられるという問題がある。このような採血等の被検者の身体的負担が軽減されることが望ましい。
さらに、近似解法を用いる解析においてはドーパミン変化量の定常状態の計測値が必要とされるため、被検者の拘束しての計測が長時間に及んでしまうという問題がある。この計測時間をなるべく短縮することが望ましい。
本発明は上記背景の下でなされたものである。本発明の一の目的は、より正確にドーパミンの反応定数を求めることができる解析技術を提供することにある。
本発明の一の目的は、PET計測中の持続動脈採血を行わずとも反応定数の解析結果を得られる解析技術を提供することにある。
本発明の一の目的は、PET計測時間を短縮でき、この短縮された計測時間に得られたデータからドーパミンの反応定数を求めることができる解析技術を提供することにある。
本発明の一の態様は、標識されたドーパミンを用いてPETにより得られたドーパミン濃度計測値を解析してパーキンソン病診断指標を得るパーキンソン病診断装置であって、パーキンソン病の検査部位および参照部位のドーパミン濃度計測値を入力する計測値入力部と、前記検査部位および前記参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式から得られたPET計測対象のドーパミン濃度の厳密解の情報を記憶した厳密解情報記憶部と、前記計測値入力部から入力されたドーパミン濃度計測値と前記厳密解情報記憶部に記憶された前記厳密解の情報とを用いて前記コンパートメントモデルでのドーパミンの反応定数を算出する反応定数算出部と、を有している。
上記のように、本発明によれば、ドーパミン診断装置が、検査部位および参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式から得られたドーパミン濃度の厳密解の情報を利用して、ドーパミンの反応定数を算出する。微分方程式は、各コンパートメントにおけるドーパミン濃度変化(変化速度)を表してよい。上記代数方程式は、微分方程式をラプラス変換して得られるという意味で、ラプラス空間の微分方程式と呼んでもよい。そして、厳密解では、PETで計測可能なドーパミン濃度が、反応定数の関数で表されてよく、この厳密解とドーパミン濃度計測値を使って反応定数を求めることができる。このようにラプラス空間の厳密解を利用することにより、従来の近似解法に頼る技術と比べて、ドーパミンの反応定数をより正確に求めることができる。
前記厳密解情報記憶部は、前記検査部位および前記参照部位におけるドーパミン反応機構の前記コンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式を数式処理によって解くことにより得られた前記厳密解の情報を記憶してよい。数式処理は、計算代数の処理であり、情報を多項式によって表し、その多項式に対して処理を施すことをいい、数値計算と対比される。多数の多項式を処理できる数式処理技術とそのプログラムが実用化されている。
本発明は、ドーパミン反応機構のコンパートメントモデルの微分方程式を処理するのにラプラス空間を使ったことと、微分方程式をラプラス変換した代数方程式を解くのに数式処理を使ったことにより、コンパートメントモデルの微分方程式の厳密解を利用可能とし、これにより近似解法に頼らずに反応定数を正確に求めることを可能としている。
また、前記厳密解では、数式処理によって前記検査部位と前記参照部位でPETにより計測可能なドーパミン濃度の比がラプラス空間にて複数の反応定数で表されてよい。これにより、PETの計測値を好適に厳密解に適用して反応定数を求めることができる。
また、前記厳密解では、数式処理によって前記コンパートメントモデルにおける血液中のドーパミン濃度が消去されてよい。計算代数の分野では、数式処理技術を利用することにより、特定の変数を消去することが可能である。この特徴を利用して、本発明では、血液中のドーパミン濃度(より詳細には血液中のドーパミンおよびその代謝物の濃度)を消去した厳密解が得られ、この厳密解を使って濃度計測値から反応定数が求められる。これにより、PET計測中の持続動脈採血を行わずとも反応定数の解析結果を得ることが可能になる。
また、前記計測値入力部は、PETでの計測開始から定常状態に至るまでの計測値変化期間に複数時点で計測された前記検査部位および前記参照部位の複数のドーパミン濃度計測値を入力してよく、前記反応定数算出部は、前記検査部位および前記参照部位の前記複数のドーパミン濃度計測値を用いて反応定数を算出してよい。前記反応定数算出部は、前記検査部位および前記参照部位の前記複数のドーパミン濃度計測値を指数多項式に近似し、それをラプラス変換し、前記厳密解に表れる反応定数を、前記指数多項式をラプラス変換した式に表れる実数値について最適化してよい。上記のように、本発明によれば、計測値変化期間のドーパミン濃度計測値から反応定数が求められるので、定常状態の計測値が不要であり、定常状態までの長時間の計測が不要であり、計測時間を短縮できる。
ここで、従来の近似解法は、定常状態における安定した一つの計測値を用いて反応定数を求める。これに対して、本発明は、厳密解を扱うために複数の計測値を使っており、この場合には、定常状態の一定の計測値を使うよりも、計測値変化期間の変動する複数の計測値の方を使う方が、計算結果が正確になると考えられる。この点に着目して本発明はデータ取得時期を早めている。そして、本発明は解析精度向上と同時にPET計測時間短縮をも可能としている。
