JP2008033368A - 位相共役光の発生及び波長変換のための方法及び装置並びに該装置を有するシステム並びに該装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
変換効率の偏波依存性のない位相共役光発生装置を提供する。
【解決手段】
信号光ビームを供給されてポンプ光を用いた四光波混合に基づいて位相共役光ビームを発生させる第1の非線形光学媒質と、該第1の非線形光学媒質にカスケード接続され第1の非線形光学媒質から出力された信号光ビーム、位相共役光ビーム及びポンプ光が供給される第2の非線形光学媒質とを備えた装置。
【選択図】図16
変換効率の偏波依存性のない位相共役光発生装置を提供する。
【解決手段】
信号光ビームを供給されてポンプ光を用いた四光波混合に基づいて位相共役光ビームを発生させる第1の非線形光学媒質と、該第1の非線形光学媒質にカスケード接続され第1の非線形光学媒質から出力された信号光ビーム、位相共役光ビーム及びポンプ光が供給される第2の非線形光学媒質とを備えた装置。
【選択図】図16
Description
本発明は位相共役光の発生及び波長変換のための方法及び装置並びに該装置を有するシステムに関する。
低損失なシリカ光ファイバが開発されたことにより、光ファイバを伝送路として用いる光ファイバ通信システムが数多く実用化されてきた。光ファイバそれ自体は極めて広い帯域を有している。しかしながら、光ファイバによる伝送容量は実際上はシステムデザインによって制限される。最も重要な制限は、光ファイバにおいて生じる波長分散による波形歪みに起因する。光ファイバはまた例えば約0.2dB/kmの割合で光信号を減衰させるが、この減衰による損失は、エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)を始めとする光増幅器の採用によって補償されてきた。
しばしば単純に分散と称される波長分散は、光ファイバ内における光信号の群速度が光信号の波長(周波数)の関数として変化する現象である。例えば標準的なシングルモードファイバにおいては、1.3μmよりも短い波長に対しては、より長い波長を有する光信号がより短い波長を有する光信号よりも速く伝搬し、その結果としての分散は、通常、正常分散と称される。1.3μmよりも長い波長に対しては、より短い波長を有する光信号がより長い波長を有する光信号よりも速く伝搬し、その結果としての分散は異常分散と称される。
近年、EDFAの採用による光信号パワーの増大に起因して、非線形性が注目されている。伝送容量を制限する光ファイバの最も重要な非線形性は光カー効果である。光カー効果は光ファイバの屈折率が光信号の強度に伴って変化する現象である。屈折率の変化は光ファイバ中を伝搬する光信号の位相を変調し、その結果信号スペクトルを変更する周波数チャーピングが生じる。この現象は自己位相変調(self-phase modulation:SPM)として知られている。SPMによってスペクトルが拡大され、波長分散による波形歪みが更に大きくなる。
このように、波長分散及びカー効果は、伝送距離の増大に伴って光信号に波形歪みを与える。従って、光ファイバによる長距離伝送を可能にするためには、波長分散及び非線形性は制御され、補償され或いは抑圧されることが必要である。
波長分散及び非線形性を制御する技術として、主信号のための電子回路を含む再生中継器を用いたものが知られている。伝送路の途中に例えば複数の再生中継器が配置され、各々の再生中継器では、光信号の波形歪みが過剰になる前に光/電気変換、再生処理及び電気/光変換がこの順で行われる。しかし、この方法では、高価で複雑な再生中継器が必要であるとともに、再生中継器が有する電子回路が主信号のビットレートを制限するという問題がある。
波長分散及び非線形性を補償する技術として、光ソリトンが知られている。与えられた異常分散の値に対して精度よく規定された振幅、パルス幅及びピークパワーを有する光信号パルスが発生させられ、それにより光カー効果によるSPMと異常分散とによるパルス圧縮と、分散によるパルス拡がりとがバランスし、光ソリトンはその波形を維持したまま伝搬して行く。
波長分散及び非線形性を補償するための他の技術として、光位相共役の適用がある。例えば、伝送路の波長分散を補償するための方法がヤリフ(Yariv)らによって提案されている(A. Yariv, D. Fekete, and D. M. Pepper,“Compensation for channel dispersion by nonlinear optical phase conjugation” Opt. Lett., vol. 4, pp. 52-54, 1979)。伝送路の中間点で光信号が位相共役光に変換され、伝送路の前半で受けた波長分散による波形歪みが伝送路の後半の波長分散による歪みで補償される。
特に、2つの地点での電場の位相変化の要因が同じであり、その要因をもたらす環境変化が2地点の間の光の伝搬時間内で緩やかであるとすれば、2地点の中間に位相共役器(位相共役光発生器)を配置することによって、位相変化は補償される(S. Watanabe,“Compensation of phase fluctuation in a transmission line by optical conjugation ”Opt. Lett., vol. 17, pp. 1355-1357, 1992)。従って、位相共役器の採用によって、SPMに起因する波形歪みも補償される。しかし、位相共役器の前後で光パワーの分布が非対称である場合には、非線形性の補償が不完全になる。
発明者は、先に、位相共役器を用いる場合に光パワーの非対称性による補償の不完全さを克服するための技術を提案した(S. Watanabe and M. Shirasaki, “Exact compensation for both chromatic dispersion and Kerr effect in a transmission fiber using optical phase conjugation”J. Lightwave Technol., vol. 14, pp. 243-248, 1996 )。位相共役器は伝送路におけるその前後の分散値又は非線形効果の総量が等しくなる点の近傍に配置され、その前後における種々のパラメータが微小区間ごとに設定される。
位相共役器及びその光ファイバ通信への適用に関しては、例えば、本発明者による出願(特願平6−509844号、特願平7−44574号、特願平7−304229号、特開平7−98464号及び特開平7−301830号)がある。
進行波型半導体レーザ増幅器を用いた位相共役波の発生方法は、〔1〕A. MECOZZI ET AL., IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS, VOL.31, NO.4, APRIL 1995, PP.689-699に記載されている。この方法では、その文献の図6に示されているように、ポンプ(励起)光とプローブ光(信号光ともいう)を方向性結合器によって結合し、結合されたポンプ光とプローブ光をレンズ及び光アイソレーションを介して進行波型半導体レーザ増幅器に入力し、これにより位相共役波を進行波型半導体レーザ増幅器から取り出すようにしている。そのポンプ光は、色中心レーザ(CCL)から出力された光を光アイソレータ(OI)、バビネソレイユ(BABINET−SOLEIL)補償板及びレンズを通して方向性結合器に入力することにより与えられている。また、プローブ光は、外部共振器半導体レーザ(ECLD)から出力された光を光アイソレーション、λ/2板及びλ/4板を通して方向性結合器に入力することにより与えられている。
半導体レーザ増幅器の代わりに半導体レーザを用いて位相共役波を発生させる方法は、〔2〕PATRICK P. IANNONE ET AL., IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS, VOL.31, NO.7, JULY 1995, PP.1285-1291 に記載されている。この方法では、半導体レーザを使用している他は文献〔1〕とほぼ同じ機構の装置を用いている。その半導体レーザでは、外部から注入されるポンプ光の波長と同じ波長の光を発振するようになっている。
これら2つの例は、半導体レーザ増幅器又は半導体レーザの一端にポンプ光とプローブ光を入れるとともに、その他端からポンプ光とプローブ光と位相共役波を取り出す点で共通している。
これに対してポンプ光を発振する半導体レーザの第1の端面からその内部にプローブ光を入れ、その同じ第1の端面から位相共役波を出力する方法が、〔3〕S. MURATA EL AL., APPL. PHYS. LETT. 58 (14), 8 APRIL 1991, PP.1458-1460に記載されている。
上述した文献〔1〕,〔2〕に記載された方法では、プローブ光を発生させる光源とポンプ光を発生させる光源と位相共役波を発生させる半導体レーザ増幅器又は半導体レーザというように、3つの光デバイスが必要になるのでそれらを結合する光学系が複雑になる。特に、プローブ光とポンプ光を効率よく結合するための光結合器が要求される。
また、文献〔3〕に記載された方法においては、位相共役波を出力する半導体レーザの非出力端面に高反射率の反射膜を形成しておく必要があるので、半導体レーザにファブリペローモードが存在する。従って、その位相共役波の波長は、文献〔3〕にも記載されているように、ファブリペローモードに共鳴した波長に限定されることになる。
最近、発振状態のDFB−LD内の非縮退の四光波混合(Four-Wave Mixing:
FWM)による位相共役光の発生方法が、次の論文にて報告されている。
FWM)による位相共役光の発生方法が、次の論文にて報告されている。
H. Kuwatsuka, H. Shoji, M. Matsuda and H. Ishikawa, “THz frequency conversion using nondegenerate four-wave mixing prosess in a lasing long-cavity λ/4- shifted laser ”, ELECTRONICS LETTERS, Vol.31, No.24, pp.2108-2110, 1995.
この方法による位相共役光の発生方法について、簡単に説明する。キャリアを高注入した半導体高利得媒質は、大きな三次の非線形感受性を持つため、四光波混合を行なうのに最適な物質の1つである。半導体レーザが発振している状態では、その内部に高い強度の発振光が存在しているため、外部から光を入れることにより四光波混合が起き、位相共役光が発生することが理論的には知られていたが、実際には、発振しているレーザに外部から光を入れると、発振光がその光の波長に引き込まれたり、発振光が不安定になったりする問題があった。また、位相共役光が発生したとしても、半導体レーザを構成する共振器に共鳴する波長の光のみで位相共役光の発生が可能であり、自由に波長を変換することができなかった。
この方法による位相共役光の発生方法について、簡単に説明する。キャリアを高注入した半導体高利得媒質は、大きな三次の非線形感受性を持つため、四光波混合を行なうのに最適な物質の1つである。半導体レーザが発振している状態では、その内部に高い強度の発振光が存在しているため、外部から光を入れることにより四光波混合が起き、位相共役光が発生することが理論的には知られていたが、実際には、発振しているレーザに外部から光を入れると、発振光がその光の波長に引き込まれたり、発振光が不安定になったりする問題があった。また、位相共役光が発生したとしても、半導体レーザを構成する共振器に共鳴する波長の光のみで位相共役光の発生が可能であり、自由に波長を変換することができなかった。
上記論文では、1/4波長位相シフトDFB半導体レーザ内部に、発振させたい波長の光のみを反射させる2つの回折格子が、お互いが1/4波長だけ位相シフトするように形成されている。この2つの回折格子により、発振光は半導体レーザ内部に強く閉じ込められ、半導体レーザの両端面を無反射コートすることにより、発振光と異なる波長の光は、レーザ内部で反射されることなく通過する。このため、発振光をポンプ光として用いて、外部より半導体レーザに入力する光の位相共役光を発生することが可能となり、外部からのポンプ光を用いることなく、高効率で高速・広帯域の変換が可能である。
ところで、位相共役光発生器における変換効率はプローブ光及びポンプ光の偏波面の一致性に依存しているにも関わらず、一般的な光ファイバ伝送路は偏波面を保存する能力を有していない。従って、光位相共役を用いた光システムを構成するためには、高効率で高速・広帯域であり、しかも偏波依存性のない位相共役光発生器を実現する必要がある。
よって、本発明の目的は次の通りである。
(1)信号光ビームから位相共役光ビームへの変換効率を高くすることができる方法、装置を提供すること。
(2)信号光ビームから位相共役光ビームへの変換効率が信号光ビームの偏波状態に大きく依存しなくなるような方法、装置を提供すること。
(3)信号光ビームから位相共役光ビームへの変換における変換帯域を広くするための方法、装置、該装置の製造方法を提供すること。
(4)信号対雑音比に優れた位相共役光ビームを得るための方法、装置を提供すること。
(5)(1)〜(4)の装置を有する、或いは、(1)〜(4)の方法が適用される、光通信に適したシステムを提供すること。
(6)柔軟性に富んだ光ネットワークシステムを構築するのに適した新規な構成を有するシステムを提供すること。
本発明の一側面によれば、(a)第1の非線形光学媒質に信号光ビームを供給するステップと、(b)ポンプ光を用いた四光波混合に基づいて上記第1の非線形光学媒質内において位相共役光ビームを発生させるステップと、(c)上記第1の非線形光学媒質から出力された上記信号光ビーム、上記位相共役光ビーム及び上記ポンプ光を第2の非線形光学媒質に供給するステップとを備えた方法が提供される。
本発明の他の側面によれば、信号光ビームを供給されてポンプ光を用いた四光波混合に基づいて位相共役光ビームを発生させる第1の非線形光学媒質と、該第1の非線形光学媒質にカスケード接続され上記第1の非線形光学媒質から出力された上記信号光ビーム、上記位相共役光ビーム及び上記ポンプ光が供給される第2の非線形光学媒質とを備えた装置が提供される。
本発明の他の側面によれば、(a)半導体非線形光学媒質に信号光ビームを供給するステップと、(b)ポンプ光を用いた四光波混合に基づいて上記半導体非線形光学媒質内において位相共役光ビームを発生させるステップと、(c)上記信号光ビームの波長を上記ポンプ光の波長よりも長くなるように設定するステップとを備えた方法が提供される。
本発明の他の側面によれば、信号光ビームが供給される半導体非線形光学媒質と、上記信号光ビームの波長よりも短い波長を有するポンプ光を用いた四光波混合に基づいて上記半導体非線形光学媒質が位相共役光ビームを発生させるように該半導体非線形光学媒質をポンピングする手段とを備えた装置が提供される。
本発明の他の側面によれば、光学的に接続された複数のユニットと、該複数のユニットの接続点に設けられた少なくとも1つの光信号挿入分岐装置とを備え、上記複数のユニットの各々は、信号光を伝送するための第1の光ファイバと、上記信号光を位相共役光に変換するための手段と、上記位相共役光を伝送するための第2の光ファイバとを備えており、上記第1の光ファイバにおける波長分散及び光カー効果が上記第2の光ファイバにおける波長分散及び光カー効果によって補償されるシステムが提供される。
本発明の他の側面によれば、位相共役光を発生するための非線形光学媒質として光ファイバを有する装置を製造するための方法であって、(a)光ファイバを切断して複数の区間に分割するステップと、(b)非縮退四光波混合による変換帯域が拡大されるように上記複数の区間を並べ替えて繋ぎ合わせるステップとを含む方法か提供される。
本発明の他の側面によれば、位相共役光を発生するための非線形光学媒質として光ファイバを有する装置を製造するための方法であって、(a)光ファイバを切断して複数の区間に分割するステップと、(b)上記複数の区間の各々の分散値を測定するステップと、(c)非縮退四光波混合による所要の変換帯域を得るのに十分小さい分散値を有する区間だけを選んで繋ぎ合わせるステップとを含む方法が提供される。
本発明により、光ファイバ内の波長分散と光カー効果による波形歪みを理想的に補償することが可能になり、光速・大容量の光信号の長距離光ファイバ伝送が可能になる。
また、以上説明した本発明による構成又は手順によると次のような効果がある。
