JP2008037253A - 浮力調整装置、姿勢制御装置、無人潜水機、及び水中用衣服 - Google Patents

浮力調整装置、姿勢制御装置、無人潜水機、及び水中用衣服 Download PDF

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Tsuneji Shibuya
恒司 渋谷
Taro Iwamoto
太郎 岩本
Kazuyoshi Tsutsumi
一義 堤
Yuichi Kado
裕一 門
Taku Honda
卓 本田
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Abstract

【課題】物質の固相及び液相間の相変化に伴う体積変化を利用して浮力を調整する。
【解決手段】浮力調整装置10は、固相及び液相間の相変化に伴って体積が変化するパラフィンワックス1と、パラフィンワックス1の温度を調整する温度調整器15と、パラフィンワックス1を収容し、パラフィンワックス1の体積変化にともなって体積が変化する体積可変容器16とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、物質の相変化に伴う密度変化を利用した浮力調整装置、姿勢制御装置、無人潜水機、及び水中用衣服に関するものである。
(1)水中ロボットの研究
現在、様々な目的に応じて多くのロボットが研究・開発され、実用化されている。水中ロボットも海洋や湖沼・河川における調査や探査及び作業等を行うために数多くのロボットが存在している。これらの水中ロボットの目的は水中における調査や探査のみならず、水族館等の水を利用している施設や船舶の清掃・調査・修理をするものや、水中・水上における交通機関の高効率化、災害救助、娯楽等と様々である。
水中ロボットは、約40年ほど前から遠隔操縦機の開発を出発点として始まった。過去に開発された水中ロボットは、母船もしくは地上から電力の供給やデータの交信を行うためのケーブルで繋がれた状態で作業をするものであった。しかし、ケーブルは作業に悪影響を与え、また作業範囲も制限されてしまうという問題がある。
近年、このような問題を解決するため、自律型の水中ロボットの研究開発が盛んになっている。自律型潜水ロボットはThe Autonomous Underwater Vehicle(以下、「AUV」という)と呼ばれており、近年、国内外を問わず、多くのAUVが研究開発され、徐々に実用化されている。現在、日本最大の湖である琵琶湖においても、水質調査や生態系の監視のために自律型水中ロボットが利用され、様々な成果を挙げている。このように、水中探査を中心としてAUVをはじめ、水中ロボットの活躍は目覚しく、今後の発展とさらなる活躍とが期待されている。
(2)水中ロボットに活用可能な従来の浮力調整技術
ところで、水中ロボットにより、深浅計測などを行う場合、水中ロボットの浮力を周囲の水に対して中性にすることが重要である。水中ロボットの浮力が中性でない場合、水中ロボットが下降又は上昇するので、水中ロボットを一定の深度又は高度に保持するためには、上下方向に水中ロボットを移動させるための浮力調整方法等の技術が必要である。
既存の浮力調整方法としては、一般的には、バラストとなる物質の積載及び排出が主である。バラストとは、船体の重心を低く保つとともに喫水を適当な深さにして堪航性を高めるために積み込まれる物を指し、日本語では「底荷」と訳される。
現代の船では、一般に海水を用いるが、その本来の意味からすれば、積み込むのは海水に限られない。実際に、かつては、砂利や土砂、丸太などさまざまな物資が、バラストとして用いられた。現在では、
潜水艦等に見られる圧縮空気と水(海水)との入れ替えや、潜水艇やAUV等に見られる金属塊の積載及び投棄等が挙げられる。
このような、バラストとなる物質の積載及び排出を行わずに、浮力を調整するための従来技術の一例として、円筒形のチャンバとピストンとを有するシリンダ構造の浮力調整装置が特許文献1に開示されている。この従来の浮力調整装置100を図28にもとづいて説明する。図28は、従来の浮力調整装置100の構造を示す断面図である。
浮力調整装置100は、図28に示すように、シリンダ構造をなしており、水中に露出させて設けた円筒状のチャンバ74と、蓋体となるピストン76とを有している。ピストン76は、チャンバ74に水密、かつ摺動可能に嵌合させてあり、チャンバ74の内部に浮力調整室78を形成されている。また、ピストン76には、ピストンロッドとなるラック80が取り付けてある。このラック80には、作動部であるモータ82の駆動軸84に固定したウォーム86が噛み合っている。
従って、浮力調整装置100は、モータ82を正逆回転することにより、ウォーム86が回転してラック80が矢印88で示す方向に移動し、浮力調整室78の大きさ(容積)が変化する。このため、浮力調整装置100を備えた潜水機の浮力を微調整できる。
また、特許文献2には、このような従来技術の他の一例として、浮力調整機構を備えた潜水玩具が開示されている。この従来の潜水玩具200を図29にもとづいて説明する。図29は、従来の潜水玩具200の構造を示す断面図である。
潜水玩具200は、全体が任意の形態である容器体であり、この潜水玩具200の内部にはモータ202及びモータ202の軸上にギヤ部203が設けられている。前記ギヤ部203からは作動軸204が出ており、この作動軸204の先端部には押子205が設けられている。前記潜水玩具200は、開口部206を有しており、この開口部206にはゴム板による隔壁207が設置されている。この隔壁207の内側部には、前記ギヤ部203からの作動軸204の端が押子205と当接し、この押子205が隔壁207を押圧するように構成されている。
つぎに、図29にもとづいて、この潜水玩具200の動作について説明する。図29(a)の状態では、押子205が隔壁207に当接しているだけなので、潜水玩具200の内部の体積は小さく不変であり、潜水玩具200は、水中の潜水位置を保持することになる。
一方、図29(b)の状態では、押子205が機械力によって作動軸204を介して外方向に移動するので、隔壁207が押子205に押圧されて膨出する。この膨出した部分が形成されることによって、潜水玩具200の内部の空気室Aの体積が増加するので、潜水玩具200は、水中における浮力を増すようになり、潜水玩具200の水中での位置を上方に上げることになる。
また、隔壁207を押圧していた押子205の機械力を減じて、押子205を後方の元の位置に移動させると、隔壁207は再び収縮して膨出した部分は解消されるので、潜水玩具200の内部の空気室Aの体積は小さくなり、水中における浮力は再び小さくなり、潜水・降下するようになる。
特開2001−247086号公報(平成13年9月11日公開) 特開2002−102547号公報(平成14年4月 9日公開) ピーター・メンゼル,フェイス・ダルシオ共著,桃井緑美子訳,ロボサピエンス,河出書房新社(2001),pp.84-121 加藤秀弘著,マッコウクジラの自然誌,平凡社(1995)
しかしながら、上記のような、バラストとなる物質の積載及び排出による浮力調整方法では、浮力の調整という面では効率はいいかもしれないが、浮き沈みを行う度にバラストとなる物質を消耗してしまうという問題点がある。特に、タンカーのバラスト水に関しては環境汚染の原因とも指摘されている。
また、従来の浮力調整装置100及び潜水玩具200における浮力調整技術は、図28及び図29に示すように、いずれもモータを利用した機械的な力を利用したものであり、機構が複雑であるという問題点がある。
さらに、浮力調整装置100は、図28に示すように、モータ82の回転力をウォーム86を介して矢印88の方向の直線運動に変換してラック80を移動させることで浮力の調整を行っているため、高水圧の環境下においては、モータ82は、高い回転力を要求されるという問題点もある。一方、図29に示すように、潜水玩具200における浮力調整技術では、潜水玩具200の開口部206にはゴム板による隔壁207が設けられているだけであり、高水圧の環境下においては、装置が破壊されてしまい、浮力調整機能を発揮できなくなってしまうという問題点もある。
このような、上記従来の問題点を解決するため、いわゆるバイオミメティクスの視点から新たな水中ロボットに関する技術を開発するという方法が考えられる。そこで、つぎに、このいわゆるバイオミメティクスについて説明する。
近年、ロボットは工場で作業する産業用ロボットから精密さ・緻密さを必要とする医療用ロボット、そして人間社会で人間と触れ合うエンターテインメントロボットまで様々なものが存在している。今後もいろいろなロボットを対象として多くのロボットの研究・開発が行われ、いろいろなロボットが実用化されていくと考えられている。
現在、このように様々なロボットの研究・開発が存在しているが、それらの研究の中でも、バイオミメティクスの視点を持って行われているロボットの研究が特に多く見受けられる(非特許文献1参照)。
バイオミメティクスとは生物模倣学や生物模倣技術と呼ばれており、生物の構造や機能、運動を模倣して工学等に生かそうとする学問分野である。このバイオミメティクスの視点を持って行われている研究の主なものは、生物の構造と運動をロボットに模倣させているものである。例えば、生物の構造においては魚類の体の流線型や尾鰭の形状を水中ロボット等に応用したり、植物のオナモミを真似てマジックテープ(登録商標)をつくったりしている。また生物の運動においては魚類の鰭を使った高速遊泳・遊泳制御や鳥の翼をつかった高速飛行・ホバリング、四足動物の歩行・走行等をロボットの新たな移動方法として活用しようとしている。
これらの研究の主な目的はロボット技術のさらなる発展であるといえる。生物に学ぶことで、既存の技術よりエネルギー効率のいい移動や、今よりさらにいろいろなことをロボットで実現できるようにすること等、人間の代わりに作業したり移動手段として利用されたりするロボットの可能性をより広げることが可能であると考えているのである。
一方、水中ロボットにおいては、構造を水密構造にする必要があるだけでなく、深度により大きく変化する圧力や、浮力の影響を考慮してロボットを設計する必要がある。さらに水中の運動制御、信号の伝送など、地上用のロボットとは異なる水中ならではの様々な課題が存在する。そしてそれらの課題は、長い年月をかけて進化してきた多様な水棲生物の運動や、環境に合わせて行動する自律システム等の能力を参考にすることで解決できる可能性が多分にあるといえる。