本発明の別の態様は、標識されたドーパミンを用いてPETにより得られたドーパミン濃度計測値を解析してパーキンソン病診断指標を得るドーパミン計測データ解析方法であって、パーキンソン病の検査部位および参照部位のドーパミン濃度計測値を入力し、前記検査部位および前記参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式から得られ、PET計測対象のドーパミン濃度の厳密解を用いて、入力されたドーパミン濃度計測値から前記コンパートメントモデルでのドーパミンの反応定数を算出する。この態様によっても、上述した本発明の利点が得られる。
また、本発明の別の態様は、標識されたドーパミンを用いてPETにより得られたドーパミン濃度計測値を解析してパーキンソン病診断指標を得る処理をコンピュータに実行させるドーパミン計測データ解析プログラムであって、パーキンソン病の検査部位および参照部位のドーパミン濃度計測値を入力し、前記検査部位および前記参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式から得られ、PET計測対象のドーパミン濃度の厳密解を用いて、入力されたドーパミン濃度計測値から前記コンパートメントモデルでのドーパミンの反応定数を算出する処理を前記コンピュータに実行させる。また、本発明の別の態様は、上記プログラムを格納した、コンピュータで読取り可能な記録媒体である。これらの態様によっても、上述した本発明の利点が得られる。
上記のように、本発明によれば、厳密解法を用いてドーパミンの反応定数を正確に求めることができる。また、本発明によれば、PET計測中の持続動脈採血を行わずとも反応定数の解析結果を得られる。また、本発明によれば、PET計測時間を短縮でき、この短縮された計測時間に得られたデータからドーパミンの反応定数を求めることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態に係るパーキンソン病診断装置とそれによるドーパミン計測データ解析方法について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係るパーキンソン病診断装置の構成を示すブロック図である。図1において、パーキンソン病診断装置1はコンピュータ装置であり、演算装置であるCPUと、RAM、ROM等の記憶装置と、キーボードおよびポインティングデバイス等の入力装置と、ディスプレイおよびプリンタ等の出力装置と、ハードディスク等の外部記憶装置を備えている。パーキンソン病診断装置1はネットワーク等との通信機能を備え、この通信機能が情報の入出力部として機能してもよい。
パーキンソン病診断装置1は、PETによるドーパミン濃度の計測データを入力し、記憶されているプログラムを実行することにより計測データを処理してドーパミンの反応定数を算出し、反応定数に基づいたパーキンソン病診断指標情報を出力するように構成される。図1に示されるように、パーキンソン病診断装置1は、計測値入力部3、厳密解情報記憶部5、反応定数算出部7、反応定数記憶部9、診断指標情報生成部11および診断指標情報出力部13を備えている。
計測値入力部3は、パーキンソン病診断装置1の入力装置によって実現され、パーキンソン病の検査部位と参照部位のドーパミン濃度計測値(以下、適宜、ドーパミン計測値または計測値という)を入力する。検査部位は、パーキンソン病によってドーパミン代謝能力が低下する部位であり、典型的には、通常線条体(Putamen)である。参照部位は、ドーパミンが代謝されない部位であり、検査部位との計測値の比較に用いられ、典型的には、通常大脳皮質(Cerebral Cortex)である。PETでは、放射性同位元素によって標識されたドーパミンを用いて検査部位と参照部位のドーパミン濃度が計測される。この計測値が計測値入力部3によりパーキンソン病診断装置1に入力される。
厳密解情報記憶部5は、パーキンソン病診断装置1の記憶装置で実現され、検査部位および参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式から得られたドーパミン濃度の厳密解の情報を記憶する。厳密解では、後述するように、PETで計測可能なドーパミン濃度が、ドーパミンの反応定数の関数で表される。
反応定数算出部7は、パーキンソン病診断装置1の演算機能で実現され、パーキンソン病診断装置1に記憶されたプログラムを実行し、計測値入力部3から入力されたドーパミン計測値と厳密解情報記憶部5に記憶された厳密解の情報とを用いてコンパートメントモデルでのドーパミンの反応定数を算出する。この際、反応定数算出部7は、入力された複数のドーパミン計測値を指数多項式に近似し、それをラプラス変換し、厳密解に表れる反応定数を、指数多項式をラプラス変換した式に表れる実数値について最適化することにより、反応定数を算出する。図示のように、反応定数算出部7は、計測値近似処理部21と反応定数最適化処理部23を有する。
反応定数記憶部9は、パーキンソン病診断装置1の記憶装置で実現され、反応定数算出部7により算出された反応定数を記憶する。
診断指標情報生成部11は、反応定数算出部7により算出された反応定数に基づく診断指標情報を生成する。診断指標情報は、反応定数の大小を表してパーキンソン病診断に有用な判断材料を提供する情報である。診断指標情報生成部11は、パーキンソン病診断装置1の演算機能で実現され、反応定数記憶部9に記憶された反応定数から診断指標情報を生成する。診断指標情報出力部13は、診断指標情報生成部11により生成された診断指標情報を出力する。診断指標情報出力部13は、パーキンソン病診断装置1の出力装置で実現される。