(1)信号光ビームから位相共役光ビームへの変換効率を高くすることができる方法及び装置の提供が可能になる。
(2)信号光ビームから位相共役光ビームへの変換における変換帯域を広くすることができる方法及び装置並びに該装置の製造方法を提供することができる。
(3)信号光ビームから位相共役光ビームへの変換効率が信号光ビームの偏波状態に依存しにくい方法及び装置を提供することができる。
(4)信号対雑音比が良好な位相共役光ビームを得ることができる方法及び装置の提供が可能になる。
(5)(1)〜(4)の装置を有する、或いは、(1)〜(4)の方法が適用される、光通信に適したシステムの提供が可能になる。
(6)柔軟性に富んだ光ネットワークシステムを提供するのに適した、位相共役光発生器を有する新規なシステムの提供が可能になる。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
今、光パルスが分散媒質中を伝搬する場合を考える。チャープしていないパルスが分散媒質を透過する際、正常分散媒質(∂2 β/∂ω2 >0)の場合には、パルスの立ち上がりにおいて低周波側にシフトし、立ち下がりにおいて高周波側にシフトする。異常分散媒質(∂2 β/∂ω2 <0)の場合には、パルスの立ち上がりにおいて高周波側にシフトし、立ち下がりにおいて低周波側にシフトする。ここで、βは伝搬定数、ωは光の角周波数を表す。そして、正常分散媒質においては波長が長いほど群速度が速く、異常分散媒質においては波長が短いほど群速度が速いため、いずれの場合にもパルス幅が広がることになる。
一方、光の強度が大きい場合には、光カー効果によって屈折率が
Δn(t)=n2 |E(t)|2
だけ変化する。ここに、n2 は非線形屈折率と呼ばれる量であり、通常のシリカファイバの場合にはその値は例えば約3.2×10-20 m2 /Wである。光パルスが非線形媒質中で光カー効果を受けると、
Δω(t)=−∂Δφ(t)/∂t
=−(2πn2 /λ)(∂|E(t)|2 /∂t)Δz
だけスペクトルが拡散(チャープ)する。ここにΔzは相互作用長である。
Δn(t)=n2 |E(t)|2
だけ変化する。ここに、n2 は非線形屈折率と呼ばれる量であり、通常のシリカファイバの場合にはその値は例えば約3.2×10-20 m2 /Wである。光パルスが非線形媒質中で光カー効果を受けると、
Δω(t)=−∂Δφ(t)/∂t
=−(2πn2 /λ)(∂|E(t)|2 /∂t)Δz
だけスペクトルが拡散(チャープ)する。ここにΔzは相互作用長である。
この現象は、一般に自己位相変調(Self-phase modulation:SPM)と称される。このSPMにより光パルスの立ち上がりにおいては低周波側にシフトし、立ち下がりにおいては高周波側にシフトする。このSPMによるチャーピングのために分散の影響がより顕著になり、その結果、パルスの歪みがより著しくなる。そのため、光パルスが分散媒質中で光カー効果を受けると、正常分散媒質の場合には、パルスが分散だけの場合よりも更に拡散するが、異常分散媒質の場合にはパルス圧縮が起きる。
従って、上記の波長分散の効果を考え合わせると、正常分散媒質の場合には大きなパルス拡散が発生し、異常分散媒質の場合には波長分散によるパルス拡散とSPMによるパルス圧縮のうち大きい方の効果が表れる。これら2つの効果をバランスさせたものが光ソリトンである。
一般に異常分散媒質においてSPMのよるパルス圧縮を加えた方が高い信号対雑音比(S/N)を保持できて都合がよいように考えがちであるが、最近光アンプを用いて高いレベルの光パワーで伝送できるようになったことと、分散シフトファイバの開発により比較的小さな波長分散値が実現できるようになったことにより、一概にパルス圧縮を加えた方がよいとも言えなくなってきた。
つまり、パルス圧縮効果が大きくなり過ぎて大きな波形歪みが発生するのである。特に、NRZパルスの場合には、パルスの立ち上がり、立ち下がり部分において集中的にパルス圧縮が起こるため、急激な波形変化や、極端な場合には、立ち下がり部分が立ち上がり部分を追い抜き、パルスが3つに分裂するようなことも起こる。また、長距離光増幅多中継伝送の場合には、信号光を励起光として光アンプの自然放出光との間で四光波混合が生じ、S/Nが著しく低下するという問題もある(変調不安定性;modulation instability)。
上述したような波長分散及び非線形性に起因する光パルスの歪みは、位相共役光学の適用によって補償することができる。例えば、第1の光ファイバ伝送路によって伝送された信号光ビームが位相共役光発生器によって位相共役光ビームに変換され、位相共役光ビームは第2の光ファイバ伝送路によって伝送される。第1及び第2の光ファイバにおける波長分散及び非線形性に関連するパラメータを適切に設定しておくことによって、第2の光ファイバの出力端で実質的に歪みのない光パルスを得ることができる。
しかし、位相共役光発生器における信号光ビームから位相共役光ビームへの変換効率は信号光ビームの偏波状態に依存するのが一般的であるから、変換効率に偏波依存性のない位相共役光発生器が求められているのである。
変換効率に偏波依存性のない位相共役光発生器を構成するには、偏波スクランブル法、偏波ダイバーシティ法又は偏波能動制御法を適用することができる。更には、偏波保持ファイバ(Polarization Maintaining Fiber:PMF)からなる光ファイバ伝送路を用いることによっても、位相共役光発生器における変換効率の偏波依存性を排除することができる。本発明では、変換効率の偏波依存性を排除するために、偏波ダイバシティ法が採用される。
図1は本発明による第1の方法を示す図である。先ず、偏波分離のプロセスにおいては、信号光ビームES が2つの偏波成分ES1及びES2に分離される。偏波成分ES1及びES2は互いに直交する偏波面を有している。
次いで、変換のプロセスにおいては、偏波成分ES1及びES2がそれぞれ対応する位相共役光ビームEC1及びEC2に変換される。位相共役光ビームEC1及びEC2の偏波面はそれぞれ偏波成分ES1及びES2の偏波面に一致している。
そして、偏波合成のプロセスにおいて、位相共役光ビームEC1及びEC2が偏波合成されて、位相共役光ビームEC が得られる。
本発明によると、変換のプロセスにおいては、1つ又は2つの分布帰還(DFB)レーザダイオードが用いられる。
変換のプロセスにおいて1つのDFBレーザダイオードが用いられる場合には、そのDFBレーザダイオードの第1励振端及び第2励振端にそれぞれ偏波成分ES1及びES2が供給され、第2励振端及び第1励振端からそれぞれ位相共役光ビームEC1及びEC2が出力される。この場合、偏波分離及び偏波合成のプロセスは共通の偏波ビームスプリッタにより行なうことができる。ここで、「励振端」という語は、DFBレーザダイオードの活性層の端面という意味で使用されている。
変換のプロセスにおいて2つのDFBレーザダイオードが用いられる場合には、これらのDFBレーザダイオードは、それぞれ、偏波成分ES1から位相共役光ビームEC1への変換と偏波成分ES2から位相共役光ビームEC2への変換とに供される。この場合、偏波分離及び偏波合成のプロセスはそれぞれ別の偏波ビームスプリッタにより行なうことができる。
望ましくは、DFBレーザダイオードが信号光ビームES の波長と異なる波長を有するポンプ光を発生するようにDFBレーザダイオードには電流が注入され、それによりDFBレーザダイオード内における四光波混合によって位相共役光ビームEC1及びEC2が発生する。
図1の方法によると、偏波成分ES1及びES2の双方に基づいて位相共役光ビームEc が得られているので、変換効率が信号光ビームEs の偏波状態に依存しにくくなる。即ち、偏波依存性が小さくなる乃至はなくなる。
図2は、本発明に適用可能な非縮退四光波混合(nondegenerate four-wave mixing)による位相共役光発生器を示す図である。分布帰還( DFB(distributed
feedback))レーザダイオード1の第1の励振端には、レンズ3を介して光ファイバ2が光学的に接続されており、第2の励振端にはレンズ6及び光ファイバ4を介して光フィルタ10が光学的に接続されている。DFBレーザダイオード1には駆動回路7から駆動電流が供給される。
feedback))レーザダイオード1の第1の励振端には、レンズ3を介して光ファイバ2が光学的に接続されており、第2の励振端にはレンズ6及び光ファイバ4を介して光フィルタ10が光学的に接続されている。DFBレーザダイオード1には駆動回路7から駆動電流が供給される。
DFBレーザダイオード1は例えば図3及び図4に示されるような構造を有している。図3において、n−InP基板11の上面にはn−InGaAsPガイド層12が形成され、それらの接合面には、膜厚が光進行方向に周期的に変化する波形の回折格子13が形成されている。回折格子13は、図4によく示されるように、その実質的な中央部13cで周期をλ/4(λ:導波構造内の光の波長)だけずらした位相シフト構造を有している。
ガイド層12の上にはアンドープト多重量子井戸(MQW)活性層14が形成され、更に活性層14の上にはp−InGaAsPバッファ層15及びp−InP層16がこの順に形成されている。
MQW活性層14は、膜厚7nmのInx'Ga1-x'As(x’=0.532)井戸層と膜厚10nmのGax In1-x Asy P1-y (x=0.283,y=0.611)障壁層とが交互に5層ずつ積層されて構成されている。
p−InP層16からn−InP基板11の上部までは凸状にパターニングされ、その平面形状は光進行方向に伸びたストライプ形状になっている。また、n−InP基板11のうちストライプ形状の凸部の両側にはp−InP層17及びn−InP層18がこの順に形成され、また、最上のp−InP層16及びn−InP層18の上にはp−InGaAsP層19が形成されている。
n−InP基板11の下面にはn側電極20が形成され、p−InGaAsP層19の上には3つに分割されたp側電極21a,21b及び21cが形成されている。
DFBレーザダイオード1の両端面(第1及び第2の励振端)には、少なくとも位相共役光を透過させるための無反射膜22がコーティングされている。
DFBレーザダイオード1の共振器長は例えば900μm、中央のp側電極21bの長さは例えば約580μm、両端寄りのp側電極21a及び21cの長さはそれぞれ例えば約160μmとなっている。
この位相共役光発生器の動作について説明する。先ず、DFBレーザダイオード1のp側電極21a,21b及び21cからMQW活性層14を通してn側電極20に駆動電流を流すことにより、MQW活性層14において波長1549nmの光を出力40mWで連続発振させる。この場合、電極21a,21b及び21cには例えば400mAの電流を流す。
DFBレーザダイオード1において発振する光は、レーザモードが単一でありしかも利得帯域幅が狭いことに起因して、狭く且つ安定したスペクトルを有している。そこで、DFBレーザダイオード1により発振される光を四光波混合のためのポンプ光として使用する。
図2において、光ファイバ2及びレンズ3を介してDFBレーザダイオード1の第1の励振端にプローブ光を供給すると、第2の励振端からは幾つかのスペクトルピークを有する光がレンズ6及び光ファイバ4を介して出力される。その出力光のスペクトルを図示しない光スペクトルアナライザによって調べたところ、図5に示されるような結果が得られた。
図5においては、ポンプ光の波長1549nmとプローブ光の波長1569nmにスペクトルピークが存在するだけでなく、波長1529nmにもスペクトルのピークが存在しており、このスペクトルのピークは位相共役光に対応している。尚、プローブ光の角周波数をωs 、ポンプ光の角周波数をωP 、位相共役光の角周波数をωC とすると、次式が成り立つ。
ωC =2ωP −ωS
このように、非縮退四光波混合によって位相共役光を発生させることによって、プローブ光(信号光)から位相共役光への光周波数変換、即ち波長変換が可能になることがわかる。この波長変換のプロセスにおいては、プローブ光が主信号により変調されている場合には、その変調は位相共役光においても保存されるので、この種の波長変換機能は後述するようなネットワークを構築する上で極めて有用である。
このように、非縮退四光波混合によって位相共役光を発生させることによって、プローブ光(信号光)から位相共役光への光周波数変換、即ち波長変換が可能になることがわかる。この波長変換のプロセスにおいては、プローブ光が主信号により変調されている場合には、その変調は位相共役光においても保存されるので、この種の波長変換機能は後述するようなネットワークを構築する上で極めて有用である。
以上のように、ポンプ光をDFBレーザダイオード1の内部で発生させると、プローブ光とポンプ光を結合するための機構が不要となり、位相共役光発生器の構造が簡素化する。従って、その発生器が組み込まれる光通信装置の小型化が可能になる。
また、DFBレーザダイオード1内でポンプ光を発生しているので、外部からポンプ光を入れようとするときの光ファイバを通すことによるポンプ光の強度の減衰を考慮する必要はなく、強いポンプ光によってプローブ光から位相共役光への変換効率を高めることができる。尚、得られる位相共役光の強度はポンプ光の強度の2乗に比例する。
さらに、DFBレーザダイオード1の発振モードは単一であるが、波長は自由に変えることができる。波長を変える方法としては、活性層14に供給される電流分布を変化させる方法がある。これを具体的に説明する。
3つのp側電極21a,21b及び21cに流す電流の大きさを相違させると、DFBレーザダイオード1の単一の発振モードがシフトすることが知られている (Y.KOTAKI et al., OFC'90, THURSDAY MORNING, 159) 。
例えば、DFBレーザダイオード1の両端寄りのp側電極21a及び21cに注入する電流を一定に保持するとともに、中央のp側電極21bに注入する電流を増やしてやると、発振波長が長波長側にシフトする。尚、p側電極21a,21b,21cの各々に流す電流の調整は、駆動回路7によって行なう。
従って、図4に示されるような複数のp側電極21a,21b及び21cを有し且つ両端面に無反射膜22が形成されたDFBレーザダイオード1を使用すると、ポンプ光の波長を自由に変えることができるので、それに伴って位相共役光の波長も自由に変えることができる。これにより、上述の位相共役光発生器を使用することによって、波長分割多重光通信において各チャネルの光信号の波長変換を行なうことができる。
上述の例では、InP/InGaAsPの層構造によりDFBレーザダイオード1を構成しているが、InP/InAlGaAsの層構造その他を採用したものであってもよい。また、GaAs基板に整合する材料系でもよい。
DFBレーザダイオード1で発生した位相共役光は、プローブ光及びポンプ光と共に出力されるので、位相共役光だけを取り出したい場合には、DFBレーザダイオード1の出力端の外方に光フィルタ10を配置すればよい。光フィルタ10は、図2において、DFBレーザダイオード1とレンズ6との間或いはレンズ6と光ファイバ4との間に設けられていてもよい。
次に、上述したDFBレーザダイオードを用いた位相共役光発生の実験について述べる。両端面にARコート(無反射コート)したλ/4位相シフトDFBレーザダイオード(共振器長900μm)を用い、その前後にシングルモードファイバ(SMF)を結合してなるモジュールによる波長変換実験を行なった。このモジュールを素子出力40mWで発振させ(ポンプ光の波長λp =1550nm)、前方端面から波長λS の信号光を入力し、後方端面から出力される光のスペクトルを観測した。
図6に、ポンプ光及び信号光間の離調周波数Δfに対する変換効率の変化の様子を示す。Δf=125GHz(波長差1.0nm)の場合で−8.7dB、Δf=2.5THz(同20nm)の場合でも−23dBの変換効率を得た。THz領域まで高い効率の変換が可能であり、波長分割多重信号光等の波長変換への適用が期待できる。また、ARコートにより、ファブリペローモードによる帯域制限は殆ど観測されなかった。
次に、上記変換光が位相共役光であることを確認するために、短パルス伝送における分散補償実験を試みた。2段のLiNbO3 変調器を用いて生成した幅約23psのRZ信号パルス(λS =1552nm)を長さ50kmの第1のSMF(分散:+18.1ps/nm/km)で伝送したのち、DFBレーザダイオードによりλC =1548nmの光に波長変換し、この変換光を長さ51kmの第2のSMF(+17.8ps/nm/km)で伝送した。