そこで、水中ロボットに用いる技術に活用できそうな、推進力や浮力等に関する特殊能力をもつ数種類の水棲生物を調べた結果に基づき、マッコウクジラの浮力調整能力に着目することとした。マッコウクジラは以下に説明するように、自身の頭部に有する脳油と呼ばれる物質の体積を変化させることで、自らの浮力を調整し、楽に潜水及び浮上を行っているとする仮説が存在している(非特許文献2参照)。
本発明は、このようなバイオミメティクスの視点にたち、マッコウクジラの脳油を利用した浮力調整能力の仮説を参考にして、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、バラストを必要とすることがなく、簡易な機構で、高水圧の環境下においても浮力調整機能及び/又は姿勢制御機能を発揮することができる浮力調整装置、姿勢制御装置、無人潜水機、及び水中用衣服を提供することにある。
本発明の浮力調整装置は、上記課題を解決するために、固相及び液相間の相変化に伴って体積が変化する密度変化物質と、前記密度変化物質の温度を調整する温度調整手段と、
前記密度変化物質を収容し、該密度変化物質の体積変化にともなって体積が変化する体積可変容器とを有することを特徴としている。
上記構成によれば、温度調整手段が密度変化物質の温度を調整することにより、密度変化物質の体積が固相及び液相間の相変化に伴って変化する。このため、密度変化物質を収容した体積可変容器の体積は、密度変化物質の体積変化にともなって変化する。
したがって、浮力調整装置の密度が変化する。すなわち、通常、水の密度は約1g/cm程度であるから、浮力調整装置の密度がこの水の密度よりも大きいときは、浮力調整装置は潜水し、一方、浮力調整装置の密度がこの水の密度よりも小さいときは、浮力調整装置は浮上することになる。すなわち、浮力調整装置は浮力調整機能を有している。
また、浮力調整装置は、密度変化物質の固相及び液相間の相変化に伴う体積変化を浮力の調整に利用しているため、バラストを必要とすることがなく、また、モータ等の機械力を用いていないので、簡易な機構で上記浮力調整機能を発揮することができる。
さらに、固相及び液相状態にある物質は気相状態にある物質と比較して、一般に、外圧に対する耐性が高い。それゆえ、高水圧の環境下においても浮力調整機能を発揮することができる。
なお、「相変化」とは、固相と液相とが混合した不均一状態から液相又は固相のみの均一状態への変化を含む、固相のみの均一状態及び液相のみの均一状態間の相変化のことである。
また、本発明の浮力調整装置は、上記構成にくわえて、前記密度変化物質が、ワックス類を主成分としていることが好ましい。
ここで、「ワックス類」とは、その成分がエステルやグリセリド、炭化水素等からなる物質の総称であって、基本的に常温で固体であり加熱すると低粘度の液体になる物質の総称である。したがって、一般的には融点が常温に近いため、浮力調整装置の熱効率を高くすることができる。
また、本発明の浮力調整装置は、上記構成にくわえて、前記温度調整手段は、電力の供給を受けて前記密度変化物質に熱を加える加熱手段と、前記加熱手段への電力の供給及び停止を制御する加熱電力制御手段とを有することが好ましい。
上記構成によれば、加熱電力制御手段が、加熱手段への電力の供給及び停止を制御するため、加熱電力制御手段による電力の供給及び停止に応じて前記密度変化物質に熱を加えたり、加えなかったりすることができる。
したがって、加熱電力制御手段に対する簡単な操作で、浮力調整装置の浮力調整機能を発揮させることができる。また、加熱電力制御手段に無線の機構を採用すれば、遠隔操作により、浮力調整装置の浮力調整機能を発揮させることができるため、装置の利便性をさらに、高めることができる。
また、本発明の浮力調整装置は、上記構成にくわえて、前記温度調整手段は、電力の供給を受けて前記密度変化物質の熱を吸収する冷却手段と、前記冷却手段への電力の供給及び停止を制御する冷却電力制御手段とを有することが好ましい。
上記構成によれば、冷却電力制御手段が、冷却手段への電力の供給及び停止を制御するため、冷却電力制御手段による電力の供給及び停止に応じて前記密度変化物質の熱を吸収したり、吸収しなかったりすることができる。
したがって、上記と同様に、装置の利便性を高めることができる。また、上記加熱手段及び上記加熱電力制御手段と併用することにより、密度変化物質の加熱・冷却が行えるため、密度変化物質の温度を効率よく調整することができる。
また、本発明の浮力調整装置は、上記構成にくわえて、前記温度調整手段は、さらに、温度センサを用いて前記密度変化物質の温度を計測する温度計測手段を有し、前記温度計測手段が計測した温度があらかじめ定められた所定の温度となるように前記温度調整手段を制御する温度制御手段を有することが好ましい。
上記構成によれば、温度計測手段は、温度センサを用いて密度変化物質の温度を計測し、その測定値を得る。また、温度調整手段は、計測した温度の測定値があらかじめ定められた所定の温度となるように前記温度調整手段を制御して密度変化物質の温度を前記所定の温度に保持する。
したがって、浮力調整装置に関するパラメータと密度変化物質の温度との関係から、所望のパラメータ値に対応する密度変化物質の所定の温度をあらかじめ定めておくことにより、浮力調整装置の状態を所望のパラメータ値の状態に保持することができる。
また、本発明の浮力調整装置は、上記構成にくわえて、前記所定の温度は、前記浮力調整装置の浮力を所望の浮力にするために、前記浮力調整装置に働く浮力と前記密度変化物質の温度との対応関係からあらかじめ定められた温度であることが好ましい。
上記構成によれば、浮力調整装置の浮力と密度変化物質の温度との対応関係によって、所望の浮力に対応する温度をあらかじめ所定の温度として定めておくことができる。また、温度調整手段は、計測した温度の測定値があらかじめ定められた所定の温度となるように前記温度調整手段を制御して密度変化物質の温度を前記所定の温度に保持する。それゆえ、浮力調整装置の浮力を所望の浮力に保持することができる。
また、本発明の浮力調整装置は、上記構成にくわえて、前記所定の温度は、前記浮力調整装置の浮力を中性浮力にするために、前記浮力調整装置に働く浮力と前記密度変化物質の温度との対応関係からあらかじめ定められた温度であり、前記温度調整手段は、さらに、距離センサ又は圧力センサを用いて前記浮力調整装置の水面又は水底からの距離を計測する距離計測手段と、前記距離計測手段が計測した距離が所望の距離である場合に、前記温度計測手段が計測した温度が、前記所定の温度となるように前記温度調整手段を制御する温度制御手段とを有することことが好ましい。
上記構成によれば、上記のように温度計測手段は、温度センサを用いて密度変化物質の温度を計測し、その測定値を得る。また、距離計測手段は、距離センサ又は圧力センサを用いて浮力調整装置の水面又は水底からの距離を計測し、その測定値を得る。なお、圧力センサは、水圧が水面からの距離に比例することを利用して構成する。さらに、浮力調整装置の中性浮力に対応する温度を、浮力調整装置の浮力と密度変化物質の温度との対応関係によって、あらかじめ所定の温度として定めておくことができる。そのうえ、温度調整手段は、距離計測手段が計測した距離が所望の距離である場合に、温度計測手段が測定した温度が所定の温度になるように温度調整手段を制御する。
したがって、浮力調整装置が水面又は水底から所望の距離にある場合に、密度変化物質の温度を浮力調整装置の中性浮力に応じた温度に保持することができる。すなわち、浮力調整装置を水面又は水底から所望の距離にある状態に保持することができる。
なお、「中性浮力」とは、浮力調整装置に働く重力とつりあうような、浮力調整装置にはたらく浮力のことである。
また、本発明の浮力調整装置は、上記構成にくわえて、前記体積可変容器は、弾性体のみで構成されていることが好ましい。
上記構成によれば、前記体積可変容器は、弾性体のみで構成されているので、その体積変化の方向は球対称的である。したがって、体積変化の方向に偏りができないため、効率よく浮力調整装置の浮力を調整できる。
また、本発明の浮力調整装置は、上記構成にくわえて、前記体積可変容器は、前記密度変化物質を収容するシリンダと、前記シリンダに水密に嵌挿され、前記シリンダに収容された前記密度変化物質に当接する一端を有するピストンと、前記シリンダと前記ピストンとを連結して、前記体積可変容器の体積が減少するように付勢する弾性体とを有することが好ましい。
上記構成によれば、体積可変容器は、密度変化物質を収容するシリンダと該シリンダに水密に嵌挿されるピストンとを有する構成である。また、ピストンの一端は、前記密度変化物質に当接している。また、前記シリンダと前記ピストンとを連結して、前記体積可変容器の体積が減少するように付勢する弾性体を有している。
したがって、このような簡単な機構で、浮力調整装置を構成することができる。また、弾性体が、前記シリンダと前記ピストンとを連結して、前記体積可変容器の体積が減少するように付勢するので、シリンダに収容された密度変化物質の加熱による気泡の発生を防ぐことができる。それゆえ、浮力調整装置の熱効率を高めることができる。
また、本発明の姿勢制御装置は、上記構成にくわえて、前記浮力調整装置を少なくとも2つ以上有することを特徴としている。
上記構成によれば、一の浮力調整装置の密度変化物質の温度と、他の浮力調整装置の密度変化物質の温度とを異ならせることができる。
それゆえ、姿勢制御装置の密度分布を異ならせることができる。すなわち、姿勢制御装置の水中での姿勢を制御することができる。
前記浮力調整装置及び前記姿勢制御装置は、無人潜水機及び水中用衣服に搭載させることができる。
したがって、バラストを必要とすることがなく、簡易な機構で、高水圧の環境下においても浮力調整機能及び/又は姿勢制御機能を発揮することができる無人潜水機、及び水中用衣服を提供することができる。
本発明の浮力調整装置は、以上のように、固相及び液相間の相変化に伴って体積が変化する密度変化物質と、上記密度変化物質の温度を調整する温度調整装置と、上記密度変化物質を収容し、上記密度変化物質の体積変化にともなって体積が変化するようにした体積可変容器とをそなえているものである。
それゆえ、バラストを必要とすることがなく、簡易な機構で、高水圧の環境下においても浮力調整機能及び/又は姿勢制御機能を発揮することができる浮力調整装置、姿勢制御装置、無人潜水機、及び水中用衣服を提供することができるという効果を奏する。
1.マッコウクジラの浮力調整能力について
ハクジラ亜目マッコウクジラ科の水棲哺乳類であるマッコウクジラは、オスの体長が18m、体重40tにもなり、ハクジラ最大のクジラである。また歯のある動物の中でも最大の動物である。このマッコウクジラは優れた潜水能力を持つことで有名である。時には深海3000mまで潜水していると言われている。
