JP2008039699A - 微粒子配向用磁場印加装置及び微粒子構造解析方法 - Google Patents

微粒子配向用磁場印加装置及び微粒子構造解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁場発生部と、該磁場発生部を駆動する駆動部と、前記磁場発生部及び駆動部を三軸方向制御する方向制御部とを設け、磁場発生部の中心に配設された試料に、時間的に変動する磁場を任意の方向から印加可能とすることによって、小型で、既存の構造解析装置のアタッチメントとして使用することができ、微粒子が懸濁した試料によって擬単結晶状態を達成することができ、in situで結晶構造の解析が可能となるようにする。
【解決手段】磁場発生部と、該磁場発生部を駆動する駆動部と、前記磁場発生部及び駆動部を三軸方向制御する方向制御部とを有し、前記磁場発生部の中心に配設された試料に、時間的に変動する磁場を任意の方向から印加して、前記試料中の微粒子を三次元配向させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、微粒子配向用磁場印加装置及び微粒子構造解析方法に関し、より詳細には、懸濁液中の微粒子に時間的に変動する磁場を印加することによって微粒子を三次元的に配向させる装置、及び、該装置によって配向させた微粒子の構造をその場解析する方法に関するものである。
従来、医薬等の分野では、化合物の結晶構造を解析するためにX線構造解析が多く利用されている。試料である化合物が大きな単結晶で得られる場合にはX線による単結晶の構造解析が可能であり、X線構造解析を利用した結晶構造解析がほとんどルーティーン化されているので、短時間で結晶構造解析を行うことができる。しかしながら、多くの場合、化合物の大きな単結晶を得ることは容易でなく、粉末状態の試料によってX線構造解析を行わざるを得ない。試料が粉末である場合、X線構造解析によって得られる情報量は、試料が単結晶である場合に比較して、極めてわずかであり、結晶構造の解明に不十分である。
もっとも、粉末結晶がすべて同じ方向に配向した試料、すなわち、擬単結晶試料を得ることができるのであれば、このような試料のX線回折像は、単結晶の試料のX線回折像と同一であると期待される。
近年、超伝導技術の進歩によって10〔T〕程度の強磁場を容易に利用することができるようになってきたのに伴い、従来、その効果が小さくてほとんど省みられることのなかった弱磁性体に及ぼす磁場効果が注目されるようになっている。特に、磁場を用いた配向制御は進歩が著しく、微結晶の三次元配向が達成されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。この場合、微結晶の結晶軸が三次元的に固定され、擬単結晶化される。
特開2006−57055号公報 再公表2004−030807号公報 特表平11−513655号公報
しかしながら、前記従来の方法では、精度の高い配向制御を行うことは困難であった。すなわち、三次元配向達成のための本質的要素は、時間的に変動する磁場である時間変動楕(だ)円磁場の印加にあるが、前記従来の方法では、磁場、特に強磁場を動的に動かすことは困難であるので、もっぱら微結晶を懸濁した試料を静磁場中で回転運動させる方法が採られてきた。しかし、試料を回転運動させると配向の乱れが起こるので、精度の高い配向制御を行うことは困難である。
また、前記従来の方法では、強磁場中で試料を回転させ所定の配向を得た後、液体である媒体の樹脂前駆体を紫外線硬化させることによって配向を固定し、その後に試料を取り出し、外部のX線構造解析に供していた。しかし、微結晶が樹脂前駆体に溶解する場合も多く、利用が限られていた。
さらに、強磁場を得るためには、もっぱら大型の超伝導磁石が用いられてきたが、超伝導磁石の利用には制限がある。
本発明は、前記従来の問題点を解決して、磁場発生部と、該磁場発生部を駆動する駆動部と、前記磁場発生部及び駆動部を三軸方向制御する方向制御部とを設け、磁場発生部の中心に配設された試料に、時間的に変動する磁場を任意の方向から印加可能とすることによって、小型で、既存の構造解析装置のアタッチメントとして使用することができ、微粒子が懸濁した試料によって擬単結晶状態を達成することができ、in situで結晶構造の解析が可能となる微粒子配向用磁場印加装置及び微粒子構造解析方法を提供することを目的とする。