上記のパーキンソン病診断装置1は、単独のコンピュータで構成されてもよく、複数のコンピュータで構成されてもよい。それら複数のコンピュータは分散して配置されてもよい。
また、パーキンソン病診断装置1はPETと接続され、ドーパミン計測値がPETからパーキンソン病診断装置1に送信されて、計測値入力部3により入力されてもよい。この場合、パーキンソン病診断装置1の通信機能が計測値入力部3として機能してよい。パーキンソン病診断装置1とPETは直接接続されてもよく、LAN等のネットワークを介して接続されてもよい。
また、計測値データは、その他の外部の端末装置等からパーキンソン病診断装置1の通信機能を利用して入力されてもよい。同様に、診断指標情報は、通信機能を利用して外部に出力されてもよい。この場合、通信機能が入出力部として機能する。パーキンソン病診断装置1は通信機能を利用してネットワークとデータの送受を行ってもよい。この場合に、パーキンソン病診断装置1はインターネットを介して計測値データを入力し、解析結果の診断指標情報を返してもよい。
その他、計測値データが記録媒体からパーキンソン病診断装置1に読み込まれ、また、診断指標情報は記録媒体へと書き込まれてもよい。この場合、記録媒体の読取および書込手段が入出力装置として機能する。
次に、パーキンソン病診断装置1についてより詳細に説明する。ここでは、まず、厳密解情報記憶部5に記憶される厳密解の情報について、その基になるドーパミン反応機構のモデルと共に説明する。
図2は、ドーパミン反応機構を示す典型的なコンパートメントモデルを示している。コンパートメントモデルにおいては、複数のコンパートメントが反応定数(矢印)で接続されている。各コンパートメントは、各部位のドーパミンまたはその代謝物の濃度である。また、反応定数は、ドーパミン濃度またはその代謝物がコンパートメントから移動する速度である。
図2のコンパートメントモデルは、検査部位、参照部位および血液の3つのモデルで構成される。前述したように、検査部位は、パーキンソン病によってドーパミン代謝能力が低下する部位であり、この例では、通常線条体(Putamen)である。参照部位は、ドーパミンが代謝されない部位であり、検査部位との計測値の比較に用いられ、この例では通常大脳皮質(Cerebral Cortex)である。
ここで、本モデルの前提になるドーパミン反応を概略的に述べておくと、[18F]fluorodopa(FDOPA)が、catechol-Omethyltransferaseによって代謝され、3-O-methyl-[18F]FDOPA(3−OMFD)になる。FDOPAと3−OMFDは、脳の血漿と器官の間では変化することなく拡散する。一方、FDOPAは、器官においてDOPA decarboxylaseによって代謝され、まず[18F]fluorodopamine(FDA)になり、さらに代謝される。この様子が図2のコンパートメントモデルに表されている。
以下、図2のコンパートメントモデルの3つのモデルについて説明する。
(A)検査部位(通常線条体(putamen))のモデル
このモデルは、FDOPAが血漿(plasma)から検査部位の組織(tissue)に取り込まれ、組織から代謝される反応機構を表す。各コンパートメントと各反応定数の意味は以下の通りである。
Cfd:血漿におけるFDOPA濃度
Comfd:血漿における3−OMFDの濃度
C1:検査部位組織におけるFDOPA濃度
C2:検査部位組織における3−OMFDの濃度
C3:検査部位におけるFDAおよびその代謝物の濃度
K1:検査部位にてFDOPAが血漿から組織に取り込まれる速度
k2:検査部位にてFDOPAが組織から血漿に放出される速度
k3:検査部位にてFDOPAがFDAおよびその代謝物に変換される反応速度
k4:検査部位にてFDAおよびその代謝物が組織から放出される速度
K5:検査部位にて3−OMFDが血漿から組織に取り込まれる速度
k6:検査部位にて3−OMFDが組織から血漿に放出される速度
(B)参照部位(通常大脳皮質(Cerebral Cortex))のモデル
このモデルは、血漿と参照部位組織の間でのドーパミンの移動のモデルである。各コンパートメントと各反応定数の意味は以下の通りである。なお、CfdおよびComfdは、上記の検査部位モデルと同じであり、血漿におけるFDOPA濃度および3−OMFD濃度である。
Cp1:参照部位組織におけるFDOPA濃度
Cp2:参照部位組織における3−OMFDの濃度
Kp1:参照部位にてFDOPAが血漿から組織に取り込まれる速度
kp2:参照部位にてFDOPAが組織から血漿に放出される速度
Kp5:参照部位にて3−OMFDが血漿から組織に取り込まれる速度
kp6:参照部位にて3−OMFDが組織から血漿に放出される速度
図より明らかなように、参照部位のモデルは、組織にてFDOPAがFDAに変換されず、ドーパミンが放出されない点で検査部位のモデルと相違する。
(C)血液(血管、血漿)のモデル
このモデルは、血管とその外部の間のドーパミン反応機構のモデルである。各コンパートメントと各反応定数の意味は以下の通りである。なお、CfdおよびComfdは、上記の検査部位モデルおよび参照部位モデルと同じであり、血漿におけるFDOPA濃度および3−OMFD濃度である。
Cx:血管の外における3−OMFDの濃度
Kb1:血液中の血漿にてFDOPAが3−OMFDに代謝される速度
kb2:3−OMFDが血漿から血管外(Extravascular)に放出される反応速度
kb3:3−OMFDが血管外から血漿に吸収される反応速度