このことはマッコウクジラが深海約3000mにある海底ケーブルを餌と間違えて攻撃した後、その身体がケーブルに絡まってしまったとみられる事象があったことや、マッコウクジラの胃の内容物から推測されたものである。マッコウクジラは深海に生息するイカを主食としており、捕食の際に深海まで潜水していることが知られている。
マッコウクジラのこの特異な潜水能力を可能にさせていると言われているものが、彼らが頭部に有している脳油であると考えられている。マッコウクジラの体のおよそ3分の1を占める巨大な頭部はマッコウクジラの大きな特徴であるが、その中には脳油と呼ばれるワックス状の物質が存在している。
このマッコウクジラの脳油はどろりとした白濁色の物質であり、また、高品質な脂であったため、鯨蝋として高級な蝋燭に利用されたり、優れた潤滑油として、ロケットやジェット機等に使われる機械にも利用されたりしていた。かつては世界中でこの脳油を採ることを目的に、大量のマッコウクジラが乱獲されていた。現在は、マッコウクジラは、国際捕鯨委員会(International Whaling Commission )によって保護されている。
マッコウクジラが脳油を自身の浮力調整に利用しているという仮説は、1976年に英国のM.R.Clarke が唱えたものである。その学説とは、マッコウクジラは潜水する際に脳油を冷却することで固化してその比重を重くすることで体が頭部から沈むようにし、浮上の際には脳油を温めることで液化し、今度はその比重を軽くすることで体を頭部から浮かぶようにして、浮上・潜水を容易に行っているというものである。
その原理は脳油の性質とマッコウクジラの頭部の構造によって説明できると考えられている。脳油の性質を表1を参照しながら、以下に示す。表1は脳油の融点、15℃における密度、及び50℃における密度を示している。
脳油は、表1に示すように、融点は、平均的には、33℃であるが、29℃で固化し33℃程で液化する(融点は部位によって多少異なる)。また、その成分は70〜95%が蝋エステル、残りがトリグリセリド(部位によって異なる)である。また、脳油の重量は、マッコウクジラの体重の約8%を占めている。
また、表1に示すように、脳油の15℃における密度は、0.945g/cmであり、50℃における密度は、0.821g/cmである。
Figure 2008037253
マッコウクジラの体温はおよそ摂氏33度なので、普段脳油は融解しており、その比重は軽く、マッコウクジラの海面に近い部分においての遊泳に役立っていると考えられる。また、脳油の体積を調整する方法は頭の内部の構造が可能にしていると言われている。
つぎに、このマッコウクジラの頭部の構造について説明する。図5は、マッコウクジラの頭部の構造を示す概略図である。図5に示すように、マッコウクジラの頭部の内部構造は、頭骨の上にジャンクと呼ばれる組織が存在しており、そのジャンクに支えられるようにして存在しているのが脳油のつまった脳油袋である。
ジャンクはクリーム色の繊維組織と濃いピンク色の脳油組織が互い違いに入れかわって格子状の縞模様を形成しており、イルカのメロン組織とほぼ同じものと考えてよい。この構造を利用してマッコウクジラは捕食の為に深海まで潜水する。
つぎに、図6に基づきマッコウクジラの潜水・浮上の機構について説明する。図6はマッコウクジラの潜水・浮上の機構を説明するための概念図である。図6(a)に示すように、マッコウクジラは、潜水の際、脳油袋の左右を通っている2本の鼻道に冷たい空気や海水を取り入れ、脳油を冷やして固化し、比重を重くして体を沈みやすくする。
また、マッコウクジラは、捕食する深度に着くと、脳油の周りの血管に温かい血液を少し送り、脳油の一部を溶かして液状化し、中性浮力にして自由自在に泳げる状態にする。そして捕食を終えて浮上する際は、図6(b)に示すように、脳油袋の周りに分布する毛細血管網に温かい血液を送り、さらに脳油を溶かして液状化し、比重を軽くして体を浮きやすくする。マッコウクジラはこのようにして自身の浮力を調整し、浮上・潜水を効率よく行っていると考えられている。
2.本発明の実施の形態について
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図12、及び図25に基づいて説明すれば、以下の通りである。
まず、図1に基づき、本発明の一実施形態である浮力調整器10(浮力調整装置)の構成について説明する。図1に示すように、浮力調整器10は、パラフィンワックス1(密度変化物質)、温度調整器15(温度調整手段)、及び体積可変容器16を有している。
パラフィンワックス1は、以下で説明するように、固相と液相との間の相変化に伴う体積変化(固相と液相とが混合した不均一状態から液相又は固相のみの均一状態への変化を含む。)により、温度の変化に応じて、体積が変化する物質の一例である。したがって、同様の機能を持つ物質であれば、何でも良く、ワックス類に限られるものではない。なお、「ワックス類」とは、その成分がエステルやグリセリド、炭化水素等からなる物質の総称であって、基本的に常温で固体であり加熱すると低粘度の液体になる物質の総称である。
また、パラフィンワックス1は、固相状態で体積が小さく、液相状態で体積が大きくなる物質であるが、例えば、ワックス類以外の物質である水などのように、固相状態で体積が大きく、液相状態で体積が小さくなる物質を用いることもできる。さらに、融点を下げるという観点からは、これらの物質に不純物を混ぜたりすることも可能である。また、単一の物質だけでなく、複数の物質から構成することも可能である。すなわち、本発明においては、単体、化合物、純物質、混合物など、さまざまな物質を利用することができる。
温度調整器15は、パラフィンワックス1の温度を調整するものである。温度調整器15は、本実施の形態においては、ヒータ5(加熱手段)、電源6・正極側導線7・負極側導線8・スイッチ9(加熱電力制御手段)とを有している。
ヒータ5は、パラフィンワックス1の内部に配置され、その温度を変化させることによって、パラフィンワックス1を固相と液相との間で相変化させるためのものである。なお、ヒータ5の形状・配置については以下で詳細に説明する。なお、本実施形態では、パラフィンワックス1が常温で固相状態にあるため、ヒータ5を用いているが、パラフィンワックス1以外の物質を用いる場合であって、常温で液相状態にあるものを使用する場合には、冷却素子を用いる。
また、浮力調整器10の応答性を高めるため、ヒータ5と冷却素子とを併用する構成を採用しても良い。ここで、冷却素子としては、熱電効果であるペルチェ効果を利用したペルチェ素子を用いることが好ましい。ペルチェ素子は小型・軽量であり、また、極性を逆転させることにより、加熱にも使えるという利点がある。この利点を利用して、ヒータ5とペルチェ素子とを組み合わせることで、パラフィンワックス1の温度を効率よく調整できる。
また、温度調整手段に、次のような、温度制御手段を追加することもできる。まず、パラフィンワックス1の内部に埋め込んだ温度センサを利用して、その温度の測定値を計測する手段(温度計測手段)を設ける。また、浮力調整器10の浮力とパラフィンワックス1の温度との対応関係によってあらかじめ定めた、所望の浮力に応じたパラフィンワックス1の所定の温度をあらかじめメモリ等に記憶させておく。それから、温度制御手段が、上記メモリ等を参照して、上記測定値が上記所定の温度となるようにパラフィンワックス1の温度を調整するように温度調整手段を制御する構成とする。これにより、浮力調整器10の浮力を所望の浮力に保持することができる。
なお、温度調整手段に、次のような、温度制御手段を追加することもできる。まず、上記温度計測手段にくわえて、浮力調整器10の水面又は水底などからの距離を測定する距離センサ又は圧力センサを利用してその距離を計測する手段(距離計測手段)を設ける。なお、圧力センサは、水圧が水面からの距離に比例することを利用して構成する。また、浮力調整器10の浮力を中性浮力とするために、浮力調整器10の浮力とパラフィンワックス1の温度との対応関係によってあらかじめ定めた、パラフィンワックス1の所定の温度をあらかじめメモリ等に記憶させておく。それから、温度制御手段が、上記距離計測手段が計測した距離が所望の距離である場合に、上記メモリ等を参照して、上記測定値(温度の測定値)が上記所定の温度となるようにパラフィンワックス1の温度を調整するように温度調整手段を制御する構成とする。これにより、浮力調整器10の水面又は水底などからの距離を所望の距離に保持することができる。なお、「中性浮力」とは、浮力調整装置に働く重力とつりあうような、浮力調整装置にはたらく浮力のことである。
図3にペルチェ素子を用いる場合の浮力調整器の構成の一例を示す。図3の浮力調整器の例では、浮力調整器の周囲に断熱材13が貼り付けられている。これは、浮力調整器から、外部へ熱が逃げるのを防止するためのものである。この断熱材13を用いることにより浮力調整器の熱効率を高めることができる。この断熱材13の周囲には、ペルチェ素子14(冷却手段)が複数枚、浮力調整器の側面を取り囲むようにして貼り付けられている。なお、ペルチェ素子14の取り付け方法はこの例に限られず適宜、様々な取り付け方法を採用可能である。また、ペルチェ素子14の冷却機能を発揮させるためには、ペルチェ素子14の一方側の面を水などに接触させる必要がある。
また、図示しないが、ペルチェ素子14には導線、スイッチ及び電源(冷却電力制御手段)が接続されている。なお、冷却素子はこのペルチェ素子に限られず、冷却機能を持つものであればどのようなものであっても良い。冷却素子の重量の問題もあるが、浮力調整器10が大型化すれば、冷却素子の重量の問題は解決可能である。
図1に示すように、電源6は、ヒータ5に、電力を供給するものである。このような電源としては、1次電池・2次電池など、さまざまな電池を利用することができる。また、電源としては、電池に限られず、様々な電源を用いることができる。正極側導線7及び負極側導線8は、電源6とヒータ5とを接続するための導線である。この導線の材料としては、貴金属、アルミニウム、又はこれらの合金などさまざまな導電性物質を材料に用いることができる。
スイッチ9は、正極側導線7又は、負極側導線8の途中に接続され、電源6からヒータ5への電力の供給を短絡・遮断するためのものである。なお、本実施形態では、簡単のため、電源6からヒータ5への電力の供給及び停止を有線の機構で説明することにするが、この機構は無線の機構としても良い。すなわち、スイッチ9の役割を無線による遠隔操作によって果たすような機構を採用すれば良い。例えば、半導体によるスイッチング素子を用いて外部から、無線により遠隔操作する構成などが考えられる。