図7の(a)及び(b)にそれぞれ送信及び101km伝送後のパルス形状を示す。送信された信号光に対して変換光のパルス形状が再現されており(図7の(b))、変換光が信号光に対して位相共役関係を満足していることがわかる。比較のため、位相共役光発生器を用いずに101km伝送した場合のパルス形状を図7の(c)に示す。波長分散及び光カー効果によるパルス形状の歪みが著しい。
以上の実験結果より、DFBレーザダイオードを用いた位相共役光発生器によって、50Gb/s相当の高速光信号(パルス)の波形歪みを補償することができることがわかる。
上述したように、ポンプ光をDFBレーザダイオード内で発生させると、プローブ光とポンプ光とを結合するための機構が不要となり、位相共役光発生器の構造が簡素化する。従って、位相共役光発生器が組み込まれる光通信装置の小型化が可能になる。
図8は図1に従う位相共役光発生器の第1実施形態を示す図である。信号光ビームES を第1の偏波成分ES1及び第2の偏波成分ES2に偏波分離するために、第1の偏波ビームスプリッタ(PBS)32が用いられている。第1の偏波成分ES1は、ポンプ光EP1を発生するように駆動されている第1のDFBレーザダイオード1(#1)に供給され、第1の位相共役光ビームEC1がDFBレーザダイオード(#1)から出力される。偏波成分ES1、ポンプ光EP1及び位相共役光ビームEC1の偏波面は一致している。
第2の偏波成分ES2のために第2のDFBレーザダイオード1(#2)が用いられる。DFBレーザダイオード1(#2)は第2のポンプ光EP2を発生するように駆動されている。ここでは、DFBレーザダイオード1(#1及び#2)の各々の駆動回路その他の図示は省略されており(以下同様)、ポンプ光EP1及びEP2の偏波面は平行であるとする。
偏波成分ES1及びES2の偏波面は互いに直交しているので、第2の偏波成分ES2の偏波面が第2のポンプ光EP2の偏波面に一致して偏波成分ES2が第2のDFBレーザダイオード1(#2)に供給されるようにするために、1/2波長板(λ/2)34が用いられている。
1/2波長板34は偏波ビームスプリッタ32とDFBレーザダイオード1(#2)との間に動作的に接続されている。
本出願において、ある要素と他の要素とが動作的に接続されるというのは、これらの要素が直接接続される場合を含み、更に、これらの要素の間で電気信号又は光信号の受渡しができる程度の関連性をもってこれらの要素が設けられている場合を含む。
DFBレーザダイオード1(#2)からは第2の位相共役光ビームEC2が出力される。第1及び第2の位相共役光ビームEC1及びEC2を偏波合成して1つの位相共役光ビームEC を得るために、第2の偏波ビームスプリッタ(PBS)38が用いられている。ここでは、偏波ビームスプリッタ38は偏波ビームスプリッタ32に対応して設けられているので、DFBレーザダイオード1(#1)からの第1の位相共役光ビームEC1は1/2波長板36によって偏波面を90°回転された後偏波ビームスプリッタ38に供給される。
信号光ビームES から位相共役光ビームEC への変換効率の偏波依存性を完全に排除するためには、DFBレーザダイオード1(#1及び#2)として特性の等しいものを用いると共に、偏波ビームスプリッタ32から偏波ビームスプリッタ38に至るまでのDFBレーザダイオード1(#1及び#2)をそれぞれ含む光路の長さを等しくすればよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
DFBレーザダイオード1(#1及び#2)の特性の同一性は、例えば、ポンプ光EP1及びEP2のパワー及び波長が実質的に等しくなるような駆動条件によって与えられる。そのためには、例えば、図4に示される活性層14におけるλ/4位相シフトの位置が適切に設定され、或いは、活性層14に供給される電流の分布が調整される。
前述のようにλ/4位相シフトの位置が活性層14の実質的な中点にあり、且つ、対称な構造が得られている場合には、駆動電流IC (電極21bに注入される電流)を駆動電流IS (電極21a及び21cに注入される電流)に等しく設定することによって、後述するような双方向の位相共役光発生における変換効率を均等にすることができる。
尚、DFBレーザダイオード1(#1及び#2)の温度の調整によってポンプ光EP1及びEP2のパワー又は波長が調整されてもよい。
この実施形態では、偏波面を90°回転させるために、1/2波長板34及び36が用いられているが、他の構造によって偏波面を90°回転させるようにしてもよい。
例えば、1/2波長板34に代えて1本の偏波面保存ファイバ(PMF)を用い、その一端の主軸が他端の主軸に対して90°回転するようにそのPMFをひねればよい。或いは、1/2波長板34に代えて直列に接続された2本のPMFを用い、これらの接続点においてそれぞれの主軸が直交するようにこれらを接続してもよい。
尚、PMFを用いる場合における偏波分散を少なくするためには、前者の接続形態の方が望ましい。このPMFを用いた偏波面の回転方法は本発明のすべての実施形態に適用可能である。
尚、図8の第1実施形態は、信号光ビームES の入力ポートと位相共役光ビームEC の出力ポートとについて対称な構成を有しているので、後述するような双方向光通信システムにこの位相共役光発生器を適用した場合に、上りチャネル及び下りチャネルの双方に対して位相共役光ビームを発生することができ、しかも変換効率が偏波状態に依存しない。
図9は図1に従う位相共役光発生器の第2実施形態を示す図である。この実施形態は、図8の偏波ビームスプリッタ32及び38に代えて、導波路基板40上に形成された偏波ビームスプリッタ32′及び38′が用いられている点で特徴付けられる。
偏波ビームスプリッタ32′及び38′は、例えば、LiNbO3 基板上に形成された導波構造によって提供される。この場合、1/2波長板34及び36の機能をなす素子は、LiNbO3 光導波路とSiO2 膜等の組み合わせにより実現可能である。
DFBレーザダイオード1(#1及び#2)は例えば導波路基板40上に形成された溝内に収容されている。この場合、1/2波長板34及び36の使用によってDFBレーザダイオード1(#1及び#2)の活性層を互いに平行に設定することができるので、製造が容易である。
ところで、DFBレーザダイオードの前述したような対称性或いは双方向性によって、1台のDFBレーザダイオードを用いて偏波ダイバーシティを実施することができる。具体的には次の通りである。
図10は図1に従う位相共役光発生器の第3実施形態を示す図である。ここでは、励振端1A及び1Bを有する1台のDFBレーザダイオード1と偏波分離及び偏波合成のための1台の偏波ビームスプリッタ42とを含む光ループが構成されている。
偏波ビームスプリッタ42は4つのポート42A,42B,42C及び42Dを有している。ポート42A及び42C間並びにポート42B及び42D間はTE偏波面により結合されており、ポート42A及び42B間並びにポート42C及び42D間はTM偏波面により結合されている。
ここで、「TE偏波面」及び「TM偏波面」という表現は、相対的に直交する2つの偏波状態を表現するために便宜的に用いたものである。図では、TE偏波面はDFBレーザダイオード1の活性層及び紙面に平行であり、TM偏波面は紙面に垂直である。
ポート42CはDFBレーザダイオード1の励振端1Aに光学的に接続され、ポート42Bは1/2波長板44を介してDFBレーザダイオード1の励振端1Bに光学的に接続されている。また、ポート42Dは光学的に無反射終端されている。
得られた位相共役光ビームEC を信号光ビームES から分離(ドロッピング)するために、光サーキュレータ46が用いられる。光サーキュレータ46は3つのポート46A,46B及び46Cを有している。光サーキュレータ46は、ポート46Aから入力した光をポート46Bから出力し、ポート46Bから入力した光をポート46Cから出力するように機能する。
ポート46Aは信号光ビームES が供給される入力ポート48に接続されており、ポート46Bは偏波ビームスプリッタ42のポート42Aに接続されており、ポート46Cは位相共役光ビームEC の出力ポート50に接続されている。
ポート48,46A及び46Bを通ってポート42Aに供給された信号光ビームES は、偏波ビームスプリッタ42によってTE偏波面を有する第1の偏波成分ES1とTM偏波面を有する第2の偏波成分ES2とに偏波分離される。
第1の偏波成分ES1はポート42CからDFBレーザダイオード1の励振端1Aに供給され、第2の偏波成分ES2はポート42Bから1/2波長板44を介してDFBレーザダイオード1の励振端1Bに供給される。
第2の偏波成分ES2が1/2波長板44を通過することによって、その偏波面はTM偏波面からTE偏波面に変換される。従って、DFBレーザダイオード1に供給される第1及び第2の偏波成分ES1及びES2は共にTE偏波面を有していることとなる。
DFBレーザダイオード1において発生するポンプ光は主としてTE偏波面を有しており、このポンプ光は、励振端1Aから励振端1Bに向かう方向の第1のポンプ光成分EP1と励振端1Bから励振端1Aに向かう方向の第2のポンプ光成分EP2とからなる。
励振端1Aに供給された第1の偏波成分ES1と第1のポンプ光成分EP1とに基づく四光波混合によってDFBレーザダイオード1内においてはTE偏波面を有する第1の位相共役光ビームEC1が発生し、位相共役光ビームEC1は励振端1Bから1/2波長板44を通って偏波ビームスプリッタ42のポート42Bに供給される。従って、位相共役光ビームEC1はポート42BにおいてTM偏波面を有することとなる。
DFBレーザダイオード1の励振端1Bに供給された第2の偏波成分ES2と第2のポンプ光成分EP2とに基づく四光波混合によって、DFBレーザダイオード1内においては第2の位相共役光ビームEC2が発生し、この位相共役光ビームEC2はTE偏波面を有したまま励振端1Aから偏波ビームスプリッタ42のポート42Cに供給される。
偏波ビームスプリッタ42に供給された位相共役光ビームEC1及びEC2は偏波合成されて位相共役光ビームEC となり、この位相共役光ビームEC はポート42A,46B,46C及び50をこの順に通って出力される。
この実施形態では、前述した特徴を有する1台のDFBレーザダイオード1が用いられているので、偏波成分ES1及びES2に対する変換効率を一致させるのが容易である。変換効率の一致は、例えば、前述したようなDFBレーザダイオード1の動作条件の設定により容易に行うことができ、これにより、信号光ビームES の偏波状態に係わらず一定強度の位相共役光ビームEC を得ることができる。
また、この実施形態では、光ループにおける時計周りの光路長と反時計周りの光路長が同じであるので、位相共役光ビームEC1及びEC2の偏波合成をタイミングのあった状態で行うことができる。これにより、位相共役光発生器の正確な動作が確保される。
偏波ビームスプリッタ42としては、誘電体多層膜等の偏波分離膜を用いたもの、方解石等の結晶を用いたバルクタイプのもの、ファイバ型のものその他を用いることができる。
位相共役光ビームEC だけを抽出するために、出力ポート50に光フィルタを接続してもよい。
この実施形態における光ループは、レンズ系を用いた空間結合又は光ファイバ若しくは光導波路による結合によって提供することができる。特に光ファイバを用いる場合には、偏波状態を保持するために、偏波保持ファイバ(PMF)の使用或いは偏波制御器の付加的な使用が採用される。PMFを用いる場合には、前述したように1/2波長板を省略することができるので便利である。
図11は図10の実施形態の実証実験のための配置を示す図である。直線偏波として与えられる信号光ビームES が光サーキュレータ46に供給され、その偏波面を0°〜180°の間の範囲で回転させるために、回転可能なポラライザ52が用いられた。偏波ビームスプリッタ42とDFBレーザダイオード1の励振端1Aは偏波面保存ファイバ(PMF)54により接続され、偏波ビームスプリッタ42とDFBレーザダイオード1の励振端1BはPMF56によって接続された。
TE偏波面を有する第1の偏波成分ES1がそのままの偏波状態でDFBレーザダイオード1の励振端1Aに供給されるようにするために、PMF54の両端における主軸の方向は一致している。これに対し、PMF56においては、1/2波長板44を用いずにその機能を達成するために、PMF56の両端における主軸は互いに直交している。これにより、偏波ビームスプリッタ42から出力されたTM偏波面を有する第2偏波成分ES2は、TE偏波面を有する状態で励振端1BからDFBレーザダイオード1に入力される。
図12を参照すると、図11の実験で得られたデータが示されている。図12において、縦軸は変換効率ηC (dB)を表し、横軸は偏波角θ(deg)を表している。変換効率ηC は、信号光ビームES のパワーをPS ,位相共役光ビームEC のパワーをPC とするときに、ηC =PC /PS で与えられる。また、偏波角θは、直線偏波として入力された信号光ビームES の偏波面とTE偏波面とがなす角によって定義される。
1つのDFBレーザダイオードに信号光を一方向のみで入射する従来技術による場合、符号58で示されるように、変換効率ηC が偏波角θに従って大きく変動し(cos2 θに比例)、θ=90°では全く変換されなかった。これに対して、図10の第3実施形態によると、変換効率ηC について、偏波角θの変化に対して0.4dBよりも小さい変動に抑えられており、システム設計上十分な特性が得られていることが確認された。
尚、図11及び図12の実験に関する付加的な詳細は、Electronics Letters, Vol.33, No.4, pp.316-317, 1997 に記載されている。
図13は図1に従う位相共役光発生器の第4実施形態を示す図である。図10の第3実施形態では、1チャネルの信号光ビームES に対して1チャネルの位相共役光ビームEC を発生させているのに対して、この実施形態では、2チャネルの信号光ビームES10 及びES20 に対して2チャネルの位相共役光ビームEC10
及びEC20 を発生させている。
及びEC20 を発生させている。
図10の第3実施形態の機能はこの実施形態に含まれているが、図10のビームES ,ES1,ES2,EC1,EC2及びEC の標記は、それぞれ、ES10 ,ES11
,ES12 ,EC11 ,EC12 及びEC10 に変更されている。
,ES12 ,EC11 ,EC12 及びEC10 に変更されている。
偏波ビームスプリッタ42のポート42Dは無反射終端されずに光サーキュレータ62に接続されている。光サーキュレータ62はポート62A,62B及び62Cを有している。
光サーキュレータ62はポート62Aから入力した光をポート62Bから出力し、ポート62Bから入力した光をポート62Cから出力する。ポート62Aは第2チャネルの信号光ビームES20 の入力ポート64に接続されており、ポート62Bは偏波ビームスプリッタ42のポート42Dに接続されており、ポート62Cは第2チャネルの位相共役光ビームEC20 の出力ポート66に接続されている。
尚、第2チャネルにおける信号光ビームES20 から位相共役光ビームEC20 への変換については、第1チャネルにおける信号光ビームES10 から位相共役光ビームEC10 への変換に準じて容易に理解することができるので、その説明を省略する。ここでは、DFBレーザダイオード1はTM偏波面を有するポンプ光をも発生しているものとする。
一般的なDFBレーザダイオードにおいては、TE偏波面を有するポンプ光とTM偏波面を有するポンプ光との双方について必ずしも高い発生効率が得られないかもしれない。このような場合には、2つのDFBレーザダイオードをカスケード接続して使用するとよい。具体的には次の通りである。
図33を参照すると、図13の位相共役光発生器の変形例が示されている。ここでは、DFBレーザダイオード1と偏波ビームスプリッタ42との間にもう1つのDFBレーザダイオード1′が設けられており、DFBレーザダイオード1及び1′はカスケード接続されている。DFBレーザダイオード1は主としてTE偏波面を有するポンプ光を発生し、DFBレーザダイオード1′は主としてTM偏波面を有するポンプ光を発生する。
この実施形態によると、信号光ビームES10 から位相共役光ビームEC10 への変換には主としてDFBレーザダイオード1が寄与し、信号光ビームES20 から位相共役光ビームEC20 への変換には主としてDFBレーザダイオード1′が寄与する。
尚、DFBレーザダイオード1及び1′内における位相共役光の発生及び波長変換の原理についてはこれまでの実施形態に準じて容易に理解することができるのでその説明については省略する。