以上に、図2にコンパートメントモデルについて説明した。上述したように、検出部位モデル、参照部位モデル、血液モデルはいずれも血漿のコンパートメントを含んでおり、血漿のコンパートメントによって互いに関連づけられる。
また、図2のコンパートメントモデルのうちで、PET計測対象(実際にPETで計測できるデータ)は、検査部位のドーパミン濃度Cs(=C1+C2+C3)と、参照部位のドーパミン濃度Cc(=Cp1+Cp2)である。PETの計測データの解析では、これらの濃度計測値から上記モデルの反応定数が求められる。以下、上記のコンパートメントモデルに基づいて反応定数を求める方法を説明していく。
図3は、図2のコンパートメントモデルに対応する微分方程式を示している。微分方程式は、コンパートメントモデルに対応した式(1)〜式(7)からなる微分方程式系で表される。式(1)〜式(3)は検出部位モデル(A)に対応し、式(4)および式(5)は参照部位モデルに対応し、式(6)および式(7)は血液モデルに対応する。各微分方程式は、各コンパートメントにおける濃度変化(変化速度)を表す。
式(1)は、検出部位モデルの組織におけるFDOPA濃度C1の時間変化を表す微分方程式である。C1の時間変化は、単位時間に組織にてFDOPAが入る量と出る量の差で表される。組織には血管からFDOPAが入るので、組織に入るFDOPAの量は、Cfd(血漿のFDOPA濃度)とK1(FDOPAが血漿から組織に取り込まれる速度)の積である。組織から出るFDOPAの量は、C1(組織のFDOPA濃度)と(k2+k3)(k2、k3は、組織から出るFDOPAの移動速度)の積である。
また、式(1)において、θ、τは、以下の通りである。通常、すべての測定される物質は、t=0で0でなくてはならない。しかし、血液中の物質は、測定に際して器官の物質に対して時間遅れを示す。したがって、測定結果に対して時間補正をする必要がある。θ(t)は、unit step functionで以下のように定義される。
θ(t)=0(t<0)、θ(t)=1(t>0)
τは、時間遅れを補正する項である。
次に、式(2)は、検査部位モデルにおけるC2の時間変化を表す微分方程式である。C2の時間変化は、k3×C1とk4×C2の差である。k3がC2の増加量を表し、k4×C2がC2の減少量を表す。
その他の式も同様の原理で図2のコンパートメントモデルと対応している。式(3)は、検査部位モデルにおけるC3の変化を表す。同様に、式(4)は参照部位モデルにおけるCp1の時間変化を表し、式(5)は参照部位モデルにおけるCp2の時間変化を表す。さらに、式(6)は血管モデルにおけるComfdの時間変化を表し、式(7)は血管モデルにおけるCxの時間変化を表す。
従来のPETデータ解析技術では、図3の微分方程式系の処理を近似解法に頼っており、従来の近似解法では解析結果が定量的に正確とは言い難い。また、従来の近似解法では、図3の微分方程式系を扱うために血液中のドーパミン濃度値が必要であり、そのためにPET計測と同時に動脈採血が行われ、これが患者の負担となっている。
そこで、本発明は、従来の近似解法に頼らずに、コンパートメントモデルの微分方程式を処理してドーパミンの反応定数を正確に求める解析技術を提供する。本発明は、特に、下記に説明するように、微分方程式をラプラス変換してラプラス空間の代数方程式で表すことと、微分方程式から変換されたラプラス空間の代数方程式を解くのに数式処理を使うことにより、微分方程式の厳密解を求めることを可能とし、厳密解法によって反応定数を正確に求める。
図4は、ラプラス空間でのドーパミン反応機構に対応する代数方程式系であり、図3の微分方程式系をラプラス変換することにより得られる(それぞれの代数方程式は、微分方程式をラプラス変換して得られるという意味で、ラプラス空間の微分方程式と呼んでもよい)。図3と同様に、図4でも代数方程式系が連立方程式である。図4の式(8)〜式(14)は、図3の式(1)〜(7)とそれぞれ対応しており、したがって、図2のドーパミン反応機構のコンパートメントモデルと対応している。本実施の形態では、ラプラス空間の代数方程式に数式処理が施されて、代数方程式系の連立方程式からドーパミン濃度の厳密解が算出される。
数式処理は、計算代数の処理であり、情報を多項式によって表し、その多項式に対して処理を施すことをいい、数値計算と対比される。多数の多項式を処理できる数式処理技術とそのプログラムが実用化されている。数式処理のソフトウエアとしては、例えば、メイプル及びMATHEMATICA(登録商標)が知られている。本実施の形態では、このような数式処理技術の能力に着目し、図4の代数方程式系に対して数式処理を施すことにより、ドーパミン濃度の厳密解が得られる。
図5は、図4のラプラス空間の代数方程式系から数式処理によって得られたドーパミン濃度の厳密解を示している。“Cs(s)”は、PETにより検査部位で計測されるドーパミン濃度であり、“Cc(s)”は参照部位で計測されるドーパミン濃度である。“Cs”は図4の代数方程式系における“C1+C2+C3”に相当し、“Cc”は、図4の代数方程式系における“Cp1+Cp2”に相当する(図2参照)。図5の厳密解では、濃度比“Cs(s)/Cc(s)”が反応定数(K1、k2等)で表されている。Cs(s)/Cc(s)を求めるように数式処理の条件が設定されて、これにより図5の式が得られている。
図5に示されるように、厳密解は、PETで計測可能なドーパミン濃度を、ドーパミンの反応定数の関数で表している。したがって、厳密解を用いることにより、PETで得られた計測値から反応定数を求めることができる。後述のように時系列で得られる複数の計測値を使うことにより厳密解の反応定数を好適に計算できる。