体積可変容器16は、本実施の形態においては、シリンダ2、ピストン3、バネ4A〜4Dとを有している。シリンダ2は、パラフィンワックス1を収容するための容器である。シリンダ2の一端側の内部にはパラフィンワックス1が収容されている。ピストン3は、シリンダ2の他端側の開口部から進退自在に挿入し、ピストン3の一端は、シリンダ2に収容されたパラフィンワックス1に当接させる。
バネ4A〜4Dは、ピストン3の他端側と上記開口部の端との間に取り付けられ、ピストン3を付勢してシリンダ2に取り付けるためのものである。また、本実施形態ではバネを用いた例を示しているが、バネに限らず弾性体ならばどのようなもの利用可能である。なお、図2に本実施形態におけるバネの取り付け方法とは別の取り付け方法の例を示す。
図2(a)の浮力調整器の例では、シリンダ2の他端側(上記開口部側)に固定棒11A・11Bの一端が固着され、固定板12は、固定棒11A・11Bの他端に挟まれるようにして固着されている。この固定板12とピストン3の他端(上記開口部側)との間にバネが取り付けられ、固定板12とピストン3とが離れる方向に付勢されている。
また、本実施形態ではつるまきバネを用いているが板バネを用いることもできる。この板バネを用いた場合の取り付け方法の一例を図2(b)に示す。図2(b)の浮力調整器の例では、シリンダ2の他端側(上記開口部側)に固定棒11の一端が固着され、固定棒11の他端に、板バネ4が、ピストン3の他端を付勢するように取り付けられている。
つぎに、図4に基づき浮力調整器10の動作について説明する。図4は浮力調整器10の動作を説明するための概略図である。図4(a)に示すように、浮力調整器10を潜水させる場合、スイッチ9は遮断する。このとき、図1のシリンダ2内のパラフィンワックス1は、常温で固相状態にあるため、その体積は小さい。なお、このような状態において浮力調整器10が浮いてしまうときは、適当な重量の錘(図示しない)を取り付ける。なお、この錘の重量は以下で説明する図4(b)の状態に浮力調整器10があるときに、浮上することができるような重量とする必要がある。
図4(a)に示すような状態のとき、浮力調整器10の体積は小さく、その密度は大きい。したがって、浮力調整器10の最大密度(浮力調整器10の体積が最小のときの密度)が水の密度よりも大きくなるように浮力調整器10の重量を調整しておけば、浮力調整器10は下降・潜水する。
一方、図4(b)に示すように、浮力調整器10を浮上させる場合、スイッチ9は短絡する。このとき、図1のシリンダ2内のパラフィンワックス1は、ヒータ5による熱により温められ、パラフィンワックス1の融点に達した部分が徐々に融解してゆく。このとき、浮力調整器10の体積は次第に大きくなり、その密度は小さくなる。したがって、浮力調整器10の最小密度(浮力調整器10の体積が最大のときの密度)が水の密度よりも小さくなるように浮力調整器10の重量を調整しておけば、浮力調整器10は上昇・浮上する。
このように、浮力調整器10は、パラフィンワックス1の相変化に伴う体積変化(密度変化)を利用しているため、従来のように、バラストを必要とすることがない。また、浮力調整器10は、ヒータ5の熱エネルギーを利用しているので、従来のモータ等の機械力を用いる場合よりも簡易な機構で構成できる。さらに、浮力調整器10は、固相・液相状態にある物質は気相状態にある物質と比較して圧力耐性が高いので、高水圧の環境下においても浮力調整機能を発揮することができる。
また、浮力調整器10の構成は、機構が簡易であるため、たとえば、浮力と物質の体積との関係を学習するための理科の実験セットなどに好適に使用できる。また、ラジコンなどの潜水玩具に用いることも可能である。なお、シリンダ2とピストン3とを頑丈な金属などの材料を用いて構成し、水密な構造とすれば、高水圧の環境下においても浮力調整機能を発揮することができる浮力調整器10を作成することも可能である。
(パラフィンワックス1の選定方法)
ここで、浮力調整器10におけるパラフィンワックス1の選定方法について説明する。浮力調整器10において最も重要なポイントとなるのが体積変化(密度変化)をする物質の性質である。上述のように、本発明においては、マッコウクジラの脳油を利用した浮力調整能力を参考にしている。つまり、マッコウクジラが実際に浮力調整用に利用している脳油を使えばよいのであるが、マッコウクジラは上述のように、国際捕鯨委員会によって保護されているので、マッコウクジラを捕獲し脳油を手に入れることはできない。そこで、マッコウクジラの脳油に代わる物質を選定する必要がある。
浮力調整器10で選定する物質は、マッコウクジラの脳油と性質が似ているという条件をクリアしていなければならない。その条件としては、2点に絞られる。一つは状態変化による体積変化率(密度変化率)が大きいことである。状態変化による体積変化(密度変化)の大きさがすなわち浮力調整ができる範囲となるからである。
もう一つは融点が低いことである。マッコウクジラの能力を参考にすると、浮力調整に利用する物質(マッコウクジラの場合は脳油)の比重を重くする際には冷却して固化し、その比重を軽くする際には加熱して液化している。
本発明においても、この物質(マッコウクジラの場合は脳油)を温度調整することによって密度変化を生じさせる手法を参考にする。つまり、脳油のようにできるだけ低融点であることが好ましい。それは物質を固体から液体に変化させる際に必要な加熱のためのエネルギーの削減につながるからである。以上の2つの条件をクリアする物質であれば本発明における浮力調整装置10に好適に使用できる。
本発明において使用するワックスの選定理由について実験データとともに、説明する。実験では、まず、できる限り融点の低いワックスを選んだ。そして、これらの中で体積変化(密度変化)が起こっていることが確認できたものであり、かつ、その体積変化(密度変化)が比較的大きいものを4種類選び出した。それらを表2に示す。
Figure 2008037253
ここで、ワックス選定の実験方法について説明する。これら4種類のワックスが、浮力調整装置10の構成要素として適しているかどうかを実験によって調べた。図7に示すように、実験は以下の順序で行った。まず、ビーカーの上のふちまで20℃の水を入れ、ビーカー全体の容積を測定する。つぎに、ビーカーに固体のワックスを50g入れ、湯煎で溶かし、固める。その後、ビーカーの上のふちまで20℃の水を入れ、先ほど求めたビーカーの容積とビーカーにワックスをいれた場合のビーカーの容積との差でワックスの体積を測定する。
さらに、ワックスを湯煎し、ワックスが全て溶けきったらビーカーのメモリを読み取り、どれだけの密度変化があるかを測定し、密度を算出する。(測定するときは、水を使用せず、ワックス自体の体積を読んでいる)再びワックスを固め、ワックスの密度を上記と同様に測定する。以上で行ったことを3回繰り返し、平均値を取る。残りのワックスについても同様にこの作業を行う。
実験結果を表3に示す。表3では、それぞれのワックスに対する25℃の密度、70℃の密度、ワックス100gに対する浮力への寄与率、融点が示されている。表3に示すように、すべてのワックスに密度変化があることが分かる。しかしこれらのワックス間における密度変化の差は大きく、ワックス100gに対する浮力への寄与率は、小さいもので2%であり、大きいもので19%であった。中でもパラフィンワックスが一番密度変化が大きいことが分かる。
Figure 2008037253
また、図8のグラフで比較すると、実験で使用したワックスのなかで密度変化が大きいものはパラフィンワックスであることが良くわかる。なお、すべてのワックスが溶け切るのにかかった時間はITOHWAX J−400が最も早く、ITOHWAX E−210とITOHWAX E−250が遅いという結果になった。これは融点の違いに関係していると考えられる。
融点が低いほどワックスの溶けるスピードは早くなっていた。しかしさほど変化が無く最短で8分、最長で10分であった。ワックスの溶けるスピードに関しては無視しても良いのではないかと考えている。つまり使用するワックスの選定に当たっては、できる限り密度変化が大きいものを使用するほうが良いと考えた。よって、この中でも密度変化が大きいパラフィンワックスを用いることが一番良いと結論付けられた。
本実施の形態では浮力調整器10に内蔵する物質として、マッコウクジラの脳油の代わりにパラフィンワックスを選定して使用した。その結果、パラフィンワックスは、融点こそ脳油より高いものの、その状態変化による密度変化は脳油を上回っており、その点では脳油よりも本実施の形態の浮力調整器10に適した物質である。パラフィンワックスは安価で手に入りやすく、基本的に無害であることも高く評価できる。しかもパラフィンワックス等は、科学的に成分や構造を調整することで、融点や密度変化も調整することができる可能性があるため、パラフィンワックスより浮力調整器10に用いるのに最適な物質を追及することも可能である。
(パラフィンワックス1の浮力及びのヒータの形状・配置に関する実験)
つぎに、選定したパラフィンワックスを水中で体積変化(密度変化)をさせた場合、どの程度の浮力があるのか、また、ヒータの形状・配置によってどのような違いが起こるのかを調べる実験を行った。
この実験について図9に基づいて説明する。図9は本実験装置の概略図である。図9に示すように、本実験では、パラフィンワックスとニクロム線とを風船にいれたものを用いる。該風船は本実施の一形態である浮力調整器10に相当するものである。すなわち、この実験で用いた風船の例からも明らかなように、浮力調整器10は、体積変化が可能な容器等であれば良く、本実施の形態における浮力調整器10のようにシリンダ及びピストンの組み合わせという構成は必ずしも必要でない。測定装置は、ひずみゲージのついた板バネ、錘、ヒモ、及び水の入ったビーカーからなる。
測定方法は、後に説明する水中ロボットの浮力実験(図25参照)と同様なので、ここでは、説明を省略し、本実験の測定原理について簡単に説明する。図9で、ニクロム線を図示しない電源と導線でつなぎ、電源をONにする。そうすると、風船内のパラフィンワックスは次第に融解し、その体積が増加してゆく。すると、板バネにかかる負荷が次第に小さくなっていく。この負荷の変化にしたがって、板バネは弾性変形した状態から無負荷状態における形状にもどってゆく。そうすると、負荷による板バネのひずみも小さくなる。このひずみの変化をひずみゲージで電圧の変化に変換して、風船の浮力の変化を測定するのである。