そのために、本発明の微粒子配向用磁場印加装置においては、磁場発生部と、該磁場発生部を駆動する駆動部と、前記磁場発生部及び駆動部を三軸方向制御する方向制御部とを有し、前記磁場発生部の中心に配設された試料に、時間的に変動する磁場を任意の方向から印加して、前記試料中の微粒子を三次元配向させる。
本発明の他の微粒子配向用磁場印加装置においては、さらに、前記磁場発生部は、永久磁石、バルク超伝導体磁石、電磁石、パルス磁場発生装置又は超伝導磁石を備える。
本発明の更に他の微粒子配向用磁場印加装置においては、さらに、前記駆動部は、前記磁場発生部を機械的に運動させることによって時間的に変動する磁場を発生させる機械的駆動部である。
本発明の更に他の微粒子配向用磁場印加装置においては、さらに、前記駆動部は、時間的に変動する磁場を電気的に発生させる電気回路的駆動部である。
本発明の更に他の微粒子配向用磁場印加装置においては、さらに、前記機械的駆動部は、楕円歯車又はオフセンター歯車を備え、前記楕円歯車又はオフセンター歯車が出力する非等速回転を前記磁場発生部に伝達することによって非等速回転的時間変動磁場を発生させる。
本発明の更に他の微粒子配向用磁場印加装置においては、さらに、前記電気回路的駆動部は、前記パルス磁場発生装置の駆動電源である。
本発明の更に他の微粒子配向用磁場印加装置においては、さらに、前記方向制御部は、前記磁場発生部及び駆動部を一体的に三軸方向制御する。
本発明の微粒子構造解析方法においては、磁気的に二軸異方性を有する微粒子が懸濁した試料に時間的に変動する磁場を印加して前記微粒子を三次元配向させ、前記微粒子が三次元配向した状態の試料に対してビームを照射して回折測定、散乱測定及び/又は分光学測定を行う。
本発明の他の微粒子構造解析方法においては、さらに、本発明の微粒子配向用磁場印加装置を使用して前記微粒子を三次元配向させる。
本発明の更に他の微粒子構造解析方法においては、さらに、前記微粒子は二軸結晶である。
本発明の更に他の微粒子構造解析方法においては、さらに、前記回折測定、散乱測定及び/又は分光学測定は、X線回折法、中性子回折法、赤外分光法、紫外・可視分光法又は核磁気共鳴法のいずれかによる測定である。
本発明によれば、微粒子配向用磁場印加装置は、磁場発生部と、該磁場発生部を駆動する駆動部と、前記磁場発生部及び駆動部を三軸方向制御する方向制御部とを有し、前記磁場発生部の中心に配設された試料に、時間的に変動する磁場を任意の方向から印加して、前記試料中の微粒子を三次元配向させる。
この場合、小型で、既存の構造解析装置のアタッチメントとして使用することができる。また、微粒子が懸濁した試料によって擬単結晶状態を達成することができ、in situで結晶構造の解析が可能となる。
また、微粒子構造解析方法は、磁気的に二軸異方性を有する微粒子が懸濁した試料に時間的に変動する磁場を印加して前記微粒子を三次元配向させ、前記微粒子が三次元配向した状態の試料に対してビームを照射して回折測定、散乱測定及び/又は分光学測定を行う。
この場合、微粒子が懸濁した試料によって擬単結晶状態を達成することができ、in situで結晶構造の解析が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場印加装置の構成を示す斜視図、図2は本発明の実施の形態における微粒子構造解析方法に使用される装置の概略構成を示す側面図である。
図において、10は、本実施の形態における微粒子配向用磁場印加装置であり、配設された試料に時間的に変動する磁場を任意の方向から印加することができるようになっている。そして、図2には、前記微粒子配向用磁場印加装置10を利用して行う微粒子構造解析方法において使用される装置の一例が示されている。前記微粒子構造解析方法においては、時間的に変動する磁場を微粒子が懸濁している試料に印加することによって前記微粒子を三次元配向させ、前記試料にビームを照射して回折測定、散乱測定及び/又は分光学測定を行うようになっている。この場合、前記回折測定、散乱測定及び/又は分光学測定は、X線回折法、中性子回折法、赤外分光法、紫外・可視分光法又は核磁気共鳴法によって行われる。