また、本実施の形態では、数式処理でラプラス空間の代数方程式系を解く際に、血液のドーパミン濃度(より詳細にはドーパミンおよびその代謝物の濃度)の成分を消去するように、数式処理の条件が設定されている。その結果、図5に示すように、厳密解が、血液中のドーパミン等の濃度を含んでいない。このことは、従来技術でPET計測と同時に行われる動脈採血が不要になることを意味している。
図1に戻り、上記の厳密解を使って反応定数を求めるための、本実施の形態に係るパーキンソン病診断装置1の各部構成について説明する。上記の厳密解の情報は、厳密解情報記憶部5に記憶されている。図5の厳密解の式は、そのままのかたちで記憶されていてもよいが、下記に説明する厳密解を利用する処理に合わせて処理が容易になるように適当に変形されていてもよい。
計測値入力部3は、PETによって得られた検査部位および参照部位のドーパミン計測値を入力する。計測値入力部3は、時系列で得られる複数のドーパミン計測値を入力するように構成されている。図6を用いて、計測値入力処理についてさらに説明する。
図6は、PETによるドーパミン計測値の時間変化の例を示している。図6において、横軸は時間であり、縦軸は放射活性の計測値であり、ドーパミン濃度に対応している。白いマークは検査部位の計測値を示し、黒いマークは参照部位の計測値を示す。図示のように、ドーパミン計測値は、計測開始から、計測値変化期間を経て、定常状態に至る傾向がある。計測値変化期間では、ドーパミン計測値が増大して極値に達し、それから減少する。そして、計測値の変化量が減り(傾きが小さくなり)、定常状態に到達する。定常状態は、計測値の変化幅が所定の基準値以下になって計測値が安定した状態といえる。
本実施の形態では、PETの計測期間が、図6の計測値変化期間内に設定されている。そして、計測値入力部3は、図6の計測値変化期間に計測されたドーパミン計測値を入力する。より詳細には、計測値変化期間において、計測値は極値を過ぎた後に低下する。低下領域を見ると、最初(極値直後)は傾きが小さく、それから傾きが増え、再び傾きが小さくなる。例えば、測定期間は、再び傾き小さくなる時の前後の適当なタイミングまでになるように好適に設定される。
また、図6に示されるように、PET計測にて、同時点で得られる検査部位と参照部位のドーパミン計測値の組合せを、計測値ペアと呼ぶ。図示のように、PET計測の時間経過と共に、次々と計測値ペアが得られる。計測値入力部3は、計測値変化期間内に設定された計測期間に順次得られた複数の計測値ペアを入力する。
このように、本実施の形態では、計測値入力部3が、図6の計測値変化期間に計測された複数のドーパミン計測値を入力するように構成され、これにより、後述するように、反応定数を正確に計算できるという効果に加えて、PETの計測時間を短縮できるという効果を提供できる。
図1に戻り、反応定数算出部7は、ドーパミン計測値の入力データと、厳密解情報記憶部5に記憶された厳密解の情報とを用いて、反応定数を算出する。図示のように、反応定数算出部7は、計測値近似処理部21と反応定数最適化処理部23を有する。
まず、入力された複数のドーパミン計測値(図6に示した複数の計測値ペア)は、計測値近似処理部21に供給される。計測値近似処理部21は、それら複数の計測値を指数多項式に近似し、近似された指数多項式をラプラス変換する。反応定数最適化処理部23は、図5の厳密解にあらわれる反応定数を、計測値近似処理部21で得られた近似指数多項式をラプラス変換した式について最適化する処理を行う。これにより、ドーパミン計測値から、厳密解に含まれる反応定数(K1、k2等)が算出される。
反応定数算出部7の処理をさらに説明すると、計測値近似処理部21では、複数のドーパミン計測値が時間軸上で指数多項式に近似される。これにより、図6の計測値が描くドーパミン濃度特性(曲線)に対応する近似式が得られる。この指数多項式がラプラス変換される。そして、ラプラス変換後の式と厳密解とを用いて反応定数最適化処理部23により反応定数が最適化される。ここでは、概略としては、指数多項式をラプラス変換した式が、厳密解と比較される。前者が測定結果に対応し、後者が反応定数のモデルに相当する。そして、パラメータとして反応定数を変えながら、測定結果とモデルの差が最も小さくなる反応定数が求められ、これにより最適化が行われる。最適化には各種の方法が知られているが、単純な例では、最小二乗法により残差平方和が最小化される。
上述では参照部位と検査部位の計測値が時間軸上で指数多項式に近似される。この段階では検査部位の計測値と参照部位の計測値が別々に扱われて指数多項式に近似され、後の処理で一緒にされてもよい。あるいは、先に検査部位と参照部位の比が指数多項式に近似されてもよい。どちらの方法でも上記の最適化処理を行える。そして、これらのどちらの処理も、ドーパミン濃度計測値を指数多項式に近似する処理に該当する。
また、上述の計測値近似処理部21の処理では、図6のドーパミン濃度変化特性(変化曲線)に近似した指数多項式を求めるためには、ある程度以上の数の計測値が必要である。ただし、計測値が多すぎると、計測作業や計算処理の負担が増える。これらを考慮して、本実施の形態では、入力される計測値の個数およびそれらの計測時期や間隔は、図6のドーパミン濃度変化特性に近似した適切な指数多項式が上述の計測値近似処理部21で得られるように設定される。より詳細に言えば、計測値の個数等は、図6のドーパミン濃度変化特性を十分に正確に表す近似多項式が得られるだけの数のデータが得られる程度に、そして、近似多項式を使った後処理で反応定数を必要な精度で計算できる程度に設定される。入力される計測値の数は、検査部位と参照部位の計測値ペアの数として予め設定されていてよい。