まず、図9に示すように、50gのワックスとニクロム線とをゴム風船に入れる。ニクロム線の形状・配置については図10に示す。図10の示すように、ニクロム線の形状・配置については、パターン1〜3の3種類について実験をおこなった。パターン1は単に、風船にニクロム線を入れただけのパターン(広がりは偏っていない)である。パターン2は、ニクロム線の配置を意図的に偏らせたパターンである。パターン3は、ニクロム線を螺旋状にして、風船全体に広げたパターンである。
この実験を行うにあたり、前もってひずみゲージの出力から荷重を算出するための基礎式を出す必要がある。基礎式の求め方を以下に示す。ひずみゲージを貼り付けた板バネの先端に紐を吊るし、錘を1g〜10gまでは1g刻みずつ、その後100gまで5gずつ増やし、その時の出力電圧と荷重の関係をグラフに出した。その結果を図11に示す。
このグラフに近似線を引くと、xを荷重(N)、yを電圧(V)ととして、
y=1.0113x−0.0003
を得る。つまりこの式がひずみゲージの基礎式となる。
パターン1〜3のそれぞれについての実験結果を図12ないし図13に示す。図12ないし図13に示すグラフ図では、縦軸が浮力変化量(N)を示し、横軸が測定時間(s)を示している。パターン1では図12に示すように、最大の浮力変化量は約0.06Nである。パターン2及び3では図13(a)及び図13(b)にそれぞれ示すように、最大の浮力変化量は約0.10N及び約0.14Nである。この結果、パターン3で行った浮力実験における密度変化が最も大きいことが分かる。このことから、熱を加えるためにはニクロム線の配置・形状に注意することが必要であることがわかる。この点について少し詳しく考察する。
まず、ニクロム線をどのような配置にしても浮力は得られることが分かる。しかし、得られるデータはパターン1〜3で大きく異なっている。パターン1ではニクロム線をただ入れただけでどのような細工も加えていない。この状態では7%の変化しかなかった。そこで熱を加えた場合、熱が上へいく性質があるため、パターン2ではニクロム線をできる限り下のほうに寄せるように配置した。その結果パターン1より密度変化が増し、12%の変化が生じることとなった。
しかしこれでも通常、空気中でのパラフィンワックスの密度変化の19%には及んでいなかった。そこで最後に、ニクロム線をスパイラル状に巻きつけパターン1及びパターン2と同様に熱を加えた結果、約16%位の密度変化が起こり、空気中の密度変化の約8割近くの変化を生じさせることが出来た。このデータより、熱効率を良くするためにはスパイラル状にニクロム線を配置することが好ましいことがわかる。
次に、風船内にあるニクロム線の熱が外部の水に漏れ、温度上昇の妨げになっているのではないかと考えることもできる。この改善方法としては、断熱材等を利用して浮力調整器10の断熱効果を高めることが考えられる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図1、図9及び10、並びに図14〜27に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態の水中ロボットは、前記実施の形態1の浮力調整器10を複数用いて構成したものである。まず、図14に基づいて、本実施形態における水中ロボット20(無人潜水機)の構成について説明する。図14(a)〜図14(c)に示すように水中ロボット20は、本体21、浮力・姿勢調整器22(浮力調整装置・姿勢制御装置)、及び推進器30A・30Bを有している。
本体21は、図14(b)に示すように、図示しない電源や、以下で詳細に説明する、図1のヒータ5及び図14の推進器30A・30Bを制御する装置及び錘を搭載するための容器であり、フランジ付き半球23A、ゴムパッキン24、円筒25及び半球23Bを有している。
本実施の形態においては、アクリル製の円筒25、半球23B及びフランジ付き半球23Aを使用しているが、素材はこのようなアクリル製のものに限られず、様々な素材を用いることができる。円筒25の一端は開口となっており、他端は半球23Bと一体となって円筒型容器を形成している。フランジ付き半球23Aは上記円筒型容器の開口を覆う蓋の役割を果すものである。ゴムパッキン24は、上記円筒型容器とフランジ付き半球23Aとを水密に接合させるためのものである。
浮力・姿勢調整器22は、水中ロボット20の浮力を調整するとともに、水中ロボット20の姿勢制御を行う。すなわち、浮力・姿勢調整器22は実施の形態1の浮力調整器10を複数(本実施の形態では6個)組み合わせて構成したものであり、これにより、後で説明するように、姿勢制御機能を持つに至っている。浮力・姿勢調整器22は、シリンダ本体止部品26A(2組)・26B(2組)、シリンダ挿入部品27A・27B、シリンダ止部品28、シリンダ支え部品29、並びに浮力調整器10(計6本)を有する構成である。
浮力調整器10は、実施の形態1と同様に、パラフィンワックス1を体積変化(密度変化)する物質としている。ここで、本実施の形態では、浮力・姿勢調整器22を構成する浮力調整器10として、扱いが容易であった注射器とニクロム線のヒータとを利用している。
浮力の変化、つまり体積の変化をできるだけ大きくするため、パラフィンワックス1を入れる図1のシリンダ2に相当するものとして市販されている注射器の中でも大きいものを選定した。ここでは、容量が100mlのものを使用している。図16にこのような注射器31(体積可変容器)の一例を示している。注射器31は、注射器用シリンダ32(シリンダ)と注射器用ピストン33(ピストン)とを有している。
また、ニクロム線は熱がより行き渡るように螺旋状にして注射器31の注射器用シリンダ32内に入れた。また、図1に示した浮力調整器10と同様に、注射器31の注射器用ピストン33の戻りを補助するため、注射器用ピストン33の先端にバネを4本装着した。
なお、パラフィンワックス1を加熱するためにヒータ5として用いたニクロム線についても、本実施の形態では、螺旋状にして浮力調整器10に行き渡るように内蔵したことで、単にニクロム線を内蔵するよりもパラフィンワックス1の融解を効率よく成功させている。しかし、この手法も数ある手段の一つに過ぎない。例えば、ニクロム線を用いた抵抗による加熱以外の温度調整方法も考えられる。
シリンダ本体止部品26A・26Bは浮力調整器22と本体21とを図示しないボルトとナットとで螺接するためのものである。シリンダ挿入部品27A・27Bは、それぞれ、3つの挿入孔が開けられており、合計6本の浮力調整器10を嵌挿させて固定するためのものである。シリンダ止部品28及びシリンダ支え部品29と、シリンダ挿入部品27A・27Bとは、ボルトとナットとで螺接され、これにより、浮力調整器22の強度を高めるとともに、浮力調整器10の固定が補強される。
推進器30A・30Bは水中ロボット20の前後・左右の動きを実現するため、モータ駆動のスクリューを有するものであり、円筒25の左右に1つずつ取り付けられる。ここで、本実施の形態では、スクリュー付きモータを用いている。しかし、このようなスクリュー式の推進装置に限らず、ジェット式など様々な方式の推進装置を用いることができる。
(制御装置)
つぎに、図19に基づき、本実施の形態における水中ロボット20に搭載した図1のヒータ5及び図14の推進器30A・30Bを制御する装置である制御装置40について説明する。図19は制御装置40の構成を示す回路図である。図19に示すように、制御装置40は、受信機41、レギュレータ42、マイクロコンピュータ43A1、43A2、43B1及び43B2、モータドライバ44A1、44A2、44B1及び44B2、モータ45A1及び45A2、並びに、ヒータ46B1及び46B2を有している。
水中ロボット20は、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)を用いたデジタル制御でAUVにも利用できるが、本実施の形態における水中ロボット20においては、遠隔操作で水中ロボット20を操作できるようにしている。
水中ロボット20では、図14に示すように、前後の浮力・姿勢調整器22と左右の推進器30A・30Bとの計4つの装置を制御する必要がある。よって、市販の4chのデジタルプロポーショナルR/Cシステムを使用することとした。購入したシステムからプロポーショナルコントローラと受信機をそのまま使用し、受信機の信号を受けて、推進器30A・30B、並びに、浮力・姿勢調整器22の制御を行う部分を作成した。また、その制御には、以下で説明するマイコンを利用することとした。
受信機41は上記プロポーショナルコントローラに入力された命令に応じた信号を受信するものである。レギュレータ42は制御装置42を構成する各素子にかかる電圧を一定(5V)に保持するためのものである。マイクロコンピュータ43A1、43A2、43B1及び43B2は、各モータドライバを制御して、上記命令に応じて、モータ45A1・45A2、及び、ヒータ46B1・46B2の動作を制御するものである。モータドライバ44A1、44A2、44B1及び44B2は、上記各マイクロコンピュータからの指令を受けて、各モータ、及び各ヒータを動作させるものである。
つぎに、図23及び図18に基づき制御装置40と水中ロボット20の動作との関係について説明する。図23(a)は、制御装置40と水中ロボット20の動作との関係を説明するための概略図である。また、図23(b)は、上記プロポーショナルコントローラの各チャンネルとその役割との関係を示す概略図である。また、図18は水中ロボット20の動作を模式化した概念図である。
図23(a)に示すように水中ロボット20を前進・後退させるには、1ch及び4chのレバーを同方向に倒す。そうすると、スクリューの回転の正逆により、水中ロボット20は前進・後退する。図23(a)に示すように水中ロボット20を左右旋回させるためには、1ch及び4chのレバーを異なる方向に倒すか、どちらか一方のスクリューを停止状態にする。そうすると、スクリューの回転の正逆により、水中ロボット20は左右旋回する。なお、ここまでの水中ロボット20の動きを模式的に示すと、図18(b)のようになる。
図23(a)に示すように水中ロボット20を静止状態から潜水させる場合には、上記プロポーショナルコントローラを操作する必要はない。なお、この場合、最初にパラフィンワックス1の温度が常温よりも高く、固相及び液相の混合した不均一な状態にあり、水中のある位置で静止していたとする。すると、時間がたつにつれて、パラフィンワックス1の温度は低下し、次第に固相の均一状態へ近づいてゆく。そうすると浮力・姿勢調整器22の体積は小さくなり、水中ロボット20の密度が大きくなり、水中ロボット20に働く重力が浮力より勝ることになる。したがって、水中ロボット20は潜水する。