本実施の形態においては、説明の都合上、X線回折法によって回折測定を行う場合について説明する。また、試料は、いかなる技術分野におけるものであってもよいが、例えば、医薬分野、バイオテクノロジー分野、高分子材料分野等における有機化合物、無機化合物、生体物質等である。
なお、本実施の形態において、微粒子配向用磁場印加装置10の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、前記微粒子配向用磁場印加装置10の各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
図2には、X線回折法によって回折測定を行うための装置の例が示されており、基台21の上に、X線検出器22及びX線源23が相互に対向するように配設されている。また、前記X線検出器22とX線源23との間には試料を保持する微粒子配向用磁場印加装置10が配設される。前記X線源23から放出されたビームとしてのX線は、コリメータ24を通して、微粒子配向用磁場印加装置10に保持されている試料に照射される。そして、該試料を反射又は透過した回折X線は、X線検出器22によってその強度が測定される。
ここで、微粒子配向用磁場印加装置10は、基台21の上に配設されたゴニオメータステージ(goniometer stage)11を有する。該ゴニオメータステージ11は、例えば、電子顕微鏡において試料を入射電子線に対して傾斜して観察するために用いられる装置であって、傾斜機能を持ったステージであり、方向制御部として機能する。図1に示される例において、ゴニオメータステージ11は、固定ステージ11a、第1可動ステージ11b及び第2可動ステージ11cを備え、該第2可動ステージ11c上に載置されているオブジェクトを中心軸上にある点に対して回転させる。この場合、前記第1可動ステージ11b及び第2可動ステージ11cは、図示されないアクチュエータによって駆動され、互いに直交する二軸方向にスライドするようになっている。これにより、三軸方向制御が行われ、微粒子配向用磁場印加装置10に保持された試料のX線源23からコリメータ24を通して照射されたX線に対する向きを任意に調節することができる。なお、前記ゴニオメータステージ11は、図1に示される例に限定されるものではなく、いかなる構造を有するものであってもよい。
図1に示されるように、前記微粒子配向用磁場印加装置10は、試料に磁場を印加する磁場印加ユニット30、及び、該磁場印加ユニット30の後述される磁場発生部51を駆動する駆動部としての駆動ユニット40を有する。そして、該駆動ユニット40は、駆動源としてのモータ41、該モータ41の出力を変換する出力変換器60、及び、該出力変換器60の後述される出力回転軸66に取り付けられた駆動プーリ42を備える。また、前記磁場印加ユニット30は、支持フレーム32、及び、該支持フレーム32に回転可能に取り付けられた磁場発生部ホルダ33を備える。そして、前記駆動プーリ42及び磁場発生部ホルダ33の周囲には、歯付ベルト(コッグドベルト)等の駆動ベルト37が掛け回され、該駆動ベルト37によって駆動プーリ42の回転が磁場発生部ホルダ33に伝達される。
次に、前記磁場印加ユニット30の構成について詳細に説明する。
図3は本発明の実施の形態における磁場発生部の構成を示す図、図4は本発明の実施の形態における磁場印加ユニットに磁場発生部を取り付けるための構造を示す部分断面図である。なお、図3において、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は(b)におけるB−B矢視断面図である。