図33の構成においては、偏波ビームスプリッタ42及び1/2波長板44を含む光ループの中にDFBレーザダイオード1及び1′が含まれているが、カスケード接続されたDFBレーザダイオード1及び1′だけを取り出して位相共役光発生器を構成することもできる。即ち、この場合、DFBレーザダイオード1はTE偏波面を有するポンプ光を発生し、DFBレーザダイオード1′はTM偏波面を有するポンプ光を発生しているので、このようなカスケード接続されたDFBレーザダイオード1及び1′のいずれか一方に信号光ビームを供給することによって、他方からは変換された位相共役光ビームが出力され、その場合における変換効率は入力信号光ビームの偏波状態には依存しない。また、カスケード接続されたDFBレーザダイオード1及び1′は双方向性を有しているので、その位相共役光発生器を双方向伝送システムに適用した場合に双方向チャネルの双方について変換効率の偏波依存性を排除することができる。
図14の(a)及び(b)は本発明による第2の方法を説明するための図である。図14の(a)に示されるように、光ファイバ及び半導体光増幅器等のような三次の非線形光学媒質(χ(3) )68を用いて非縮退四光波混合により位相共役光を発生させる場合、角周波数ωS の信号光と角周波数ωP (ωP ≠ωS )のポンプ光とが光カプラ70を介して同一光路で非線形光学媒質68に入力される。光カプラ70を用いているのは、信号光及びポンプ光が異なる光源から出力されている場合にこれを同一光路で非線形光学媒質68に供給しこれらの相互作用を可能にするためである。
非線形光学媒質68内における信号光及びポンプ光の四光波混合に基づき、角周波数2ωP −ωS の位相共役光が発生し、この位相共役光は信号光及びポンプ光と共に非線形光学媒質68から出力される。
尚、「非縮退」というのは、信号光の波長(角周波数)とポンプ光の波長(角周波数)とが異なるという意味で用いられている。信号光の波長、ポンプ光の波長及び位相共役光の波長は前述した関係を満たすので、位相共役光の発生と同時に波長変換が行われることになる。従って、この出願においては、発明の名称及び発明の属する技術分野を除き、「位相共役光の発生」というときには、プローブ光(信号光)から位相共役光への位相共役変換及び波長変換の意味を含む概念として理解されたい。
図14の(b)に示されるように、DFBレーザダイオード1を非線形光学媒質として用いる場合、DFBレーザダイオード1への電流の注入によってDFBレーザダイオード1内においてポンプ光が発生する。従って、DFBレーザダイオード1に外部から信号光だけを供給することによって位相共役光が発生し、信号光、ポンプ光及び位相共役光がDFBレーザダイオード1から出力される。このようなDFBレーザダイオード1の非線形光学媒質としての使用による効果は前述した通りである。
ここで注目すべきは、DFBレーザダイオード1はファブリペロモードを有していないので、外部からの信号光の入力が可能であるだけでなく、信号光、ポンプ光及び位相共役光の取り出しが可能である点である。即ち、DFBレーザダイオード1及び非線形光学媒質68を光学的にカスケード接続することによって、位相共役光のパワーを高めることができるのである。
本発明による第2の方法においては、まず、DFBレーザダイオード1がポンプ光を発生するようにDFBレーザダイオード1に電流が注入される。
次いで、DFBレーザダイオード1に信号光が供給され、DFBレーザダイオード1内における信号光及びポンプを基づく四光波混合によって位相共役光が発生させられる。
そして、DFBレーザダイオード1から出力された信号光、ポンプ光及び位相共役光が非線形光学媒質68に供給され、非線形光学媒質68内における四光波混合によって、位相共役光のパワーが高められる。
本発明による第2の方法を実施する場合には、DFBレーザダイオード1から信号光、ポンプ光及び位相共役光が同一光路で出力されるので、これらを非線形光学媒質に供給する際に、図14の(a)に示されるような光カプラ70が不要である。その結果、DFBレーザダイオード1及び非線形光学媒質68内において高いパワーのポンプ光を維持することが容易になり、信号光から位相共役光への変換効率を高くすることができる。
本発明による第2の方法は本発明による第1の方法と組み合わせて実施することもできる。例えば、図11に示される実証実験のための配置においては、DFBレーザダイオード1の2つの励振端1A及び1Bにそれぞれ偏波面保存ファイバ(PMF)54及び56が接続されている。
一般に、光ファイバは3次非線形光学媒質としての性質を備えているから、図11のファイバ54及び56内で3次非線形効果を生じさせることができれば、ファイバ54及び56内においてそれぞれ位相共役光ビームEC2及びEC1が増幅され、その結果、偏波合成により得られる位相共役光ビームEC のパワーを高めることができる。具体的には次の通りである。
3次非線形効果(具体的にはγの値)を高めるためには、非線形屈折率n2 を大きくするかモードフィード径(MFD)を小さくすればよい。非線形屈折率n2 を大きくする方法としては、クラッドにフッ素等を添加しコアにGeO2 を高濃度に添加する方法がある。このような方法により、非線形屈折率n2 の値として5×10-20 m2 /W以上の大きな値が得られている。
一方、MFDを小さくすることは、コアとクラッド間の非屈折率差やコアの形状の設計により可能である(DCFと同様)。
これらの手法により、γ値として15W-1km-1を越える大きな値が得られている(通常のDSFではγ≒2.6W-1km-1)。また、このような大きなγ値のファイバを零分散ファイバとすることも可能である。
変換効率はγPLの二乗に比例するから、上述のように特別に設計されたファイバ(特別なファイバ)においては、通常のDSFと同様の3次非線形効果を生じさせるためには、その長さは2.6/15(≒1/5.8)程度でよいことになる。例えば通常のDSFを用いて3次非線形効果を生じさせるのに約20km程度の長さが必要であるとすれば、特別なファイバでは3〜4km程度の長さで同様の効果が得られることになる。実際には、短くなる分損失が小さくなるので、更に特別なファイバの長さを短くすることができる。また、このような特別なファイバにおいては、零分散波長の制御の精度が向上するため、極めて広い変換帯域の実現が期待される。更に、数km(例えば6km)のファイバ長であれば、偏波面保存(偏波保持)能力が確保されているので、このような特別なファイバの本発明への適用は高い変換効率及び偏波依存性のない変換効率を得る上で極めて有用である。
尚、本発明においてDFBレーザダイオード内における2方向の変換における変換効率を等しくするためには、DFBレーザダイオード及びそれに付随して設けられる3次非線形光学媒質としての光ファイバの各々における変換効率を等しくしてもよいし、DFBレーザダイオードと各ファイバによる変換の総量が等しくなるようにしてもよい。
以上のように、本発明による第1及び第2の方法を組み合わせることによって、変換効率の偏波依存性がなく且つ変換効率の高い位相共役光の発生が可能になる。
図15は図14の(a)及び(b)に従う位相共役光発生器の第1実施形態を示す図である。ここでは、非線形光学媒質68として半導体光増幅器(SOA)70が用いられている。
DFBレーザダイオード1はポンプ光EP を発生するように駆動されており、信号光ES がDFBレーザダイオード1に供給される。DFBレーザダイオード1内における信号光ES 及びポンプ光EP に基づく四光波混合によって位相共役光EC が発生する。
DFBレーザダイオード1からは信号光ES 、ポンプ光EP 及び位相共役光EC が出力され、これらはSOA70に供給される。SOA70内において四光波混合によって位相共役光EC のパワーが高められ、その位相共役光EC はSOA70から出力される。
図16を参照すると、図14の(a)及び(b)に従う位相共役光発生器の第2実施形態が示されている。ここでは、非線形光学媒質68として光ファイバ72が用いられている。光ファイバ72としては単一モードファイバが望ましく、変換効率を高めるためには、光ファイバ72の零分散波長をポンプ光の波長に実質的に一致させておくのが有効である。例えば、ポンプ光の波長が1.5μm帯にある場合には、分散シフトファイバ(DSF)を光ファイバ72として用いることによって、光ファイバ72の零分散波長とポンプ光の波長とを一致させることができる。
光ファイバ72に供給される信号光ES 、ポンプ光EP 或いは位相共役光EC
のパワーが光ファイバ72の誘導ブリユアン散乱(Stimulated Brillouin Scattering:SBS)のしきい値を越えると、変換効率が低下し、得られる位相共役光のパワーが減少する。
のパワーが光ファイバ72の誘導ブリユアン散乱(Stimulated Brillouin Scattering:SBS)のしきい値を越えると、変換効率が低下し、得られる位相共役光のパワーが減少する。
SBSの影響を抑圧するためには、ポンプ光EP 或いは信号光ES について周波数変調又は位相変調を行えばよい。そのために、この実施形態では、DFBレーザダイオード1に変調回路74が接続されている。変調速度は数百KHz以下で十分であり、信号光における信号速度がGb/s以上である場合には、その変調による伝送品質の劣化は問題にはならない。
変調回路74は、例えば、図4に示される電極21a,21b及び21cのいずれかに供給される電流に変調速度に対応する低周波信号を重畳する。図4のDFBレーザダイオード1は高い周波数変調効率を有しているので、容易にSBSによる影響を抑圧することができる(S. Ogita, Y. Kotaki, M. Matsuda, Y. Kuwahara, H. Onaka, H. Miyata, and H. Ishikawa, “FM response of narrow-linewidth, multielectrode λ/4 shift DFB laser, ”IEEE Photon. Technol. Lett., Vol.2, pp. 165-166, 1990.)。
以下に本発明の光通信システムへの応用例を示す。
図17に示される応用例は、伝送光ファイバの波長分散と非線形光カー効果による波形歪みの補償を可能にしたシステムである。この応用については、前述した本発明者による出願(特願平6−509844号、特願平7−44574号、特願平7−304229号、特開平7−98464号及び特開平7−301830号)に開示された通りであるが、以下に説明する。
送信機(TX)からの出力信号光ES を第1の光ファイバF1(長さL1 、分散D1 、非線形係数γ1 )で光伝送した後、位相共役光発生器(PC)に入力する。PCで位相共役光EC に変換し、第2の光ファイバF2(長さL2 、分散D2 、非線形係数γ2 )で受信機(RX)まで光伝送する。受信機では、この位相共役信号光を受光器で受けて信号検出する。尚、送信信号の変調方式には光振幅(強度)、周波数、位相等あらゆる方式が適用可能であり、信号検出には位相共役光を帯域フィルタで抽出した後の光直接検波や光ヘテロダイン検波等が考えられる。
また、ここで用いる光ファイバは多くの場合単一モードの石英ファイバ(SMF)であり、光通信において一般的に用いられている1.3μm零分散光ファイバや1.55μm分散シフトファイバ(DSF)等がその代表例である。さらに、信号光は波長の異なる複数の光源からなる波長多重信号でもよい。
光ファイバ内の波長分散と自己位相変調(Self Phase Modulation)による波形歪を図17に示したシステムで補償するためには、PCを挟んで対応する部分の分散と非線形効果の大きさを同じにすればよい。ここで、対応する部分とは、PCから測った分散又は光カー効果の累積値が等しくなる2つの部分をいう。つまり、伝送路を分割したときに、PCに近い側から順にPCに関して上記の意味で対象な位置にある各分割区間において分散と非線形効果の大きさを同じにすればよい。このことはまた、各分割区間内の分散値を同じにするとともに、各区間内で、
D1 /γ1 P1 =D2 /γ2 P2 … (1a)
が成り立つようにすればよいことを示している。ここにP1 ,P2 は各部分における光パワーであり、
γj =ωn2j/cAeffj … (2a)
は光ファイバ内の光カー効果の非線形係数を表す。ここに、ωは光角周波数、cは真空中の光速を表し、n2jとAeffjは光ファイバj(j=1,2)の非線形屈折率と有効コア断面積をそれぞれ表す。
D1 /γ1 P1 =D2 /γ2 P2 … (1a)
が成り立つようにすればよいことを示している。ここにP1 ,P2 は各部分における光パワーであり、
γj =ωn2j/cAeffj … (2a)
は光ファイバ内の光カー効果の非線形係数を表す。ここに、ωは光角周波数、cは真空中の光速を表し、n2jとAeffjは光ファイバj(j=1,2)の非線形屈折率と有効コア断面積をそれぞれ表す。
伝送路に沿って非線形効果の損失による減少を補償するためには、分散を小さくしていくか光カー効果を大きくすればよい。分散の値を変化させることは、光ファイバの設計により可能であり有望である。例えば、分散シフトファイバ(Dispersion Shifted Fiber)の零分散波長を変化させることや、光ファイバのコアとクラッドの比屈折率差やコア径を変えることにより現在盛んに行われている。一方、光カー効果を変化させることは、非線形屈折率を変化させたり光強度を変化させることにより可能となる。
分散補償ファイバ(Dispersion Compensation Fiber) の分散値を、長手方向に光カー効果の変化に比例するように逓減する構造の分散逓減DCF(DD−DCF)と正常分散のDSFによる伝送路によりシステムを構成することにより、高速・長距離伝送が可能となる。
光アンプを用いた長距離伝送においては、正常分散ファイバを用いるのが光アンプの雑音光による非線形歪(変調不安定性;modulation instability)を低減する上でよいことがわかっており、この構成は有望である。
上記の厳密な補償法の他に、光カー効果の変化がさほど大きくない場合(光アンプの中継間隔が非線形長に比べて十分短い場合など)には、以下のような平均パワーによる近似が成り立つ。
D1 ′L1 =D2 ′L2 … (3a)
γ1 P1 ′L1 =γ2 P2 ′L2 … (4a)
ここに、P1 ′,P2 ′は、それぞれ光ファイバFj(j=1,2)内の平均パワーであり、また、D1 ′,D2 ′はそれぞれ光ファイバFjの平均分散である。
γ1 P1 ′L1 =γ2 P2 ′L2 … (4a)
ここに、P1 ′,P2 ′は、それぞれ光ファイバFj(j=1,2)内の平均パワーであり、また、D1 ′,D2 ′はそれぞれ光ファイバFjの平均分散である。
さらに、理想的な波形補償条件式(1a)は満たさないが、伝送路に逆符号の分散を配置することによる分散補償器を適宜配置することも可能である。
この方法は、特に海底伝送のような長距離伝送において有効である。その理由は以下の通りである。
即ち、PCを用いた補償においては、その前後の光ファイバ内の波形歪を同じにする必要がある。このため、最も波形が歪んでいるのは、PCの前後においてである。従って、PCの位置においては、最も光パルスのスペクトルの拡がった状態になっている。一方、PC及び伝送路の光アンプからは雑音が付加されるが、この雑音によるS/N劣化はスペクトルが広いほど大きい。従って、PCの前後でのスペクトル拡がりが少ないようにシステムを設計することは、伝送距離を延ばす上で非常に有効である。
この意味において、伝送路途中の分散補償により伝送路の総分散値を小さくすることは有効である。
次に、本発明を波長多重(WDM)伝送システムに適用した例を図18に示す。
Nチャンネルの波長多重信号光ES1,ES2,…,ESN(周波数:ωS1,ωS2,…,ωSN)を、光ファイバF1により伝送した後、PCによりNチャンネルの波長多重位相共役光EC1,EC2,…,ECN(周波数:ωC1,ωC2,…,ωCN)に変換し、光ファイバF2により伝送した後受信する。
PCによる分散補償においては、PCの前後で分散の符号が同一である必要があるから、零分散に対して図19のような配置になる。光ファイバF1及びF2の零分散波長はそれぞれω10,ω20である。図の場合は、正常分散から正常分散への変換になっている。この場合、通常の伝送路には2次分散(分散傾斜)が存在するために、光ファイバF1では第1チャネル(ch.1)に対する分散の絶対値が最小であるのに対して、光ファイバF2においては第Nチャネル(ch.N)に対する分散の絶対値が最小になっている。従って、全チャネルに対して同時に完全な分散補償をすることは不可能である。