つぎに、水中ロボット20を静止状態から浮上させるには、上記プロポーショナルコントローラの2ch及び3chのレバーをともに倒す。なお、この場合、最初にパラフィンワックス1の温度が常温よりも高く、固相及び液相の混合した不均一な状態にあり、水中のある位置で静止していたとする。すると、時間がたつにつれて、パラフィンワックス1の温度は増加し、次第に液相の均一状態へ近づいてゆく。そうすると浮力・姿勢調整器22の体積は大きくなり、水中ロボット20の密度が小さくなり、水中ロボット20に働く浮力が重力より勝ることになる。したがって、水中ロボット20は浮上する。なお、ここまでの水中ロボット20の動きを模式的に示すと、図18(a)のようになる。
ここで、参考のため、本実施の形態における水中ロボット20において使用した、マイコン等の仕様や役割について説明する。なお、ここでは、素子の仕様等の詳しい説明は省略する。
水中ロボット20では、マイコン43A1、43A2、43B1及び43B2として、PICと呼ばれるものを用いた。PICとは、米国のマイクロチップ社が開発したワンチップマイクロコンピュータで、マイクロコントローラとも呼ばれている。その特徴を以下に列挙する。まず、35個のアセンブラ命令を覚えればプログラムも容易に行え、PIC1個は数百円から千円前後で買える低価格である。また、フリーソフトで入手することが可能であるため、パソコン等のWindows(登録商標)環境があれば誰でも無料で開発環境を整えることができる。さらに、消費電力を非常に小さくすることが可能であるため、電池を使用しても長時間動かすことができる。
これらの特徴を持つPICの中から、本実施の形態では、無線で水中ロボット20を動かすために最適な種類を選定し、PIC12F683を使用することとした。図20にPIC12F683の仕様と水中ロボット20における役割とを示している。図20(a)はPIC12F683を上から見たときの概要図であり、図20(b)はPIC12F683の仕様を示す図であり、また、図20(c)は、水中ロボット20におけるPIC12F683の役割を示している。
本実施の形態では、PICの他に使用した電子部品はモータドライバTA8429H及びレギュレータTA7805Sである。それぞれの仕様と水中ロボット20における役割について、図21及び図22に示す。図21(a)はモータドライバTA8429Hの仕様を示し、図21(b)及び図21(c)は水中ロボット20におけるモータドライバTA8429Hの役割を示す図であり、図22は、レギュレータTA7805Sの仕様を示す図である。
(水中ロボットの設計方針について)
ここで、本実施の形態の水中ロボット20の製作にあたって、策定した設計方針について説明する。第1の方針として、浮力調整を行う機構をどのようにすべきかを検討する。第2の方針として、水中で重力と浮力がある程度釣り合わせるため、どのような設計にすべきかを検討する。第3の方針として、浸水する可能性があるので、ロボット内部を目視できる素材として何を使用すべきかを検討する。第4の方針として、ワックスを溶かすためどのようにバッテリーを使用するべきかを検討する。
まず、第1の方針に関しては、簡単に圧縮・膨張ができる図16の注射器31を用いた図1の実施の形態1の浮力調整器10を採用することとした。図1のヒータ5としてはニクロム線を用い、ニクロム線どうしが重なり合うとショートする恐れがあるため、熱収縮チューブを表面に施すこととした。
次に第2の方針に関しては、図14(b)の本体21に軽量かつ浮力が得られるアクリルパイプとアクリルドームとを用いて大きな浮力を得られるようにすることとした。しかし、これだけでは浮力が大幅に大きくなりすぎるため、浮力・姿勢調整装器22を搭載させる部分の素材にアルミを用いることとした。
次に第3の方針に関しては、目視できる透明のアクリルパイプを用いることで浸水したかどうかを確認できるようにすることとした。
最後に第4の方針に関しては、ニッケル水素乾電池を用いて簡易にワックスを溶かすことができるようにすることとした。
つぎに、水中ロボット20の強度計算の結果について説明する。水中ロボット20に使用するフレームは上述のように、アルミで作成することとしたため、強度計算は座屈で求めることにし、どれだけの荷重に耐えられるかを計算する。加わる力の方向を図15(a)に示す。この力は、材料の断面の形状に強く依存する。この荷重により、図14のシリンダ本体止部品26A・26Bは円筒25との接合部から、上記荷重と同方向の力を受ける。
図14の本体21の円筒25の中心軸とシリンダ支え部品29の底面までの距離Lは160mmであり、ヤング率Eは215N/mmであるので、断面が一様な場合には、座屈の始まる力Fは、以下の式(1)で求めることができる。
=nπEI/L・・・・・・(1)
ここで、nは固定係数と呼ばれる、整数の定数であり、Iは、断面二次モーメントである。水中ロボット20の、図14のシリンダ本体止部品26A又は26Bは、長方形型の断面であるため、以下の式(2)によってもとめることができる。
I=ab/12 ・・・・・・・・(2)
図15(a)に示すように、aはシリンダ本体止部品26A又は26Bの長方形型の断面の長方形の短辺、bは長辺の長さである。本実施の形態では、a=5mm、b=14mmであるので、(2)の式より、I=145.8mmを得る。また、本実施の形態においては、固定係数はn=4となる。そうすると、(1)式より、F=48.3Nを得る。すなわち、縦方向の荷重に対しては、約50N近くまでなら耐えられることが分かる。
つぎに、図15(b)に示すような横方向の荷重がかかった場合について考える。横方向では、簡単のため、両端が支持された梁で、かつ等分布荷重が作用したときどれだけの力まで耐えられるかを計算する。加わる力の方向を図15(b)に示す。
まず、どれだけの力が最大限加わっても大丈夫なのかが分からないため、αを1mmあたりの力(N/mm)とし、全体の力をF(N)とすると、
F=99α (N)である。
次にモーメントを求める。モーメントは最大の距離で考える。ここでは中心から両端が最大の距離であると考える。よってモーメントMは、
M=99α×99/2=4900.5α (N・mm)
次に断面係数Zを求める。断面は上述した図15(a)に示すシリンダ本体止部品26A又は26Bの断面形状と同じである。断面係数の式は、
Z=ab/6
である。
よって、Z=163.3 (mm)を得る。
ここで、アルミのヤング率EはモーメントMと、断面係数Zを用いて、E=M/Zで与えられる。よって、
215=4900.5α/163.3より、
α=2.6 (N/mm)を得る。
したがって、水中ロボット20の横方向に加わる力が1mmあたり約3N近くまでなら耐えられることがわかる。
(バネの選定理由)
つぎに、図1の浮力調整器10(図16の注射器31を用いた場合)のバネ4A〜4Dの選定理由について説明する。浮力を得る方法としてパラフィンワックス1を図16の注射器用シリンダ32に注入する。ここで、パラフィンワックス1を注射器用シリンダ32に注入すると気泡が入り、体積減少率が悪化することがわかった。そこで、スプリングバネを用いることにより収縮の補助的な役割として用いることとした。まず、注射器用シリンダ32内のパラフィンワックス1を収縮するためにどれだけの力が必要かを測定した。バネばかりで測定したところ、約10Nの力で押す必要があると分かった。
次に、どれだけスプリングバネに伸びの力が必要かを求める。注射器用シリンダ32には約85〜90mlのワックスを注入することにしたので、スプリングバネを付ける場所から注射器用シリンダ32の出っ張りまではこの場合約38mmの間隔となることが分かった。したがって、約38mmの間隔に合うスプリングバネの選定をすればよい。そこで、自由長が30mm位のスプリングバネを考える。パラフィンワックス1の伸びは最大でも19mmあれば良いので、最大伸びは約25〜30mm位あれば良いと見積もった。以上のことを踏まえたうえでスプリングバネの仕様について計算を行う。
元々注射器用シリンダ32の残りの空間が約8mm位であるため、スプリングバネの遊びの部分が役8mm伸びていることと同じであると考えられる。つまり、10÷8=1.25(N/mm)となる。この値からひとつのシリンダに4本のスプリングバネを並列に使用するので、4分割の力になると考える。つまり、1.25÷4=0.3125(N/mm)となる。
しかし、スプリングバネを注射器用シリンダ32に取り付ける場合、少し斜めになる。つまり、ここで求めたバネ定数より少し大きめのスプリングを選定しなければならない。水中ロボット20における浮力調整器10のバネ4B〜4Dは、サミニ株式会社の引張りスプリングを用いることにした。用いるスプリングは表に示したとおりである。
Figure 2008037253
(浮力の調整)
浮力・姿勢調整機能搭載の水中ロボット20の浮上確認を行うためには、あらかじめ重量と浮力を求めておく必要がある。
まず、水中ロボット20の重量を求める。図14の本体21、図1の浮力調整器10(計6本)を搭載した図14の浮力・姿勢調整器22及びバッテリー(電源6)のそれぞれの重量は、1321.5g、4678.5g、及び1440gである。したがって水中ロボット20の全重量は、全重量=本体21+浮力・姿勢調整器22+バッテリー=7440(g)となる。
次に、水中ロボット20にはたらく浮力を考える。水中にある物体は、その物体が押しのけた水の重さと同じ上向きの力(浮力)を受けて軽くなる。この浮力は、物体に働く重力つまり物体の重さと釣り合っているとすると、水はこの浮力と同じ重力を支えることができる。
まず、図14(b)に基づき、本体21の体積を求める。円筒25=7.5×π×25=4418(cm)、半球23B=4/3×π×7.5×1/2=884(cm)、フランジ付き半球23A=4/3×π×6.5×1/2+7.5×π×1/2=664(cm)、及びゴムパッキン24=π×7.5×0.5=88(cm)から、
本体21=円筒25+半球23B+フランジ付き半球23A+ゴムパッキン24=6054(cm)となる。
同様にして、浮力・姿勢調整器22=2148(cm)となる。したがって、水中ロボット20=本体21+浮力・姿勢調整器22=8202(cm
浮力は、水中の物体が押しのけた水の重力と等しいので、水の密度を1g/cmとすれば、質量8202gに対応する浮力を水中ロボット20が受けることになる。
また、水中ロボット20の質量は、上記のように7440gなので、結局中性浮力を得るためには、762gの錘を搭載すれば良いことがわかる。
(バッテリー)