図において、51は磁場発生部であり、図3に示されるように、該略円形の厚板状の部材である。そして、前記磁場発生部51は、リング状の枠部材52、該枠部材52の両面を塞(ふさ)ぐ円板状の蓋(ふた)部材53、及び、枠部材52と蓋部材53とによって画定される空間内に収容された磁場発生源54を備える。該磁場発生源54は、例えば、永久磁石であるが、バルク超伝導体磁石、電磁石、パルス磁場発生装置、超伝導磁石等であってもよい。ここでは、説明の都合上、前記磁場発生源54が永久磁石である場合について説明する。なお、前記磁場発生源54は、図3に示されるような状態において、矢印Aで示される方向の1〔T〕以下の磁場を発生するようになっている。
また、前記磁場発生部51は、その中心部を厚さ方向に貫通する円孔(こう)状の空間である試料収容空間55を備える。試料は、図示されない試料保持部材によって保持され、前記試料収容空間55内に載置される。この場合、前記試料及び試料保持部材は、支持フレーム32に固定され、試料収容空間55の内壁その他磁場発生部51のいかなる部分にも接触しないようになっている。これにより、磁場発生部51が回転しても、試料は静止した状態を維持して、前記試料収容空間55内に位置することができる。
そして、前記磁場発生部51は、図4に示されるように、磁場発生部ホルダ33内に収容されて保持される。該磁場発生部ホルダ33は、概略円形の板状部材である第1ホルダ部33a及び第2ホルダ部33bから成り、磁場発生部51を厚さ方向の両側から挟み込むようにして保持する。この場合、前記磁場発生部51の円形の外周近傍には、複数の貫通孔56が形成され、該貫通孔56に挿入された固定用ボルト36を締結することによって、第1ホルダ部33a及び第2ホルダ部33bは、磁場発生部51と一体的に固定される。
また、前記磁場発生部ホルダ33は、図4に示されるように、磁場発生部51を保持した状態で、支持フレーム32に回転可能に取り付けられる。該支持フレーム32は、概略矩(く)形の板状部材である第1フレーム部32a及び第2フレーム部32bから成り、基板部31に固定されている。この場合、前記第1フレーム部32aと第2フレーム部32bとは、所定の間隔を開けた状態で基板部31に固定され、前記磁場発生部ホルダ33が第1フレーム部32aと第2フレーム部32bとの間の空間に収容される。
なお、前記第1フレーム部32a及び第2フレーム部32bの中央部には、円形のホルダ保持開口32cが形成されている。また、第1ホルダ部33a及び第2ホルダ部33bは、中央部において両側に突出する円筒状の突出部33cを備える。そして、第1ホルダ部33a及び第2ホルダ部33bの突出部33cは、ベアリング35を介して、第1フレーム部32a及び第2フレーム部32bのホルダ保持開口32c内に回転可能に取り付けられている。これにより、磁場発生部ホルダ33は、磁場発生部51を保持した状態で、支持フレーム32の第1フレーム部32aと第2フレーム部32bとの間の空間に収容される。なお、磁場発生部ホルダ33及び磁場発生部51は、試料収容空間55の中心軸を中心として回転する。
また、磁場発生部ホルダ33の円柱側面状の外周側面には、駆動ベルト37の歯と噛(か)み合うための噛み合い歯34が形成されている。これにより、磁場発生部ホルダ33及び磁場発生部51の回転を正確に制御することができる。さらに、前記突出部33cには、第1ホルダ部33a及び第2ホルダ部33bの厚さ方向に貫通するX線通過開口33dが形成されている。これにより、X線源23から放出されたX線の通過線が支持フレーム32の回転軸線と一致するように微粒子配向用磁場印加装置10を配設することによって、すなわち、図4において、試料収容空間55の右側又は左側の横方向にX線源23が位置するように微粒子配向用磁場印加装置10を配設することによって、X線が試料収容空間55内に載置された試料に照射され、該試料を反射又は透過した回折X線の強度がX線源23と反対側に位置するX線検出器22によって測定される。
なお、試料を保持する試料保持部材は支持フレーム32に固定される。また、駆動ユニット40も基板部31に固定される。そのため、磁場印加ユニット30と駆動ユニット40との相対的位置関係は、一定に維持され、前記ゴニオメータステージ11によって一体的に三軸方向制御される。
次に、前記駆動ユニット40の構成について詳細に説明する。