全チャネルを等しく理想的に補償するためには図20に示したように、各チャネル毎に信号光を別々の光ファイバF11、光ファイバF12、…、光ファイバF1Nで伝送し、その際、異なる分散に見合うパワー(P11, P12, …,P1N)で伝達する。光ファイバの出力光を1つのPCによる全チャネルの一括変換、または、各チャネル毎のPC−1,PC−2,…,PC−Nで位相共役光に変換し、これらを共通の光ファイバF2で伝送して受信する。この際の各チャネルの分散と非線形効果は上記で述べた方法で補償する。
図21は本発明の第3の応用例を示す図である。送信機TX−1,…,TX−Nは互いに異なる波長(光周波数)の信号光ES1,ES2,…,ESNを出力する。これらの信号光の角周波数はωS1,ωS2,…,ωSNである。
これらの信号光は複数の第1の光ファイバF11,…,F1Nによって伝送され、スターカプラ等からなる光マルチ/デマルチプレクサによって加え合わされると共に分岐される。
分岐された信号光はそれぞれ位相共役光発生器PC−1,…,PC−Mへ供給される。位相共役光発生器PC−1,…,PC−Mは供給された複数の信号光の少なくとも1つに対応する位相共役光を発生する。発生した位相共役光はそれぞれ光フィルタOF1,…,OFM,を透過した後複数の第2の光ファイバF21,…,F2Mによってそれぞれ光受信機RX−1,…,RX−Mへ伝送される。 複数の第2の光ファイバによって伝送される位相共役光は、E′C1,E′C2,…,E′CN)で示されている。
第1の光ファイバF1j(j=1,…,N)のそれぞれの長さはL1J、分散はD1j、非線形係数はγ1jであり、各信号光のパワーはP1jであるとする。また、第2の光ファイバF2k(k=1,…,M)のそれぞれの長さはL2k,分散はD2k,非線形係数はγ2kであり、各位相共役光のパワーはP2kであるとする。
このとき、次の2つの条件が満足されるように各パラメータが設定される。
D1jL1j=D2kL2k=(一定)
γ1jP1j/D1j=γ2kP2k/D2k=(一定)
尚、ここでの一定という意味には、各ファイバ内の任意の区間における平均値が一定であるということが含まれる。
γ1jP1j/D1j=γ2kP2k/D2k=(一定)
尚、ここでの一定という意味には、各ファイバ内の任意の区間における平均値が一定であるということが含まれる。
ここで、各第2の光ファイバF2kによる波形歪みの補償は、光フィルタOFkの帯域を通過する位相共役光に対して最適化されるように設定されている。また、位相共役発生器PC−kと光フィルタOFkの組み合わせによって抽出されるチャネルE′Ckは、信号光の任意の1チャネル又はその近傍の光フィルタの帯域に含まれる複数のチャネルの位相共役光である。
例えば、送信機TX−1,…,TX−N及びファイバF11,…,F1Nが送信端局内に設けられている場合、各ファイバF1jにおける分散又は非線形効果を等しく設定しておく。この場合、各受信機RX−kが所望のチャネルを選択することができるように、当該ファイバF2kに対して当該位相共役光発生器PC−k及び当該光フィルタOFkの機能の組み合わせが制御される。このような制御は、例えば各位相共役光発生器におけるポンプ光の波長制御及び/又は各光フィルタの通過中心波長の制御によってなされる。そのためには、チューナブル光フィルタの適用が望ましい。
このシステムは、例えば、第2の光ファイバが伝送路として用いられている場合には分配システムとして機能し、第2の光ファイバが受信局或いは中継器内にある場合にはチャンネル交換(クロスコネクト)システムとして機能する。
図22は本発明の第4の応用例を示す図である。このシステムは、図21と対比して、複数の光送信機TX−1,…,TX−Nに対して共通の第1の光ファイバF1が用いられている点で特徴づけられる。
この変更に伴い、第1の光ファイバF1の入力端は光マルチプレクサを介して各光送信機TX−jに接続され、出力端は光デマルチプレクサを介して各位相共役光発生器PC−kに接続される。
この共通の第1の光ファイバF1における分散は全チャネルに対してほぼ一定になるようにされている。例えば、第1の光ファイバF1としては、前述のDD−DCF、分散の大きな分散シフトファイバ、1.55μm帯の信号光に対する1.3μm帯零分散ファイバ、1.3μm帯の信号光に対する1.55μm帯零分散ファイバを用いることにより、上述の条件を満足することができる。
このような共通の第1の光ファイバF1に対して、各第2の光ファイバF2kが本発明の条件を満足することにより、各チャネルについて最適な受信状態を得ることができる。
図23は本発明の第5の応用例を示す図である。ここでは、第1の光ファイバとして、比較的大きな分散のN個の光ファイバF11′,…,F1N′と比較的小さな分散の共通の光ファイバF1′とを組み合わせたものが用いられている。 光ファイバF11′,…,F1N′と光ファイバF1′とは光マルチプレクサによって接続されており、光ファイバF1′と各位相共役光発生器PC−kとは光デマルチプレクサによって接続されている。
このシステムにおいても、第1の光ファイバと第2の光ファイバについて所定の条件を満足させることによって、各チャネルについて波形歪みを良好に補償することができ、最適な受信状態を得ることができる。
これらの機能を総合した波長多重伝送システムの構成例を図24に示す。
波長多重信号を第1の光ファイバを伝送後、分岐し、各チャネル毎に最適な波長の位相共役光に変換、抽出する。これら波長多重位相共役信号光を合成して第2の光ファイバで受信機まで伝送する。この構成をとれば、伝送路に2次分散がある場合でも全てのチャネルの波形歪みを完全に補償可能である。
本発明の双方向光伝送システムへの応用例を図25に示す。
第1の端局内のTX−1からの波長λS1の信号光ES1を光ファイバF1を伝送後、DFB−LD内において同じ方向の発振光(ポンプ光)EP1を用いて波長λC1の位相共役光EC1に変換し、光ファイバにF2により伝送した後、第2の端局内のRX−1で受信する。一方、第2の端局内のTX−2からの波長λS2の信号光ES2を光ファイバF2により伝送後、DFB−LD内において同じ方向の発振光(ポンプ光)EP2を用いて波長λC2の位相共役光EC2に変換し、光ファイバF1により伝送後第1の端局内のRX−2で受信する。
このとき、光ファイバF1及び光ファイバF2により伝送する信号光の波長は、各伝送路に用いる帯域フィルタの透過帯域内にあることが望ましい。即ち、λS1とλC2、及びλC1とλS2が同じ透過帯域にあるように設定することになる。勿論、このときの各信号光は波長多重信号光であってもよい。
次に、位相共役光発生器を用いた光波ネットワークの実現例について説明する。図26は光波ネットワークの原理を説明するための図である。
光送信機(OS)202は信号ビームを出力する。
第1の光ファイバ204は、信号ビームの入力端及び出力端にそれぞれ相当する第1端204A及び第2端204Bを有している。第2端204Bには第1の位相共役光発生器(1st PC)206が動作的に接続されている。
第1の位相共役光発生器206は、第1の光ファイバ204から供給された信号ビームを第1の位相共役ビームに変換して出力する。
第2の光ファイバ208は、第1の位相共役ビームの入力端及び出力端にそれぞれ相当する第3端208A及び第4端208Bを有している。第4端208Bには第2の位相共役光発生器(2nd PC)210が動作的に接続される。
第2の位相共役光発生器210は、第2の光ファイバ208から供給された第1の位相共役ビームを第2の位相共役ビームに変換して出力する。
第3の光ファイバ212は、第2の位相共役ビームの入力端及び出力端にそれぞれ相当する第5端212A及び第6端212Bを有している。
第3の光ファイバ212によって伝送された第2の位相共役ビームを受けるために、光受信機(OR)214が設けられている。
第2の光ファイバ208の途中にはシステム中間点216が設定される。システム中間点216は後程定義される。
第2の光ファイバ208は、第3端208A及びシステム中間点216の間の第1の部分281と、システム中間点216及び第4端208Bの間の第2の部分282とからなる。
本発明では、光ファイバ204,208及び212における各パラメータが次のようにして設定される。
先ず、第1の光ファイバ204がN個(Nは1より大きい整数)の区間204(#1,…,#N)に仮想的に分割され、第2の光ファイバ208の第1の部分281も同じ数の区間281(#1,…,#N)に仮想的に分割される。このとき、第1の位相共役光発生器206から数えて対応する2つの区間の波長分散の平均値及び区間長の積が実質的に一致するようにされる。即ち、第1の光ファイバ204において第1の位相共役光発生器206から数えてi(1≦i≦N)番目の区間204(#i)の波長分散(または分散パラメータ)の平均値及び区間長をそれぞれD1i及びL1iとし、第2の光ファイバ208の第1の部分281において第1の位相共役光発生器206から数えてi番目の区間281(#i)の波長分散(または分散パラメータ)の平均値及び区間長をそれぞれD2i及びL2iとするときに、
D1iL1i=D2iL2i …(1)
が満足される。
D1iL1i=D2iL2i …(1)
が満足される。
更に、区間204(#i)における光パワーの平均値及び非線形係数の平均値をそれぞれP1i及びγ1iとし、区間281(#i)における光パワーの平均値及び非線形係数の平均値をそれぞれP2i及びγ2iとするときに、
P1iγ1iL1i=P2iγ2iL2i …(2)
が満足される。
P1iγ1iL1i=P2iγ2iL2i …(2)
が満足される。
一方、第2の光ファイバ208の第2の部分282がM個(Mは1より大きい整数)の区間282(#1,…,#M)に仮想的に分割され、第3の光ファイバ212も同じ数の区間212(#1,…,#M)に仮想的に分割される。
このとき、第2の光ファイバ208の第2の部分282において第2の位相共役光発生器210から数えてj(1≦j≦M)番目の区間282(#j)の波長分散の平均値及び区間長をそれぞれD3j及びL3jとし、第3の光ファイバ212において第2の位相共役光発生器210から数えてj番目の区間212(#j)の波長分散の平均値及び区間長をそれぞれD4j及びL4jとするときに、
D3jL3j=D4jL4j … (3)
が満足される。更に、区間282(#j)における光パワーの平均値及び非線形係数の平均値をそれぞれP3j及びγ3jとし、区間212(#j)における光パワーの平均値及び非線形係数の平均値をそれぞれP4j及びγ4jとするときに、
P3jγ3jL3j=P4jγ4jL4j … (4)
が満足される。
D3jL3j=D4jL4j … (3)
が満足される。更に、区間282(#j)における光パワーの平均値及び非線形係数の平均値をそれぞれP3j及びγ3jとし、区間212(#j)における光パワーの平均値及び非線形係数の平均値をそれぞれP4j及びγ4jとするときに、
P3jγ3jL3j=P4jγ4jL4j … (4)
が満足される。
図26においては、第1の位相共役発生器206の前後で波形歪みは一旦大きくなるが、(1)式及び(2)式の条件により、システム中間点216において波長分散及び非線形性が補償され、波形は一旦元の状態に戻る。この回復した波形は再び第2の位相共役発生器210の前後で歪むが、(3)式及び(4)式の条件により、光受信機214においては、波長分散及び非線形性が補償された結果、波形は再び元に戻る。
また、図26の構成は、海底等に敷設される可能性のある第2の光ファイバ208についての長さ等のパラメータの設定誤差に対して寛容である。即ち、システム中間点216において例え波形が完全に元の状態に戻らないとしても、この不完全性を第2の部分282、第2の位相共役光発生器210及び第3の光ファイバ212で再現することによって、光受信機214において波形を完全に元に戻すことができるのである。
図27を参照すると、波長分散及び非線形性の補償の原理が示されている。この補償原理は図17その他においても同じである。ここでは、光送信機202からシステム中間点216に至るまでの補償の原理が説明される。先ず、図27の説明に先立ち、位相共役波の一般的事項について説明する。
光ファイバ伝送における光信号E(x,y,z,t)=F(x,y)φ(z,t)exp〔i(ωt−kz)〕の伝搬は、一般に以下の非線形波動方程式によって記述可能である。ここに、F(x,y)は横方向のモード分布、φ(z,t)は光の複素包路線を表し、このφ(z,t)は光の周波数ωに比べて十分にゆっくり変化すると仮定する。
ここに、T=t−β1 z(β1 は伝搬定数)、αはファイバの損失、β2 はファイバの波長分散を表し、
は、3次の非線形係数(光カー効果の係数)を表す。ここに、n2 とAeff はそれぞれファイバの非線形屈折率と有効コア断面積を表す。cは真空中の光速である。ここでは1次分散までを考慮し、それより高次の分散は省略した。また、α,β,γはzの関数であるとし、それぞれα(z),β(z),γ(z)と表されるものとする。更に、位相共役光発生器の位置を原点(z=0)とする。ここで、以下の規格化関数を導入する。
ここに、
は、振幅を表し、α(z)>0の場合は伝送路が損失を持ち、α(z)<0の場合は利得を持つことをそれぞれ表す。A(z)≡A(0)は損失無しの場合を表す。また、A(z)2 =P(z)は光パワーに相当する。(7),(8)式を(5)式に代入すると、次の発展方程式が得られる。
ここで以下の変換を行う。
その結果、(9)式は以下のように変換できる。
ここで、sgn[β2 ]≡±1は、β2 >0,即ち正常分散の場合には+1を、β2 <0,即ち以上分散の場合には−1をそれぞれとる。(11)式が成り立てばその複素共役も成り立ち、次の式が得られる。
複素共役光u* はuに対する発展方程式と同じ発展方程式に従う。但し、その際の伝搬方向は反転する。この動作は正しく位相共役器の動作である。特に透過型の位相共役器においては上記のことは波長分散とSPMとによる位相シフトを反転させることと等価である。
ここで、図27においては、第1の光ファイバ204の長さはL1 であり、第2の光ファイバ208の第1の部分281の長さはL2 であるとする。また、位相共役光発生器206はz軸座標及びζ座標の原点z=0(ζ=0)に配置される。システム中間点216のz座標及びζ座標はそれぞれL2 及びζ0 である。
第1の光ファイバ204においては、信号ビームu(Es)は発展方程式(11)に従って伝搬する。位相共役光発生器206により信号ビームuは位相共役ビームu* (Ec)に変換される。位相共役ビームu* は第2の光ファイバ208の第1の部分281において発展方程式(12)式に従って伝搬する。
このときζ軸上の位相共役光発生器206の位置(ζ=0)に関して対称な位置にある任意の2点−ζ,ζにおける規格化距離dζ内において、(11)式の右辺第1、2項の係数が等しくなるように各パラメータの値を設定すれば、ζにおけるu* は−ζにおけるuの位相共役波となる。即ち、次の2式が条件となる。
(13)式は第1の光ファイバ204及び第1の部分281の分散の符号が等しい必要性を示している。ファイバ内では、γ>0,A(z)2 >0であることを考慮すると、上記条件は次のようにまとめることができる。
第1の光ファイバ204内の(−ζ)における波長分散とSPMとによる位相シフトは位相共役光発生器206により符号が反転する。従って、この位相シフトによる波形歪みは第1の部分281内の(ζ)における位相シフトによる歪みにより補償される。このように区間毎に上記のような設定による補償を繰り返していけば、全長に渡る補償が可能となる。
次に、上記の補償条件をz座標で記述する。(15)式より、
を得る。即ち、各区間内での非線形係数と光パワーの積に対する波長分散の比を等しくすることが条件となる。ここで、−z1 ,z2 は次の式を満足させる2点である。
(16),(17)式より(18),(19)式が得られる。
dz1 ,dz2 はそれぞれ−z1 ,z2 における小区間の長さであり、各区間長は当該区間内の分散に反比例するか或いは非線形係数と光パワーの積に反比例する。ここで、分散β2 と分散パラメータDの関係、D=−(2πc/λ2 )β2
を考慮すれば、(18),(19)式より以下の関係が得られる。Dはzの関数であり、D(z)とも表される。
を考慮すれば、(18),(19)式より以下の関係が得られる。Dはzの関数であり、D(z)とも表される。
分散及び非線形性についていずれも位相共役光発生器206に関して対称な2つの位置の一方における増加分と他方の減少分とが等しいことが補償の条件であることがわかる。