算出された反応定数は、反応定数記憶部9に記憶される。そして、診断指標情報生成部11が反応定数に基づく診断指標情報を生成し、診断指標情報出力部13が診断指標情報を出力する。診断指標情報は、前述したように、反応定数の大小を表してパーキンソン病診断に有用な判断材料を提供する情報である。
本実施の形態では、診断指標情報生成部11は、反応定数算出部7により算出された複数の反応定数(K1、k2等)のうちの1以上の特定の反応定数を診断指標情報とする処理を行う。診断指標情報生成部11は、反応定数記憶部9から、予め設定された特定の種類の反応定数を抽出するように構成され、抽出された反応定数が診断指標情報出力部13から出力される。
抽出される反応定数は、パーキンソン病診断に有用な定数であり、予めパーキンソン病診断装置1に設定されている。本実施の形態では、少なくとも、反応定数k4が抽出される。反応定数k4は、図2のコンパートメントモデルにおいて、検査部位にてFDAおよびその代謝物が組織から放出される速度である。そして反応定数k4は、ドーパミン保持能力を表す指標であり、パーキンソン病診断に有用な指標として注目される。そこで、反応定数k4が診断指標情報生成部11により好適に抽出され、診断指標情報として出力される。
上記の例では、診断指標情報が特定種類の反応定数であった。しかし、診断指標情報は、これに限定されない。全部の反応定数が診断指標情報として扱われてもよい。また、診断指標情報は、1以上の反応定数から計算等により生成された情報でもよい。例えば、複数の反応定数が組み合わされて、診断指標情報が生成されてもよい。
また、診断指標情報生成部11は、診断指標情報を複数のランクで表す処理を行ってもよい。例えば、反応定数k4が複数のランクで表される。この場合、診断指標情報出力部13は、反応定数k4の算出値が属するランクの記号等を出力する。
診断指標情報は、反応定数またはそれから得られた値を、所定の評価基準値と比較した結果の情報でもよい。評価基準値は、健常者とパーキンソン病患者を区別するように予め設定されており、パーキンソン病診断装置1に記憶されており、この評価基準値が参照される。例えば、反応定数k4を用いる場合に、健常者の計測データとパーキンソン病患者の計測データから予め反応定数が算出される。両者の反応定数の間に評価基準値が設定される。
診断指標情報生成部11は、診断指標情報は画像で表す処理を行ってよい。例えば、従来のPET計測と同様に、脳の断層画像が生成され、各部位の診断指標情報が断層画像上に色で表現される。この画像情報が、診断指標情報出力部13により出力される。
図7は、本実施の形態に係るパーキンソン病診断装置1の動作の例を示すフローチャートであり、パーキンソン病診断装置1により行われるドーパミン計測データ解析方法を示している。図示のように、まず、検査部位と参照部位のドーパミン計測値データが計測値入力部3により入力される(S1)。PETとパーキンソン病診断装置1が接続され、PETからドーパミン計測値が送信されてよい。計測値データが入力されると、設定ペア数のドーパミン計測値が入力されたか否かが判定される(S3)。設定ペア数は予めパーキンソン病診断装置1内に設定され、記憶されている。
設定ペア数のドーパミン計測値が入力されていなければ、ステップS3の判定がNoであり、ステップS1に戻り、次のドーパミン計測値が入力される。設定ペア数のドーパミン計測値が入力されると、ステップS3の判定がYesになり、反応定数算出部7で反応定数が計算される。ここでは、反応定数算出部7の計測値近似処理部21により、設定ペア数のドーパミン計測値が指数多項式に近似され、近似された指数多項式がラプラス変換される(S5)。それから、厳密解情報記憶部5の厳密解が参照されて、厳密解の反応定数が、計測値の近似式をラプラス変換した式にあらわれる実数値について最適化され、これにより反応定数が求められる(S7)。そして、算出された反応定数が反応定数記憶部9に格納され、さらに、反応定数に基づく診断指標情報が診断指標情報生成部11により生成され(S9)、生成された診断指標情報が出力される(S11)。
図8および図9は、本発明によるドーパミン反応速度の計算例である。図8は、ドーパミン計測値の入力データの例をグラフで示しており、図9は、図8の入力データから算出された反応定数の例を示している。図8および図9は、健常者とパーキンソン病患者のドーパミン計測値および反応定数計算結果を示している(反応定数の単位は、ml/g・minである。
図9に示されるように、本実施の形態では、反応定数k4の値が、健常者とパーキンソン病患者で異なっている。健常者ではk4=0.0039であり、パーキンソン病患者ではk4=0.027であり、パーキンソン病患者の方が健常者よりも反応定数k4が大きい。
反応定数k4は、既に説明したように、図2のコンパートメントモデルにおいて、検査部位にてFDAおよびその代謝物が組織から放出される速度であり、そして反応定数k4は、ドーパミン保持能力を表す指標であり、反応定数k4が大きいほどドーパミンが欠乏する。したがって、反応定数k4は、パーキンソン病診断に有用な指標として注目される。そして、本発明によれば、反応定数k4が図9に示されるように算出され、健常者とパーキンソン病患者の間に反応定数k4の有意な差が見られる。