図5は本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場印加装置の上面図、図6は本発明の実施の形態における駆動ユニットの構造を示す部分断面図、図7は本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場印加装置の背面図、図8は本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場印加装置のモータ制御装置を示す図、図9は本発明の実施の形態における駆動ユニットの出力変換器のギヤを示す第1の図、図10は本発明の実施の形態における駆動ユニットの出力変換器のギヤを示す第2の図である。なお、図8において、(a)は側面図、(b)は上面図であり、図9及び10において、(a)は断面図、(b)は正面図である。
図5及び6に示されるように、モータ41の出力軸は、カップリング43を介して、出力変換器60の入力回転軸65に接続されている。なお、前記モータ41は、通常の電動モータであるが、速度可変モータであればいかなる種類のものであってもよい。また、前記モータ41及び出力変換器60は駆動用基板部44に固定されているが、該駆動用基板部44は、図6及び7に示されるように、防振装置45を介して基板部31の上に取り付けられている。そのため、モータ41及び出力変換器60が振動を発生した場合であっても、該振動が磁場印加ユニット30又はゴニオメータステージ11に伝達されることが防止される。
なお、前記モータ41の出力軸の回転速度は、図8に示されるようなモータ制御装置によって制御される。該モータ制御装置は、制御基板71並びに該制御基板71に取り付けられた速度コントローラ72、電源部73、端子部74及びコンデンサ75を備える。必要に応じて速度コントローラ72を操作することによって、前記モータ41の出力軸の回転速度を調節することができる。
また、前記出力変換器60は、入力回転軸65に取り付けられた第1ギヤ61、及び、該第1ギヤ61と噛み合う出力回転軸66に取り付けられた第2ギヤ62を備える。前記モータ41の出力軸の回転は等速回転であるが、前記第1ギヤ61及び第2ギヤ62を経て、出力回転軸66から出力される回転は非等速回転となっている。そのため、出力回転軸66に取り付けられた駆動プーリ42の回転は非等速回転となり、駆動プーリ42の回転が駆動ベルト37によって伝達された磁場発生部ホルダ33及び磁場発生部51の回転も非等速回転となる。なお、駆動プーリ42の外周側面には、駆動ベルト37の歯と噛み合うための噛み合い歯が形成されている。また、前述のように、磁場発生部ホルダ33の外周側面には、駆動ベルト37の歯と噛み合うための噛み合い歯34が形成されている。これにより、駆動プーリ42の非等速回転が磁場発生部ホルダ33及び磁場発生部51に正確に伝達される。
ここで、前記第1ギヤ61及び第2ギヤ62は、図9に示されるようなオフセンターギヤから成る。図9に示される例において、第1ギヤ61及び第2ギヤ62は、外形、すなわち、基準ピッチ線がほぼ円形のギヤであるが、本実施の形態において、オフセンターギヤは、ギヤの図形上の中心と回転軸の中心とがオフセットしているギヤであれば、基準ピッチ線がいかなる形状のものであってもよい。このように、第1ギヤ61及び第2ギヤ62をオフセンターギヤの組み合わせとすることによって、等速回転の入力を非等速回転の出力に変換することができる。
また、前記第1ギヤ61及び第2ギヤ62は、図10に示されるような楕円ギヤから成るものであってもよい。図10に示される例において、第1ギヤ61及び第2ギヤ62は、外形、すなわち、基準ピッチ線が楕円形のギヤであるが、オフセンターギヤではなく、ギヤの図形上の中心と回転軸の中心とが一致している。すなわち、第1ギヤ61及び第2ギヤ62は、等速回転の入力を非等速回転の出力に変換することができるものであれば、いかなる種類のギヤの組み合わせであってもよい。
なお、本実施の形態においては、モータ41の出力軸の回転が減速されることなく第1ギヤ61に伝達されるようになっているが、必要に応じて、減速用のギヤ列を出力変換器60内に配設し、モータ41の出力軸の回転が減速されてから第1ギヤ61に伝達されるようにすることもできる。