(20),(21)式は、補償のための必要条件であり、対応する2つの区間で総分散量と光カー効果の総量とが等しくなることを示している。即ち、(1)式乃至(4)式の条件の有効性が確認された。
特にα,D及びγが一定であり且つパワーの変動が小さい場合には(20),(21)式を積分すれば、
D1 L1 =D2 L2 … (22)
γ1 P1 L1 =γ2 P2 L2 … (23)
を得る。ここで、P1 ,P2 はそれぞれ第1の光ファイバ204及び第1の部分281における平均パワーである。また、D1 ,γ1 はそれぞれ第1の光ファイバ204の分散パラメータの平均値及び非線形係数の平均値、D2 ,γ2 はそれぞれ第1の部分281の分散パラメータの平均値及び非線形係数の平均値である。(22),(23)式は分散補償及び平均値近似によるSPMの補償法における条件と一致する。
D1 L1 =D2 L2 … (22)
γ1 P1 L1 =γ2 P2 L2 … (23)
を得る。ここで、P1 ,P2 はそれぞれ第1の光ファイバ204及び第1の部分281における平均パワーである。また、D1 ,γ1 はそれぞれ第1の光ファイバ204の分散パラメータの平均値及び非線形係数の平均値、D2 ,γ2 はそれぞれ第1の部分281の分散パラメータの平均値及び非線形係数の平均値である。(22),(23)式は分散補償及び平均値近似によるSPMの補償法における条件と一致する。
実用的には、(22)式の条件を満足するだけでも本発明を実施することができる。即ち、本発明によると、信号ビームの入力端及び出力端にそれぞれ相当する第1端及び第2端を有する第1の光ファイバと、上記第2端に動作的に接続され上記信号ビームを位相共役ビームに変換して出力する位相共役光発生器と、上記位相共役ビームの入力端及び出力端にそれぞれ相当する第3端及び第4端を有する第2の光ファイバとを備え、上記第1の光ファイバの波長分散の平均値及び長さの積は上記第2の光ファイバの波長分散の平均値及び長さの積に実質的に一致する光ファイバ通信システムが提供される。
望ましくは、(23)式の条件を満足するために、上記第1の光ファイバにおける光パワーの平均値及び非線形係数の平均値並びに上記第1の光ファイバの長さの積は上記第2の光ファイバにおける光パワーの平均値及び非線形係数の平均値並びに上記第2の光ファイバの長さの積に実質的に一致する。
第1及び第2の光ファイバを含む光路上に複数の光増幅器が設けられている場合には、これらのうちの隣り合う2つの光増幅器の間隔を光路(光ファイバ)の非線形長よりも短く設定するのが望ましい。
図27においては、システム中間点216の上流側における補償の原理が示されている。システム中間点216の下流側における補償の原理はこれと同じようにして理解することができるのでその説明を省略する。
図27による説明においては、(10)式に示されるように、位相共役光発生器206からの波長分散の累積値によって規格化座標が定義されている。その結果、要求される条件は、(15)式により示されているように、位相共役光発生器206からの波長分散の累積値が等しい第1の光ファイバ204及び第1の部分281上の2点の各々における光パワー及び非線形係数の積と波長分散との比が実質的に一致することである。
図27においては、位相共役光発生器206からの非線形効果の累積値(即ち光パワー及び非線形係数の積の累積値)によって規格化座標が定義されてもよい。この場合には、位相共役光発生器206からの当該累積値が等しい第1の光ファイバ204及び第1の部分281上の2点の各々における光パワー及び非線形係数の積と波長分散との比が実質的に一致することが条件となる。
以上の説明の通り、位相共役光発生器に接続される第1の光ファイバと第2の光ファイバとの間で、光ファイバの総分散量と光カー(Kerr)効果との総量とが等しくなるように設定することにより、第1の光ファイバに入力される光パルス波形と第2の光ファイバから出力される光パルス波形とがほぼ同一の形状を有するように位相共役光発生器により補償されることがわかる。即ち、光パルスの送信側(第1の光ファイバの入力端)と光パルスの受信側(第2の光ファイバの出力端)において、ほぼ同一形状の光パルス波形が得られることとなり、これらの入力端、出力端に光ADM(Add Drop Multiplexer:光信号挿入分岐装置)を設けることにより、光ADMでは、受信光パルスが送信光パルスとほぼ同一の状態で受信することが可能となる。そのため、各ADMにおいて、受信光パルスのSNRを劣化させることなく、受信光パルスの再生(波形整形・タイミング再生)処理を不要にすることが可能となり、柔軟性に富んだシステムの構築が可能になる。この原理を応用した所謂光波ネットワークについて以下に説明する。
図28は、位相共役光発生器を用いたリング型光波ネットワークを示す図である。図において、各ノード(Node)1,2,3はそれぞれ光ADMであり、外側光ファイバリング(単一モード光ファイバ伝送路)と内側光ファイバリング(同じく、単一モード光ファイバ伝送路)とに接続されている。
各ノード1,2,3間の外側光ファイバリングと内側光ファイバリングの途中には、位相共役光発生器(PC12,PC21,PC23,PC32,PC13,PC31)が設けられている。各PC又は各ノードは、それぞれ、入力側光ファイバリングと出力側光ファイバリングの総分散量と光カー効果との総量とが等しくなる位置に設けられている。
ノード1はノード2へ信号を波長λ12の光波を用いて送信し、ノード2はノード1へ信号を波長λ21の光波を用いて送信する場合について説明する。ノード1は、λ12の光波を外側光ファイバリング101に送信する。
PC12は、光ファイバリング101から受信したλ12の光波の位相共役光λ′12を発生する。PC12としては、前述のDFB−LDを用いるのが好適である。
PC12は、λ12の位相共役光λ′12を光ファイバリング102に入力し、ノード2へ送信する。
ノード2では、光ファイバリング102より、λ′12の光波を受信し、これをノード1からの光信号として扱う。
PC12を、光ファイバリング101と光ファイバリング102との総分散量と光カー効果の総量とが等しくなる位置に設けることにより、ノード1で外側光ファイバリングに挿入される光信号λ12とほぼ同一波形の位相共役光λ′12をノード2において外側光ファイバリングから分岐することができる。従って、ノード2では、受信光信号の複雑な波形整形・タイミング再生を行う必要はなくなる。
ノード2からノード1へ信号を送信する場合は、内側光ファイバリングを用いる。即ち、ノード2からノード1への信号を波長λ21の光波を用いて送信する場合、λ21の光波を光ファイバリング103に送信する。
PC21では、光ファイバリング103から受信した光波λ21の位相共役光λ′21を発生し、光ファイバリング104に送信する。
ノード1では、光ファイバリング104より、光波λ′21を受信し、この光波λ21′をノード2からの送信信号として受信する。
PC21を、光ファイバリング103と光ファイバリング104との総分散量と光カー効果の総量とが等しくなる位置に設けることにより、ノード2で内側光ファイバリングに挿入される光信号λ21とほぼ同一波形の位相共役光λ′21をノード1において内側光ファイバリングから分岐することができる。
従って、ノード1においても、受信光信号の複雑な波形整形・タイミング再生を行う必要はなくなる。
ノード1からノード3への通信は、内側光ファイバリング106を経由して波長λ13を用いて行い、ノード3からノード1への通信は外側光ファイバリング105を経由して波長λ31の光波を用いて行う。
PC13は、λ13の位相共役光λ′13を発生して、光ファイバリング108に入力し、ノード3は、λ′13の光波をノード1からの光信号として受信する。
また、ノード3からノード1への通信は、外側光ファイバリング107を経由して行う。PC31は、λ31の位相共役光λ′31を発生し、光ファイバリング105に入力する。ノード1は、λ′31の光波をノード3からの光信号として受信する。
同様に、ノード2からノード3への通信は、外側光ファイバリング112を経由して波長λ23を用いて行い、ノード3からノード2への通信は内側光ファイバリング109を経由して波長λ32の光波を用いて行う。
PC23は、λ23の位相共役光λ′23を発生して、光ファイバリング110に入力し、ノード3は、λ′23の光波をノード2からの光信号として受信する。
また、PC32は、λ32の位相共役光λ′32を発生し、光ファイバリング111に入力する。ノード2は、λ′32の光波をノード3からの光信号として受信する。
図28に示すリング型光波ネットワークでは、光ファイバリングが断となった際にも、通信を継続可能である。即ち、光ファイバリング101が断となった場合、ノード1からノード2への通信は、内側光ファイバリング106,108,109,111からなる迂回路を用いて継続することが可能である。
ここで、「光ファイバリングが断になる」というのは、光ファイバリングが物理的に損傷を受けて伝送不能になった場合を含み、更に、光ファイバリングが伝送容量のオーバーフローをきたして伝送困難になった場合を含む。
この場合、ノード1は、波長λ12の光波を光ファイバリング106に送信する。PC13の位置には、PC12′を設けておき、このPC12′により、λ12の光波からλ″12の位相共役光を発生し、光ファイバリング108に送信する。
ノード3は、λ″12の光波を通過させ、光ファイバリング109に送信する。PC32の位置には、PC12″を設けておき、光ファイバリング111から受信したλ″12の光波から、λ′12の位相共役光を発生し、光ファイバリング111に送信する。
ノード2では、光ファイバリング111から受信したλ′12の光波をノード1からの光信号として受信する。
上記の場合、PC13の位置に設けたPC12′と、PC32の位置に設けたPC12″により、2段階の位相共役光発生が行われるため、2段階の波長変換が行われることになる。
従って、PC12′とPC12″で用いるポンプ光波長を適宜選択して、ノード1から受信する光波λ12と、ノード2へ送信する光波λ′12とが、PC12における入力光波λ12と位相共役光λ′12の波長と等しくなるようにすることが好ましい。
このように設定することにより、ノード1では、障害時にも同一の光源を用いることができ、また、ノード2でも同一の光受信系を用いることができる。
従って、ノード1においては、ノード1への光源を1つだけ用意しておき、光スイッチにより、光ファイバリング101と接続するか、光ファイバリング106と接続するかを障害状況に応じて選択するだけでよい。
この場合、ノード2では、光ファイバリング102及び光ファイバリング111をそれぞれ同一の受信系に接続しておくだけで、ノード1からの光波λ′12を受信することが可能である。また、逆に、ノード1においては、常に光ファイバリング101及び光ファイバリング106に光波λ12を送信し、ノード2において、障害状況に応じて、光ファイバリング102から光波λ′12を受信するか、光ファイバリング111から光波λ′12を受信するかを選択すればよい。
以上において、PC12′及びPC12″をPC13及びPC32と同一位置に設けることができるのは、PC13が光ファイバリング106と光ファイバリング109の総分散量と光カー効果の総量とが等しくなる位置に設けられており、更に、PC32が光ファイバリング109と光ファイバリング111の総分散量と光カー効果の総量とが等しくなる位置に設けられているからである。
尚、ノード2からノード1への迂回路としては、光ファイバリング112,110,107,105の経路を用いることができ、ノード2からノード3への迂回路としては、光ファイバリング103,104,106,108の経路を用いることができ、更にノード3からノード2への迂回路としては、光ファイバリング107,105,101,102の経路を用いることができる。動作等は、上記のようにノード1からノード2への通信の迂回路の場合と同様である。
尚、以上の例では、内側光ファイバリングと外側光ファイバリングとして別の光路を用いる場合を説明したが、光波λ12とλ21との波長として別の波長を用いることにより、同一の光路を用いて双方向光通信を行うこともできる。この場合は、外側光ファイバリングと内側光ファイバリングとが物理的に同一であるので、当然、それぞれの総分散量と光カー効果との総量とが等しくなるので、PC12,PC21をそれぞれ同じ位置に設けることができる。
図29には、ノード1の具体的構成を示す。図において、DMUXは、光波長分離装置であり、光学的に異なる波長の光波に分離するものである。また、MUXは、光波長多重化装置であり、光学的に異なる波長の光を多重化して、1本の光ファイバに結合するためのものである。ノード2,3も同様に構成することができる。また、1本の光ファイバリングにて双方向光伝送を行う場合には、図の点線で示すように、光ファイバリング101をDMUXに接続し、光ファイバリング105をMUXに接続すればよい。
図30は、位相共役光発生器PC12,PC21の具体的構成を示すものである。PC12,PC13′,PC32′としては、前述したようにDFB−LDを用いることが好適である。
DFB−LDを用いることにより、位相共役光発生器を大幅に小型化・簡素化できるため、光波長多重通信において、図30のように、各波長毎に位相共役光発生装置を設け、個別に波長変換を行うことができる。
従って、位相共役光発生器の所要帯域を拡大するための制御の必要がなくなる。尚、図30においては、位相共役光のみを光ファイバリングに入力するため(プローブ光、ポンプ光を除去するため)位相共役光の波長のみを透過する帯域通過光フィルタを設けている。
図31は、図28の光波ネットワークの更に別の構成例を示すものである。図中、○は、図28と同様のノードを示し特定の波長の光波の挿入・分岐機能を持つものである。この場合、図28と異なるのは、位相共役光発生器PCに、光分岐・切替機能を持たせている点である。PC121の具体的構成について、図32を参照して説明する。
いま、PC121は、ノード(Node)11側のサブ・ネットワーク(Sub−Network)1から光信号を受信し、ノード12側のサブ・ネットワークへ光信号を送信する場合を考える。ノード11側のサブ・ネットワーク1は、光波長分離装置DMUXに接続され、各波長毎に光波λ11〜λ1jに分離される。λ11〜λ1iの光波をサブ・ネットワーク1の光通信用として用いる場合、それぞれの光波λ11〜λ1iの位相共役光を発生し、光フィルタにより、この位相共役光のみを抽出して、これらを光波長多重化装置MUXに入力して多重化し、サブ・ネットワーク1のノード12側へ入力する。また、光波λ1m〜λ1jをメイン・ネットワーク(Main−Network)との通信用として用いる場合は、それぞれの光波λ1m〜λ1jの位相共役光を発生し、光フィルタにより、この位相共役光のみを抽出して、これらを光波長多重化装置MUXに入力して、多重化し、メイン・ネットワークの光ファイバ130に入力する。この場合、ノード11とPC121との間の光ファイバ131とPC121とノード12との間の光ファイバ132との間で、総分散量及び光カー効果の総量とを等しく設定し、更に、ノード11とPC121との間の光ファイバ131とPC121とノード10との間の光ファイバ130との間で総分散量及び光カー効果の総量とを等しく設定する。
尚、ノード10においては、例えば、特公平6−66982号に記載された光マトリクススイッチを用いて、光波の経路を切り替えることができる。この光マチリクススイッチを用いることにより、PC124,PC125,PC126のいずれへも光波信号を送信することができる。
尚、図28乃至図32の実施形態においては、DFBレーザダイオードを用いていない位相共役光発生器も採用可能である。この種の位相共役光発生器は、例えば、信号光ビームが供給される非線形光学媒質(例えば光ファイバ又は半導体光増幅器)と、ポンプ光を出力するポンプ光源と、ポンプ光を非線形光学媒質に供給するための光カプラとを備えている。非線形光学媒質内において信号光ビーム及びポンプ光に基づく四光波混合によって位相共役光ビームが発生し、位相共役光ビームは非線形光学媒質から出力される。