まず、使用するニクロム線の消費電力を求める。ニクロム線の抵抗から電圧と電流は24V、1.6Aとなる。そこで、消費電力38.4Wを得る。
これは、1本の浮力調整器10が消費する電力であるが、本実施の形態においては、計6本の浮力調整器10を使用するので、1時間の消費電力量は、38.4×6=230.4Whとなる。
本実施の形態においては、ニッケル水素乾電池をバッテリー代わりとして使用することとした。このニッケル水素乾電池のデータを表5に示す。
Figure 2008037253
浮力調整器10を3本につきニッケル水素乾電池を20本使用する。これに基づいて計算をすると、24×2.6=62.4(Wh)また、これを前後の2箇所に使用するので、
62.4×2=124.8(Wh)を得る。ここで、この消費電力でどれだけの時間使用できるかを考える。そうすると
124.8÷230.4×60=32.5(分)となる。
したがって、本実施の形態における水中ロボット20は約30分程度使用できることになる。
ここで、図23及び図24に基づき、本実施形態における水中ロボット20の動作について説明する。水中ロボット20の浮上・潜水は搭載されている浮力・姿勢調整器22を利用して行う。本実施の形態におけるの浮力・姿勢調整器22は、実施の形態1の浮力調整器10を6本用いて構成されており、水中ロボット20の前部に3本、後部に3本取り付けられている。浮上は、浮力・姿勢調整器22を構成する、図1のすべての浮力調整器10のヒータ5を起動させ、すべてのパラフィンワックス1を融解し、その浮力を増加させることで実現する。
潜水は浮力・姿勢調整器22を作動させないことでパラフィンワックス1を固体の状態にし、体積すなわち浮力を減少させ実現する。この場合、水中ロボット20の浮力は中性浮力よりも少し小さくなる値で調整し、パラフィンワックス1が固体の場合に水中ロボット20がゆっくりと沈む状態に図示しない錘を調整しておく必要がある。
また、本実施の形態における水中ロボット20では、図23に示すように、プロポーショナルコントローラの浮力・姿勢調整器22を起動させる2chと3chのレバーを同時に上に入力することで浮上を実現することができる。また、この場合の水中ロボット20の動作は、図24(a)に示すような動作となる。
次に、姿勢制御は6本の図1の浮力調整器10のヒータ5を様々な組み合わせで起動させることで、水中ロボット20の様々な姿勢を実現する。例えば、前と後に分かれている浮力・姿勢調整器22の前後どちらかのみを作動させ、それら3本に内蔵されている図1のパラフィンワックス1を溶かすことで、図24(b)に示すように、水中ロボット20のピッチ角の生成を実現できる。
また、前部の浮力調整器10の3本のうち、一番右の浮力調整器10のヒータ5および後部の浮力調整器10の3本のうち、一番右の浮力調整器10のヒータ5を起動し、それら2本の浮力調整器10に内蔵されるパラフィンワックス1を溶かすことで、図24(c)に示すように、水中ロボット20のロール角の生成を実現できる。
この他にも、前に3本、後に3本と分かれているで構成されている浮力調整装置をいろいろな組み合わせで作動させ、それぞれに内蔵されている浮力調整器10のパラフィンワックス1を溶かすことで、図24(d)に示すような、ピッチ角とロール角とを組み合わせた水中ロボット20の姿勢の生成を実現することができる。
(水中ロボット20の浮力調整実験)
ここで、図14の浮力・姿勢調整器22を水中ロボット20に搭載し、どれだけの浮力が得られるかを検証する実験を行った。実験は以下の順序で行った。
1本100mlの図16の注射器31で構成した浮力調整器10に、スパイラル状に施したニクロム線で構成した図1のヒータ5とパラフィンワックス1の85gとを入れ、これを6本用意し、図14の浮力・姿勢調整器22を製作する。つぎに、製作した浮力・姿勢調整器22を水中ロボット20に搭載する。図25に示すように、図9のパラフィンワックス1の浮力に関する実験と同様にして、ひずみゲージを使用して浮力を測定する。なお、データは5回測定し、平均を取る。
以下、にこの実験結果を示す。図17は、水中ロボット20の浮力に関する実験の結果を示すグラフである。
実験結果を図17と表6に示す。図17を見ると800sまでは、ほぼ同じようなデータが出力されていることが分かる。それ以降は、表6より約0.15Nの差があることが分かる。
Figure 2008037253
ここで、この実験結果について考察する。実験では、水中ロボットに浮力調整装置を搭載させたところ、平均で0.62Nの浮力が得られていることが確認できた。6本の浮力調整器10を使用したということは1本あたり約0.10Nの浮力が得られていることになる。
(水中ロボット20を用いた姿勢制御実験)
つぎに、水中ロボット20を用いて姿勢制御の実験を行った。この実験では本実施の形態におけるの浮力・姿勢調整器22の有用性について検証することを目的とする。浮力・姿勢調整器22が単なる浮き沈みのみを実現する浮力調整装置ということだけではなく、水中ロボット等の姿勢の制御も可能としていることを証明することが目的である。
作製した水中ロボット20を用いて水槽で実験を行った。以下、この実験について説明する。
まず、浮力・姿勢調整器22が、水中ロボット20の浮力調整を行い、実際に水中ロボット20を浮き沈みさせることができるかどうかを以下に示す実験装置を用いて確認する。水中ロボット20の浮上は、中性浮力より少し小さい浮力にした水中ロボット20を浮上させ、水中ロボット20の浮力の変化を測定する。浮力の測定にはひずみゲージを用いた。水中ロボット20の潜水も中性浮力より少し小さい浮力にした水中ロボット20を用いる。実験では、水中ロボット20を浮上させる。そして浮上後、冷却されるとともに浮力が減少し、水中ロボット20が潜水することを確認する。
つぎに、本実施の形態における浮力・姿勢調整器22が、水中ロボット20の浮力を調整するだけでなく、水中ロボット20の姿勢の制御も可能であるかどうかを確認する。水中ロボット20を構成する6本の浮力調整器10のヒータ5を様々な組み合わせで起動させ、それぞれ、パラフィンワックス1を溶かし、水中ロボット20の水中におけるのバランスを崩す浮力の生成を試みることで、水中ロボット20の様々な姿勢を実現できることを示す。
ここでは、傾斜角センサーを、水中ロボット20に取り付け、この実験で生成した姿勢の角度を検出する。傾斜角センサーの仕様は表7に示す。また、作製した水中ロボット20の姿勢を生成しやすくするため、バラストを機体の上部に搭載し、浮力調整器10を引き出すことで機体の重心を調整した。実験の際、水中ロボット20は、わずかに負の浮力にしておく。
Figure 2008037253
ここで、実験手順について説明する。
(実験1)
まず、中性浮力にした水中ロボット20を水槽に沈める。つぎに、浮力・姿勢調整器22のすべての浮力調整器10のヒータを起動して、内蔵されているすべてのパラフィンワックス1を溶かす。その後浮力の変化のデータをとる。
この実験の結果、最初、中性浮力で水槽に沈めたため、水中ビークルは水槽に沈んでいた。しかし、浮力・姿勢調整器22を起動してからおよそ10分たった頃から徐々に浮上し始め、水中ロボット20はそのまま浮上することに成功した。このときの水中ビークルの浮力と時間との関係を図26に示す。図26に示すように、水中ロボット20は、0.6Nを超える浮力を生じて浮上している。
(実験2)
まず、わずかに負の浮力にした水中ロボット20を水槽に沈める。つぎに、浮力・姿勢調整器22の全部の浮力調整器10のヒータ5を起動して、内蔵されているすべてのパラフィンワックス1を溶かし、水中ロボット20を浮上させる。その後、パラフィンワックス1を水温で冷却し、その体積すなわち浮力を減少させる。
この実験の結果、浮上した水中ロボット20の浮力・姿勢調整器22を停止させることで、水中ビークルは潜水に成功した。
(実験3)
まず、水中ロボット20を水槽に沈める。つぎに、浮力・姿勢調整器22の前3本もしくは後ろ3本の浮力調整器10のヒータ5をONにして、内蔵されている半分のパラフィンワックス1を溶かす。その後、生成された姿勢の角度のデータをとる。
この実験の結果、最初、負の浮力で水槽に沈めたため、水中ロボット20は水槽に沈んでいた。しかし、浮力・姿勢調整器22を起動してからおよそ5分たった頃から徐々に、水中ロボット20の前部が浮上し始め、水中ロボット20はピッチ角を生成することに成功した。このときの水中ビークルのピッチ角と時間との関係を図27(a)に示す。図27(a)からもわかるように、水中ロボット20は、約20度の角度を生じている。
(実験4)
まず、水中ロボット20を水槽に沈める。つぎに、浮力・姿勢調整器22の前部の3本の浮力調整器10のうち、一番右の浮力調整器10のヒータ5および後部の3本の浮力調整器10のうち、一番右の浮力調整器10のヒータ5を起動し、それら2本の浮力調整器10に内蔵されるパラフィンワックス1を溶かす。その後、生成された姿勢の角度のデータをとる。
実験の結果、最初、負の浮力で水槽に沈めたため、水中ロボット20は水槽に沈んでいた。しかし、浮力・姿勢調整器22を起動してからおよそ6分たった頃から徐々に水中ロボット20の右側が浮上し始め、水中ロボット20はロール角を生成することに成功した。このときの水中ロボット20のロール角と時間との関係を図27(b)に示す。図27(b)からもわかるように、水中ビークルは約10°の角度を生じている。
(実験5)
まず、水中ロボット20を水槽に沈める。つぎに、浮力・姿勢調整器22の前部の3本の浮力調整器10のうち、両端2本の浮力調整器10のヒータ5および後部の3本の浮力調整器10のうち、一番右の浮力調整器10のヒータ5を起動し、それら3本の浮力調整器10に内蔵されるパラフィンワックス1を溶かす。その後生成された姿勢の角度のデータをとる。
この実験の結果、最初、負の浮力で水槽に沈めたため、水中ロボット20は水槽に沈んでいた。しかし、浮力・姿勢調整器22を起動してからおよそ10分たった頃から徐々に水中ロボット20の前部及び右側が浮上し始め、水中ロボット20は上記ピッチ角及びロール角のどちらでもない姿勢を生成することに成功した。このときの水中ビークルの姿勢と時間との関係を図27(b)に示す。
図27(b)からもわかるように、水中ビークルは10度のピッチ角と5度のロール角を生じている。
この実験で本実施の形態の水中ロボット20は、浮力・姿勢調整器22を用いることにより、その姿勢も制御できることがわかった。なお、重心位置の問題を考慮して、この浮力・姿勢調整器22の構成や配置、その制御方法を工夫することによって、水中ロボット20にあらゆる姿勢を生成させることが可能である。