次に、前記構成の微粒子配向用磁場印加装置10の動作について説明する。
図11は本発明の実施の形態における二軸結晶の磁化軸を説明する図、図12は本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場の印加による二軸結晶の擬単結晶化を説明する図、図13は本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場を印加した場合のX線回折像を示す写真、図14は本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場を印加しない場合のX線回折像を示す写真である。
本実施の形態においては、有機化合物、無機化合物又は生体物質の二軸結晶の微粒子の懸濁体を試料とする。なお、前記二軸結晶は、例えば、斜方晶、単斜晶、三斜晶等であり、微粒子は、例えば、粉末である。また、前記微粒子のサイズは、結晶の異方性磁化率の大きさによって変動するが、10〔μm〕以下である。
まず、微粒子配向用磁場印加装置10の動作の基本的な考え方を図11及び12を参照しながら説明する。図11及び12において、81は有機化合物、無機化合物又は生体物質の微粒子状の二軸結晶である。該二軸結晶81は、非磁性体であるが、磁気的に二軸異方性を有する。具体的には、図11に示されるように、互いに直交する三軸方向に関して3つの異なる磁化率χ1 、χ2 及びχ3 を有する。なお、各磁化率の大小関係は、χ1 >χ2 >χ3 であるものとする。また、磁化率がχ1 である軸を磁化容易軸と称し、磁化率がχ3 である軸を磁化困難軸と称する。
そして、前記二軸結晶81は、静磁場中に置かれると、二軸結晶81自体の磁気エネルギーを最小化するために、磁化容易軸が静磁場と平行になるように配向する。また、前記二軸結晶81に、xy平面上で回転する回転磁場を印加すると、該回転磁場の角速度ωが系の緩和時間τに比較して非常に大きいとき、すなわち、ωτ>>1のときには、磁化困難軸が回転面に対して垂直な方向、すなわち、z軸方向に配向する。
そこで、静磁場と回転磁場との組み合わせと考えることができる楕円磁場を二軸結晶81に印加すると、磁化容易軸がx軸方向に配向し、磁化困難軸がz軸方向に配向した状態を得ることができる。すなわち、三次元配向させることができる。なお、磁化容易軸及び磁化困難軸をx軸及びz軸方向に配向させれば、残りの軸も自動的にy軸方向に配向されるのであるから、三次元配向は二軸配向と同義である。
前記楕円磁場は、角速度が一定でない非等速回転的時間変動磁場である。すなわち、xy平面上で回転する磁場の方向がx軸及びその近傍の方向の範囲内にあるときは、角速度が低いためにゆっくりと回転するので、静磁場とほぼ同様の影響を二軸結晶81に与える。これに対し、磁場の方向がx軸及びその近傍の方向の範囲外にあるときは、角速度が高いために速く回転するので、回転磁場とほぼ同様の影響を二軸結晶81に与える。そのため、xy平面上で回転する磁場の方向がx軸及びその近傍の方向の範囲内にあるときは、磁化容易軸がx軸方向に配向し、回転の効果により、磁化困難軸がz軸方向に配向する。
このように、楕円磁場を印加することによって1つの二軸結晶81を三次元配向させることができるのであるから、図12(a)に示されるように微粒子状の二軸結晶81が多数存在する場合であっても、楕円磁場を印加することによって図12(b)に示されるように、すべての二軸結晶81を三次元配向させることができる。これにより、多数の微粒子状の二軸結晶81が三次元的に同一方向に配向された状態、すなわち、擬単結晶化された状態を作り出すことができる。
本実施の形態においては、まず、所望の物質の微粒子状の二軸結晶81を任意の懸濁媒体に懸濁したものを試料として用意する。なお、試料中には、被懸濁体としての微粒子状の二軸結晶81が多数含まれるものとする。そして、前記試料を微小な筒状の容器に充填(てん)し、該容器を試料保持部材に取り付けた状態で、磁場発生部51の試料収容空間55内に載置する。