図34の(A),(B)及び(C)は図4のDFBレーザダイオードの変形例を示す断面図である。図34の(A)は、各層12,14及び15間の接合面に垂直な平面に対して傾斜した第1の端面(劈開面)と接合面に対して実質的に垂直な第2の端面(劈開面)とを有するDFBレーザダイオードを示している。第1の端面には信号光ビームが供給され、第2の端面は信号光ビーム、ポンプ光及び位相共役光ビームを出力する。図34の(A)に示される構成においては、第1の端面からDFBレーザダイオード内部に向けて反射する光は漏洩モードになるので、この反射光が導波路層12内に導き入れられることが防止される。その結果、位相共役光ビームを安定に発生させることができる。従って、図34の(A)に示される構成は、図2,8,9,15及び16に示されるような一方向型の位相共役光発生器に適している。
図34の(B)及び(C)はそれぞれ図10,11,13及び33に示されるような双方向型の位相共役光発生器に適したDFBレーザダイオードを示している。図34の(B)及び(C)に示されるDFBレーザダイオードの各々は、接合面に垂直な平面に対して傾斜した第1及び第2の端面(劈開面)を有している。図34の(B)の第1及び第2の端面は互いにほぼ平行であり、図34の(C)の第1及び第2の端面は互いに平行ではない。図34の(B)又は(C)に示される構成によると、第1及び第2の端面の各々で反射した光が漏洩モードになるので、反射光が導波路層12内に導き入れられることが防止される。その結果、DFBレーザダイオード内において互いに逆方向に伝搬する位相共役光ビームを安定に発生させることができる。
反射光の影響を更に抑圧するために、図34に示される変形例においては、第1及び第2の端面の何れか一方又は両方に反射防止膜(図4において符号22で示されるものを参照)が設けられていてもよい。反射防止膜の適切な設計によって、0.1%よりも小さい反射率を得ることができる。
図35は図10に示される位相共役光発生器の第1の変形例を示す図である。ここでは光帯域阻止フィルタ202が付加的に設けられている。フィルタ202は光サーキュレータ46のポート46Cと出力ポート50との間に光学的に接続されており、フィルタ202はDFBレーザダイオード1において発生したポンプ光成分EP1及びEP2を除去する。
図36は図35に示される光帯域阻止フィルタ202の透過率の波長特性を示している。フィルタ202はポンプ光成分EP1及びEP2の波長λP を含む狭い阻止帯域を有している。即ち、波長λP の近傍の領域における透過率は実質的に0%であり、それ以外の領域における透過率は実質的に100%である。図36に示されるような波長特性は例えば光帯域阻止フィルタ202としてファイバグレーティングを用いることにより得ることができる。
光学媒質(例えばガラス)の屈折率が光照射によって恒久的に変化する場合、その媒質は感光性であるといわれる。この性質を用いることにより、光ファイバのコアにファイバグレーティングを作製することができる。このようなファイバグレーティングの特徴は、グレーティングピッチ及びファイバモードの有効屈折率によって決定される共振波長近傍の狭い帯域で光をブラッグ反射させることである。ファイバグレーティングは、例えば、フェイズマスクを用いて波長248nm又は193nmで発振するエキシマレーザを照射することによって作製することができる(K. O. Hill, B. Malo, F. Bilodeau, D. C. Johnson, and J. Albert, “Bragg gratings fabricated in monomode photosensitive optical fiber by UV exposure through a phase mask”, Applied Physics Letters, Vol.62, No.10, pp.1035-1037, March 8, 1993 )。従って、ファイバグレーティングの共振波長を最適化することによって、波長λP を含む、光帯域阻止フィルタの狭い素子帯域を得ることができる。
特に図35に示される光帯域阻止フィルタ202の阻止帯域が波長λP に実質的に等しい中心波長を有する場合には、DFBレーザダイオード1内において発生したポンプ光成分EP1及びEP2はフィルタ202により効果的に除去される。従って、ポンプ光成分EP1及びEP2は出力ポート50から出力されない。このように、受信局或いは光伝送路の下流側に配置される光デバイスに対するポンプ光の影響が低減され、位相共役光ビームの処理(抽出、増幅等)が容易になる。
図37は図10に示される位相共役光発生器の第2の変形例を示す図である。図35のフィルタ202に代えて2つの光帯域阻止フィルタ202(#1及び#2)が設けられている。フィルタ202(#1)は1/2波長板44とDFBレーザダイオード1の励振端1Bとの間に光学的に接続されており、フィルタ202(#2)はDFBレーザダイオード1の励振端1Aと偏波ビームスプリッタ42のポート42Cとの間に光学的に接続されている。フィルタ202(#1及び#2)の各々は、図35に示されるフィルタ202と同等の波長特性、即ち図36に示されるような波長特性を有している。従って、図37に示される実施形態によると、DFBレーザダイオード1内において発生したポンプ光成分EP1及びEP2はそれぞれフィルタ202(#1及び#2)により除去され、ポート50から出力することはない。
位相共役光発生器がDFBレーザダイオードを含む場合、上述のような光帯域阻止フィルタを使用することの効果は絶大である。何故ならば、DFBレーザダイオードにおいて発生して出力されるポンプ光は、位相共役光を発生させるために非線形光学媒質に外部から導入したポンプ光の残留成分のパワーに比べて大きなパワーを有しているので、そのようなハイパワーなポンプ光の影響がその位相共役光発生器の下流側において生じ易いからである。
図38は図10の位相共役光発生器の第3の変形例を示す図である。ここでは、入力ポート48と光サーキュレータ46のポート46Aとの間に光学的に接続される光帯域阻止フィルタ204が付加的に設けられている。フィルタ204は例えばファイバグレーティングからなる。フィルタ204は予め定められた波長を含む狭い阻止帯域を有している。上記予め定められた波長は、DFBレーザダイオード1内において四光波混合により発生する位相共役光ビームEC1及びEC2の波長λc に実質的に一致するように設定される。
図39の(A)は図38に示される光帯域阻止フィルタ204の透過率の波長特性を示している。波長λc の近傍の領域における透過率は実質的に0%であり、他の領域における透過率は実質的に100%である。
図39の(B)は図38に示される光帯域阻止フィルタ204を透過した光のパワースペクトルを示している。入力ポート48に供給された入力光ビームは、ASE(自然放出光)雑音と、波長λs にてASE雑音に重畳された信号成分(Es )とを有している。入力光ビームが光帯域阻止フィルタ204を通過することによって、ASE雑音の一部分が波長λc の近傍において除去される。
図39の(C)は図38に示される位相共役光発生器から出力される光のパワースペクトルを示している。DFBレーザダイオード1内における信号光ビームEs (偏波成分Es1及びEs2)及びポンプ光Ep (ポンプ光成分Ep1及びEp2)に基づく四光波混合の結果、位相共役光ビームEc (Ec1及びEc2)が波長λc
において発生する。ASE雑音は波長λc の近傍において予め除去されているので、得られた位相共役光ビームは良好な信号対雑音比(SNR)を提供する。
において発生する。ASE雑音は波長λc の近傍において予め除去されているので、得られた位相共役光ビームは良好な信号対雑音比(SNR)を提供する。
図40は図15に示される位相共役光発生器の変形例を示す図である。DFBレーザダイオード1と非線形光学媒質68との間に光学的に接続された光増幅器206が付加的に設けられている。DFBレーザダイオード1はポンプ光Ep を発生するように駆動されており、信号光ビームEs はDFBレーザダイオード1に供給される。DFBレーザダイオード1内における信号光ビームEs 及びポンプ光Ep に基づく四光波混合によって位相共役光ビームEc が発生する。DFBレーザダイオード1から出力された信号光ビームEs 、ポンプ光Ep 及び位相共役光ビームEc は光増幅器206において増幅され、次いで非線形光学媒質68に供給される。非線形光学媒質68内においては、位相共役光ビームEc が四光波混合によって強められ、非線形光学媒質68から出力される。特にこの実施形態では、ポンプ光Ep が非線形光学媒質68に供給される前に光増幅器206により増幅されているので、非線形光学媒質68内における非線形効果が高められ、得られる位相共役光ビームEc のパワーが効果的に増大される。
波長1.5μm帯における増幅の場合、光増幅器206としてはエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)が適している。非線形光学媒質68は、例えば、半導体光増幅器(SOA)或いは分散シフトファイバ(DSF)等の光ファイバである。光ファイバが非線形光学媒質68として用いられており、その零分散波長がポンプ光Ep の波長に実質的に一致している場合、位相整合条件を容易に満足することができるので、得られる位相共役光ビームEc のパワーを高めることができる。
図41は本発明による偏波無依存位相共役光発生器の実施形態を示す図である。この位相共役光発生器は、例えば図33の光ループから取り出したようなカスケード接続されたDFBレーザダイオード1及び1′を有している。DFBレーザダイオード1はTE偏波面を有するポンプ光Ep を発生するように駆動され、DFBレーザダイオード1′はTM偏波面を有するポンプ光Ep ′を発生するように駆動されている。DFBレーザダイオード1に供給される信号光ビームEsはそれぞれTE及びTM偏波面に対応する偏波面を有する第1及び第2の信号成分からなる。第1の信号成分は、DFBレーザダイオード1内において第1の信号成分及びポンプ光Ep に基づく四光波混合プロセスを通して第1の位相共役光成分に変換され、第2の信号成分はDFBレーザダイオード1を透過する。第2の信号成分は、次いで、DFBレーザダイオード1′内における第2の信号成分及びポンプ光Ep ′に基づく四光波混合プロセスを通して第2の位相共役光成分に変換され、DFBレーザダイオード1内において発生した第1の位相共役光成分はDFBレーザダイオード1′を透過する。第1及び第2の位相共役光成分はDFBレーザダイオード1′から位相共役光ビームEc として出力される。この実施形態によると、第1及び第2の信号成分の両方が位相共役光ビームに変換されるので、変換効率の偏波依存性が小さくなる。
図42は図41に示される位相共役光発生器の変形例を示す図である。DFBレーザダイオード1及び1′の各々がTE及びTM偏波モードに対して異なる透過率を有している場合、偏波依存性の減少の程度が悪くなる可能性がある。この可能性に対処するために、ここでは、DFBレーザダイオード1及び1′の間に偏波依存エレメント208が設けられている。エレメント208はTE及びTM偏波モードに対して異なる損失又は利得を有しており、エレメント208は、この位相共役光発生器における変換効率の偏波依存性が最小になるように設定又は調節されている。エレメント208としては、例えば光増幅器又は偏光子を用いることができる。
ところで、位相共役変換がカスケード接続された第1及び第2の非線形光学媒質(例えば図16に示されるDFBレーザダイオード1及び光ファイバ72)を含む位相共役光発生器において行なわれる場合、変換効率及び変換帯域は第1及び第2の非線形光学媒質における非線形効果の和によって決定される。ここで、変換帯域は、あるパワーの位相共役光ビームが得られる条件下におけるポンプ光及び信号光の最大の離調波長(離調周波数)で定義される。一般に、第2の非線形光学媒質としての光ファイバは第1の非線形光学媒質としてのDFBレーザダイオード又は半導体光増幅器よりも広い変換帯域を有している。従って第1の非線形光学媒質としてのDFBレーザダイオード又は半導体光増幅器と第2の非線形光学媒質としての光ファイバとの組み合わせは、高い変換効率及び広い変換帯域を有する位相共役光発生器を提供する。
一般の目的で使用される分散シフトファイバ(DSF)は、その非線形係数γとして約2.6W-1km-1程度の値しか有しておらず、従って、十分な変換効率を得るためにはファイバ長を10km以上にすることが要求される。従って、ファイバ長を短くするのに十分大きな非線形係数γを有するDSFの提供が要望されているのである。もし、第2の非線形光学媒質として使用されるDSFの長さを短くすることができるとすれば、その零分散波長の管理が容易になり、従ってポンプ光の波長をDSFの零分散波長に実質的に一致させるのが容易になり、その結果広い変換帯域を得ることができる。
非線形係数γは、
γ=ωn2 /cAeff
で与えられる。ここで、ωは光周波数、n2 及びAeff はそれぞれ光ファイバの非線形屈折率及び有効コア断面積、cは光速である。従って、大きな非線形係数γを得るためには、非線形屈折率n2 を大きくし或いは有効コア断面積Aeff に対応するDSFのモードフィールド径(MFD)を小さくすることが有効である。非線形屈折率n2を大きくすることは、例えば、クラッドにフッ素等をドープし或いはコアに高濃度のGeO2 をドープすることにより可能である。コアにGeO2 を25乃至30mol%ドープすることによって、非線形屈折率n2 として5×10-20 m2 /W以上の大きな値が得られている。MFDを小さくすることは、比屈折率差Δ又はコアの形状の設計により可能である。このようなDSFの設計はDCF(分散補償ファイバ)の場合と同様である。例えば、コアにGeO2 を25乃至30mol%でドープし、且つ、比屈折率差Δを2.5乃至3.0%に設定することによって、4μmよりも小さなMFDの値が得られている。これらの総合効果として、15W-1km-1以上の大きな非線形係数γの値が得られている。
γ=ωn2 /cAeff
で与えられる。ここで、ωは光周波数、n2 及びAeff はそれぞれ光ファイバの非線形屈折率及び有効コア断面積、cは光速である。従って、大きな非線形係数γを得るためには、非線形屈折率n2 を大きくし或いは有効コア断面積Aeff に対応するDSFのモードフィールド径(MFD)を小さくすることが有効である。非線形屈折率n2を大きくすることは、例えば、クラッドにフッ素等をドープし或いはコアに高濃度のGeO2 をドープすることにより可能である。コアにGeO2 を25乃至30mol%ドープすることによって、非線形屈折率n2 として5×10-20 m2 /W以上の大きな値が得られている。MFDを小さくすることは、比屈折率差Δ又はコアの形状の設計により可能である。このようなDSFの設計はDCF(分散補償ファイバ)の場合と同様である。例えば、コアにGeO2 を25乃至30mol%でドープし、且つ、比屈折率差Δを2.5乃至3.0%に設定することによって、4μmよりも小さなMFDの値が得られている。これらの総合効果として、15W-1km-1以上の大きな非線形係数γの値が得られている。
他の重要な点として、このような大きな値の非線形係数γを提供するDSFがポンプ帯域に含まれる零分散波長を有すべきことが挙げられる。零分散波長とポンプ帯域とのこのような一致性は、ファイバパラメータ(例えば比屈折率差Δ及びMFD)を次のようにして設定することにより可能である。通常の光ファイバにおいては、MFDを一定にした条件で比屈折率差Δを大きくすると分散値は正常分散領域で大きくなる。位相共役光発生器による前置補償或いは後置補償に用いられる前述のようなDD−DCFはこのような原理により実現するものである。一方、コア径を大きくすると分散は減少し、逆にコア径を小さくすると分散は大きくなる。従って、MFDをポンプ帯域に適合するある値に設定した後に、零分散波長がポンプ光の予め定められた値に一致するようにコア径を調節すればよいのである。
変換効率はγPL(Pは光パワー、LはDSFの長さ)の二乗に比例するから、大きな非線形係数γを有するDSFは、通常のDSFに比べて2.6/15≒1/5.7程度の長さで同じ変換効率を達成可能である。前述のように十分大きな変換効率を得るためには通常のDSFにあっては10km程度の長さが必要であるのに対して、このような大きな非線形係数γを有する光ファイバにあっては、1乃至2km程度の長さで同様の変換効率を得ることができる。実際には、ファイバ長を短くすることができる分損失が小さくなるので、同じ変換効率を得るために更にファイバ長を短くすることができる。このような短い長さのDSFにおいては、零分散波長の制御性がよくなり、従ってポンプ光の波長を零分散波長に実質的に一致するように容易に制御することができ、広い変換帯域を提供することができる。更に、数kmのファイバ長であれば偏波面保存能力が確保されているので、このようなDSFの本発明への適用は、高い変換効率及び広い変換帯域を達成し偏波依存性を排除する上で極めて有効である。