この点に関し、従来の近似解法では、反応定数k4を求めることすら困難であった。そのため、線条体におけるFDOPAのnetflux(=K1k3/(k2+k3))などの平衡状態を仮定した代用の指標が用いられていた。本発明によれば厳密解を算出でき、これにより反応定数k4を算出できた。
以上に本発明の実施の形態に係るパーキンソン病診断装置1について説明した。本発明によれば、下記のような利点が得られる。
(1)上記のように、本発明によれば、ドーパミン診断装置が、検査部位および参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式から得られたドーパミン濃度の厳密解の情報を利用して、ドーパミン反応定数を算出する。微分方程式は、上記の例のように各コンパートメントにおけるドーパミン濃度変化(変化速度)を表してよい。そして、厳密解では、PETで計測可能なドーパミン濃度が、反応定数の関数で表されてよく、この厳密解とドーパミン濃度計測値を使って反応定数を求めることができる。このようにラプラス空間の厳密解を利用することにより、近似解法に頼る従来の技術と比べて、ドーパミンの反応定数をより正確に求めることができる。
この点に関してより詳細に説明すると、従来の近似解法は、反応定数を正確に求めることができず、それどころか、上述したようにドーパミン欠乏の観点から重要な反応定数を求められずに代用の指標を算出していた。本発明によれば、厳密解法を利用して反応定数を正確に算出することができる。
また、従来は反応定数を正確に計算できないことから、反応定数の計算結果は、主として、パーキンソン病の相対的な判断材料として使われている。例えば、従来技術は、健常者の若年層と老年層およびパーキンソン病患者の3者の相対的な数値比較を行っている。このような相対的判断は曖昧さを避けられない。
これに対して、本発明では、反応定数がより正確に求められる。この正確な計算は、相対判断に頼らない絶対的判断材料として反応定数を利用可能にするものとして期待される。例えば、パーキンソン病患者と健常者を区別するような反応定数の基準を定めることにより、絶対的判断が可能となる。
(2)また、本発明によれば、厳密解情報記憶部は、検査部位および参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式を数式処理によって解くことにより得られた厳密解の情報を記憶してよい。上述したように、数式処理は、計算代数の処理であり、情報を多項式によって表し、その多項式に対して処理を施すことをいい、数値計算と対比される。多数の多項式を処理できる数式処理技術とそのプログラムが実用化されている。本発明は、ドーパミン反応機構のコンパートメントモデルの微分方程式を処理するのにラプラス空間を使ったことと、微分方程式をラプラス変換した代数方程式を解くのに数式処理を使ったことにより、コンパートメントモデルの微分方程式の厳密解を利用可能とし、これにより近似解法に頼らずに反応定数を正確に求めることを可能としている。
(3)また、本発明によれば、厳密解では、数式処理によって検査部位と参照部位でPETにより計測可能なドーパミン濃度の比がラプラス空間にて複数の反応定数で表される。計測可能なドーパミン濃度は、上記の例では、検査部位濃度Cs(=C1+C2+C3)と参照部位濃度Cc(=Cp1+Cp2)である。これにより、PETの計測値を好適に厳密解に適用して反応定数を求めることができる。
(4)また、本発明によれば、厳密解では、数式処理によって前記コンパートメントモデルにおける血液中のドーパミン濃度が消去されてよい。計算代数の分野では、上述したように、数式処理を利用することにより、特定の変数を消去することが可能である。この特徴を利用して、本発明では、血液中のドーパミン濃度(より詳細には血液中のドーパミンおよびその代謝物の濃度)を消去した厳密解が得られ、この厳密解を使って濃度計測値から反応定数が求められる。これにより、PET計測中の持続動脈採血を行わずとも反応定数の解析結果を得ることが可能になる。
(5)また、本発明によれば、計測値入力部は、PETでの計測開始から定常状態に至るまでの計測値変化期間に複数時点で計測された検査部位および参照部位の複数のドーパミン濃度計測値を入力してよい。反応定数算出部は、検査部位および参照部位の複数のドーパミン濃度計測値を用いて反応定数を算出してよく、より詳細には、反応定数算出部は、検査部位および参照部位の複数のドーパミン濃度計測値を指数多項式に近似し、それをラプラス変換し、厳密解に表れる反応定数を、指数多項式を変換した式に表れる実数値について最適化してよい。本発明では、計測値変化期間のドーパミン濃度計測値から反応定数が求められるので、定常状態の計測値が不要であり、定常状態までの長時間の計測が不要であり、計測時間を短縮できる。
この点に関してより詳細に説明すると、図6を用いて説明したように、PET計測では計測値変化期間とその後の定常状態がある。従来の近似解法は、安定した一つの計測値を必要としており、それ故、定常状態の計測値が使われる。これに対して、本発明は、厳密解を扱うために複数の計測値を使っている。複数の計測値を使う場合、定常状態の一定の計測値を使うよりも、計測値変化期間の変化する計測値を使う方が、反応定数の計算結果が正確になる。そこで、本発明では、計測値変化期間の計測値が使われる。
さらに、本発明では、上記のように計測変化期間の計測値を使うことにより、定常状態に至るまで長時間に渡ってPET計測を続ける必要がなくなり、PET計測時間を短縮できる。一例としては、従来技術では定常状態のデータを得るために計測時間が60分であったのに対して、本発明によれば、計測時間を30分に短縮できる。