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1及び2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1及び2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態の姿勢制御器は、上記実施の形態2の水中ロボット20における図14の浮力・姿勢調整器22(姿勢制御装置)で構成することができる。したがって、上述した説明と同一の説明は省略する。
姿勢制御機能をもたせるためには、浮力・姿勢調整器22を構成する浮力調整器10の本数は少なくとも2本以上であることが必要である。
また、本実施の形態における姿勢制御器は実施の形態2のように水中ロボット20に利用するだけでなく、たとえば、浮力と物質の体積との関係を学習するための理科の実験セットなどに好適に使用できる。また、ラジコンなどの潜水玩具に用いることも可能である。なお、図1のシリンダ2とピストン3とを頑丈な金属などの材料を用いて構成し、水密な構造とすれば、高水圧の環境下においても姿勢制御機能を発揮することができる浮力・姿勢調整器22を作成することも可能である。
さらに、浮力・姿勢調整器22を潜水服(水中用衣服)などに取り付けて浮力及び姿勢制御可能な潜水服を構成することも可能である。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、物質の固相及び液相間の相変化に伴う体積変化を利用した浮力調整装置、姿勢制御装置、無人潜水機、及び水中用衣服に適用できる。具体的には、教育器具として、浮力と物質の体積との関係を学習するための理科の実験セットなどにも使用できる。また、レジャー用品として、ラジコンなどの潜水玩具などに用いることも可能である。また、実用品として高水圧の環境下においても浮力調整機能を発揮する浮力調整装置、姿勢制御装置、無人潜水機、及びライフジャケット等を含む水中用衣服にも適用可能である。
本発明における浮力調整装置の実施の一形態の構成を示す概略図である。 (a)は上記浮力調整装置における他のバネの取り付け方法を示す斜視図であり、(b)は上記浮力調整装置における板バネの取り付け方法を示す斜視図である。 本発明における浮力調整装置のさらに他の実施の形態の構成を示す斜視図である。 (a)は上記浮力調整装置の潜水時の状態を示す概略図であり、(b)は上記浮力調整装置の浮上時の状態を示す概略図である。 本発明の基礎的原理を説明するためのマッコウクジラの頭部の概略図である。 (a)は上記マッコウクジラの頭部の潜水時の状態を示す概略図であり、(b)は上記マッコウクジラの頭部の浮上時の状態を示す概略図である。 上記浮力調整装置のワックスに関する実験方法を示す概略図である。 上記浮力調整装置のワックスに関する実験結果を示すグラフである。 上記浮力調整装置のワックスに関する実験方法を示す概略図である。 上記浮力調整装置のワックスに関する実験方法を示す概略図である。 上記浮力調整装置のワックスに関する実験結果を示すグラフである。 上記浮力調整装置のワックスに関する実験結果を示すグラフである。 (a)は上記浮力調整装置のワックスに関するパターン2の実験結果を示すグラフであり、(b)は上記浮力調整装置のワックスに関するパターン3の実験結果を示すグラフである。 (a)は本発明における水中ロボットの実施の一形態の全体の構成を示す構成図であり、(b)は、上記水中ロボットの本体の構成を示す構成図であり、(c)は上記水中ロボットの浮力調整装置又は姿勢制御装置の構成を示す構成図である。 (a)は上記水中ロボットの縦方向から負荷がかかった状態を示す正面図であり、(b)は上記水中ロボットの横方向から負荷がかかった状態を示す正面図である。 上記浮力調整装置のさらに他の実施の形態の構成の一部を示す概略図である。 上記水中ロボットの浮力に関する実験結果を示すグラフである。 (a)は上記水中ロボットの浮上・潜水動作を示す概略図であり、(b)は上記水中ロボットの前後・左右の動作を示す概略図である。 上記水中ロボットの制御装置の構成を示す回路図である。 (a)は上記制御装置のマイクロコンピュータの構成を示す平面図であり、(b)は上記マイクロコンピュータの仕様を示す図であり、(c)は、上記マイクロコンピュータの役割を示す図である。 (a)は上記制御装置のモータドライバの仕様を示す図であり、(b)及び(c)は、上記モータドライバの役割を示す図である。 上記制御装置のレギュレータの仕様を示す図である。 上記水中ロボットと制御装置との関係を説明するための概略図である。 (a)は上記水中ロボットの浮上・潜水動作を示す概略図であり、(b)は上記水中ロボットのピッチ角の変化を示す概略図であり、(c)は上記水中ロボットのロール角の変化を示す概略図であり、(d)は上記水中ロボットのピッチ角及びロール角の変化を示す概略図である。 上記水中ロボットの浮力に関する実験方法を示す概略図である。 上記水中ロボットの浮力に関する実験結果を示すグラフである。 (a)は上記水中ロボットのピッチ角の変化を示すグラフであり、(c)は上記水中ロボットのロール角の変化を示すグラフである。(d)は上記水中ロボットのピッチ角及びロール角の変化を示すグラフである。 従来例の浮力調整装置の構成を示す断面図である。 従来例の浮力調整装置の構成を示す断面図である。
符号の説明
1 パラフィンワックス(密度変化物質)
2 シリンダ
3 ピストン
4A〜4C バネ(弾性体)
5 ヒータ(加熱手段)
6 電源
7 正極側導線
8 負極側導線
9 スイッチ
10 浮力調整器10(浮力調整装置)
11、11A〜11B 固定棒
12 固定板
13 断熱材
14 ペルチェ素子(冷却手段)
15 温度調整器(温度調整手段)
16 体積可変容器
20 水中ロボット(無人潜水機)
21 本体
22 浮力・姿勢調整器(浮力調整装置・姿勢制御装置)
23A フランジ付半球
23B 半球
24 ゴムパッキン
25 円筒
26A、26B シリンダ本体止部品
27A、27B シリンダ挿入部品
28 シリンダ止部品
29 シリンダ支え部品
30A、30B 推進器
31 注射器(体積可変容器)
32 注射器用シリンダ(シリンダ)
33 注射器用ピストン(ピストン)
40 制御装置(電力制御手段)
41 受信機
42 レギュレータ
43A1、43A2 マイクロコンピュータ
43B1、43B2 マイクロコンピュータ
44A1、44A2 モータドライバ
44B1、44B2 モータドライバ
45A1、45A2 モータ
46B1、46B2 ヒータ(加熱装置)

Claims (14)

  1. 固相及び液相間の相変化に伴って体積が変化する密度変化物質と、
    前記密度変化物質の温度を調整する温度調整手段と、
    前記密度変化物質を収容し、該密度変化物質の体積変化にともなって体積が変化する体積可変容器とを有することを特徴とする浮力調整装置。
  2. 前記密度変化物質は、ワックス類を主成分としていることを特徴とする請求項1に記載の浮力調整装置。
  3. 前記温度調整手段は、
    電力の供給を受けて前記密度変化物質に熱を加える加熱手段と、
    前記加熱手段への電力の供給及び停止を制御する加熱電力制御手段と
    を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の浮力調整装置。
  4. 前記温度調整手段は、
    電力の供給を受けて前記密度変化物質の熱を吸収する冷却手段と、
    前記冷却手段への電力の供給及び停止を制御する冷却電力制御手段と
    を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の浮力調整装置。
  5. 前記温度調整手段は、
    さらに、温度センサを用いて前記密度変化物質の温度を計測する温度計測手段を有し、
    前記温度計測手段が計測した温度があらかじめ定められた所定の温度となるように前記温度調整手段を制御する温度制御手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の浮力調整装置。
  6. 前記所定の温度は、前記浮力調整装置の浮力を所望の浮力にするために、前記浮力調整装置に働く浮力と前記密度変化物質の温度との対応関係からあらかじめ定められた温度であることを特徴とする請求項5に記載の浮力調整装置。
  7. 前記所定の温度は、前記浮力調整装置の浮力を中性浮力にするために、前記浮力調整装置に働く浮力と前記密度変化物質の温度との対応関係からあらかじめ定られた温度であり、
    前記温度調整手段は、
    さらに、距離センサ又は圧力センサを用いて前記浮力調整装置の水面又は水底からの距離を計測する距離計測手段と、
    前記距離計測手段が計測した距離が所望の距離である場合に、前記温度計測手段が計測した温度が、前記所定の温度となるように前記温度調整手段を制御する温度制御手段とを有することを特徴とする請求項5に記載の浮力調整装置。
  8. 前記体積可変容器は、弾性体のみで構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の浮力調整装置。
  9. 前記体積可変容器は、前記密度変化物質を収容するシリンダと、
    前記シリンダに水密に嵌挿され、前記シリンダに収容された前記密度変化物質に当接する一端を有するピストンと、
    前記シリンダと前記ピストンとを連結して、前記体積可変容器の体積が減少するように付勢する弾性体とを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の浮力調整装置。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の浮力調整装置を少なくとも2つ以上有することを特徴とする姿勢制御装置。
  11. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の浮力調整装置を有することを特徴とする無人潜水機。
  12. 請求項10に記載の姿勢制御装置を有することを特徴とする無人潜水機。
  13. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の浮力調整装置を有することを特徴とする水中用衣服。
  14. 請求項10に記載の姿勢制御装置を有することを特徴とする水中用衣服。
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