続いて、モータ制御装置の速度コントローラ72、電源部73等を操作して、モータ41を駆動し、所望の回転速度で回転させる。すると、出力変換器60によってモータ41の等速回転が非等速回転に変換されて出力され、駆動プーリ42及び駆動ベルト37を介して、磁場発生部ホルダ33に伝達される。これにより、該磁場発生部ホルダ33に保持された磁場発生部51が非等速回転するので、図3において矢印Aで示される方向の磁場は、非等速回転的時間変動磁場としての楕円磁場となる。したがって、試料収容空間55内に載置された試料中の二軸結晶81は、楕円磁場が印加された状態となり、図12(b)に示されるように、三次元配向され、擬単結晶化された状態となる。
なお、磁場発生部51が非等速回転することによって発生する楕円磁場における磁場の角速度の大きさ、角速度の変化の態様等は、モータ41の回転速度、第1ギヤ61及び第2ギヤ62の形状、駆動プーリ42の外径と磁場発生部ホルダ33の外径との比等を調節することによって、適宜調節することができる。これにより、試料中の二軸結晶81を擬単結晶化された状態とするために最適の楕円磁場を発生させることができる。
そして、試料中の二軸結晶81が擬単結晶化された状態となったら、X線検出器22及びX線源23を作動させて、前記試料のX線回折法による回折測定を行う。なお、X線回折法による回折測定は、公知の技術であるので、説明を省略する。
図13には、このようにして二軸結晶81が擬単結晶化された状態となった試料にX線を照射するX線回折法による回折測定を行った結果が示されている。図13に示される例は、二軸結晶81がL−alanineの微結晶(長さ約20〔μm〕)である場合のX線回折像である。なお、図13の写真では、右半分と左半分とでコントラストが変更されている。図13から、結晶構造の解析に十分なX線回折像を得することができたことが分かる。
これに対し、図14には、前述したような楕円磁場が印加しなかった試料のX線回折法による回折測定を行った結果が示されている。図14に示される例も、図13に示される例と同様に、二軸結晶81がL−alanineの微結晶(長さ約20〔μm〕)である場合のX線回折像である。なお、図14の写真でも、右半分と左半分とでコントラストが変更されている。図14から、結晶構造の解析に十分なX線回折像を得ることができないことが分かる。
このように、本実施の形態においては、出力変換器60によってモータ41の等速回転を非等速回転に変換して出力し、試料収容空間55内に試料が収容されている磁場発生部51を非等速回転させることによって楕円磁場を発生させ、試料中の二軸結晶81を三次元配向して擬単結晶化された状態とするようになっている。これにより、所望の物質の結晶構造の解析に十分なX線回折像を得ることができる。また、所望の物質の微粒子状の二軸結晶81を容易に擬単結晶化された状態とすることができる。
さらに、微粒子配向用磁場印加装置10は、簡素な構成でありながら、容易に最適な楕円磁場を発生させることができる。また、微粒子配向用磁場印加装置10は、簡素な構成であるため、製造コストを低下させることができる。さらに、微粒子配向用磁場印加装置10は、簡素な構成であるため、小型化することができ、X線検出器22及びX線源23が配設された基台21上に配設することができる。そのため、in situで単結晶構造の解析を行うことができる。
なお、本実施の形態においては、楕円磁場を発生させる場合について説明したが、二軸結晶81を三次元配向させることができるような非等速回転的時間変動磁場であれば、楕円磁場以外の磁場を発生させてもよい。
また、本実施の形態においては、駆動部としての駆動ユニット40が機械的駆動部であり、磁場発生部51を非等速回転させることによって非等速回転的時間変動磁場を発生させる例についてのみ説明したが、磁場発生源54がパルス磁場発生装置である場合には、パルス磁場発生装置の駆動電源を磁場発生部51の電気的駆動部として使用することによって、磁場発生部51を非等速回転させることなく、電気的な手段によって磁場発生源54に非等速回転的時間変動磁場を発生させることができる。