位相共役光を発生するための非線形光学媒質として光ファイバを有している装置においては、変換帯域は光ファイバの分散により制限される。従って、光ファイバの長手方向の分散が完全に制御され、例えば全長(非線形長)に渡り唯一の零分散波長しかない場合には、ポンプ光の波長を零分散波長に合わせることにより、事実上無限大の(分散傾斜が直線状である範囲内で制限のない)変換帯域が得られる。実際には、光ファイバの製造技術上零分散波長が光ファイバの長手方向にばらつくため、位相整合条件が理想状態からずれ、これにより変換帯域が制限される。
しかし、このような場合であっても、光ファイバを切断して複数の小区間に分割し、零分散波長の似ている区間同士をスプライス等により繋ぎ合わせてゆくことにより(当初のファイバ端から数えた順番とは違う順番で)、全長における平均分散は同じであるにもかかわらず、広い変換帯域を有する位相共役光発生装置を提供するのに適した光ファイバを得ることができる。
或いはまた、十分広い変換帯域を得るのに必要な程度に高精度な分散制御が可能な長さ(例えば数百メートル以下)のファイバを予め多数用意しておき、所要の零分散波長のものを組み合わせて所要の変換効率を得るのに必要な長さのファイバを得、これを用いて位相共役光発生装置を製造することによって、広い変換帯域を得ることができる。
尚、このようにして変換帯域を拡大する場合には、ポンプ光のパワーが高いファイバのポンプ光入力端の近くに零分散波長の小さい部分或いは零分散波長のバラツキの少ない部分を集めることが有効である。また、必要に応じて順次分割数を増やしたり、ポンプ光入力端から離れた位置で比較的分散値の大きなところでは、分散値の正負を交互に配置する等により適当に組み合わせることによって更に変換帯域を拡大することができる。
このように、本発明のある側面によると、位相共役光を発生するための非線形光学媒質として光ファイバを有する装置を製造するための方法であって、(a)光ファイバを切断して複数の区間に分割するステップと、(b)非縮退四光波混合による変換帯域が拡大されるように上記複数の区間を並べ替えて繋ぎ合わせるステップとを含む方法が提供される。
望ましくは、上記複数の区間の各々の分散値(例えばポンプ光に対する分散値)が測定され、光ファイバにポンプ光を入力するときの入力端に近い側に比較的分散値の小さい区間が配置されるように上記複数の区間が並び替えられる。これにより、ポンプ光のパワーが高い部分で効果的に位相整合条件を得ることができるので、変換帯域が効果的に拡大される。
望ましくは、上記複数の区間の少なくとも一部は分散値の正負が交互になるように繋ぎ合わされる。これにより、光ファイバの各部分の平均分散を小さく抑えることができるので、変換帯域の効果的な拡大が可能になる。
本発明の他の側面によると、位相共役光を発生するための非線形光学媒質として光ファイバを有する装置を製造するための方法であって、(a)光ファイバを切断して複数の区間に分割するステップと、(b)上記複数の区間の各々の分散値(例えばポンプ光に対する分散値)を測定するステップと、(c)非縮退四光波混合による所要の変換帯域を得るのに十分小さい分散値を有する区間だけを選んで繋ぎ合わせるステップとを含む方法が提供される。
次に、非線形効果を用いた変換帯域の拡大方法について説明する。非線形効果が大きな光ファイバ(ポンプ光のパワーP0 が大きい場合を含む)を想定し、信号光とポンプ光の周波数差をΩ(≡|ωp −ωc |=|ωs −ωp |)とすると、四光波混合における位相不整合量Δkは次式で与えられる。
Δk=β2 Ω2 +2γP0
ここで、β2 はポンプ光の波長における分散値である。通常のファイバにおいては、2γP0 が十分に小さいので、位相整合(Δk=0)のための条件はβ2
=0で与えられる。これに対して、非線形効果の大きなファイバの場合には、2γP0 の値を無視することができないので、位相整合のための条件が変わってくる。2γP0 は常に正の値であるから、β2 がある負の値になることが位相整合の条件となる。即ち、ポンプ光の波長を異常分散領域に配置すればよい。このとき、最も位相整合のとれる離調周波数Ω1 は次式で与えられる。
ここで、β2 はポンプ光の波長における分散値である。通常のファイバにおいては、2γP0 が十分に小さいので、位相整合(Δk=0)のための条件はβ2
=0で与えられる。これに対して、非線形効果の大きなファイバの場合には、2γP0 の値を無視することができないので、位相整合のための条件が変わってくる。2γP0 は常に正の値であるから、β2 がある負の値になることが位相整合の条件となる。即ち、ポンプ光の波長を異常分散領域に配置すればよい。このとき、最も位相整合のとれる離調周波数Ω1 は次式で与えられる。
Ω1 =(2γP0 /|β2 |)1/2
従って、γ及びP0 に対してポンプ光を適宜調整することにより、変換帯域をΩ1 付近まで広げることが可能となる。
従って、γ及びP0 に対してポンプ光を適宜調整することにより、変換帯域をΩ1 付近まで広げることが可能となる。
図43及び44は高い変換効率及び広い変換帯域を有する位相共役光発生器を示す図である。これらの位相共役光発生器の各々は、カスケード接続された第1の非線形光学媒質68(#1)と第2の非線形光学媒質68(#2)との組み合わせを有している。図43は第1の非線形光学媒質68(#1)が半導体光増幅器(SOA)70を含む場合を示しており、図44は第1の非線形光学媒質68(#1)がDFBレーザダイオード1を含む場合を示している。図43及び44の双方共に、第2の非線形光学媒質68(#2)はDSF72を含む。
図43の実施形態においては、供給された信号光ビームとポンプ光源210から出力されたポンプ光とが光カプラ209により加え合わされてSOA70に入力される。SOA70内における信号光ビーム及びポンプ光に基づく四光波混合によって、位相共役光ビームが発生する。SOA70から出力された信号光ビーム、ポンプ光及び位相共役光ビームは次いでDSF72に供給される。DSF72においては、四光波混合によって位相共役光ビームのパワーが高められ、その位相共役光ビームは次いでDSF72から出力される。このようなSOA70及びDSF72の組み合わせを用いたプロセスにおいては、変換効率が高められる。
変換帯域を広くし且つ変換効率を更に高めるために、ここでは光帯域通過フィルタ216、フォトディテクタ218及び制御ユニット220を含むフィードバックループが設けられている。ポンプ光源210は駆動回路212によって駆動されている。駆動回路212は、供給された制御信号に従ってポンプ光の波長を調節する。DSF72から出力された光は光カプラ214によって2つのビームに分けられ、これらのビームのうちの一方は光帯域通過フィルタ216に供給される。フィルタ216は位相共役光ビームの波長λc を含む狭い通過帯域を有している。フィルタ216を通過したビーム成分は、フォトディテクタ218によって光パワーに対応するレベル(例えば電圧レベル)を有する電気信号に変換される。制御ユニット220は、フォトディテクタ218から出力された信号を受け、フォトディテクタ218による検出光パワーがより高くなるように前述の制御信号を発生する。このようなフィードバック制御の結果として、SOA70及びDSF72に供給されるポンプ光の波長は望ましい値(例えばDSF72の零分散波長)に等しくなるように制御される。それによって、広い変換帯域及び高い変換効率が得られる。何故ならば、得られる位相共役光ビームのパワーが最大になるときにポンプ光の波長が最適値に等しいからである。ポンプ光源210としてレーザダイオードが用いられている場合には、ポンプ光の波長はレーザダイオードの注入電流或いは温度により変化させることができる。
図44に示される実施形態においては、制御ユニット220から出力される制御信号はDFBレーザダイオード1の駆動回路7に供給される。駆動回路7は、供給された制御信号に基づいて、DFBレーザダイオード1内において発生するポンプ光の波長を制御する(図2乃至図5の説明を参照)。その結果、ポンプ光の波長は望ましい値(例えばDSF72の零分散波長)に一致するように制御され、それにより広い変換帯域及び高い変換効率が得られる。ここではDFBレーザダイオード1の駆動電流が制御されているが、DFBレーザダイオードの温度が制御されてもよい。
図示はしないが、第1の非線形光学媒質68(#1)と第2の非線形光学媒質(#2)との間に光増幅器を設けておき、第2の非線形光学媒質68(#2)に供給されるポンプ光のパワーが高くなるようにしてもよい。これにより変換効率が更に高まる。
ところで、DFBレーザダイオード及び半導体光増幅器等の半導体非線形光学媒質における非縮退四光波混合プロセスにおいては、信号光ビームの波長がポンプ光の波長よりも長い場合(λp <λs )の変換効率の方が、信号光の波長がポンプ光の波長よりも短い場合(λs <λp )の変換効率よりも高い。これは次のような理由によるものと考えられている。半導体非線形光学媒質を用いた変換プロセスにおいては、次に示すような三次の非線形効果の総合効果に基づいて四光波混合が発生する。
(1)キャリア密度の変調効果(帯域0.1nm以下)
(2)キャリアヒーティング効果(約10nmの帯域)
(3)スペクトルホールバーニング効果(帯域50nm以上)
結果として、四光波混合プロセスを通して発生した光の位相関係は、λp <λs の場合には相乗されるのに対して、λs <λp の場合には互いにキャンセルアウトされるのである。従って、半導体非線形光学媒質を用いて位相共役光ビームを発生させる場合には、信号光ビームの波長をポンプ光の波長よりも長く設定しておくことによって、変換効率を高くすることができる。
(2)キャリアヒーティング効果(約10nmの帯域)
(3)スペクトルホールバーニング効果(帯域50nm以上)
結果として、四光波混合プロセスを通して発生した光の位相関係は、λp <λs の場合には相乗されるのに対して、λs <λp の場合には互いにキャンセルアウトされるのである。従って、半導体非線形光学媒質を用いて位相共役光ビームを発生させる場合には、信号光ビームの波長をポンプ光の波長よりも長く設定しておくことによって、変換効率を高くすることができる。
このような半導体非線形光学媒質における波長関係の制限は、半導体非線形光学媒質に波長関係の制限がない外部非線形光学媒質をカスケード接続することにより回避することができる。即ち、前述したような、第1の非線形光学媒質としてのDFBレーザダイオード或いは半導体光増幅器と第2の非線形光学媒質としての光ファイバとの組み合わせは、上述のような波長関係の制限を回避して変換帯域を拡大する上で有効である。
尚、半導体光増幅器と光ファイバとをカスケード接続する場合には、これらの順序は限定されない。
また、異なる変換帯域を提供する第1及び第2の光ファイバをカスケード接続して位相共役光発生装置を提供する場合においても、狭い方の変換帯域に起因する帯域制限を排除することができるので、このような非線形光学媒質の組み合わせも変換帯域を拡大する上で有効である。
1 DFBレーザダイオード
32,38,42 偏波ビームスプリッタ
34,36,44 1/2波長板
46 光サーキュレータ
32,38,42 偏波ビームスプリッタ
34,36,44 1/2波長板
46 光サーキュレータ
Claims (17)
- (a)第1の非線形光学媒質に信号光ビームを供給するステップと、
(b)ポンプ光を用いた四光波混合に基づいて上記第1の非線形光学媒質内において位相共役光ビームを発生させるステップと、
(c)上記第1の非線形光学媒質から出力された上記信号光ビーム、上記位相共役光ビーム及び上記ポンプ光を第2の非線形光学媒質に供給するステップとを備えた方法。 - 信号光ビームを供給されてポンプ光を用いた四光波混合に基づいて位相共役光ビームを発生させる第1の非線形光学媒質と、
該第1の非線形光学媒質にカスケード接続され上記第1の非線形光学媒質から出力された上記信号光ビーム、上記位相共役光ビーム及び上記ポンプ光が供給される第2の非線形光学媒質とを備えた装置。 - 請求項2に記載の装置であって、
上記第1の非線形光学媒質は第1の変換帯域を提供するための半導体チップからなり、上記第2の非線形光学媒質は上記第1の変換帯域よりも広い第2の変換帯域を提供するための光ファイバからなる装置。 - 請求項3に記載の装置であって、
上記半導体チップは半導体光増幅器によって提供され、該半導体光増幅器に上記ポンプ光を供給するためのポンプ光源を更に備えた装置。 - 請求項3に記載の装置であって、
上記半導体チップは分布帰還(DFB)レーザダイオードによって提供され、該DFBレーザダイオードが上記ポンプ光を発生するように該DFBレーザダイオードに電流を注入する手段を更に備えた装置。 - 請求項3に記載の装置であって、
上記光ファイバは上記ポンプ光の波長に実質的に等しい零分散波長を有している装置。 - 請求項3に記載の装置であって、
上記位相共役光ビームのパワーがより高くなるように上記ポンプ光の波長を制御するためのフィードバックループを更に備えた装置。 - (a)半導体非線形光学媒質に信号光ビームを供給するステップと、
(b)ポンプ光を用いた四光波混合に基づいて上記半導体非線形光学媒質内において位相共役光ビームを発生させるステップと、
(c)上記信号光ビームの波長を上記ポンプ光の波長よりも長くなるように設定するステップとを備えた方法。 - 信号光ビームが供給される半導体非線形光学媒質と、
上記信号光ビームの波長よりも短い波長を有するポンプ光を用いた四光波混合に基づいて上記半導体非線形光学媒質が位相共役光ビームを発生させるように該半導体非線形光学媒質をポンピングする手段とを備えた装置。 - 請求項9に記載の装置であって、
上記半導体非線形光学媒質は半導体光増幅器によって提供され、上記ポンピングする手段は上記ポンプ光を上記半導体光増幅器に供給するためのポンプ光源を含む装置。 - 請求項9に記載の装置であって、
上記半導体非線形光学媒質は分布帰還(DFB)レーザダイオードによって提供され、上記ポンピングする手段は上記DFBレーザダイオードが上記ポンプ光を発生するように該DFBレーザダイオードに電流を注入する手段を含む装置。 - 光学的に接続された複数のユニットと、該複数のユニットの接続点に設けられた少なくとも1つの光信号挿入分岐装置とを備え、
上記複数のユニットの各々は、
信号光を伝送するための第1の光ファイバと、
上記信号光を位相共役光に変換するための手段と、
上記位相共役光を伝送するための第2の光ファイバとを備えており、
上記第1の光ファイバにおける波長分散及び光カー効果が上記第2の光ファイバにおける波長分散及び光カー効果によって補償されるシステム。 - 請求項2に記載の装置であって、
上記第1の非線形光学媒質は半導体チップからなり、上記第2の非線形光学媒質は光ファイバからなる装置。 - 位相共役光を発生するための非線形光学媒質として光ファイバを有する装置を製造するための方法であって、
(a)光ファイバを切断して複数の区間に分割するステップと、
(b)非縮退四光波混合による変換帯域が拡大されるように上記複数の区間を並べ替えて繋ぎ合わせるステップとを含む方法。 - 請求項14に記載の方法であって、
上記ステップ(b)は上記複数の区間の各々の分散値を測定するステップを含み、
上記光ファイバにポンプ光を入力するときの入力端に近い側に比較的分散値の小さい区間が配置されるように上記複数の区間が並び替えられる方法。 - 請求項15に記載の方法であって、
上記複数の区間の少なくとも一部は分散値の正負が交互になるように繋ぎ合わされる方法。 - 位相共役光を発生するための非線形光学媒質として光ファイバを有する装置を製造するための方法であって、
(a)光ファイバを切断して複数の区間に分割するステップと、
(b)上記複数の区間の各々の分散値を測定するステップと、
(c)非縮退四光波混合による所要の変換帯域を得るのに十分小さい分散値を有する区間だけを選んで繋ぎ合わせるステップとを含む方法。
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JPN6010040870, J.Zhou et al., IEEE Photonics Technology Letters, 199408, p.984−987 * |
JPN6010040871, H.Kuwatsuka et al., Electronics Letters, 19951123, Vol.31 No.24, p.2108−2110 * |
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