このようにして、本発明は、解析精度向上のために計測値変化期間の計測データを利用しており、その結果、解析精度向上と同時にPET計測時間短縮をも可能としている。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明した。しかし、本発明は上述の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲内で上述の実施の形態を変形可能なことはもちろんである。
本発明にかかるパーキンソン病診断装置は、パーキンソン病診断のための医用解析技術として有用である。
本発明の実施の形態におけるパーキンソン病診断装置のブロック図 ドーパミン反応機構のコンパートメントモデルを示す図 図2のコンパートメントモデルに対応する微分方程式を示す図 図2のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換したラプラス空間の代数方程式を示す図 図4のラプラス空間の代数方程式系から数式処理により得られた厳密解を示す図 PETによる検査部位および参照部位のドーパミン計測値の時間変化を示す図 パーキンソン病診断装置の動作を示すフローチャート パーキンソン病診断装置に対する入力データの例を示す図 図8の入力データを用いて計算された反応定数の例を示す図
符号の説明
1 パーキンソン病診断装置
3 計測値入力部
5 厳密解情報記憶部
7 反応定数算出部
9 反応定数記憶部
11 診断指標情報生成部
13 診断指標情報出力部
21 計測値近似処理部
23 反応定数最適化処理部

Claims (8)

  1. 標識されたドーパミンを用いてPETにより得られたドーパミン濃度計測値を解析してパーキンソン病診断指標を得るパーキンソン病診断装置であって、
    パーキンソン病の検査部位および参照部位のドーパミン濃度計測値を入力する計測値入力部と、
    前記検査部位および前記参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式から得られたドーパミン濃度の厳密解の情報を記憶した厳密解情報記憶部と、
    前記計測値入力部から入力されたドーパミン濃度計測値と前記厳密解情報記憶部に記憶された前記厳密解の情報とを用いて前記コンパートメントモデルでのドーパミンの反応定数を算出する反応定数算出部と、
    を有することを特徴とするパーキンソン病診断装置。
  2. 前記厳密解情報記憶部は、前記検査部位および前記参照部位におけるドーパミン反応機構の前記コンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式を数式処理によって解くことにより得られた前記厳密解の情報を記憶することを特徴とする請求項1に記載のパーキンソン病診断装置。
  3. 前記厳密解では、数式処理によって前記検査部位と前記参照部位でPETにより計測可能なドーパミン濃度の比がラプラス空間にて複数の反応定数で表されていることを特徴とする請求項2に記載のパーキンソン病診断装置。
  4. 前記厳密解では、数式処理によって前記コンパートメントモデルにおける血液中のドーパミン濃度が消去されていることを特徴とする請求項2または3に記載のパーキンソン病診断装置。
  5. 前記計測値入力部は、PETでの計測開始から定常状態に至るまでの計測値変化期間に複数時点で計測された前記検査部位および前記参照部位の複数のドーパミン濃度計測値を入力し、
    前記反応定数算出部は、前記検査部位および前記参照部位の前記複数のドーパミン濃度計測値を用いて反応定数を算出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパーキンソン病診断装置。
  6. 標識されたドーパミンを用いてPETにより得られたドーパミン濃度計測値を解析するドーパミン計測データ解析方法であって、
    パーキンソン病の検査部位および参照部位のドーパミン濃度計測値を入力し、
    前記検査部位および前記参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した代数方程式から得られたドーパミン濃度の厳密解を用いて、入力されたドーパミン濃度計測値から前記コンパートメントモデルでのドーパミンの反応定数を算出することを特徴とするドーパミン計測データ解析方法。
  7. 標識されたドーパミンを用いてPETにより得られたドーパミン濃度計測値を解析する処理をコンピュータに実行させるドーパミン計測データ解析プログラムであって、
    パーキンソン病の検査部位および参照部位のドーパミン濃度計測値を入力し、
    前記検査部位および前記参照部位におけるドーパミン反応機構のコンパートメントモデルに対応する微分方程式をラプラス変換した微分方程式から得られたドーパミン濃度の厳密解を用いて、入力されたドーパミン濃度計測値から前記コンパートメントモデルでのドーパミンの反応定数を算出する、
    処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とするドーパミン計測データ解析プログラム。
  8. 請求項7に記載されたドーパミン計測データ解析プログラムを格納したことを特徴とする、コンピュータにて読取り可能な記録媒体。
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