さらに、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場印加装置の構成を示す斜視図である。 本発明の実施の形態における微粒子構造解析方法に使用される装置の概略構成を示す側面図である。 本発明の実施の形態における磁場発生部の構成を示す図である。 本発明の実施の形態における磁場印加ユニットに磁場発生部を取り付けるための構造を示す部分断面図である。 本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場印加装置の上面図である。 本発明の実施の形態における駆動ユニットの構造を示す部分断面図である。 本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場印加装置の背面図である。 本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場印加装置のモータ制御装置を示す図である。 本発明の実施の形態における駆動ユニットの出力変換器のギヤを示す第1の図である。 本発明の実施の形態における駆動ユニットの出力変換器のギヤを示す第2の図である。 本発明の実施の形態における二軸結晶の磁化軸を説明する図である。 本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場の印加による二軸結晶の擬単結晶化を説明する図である。 本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場を印加した場合のX線回折像を示す写真である。 本発明の実施の形態における微粒子配向用磁場を印加しない場合のX線回折像を示す写真である。
符号の説明
10 微粒子配向用磁場印加装置
11 ゴニオメータステージ
40 駆動ユニット
51 磁場発生部

Claims (11)

  1. (a)磁場発生部と、
    (b)該磁場発生部を駆動する駆動部と、
    (c)前記磁場発生部及び駆動部を三軸方向制御する方向制御部とを有し、
    (d)前記磁場発生部の中心に配設された試料に、時間的に変動する磁場を任意の方向から印加して、前記試料中の微粒子を三次元配向させることを特徴とする微粒子配向用磁場印加装置。
  2. 前記磁場発生部は、永久磁石、バルク超伝導体磁石、電磁石、パルス磁場発生装置又は超伝導磁石を備える請求項1に記載の微粒子配向用磁場印加装置。
  3. 前記駆動部は、前記磁場発生部を機械的に運動させることによって時間的に変動する磁場を発生させる機械的駆動部である請求項1に記載の微粒子配向用磁場印加装置。
  4. 前記駆動部は、時間的に変動する磁場を電気的に発生させる電気回路的駆動部である請求項1に記載の微粒子配向用磁場印加装置。
  5. 前記機械的駆動部は、楕円歯車又はオフセンター歯車を備え、前記楕円歯車又はオフセンター歯車が出力する非等速回転を前記磁場発生部に伝達することによって非等速回転的時間変動磁場を発生させる請求項3に記載の微粒子配向用磁場印加装置。
  6. 前記電気回路的駆動部は、前記パルス磁場発生装置の駆動電源である請求項4に記載の微粒子配向用磁場印加装置。
  7. 前記方向制御部は、前記磁場発生部及び駆動部を一体的に三軸方向制御する請求項1に記載の微粒子配向用磁場印加装置。
  8. (a)磁気的に二軸異方性を有する微粒子が懸濁した試料に時間的に変動する磁場を印加して前記微粒子を三次元配向させ、
    (b)前記微粒子が三次元配向した状態の試料に対してビームを照射して回折測定、散乱測定及び/又は分光学測定を行うことを特徴とする微粒子構造解析方法。
  9. 前記請求項1〜7のいずれか1項に記載の微粒子配向用磁場印加装置を使用して前記微粒子を三次元配向させる請求項8に記載の微粒子構造解析方法。
  10. 前記微粒子は二軸結晶である請求項8に記載の微粒子構造解析方法。
  11. 前記回折測定、散乱測定及び/又は分光学測定は、X線回折法、中性子回折法、赤外分光法、紫外・可視分光法又は核磁気共鳴法のいずれかによる測定である請求項8に記載の微粒子構造解析方法。
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